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特許7103834作業機械の制御システム、作業機械、及び作業機械の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】作業機械の制御システム、作業機械、及び作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220712BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20220712BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G05D1/02 J
G01S17/89
G08G1/00 X
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018081444
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019191743
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大輔
(72)【発明者】
【氏名】志賀 達也
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220264(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117713(WO,A1)
【文献】特表2008-506135(JP,A)
【文献】特開2015-041203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場の走行路を走行する作業機械の位置を検出する位置センサと、
前記走行路を走行する前記作業機械の前方に存在し、上方に向かって前記作業機械から離れるように傾斜する物体の表面の位置を検出する非接触センサと、
前記非接触センサで検出され規定の高さ条件を満足する前記物体の検出点と前記位置センサの検出データとに基づいて、マップデータを作成するマップデータ作成部と、
を備える作業機械の制御システム。
【請求項2】
前記高さ条件は、高さ閾値以下の高さであることを含む、
請求項1に記載の作業機械の制御システム。
【請求項3】
前記物体は、前記走行路を走行する前記作業機械の前方に存在し、
前記非接触センサは、前記走行路の路面と前記物体の表面との境界の位置を検出し、
前記高さ条件は、前記物体の表面において前記境界から規定距離までの規定領域に存在することを含む、
請求項1に記載の作業機械の制御システム。
【請求項4】
前記マップデータを記憶するマップデータ記憶部を備え、
前記検出点は、前記マップデータ記憶部に記憶される前記マップデータを構成する既存検出点と、前記非接触センサで検出される現況検出点とを含み、
前記マップデータ作成部は、前記高さ条件を満足する前記現況検出点を前記既存検出点に付加して前記マップデータを作成する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の作業機械の制御システム。
【請求項5】
前記非接触センサの検出データと前記マップデータ作成部で作成された前記マップデータとを照合して、前記作業機械の照合位置を示す照合位置データを算出する照合位置データ算出部を有する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の作業機械の制御システム。
【請求項6】
前記位置センサの検出精度が低下したとき、前記照合位置データ算出部により算出された前記照合位置データに基づいて、前記作業機械の走行状態を制御する走行制御装置を備える、
請求項5に記載の作業機械の制御システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の作業機械の制御システムを備える作業機械。
【請求項8】
作業現場の走行路を走行する作業機械の位置の検出データを位置センサから取得することと、
前記走行路を走行する前記作業機械の前方に存在し、上方に向かって前記作業機械から離れるように傾斜する物体の表面の位置の検出データを非接触センサから取得することと、
前記非接触センサで検出され規定の高さ条件を満足する前記物体の検出点と前記位置センサの検出データとに基づいて、マップデータを作成することと、
を含む作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、作業機械の制御システム、作業機械、及び作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山のような広域の作業現場において、無人で走行する作業機械が使用される場合がある。作業機械の位置は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用して検出される。全地球航法衛星システムの検出精度が低下すると、作業機械の稼働が停止し、作業現場の生産性が低下する可能性がある。そのため、作業現場のマップデータを作成し、全地球航法衛星システムの検出精度が低下したときに、非接触センサの検出データとマップデータとを照合して、作業機械の位置を算出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/060281号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マップデータは、走行路を走行する作業機械に搭載されている非接触センサの検出データに基づいて作成される。非接触センサは、走行路の土手のような作業機械の周囲の物体を検出する。マップデータの作成において、例えば物体の形状に起因して、マップデータにノイズが含まれる可能性がある。マップデータにノイズが含まれると、ノイズに起因して、マップデータで示される物体の形状及び位置と、実際の物体の形状及び位置とが乖離してしまう可能性がある。その結果、非接触センサの検出データとマップデータとを照合したとき、算出される作業機械の位置計測の精度が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、高精度なマップデータを作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、走行路を走行する作業機械の位置を検出する位置センサと、前記作業機械の周囲の物体の位置を検出する非接触センサと、前記非接触センサで検出され規定の高さ条件を満足する前記物体の検出点と前記位置センサの検出データとに基づいて、マップデータを作成するマップデータ作成部と、を備える作業機械の制御システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高精度なマップデータを作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る管理システム及び作業機械の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る作業機械及び走行路を模式的に示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る非接触センサの検出範囲を模式的に示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係る非接触センサの検出範囲を模式的に示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係る作業機械の制御システムを示す機能ブロック図である。
図6図6は、第1実施形態に係るマップデータ作成部の処理を説明するための模式図である。
図7図7は、第1実施形態に係るフィルタ部の処理を説明するための模式図である。
図8図8は、比較例に係るマップデータ作成部の処理を説明するための模式図である。
図9図9は、第1実施形態に係るマップデータ作成方法を示すフローチャートである。
図10図10は、コンピュータシステムの一例を示すブロック図である。
図11図11は、第2実施形態に係るマップデータ作成部の処理を説明するための模式図である。
図12図12は、第2実施形態に係るマップデータ作成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[1]第1実施形態
[管理システム]
図1は、本実施形態に係る管理システム1及び作業機械2の一例を模式的に示す図である。作業機械2は、無人車両である。無人車両とは、運転者による運転操作によらずに、無人で走行する作業車両をいう。作業機械2は、管理システム1からの走行条件データに基づいて走行する。
【0011】
作業機械2は、作業現場において稼働する。本実施形態において、作業現場は、鉱山又は採石場である。作業機械2は、作業現場を走行して積荷を運搬するダンプトラックである。鉱山とは、鉱物を採掘する場所又は事業所をいう。採石場とは、石材を採掘する場所又は事業所をいう。作業機械2に運搬される積荷として、鉱山又は採石場において掘削された鉱石又は土砂が例示される。
【0012】
管理システム1は、管理装置3と、通信システム4とを備える。管理装置3は、コンピュータシステムを含み、作業現場の管制施設5に設置される。管制施設5に管理者が存在する。通信システム4は、管理装置3と作業機械2との間で通信を実施する。管理装置3に無線通信機6が接続される。通信システム4は、無線通信機6を含む。管理装置3と作業機械2とは、通信システム4を介して無線通信する。作業機械2は、管理装置3から送信された走行条件データに基づいて、作業現場の走行路HLを走行する。
【0013】
[作業機械]
作業機械2は、車両本体21と、車両本体21に支持されるダンプボディ22と、車両本体21を支持する走行装置23と、速度センサ24と、方位センサ25と、姿勢センサ26と、無線通信機28と、位置センサ31と、非接触センサ32と、データ処理装置10と、走行制御装置40とを備える。
【0014】
車両本体21は、車体フレームを含み、ダンプボディ22を支持する。ダンプボディ22は、積荷が積み込まれる部材である。
【0015】
走行装置23は、車輪27を含み、走行路HLを走行する。車輪27は、前輪27Fと後輪27Rとを含む。車輪27にタイヤが装着される。走行装置23は、駆動装置23Aと、ブレーキ装置23Bと、操舵装置23Cとを有する。
【0016】
駆動装置23Aは、作業機械2を加速させるための駆動力を発生する。駆動装置23Aは、ディーゼルエンジンのような内燃機関を含む。なお、駆動装置23Aは、電動機を含んでもよい。駆動装置23Aで発生した駆動力が後輪27Rに伝達され、後輪27Rが回転する。後輪27Rが回転することにより、作業機械2は自走する。ブレーキ装置23Bは、作業機械2を減速又は停止させるための制動力を発生する。操舵装置23Cは、作業機械2の走行方向を調整可能である。作業機械2の走行方向は、車両本体21の前部の向きを含む。操舵装置23Cは、前輪27Fを操舵することによって、作業機械2の走行方向を調整する。
【0017】
以下の説明において、後輪27Rの回転軸に平行な方向を適宜、車幅方向又は左右方向、と称し、車輪27(タイヤ)の接地面に垂直な方向を適宜、上下方向、と称し、車幅方向及び上下方向の両方に直交する方向を適宜、前後方向、と称する。車幅方向、上下方向、及び前後方向は、作業機械2の車体座標系(ローカル座標系)において規定される。
【0018】
速度センサ24は、走行装置23の走行速度を検出する。速度センサ24の検出データは、走行装置23の走行速度を示す走行速度データを含む。方位センサ25は、作業機械2の方位を検出する。方位センサ25の検出データは、作業機械2の方位を示す方位データを含む。作業機械2の方位は、作業機械2の走行方向である。方位センサ25は、例えばジャイロセンサを含む。姿勢センサ26は、作業機械2の姿勢を検出する。作業機械2の姿勢は、水平面に対する作業機械2の傾斜角度を含む。姿勢センサ26の検出データは、作業機械2の姿勢を示す姿勢データを含む。姿勢センサ26は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を含む。
【0019】
位置センサ31は、走行路HLを走行する作業機械2の位置を検出する。位置センサ31の検出データは、作業機械2の絶対位置を示す絶対位置データを含む。作業機械2の絶対位置は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用して検出される。全地球航法衛星システムは、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)を含む。位置センサ31は、GPS受信機を含む。全地球航法衛星システムは、緯度、経度、及び高度の座標データで規定される作業機械2の絶対位置を検出する。全地球航法衛星システムにより、グローバル座標系において規定される作業機械2の絶対位置が検出される。グローバル座標系とは、地球に固定された座標系をいう。
【0020】
非接触センサ32は、作業機械2の周囲の物体の位置を検出する。非接触センサ32は、作業機械2の周囲の少なくとも一部の物体を走査して、物体の検出点DPとの相対位置を検出する。非接触センサ32の検出データは、作業機械2と検出点DPとの相対位置を示す相対位置データを含む。非接触センサ32は、例えば車両本体21の前部の下部に配置される。作業機械2の車体座標系において、車両本体21に取り付けられる非接触センサ32の取付け位置と車両本体21の基準点との相対位置は予め決められている既知データである。非接触センサ32は、作業機械2の周囲の少なくとも一部の物体を非接触で検出する。作業機械2の周囲の物体は、走行路HLを走行する作業機械2が干渉する可能性がある物体を含む。作業機械2の周囲の物体として、作業機械2が走行する走行路HLに存在する障害物、走行路HLの轍、走行路HLの傍らに存在する土手BK、及び崖のような急な斜面を有する隆起物PRの少なくとも一つが例示される。非接触センサ32は、作業機械2の前方の障害物を非接触で検出する障害物センサとして機能する。
【0021】
非接触センサ32は、作業機械2と物体との相対位置を検出可能である。非接触センサ32は、物体をレーザ光で走査して、作業機械2と物体の複数の検出点DPのそれぞれとの相対位置を検出可能なレーザセンサを含む。なお、非接触センサ32は、物体を電波で走査して、作業機械2と物体の複数の検出点DPのそれぞれとの相対位置を検出可能なレーダセンサでもよい。以下の説明においては、レーザ光又は電波のような、物体を検出するために物体を走査するエネルギー波を適宜、検出波、と称する。
【0022】
無線通信機28は、管理装置3に接続された無線通信機6と無線通信する。通信システム4は、無線通信機28を含む。
【0023】
データ処理装置10は、コンピュータシステムを含み、車両本体21に配置される。データ処理装置10は、位置センサ31の検出データ及び非接触センサ32の検出データを処理する。
【0024】
走行制御装置40は、コンピュータシステムを含み、車両本体21に配置される。走行制御装置40は、作業機械2の走行装置23の走行状態を制御する。走行制御装置40は、駆動装置23Aを作動するためのアクセル指令、ブレーキ装置23Bを作動するためのブレーキ指令、及び操舵装置23Cを作動するためのステアリング指令を含む運転指令を出力する。駆動装置23Aは、走行制御装置40から出力されたアクセル指令に基づいて、作業機械2を加速させるための駆動力を発生する。ブレーキ装置23Bは、走行制御装置40から出力されたブレーキ指令に基づいて、作業機械2を減速又は停止させるための制動力を発生する。操舵装置23Cは、走行制御装置40から出力されたステアリング指令に基づいて、作業機械2を直進又は旋回させるために前輪27Fの向きを変えるための旋回力を発生する。
【0025】
[走行路]
図2は、本実施形態に係る作業機械2及び走行路HLを模式的に示す図である。走行路HLは、鉱山の複数の作業場PAに通じる。作業場PAは、積込場PA1及び排土場PA2の少なくとも一方を含む。走行路HLに交差点ISが設けられてもよい。
【0026】
積込場PA1とは、作業機械2に積荷を積載する積込作業が実施されるエリアをいう。積込場PA1において、油圧ショベルのような積込機7が稼働する。排土場PA2とは、作業機械2から積荷が排出される排出作業が実施されるエリアをいう。排土場PA2には、例えば破砕機8が設けられる。
【0027】
管理装置3は、走行路HLにおける作業機械2の走行条件を設定する。作業機械2は、管理装置3から送信された走行条件を示す走行条件データに基づいて、走行路HLを走行する。
【0028】
走行条件データは、作業機械2の目標走行速度及び目標走行コースCSを含む。図2に示すように、走行条件データは、走行路HLに間隔をあけて設定された複数のポイントPIを含む。ポイントPIは、グローバル座標系において規定される作業機械2の目標位置を示す。なお、ポイントPIは、作業機械2の車体座標系において規定されてもよい。
【0029】
目標走行速度は、複数のポイントPIのそれぞれに設定される。目標走行コースCSは、複数のポイントPIを結ぶ線によって規定される。
【0030】
[非接触センサ]
図3及び図4は、本実施形態に係る非接触センサ32の検出範囲を模式的に示す図である。非接触センサ32は、作業機械2の車両本体21の前部に配置される。非接触センサ32は、単数でもよいし複数でもよい。非接触センサ32の検出範囲ARは、放射状である。検出波は、放射状の検出範囲ARにおいて走査される。非接触センサ32は、検出範囲AR内の物体を検出波で走査して、物体の3次元形状を示す点群データを取得する。点群データは、物体の表面における複数の検出点DPの集合体である。検出点DPは、物体の表面において検出波が照射された照射点を含む。非接触センサ32は、作業機械2の周囲の少なくとも一部の物体を検出波で走査して、物体の複数の検出点DPのそれぞれとの相対位置を検出する。
【0031】
図3に示すように、検出範囲ARは、車両本体21から車幅方向に放射状に拡がる検出波の照射範囲IAHを含む。また、図4に示すように、検出範囲ARは、車両本体21から上下方向に放射状に拡がる検出波の照射範囲IAVを含む。照射範囲IAHは、作業機械2から離れるほど車幅方向に拡がる。照射範囲IAVは、作業機械2から離れるほど上下方向に拡がる。
【0032】
非接触センサ32により検出される物体は、少なくとも作業機械2の正面に存在する隆起物PRを含む。隆起物PRは、作業機械2が走行する路面よりも上方に突出する物体である。隆起物PRとして、走行路HLの周囲の少なくとも一部に存在する崖、及び管制施設5のような建築物が例示される。隆起物PRの高さは、作業機械2の高さよりも高い。なお、隆起物PRの高さは、作業機械2の高さよりも低くてもよい。図3に、隆起物PRの一例として作業機械2から見た崖の画像GPを示す。なお、物体は、走行路HLの傍らに存在する土手BKを含んでもよい。土手BKは、走行路HLの両側に設けられる。
【0033】
非接触センサ32は、作業機械2が走行している状態で物体を走査する。また、物体の形状及び物体と作業機械2との相対位置に起因して、物体が検出範囲ARに配置されても、検出波が照射されない部分が発生する可能性がある。
【0034】
[制御システム]
図5は、本実施形態に係る作業機械2の制御システム9を示す機能ブロック図である。制御システム9は、データ処理装置10と、走行制御装置40とを有する。データ処理装置10及び走行制御装置40のそれぞれは、通信システム4を介して管理装置3と通信可能である。
【0035】
管理装置3は、走行条件生成部3Aと、通信部3Bとを有する。走行条件生成部3Aは、作業機械2の走行条件を示す走行条件データを生成する。走行条件は、例えば管制施設に存在する管理者により決定される。管理者は、管理装置3に接続されている入力装置を操作する。走行条件生成部3Aは、入力装置が操作されることにより生成された入力データに基づいて、走行条件データを生成する。通信部3Bは、走行条件データを作業機械2に送信する。作業機械2の走行制御装置40は、通信部3Bから送信された走行条件データを、通信システム4を介して取得する。
【0036】
(データ処理装置)
データ処理装置10は、絶対位置データ取得部11と、相対位置データ取得部12と、マップデータ作成部13と、マップデータ記憶部14と、フィルタ部15と、照合位置データ算出部16とを有する。
【0037】
絶対位置データ取得部11は、位置センサ31から、作業機械2の絶対位置を示す絶対位置データを取得する。位置センサ31は、作業機械2を測位できたことを示す測位信号と、作業機械2を測位できなかったことを示す非測位信号とを出力する。絶対位置データ取得部11は、位置センサ31から、測位信号又は非測位信号を取得する。
【0038】
相対位置データ取得部12は、非接触センサ32から、作業機械2と物体の検出点DPとの相対位置を示す相対位置データを取得する。非接触センサ32は、1回の走査で複数の検出点DPのそれぞれとの相対位置を検出可能である。相対位置データ取得部12は、非接触センサ32から、作業機械2と物体の複数の検出点DPのそれぞれとの相対位置データを取得する。
【0039】
マップデータ作成部13は、位置センサ31の検出データ及び非接触センサ32の検出データに基づいて、作業現場のマップデータを作成する。すなわち、マップデータ作成部13は、絶対位置データ取得部11により取得された作業機械2の絶対位置データと、相対位置データ取得部12により取得された複数の検出点DPのそれぞれとの相対位置データとに基づいて、作業現場のマップデータを作成する。作業現場のマップデータは、作業機械2の周囲の物体の検出点DPの有無及び位置を示す。本実施形態において、物体のマップデータは、土手BKのマップデータ及び隆起物PRのマップデータを含む。
【0040】
マップデータ作成部13は、測位信号が取得されたとき、マップデータを作成する。マップデータ作成部13は、位置センサ31により検出された作業機械2の絶対位置の検出精度が規定精度以上であるとき(高精度であるとき)、マップデータを作成することが好ましい。マップデータの作成は、非接触センサ32で検出された検出点DPをマップデータ記憶部14に記憶させる処理を含む。
【0041】
マップデータの作成は、測位信号が取得されたときに、後述する通常走行モードで作業機械2が走行しながら実施される。マップデータの作成は、位置センサ31の検出精度が高精度であるときに、通常走行モードで作業機械2が走行しながら実施されることが好ましい。位置センサ31の検出精度が低下したときに、通常走行モードから後述する照合走行モードに切り換えられ、照合走行モードで作業機械2が走行する。
【0042】
本実施形態において、マップデータ作成部13は、位置センサ31により検出された作業機械2の絶対位置データ、方位センサ25により検出された作業機械2の方位データ、及び非接触センサ32により検出された検出点DPの相対位置データに基づいて、マップデータを作成する。マップデータ作成部13は、作業機械2の絶対位置データ及び方位データと、検出点DPの相対位置データとを統合して、土手BKのマップデータ及び隆起物PRのマップデータを作成する。
【0043】
本実施形態において、マップデータ作成部13は、非接触センサ32で検出され規定の高さ条件を満足する物体の検出点DPと、位置センサ31の検出データとに基づいて、マップデータを作成する。
【0044】
マップデータ記憶部14は、マップデータ作成部13で作成されたマップデータを記憶する。検出点DPは、マップデータ記憶部14に記憶されるマップデータを構成する既存検出点DPeと、非接触センサ32で検出される現況検出点DPcとを含む。既存検出点DPeとは、マップデータ記憶部14に記憶されるマップデータを規定する検出点DPをいう。図6等に示すように、現況検出点DPcとは、非接触センサ32で検出され、相対位置データ取得部12により取得された現況の検出点DPをいう。
【0045】
フィルタ部15は、検出点DPが高さ条件を満足するか否かを判定する。検出点DPの高さとは、車体座標系における上下方向の検出点DPの位置をいう。高さ条件は、高さ閾値h1以下の高さであることを含む。図7等に示すように、高さ閾値h1は、検出点DPの高さに係る閾値であり、予め定められる。検出点DPの高さは、車体座標系の基準面からの高さを示し、高さ閾値h1は、車体座標系の基準面からの高さに係る閾値を示す。本実施形態において、車体座標系の基準面は、車輪27(タイヤ)の接地面である。
【0046】
フィルタ部15は、高さ閾値h1を記憶する。フィルタ部15は、相対位置データ取得部12により取得された検出点DP(現況検出点DPc)の相対位置データと高さ閾値h1とを比較して、検出点DPの高さが高さ閾値h1以下か否かを判定する。検出点DPの相対位置データは、車体座標系における検出点DPの高さを示す高さデータを含む。フィルタ部15は、相対位置データ取得部12により取得された検出点DPの相対位置データに基づいて、車体座標系における現況検出点DPcの高さデータを算出する。検出点DPの高さが高さ閾値h1以下である場合、フィルタ部15は、現況検出点DPcは高さ条件を満足すると判定する。検出点DPの高さが高さ閾値h1よりも大きい場合、フィルタ部15は、現況検出点DPcは高さ条件を満足しないと判定する。
【0047】
マップデータ作成部13は、高さ条件を満足する検出点DPを用いてマップデータを作成する。マップデータ作成部13は、規定周期(例えば0.1[秒]毎)にマップデータを作成する。フィルタ部15による高さ条件の判定は、規定周期で実施され、マップデータ作成部13は、フィルタ部15による高さ条件の判定結果に基づいて、規定周期でマップデータを作成する。
【0048】
マップデータ作成部13は、規定周期で作成したマップデータをマップデータ記憶部14に記憶させる。マップデータ記憶部14に記憶されるマップデータは、規定周期で更新される。マップデータ作成部13は、高さ条件を満足する現況検出点DPcをマップデータ記憶部14に記憶されている既存検出点DPeに付加してマップデータを作成する。
【0049】
照合位置データ算出部16は、非接触センサ32の検出データとマップデータ作成部13で作成されたマップデータとを照合して、作業機械2の照合位置を示す照合位置データを算出する。すなわち、照合位置データ算出部16は、相対位置データ取得部12により取得された現況検出点DPcの相対位置データと、マップデータ記憶部14に記憶されているマップデータとを照合して、作業機械2の照合位置データを算出する。照合位置は、照合位置データ算出部16により算出される作業機械2の絶対位置を示す。
【0050】
照合位置データ算出部16は、速度センサ24により検出された走行速度データと、方位センサ25により検出された方位データと、非接触センサ32により検出された検出点DPの相対位置データとに基づいて、作業機械2の照合位置及び方位を算出する。
【0051】
(走行制御装置)
走行制御装置40は、管理装置3により生成された走行条件データに従って作業機械2が走行するように、走行装置23を制御する。本実施形態において、走行制御装置40は、位置センサ31により検出される絶対位置データに基づいて作業機械2を走行させる通常走行モードと、照合位置データ算出部16により算出された照合位置データに基づいて作業機械2を走行させる照合走行モードとの少なくとも一方の走行モードに基づいて、作業機械2を走行させる。
【0052】
通常走行モードは、位置センサ31から測位信号が取得されたときに実施される走行モードである。走行制御装置40は、位置センサ31から測位信号を取得したと判定したとき、位置センサ31により検出された絶対位置データと走行条件データとに基づいて、走行装置23を制御する。すなわち、通常走行モードにおいて、走行制御装置40は、位置センサ31により検出された作業機械2の絶対位置データとポイントPIの座標データとを照合して、作業機械2の絶対位置データとポイントPIの座標データとの差が許容値以下になるように、走行装置23の走行状態を制御する。通常走行モードは、位置センサ31により検出された作業機械2の絶対位置の検出精度が規定精度以上であるときに実施されることが好ましい。
【0053】
照合走行モードは、位置センサ31から非測位信号が取得され、位置センサ31により検出された作業機械2の絶対位置の検出精度が低下しているときに実施される走行モードである。走行制御装置40は、位置センサ31から非測位信号を取得し、位置センサ31により検出された作業機械2の絶対位置の検出精度が低下していると判定したとき、照合位置データ算出部16により算出された照合位置データと走行条件データとに基づいて、走行装置23を制御する。すなわち、照合走行モードにおいて、走行制御装置40は、照合位置データ算出部16により算出された作業機械2の照合位置データとポイントPIの座標データとを照合して、作業機械2の照合位置データとポイントPIの座標データとの差が許容値以下になるように、走行装置23の走行状態を制御する。
【0054】
なお、位置センサ31の検出精度が低下する状況として、例えば、太陽フレアによる電離層異常、及び全地球航法衛星システムとの通信異常等が例示される。鉱山現場の例えば、露天掘りのような作業現場においては、全地球航法衛星システムとの通信異常が発生する可能性が高くなる。
【0055】
[マップデータ作成部の処理]
図6は、本実施形態に係るマップデータ作成部13の処理を説明するための模式図である。なお、図6に示す例においては、非接触センサ32によって検出される物体が土手BKであることとする。なお、物体は隆起物PRでもよい。
【0056】
マップデータは、複数のグリッドからなるグリッドデータを含む。検出点DPは、1つのグリッドによって規定される。検出点DPは、土手BKの存在を示すバイナリデータである。検出点DPにおいて土手BKが検出されると、検出点DPとしてグリッドに「1」が入力される。土手BKが検出されない場合、グリッドに「0」が入力される。
【0057】
鉱山のような作業現場においては、作業機械2は、同一の走行路HLを複数回走行する場合が多い。マップデータ作成部13は、作業機械2が同一の場所を複数回走行し、それぞれの走行において取得された検出点DPに基づいて、マップデータを作成する。
【0058】
図6(A)は、作業機械2が走行路HLの特定の場所を最初に走行したときに取得された検出点DPを模式的に示す図である。非接触センサ32は、作業機械2が走行している状態で物体を走査する。上述のように、土手BKの表面において、検出点DPは、まばらに検出される。マップデータ作成部13は、まばらに検出された検出点DPに基づいて、図6(A)に示すようなマップデータを作成する。マップデータ作成部13により作成されたマップデータは、マップデータ記憶部14に記憶される。
【0059】
図6(B)は、作業機械2が走行路HLの特定の場所を2回目に走行したときに取得された検出点DPを模式的に示す図である。第2回目の走行において、位置センサ31の検出精度が規定精度以上であることを条件として、マップデータ作成部13は、第1回目の走行で走行した特定の場所か否かを、絶対位置データ取得部11により取得された作業機械2の絶対位置データに基づいて判定することができる。マップデータ作成部13は、第2回目の走行において検出された検出点DPを、第1回目の走行において作成されたマップデータに統合する。すなわち、マップデータ作成部13は、第2回目の走行において相対位置データ取得部12により取得された現況の検出点DPを示す複数の現況検出点DPcを、マップデータ記憶部14に記憶されているマップデータの既存検出点DPeに付加するようにマップデータを作成する。図6(B)において、マップデータ記憶部14に記憶されていたマップデータは、既存検出点DPeによって規定されている。マップデータ作成部13は、第1回目の走行において取得された既存検出点DPeに、第2回目の走行において取得された現況検出点DPcを付加するようにマップデータを作成する。
【0060】
図6(C)は、作業機械2が走行路HLの特定の場所を3回目に走行したときに取得された検出点DPを模式的に示す図である。マップデータ作成部13は、第3回目の走行において検出された検出点DPを、第1回目及び第2回目の走行において作成されたマップデータに統合する。すなわち、マップデータ作成部13は、第3回目の走行において相対位置データ取得部12により取得された現況の検出点DPを示す複数の現況検出点DPcを、マップデータ記憶部14に記憶されているマップデータの既存検出点DPeに付加するようにマップデータを作成する。
【0061】
このように、作業機械2が同一の場所を複数回走行するとき、各走行において取得された検出点DPが積み重ねられていく。走行回数が多いほど、実際の土手BKの位置及び形状に則したマップデータが構築される。
【0062】
[フィルタ部の処理]
図7は、本実施形態に係るフィルタ部15の処理を説明するための模式図である。作業機械2は、走行路HLを走行する。走行路HLを走行する作業機械2の前方に隆起物PRが存在する場合、非接触センサ32は、隆起物PRを検出する。非接触センサ32に対向する隆起物PRの表面(壁面)は、上方に向かって作業機械2から離れるように傾斜している。
【0063】
非接触センサ32の検出範囲ARは、上下方向に放射状に拡がる。検出波は、検出範囲ARにおいて走査される。非接触センサ32は、検出範囲AR内の隆起物PRを検出波で走査して、隆起物PRの3次元形状を示す点群データを取得する。点群データは、隆起物PRの表面における複数の検出点DPの集合体である。
【0064】
相対位置データ取得部12は、非接触センサ32の検出データを取得する。非接触センサ32の検出データは、検出点DPの相対位置データを含む。
【0065】
フィルタ部15は、相対位置データ取得部12により取得された検出点DPの相対位置データに基づいて、車体座標系における検出点DPの高さを示す高さデータを算出する。フィルタ部15は、検出範囲ARに存在する複数の検出点DPのそれぞれの高さデータを算出する。
【0066】
フィルタ部15は、複数の検出点のそれぞれについて、高さ条件を満足するか否かを判定する。高さ条件は、検出点DPの高さが高さ閾値h1以下であることを含む。検出点DPの高さは、車体座標系の基準面からの高さを示し、高さ閾値h1は、車体座標系の基準面からの高さに係る閾値を示す。車体座標系の基準面は、車輪27(タイヤ)の接地面である。フィルタ部15は、検出点DPの高さデータと予め定められている高さ閾値h1とを比較して、複数の検出点DPのそれぞれの高さが高さ閾値h1以下か否かを判定する。
【0067】
フィルタ部15は、複数の検出点DPのうち高さ条件を満足しない検出点DPを除外する。すなわち、フィルタ部15は、高さ閾値h1よりも高い位置に存在する検出点DPを除外する。図7に示す例において、フィルタ部15は、隆起物PRの表面の複数の検出点DPのうち、高さ条件不成立領域ADに存在する検出点DPを除外する。
【0068】
マップデータ作成部13は、フィルタ部15により高さ条件を満足すると判定された検出点DPを用いてマップデータを作成する。すなわち、マップデータ作成部13は、高さ閾値h1以下の検出点DPを用いてマップデータを作成する。フィルタ部15において高さ条件を満足しないと判定され、除外された検出点DPは、マップデータに反映されない。図7に示す例において、フィルタ部15は、隆起物PRの表面の複数の検出点DPのうち、高さ条件成立領域ACに存在する検出点DPを用いてマップデータを作成する。
【0069】
マップデータの作成は、マップデータ記憶部14に記憶されているマップデータに現況検出点DPcを付加する処理を含む。マップデータ作成部13は、マップデータ記憶部14に記憶されているマップデータの既存検出点DPeに高さ閾値h1以下の現況検出点DPcを付加してマップデータを作成する。
【0070】
マップデータMIは、複数のグリッドからなるグリッドデータを含む。検出点DPは、1つのグリッドによって規定される。図7に示すように、マップデータMIは、水平面と平行な面内においてマトリクス状に配置される複数のグリッドを含む。本実施形態においては、高さ条件を満足する検出点DPを示すグリッドに「1」が入力される。高さ条件を満足しない検出点DPを示すグリッドに「0」が入力される。
【0071】
なお、本実施形態において、高さ閾値h1よりも低い高さ閾値h2が設定される。高さ閾値h2は、車体座標系の基準面(接地面)からの高さに係る閾値を示す。フィルタ部15は、高さ閾値h2を記憶する。高さ閾値h2は、走行路HLの路面と同等の高さであるとみなすことができる高さである。鉱山の走行路は未舗装であり、作業機械2が乗り越えられる程度の岩又は轍が存在する。作業機械2が乗り越えられる程度の岩又は轍の高さは、高さ閾値h2以下であり、作業機械2の走行において無視することができる程度の物体である。高さ閾値h2以下の高さの物体が走行路HLの路面に存在しても、作業機械2は支障なく走行することができる。本実施形態において、フィルタ部15は、高さ閾値h2以下の検出点DPを除外する。すなわち、本実施形態において、フィルタ部15は、高さ閾値h1よりも高い検出点DP及び高さ閾値h2以下の検出点DPを除外する。マップデータ作成部13は、高さ閾値h1以下であり高さ閾値h2よりも高い検出点DPを用いてマップデータを作成する。
【0072】
走行路HLの路面と同等の高さであるとみなせる物体の検出点DPが除外されることにより、作業機械2が走行する路面を示すグリッドには「0」が入力される。マップデータにおいて、土手BK及び隆起物PRのみならず、作業機械2が走行する路面を示すグリッドにも「1」が入力されてしまうと、路面にも障害物が存在すると判定されるため、作業機械2は、照合走行モードで走行することが困難となる可能性がある。本実施形態においては、高さ閾値h2以下の検出点DPが除外されるので、作業機械2は、照合走行モードで走行路HLを円滑に走行することができる。
【0073】
高さ条件を満足する検出点DPにより、マップデータMIにおいて、車幅方向に延在するグリッド領域GR1が形成される。グリッド領域GR1は、高さ条件を満足する複数の検出点DPにより構成される。高さ条件を満足しない検出点DPは、フィルタ部15において除外され、マップデータMI(グリッド領域GR1)の作成に使用されない。そのため、前後方向におけるグリッド領域GR1の幅d1は、高さ条件を満足する検出点DPに基づいて規定される。
【0074】
本実施形態に係るマップデータMIは、高さ条件を満足する検出点DPに基づいて作成されるため、隆起物PRの表面と直交する方向におけるグリッド領域GR1の幅d1を小さくすることができる。すなわち、隆起物PRの表面と直交する方向において「1」が入力されたグリッドの数を少なくすることができる。そのため、図7に示すように、マップデータMIにおいて隆起物PRの表面を規定するラインL1の太さを細くすることができる。
【0075】
マップデータMIは、照合走行モードで走行する作業機械2と物体(土手BK及び隆起物PR)との接触を抑制することを目的として作成される。高さ閾値h1よりも高い位置に存在する隆起物PRは、作業機械2に接触する可能性は低い。そのため、高さ閾値h1よりも高い位置に存在する検出点DPは、ノイズとみなすことができる。
【0076】
ノイズとみなされる検出点DP(現況検出点DPc)がマップデータ記憶部14に記憶されているマップデータに付加されると、マップデータにおいて隆起物PRの表面を表わすグリッドが、隆起物PRの表面と直交する方向に多数配置される可能性がある。その結果、マップデータにおいて隆起物PRの表面が太い幅のラインで示されてしまう可能性がある。
【0077】
すなわち、ノイズとみなされる検出点DPがマップデータに付加されると、本来であれば不要な検出点DP(高さ閾値h1よりも高い検出点DP)に基づいてマップデータが作成されるため、隆起物PRの表面を示すラインが太くなる現象が発生し、マップデータで示される隆起物PRの形状及び位置と、実際の隆起物PRの形状及び位置とが乖離してしまう可能性がある。その結果、非接触センサ32の検出データとマップデータとを照合したとき、算出される作業機械2の位置計測の精度が低下する可能性がある。
【0078】
図8は、比較例に係るマップデータ作成部13の処理を説明するための模式図である。図8は、フィルタ部15による高さ条件の判定が実施されずに作成されたマップデータを示す。すなわち、図8は、高さ閾値h1以下の検出点DPのみならず、高さ閾値h1よりも高い検出点DPを用いて作成されたマップデータを示す。
【0079】
検出範囲ARは、上下方向に放射状に拡がる。そのため、隆起物PRの表面において、上下方向の検出範囲ARの寸法は大きくなる。
【0080】
高さ閾値h1以下の検出点DP及び高さ閾値h1よりも高い検出点DPにより、マップデータMIにおいて、車幅方向に延在するグリッド領域GR2が形成される。高さ閾値h1以下の検出点DP及び高さ閾値h1よりも高い検出点DPの両方に基づいてマップデータが作成されると、マップデータにおいて隆起物PRの表面を表わすグリッドが、隆起物PRの表面と直交する方向に多数配置されてしまう。すなわち、隆起物PRの表面と直交する方向において「1」が入力されたグリッドの数を増えてしまい、グリッド領域GR2の幅d2が大きくなってしまう。その結果、マップデータにおいて隆起物PRの表面が太い幅のラインL2で示されてしまい、マップデータで示される隆起物PRの形状及び位置と、実際の隆起物PRの形状及び位置とが乖離してしまう可能性がある。
【0081】
本実施形態においては、フィルタ部15により、高さ閾値h1よりも高い検出点DPが除外される。マップデータ作成部13は、高さ閾値h1以下の検出点DPを用いてマップデータを作成し、高さ閾値h1よりも高い検出点DPを用いるマップデータの作成は実施しない。これにより、ノイズとみなされる検出点DP(現況検出点DPc)がマップデータに反映されることが抑制され、実際の隆起物PRの形状及び位置から乖離するマップデータの作成が抑制される。
【0082】
[マップデータ作成方法]
次に、本実施形態に係るマップデータ作成方法について説明する。図9は、本実施形態に係るマップデータ作成方法を示すフローチャートである。
【0083】
図9に示すマップデータ作成方法が実施される前提として、通常走行モードで走行路HLの特定の場所を作業機械2が既に走行し、マップデータがマップデータ記憶部14に記憶されていることとする。
【0084】
また、以下の説明においては、説明を簡単にするため、1つの現況検出点DPcについて説明する。なお、データ処理装置10は、作業機械2の走行において、複数の現況検出点DPcのそれぞれについて、図9に示す処理を規定周期で繰り返し実行する。
【0085】
作業機械2が特定の場所を走行しながら、位置センサ31は、作業機械2の絶対位置を検出する。非接触センサ32は、物体の少なくとも一部を検出波により走査する。位置センサ31の検出データ及び非接触センサ32の検出データは、データ処理装置10に出力される。
【0086】
相対位置データ取得部12は、非接触センサ32から、現況検出点DPcの相対位置データを取得する(ステップS101)。
【0087】
フィルタ部15は、相対位置データ取得部12により取得された作業機械2と物体の現況検出点DPcとの相対位置を示す相対位置データに基づいて、現況検出点DPcの高さを示す高さデータを算出する(ステップS102)。
【0088】
フィルタ部15は、現況検出点DPcの高さが高さ閾値h1以下か否かを判定する(ステップS103)。
【0089】
ステップS103において、現況検出点DPcの高さが高さ閾値h1よりも高いと判定した場合(ステップS103:No)、フィルタ部15は、高さ閾値h1よりも高い現況検出点DPcを除外する(ステップS104)。
【0090】
ステップS103において、検出点DPの高さが高さ閾値h1以下であると判定された場合(ステップS103:Yes)、マップデータ作成部13は、高さ閾値h1以下である現況検出点DPcを用いてマップデータを作成する(ステップS105)。
【0091】
なお、上述したように、高さ閾値h1以下であり高さ閾値h2よりも高い検出点DPを用いてマップデータが作成されてもよい。その場合、ステップS103において、フィルタ部15は、現況検出点DPcの高さが、高さ閾値h1以下であり、且つ、高さ閾値h2よりも高いか否かを判定する。
【0092】
なお、高さ閾値h1以下であることを示す第1高さ条件及び高さ閾値h2よりも高いことを示す第2高さ条件の少なくとも一方を満足する検出点DPを用いてマップデータが作成されてもよい。その場合、ステップS103において、フィルタ部15は、現況検出点DPcの高さが、高さ閾値h1以下であるか、又は、高さ閾値h2よりも高いか否かを判定する。
【0093】
[コンピュータシステム]
図10は、コンピュータシステム1000の一例を示すブロック図である。上述の管理装置3、データ処理装置10、及び走行制御装置40のそれぞれは、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。上述の管理装置3の機能、データ処理装置10の機能、及び走行制御装置40の機能は、プログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、プログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0094】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、高さ閾値h1以下の検出点DPに基づいてマップデータが作成され、高さ閾値h1よりも高くノイズとみなされる検出点DPを用いるマップデータの作成は実施されない。これにより、マップデータの作成において、マップデータにノイズが含まれることが抑制される。マップデータの作成においてノイズの影響が抑制され、高精度なマップデータを作成することができるので、非接触センサ32の検出データとマップデータとを照合したとき、算出される作業機械2の位置計測の精度の低下が抑制される。そのため、例えば位置センサ31の検出精度が低下したときに、非接触センサ32の検出データとマップデータとを照合しながら作業機械2を走行させるとき、作業機械2は、走行条件データに従って精度良く走行することができる。
【0095】
また、本実施形態によれば、「1」が入力されるグリッドの数を少なくすることができ、「1」が入力されるグリッドで規定される領域が減るため、マップデータ記憶部14のデータ容量を削減することができる。
【0096】
[2]第2実施形態
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0097】
図11は、本実施形態に係るマップデータ作成部13の処理を説明するための模式図である。図11に示すように、走行路HLを走行する作業機械2の前方に隆起物PRが存在する。非接触センサ32は、走行路HLの地面と隆起物PRの表面との境界TPの位置を検出する。本実施形態において、非接触センサ32に検出される境界TPの位置とは、隆起物PRの表面のうち作業機械2(非接触センサ32)と対向し、検出範囲AR内に配置される境界TPの位置をいう。
【0098】
走行路HLの路面の傾斜角度と、隆起物PRの表面の傾斜角度とは異なる。境界TPは、走行路HLの路面と隆起物PRの表面との変曲点を示す。
【0099】
相対位置データ取得部12は、作業機械2と境界TPとの相対位置を示す相対位置データを取得する。また、相対位置データ取得部12は、作業機械2と隆起物PRの表面における複数の検出点DPとの相対位置を示す相対位置データを取得する。フィルタ部15は、隆起物PRの表面の複数の検出点DPのそれぞれについて、高さ条件を満足するか否かを判定する。
【0100】
本実施形態において、高さ条件は、隆起物PRの表面において境界TPから規定距離d3までの規定領域AEに存在することを含む。規定領域AEは、境界TPと境界TPから前方に規定距離d3だけ離れた位置TQとの間の隆起物PRの表面の一部の領域である。規定距離d3は、車体座標系における前後方向の距離である。前後方向及び上下方向のそれぞれにおいて、規定距離d3は、隆起物PRの表面における検出範囲ARの寸法よりも短い。
【0101】
規定距離d3は、マップデータを規定するグリッドの寸法に基づいて定められる。本実施形態において、規定距離d3は、高さ条件を規定するために車体座標系の前後方向に配置された複数の規定グリッドGSの寸法の和に等しい。規定グリッドGSは、境界TPの前方に配置される。規定領域AEは、規定グリッドGSにより定められる。
【0102】
フィルタ部15は、相対位置データ取得部12により取得された検出点DPが規定領域AEに存在するか否かを判定する。すなわち、フィルタ部15は、相対位置データ取得部12により取得された検出点DPが規定グリッドGSに一致するか否かを判定する。
【0103】
規定グリッドGSの少なくとも一つは、境界TPの位置に一致する。以下の説明において、境界TPに一致する規定グリッドGSを適宜、境界グリッドGSt、と称する。
【0104】
本実施形態において、規定グリッドGSは、車体座標系の前後方向に2つ配置される。規定距離d3は、2つの規定グリッドGSの寸法の和に等しい。すなわち、本実施形態においては、境界TPを含むように規定数の規定グリッドGSが前後方向に定められる。前後方向の規定グリッドGSの数(すなわち規定距離d3)は、予め定められ、フィルタ部15に記憶される。
【0105】
図12は、本実施形態に係るマップデータ作成方法を示すフローチャートである。以下の説明においては、説明を簡単にするため、1つの現況検出点DPcについて説明する。なお、データ処理装置10は、作業機械2の走行において、複数の現況検出点DPcのそれぞれについて、図12に示す処理を規定周期で繰り返し実行する。
【0106】
作業機械2が走行路HLを走行しながら、位置センサ31は、作業機械2の絶対位置を検出する。非接触センサ32は、物体(隆起物PR)の少なくとも一部を検出波により走査する。位置センサ31の検出データ及び非接触センサ32の検出データは、データ処理装置10に出力される。
【0107】
相対位置データ取得部12は、非接触センサ32から、現況検出点DPcの相対位置データを取得する(ステップS201)。
【0108】
フィルタ部15は、相対位置データ取得部12により取得された作業機械2と物体の現況検出点DPcとの相対位置を示す相対位置データに基づいて、現況検出点DPcの高さを示す高さデータを算出する(ステップS202)。
【0109】
フィルタ部15は、現況検出点DPcが規定グリッドGSに一致するか否かを判定する(ステップS203)。
【0110】
ステップS203において、現況検出点DPcが規定グリッドGSに一致しないと判定した場合(ステップS203:No)、フィルタ部15は、規定グリッドGSに一致しない現況検出点DPcを除外する(ステップS204)。
【0111】
ステップS203において、現況検出点DPcが規定グリッドGSに一致すると判定された場合(ステップS203:Yes)、マップデータ作成部13は、規定グリッドGSに一致する現況検出点DPcを用いてマップデータを作成する(ステップS205)。
【0112】
以上説明したように、本実施形態によれば、境界TPが検出されることにより、フィルタ部15は、予め定められている規定距離d3(前後方向における規定グリッドGSの数)に基づいて、検出点DPが高さ条件を満足するか否かを判定することができる。マップデータ作成部13は、高さ条件を満足する検出点DP(現況検出点DPc)を用いてマップデータを作成する。これにより、マップデータにおいて、隆起物PRの表面を示すラインが太くなることが抑制される。また、規定距離d3(前後方向における規定グリッドGSの数)を変更することにより、マップデータにおいて隆起物PRの表面のラインの太さを任意に調整することができる。本実施形態においても、ノイズとみなされる検出点DP(現況検出点DPc)がマップデータに反映されることが抑制され、実際の隆起物PRの形状及び位置から乖離するマップデータの作成が抑制される。
【0113】
また、本実施形態においても、「1」が入力されるグリッドの数を少なくすることができ、「1」が入力されるグリッドで規定される領域が減るため、マップデータ記憶部14のデータ容量を削減することができる。
【0114】
なお、本実施形態において、前後方向における規定グリッドGSの数は、2つに限定されない。前後方向における規定グリッドGSの数は、マップデータで示される隆起物PRの表面の形状及び位置と実際の隆起物PRの表面の形状及び位置とが過度に乖離しない範囲において、任意に定めることができる。
【0115】
[3]他の実施形態
なお、上述の実施形態において、マップデータ作成部13により作成されたマップデータが表示装置に表示されてもよい。表示装置は、作業機械2の運転室に配置されてもよい。管制施設5に配置されてもよい。表示装置は、一致条件に基づいて、マップデータを構成するグリッドの表示形態を変えてもよい。例えば、表示装置は、上述の第1実施形態で説明した既存検出点DPeと一致する現況検出点PDcと、既存検出点DPeと一致しない現況検出点PDcとを、異なる色又は濃度で表示してもよい。また、表示装置は、上述の第2実施形態及び第3実施形態で説明した検出回数が検出回数閾値以上の現況検出点PDcと、検出回数が検出回数閾値以下の現況検出点PDcとを、異なる色又は濃度で表示してもよい。
【0116】
なお、上述の実施形態において、複数の作業機械2のそれぞれに搭載されているデータ処理装置10によって作成されたマップデータが管理装置3に送信されてもよい。管理装置3は、複数の作業機械2のそれぞれにおいて作成された複数のマップデータを統合してもよい。また、管理装置3は、統合したマップデータを複数の作業機械2のそれぞれに配信してもよい。複数の作業機械2のそれぞれは、配信されたマップデータに基づいて走行してもよい。鉱山のような作業現場においては、複数の作業機械2のそれぞれが同一の走行路HLを何回も走行する可能性が高い。そのため、複数の作業機械2のそれぞれに搭載されているデータ処理装置10によって作成され、管理装置3において統合されたマップデータは、高精度なマップデータである可能性が高い。複数の作業機械2のそれぞれは、統合された高精度なマップデータに基づいて、照合走行モードで走行することができる。
【0117】
なお、上述の実施形態において、照合位置データ算出部16は省略されてもよい。
【0118】
なお、上述の実施形態において、データ処理装置10の機能の少なくとも一部が管理装置3に設けられてもよいし、管理装置3の機能の少なくとも一部がデータ処理装置10及び走行制御装置40の少なくとも一方に設けられてもよい。例えば、上述の実施形態において、管理装置3が、マップデータ作成部13、マップデータ記憶部14、及びフィルタ部15の機能を有し、管理装置3で作成されたマップデータが、通信システム4を介して、作業機械2の走行制御装置40に送信されてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1…管理システム、2…作業機械、3…管理装置、3A…走行条件生成部、3B…通信部、4…通信システム、5…管制施設、6…無線通信機、7…積込機、8…破砕機、9…制御システム、10…データ処理装置、11…絶対位置データ取得部、12…相対位置データ取得部、13…マップデータ作成部、14…マップデータ記憶部、15…フィルタ部、16…照合位置データ算出部、21…車両本体、22…ダンプボディ、23…走行装置、23A…駆動装置、23B…ブレーキ装置、23C…操舵装置、24…速度センサ、25…方位センサ、26…姿勢センサ、27…車輪、27F…前輪、27R…後輪、28…無線通信機、31…位置センサ、32…非接触センサ、40…走行制御装置、AC…高さ条件成立領域、AD…高さ条件不成立領域、AE…規定領域、AR…検出範囲、CS…目標走行コース、DP…検出点、DPc…現況検出点、DPe…既存検出点、GP…画像、GS…規定グリッド、GSt…境界グリッド、HL…走行路、IAH…照射範囲、IAV…照射範囲、IS…交差点、L1…ライン、L2…ライン、PA…作業場、PA1…積込場、PA2…排土場、PI…ポイント、PR…隆起物、TP…境界、TQ…位置。
図1
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図5
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図12