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▶ カミング、ジェームス スチュアートの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020027850
(22)【出願日】2020-02-21
(62)【分割の表示】P 2016535152の分割
【原出願日】2014-12-29
(65)【公開番号】P2020096922
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】14/143,612
(32)【優先日】2013-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/257,933
(32)【優先日】2014-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/921,782
(32)【優先日】2013-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516086543
【氏名又は名称】カミング、ジェームス スチュアート
【氏名又は名称原語表記】CUMMING,James Stuart
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】カミング、ジェームス スチュアート
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0313526(US,A1)
【文献】特表2017-500099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品と、
前記光学部品に接続されて縦方向に該光学部品を挟んで互いに反対側にある少なくとも2つのプレート型触覚部品と、を含む、眼内レンズであって、
前記各プレート型触覚部品は対向する横方向パドルを備え、
前記各プレート型触覚部品はさらに、
軟質構成要素と、
前記軟質構成要素に少なくとも部分的に埋め込まれた硬質フレームと、
該プレート型触覚部品を前記光学部品に接続する接続部分と、を備え、
前記硬質フレームは、前記硬質フレームの先端部分に少なくとも1つの開口を有し、前記開口の少なくとも一部分は、前記軟質構成要素の先端縁を越えて延在し、
前記硬質フレームの対向する横方向縁間で測定された前記硬質フレームの横断幅は、前記軟質構成要素の対向する横方向縁間で測定された前記軟質構成要素の横断幅よりも大きく、
前記硬質フレームは前記軟質構成要素の基端縁を越えて延在し、
前記接続部分は、前記光学部品に接続されている付属体と、前記付属体の横方向両端部から横方向に延在する第1のトーションバーおよび第2のトーションバーと、を含み、
前記第1のトーションバーおよび第2のトーションバーは、回転又は伸張可能であるように構成されている、眼内レンズ。
【請求項2】
光学部品と、
前記光学部品に接続されて縦方向に該光学部品を挟んで互いに反対側にある少なくとも2つのプレート型触覚部品と、を含む、眼内レンズであって、
前記各プレート型触覚部品は対向する横方向パドルを備え、
前記各プレート型触覚部品はさらに、
軟質構成要素と、
前記軟質構成要素に少なくとも部分的に埋め込まれた硬質フレームと、
該プレート型触覚部品を前記光学部品に接続する接続部分と、を備え、
前記硬質フレームは、前記硬質フレームの先端部分に少なくとも1つの開口を有し、前記開口の少なくとも一部分は、前記軟質構成要素の先端縁を越えて延在しかつ前記プレート型触覚部品を完全に貫通する開放空間であり、
前記硬質フレームの対向する横方向縁間で測定された前記硬質フレームの横断幅は、前記軟質構成要素の対向する横方向縁間で測定された前記軟質構成要素の横断幅よりも大きく、
前記硬質フレームは前記軟質構成要素の基端縁を越えて延在し、
前記接続部分は、前記光学部品に接続されている付属体と、前記付属体の横方向両端部から横方向に延在する第1のトーションバーおよび第2のトーションバーと、を含み、
前記第1のトーションバーおよび第2のトーションバーは、回転又は伸張可能であるように構成されている、眼内レンズ。
【請求項3】
前記軟質構成要素および前記光学部品は同じ材料を含む、請求項1または2に記載の眼内レンズ。
【請求項4】
前記軟質構成要素はシリコーンまたはアクリルを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【請求項5】
前記硬質フレームは前記軟質構成要素内で少なくとも縦方向及び横方向の両方に延在する、請求項1~のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【請求項6】
前記硬質フレームは、前記硬質フレームの先端部分に、前記開口を取り囲む閉ループを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【請求項7】
眼内レンズはさらに長尺状のスロットを備える、請求項1~のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【請求項8】
眼内レンズは、前記各プレート型触覚部品から前方に延在する少なくとも1つの前方突起をさらに備える、請求項1~のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【請求項9】
前記各プレート型触覚部品における対向する前記横方向パドルの外側横方向縁間で測定された横断幅は、前記光学部品の横断幅よりも広い、請求項1~のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【請求項10】
前記各プレート型触覚部品は、縦方向において硬質であり、横方向において軟質である、請求項1~のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【請求項11】
前記各プレート型触覚部品が、眼へ挿入されるのに十分に横方向において軟質である、請求項1~10のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【請求項12】
前記横方向パドルは前記光学部品を少なくとも部分的に取り囲んでいる、請求項1~11のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【請求項13】
前記各プレート型触覚部品が前記長尺状のスロットを備える、請求項に記載の眼内レンズ。
【請求項14】
前記眼内レンズは平面状をなすとともに、眼内レンズが眼に移植されるとき、前記光学部品は前記プレート型触覚部品の先端部に対して後方にアーチ形に曲がることが可能である、請求項1~13のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼に移植するための眼内レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
現在一般的に用いられている、白内障を治療するための外科的処置は、眼に眼内レンズ(IOL:intraocular lens)を移植することを含む。そのような処置では、白内障によって混濁した通常のヒトの水晶体が、一般に、IOLによって置き換えられる。
【0003】
ここ40年の間の白内障手術における多くの画期的な変化によって、患者の良好な治療結果を定期的に生み出す信頼性の高い外科的処置を生じた。現代の外科技術はまた、有能な外科医によって行われるときの手術を非常に安全なものにした。
【0004】
現在、処置はまた、光学的な矯正をもたらす適切な屈折力(power)を有するIOLを眼に挿入し得るため、近視、遠視または乱視を治療するための外科的手段であると考えられ得る。
【0005】
解決されるべき残りの問題のうちの1つは、(例えば、眼鏡またはコンタクトレンズを使用しない)術後の裸眼の遠方視力を、現在の状態よりも的確にすることである。その場合には、この処置は、裸眼視力に関する限り、水晶体手術を角膜手術に匹敵するものにし、一般的な外科的な白内障手術または透明水晶体(clear lens)の摘出を、屈折矯正術(refractive procedure)にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近になって、老眼を治療するためのレンズが開発された。多焦点型および調節型の2つのタイプがある。眼に入る光は、2つ以上の焦点を有するため、多焦点レンズを移植された患者は、1度に焦点が合う光が半分未満であるため、ハロー(halo)、グレア、霧視およびコントラスト感度の低下に問題がある。これらのレンズの多くは、これらの問題のために、外植される必要があった。近くを見ることによって毛様体筋が収縮すると前方に動くように設計された調節型レンズも発明されている。これらのレンズでの近方視力は、多焦点レンズでの近方視力ほど良好ではないが、多焦点レンズに関連付けられる問題を有しない。
【0007】
解決されるべき残りの問題のうちの2つは、術後の裸眼の遠方視力を現在の状態よりも的確にすること、および単焦点レンズを用いて優れた裸眼での遠方視力、近方視力、およびそれらの中間の視力(intermediate vision)をもたらすことである。そのため、これは、裸眼視力に関する限り、水晶体手術を角膜手術に匹敵するものにし、一般的な外科的な白内障手術または透明水晶体の摘出を、角膜の屈折矯正手術および角膜の老眼手術よりも安全かつ合併症の少ない屈折矯正術にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において説明する様々な実施形態は、他のレンズ設計と比較して、眼の光軸または視軸に沿った、より一貫性のある繰り返し可能かつ予測可能な個所に、より正確に、眼内レンズの光学部品を配置した眼内レンズ構造体を備え、これにより(例えば、眼鏡またはコンタクトレンズを用いない)術後の裸眼視力を、より予測可能にする。
【0009】
本開示は、例えば、折り畳み可能な光学部品に接続された硬質の触覚部品(haptics)を含む眼内レンズを説明している。折り畳み可能な光学部品を硬質触覚部品に適切に接続することによって、白内障手術の最中に空の水晶体嚢(capsular bag)へ移植した後に、毛様体筋の作用を受けるときに触覚部品が変形することを抑制することができる。本明細書において説明する様々な実施形態では、実質的に等しい長さの2つの硬質触覚部品は、眼の光軸または視軸に沿って、手術時に水晶体嚢に配置されたときにあったのと同じ位置に、レンズ光学部品を大体において置いておくように設計される。レンズは、水晶体嚢よりもわずかに長かったり、短かったりするように設計されてもよく、一平面上にあったり、湾曲していたり、角度が付けられたりするように設計されてもよく、これによりいくつかの実施形態における触覚部品は、製造時において、光学部品に対して5~40度の間で固定角度を有しており、水晶体嚢へ挿入する際にレンズ光学部品を前方または後方にアーチ形に曲げられる。
【0010】
従って、様々な実施形態は、軟質光学部品に接続された少なくとも1つの硬質触覚部品を有する非調節型眼内レンズに関する。硬質構造体は、縦方向において硬質であり、および横方向において軟質である。眼内レンズの縦方向長さは、眼への挿入前に、固定される。少なくとも1つの触覚部品は、レンズが単体として製造されるときには光学部品に直接接続されることができ、あるいは光学部品の短い延長部によって光学部品に間接的に接続されることができる。
【0011】
本明細書で説明する非調節型レンズの実施形態のいずれかにおいて、毛様体筋の力は、光学部品を例えば前方に動かすには不十分であってもよい。例えば様々な実施形態は、毛様体筋の運動によって触覚部品に対して光学部品を動かすことができるようにする任意の軟質の接続部(例えば、ヒンジ、トーションバーなど)を触覚部品と光学部品との間に有しない。
【0012】
縦方向に硬質の触覚部品は、軟質光学部品と同じ材料を含み、かつ一体形として製造でき、触覚部品は、その厚みおよびまたはその幅を増すことによって、硬質にされる。硬質触覚部品は、シリコーンまたはアクリルなどの光学部品の軟質材料に部分的にまたは完全に埋め込まれたシャーシ(またはフレーム)を有する、硬質構造体によって、硬質にされ得る。シャーシの硬質材料は、触覚部品を硬質にするようにかつ眼の水晶体嚢内にレンズを固定するように設計される。シャーシの先端横方向の側面から接線方向には内部シャーシが延在しており、固定は、内部シャーシに隣接する軟質ループ(開ループまたは閉ループ)を使用すること、および光学部品の直径の範囲内にオープンスペースを作ることの少なくとも一方により行われ得るか、あるいは光学部品の直径を越えて延在する閉ループにより行われ得る。ループは、硬質に構成されたり圧縮可能に構成されたりしてもよい。例えば、これらのループは、毛様体筋の収縮や線維化に関係なく、固定長さのままであるように構成されてもよい。
【0013】
上述したものを含む、本明細書で説明する眼内レンズの態様のいずれかにおいて、硬質構造体は、縦方向に延在する少なくとも1つの支柱(strut)を含み得る。特定の態様では、硬質構造体は、少なくとも1つの開放領域(例えば、1つ、2つ、または3つの開放領域)を形成するように、縦方向に延在する少なくとも1つの支柱を少なくとも部分的に取り囲む閉鎖構造体を含み得る。特定の態様では、ループ構造体は第1の幅および第2の幅を含み得る。第1の幅を、ループ構造体の先端部により近づけることができ、第1の幅を第2の幅よりも広くすることができる。特定の態様では、ループ構造体は、縦方向に延在する少なくとも1つの支柱の幅よりも狭い幅を有し得る。例えば、ループ構造体の幅は、縦方向に延在する少なくとも1つの支柱の幅の約25%未満および約5%超の少なくとも一方にすることができる(例えば、20%未満、15%未満、または10%未満にすることができる)。
【0014】
上述のものを含む、本明細書で説明する眼内レンズの態様のいずれかにおいて、硬質触覚部品は、他の箇所は硬質である触覚部品の先端部にT字形状の軟質フィンガーを有していてもよい。
【0015】
上述のものを含む、本明細書で説明する眼内レンズの態様のいずれかにおいて、硬質構造体は、プレート型触覚部品であるとし得る。プレート型触覚部品は、触覚部品の先端部および基端部のいずれかに配置される細いバーを含み得る。さらに、プレート型触覚部品は、細いバーの基端方向に開放領域を含み得る。
【0016】
上述のものを含む、本明細書の眼内レンズの態様いずれかにおいて、光学部品は、一平面上にあることができ、あるいは眼への挿入前の製造時において、後方にまたは前方に傾けて配置され得る。構造体はまた、毛様体筋の作用による変形に耐えることができる固定長さを有し得る。
【0017】
従って、本明細書で開示する様々な実施形態は、軟質光学部品と、光学部品に接続された少なくとも1つの触覚部品とを備える眼内レンズを有していてもよい。少なくとも1つの触覚部品は硬質構造体を備える。眼内レンズは縦方向長さが固定されている非調節型IOLを備える。
【0018】
様々な実施形態は、軟質光学部品と、光学部品に接続された少なくとも1つの触覚部品とを備える眼内レンズを有し、硬質触覚部品は軟質光学部品よりも硬質である。そのような実施形態では、眼内レンズは非調節型IOLを備えていてもよい。
【0019】
様々な実施形態は、眼内レンズを備え、その眼内レンズでは、軟質光学部品が同じ材料の触覚部品に接続されてもよく、触覚部品は、触覚部品の構造体を広げるか、厚くするか、または広げることと厚くすることとの組み合わせによって、硬質に構成されてもよい。いくつかの実施形態では、眼内レンズは全体的に同じ材料(例えば、アクリル)を含む。いくつかの実施形態では、眼内レンズはモノリス構造体を備える。
【0020】
上述の通り、本明細書で説明する非調節型レンズの実施形態のいずれかにおいて、毛様体筋の力は、光学部品を例えば前方に動かすには不十分であってもよい。例えば様々な実施形態は、毛様体筋の運動に応答して触覚部品に対して光学部品を動かすことができる任意の軟質の接続部(例えば、ヒンジ、トーションバーなど)を触覚部品と光学部品との間に有しない。
【0021】
本開示の特定の態様は、全ての距離における裸眼視力をもたらすように構成された非調節型の単焦点眼内レンズに関する。レンズは、触覚部品および半硬質アクリルを含む光学部品を有し、半硬質アクリルは、小さな切開を通して眼へ移植するために変形することができるが、眼内への移植後にその光学特性および物理的特性を取り戻すことができ、かつ毛様体筋や線維化によって力が加えられるときの変形に対して耐えることができる。
【0022】
本開示の特定の態様は、単焦点のアクリル光学部品と、光学部品に接続された少なくとも1つの半硬質のアクリル触覚部品とを有する眼内レンズに関する。眼内レンズは、固定縦方向長さ(例えば、術前および術後で同じ固定長さ)を有し得る。眼内レンズは、例えば、本明細書で説明する半硬質触覚部品を使用した眼内への移植後に、毛様体筋の収縮および弛緩、ならびに水晶体嚢内での線維化に関係なく、変形に対して耐え得る。眼内レンズは、小さな切開を通して眼へ挿入するために、元の構成から圧縮構成へ圧縮されるように十分に軟質であり、かつ眼内への移植後に、通常の形状(例えば、非圧縮形状)に戻ることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、上述の眼内レンズは、近距離、中間距離、および遠距離において裸眼視力をもたらすように構成され得る。
上述のものを含む、本明細書で説明する単焦点眼内レンズの態様のいずれかにおいて、光学部品は、少なくとも1つの触覚部品の先端部に対して固定角度で、後方に傾けて配置され得る。傾きは、眼内への移植後、変化しないままにすることができる。さらに、いくつかの実施形態では、ボールト角度(vault angle)は、眼内への移植後、変化しないままにすることができる。特定の態様では、少なくとも1つの触覚部品は、前方に傾けて配置され得る。特定の態様では、少なくとも1つの触覚部品は2つの触覚部品を含み、触覚部品の双方とも前方に傾けて配置され得る。特定の態様では、ボールト角度は約1度~約50度とすることができる。
【0024】
上述のものを含む、本明細書で説明する単焦点眼内レンズの態様のいずれかにおいて、半硬質触覚部品は、縦方向に延在する少なくとも1つの支柱を含み得る。特定の態様では、硬質構造体は、少なくとも1つの開放領域(例えば、1つ、2つ、または3つの開放領域)を形成するように、縦方向に延在する少なくとも1つの支柱を少なくとも部分的に取り囲む閉鎖構造体を含み得る。特定の態様では、ループ構造体は第1の幅および第2の幅を含み得る。第1の幅を、ループ構造体の先端部により近づけることができ、第1の幅を第2の幅よりも広くすることができる。いくつかの態様では、ループ構造体の幅は、少なくとも1つの縦方向に延在するストラットの幅よりも短いとし得る。例えば、ループ構造体の幅は、縦方向に延在する少なくとも1つの支柱の幅の約25%未満および約5%超の少なくとも一方にすることができる(例えば、20%未満、15%未満、または10%未満にすることができる)。
【0025】
上述のものを含む、本明細書で説明する単焦点眼内レンズの態様のいずれかにおいて、半硬質触覚部品は、他の箇所は半硬質である触覚部品の先端部に、T字形状の触覚部品を構成するように、圧縮可能な軟質の横方向フィンガーを有していてもよい。
【0026】
上述のものを含む、本明細書で説明する単焦点眼内レンズの態様のいずれかにおいて、半硬質構造体はプレート型触覚部品とし得る。プレート型触覚部品は、T字形状の触覚部品を形成する、軟質の薄い先端横方向フィンガーを含み得る。
【0027】
上述のものを含む、本明細書で説明する単焦点眼内レンズの態様のいずれかにおいて、半硬質触覚部品は、軟質光学部品よりも硬質であってもよい。光学部品は、その薄い外周において軟質であり、およびその中心において半硬質であることができるため、約3.0mm以下、好ましくは約2.5mm以下の長さを有する小さな切開を通して眼へ挿入される、縦方向に長尺状の構成に光学部品を折り畳むことができる。
【0028】
様々な実施形態では、眼内レンズは、非調節型IOLとし得る。特定の実施形態では、この非調節型IOLは、遠方視力、中間視力および近方視力をもたらすように設計される。特定の実施形態では、この非調節型IOLは、多焦点眼内レンズで経験されるグレア、ハローおよび霧視、およびコントラスト低下の問題なく、そのような視力をもたらす。
【0029】
上述のものを含む、本明細書で説明する単焦点眼内レンズの態様のいずれかにおいて、後方にアーチ形に曲げられた(vaulted)光学部品は、同じ半硬質材料の触覚部品に接続され、触覚部品は、その構造体を広げるか、厚くするか、または広げることと厚くすることとの組み合わせによって、より硬質に構成される。
【0030】
本開示のいくつかの態様は、単焦点光学部品と、光学部品に接続された少なくとも1つの半硬質触覚部品とを有する、非調節型眼内レンズに関する。光学部品は、術前に、少なくとも1つの触覚部品に対して固定角度で(例えば、後方に)アーチ形に曲げられ得る。光学部品は、移植後、アーチ形に曲げられたままとしてもよいし、いくつかの実施形態では、ボールト角度は、移植後、変化しないままにすることができる。半硬質触覚部品は、小さな切開を通して眼へ挿入するために圧縮されるように十分に軟質であり、および眼内への移植後に、通常の非圧縮形状を取ることができる。いくつかの実施形態では、レンズは、近距離、中間距離、および遠距離で、裸眼視力をもたらすように構成され得る。
【0031】
上述のものを含む、本明細書で説明する非調節型眼内レンズのいずれかにおいて、少なくとも1つの半硬質触覚部品は、前方に傾けて配置され得る。特定の態様では、少なくとも1つの半硬質触覚部品は2つの触覚部品を含み、触覚部品の双方とも前方に傾けて配置される。
【0032】
上述のものを含む、本明細書で説明する非調節型眼内レンズのいずれかにおいて、ボールト角度は、約1度~約50度、例えば約5度~約40度とすることができる。
上述のものを含む、本明細書で説明する非調節型眼内レンズのいずれかにおいて、光学部品および少なくとも1つの触覚部品は、同じ材料(例えば、アクリルまたはシリコーン)を含み得る。本開示の特定の態様は、少なくとも1つの触覚部品に接続された光学部品を有する非調節型眼内レンズの移植に関する。眼内レンズは、本明細書で説明する特徴のいずれかを有し得る。術前に、眼内レンズは、少なくとも1つの触覚部品に対して固定角度で、後方にアーチ形に曲げられ得る。眼内レンズは、小さな切開を通して眼に挿入するために、圧縮され得る。移植後、眼内レンズは、眼内の圧力変化、例えば適合しようとする毛様体筋に起因するか線維化に起因する眼内の圧力変化に耐えるのに十分な耐性を有する通常の非圧縮形状を取ることができる。移植後、眼内レンズは、アーチ形に曲がったままにすることができ、いくつかの実施形態では、同じ固定角度でアーチ形に曲がったままとしてもよい。
【0033】
本開示の特定の態様は、単焦点のアクリル光学部品と、光学部品に接続された少なくとも1つの触覚部品とを有する非調節型眼内レンズに関する。光学部品は、術前に、少なくとも1つの触覚部品に対して固定角度でアーチ形に曲げられ得る。光学部品は、移植後、アーチ形に曲がったままにすることができ、いくつかの実施形態では、ボールト角度は、移植後、変化しないままにすることができる。いくつかの実施形態では、眼内レンズは、近距離、中間距離、および遠距離で、裸眼視力をもたらすように構成され得る。
【0034】
上述のものを含む、本明細書で説明する非調節型眼内レンズのいずれかにおいて、少なくとも1つの触覚部品は前方に傾けて配置され得る。特定の態様では、少なくとも1つの触覚部品は前方に傾けて配置される2つの触覚部品を含み得る。
【0035】
上述のものを含む、本明細書で説明する非調節型眼内レンズのいずれかにおいて、ボールト角度は、約1度~50度、例えば約5度~約40度とすることができる。
上述のものを含む、本明細書で説明する非調節型眼内レンズのいずれかにおいて、光学部品および少なくとも1つの触覚部品は同じ材料を含み得る。
【0036】
本開示の特定の態様は、レンズ光学部品と、レンズ光学部品に結合された1対の対向するプレート型触覚部品とを備える調節型眼内レンズに関する。各プレート型触覚部品は、軟質構成要素に少なくとも部分的に埋め込まれた硬質フレームを含み得る。硬質フレームは、フレームの先端部分に沿っていくつもの開口を含み得る。開口のうちの少なくともいくつかの少なくとも一部分は、軟質構成要素の先端縁を越えて延在し得る。硬質フレームの対向する横方向縁間で測定された硬質フレームの横断幅は、軟質構成要素の対向する横方向縁間で測定された軟質構成要素の横断幅よりも広くすることができる。硬質フレームは、軟質構成要素の基端縁を越えて延在し得る。
【0037】
上述のものを含む、本明細書で説明する調節型眼内レンズのいずれかにおいて、各プレート型触覚部品は、光学部品に接続された接続部分を含み得る。接続部分は、光学部品に接続された短い付属体と、短い付属体から横方向に延在する少なくとも1つの接続バーとを含み得る。少なくとも1つの接続バーは、第1の接続バーおよび第2の接続バーを含み得る。第1および第2の接続バーは、短い付属体の対向する両側面から横方向に延在し得る。
【0038】
上述のものを含む、本明細書で説明する調節型眼内レンズのいずれかにおいて、各プレート型触覚部品は長尺状のスロットを含み得る。
上述のものを含む、本明細書で説明する調節型眼内レンズのいずれかにおいて、各プレート型触覚部品は、前記プレート型触覚部品から前方に延在する少なくとも1つの前方突起を含み得る。
【0039】
上述のものを含む、本明細書で説明する調節型眼内レンズのいずれかにおいて、各プレート型触覚部品は、対向する横方向パドルを含み得る。同じ触覚部品の対向するパドルの外側横方向縁間で測定された横断幅は、光学部品の横断幅よりも大きくすることができる。
【0040】
本開示の特定の態様は、レンズ光学部品と、レンズ光学部品に結合された1対の対向するプレート型触覚部品とを備える調節型眼内レンズに関する。各プレート型触覚部品は、いくつもの開口を有する硬質フレームを含み得る。
【0041】
上述のものを含む、本明細書で説明する調節型眼内レンズのいずれかにおいて、硬質フレームは軟質構成要素に少なくとも部分的に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、硬質フレームはフレームの先端部分に沿っていくつもの開口を含み得る。様々な実施形態では、開口のうちの少なくともいくつかの少なくとも一部分のある程度は、軟質構成要素の先端縁を越えて延在し得る。いくつかの実施形態では、硬質フレームは軟質構成要素の基端縁を越えて延在する。
【0042】
上述のものを含む、本明細書で説明する調節型眼内レンズのいずれかにおいて、硬質フレームの対向する横方向縁間で測定された硬質フレームの横断幅は、軟質構成要素の対向する横方向縁間で測定された軟質構成要素の横断幅よりも広い。
【0043】
上述のものを含む、本明細書で説明する調節型眼内レンズのいずれかにおいて、各プレート型触覚部品は光学部品に接続された接続部分を含み得る。接続部分は、光学部品に接続された短い付属体と、短い付属体から横方向に延在する少なくとも1つの接続バーとを含み得る。少なくとも1つの接続バーは第1の接続バーおよび第2の接続バーを含み得る。第1の接続バーおよび第2の接続バーは、短い付属体の対向する側面から横方向に延在し得る。
【0044】
上述のものを含む、本明細書で説明する調節型眼内レンズのいずれかにおいて、各プレート型触覚部品は長尺状のスロットを含み得る。
上述のものを含む、本明細書で説明する調節型眼内レンズのいずれかにおいて、各プレート型触覚部品は、前記プレート型触覚部品から前方に延在する少なくとも1つの前方突起を含み得る。
【0045】
上述のものを含む、本明細書で説明する眼内レンズのいずれかは、第1のプレート型触覚部品および第2のプレート型触覚部品を含むことができ、第1のプレート型触覚部品は、光学部品と第1のプレート型触覚部品との間がゼロではない第1の設定角度で光学部品に結合され、第2の触覚部品は、光学部品と第2のプレート型触覚部品との間がゼロではない第2の設定角度で光学部品に結合され、ゼロではない第2の角度は、ゼロではない第1の角度とは異なる。様々な実施形態では、レンズが眼の水晶体嚢に配置されるときに、光学部品の上半球が、12時の位置であって、下半球に対して後方に位置決めされるように、レンズは構成される。いくつかの実施形態では、上半球は、遠方視力用に光をフォーカスするように構成される。特定の実施形態では、ゼロではない第1の角度は、10度以上かつ50度以下である。同様に、特定の実施形態では、ゼロではない第2の角度は、少なくとも約20度かつ約50度以下である。
【0046】
また、上述のものを含む、本明細書で説明する眼内レンズのいずれかにおいて、光学部品は、増大する屈折力勾配を含む累進屈折力レンズであってもよく、例えば眼へ移植された時に、光学部品の上半球において遠方視力をもたらし、光学部品の下半球において近方視力をもたらしてもよい。
【0047】
多種多様な変形例が可能である。例えば、本明細書で開示される任意の特徴、構造体、またはステップは、本明細書で開示される任意の他の特徴、構造体、またはステップと置き換えられるか、組み合わせられるか、または省略されることができる。さらに、本開示を要約するために、本明細書では、本発明の特定の態様、利点、および特徴を説明した。本明細書で開示する本発明の任意の特定の実施形態に従って、必ずしも、いずれかのまたは全てのそのような利点が達成されるわけではないことを理解されたい。本開示の態様は、必須でも、または不可欠でもない。
【0048】
様々な実施形態は、説明のために添付の図面に示されており、実施形態の範囲の限定であるとは何ら解釈されない。さらに、異なる開示の実施形態の様々な特徴は、本開示の一部である追加的な実施形態を構成するために組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】後方にアーチ形に曲げられ得る光学部品と、1つの材料として例えばアクリルを含む一体形の触覚部品とを備える、ループ(例えば開ループ)を有する非調節型レンズを示す。触覚部品は、伝統的なループ型触覚部品よりも幅が広く、平坦に製造され得る。
図2】全て一体形に作製された小さな固定ループを有するプレート型触覚部品の非調節型眼内レンズ(NAIL:non-accommodating intraocular lens)を示す。光学部品は、後方にアーチ形に曲げられ得る。
図3】T字形状の軟質の先端横方向延長部を有する、単一の硬質の縦方向構造体を備える触覚部品の実施形態を示す。
図4】光学部品と同じ軟質材料に埋め込まれたシャーシを有する非調節型眼内レンズ(NAIL)を示す。
図5図4と同じであるが、固定ループがない図である。
図6】細い横断バーによって接続され、囲まれたオープンスペースを作る、2つの露出した硬質の縦方向プレートまたは支柱と、水晶体嚢中へのレンズの固定を容易にする固定ループ(例えば開ループ)と、を有する別のNAILを示す。固定が、細い横断バー9にわたって生じ得るため、レンズは軟質フィンガーなしで設計されてもよい。細いアーム9の幅は、縦方向プレートまたは支柱7の幅よりも短くすることができる。
図7】細い横断バーによって接続された縦方向プレートまたは支柱を有するが、固定ループのない、さらに別のNAILを示す。
図8】硬質触覚部品の二ループ型構造体を有する触覚部品の別の実施形態を示す。
図9A】三ループ型構造体を有する硬質触覚部品の眼内レンズを示し、3つのループ(例えば閉ループ)は、光学部品と同じ軟質材料で部分的に被覆されている。
図9B】三ループ型構造体を有する硬質触覚部品の眼内レンズを示し、3つのループ(例えば閉ループ)は、光学部品と同じ軟質材料で部分的に被覆されている。
図9C】三ループ型構造体を有する硬質触覚部品の眼内レンズを示し、3つのループ(例えば閉ループ)は、光学部品と同じ軟質材料で部分的に被覆されている。
図9D】三ループ型構造体を有する硬質触覚部品の眼内レンズを示し、3つのループ(例えば閉ループ)は、光学部品と同じ軟質材料で部分的に被覆されている。
図10】後方にアーチ形に曲げられている、眼内レンズの光学部品の側面図を示す。
図11】前方にアーチ形に曲げられた眼内レンズの光学部品の側面図を示す。
図12A】共通平面に配置された触覚部品を有する眼内レンズの側面図を示す。
図12B】伸張された「z字」形状に構成された光学部品および触覚部品を備えるレンズを示す概略図である。
図12C】光学部品の傾きによって、網膜上でどのように遠距離、近距離、および中間距離の焦点を合わせ得るかを示す概略図である。
図13】水晶体嚢に移植された眼内レンズの概略図を示す。
図14A】閉ループ型触覚部品を有する調節型眼内レンズの実施形態の概略図を示す。
図14B】閉ループ型触覚部品を有する調節型眼内レンズの実施形態の概略図を示す。
図14C】閉ループ型触覚部品を有する調節型眼内レンズの実施形態の概略図を示す。
図14D】閉ループ型触覚部品を有する調節型眼内レンズの実施形態の概略図を示す。
図15】単一の厚みのある硬質の縦方向の触覚部品構造体を有する触覚部品の実施形態を示し、触覚部品構造体は前方に傾けて配置されたまたはアーチ形に曲げられ、T字形状の軟質の先端横方向延長部を有している。
図16】細い横断バー9によって接続された、2つの厚みのある硬質の縦方向プレートまたは支柱7を有する別のレンズ設計を示し、これにより囲まれたオープンスペース12(例えば閉ループ)を作り出し、軟質の薄い先端横方向フィンガー6と一緒に水晶体嚢中へのレンズの固定を容易にする。固定が細い横断バー9にわたって生じ得るため、レンズは軟質フィンガーなしで設計されてもよい。細いアーム9の幅は、縦方向プレートまたは支柱7の幅よりも短くすることができる。
図17】約3.0mm未満の幅を有する厚みのある縦方向の中心プレート20を有するレンズ設計であり、プレート20は水晶体嚢にレンズを固定するために2つのオープンスペース22をもたらす2つの閉ループ21を有する。
図18A】横方向部材(またはパドル)30を有する触覚部品1を備えるレンズの半分を示す。触覚部品1は光学部品2よりも幅を広くすることができ、横方向部材30のチップ31は、移植後、光学部品に対して後方にあるように設計され得る。触覚部品1は閉ループ12を構成する。
図18B】横方向部材30を有する触覚部品1を備えるレンズの半分を示す。触覚部品1は、フィンガー様の軟質の横方向延長部6によって光学部品よりも幅広にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
多くの眼内レンズは、ヒト水晶体の空の水晶体嚢(capsular bag)においてレンズを中心に設置して固定する働きをする2つ以上の軟質の触覚部品に接続された光学部品を有する。これらの触覚部品は、2つの軟質ループによって形成され得る。
【0051】
自律神経系の一部でありかつ一生を通じて活動する、眼の内側にある円形の毛様体筋は、眼の焦点を変化させる活動に携わっている。標準的なループ型眼内レンズを移植された患者が、白内障手術後の術後早期に見ようとするとき、依然として活動している毛様体筋が(例えば、レンズの縦方向における)終端間圧力を加え、この圧力は軟質ループに作用して軟質ループを水晶体嚢内で前方、後方、中心や周辺に向けて動かす。この動きによって、水晶体嚢内においてレンズの位置をシフトさせ得る。またこの時期には線維化が生じ、ループが手術時に配置された水晶体嚢の盲嚢(cul-de-sac)に固定されることには必ずしもならない。その代わりに、ループは、例えば、水晶体嚢の盲嚢と光学部品との間のどこかにはめられ得る。水晶体嚢内で触覚部品のループの位置を変えることによって、レンズ光学部品の位置も眼の軸に沿って変更でき、光学部品の偏芯および傾斜を生じ得る。いくつかの軟質ループ設計では、製造時の薄くて軽い(flimsy)軟質ループは、水晶体嚢の直径の10mmよりも著しく長く(例えば、12mmの長さまで)、水晶体嚢壁を通して作用して、毛様体筋に作用してもよい。触覚部品は、薄くて軽くすることができ、術後早期に触覚部品へ加えられる圧力によって簡単に変形され得る。それゆえ、レンズの位置は計算され予測されるであろう位置にはない。従って、(例えば眼鏡またはコンタクトレンズを使用しない)裸眼での遠方視力および術後の屈折力は、手術前に期待されるであろうものではない。場合によっては、レンズのループは、レンズ光学部品の前方または後方に位置するように中心に圧縮されている。
【0052】
本明細書で説明する様々な実施形態は、他のレンズ設計と比較して、眼の光軸または視軸に沿った、より一貫して繰り返し可能かつ予測可能な個所に、より正確に、眼内レンズの光学部品を配置する眼内レンズ構造体を備え、これにより(例えば、眼鏡またはコンタクトレンズを用いない)術後の裸眼視力をより予測可能にする。
非調節型レンズ
例えば、図1図4に示す眼内インプラントを参照する。眼内インプラントは、光学部品2と、対向する硬質の触覚部品1(例えば、プレート型触覚部品)とを備え、選択的に軟質ループ横方向延長部6(例えば開ループ)を有する(図3および図4参照)。ただし図4図8では2つの触覚部品のうちの1つのみを示す。触覚部品1は、光学部品2に直接接続されるか(図1および図2参照)、光学部品2の短くて厚みのある硬質延長部3に(図3図8参照)接続されることができ、製造時に単体(例えば、モノリス)として構成され得るか、別個に形成されて一体に接続されることができる。短い延長部3は、光学部品2と同じ材料から作られ得る。さらに、短い硬質延長部3は、光学部品2と一体成形されるか、光学部品2とは別個に形成されることができる。接続を容易にするために、触覚部品の硬質構成要素を通る孔8が作られ、製造プロセスの最中、それらの孔を通して、軟質構成要素103または硬質延長部3は溶け合って一体となることができる(図3図8参照)。短くて厚みのある硬質延長部3は、光学部品2の外周上に侵入することなく光学部品2と触覚部品1との間の接続を容易にするために所望されてもよい。
【0053】
光学部品2は実質的に透明な生体適合性のある軟質光学材料、例えばアクリル、ヒドロゲル、またはシリコーンを含んでもよく、光学部品2は、両凸、平凸、凹/平、円環、非球面、または球面のフレネル型多焦点あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。光学部品2は、増大する屈折力勾配を含む累進屈折力レンズであってもよく、例えば眼へ移植された時に光学部品の上半球において遠方視力をもたらし、光学部品の下半球において近方視力をもたらしてもよい。光学部品2は、眼内の第2の光学部品と組み合わせて使用されてもよい。
【0054】
触覚部品1は、硬質でありかつ毛様体筋の作用による変形に対して耐性があるように設計され得る。特に、触覚部品は、曲がることなく、毛様体筋によって縦方向に与えられた圧力に対して耐性を有していてもよい。伝統的に、非調節型および調節型レンズと一緒に使用される軟質の触覚部品とは異なり、硬質触覚部品1は、圧縮に対して耐性があるため、硬質触覚部品1は、心取り(centration)をより容易にし、光学部品を眼の軸に沿ってより一貫した位置への配置を実現する。
【0055】
図1に示すように、いくつかの実施形態では、触覚部品1は開ループを含み得る。いくつかの触覚部品1は、1つ以上の閉ループを含み得る(下記でより十分に説明される図6図9も参照する)。
【0056】
図1は、一体形として例えばアクリルから製造されたレンズを示し、光学部品2が硬質触覚部品1のような湾曲した開ループと隣接している。これらの全てのレンズ設計と同様に、レンズが一平面上にあってもよく、あるいは光学部品2は、手術時に後方または前方にアーチ形に曲がってもよい。
【0057】
図2は、硬質のプレート状の触覚部品構造体4’および小型の先端固定フィンガー5を有する、1つの材料(例えば、アクリル)で製造されたレンズを示す。
図3は、単一の硬質の縦方向構造体11を有し、この構造体11と軟質の先端横方向延長部6とでT字形状を構成する触覚部品1の実施形態を概略的に示し、硬質の縦方向構造体11は、光学部品2の短くて厚みのある延長部3に取り付けられるか、光学部品2に接続されている。
【0058】
図4および図5は、2つの硬質の支柱/プレート101と、2つの支柱/プレート101の間の(その基端部における)基端横断接続バー102を含むシャーシ104を備える触覚部品1を示す。軟質光学材料103に埋め込まれているシャーシ104は、図4においては、外部先端固定フィンガー6を有する。
【0059】
図6は、2つの硬質支柱/プレート7を含む触覚部品1を示し、硬質支柱/プレートは、ノブのような末梢端部10を備えるフィンガー様の延長部6を備え、製造プロセスの最中に、基端方向において光学部品2の厚い硬質延長部3に埋め込まれるか、孔8を通して軟質材料が溶け合って一体となることによって、光学部品に固着されて接続される。2つのプレート7は、細い横断クロスバー9によって先端において接続される。2つの硬質支柱/プレート7および横断クロスバー9は、横断クロスバー9と光学部品2との間に縦方向にオープンスペースを形成する。
【0060】
図7は、支柱/プレート7、バー9および厚い硬質延長部3によって囲まれたオープンスペース12を通して線維組織を形成するように細い先端接続バー9の上側を覆って前嚢および後嚢を融合することによって、軟質フィンガー6なしで水晶体嚢内への固定が達成されることを除いて、図6と同様である。3.0mm以下の切開を通して挿入されるように圧縮されるためにレンズを縦方向に折り畳むことができるように、各支柱の幅は1.0~3.0mmとすることができる。
【0061】
図8は、単一のプレート20を含む触覚部品1を示し、このプレート20の両側面のそれぞれには2つの硬質閉ループ21が取り付けられ、水晶体嚢が線維組織を形成して、レンズ触覚部品1を水晶体嚢内に固定できる2つの囲まれた空間22または開口を提供する。
【0062】
図10図11、および図12Aは、レンズの考えられる側面図を示し、レンズは、後方にアーチ形に曲げられる(図10)ことができ、前方に(図11)アーチ形に曲げられることができ、一平面上に(図12A)あることができる。図10および図11は、移植時に触覚部品の先端部に対して、それぞれ後方および前方にアーチ形に曲げられた光学部品を示す。図10に示すこのレンズは、例えば、移植する際にアーチ形に曲げられる、本明細書で説明するような一平面上の調節型レンズを含んでいてもよい。本明細書で説明するように、図10に示すこのレンズはまた、焦点深度を増大させるために、光学部品に対して触覚部品を(例えば、前方に)傾けて配置させるように製造されてもよい。光学部品が触覚部品の先端部に対して後方にアーチ形に曲げられる際に、光学部品は、焦点深度を増大させるのに好適な位置を取り得てもよい。
【0063】
図12Bに示すような他の実施形態では、触覚部品のそれぞれは、レンズが外側に伸ばされたz形状を形成するように、異なる方向に傾けて配置するか固定することができ、例えば光学部品に対し、例えば第1の触覚部品は前方向に傾けて配置するか固定することができ、第2の触覚部品は後方向に傾けて配置するか固定することができる。触覚部品のそれぞれは光学部品に対してゼロではない角度で傾けて配置するか固定することができる。第1の触覚部品はゼロではない第1の角度で傾けて配置するか固定することができ、第2の触覚部品は、ゼロではない第1の角度とは異なるゼロではない第2の角度で傾けて配置するか固定することができる。触覚部品が異なる方向に傾けて配置される状態で、光学部品を図12Cに示すように傾斜させることができるので、レンズが水晶体嚢内に配置されるときに、光学部品の上半球が後方に傾けて配置され、光学部品の下半球が前方に傾けて配置される。この構成では、眼へ移植された時、上半球は遠方視力を向上させるように位置決めされ得る一方、下半球は近方視力を向上させるように位置決めされ得る。そのような傾いた配置は、米国特許出願公開第2014/0172093A1号明細書として公開されている米国特許出願第13/953,605号明細書(代理人整理番号CORD.005C1)において説明されており、その全体を本願明細書に援用する。
【0064】
図13は、水晶体嚢内の非調節型眼内レンズ100の概略図を示す。前嚢縁50、後嚢51、および内部が水晶体嚢の盲嚢である前嚢縁52が示されている。
上述のレンズは、縦方向には硬質であるが横方向には軟質である硬質触覚部品1(例えば、プレート型触覚部品)に接続された軟質光学部品2を有するように設計されるため、レンズは、3.0mm以下の切開を通して眼に挿入されるべき挿入装置へと圧縮され得る。触覚部品1は、毛様体筋の作用および線維化によって加えられる圧力を受けるとき、縦方向における曲がりを防止するように十分に硬質である。シャーシ104の細い横断接続バー9は、存在するとき、縦軸の周りでレンズを折り畳んで圧縮することができるように軟質である。
【0065】
様々な実施形態では、レンズ100の全長Dは、レンズ100の両側にある固定横方向ループ6のチップから対角線上に測定するとき、約9.5mm~約14.0mmであってもよい。例えば、図3および図13を参照する。対角線の距離Dは、光学部品2の中心を通って延在する。レンズ100の縦方向長さL(図3および図13にも示す)は、平均的な水晶体嚢の少なくとも直径とすることができる。例えば、レンズ100の縦方向長さは、約9.5mm~約12.0mmとすることができ、好ましい長さは、様々な実施形態では、約10.5mmであり、この長さは、特定の実施形態において平均的な水晶体嚢の直径よりもわずかに長い。レンズ100の長さが約10.5mm以下であるとき、レンズ100は、水晶体嚢を変形させず、毛様体筋に作用しない。
【0066】
軟質光学部品2から延在する触覚部品の構成要素3は、いくつかの実施形態では、1mm未満のその短い長さかつ1mm超の厚さによって、硬質に構成され、構成要素3の少なくとも一部には、アクリル、シリコーンまたは他の不活性の軟質材料、および硬質構成要素、ポリイミド、アクリルまたは他の硬質材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、軟質材料103内に埋め込まれた硬質材料104の組み合わせによることを条件として、触覚部品1が縦方向に硬質に構成されてもよい。硬質支柱およびプレート7の少なくとも一方は、触覚部品1を縦方向に硬質にするように、ポリイミド、プロリーン(prolene)、あるいはナイロン、PMMAチタニウム、他の硬質材料、または不活性材料の任意の誘導体、あるいは硬質材料と軟質材料との組み合わせを含んでいてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、眼内レンズは、少なくとも1つの(例えば、2つ、3つ、またはそれよりも多い)半硬質触覚部品と、光学部品とを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの半硬質触覚部品および光学部品は、同じ材料(例えば、アクリル)を含み得る。いくつかの実施形態では、眼内レンズは、モノリスまたは単体とすることができる。半硬質触覚部品および光学部品は、光学部品を小さな切開を通して眼に挿入するために、折り畳み可能であってもよい。しかし、挿入してその形状を取り戻した後、毛様体筋の収縮および弛緩によって生じかつ術後の線維化の最中に生じる力により起こる眼内の圧力変化に耐えるのに十分な抵抗性を有する。2つの半硬質触覚部品の長さを等しくすることができる。毛様体筋の作用および線維化による変形に対する耐性は、レンズ光学部品を、手術時に空の水晶体嚢に配置されたときのように、眼の光軸または視軸に沿って実質的に同じ位置に残す。例えば最適な焦点深度を達成するために、レンズは水晶体嚢よりもわずかに長くなるか短くなるように設計されてもよく、触覚部品(例えば、触覚部品の先端部)は、製造時に、約1度~50度、例えば約5度~約40度(例えば、約5度~約20度、約10度~約25度、または約15~約40度)の間の固定角度で、光学部品に対して角度が付けられていてもよい。これにより、水晶体嚢へ挿入する際に、レンズ光学部品が触覚部品の先端部に対して後方位置に位置決めされる。
【0068】
様々な実施形態は、光学部品が触覚部品の先端部に対して後方に傾けて配置されるまたはアーチ形に曲げられる状態で、一体形に製造された光学部品を有する非調節型眼内レンズに関し、傾きの角度またはボールト角度は、両光学部品/触覚部品接合部において同じであってもよい。半硬質レンズ構造体は、毛様体筋および線維化による変形に対して耐え得るが、4.0mm未満の切開を通して眼の水晶体嚢に挿入されるようにするために、縦方向に折り畳むことができる。
【0069】
レンズの縦方向の全長は約9.5~約12mmとすることができ、その長さは水晶体嚢よりもわずかに長くてもよく、好ましくは約10.5mmとしてもよい。レンズ100の長さが約10.5mm以下であるとき、レンズ100は、水晶体嚢を変形させず、毛様体筋に作用しない。
【0070】
両半硬質触覚部品は同じ長さとすることができる。光学部品の直径は、4.0~8mmとすることができ、薄い中心の厚さは約0.2~約2.0mmとすることができる。半硬質材料は毛様体筋および線維化による変形に対して耐えるため、触覚部品は著しくは変形できず、それゆえレンズ光学部品は、術後に、手術時にあった位置と同じ位置にある。同様に、術後における眼内レンズの向きは、眼の軸に沿って、かつ円環レンズが移植されるべき回転軸上において、術前と同じとすることができる。これにより、眼の視軸に沿った、術後の有効レンズ位置(ELP:effective lens position)の予測可能性をより正確にし、それゆえ裸眼視力はより予測可能になる。眼内レンズの縦方向長さは眼に挿入される前に固定でき、例えば眼内レンズの縦方向長さは術前および術後で同じとすることができる。しかし、レンズが薄くて軟質の先端横方向フィンガーを有して、縦径よりも長い横径を生じさせてもよい。これらの軟質フィンガーは、水晶体嚢内にレンズを固定し、かつ円環光学部品がレンズ設計の一部であるときにレンズの回転を防止するように設計され得る。
【0071】
上述の通り、縦方向の硬質触覚部品は、軟質光学部品と同じ材料を有することができ、一体形として製造され得る。半硬質触覚部品は、その厚さおよびその幅の少なくとも一方を増すことによって、より硬質に構成され得る。固定は、プレート型触覚部品設計の先端横方向の側面から接線方向に延在するレンズ本体と連続する軟質ループ(開ループまたは閉ループ)を使用すること、または触覚部品の直径の範囲内にオープンスペースを作ることによって、ならびに光学部品の直径を越えて延在する閉ループの少なくとも一方によって行われ得る。半硬質材料のループは、軟質で圧縮できるように薄くてもよいが、毛様体筋からの力を受けるときにレンズの長さを維持するのに十分に硬質であってもよい。
【0072】
しかしながら、本明細書に開示する様々な実施形態は、上述の問題に対処し得る。例えば、図15に示す眼内インプラントを参照する。眼内インプラントは、光学部品2と、対向する前方に傾けて配置される半硬質触覚部品1とを含み、半硬質触覚部品1は、軟質ループ横方向延長部6(例えば開ループ)を有する曲げ接合部4において光学部品に直接接続される。図16図18では、レンズの2つの半体のうちの一方のみを示す。レンズは二回転対称を有することができ、他方の半体が図示のものと同じである。短い光学部品延長部3は、光学部品2と触覚部品1との間に硬質曲げ接合部4を有し得る。光学部品2および触覚部品1は、同じ材料(例えば、アクリル)から作られ得る。短い光学部品延長部3は、触覚部品1が光学部品2の外周上に侵入することなく光学部品2と触覚部品1との間の接続を容易にすることが所望されてもよい。図16図18の眼内レンズは、図3図6図8に関連して説明した特徴のいずれかを含み得る。触覚部品1は、光学部品延長部3が延在できる貫通孔を含まないが、それらの図とは異なり、これらの実施形態は貫通孔を含むこともできる。同様に、図15図18のいずれに示す実施形態の特徴のいずれかまたは特徴の組み合わせは、図1図7に示す他のレンズのいずれかに含まれ得る。例えば、図15図18(ならびに図9)に示す曲げ接合部4は、図1図2に含まれ得る。
【0073】
レンズは、アクリルなどの透明な生体適合性のある軟質光学材料を含んでもよく、光学部品は、両凸、平凸、凹/平、円環、非球面、球面、フレネル型、多焦点、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。光学部品2は、増大する屈折力勾配を含む累進屈折力レンズであってもよく、例えば眼へ移植された時に、光学部品の下半球に近方視力をもたらし、光学部品の上半球に遠方視力をもたらす。
【0074】
触覚部品1は、少なくとも縦方向において、半硬質であり、毛様体筋の作用または線維化による変形に対して耐えるように設計されている。非調節型レンズおよび調節型レンズと一緒に伝統的に使用される軟質の触覚部品とは異なり、縦方向の半硬質触覚部品1は毛様体筋および線維化に起因する変形に対して耐性を有するため、半硬質の縦方向触覚部品1は、心取りをより容易にし、眼の軸に沿って光学部品により一貫した位置への配置を実現する。
【0075】
本明細書で説明する眼内レンズの実施形態では、レンズ100の全長は、レンズの両側にある固定軟質横方向ループ6のチップ10からレンズを横切って対角線上で測定されたとき、約9.5mm~約12.0mm、および約11.0mm~約14.0mmであってもよい。例えば、図15を参照する。横方向ループ6は、横方向ループ6の端部に(例えば、丸いまたは卵形のノブ、固定部材の各端部に1つある)指向部材10を含み得る。対角線の距離は、光学部品の中心を通って延在する。レンズ100の縦方向長さL(図3にも示す)は、平均的な水晶体嚢の少なくとも直径とすることができる。例えば、好ましい縦方向長さは、約10.5mmとすることができる。レンズ100の長さが約10.5mm以下であるとき、レンズ100は、水晶体嚢を変形させず、毛様体筋に作用しない。
【0076】
いくつかの実施形態では、軟質光学部品から延在する短い光学部品延長部3は、1mm未満のその短い長さ、およびその厚さによって、より硬質に構成され得る。
図18Aに示すように、触覚部品1は、横方向部材(または本明細書の他の箇所で呼ぶようにパドル)30と、横方向延長部材30間に延在する横断バー9とを有し得る。触覚部品1は、光学部品2(例えば、光学部品の幅または直径と比較した、光学部品の両側の横方向延長部材30間の横方向距離)よりも幅広とすることができ、横方向部材30のチップ31は、移植時には、光学部品の後方にあるように設計され得る。それゆえ横方向部材30はチップ31の方へ向かって大きく湾曲し得る。触覚部品1は、閉ループ12(および開放領域)を形成し得る。眼内レンズは短い光学部品延長部3を含むことができ、その延長部の両端間には、光学部品2と触覚部品1との間に硬質曲げ接合部4がある。本明細書で説明するように、この曲げ接合部4は、製造時に触覚部品を光学部品に対してある角度をなして傾けて配置させることができる。いくつかの実施形態では、触覚部品1は、光学部品の外周の180°超だけ光学部品を部分的に取り囲む。例えば単一の触覚部品は、光学部品の外周の少なくとも110°、120°、130°、140°、150°、160°、または170°で、最大175°または180°、あるいはそれらの間の任意の範囲を取り囲み得る。
【0077】
図18Bに示すように、触覚部品1は、先端のアーチ状の外縁であって、光学部品に対して基端方向における縦方向長さに対して平行になる外縁を有する横方向部材(またはパドル)30を有し得る。触覚部品1は、フィンガー様の軟質の横方向延長部6を有することで光学部品よりも幅を広くすることができる。横方向部材30は、短い光学部品延長部3によって接続されることができ、その延長部の両端間には、光学部品2と触覚部品1との間に硬質曲げ接合部4がある。いくつかの実施形態では、触覚部品1は、光学部品の外周の180°超だけ光学部品を部分的に取り囲む。例えば単一の触覚部品は、光学部品の外周の少なくとも110°、120°、130°、140°、150°、160°、または170°で、最大175°または180°、あるいはそれらの間の任意の範囲を取り囲み得る。
【0078】
図9A図9Dは、硬質触覚部品1を有する軟質光学部品2を備える非調節型IOLを示し、この触覚部品1は、2つの横方向に延在する閉ループ31から延出する2つの縦方向硬質支柱/プレート30を有するシャーシ104を備え、両閉ループは、水晶体嚢内でレンズを固定しかつ中心に置くように設計されている。2つの支柱/プレート30間には先端バー39が延在し、中心の囲まれた開放領域32を形成している。従って、様々な実施形態は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多い閉ループ31(および開放領域32)を含んでいてもよく、閉ループ31の少なくとも一部分は、線維化による固定を容易にしてもよい。いくつかの実施形態では、図9A図9Dに示すように、より中心にある開放領域32は、中心開放領域の両側にあるいずれの開放領域よりも大きい。シャーシ104は光学部品の軟質材料43に部分的に埋め込まれる。様々な実施形態では、触覚部品1は光学部品2に対して傾けて配置される。フレームまたはシャーシ104の基端部分にある硬質曲げ接合部4を示す線107は、本明細書で説明するように、光学部品2に対してある角度をなす触覚部品1の傾けた配置を示す。しかし他の実施形態では、図9A図9Dに示す設計は、製造時に光学部品に対して触覚部品を傾けて配置させる必要はなく、それゆえ図示のような硬質曲げ接合部4を含む必要はない。水晶体嚢33の盲嚢は、半径11.5mmに部分的に膨張させて示されている。
調節型レンズ
本明細書では、非調節型レンズに関していくつかの実施形態を説明したが、ヒンジまたは接続バーと組み合わせられる可能性のある触覚部品は、調節型レンズにおいて使用され得る。
【0079】
図6図9Dに示すものを含むがそれらに限定されない、本明細書で説明される触覚部品の様々な実施形態は、調節型レンズにおいて使用され得る。接続バーおよび調節型レンズに関する追加的な情報は、2013年9月24日出願の米国特許出願公開第2014/0094909号明細書として公開された米国特許出願第14/035,821号明細書(「調節型眼内レンズ(Accommodating Intraocular Lens)」)(代理人整理番号CORD.009P1)、ならびに2013年9月24日出願の米国特許出願公開第2015/0088254号明細書として公開された米国特許出願第14/035,813号明細書(「前嚢偏向リッジ(ANTERIOR CAPSULE DEFLECTOR RIDGE)」)(代理人整理番号CORD.010A)に見出すことができ、これら全体を参照することにより本明細書に援用し、本明細書の一部であるとみなすべきである。
【0080】
図14A~14Dは、光学部品202および対向するプレート型触覚部品214を有する調節型眼内レンズ200の例を示す。プレート型触覚部品214は、軟質構成要素226内に埋め込まれたフレーム222を含み得る。フレーム222は貫通孔230を含むことができ、軟質構成要素226がその貫通孔を通って延在してフレーム222を固定できる。フレーム222は、ポリイミド、プロリーン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、チタニウム、または同様の材料を含み得る。軟質構成要素226は、シリコーン、ヒドロゲル、アクリル、または同様の材料を含み得る。場合によっては、軟質構成要素226および光学部品202は、例えばアクリルなどの同じ材料から構築され得る。
【0081】
図14Aに示すように、フレーム222は、軟質構成要素226の基端縁および先端縁を越えて外向きに延在し得る。フレーム222の露出した縁は、移植の最中の調節型眼内レンズ(AIOL)200の滑りやすさを抑制し、正しい位置への移植を容易にする。フレーム222は、その先端部分にいくつもの開口238(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多い開口)を含み得る。開口238の少なくともいくつかは、触覚部品214の先端部に位置決めされた細い横断バー242によって、少なくとも部分的に構成され得る。開口238の少なくとも一部分は、軟質構成要素226の先端縁を越えて延在することができ、線維化が細い横断バー242の周りで、かつ開口238を通って生じるようにし得る。従って、上述の通り、様々な実施形態は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多い閉ループ(および開放領域238)を含んでもよく、その少なくとも一部分は、線維化によって固定を促し得る。いくつかの実施形態では、図14A図14Dに示すように、より中心にある開放領域238は、中心開放領域の両側にあるいずれの開放領域よりも大きい。
【0082】
プレート型触覚部品214は、プレート型触覚部品214が例えば、x軸に平行な)横断方向(には実質的に軟質であり、(例えば、y軸に平行な)縦方向には実質的に硬質であることができるように構築され得る。プレート型触覚部品214は、眼へのAIOLの挿入を容易にするのに十分に横断方向において軟質であり、毛様体筋の収縮すなわち終端間の圧縮に応答した偏芯に対して耐え得るのに十分に縦方向において硬質であることができる。
【0083】
各プレート型触覚部品214の基端部分は、光学部品202を少なくとも部分的に取り囲む対向するパドル234を含み得る。様々な実施形態では、例えば単一の触覚部品は、光学部品の外周の少なくとも160°、170°から175°または180°、あるいはそれらの間の任意の範囲を取り囲むことができ、もしくは場合により光学部品の円周の110°、120°、130°、140°、または150°で、最大160°、170°または180°、あるいはそれらの間の任意の範囲を取り囲むことができる。パドル234の外側横方向縁間で測定された横断幅は、光学部品202の横径よりも大きくすることができる。パドル234の基端部分は、光学部品202から離間され(例えば、切り離され)得る。移植前において、AIOL202は実質的に単一平面状に製造され得る。眼内への移植後にパドル234の少なくとも基端部分が光学部品に対して後方にあるように、AIOL200が眼に移植されるとき、光学部品202は触覚部品の先端部に対して後方にアーチ形に曲がることができる。後方に押されると、パドル234のより大きな表面領域が、AIOL200の後ろ側での圧力をさらに高めることがあり、これにより毛様体が収縮するときの、前方向における光学部品202の動きを容易にすることができ、硝子体腔(vitreous cavity)内の流体の圧力が高まる。
【0084】
対向するパドル234のそれぞれは、フレーム222の少なくとも一部分、および軟質構成要素226の少なくとも一部分を含み得る。パドル234を構成するフレーム222の部分は、パドル234を構成する軟質構成要素226の部分よりも大きくすることができる。パドル234を形成するフレーム222の部分は、パドル234を形成する軟質構成要素226の部分よりも、幅を広くしたり長くしたりすることができる。図14Aに示すように、パドル234では、フレーム222は、軟質構成要素226の横方向縁を越えて横方向に、かつ軟質構成要素26の基端縁を越えて基端方向に延在する。
【0085】
各プレート型触覚部品214は、光学部品202に接続され得る接続部分を含み得る。接続部分は、短い付属体206と、短い付属体206から横方向に延在する接続バー210(例えばトーションバー)とを含むことができ、例えば接続バー210は、短い付属体206の対向する各側面から横方向に延在し得る。各触覚部品214は、短い付属体206および接続バー210に対して先端方向にあることができる貫通孔を構成する長尺状のスロット218を含み得る。
【0086】
接続バー210の厚さは、短い付属体206の厚さよりも薄くすることができる。接続バー210の伸張および回転の少なくとも一方ができ(例えば、ねじられる)、触覚部品214に対する光学部品202の動きが容易になるように、接続バー210の厚さは薄くすることができる。接続バーおよび調節型レンズに関する追加的な情報は、2013年9月24日出願の米国特許出願公開第2014/0094909号明細書として公開された米国特許出願第14/035,821号明細書(「調節型眼内レンズ(Accommodating Intraocular Lens)」)(代理人整理番号CORD.009P1)において見出すことができ、この全体を参照することにより本明細書に援用し、本明細書の一部であるとみなすべきである。
【0087】
各触覚部品214は、触覚部品214から前方に延在する1つ以上の前方稜状突起246を含み得る。例示的な稜状突起246は、米国特許出願公開第2015/0088254号明細書として公開された米国特許出願第14/035,813号明細書(代理人整理番号CORD.010A)に説明されており、この全体を参照することにより本明細書に援用し、本明細書の一部であるとみなすべきである。1つ以上の前方稜状突起246は、各触覚部品214の一方または両方のパドル234を少なくとも部分的に横断し得る。図14Aに示すように、単一の前方稜状突起246は、同じ触覚部品214の一方のパドル234から他方のパドル234まで延在でき、これによりアーチ形状とすることができる。図14Aでは、触覚部品214の明るくて小さな斑点の付いた部分はフレーム222であり、この部分はポリイミドを含んでいてもよい。暗い領域は、例えばシリコーンを含む軟質構成要素226がフレーム222を覆っている部分を示す。最も暗い陰の付いた領域は稜状突起246を示し、この領域は、軟質構成要素226(例えば、シリコーン)を含む軟質材料の厚みのある領域を含んでいてもよい。この構成では、前方稜状突起246は長尺状のスロット218を少なくとも部分的に取り囲み得る。図14Bおよび図14Dに稜状突起246の横断面を示す。1つ以上の前方稜状突起は、ヒト水晶体の水晶体嚢の前嚢からAIOL202を分離し得る。図14Cは、例えばポリイミドを含んでいてもよいフレーム222(暗くて黒い領域)を示す。
【0088】
そのような調節型眼内レンズはまた、本明細書の他の箇所で説明するような他の特徴を有し得る。
用語
本明細書では、相対語「基端」および「先端」は光学部品の観点から定義される。それゆえ基端は光学部品に向かう方向を指し、先端は光学部品から離れる方向を指す。
【0089】
本明細書では、用語「固定長さ」または「固定縦方向長さ」は、移植後に、毛様体筋によって加えられる力を受けるときの長さの変化が約5%以下(例えば、約4%以下、約3%以下、約2%以下、または約1%以下)であることを指す。例えば、軟質フィンガー5は、中心方向に曲がって、水晶体嚢に眼内レンズを固定してもよい(図2参照)。本明細書では、「ボールト角度は、変化しないままとすることができる」という表現は、移植後に、毛様体筋および線維化による力を受けるときに変化が約5%以下(例えば、約4%以下、約3%以下、約2%以下、または約1%以下)であることを指す。
【0090】
条件的な言語、例えば「できる、し得る(can)」、「できる(could)」、「かもしれなかった(might)」、または「かもしれない(may)」は、具体的に明記しない限り、またはそうでなければ使用されるような文脈内で理解されない限り、一般的に、特定の実施形態は、特定の特徴、要素、およびステップの少なくとも一つを含むが、他の実施形態は含まないことを伝えるものとする。それゆえ、そのような条件的な言語は、一般的に、特徴、要素、およびステップの少なくとも一つが、任意の特定の実施形態に含まれるかまたはそれにおいて実施されるかに関わらず、これらの特徴、要素、およびステップの少なくとも一つは、何らかの形で1つ以上の実施形態に必要であることを暗示するものである。
【0091】
本明細書では、用語「およそ」、「約」、および「実質的に」は、依然として所望の機能を発揮するか、所望の結果を達成する、述べた量に近い量を表す。例えばいくつかの実施形態では、文脈で指示し得るように、用語「およそ」、「約」、および「実質的に」は、述べた量の5%以下の範囲内の量を指し得る。
【0092】
本明細書で開示した範囲はまた、任意のおよび全ての重複、部分範囲、およびこれらの組み合わせを含む。「最大」、「少なくとも」、「超、大きい」、「未満」、「の間」などの言語は、列挙した数字を含む。先に「約」または「およそ」などの用語がある数字は、列挙した数字を含む。例えば、「約3mm」は「3mm」を含む。
【0093】
本明細書ではいくつかの実施形態および例を説明したが、当業者には、本開示において図示しかつ説明した眼内レンズの多くの態様は、異なって組み合わせられたり修正されたりして、さらに別の実施形態または容認可能な例を形成し得ることを理解されたい。そのような修正例および変形例は全て、本書において、本開示の範囲内に含まれるものとする。多種多様な設計および手法が可能である。本明細書で開示した特徴、構造体、またはステップは、必須でもまたは不可欠でもない。
【0094】
添付の図面を参照していくつかの実施形態を説明した。しかしながら、図面は縮尺通りではないことを理解されたい。距離、角度などは、説明にすぎず、必ずしも、図示の装置の実際の寸法およびレイアウトと正確に関係するものではない。構成要素が、追加されたり除去されたり再配置されたりし得る。さらに、様々な実施形態と関連した任意の特定の特徴、態様、方法、性質、特性、品質、特質、要素などの本明細書の開示は、本明細書で説明する全ての他の実施形態において使用され得る。さらに、本明細書で説明する任意の方法は、列挙したステップを実施するのに好適な任意の装置を使用して実施され得ることが認識され得る。
【0095】
本開示のために、本明細書では、いくつかの態様、利点、および新規の特徴が説明されている。必ずしも、任意の特定の実施形態に従って全てのそのような利点が、達成され得るものではないことを理解されたい。それゆえ例えば本開示は、本明細書で教示されるような1つの利点または一群の利点は達成し、本明細書で教示または提案され得るような他の利点は必ずしも達成するわけではないように具体化され得るまたは実施され得ることを、当業者は認識する。
【0096】
さらに本明細書では、例示的な実施形態を説明したが、均等な要素、修正、省略、(例えば、様々な実施形態にわたる態様の)組み合わせ、適合、および変更の少なくとも一つを有する任意のおよび全ての実施形態の範囲は、当業者に認識されるように、本開示に基づく。特許請求の範囲の限定は、特許請求の範囲内で用いられる言語に基づいて、広範に解釈されるものとし、本明細書においてまたは出願手続きの遂行中に説明される例に限定されるものではなく、これら例は非排他的であると解釈される。さらに、開示のプロセスおよび方法の行為は、行為の再整理や追加的な行為の挿入や行為の削除を含む、任意の方法で修正され得る。それゆえ本明細書および例は説明にすぎず、真の範囲および趣旨は、特許請求の範囲およびそれらの全範囲の均等物によって示されると考慮されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
図16
図17
図18A
図18B