(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】受光素子、及び、受光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0232 20140101AFI20220712BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H01L31/02 D
H01L31/10 A
(21)【出願番号】P 2018080000
(22)【出願日】2018-04-18
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】杉森 領
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐馬
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-175539(JP,A)
【文献】特開2015-079232(JP,A)
【文献】特開2014-241351(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061990(WO,A1)
【文献】米国特許第09608023(US,B1)
【文献】特開2000-227610(JP,A)
【文献】特開平10-284712(JP,A)
【文献】特開昭54-154382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/119
G02B 5/00-5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光部と遮光部とを含む第1面を有する半導体部と、
前記遮光部上に設けられた遮光のための金属膜と、
を備え、
前記金属膜は、前記第1面と反対側に臨み光の入射を受ける第2面を有し、
前記第2面には、複数の凹部が形成されており、
前記凹部の内面は、前記第2面から前記凹部の底部に向かうにつれて前記第2面に沿った方向における前記凹部のサイズが縮小するように曲がる曲面部を含
み、
前記第2面は、前記凹部の周囲に設けられた平坦な領域を含む、
受光素子。
【請求項2】
前記曲面部は、前記底部を構成するように延在している、
請求項1に記載の受光素子。
【請求項3】
前記第2面における前記凹部のサイズは、前記第2面に交差する方向における前記金属膜のサイズ以下である、
請求項2に記載の受光素子。
【請求項4】
前記凹部は、前記第2面に沿って一定のピッチで配列されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の受光素子。
【請求項5】
半導体部の第1面の一部上に遮光のための金属膜を形成することにより、前記金属膜から露出した受光部と前記金属膜に覆われた遮光部とを前記第1面に形成する第1工程と、
前記金属膜における前記第1面と反対側に臨む第2面の等方性のエッチングにより、前記第2面に複数の凹部を形成する第2工程と、
を備
え、
前記第2面は、前記凹部の周囲に設けられた平坦な領域を含む、
受光素子の製造方法。
【請求項6】
前記等方性のエッチングは、ウェットエッチングである、
請求項5に記載の受光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子、及び、受光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光伝導型赤外線検出器が記載されている。この検出器は、赤外線を吸収する結晶に対して遮光マスクを設けている。遮光マスクには、受光部を提供する開口が設けられている。また、遮光マスクには、周期的な凹凸が形成されている。そして、当該凹凸の間隔及び段差に係るパラメータが、遮光マスクから撮像装置の光学系に直接戻る赤外線に対して弱め合う干渉条件を満たすように設定されている。
【0003】
特許文献2には、半導体受光装置が記載されている。この受光装置は、n型InP基板と、n型InP基板上に形成されたn型InP層と、n型InP層上に形成されたp型InP層と、p型InP層の一部に開口するようにp型InP層上に形成された誘電体膜と、誘電体膜上に形成され、受光部以外へ入射する光を遮光する遮光マスク用の金属層と、を備えている。金属層の表面には凹凸が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-84462号公報
【文献】特許第2774006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された検出器にあっては、遮光マスクの周期的な凹凸のパラメータを、戻り光に対して弱め合う干渉条件を満たすように設定することにより、赤外画像の乱れをなくすことを図っている。また、特許文献2に記載された受光装置にあっては、遮光マスク用の金属層の表面に凹凸を形成して入射光を乱反射させることにより、戻り光によるノイズの防止を図っている。このように、上記技術分野にあっては、遮光部における反射率を低減することが望まれている。
【0006】
本発明は、遮光部における反射率を低減可能な受光素子、及び、受光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る受光素子は、受光部と遮光部とを含む第1面を有する半導体部と、遮光部上に設けられた遮光のための金属膜と、を備え、金属膜は、第1面と反対側に臨み光の入射を受ける第2面を有し、第2面には、複数の凹部が形成されており、凹部の内面は、第2面から凹部の底部に向かうにつれて第2面に沿った方向における凹部のサイズが縮小するように曲がる曲面部を含む。
【0008】
この受光素子においては、半導体部の第1面の遮光部上に、遮光のための金属膜が形成されている。金属膜は、第1面と反対側に臨む第2面を有する。第2面には、複数の凹部が形成されている。そして、凹部の内面は、金属膜の第2面から凹部の底部に向かうにつれて凹部が縮小するように曲がる曲面部を含む。このため、金属膜の第2面に入射した光の一部が、凹部の内面の曲面部によって種々の方向に反射されて拡散される。この結果、遮光部における反射率が低減される。
【0009】
本発明に係る受光素子においては、曲面部は、底部を構成するように延在していてもよい。この場合、凹部の内面の全体が曲面部となるため、入射光を確実に拡散させることができる。
【0010】
本発明に係る受光素子においては、第2面における凹部のサイズは、第2面に交差する方向における金属膜のサイズ以下であってもよい。この場合、第2面における凹部のサイズを直径とする半球面状に曲面部を形成しても、凹部の底部の直下に金属膜を残存させて遮光性を十分に維持できる。
【0011】
本発明に係る受光素子においては、第2面は、凹部の周囲に設けられた平坦な領域を含んでもよい。この場合、第2面における平坦な領域で反射した光と、凹部の内面で反射した光との干渉によって、反射率を確実に低減可能である。
【0012】
本発明に係る受光素子においては、凹部は、第2面に沿って一定のピッチで配列されていてもよい。この場合、凹部の形成を容易化できる。
【0013】
ここで、本発明に係る受光素子の製造方法は、半導体部の第1面の一部上に遮光のための金属膜を形成することにより、金属膜から露出した受光部と金属膜に覆われた遮光部とを第1面に形成する第1工程と、金属膜における第1面と反対側に臨む第2面の等方性のエッチングにより、第2面に複数の凹部を形成する第2工程と、を備える。
【0014】
この製造方法によれば、受光部と遮光部とを含む第1面を有する半導体部と、遮光部上に設けられ、複数の凹部が形成された金属膜と、を備える受光素子が製造される。特に、金属膜の第2面の等方性エッチングによって、凹部の内面を、金属膜の第2面から凹部の底部に向かうにつれて凹部が縮小するように曲がる曲面部を含むように形成できる。したがって、この製造方法によれば、遮光部における反射率が低減された受光素子を製造できる。
【0015】
本発明に係る受光素子の製造方法においては、等方性のエッチングは、ウェットエッチングであってもよい。この場合、ドライエッチングと比較して、エッチングにより形成される凹部の内面が粗面化される。このため、遮光部における反射率がより低減された受光素子を製造できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、遮光部における反射率を低減可能な受光素子、及び、受光素子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るロータリーエンコーダを示す模式的な斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿っての部分断面図である。
【
図5】
図3に示された受光素子を簡素化した受光素子を示す部分断面図である。
【
図6】
図5に示された受光素子の製造方法の主な工程を示す部分断面図である。
【
図7】
図5に示された受光素子の製造方法の主な工程を示す部分断面図である。
【
図8】
図5に示された受光素子の製造方法の主な工程を示す部分断面図である。
【
図9】
図5に示された受光素子の製造方法の主な工程を示す部分断面図である。
【
図10】
図5に示された受光素子の製造方法の主な工程を示す部分断面図である。
【
図11】実施例及び変形例に係る受光素子の金属膜の一部を示す写真である。
【
図12】実施例及び比較例に係る受光素子の反射率を示すグラフである。
【
図13】変形例に係る受光素子の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0019】
図1は、実施形態に係るロータリーエンコーダを示す模式的な斜視図である。
図1に示されるように、ロータリーエンコーダ100は、コードホイール101、回転軸102、発光素子103、及び、受光素子1を備えている。コードホイール101は、例えばガラスや金属等により円板状に形成されている。コードホイール101の外周部には、周方向に沿って複数のスリット101sが形成されている。回転軸102は、コードホイール101の中心に設けられており、図示しない駆動部の動作に応じた回転量によりコードホイール101を回転させる。
【0020】
発光素子103及び受光素子1は、コードホイール101を挟むように互いに対向して配置されている。発光素子103、例えば、半導体発光素子であって、発光ダイオードやレーザダイオード等である。コードホイール101と発光素子103の間には、図示しない固定スリット板が介在される。受光素子1は、例えば、半導体受光素子であって、フォトダイオード等である。受光素子1の受光面(後述する第1面1s及び第2面5s)は、コードホイール101の板面に対向している。受光素子1は、図示しないコンピュータ等に電気的に接続されており、入射光に応じて発生した電気信号を出力する。
【0021】
ロータリーエンコーダ100においては、発光素子103から出射された光が、固定スリット板のスリット及びコードホイール101のスリット101sを介して受光素子1に入射される。このとき、コードホイール101の回転により入射光の光量が周期的に変化する。受光素子1は、光量の変化に応じた電気信号を出力する。受光素子1から出力された電気信号がコンピュータ等に入力されることにより、コードホイール101の回転量が検出される。
【0022】
上述したように、受光素子1の受光面とコードホイール101の板面とは、互いに近接及び対向して配置される。このため、受光面での反射光が、コードホイール101の板面で反射されて再び受光面に入射するおそれがある。これを抑制するためには、コードホイール101の板面に反射防止膜を形成することが一案である。しかしながら、この場合には、コードホイール101の製造コストが増大する。したがって、この問題を解決するためには、受光素子1の受光面の反射率を低減することが有効と考えられる。また、受光面の反射率を低減する要求は、受光素子1をロータリーエンコーダ100に用いる場合に限らず、受光面に対向する他の部材が近接して配置される構成や、その他の構成においても同様に存在する。
【0023】
引き続いて、受光素子1について説明する。
図2は、
図1に示された受光素子の平面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿っての部分断面図である。
図2,3に示されるように、受光素子1は、半導体部2と、絶縁膜3A,3Bと、配線層4と、金属膜5と、を備えている。半導体部2は、例えば、シリコンを含む(一例としてシリコン基板である)。半導体部2は、受光面である第1面1sを含む。半導体部2の第1面1s側の一部の領域には、第1面1sに露出するように拡散層2mが形成されている。
【0024】
第1面1sは、複数の受光部1Aと単一の遮光部1Bとを含む。受光部1Aは、拡散層2mに対応して設けられている。すなわち、受光部1Aは、半導体部2において入射光を電気信号に変換する領域への光入射部となる。遮光部1Bは、配線層4及び/又は金属膜5によって遮光されている。換言すれば、第1面1sのうち、第1面1sに交差(直交)する方向からみて、配線層4及び/又は金属膜5に覆われているエリアが遮光部1Bであり、配線層4及び/又は金属膜5から露出しているエリアが受光部1Aである。ここでは、金属膜5に設けられた開口5hによって受光部1Aが提供される。
【0025】
絶縁膜3Aは、第1面1s上に設けられている。絶縁膜3Aは、例えばシリコン酸化物(例えばSiO2)からなる。配線層4は、絶縁膜3A上に設けられている。配線層4は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金(例えば、アルミニウムと銅やシリコンとの合金)、タングステン、チタン、又は、窒化チタン等からなる。絶縁膜3Aには、開口3Ah(コンタクトホール)が形成されており、配線層4は、この開口3Ahを介して半導体部2(拡散層2m)に接触して電気的に接続されている。
【0026】
絶縁膜3Bは、絶縁膜3A及び配線層4上に設けられている。絶縁膜3Bは、例えばシリコン酸化物(例えばSiO2)からなる。絶縁膜3Bには、開口3Bhが形成されており、配線層4は、この開口3Bhを介して外部に露出している。配線層4における開口3Bhから露出した部分は、例えば受光素子1から電気信号を取り出すためのワイヤが接続されるパッド部として用いられる。
【0027】
金属膜5は、絶縁膜3A,3B及び配線層4上に設けられている。すなわち、金属膜5は、絶縁膜3A,3B及び配線層4を介して、第1面1s(遮光部1B)上に形成されている。なお、金属膜5は、絶縁膜3Bにのみ接触している。このため、金属膜5と配線層4とは、第1面1sに交差する方向からみて重複していても、互いの間に絶縁膜3Bが介在されており、互いに電気的に分離されている。一方、金属膜5には、開口3Bhに対応する位置に開口5pが形成されている。したがって、遮光部1Bにおける開口5pに対応する位置には、金属膜5が設けられていないが、配線層4が配置されている。すなわち、受光素子1においては、遮光部1B上には、金属膜5と配線層4との少なくとも一方の金属が配置されており、遮光が得られている。
【0028】
金属膜5は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金(例えば、アルミニウムと銅やシリコンとの合金)、タングステン、チタン、又は、窒化チタン等からなる。金属膜5は、例えば、配線層4と同一の工程・材料により構成されてもよい。金属膜5は、半導体部2の第1面1sと反対側に臨む第2面5sを有している。第2面5sは、外部に露出している。したがって、第2面5sは、光の入射を受ける受光面でもある。第2面5sには、複数の凹部6が形成されている。凹部6は、第2面5sの全体にわたって形成されている。引き続いて、この凹部6について説明する。
【0029】
図4は、
図3に示された凹部を示す図である。
図4の(a)は、
図3の領域Aの拡大平面図であり、
図4の(b),(c)は単一の凹部を示すも断面図である。
図4に示されるように、ここでは、凹部6は、第2面5sに交差(直交)する方向からみて、円形状である。凹部6の直径D(第2面5sにおける凹部6のサイズの最大値)は、例えば0.3μm~5μmである。金属膜5の厚さT(第2面5sに交差する方向における金属膜5のサイズ)は、例えば、0.1μm~5μm程度である。凹部6の直径Dは、金属膜5の厚さTに依存しない。例えばウェットエッチングにより凹部6を形成する場合、ウェットエッチングに要する時間を凹部6の底部6bの直下に金属膜5を残存させて遮光性を十分に維持できるように制御することで、任意に形成できる。
【0030】
凹部6は、第2面5sに沿って(少なくとも1方向について)一定のピッチPで配列されている。ピッチPは、互いに隣り合う凹部6の中心同士の間隔である。ここでは、凹部6は、第2面5sに沿った2方向(互いに直交する方向)について同一のピッチPで配列されている。ピッチPは、例えば、0.6μm~20μmである。さらに、ピッチPは、凹部6の直径Dよりも大きい。したがって、ピッチPで互いに隣り合う凹部6の間には、凹部でない平坦な領域Rが生じている。換言すれば、第2面5sは、凹部6の周囲に設けられた平坦な領域Rを含む。さらに換言すれば、第2面5sにおいて、凹部6同士は連続しておらず、互いに離間している。
【0031】
凹部6の内面6sは、曲面部7を有している。ここでは、曲面部7は、第2面5sから凹部6の底部6bに延びており、第2面5sから底部6bに向かうにつれて凹部6のサイズが縮小するように曲がっている。曲面部7の断面形状は、例えば円弧状である。
図4の(b)に示されるように、凹部6の内面6sは、第2面5sから延びる曲面部7と、底部6bに位置する平坦部8とを含む場合がある。或いは、
図4の(c)に示されるように、凹部6の内面6sの全体が曲面部7であってもよい。この場合、曲面部7は、凹部6の底部6bを構成するように延在している。この場合、凹部6の直径Dは、金属膜5の厚さT以下である。
【0032】
引き続いて、受光素子の製造方法について説明する。ここでは、説明の容易化のため、受光素子1の構成を簡素化した受光素子の製造方法について説明する。
図5は、
図3に示された受光素子を簡素化した受光素子を示す部分断面図である。
図5に示されるように、受光素子10は、絶縁膜3Bを有していない点と配線層4に代えてパッド部4Aを備える点とにおいて受光素子1と相違している。受光素子10の他の点は、受光素子1と同一である。
【0033】
この製造方法においては、まず、
図6の(a)に示されるように、半導体部2、及び、開口3Ahが形成された絶縁膜3Aを有する基体50を用意する(工程S101)。続いて、
図6の(b)に示されるように、絶縁膜3A上に、金属膜5及びパッド部4Aのための金属膜51を成膜する(工程S102、第1工程)。続いて、
図7の(a)に示されるように、金属膜51上にレジスト52を塗布する(工程S103、第1工程)。続いて、
図7の(b)に示されるように、レジスト52の露光及び現像によるパターニングを行い、マスク53を形成する(工程S104、第1工程)。マスク53には、受光部1Aに対応する位置に開口53hが形成されている。
【0034】
続いて、
図8の(a)に示されるように、マスク53を用いて金属膜51をエッチングする(工程S105、第1工程)。これにより、金属膜51のうちの開口53hに露出した部分を除去し、金属膜54及びパッド部4Aを形成する。金属膜54は、後に金属膜5となる部分である。そして、
図8の(b)に示されるように、マスク53を除去する(工程S106)。以上の工程S101~S106によって、半導体部2の第1面1sの一部に遮光のための金属膜54を形成することにより、金属膜54から露出した受光部1Aと、金属膜54に覆われた遮光部1Bと、を第1面1sに形成する。
【0035】
続いて、
図9の(a)に示されるように、金属膜54、絶縁膜3A、及び、パッド部4A上に、レジスト55を塗布する(工程S201、第2工程)。続いて、
図9の(b)に示されるように、レジスト55の露光及び現像によるパターニングを行い、マスク56を形成する(工程S202、第2工程)。マスク56には、凹部6に対応するように複数の開口56hが形成されている。
【0036】
続いて、
図10の(a)に示されるように、マスク56を用いて金属膜54をエッチングすることにより、金属膜54に複数の凹部6を形成し、金属膜5を形成する(工程S203、第2工程)。ここでのエッチングは、例えばウェットエッチング等の等方性のエッチングである。ここでは、マスク56の開口56hのサイズ及びピッチ、工程S203のエッチング時間等の制御により、凹部6の直径D及びピッチPを制御できる。
【0037】
そして、
図10の(b)に示されるように、マスク56を除去する(工程S204)。以上の工程S201~S204によって、金属膜54における第1面1sと反対側に臨む第2面の等方性のエッチングにより、第2面(第2面5s)に複数の凹部6を形成する。これにより、受光素子10が得られる。
【0038】
以上説明したように、受光素子1,10においては、半導体部2の第1面1sの遮光部1B上に、遮光のための金属膜5が形成されている。金属膜5は、第1面1sと反対側に臨む第2面5sを有する。第2面5sには、複数の凹部6が形成されている。そして、凹部6の内面6sは、金属膜5の第2面5sから凹部6の底部6bに向かうにつれて凹部6が縮小するように曲がる曲面部7を含む。このため、金属膜5の第2面5sに入射した光の一部が、凹部6の内面6sの曲面部7によって種々の方向に反射されて拡散される。この結果、遮光部1Bにおける反射率が低減される。
【0039】
また、受光素子1,10においては、凹部6の直径Dは、金属膜5の厚さTに依存しない。例えばウェットエッチングにより凹部6を形成する場合、ウェットエッチングに要する時間を凹部6の底部6bの直下に金属膜5を残存させて遮光性を十分に維持できるように制御することで、任意に形成できる。
【0040】
また、受光素子1,10においては、曲面部7は、底部6bを構成するように延在していてもよい。この場合、凹部6の内面6sの全体が曲面部7となるため、入射光を確実に拡散させることができる。
【0041】
また、受光素子1,10においては、第2面5sは、凹部6の周囲に設けられた平坦な領域Rを含んでいる。このため、第2面5sにおける平坦な領域Rで反射した光と、凹部6の内面6sで反射した光との干渉によって、反射率を確実に低減可能である。
【0042】
さらに、受光素子1,10においては、凹部6は、第2面5sに沿って一定のピッチPで配列されている。このため、凹部6の形成を容易化できる。
【0043】
ここで、上述した製造方法によれば、受光部1Aと遮光部1Bとを含む第1面1sを有する半導体部2と、遮光部1B上に設けられ、複数の凹部6が形成された金属膜5と、を備える受光素子1,10が製造される。特に、金属膜54の第2面の等方性エッチングによって、凹部6の内面6sを、金属膜5の第2面5sから凹部6の底部6bに向かうにつれて凹部6が縮小するように曲がる曲面部7を含むように形成できる。したがって、この製造方法によれば、遮光部1Bにおける反射率が低減された受光素子1,10を製造できる。
【0044】
また、上述した製造方法においては、等方性のエッチングは、ウェットエッチングである。このため、ドライエッチングと比較して、エッチングにより形成される凹部6の内面6sが粗面化される。このため、遮光部1Bにおける反射率がより低減された受光素子1,10を製造できる。
【0045】
引き続いて、上述した受光素子の実施例及び比較例について説明する。
図11は、実施例及び比較例に係る受光素子の金属膜の一部を示す写真である。
図11の(a)は、実施例に係る受光素子の金属膜の第2面の写真である。
図11の(b)は、比較例に係る受光素子の金属膜の第2面の写真である。
図11に示される実施例では、金属膜5の材料をアルミニウムとし、マスク56の開口56hのサイズを0.8μmとし、ウェットエッチングにより10秒間のエッチングを行った。エッチング剤は、リン酸を含む混酸とした。一方、比較例では、金属膜の材料及びマスクの開口のサイズを実施例と同一にしつつ、32秒間のドライエッチングを行った。ここでは、異方性のドライエッチングは、ECR方式とした(ただし、異方性のドライエッチングはICP方式としてもよい)。
【0046】
図11の(a)に示されるように、実施例においては、第2面から底部に向かうにつれて縮小するように曲がる曲面部を含む複数の凹部6が形成された。これに対して、
図11の(b)に示されるように、比較例においては、第2面から底部に向かう方向に平坦に延びる内面の凹部6Aが形成された。
【0047】
図12は、実施例及び比較例に係る受光素子の反射率を示すグラフである。
図12においては、実施例に係る受光素子(金属膜)の反射率L1を実線で示し、比較例に係る受光素子(金属膜)の反射率L2を破線で示している。
図12に示されるように、実施例に係る反射率L1は、波長380nm~波長1040nmの測定範囲のほぼ全域において、比較例に係る反射率L2を下回った。特に、実施例に係る反射率L1は、波長580nm~波長1040nmの範囲において、20%を下回っており、反射率が十分に低減されることが確認された。
【0048】
以上の実施形態は、本発明に係る受光素子、及び、受光素子の製造方法の一実施形態を説明したものである。したがって、本発明に係る受光素子、及び、受光素子の製造方法は、上記の実施形態に限定されず、任意に変更され得る。引き続いて、変形例について説明する。
【0049】
図13は、変形例に係る受光素子の例えば、上述した受光素子10は、
図13に示されるように変更してもよい。
図13に示される受光素子10Aは、受光素子10と比較して、拡散層2mが変更されている。受光素子10Aにおいて、拡散層2mは、受光部1Aの下部の領域から、金属膜5及び遮光部1Bの下部の領域を越えて延在している。そして、拡散層2mは、金属膜5の開口5pに対応する位置において、パッド部4Aと接触して電気的に接続されている。このように、拡散層2mを配線層として使用してもよい。
【0050】
図14は、変形例に係る金属膜を示す図である。
図14に示される金属膜5においては、凹部6のピッチPが凹部6の直径Dと略一致している。このため、ピッチPで互いに隣接する凹部6の間には、平坦な領域Rが実質的に形成されていない。ただし、ピッチPと異なるピッチで隣り合う凹部6(ピッチPでの2つの配列方向に交差する方向に隣り合う凹部6)の間には、平坦な領域Rが形成される。この場合には、
図4の(a)に示される場合と比較して、第2面5sにおける凹部6の占める面積と領域Rが占める面積との割合が異なる。このように、所望する反射の態様に応じて、凹部6と領域Rとの面積比を適宜制御することができる。
【0051】
図15及び
図16は、変形例に係る金属膜を示す平面図である。
図15の(a)に示されるように、金属膜5においては、凹部6のピッチ及びサイズをランダムとしてもよい。なお、凹部6のピッチ及びサイズのいずれか一方をランダムとしてもよい。また、
図15の(b)及び
図16の(b)に示されるように、凹部6の平面形状を、六角形状や四角形状といったように、円形状以外の形状としてもよい。さらには、
図15の(b)及び
図16の(a)に示されるように、凹部6の配列のピッチを、互いに45°の角度で交差する2方向において等しくし、三角格子状に凹部6を配列してもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、凹部6の形成のための等方性のエッチングとしてウェットエッチングを例示したが、例えば、ケミカドライエッチングといった等方性のドライエッチングを利用することもできる。
【0053】
さらに、上記実施形態においては、受光素子1がロータリーエンコーダに用いられる例について説明したが、本実施形態に係る受光素子1,10,10Aは、これに限定されず、任意の状況での利用が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1,10,10A…受光素子、1s…第1面、1A…受光部、1B…遮光部、2…半導体部、5…金属膜、5s…第2面、6…凹部、6s…内面、6b…底部、7…曲面部、R…領域。