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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】荷物検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20220712BHJP
【FI】
G01N23/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017141654
(22)【出願日】2017-07-21
(65)【公開番号】P2019020355
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 和朗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真起
(72)【発明者】
【氏名】川崎 栄嗣
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0228896(US,A1)
【文献】特開平09-127017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0147484(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0237293(US,A1)
【文献】特表平10-508377(JP,A)
【文献】米国特許第05600700(US,A)
【文献】特開2017-091498(JP,A)
【文献】米国特許第05367552(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
G08B 23/00 - G08B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物の重量の計測値が決められた第1閾値を超えない場合に該荷物の透過撮影を撮影装置に行わせず、前記第1閾値を超えた場合に、該荷物の透過撮影を撮影装置に行わせ、前記第1閾値を超え、かつ、前記第1閾値よりも高い第2閾値を超えない場合に、該荷物の前記透過撮影とは異なる方向からの透過撮影を追加で撮影装置に行わせ、該透過撮影により取得した画像から危険物を検知する検知処理を行う荷物検査装置。
【請求項2】
前記荷物の外観に基づいて風袋の重量を推定し、推定した前記風袋の重量を用いて前記荷物の重量の計測値を補正する
請求項1に記載の荷物検査装置。
【請求項3】
前記荷物を所定速度で搬送するように制御された電動機の電圧に基づき、計測された該荷物の重量の計測値を取得する
請求項1又は2に記載の荷物検査装置。
【請求項4】
搬送装置の所定位置にかかる重量を計測する計測装置によって計測された、前記所定位置に静止している前記荷物の重量の計測値を取得する
請求項1から3のいずれか1項に記載の荷物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
手荷物検査では危険物の種類が多岐にわたるため、人が目視で危険物の有無を判定することが一般的である。X線による透過撮影を利用する場合、透過画像の濃淡から物体の材質を推定し、推定された材質によって異なる着色をして係員の判定を補助する装置もある。しかし、透過画像の濃淡は、透過したX線量に応じて決まるので、その濃度が物体の厚みによるものであるか、透過率の低さによるものであるかを区別することが難しい場合がある。
【0003】
また、X線は人体に有害であり、X線発生装置に用いるフィラメントは寿命があるため、照射回数を抑制することが望ましい。特許文献1には、荷物についてガス分析を行い、危険物があると判定する場合にX線画像の撮影を行って危険物の種類を特定する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-133242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術は、分析結果が判明するまでに比較的長い時間がかかるガス分析装置を用いるため、高いスループットが要求される駅のような施設に適用することは難しい。
【0006】
本発明は、危険物を含んでいる可能性が高い物体を簡素な構成で選別して、透過撮影の回数を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、荷物の重量の計測値が決められた第1閾値を超えない場合に該荷物の透過撮影を撮影装置に行わせず、前記第1閾値を超えた場合に、該荷物の透過撮影を撮影装置に行わせ、前記第1閾値を超え、かつ、前記第1閾値よりも高い第2閾値を超えない場合に、該荷物の前記透過撮影とは異なる方向からの透過撮影を追加で撮影装置に行わせ、該透過撮影により取得した画像から危険物を検知する検知処理を行う荷物検査装置、第1の態様として提供する。
【0008】
第1の態様の荷物検査装置によれば、危険物を含んでいる可能性が高い荷物を簡素な構成で選別して、透過撮影の回数を抑制することができる。また、第1の態様の荷物検査装置によれば、荷物が、例えば銃及び刀剣等、重量が比較的軽い危険物である可能性が高い場合に、それ以外の場合よりも多くの方向から、その荷物を透過撮影することができる。
【0021】
の荷物検査装置において、前記荷物の外観に基づいて風袋の重量を推定し、推定した前記風袋の重量を用いて前記荷物の重量の計測値を補正する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0022】
の態様の荷物検査装置によれば、透過撮影の制御に関して、荷物の風袋の重量による影響を抑えることができる。
【0023】
1又は2の荷物検査装置において、前記荷物を所定速度で搬送するように制御された電動機の電圧に基づき、計測された該荷物の重量の計測値を取得する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0024】
の態様の荷物検査装置によれば、危険物を含んでいる可能性が高い荷物を搬送中に選別することができる。
【0025】
からのいずれか1の荷物検査装置において、搬送装置の所定位置にかかる重量を計測する計測装置によって計測された、前記所定位置に静止している前記荷物の重量の計測値を取得する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0026】
の態様の荷物検査装置によれば、危険物を含んでいる可能性が高い荷物を簡素な構成で選別するができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】検知システム9の主要構成を示す図。
図2】検知システム9が備える情報処理装置1と他の構成との関係を示す図。
図3】計測装置5の構成を示す図。
図4】検知システム9の動作の流れを説明するためのフロー図。
図5】透過撮影における電磁波の照射方向を説明するための図。
図6】照射方向による透過画像の違いを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.実施形態
1-1.検知システムの全体構成
以下、本発明の一実施形態に係る検知システム9を説明する。検知システム9は、鞄等の収容具(以下、「物体J」という)の中に収容された外部から視認できない内容物(以下、「対象物C」という)に危険物が含まれているか否かを検知するシステムである。
【0029】
図1は、検知システム9の主要構成を示す図である。検知システム9は、情報処理装置1、照射装置2a、2b(以下、これらを区別する必要がない場合、単に「照射装置2」という)、搬送装置3、ラインセンサ4a、4b(以下、これらを区別する必要がない場合、単に「ラインセンサ4」という)、計測装置5、外観撮影装置6、及び表示灯7を有する。
【0030】
情報処理装置1は、撮影された画像から、対象物Cに含まれる危険物を検知する検知処理を行う。また、検知システム9の他の構成を制御する。
【0031】
搬送装置3は、物体J及び物体Jに収容された対象物C(以下、物体Jと物体Jに収容される対象物Cの区別を要さない場合、物体J及び物体Jに収容された対象物Cを単に「物体J」という)を搬送方向D1に向けて搬送する。搬送装置3はベルトコンベア、ローラーコンベア等のいずれの方式により物体Jの搬送を行ってもよい。
【0032】
外観撮影装置6は、情報処理装置1の制御の下、搬送装置3に載せられた物体Jの外観を撮影する。情報処理装置1は、外観撮影装置6が撮影した物体Jの外観を示す画像(外観画像)を取得すると、この外観画像から物体Jの風袋(すなわち、物体Jから対象物Cを除去したもの)の重量を推定する。また、情報処理装置1は、この外観画像から物体Jの体積を推定してもよい。
【0033】
計測装置5は、搬送装置3に載せられた物体Jの重量を計測する。計測装置5は、物体Jの重量を、物体Jが搬送装置3によって搬送されているときに計測する構成であってもよいし、搬送を停止しているときに計測する構成であってもよい。
【0034】
情報処理装置1は、計測装置5が計測した物体Jの重量Wの計測値に応じて照射装置2及びラインセンサ4に指示を出し、物体Jの透過撮影を制御する。なお、情報処理装置1は、外観撮影装置6により撮影した物体の外観画像から物体Jの風袋の重量を推定する場合、推定されたこの風袋の重量を用いて計測装置5が計測した計測値を補正してもよい。
【0035】
なお、情報処理装置1が上述した外観撮影装置6等を使って物体Jの体積を推定した場合、例えば推定されたこの体積に応じて、透過撮影を制御するために物体Jの重量Wの計測値と比較する閾値を変えてもよい。すなわち、検知システム9は、物体Jの体積に応じて透過撮影を制御してもよい。
【0036】
情報処理装置1の指示に応じて、照射装置2は、搬送装置3が物体Jを搬送する搬送方向D1と交差する方向に所定の周波数帯の電磁波を照射する。図1に示す照射装置2aは、搬送方向D1と交差する方向であって概ね水平方向である照射方向Raに電磁波を照射する。また、照射装置2bは、搬送方向D1と交差する方向であって概ね垂直方向である照射方向Rbに電磁波を照射する。
【0037】
照射装置2が照射する電磁波は物体Jの少なくとも外郭を透過しつつ、物体J及びその収容物を構成する物質の種別によって透過率又は反射率が異なる周波数帯の電磁波であればよく、例えばX線である。照射装置2がX線を照射する場合、例えば図1に示すようにX線発生器で発生したX線の照射方向をコリメータによって調整する。
【0038】
物体Jは、搬送装置3による搬送中にこの電磁波を受ける。遮蔽板Sは電磁波がラインセンサ4の近くの通行人等に照射されないように、照射装置2から照射された電磁波を遮蔽する。
【0039】
ラインセンサ4は、照射装置2により電磁波が照射された物体Jの画像を撮影する一次元イメージセンサであり、直線上に並べられたフォトダイオードなどの電磁波センサを有する。図1に示すように、ラインセンサ4aは、照射装置2aに対向する概ね鉛直方向である走査方向Daに沿って、ラインセンサ4bは、照射装置2bに対向する概ね水平方向である走査方向Dbに沿って、それぞれ電磁波センサが並べられて構成されている。
【0040】
ラインセンサ4は、これらの電磁波センサにより、対向する照射装置2から照射されて物体Jを透過した電磁波の照射を受けて発光する硫酸化ガドリニウム等の蛍光体から発せられる光の強度を感知する。そして、ラインセンサ4は、各電磁波センサが感知した電磁波の強度に応じて線状の画像を出力する。ラインセンサ4は、搬送装置3により搬送される物体Jを継続的に撮影することにより、物体Jの二次元透過画像を生成する。生成した透過画像は、例えば情報処理装置1からの指示に応じて情報処理装置1に転送される。
【0041】
図1に示す照射装置2a及びラインセンサ4aは、物体Jの重量Wが決められた第1閾値を超えた場合に、物体Jを透過撮影する構成である。また、図1に示す照射装置2b及びラインセンサ4bは、物体Jの重量Wが上述した第1閾値を超え、かつ、この第1閾値よりも高い第2閾値を超えなかった場合に、追加で物体Jを透過撮影する構成である。これら2つの構成でそれぞれ撮影された透過画像は、X線の照射方向又は入射方向が異なるので、物体Jを互いに異なる向きから撮影したものとなる。
【0042】
なお、透過画像を取得する構成は、ラインセンサ4に限られない。例えば、X線の二次元分布を計測するイメージングプレート、二次元イメージセンサ等であってもよい。また、透過画像を取得する構成は、X線の透過量を感知するものに限られず、例えば、後方散乱X線を感知するものであってもよい。この構成も、照射装置2から照射された電磁波が物体Jの外郭を透過して、対象物Cの表面で散乱した後方散乱X線を感知するので、透過画像を取得する構成に含まれる。
【0043】
表示灯7は、情報処理装置1による危険物の検知結果に応じた表示を行う。表示灯7は、例えば、物体Jに危険物が検知されない場合には、正常表示として緑色のランプを点灯し、物体Jに危険物が検知された場合には、異常表示として赤色のランプを点灯する。
【0044】
1-2.情報処理装置の構成
図2は、検知システム9が備える情報処理装置1と他の構成との関係を示す図である。情報処理装置1は、バス19に接続された制御部11、記憶部12、表示部13、操作部14、及び通信部16を有する。
【0045】
制御部11は、情報処理装置1の各部の動作を制御する手段である。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶装置を備え、これら記憶装置又は記憶部12に記憶されたコンピュータ・プログラム(以下、単に「プログラム」という)に従い各種情報処理を実行する。
【0046】
また、制御部11は、照射装置2、搬送装置3、ラインセンサ4、計測装置5、外観撮影装置6、及び表示灯7と通信可能に接続されており、これらの装置に対して動作の指示を行う。照射装置2は、情報処理装置1の制御部11からの指示を受けてラインセンサ4に向けて電磁波を照射する。搬送装置3は、情報処理装置1の制御部11からの指示を受けて物体Jを搬送方向D1に搬送する。ラインセンサ4は、情報処理装置1の制御部11からの指示を受けて物体Jを透過した電磁波が表す画像を生成する。
【0047】
記憶部12は、データを持続的に記憶する装置(例えばハードディスク装置)を有しており、制御部11が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。記憶部12に記憶され、制御部11が実行するプログラムには、軽量用PG121及び重量用PG122がある。
【0048】
軽量用PG121は、例えば銃、刀剣等、重量が比較的軽い危険物(以下、軽量危険物という)を検知するように調整されたプログラムである。
重量用PG122は、例えば爆発物、可燃性液体等、重量が比較的重い危険物(以下、重量危険物という)を検知するように調整されたプログラムである。
【0049】
表示部13は、情報処理装置1により生成される画像等の情報を表示する。操作部14は、キーボードやマウスなど、利用者が情報処理装置1を操作するための入力装置を有している。
【0050】
通信部16は、情報処理装置1が外部の装置と通信を行うためのインタフェースである。制御部11は、通信部16を介して、照射装置2、搬送装置3、ラインセンサ4、計測装置5、外観撮影装置6、及び表示灯7と通信する。
【0051】
1-3.計測装置の構成
図3は、計測装置5の構成を示す図である。物体Jを搬送する搬送装置3は、物体Jが載せられる無端のベルト30と、このベルト30が架け渡される2つのローラ31と、ベルト30のうち、2つのローラ31の間に架け渡された部分を下から支持する支持板32と、支持板32を地面から支える2本以上の脚部33と、2つのローラ31のうち少なくとも一方を回転させてベルト30の上面を搬送方向D1に移動させる単相モータ34と、を有する。単相モータ34は、電動機であればよい。
【0052】
図3(a)に示す計測装置5は、脚部33の少なくとも1つに内蔵されたバネ秤5aを有し、このバネ秤5aに物体Jの重量Wがかかった時の変位に基づいて、重量Wを計測する。この構成では、物体Jが搬送中に上下に振動するとこの振動の影響をバネ秤5aが受けるため、計測装置5による搬送中の計測は望ましくない。すなわち、この構成の検知システム9は、搬送装置3の所定位置にかかる重量Wを計測する計測装置5によって、この所定位置に静止している物体Jの重量Wを計測する。
【0053】
図3(b)に示す計測装置5は、支持板32のうち、物体Jが載せられる位置の裏側に歪ゲージ5bが貼り付けられた構成を有する。歪ゲージ5bが貼り付けられた位置は、2本の脚部33よりも外側である。そのため、支持板32はこの位置に物体Jの重量Wがかかると歪が生じる。この歪に応じて歪ゲージ5bが変形し、その変位に応じて重量Wが計測される。この構成でも、物体Jが搬送中に上下に振動するとこの振動の影響を歪ゲージ5bが受けるため、計測装置5による搬送中の計測は望ましくない。すなわち、この構成の検知システム9でも、搬送装置3の所定位置にかかる重量Wを計測する計測装置5によって、この所定位置に静止している物体Jの重量Wを計測する。
【0054】
図3(c)に示す速度制御部35は、ローラ31の回転数[rpm]の計測値を取得するとともに、ベルト30の速度が予め設定された設定速度になるように単相モータ34に対し、電圧を変更する制御信号を送る制御装置である。速度制御部35から制御信号を受取ると単相モータ34は、この制御信号の指示に応じて電圧を変更する。
【0055】
図3(c)に示す計測装置5は、上述した速度制御部35のフィードバック制御を受けた単相モータ34の電圧を計測する電圧計5cを有し、この電圧計5cが計測した電圧に基づき物体の重量Wを計測する。すなわち、図3(c)に示す計測装置5は、物体Jを所定速度で搬送するように制御された単相モータ34(電動機)の電圧に基づき、物体Jの重量Wを計測する装置である。
【0056】
なお、図3(c)に示す通り、Tをトルク[Nm]、dをローラ直径[m]、Wを物体Jの重量[kg]、gを重力加速度[m/s]、μを摩擦係数[-]、Fをベルト30の搬送方向D1に沿ってかかる外力[N]、Kを定数、Pを出力[kW]、nをローラ31の回転数[rpm]とすると、Tは次式(1)で、Wは次式(2)でそれぞれ表される。
【0057】

【0058】

【0059】
計測装置5は、上述した図3(a)から図3(c)のいずれか1つで構成されてもよいし、これらのいずれか2つ以上を組合せて構成されてもよい。2つ以上を組合せる場合、計測装置5は、これらそれぞれが計測した計測値を用いて重量Wの計測値を特定すればよい。計測装置5に含まれる2つ以上の構成がそれぞれ計測した計測値を用いるとは、例えば加算平均する等である。
【0060】
1-4.検知システムの動作
図4は、検知システム9の動作の流れを説明するためのフロー図である。
検知システム9の外観撮影装置6は情報処理装置1の下、搬送装置3の所定位置に載せられた物体Jの外観を撮影する(ステップS101)。情報処理装置1は、外観撮影装置6から物体Jの外観を示す画像を取得すると、例えば旅行鞄等の外観と重量とを対応付けたデータベースを読出して照合し、この画像の元となった物体Jの風袋の重量を推定する(ステップS102)。
【0061】
なお、ステップS101、及びステップS102の処理は実行されなくてもよい。これらの処理を実行しない場合、検知システム9は、外観撮影装置6を有しなくてもよい。
【0062】
計測装置5は、情報処理装置1の制御の下、物体Jの重量Wを計測する(ステップS103)。このとき、ステップS102において風袋の重量が推定されている場合には、計測装置5が実際に計測した重量から風袋の重量を減算した重量を重量Wとして計測してもよい。すなわち、情報処理装置1は、物体Jの外観に基づいて風袋の重量を推定し、推定した風袋の重量を用いて物体Jの重量Wの計測値を補正してもよい。
【0063】
情報処理装置1は、計測された重量Wを予め設定された第1閾値と比較する。すなわち、情報処理装置1は、例えば、計測された重量Wが1kg以上であるか否かを判定する(ステップS104)。重量Wが1kg以上であると判定する場合(ステップS104;YES)、情報処理装置1は、照射装置2及びラインセンサ4を制御して透過撮影を行う(ステップS105)。一方、重量Wが1kg以上でないと判定する場合(ステップS104;NO)、情報処理装置1は、処理をステップS112に進めて終了する。
【0064】
ステップS105において透過撮影が行われると、次に情報処理装置1は計測された重量Wを予め設定された第2閾値と比較する。すなわち、情報処理装置1は、例えば、計測された重量Wが5kg以上であるか否かを判定する(ステップS106)。重量Wが5kg以上であると判定する場合(ステップS106;YES)、情報処理装置1は、軽量危険物の有無を判定し(ステップS107)、さらに重量危険物の有無を判定する(ステップS108)。
【0065】
軽量危険物の有無の判定は、情報処理装置1の記憶部12に記憶された軽量用PG121を情報処理装置1の制御部11が読み込んで実行することにより行われる。この軽量用PG121により、情報処理装置1は、例えば、銃及び刀剣の少なくとも一方を検知するための検知処理を実行する。
【0066】
また、重量危険物の有無の判定は、情報処理装置1の記憶部12に記憶された重量用PG122を情報処理装置1の制御部11が読み込んで実行することにより行われる。この重量用PG122により、情報処理装置1は、例えば、爆発物及び可燃性液体の少なくとも一方を検知するための検知処理を実行する。
【0067】
一方、重量Wが5kg以上でないと判定する場合(ステップS106;NO)、情報処理装置1は、追加の透過撮影を行い(ステップS109)、軽量危険物の有無を判定する(ステップS110)。
【0068】
すなわち、情報処理装置1は、重量Wの計測値が第2閾値(5kg)を超えない場合に、銃及び刀剣の少なくとも一方を検知するための検知処理を行い、重量Wの計測値が第2閾値(5kg)を超えた場合に、さらに爆発物及び可燃性液体の少なくとも一方を検知するための検知処理を行う。
【0069】
このように、検知システム9において情報処理装置1は、物体Jの重量Wを計測し、物体Jを透過撮影した透過画像を取得し、重量Wの計測値に応じて透過画像から危険物を検知する検知処理の種類を決定する。
【0070】
例えば、図4に示す検知システム9において、重量Wの計測値が決められた第2閾値である5kgを超えていない場合に、情報処理装置1は、軽量用PG121だけを読出して軽量危険物の判定処理のみを実行する。
【0071】
一方、重量Wの計測値が5kgを超えた場合に、情報処理装置1は、軽量用PG121に加えて重量用PG122を読出して軽量危険物の判定処理と重量危険物の判定処理をそれぞれ行う。すなわち、この場合、情報処理装置1は、検知処理の種類を変更する。
例えば、重量が10kgを超えた場合には、搬送を停止する(もしくは搬送しない)という処理もあり得る。
【0072】
なお、重量WがステップS104で比較される第1閾値及びステップS106で比較される第2閾値の少なくとも一方は、物体Jの体積に応じて決められた数値であってもよい。例えば、上述した通り、外観撮影装置6が撮影した物体Jの外観に基づいて物体Jの体積を推定する場合、情報処理装置1の制御部11は、記憶部12に予め記憶された体積と閾値との対応表を読出して推定した体積に対応付けられた第1閾値及び第2閾値を読み出し、読み出したその閾値と、計測装置5が計測した物体Jの重量Wとを比較してもよい。
【0073】
すなわち、情報処理装置1は、重量Wの計測値が体積に応じて決められた閾値を超えた場合に、透過撮影する画像の枚数を減らす。
【0074】
図5は、透過撮影における電磁波の照射方向を説明するための図である。図5(a)に示す物体は透過率τ1、厚みL1を有する物体である。一方、図5(b)に示す物体は、透過率τ2、厚みL2を有する物体である。
【0075】
図5(b)に示す物体は、透過率τ2が透過率τ1よりも低く(τ2<τ1)、かつ、厚みL2が厚みL1よりも短いので(L2<L1)、照射方向Raに沿ってX線を照射すると図5(a)に示す物体の透過撮影と区別が付かない場合がある。
【0076】
図6は、照射方向による透過画像の違いを説明するための図である。上述した透過率τ1・厚みL1を有する物体も、透過率τ2・厚みL2を有する物体も、透過画像中には図6(a)に示す濃度の矩形等として表される場合がある。
【0077】
ここで、図5に示す照射方向Rbに沿ってX線を照射し、ラインセンサ4によって透過画像を取得すると、全く異なる画像が得られる。すなわち、図5(a)に示す物体は、図6(a)に示す透過画像が得られる場合があるが、図5(b)に示す物体は、照射方向Rbから見て縦方向の厚みL2が短く、奥行きは同程度であるため、図6(b)に示す透過画像が得られる場合がある。
【0078】
このように、透過率及び厚みの両方が異なる物体については、照射方向によって互いに区別が付かない透過画像が得られることがあるところ、照射方向を複数に増やせば互いに区別が付く可能性がある。
【0079】
重量Wの計測値が体積に応じて決められた閾値を超えなかった場合、透過画像で示される領域の濃度が透過率によるものであるか、厚みによるものであるかが判定し難いことがある。検知システム9では、この場合に、追加の透過撮影を行い、上述したように少ない透過画像では区別が付きにくいケースを区別する。
【0080】
一方、重量Wの計測値が体積に応じて決められた閾値を超えた場合、多数の軽量危険物が収容されているか、少数の重量危険物が収容されているかのいずれかである。すなわち、この場合には、照射方向によって区別が付きにくいケースが稀である。したがって、照射方向を変えて追加の透過撮影をしなくても、危険物の検知が可能であるから、検知システム9においては、追加の透過撮影を省略するので、X線フィラメントの劣化が抑制される。
【0081】
情報処理装置1の制御部11は、実行した危険物判定に基づいて物体Jが危険物であるか否かを判定する(ステップS111)。物体Jが危険物でないと判定する場合(ステップS111;NO)、情報処理装置1は、表示灯7を制御して、正常表示として定められた緑色のランプを点灯させ(ステップS112)、処理を終了する。
【0082】
一方、物体Jが危険物であると判定する場合(ステップS111;YES)、情報処理装置1は、表示灯7を制御して、異常表示として定められた赤色のランプを点灯させ(ステップS113)、処理を終了する。
【0083】
以上示した通り、検知システム9は、物体Jの重量Wを計測してこの重量Wが1kg以上でないと判定する場合にはX線の照射を行わずに正常表示をする。また、重量Wが5kg以上であると判定する場合には追加のX線照射を行わず、重量Wが5kg以上でないと判定する場合に追加のX線照射を行う。この動作により、検知システム9は危険物の可能性が高い物体Jを予め選別して透過撮影を行うため、危険物検知の精度を維持しつつ、透過撮影の回数が抑制される。
【0084】
上述した実施形態における装置の構成、形状、大きさ、配置関係等は本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、様々に変更されてよい。
【0085】
2.変形例
上述の実施形態は様々に変形され得る。以下に、それらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0086】
2-1.変形例1
情報処理装置1の制御部11によって実行されるプログラムは、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、光ディスクなどの光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネットなどの通信回線経由でダウンロードさせることも可能である。なお、上記の制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサなどが用いられる。
【0087】
2-2.変形例2
上述した実施形態において、検知システム9は、透過撮影をする構成として照射装置2a及びラインセンサ4aの組を有し、また、追加で透過撮影をする構成として照射装置2b及びラインセンサ4bの組を有していたが、透過撮影をする複数の組は2つに限られず、3つ以上であってもよい。追加で透過撮影をする構成は固定でなくてもよく、例えば、交互に役割を切替えてもよい。
【0088】
また、照射装置2からのX線の照射方向又はラインセンサ4によるX線の入射方向が互いに異なる透過撮影を行うことができれば、上述した組は一つであってもよい。例えば、追加の透過撮影を行う場合に、搬送装置3に含まれるターンテーブルに載った物体Jを回転させてもよい。この場合、最初の透過撮影をした位置のまま物体Jを回転させて追加の透過撮影が行われるため、上述した照射方向又は入射方向が互いに異なる2以上の透過画像を得ることができる。
【0089】
2-3.変形例3
上述した実施形態において、情報処理装置1は、重量Wを第1閾値と比較して第1閾値を超えている場合に、重量Wを第2閾値と比較していたが、第1閾値及び第2閾値のいずれか一方との比較を行わなくてもよい。この場合であっても、検知システム9は、重量Wと第1閾値との比較結果に応じて透過撮影を制御する。
【0090】
例えば、情報処理装置1は、重量Wを第1閾値と比較し、第2閾値と比較しない場合、比較の結果に応じて透過撮影を行うか否かを判断するが、検知処理の種類を決定又は変更しない。また、例えば、情報処理装置1は、重量Wが第1閾値を超えていない場合に透過撮影を行わないところ、重量Wが第1閾値を超えた場合に透過撮影を行うので、重量Wが第1閾値を超えた場合に超えなかった場合と比べて透過撮影する画像の枚数を減らすことはない。要するに、検知システム9は、物体の重量を計測し、この重量の計測値に応じて物体の透過撮影を制御すればよい。
【0091】
また、検知システム9において、情報処理装置1が重量Wと比較する閾値は第1閾値及び第2閾値の2つに限られず、3つ以上の閾値と比較してもよい。
【0092】
2-4.変形例4
上述した実施形態において、軽量危険物として、銃、刀剣等を例示し、重量危険物として、爆発物、可燃性液体等を例示したが、軽量危険物及び重量危険物は、これらの例示に限られない。軽量危険物は、他に例えば弓矢、ボーガン、棍棒等の各種の武器であってもよい。また、重量危険物は、例えば毒薬、粉粒体等であってもよい。また、危険物は軽量及び重量の2つに分類される必要はなく、3つ以上に分類されてもよいし、分類されなくてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…情報処理装置、11…制御部、12…記憶部、13…表示部、14…操作部、16…通信部、19…バス、2(2a、2b)…照射装置、3…搬送装置、30…ベルト、31…ローラ、32…支持板、33…脚部、34…単相モータ、35…速度制御部、4(4a、4b)…ラインセンサ、5…計測装置、5a…バネ秤、5b…歪ゲージ、5c…電圧計、6…外観撮影装置、7…表示灯、9…検知システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6