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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】スクロール膨張機
(51)【国際特許分類】
   F03C 2/02 20060101AFI20220712BHJP
   F01C 21/18 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
F03C2/02 Z
F01C21/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018142104
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020020263
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】515098886
【氏名又は名称】サンデン・オートモーティブコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】中村 慎二
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-103032(JP,A)
【文献】特開2006-242133(JP,A)
【文献】特開2011-38480(JP,A)
【文献】特開2011-12595(JP,A)
【文献】特開2008-133784(JP,A)
【文献】特開2007-278242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 2/02
F01C 1/02,20/10-20/26,21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板部及び前記第1基板部に立設された渦巻状の第1スクロール壁を有する固定スクロールと、
第2基板部及び前記第2基板部に立設された渦巻状の第2スクロール壁を有し、前記第2スクロール壁が前記固定スクロールの前記第1スクロール壁に噛み合うように配設される共に前記固定スクロールに対して旋回可能に保持された可動スクロールと、
前記第1スクロール壁と前記第2スクロール壁とによってスクロール中心部近傍に形成され、前記可動スクロールの旋回によって容積が変化する吸入室と、
作動流体を前記吸入室に導く流体通路と、
を含み、
前記吸入室が前記可動スクロールの旋回によって二つの膨張室に区画され、前記作動流体が前記二つの膨張室で膨張することによって前記可動スクロールがさらに旋回するように構成されたスクロール膨張機であって、
前記作動流体を前記吸入室に導入するために前記流体通路を開放すると共に前記吸入室が前記二つの膨張室に区画される前に前記流体通路を閉鎖する弁装置をさらに含む、
スクロール膨張機。
【請求項2】
前記弁装置は、前記可動スクロールの旋回に連動して前記流体通路を開閉するように構成されている、請求項1に記載のスクロール膨張機。
【請求項3】
前記流体通路は、前記固定スクロールの前記第1基板部に形成されて外部から前記作動流体が流入する入口孔と、前記固定スクロールの前記第1スクロール壁の中心側始端部の側面に形成されて前記入口孔から流入した前記作動流体が前記吸入室に流出する出口孔とを含み、
前記弁装置は、前記可動スクロールの旋回に連動して前記流体通路の前記出口孔を開閉するように構成されている、
請求項2に記載のスクロール膨張機。
【請求項4】
前記固定スクロールの前記第1スクロール壁の前記中心側始端部の上面には凹部が形成されていると共に、前記凹部の内面には前記入口孔の一端及び前記出口孔の一端がそれぞれ開口しており、
前記弁装置は、前記凹部に回転自在に収容された回転体を含み、前記回転体が前記可動スクロールの旋回に連動して回転することによって前記出口孔を開閉するロータリーバルブとして構成されている、
請求項3に記載のスクロール膨張機。
【請求項5】
前記回転体は、前記可動スクロールの旋回中心線上に配置され、前記可動スクロールと前記回転体とを連結するピン部材を介して回転駆動される、請求項4に記載のスクロール膨張機。
【請求項6】
少なくとも前記弁装置が前記流体通路の前記出口孔を閉鎖しているときに前記入口孔と前記出口孔とを連通させる連通路をさらに含む、請求項3~5のいずれか一つに記載のスクロール膨張機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール膨張機に関し、特にランキンサイクルに組み込まれて好適なスクロール膨張機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスクロール膨張機は、通常、次のような動作を繰り返すように構成されている。まず、固定スクロールのスクロール壁と可動スクロールのスクロール壁とがスクロール中心部近傍で当接する。次いで、前記可動スクロールが旋回して前記可動スクロールの前記スクロール壁が移動することで前記スクロール中心部近傍に吸入室が形成され、過熱蒸気冷媒などの高圧の作動流体が前記固定スクロールに設けられた導入部を介して前記吸入室に導入される。前記作動流体の前記吸入室への導入は、前記可動スクロールの旋回による前記吸入室の拡張に伴って継続される。次いで、前記可動スクロールが1回転(1周旋回)して前記固定スクロールの前記スクロール壁と前記可動スクロールの前記スクロール壁とが前記スクロール中心部近傍で再び当接すると、前記吸入室が二つの膨張室(密閉空間)に区画(分割)される。これにより、前記作動流体の導入が停止されると共に前記吸入室に導入された前記作動流体が前記二つの膨張室に取り込まれる。次いで、取り込まれた前記作動流体が前記二つの膨張室内で膨張し、これによって、前記可動スクロールが旋回すると共に、前記二つの膨張室が拡張しながらスクロール外周部に向かって移動する。そして、前記二つの膨張室がスクロール外周部近傍まで移動して吐出ポートに連通すると、前記作動流体の膨張が完了すると共に、前記二つの膨張室内で膨張して低圧となった前記作動流体が前記吐出ポートから吐出される。
【0003】
従来のスクロール膨張機においては、上述のように、前記吸入室が前記二つの膨張室に区画されるまで前記作動流体の導入が継続される。そして、基本的には、前記吐出ポートに連通する(スクロール外周部側の)前記二つの膨張室の容積(以下「吐出容積」という)と前記作動流体を取り込む(スクロール中心部側の)前記二つの膨張室の容積(以下「取り込み容積」という)との比、すなわち、前記吐出ポートに連通する前記二つの膨張室の底面積(以下「吐出容積の底面積」という)と前記作動流体を取り込む前記二つの膨張室の底面積(以下「取り込み容積の底面積」という)との比が、スクロール膨張機の容積比となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-242133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスクロール膨張機において、前記スクロール壁は、通常、円のインボリュート曲線に沿って形成されており、用途に応じて、前記スクロール壁の基礎円の半径、厚さ及び伸開角などのパラメータが決定される。そして、決定されたパラメータから前記取り込み容積の底面積がほぼ定まる。このため、同種の用途に使用されるスクロール膨張機において、前記取り込み容積の底面積を大幅に変更することは難しい。また、前記吐出容積の底面積、換言すれば、前記スクロール壁の巻数(スクロール外径)は前記取り込み容積の底面積とスクロール膨張機に要求される容積比とによって決定され、これによって、スクロール膨張機のサイズ(径方向のサイズ)もほぼ定まる。
【0006】
したがって、従来は、同種の用途に使用されるスクロール膨張機において、容積比を維持しながらサイズを小型化したり、サイズの大型化を招くことなく容積比を高くしたりすることが難しいという課題があった。近年、スクロール膨張機の小型化や高出力化のニーズがますます増えており、このようなニーズに対応できるようにすることが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、サイズの大型化を招くことなく容積比を高くすること、又は、容積比を維持しながらサイズの小型化を図ることのできるスクロール膨張機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、スクロール膨張機は、第1基板部及び前記第1基板部に立設された渦巻状の第1スクロール壁を有する固定スクロールと、第2基板部及び前記第2基板部に立設された渦巻状の第2スクロール壁を有し、前記第2スクロール壁が前記固定スクロールの前記第1スクロール壁に噛み合うように配設される共に前記固定スクロールに対して旋回可能に保持された可動スクロールと、前記第1スクロール壁と前記第2スクロール壁とによってスクロール中心部近傍に形成され、前記可動スクロールの旋回によって容積が変化する吸入室と、作動流体を前記吸入室に導く流体通路と、を含み、前記吸入室が前記可動スクロールの旋回によって二つの膨張室に区画され、前記作動流体が前記二つの膨張室で膨張することによって前記可動スクロールがさらに旋回するように構成されている。前記スクロール膨張機は、前記作動流体を前記吸入室に導入するために前記流体通路を開放すると共に前記吸入室が前記二つの膨張室に区画される前に前記流体通路を閉鎖する弁装置をさらに含む。
【発明の効果】
【0009】
前記スクロール膨張機によれば、前記吸入室が前記二つの膨張室に区画される前に前記弁装置によって前記流体通路が閉鎖されて前記作動流体の導入が停止される。このため、前記吸入室が前記二つの膨張室に区画されるまで前記作動流体の導入が継続される構成の従来のスクロール膨張機に比べて、前記作動流体の前記取り込み容積の底面積を小さくすることができる。その結果、スクロール膨張機のサイズを大型化することなくスクロール膨張機の容積比を高くしたり、スクロール膨張機の容積比を維持しながらスクロール膨張機のサイズを小型化したりすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るスクロール膨張機が適用された廃熱回収装置の概略構成を示す図である。
図2】前記スクロール膨張機の概略断面図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4図2のA-A断面図である。
図5】弁装置を構成する回転体の斜視図である。
図6】前記スクロール膨張機の動作の一例を説明するための図である。
図7】前記回転体の変形例を示す図である。
図8】前記回転体の他の変形例を示す図である。
図9】前記回転体のさらに他の変形例を示す図である。
図10】前記スクロール膨張機の変形例の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るスクロール膨張機が適用された廃熱回収装置1の概略構成を示している。廃熱回収装置1は、車両に搭載され、当該車両のエンジン20の廃熱を回収して利用するように構成されている。
【0012】
図1に示されるように、廃熱回収装置1は、ランキンサイクル2と、伝達機構3と、制御ユニット4と、を含む。また、エンジン20は、水冷式エンジンであり、冷却水循環路21を循環するエンジン冷却水によって冷却される。冷却水循環路21には、ランキンサイクル2の構成要素である加熱器6(後述する)が配置されており、エンジン20から熱を吸収した(高温の)エンジン冷却水が加熱器6内を通過する。
【0013】
ランキンサイクル2は、前記エンジン冷却水からエンジン20の廃熱を回収して動力(駆動力)に変換して出力する装置である。ランキンサイクル2は、作動流体としての冷媒が循環する冷媒循環路5を有する。冷媒循環路5には、加熱器6、スクロール膨張機7、凝縮器8及びポンプ9が、前記冷媒の循環方向に沿って、この順に配設されている。特に制限されないが、前記作動流体(冷媒)としては、例えば、エタノール、HFC-134a、HFC-245fa又はHFO-1233zdが用いられ得る。
【0014】
加熱器6は、エンジン20から熱を吸収した(高温の)前記エンジン冷却水とランキンサイクル2の前記冷媒との間で熱交換を行わせる熱交換器である。前記冷媒は、加熱器6を通過する際に前記エンジン冷却水により加熱されて高圧の過熱蒸気冷媒(高圧の作動流体)となる。
【0015】
スクロール膨張機7は、加熱器6からの前記過熱蒸気冷媒を膨張させて動力(駆動力)を発生する。後述するように、スクロール膨張機7は、固定スクロールと可動スクロールを含み、前記固定スクロールと前記可動スクロールとの間に形成される膨張室で前記過熱蒸気冷媒を膨張させることによって前記可動スクロールが駆動されるように構成されている。駆動された前記可動スクロールは旋回運動を行い、前記可動スクロールの旋回運動が出力軸の回転運動に変換されて駆動力として出力される。そして、前記膨張室で膨張して低圧となった前記冷媒(低圧の作動流体)がスクロール膨張機7から吐出される。
【0016】
凝縮器8は、スクロール膨張機7から吐出された前記冷媒、すなわち、低圧の前記冷媒と外気との間で熱交換を行わせる熱交換器である。低圧の前記冷媒は、凝縮器8を通過する際に外気により冷却されて凝縮(液化)する。なお、図示は省略するが、凝縮器8の近傍に凝縮器8に向かって外気を送風するファンが設けられてもよい。
【0017】
ポンプ9は、機械式のポンプであり、駆動軸を介して駆動されることによって凝縮器8を通過して凝縮(液化)した前記冷媒を加熱器6へと圧送する。そして、ポンプ9が動作することで、前記冷媒がランキンサイクル2の各要素、すなわち、加熱器6、スクロール膨張機7、凝縮器8及びポンプ9を循環することになる。
【0018】
ここで、本実施形態において、スクロール膨張機7とポンプ(機械式ポンプ)9とは回転軸10aによって一体的に連結されてポンプ一体型膨張機10として構成されている。すなわち、ポンプ一体型膨張機10の回転軸10aは、スクロール膨張機7の前記出力軸としての機能及びポンプ9の前記駆動軸としての機能を有している。
【0019】
また、本実施形態において、冷媒循環路5は、スクロール膨張機7を迂回して前記冷媒を循環させるためのバイパス路51と、バイパス路51を開閉するバイパス弁52とを有している。バイパス弁52の作動、すなわち、バイパス路51の開閉は、制御ユニット4によって制御される。
【0020】
伝達機構3は、エンジン20とランキンサイクル2との間で動力を伝達する。具体的には、伝達機構3は、エンジン20の出力トルクをポンプ一体型膨張機10(のポンプ9)に伝達すると共に、ランキンサイクル2の出力であるポンプ一体型膨張機10のトルク(軸トルク)をエンジン20に伝達する。
【0021】
伝達機構3は、ポンプ一体型膨張機10の回転軸10aの端部に電磁クラッチ31を介して取り付けられたプーリ32と、エンジン20のクランクシャフト22に取り付けられたクランクプーリ33と、プーリ32及びクランクプーリ33に巻回されたベルト部材34と、を有する。そして、電磁クラッチ31がON(締結)されると、エンジン20とランキンサイクル2(ポンプ一体型膨張機10)との間で動力の伝達が行われ、電磁クラッチ31がOFF(解放)されると、エンジン20とランキンサイクル2(ポンプ一体型膨張機10)との間の動力の伝達が遮断される。電磁クラッチ31のON(締結)/OFF(解放)は、制御ユニット4によって制御される。
【0022】
制御ユニット4は、例えば次のように電磁クラッチ31及びバイパス弁52を制御してランキンサイクル2の作動を制御する。ランキンサイクル2を起動させる場合、制御ユニット4は、バイパス弁52を開き、電磁クラッチ31をON(締結)してエンジン20によってポンプ9を駆動する。これにより、ランキンサイクル2において、前記冷媒がスクロール膨張機7を迂回して循環する。そして、制御ユニット4は、例えばスクロール膨張機7前後の圧力差が所定値以上となると、バイパス弁52を閉じる。これにより、ランキンサイクル2において、前記冷媒がスクロール膨張機7を経由して循環し、スクロール膨張機7は、加熱器6からの前記過熱蒸気冷媒を膨張させることによって駆動力を発生し始める。その後、スクロール膨張機7が十分な駆動力を発生するようになると、スクロール膨張機7で発生した駆動力の一部がポンプ9を駆動し、その余の駆動力が伝達機構3を介してエンジン20に伝達されてエンジン20の出力(駆動力)をアシストする。また、制御ユニット4は、ランキンサイクル2を停止させる場合、電磁クラッチ31をOFF(解放)し、ポンプ9を停止(すなわち、前記冷媒の循環を停止)させる。なお、図示は省略するが、スクロール膨張機7で発生した駆動力によって発電機を駆動し、発電機で発電した電力をバッテリ等に蓄電するようにしてもよい。この場合、前記バッテリ等からの電力によって動作する電動ポンプがポンプ9として用いられ得る。
【0023】
次に、本実施形態におけるスクロール膨張機7、すなわち、ポンプ一体型膨張機10の膨張機部分について説明する。なお、ポンプ9(ポンプ一体型膨張機10のポンプ部分)についての説明は省略するが、ポンプ9としては、回転軸10aによってスクロール膨張機7と連結可能な構成を有する公知の機械式ポンプ(ギヤポンプやベーンポンプなど)が採用され得る。
【0024】
図2は、スクロール膨張機7の概略断面図であり、図3は、図2の要部拡大図であり、図4は、図2のA-A断面図である。図2図4に示されるように、本実施形態に係るスクロール膨張機7は、固定スクロール71と、可動スクロール72と、を含む。
【0025】
固定スクロール71は、円盤状の基板部(以下「第1基板部」という)711と、第1基板部711の一方の面711a上に立設された渦巻状のスクロール壁(以下「第1スクロール壁」という)712と、を有する。固定スクロール71は、例えばスクロール膨張機7のハウジング部材(図示省略)に形成され又は固定される。
【0026】
可動スクロール72は、固定スクロール71と同様、円盤状の基板部(以下「第2基板部」という)721と、第2基板部721の一方の面721a上に立設された渦巻状のスクロール壁(以下「第2スクロール壁」という)722と、を有する。
【0027】
固定スクロール71及び可動スクロール72は、アルミニウムやアルミニウム合金などのアルミニウム系材料、又は、鋳鉄や鋼等などの鉄系材料から形成される。また、固定スクロール71の第1スクロール壁712及び可動スクロール72の第2スクロール壁722は、円のインボリュート曲線に沿って形成される。そして、可動スクロール72は、第2スクロール壁722が固定スクロール71の第1スクロール壁712に噛み合うように配置され、かつ、固定スクロール71に対して旋回可能に保持されている。具体的には、可動スクロール72は、固定スクロール71と一定の偏心距離を保ちながら旋回運動を行うことが可能である。
【0028】
本実施形態において、固定スクロール71の第1スクロール壁712の中心側始端部(以下「第1中心側始端部」という)712a及び可動スクロール72の第2スクロール壁722の中心側始端部(以下「第2中心側始端部」という)722aは、弓形(半円状)の横断面を有して形成され、互いの平坦な側面同士が略対面している(図4を参照)。
【0029】
本実施形態において、可動スクロール72の第2基板部721の他方の面721bとスクロール膨張機7の固定部分(図示省略)との間には、可動スクロール72の自転を阻止するための自転阻止機構41(例えば、ボールカップリング)が配置されている。また、可動スクロール72は、偏心軸受42及び従動クランク機構43などを介してポンプ一体型膨張機10の回転軸10aに連結されており、これによって、可動スクロール72の旋回運動が回転軸10aの回転運動に変換される。
【0030】
固定スクロール71において、第1スクロール壁712の第1中心側始端部712aの上面には、第1スクロール壁712の高さとほぼ同じ深さを有した円柱状の凹部(穴部)712bが形成されている。凹部712bの中心線は、可動スクロール72の旋回中心線Oに一致している。
【0031】
凹部712bの内部空間は、第1基板部711に形成された第1孔部711cを介して、スクロール膨張機7の外部、具体的には、冷媒循環路5におけるスクロール膨張機7の入口側の通路部分(加熱器6とスクロール膨張機7との間の通路部分)に連通している。本実施形態において、第1孔部711cは、第1基板部711を厚さ方向に貫通するように形成されている。そして、第1孔部711cの一端は、凹部712bの内面、具体的には、凹部712bの内底面に開口し、第1孔部711cの他端は、第1基板部711の他方の面711bに開口している。但し、これに限られるものではなく、第1孔部711cは、一端が凹部712bの前記内底面に開口し、他端が第1基板部711の周側面に開口するように形成されてもよい。
【0032】
また、凹部712bの前記内部空間は、第1スクロール壁712の第1中心側始端部712aの前記平坦な側面に形成された第2孔部712cを介して、固定スクロール71の第1スクロール壁712と可動スクロール72の第2スクロール壁722によってスクロール中心部近傍に形成される吸入室80に連通している。すなわち、第2孔部712cの一端は、凹部712bの前記内面、具体的には、凹部712bの内側面に開口し、第2孔部712cの他端は、吸入室80内に開口している。なお、本実施形態においては、二つの第2孔部712cが第1スクロール壁712の高さ方向に並んで形成されている。しかし、これに限られるものではなく、第2孔部712cは一つであってもよい。
【0033】
第1中心側始端部712aの前記上面に形成された凹部712bには、回転体741が回転自在に収容されている。すなわち、回転体741は、可動スクロール72の旋回中心線O上に配置されている。図5は、回転体741の斜視図である。図4図5に示されるように、回転体741は、有底円筒状に形成されており、その開口端が凹部712bの前記内底面側に位置するように、凹部712bに収容されている。したがって、回転体741の底壁の外側面(底面)は、可動スクロール72の第2基板部721の一方の面721aに対面している。
【0034】
回転体741の周壁には、第2孔部712cの開口面積より大きな開口面積を有する開口部741aが形成されている。本実施形態においては、二つの第2孔部712cに対応する一つの開口部741aが回転体741の前記周壁に形成されている。しかし、これに限られるものではなく、第2孔部712cと同様、二つの開口部741aが回転体741の前記周壁に形成されてよい。
【0035】
また、回転体741の前記底面における回転体741の中心線(=凹部712bの中心線=可動スクロール72の旋回中心線O)から可動スクロール72の旋回半径Rだけシフトされた位置にはピン穴741bが形成されている。ピン穴741bには、可動スクロール72の第2基板部721の一方の面721aに基端部が固定された駆動ピン742の先端部が装着(挿入)される。
【0036】
回転体741は、可動スクロール72が旋回することによって、駆動ピン742を介して凹部712b内で回転駆動される。すなわち、回転体741は、可動スクロール72の旋回に連動して動作するように構成されている。そして、回転体741は、開口部741aが第2孔部712cに重ならない位置にあるときに第2孔部712cを閉鎖し、開口部741aが第2孔部712cに重なる位置まで回転したときに第2孔部712cを開放するように構成されている。
【0037】
回転体741によって第2孔部712cが開放されると、第1孔部711cと第2孔部712cとが回転体741の内部空間741cを介して連通する。この場合、加熱器6からの前記過熱蒸気冷媒が第1孔部711cからスクロール膨張機7内に流入し、回転体741の内部空間741c及び第2孔部712cを通過して吸入室80に流出する。すなわち、前記過熱蒸気冷媒が吸入室80に導入される。一方、回転体741によって第2孔部712cが閉鎖されると、第1孔部711cと第2孔部712cとの連通が遮断されるため、前記過熱蒸気冷媒が吸入室80に導入されない。すなわち、前記過熱蒸気冷媒の吸入室80への導入が停止される。
【0038】
したがって、本実施形態においては、主に第1孔部711c、回転体741の内部空間741c、回転体741の開口部741a及び第2孔部712cによって、前記過熱蒸気冷媒を吸入室80に導く流体通路73が形成されている。また、第1孔部711cは、外部から前記過熱蒸気冷媒が流入する入口孔を構成し、第2孔部712cは、前記過熱蒸気冷媒が吸入室80に流出する出口孔を構成し、回転体741の内部空間741c及び開口部741aは、前記入口孔と前記出口孔とを接続する接続部を構成する。さらに、本実施形態においては、主に回転体741及び駆動ピン742によって、可動スクロール72の旋回に連動して流体通路73(の前記出口孔)を開閉する弁装置(ロータリーバルブ)74が構成されている。
【0039】
また、本実施形態においては、弁装置74(の回転体741)によって流体通路73(の前記出口孔)が閉鎖された状態で停止しているスクロール膨張機7(の可動スクロール72)を始動させるため、第1孔部711c(前記入口孔)と第2孔部712c(前記出口孔)とを常時連通させる連通路(絞り通路)75が設けられている。連通路75は、凹部712bの前記内底面に形成された第1溝部751と、凹部712bの前記内側面に形成されて前記第1溝部751に接続する第2溝部752とによって形成されている。
【0040】
次に、図6(A)~(F)を参照してスクロール膨張機7の動作の一例を説明する。
【0041】
まず、図6(A)に示されるように、固定スクロール71の第1スクロール壁712の第1中心側始端部712aと可動スクロール72の第2スクロール壁722の第2中心側始端部722aとがスクロール中心部近傍で当接する。具体的には、第1中心側始端部712aの平坦な側面と第2中心側始端部722aの平坦な側面とが前記スクロール中心部近傍で当接する。このとき、回転体741の開口部741aは、第2孔部712cに重ならない位置にある。したがって、弁装置74は、第2孔部712c、すなわち、流体通路73(の前記出口孔)を閉鎖している。なお、第2孔部712cは、第2中心側始端部722aの前記平坦な側面によっても閉鎖される。
【0042】
上述のように、第1孔部711c(前記入口孔)と第2孔部712c(前記出口孔)とは連通路75を介して常時連通している。このため、加熱器6からスクロール膨張機7に前記過熱蒸気冷媒が供給されると、可動スクロール72の第2スクロール壁722の第2中心側始端部722aが前記過熱蒸気冷媒の圧力を受ける。これにより、図6(B)に示されるように、可動スクロール72が旋回して第2スクロール壁722(の第2中心側始端部722a)が移動し、第1スクロール壁712と第2スクロール壁722とによって前記スクロール中心部近傍に吸入室80が形成される。また、可動スクロール72の旋回に伴って回転体741の開口部741aが第2孔部712cに重なる位置まで移動する。したがって、弁装置74は、第2孔部712c、すなわち、流体通路73(の前記出口孔)を開放する。これにより、前記過熱蒸気冷媒が流体通路73を介して吸入室80に導入される。すなわち、前記過熱蒸気冷媒の吸入室80への導入が開始される。
【0043】
前記過熱蒸気冷媒が吸入室80に導入されると、可動スクロール72が旋回し、第2スクロール壁722が移動して吸入室80が拡張される(吸入室80の容積が増加する)。また、弁装置74は、第2孔部712c、すなわち、流体通路73(の前記出口孔)の開放状態を維持する。このため、吸入室80の拡張及び前記過熱蒸気冷媒の吸入室80への導入が継続される(図6(C)、図6(D))。
【0044】
その後、可動スクロール72が図6(A)に示される状態から所定角度まで旋回したときに、回転体741の開口部741aが第2孔部712cに重ならない位置まで移動し、弁装置74は、第2孔部712c、すなわち、流体通路73(の前記出口孔)を閉鎖する(図6(E))。これにより、前記過熱蒸気冷媒の吸入室80への導入が停止されると共に吸入室80が密閉されて膨張室80′となる。そして、このときの吸入室80(膨張室80′)の容積がスクロール膨張機7の前記取り込み容積となり、このときの吸入室80(膨張室80′)の底面積が前記取り込み容積の底面積となる。
【0045】
なお、前記過熱蒸気冷媒の吸入室80への導入が停止された後においても、すでに吸入室80(膨張室80′)に導入されている(取り込まれている)前記過熱蒸気冷媒が膨張することによって可動スクロール72の旋回は継続される(図6(F))。
【0046】
そして、可動スクロール72が1回転(1旋回)して図6(A)に示される状態に戻ると、前記スクロール中心部近傍に形成された吸入室80が二つの密閉空間である第1膨張室81及び第2膨張室82に区画(分割)される。詳細には、吸入室80は、まず弁装置74が流体通路73を閉鎖することによって一つの密閉空間である膨張室80′になり、その後の前記過熱蒸気冷媒の膨張による可動スクロール72の旋回によって前記二つの密閉空間である第1膨張室81及び第2膨張室82に区画される。このとき、吸入室80に導入された前記過熱蒸気冷媒、換言すれば、膨張室80′に取り込まれた前記過熱蒸気冷媒が第1膨張室81及び第2膨張室82のそれぞれに取り込まれる。
【0047】
第1膨張室81及び第2膨張室82のそれぞれに取り込まれた前記過熱蒸気冷媒は、第1膨張室81内及び第2膨張室82内で膨張する。これにより、可動スクロール72がさらに旋回すると共に、第1膨張室81及び第2膨張室82が拡張しながらスクロール外周部に向かって移動する。
【0048】
そして、第1膨張室81及び第2膨張室82がスクロール外周部近傍まで移動して図示省略の吐出ポートに連通すると、第1膨張室81内及び第2膨張室82内での前記過熱蒸気冷媒の膨張が完了すると共に、第1膨張室81内及び第2膨張室82内で膨張することによって低圧となった前記冷媒が前記吐出ポートから吐出される。前記吐出ポートから吐出された(低圧の)前記冷媒は、凝縮器8に向かって流れる。
【0049】
スクロール膨張機7は、上記の動作を繰り返すことにより、前記過熱蒸気冷媒の膨張を可動スクロール72の旋回運動に変換する。そして、上述のように、可動スクロール72の旋回運動が偏心軸受42及び従動クランク機構43などによって回転軸10aの回転運動に変換される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係るスクロール膨張機7は、吸入室80に加熱器6からの前記過熱蒸気冷媒(作動流体)を導く流体通路73と、流体通路73を開閉する弁装置74とを有している。弁装置74は、前記過熱蒸気冷媒を吸入室80に導入するために流体通路73を開放すると共に、吸入室80が二つの膨張室(第1膨張室81及び第2膨張室82)に区画される前に流体通路73を閉鎖して前記過熱蒸気冷媒の導入を停止させるように構成されている(図6(B)、図6(E))。
【0051】
ここで、上述のように、本実施形態に係るスクロール膨張機7においては、前記過熱蒸気冷媒の吸入室80への導入が停止されたときの吸入室80(膨張室80′)の底面積が前記取り込み容積の底面積であり、この底面積は、前記二つの膨張室(第1膨張室81及び第2膨張室82)の底面積よりも小さい。このため、本実施形態に係るスクロール膨張機7においては、吸入室が二つの膨張室に区画されるまで作動流体の導入が継続される構成の従来のスクロール膨張機に比べて、前記過熱蒸気冷媒の前記取り込み容積の底面積を小さくすることができる。このことは、前記吐出容積の底面積(及び前記取り込み容積)を変えることなく容積比を高くできること、及び、容積比(及び前記取り込み容積)を変えることなく前記吐出容積の底面積を小さくできること(前記スクロール壁の巻数(スクロール外径)を減らすことができること)を意味する。したがって、本実施形態に係るスクロール膨張機7によれば、サイズ(特に径方向のサイズ)を大型化することなく容積比を高くすること、又は、容積比を維持しながらサイズ(特に径方向のサイズ)を小型化することが可能になる。その結果、本実施形態にスクロール膨張機7は、同種の用途に使用されるほぼ同じサイズの従来のスクロール膨張機に比べて高い容積比を実現することができ、又は、同種の用途に使用されるほぼ同じ容積比を実現する従来のスクロール膨張機に比べてサイズを小さくすることができる。
【0052】
ここで、従来のスクロール膨張機の多くは、前記二つ膨張室のうちの一方の膨張室が他方の膨張室よりも先に密閉され、及び/又は、前記二つの膨張室に区画される直前の前記吸入室において前記二つの膨張室に対応する領域への流通抵抗の間に差があり、前記二つの膨張室に取り込まれる作動流体の体積(ひいては、前記二つの膨張室の圧力)に差が生じていた。この点、本実施形態によるスクロール膨張機7において、流体通路73は、吸入室80が二つの膨張室(第1膨張室81及び第2膨張室82)に区画される前に弁装置74によって閉鎖されている。このため、前記二つの膨張室(第1膨張室81及び第2膨張室82)はほぼ同時に密閉される。また、吸入室80が第1膨張室81及び第2膨張室82に区画される過程の各段階において第1膨張室81に対応する領域と第2膨張室82に対応する領域とが同形状(対称形状)であり、第1膨張室81に対応する領域への流通抵抗と第2膨張室82に対応する領域への流通抵抗との間の差もほとんど生じない。したがって、本実施形態に係るスクロール膨張機7によれば、前記過熱蒸気冷媒が前記二つの膨張室(第1膨張室81及び第2膨張室82)にバランスよく取り込まれ、前記二つの膨張室間における圧力のアンバランスも抑制される。この結果、本実施形態に係るスクロール膨張機7は、従来のスクロール膨張機よりも、安定且つ効率的な動作が可能になる。
【0053】
また、本実施形態において、弁装置74は、可動スクロール72の旋回に連動して流体通路73を開閉するように、具体的には、流体通路73の一部を構成する第2孔部712c(前記出口孔)を開閉するように構成されている。このため、適切なタイミングで流体通路73を開放して吸入室80に前記過熱蒸気冷媒を導入すること、適切なタイミングで流体通路73を閉鎖して前記過熱蒸気冷媒の導入を停止すること、及び、前記二つの膨張室に取り込まれる前記過熱蒸気冷媒の体積のバラツキを抑制することが可能である。
【0054】
特に、弁装置74は、第1中心側始端部712aの上面に形成された凹部712bに回転自在に収容された回転体741を含み、回転体741が可動スクロール72の旋回に連動して回転することによって、一端が凹部712bの前記内側面に開口する第2孔部712c(すなわち、流体通路73の前記出口孔)を開閉するように構成されている。具体的には、回転体741(及び凹部712b)は可動スクロール72の旋回中心線O上に配置されており、回転体741は、可動スクロール72に固定された駆動ピン742によって凹部712b内で回転駆動される。このため、弁装置74を設けることによるスクロール膨張機7のサイズの大型化が防止されると共に、弁装置74(回転体741)の駆動源を設ける必要がない。また、開口部741aの大きさを調整して流体通路73を閉鎖するタイミングを調整することにより、前記取り込み容積の底面積を調整し、サイズ(特に径方向のサイズ)を大型化することなくスクロール膨張機7の容積比を調整することも可能である。
【0055】
なお、上述の実施形態において、加熱器6は、前記エンジン冷却水とランキンサイクル2の前記冷媒との間で熱交換を行わせるように構成されている。しかし、これに限られるものではない。加熱器6は、エンジン20の排気とランキンサイクル2の前記冷媒との間で熱交換を行わせるように構成されてもよい。エンジン20の排気は前記エンジン冷却水よりも高温であり、ランキンサイクル2においてより大きな温度差が得られるため、ランキンサイクル2の出力が高くなる。図示は省略するが、この場合、前記エンジン冷却水に代えてエンジン20の排気が加熱器6内を通過するように構成される。
【0056】
加熱器6がエンジン20の排気とランキンサイクル2の前記冷媒との間で熱交換を行わせるように構成される場合、特性値(臨界温度、臨界圧力など)から、エタノールが適切な前記冷媒として選択され得る。但し、エタノールは前記アルミニウム系材料を腐食させるおそれがある。このため、前記冷媒としてエタノールが選択された場合、スクロール膨張機7においては、前記鉄系材料から形成された固定スクロール71及び可動スクロール72が用いられることになる。
【0057】
前記鉄系材料から形成された固定スクロール71及び可動スクロール72は、前記アルミニウム系材料から形成されたそれらよりも重量が大きい。また、固定スクロール71及び可動スクロール72の重量が大きくなると、前記スクロール壁の巻数(スクロール外径)が同じ場合でも、バランスをとるための部位や強度を確保するための形状などが増加し及び/又は大型化し、その結果、スクロール膨張機7全体のサイズが大型化する。
【0058】
したがって、前記鉄系材料から形成された固定スクロール71及び可動スクロール72は、前記アルミニウム系材料から形成されたそれらに比べて前記スクロール壁の巻数(スクロール外径)を減少させる必要性がより高いといえる。この点に関し、上述のように、本実施形態に係るスクロール膨張機7は、容積比を変えることなく前記スクロール壁の巻数(スクロール外径)を減らすことが可能であるので、前記鉄系材料から形成された固定スクロール71及び可動スクロール72が用いられる場合に特に有効である。
【0059】
また、上述の実施形態において、回転体741は、可動スクロール72に固定された駆動ピン742によって回転駆動されるように構成されている。しかし、これに限られるものではない。図7に示されるように、回転体741が、可動スクロール72の第2基板部721の一方の面721aに向かって突出するピン部材741dをピン穴741bの代わりに有すると共に、可動スクロール72の第2基板部721の一方の面721aに、ピン部材741dの先端部が装着(挿入)されるピン穴(図示省略)が駆動ピン742の代わりに設けられてもよい。すなわち、回転体741は、可動スクロール72と回転体741とを連結するピン部(駆動ピン742、ピン部741d)を介して回転駆動されるように構成されていればよい。
【0060】
さらに、上述の実施形態においては、第1孔部711c(前記入口孔)と第2孔部712c(前記出口孔)とを常時連通させる連通路75が設けられている。しかし、これに限られるものではない。連通路75は、必ずしも第1孔部711cと第2孔部712cとを常時連通させる必要はなく、少なくとも弁装置74が流体通路73を閉鎖しているときに第1孔部711cと第2孔部712cとを連通させればよい。
【0061】
例えば、図8に示されるように、回転体741の前記周壁の外側面に開口部741aの周方向の一端から他端まで延びる溝741eが形成される。この場合、回転体741の内部空間741cと溝741eとによって連通路75が形成され、形成された連通路75は弁装置74が流体通路73を閉鎖しているときに第1孔部711cと第2孔部712cとを連通させる。あるいは、図9に示されるように、溝741eに代えて複数の貫通孔741fが回転体741の前記周壁に形成される。この場合、回転体741の内部空間741cと複数の貫通孔741fの少なくとも一つとによって連通路75が形成され、形成された連通路75は弁装置74が流体通路73を閉鎖しているときに第1孔部711cと第2孔部712cとを連通させる。なお、図示は省略するが、回転体741の前記周壁の前記外側面と凹部712bの前記内側面との隙間と、回転体741の内部空間741cとによって、第1孔部711cと第2孔部712cとを常時連通させる連通路75が形成されてもよい。
【0062】
さらにまた、上述の実施形態において、流体通路73の前記出口孔を構成する第2孔部712cは、第1スクロール壁712の第1中心側始端部712aの前記平坦な側面における高さ方向の中間位置に形成されており、これに対応するように、回転体741の開口部741aは、回転体741の前記周壁における高さ方向の中間位置に形成されている。しかし、これに限られるものではない。図10に示されるように、第1スクロール壁712の第1中心側始端部712aにおいて、第2孔部712cに代えて、第1スクロール壁712の第1中心側始端部712aの上面に凹部712bの前記内側面から第1中心側始端部712aの前記平坦な側面まで延びる溝部712dが形成されてもよい。この場合、回転体741においては、開口部741aに代えて、回転体741の前記底壁の一部及び前記周壁の一部を切り欠いた切欠部741gが形成される。そして、主に第1孔部711c、回転体741の内部空間741c、回転体741の切欠部741g及び溝部712dによって流体通路73が形成され、第1孔部711cが流体通路73の前記入口孔を構成し、溝部712dが流体通路73の前記出口孔を構成する。このようにしても上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0063】
なお、上述の各変形例は、適宜組み合わせて適用され得る。
【0064】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
7…スクロール膨張機、71…固定スクロール、72…可動スクロール、73…流体通路、74…弁装置、75…連通路、80…吸入室、80′…膨張室、81…第1膨張室、82…第2膨張室、711…固定スクロールの基板部、711c…第1孔部(入口孔)、712…固定スクロールのスクロール壁(第1スクロール壁)、712a…第1スクロール壁の中心側始端部、712b…凹部、712c…第2孔部(出口孔)、712d…溝部(出口孔)、721…可動スクロールの基板部、722…可動スクロールのスクロール壁(第2スクロール壁)、722a…第2スクロール壁の中心側始端部、741…回転体、741a…開口部、741b…ピン穴、741c…回転体の内部空間、741d…ピン部材(ピン部)、742…駆動ピン(ピン部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10