(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20220712BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
(21)【出願番号】P 2018066630
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194146
【氏名又は名称】長谷川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【氏名又は名称】村上 大勇
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【氏名又は名称】小河 卓
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 敏男
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3073059(JP,U)
【文献】特開2014-170123(JP,A)
【文献】特開2014-089348(JP,A)
【文献】特開2015-045750(JP,A)
【文献】特開2004-334048(JP,A)
【文献】特開2015-200787(JP,A)
【文献】特開2010-139626(JP,A)
【文献】特開2001-255441(JP,A)
【文献】特開2012-173527(JP,A)
【文献】特開2001-166192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズと、前記複数のレンズを保持する鏡筒と、を備えるレンズユニットであって、
前記複数のレンズのうち少なくとも1枚は、筒部を備えるレンズホルダに圧入され保持されたガラスレンズを含み、
前記ガラスレンズを前記レンズホルダに組み込む際の組込口側の面には、組込口に繋がっている溝であって、接着剤が注入されて溜まる接着剤用溝を備え、
前記接着剤用溝内には、光軸方向に突出した爪部が形成されており、
前記ガラスレンズの側面と前記爪部は隙間を持って対向し、前記隙間内に接着剤が介在して、前記ガラスレンズと前記レンズホルダが固定され
、前記爪部の先端は、熱溶着により径方向内側に変形した変形部であることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記変形部と前記ガラスレンズの間には隙間が設けられており、前記隙間には接着剤が介在されていることを特徴とする請求項
1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記レンズホルダは、前記筒部の反組込口において、周方向に並んで形成された複数の突出部を備え、
前記反組込口であって、
前記ガラスレンズの側面が圧入される圧入部と光軸方向で対向する領域には、前記突出部と前記突出部の間である切欠部が形成されている
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記突出部は、前記ガラスレンズが当接する当接部を備え、
前記当接部は、凸状の曲面であることを特徴とする請求項
3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記変形部は、前記ガラスレンズをかしめるカシメ部であり、
それぞれの爪部とそれぞれの当接部は光軸方向で同一に形成されていることを特徴とする請求項
1に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記切欠部は、前記接着剤が充填される第2接着剤用溝であることを特徴とする請求項
3に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットに係り、例えば、複数のレンズとそれらを保持する鏡筒とを備えるレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレンズが鏡筒の内部に配置され保持されるレンズユニットにおいて、ガラスレンズの組み立てには、樹脂製又は金属製のレンズホルダが使用されることがある(例えば特許文献1参照)。すなわち、ガラスレンズはレンズホルダに嵌め込まれた状態で、鏡筒の内部に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鏡筒の内部に配置されるレンズは、鏡筒内に組み込んだレンズ上にレンズを組み込んでいくことで光軸方向の位置決めがされている。一方で、レンズホルダは、レンズホルダのみが位置決めされているのであって、レンズホルダ内に保持されたガラスレンズ自体はレンズホルダのみに保持されている。したがって、レンズユニット(レンズユニットを保持する上位装置)が外部から強い衝撃を受けてしまうと、レンズホルダに保持されたガラスレンズのみの位置がずれしてしまい、光学性能が劣化してしまうことが懸念される。
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みなされたものであって、レンズホルダに保持されたガラスレンズを含む複数のレンズが鏡筒の内部に配置され保持されるレンズユニットにおいて、レンズホルダに固定されたガラスレンズの固定強度を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のレンズと、前記複数のレンズを保持する鏡筒と、を備えるレンズユニットであって、前記複数のレンズのうち少なくとも1枚は、筒部を備えるレンズホルダに圧入され保持されたガラスレンズを含み、前記ガラスレンズを前記レンズホルダに組み込む際の組込口側の面には、組込口に繋がっている溝であって、接着剤が注入されて溜まる接着剤用溝を備え、前記接着剤用溝内には、光軸方向に突出した爪部が形成されており、前記ガラスレンズの側面と前記爪部は隙間を持って対向し、前記隙間内に接着剤が介在して、前記ガラスレンズと前記レンズホルダが固定され、前記爪部の先端は、熱溶着により径方向内側に変形した変形部とされている。
爪部とガラスレンズの側面との接着面積を、特にガラスレンズの厚さ方向に確保でき、安定した固定状態を実現できる。
【0008】
前記変形部と前記ガラスレンズの間には隙間が設けられており、前記隙間には接着剤が介在されてもよい。
【0009】
また、前記レンズホルダは、前記筒部の前記反組込口において、周方向に並んで形成された複数の突出部を備え、前記反組込口であって前記ガラスレンズの側面が圧入される圧入部と光軸方向で対向する領域には、前記突出部と前記突出部の間である切欠部が形成されてもよい。すなわち、圧入部と光軸方向で対向する反組込口の領域には、突出部が形成されていない。切欠部が形成されているため、圧入によるバリ等(圧入時に筒部の一部が削れてしまうことで発生する削りカス等)によって、ガラスレンズの光軸方向の位置精度低下が発生することを抑制できる。
【0010】
前記突出部は、ガラスレンズが当接する当接部を備え、前記当接部は、凸状の曲面であってもよい。当接部が凸状の曲面(球面、非球面の凸形状)であるため、ガラスレンズとの当接は点接触となる。したがって、ガラスレンズにおけるレンズホルダ内の軸線方向反組込口側の位置精度を向上させることが出来る。すなわち、面接触であると接触面の精度を出す必要があり、成形が難しいが、点接触とすることで、精度出しが容易になる。
【0011】
前記変形部は、前記ガラスレンズをかしめるカシメ部であり、それぞれの爪部とそれぞれの当接部は光軸方向で同一に形成されている。すなわち、当接部は、爪部の下側(像側)に形成され、かしめ処理が行われたときに、第4レンズを下側から支持することができる。
【0012】
前記切欠部は、前記接着剤が充填される第2接着剤用溝であってもよい。レンズホルダの反組込口側にも接着剤によって固定されるため、さらに光軸方向でのガラスレンズの位置ズレを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レンズホルダに保持されたガラスレンズを含む複数のレンズが鏡筒の内部に配置され保持されるレンズユニットにおいて、レンズホルダに固定されたガラスレンズの固定強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る、レンズユニットの全体を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る、レンズユニットの断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る、第4レンズが取り外された状態のレンズホルダを示す斜視図である。
【
図4】第1の実施形態に係る、レンズホルダの断面斜視図である。
【
図5】第1の実施形態に係る、第4レンズが圧入された状態のレンズホルダの接着剤用溝の周辺を拡大し示した断面斜視図である。
【
図6】第1の実施形態に係る、第4レンズとレンズホルダの筒部の圧入部分を拡大した図である。
【
図7】第1の実施形態に係る、レンズホルダの像側を示した斜視図である。
【
図8】第2の実施形態に係る、レンズホルダの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は本実施形態に係るレンズユニット1の全体を示す斜視図である。
図2は縦断面図である。
【0017】
レンズユニット1は、車載周辺監視カメラ、監視カメラ、ドアホン等に組み込まれるレンズアッシである。なお、本実施形態における「物体側L1」および「像側L2」とは、光軸L方向における物体側および像側をいい、「光軸方向」とは光軸Lに平行する方向をいう。
【0018】
(全体構成)
レンズユニット1は、複数のレンズからなる広角レンズ2と、広角レンズ2を収納する鏡筒3とを備える。広角レンズ2は、光軸Lに沿って物体側L1から像側L2に向かって密着して配置された第1レンズ21、第2レンズ22、第3レンズ23、第4レンズ24、第5レンズ25、および第6レンズ26の6枚のレンズにより構成される。
【0019】
広角レンズ2を構成するレンズのうち、第1レンズ21は、最も物体側L1に配置される。第2レンズ22は、第1レンズ21の像側L2に位置する。第3レンズ23は、第2レンズ22の像側L2に位置する。第4レンズ24は、第3レンズ23の像側に位置する。第4レンズ24は、樹脂製のレンズホルダ4に圧入固定され更に接着剤による補強固定された状態で鏡筒3に配置される。レンズホルダ4の具体的な構成については後述する。第5レンズ25は、第4レンズ24の像側L2に位置する。第6レンズ26は、第5レンズ25の像側L2に位置する。第5レンズ25と第6レンズ26は、接合レンズ27を構成する。
【0020】
第1レンズ21には、最も物体側に位置する第1レンズ21の物体側レンズ面が露出している場合でも第1レンズ21の物体側レンズ面に傷が付きにくくするという観点からガラスレンズが用いられる。第2レンズ22、第3レンズ23、第5レンズ25、および第6レンズ26には、レンズの加工性および経済性に優れるという点から、プラスチックレンズが用いられる。第4レンズ24には、レンズの面精度や温度変化に対する屈折率等の光学特性に優れるという観点からガラスレンズが用いられる。
【0021】
尚、本実施形態におけるレンズユニット1の広角レンズ2は上記6枚のレンズにより構成されているが、レンズの枚数は限定されることはなく、また、レンズの材質についても限定されることなく、また、接合レンズを備えない構成としても良い。
【0022】
鏡筒3は、樹脂製の円筒状の玉枠であり、広角レンズ2を構成する各レンズの外周面に沿いながら、像側L2に向かって内周面が形成されている。広角レンズ2を構成する第1レンズ21、第2レンズ22、第3レンズ23、レンズホルダ4、第5レンズ25、第6レンズ26は、その外周面が鏡筒3の内周面に支持されることにより光軸L方向に位置決めされている。
【0023】
また、第5レンズ25における像側L2の面の周縁に形成された平坦部25aが、鏡筒3の像側L2において周方向内側に延びる環状の平坦部31に載置される。また、第2レンズ22の物体側L1の面の周縁が鏡筒3の物体側内周面の端部に設けられたカシメ部35に係止される。
【0024】
このことにより、第2レンズ22、第3レンズ23、レンズホルダ4(第4レンズ24)、第5レンズ25、および第6レンズ26が、光軸L方向に位置決めされる。さらに、第1レンズ21の外周部分にOリング5が組み込まれた後、Oリング5が組み込まれた第1レンズ21が、環状の溝部34に組み込まれる。その後、第1レンズ21の周縁が鏡筒3の物体側端部に設けられたカシメ部33に係止される。この工程によって、第1レンズ21が光軸L方向に位置決めされる。
【0025】
ここでは、第2レンズ22、第3レンズ23、レンズホルダ4(第4レンズ24)、第5レンズ25、および第6レンズ26の挿入順の間違い防止の観点から、像側L2のレンズほど外径が小さく、かつそれられに対応して内周面が狭く形成されている。
【0026】
(レンズホルダ構造)
つづいて、
図3~7を参照してレンズホルダ4の構造および第4レンズ24との固定構造について説明する。
図3は、第4レンズ24が取り外された状態のレンズホルダ4を示している。
図4は、レンズホルダ4の断面斜視図である。
図5は、第4レンズ24が圧入された状態のレンズホルダ4の接着剤用溝45の周辺を拡大し示した断面斜視図である。
図6は、第4レンズ24とレンズホルダ4の筒部50の圧入部分を拡大した図である。
図7は、レンズホルダ4の像側L2を示した斜視図である。
【0027】
レンズホルダ4は、樹脂製であって略円筒状に形成されている。レンズホルダ4の外周部分には、その一部をカットしたDカット部49が形成されている。樹脂成形時に、Dカット部49に金型のゲート口が位置する。
【0028】
レンズホルダ4の中央には、物体側平面41から像側平面42(すなわち光軸L方向)に貫通する筒部50が設けられている。この筒部50に第4レンズ24が圧入により装着され固定される。筒部50において、物体側L1の開口が第4レンズ24の組込口50a、像側L2の開口が反組込口50bとなる(
図4参照)。なお、第4レンズ24の圧入は、圧入時の変形等を避ける必要から、比較的弱い力によることが好ましい。また、固定の補強の加点から接着剤が用いられる。
【0029】
筒部50の内周面には、光軸L方向に延びる圧入部53が、レンズホルダ4の周方向に沿って等間隔に3箇所形成されている。圧入部53は、例えば筒部50の径方向内側(すなわち中心方向)に向かって膨出した形状で形成されている膨出部である。ここでは、膨出先端部分は平面となっている。また、圧入部53の像側L2は、切欠部70となって、空間が形成されている。
【0030】
したがって、第4レンズ24が組み込まれたときに、第4レンズ24の側面の反組込口側部分は、圧入部53よりも光軸方向に突き抜け、圧入状態が解除されている。この結果、残留応力によるバックラッシュが生じないため、ガラスレンズである第4レンズ24におけるレンズホルダ4内の位置精度を向上することができ、レンズユニット1としての高性能化に貢献できる。また、切欠部70が形成されているため、圧入によるバリ等(圧入時に筒部の一部が削れてしまうことで発生する削りカス等)によって、圧入部分にバリ等が残留し第4レンズ24の光軸方向の位置精度低下を抑制できる。
【0031】
なお、圧入部53は3箇所に限る趣旨では無く、3箇所以上で等間隔に形成されていればよい。さらに、圧入部53は、上記形状に限らず、リブ形状であったり、半球状の凸形状であってもよい。また、圧入部53は、圧入時の荷重とDカット部49の方向の強度を考慮して、Dカット部49や後述の接着剤用溝45が形成されている角度方向を避けて形成される。
【0032】
筒部50に装着された第4レンズ24は3箇所で支持して固定されているため、第4レンズ24を全周面で固定するときに想定される、温度低下時に発生するレンズホルダ4の樹脂収縮によるレンズホルダ4または第4レンズ24の割れ、欠け等の不具合を防止できる。
【0033】
筒部50の像側L2の反組込口50bには、径方向内側に所定長突出した突出部52が、圧入部53が形成されている領域を避けて3箇所に形成されている。すなわち、二つの突出部52の間に圧入部53が形成され、さらに圧入部53の像側L2には光軸方向で対向するように切欠部70が形成されている。突出部52は、像側レンズ面24bの外縁部分を覆う。
【0034】
突出部52の中央には、凸状の曲面(球面や非球面の曲面等)である曲面部56が形成されている。第4レンズ24が筒部50に圧入されたときに、曲面部56と第4レンズ24の像側レンズ面24cが僅かに離間した状態になる。これによって、圧入後に第4レンズ24のチルト誤差を調整することが容易になる。ただし、後述のように、第4レンズ24の物体側レンズ面24bの外縁がカシメられる場合は、曲面部56と像側レンズ面24cは当接してもよい。
【0035】
レンズホルダ4の物体側L1の面すなわち物体側平面41は、外周側の環状の外縁側平面43と、外縁側平面43より一段低く形成された内周側の環状の内縁側平面44とで構成されている。内縁側平面44の内周側の境界が、筒部50との境界となる。
【0036】
外縁側平面43には、物体側L1方向に突出するボス状の物体側位置決め部46が、レンズホルダ4の周方向に沿って等間隔に8箇所形成されている。この物体側位置決め部46に第3レンズ23が載置される。すなわち、物体側位置決め部46は、第3レンズ23の基準面として機能する。物体側位置決め部46は8箇所に限る趣旨では無く、3箇所以上で等間隔に形成されていればよい。
【0037】
内縁側平面44には、接着剤用溝45がレンズホルダ4の周方向に沿って等間隔に3箇所に形成されている。接着剤用溝45の形成位置は、Dカット部49が形成される位置(すなわち12時の位置)を基準として120度間隔で形成されている。接着剤用溝45は、所定深さの上面視で略半円形の溝(U字溝)となって、第4レンズ24の組込口50aである筒部50に繋がっている。接着剤用溝45と筒部50の境界部分には、段部59が形成されている。また、段部59の略中央には、後述の爪部60が形成されている。
【0038】
第4レンズ24を筒部50に圧入固定後この接着剤用溝45に、接着剤が供給用針から所定量注入され溜まる。接着剤用溝45に投入された接着剤は、その流動性によって第4レンズ24と筒部50の隙間に流れ込む。接着剤は、例えば、紫外線硬化型であって、接着剤用溝45に投入された後、その隙間に適切量が流れ込んだタイミングで、紫外線照射により硬化される。接着剤により光軸方向での第4レンズ24の位置ズレを抑制できる。また、段部59が設けられることで、接着面積を確保でき、光軸方向での第4レンズ24の位置ズレをさらに抑制できる。
【0039】
また、接着剤用溝45には、より具体的には、段部59には、物体側L1に延びる爪部60が形成されている。
【0040】
ここで
図6を参照して、爪部60と第4レンズ24の関係を3つの例(基本例、変形例1、変形例2)で説明する。
図6(a)は、基本例を示している。ここでは、爪部60は、第4レンズ24のレンズ側面24aと僅かに離間して対向し、その先端部分は、レンズ側面24aより上側(物体側L1)に飛び抜けた位置まで形成されている。接着剤用溝45に注入された接着剤は、その流動性により、レンズ側面24aと爪部60の隙間S1に浸透する。突出部52に設けられた当接部56aは、上述のように像側レンズ面24cとは僅かに離間した状態となっている。爪部60を設けることで、レンズ側面24aと筒部50との接着面積、特に、第4レンズ24の厚さ方向の接着面積を確保できるため、安定した接着状態を実現でき、光軸方向での位置ズレを抑制できる。
【0041】
なお、第4レンズ24は、曲面部56と当接していてもよい。この場合、曲面部56は第4レンズ24と当接する当接部56aとなる。ここで、当接部56aが凸状の曲面(球面、非球面の凸形状)であるため、第4レンズ24との当接は点接触となる。したがって、第4レンズ24におけるレンズホルダ4内の軸線方向反組込口側の位置精度を向上させることが出来る。すなわち、面接触であると接触面の精度を出す必要があり、当接部56aの成形が難しいが、点接触とすることで、精度出しが容易になる。
【0042】
図6(b)の変形例1では、爪部60の先端部分が熱溶着により径方向内側に変形した変形部61となっている。変形部61と第4レンズ24の間には隙間S2が設けられており、この隙間S2には、接着剤用溝45に注入された接着剤が浸透する。また、曲面部56は、上述のように像側レンズ面24cとは僅かに離間した状態となっている。
【0043】
なお、第4レンズ24は、曲面部56と当接していてもよい。この場合、曲面部56は第4レンズ24と当接する当接部56aとなる。ここで、当接部56aが凸状の曲面(球面、非球面の凸形状)であるため、第4レンズ24との当接は点接触となる。したがって、第4レンズ24におけるレンズホルダ4内の軸線方向反組込口側の位置精度を向上させることが出来る。すなわち、面接触であると接触面の精度を出す必要があり、当接部56aの成形が難しいが、点接触とすることで、精度出しが容易になる。なお、変形部61の変形形状や第4レンズ24と当接部56aとの当接構造は、いずれか一方のみでもよい。
【0044】
図6(c)の変形例2では、爪部60の変形部61が物体側レンズ面24bをかしめるカシメ部として機能している。すなわち、それぞれの爪部60とそれぞれの当接部56aは光軸方向で同一に形成されているため、当接部56aがカシメ時の荷重を下から適切に受けることができる。
【0045】
図7に示すように、レンズホルダ4の像側平面42には、像側L2方向に所定高さで突出するボス状の像側位置決め部48がレンズホルダ4の周方向に沿って等間隔に3箇所形成されている。すなわち、像側位置決め部48は、隣接するレンズ(第5レンズ25)に配置される際の位置基準面となる凸部である。なお、像側位置決め部48は、3箇所に限定されるものではなく、レンズホルダ4の周方向に沿って等間隔に形成されていればよい。像側位置決め部48の平面度のみを精度よくすればよく、像側平面42全体の平面度を精度良くする必要がない。
【0046】
また、像側平面42の突出部52(筒部50)の近傍には、より具体的には、切欠部70と切欠部70との間に、凸状の治具用載置面42aが形成されている。治具用載置面42aには、第4レンズ24を圧入させる際に、治具の載置面となる。ただし、像側位置決め部48の高さよりは低く、すなわち突出量が少なく設定されており、鏡筒3にレンズホルダ4を組み込んだ際に、治具用載置面42aが第5レンズ25に当接することはない。
【0047】
また、像側平面42において、切欠部70は、上述した物体側平面41に設けられた接着剤用溝45と同様に、周方向に沿って等間隔に3箇所の接着剤用溝として機能させることができる。
【0048】
本実施形態の特徴を纏めると次の通りである。
レンズユニット1は、複数のレンズ(第1~第6レンズ21~26)と、複数のレンズ(第1~第6レンズ21~26)を保持する鏡筒3と、を備える。複数のレンズ(第1~第6レンズ21~26)のうち少なくとも1枚は、筒部50を備えるレンズホルダ4に圧入され保持されたガラスレンズ(ここでは第4レンズ24)を含む。レンズホルダ4において、ガラスレンズ(第4レンズ24)をレンズホルダ4に組み込む際の組込口側の面(物体側平面41)には、組込口50aに繋がっている溝であって、接着剤が注入されて溜まる接着剤用溝45を備える。接着剤用溝45内には、光軸方向に突出した爪部60が形成されている。ガラスレンズの側面(第4レンズ24のレンズ側面24a)と爪部60は隙間を持って対向し、隙間内に接着剤が介在して、ガラスレンズ(第4レンズ24)とレンズホルダ4が固定されている。爪部60とガラスレンズ(第4レンズ24)の側面との接着面積を、特にガラスレンズ(第4レンズ24)の厚さ方向に確保でき、安定した固定状態を実現できる。
【0049】
爪部60の先端は、熱溶着により径方向内側に変形した変形部61であってもよい。
【0050】
変形部61とガラスレンズ(第4レンズ24)の間には隙間S2が設けられており、隙間S2には接着剤が介在されてもよい。
【0051】
また、レンズホルダ4は、筒部50の反組込口50bにおいて、周方向に並んで形成された複数の突出部52を備え、反組込口50bであって圧入部53と光軸方向で対向する領域には、突出部52と突出部52の間である切欠部70が形成されている。すなわち、圧入部53と光軸方向で対向する反組込口50bの領域には、突出部53が形成されていない。切欠部70が形成されているため、圧入によるバリ等(圧入時に筒部の一部が削れてしまうことで発生する削りカス等)によって、ガラスレンズ(第4レンズ24)の光軸方向の位置精度低下が発生することを抑制できる。
【0052】
突出部52は、ガラスレンズ(第4レンズ24)が当接する当接部56を備え、当接部56は、凸状の曲面であってもよい。当接部が凸状の曲面(球面、非球面の凸形状)であるため、ガラスレンズ(第4レンズ24)と当接する場合には点接触となる。したがって、ガラスレンズ(第4レンズ24)におけるレンズホルダ4内の軸線方向反組込口側の位置精度を向上させることが出来る。すなわち、面接触であると接触面の精度を出す必要があり、成形が難しいが、点接触とすることで、精度出しが容易になる。
【0053】
変形部61は、ガラスレンズ(第4レンズ24)をかしめるカシメ部であり、それぞれの爪部60とそれぞれの当接部56は光軸方向で同一に形成されてもい。すなわち、当接部56は、爪部60の下側(像側L2)に形成され、かしめ処理が行われたときに、第4レンズ24を下側から支持することができる。
【0054】
切欠部70は、接着剤が充填される第2接着剤用溝であってもよい。レンズホルダ4の反組込口側にも接着剤によって固定されるため、さらに光軸方向での第4レンズ24の位置ズレを抑制できる。
【0055】
<第2の実施形態>
図8は本実施形態のレンズホルダ104の斜視図である。このレンズホルダ104は、第1の実施形態のレンズホルダ4の変形例であり、異なる点について説明する。すなわち、物体側平面141は、第1の実施形態と同様に、外縁側平面143と内縁側平面144とで構成されているが、内縁側平面144が第1の実施形態の接着剤用溝45と同等の深さに形成されている。したがって、接着剤用溝45としての形状は現れていない。
【0056】
また、段部59には、爪部160として、第1および第2の爪部161、162が形成されている。これによって、爪部160と第4レンズ24(レンズ側面24a)の対向面積、すなわち接着面積を増やすことができる。
【0057】
以上、本発明を、実施の形態をもとに説明したが、この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0058】
1 レンズユニット
2 広角レンズ
3 鏡筒
4、104 レンズホルダ
5 Oリング
21 第1レンズ
22 第2レンズ
23 第3レンズ
24 第4レンズ
24a レンズ側面
24b 物体側レンズ面
24c 像側レンズ面
25 第5レンズ
25a 平坦部
26 第6レンズ
27 接合レンズ
31 平坦部
33、35 カシメ部
34 溝部
41、141 物体側平面
42 像側平面
42a 治具用載置面
43、143 外縁側平面
44、144 内縁側平面
45 接着剤用溝
46 物体側位置決め部
48 像側位置決め部
49 Dカット部
50 筒部
50a 組込口
50b 反組込口
52 突出部
53 圧入部
56 曲面部
56a 当接部
59 段部
60 爪部
61 変形部
70 切欠部
L 光軸
L1 物体側
L2 像側