(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及びその製造方法、並びに回路基板
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220712BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20220712BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H01G4/30 513
H01G4/30 201F
H01G2/06 500
H01F27/29 123
(21)【出願番号】P 2018082861
(22)【出願日】2018-04-24
【審査請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(72)【発明者】
【氏名】富澤 祐寿
(72)【発明者】
【氏名】赤石 和香恵
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-080514(JP,A)
【文献】特開2013-042083(JP,A)
【文献】特開2006-179954(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0068796(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0184797(US,A1)
【文献】特開2001-297944(JP,A)
【文献】特開2008-078622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 2/06
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向を向いた第1主面及び第2主面と、前記第1方向に積層された複数の内部電極と、前記第1主面から前記第2主面に向けて径が小さくなり、前記複数の内部電極が露出するテーパ面を含む貫通孔と、を有するセラミック素体と、
前記テーパ面に沿って配置された第1導電層と、前記第1主面に沿って配置され、前記第1導電層に接続される第2導電層と、を有
し、前記貫通孔において前記第1方向に貫通する外部電極と、
を具備する積層セラミック電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記外部電極は、第1外部電極及び第2外部電極を含み、
前記貫通孔は、前記第1外部電極及び前記第2外部電極についてそれぞれ設けられた複数の貫通孔を含む
積層セラミック電子部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記セラミック素体の第1方向の寸法が200μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記外部電極は、前記第1導電層から前記第2主面に沿って延びる第3導電層を更に有する
積層セラミック電子部品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記セラミック素体では、前記第1方向と直交する第2方向の寸法が、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向の寸法よりも小さく、
前記外部電極は、前記第2方向の両端部に設けられた第1外部電極及び第2外部電極を含む
積層セラミック電子部品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品と、
前記第1主面に対向し、前記外部電極が半田で接合された配線基板と、
を具備する回路基板。
【請求項7】
請求項6に記載の回路基板であって、
前記半田が前記貫通孔内に入り込んでいる
回路基板。
【請求項8】
第1方向を向いた第1主面及び第2主面と、前記第1方向に積層された複数の内部電極と、を有する未焼成のセラミック素体を作製し、
前記セラミック素体を焼成し、
焼成された前記セラミック素体の前記第1主面に短パルスレーザを照射することで、前記第1主面から前記第2主面に向けて径が小さくなり、前記複数の内部電極が露出するテーパ面を含む貫通孔を形成し、
前記テーパ面及び前記第1主面にわたって延びる導電層を含
み、前記貫通孔において前記第1方向に貫通する外部電極を形成する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記短パルスレーザは、ピコ秒レーザ又はフェムト秒レーザである
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
焼成時の前記セラミック素体には、前記複数の内部電極が露出していない
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記セラミック素体に前記第1主面側からスパッタリングを行うことにより前記外部電極を形成する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低背型の積層セラミック電子部品及びその製造方法、並びに回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサが知られている。電子機器の小型化、薄型化、高機能化などに伴い、電子機器に搭載される積層セラミックコンデンサには実装スペースの縮小が求められている。特許文献1には、低背型の積層セラミックコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサは、配線基板に半田付けされる外部電極を有し、半田が外部電極の外表面を濡れ上がることにより配線基板に対する高い接合強度が得られる。しかし、この積層セラミックコンデンサでは、外部電極の外側に半田が張り出すため、配線基板上における実装面積が拡大する。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、実装スペースを節約可能な積層セラミック電子部品及びその製造方法、並びに回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、外部電極と、を具備する。
上記セラミック素体は、第1方向を向いた第1主面及び第2主面と、上記第1方向に積層された複数の内部電極と、上記第1主面から上記第2主面に向けて径が小さくなり、上記複数の内部電極が露出するテーパ面を含む貫通孔と、を有する。
上記外部電極は、上記テーパ面に沿って配置された第1導電層と、上記第1主面に沿って配置され、上記第1導電層に接続される第2導電層と、を有する。
【0007】
この積層セラミック電子部品では、外部電極が半田付けされる際に、半田が第2導電層から第1導電層に沿って濡れ上がり、貫通孔内に吸い上げられる。これにより、この積層セラミック電子部品では、半田を外側に張り出させることなく、外部電極における半田の接続面積を広く確保することができる。
また、貫通孔の径は、第1主面から第2主面に向けて小さくなっている。つまり、第1主面側で貫通孔の径が大きいため、半田が貫通孔内に進入しやすい。また、第1主面側から貫通孔内に進入した半田は、毛細管現象によって、第2主面に近づくにつれて強く吸い上げられる。これにより、半田が良好に貫通孔内に入り込む。
【0008】
上記外部電極は、第1外部電極及び第2外部電極を含んでもよい。
上記貫通孔は、上記第1外部電極及び上記第2外部電極にそれぞれ設けられた複数の貫通孔を含んでもよい。
この構成では、複数の貫通孔の作用によって第1外部電極及び第2外部電極における半田の接続面積が広くなるため、等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resonance)を低減することができる。
【0009】
上記セラミック素体の第1方向の寸法が200μm以下であってもよい。
この構成では、貫通孔の作用によって、低背型の積層セラミック電子部品であっても外部電極における半田の接続面積を広く確保することができる。
【0010】
上記外部電極は、上記第1導電層から上記第2主面に沿って延びる第3導電層を更に有してもよい。
この構成では、貫通孔から第2主面に溢れた半田が第3導電層に濡れ広がる。これにより、第2主面において半田を平坦に留めることができるため、実装スペースが増大しにくくなる。また、第3導電層で半田を確実に捕捉することができるため、電子機器内に半田が異物として混入することを防止することができる。
【0011】
上記セラミック素体では、上記第1方向と直交する第2方向の寸法が、上記第1方向及び上記第2方向と直交する第3方向の寸法よりも小さくてもよい。
上記外部電極は、上記第2方向の両端部に設けられた第1外部電極及び第2外部電極を含んでもよい。
この構成では、第1外部電極と第2外部電極との間の距離を小さく留めることができるため、等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)を低減することができる。
【0012】
本発明の一形態に係る回路基板は、上記積層セラミック電子部品と、上記第1主面に対向し、上記外部電極が半田で接合された配線基板と、を具備する。
この構成では回路基板における実装スペースを節約することができる。
【0013】
上記半田が上記貫通孔内に入り込んでいてもよい。
この構成では、回路基板における実装スペースを更に節約することができる。
【0014】
本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、第1方向を向いた第1主面及び第2主面と、上記第1方向に積層された複数の内部電極と、を有する未焼成のセラミック素体が作製される
上記セラミック素体が焼成される。
焼成された上記セラミック素体の上記第1主面に短パルスレーザを照射することで、上記第1主面から上記第2主面に向けて径が小さくなり、上記複数の内部電極が露出するテーパ面を含む貫通孔が形成される。
上記テーパ面及び上記第1主面にわたって延びる導電層を含む外部電極が形成される。
上記短パルスレーザは、例えばピコ秒レーザ又はフェムト秒レーザである。
【0015】
この製造方法により、上記の構成の積層セラミック電子部品が得られる。
また、この構成では、貫通孔の形成に短パルスレーザを用いることにより、アブレーション加工で貫通孔を形成することができる。したがって、セラミック素体に加わる熱の影響を抑制しつつ、より正確な形状に加工することができる。
更に、この構成では、焼成によって変形しにくい状態となったセラミック素体に貫通孔を形成するため、微細な貫通孔を形成可能となる。
加えて、この構成では、焼成後に形成される貫通孔のテーパ面に露出した内部電極に外部電極が接続される。このため、焼成時にセラミック素体に加わる熱の影響を受けることなく、内部電極と外部電極とを良好に接続することができる。
【0016】
焼成時の上記セラミック素体には、上記複数の内部電極が露出していなくてもよい。
この構成では、焼成時に内部電極が酸化することを防止することができる。
【0017】
上記セラミック素体に上記第1主面側からスパッタリングを行うことにより上記外部電極を形成してもよい。
この構成では、貫通孔のテーパ面が第1主面側に向けて広がっているため、第1主面側からのスパッタリングによって、テーパ面に沿った導電層を含む外部電極を良好に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
実装スペースを節約可能な積層セラミック電子部品及びその製造方法、並びに回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【
図2】上記積層セラミックコンデンサの
図1のA-A'線に沿った断面図である。
【
図3】上記積層セラミックコンデンサの
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【
図4】上記積層セラミックコンデンサの
図1のC-C'線に沿った断面図である。
【
図5】上記積層セラミックコンデンサの
図1のD-D'線に沿った断面図である。
【
図6A】上記積層セラミックコンデンサの実装時の状態を示す部分断面図である。
【
図6B】上記積層セラミックコンデンサの実装時の状態を示す部分断面図である。
【
図6C】上記積層セラミックコンデンサの実装時の状態を示す部分断面図である。
【
図7A】上記積層セラミックコンデンサの比較例の実装時の状態を示す部分断面図である。
【
図7B】上記積層セラミックコンデンサの比較例の実装時の状態を示す部分断面図である。
【
図7C】上記積層セラミックコンデンサの比較例の実装時の状態を示す部分断面図である。
【
図8】上記積層セラミックコンデンサの変形例の断面図である。
【
図9】上記積層セラミックコンデンサの変形例の実装時の状態を示す部分断面図である。
【
図10】上記積層セラミックコンデンサの変形例の斜視図である。
【
図11】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図12】ステップS01における未焼成のセラミック素体の積層状態を示す斜視図である。
【
図13】ステップS03におけるセラミック素体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0021】
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0022】
積層セラミックコンデンサ10は、厚さ(Z軸方向の寸法)が200μm以下の低背型として構成される。また、積層セラミックコンデンサ10では、例えば、長手方向(X軸方向)の寸法を0.5mm~2.0mmとすることができ、短手方向(Y軸方向)の寸法を0.2mm~1.0mmとすることができる。
【0023】
より具体的に、積層セラミックコンデンサ10のサイズは、例えば、0.6mm×0.3mm×50μm、1.0mm×0.5mm×80μm、1.6mm×0.8mm×100μmなどとすることができる。勿論、積層セラミックコンデンサ10は、これら以外にも様々なサイズとすることができる。
【0024】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を具備する。セラミック素体11は、積層セラミックコンデンサ10の本体として構成され、X軸方向に長尺に形成されている。外部電極14,15はそれぞれ、セラミック素体11の表面を部分的に覆っている。
【0025】
セラミック素体11は、X軸方向を向いた一対の側面と、Y軸方向を向いた一対の端面と、Z軸方向を向いた一対の第1主面M1及び第2主面M2と、を含む6面体形状を有する。なお、セラミック素体11は厳密に6面体形状でなくてもよく、例えば、セラミック素体11の各面が曲面であってもよい。
【0026】
セラミック素体11は、容量形成部16と、第1エンド部17と、第2エンド部18と、を有する。容量形成部16は、セラミック素体11のY軸方向の中央部に配置されている。エンド部17,18は、セラミック素体11における容量形成部16のY軸方向の両側に配置されている。
【0027】
セラミック素体11には、複数の第1内部電極12と、複数の第2内部電極13と、が設けられている。内部電極12,13は、いずれもX-Y平面に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って交互に配置されている。内部電極12,13は、セラミック素体11のいずれの外面にも露出していない。
【0028】
内部電極12,13は、容量形成部16においてZ軸方向に相互に対向している。第1内部電極12は、容量形成部16から第1エンド部17に延び、第2エンド部18には配置されていない。第2内部電極13は、容量形成部16から第2エンド部18に延び、第1エンド部17には配置されていない。
【0029】
内部電極12,13はそれぞれ、電気の良導体により形成され、積層セラミックコンデンサ10の内部電極として機能する。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金が用いられる。
【0030】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各誘電体セラミック層の静電容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0031】
なお、セラミック素体11は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)、酸化チタン(TiO2)などで構成してもよい。
【0032】
図1に示すように、セラミック素体11には、Z軸方向に貫通する第1貫通孔19及び第2貫通孔20が設けられている。第1貫通孔19は、第1エンド部17にX軸方向に沿って配列されている。第2貫通孔20は、第2エンド部18にX軸方向に沿って配列されている。外部電極14,15は、第1主面M1上の概ねエンド部17,18に相当する位置に配置されている。
【0033】
図4は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のC-C'線に沿った断面図である。つまり、
図4は、貫通孔19,20が設けられた位置における断面を示している。
図5は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のD-D'線に沿った断面図である。つまり、
図5は、第1エンド部17の断面を示している。
【0034】
貫通孔19,20の内面は、第1主面M1から第2主面M2に向けてX-Y平面に沿った径が小さくなるテーパ面19a,20aとして構成される。テーパ面19a,20aのX-Y平面に沿った形状は、典型的には円形又は楕円形であるが、これに限定されず、例えば多角形状などであってもよい。
【0035】
第1貫通孔19は、複数の第1内部電極12を貫通している。このため、第1貫通孔19のテーパ面19aには、第1内部電極12が露出している。また、第2貫通孔20は、複数の第2内部電極13を貫通している。このため、第2貫通孔20のテーパ面20aには、第2内部電極13が露出している。
【0036】
第1外部電極14は、第1導電層14aと、第2導電層14bと、を有する。第1導電層14aは、第1貫通孔19のテーパ面19aに沿って配置され、複数の第1内部電極12を接続している。第2導電層14bは、第1主面M1における第1エンド部17上の領域に配置され、全ての第1導電層14aをX軸方向に接続している。
【0037】
第2外部電極15は、第1導電層15aと、第2導電層15bと、を有する。第1導電層15aは、第2貫通孔20のテーパ面20aに沿って配置され、複数の第2内部電極13を接続している。第2導電層15bは、第1主面M1における第2エンド部18上の領域に配置され、全ての第1導電層15aをX軸方向に接続している。
【0038】
第1導電層14a,15aは、テーパ面19a,20aに沿って、所定の厚さで形成されている。このため、第1導電層14a,15aは、テーパ面19a,20aの形状に応じたテーパ形状を有し、貫通孔19,20を閉塞することなく、エンド部17,18をZ軸方向に貫通する空間を形成している。
【0039】
外部電極14,15はそれぞれ、電気の良導体により形成され、積層セラミックコンデンサ10の端子として機能する。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金を用いることができる。
【0040】
また、外部電極14,15は、多層膜として構成されていてもよい。例えば、外部電極14,15は、セラミック素体11側から、Cu,Ni,Snの順番で積層された多層膜とすることができる。また、セラミック素体11に対するコンタクトメタルとして、例えば、Ag,Ta,W,Cr,Pt,Tiを配置してもよい。
【0041】
上記の構成により、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15の間に電圧が印加されると、容量形成部16において内部電極12,13の間の複数の誘電体セラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15の間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0042】
積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15がセラミック素体11の短手方向であるY軸方向に対向しているため、外部電極14,15間の距離を小さく留めることができる。これにより、等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)を低減することができる。
【0043】
また、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15に複数の第1導電層14a,15aが設けられているため、外部電極14,15と内部電極12,13との接続面積が大きくなる。これにより、等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resonance)を低減することができる。
【0044】
なお、積層セラミックコンデンサ10の構成は、特定の構成に限定されず、積層セラミックコンデンサ10に求められるサイズや性能などに応じて、公知の構成を適宜採用可能である。例えば、各内部電極12,13の枚数や、内部電極12,13の間の誘電体セラミック層の厚さは、適宜決定可能である。
【0045】
[積層セラミックコンデンサ10の実装]
図6A~6Cは、積層セラミックコンデンサ10の配線基板100への実装時の状態を示す部分断面図である。より詳細に、
図6A~6Cは、配線基板100の基材101上にパターニングされた電極102に、積層セラミックコンデンサ10の外部電極14,15を半田Sで接合するプロセスを示している。
【0046】
積層セラミックコンデンサ10は、外部電極14,15が半田Sを介して配線基板100の電極102に接合される。なお、
図6A~6Cには第1エンド部17の第1外部電極14のみが示されているが、第2エンド部18の第2外部電極15についても第1外部電極14と同様の状態となる。
【0047】
まず、
図6Aに示すように、配線基板100の電極102上に半田Sが配置され、半田Sの上に外部電極14,15の第2導電層14b,15bが配置される。半田S上に外部電極14,15の第2導電層14b,15bが配置された状態で、リフロー炉などによって半田Sを溶融させると、半田Sが外部電極14,15に濡れ広がる。
【0048】
このとき、
図6Bに示すように、半田Sは、毛細管現象によって第1導電層14a,15aに沿って貫通孔19,20内をZ軸方向上方に吸い上げられる。これにより、
図6Cに示すように、半田Sが貫通孔19,20内に入り込む。そして、半田Sを凝固させることにより、回路基板Cが得られる。
【0049】
積層セラミックコンデンサ10では、貫通孔19,20のテーパ面19a,20aが、以下の点で、半田Sを貫通孔19,20内に良好に導きやすい形状となっている。まず1点目として、貫通孔19が第1主面M1側において大きく開口している。このため、半田Sが貫通孔19内にスムーズに進入することができる。
【0050】
2点目として、貫通孔19では、Z軸方向上方ほど径が小さくなっており、つまり半田Sの流路が狭くなっている。このため、貫通孔19内の半田Sが毛細管現象によって吸い上げられる力は、半田SがZ軸方向上方に進入するほど大きくなる。これにより、半田Sが貫通孔19内においてスムーズに吸い上げられる。
【0051】
図7A~7Cは、比較例に係る積層セラミックコンデンサ210の配線基板100への実装時の状態を示す部分断面図である。より詳細に、
図7A~7Cは、配線基板100の基材101上にパターニングされた電極102に、積層セラミックコンデンサ210を半田Sで接合するプロセスを示している。
【0052】
比較例に係る積層セラミックコンデンサ210では、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ210とは異なり、セラミック素体211に貫通孔が形成されておらず、セラミック素体211の第1主面M1からY軸方向を向いた端面に延びるL字型の外部電極214が設けられている。
【0053】
積層セラミックコンデンサ210では、まず
図7Aに示すように、配線基板100の電極102上に半田Sが配置され、半田Sの上に外部電極214が配置される。半田S上に外部電極214が配置された状態で、リフロー炉などによって半田Sを溶融させると、半田Sが外部電極214に沿って濡れ広がる。
【0054】
このとき、
図7Bに示すように、半田Sは、外部電極214が設けられたセラミック素体211のY軸方向を向いた端面に沿ってZ軸方向上方に濡れ上がる。そして、
図7Cに示すように、外部電極214のZ軸方向上部まで達した半田Sを凝固させることにより、比較例に係る回路基板C1が得られる。
【0055】
図7Cに示すように、回路基板C1に実装された積層セラミックコンデンサ210では、Y軸方向外側に向けて、半田Sが大きく張り出している。このため、積層セラミックコンデンサ210では、配線基板100上に半田Sを配置するための領域を別途確保する必要があり、これにより実装面積が大きくなる。
【0056】
この点、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10では、貫通孔19,20内に半田Sを形成することにより、半田Sを外側に張り出させることなく、外部電極14,15と半田Sとの接続面積を大きく確保することができる。このため、配線基板100上に半田Sのための領域を別途確保する必要がない。
【0057】
したがって、積層セラミックコンデンサ10では、回路基板Cにおける実装スペースを節約することができる。このため、積層セラミックコンデンサ10を用いることにより、回路基板Cの小型化を図ることができ、また回路基板Cにおける更なる高密度実装にも有利となる。
【0058】
なお、外部電極14,15の第1導電層14a,15aが設けられる貫通孔19,20の数や大きさなどの構成は、
図1等に示す構成に限定されず、外部電極14,15と半田Sとの接合強度や積層セラミックコンデンサ10自体の機械的強度などの観点から適宜決定可能である。
【0059】
[積層セラミックコンデンサ10の変形例]
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の構成は、上記に限定されず、必要に応じて変更を加えることができる。例えば、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極14,15の構成に適宜変更を加えることができる。以下、外部電極14,15の変形例について説明する。
【0060】
外部電極14,15は、
図7A等に示す構成と同様に、第2導電層14b,15bからセラミック素体11のY軸方向を向いた端面に沿って延びる導電層を有していてもよい。この場合にも、積層セラミックコンデンサ10では、半田Sが貫通孔19,20内に吸い込まれた分だけ、半田SのY軸方向への張り出しを抑制することができる。
【0061】
また、
図8に示すように、外部電極14,15は、第1導電層14a,15aからセラミック素体11の第2主面M2に沿って貫通孔19,20の周囲に延びる第3導電層14c,15cを有していてもよい。第3導電層14c,15cの作用によって、貫通孔19,20からセラミック素体11の第2主面M2に溢れた半田Sによる不具合の発生を防ぐことができる。
【0062】
つまり、
図9に示すように、貫通孔19,20から溢れた半田Sは、第3導電層14c,15cに濡れ広がる。これにより、セラミック素体11の第2主面M2上において、半田SをZ軸方向に張り出させることなく、平坦に留めることができる。このため、積層セラミックコンデンサ10では、実装スペースが増大しにくい。
【0063】
また、貫通孔19,20から溢れた半田Sは、第3導電層14cで確実に捕捉される。このため、積層セラミックコンデンサ10では、貫通孔19,20から溢れた半田Sが、導電性の異物として、回路基板Cやこれを搭載する電子機器などに混入することを防止することができる。
【0064】
更に、積層セラミックコンデンサ10では、複数の貫通孔19,20が配列された構成でなくてもよく、
図10に示すように、貫通孔19,20が1つずつ設けられた構成であってもよい。この場合、貫通孔19,20の位置は任意に決定可能であり、貫通孔19,20の形状も任意に決定可能である。
【0065】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図11は、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図11に沿って、
図12,13を適宜参照しながら説明する。
【0066】
(ステップS01:セラミック素体作製)
ステップS01では、未焼成のセラミック素体11を作製する。未焼成のセラミック素体11は、
図12に示すように、複数のセラミックシートをZ軸方向に積層して熱圧着することにより得られる。セラミックシートに予め所定のパターンの導電性ペーストを印刷しておくことにより、内部電極12,13を配置することができる。
【0067】
図12に示すように、内部電極12,13は、X軸方向を向いた側面及びY軸方向を向いた端面から間隔をあけてパターニングされる。これにより、ステップS01で得られるセラミック素体11では、内部電極12,13が誘電体セラミックスに内包され、内部電極12,13が外面に露出しない。
【0068】
(ステップS02:焼成)
ステップS02では、ステップS01で得られたセラミック素体11を焼成する。ステップS02によって、セラミック素体11を構成する誘電体セラミックス及び内部電極12,13が焼結する。ステップS02には、例えば、脱バインダ工程、本焼成工程、再酸化工程などの複数の熱処理工程を含めることができる。
【0069】
脱バインダ工程では、未焼成のセラミック素体11に含まれるバインダなどの有機成分を除去する。本焼成工程では、セラミック素体11を焼結させる。再酸化工程では、セラミック素体11を酸化性雰囲気で熱処理することにより、本焼成工程後においてセラミック素体11に欠損している酸素を補う。
【0070】
ステップS02では、セラミック素体11の外面に内部電極12,13が露出していると、特に再酸化工程において内部電極12,13が酸化する。しかし、本実施形態に係るステップS02では、内部電極12,13がセラミック素体11の外面に露出していないため、内部電極12,13の酸化を防止することができる。
【0071】
このため、本実施形態に係るステップS02では、内部電極12,13の酸化を考慮することなく、高い物性が得られるようにセラミック素体11の各熱処理工程の条件を決定可能である。このため、誘電体セラミックスの比誘電率などのセラミック素体11の物性を充分に高めることができる。
【0072】
(ステップS03:貫通孔形成)
ステップS03では、ステップS02で焼成されたセラミック素体11に、
図1,4,5に示す貫通孔19,20を形成する。ステップS03では、セラミック素体11の第1主面M1に短パルスレーザを照射する。短パルスレーザとしては、例えばピコ秒レーザやフェムト秒レーザを用いることができる。
【0073】
短パルスレーザを用いることにより、セラミック素体11を構成する誘電体セラミックスや内部電極12,13を溶融させずに昇華させるアブレーション加工で貫通孔19,20を形成することができる。したがって、セラミック素体11に加わる熱の影響を抑制しつつ、より正確な形状に加工することができる。
【0074】
ステップS03では、セラミック素体11の第1主面M1側から短パルスレーザを照射することにより、第1主面M1から第2主面M2に向けて狭まるテーパ面19a,20aを有する貫通孔19,20を形成することができる。短パルスレーザによる加工方法としては、パーカッション掘削工法やトレパニング工法などを採用可能である。
【0075】
図13は、短パルスレーザを照射可能なレーザ照射装置300を利用した貫通孔19,20の形成方法を示している。
図13に破線矢印で示すように、レーザ照射装置300をX軸方向及びY軸方向に順次移動させることにより、セラミック素体11に全ての貫通孔19,20を形成することができる。
【0076】
ステップS03では、ステップS01で予めセラミックシートが積層されたセラミック素体11に一括して貫通孔19,20が形成される。このため、積層前の各セラミックシートに貫通孔19,20を形成する構成とは異なり、各セラミックシート間での貫通孔19,20の位置ずれが発生しない。
【0077】
したがって、ステップS03では、短パルスレーザを照射する位置精度によらずに、Z軸方向に貫通した貫通孔19,20が得られる。このため、セラミック素体11に形成する貫通孔19,20を小径にすることが可能となる。これにより、積層セラミックコンデンサ10の設計自由度が向上する。
【0078】
また、ステップS03では、ステップS02で焼成されたセラミック素体11に貫通孔19,20が形成される。このため、柔らかく変形しやすい未焼成のセラミック素体11に貫通孔19,20を形成する構成よりも、貫通孔19,20を正確な形状に加工することができる。このため、小径の貫通孔19,20を形成しやすい。
【0079】
これらにより、セラミック素体11の第1主面M1における貫通孔19,20の径は、例えば、30μm以下とすることができ、また20μm以下とすることができ、更に10μm以下とすることができる。また、貫通孔19,20のX軸方向における間隔は、例えば、100μm程度とすることができる。
【0080】
(ステップS04:外部電極形成)
ステップS04では、ステップS03で貫通孔19,20が形成されたセラミック素体11に外部電極14,15を形成することにより、
図1~5に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。外部電極14,15は、例えば、セラミック素体11に第1主面M1側からスパッタリングを行うことにより形成可能である。
【0081】
第1主面M1側からスパッタリングを行うことにより、セラミック素体11の第1主面M1に第2導電層14b,15bが形成される。また、貫通孔19,20内に入り込んだ金属原子によって、第1主面M1側を向いたテーパ面19a,20aに第1導電層14a,15aが形成される。
【0082】
これにより、第1主面M1及びテーパ面19a,20aにわたって延びる外部電極14,15が形成される。なお、外部電極14,15の形成方法は、スパッタリングに限定されず、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)などであってもよい。また、スパッタリングなどの乾式プロセスに、湿式めっきなどの湿式プロセスを組み合わせて外部電極14,15を形成してもよい。
【0083】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0084】
例えば、上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10について説明したが、本発明は外部電極を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0085】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
12,13…内部電極
14,15…外部電極
14a,15a…第1導電層
14b,15b…第2導電層
14c,15c…第3導電層
16…容量形成部
17,18…エンド部
19,20…貫通孔
19a,20a…テーパ面
M1,M2…主面
S…半田