IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉田製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】医療用装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20220712BHJP
   A61G 15/10 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A61C19/00 J
A61C19/00 E
A61G15/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020180669
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071610
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 通三
(72)【発明者】
【氏名】河崎 亮
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特許第6949394(JP,B1)
【文献】特開2019-195514(JP,A)
【文献】特開2020-045026(JP,A)
【文献】特開2006-034340(JP,A)
【文献】特開2011-245305(JP,A)
【文献】特開2019-187727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00 - 19/10
A61G 15/00 - 15/18
A61B 90/00 - 90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と、
1または複数の波長を有する紫外線を発生する紫外線光源部と、
前記紫外線光源部を制御する光源制御部と、
診療対象の患者の交代を検出する患者交代検出手段と、を有する医療用装置であって
記紫外線光源部は、前記把持部の内部から外部に向けて紫外線が通過するように配置され、
前記把持部の少なくとも一部は、前記紫外線光源部からの紫外線を透過する紫外線透過部材から成り、
前記光源制御部は、前記患者交代検出手段が、診療椅子に着座した患者が前記診療椅子から離れてON、OFFした信号に基づいて、前記診療対象の患者が交代したと判定し、前記紫外線光源部から紫外線を発生させること
を特徴とする医療用装置。
【請求項2】
前記紫外線光源部を前記把持部の内部に配置したこと
を特徴とする請求項1に記載の医療用装置。
【請求項3】
前記把持部は、アームレストであり、
前記アームレストは、芯材と、前記芯材を覆う被覆部材と、を有し、
1または複数の前記紫外線光源部は、前記芯材または前記芯材の近傍に配置され、
前記被覆部材の少なくとも一部は、前記紫外線透過部材から成ること
を特徴とする請求項1に記載の医療用装置。
【請求項4】
前記紫外線透過部材は、前記紫外線光源部からの紫外線を導光可能であること
を特徴とする請求項1または請求項3に記載の医療用装置。
【請求項5】
前記紫外線透過部材は、多孔質または繊維状の部材であること
を特徴とする請求項1または請求項4に記載の医療用装置。
【請求項6】
前記紫外線透過部材は、非晶質のフッ素樹脂、アクリル、石英ガラスのうちのいずれかの無機材料であること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項7】
前記紫外線光源部は、当該紫外線光源部から発生される紫外線が特定(単一)の波長以外の波長を有することを防止するフィルタを備えること
を特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項8】
前記紫外線光源部から発生される紫外線の波長は、190nm~230nmにピークを有すること
を特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項9】
前記紫外線光源部から発生される紫外線の波長は、207nmにピークを有すること
を特徴とする請求項8に記載の医療用装置。
【請求項10】
前記紫外線光源部から発生される紫外線の波長は、222nmにピークを有すること
を特徴とする請求項8に記載の医療用装置。
【請求項11】
前記紫外線光源部から発生される紫外線の波長は、230nm~280nmにピークを有すること
を特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項12】
前記紫外線光源部から発生される紫外線の波長は、254nmにピークを有すること
を特徴とする請求項11に記載の医療用装置。
【請求項13】
前記紫外線光源部を制御する光源制御部を有し、
前記把持部は、当該把持部を使用者が把持したか否かを検出する把持検出手段を有し、
前記光源制御部は、前記把持検出手段により把持が検出されなくなった後に、前記紫外線光源部から紫外線を発生させること
を特徴とする請求項11または請求項12に記載の医療用装置。
【請求項14】
前記紫外線光源部を制御する光源制御部を有し、
前記把持部は、使用者が把持したか否かを検出する把持検出手段を有し、
前記光源制御部は、前記把持検出手段により少なくとも把持が検出されている間は前記紫外線光源部から紫外線を発生させること
を特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項15】
前記紫外線光源部から発生される紫外線の照射範囲内に人がいるか否かを検出する人検知手段を備えていること
を特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項16】
前記紫外線光源部を制御する光源制御部と、
前記紫外線光源部から発生される紫外線の照射範囲内に人がいるか否かを検出する人検知手段と、を備え、
前記光源制御部は、前記患者交代検出手段により診療対象の患者の交代を検出し、さらに、前記人検知手段が人を検知しない場合に、前記紫外線光源部から紫外線を発生させること
を特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載の医療用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が把持する把持部を有する医療用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科用椅子、耳鼻科用椅子、分娩台、診療椅子、無影灯、ドクターテーブル、医療用撮影装置、口腔外バキューム等の医療用装置には、把持部が備えられている。医療用装置の把持部は、人の手に触れるため、感染対策を取る必要がある。従来、把持部を殺菌灯により殺菌する場合は、把持部を装置本体から取り外してから滅菌器で滅菌したり、医療従事者がアルコール消毒したりして、感染予防を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-195514公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された歯科用照明装置は、把持部(取手(210,250))を殺菌する際に、取手(210,250)を装置本体(110)から取り外す必要があるため、殺菌する作業を行うときの手間が大きいという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、そのような問題点を解消すべく発明されたものであって、把持部を容易に感染予防することができる医療用装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、把持部と、1または複数の波長を有する紫外線を発生する紫外線光源部と、前記紫外線光源部を制御する光源制御部と、診療対象の患者の交代を検出する患者交代検出手段と、を有する医療用装置であって、前記紫外線光源部は、前記把持部の内部から外部に向けて紫外線が通過するように配置され、前記把持部の少なくとも一部は、前記紫外線光源部からの紫外線を透過する紫外線透過部材から成り、前記光源制御部は、前記患者交代検出手段が、診療椅子に着座した患者が前記診療椅子から離れてON、OFFした信号に基づいて、前記診療対象の患者が交代したと判定し、前記紫外線光源部から紫外線を発生させることを特徴とする医療用装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、把持部を容易に感染予防することができる医療用装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る医療用装置の一例を示す概略斜視図である。
図2】把持部の一例を示す図であり、ドクターテーブルの概略斜視図である。
図3】ドクターテーブルの把持部の構造を示す説明図である。
図4】把持部の一例を示す図であり、診療用無影灯の概略斜視図である。
図5】診療用無影灯の把持部の構造を示す要部拡大正面図である。
図6】診療椅子の把持部の構造を示す説明図である。
図7】医療用装置のブロック図である。
図8A】ダブル誘電体方式の遠紫外線C波発生の原理を示す説明図である。
図8B】遠紫外線C波の相対強度を示すグラフである。
図9A】シングル誘電体方式の遠紫外線C波発生の原理を示す説明図である。
図9B図9AのV-V断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る医療用装置の第1変形例を示す図であり、ドクターテーブルの把持部の構造を示す説明図である。
図11】本発明の実施形態に係る医療用装置の第2変形例を示す図であり、診療用無影灯の把持部の構造を示す説明図である。
図12】本発明の実施形態に係る医療用装置の第3変形例を示す図であり、ドクターテーブルの把持部の構造を示す説明図である。
図13A】本発明の実施形態に係る医療用装置の第4変形例を示す図であり、使用者の指が把持部から離れているときの状態を示す説明図である。
図13B】本発明の実施形態に係る医療用装置の第4変形例を示す図であり、使用者の指が把持部に接触したときの状態を示す説明図である。
図13C図13Bの要部拡大図である。
図14】本発明の実施形態に係る医療用装置の第5変形例を示す図であり、ドクターテーブルの把持部の構造を示す説明図である。
図15】本発明の実施形態に係る医療用装置の第6変形例を示す図であり、ドクターテーブルの把持部の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図1図9Bを参照して本発明の実施形態に係る医療用装置Sの一例を説明する。
なお、便宜上、前後、左右、上下は、図1に示す診療用無影灯2の向いている方向を正面(前)として基準とする。また、なお、以下の説明において、同一の構成のものは、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0010】
<医療用装置>
図1に示す医療用装置Sは、歯科、耳鼻科、眼科等の医療の診断・治療を行うのに使用される装置である。医療用装置Sは、例えば、鼻、眼、口腔等を診療部位とする医療に主に使用される。医療用装置Sは、少なくとも、患者が手で把持する把持部23,33,45と、1または複数の波長を有する紫外線を発生する紫外線光源部26,34,46と、を有している。
なお、医療用装置Sは、医療の診断、治療を行うのに使用される装置であればよく、使用用途、設置場所等は特に限定されない。以下、医療用装置Sの一例として、把持部23,33,45を備えた歯科用診療装置100によって、患者の口腔内を治療する場合を例に挙げて説明する。
【0011】
<歯科用診療装置>
図1に示すように、歯科用診療装置100は、歯科用治療ユニット1を備えて構成されている。
【0012】
<歯科用治療ユニット>
歯科用治療ユニット1は、診療椅子4と、ユニット本体部11と、ユニット本体部11に立設された支柱12と、支柱12の上部に軸支されたアーム13と、アーム13の先端部に取り付けた診療用無影灯2と、ドクターテーブル3と、ドクター用インスツルメントハンガ15と、アシスタント用インスツルメントハンガ16と、表示装置(図示省略)と、を備えている。歯科用治療ユニット1は、ユニット本体部11、支柱12、アーム13、診療用無影灯2、ドクターテーブル3及び診療椅子4を有するものであればよく、型式、種類等は特に限定されない。
【0013】
<ユニット本体部>
図1に示すように、ユニット本体部11は、支柱12を有するものであればよく、形状、構造等は特に限定されるものではない。
【0014】
支柱12は、アーム13の基端部を回転可能に支持する柱部材である。支柱12は、例えば、電源AC(図7参照)等と、診療用無影灯2及び人検知手段HS(図7参照)と、を電気的に接続するハーネス(図示省略)を挿通した円筒形状の金属製部材によって形成されている。支柱12の上部には、アーム13の基端部が回動可能に設置されている。
【0015】
アーム13は、支柱12から診療用無影灯2に延びて配置されて、所定以上の力(予め設定された回転方向の任意の力)を移動方向に加えることで、診療用無影灯2及び人検知手段HS(図7参照)を上下前後左右方向に移動可能に弾性支持する支持力を有するバランスアームから成る。アーム13は、複数の関節を有する多関節アームから成る。アーム13は、支柱12に軸支された第1アーム13aと、第1アーム13aの先端側に配置された第2アーム13bと、第1アーム13a及び第2アーム13b内に配線されたハーネス(図示省略)と、第1アーム13aと第2アーム13bとの間に設けられたジョイント部13cと、第2アーム13bの先端の設けられた接続部13dと、を備えて成る。なお、アーム13の構成等は、適宜変更してよい。
【0016】
<診療用無影灯>
図1及び図4に示すように、診療用無影灯2は、患者の口腔内、被検査歯(歯牙)、根管内等の被写体を明るく照らすための照明装置である。図4に示すように、診療用無影灯2は、筐体21と、ジョイント部22と、左右の把持部23と、カバー24と、複数(例えば、4つ)の照明用光源25と、紫外線光源部26と、把持検出手段27と、を備えて成る。
【0017】
<筐体>
筐体21は、診療用無影灯2のケース本体である。筐体21は、略お椀型をしている。筐体21の前面には、カバー24、及び、照明用光源25が設けられている。筐体21の後部には、ジョイント部22が設けられている。筐体21の左右側面には、把持部23が突設されている。筐体21には、多数の接続端子を有する電気接続部(図示省略)が設けられている。
【0018】
<ジョイント部>
ジョイント部22は、筐体21をアーム13(図1参照)の接続部13dに対して上下左右方向に回動自在に連結する自在接手を構成する連結部材である。ジョイント部22は、基端部が接続部13dに連結され、先端部が筐体21の後面の左右に連結されている。このため、筐体21の前面に配置された照明用光源25は、照射する方向を自由に変えることが可能になっている。
【0019】
<診療用無影灯の把持部>
図4に示すように把持部23は、照明用光源25を照射するとき、あるいは、筐体21をアーム13に着脱したり、筐体21の向きを調整したりするときに、持ち手となる部材である。把持部23は、例えば、略U字状(略円弧状)に形成された略棒状の部材から成る。把持部23の少なくとも一部は、紫外線光源部26からの紫外線を透過する透明な紫外線透過部材U1によって形成されている。把持部23には、把持部23の内部から外部に向けて紫外線が通過するように配置された紫外線光源部26と、使用者が把持部23を使用者が把持したか否かを検出する把持検出手段27と、が設けられている。
【0020】
<照明用光源>
図4に示す照明用光源25は、例えば、影が生じないように複数のLEDを設け、前方に照射野形状のスリット及びレンズを配置して照射野を設ける無影灯から成る。照明用光源25は、不図示の支持体を介して支持部に、回動機構によって回動自在に取り付けられている。このため、照明用光源25によって照明される照明位置は、自由に調整することができるようになっている。歯科用の通常照明光の照明用光源25は、一般に、色温度3600°K~6000°K(ケルビン温度)の白色光が使用されている。照明用光源25は、ドクターテーブル3の無影灯制御部35を介して電源ACに電気的に接続されている(図7参照)。
なお、照明用光源25は、無影灯であればよく、ランプあるいはLEDの後ろ側に反射ミラー用の拡散板を設置し、面光源として影を生じないように被写体の周囲に所望の照射野(光パターン)を設けた周知の無影灯であってもよい(例えば、特開2014-53164号公報参照)。
【0021】
<診療用無影灯の紫外線光源部>
図4及び図5に示すように、診療用無影灯2の紫外線光源部26は、波長が190nm乃至400nmの紫外線発生手段である。紫外線光源部26は、把持部23の内部に把持部23の長手方向に適宜な間隔で配置された複数(例えば、三つ)の光源から成る。このため、紫外線光源部26は、把持部23の表面に付着したウイルスや、把持部23を把持した使用者の手等に付着したウイルスに紫外線を照射して殺菌することが可能である。紫外線光源部26は、ドクターテーブル3の光源制御部36を介して電源ACに電気的に接続されている(図1及び図7参照)。なお、紫外線光源部26については、さらに、後で詳述する。
【0022】
把持部23を形成する紫外線透過部材U1は、紫外線光源部26からの紫外線を導光可能な非晶質のフッ素樹脂または無機材料から成る。
【0023】
<診療用無影灯の把持検出手段>
診療用無影灯2の把持検出手段27は、使用者が診療用無影灯2の把持部23を手で把持したか否かを検出するセンサである。把持検出手段27は、使用者が診療用無影灯2の把持部23に接触したらONになり、把持部23に被接触の状態になったらOFFになるセンサであり、例えば、静電容量式のタッチセンサ(タッチスイッチ)から成る。把持検出手段27は、例えば、紫外線を透す透明なシート状の部材で形成されて、把持部23の表面全体あるいは一部に取り付けられている。把持検出手段27は、ドクターテーブル3(図1参照)の光源制御部36を介して電源ACに電気的に接続されている。
【0024】
<ドクターテーブル>
図1に示すように、ドクターテーブル3は、術者が主に使用するワークテーブルである。ドクターテーブル3は、ワークプレート31と、操作パネル部32と、把持部33と、紫外線光源部34と、無影灯制御部35と、光源制御部36と、把持検出手段37と、表示部38と、制御装置30(図7参照)と、を有している。ドクターテーブル3は、診療椅子4のベース部41に支持部材を介在して回動自在に設けられて、ドクター用インスツルメントハンガ15及び診療椅子4の近隣に配置されている。
【0025】
<ワークプレート、操作パネル部>
ワークプレート31は、矩形の平坦な天板から成る。
操作パネル部32は、紫外線光源部26,34,46を点灯、消灯させるための点消灯スイッチや、紫外線光源部26,34,46の点灯時間を設定するためのタイマスイッチや、紫外線光源部26,34,46から発生する紫外線の波長を調整する波長調整スイッチや、その他の操作を行うスイッチ等を有する操作装置である。操作パネル部32は、多数のタッチスイッチ(図示省略)等を有する液晶パネルから成る。操作パネル部32は、ドクターテーブル3に内設された制御装置30に電気的に接続されて、タッチスイッチ(図示省略)の操作信号が制御装置30に入力されて、照明用光源25及び紫外線光源部34を駆動させる(図7参照)。
【0026】
<ドクターテーブルの把持部>
図1及び図2に示すように、ドクターテーブル3の把持部33は、術者がドクターテーブル3の位置を変える場合に、手で把持する箇所である。把持部33の少なくとも一部は、紫外線光源部34からの紫外線を透過する透明な紫外線透過部材U1から成る。把持部33は、例えば、操作パネル部32の前端部の左右端部から左右方向に突出した円柱形状(丸棒状)のハンドル部材から成る。把持部33は、紫外線を発生する紫外線光源部34と、把持部33を使用者が把持したか否かを検出する把持検出手段37と、を有している。
【0027】
<ドクターテーブルの紫外線光源部>
図2及び図3に示すように、ドクターテーブル3の紫外線光源部34は、前記した診療用無影灯2(図4及び図5参照)の紫外線光源部26と同様、波長が190nm乃至280nmの遠紫外線C波を発生する遠紫外線C波発生手段である。紫外線光源部34は、把持部33の内部から外部に向けて紫外線が通過するように配置された複数(例えば、把持部33内の長手方向に適宜な間隔で配置された三つの光源)の発光源から成る。紫外線光源部34は、当該紫外線光源部26から発生される紫外線が特定(単一)の波長以外の波長を有することを防止するハンドパスフィルタ等のフィルタ(図示省略)を備えている。
【0028】
把持部33を形成する紫外線透過部材U1は、前記した診療用無影灯2の把持部23の紫外線透過部材U1と同様、紫外線光源部34からの紫外線を導光可能な透明な部材から成る。
【0029】
<無影灯制御部>
無影灯制御部35は、照明用光源25の明るさ等を制御する制御部である。無影灯制御部35は、ドクターテーブル3の操作パネル部32内に設けられている。
【0030】
<光源制御部>
図7に示す光源制御部36は、紫外線光源部26,34,46を制御する制御部である。光源制御部36は、患者交代検出手段48や、把持検出手段27,37,47の検出信号に基づいて、紫外線光源部26,34,46を制御する。光源制御部36は、把持検出手段27,37,47により、少なくとも把持が検出されている間は紫外線光源部26,34,46から紫外線を発生させる。光源制御部36は、ドクターテーブル3の操作パネル部32(図2参照)に設けられている。
なお、光源制御部36は、把持検出手段27,37,47によって把持が検出されなくなった後に、紫外線光源部26,34,46から紫外線を発生させるようにしてもよい。
【0031】
また、光源制御部36は、把持検出手段27,37,47によって把持が検出された後、タイマ39によって設定した時間だけ紫外線光源部26,34,46から紫外線を発生させるようにしてもよく、さらに、把持検出手段27,37,47によって把持が検出されなくなった後、タイマ39によって設定した時間の経過後に紫外線光源部26,34,46をOFFしてもよい。
【0032】
<ドクターテーブルの把持検出手段>
図2に示すように、ドクターテーブル3の把持検出手段37は、使用者がドクターテーブル3の把持部33を把持したか否かを検出するセンサである。図2及び図3に示すように、把持検出手段37は、前記した診療用無影灯2(図4参照)の把持検出手段27と同様、使用者がドクターテーブル3の把持部33に接触したらONになり、把持部33に被接触の状態になったらOFFになるセンサである。把持検出手段37は、例えば、静電容量式のタッチセンサ(タッチスイッチ)から成る。把持検出手段37は、例えば、紫外線を透す透明なシート状の部材で形成されて、把持部33の表面全体あるいは一部に取り付けられている。把持検出手段37は、光源制御部36を介して電源AC(図7参照)に電気的に接続されている。
【0033】
<表示部>
表示部38は、図7に示すように、診療用無影灯2の照明用光源25、紫外線光源部26及び把持検出手段27の作動状況と、ドクターテーブル3の紫外線光源部34及び把持検出手段37の作動状況と、診療椅子4の紫外線光源部46、把持検出手段47及び患者交代検出手段48の作動状況等を表示する液晶モニタから成る。表示部38は、操作パネル部32(図2参照)に設けられている。
【0034】
<タイマ>
タイマ39は、図7に示すように、把持検出手段27,37,47で使用者が把持部33を把持したことを検出した後、光源制御部36によって紫外線光源部26,34,46をONまたはOFFするタイミングを設定するものである。タイマ39は、光源制御部36に設けられている。
【0035】
<診療椅子>
図1に示すように、診療椅子4は、患者が診療時に着座する医療用椅子である。診療椅子4は、ベース部41と、座部42と、バックレスト43と、患者の頭部を支えるヘッドレスト44と、アームレスト49(把持部45)と、紫外線光源部46と、把持検出手段47と、患者交代検出手段48と、を有している。
【0036】
ベース部41は、診療椅子4の基台となる部分である。ベース部41には、診療椅子4の他に、ユニット本体部11と、ドクターテーブル3と、ドクター用インスツルメントハンガ15と、アシスタント用インスツルメントハンガ16と、が設けられている。
座部42は、患者が着座する部分である。
バックレスト43は、患者の背部を支えて患者を所定の診療体位に保持する部分である。
ヘッドレスト44は、患者の頭部を支える部分である。
【0037】
<診療椅子の把持部>
図6に示すように、診療椅子4の把持部45は、アームレスト49である。把持部45は、紫外線を発生する紫外線光源部46と、把持部45を使用者が手で把持したか否かを検出する把持検出手段47と、を有している。診療椅子4の把持部45の少なくとも一部は、紫外線光源部46からの紫外線を透過する紫外線透過部材U2から成る。
【0038】
<アームレスト>
アームレスト49は、患者の肘を支える部分である。アームレスト49は、芯材45aと、芯材45aを覆う被覆部材45b,45cと、アームレスト49を座部42に回動自在に連結する回動軸部45dと、を有している。
【0039】
芯材45aは、アームレスト49の中心線上に配置された骨格部である。芯材45aは、前後方向に延設されたフレーム部材から成る。芯材45aの上面及び下面には、複数の紫外線光源部46が設けられている。
【0040】
被覆部材45bは、芯材45a及び紫外線光源部46を上面側から覆う部材である。被覆部材45cは、芯材45a及び紫外線光源部46を下面側から覆う部材である。被覆部材45b,45cは、紫外線透過部材U2から成る。
【0041】
回動軸部45dは、座部42の前側寄りの位置に配置されて、アームレスト49の基端部(前端部)を、座部42の上部に回動させたり、バックレスト43の後側に回動させたりすることが可能である。
【0042】
<診療椅子の紫外線透過部材>
紫外線透過部材U2は、紫外線光源部46からの紫外線を導光可能な材質の材料から成る。紫外線透過部材U2の外側には、多孔質または繊維状の部材を備えている。
【0043】
<診療椅子の紫外線光源部>
診療椅子の紫外線光源部46は、把持部45の内部から外部に向けて紫外線を発生するようにアームレスト49(把持部45)の内部に配置されている。紫外線光源部46は、芯材45aに適宜な間隔で配置された複数の光源から成る。なお、紫外線光源部46は、芯材45aに固定することには限定されず、芯材45aの近傍に配置してもよい。
【0044】
前記した紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線の波長は、好ましくは、190nm~230nm、あるいは、230nm~280nmであり、より好ましくは、193nm,207nm、222nm又は254nmにピークを有している。紫外線光源部26,34,46は、当該紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線が特定(単一)の波長以外の波長を有することを防止するハンドパスフィルタ等のフィルタ(図示省略)を備えている。紫外線光源部26,34,46の190nm~230nmの波長域を発光する発光源には、波長域を照射可能なエキシマランプと、紫外線LEDとがあり、230nm~280nmの波長域を発光する発光源には、波長域を照射可能なエキシマランプと、紫外線LEDと、低圧水銀ランプとがある。
【0045】
エキシマランプは、例えば、波長が193nmの場合はArF(アルゴン・フッ素)エキシマランプ、波長が207nmの場合はKrBr(クリプトン・臭素)エキシマランプ、波長が222nmの場合はKrCl(クリプトン・塩素)エキシマランプ、波長が254nmの場合はHgXe(水銀・キセノン)エキシマランプ等がある。これらの中で、新型コロナウイルス(正式名称は「SARS-Cov-2」)を最も短時間で死滅させるには、波長222nmのKrCl(クリプトン・塩素)エキシマランプが最も好ましい。
【0046】
エキシマランプには、図8Aに示すダブル誘電体方式(矩形型)のエキシマランプ5と、図9A及び図9Bに示すシングル誘電体方式(円筒型)のエキシマランプ6とがあり、そのどちらかを使用する。
【0047】
<ダブル誘電体方式のエキシマランプ>
図8Aに示すように、ダブル誘電体方式のエキシマランプ5は、上側から順に金属電極5aと、誘電体5bと、放電プラズマが発生する放電空間5cと、誘電体5dと、金属網電極5eとを備えて構成されて、光照射5fを発する。
【0048】
二つの誘電体5b,5dは、放電空間5cを介して平行に配置された板状の石英ガラスから成る。
放電空間5cには、放電用ガスが充填されている。放電用ガスは、希ガスとハロゲンガスの混合ガスを用いて紫外線を発光させることができる。希ガスは、ArF(193nm)、KrBr(207nm)、KrCl(222nm)、HgXe(254nm)がある。新型コロナウイルスを最も短時間で死滅させる希ガスは、図8Bに示すように、波長222nmのKrCl(クリプトン・塩素)エキシマランプの相対強度が強く最も好ましい。
【0049】
金属電極5aは、誘電体5bの上側に配置されている。金属電極5aと金属網電極5eとの電極間には、高周波、高電圧(数Hz~数MHz、数kV)が印加される。この電圧の印加に伴って、誘電体5b,5dの放電空間5c側の表面には、プラス、マイナスの電位が誘電されて、表面電位差が放電破壊電圧に達すると、放電空間5c内で放電し、放電プラズマが発生させる。そして、エキシマランプ5は、放電時の電子と封入ガス分子との衝突によってエキシマ発光する。
【0050】
<シングル誘電体方式のエキシマランプ>
図9A及び図9Bに示すように、シングル誘電体方式のエキシマランプ6は、誘導体6aと、外部電極6bと、内部電極6cと、放電空間6dと、を備えて構成されて、光照射6eを発する。
【0051】
誘導体6aは、円筒状の石英ガラスから成る。
外部電極6bは、誘導体6aの外側表面に設けられた棒状の電極から成る。
内部電極6cは、誘導体6aの中心線上に配置された棒状の電極から成る。
放電空間6dは、円筒状の誘導体6a内の空間である。放電空間6d内には、ガス体が注入されて放電プラズマが発生される。そして、放電空間6d内の内部電極6cと、放電管である誘導体6a外の外部電極6bと、の間に低い印加電圧を加えると、誘導体6a内には、放電プラズマが発生し、誘導体6a外には、紫外線が光放射される。
【0052】
紫外線発生手段は、例えば、紫外線の相対強度を示すグラフ(図8Bの希ガスがKrCl(クリプトン・塩素)の特性に於いて、前述のようにバンドパスフィルタ(図示省略)を用いてピーク波長の222nmの特定波長のみを通過させるようにしてもよいし、190nm~230nm、あるいは、230nm~280nmの範囲外の波長を通過させないようなバンドパスフィルタ(図示省略)を用いてもよい。
このように紫外線発生手段は、希ガスの選択や、バンドパスフィルタ(図示省略)の波長の通過領域を抽出することで、波長が190nm~230nm、あるいは、230nm~280nmの範囲で特定波長のみを発生するようにしてもよいし、波長が190nm~230nm、あるいは、230nm~280nmのいずれかの特定範囲の波長を発生するようにしてもよい。
【0053】
<診療椅子の把持検出手段>
図6に示すように、診療椅子4の把持検出手段47は、使用者が診療椅子4の把持部45を把持したか否かを検出するセンサである。把持検出手段47は、前記した診療用無影灯2(図4参照)の把持検出手段27及びドクターテーブル3(図3参照)の把持検出手段37と同様、使用者が診療椅子4のアームレスト49(把持部45)に接触したらONになり、アームレスト49に被接触の状態になったらOFFになるセンサである。把持検出手段47は、例えば、静電容量式のタッチセンサ(タッチスイッチ)から成る。把持検出手段47は、例えば、紫外線を透す透明なシート状の部材で形成されて、把持検出手段47の表面全体あるいは一部に取り付けられている。把持検出手段47は、ドクターテーブル3の光源制御部36を介して電源ACに電気的に接続されている。
【0054】
<患者交代検出手段>
図1または図7に示すように、患者交代検出手段48は、診療対象の患者の交代を検出するセンサである。つまり、患者交代検出手段48は、診療椅子4に着座した患者が診療椅子4から離れた後、他の患者等が着座したかを検出する検出手段である。患者交代検出手段48は、座部42またはバックレスト43に設けられている。患者交代検出手段48は、患者が診療椅子4に着座したことを検出する着座スイッチ(あるいは、重量センサ)と、着座スイッチからのON、OFF信号に基づいて患者が違う患者に交代したことを判定する制御装置30(光源制御部36)と、から構成されている。
なお、患者交代検出手段48は、着座スイッチを備えたものに限定されず、患者の有無を検出する圧力センサや、患者が発する人体赤外線を感知するセンサや、光反射型センサ等であってもよい。
【0055】
<人検知手段>
図7に示す人検知手段HSは、紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線の照射範囲内に人がいるか否かを検出する人感センサである。換言すると、人検知手段HSは、紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線の照射範囲内に人がいないことを確認するためのセンサである。人検知手段HSは、例えば、カメラから成り、アーム13(図1参照)、あるいは、診察室の天井面や壁等に設置されている。人検知手段HS及び患者交代検出手段48は、光源制御部36に電気的に接続されている。このため、光源制御部36は、人検知手段HS及び患者交代検出手段48の検出結果に基づいて、人がいないことを検出した場合に、紫外線を照射するように制御する。
【0056】
<ドクター用インスツルメントハンガ>
図2に示すように、ドクター用インスツルメントハンガ15は、術者が使用する種々のインスツルメント17が係止される箇所である。
【0057】
<アシスタント用インスツルメントハンガ>
図1に示すアシスタント用インスツルメントハンガ16は、補助者が使用する種々のインスツルメント17(図2参照)が係止される箇所である。なお、アシスタント用インスツルメントハンガ16にも、ドクターテーブル3と同様に、紫外線光源部34を備えて紫外線透過部材U1から成る把持部33を設けてもよい。
【0058】
<制御装置>
図7に示す制御装置30は、歯科用診療装置100の動作を制御する装置である。制御装置30は、把持検出手段27,37,47、患者交代検出手段48、人検知手段HS、ドクターテーブル3の操作パネル部32等からの駆動信号を受けて、各手段を制御して、主に、照明用光源25や、紫外線光源部26,34,46を駆動させる制御を実行させる。制御装置30は、例えば、ドクターテーブル3に設けられている。制御装置30は、不図示の液晶表示装置及び電源ACに電気的に接続されている。
【0059】
[作用効果]
次に、本発明の実施形態に係る歯科用診療装置100(医療用装置S)の作用効果を説明する。
【0060】
歯科用診療装置100(医療用装置S)は、図1または図7に示すように、術者、補助者、患者等の使用者が手で掴む把持部23,33,45に、ウイルスを殺菌する紫外線光源部26,34,46から発生された紫外線を内部から当てて殺菌することができる。さらに、紫外線光源部26,34,46から発生された紫外線は、紫外線透過部材U1,U2から成る把持部23,33,45の表面を透過して使用者の手等に照射されるので、ウイルスの感染を防止することができる。
【0061】
このように、本発明は、図1図7に示すように、把持部23,33,45と、1または複数の波長を有する紫外線を発生する紫外線光源部26,34,46と、を有する医療用装置Sであって、紫外線光源部26,34,46は、把持部23,33,45の内部から外部に向けて紫外線が通過するように配置され、把持部23,33,45の少なくとも一部は、紫外線光源部26,34,46からの紫外線を透過する紫外線透過部材U1,U2から成る。
【0062】
かかる構成によれば、本発明の医療用装置Sは、紫外線光源部26,34,46が、把持部23,33,45の内部から外部に向けて紫外線を発生し、把持部23,33,45を紫外線で殺菌して、確実に感染予防をすることができる。
また、把持部23,33,45の紫外線透過部材U1,U2から成る部分は、把持部23,33,45の内部から外部に紫外線が放射されるので、使用者が把持する把持部23,33,45の表面、及び、使用者の手に紫外線を照射して殺菌を行うことができる。このため、把持部23,33,45を確実に感染予防することができると共に、紫外線照射中に把持部23,33,45に触れている使用者の手等も、紫外線を当てることができるので、効率よく殺菌することができる。したがって、医療用装置Sは、把持部23,33,45を大きな手間をかけることなく容易に感染予防することができる。
【0063】
また、図3図5及び図6に示すように、紫外線光源部26,34,46は、把持部23,33,45の内部に配置されている。
【0064】
かかる構成によれば、紫外線光源部26,34,46は、把持部23,33,45の内部に直接配置されているので、紫外線透過部材U1,U2を通して内部から、把持部23,33,45の殺菌を行うことができる。
【0065】
また、図6に示すように、把持部45は、アームレスト49であり、アームレスト49は、芯材45aと、芯材45aを覆う被覆部材45b,45cと、を有し、1または複数の紫外線光源部46は、芯材45aまたは芯材45aの近傍に配置され、被覆部材45b,45cの少なくとも一部は、紫外線透過部材U2から成る。
【0066】
かかる構成によれば、紫外線光源部46は、アームレスト49の内部に直接配置しているので、紫外線透過部材U2を通して内部から、アームレスト49を殺菌することができる。
【0067】
また、図3図5及び図6に示すように、紫外線透過部材U1,U2は、紫外線光源部26,34,46からの紫外線を導光可能である。
【0068】
かかる構成によれば、紫外線透過部材U1,U2は、導光可能とすることで、紫外線光源部26,34,46は、把持部23,33,45の内部に配置した場合、一つの紫外線光源部26,34,46から周囲の紫外線透過部材U1,U2を介して把持部23,33,45を照射できる。このため、紫外線光源部26,34,46は、個数及び組付工数を削減してコストの低減を図ることができる。
【0069】
また、図3図5及び図6に示す紫外線透過部材U1,U2は、多孔質または繊維状の部材である。
【0070】
かかる構成によれば、紫外線透過部材U1,U2は、多孔質または繊維状の部材であることで、紫外線を透過することができるため、把持部表面及び把持部23,33,45に触れている者の接触箇所を殺菌することができる。
なお、多孔質は、ウレタン等のスポンジ素材で通気性があるものが望ましい。また、繊維状の部材は、綿、絹、ナイロン等の密度の低い素材や、不織布等であってもよい。また、これらの組み合わせであってもよい。また、多孔質または繊維状の部材は、柔らかく通気性に優れた素材であることから、アームレスト(把持部)49の素材として用いることで患者に優しく好適である。
【0071】
また、図3図5及び図6に示すように、紫外線透過部材U1,U2は、非晶質のフッ素樹脂、アクリルまたは石英ガラス等の無機材料のいずれかである。
【0072】
かかる構成によれば、紫外線透過部材U1,U2は、非晶質のフッ素樹脂、アクリルまたは石英ガラス等の無機材料のいずれかであることで、紫外線を透過することができるため、把持部表面及び把持部23,33,45に触れている者の接触箇所を殺菌することができる。また、非晶質のフッ素樹脂は、加工が容易であるため樹脂成形し易い。また、非晶質のフッ素樹脂に変えてフッ素を含有したウレタンアクリレートなどの化合物や、ポリプロピレンを使用してもよい。これらの素材は、強度があるので、ドクターテーブル3の把持部33や、診療用無影灯2の把持部23の素材として好適である。
なお、紫外線透過部材U1,U2は、非晶質のフッ素樹脂、アクリルまたは石英ガラス等の無機材料の外側に多孔質または繊維状の部材を設けてもよく、また、これら素材を組合せて多重構造にしてもよい。
【0073】
また、図3図5及び図6に示すように、紫外線光源部26,34,46は、当該紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線が特定(単一)の波長以外の波長を有することを防止するフィルタ(図示省略)を備えている。
【0074】
かかる構成によれば、紫外線光源部26,34,46は、複数の波長を有している場合に、ハンドパスフィルタ等のフィルタ(図示省略)によって特定の波長を取り出すことができる。フィルタは、また、特定の波長以外の波長が混在することを防止することで、身体への危害を回避している。
【0075】
また、図1または図7に示すように、医療用装置S(歯科用診療装置100)は、紫外線光源部26,34,46を制御する光源制御部36と、診療対象の患者の交代を検出する患者交代検出手段48と、を有し、光源制御部36は、患者交代検出手段48に基づいて、紫外線光源部26,34,46を制御する。
【0076】
かかる構成によれば、医療用装置S(歯科用診療装置100)は、光源制御部36と、患者交代検出手段48と、を有することで、患者が交代するごとに、紫外線光源部26,34,46を自動的に駆動させることができる。このため、歯科用診療装置100は、紫外線照射を自動的に行って把持部23,33,45を効率よく殺菌することで、交叉感染を予防することができる。
【0077】
また、図3図5及び図6に示す紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線の波長は、190nm~230nmにピークを有している。
【0078】
かかる構成によれば、紫外線光源部26,34,46から発生される波長が190nm~230nmにピークを有する紫外線は、身体への危害を回避しつつ、把持部23,33,45の殺菌を行うことができる。この波長の紫外線は、黄色ブドウ球菌及び緑膿菌を殺菌するのに有効である。
【0079】
また、図3図5及び図6に示す紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線の波長は、207nmにピークを有している。
【0080】
かかる構成によれば、紫外線光源部26,34,46から発生される波長が207nmにピークを有する紫外線は、身体への危害を回避しつつ、特定のウイルスについて把持部23,33,45の殺菌を行うことができる。
【0081】
また、図3図5及び図6に示す紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線の波長は、222nmにピークを有している。
【0082】
かかる構成によれば、紫外線光源部26,34,46から発生される波長が222nmにピークを有する紫外線は、身体への危害を回避しつつ、特に新型コロナウイルス(正式名称は「SARS-Cov-2」)について把持部23,33,45の殺菌を有効的に行うことができる。
【0083】
また、紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線の波長は、230nm~280nmにピークを有している。
【0084】
かかる構成によれば、紫外線光源部26,34,46から発生される波長が230nm~280nmにピークを有する紫外線は、把持部23,33,45の殺菌を行うことができる。
【0085】
また、紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線の波長は、254nmにピークを有している。
【0086】
かかる構成によれば、紫外線光源部26,34,46から発生される波長が254nmにピークを有する紫外線は、最も強い殺菌効果があり、把持部23,33,45の殺菌を短時間で効率よく行うことができる。
【0087】
また、図7に示すように、医療用装置S(歯科用診療装置100)は、紫外線光源部26,34,46を制御する光源制御部36を有し、把持部23,33,45は、当該把持部23,33,45を使用者が把持したか否かを検出する把持検出手段27,37,47を有し、光源制御部36は、把持検出手段27,37,47により把持が検出されなくなった後に、紫外線光源部26,34,46から紫外線を発生させる。
【0088】
かかる構成によれば、医療用装置S(歯科用診療装置100)は、把持検出手段27,37,47で使用者が把持していることを検出し、把持がなくなった後に、紫外線を把持部23,33,45に自動的に照射する。これにより、把持部23,33,45を効率よく殺菌して、交叉感染を予防することができる。
【0089】
また、図7に示すように、医療用装置S(歯科用診療装置100)は、紫外線光源部26,34,46を制御する光源制御部36を有し、把持部23,33,45は、使用者が把持したか否かを検出する把持検出手段27,37,47を有し、光源制御部36は、把持検出手段27,37,47により少なくとも把持が検出されている間は紫外線光源部26,34,46から紫外線を発生させる。
【0090】
かかる構成によれば、医療用装置S(歯科用診療装置100)は、把持検出手段27,37,47で使用者が把持部23,33,45を把持していることを検出し、把持が行われている間中、紫外線を照射して殺菌することができる。このため、医療用装置S(歯科用診療装置100)は、把持部23,33,45及び把持をしている人の手を効率よく殺菌して、交叉感染並びにウイルスを他の箇所に広がるのを予防することができる。
【0091】
また、図7に示すように、紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線の照射範囲内に人がいるか否かを検出する人検知手段HSを備えている。
【0092】
かかる構成によれば、人検知手段HSは、紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線の照射範囲内に人が居ないことを検出することができるので、人検知手段HSで紫外線の照射範囲内に人が居ないことを確認した場合に、紫外線を照射することができる。このため、光源制御部36は、紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線が患者に当たらないようにすることが可能である。これにより、人検知手段HSは、紫外線光源部26,34,46による人への紫外線の照射防止しつつ、把持部23,33,45を殺菌することができる。
【0093】
また、医療用装置S(歯科用診療装置100)は、紫外線光源部26,34,46を制御する光源制御部36と、紫外線光源部から発生される紫外線の照射範囲内に人がいるか否かを検出する人検知手段と、紫外線光源部26,34,46から発生される紫外線の照射範囲内に人がいるか否かを検出する人検知手段HSと、診療対象の患者の交代を検出する患者交代検出手段48と、を備え、光源制御部36は、患者交代検出手段48により診療対象の患者の交代を検出し、さらに、人検知手段HSが人を検知しない場合に、紫外線光源部26,34,46から紫外線を発生させる。
【0094】
かかる構成によれば、光源制御部36は、患者交代検出手段48で診療対象の患者の交代を検出し、さらに、人検知手段HSで紫外線の照射範囲内に人が居ないことを検出した場合に、紫外線光源部26,34,46から紫外線を発生させることができる。このため、光源制御部36は、例えば、紫外線光源部26,34,46から230nm~280nmの波長域の紫外線を照射する場合、さらに確実に、紫外線光源部26,34,46からの紫外線が患者に当たらないようにすることが可能である。
【0095】
[第1変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0096】
図10は、本発明の実施形態に係る医療用装置Sの第1変形例を示す図であり、ドクターテーブル3Aの把持部33Aの構造を示す説明図である。
【0097】
例えば、前記実施形態で説明した図2及び図3に示すドクターテーブル3の紫外線光源部34は、把持部33の内部に配置することに限定されるものではない。図10に示すように、ドクターテーブル3Aの紫外線光源部34Aは、把持部33Aの基端部に嵌着したスリーブ32Aに設けて、紫外線光源部34Aから発生した紫外線を導光可能とする紫外線透過部材U1から成る把持部33Aの基端部から把持部33A内全体に照射して把持部33Aを殺菌するようにしてもよい。
【0098】
この場合、把持部33Aは、全体が紫外線を導光可能な紫外線透過部材U1で構成されている。把持部33Aは、紫外線を導光する石英、アクリル丸棒などの紫外線透過材から成る。把持部33Aの基端部には、紫外線光源部34Aを挿設するための穴状の光源設置部33Aaが形成されている。
【0099】
また、紫外線光源部34Aは、例えば、紫外線発光素子(図示省略)と、紫外線発光素子を覆ったレンズ部32Aaと、レンズ部32Aaから突出したリードフレーム32Abと、を備えて構成されている。紫外線光源部34Aは、把持部33Aの基端に着脱可能に取り付けられる有底筒形状のスリーブ32Aの内底にリードフレーム32Abを挿通して、レンズ部32Aaをスリーブ32Aの内底に配置するようにして、スリーブ32Aに設けられている。このため、紫外線光源部34Aは、スリーブ32Aを把持部33Aの基端部に挿着することで、把持部33Aの基端部に配置されている。
【0100】
かかる構成によれば、紫外線光源部34Aが把持部33Aの外部に配置されているので、把持部33Aの形状を自由に変えたり、把持部33Aの細くしたり、小さくしたり、紫外線光源部34A及びスリーブ32Aを自由に着脱したりすることが可能となる。紫外線光源部34Aは、ドクターテーブル3Aに設けたスイッチを押下すること、あるいは、フットスイッチなどを操作することによってON/OFFを切り替えて、点灯、消灯する。このため、実施形態で説明した把持検出手段27(図7参照)は、なくてもよい。
【0101】
[第2変形例]
図11は、本発明の実施形態に係る医療用装置Sの第2変形例を示す図であり、診療用無影灯2Bの把持部23Bの構造を示す説明図である。
【0102】
例えば、前記実施形態で説明した図4及び図5に示す診療用無影灯2の紫外線光源部26は、把持部23の内部に配置することに限定されるものではない。図11に示すように、診療用無影灯2Bの紫外線光源部26B,26Bは、円弧形状(略U字形状)の把持部23Bの両端部に装着したスリーブ32Bに設けて、二つの紫外線光源部26B,26Bから発生した紫外線を導光可能とする紫外線透過部材U1から成る把持部23Bの両端部から把持部23B内全体に照射するようにしてもよい。
【0103】
この場合、把持部23Bは、第1変形例の把持部33Aと同様に、全体が紫外線透過部材U1で形成されて、円弧形状の把持部23Bの両端部に光源設置部32Baが形成されている。
また、紫外線光源部26B及びスリーブ32Bは、第1変形例の紫外線光源部34A及びスリーブ32Aと同一である。このため、把持検出手段27(図7参照)は、なくてもよい。
【0104】
かかる構成によれば、紫外線光源部26B,26Bが把持部23Bの端部に着脱可能に配置されているので、把持部23Bを細くてシンプルな構造にしたり、自由に曲げた状態に形成したりすることができる。
【0105】
[第3変形例]
図12は、本発明の実施形態に係る医療用装置Sの第3変形例を示す図であり、ドクターテーブル3Cの把持部33Cの構造を示す説明図である。
【0106】
図12に示すように、静電容量式センサ(タッチスイッチ)から成る把持検出手段37Cは、把持部33Cの内部(中空部分)に設けてもよい。
【0107】
この場合、把持部33Cは、中空状の透明体の絶縁体から成る。把持検出手段37Cは、把持部33Cの内壁33Caに被着された電極シートから成る。その電極シートは、誘電体(絶縁物)としてのアクリル(紫外線透過部材U1の他の材質でもよい)に取り付けられる。また、電極シートは、複数設けてもよい。また、紫外線光源部(図示省略)は、把持部33Cの外部にあっても、内部にあってもよい。
【0108】
かかる構成によれば、把持検出手段37Cは、把持部33Cの内部(中空部分)に設けられているので、使用者が把持部33Cを把持して使用しても、把持検出手段37Cに触れることがないため、把持検出手段37Cが損傷するのを防止することができる。
【0109】
[第4変形例]
図13Aは、本発明の実施形態に係る医療用装置Sの第4変形例を示す図であり、使用者の指が把持部33Dから離れているときの状態を示す説明図である。図13Bは、本発明の実施形態に係る医療用装置Sの第4変形例を示す図であり、使用者の指が把持部33Dに接触したときの状態を示す説明図である。図13Cは、図13Bの要部拡大図である。
【0110】
図13A図13Cに示すように、電極シートから成る把持検出手段37Dは、ガラス、アクリル等の透明な絶縁体から成る把持部33Dの下面に設けてもよい。
この場合、把持部33Dは、一部を紫外線透過部材U1で形成して、その他の部分は、紫外線透過部材U1でなくてもよい。
【0111】
かかる構成によれば、把持検出手段37Dは、把持部33Dの下面に設けられているので、使用者が把持部33Dを把持して使用しても、把持検出手段37Dに触れることがないため、把持検出手段37Dが損傷するのを防止することができる。
【0112】
[第5変形例]
図14は、本発明の実施形態に係る医療用装置Sの第5変形例を示す図であり、ドクターテーブル3Eの把持部33Eの構造を示す説明図である。
【0113】
図14に示すように、把持検出手段37Eは、把持部33Eの外周部に設けた押釦スイッチであってもよい。
【0114】
この場合、押釦スイッチから成る把持検出手段37Eは、把持部33Eの下面側に設置される。紫外線光源部34Eは、第1変形例の紫外線光源部34A(図10参照)同様に、把持部33Eの基端にスリーブ32Eによって取り付けられるが、把持部33Eの内部に配設してもよく、また、把持部33Eの外部に配設してもよい。
【0115】
かかる構成によれば、把持検出手段37Eは、使用者が把持部33Eを把持したときに、把持と同時に操作部が押し下げられてONして、使用者が把持部33Eを把持したことを検出する。
【0116】
[第6変形例]
図15は、本発明の実施形態に係る医療用装置Sの第6変形例を示す図であり、ドクターテーブル3Fの把持部33Fの構造を示す説明図である。
【0117】
図15に示すように、把持検出手段37Fは、把持部33Fの下面に設けた赤外線センサ(またはラインセンサでもよい)等の光学式センサや、抵抗膜フィルムから成るものであってもよい。
この場合、把持検出手段37Fは、把持部33Fの内部に配設してもよく、また、把持部33Fの外部に配設してもよい。
【0118】
このようにして把持検出手段37Fを把持部33Fに設けても、使用者が把持部33Fを把持したときに、使用者が把持部33Fを把持したことを検出することができる。
【0119】
[その他の変形例]
例えば、図1に示す患者交代検出手段48は、このセンサの代わりに、サーモカメラ等のカメラ装置を使用して患者の交代を検出してもよい。この場合、患者交代検出手段48は、アーム13、または、診療用無影灯2の筐体21に取り付ける
【0120】
前記実施形態、第1変形例及び第2変形例では、把持部23,23B,33,33A,45の一例として、診療用無影灯2,2Bの把持部23,23B、ドクターテーブル3,3Bの把持部33,33A、診療椅子4の把持部45(アームレスト49)を例に挙げて説明したが、使用者が手で掴む診療器具の部分であれば適用可能である。例えば、把持部は、分娩台のアームレスト、車椅子のアームレスト、手術台のアームレスト及びハンドサポート、ベッド及び手術台の手摺、医療用撮影装置の把持部等であってもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 歯科用診療装置
2,2B 診療用無影灯
3,3A,3C,3E,3F ドクターテーブル
4 診療椅子
23,23B,33,33A,33C,33D,33E,33F,45 把持部
26,26B,34,34A,46 紫外線光源部
27,37,37C,37D,37E,37F,47 把持検出手段
36 光源制御部
45a 芯材
45b,45c 被覆部材
48 患者交代検出手段
49 アームレスト(把持部)
100 歯科用診療装置
HS 人検知手段
S 医療用装置
U1,U2 紫外線透過部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15