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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】管材及び配管
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20220712BHJP
   F16L 9/127 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
E04B1/94 U
E04B1/94 Q
F16L9/127
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017241077
(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2019108694
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-09-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 一
(72)【発明者】
【氏名】久保 喜弘
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133028(JP,A)
【文献】特開2009-074689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル系樹脂、該ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して10~20質量部の粒子状熱膨張性黒鉛、及び粒子状難燃剤を含み、
前記粒子状熱膨張性黒鉛の平均粒子径(A)と前記粒子状難燃剤の平均粒子径(B)との比率(B/A)が0.1~0.7であり、
前記ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.5~10質量部の前記粒子状難燃剤を含むことを特徴とする、管材。
【請求項2】
前記粒子状熱膨張性黒鉛の平均粒子径(A)は、110~1000μmである、請求項1に記載の管材。
【請求項3】
前記粒子状難燃剤がリン酸亜鉛である、請求項1又は2に記載の管材。
【請求項4】
請求項1~の何れか1項に記載の管材により構成された、配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管材及び配管に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物において、火災等の有事の際、発火元のエリアから他のエリアに火が燃え移る原因の一つとして、建築物内に設置されている排水管などの配管の存在が挙げられる。
【0003】
従来より、配管を通じた火の燃え移りを最小限に食い止めるために、耐火性を有する配管材が提案されている。さらに近年では、特許文献1に記載されているような材料により配管を構成することにより、火の熱により配管材が膨張して配管自体を閉塞させ、配管を通じた火の燃え移りを防止する提案がなされている。このような配管或いは配管材として、特許文献2には、熱膨張性黒鉛を含有する配管材が、記載されている。
【0004】
配管を通じた火の燃え移りをより確実に防止するためには、より熱膨張性の高い配管材を使用することが好ましい。そこで、特許文献2に開示されている配管材に、多量の熱膨張性黒鉛を含ませることにより、より熱膨張性の高い配管材とすることが考えられる。しかしながら、配管材における熱膨張性黒鉛の含有量が過多となると、配管の強度が不十分となる懸念がある。
【0005】
このように、熱膨張性と強度との関係は、いわばトレードオフの関係にあり、双方の性質を高いレベルで備える配管材を得ることは、困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平03-41161号公報
【文献】特開2009-74689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、高い熱膨張性を有しつつも、十分な強度を備えた管材及び配管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、粒子状の熱膨張性黒鉛及び粒子状の難燃剤を含ませ、両者の平均粒子径の比率を所定の範囲内に設定することで、高い膨張性を有しつつも、十分な強度を備える管材が得られることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の管材及び配管を提供する。
項1.
ポリ塩化ビニル系樹脂、該ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して10~20質量部の粒子状熱膨張性黒鉛、及び粒子状難燃剤を含み、
前記粒子状熱膨張性黒鉛の平均粒子径(A)と前記粒子状難燃剤の平均粒子径(B)との比率(B/A)が0.1~0.7であることを特徴とする、管材。
項2.
前記粒子状熱膨張性黒鉛の平均粒子径(A)は、110~1000μmである、項1に記載の管材。
項3.
項1又は2に記載の管材により構成された、配管。
【発明の効果】
【0010】
本発明の管材及び配管は、高い熱膨張性を有しつつも、十分な強度を備える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1.管材>
本発明の管材は、ポリ塩化ビニル系樹脂、該ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して10~20質量部の粒子状熱膨張性黒鉛、及び粒子状難燃剤を含み、前記粒子状熱膨張性黒鉛の平均粒子径(A)と前記粒子状難燃剤の平均粒子(B)との比率(B/A)が0.1~0.7であることを特徴とする。
【0012】
ポリ塩化ビニル系樹脂
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体;塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化してもよい。
【0013】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類などが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記塩化ビニルをグラフト共重合する(共)重合体としては、塩化ビニルをグラフト(共)重合するものであれば、特に限定されず、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定されるものではないが、小さくなると成形体の物性低下が起こり、大きくなると溶融粘度が高くなって成形が困難になるので、400~1600が好ましく、600~1400が、特に好ましい。尚、上記平均重合度とは、複合塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K-6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
【0016】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の重合方法は、特に限定されず、従来公知の任意の重合方法が採用されてよく、例えば、塊状重合方法、溶液重合方法、乳化重合方法、懸濁重合方法等が挙げられる。
【0017】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化方法としては、特に限定されず、従来公知の塩素化方法が採用されてよく、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
【0018】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂はいずれも、樹脂組成物としての耐火性能を阻害しない範囲で、架橋、変性して用いてもよい。この場合、予め架橋、変性した樹脂を用いてもよく、添加剤等を配合する際に、同時に架橋、変性してもよいし、あるいは樹脂に前記成分を配合した後に架橋、変性してもよい。上記樹脂の架橋方法についても、特に限定はなく、ポリ塩化ビニル系樹脂の通常の架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物を使用する架橋、電子線照射による架橋、水架橋性材料を使用した方法等が挙げられる。
【0019】
粒子状熱膨張性黒鉛
管材の中に含まれる熱膨張性黒鉛は、粒子状の熱膨張性黒鉛である。熱膨張性黒鉛としては、公知のものを広く使用することができ、特に限定はない。具体的には、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。上記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
管材の中の粒子状熱膨張性黒鉛の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、10質量部以上であり、好ましくは10.5質量部以上である。粒子状熱膨張性黒鉛の含有量が10質量部に満たない場合、管材の熱膨張性が不十分となる。一方、管材の中の粒子状熱膨張性黒鉛の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、20質量部以下であり、好ましくは、16質量部以下である。粒子状熱膨張性黒鉛の含有量が20質量部より多くなると、管材の強度が不十分となる。
【0021】
粒子状熱膨張性黒鉛の平均粒子径(A)は、110μm以上であることが好ましく、120μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。平均粒子径(A)が110μm以上であることにより、得られる管の熱膨張性を向上させることができる。一方、粒子状熱膨張性黒鉛の平均粒子径(A)は、1000μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましい。平均粒子径(A)が1000μm以下であることにより、管材の耐火性及び強度が向上する。
【0022】
本明細書において、粒子状熱膨張性黒鉛の平均粒子径(A)は、以下のように算出するものとする。
粒子状熱膨張性黒鉛100gをJIS Z8801-1に基づき試験用篩によりメッシュ分けを行い、平均粒子径(A)を試験用篩の目開きの大きさ(μm)×メッシュオンの重量(g)/全体の重量(g)とする。
【0023】
粒子状難燃剤
難燃剤としては、粒子状のものが使用される。粒子状に加工された難燃剤であれば、特に限定はなく、公知の難燃剤を広く採用することが可能である。
【0024】
かかる難燃剤として、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ハイドロタルサイト、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等のモリブデン化合物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等の臭素系化合物、トリフェニルフォスフェート、アンモニウムポリフォスフェート等のリン系化合物、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛などが挙げられる。これらは単独で使用されてよく、二種以上が併用されてもよい。
【0025】
粒子状難燃剤の平均粒子径(B)は、40μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましい。平均粒子径(B)が40μm以上であることにより、管材を製造する際に、粒子状難燃剤の分散性が向上する。一方、粒子状難燃剤の平均粒子径(B)は、120μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがより好ましい。平均粒子径(B)が120μm以下であることにより、管材を製造する際に、粒子状難燃剤の分散性が向上する。
【0026】
本明細書において、粒子状難燃剤の平均粒子径(B)は、以下のように算出するものとする。
粒子状難燃剤100gをJIS Z8801-1に基づき試験用篩によりメッシュ分けを行い、平均粒子径(B)を試験用篩の目開きの大きさ(μm)×メッシュオンの重量(g)/全体の重量(g)とする。
【0027】
また、上記した粒子状熱膨張性黒鉛の平均粒子径(A)と、粒子状難燃剤の平均粒子径(B)との比率(B/A)は、0.1以上であり、より好ましくは、0.15以上である。比率(B/A)が0.1未満である場合、管材の強度が不十分となる。一方、比率(B/A)は、0.7以下であり、より好ましくは、0.4以下である。比率(B/A)が0.7より大きい場合、管材の熱膨張性が不十分となる。
【0028】
管材の中の粒子状難燃剤の含有量は、上記したポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましく、1~6質量部であることがより好ましい。かかる構成を有することにより、十分な強度を有しつつも耐火性を兼ね備えた管材を得ることができる。
【0029】
添加剤
その他、本発明の管材には、その物性を損なわない範囲内で、無機充填材、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマー等の添加剤が添加されていてもよい。
【0030】
無機充填剤としては、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッュ、及び脱水汚泥等からなる群より選択される一種以上を挙げることができる。
【0031】
滑剤としても、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミドからなる群より選択される一種以上を使用することができる。また、外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスからなる群より選択される一種以上を使用することができる。
【0032】
加工助剤としても、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。例えば、重量平均分子量10万~200万のアルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などを挙げることができる。上記アクリル系加工助剤としては特に限定されず、例えば、n-ブチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体、2-エチルヘキシルアクリレート-メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
衝撃改質剤としても、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。例えば、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、及びアクリルゴム等からなる群より選択される一種以上を使用することができる。
【0034】
耐熱向上剤としても、公知のものを広く使用することが可能であり、特に限定はない。例えば、α-メチルスチレン系、N-フェニルマレイミド系樹脂等を使用することができる。
【0035】
酸化防止剤としては特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。
【0036】
光安定剤としては特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
【0037】
紫外線吸収剤としては特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0038】
顔料としては特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系などの無機顔料等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0039】
また、上記ポリ塩化ビニル系樹脂には可塑剤が添加されていてもよい。可塑剤としては特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。例えば、ジブチルフタレート、ジー2―エチルヘキシルフタレート、及びジー2―エチルヘキシルアジペートからなる群より選択される一種以上を使用することができる。
【0040】
熱可塑性エラストマーとしては特に限定されず、公知のものを広く使用することが可能である。例えば、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体(EVACO)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体や塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される一種以上を使用することができる。
【0041】
上述した粒子状熱膨張性黒鉛、粒子状難燃剤、及び添加剤をポリ塩化ビニル系樹脂に混合する方法としては、公知の方法を広く採用することが可能である。具体的には、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
【0042】
<2.配管>
以上にしてなる本発明の管材は、高い熱膨張性を有しつつも、十分な強度を備えており、建築物の配管(排水管、ダクト、電線管等)に好適に使用可能である。また、本発明の管材は、配管本体の構成材料として好適に使用可能であるだけでなく、配管の継手の構成材料としても、好適に使用可能である。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例
【0044】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0045】
(実施例及び比較例)
下記表1に示した配合に基づき、190℃の8インチミキシングロール(安田精機製作所製)で3分間ロール混練し、更に200℃のプレス機(東邦マシナリー株式会社製)で4分間プレス成形して厚さ3mmの各実施例及び比較例の試験片を作製した。
【0046】
引張強度評価試験
プラスチックの引張試験方法(JIS K7113)に則り、5mm/分で各実施例及び比較例の引張降伏強さを測定した。この時の測定雰囲気は23℃とした。尚、試験片が破断するまでの最大荷重をP(N)、試験片の断面積をS(mm)として引張降伏強さf(MPa)は、以下の式で算出し、引張降伏強さが42(MPa)以上であれば、実用上問題ないと判断した。
引張降伏強さ:f=P/S
【0047】
膨張倍率評価試験
ロールプレスにより板状にした試験片を直方体状に切り出し、厚さ、縦、横の三箇所をノギスで測定した。その後、各実施例及び比較例の試験片を950℃に昇温した電気炉に4分間入れて、膨張させた。その後電気炉から取り出し常温で放冷した。放冷した膨張後試験片の厚さ、縦、横をノギスで計測し次の式によって膨張倍率Rを算出し、膨張倍率Rが10以上であれば、実用上十分な熱膨張率を有すると判断した。
膨張倍率:R=(a)/(a
:膨張前の試験片厚さ(mm)
:膨張前の試験片縦長さ(mm)
:膨張前の試験片横長さ(mm)
:膨張後の試験片厚さ(mm)
:膨張後の試験片縦長さ(mm)
:膨張後の試験片横長さ(mm)
【0048】
下記表1に示すように、各実施例の試験片は、強度及び膨張性の双方において優れた性質を有していることが確認された。それに対して比較例1及び2の試験片は、強度及び膨張性の何れかの性質において、実用上不十分であることが、確認された。
【0049】
【表1】