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特許7103826防振材の構造及び防振床構造を有する鉄道車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】防振材の構造及び防振床構造を有する鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/10 20060101AFI20220712BHJP
   F16F 3/10 20060101ALI20220712BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B61D17/10
F16F3/10 A
F16F15/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018071932
(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2019182042
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(72)【発明者】
【氏名】駒屋 智博
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】安岡 浩志
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-069664(JP,A)
【文献】実開昭58-104448(JP,U)
【文献】実公昭32-001314(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/10
F16F 3/10
F16F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の床板を支持する防振材の構造において、
バネ定数が低く設定されたコイルばねと、バネ定数が相対的に高く設定されたゴム部材を有し、前記コイルばねと前記ゴム部材が並列に組み込まれ、
前記ゴム部材は、前記床板の下面に当接する第1台座部と第2台座部とその下に配置される基礎部を有し、前記コイルばねは、前記第1台座部と前記第2台座部で挟まれる位置に配置され、
前記コイルばねと前記第1台座部と前記第2台座部の高さが揃えられて、何れもが前記床板が無負荷状態にある際には前記床板の下面に当接していること、
を特徴とする防振材の構造。
【請求項2】
請求項1に記載の防振材の構造において、
前記ゴム部材の中央に穴部が設けられ、該穴部に前記コイルばねが配置され、
前記床板に負荷がかけられた状況で、前記コイルばね及び前記ゴム部材が作用して2段階にバネ定数が変化すること、
を特徴とする防振材の構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の防振材の構造において、
前記ゴム部材のゴム硬度は、前記床板の上を乗客が歩いた際に前記第1台座部及び前記第2台座部が潰れてストッパーとなる程度に設定され、
前記コイルばねのバネ定数は、前記鉄道車両に備えられる床下機器から伝わる低周波数振動をカットできるよう設定されていること、
を特徴とする防振材の構造。
【請求項4】
床構体の上に防振材を介して床板が配置される防振床構造を有する鉄道車両において、
前記防振材は、バネ定数が低く設定されたコイルばねと、該コイルばねよりバネ定数を高くし、かつコイルばねの共振を抑制するため十分な減衰を有するゴム部材よりなり、前記コイルばねと前記ゴム部材は並列に組み込まれ、
前記ゴム部材は、前記床板の下面に当接する第1台座部と第2台座部とその下に配置される基礎部を有し、前記コイルばねは、前記第1台座部と前記第2台座部で挟まれる位置に配置され、
前記コイルばねと前記第1台座部と前記第2台座部の高さが揃えられて、何れもが前記床板が無負荷状態にある際には前記床板の下面に当接していること、
を特徴とする防振床構造を有する鉄道車両。
【請求項5】
請求項に記載の防振床構造を有する鉄道車両において、
前記ゴム部材の中央に穴部が設けられ、該穴部に前記コイルばねが配置され、
前記床板に負荷がかけられた状況で、前記コイルばね及び前記ゴム部材が作用して2段階にバネ定数が変化すること、
を特徴とする防振床構造を有する鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の床下に用いられる防振材の構造に関し、床下に防振ゴムを配置して防振構造とすることで乗り心地の改善を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の走行中に床下からの振動が、乗客によっては不快感に繋がる可能性があり、防振ゴムなどが利用されるケースがある。この防振ゴムによって振動を減衰し、乗客への振動の伝達を防ぐことが期待されている。
【0003】
特許文献1には、鉄道車両に関する技術が開示されている。横梁の上部の枕木方向に複数に分割され間隔を持って配置される中実の防振ゴムで床板を多点で支持する構成とする。これにより、波形鋼板及び防振ゴムを車体長手方向に連続配置することが不要となるため、重量の低減が図れる。
【0004】
特許文献2には、防振浮き床構造に関する技術が開示されている。座席を搭載した座席用床板を防振装置で梁から浮かせて支持する。梁からの振動は、梁と座席用床板との間に金属スプリングを備えた防振装置を配置することで、梁から座席用床板への伝達が阻害される。また、防振装置は座席用床板が振動した際に、軸部材と外筒とが軸方向に相対変位し、摺動部材が軸部材の外周面に摺動して減衰力を発生すると共に、軸部材及び外筒の内側に形成した主流体室の空気が摺動部材と軸部材との間の隙間を介して外部と行き来することにより発生する減衰力により、座席用床板の振動を効果的に減衰させることができる。この結果、乗り心地が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-192741号公報
【文献】特開2008―18921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、特に高速鉄道などでは乗り心地の改善や静粛性の向上などによって、これまで問題とされなかった振動に対しても考慮する必要が出てきている。例えば、鉄道車両の下部に艤装されるコンプレッサーなどの機器から低周波数振動が伝達され、その振動を乗客が不快に感じるケースも報告されている。しかし、特許文献1や特許文献2に示されるようなゴムや金属スプリングを備える減衰機構では、そうした低周波数振動から生じる問題を解決できない虞がある。これは、低周波数振動に対してはバネ定数を低く設定する必要がある一方、バネ定数を低くすると歩行感を悪化させてしまうという問題が考えられる為である。
【0007】
特に、振動絶縁性を高くする目的で床板を両端で側構体によって支え、中央部分は振動絶縁部材で支えるような構造を採用する場合には床板がたわむような問題が生じることも想定される。例えば、乗客が通路を移動する際には、歩行荷重が衝撃的に発生することがあり、この影響によって、座席に着いている乗客がたわみを体感して不快に感じるケースがある。こうした問題に対して、特許文献1に記載される中実のゴムを用いた防振材を採用して床板を支持することで、乗客の歩行により発生するたわみを減衰させることは可能だが、たわみを防止するのに必要な硬度の中実のゴムでは低周波数振動を低減させることは難しい。
【0008】
一方で、特許文献2に示されるような金属バネを用いた防振材を用いると、機器振動などが中心となり発生する低周波数振動に対応することができるが、前述した乗客の歩行時に発生するようなたわみを吸収することが難しくなると考えられる。人によってはこうした低周波数振動や歩行によるたわみが気になり、結果的に鉄道車両の乗り心地が悪いというような印象になってしまうことも考えられる。このため、こうした両方の問題に対応することが求められていた。
【0009】
そこで、本発明はこのような課題を解決する為に、床板のたわみと低周波振動に対する絶縁の両機能を備えた防振構造、及びその防振構造を備えた鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による防振材の構造は、以下のような特徴を有する。
【0011】
(1)鉄道車両の床板を支持する防振材の構造において、バネ定数が低く設定されたコイルばねと、バネ定数が相対的に高く設定されたゴム部材を有し、前記コイルばねと前記ゴム部材が並列に組み込まれていること、を特徴とする。
【0012】
上記(1)に記載の態様によって、従来よりも高い振動絶縁性能を提供できるので鉄道車両の乗り心地の向上を実現することが可能となる。鉄道車両の下部には原動機や空調装置などが艤装されており、ここから生じる機械振動などが低周波振動として車体に伝わり、この低周波振動が乗客にとって不快な振動となる。一方で、乗客が車内で移動する際に生じる歩行たわみも不快な振動となる。しかし、これらの振動は周波数帯が異なる為、両方を同じ振動絶縁構造で対応することは困難である。そこで、防振材として用いられるコイルばねやゴム部材が作用する事で低周波の振動をカットし、ゴム部材によって歩行たわみをカットすることで、鉄道車両の乗り心地の向上を実現できる。
【0013】
(2)(1)に記載の防振材の構造において、前記ゴム部材の中央に穴部が設けられ、該穴部に前記コイルばねが配置され、前記床板に負荷がかけられた状況で、前記コイルばね及び前記ゴム部材が作用して2段階にバネ定数が変化すること、が好ましい。
【0014】
上記(2)に記載の態様によって、ゴム部材が中央に空けられた穴にコイルばねを備える構成となっていることで、ゴム部材とコイルばねをユニット化して運用できる。そして、2段階にバネ定数が変化するような構成となっていることで、従来は積極的に低減を狙えなかった周波数帯域に対応して床から伝達される振動低減し、かつ歩行時に発生する床板たわみの抑制にも対応できる。つまり、周波数の異なる低周波振動と歩行たわみの両方に対応できることで、鉄道車両の乗り心地の向上を実現できる。
【0015】
(3)(1)又は(2)に記載の防振材の構造において、前記ゴム部材は、前記床板の下面に当接する第1台座部と第2台座部とその下に配置される基礎部を有し、前記コイルばねは、前記第1台座部と前記第2台座部で挟まれる位置に配置され、前記コイルばねと前記第1台座部と前記第2台座部の高さが揃えられて、何れもが前記床板が無負荷状態にある際には前記床板の下面に当接していること、が好ましい。
【0016】
(4)(3)に記載の防振材の構造において、前記ゴム部材のゴム硬度は、前記床板の上を乗客が歩いた際に前記第1台座部及び前記第2台座部が潰れてストッパーとなる程度に設定され、前記コイルばねのバネ定数は、前記鉄道車両に備えられる床下機器から伝わる低周波数振動をカットできるよう設定されていること、が好ましい。
【0017】
上記(3)または(4)に記載の態様によって、より確実に周波数の異なる低周波振動と、歩行たわみの両方に対応できる。第1台座部と第2台座部はコイルばねと共に低周波振動の減衰に寄与し、ゴム部材がストッパーとして機能することで歩行たわみを抑える事が可能となる。その結果、鉄道車両の乗り心地の向上を実現できる。
【0018】
また、前記目的を達成するために、本発明の他の態様による防振床構造を有する鉄道車両は、以下のような特徴を有する。
【0019】
(5)床構体の上に防振材を介して床板が配置される防振床構造を有する鉄道車両において、前記防振材は、バネ定数が低く設定されたコイルばねと、該コイルばねよりバネ定数を高くし、かつコイルばねの共振を抑制するため十分な減衰を有するゴム部材よりなり、前記コイルばねと前記ゴム部材は並列に組み込まれていること、を特徴とする。
【0020】
(6)(5)に記載の防振床構造を有する鉄道車両において、前記ゴム部材の中央に穴部が設けられ、該穴部に前記コイルばねが配置され、前記床板に負荷がかけられた状況で、前記コイルばね及び前記ゴム部材が作用して2段階にバネ定数が変化すること、が好ましい。
【0021】
(7)(5)または(6)に記載の防振床構造を有する鉄道車両において、前記防振材が前記床板の枕木方向中央部に配置され、前記床板の枕木方向端部は前記床構体と剛結合されること、が好ましい。
【0022】
上記(5)乃至(7)のいずれか1つに記載の態様により、(1)又は(2)に記載の防振材の構造を採用した鉄道車両を提供することが可能である。これによって、乗客の感じる不快な振動を低減することができ、鉄道車両の乗り心地を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態の、鉄道車両の側面図である。
図2】第1実施形態の、鉄道車両の断面図である。
図3】第1実施形態の、防振材の斜視図である。
図4】第1実施形態の、防振材の側面図である。
図5】第1実施形態の、荷重とたわみの関係を示すグラフである。
図6】第2実施形態の、鉄道車両の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明の第1の実施形態について、図面を用いて説明を行う。図1に、第1実施形態の、鉄道車両の側面図を示す。鉄道車両10は、車両構体100と台車200よりなり、車両構体100は床構体101、側構体102、屋根構体103などを有する。図2に、鉄道車両の断面図を示す。なお、図2の左側は図1のAA断面に相当する台車上部の断面図となっている。右側は図2のBB断面に相当する客室中央部分の断面図となっている。台車上部辺りはダブルスキン構造であり、客室中央部分はシングルスキン構造である。床構体101には複数の根太110が配置され、その上に床板120が支持されている。
【0025】
床構体101の上には複数の根太110、115が配置され、その上に図2に示すように防振材150、又はライナー部材170が配置されている。床板120は、この防振材150に支持される形で配置されている。部分的にダクト口125が設けられているが、このダクト口125は、床板120と床構体101との間に設けられる。RAダクト140に接続されている。RAダクト140の隣にはCAダクト130が配置されている。CAダクト130とRAダクト140は鉄道車両10の客室内の空調に用いているダクトである。
【0026】
図3に、防振材の斜視図を示す。図4に、防振材の側面図を示す。防振材150は、ソリッドゴムを略長方形状に成形した基礎部151と、その上に形成された2つの台座部152を備え、ゴム部材155を形成している。このゴム部材155の中央には穴部153が設けられている。穴部153にはバネ部材160が配置されている。つまり、防振材150は、ゴム部材とバネ部材160よりなる複合防振材である。なお、この防振材150は、中央に穴部153を有するゴム部材155にバネ部材160を挿入するような製造方法、或いはゴム部材155とバネ部材160をモールド成型にて一体的に形成するような製造方法などが想定される。
【0027】
こうした防振材150は図3に示すように、根太110、115の上に配置され、床構体101の上には図2に示すように4列の根太110、115が配置されているので、それぞれに防振材150も配置されることになる。なお、図2には根太110、115の本数が4列となっているが、部分的にこれを増やしている箇所もある。具体的にはCAダクト130とRAダクト140の間に配置される部分がある。また、一本の根太110、115の上には複数の防振材150が配置されている。なお、図2に示すように、側構体102に近い部分の根太110、115の上部にはライナー部材170が配置され床板120と剛結合されている。一方、車両構体100の枕木方向中央よりの根太110、115の上部には防振材150が配置されている。
【0028】
ゴム部材155には、Hs50程度のゴム硬度のクロロプレンゴムを用いられている。一方で、バネ部材160は、120Hz程度の低周波振動をカットできるようなバネ定数のコイルばねが用いられている。このようなゴム部材155とバネ部材160が並列に機能するように配置され、ゴム部材155がバネ部材160の減衰器として、または歩行荷重に対するストッパーとして、バネ部材が柔らかめの振動抑制部材として働く。このゴム部材155とバネ部材160は図4に示すように床板120の下面に当接する上面の高さが揃えられている。ライナー部材170は、ゴム部材155より硬度の高い部材が用いられている。
【0029】
第1実施形態の内装用衝撃吸収構造は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0030】
まず、第1実施形態の防振材の構造を鉄道車両10に用いる事で、従来よりも高い振動絶縁性能を備えた鉄道車両10を提供することが可能となる。これは、鉄道車両10の床板120を支持する防振材150の構造において、防振材150は、バネ定数が低く設定されたバネ部材160と、バネ定数が相対的に高く設定されたゴム部材155を有し、バネ部材160とゴム部材155は並列に組み込まれていること、を特徴とするからである。
【0031】
防振材150は、図2に示すように、車両構体100の枕木方向中央部分に近い根太110、115の上部に配置されている。一方で、車両構体100の枕木方向端部、即ち側構体102に近い側にはライナー部材170が配置されている。床板120に低周波振動が伝わる場合、端部側が振動の節となり、中央部側が振動の腹となる傾向にある。このため、床板120は、側構体102に近い場所はライナー部材170を用いて剛結合される一方で、車両構体100の枕木方向中央部分は防振材150によって支えられることで、効果的に低周波振動を減衰することができる。
【0032】
また、ゴム部材155の中央に穴部153が設けられ、穴部153にバネ部材160が挿入され、床板120に負荷がかけられた状況で、バネ部材160及びゴム部材155が作用して2段階にバネ定数が変化すること、が好ましい。
【0033】
図5に、防振材にかかる荷重とたわみの関係のグラフを示す。縦軸に荷重を示し、横軸にたわみ量を示す。なお、説明のためにグラフは簡略化されている。このグラフに示されるように防振材150は領域Iと領域IIの2つの荷重特性を示す。これはバネ部材160とゴム部材155とが並列に配置されていることによるものであり、たわみの小さな領域Iの部分では、バネ部材160とその両脇に配置される台座部152が床板120の下側から伝達されてきた振動の減衰に機能している。一方、たわみの大きな領域IIの部分では、基礎部151がストッパー的役割を果たし、床板120のたわみを抑制する。
【0034】
たわみが大きくなる領域IIは、鉄道車両10の客室内を乗客が移動する時に生ずる歩行たわみを想定していて、この状態ではしっかりと硬めのソリッドゴムで構成されるゴム部材155によって衝撃的な荷重を受け止める。たわみが小さい領域Iでは床下機器から伝わってくる120Hz前後の低周波振動をバネ部材160がカットする。領域Iで作用する時間の方が圧倒的に長いので、絶えず床下機器から伝えられる低周波振動を遮断若しくは減衰させるのにも効果が期待できる。
【0035】
また、ゴム部材155には、床板120の下面に当接する第1の台座部152と第2の台座部152が設けられ、バネ部材160はこれらの台座部152で挟まれる位置に配置され、バネ部材160と台座部152の高さが揃えられて、何れもが床板120が無負荷状態にある際には床板120の下面に当接していること、が好ましい。
【0036】
また、ゴム部材155のゴム硬度は、床板120の上を乗客が歩いた際に2つの台座部152が潰れる程度に設定され、バネ部材160のバネ定数は、鉄道車両10に備えられる床下機器から伝わる低周波数振動をカットできるよう設定されていること、が好ましい。
【0037】
ゴム部材155に設けられる台座部152は、本来はバネ部材160が低周波振動を減衰させるためには邪魔な存在となる為、できるだけ床板120との接触面積が少ない方が好ましいが、一方で乗客が歩いた際にはしっかりと歩行たわみをカットする必要がある。このため、無負荷の状態ではできるだけ床板120の下面と接する面積を少なくする一方で、負荷がかかったときには基礎部151全体で荷重を受けられるようなゴム硬度と台座の大きさに設定されていることで、歩行たわみと低周波振動の両方をキッチリと抑える事ができる。この結果、鉄道車両10の乗り心地を向上させることができる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を用いて説明を行う。第2実施形態は第1実施形態とほぼ同じ構成だが、防振材150とライナー部材170の配置などが異なる。図6に、第2実施形態の鉄道車両の断面図を示す。図1のBB断面に相当する。図6に示すように、根太115の上部に防振材150が配置されている。車両構体100の下部には床下機器230が配置されている。
【0039】
第2実施形態の鉄道車両10には、床下機器230が車両構体100中央部より側構体102寄りに取り付けられている。このように振動の中心が車両構体100の枕木方向中央部から側構体102の方向にずれると、振動の腹となる部分も枕木方向端部側にずれる。これに対応する為に、側構体102側の根太115の上部にも防振材150を配置する事で、適切に低周波振動を遮断若しくは減衰させることができる。
【0040】
以上、本発明に係る防振材の構造及び防振床構造を有する鉄道車両に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、ダブルスキンの車両構体100の例を示しているが、それ以外の車両に対しても用いる事を妨げない。また、ゴム部材155の硬度やバネ部材160のバネ定数に関しても、その目的に合わせて調整することを妨げない。また、材質などを明示している部分があるが、同じ機能を果たす別の部材に変更することを妨げない。
【符号の説明】
【0041】
10 鉄道車両
100 車両構体
101 床構体
102 側構体
103 屋根構体
110 根太
120 床板
130 CAダクト
140 RAダクト
150 防振材
151 基礎部
152 台座部
153 穴部
155 ゴム部材
160 バネ部材
200 台車
図1
図2
図3
図4
図5
図6