IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中川特殊鋼株式会社の特許一覧

特許7103704回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法
<>
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図1
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図2
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図3
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図4
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図5
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図6
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図7
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図8
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図9
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図10
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図11
  • 特許-回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20220712BHJP
   H02K 15/10 20060101ALI20220712BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20220712BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H02K3/34 C
H02K15/10
B29C45/00
B29C45/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021578271
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2021016218
(87)【国際公開番号】W WO2021215482
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2020077333
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391029392
【氏名又は名称】中川特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】小川 典孝
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-70201(JP,A)
【文献】特開2019-134677(JP,A)
【文献】特開2012-148292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/34
H02K 15/10
B29C 45/00
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機のステータ又はロータに設けられたスロットに挿入され、導線を挿入するために断面形状が矩形の貫通孔が複数個形成され、熱可塑性合成樹脂で成形され、かつ前記貫通孔は互いに平行で、前記導線を互いに電気的に絶縁するための隔壁及び外周壁からなる絶縁材と、
前記貫通孔の前記断面形状と断面形状が相似形で、かつ前記貫通孔に挿入される導線と
で構成されるスロットコイルを有する回転電機において、
前記絶縁材は、前記隔壁及び前記外周壁を射出成形で成形するとき、射出された前記熱可塑性合成樹脂である溶融樹脂の流路になり、前記絶縁材の一端のみの外周に形成され、かつ前記隔壁及び前記外周壁より肉厚に成形されたフランジである
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法において、
前記フランジは、平行に配置した二つからなり、前記絶縁材が前記スロットに挿入されたときの位置決め機能を有し、前記フランジの長手方向に直交する断面での断面積が同一であ
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法において、
前記熱可塑性合成樹脂は、耐熱性と電気絶縁性を有する液晶性全芳香族ポリエステルの熱可塑性合成樹脂であり、
前記隔壁及び前記外周壁の肉厚は、0.15ないし0.55mmである
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法
【請求項4】
請求項1又は2に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法において、
前記フランジには、前記溶融樹脂を射出成形するとき、前記溶融樹脂を射出するゲートから前記溶融樹脂を流入させた後、前記溶融樹脂の流れの角度変化である90度を2回行って、前記フランジに流入させるための前記フランジと一体の耳状フランジを配置した
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法において、
前記絶縁材料を射出成形で成形するとき、前記フランジの長辺側に前記長辺と同じ幅を有するファンゲートとにより成形するものである
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法。
【請求項6】
請求項4に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法において、
前記耳状フランジは、前記フランジの一端にそれぞれに配置されており、
前記射出成形するとき、前記溶融樹脂を貯留するために、前記フランジの他端に配置されている湯だまりを有する
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法。
【請求項7】
請求項5に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法において、
前記ファンゲートには、射出された溶融樹脂の流れを阻害する流量制御部材を配置し、
前記ファンゲートの下流に配置され、前記前記ファンゲートと平行に配置された湯溜まりと、
前記湯溜まりの下流に配置されたフィルム状のランナと
からなることを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法。
【請求項8】
請求項7に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法であって、
前記射出成形を行う成形機は、0.1秒以内に射出速度がピークに達する高速射出成形機である
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法に関する。更に詳しくは、回転電機のステータに配置された導線の絶縁に使用される回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ、発電機等の回転電機のステータとして、セグメントコイルを有する回転電機が提案されている。セグメントコイルの導線は、モータの効率向上とのために断面形状が真四角、平角線等の矩形のものが用いられている(特許文献1、特許文献2)。更に、組立効率の向上のために、このセグメントコイルをスロットコイルにするものも提案されている。スロットコイルの絶縁材を絶縁紙に換えて、樹脂で射出成形で成形し、これに平角線コイルをステータのスロットに挿入して組立てて、セグメントコイルとするものである(特許文献3)。この絶縁材の一端にフランジ(鍔部)を形成し、このフランジにより絶縁材料とスロットの間の隙間を封止して、巻線固定用のワニスの流れを封止するものである。
【0003】
セグメントコイルによる電動モータの損失を防ぐには、スロットコイルの導線間を電気的に絶縁性を高くする必要がある。絶縁性を高くするには肉厚を厚くすることで実現できるが、導線の密度が低くなり電動モータの変換効率が低下し、しかもモータが大型化する。一方、電動モータの銅損による発熱は避けられないので、絶縁材には耐熱性も要求される。即ち、セグメントコイルを構成する絶縁材は、絶縁性と耐熱性の両方が要求され、しかも導線間の隙間は狭いので、薄肉のものが要求されるので、可能な限り薄く形成しなければならない。しかしながら、一般的に絶縁性と耐熱性の両方が要求され、かつ薄肉の成形品を射出成形により成形することは、金型内での樹脂の流れが悪く困難である。取り分け、電機的な絶縁性と耐熱性を有する樹脂の流れは良くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-35687号公報
【文献】特開2019-161964号公報
【文献】特開2018-125924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような背景で発明されたものであり、以下の目的を達成するものである。
本発明の目的は、肉厚を薄く、しかも正確な形状を製造できる、回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、絶縁性、耐熱性が高い熱可塑性合成樹脂で成形された、回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、次の手段を採る。
即ち、本発明1の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法は、
回転電機のステータ又はロータに設けられたスロットに挿入され、導線を挿入するために断面形状が矩形の貫通孔が複数個形成され、熱可塑性合成樹脂で成形され、かつ前記貫通孔は互いに平行で、前記導線を互いに電気的に絶縁するための隔壁及び外周壁からなる絶縁材と、
前記貫通孔の前記断面形状と断面形状が相似形で、かつ前記貫通孔に挿入される導線と
で構成されるスロットコイルを有する回転電機において、
前記絶縁材は、前記隔壁及び前記外周壁を射出成形で成形するとき、射出された前記熱可塑性合成樹脂である溶融樹脂の流路になり、前記絶縁材の一端のみの外周に形成され、かつ前記隔壁及び前記外周壁より肉厚に成形されたフランジであることを特徴とする。
【0007】
本発明2の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法は、本発明1において、前記フランジは、平行に配置した二つからなり、前記絶縁材が前記スロットに挿入されたときの位置決め機能を有し、前記フランジの長手方向に直交する断面での断面積が同一であことを特徴とする。
本発明3の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法は、本発明1又は2において、前記熱可塑性合成樹脂は、耐熱性と電気絶縁性を有する液晶性全芳香族ポリエステルの熱可塑性合成樹脂であり、前記隔壁及び前記外周壁の肉厚は、0.15ないし0.55mmであることを特徴とする。
【0008】
本発明4の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法は、本発明1又は2において、前記フランジには、前記溶融樹脂を射出成形するとき、前記溶融樹脂を射出するゲートから前記溶融樹脂を流入させた後、前記溶融樹脂の流れの角度変化である90度を2回行って、前記フランジに流入させるための前記フランジと一体の耳状フランジを配置したことを特徴とする。
本発明5の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法は、本発明1又は2において、前記絶縁材料を射出成形で成形するとき、前記フランジの長辺側に前記長辺と同じ幅を有するファンゲートとにより成形するものであることを特徴とする。
【0009】
本発明6の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法は、本発明4において、前記耳状フランジは、前記フランジの一端にそれぞれに配置されており、前記射出成形するとき、前記溶融樹脂を貯留するために、前記フランジの他端に配置されている湯だまりを有することを特徴とする。
本発明7の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法は、本発明5において、前記ファンゲートには、射出された溶融樹脂の流れを阻害する流量制御部材を配置し、前記ファンゲートの下流に配置された湯溜まりと、前記湯溜まりの下流に配置されたフィルム状のランナとからなることを特徴とする。
【0010】
本発明8の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法は、本発明6又は7において、前記射出成形を行う成形機は、0.1秒以内に射出速度がピークに達する高速射出成形機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法は、導線を挿入するための貫通孔の一端の外周に、肉厚のフランジが成形されている。従って、絶縁材の成形時に、フランジがランナーとして機能し、肉厚の薄い貫通孔の外周壁及び隔壁に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入するため、形状が正確で滑らかな成形品を作ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の回転電機のスロットコイル用絶縁材を備えた回転電機のステータを示す要部の等角投影図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す全体を示す等角投影図である。
図3図3(a)は、図2のP矢視図、図3(b)は図3(a)のQ部拡大図である。
図4図4は、図2のA-A断面図である。
図5図5は、本発明の回転電機のスロットコイル用絶縁材を成形する射出成形機の射出速度波形を示すグラフである。
図6図6(a)は、本発明の第2の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図、図6(b)は本発明の第3の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図である。
図7図7(a)は、本発明の第4の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図、図7(b)は本発明の第5の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図である。
図8図8(a)は、本発明の第6の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図、図8(b)は本発明の第7の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図である。
図9図9は、本発明の第8の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す平面図である。
図10図10は、図9の矢印Aの方向から見た部分拡大図である。
図11図11(a)は、本発明の第9の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す全体を示す等角投影図であり、図11(b)は、図11(a)のB-B線で切断した部分断面図である。
図12図12(a)は、本発明の第10の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す全体を示す等角投影図であり、図12(b)は、図12(a)のB-B線で切断した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔スロットコイル用絶縁材の第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の回転電機のスロットコイル用絶縁材を備えた回転電機のステータを示す要部の等角投影図である。図1に示すように、回転電機のステータ100に放射状に複数形成されたスロット101には、絶縁材1と導線11で構成されたスロットコイル12が装着されている。図2は、本発明の第1の実施の形態のスロットコイル用絶縁材1を示す全体等角投影図、図3(a)は図2のP矢視図、図3(b)は図3(a)のQ部拡大図、図4図2のA-A断面図である。図2から図4に示すように、本発明の第1の実施の形態の絶縁材1は、断面が矩形の導線11を挿入するための6個の貫通孔13が形成されている。この絶縁材1は、導線11の固定と導線11の電気的な絶縁機能を果たすものである。貫通孔13の断面形状は、導線11と断面形状が相似形の矩形に形成され、互いに平行になるように配置されている。本例の導線11は平角銅線(日本工業規格等で規定する「平角銅線」等を意味する。)であり、絶縁被膜のないもの、又は、樹脂等(60~100μ程度)により被覆された導線を使用する。絶縁材1は、電機的な絶縁性、耐熱性の高い合成樹脂により射出成形されたものである。
【0014】
図4に示すように、絶縁材1は、貫通孔13の外周壁131、132及び隔壁133を有し、その厚さ(a、b、c)が同一で、本例では0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材1には、貫通孔13の上端の外周にフランジ14が成形されている。フランジ14は、2個の長辺側フランジ15、15と2個の耳状フランジ16、16で構成されている。長辺側フランジ15、15は2個の長辺の全長に渡って形成され、耳状フランジ16、16は、長辺側フランジ15、15の一端に、長辺側フランジ15、15から直角に突出して形成されている。長辺側フランジ15、15の厚さd、耳状フランジ16、16の厚さe、長辺側フランジ15、15と耳状フランジ16、16の高さfは、外周壁131、132及び隔壁133の厚さa、b、cよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ14は、図1のスロット101に絶縁材1を装着したときの位置決め用ストッパーとして作用し、導線11の電機的な絶縁と固定のためのワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材1を成形後、フランジ14は切断する必要が無い。なお、フランジ14は、絶縁材1の機能としては必須のものではないが、切断する必要もない。何故ならば、フランジ14は、絶縁材1がスロット101に挿入後、位置決め用のストッパーの機能を果たし、回転機を構成する他の部材と干渉することもない。
【0015】
図3(a)に示すように、図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、射出成形金型内のスプルー171からランナー172を経由し、ゲート173、173を介して耳状フランジ16、16に各々流入する。ゲート173、173は、キャビティの端部に設けたサイドゲートと呼ばれるものであり、ゲート173、173の断面は小さな円形又は矩形であり、耳状フランジ16、16に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がゲート173、173から耳状フランジ16、16に流入する方向は、耳状フランジ16、16の肉厚方向である。図3(b)に示すように、ゲート173、173から耳状フランジ16、16に流入した熱可塑性合成樹脂は、耳状フランジ16、16の対向壁161、161にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少させられる。更に、耳状フランジ16、16から長辺側フランジ15、15に流れるときに、90度方向が変えられて、長辺側フランジ15、15に流れて、長辺側フランジ15、15を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁131、132及び隔壁133に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、形状が正確で、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、耳状フランジ16、16、長辺側フランジ15、15が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁131、132及び隔壁133に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【0016】
本発明の第1の実施の形態の絶縁材1の材料として使用する熱可塑性合成樹脂は、液晶性全芳香族ポリエステルが好ましい。液晶性全芳香族ポリエステルは、電気的な絶縁性、耐熱性があり、しかも温度管理(成形温度320℃~400℃)を正確にすれば、流動性が高いので、成形性が良い。但し、液晶性全芳香族ポリエステルは、成形時の溶融粘度が低く、固化速度が速いため、0.2mm以下の超薄肉製品の場合、薄肉部で樹脂が固化し十分な流動性が得られない場合がある。そのため、汎用の成形機では成形できない又は困難であるので、図5に示すような、0.1秒以内に射出速度がピークに達するような特性を有する高速射出成形機を用いる射出成形が好ましい。
【0017】
〔スロットコイル用絶縁材の第2の実施の形態〕
図6(a)は、本発明の第2の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図である。本発明の第2の実施の形態の絶縁材2は、第1の実施の形態の絶縁材1の耳状フランジ16、16が無く、ゲート173、173の配置位置が異なることである。貫通孔23の個数と形状は、第1の実施の形態の絶縁材1と同一である。また、絶縁材2は、この断面を図示はしないが、貫通孔23の外周壁231及び隔壁233の厚さ(a、b、c)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材2には、貫通孔23の上端の外周にフランジ24が成形されている。フランジ24は、互いに平行に配置された2個の長辺側フランジ25、25で構成されている。長辺側フランジ25、25は2個の長辺の全長に渡って形成されている。長辺側フランジ25、25の厚さd、長辺側フランジ25、25の高さfは、外周壁231、232及び隔壁233の厚さa、b、cよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ24は、図1のスロット101に絶縁材2を装着したときの位置決め用ストッパーとして作用とワニスの漏洩を止める機能も有する。また、絶縁材2を成形後、切断する必要が無い。
【0018】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、ピンサイドゲート273、273を介して長辺側フランジ25、25に各々流入する。このピンサイドゲート273、273は、長辺側フランジ25、25の長さ方向の中間位置に設けられ、小さな点で長辺側フランジ25、25に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がピンサイドゲート273、273から長辺側フランジ25、25に流入する方向は、長辺側フランジ25、25の肉厚方向である。ピンサイドゲート273、273から長辺側フランジ25、25に流入した熱可塑性合成樹脂は、長辺側フランジ25、25の対向壁(図示せず)にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、長辺側フランジ25、25を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁231、232及び隔壁233に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、長辺側フランジ25、25が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁231、232及び隔壁233に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【0019】
〔スロットコイル用絶縁材の第3の実施の形態〕
図6(b)は、本発明の第3の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図である。本発明の第3の実施の形態の絶縁材3は、第2の実施の形態の絶縁材2の貫通孔23の個数が異なる点と、短辺側フランジが追加された点である。すなわち、第3の実施の形態の絶縁材3は、貫通孔33の個数が8個で2列に形成されている。また、絶縁材3は、断面の図示はしないが、貫通孔33の外周壁331、332及び隔壁333の厚さ(a、b、c)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材3には、貫通孔33の上端の外周にフランジ34が成形されている。フランジ34は、2個の長辺側フランジ35、35と2個の短辺側フランジ38、38で構成されている。長辺側フランジ35、35は2個の長辺の全長に渡って形成されている。また、短辺側フランジ38、38は、2個の短辺の全長に渡って形成されている。長辺側フランジ35、35、短辺側フランジ38、38の厚さd、長辺側フランジ35、35、短辺側フランジ38、38の高さfは、外周壁331、332及び隔壁333の厚さa、b、cよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ34は、図1のスロット101に絶縁材3を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材3を成形後、切断する必要が無い。
【0020】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、ピンサイドゲート373、373を介して長辺側フランジ35、35に各々流入する。ピンサイドゲート373、373は、長辺側フランジ35、35の長さ方向の中間位置に設けられ、小さな点で長辺側フランジ35、35に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がピンサイドゲート373、373から長辺側フランジ35、35に流入する方向は、長辺側フランジ35、35の肉厚方向である。ピンサイドゲート373、373から長辺側フランジ35、35に流入した熱可塑性合成樹脂は、長辺側フランジ35、35の対向壁(図示せず)にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、長辺側フランジ35、35、短辺側フランジ38、38を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁331、332及び隔壁333に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、長辺側フランジ35、35、短辺側フランジ38、38が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁331、332及び隔壁333に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【0021】
〔スロットコイル用絶縁材の第4の実施の形態〕
図7(a)は、本発明の第4の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図である。本発明の第4の実施の形態の絶縁材4は、第1の実施の形態の絶縁材1の貫通孔13の形状が異なることと、短辺側フランジが追加されたことである。すなわち、第4の実施の形態の絶縁材4は、貫通孔43の形状が長方形で、個数は6個で同一である。また、絶縁材4は、断面の図示はしないが、貫通孔43の外周壁431、432及び隔壁433の厚さ(a、b、c)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材4には、貫通孔43の上端の外周にフランジ44が成形されている。フランジ44は、2個の長辺側フランジ45、45と2個の耳状フランジ46、46、1個の短辺側フランジ48で構成されている。長辺側フランジ45、45は2個の長辺の全長に渡って形成され、耳状フランジ46、46は、長辺側フランジ45、55の一端に、長辺側フランジ45、45から直角に突出して形成されている。また、短辺側フランジ48は長辺側フランジ45、55の他端に、短辺の全長に渡って形成されている。長辺側フランジ45、45、短辺側フランジ48の厚さd、耳状フランジ46、46の厚さe、長辺側フランジ45、45、短辺側フランジ48、耳状フランジ46、46の高さfは、外周壁431、432及び隔壁433の厚さa、b、cよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ44は、図1のスロット101に絶縁材4を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材4を成形後、切断する必要が無い。
【0022】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、ゲート473、473を介して耳状フランジ46、46に各々流入する。ゲート473、473は、小さな点で耳状フランジ46、46に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がゲート473、473から耳状フランジ46、46に流入する方向は、耳状フランジ46、46の肉厚方向である。ゲート473、473から耳状フランジ46、46に流入した熱可塑性合成樹脂は、耳状フランジ46、46の図示しない対向壁にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、耳状フランジ46、66、長辺側フランジ45、45、短辺側フランジ48を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁431、432及び隔壁433に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、耳状フランジ46、46、長辺側フランジ45、45、短辺側フランジ48が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁431、432及び隔壁433に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。第4の実施の形態の絶縁材4は、第1の実施の形態の絶縁材1と比較して短辺の長さが長いため、短辺側フランジ48のランナーとしての機能が効果的である。
【0023】
〔スロットコイル用絶縁材の第5の実施の形態〕
図7(b)は、本発明の第5の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図である。本発明の第5の実施の形態の絶縁材5は、第2の実施の形態の絶縁材2の貫通孔23の個数が異なることと、短辺側フランジが追加され、ゲートの流入位置が異なることである。すなわち、第5の実施の形態の絶縁材5は、貫通孔53の個数が4個で1列に形成されている。また、絶縁材5は、断面の図示はしないが、貫通孔53の外周壁531、532及び隔壁533の厚さ(a、b、c)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材5には、貫通孔53の上端の外周にフランジ54が成形されている。フランジ54は、2個の長辺側フランジ55、55と1個の短辺側フランジ58で構成されている。長辺側フランジ55、55は2個の長辺の全長に渡って形成されている。また、短辺側フランジ58は1個の短辺の全長に渡って形成されている。長辺側フランジ55、55、短辺側フランジ58の厚さd、長辺側フランジ55、55、短辺側フランジ58の高さfは、外周壁531、532及び隔壁533の厚さa、b、cよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ54は、図1のスロット101に絶縁材5を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材5を成形後、切断する必要が無い。
【0024】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、1個のピンサイトゲート573を介して短辺側フランジ58に流入する。ピンサイトゲート573は、短辺側フランジ58の長さ方向の中間位置に設けられ、小さな点で短辺側フランジ58に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がピンサイトゲート573から短辺側フランジ58に流入する方向は、短辺側フランジ58の肉厚方向である。ゲート573から短辺側フランジ58に流入した熱可塑性合成樹脂は、短辺側フランジ58の対向壁(図示せず)にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、短辺側フランジ58、長辺側フランジ55、55を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁531、532及び隔壁533に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、短辺側フランジ58、長辺側フランジ55、55がランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁531、532及び隔壁533に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【0025】
〔スロットコイル用絶縁材の第6の実施の形態〕
図8(a)は、本発明の第6の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図である。本発明の第6の実施の形態の絶縁材6は、第1の実施の形態の絶縁材1の貫通孔13の個数と形状が異なることである。本発明の第6の実施の形態の絶縁材6は、貫通孔63の矩形の面積が大きく、個数は1個である。絶縁材6は、貫通孔63の外周壁631、632の厚さ(a(図示せず。)、b)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材6には、貫通孔63の上端の外周にフランジ64が成形されている。フランジ64は、2個の長辺側フランジ65、65と2個の耳状フランジ66、66で構成されている。長辺側フランジ65、65は2個の長辺の全長に渡って形成され、耳状フランジ66、66は、長辺側フランジ65、65の一端に、長辺側フランジ65、65から直角に突出して形成されている。長辺側フランジ65、65の厚さd、耳状フランジ66、66の厚さe、長辺側フランジ65、65と耳状フランジ66、66の高さfは、外周壁631、632の厚さa、bよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ64は、図1のスロット101に絶縁材6を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材6を成形後、切断する必要が無い。
【0026】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、ゲート673、673を介して耳状フランジ66、66に各々流入する。ゲート673、673は、小さな点で耳状フランジ66、66に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がゲート673、673から耳状フランジ66、66に流入する方向は、耳状フランジ66、66の肉厚方向である。ゲート673、673から耳状フランジ66、66に流入した熱可塑性合成樹脂は、耳状フランジ66、66の図示しない対向壁にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、耳状フランジ66、66、長辺側フランジ65、65を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁631、632に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、耳状フランジ66、66、長辺側フランジ65、65が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁631、632に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【0027】
〔スロットコイル用絶縁材の第7の実施の形態〕
図8(b)は、本発明の第7の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の等角投影図である。本発明の第7の実施の形態の絶縁材7は、第6の実施の形態の絶縁材6の長辺側フランジ65、65と耳状フランジ66、66が無く、短辺側フランジを設けたことである。すなわち、絶縁材7は、貫通孔73の外周壁731、732の厚さ(a、b)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材7には、貫通孔73の上端の外周にフランジ74が成形されている。フランジ74は、1個の短辺側フランジ78で構成されている。短辺側フランジ78の厚さd、短辺側フランジ78の高さfは、外周壁731、732の厚さa、bよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ74は、図1のスロット101に絶縁材7を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材7を成形後、切断する必要が無い。
【0028】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、1個のピンサイトゲート773を介して短辺側フランジ78に流入する。ピンサイトゲート773は、短辺側フランジ78の長さ方向の中間位置に設けられ、小さな点で短辺側フランジ78に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がピンサイトゲート773から短辺側フランジ78に流入する方向は、短辺側フランジ78の肉厚方向である。ゲート773から短辺側フランジ78に流入した熱可塑性合成樹脂は、短辺側フランジ78の図示しない対向壁にぶつかって、90度方向転換して流入速度が減少し、短辺側フランジ78を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁731、732に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、短辺側フランジ78が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁731、732に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【0029】
〔スロットコイル用絶縁材の第8の実施の形態〕
図9は、本発明の第8の実施の形態のスロットコイル用の絶縁材1’を示す平面図である。図10は、図9の矢印Aの方向から見た部分拡大図である。この第8の実施の形態のスロットコイル用の絶縁材1’は、図2~4に示した第1の実施の形態のスロットコイル用の絶縁材1と形状、及び成形方法が類似している。第1の実施の形態のスロットコイル用の絶縁材1が、長くて、かつ肉厚が薄い(例えば、0.3mm以下)外周壁131、132、隔壁133の場合、射出された樹脂が充分に金型内のキャビディを充分に流れないことがある。第8の実施の形態のスロットコイル用の絶縁材1’は、射出された溶融樹脂の流れを改善した構造である。以下、第8の実施の形態のスロットコイル用絶縁材1’の構造の説明は、第1の実施の形態と同一形状部分の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。第8の実施の形態のスロットコイル用絶縁材の両側の長辺側フランジ15は、d=1.0mm、f=1.5mm~2.0mmであり、第1の実施の形態のものよりその断面積が大きい。長辺側フランジ15の夫々の先端には、長辺側フランジ15を延長した湯溜まり135が形成されている。湯溜まり135は、長辺側フランジ15を本例では1.0~1.5mm程度延長したものである。
【0030】
本例のゲート173aは、断面形状が矩形で角錐型であり、傾斜角度βが約30度程度が良い(図10参照)。ゲート173aの形状を角錐型にすることにより、溶融樹脂の流れを円滑にできる。射出された溶融樹脂は、ランナ172からゲート173aで絞られて摩擦熱が発生し、溶融樹脂の温度を上昇させて粘度が下がり、耳状フランジ16に流れる。耳状フランジ16に流れた溶融樹脂は、90度方向が変えられて長辺側フランジ15に流入する(図3(b)参照)。更に、耳状フランジ16に流れた溶融樹脂は、90度方向が変えられて、長辺側フランジ15に流入する。耳状フランジ16の高さは、長辺側フランジ15よりその高さは、Smm低い。即ち、ゲート173aから吐出した溶融樹脂は、長辺側フランジ15より溶融樹脂の流路の断面積が狭い耳状フランジ16に流れる、この後、長辺側フランジ15に流入するまでに、角度90度で2回方向が変えられて長辺側フランジ15に流入する。溶融樹脂は、流路の断面積が長辺側フランジ15より狭い耳状フランジ16を介して、長辺側フランジ15に流れるので、耳状フランジ16は樹脂流の流れを抑制する機能を有する。
【0031】
溶融樹脂は、角度90度で2回方向が変えられるので、溶融樹脂の動圧が低下し、長辺側フランジ15にゲート173aから直ちに流れることはない。この結果、長辺側フランジ15、隔壁133、外周壁131、132等に直ちには流れない。溶融樹脂は、断面積が大きく流れの抵抗の少なく流路である長辺側フランジ15に流れ、その先端の湯溜まり135を満たした後に、溶融樹脂は外周壁131、132、隔壁133に流れる。また、ゲート173aと対向する長辺側フランジ135の先端に湯溜まり135を形成されているので、射出された溶融樹脂は長辺側フランジ135と湯溜まり135を満たした後、薄い肉厚の外周壁131、132、及び隔壁133に流れが誘導される。特に、外周壁131、132、隔壁133が長い場合(図10の下方)、この耳状フランジ16、長辺側フランジ15、及びゲート173aと対向する他端に湯溜まり135を形成したことにより、外周壁131、132、及び隔壁133に均等に、かつ円滑に流れる。
【0032】
〔スロットコイル用絶縁材の第9の実施の形態〕
図11(a)は、本発明の第9の実施の形態のスロットコイル用の絶縁材2’を示す等角投影図であり、図11(b)は、図11(a)のB-B線で切断した部分断面図である。この第9の実施の形態のスロットコイル用の絶縁材2’は、図6に示した第2の実施の形態のスロットコイル用の絶縁材2の形状及び成形方法と類似している。第2の実施の形態のスロットコイル用の絶縁材2’が、長くて、かつ肉厚が薄い外周壁231、232、隔壁233の場合、射出された樹脂が充分に金型内のキャビディを充分に流れないことがある。第9の実施の形態のスロットコイル用の絶縁材2’は、射出された溶融樹脂の流れを改善した構造である。以下、第9の実施の形態のスロットコイル用絶縁材2’の構造の説明は、第2の実施の形態と同一形状部分の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0033】
本発明の第9の実施の形態の絶縁材2’の成形は、ファンゲート(扇形)873を用いた例である。絶縁材2’の長辺側フランジ25の幅と同一長さの広い幅を持つフィルム状の薄い(浅い)ゲートである。長辺側フランジ25の両側面に、ファンゲート873を配置した例である。ファンゲート873は、溶融樹脂が長辺側フランジ25に対してほぼ平行に流れ、長辺側フランジ25を均一に充填させ、偏流等を防止する機能がある。このファンゲート873は、結晶性樹脂のように、偏流が発生し易いものに使用することが知られている。本発明の第9の実施の形態のファンゲート873の場合、特に射出成形圧力が大きいと、そのファンゲート873の中心部の流れが速くなる。本例では、これを防ぐために射出成形金型(図示せず)に配置した円筒ピン875を配置したものである。円筒ピン875を配置したことにより、ランナ874からファンゲート873に流れる溶融樹脂に乱流を発生させて、長辺側フランジ25の中心部に流れ込む溶融樹脂の流れを抑制して、長辺側フランジ25に流れる溶融樹脂を均一にすることができる。
【0034】
〔スロットコイル用絶縁材の第10の実施の形態〕
図12(a)は、本発明の第10の実施の形態のスロットコイル用の絶縁材2’’を示す等角投影図であり、図12(b)は、図12(a)のB-B線で切断した部分断面図である。第10の実施の形態の絶縁材2’’の成形にファンゲート873を用いる点は、第9の実施の形態と同一である。両者が異なる点は、第10の実施の形態の絶縁材2’’の成形は、ファンゲート873から湯溜まり876、及びフィルム状のフィルムランナ877を介して、溶融樹脂を長辺側フランジ25に流す点が異なる。湯溜まり876は、一種のミニランナとも言える。ファンゲート873から流れる溶融樹脂は、絞られることから乱流となるので、湯溜まり876で動圧を静圧として流れが安定化される。湯溜まり876で安定化した溶融樹脂は、流路が均一な断面であるフィルムランナ877で層流となって、長辺側フランジ25に流れる。この説明で理解されるように、第10の実施の形態で成形された絶縁材2’’は、外周壁231、232に円滑に樹脂が流れるので、外周壁231、232が長いものでも成形が可能となる。
【0035】
〔スロットコイル用絶縁材の他の実施の形態〕
前述した第8の実施の形態のゲート173aは、いわゆるサイドゲートと呼ばれているものであるが、射出成形金型の構造によっては、このゲート173aの配置を90度の角度を変えたものでも良い。この場合でも角度90度で2回方向が変えられて長辺側フランジ15に流入する構造が好ましい。前述した実施の形態の絶縁材料1~7は、回転電機のステータ用として説明した。しかしながら、絶縁材料1~7は、ロータの絶縁材料として使用しても良い。前述した第9の実施の形態の制御ピン876は、断面形状が円形であったがこの形状に限定されない。制御ピン876は、樹脂の流れを均一にするために配置されたものであり、射出された溶融樹脂の流れを阻害する、又は遅延させるための一種の流量制御部材であるので、この機能を備えたものであれば、他の断面形状であっても良い。
【符号の説明】
【0036】
100…ステータ
101…スロット
1,1’,1’’…絶縁材
11…導線
12…スロットコイル
13…貫通孔
131、132…外周壁
133…隔壁
135…湯溜まり
14…フランジ
15…長辺側フランジ
16…耳状フランジ
161…対向壁
171…スプルー
172…ランナー
173、173a…ゲート(ピンポイントゲート)
2,2’…絶縁材
23…貫通孔
231、232…外周壁
233…隔壁
24…フランジ
25…長辺側フランジ
273…ゲート(ピンポイントゲート、ピンサイトゲート)
3…絶縁材
33…貫通孔
331、332…外周壁
333…隔壁
34…フランジ
35…長辺側フランジ
373…ゲート(ピンポイントゲート、ピンサイトゲート)
38…短辺側フランジ
4…絶縁材
43…貫通孔
431、432…外周壁
433…隔壁
44…フランジ
45…長辺側フランジ
46…耳状フランジ
473…ゲート(ピンポイントゲート)
48…短辺側フランジ
5…絶縁材
53…貫通孔
531、532…外周壁
533…隔壁
54…フランジ
55…長辺側フランジ
573…ゲート(ピンポイントゲート)
58…短辺側フランジ
6…絶縁材
63…貫通孔
631、632…外周壁
64…フランジ
65…長辺側フランジ
66…耳状フランジ
673…ゲート(ピンポイントゲート)
7…絶縁材
73…貫通孔
731、732…外周壁
74…フランジ
773…ゲート(ピンポイントゲート、又はピンサイトゲート)
78…短辺側フランジ
873…ファンゲート
875…制御ピン
876…湯溜まり
877…フィルムランナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12