(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】自転車用ヘルメットに好適なサイズ調整機能を備えたヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
A42B 3/04 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
A42B3/04
(21)【出願番号】P 2019107951
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】592244789
【氏名又は名称】株式会社オージーケーカブト
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】藤本 晃延
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059246(JP,A)
【文献】実開平03-050021(JP,U)
【文献】特開2015-021217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B3/00-7/00
A42B1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車用ヘルメットに好適なサイズ調整機能を備えたヘッドレストであって、前記ヘッドレストは前記自転車用ヘルメットにおいてユーザの後頭部に当接し、前記自転車用ヘルメットはユーザの頭蓋部分を保護するヘルメット本体を含み、
前記ヘッドレストは、
前記ヘルメット本体との接続部と、
ユーザの後頭部に当接する、上下方向よりも左右方向が長い1つの部材から構成されたヘッドレスト本体と、
前記ヘッドレスト本体の左右端の長さを調整する調整手段と、を含
み、
前記ヘッドレスト本体は、変形可能な枠体であって、
前記調整手段は、前記ヘッドレスト本体の中央部分の上下を接近させるように変形させることにより前記ヘッドレスト本体の左右端の長さを調整し、
前記調整手段は、上下を接近させるように変形させた前記中央部分の形状を保持する保持部を備えることを特徴とするヘッドレスト。
【請求項2】
自転車用ヘルメットに好適なサイズ調整機能を備えたヘッドレストであって、前記ヘッドレストは前記自転車用ヘルメットにおいてユーザの後頭部に当接し、前記自転車用ヘルメットはユーザの頭蓋部分を保護するヘルメット本体を含み、
前記ヘッドレストは、
前記ヘルメット本体との接続部と、
ユーザの後頭部に当接する、上下方向よりも左右方向が長い1つの部材から構成されたヘッドレスト本体と、
前記ヘッドレスト本体の左右端の長さを調整する調整手段と、を含み、
前記ヘッドレスト本体は、可撓性を備えた素材で構成された薄い枠体であって、
前記調整手段は、前記ヘッドレスト本体の中央部分の上下を接近させるようにたわませることにより前記ヘッドレスト本体の左右端の長さを調整し、
前記調整手段は、上下を接近させるようにたわませた前記中央部分の形状を保持する保持部を備えることを特徴とす
るヘッドレスト。
【請求項3】
自転車用ヘルメットに好適なサイズ調整機能を備えたヘッドレストであって、前記ヘッドレストは前記自転車用ヘルメットにおいてユーザの後頭部に当接し、前記自転車用ヘルメットはユーザの頭蓋部分を保護するヘルメット本体を含み、
前記ヘッドレストは、
前記ヘルメット本体との接続部と、
ユーザの後頭部に当接する、上下方向よりも左右方向が長い1つの部材から構成されたヘッドレスト本体と、
前記ヘッドレスト本体の左右端の長さを調整する調整手段と、を含み、
前記ヘッドレスト本体は、可撓性を備えた素材で構成され、左右対称形状の薄い枠体であって、右枠体と左枠体と前記右枠体および前記左枠体を連結する中央枠体とで形成され、
前記調整手段は、前記中央枠体の上下を接近させるようにたわませることにより前記右枠体と前記左枠体とを接近させて前記ヘッドレスト本体の左右端の長さを調整し、
前記調整手段は、上下を接近させるようにたわませた前記中央枠体の形状を保持する保持部を備えることを特徴とす
るヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用ヘルメットを着用するユーザにとって快適な装着感を提供することのできる自転車用ヘルメットに関し、特にサイズ調整(アジャスター)機能を備えたヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車の走行時の転倒などに備えるために、頭部を保護するヘルメットが自転車レースなどで使用されている。このような自転車用ヘルメット(サイクリング用ヘルメットと同義)は、一般的に自動車レースまたは二輪車で用いられるヘルメットとは異なっており、通常、自転車用ヘルメットは、ユーザ(着用者と同義)の頭を少なくとも部分的に覆うように形成されるとともに頭蓋部分の頂部および側部の両方の部位における衝突からユーザの頭を保護するよう構成されているものが多い。
【0003】
このような自転車用ヘルメット(以下においては単にヘルメットと記載する)においては、着用者の頭部の形状および/またはサイズが異なることに対応させるためのサイズアジャスターが存在しており、手動操作により着用者の頭の形状および/またはサイズにヘルメットの各部のサイズを調整することが行われている。
このようにヘルメットの各部のサイズを調整する具体的な例として、ヘルメット本体の周囲長(頭周)、後頭部に当接して着用時の安定性を確保するヘッドレストの長さ(位置)がある。特開2015-021217号公報(特許文献1)は、ヘッドレストのサイズアジャスターを開示する。
【0004】
この特許文献1に開示されたサイズアジャスターは、サイクリング用ヘルメットの内側に固定的に連結できる形式のサイクリング用ヘルメットのためのサイズアジャスターであって、前記サイズアジャスターは、前記ヘルメットの下側周囲に沿って配置された環状構造体を有し、前記環状構造体は、前記ヘルメットをサイズの異なるユーザが着用できるよう最小直径形態と複数の増大直径形態との間で切換え可能であり、前記サイズアジャスターには、前記環状構造体の前記形態の手動切換え装置が設けられている、サイズアジャスターにおいて、前記サイズアジャスターは、少なくとも1本の軸線に沿って自由に差し向けることができる仕方で前記環状構造体に連結されたユーザ用ヘッドレスト要素を有する。
【0005】
この特許文献1には(特に
図1、
図2、
図8)、左右に分割されたヘッドレスト要素(13)の円筒形ピンが中央部分(15)の左右端のサイドアーム(14)に設けられた球形支持体(16)とそれぞれ結合されて、左右一対の2個のヘッドレスト要素(13)が接近したり離隔したりすることにより左右に分割されたヘッドレスト要素(13)の左右の長さが調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたサイズアジャスターにおいては、着用者の後頭部に当接して着用時の安定性を確保するヘッドレスト要素(13)が左右に分割されてお
り中央部分に後頭部が当接する部分を備えない。このため、特許文献1に開示されたサイズアジャスターにおけるヘッドレスト要素(13)では、後頭部の左右方向の中央部分に当接する部分が存在しないことに起因して、狭い面積しかヘッドレストが後頭部に当接しないので十分な安定性を確保できない可能性がある。この可能性のために、自転車用ヘルメットを着用するユーザにとって快適な装着感が得られないという問題がある。
【0008】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、自転車用ヘルメットを着用するユーザにとって快適な装着感を提供することのできる自転車用ヘルメットを実現するためのサイズ調整機能を備えたヘッドレストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る自転車用ヘルメットのヘッドレストは以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係る自転車用ヘルメットのヘッドレストは、自転車用ヘルメットに好適なサイズ調整機能を備えたヘッドレストであって、前記ヘッドレストは前記自転車用ヘルメットにおいてユーザの後頭部に当接し、前記自転車用ヘルメットはユーザの頭蓋部分を保護するヘルメット本体を含み、前記ヘッドレストは、前記ヘルメット本体との接続部と、ユーザの後頭部に当接する、上下方向よりも左右方向が長い1つの部材から構成されたヘッドレスト本体と、前記ヘッドレスト本体の左右端の長さを調整する調整手段と、を含む。
【0010】
好ましくは、前記ヘッドレスト本体は、変形可能な枠体であって、前記調整手段は、前記ヘッドレスト本体の中央部分の上下を接近させるように変形させることにより前記ヘッドレスト本体の左右端の長さを調整し、前記調整手段は、上下を接近させるように変形させた前記中央部分の形状を保持する保持部を備えるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記ヘッドレスト本体は、可撓性を備えた素材で構成された薄い枠体であって、前記調整手段は、前記ヘッドレスト本体の中央部分の上下を接近させるようにたわませることにより前記ヘッドレスト本体の左右端の長さを調整し、前記調整手段は、上下を接近させるようにたわませた前記中央部分の形状を保持する保持部を備えるように構成することができる。
【0011】
さらに好ましくは、前記ヘッドレスト本体は、可撓性を備えた素材で構成され、左右対称形状の薄い枠体であって、右枠体と左枠体と前記右枠体および前記左枠体を連結する中央枠体とで形成され、前記調整手段は、前記中央枠体の上下を接近させるようにたわませることにより前記右枠体と前記左枠体とを接近させて前記ヘッドレスト本体の左右端の長さを調整し、前記調整手段は、上下を接近させるようにたわませた前記中央枠体の形状を保持する保持部を備えるように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自転車用ヘルメットを着用するユーザにとって快適な装着感を提供することのできる自転車用ヘルメットを実現するためのサイズ調整機能を備えたヘッドレストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係るサイズ調整機能を備えたヘッドレスト100を含む自転車用ヘルメット10の(A)正面図、(B)下から見上げた全体斜視図、(C)
図1(B)からヘッドレスト100だけを抜き出した斜視図である。
【
図2】
図1(C)に示すヘッドレスト100の分解斜視図である。
【
図3】
図2に示すヘッドレスト本体110と保持部120とを組み立てた(A)斜視図、(B)
図3(A)における矢示3Bの拡大平面図である。
【
図4】サイズ調整機能を説明するためのヘッドレスト100の部分的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るサイズ調整機能を備えたヘッドレスト100およびそのヘッドレスト100を含む自転車用ヘルメット10(以下において単にヘルメット10と記載する場合がある)について、図面に基づき詳しく説明する。ここで、自転車用ヘルメットの構造には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴(サイズ調整機能)を備えたヘッドレスト100を含む自転車用ヘルメットであれば、自転車用ヘルメットの構造がどのようなものであっても、自転車用ヘルメットを構成する素材の種類、素材の接合方法等がどのようなものであっても、基本的には構わない。そのため、以下に示す自転車用ヘルメットの構造等は単なる例示でしかない。
【0015】
なお、このヘルメット10は、サイズ調整機能としては、詳しく後述するヘッドレスト100の左右方向のサイズ調整機能に加えて、ヘルメット10本体の周囲長(頭周)を調整する。このようなヘルメット10本体の周囲長(頭周)を調整する機構の一例としては、図示しないワイヤーと、そのワイヤーの長さをユーザが調整するとともに調整されたワイヤーの長さを保持するダイヤル140およびワイヤー保持機構130とにより実現することができる(後述の
図1、
図2参照)。しかしながら、ヘルメット10本体の周囲長(頭周)のサイズ調整機能については本発明と直接的な関係が低いので詳しく説明しない。また、さらに別の調整機能を備えたヘルメット10であっても構わない。
【0016】
サイズ調整機能を備えたヘッドレスト100を含む自転車用ヘルメット10の正面図を
図1(A)に、自転車用ヘルメット10を下から見上げた全体斜視図を
図1(B)に、
図1(B)からヘッドレスト100だけを抜き出した斜視図を
図1(C)に、それぞれ示す。
これらの図に示すように、この自転車用ヘルメット10は、ユーザの頭蓋部分を保護するヘルメット本体20と、サイズ調整機能を備えたヘッドレスト100とを含んで構成されている。このように、この自転車用ヘルメット10はこれらのヘルメット本体20とヘッドレスト100とを含んで構成されていればよく、上述したようにヘルメット10本体の周囲長(頭周)のサイズ調整機能を備えていても構わない。
【0017】
ここで、以下の説明における上下方向、左右方向および前後方向は、このヘルメット10を着用したユーザから見た方向であって、
図1に示す通りである。そのため、このヘルメット10を後方向から前方向に見た外観を示す図面にはダイヤル140の全体が示されるとともにその図面の右側が右方向でその図面の左側が左方向である。そして、このヘルメット10を前方向から後方向に見た内面を示す図面にはダイヤル140が隠れて示されるとともにその図面の右側が左方向でその図面の左側が右方向である。たとえば、
図1(A)に示すヘルメット10の正面図と
図4に示すヘッドレスト本体110の部分的な平面図とはこのヘルメット10を前方向から後方向に見た内面を示す図(ダイヤル140が隠れて示される図)であって、
図2に示すヘッドレスト100の分解斜視図と
図3(A)に示すヘッドレスト本体110と保持部120とを組み立てた斜視図とはこのヘルメット10を後方向から前方向に見た外観を示す図(ダイヤル140の全体が示される図)である。
【0018】
次に、
図2に示すヘッドレスト100の分解斜視図、
図3(A)に示すヘッドレスト本
体110と保持部120とを組み立てた斜視図、および、
図3(B)に示す
図3(A)の矢示3Bの拡大平面図を参照して、このヘルメット10が備える特徴であるサイズ調整機能を備えたヘッドレスト100の構造について説明する。なお、このヘッドレスト100のサイズ調整機能については、ヘッドレスト100の構造について説明した後に
図4を用いて説明する。ここで、このヘッドレスト100は、自転車用ヘルメット10においてユーザの後頭部に当接して着用時の安定性を確保することにより自転車用ヘルメット10を着用するユーザにとって快適な装着感を提供する点については従来のヘッドレストと同じであるが、本発明に係るヘッドレストは、ユーザの後頭部に十分にかつ確実に当接して着用時に十分な安定性を確保する点が異なる。
【0019】
まずは、このヘッドレスト100が有する技術的な構造上の特徴を以下に大略的に説明する。
このヘッドレスト100は、自転車用ヘルメット10に含まれるヘルメット本体20との接続部と、ユーザの後頭部に当接する、上下方向よりも左右方向が長い1つの部材から構成されたヘッドレスト本体110と、ヘッドレスト本体110の左右端の長さを調整する調整手段(後述する中央枠体114Cおよび保持部120)と、を含むことを特徴とする。ここで、限定されるものではないが、本実施の形態に係るヘッドレスト100においては、ヘルメット本体20との接続部はヘッドレスト本体110から一体的に延設されたもの(後述する接続部112Aおよび接続部112B)である。
【0020】
さらに、限定されるものではないが、ヘッドレスト本体110を変形可能な枠体で構成して、調整手段として、ヘッドレスト本体110の中央部分(後述する中央枠体114C)の上下を接近させるように変形させることによりヘッドレスト本体110の左右端の長さを調整するように構成することもできる。そして、この調整手段は、上下を接近させるように変形させた中央部分(後述する中央枠体114C)の形状を保持する保持部(後述する中央枠体114Cおよび保持部120)を備えるように構成することもできる。
【0021】
さらに、限定されるものではないが、ヘッドレスト本体110は、可撓性を備えた素材(たとえばある程度の強度を備えたプラスチック樹脂)で構成された薄い枠体(後述する右枠体114R、中央枠体114Cおよび左枠体114L)で構成して、調整手段として、ヘッドレスト本体の中央部分(後述する中央枠体114C)の上下(後述する中央枠体114Cの上辺114CUおよび下辺114CD)を接近させるようにたわませることによりヘッドレスト本体110の左右端の長さ(後述する右枠体114Rの端部と左枠体114Lの端部との距離)を調整するように構成することもできる。そして、この調整手段は、上下を接近させるようにたわませた中央部分(後述する中央枠体114C)の形状を保持する保持部(後述する中央枠体114Cおよび保持部120)を備えるように構成することもできる。
【0022】
さらに、限定されるものではないが、ヘッドレスト本体110は、可撓性を備えた素材(たとえばある程度の強度を備えたプラスチック樹脂)で構成され、左右対称形状の薄い枠体であって、右枠体114Rと左枠体114Lとこれらの右枠体114Rおよび左枠体114Lを連結する中央枠体114Cとで一体的に構成して(たとえば樹脂成形)、調整手段として、中央枠体114Cの上下(後述する中央枠体114Cの上辺114CUおよび下辺114CD)を接近させるようにたわませることにより右枠体114Rと左枠体114Lとを接近させてヘッドレスト本体の左右端の長さを調整するように構成することもできる。そして、この調整手段は、上下を接近させるようにたわませた中央枠体114Cの形状を保持する保持部(後述する中央枠体114Cの上側係合爪114UAおよび上側係合爪114UB、中央枠体114Cの下側係合爪114DAおよび下側係合爪114DBならびに保持部120の上側係合溝122UAおよび上側係合溝122UB、保持部120の下側係合溝122DAおよび下側係合溝122DB)を備えるように構成すること
もできる。
【0023】
このような大略的に説明したこのヘッドレスト100が有する技術的な構造上の特徴を以下に詳しく説明する。
図2および
図3に示すように、このヘルメット10が備えるヘッドレスト100は、ヘッドレスト本体110と保持部120とワイヤー保持機構130とダイヤル140とから構成され、ワイヤー保持機構130とダイヤル140とは図示しないワイヤーとともにヘルメット10本体の周囲長(頭周)を調整する。以下においては、ヘッドレスト100が備える技術的特徴であるヘットレスト自体の長さ調整機能を発現するヘッドレスト本体110と保持部120とを主として説明する。
【0024】
ヘッドレスト100が備えるヘルメット本体20との接続部は、ヘッドレスト本体110から一体的に延設された接続部112Aおよび接続部112Bとして構成される。この接続部112Aの先端および接続部112Bの先端には突起部112Cをそれぞれ備え、ヘルメット本体20の所定の位置に設けられた嵌合穴(図示せず)にこの突起部112Cが嵌め込まれてヘルメット本体20にこのヘッドレスト100が取り付けられる。
【0025】
このような接続部を備えたヘッドレスト本体110は、可撓性を備えた素材であって、たとえばある程度の強度を備えたプラスチック樹脂で一体的に成形されることが好ましい。このヘッドレスト本体110は、左右対称形状の薄い枠体であって、右枠体114Rと左枠体114Lとこれらの右枠体114Rおよび左枠体114Lを連結する中央枠体114Cとで一体的に構成されている。図示したように、中央枠体114Cは略台形形状(左右対称であるので等脚台形)、右枠体114Rおよび左枠体114Lはその略台形形状に延設された略三角形形状を備える。これらの中央枠体114Cと右枠体114Rとの連結部近傍から接続部112Bが、中央枠体114Cと左枠体114Lとの連結部近傍から接続部112Aがそれぞれ延設されている。なお、略台形形状の中央枠体114Cは、上辺114CU、下辺114CD、右側辺114CRおよび左側辺114CLで構成され、右側辺114CRは略三角形形状の右枠体114Rの一辺を形成し、左側辺114CLは略三角形形状の左枠体114Lの一辺を形成している。
【0026】
中央枠体114Cには、保持部120とともに調整手段として機能する、中央枠体114Cの上辺114CUの略中央に上側係合爪114UAおよび上側係合爪114UBを、中央枠体114Cの下辺114CDの略中央に下側係合爪114DAおよび下側係合爪114DBを、それぞれ備える。これらの係合爪は上辺114CUまたは下辺114CDに略垂直に設けられその開放端側は面取りされるとともにフック状に形成されており後述するスライド溝から抜け落ちることを防止している。
【0027】
調整手段として機能する保持部120は、略三角形状の薄板であって、その平面の上下方向に開けられた長穴形状の2つのスライド穴120HAおよびスライド穴120HBを備える。このスライド穴120HAおよびスライド穴120HBに、ヘッドレスト本体110の中央枠体114Cの上辺114CUに設けられた上側係合爪114UAおよび上側係合爪114UBならびに下辺114CDに設けられた下側係合爪114DAおよび下側係合爪114DBが挿入される。
【0028】
このスライド穴120HAおよびスライド穴120HBには、
図3(B)に示すように、係合爪が係合してその位置が固定される溝を、上側に3箇所、下側に3箇所、それぞれ備える。より具体的には、スライド穴120HAに上側係合爪114UAが係合して固定される上側係合溝122UAを3箇所および下側係合爪114DAが係合して固定される下側係合溝122DAを3箇所、ならびに、スライド穴120HBに上側係合爪114UBが係合して固定される上側係合溝122UBを3箇所および下側係合爪114DBが係
合して固定される下側係合溝122DBを3箇所、それぞれ備える。また、溝の上下端にもこれらの溝と同じ形状の溝を備える。さらに、1つのスライド穴あたりの溝の個数は6個(上下端を含むと8箇所)に限定されるものではない。
【0029】
溝に係合爪が係合されると、それぞれの溝の位置で係合爪が固定されることにより、後述するように上下を接近させるようにたわませた中央枠体114Cの形状を保持されて右枠体114Rと左枠体114Lとが接近された状態を保持してヘッドレスト本体110の左右端の長さを調整することができる。なお、係合爪と溝とは、このヘルメット10を着用する前に着用者が手で中央枠体114Cの上辺114CUおよび下辺114CDをつまんで上辺114CUと下辺114CDとを接近させたり離隔させたりすることができ、かつ、溝に係合爪が係合されているときには容易に係合爪が溝から外れないようにその素材および形状が設定されている。
【0030】
なお、この溝の左右側にはスライド壁124Aおよびスライド壁124Bが立設され、これらの溝の間にはスライド壁124Cが立設されている。これらのスライド壁の高さは、係合爪が保持部120の溝から飛び出た高さ以上で設けられ、保持部120にワイヤー保持機構130を被せても係合爪が溝内でスライドできるように形成されている。
以上のような構成を備えるヘッドレスト100の長さ調整機能について
図4を参照して説明する。
【0031】
図4(A)は、中央枠体114Cの上辺114CUと下辺114CDとが最も離隔した状態を示し、
図4(D)は、中央枠体114Cの上辺114CUと下辺114CDとが最も接近した状態を示し、
図4(B)および
図4(C)はそれらの中間状態をそれぞれ示す。さらに詳しくは、
図4(A)が
図3(B)に対応し、
図4(B)が
図3(B)において上側の係合爪が上から一番目の溝に係合かつ下側の係合爪が下から一番目の溝に係合している状態に対応し、
図4(C)が
図3(B)において上側の係合爪が上から二番目の溝に係合かつ下側の係合爪が下から二番目の溝に係合している状態に対応し、
図4(
D)が
図3(B)において上側の係合爪が上から三番目の溝に係合かつ下側の係合爪が下から三番目の溝に係合している状態に対応している。なお、以下の説明においては、N=M(N、Mはともに自然数)とした上で上側の係合爪が上からN番目の溝に係合し下側の係合爪が下からM番目の溝に係合するとして説明するが、N≠Mであっても構わない。
【0032】
図4(A)に示す状態から、着用者が手で中央枠体114Cの上辺114CUおよび下辺114CDをつまんで上辺114CUと下辺114CDとを一段階接近させると、すなわち、溝上端の溝に係合している上側の係合爪を上から一番目の溝に係合させ替えて、かつ、溝下端の溝に係合している下側の係合爪を下から一番目の溝に係合させ替えると、
図4(B)に示す状態に移行する。このとき、中央枠体114Cの上辺114CUと下辺114CDとがたわませられて接近して中央枠体114Cの上辺114CUと下辺114CDとの距離(ここでは上側係合爪114UAと下側係合爪114DAとの距離または上側係合爪114UBと下側係合爪114DBとの距離とした)である長さがH(1)からH(2)へ短くなるとともに、右枠体114R(の右側端)と左枠体114L(の左側端)との距離である長さL(1)からL(2)へ短くなる。
【0033】
さらに、
図4(B)に示す状態から、着用者が手で中央枠体114Cの上辺114CUおよび下辺114CDをつまんで上辺114CUと下辺114CDとをさらに一段階接近させると、すなわち、上から一番目の溝に係合している上側の係合爪を上から二番目の溝に係合させ替えて、かつ、下から一番目の溝に係合している下側の係合爪を下から二番目の溝に係合させ替えると、
図4(C)に示す状態に移行する。このとき、中央枠体114Cの上辺114CUと下辺114CDとがたわませられて接近して中央枠体114Cの上辺114CUと下辺114CDとの距離である長さがH(2)からH(3)へ短くなると
ともに、右枠体114R(の右側端)と左枠体114L(の左側端)との距離である長さL(2)からL(3)へさらに短くなる。
【0034】
さらに、
図4(C)に示す状態から、着用者が手で中央枠体114Cの上辺114CUおよび下辺114CDをつまんで上辺114CUと下辺114CDとをさらに一段階接近させると、すなわち、上から二番目の溝に係合している上側の係合爪を上から三番目の溝に係合させ替えて、かつ、下から二番目の溝に係合している下側の係合爪を下から三番目の溝に係合させ替えると、
図4(D)に示す状態に移行する。このとき、中央枠体114Cの上辺114CUと下辺114CDとがたわませられて接近して中央枠体114Cの上辺114CUと下辺114CDとの距離である長さがH(3)からH(4)へ短くなるとともに、右枠体114R(の右側端)と左枠体114L(の左側端)との距離である長さL(3)からL(4)へさらに短くなる。
【0035】
また、係合爪を上述とは逆にスライドさせると、中央枠体114Cの上辺114CUと下辺114CDとのたわみが緩められて離隔して中央枠体114Cの上辺114CUと下辺114CDとの距離である長さHが長くなるとともに、右枠体114R(の右側端)と左枠体114L(の左側端)との距離である長さLが長くなる。
このようにして、ヘッドレスト本体110を可撓性を備え、かつ、ある程度の強度を備えたプラスチック樹脂の薄い枠体で構成して、中央枠体114Cの上辺114CUと下辺114CDとを接近させるようにたわませることにより右枠体114Rと左枠体114Lとを接近させてヘッドレスト本体の左右端の長さを調整することができる。このサイズ調整機能は、上述したように簡易な構成で、かつ、上述した通り簡単な手順でユーザが調整することができるともに、たわむようにして上下に接近/離隔する中央枠体114Cも(右枠体114Rおよび左枠体114Lとともに)着用者の後頭部に当接するためにヘッドレスト100が広い面積で着用者の後頭部に当接して十分な安定性を確保できて、自転車用ヘルメットを着用するユーザにとって快適な装着感が得られる。
【0036】
以上のようにして、本実施の形態に係るヘッドレスト100を備えた自転車用ヘルメット10によると、ヘッドレスト100がサイズ調整機能を備えるために自転車用ヘルメット10を着用するユーザにとって快適な装着感を提供することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0037】
たとえば、変形として以下のような態様が考えられる。保持部として、中央枠体114Cの上辺114CUおよび下辺114CDの互いの辺が対向する面に貫通するねじ穴を設けて(一方は右ねじで他方は左ねじ)それらのねじ穴を全ねじで連結して、全ねじを回転させることにより上辺114CUと下辺114CDとを接近させたり離隔させたり、ねじの螺合によりその位置で保持させたりするようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、自転車用ヘルメットを着用するユーザにとって快適な装着感を提供することのできる自転車用ヘルメットに好適であり、ヘッドレストがサイズ調整(アジャスター)機能を備える点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0039】
10 自転車用ヘルメット
20 ヘルメット本体
100 ヘッドレスト
110 ヘッドレスト本体
120 保持部
130 ワイヤー保持機構
140 ダイヤル