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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】運行情報記録装置
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20220712BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
G08G1/00 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018057941
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019169066
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】王 鉄君
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-164869(JP,A)
【文献】特開2014-215875(JP,A)
【文献】特開2008-140376(JP,A)
【文献】特開2005-247179(JP,A)
【文献】特開2015-210775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00 - 5/12
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運行に関する情報を逐次記録する揮発性の第1記憶手段と、
前記第1記憶手段により記録された運行に関する情報が所定量に達したときに、当該所定量の情報が記録される運行情報記録エリアを有した不揮発性の第2記憶手段と、
車両バッテリからの電力供給が断たれたことを検知する電断検知手段と、
車両バッテリからの電力供給が断たれたときに、電力供給を行う補助電源と、
前記電断検知手段により車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された場合に、前記補助電源の電力を利用して、前記第1記憶手段により記録された運行に関する情報を前記第2記憶手段に設けられた退避エリアに記録させる退避処理を実行する記録制御手段と、を備え、
前記記録制御手段は、前記電断検知手段により車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された場合において、予め前記退避処理を禁止する設定がされているときには、前記退避処理の実行を禁止する
ことを特徴とする運行情報記録装置。
【請求項2】
車両の運行に関する情報を逐次記録する揮発性の第1記憶手段と、
前記第1記憶手段により記録された運行に関する情報が所定量に達したときに、当該所定量の情報が記録される運行情報記録エリアを有した不揮発性の第2記憶手段と、
車両バッテリからの電力供給が断たれたことを検知する電断検知手段と、
車両バッテリからの電力供給が断たれたときに、電力供給を行う補助電源と、
前記電断検知手段により車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された場合に、前記補助電源の電力を利用して、前記第1記憶手段により記録された運行に関する情報を前記第2記憶手段に設けられた退避エリアに記録させる退避処理を実行する記録制御手段と、
車両バッテリからの電力供給が断たれたときに、前記第1記憶手段が記録内容を保持するための電力を供給する第2補助電源と、
前記第2補助電源が空状態となったか否かを判断する判断手段と、を備え、
前記記録制御手段は、前記電断検知手段により車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された後に、電力供給が回復した場合に、前記判断手段により前記第2補助電源が空状態となっていたと判断されたときには、前記退避処理によって前記第2記憶手段に設けられた退避エリアに記録された運行に関する情報を前記運行情報記録エリアに記録させる
ことを特徴とする運行情報記録装置。
【請求項3】
前記記録制御手段は、前記退避エリアに記録された運行に関する情報を前記運行情報記録エリアに記録させた後に、前記退避エリアに記録された運行に関する情報を消去する
ことを特徴とする請求項に記載の運行情報記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行情報記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、車速、走行距離、及び時間等の情報を記録するデジタルタコグラフ等の運行情報記録装置が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。このような運行情報記録装置は、運行に関する情報が例えば揮発性メモリであるSRAM(Static Random Access Memory)に記録されるようになっている。運行情報記録装置は、SRAMに補助電源が接続されており、車両バッテリからの電力供給が断たれたときに、補助電源の電力を利用してSRAM内の記録内容を所定時間(例えば24時間)に亘って保持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-266260号公報
【文献】特開2013-140485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2に示すような運行情報記録装置は、補助電源によって所定時間記録内容を保持することができるものの、補助電源が完全に放電してしまうと運行に関する情報が失われてしまう。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、車両バッテリからの電力供給が断たれたときの運行に関する情報が失われてしまう可能性を低減することができる運行情報記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運行情報記録装置は、揮発性の第1記憶手段と、不揮発性の第2記憶手段とを備えている。揮発性の第1記憶手段は、車両の運行に関する情報を逐次記録するものである。不揮発性の第2記憶手段は、第1記憶手段により記録された運行に関する情報が所定量に達したときに、当該所定量の情報が記録される運行情報記録エリアを有している。さらに、運行情報記録装置は、車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された場合に、補助電源の電力を利用して、揮発性の第1記憶手段により記録された運行に関する情報を、不揮発性の第2記憶手段に設けられた退避エリアに記録させる退避処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された場合に、補助電源の電力を利用して、揮発性の第1記憶手段により記録された運行に関する情報を不揮発性の第2記憶手段に設けられた退避エリアに記録させる退避処理を実行する。このため、揮発性の第1記憶手段により記録されている運行に関する情報は、所定量に達しておらず不揮発性の第2記憶手段への記録タイミングでなくとも、電断時には不揮発性の第2記憶手段に退避させられる。従って、車両バッテリからの電力供給が断たれたときの運行に関する情報が失われてしまう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る運行情報記録装置を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る運行情報記録装置の動作の概略を示す第1の概念図である。
図3】本実施形態に係る運行情報記録装置の動作の概略を示す第2の概念図である。
図4】本実施形態に係る運行情報記録装置の情報救済方法を示す第1のフローチャートである。
図5】本実施形態に係る運行情報記録装置の情報救済方法を示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る運行情報記録装置を示す構成図である。図1に示すように、運行情報記録装置1は、車両に搭載されて、車両の運行に関する情報(例えば車速やエンジン回転数の情報)を取得して逐次記録するものである。運行情報記録装置1に記録された情報は、例えば、メモリカード等の記録媒体や無線通信を通じて管理事務所等の運転評価装置に取得され、運転評価装置において解析される。
【0011】
このような運行情報記録装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、SRAM(第1記憶手段)12、FROM(フラッシュメモリ:第2記憶手段)13、第1補助電源(補助電源)14、第2補助電源15、速度I/F(Interface)16、エンジンI/F17、電源I/F18、及び記録媒体コネクタ19を備えている。さらに、運行情報記録装置1は、LCD(Liquid Crystal Display)20及びブザー21を備えている。
【0012】
CPU11は、運行情報記録装置1の各部を統括的に制御するものである。SRAM12は、運行に関する情報を逐次記録する揮発性のメモリである。このSRAM12は、ワークエリアとなるデータ処理部12aを有している。
【0013】
FROM13は、SRAM12に記録された運行に関する情報が所定量(例えば1.4kB)に達したときに、当該所定量の情報が記録される不揮発性のメモリである。このFROM13は、運行情報記録装置1のCPU11が各機能を実現するためのプログラムが記録された設定プログラム格納部13aと、当該所定量の情報が記録される運行情報記録部(運行情報記録エリア)13bとを備えている。さらに、FROM13は、退避情報記録部(退避エリア)13cを備えている。退避情報記録部13cは、後述するように車両バッテリからの電力供給が断たれたときに、運行に関する情報が退避記録されるものである。
【0014】
第1補助電源14は、車両バッテリからの電力供給が断たれたときに、運行情報記録装置1の各部に電力供給するものであって、特にCPU11の動作電力を確保するようになっている。この第1補助電源14は、例えば大容量コンデンサによって構成されており、運行情報記録装置1は、車両バッテリからの電力供給が断たれた場合であっても、第1補助電源14の電力によって例えば数十秒間動作可能となっている。
【0015】
第2補助電源15は、揮発性のメモリであるSRAM12に対して、電力供給するものである。この第2補助電源15は、例えばバックアップ用の電池によって構成され、車両バッテリからの電力供給が断たれたときに、SRAM12が記録内容を保持するための電力を供給する。SRAM12は、第2補助電源15からの電力を受けることで、車両バッテリからの電力供給が断たれた場合であっても、所定時間(例えば24時間)に亘って記録内容を保持することとなる。
【0016】
速度I/F16は、車両に取り付けられる車速センサからの速度パルスを入力するものである。速度I/F16は、CPU11に接続され、入力した速度パルスをCPU11に供給する。CPU11は、速度I/F16を通じて速度パルスを入力し、自車両の速度を把握することとなる。
【0017】
エンジンI/F17は、車両に取り付けられるエンジン回転数センサからのエンジンパルスを入力するものである。エンジンI/F17は、CPU11に接続され、入力したエンジンパルスをCPU11に供給する。CPU11は、エンジンI/F17を通じてエンジンパルスを入力し、自車両のエンジン回転数を把握することとなる。
【0018】
電源I/F18は、車両バッテリからの電力供給を受け付ける入力部である。記録媒体コネクタ19は、車両を運転する運転者(例えばタクシーや配送業者の乗務員)が所有する記録媒体(例えばメモリカード)が挿入される部位である。本実施形態に係る運行情報記録装置1は、SRAM12に記録される運行に関する情報が所定量に達したタイミングでFROM13だけでなく、記録媒体コネクタ19にメモリカードが挿入されている場合にはメモリカードにも所定量の運行に関する情報を記録させる。
【0019】
LCD20は、運転者に画像表示により情報提供するための表示部である。ブザー21は、運転者が予め定められた安全運転条件を逸脱する運転をしていると判断された場合に、注意喚起を行う音声警告部である。
【0020】
ここで、本実施形態に係る運行情報記録装置1は、SRAM12における運行に関する情報が所定量に達する毎に、当該情報をFROM13の運行情報記録部13bに記録する。また、運行情報記録装置1は第2補助電源15を備えているため、たとえ車両バッテリからの電力供給が断たれたときであっても、SRAM12内に記録される所定量に達しない運行に関する情報は所定時間だけ保持される。しかし、車両バッテリからの電力供給が断たれてから所定時間を経過してしまうと、SRAM12内に記録される所定量に達しない運行に関する情報は消失してしまう。特に、車両事故によって車両バッテリからの電力供給が断たれた場合には、事故直前の運行に関する情報(すなわち、SRAM12内の情報)が重要となるが、これが消失してしまうおそれがある。
【0021】
そこで、本実施形態に係る運行情報記録装置1は、退避情報記録部13cを備えている。さらに、CPU11は、電断検知部11a、及び、記録制御部11bを備えている。
【0022】
電断検知部11aは、車両バッテリからの電力供給が断たれたことを検知する機能部である。この電断検知部11aは、例えば電源I/F18の電圧状況を監視することにより、車両バッテリからの電力供給が断たれたか否かを判断する。
【0023】
記録制御部11bは、電断検知部11aにより車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された場合に、第1補助電源14の電力を利用して、SRAM12に記録される運行に関する情報をFROM13に設けられた退避情報記録部13cに記録させる退避処理を実行するものである。
【0024】
なお、記録制御部11bは、電断検知部11aにより車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された場合であっても、予め退避処理を禁止する設定がされているときには、退避処理の実行を禁止するようになっている。これにより、例えば工場ラインの工程間において電源を遮断させている場合には、退避処理が禁止されることによる再起動時間の短縮化を図ることができ、生産性の向上につなげることができる。
【0025】
さらに、記録制御部11bは、電断検知部11aにより車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された場合であっても、第1補助電源14の電圧が所定電圧以下であるときには、退避処理の実行を禁止する。これにより、例えば第1補助電源14が故障や劣化しており充分な電力を確保できず、退避処理を実行しても退避できない程度の電源しか確保できない場合には、退避処理の実行を禁止して無駄な処理が実行されてしまう事態を防止することができる。
【0026】
また、記録制御部11bは、車両バッテリからの電力供給が回復した場合、より正確には電力供給が回復した後にイグニッションスイッチ(又はアクセサリスイッチ)がオンされた場合には、退避情報記録部13cに記録された運行に関する情報を運行情報記録部13bに記録させる。
【0027】
詳細に説明すると、まず、CPU11は、第2補助電源15が空状態となったか否かを判断する判断部11cを有している。また、記録制御部11bは、電断検知部11aにより車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された後に、電力供給が回復した場合に、判断部11cにより第2補助電源15が空状態となっていたかを判断する。第2補助電源15が空状態となっていた場合には、車両バッテリからの電力供給が断たれて退避処理が実行されており、しかもSRAM12内の運行に関する情報は消去しているといえる。このため、記録制御部11bは、退避処理によってFROM13の退避情報記録部13cに記録された運行に関する情報を運行情報記録部13bに記録させる。この際、記録制御部11bは、退避情報記録部13cに記録された運行に関する情報を、SRAM12を経由してFROM13の運行情報記録部13bに記録させる。
【0028】
なお、記録制御部11bは、退避情報記録部13cに記録された運行に関する情報を運行情報記録部13bに記録させた後に、退避情報記録部13cに記録されていた運行に関する情報を消去する。
【0029】
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態に係る運行情報記録装置1の動作の概略を説明する。図2及び図3は、本実施形態に係る運行情報記録装置1の動作の概略を示す概念図である。
【0030】
まず、図2に示すように、SRAM12には、運行に関する情報が逐次記録されていく(ST1参照)。そして、この情報が所定量に達すると、記録制御部11bは、運行に関する情報をFROM13の運行情報記録部13bに記録させる(ST2参照)。ここで、メモリカードが記録媒体コネクタ19に挿入される場合には、メモリカードにも運行に関する情報が記録される。
【0031】
その後もSRAM12には、運行に関する情報が逐次記録されていく(ST3参照)。そして、運行に関する情報が所定量に達していない段階で、車両バッテリからの電力供給が断たれたとする(SD参照)。このとき、記録制御部11bは、運行に関する情報をFROM13の退避情報記録部13cに記録させる退避処理を実行する(ST4参照)。
【0032】
その後、第1補助電源14からの電力によって運行情報記録装置1は動作するため、運行に関する情報が逐次記録されていく(ST5参照)。しかし、第1補助電源14の電圧が所定電圧以下になると、運行情報記録装置1は動作パワーがないと判断し、運行に関する情報の記録を停止する(PS参照)。
【0033】
次に、図3を参照する。図2に示す処理の後に車両バッテリからの電力供給が回復したとする。この場合において判断部11cは第2補助電源15が空状態となっているかを判断し、空状態となっていた場合に記録制御部11bはFROM13の退避情報記録部13cに退避記録されていた運行に関する情報をSRAM12に記録させる(ST6参照)。
【0034】
次いで、記録制御部11bは、SRAM12に記録された運行に関する情報をFROM13の運行情報記録部13bに記録させる(ST7参照)。運行に関する情報をFROM13の運行情報記録部13bに記録させた後、記録制御部11bは、FROM13の退避情報記録部13cに退避記録されていた運行に関する情報を消去する(ST8参照)。
【0035】
次に、本実施形態に係る運行情報記録装置1の情報救済方法を説明する。図4及び図5は、本実施形態に係る運行情報記録装置1の情報救済方法を示すフローチャートである。
【0036】
まず、図4に示すように、電断検知部11aは、車両バッテリからの電力供給が断たれたかを判断する(S1)。電断検知部11aにより車両バッテリからの電力供給が断たれていないと判断された場合(S1:NO)、電断検知部11aにより車両バッテリからの電力供給が断たれたと判断されるまで、この処理が繰り返される。
【0037】
一方、電断検知部11aにより車両バッテリからの電力供給が断たれたと判断された場合(S1:YES)、記録制御部11bは、退避処理を禁止する設定がされているかを判断する(S2)。記録制御部11bにより退避処理を禁止する設定がされていると判断された場合(S2:YES)、処理はステップS1に移行する。
【0038】
記録制御部11bは、退避処理を禁止する設定がされていないと判断した場合(S2:NO)、第1補助電源14の電圧が所定電圧以下であるかを判断する(S3)。記録制御部11bにより第1補助電源14の電圧が所定電圧以下であると判断された場合(S3:YES)、処理はステップS1に移行する。
【0039】
一方、記録制御部11bは、第1補助電源14の電圧が所定電圧以下でないと判断した場合(S3:NO)、退避処理を実行する(S4)。これにより、SRAM12に記録されている運行に関する情報はFROM13の退避情報記録部13cに記録され、例えば第2補助電源15が空状態になったとしても消失することなく保持される。その後、処理はステップS1に移行する。
【0040】
次に、図5を参照して、イグニッションスイッチがオンされたときに実行される処理を説明する。まず、イグニッションスイッチがオンされると、判断部11cは第2補助電源15が空状態になっていたかを判断する(S11)。
【0041】
判断部11cにより第2補助電源15が空状態になっていたと判断された場合(S11:YES)、記録制御部11bは、退避処理が実行済みであると判断し、退避情報記録部13cに記録される運行に関する情報をSRAM12に記録させる(S12)。
【0042】
次に、記録制御部11bは、ステップS12において記録させられた運行に関する情報を運行情報記録部13bに記録させ(S13)、退避情報記録部13cに記録されていた運行に関する情報を消去する(S14)。
【0043】
その後、CPU11は、車両バッテリからの電力供給が断たれたことにより時刻データがズレていると予測されることから時刻修正を行い(S15)、処理はステップS11に移行する。
【0044】
ところで、判断部11cにより第2補助電源15が空状態になっていないと判断された場合(S11:NO)、記録制御部11bは、退避情報記録部13cに運行に関する情報が記録されているかを判断する(S16)。記録制御部11bにより退避情報記録部13cに運行に関する情報が記録されていないと判断された場合(S16:NO)、処理はステップS11に移行する。
【0045】
一方、記録制御部11bは、退避情報記録部13cに運行に関する情報が記録されていると判断した場合(S16:YES)、退避情報記録部13cに記録されていた運行に関する情報を消去し(S17)、処理はステップS11に移行する。すなわち、ステップS16において「YES」と判断された場合、SRAM12に運行に関する情報が記録されていることから、退避情報記録部13cに記録されていた運行に関する情報を消去してもよく、これを消去することとしている。
【0046】
このようにして、本実施形態に係る運行情報記録装置1によれば、車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された場合に、第1補助電源14の電力を利用して、揮発性のSRAM12により記録された運行に関する情報を不揮発性のFROM13に設けられた退避情報記録部13cに記録させる退避処理を実行する。このため、揮発性のSRAM12により記録されている運行に関する情報は、所定量に達しておらず不揮発性のFROM13への記録タイミングでなくとも、電断時には不揮発性のFROM13に退避させられる。従って、車両バッテリからの電力供給が断たれたときの運行に関する情報が失われてしまう可能性を低減することができる。
【0047】
また、予め退避処理を禁止する設定がされているときには退避処理の実行を禁止するため、例えば工場ラインの工程間において電源を遮断させている場合には、退避処理が禁止されることによる再起動時間の短縮化を図ることができ、生産性の向上につなげることができる。
【0048】
また、車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された場合において、第1補助電源14の電圧が所定電圧以下であるときには退避処理の実行を禁止するため、退避処理を実行しても退避できない程度の電源しか確保できない場合には、退避処理の実行を禁止して無駄な処理が実行されてしまう事態を防止することができる。
【0049】
また、車両バッテリからの電力供給が断たれたことが検知された後に電力供給が回復し、且つ、第2補助電源15が空状態となっていたと判断されたときには、退避処理によってFROM13の退避情報記録部13cに記録された運行に関する情報を運行情報記録部13bに記録させる。このため、退避していた運行に関する情報を、退避情報記録部13cから正式な記録エリアである運行情報記録部13bに記録させて、例えば後の運転評価装置における運行に関する情報の読込処理に支障が出難くすることができる。
【0050】
また、退避情報記録部13cに記録された運行に関する情報を運行情報記録部13bに記録させた後に、退避情報記録部13cに記録された運行に関する情報を消去するため、不要なデータを削除して、不要なデータの蓄積を防ぎ、電源遮断時の退避処理において退避エリアが容量不足となってしまう事態を防止することができる。
【0051】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、運行に関する情報として、車速やエンジン回転数の情報を例示しているが、車速やエンジン回転数に限らず、加速度、交差点進入速度、ウインカータイミング等の他の情報であってもよいし、運行時に取得された画像情報等であってもよい。
【0053】
また、本実施形態に係る運行情報記録装置1は、SRAM12に代えて、他の揮発性メモリを備えていてもよいし、FROM13に代えて他の不揮発性メモリを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 :運行情報記録装置
11a :電断検知部(電断検知手段)
11b :記録制御部(記録制御手段)
11c :判断部(判断手段)
12 :SRAM(第1記憶手段)
13 :FROM(第2記憶手段)
13b :運行情報記録部(運行情報記録エリア)
13c :退避情報記録部(退避エリア)
14 :第1補助電源(補助電源)
15 :第2補助電源
図1
図2
図3
図4
図5