(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】プラスチック造粒装置、及び、それに用いるろ過装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/69 20190101AFI20220712BHJP
B29B 7/48 20060101ALI20220712BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20220712BHJP
B29B 13/10 20060101ALI20220712BHJP
C08J 11/06 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B29C48/69
B29B7/48
B29B9/06
B29B13/10
C08J11/06 ZAB
(21)【出願番号】P 2020183894
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】316007388
【氏名又は名称】株式会社MSC
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】麦谷 貴司
(72)【発明者】
【氏名】坂庭 貞夫
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-107330(JP,A)
【文献】中国実用新案第200942589(CN,Y)
【文献】特開2018-196939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B29B 7/00-11/14
B29B 13/00-15/06
B29C 31/00-31/10
B29C 37/00-37/04
B29C 71/00-71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む廃棄物を材料として再生樹脂を製造するプラスチック造粒装置に用いるろ過装置であって、
対向するように配設された2枚のフィルターと、
前記フィルターを内部
のろ過室に有し、
前記ろ過室は、前記フィルターの対向方向における外側を前室、前記フィルターの対向方向における内側を後室として、ろ過する材料を流通させるろ過室体と、
前記ろ過室体の壁面内部に、冷却媒体を流通させる流通路を有し、前記ろ過室体の内部において、前記材料を冷却する冷却手段と
を備えたことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
樹脂を含む廃棄物を材料として再生樹脂を製造するプラスチック造粒機であって、
前記材料を加熱すると共にせん断力を加えて溶融混錬する溶融混錬機と、
前記溶融混錬機により処理した前記材料をろ過する請求項
1記載のろ過装置と
を備えたことを特徴とするプラスチック造粒装置。
【請求項3】
前記溶融混錬機は、二軸押出機を有することを特徴とする請求項
2記載のプラスチック造粒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を含む廃棄物を材料として再生樹脂を製造するプラスチック造粒装置、及び、それに用いるろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品は安価で軽量であり、また、耐久性に優れることから、フィルム、シートまたは小型、大型の各種成形品として多くの用途に用いられている。そのため、これらのプラスチック製品を使用した後には、多量の廃棄物が発生し、その処理が問題となっている。そこで、近年では、これらの廃棄物を材料として再生樹脂を製造し、再利用することが行われている。廃棄物を材料として再生樹脂を製造する方法としては、例えば、二軸押出機又は一軸押出機を用いて原料を溶融混錬するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
なお、プラスチックの廃棄物にはプラスチック以外の異物が含まれていることも多く、また、溶融混錬時にプラスチックの分解残滓が発生するので、再生樹脂を製造する際には、例えば、材料を溶融混錬した後に、材料に混在する不純物をフィルターにより除去することが行われている。しかしながら、廃棄物を材料に用いる場合には、不純物の大きさが大きく、かつ、量が多いので、押出機により溶融混錬した材料をそのままフィルターに通すと、押し出しによる圧力熱により材料がゲル化したり、焼けたり、炭化してしまう場合があるという問題があった。そのため、高品質の再生樹脂を得ることが難しかった。
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、材料の温度上昇を抑制することができるろ過装置、及び、それを用いたプラスチック造粒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のろ過装置は、プラスチック造粒装置に用いるものであって、フィルターと、フィルターを内部に有し、ろ過する材料を流通させるろ過室体と、ろ過室体の内部において、材料を冷却する冷却手段とを備えたものである。
【0007】
本発明のプラスチック造粒装置は、樹脂を含む廃棄物を材料として再生樹脂を製造するものであって、材料を加熱すると共にせん断力を加えて溶融混錬する溶融混錬機と、溶融混錬機により処理した材料をろ過する本願発明のろ過装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ろ過室体の内部において材料を冷却する冷却手段を備えるようにしたので、樹脂を含む廃棄物を用いても、ろ過時における圧力熱により材料が加熱されて、材料の温度が所定の温度以上に高くなることを抑制することができる。よって、再生樹脂の物性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るプラスチック造粒装置の構成を表す図である。
【
図2】
図1に示したプラスチック造粒装置におけるろ過装置の構成を表すものである。
【
図3】
図2に示したろ過装置の構成を分解して表すものである。
【
図4】本発明の変形例に係るプラスチック造粒装置の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係るプラスチック造粒装置1の構成を表すものである。
図2は、プラスチック造粒装置1におけるろ過装置20の構成を表すものである。
図3は、ろ過装置20の構成を分解して表すものである。
【0012】
このプラスチック造粒装置1は、樹脂を含む廃棄物を材料として再生樹脂を製造するものであり、材料を加熱すると共にせん断力を加えて溶融混錬する溶融混錬機10と、溶融混錬機10により処理した材料をろ過するろ過装置20とを備えている。樹脂を含む廃棄物としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系材料が代表的に挙げられる。廃棄物は、1種類の材料からなるものでも、2種以上の材料を含んでいてもよい。例えば、オレフィン系樹脂フィルムと他の合成樹脂フィルムとを少なくとも張り合わせた複合フィルムでもよい。更に、印刷インクを用いた印刷フィルム、着色剤を用いた着色フィルムでもよい。複合フィルムは、例えば、樹脂フィルム以外に、アルミニウム箔等の金属箔を有していてもよく、樹脂フィルムに金属や酸化チタン等が添加されていてもよい。なお、廃棄物は、使用済みの廃材でも、生産工程で生じる未使用の端材や成形不良品等の未使用品でもよく、新材と廃材の混合物でもよい。
【0013】
溶融混錬機10は、二軸押出機11を有していることが好ましい。二軸押出機11を用いればせん断力により材料がより細分化され、材料を十分に混錬することができるので、ろ過装置20における目詰まりを抑制することができるからである。これに対して、一軸押出機のみでは、せん断力が弱く材料が細分化されない上に材料を十分に混錬することが難しく、ろ過装置20において目詰まりを起こしやすい。二軸押出機11は、例えば、2本のスクリューを噛み合わせて混錬するものであり、材料を投入する投入部11Aと、材料を溶融混錬する本体部11Bと、溶融混錬した材料を押し出す押出部11Cと、駆動させる駆動部11Dとを有している。
【0014】
ろ過装置20は、例えば、溶融混錬機10の押出部11Cに対して連結されている。ろ過装置20は、例えば、内部にろ過室21を有するろ過室体22を有している。ろ過室体22の内部、すなわちろ過室21には、例えば、2枚のフィルター23が対向するように配設されている。各フィルター23は、例えば、ろ過室体22の内壁面に対して固定してそれぞれ配設されている。また、ろ過室体22には、例えば、2枚のフィルター23の対向方向に対して垂直な方向における一方に、溶融混錬機10により処理された材料が流入する流入口22Aと、流入口22Aと対向する方向に、フィルター23によりろ過した材料を排出する排出口22Bが設けられている。
【0015】
ろ過室21は、例えば、2枚のフィルター23の対向方向における外側がろ過前の材料が流入する前室21Aとされ、2枚のフィルター23の対向方向における内側がろ過後の材料が流入する後室21Bとされている。前室21Aには流入口22Aが連通され、後室21Bには排出口22Bが連通されている。これにより、溶融混錬機10により処理された材料は、例えば、流入口22Bからろ過室21の前室21Aに入り、各フィルター23を外側から内側に通過してろ過室21の後室21Bに入り、排出口22Bから排出されるようになっている。
【0016】
各フィルター23の前室21Aの側には、例えば、各フィルター23により分離された不純物を各フィルター23から取り除く回転式の回転加圧ブレード24がそれぞれ配設されている。各回転加圧ブレード24は、例えば、2枚のフィルター23の対向方向を長さ方向とする回転軸25にそれぞれ配設されており、各フィルター23に沿って回転可能とされている。回転軸25は、例えば、各フィルター23の中央部に設けられた貫通孔23Aを貫通し、各フィルター23に対して回転可能とされている。回転軸25にはモータ等の駆動手段26が配設され、回転可能とされている。
【0017】
各フィルター23の後室21Bの側には、例えば、与圧混合ディスク27が配設されている。与圧混合ディスク27は、各フィルター23を通過した材料に圧力を与えて混合するためのものである。与圧混合ディスク27は、例えば、ろ過室体22の内壁面に対して固定してそれぞれ配設されており、ろ過室21の排出口22Bに対応して材料を排出する開口27Aが設けられている。与圧混合ディスク27の中央部には、例えば、回転軸25が貫通される貫通孔27Bが設けられており、回転軸25は貫通孔27Bを貫通し、与圧混合ディスク27に対して回転可能とされている。
【0018】
また、ろ過装置20は、ろ過室体22の内部において、材料を冷却する冷却手段28を有している。ろ過時における材料の温度上昇により材料がゲル化したり、焼けたり、炭化してしまうことを抑制するためである。冷却手段26は、例えば、ろ過室体22の壁面内部に、水などの冷却媒体を流通させる冷媒流通路28Aを有している。なお、
図2に冷媒流通路28Aを具体的に示したが、これは冷媒流通路28Aがろ過室体22の壁面内部に設けられていることを概念的に表したものであり、実際の配設例を表したものではない。冷媒流通路28Aは、図示しない水源などの冷却媒体源に対して接続されており、ポンプ等の冷媒流通手段28Bにより冷却媒体を冷媒流通路28Aに流通させるように構成されている。冷却手段28は、例えば、ろ過室体22の内部における材料の温度を検出し、材料の温度が所定の温度以上である場合に、冷媒流通手段28Bを駆動する制御手段28Cを備えていることが好ましい。
【0019】
このプラスチック造粒装置1は、例えば、次のように動作する。まず、例えば、二軸押出機11の投入部11Aから所定の大きさに粉砕した樹脂を含む廃棄物を投入する。その際、必要に応じて、各種添加剤を投入してもよい。次いで、投入された材料は、本体部11Bにおいて加熱されると共にせん断力が加えられて溶融混錬される。続いて、溶融混錬された材料は、押し出し部11Cから押し出されて、ろ過装置20の流入口22Aからろ過室21の前室21Aに流入し、フィルター23を通過して、ろ過室21の後室21Bを通って、排出口22Bから排出される。
【0020】
その際、このプラスチック造粒装置1では、廃棄物を材料とし、材料に混在する不純物の大きさが大きく、かつ、量が多いので、ろ過装置20において材料がフィルター23を通過する際に圧力熱により温度が上昇してしまう。しかし、このろ過装置20は冷却手段28を備えているので、制御手段28Cによりろ過室体22の内部における材料の温度を検出し、材料の温度が所定の温度以上となると、冷媒流通手段28Bを駆動させて、水などの冷却媒体を冷媒流通路28Aに流通させる。これにより、ろ過室体22の内部において材料が冷却され、温度の上昇が抑制される。
【0021】
このように、本実施の形態によれば、ろ過室体22の内部において材料を冷却する冷却手段28を備えるようにしたので、樹脂を含む廃棄物を用いても、ろ過時における圧力熱により材料が加熱されて、材料の温度が所定の温度以上に高くなることを抑制することができる。よって、再生樹脂の物性を高めることができる。
【0022】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えていなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【0023】
また、上記実施の形態では、1台の溶融混錬機10を用いる場合について説明したが、2台以上を用いてもよい。例えば、
図4に示したように、2台の溶融混錬機10を用い、各溶融混錬機10の後にろ過装置20を配設して連結するようにしてもよい。この場合、1台目の溶融混錬機10は二軸押出機11とし、2台目の溶融混錬機10は、一軸押出機12とすることが好ましい。1台目の溶融混錬機10を一軸押出機とすると、材料が細分化されずかつ、十分に混錬することができず、ろ過装置20において目詰まりを起こしやすく、2台目の溶融混錬機10を二軸押出機11とすると、材料が混ざり過ぎてしまうことがあるからである。なお、一軸押出機12は、例えば、1本のスクリューで混錬するものであり、材料を投入する投入部12Aと、材料を溶融混錬する本体部12Bと、溶融混錬した材料を押し出す押出部12Cと、駆動させる駆動部12Dとを有している。
【産業上の利用可能性】
【0024】
再生樹脂の製造に用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
1…プラスチック造粒装置、10…溶融混錬機、11…二軸押出機、11A…投入部、11B…本体部、11C…押出部、11D…駆動部、12…一軸押出機、12A…投入部、12B…本体部、12C…押出部、12D…駆動部、20…ろ過装置、21…ろ過室、21A…前室、21B…後室、22…ろ過室体、22A…流入口、22B…排出口、23…フィルター、23A…貫通孔、24…ブレード、25…回転軸、26…駆動手段、27…与圧混合ディスク、27A…開口、27B…貫通孔、28…冷却手段、…28A…冷媒流通路、28B…冷媒流通手段、28C…制御手段