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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】機能分離型衝撃吸収装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/04 20060101AFI20220712BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
E01D19/04 101
E01D1/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018067042
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019065683
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2017190764
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509200613
【氏名又は名称】株式会社横河NSエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】前島 稔
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 善也
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-082904(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1777087(KR,B1)
【文献】特開2014-109160(JP,A)
【文献】特開2002-267404(JP,A)
【文献】特開2016-138416(JP,A)
【文献】特許第4726094(JP,B2)
【文献】特開2019-065532(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1618229(KR,B1)
【文献】特開2017-198539(JP,A)
【文献】特開平11-125568(JP,A)
【文献】特開2000-310501(JP,A)
【文献】特開2009-031217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
E01D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張り荷重を受けて弾塑性変形する衝撃吸収体と当該衝撃吸収体の一端側に繋がれた引張り部材とを備え、かつ相対変位を起す構造体間に設置される衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収体は、前記構造体間の相対変位によって作用する引張り荷重によって部材軸方向に弾塑性変形する変形芯材と、前記変形芯材を内包するカバー体と、前記変形芯材の弾塑性変形に比例して前記カバー体の端部から突出して前記変形芯材の弾塑性変形量を表示する弾塑性変形量表示部とを備え、前記変形芯材と前記弾塑性変形量表示部は、材料強度を反映して設計され、かつ前記変形芯材が前記弾塑性変形量表示部に先行して弾塑性変形するように両者の設計断面が決定されていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項2】
引張り荷重を受けて弾塑性変形する衝撃吸収体と当該衝撃吸収体の一端側に繋がれた引張り部材とを備え、かつ相対変位を起こす構造体間に設置される衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収体は、前記構造体間の相対変位によって作用する引張り荷重によって部材軸方向に弾塑性変形する変形芯材と、前記変形芯材の両側に配置される引張り拘束部材と、前記変形芯材の弾塑性変形に比例して前記引張り拘束部材の端部から突出して前記変形芯材の弾塑性変形量を表示する弾塑性変形量表示部とを備え、前記変形芯材と前記弾塑性変形量表示部は、材料強度を反映して設計され、かつ前記変形芯材が前記弾塑性変形量表示部に先行して弾塑性変形するように両者の設計断面が決定されていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項3】
請求項1記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記弾塑性変形量表示部は、前記カバー体の端部から突出する突出長さによって前記変形芯材の弾塑性変形量を表示するように設置されていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項4】
請求項記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記弾塑性変形量表示部は、前記引張り拘束部材の端部から突出する突出長さによって前記変形芯材の弾塑性変形量を表示するように設置されていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかひとつに記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記弾塑性変形量表示部は着色されていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかひとつに記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記弾塑性変形量表示部は、所定値以上の引張り荷重によって破断する破断誘発用のくびれまたは孔を備えていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかひとつに記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記構造体は、橋梁の上部構造体と当該上部構造体を支える下部構造体であって、前記衝撃吸収体の他端は前記下部構造体に、前記引張り部材の自由端は前記上部構造体にそれぞれ固定されていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかひとつに記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収体の他端は引張り材を介して前記構造体に固定されていることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項9】
請求項記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収体と前記引張り部材は、弛んだ状態設置されることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【請求項10】
請求項記載の機能分離型衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収体と前記引張り部材は、実質的に引張り荷重を受けないで直線状に設置されることを特徴とする機能分離型衝撃吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大地震時の衝撃吸収能力が高く、かつ被災した後の取替え時の判断および取替えの容易な機能分離型衝撃吸収装置に関し、主として、道路橋や鉄道橋などの橋梁の上部構造体(以下「橋桁」)と当該橋桁の端部を支える下部構造体(以下「橋台または橋脚」)間に設置され、大地震時の衝撃を吸収すると共に、橋桁の端部が橋台または橋脚から落下するのを防止する落橋防止装置として用いられる。
【背景技術】
【0002】
道路橋や鉄道橋などの橋桁の端部と、当該橋桁端部を支える橋台または橋脚間には、レベル2(想定し得る範囲で最大規模の地震)およびレベル2を超える想定外の大地震による衝撃を吸収し、かつ大地震によって橋桁端部が橋台または橋脚から落下するのを防止するための落橋防止装置が設置されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、互いに連結された複数のリング(21)~(25)備え、橋桁(H)などの橋梁上部構造体と橋台や橋脚(B)などの橋梁下部構造体とを連結して橋梁上部構造体の落下を防止する落橋防止チェーンの発明が開示されている。
【0004】
当該落橋防止チェーンは、前記リング同士の連結部を4か所間隔あけた状態でその周りをゴム弾性体(3)で固化したうえ、ゴム弾性体(3)の長さをリングの4個分の長さ以内とした構成になっている。そして、当該落橋防止緩衝チェーンの発明によれば、地震時の衝撃荷重を吸収する緩衝効果が大きく、かつ軽量で取付・交換の作業効率を上げることができるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、上部構造(2)に接続される第一連結部材(42)と、下部構造(3)に接続される第二連結部材(43)と、第一連結部材(42)及び第二連結部材(43)の間に配置されるエネルギー吸収機構(5)と、を有し、エネルギー吸収機構(5)は、第一連結部材(42)に配置された第一定着部(52)と、第二連結部材(43)に配置された第二定着部(53)と、第一定着部(52)及び第二定着部(53)に接続され低降伏点材により形成されるエネルギー吸収部材(51)と、第二連結部材(43)に挿通されるとともに第一定着部(52)に接続される結合部材(54)とを備え、かつ結合部材(54)の第二定着部(53)との間にエネルギー吸収部材(51)の塑性変形による移動を許容する遊間(55)が形成されてなる落下防止装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-138416号公報
【文献】特許第4726094号公報
【文献】特開平9-242019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の落橋防止緩衝チェーンの発明では、ゴム弾性体(3)は、その材質上、特に経年劣化しやすいため、固化して早期に衝撃吸収能力が低下するおそれがあり、比較的短期間のうちに新規のものと取り換える必要があった。また、新規のものと取り換える場合に、劣化の程度を外観から判断しにくいため、取り換え時の判断が非常に困難であった。
【0008】
また、特許文献2の落下防止装置の発明では、エネルギー吸収部材(51)の塑性変形量を外部から確認できないため、地震で被災した後の取替え時の判断が困難であるという課題があった。
【0009】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、特に地震時の衝撃吸収能力を長期間に渡って保持し、かつ地震等で被災した後の取替えの判断および取替えを容易に行えるようにした機能分離型の衝撃吸収装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、衝撃吸収体を備え、かつ相対変位を起す構造体間、例えば、橋梁の上部構造体と当該上部構造体を支える下部構造体間に設置される衝撃吸収装置の発明であり、前記衝撃吸収体は、前記構造体間の相対変位によって作用する引張り荷重によって部材軸方向に弾塑性変形する変形芯材と、当該変形芯材を覆うカバー体と、前記変形芯材の弾塑性変形に比例して前記カバー体の端部から突出して、前記変形芯材の弾塑性変形量を表示する弾塑性変形量表示部とを備えてなることを特徴とするものである。
【0011】
衝撃吸収体の一端にチェーン等の引張り部材を取り付け、橋梁の上部構造体と下部構造体間などの他に、桟橋や浮き桟橋などの係留施設を繋ぎ止める索などとしても使用することができる。
【0012】
前記衝撃吸収体と引張り部材は、相対変位を起す構造体間に懸垂曲線状に弛んだ状態(図1参照)で設置することも、実質的に引張り荷重を受けないでほぼ直線状(図6参照)に設置することもできる。また、引張り部材にはチェーンの他に、ケーブルまたはPC棒鋼なども用いることができる。
【0013】
カバー体は、変形芯材の全体を内包するような円形または矩形状をした筒状カバーであれば、変形芯材が露出せず外観的体裁が良い。また、カバー体が変形心材を破断に至らない範囲で拘束する、例えばプレート状の引張拘束材であれば、落橋などといった構造体の致命的な破壊を未然に防止することができるだけでなく、形状が簡単で容易に製作することができてコスト削減が可能である。
【0014】
弾塑性変形量表示部は、変形芯材の弾塑性変形(伸び)により前記カバー体の端部から突出することによって前記変形芯材の弾塑性変形量を表示するように設置することで、落橋防止装置が地震時等に作動したことを目視によって容易に確認することができる。
【0015】
弾塑性変形量表示部としては、例えば、突起、溝または孔などといった容易に目視できるような表示部であればよく、また、離れた位置からでも容易に目視できるような着色でもよい。
【0016】
さらに、突起などを変形芯材の変形方向に等間隔に設置したり、あるいは変形芯材の変形方向に沿って長溝が形成してあれば、カバー体の端部から突出する突起の数や溝の長さによって変形芯材の塑性変形量を数量によって確認することができる。
【0017】
また、変形芯材および弾塑性変形量表示部は材料強度を反映した設計とし、かつ変形芯材が弾塑性変形量表示部に先行して弾塑性変形するように両者の設計断面が決定してあればよい。
【0018】
さらに、弾塑性変形量表示部は、レベル2を超える大地震時の引張り荷重が作用したときは、弾塑性変形した後破断するように形成してあれば、チェーン等の引張り部材の破断等を回避することができ、これにより衝撃吸収体のみを取り換えるだけで容易かつ短期間のうちに復旧させることができる。なお、弾塑性変形量表示部の外周に破断誘発用のくびれや孔等が設けてあれば、想定外の引張り荷重の作用時には、この部位に応力集中を誘発させて確実に部材破断をさせる設計制御が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特に引張り荷重による変形芯材の弾塑性変形を、当該変形芯材の弾塑性変形に比例して筒状カバーの端部から突出する弾塑性変形量表示部の突出長さによって確認することで、地震で被災した後の落橋防止装置の取替え時を容易に判断することができる。
【0020】
また、弾塑性変形量表示部を着色することにより、変形芯材の弾塑性変形を離れた位置からでも容易に確認することができる。さらに、設計荷重を上回る荷重が作用した場合は、前記、弾塑性変形部以外の取り付け部を破断させることで、その他の部位の損傷を防ぎ、衝撃吸収体のみの取り替えで容易に速やかな復旧を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態であり、引張り部材にチェーンが用いられ、かつ橋桁の端部と橋台間に懸垂曲線状に弛んだ状態に設置された落橋防止装置の斜視図である。
図2図1に図示する落橋防止装置であり、地震時の引張り荷重を受けて破断した状態を示す斜視図である。
図3図1に図示する落橋防止装置の衝撃吸収体を図示したものであり、図3(a)はその外観の斜視図、図3(b)はその内部の斜視図である。
図4図4(a)~(d)は、地震時の引張り荷重による衝撃吸収体が破断に至るまでの挙動を示す斜視図である。
図5図1に図示する落橋防止装置の衝撃吸収体が破断に至るまでの荷重-変位設計曲線を示すグラフである。
図6】本発明の他の実施形態であり、引張り部材にケーブルが用いられ、かつ橋桁の端部と橋台間に実質的に引張り荷重を受けないでほぼ直線状に設置された落橋防止装置の斜視図である。
図7図6に図示する落橋防止装置であり、地震時の引張り荷重を受けて破断した状態を示す斜視図である。
図8図6に図示する落橋防止装置の衝撃吸収体が破断に至るまでの荷重-変位設計曲線を示すグラフである。
図9】本発明の他の実施形態であり、引張り部材にチェーンが用いられ、かつ橋桁の端部と橋台間に懸垂曲線状に弛んだ状態に設置された落橋防止装置の正面図である。
図10図9に図示する落橋防止装置の衝撃吸収体に、地震時の引張り荷重が作用した際の弾塑性変形量表示部の挙動を図示したものであり、図10(a)は正面図、図10(b)、図10(c)は、それぞれ図10(a)におけるイ-イ線、ロ-ロ線断面図である。
図11図9に図示する衝撃吸収体に、地震時の引張り荷重が作用した際の弾塑性変形量表示部の挙動を図示したものであり、図11(a)は引張り荷重が作用する前の正面図、図11(b)は引張り荷重が作用した際の正面図、図11(c)はその一部破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1図5は、本発明の機能分離型衝撃吸収装置(以下「落橋防止装置」)の一実施形態を図示したものである。図において、落橋防止装置1は、衝撃吸収体2と当該衝撃吸収体2の一端側に繋がれた引張り部材(以下「チェーン」)3、衝撃吸収体2の他端側とチェーン3の自由端側の端部にそれぞれ取り付けられた取付け部材4および取付け部材5とを備えている。
【0023】
また、落橋防止装置1は、各橋桁6端部の下側に、取付け部材5を橋桁6の下端部に、取付け部材4を橋桁6の端部を支える橋台7の側面にそれぞれ固定することにより橋軸方向に沿ってかつ衝撃吸収体2とチェーン3が懸垂曲線状に少し弛んだ状態で設置されている(図1参照)。
【0024】
衝撃吸収体2は、橋軸方向に長い変形芯材8と当該変形芯材8の全長を内包する円筒形の筒状カバー9とを備えている(図3参照)。
【0025】
変形芯材8は、橋軸方向に作用する引張り荷重によって筒状カバー9内で弾塑性変形する鋼製の棒状変形部8Aと、当該棒状変形部8Aの両端部にそれぞれ形成された拡径部8Bおよび8Cとを備えている(図3(b)参照)。
【0026】
棒状変形部8Aは矩形または円形断面の棒状に形成され、拡径部8Bは棒状変形部8Aの橋台7側の端部に、拡径部8Cはその反対側の端部に、それぞれ棒状変形部8Aより大径の断面略十字形状に形成されている。
【0027】
また、拡径部8Cは筒状カバー9の端部内周に固定され、拡径部8Bは棒状変形部8Aが橋台7方向に弾塑性変形すると同時に筒状カバー9内を当該筒状カバー9の端部まで移動可能とされているが、筒状カバー9の外には突出しないようにストッパー(図省略)等によって制限されている。
【0028】
変形芯材8は、さらに拡径部8Bと拡径部8Cの端部にそれぞれ連結部8Dと連結部8Eを備え、連結部8Dは取付け金具4に、連結部8Eはチェーン3の端部にそれぞれシャックル10を介して脱着可能に繋がれている。
【0029】
また、拡径部8Bと連結部8Dとの間には、棒状変形部8Aの弾塑性変形とその変形量を目視によって確認可能な鋼製の弾塑性変形量表示部11が拡径部8Bおよび連結部8Dと一体に、かつ筒状カバー9内に内包された状態で形成されている。
【0030】
弾塑性変形量表示部11は、連結部8Dと共に所定幅、所定厚の板状に形成され、かつ棒状変形部8Aが橋軸方向に作用する引張り荷重によって橋台7方向に弾塑性変形すると同時に、棒状変形部8Aの変形量(伸び量)に比例して筒状カバー9の端部から橋台7方向に突出するように設置されている。
【0031】
これにより、地震の際に、衝撃吸収体2が引張り荷重を受けて作動したことを目視によって確認することができ、衝撃吸収体2の取替え時を容易に判断することができる。なお、弾塑性変形量表示部11を着色して識別しやすくすることにより、遠く離れた位置からでも衝撃吸収体2の取替え時を容易に判断することができる。
【0032】
弾塑性変形量表示部11は、さらに棒状変形部8Aが筒状カバー9内で最大長に弾塑性変形した後、弾塑性変形し、最終的に破断するように形成されている。なお、弾塑性変形量表示部の外周には、所定値以上の引張り荷重によって破断するように破断誘発用のくびれ11aが形成されている。
【0033】
これにより、チェーン3の破断や取付け部材4および5の離脱、破損等を回避することができ、衝撃吸収体2の取替えのみで容易に復旧させることができる。
【0034】
なお、変形芯材8の棒状変形部8Aが引張り荷重を受けて最大長に弾塑性変形した後の、衝撃吸収体2に作用する引張り荷重は筒状カバー9が負担するようになっている。
【0035】
このような構成において、地震時に橋桁6と橋台7間に相対変位が生じたとき、衝撃吸収体2とチェーン3が取付け部材4と取付け部材5間で直線状に緊張するまでは、衝撃吸収体2とチェーン3が実質的に無抵抗で引っ張られることで、橋桁6の端部と橋台7間に作用するレベル2内の地震エネルギーを吸収することができる(図4(a)、図5の荷重-変位設計曲線(1)-(2)参照)。
【0036】
また、レベル2を超える想定外の大地震時には、橋桁6の端部と橋台7間の相対変位に対して、衝撃吸収体2およびチェーン3に引張り荷重が作用し、変形芯材8の棒状変形部8Aが筒状カバー9内で弾塑性変形することにより大地震時の衝撃と地震エネルギーを吸収することができる(図4(b)、図5の荷重-変位設計曲線(2)-(4)参照)。
【0037】
さらに、棒状変形部8Aが筒状カバー9内で最大長に弾塑性変形した後は、棒状変形部8Aに代わって筒状カバー9が引張り荷重を負担する。そして、弾塑性変形量表示部11が弾塑性変形し、最終的に破断することによりチェーン3の破断や取付け金具4および5の離脱、損傷等を回避することができる(図4(c),(d)、図5の荷重-変位設計曲線(4)-(5)参照)。これにより、衝撃吸収体2のみを交換するだけで短期間のうちに復旧させることができる。
【0038】
図6図8は、本発明の他の実施形態を図示したものであり、引張り部材にケーブル12が用いられ、衝撃吸収体2とケーブル12は、橋桁6の端部と橋台7間に実質的に引張り荷重が作用しないでほぼ直線状に設置されている。
【0039】
このような構成において、レベル2およびレベル2を超える想定外の大地震時に、橋桁6の端部と橋台7間の相対変位に対して、衝撃吸収体2およびチェーン3に引張り荷重が作用し、変形芯材2の棒状変形部8Aが筒状カバー9内で弾塑性変形することにより大地震時の衝撃と地震エネルギーを吸収することができる(図4(b)、図8の荷重-変位設計曲線(1)-(2)-(3)参照)。
【0040】
そして、棒状変形部8Aが筒状カバー9内で最大長に弾塑性変形した後は、棒状変形部8Aに代わって筒状カバー9が引張り荷重を負担する。そして、弾塑性変形量表示部11が弾塑性変形し、最終的に破断することによりケーブル12の破断や取付け金具4および5の離脱、損傷等を回避することができる(図4(c),(d)、図8の荷重-変位設計曲線(4)-(5)参照)。これにより、衝撃吸収体2のみを交換するだけで短期間のうちに復旧させることができる。
【0041】
図9図11は、本発明の他の実施形態を図示したものであり、落橋防止装置1は、衝撃吸収体13と当該衝撃吸収体13の一端側に繋がれたチェーン3、衝撃吸収体13の他端側とチェーン3の自由端側の端部にそれぞれ取り付けられた取付け部材4および取付け部材5とを備えている。
【0042】
また、落橋防止装置1は、各橋桁6端部の下側に、取付け部材5を橋桁6の下端部に、取付け部材4を橋台7の側面にそれぞれ固定することにより橋軸方向に沿ってかつ衝撃吸収体13とチェーン3が懸垂曲線状に少し弛んだ状態で設置されている(図9参照)。
【0043】
衝撃吸収体13は、板状変形芯材14とその両側に設置された2枚の引張り拘束材15,15とを備え、板状変形芯材14は橋軸方向に作用する引張荷重によって弾塑性変形する板状変形部14Aと当該板状変形部14Aの両端部に形成された、板状変形部14Aより幅広な拡径部14B,14C、さらに各拡径部14B,14Cの端部に形成された連結部14D,14Dとを備えている。
【0044】
拡径部14Bおよび14Cと連結部14Dは同じ幅に形成され、各連結部14Dには取付け部材4とチェーン3を連結するための連結孔16が形成されている。連結孔16は橋軸方向に長いルーズ孔になっている。
【0045】
また、拡径部14Bの連結部14D側寄りの側面部には、引張り荷重による帯状変形部14Aの弾塑性変形とその変形量を目視によって確認可能な弾塑性変形量表示部17が引張り拘束材15内に隠れた状態で形成されている(図11(a)参照)。
【0046】
弾塑性変形量表示部17は、例えば、突起や溝、孔、或は孔に着色充填材を充填したもの等といった容易に目視できるように形成されており、当該実施形態においては、拡径部14Bの側面部に孔を形成し、その中に着色充填材を充填する等して目視できるように形成されている(図11(c)参照)。
【0047】
なお、弾塑性変形量表示部17として他には、離れた位置からでも容易に目視できるような着色でもよい。さらに、板状変形芯材14の変形方向に複数の突起などを等間隔に形成したり、あるいは板状変形芯材14の変形方向に沿って長溝が形成してあれば、引張り拘束材15の端部から突出する突起の数や溝の長さによって板状変形部14Aの弾塑性変形量を数量によって確認することができる。
【0048】
このような構成において、地震の際に、板状変形部14Aが橋軸方向に作用する引張り荷重によって橋軸方向に弾塑性変形すると同時に、弾塑性変形量表示部17が板状変形部14Aの変形量(伸び量)に比例して引張り拘束材15の端部から橋台7方向に突出することで、衝撃吸収体13が引張り荷重を受けて作動したことを目視によって確認することができ、衝撃吸収体13の取替え時を容易に判断することができる。
【0049】
また、拡径部14Bの連結部14D側寄りの縁端部に、板状変形部14Aが引張り拘束材15,15内で最大長に弾塑性変形した後から弾塑性変形し、最終的に板状変形部14Aに先行して破断するように破断誘発用のくびれ18が形成されている。
【0050】
引張拘束部材15は、拡径部14Bおよび14Cと同じ幅のプレート状に形成され、かつ変形芯材14の、両端の連結部14D,14Dを除く範囲を覆う長さに形成されている。また、引張り拘束部材15は、板状変形芯材14の両側に対称に設置され、かつ両端部において変形芯材14の拡径部14Bと14Cにそれぞれ複数の連結ボルト19と20によってそれぞれ接合され、特に連結ボルト19のボルト孔15aは引張り荷重の作用方向(引張り拘束部材15の長軸方向)に長軸を有する長孔に形成されている。
【0051】
これにより、板状変形芯材14の板状変形部14Aはボルト孔15aの範囲内で弾塑性変形し、この範囲を超える変形を付与するような引張り荷重は引張り拘束材15,15が負担し、さらに最終的には、くびれ18を有する部分が破断することで、チェーン3の破断や取付け部材4および5の離脱、破損等を回避することができ、衝撃吸収体13の取替えのみで容易に復旧させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、特に地震時の衝撃吸収能力が大きく、かつ地震で被災した後の取替え時の判断および取替えを容易に行うことができる。また、設計を上回る地震力が作用した場合は、特定部位を強制的に破断させることで、瞬時にその地震の規模を把握することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 落橋防止装置(機能分離型衝撃吸収装置)
2 衝撃吸収体
3 チェーン(引張り部材)
4 取付け部材
5 取付け部材
6 橋桁
7 橋台
8 変形芯材
8A 棒状変形部
8B 拡径部
8C 拡径部
8D 連結部
8E 連結部
9 筒状カバー
10 シャックル
11 弾塑性変形量表示部
11a くびれ
12 ケーブル(引張り部材)
13 衝撃吸収体
14 板状変形芯材
14A 板状変形部
14B 拡径部
14C 拡径部
14D 連結部
15 引張り拘束材
15a 長孔
16 連結孔
17 弾塑性変形量表示部
18 破断誘発用のくびれ
19 連結ボルト
20 連結ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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図11