(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】シャワー装置及びシャワーシステム
(51)【国際特許分類】
A47K 3/28 20060101AFI20220712BHJP
A47K 3/12 20060101ALI20220712BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A47K3/28
A47K3/12
A61H33/00 310P
A61H33/00 310J
(21)【出願番号】P 2018096605
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】細田 良造
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】鳩原 匡人
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-318742(JP,A)
【文献】特開平11-318741(JP,A)
【文献】特開2003-235749(JP,A)
【文献】特開2003-265349(JP,A)
【文献】特開2007-054544(JP,A)
【文献】特開2006-263150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/20-3/40
A47K 3/12
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から水が供給される接続部を有する本体と、
第1方向に延びる軸線周りに基端部が前記本体に回転可能に支持され、前記接続部から内部に供給された前記水を外部に吐出する吐出孔が形成された第1腕部
及び第2腕部と、
を備え、
前記第1腕部の特定状態では、前記第1腕部の少なくとも一部は、前記第1方向に交差する第2方向の一方側に延び
るとともに、L字状に鈍角で折れた形状であり、
前記第2腕部の特定状態では、前記第2腕部の少なくとも一部は、前記第2方向の前記一方側に延びるとともに、L字状に鈍角で折れた形状であり、
前記第1腕部
及び前記第2腕部は、前記特定状態よりも前記第1腕部
及び前記第2腕部の先端部が上方に位置する跳ね上げ状態に
それぞれ回転可能であることを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
前記跳ね上げ状態の前記第1腕部の先端部は、前記第1腕部の自重により下がるように構成されている請求項1に記載のシャワー装置。
【請求項3】
前記跳ね上げ状態の前記第1腕部の先端部が上がるのを規制する規制部を備える請求項1又は2に記載のシャワー装置。
【請求項4】
前記第1腕部の基端部及び前記第2腕部の基端部は、前記本体を前記第1方向に挟むように配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載のシャワー装置。
【請求項5】
前記第1腕部及び前記第2腕部の前記L字状に鈍角で折れた形状は、連結部を含んでそれぞれ構成されている請求項1から4のいずれか一項に記載のシャワー装置。
【請求項6】
前記連結部は、連結部本体と、鍔部と、環状部材と、を有している請求項5に記載のシャワー装置。
【請求項7】
前記連結部は、軟質の材料で一体形成されている請求項5又は6に記載のシャワー装置。
【請求項8】
請求項1
から7のいずれか一項に記載のシャワー装置と、
使用者が座る椅子と、
を備え、
前記椅子の背もたれ部に、前記シャワー装置の前記本体が取付けられることを特徴とするシャワーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー装置及びシャワーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者が座った状態でシャワーを浴びるためのシャワーシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1において、シャワーシステムは、椅子と、シャワーユニット(シャワー装置)と、を備えている。
【0003】
シャワーユニットは、本体と、首当て部と、腰当て部と、一対のアーム(第1腕部)と、を備えている。本体は、縦長略楕円板状に形成され、椅子の背面に取付けられている。首当て部は、本体の上端に取付けられている。腰当て部は、本体の下端に取付けられている。一対のアームは、本体に対して前後回動可能に取付けられている。一対のアームは、本体の上部の両側に本体側部に沿わせた収納状態(退避状態)と、前方に倒して差し出した使用状態(特定状態)との間で回動可能である。
本体、首当て部、腰当て部、及び一対のアームには、首振り回動可能にシャワーノズル(吐出孔)が取付けられている。
【0004】
このように構成されたシャワーシステムを使用するには、まず、使用者はシャワーシステムを浴室の所望の位置に設置する。浴室のカランのシャワー経路から分岐したシャワーホースをシャワーユニットに接続する。一対のアームを回動させて側方に広げて、使用状態にする。使用者は、シャワーシステムの椅子に座り、一対のアームのシャワーノズルから温水を噴出させる。
このようにして、使用者は、椅子に座った状態でシャワーを浴びる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のシャワーシステムでは、アームが使用状態だと使用者がシャワー装置から脱出しにくい。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、特定状態である第1腕部から使用者が容易に脱出可能なシャワー装置、及びこのシャワー装置を備えるシャワーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のシャワー装置は、外部から水が供給される接続部を有する本体と、第1方向に延びる軸線周りに基端部が前記本体に回転可能に支持され、前記接続部から内部に供給された前記水を外部に吐出する吐出孔が形成された第1腕部及び第2腕部と、を備え、前記第1腕部の特定状態では、前記第1腕部の少なくとも一部は、前記第1方向に交差する第2方向の一方側に延びるとともに、L字状に鈍角で折れた形状であり、前記第2腕部の特定状態では、前記第2腕部の少なくとも一部は、前記第2方向の一方側に延びるとともに、L字状に鈍角で折れた形状であり、前記第1腕部及び前記第2腕部は、前記特定状態よりも前記第1腕部及び前記第2腕部の先端部が上方に位置する跳ね上げ状態にそれぞれ回転可能であることを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、使用者は、例えば椅子の背もたれ部にシャワー装置の本体を取付ける。背もたれ部に対する第2方向の一方側(背もたれ部に対して座部が配置されている側)で椅子に座り、第1腕部を特定状態にして、接続部から供給され第1腕部における背もたれ部よりも第2方向の一方側に延びている部分の吐出孔から吐出する水に当たることによりシャワーを浴びる。
この際に、緊急事態が発生したため等により、シャワーシステムから使用者が脱出する場合には、例えば使用者は第1腕部の先端部を上方に移動させて、第1腕部を跳ね上げ状態にする。例えば使用者は椅子から立ち上がるが、椅子における使用者が座っている座部から第1腕部の先端部までの距離が上下方向に広がったため、使用者は座部と第1腕部の先端部との間を通して椅子から容易に立ち上がることができる。従って、特定状態である第1腕部から使用者が容易に脱出することができる。
【0010】
また、上記のシャワー装置において、前記跳ね上げ状態の前記第1腕部の先端部は、前記第1腕部の自重により下がるように構成されていてもよい。
この発明によれば、跳ね上げ状態にした第1腕部から手等を放すだけで、第1腕部に作用する重力により、第1腕部の先端部を自動的に下げることができる。
【0011】
また、上記のシャワー装置において、前記跳ね上げ状態の前記第1腕部の先端部が上がるのを規制する規制部を備えてもよい。
この発明によれば、第1腕部の先端部が跳ね上げ状態よりも上がるのを規制し、第1腕部の先端部が上がり過ぎて第1腕部が損傷するのを抑制することができる。
【0012】
また、上記のシャワー装置において、前記第1腕部の基端部及び前記第2腕部の基端部は、前記本体を前記第1方向に挟むように配置されていてもよい。
この発明によれば、第1腕部の吐出孔から吐出する水だけでなく、第1腕部とともに本体を第1方向に挟んだ第2腕部の吐出孔から吐出する水により、使用者にシャワーを浴びさせることができる。
また、上記のシャワー装置において、前記第1腕部及び前記第2腕部の前記L字状に鈍角で折れた形状は、連結部を含んでそれぞれ構成されていてもよい。
また、上記のシャワー装置において、前記連結部は、連結部本体と、鍔部と、環状部材と、を有していてもよい。
【0013】
また、上記のシャワー装置において、前記連結部は、軟質の材料で一体形成されていてもよい。
また、本発明のシャワーシステムは、前記のいずれかに記載のシャワー装置と、使用者が座る椅子と、を備え、前記椅子の背もたれ部に、前記シャワー装置の前記本体が取付けられることを特徴としている。
この発明によれば、特定状態である第1腕部から使用者が容易に脱出可能なシャワー装置を用いてシャワーシステムを構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシャワー装置及びシャワーシステムによれば、特定状態である第1腕部から使用者が容易に脱出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態のシャワーシステムにおいて、両シャワーアームが使用状態のときの斜視図である。
【
図3】同シャワーシステムの第1シャワーアームの斜視図である。
【
図4】
図3中の切断線A2-A2の断面図を模式的に示す図である。
【
図5】同第1シャワーアームの連結部材における側面図である。
【
図7】支持部と第1シャワーアームとの軸線周りの接続部分を、直線状に展開した模式図である。
【
図8】同シャワーシステムにおいて、両シャワーアームが退避状態のときの側面図である。
【
図9】同シャワーシステムにおいて、両シャワーアームが退避状態のときの正面図である。
【
図10】同シャワーシステムにおいて、両シャワーアームが跳ね上げ状態のときの側面図である。
【
図11】同シャワーシステムにおいて、両シャワーアームが使用状態のときの側面図である。
【
図12】同シャワーシステムにおいて、両シャワーアームが使用状態のときの正面図である。
【
図13】同シャワーシステムを用いて使用者がシャワーを浴びている状態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るシャワーシステムの一実施形態を、
図1から
図13を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態のシャワーシステム1は、椅子11と、シャワー装置41と、を備えている。
椅子11には、公知の椅子を用いることができる。椅子11は、浴室等でも使用可能なように、耐水性を有することが好ましい。例えば、椅子11は、脚部12と、座部13と、背もたれ部14と、肘掛け15と、を備えている。
以下では、椅子11に座る使用者にとっての左右方向(第1方向)X、前後方向(第2方向)Yを基準にして説明する。左右方向Xは、水平面に沿う方向である。前後方向Yは、水平面に沿い、かつ左右方向Xに直交する方向である。左右方向Xの一方側が右側X1であり、左右方向Xの他方側が左側X2である。前後方向Yの一方側が前方Y1であり、前後方向Yの他方側が後方Y2である。
【0017】
座部13は、一対の座板17と、一対の座板17を連結する連結部材18と、を備えている。
座板17は、厚さ方向が上下方向Zとなる板状に形成されている。座板17は、上下方向Zから見た平面視で矩形状を呈している。一対の座板17は、左右方向Xに互いに間隔を空けて並べて配置されている。
連結部材18は、前後方向Yから見たときに、上方が開口するU字状を呈している。連結部材18は、前後方向Yに延び、一対の座板17の下方に配置されている。連結部材18は、一対の座板17の下面同士を連結している。
一対の座板17及び連結部材18は、例えば樹脂により一体に形成されている。
【0018】
一対の座板17の後端部には、後脚21の上端部がそれぞれ固定されている。例えば、後脚21は、アルミニウム、ステンレス等の管材で形成されている。後脚21は、下方に向かうに従い漸次、後方Y2に向かうように傾斜している。一対の後脚21は、左右方向Xに互いに間隔を空けて並べて配置されている。各後脚21の下端部には、樹脂製のキャップ22が取付けられている。
一対の後脚21は、連結部材23により互いに連結されている。
【0019】
一対の後脚21の上端部には、アルミニウム、ステンレス等の硬質の管材でU字状に形成されたフレーム26が回転可能に接続されている。より詳しく説明すると、フレーム26は、左右方向Xに互いに間隔を空けて並べて配置された一対の支持片27と、一対の支持片27の上部同士を接合する連結片28と、を備えている。
支持片27は、下方に向かうに従い漸次、前方Y1に向かうように傾斜している。各支持片27は、長手方向の中間部で、ヒンジ29(一方のヒンジ29は不図示)により後脚21の上端部に回転可能に支持されている。支持片27は、後脚21の上端部に対して左右方向Xに沿う軸線周りに回転可能である。なお、後脚21と支持片27との角度は、所定の角度以上には開かないように、ヒンジ29により規制されている。
各支持片27の下端部には、樹脂製のキャップ32が取付けられている。
【0020】
一対の支持片27は、連結部材30により互いに連結されている。連結部材30は、棒状に形成され、左右方向Xに延びている。なお、一対の支持片27におけるヒンジ29よりも下方の部分、及び一対の後脚21により、脚部12が構成される。
連結片28は、左右方向Xに延びている。なお、連結片28を硬質の樹脂で形成してもよい。
【0021】
図1及び
図2に示すように、連結片28の前方Y1には、背板36が配置されている。背板36は、上下方向Zから見たときに、後方Y2に向かって凸となるように湾曲している。背板36は、フレーム26の連結片28に、図示しないボルト等により固定されている。なお、背板36、連結片28、及び一対の支持片27におけるヒンジ29よりも上方の部分により、背もたれ部14が構成される。前述の座部13は、背もたれ部14の前方Y1に配置されている。
【0022】
肘掛け15は、本実施形態では椅子11に一対備えられている。肘掛け15は、前後方向Yに延びている。一対の肘掛け15は、左右方向Xに互いに間隔を空けて並べて配置されている。各肘掛け15の後端部は、支持片27におけるヒンジ29よりも上方の部分に回転可能に支持されている。肘掛け15は、左右方向Xに沿う軸線周りに回転可能である。
肘掛け15は、
図1に示す状態から上方に回転可能であるが、
図1に示す状態から下方に回転するのが規制されている。
【0023】
このように構成された椅子11は、
図1に示す展開状態から折り畳み可能である。具体的には、一対の支持片27をヒンジ29周りに回転させ、一対の後脚21に対して一対の支持片27をほぼ平行に配置する。各肘掛け15の前端部を上方に移動させ、一対の肘掛け15を一対の支持片27に対してほぼ平行に配置する。
以上の工程により、椅子11を折り畳まれた折り畳み状態になる。なお、椅子11は折り畳みできなくてもよく、肘掛け15を備えなくてもよい。
【0024】
シャワー装置41は、本体42と、第1シャワーアーム(第1腕部)43A及び第2シャワーアーム(第2腕部)43Bと、接続部44と、を備えている。なお、
図1に示すシャワーアーム43A,43Bは、後述する使用状態P1A,P1Bである。
シャワーアーム43A,43Bは、本体42を左右方向Xに挟むように配置されている。第1シャワーアーム43Aは本体42の右側X1に配置され、第2シャワーアーム43Bは本体42の左側X2に配置されている。
本実施形態では、第1シャワーアーム43Aの構成と第2シャワーアーム43Bの構成とは、シャワーアーム43A,43Bの間に左右方向Xに直交するように規定される基準面に対して面対称である。このため、第1シャワーアーム43Aの構成を、数字、又は数字及び英小文字に英大文字「A」を付加することで示す。第2シャワーアーム43Bのうち第1シャワーアーム43Aに対応する構成を、第1シャワーアーム43Aと同一の数字、又は数字及び英小文字に英大文字「B」を付加することで示す。これにより、重複する説明を省略する。例えば、第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aと第2シャワーアーム43Bの先端部材46Bとは、互いに面対称となる構成である。
【0025】
図3及び
図4に示すように、第1シャワーアーム43Aは、先端部材(先端部)46Aと、連結部材(連結部)47Aと、基端部材(基端部)48Aと、を備えている。なお、
図3では、本体42を二点鎖線で示している。
図4では、先端部材46Aの断面形状を模式的に示している。
先端部材46Aは、先端部が封止された管状に形成されている。先端部材46Aは、前方Y1に向かうに従い漸次、下方に向かうように傾斜している。先端部材46Aには、先端部材46Aの壁部を貫通する吐出孔50Aが形成されている。吐出孔50Aは、先端部材46Aの内部に供給された水Wを外部に吐出する。なお、本明細書における水は、温度が高い、低いによらない一般的な水のことを意味し、常温の水、及びシャワー等に用いられる温度の湯等を含む意味である。
なお、吐出孔50Aが形成されている向きについては、後述する。
【0026】
図5に示すように、先端部材46Aの後端部の内周面には、連結溝(嵌合部)51Aが形成されている。なお、
図5及び後述する
図6では、先端部材46A及び基端部材48Aを二点鎖線で示している。連結溝51Aは、先端部材46Aの内周面の全周にわたって形成されている。
先端部材46Aは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等の比較的硬質の材料で形成されている。
【0027】
図5及び
図6に示すように、連結部材47Aは、連結部本体(本体部)56Aと、先端側鍔部(被嵌合部)57Aと、基端側鍔部(被嵌合部)58Aと、を備えている。
連結部本体56Aは、円筒状に形成されている。連結部本体56Aは、前方Y1と上方との間の向きに向かって凸となるように湾曲している。
連結部本体56Aの前端部(連結部本体56Aの軸線方向の端部)には、環状部材59Aが同軸に固定されている。環状部材59Aの内径及び連結部本体56Aの前端部の内径は、互いに同等である。環状部材59Aの外径は、連結部本体56Aの前端部の外径よりも小さい。先端側鍔部57Aは、環状部材59Aの前端部における外周面に設けられている。先端側鍔部57Aは、環状部材59Aの外周面から、環状部材59Aの径方向外側に向かって突出している。先端側鍔部57Aの外径は、連結部本体56Aの前端部の外径よりも小さい。先端側鍔部57Aは、環状部材59Aの全周にわたって形成されている。先端側鍔部57Aの前端部は、前方Y1に向かうに従い漸次、外径が小さくなる。
先端側鍔部57Aは、先端部材46Aの連結溝51Aに嵌合している。先端側鍔部57A及び連結溝51Aという簡単な構成で、連結部材47Aと先端部材46Aとが嵌合している。
【0028】
連結部本体56Aの後端部(連結部本体56Aの軸線方向の端部)には、環状部材60Aが同軸に固定されている。環状部材60Aの内径及び連結部本体56Aの後端部の内径は、互いに同等である。環状部材60Aの外径は、連結部本体56Aの後端部の外径よりも小さい。基端側鍔部58Aは、環状部材60Aの後端部における外周面に設けられている。基端側鍔部58Aは、環状部材60Aの外周面から、環状部材60Aの径方向外側に向かって突出している。基端側鍔部58Aの外径は、連結部本体56Aの後端部の外径よりも小さい。基端側鍔部58Aは、環状部材60Aの全周にわたって形成されている。基端側鍔部58Aの後端部は、後方Y2に向かうに従い漸次、外径が小さくなる。
連結部材47Aを構成する連結部本体56A、鍔部57A,58A、及び環状部材59A,60Aは、エラストマー、軟質ウレタン、ゴム等の比較的軟質の材料で一体に形成されている。
【0029】
なお、連結部本体56Aの内周面に、防水用のシート(フィルム)を配置してもよい。
連結部材47Aを軟質ウレタン樹脂等を用いて発泡により形成する場合には、連結部材47Aの外面に発泡倍率が低いスキン層が形成される。このスキン層により、水漏れを防止してもよい。
【0030】
図3及び
図5に示すように、基端部材48Aは、基端部本体64Aと、連結部材65Aと、環状部材66Aと、連結鍔部67Aと、を備えている。
基端部本体64Aは、管状に形成されている。
図5に示すように、基端部本体64Aの前端部の内周面には、連結溝(嵌合部)69Aが形成されている。連結溝69Aは、基端部本体64Aの内周面の全周にわたって形成されている。この連結溝69Aは、連結部材47Aの基端側鍔部58Aに嵌合している。連結部材47Aは、先端部材46Aと基端部材48Aとを連結している。
基端部本体64Aには、先端部材46Aと同様に吐出孔50Aが形成されていることが好ましい。
図3に示すように、連結部材65Aは、基端部本体64Aの後端部に固定されている。連結部材65Aにおける左側X2の外面65aAには、環状部材66Aが固定されている。環状部材66Aの軸線(第1軸線)70Aは、連結部材65Aの外面65aAに直交している。環状部材66A内の流路は、連結部材65Aの内部空間を介して基端部本体64Aの管路に連通している。
【0031】
連結鍔部67Aは、環状部材66Aの左端部における外周面に設けられている。連結鍔部67Aは、環状部材66Aの外周面から、環状部材66Aの径方向外側に向かって突出している。連結鍔部67Aは、環状部材66Aの外周面の全周にわたって形成されている。
基端部材48Aを構成する基端部本体64A、連結部材65A、環状部材66A、及び連結鍔部67Aは、先端部材46Aと同一の材料で形成されている。
このように、先端部材46A及び基端部材48Aよりも、連結部材47Aが柔らかく、変形させやすい。本実施形態では、第1シャワーアーム43Aは、L字状に鈍角で折れた形状である。
【0032】
図1に示すように、第2シャワーアーム43Bは、第1シャワーアーム43Aの先端部材46A、連結部材47A、基端部材48Aと面対称に構成された先端部材46B、連結部材47B、基端部材48Bを備えている。
シャワーアーム43A,43Bの基端部材48A,48B間の距離は、使用者の肩幅程度の長さであることが好ましい。
【0033】
本体42は、フレーム76と、支持部77と、を備えている。
フレーム76は、アルミニウム、ステンレス等の管材でU字状に形成されている。より詳しく説明すると、フレーム76は、左右方向Xに互いに間隔を空けて並べて配置された一対の支持片79と、一対の支持片79の下端部同士を接合する連結片80と、を備えている。
一対の支持片79は、上下方向Zに延びている。連結片80は、一対の支持片79の下端部において、左右方向Xに延びている。
一対の支持片79の上端部は、支持部77に固定されている。
【0034】
図2に示すように、一対の支持片79は、連結片28の後面に接触している。一対の支持片79は、後方Y2から連結金具82により覆われている。連結金具82の前面には、一対の支持片79を収容するための凹部82aが形成されている。連結金具82を通してフレーム26の連結片28に嵌め合うボルト83により、一対の支持片79が椅子11の背もたれ部14に取付けられている。
一方で、連結片28とボルト83との嵌め合いを解除することにより、背もたれ部14から一対の支持片79が取外される。このように、本体42は背もたれ部14に着脱可能であり、背もたれ部14に対して上下方向Zに移動可能である。
なお、シャワー装置41の本体42は、椅子11の背もたれ部14に着脱できない状態で固定されていてもよい。
【0035】
図3に示すように、支持部77の右端部では、支持部77内に形成された流路77aが開口している。前記開口近くの流路77aの軸線は、第1シャワーアーム43Aの環状部材66Aの軸線70Aに一致している。
この流路77aの軸線、すなわち軸線70Aは、
図12に示すシャワーシステム1の正面視において、左右方向Xに延びている。より詳しく説明すると、軸線70Aは、上方に向かうに従い漸次、右側X1に向かうように傾斜している。軸線70A、及び第2シャワーアーム43Bに対する軸線70Bは、上方に向かうに従い互いに離間するように、上下方向Zに対して互いに逆方向に傾いている。言い換えれば、軸線70A,70Bは、上下方向Zに沿う基準線L3に対して互いに逆方向に傾いている。例えば、基準線L3と軸線70Aとが上方になす角度θAは、60°程度である。
【0036】
軸線70A,70Bは、
図11に示すシャワーシステム1の側面視において、上下方向Zに沿って延びている。なお、軸線70Aは、シャワーシステム1の側面視において、上方に向かうに従い漸次、前方Y1に向かうように傾斜していてもよい。
図3に示すように、支持部77のうち、前記開口近くの流路77aの内周面には、本体溝86Aが形成されている。本体溝86Aは、流路77aの内周面の全周にわたって形成されている。本体溝86Aに第1シャワーアーム43Aの連結鍔部67Aが嵌合している。
本体溝78A内で連結鍔部67Aが軸線70A周りに回転することにより、第1シャワーアーム43Aは、支持部77に対して軸線70A周りに回転可能に支持されている。同様に、第2シャワーアーム43Bは、支持部77に対して軸線70B周りに回転可能に支持されている。
【0037】
図7は、支持部77と第1シャワーアーム43Aとの軸線70A周りの接続部分を、直線状に展開した模式図である。支持部77における前記開口近くの外面87Aは、第1シャワーアーム43Aにおける連結部材65Aの外面65aAに対向している。
【0038】
図7に示す支持部77に対する連結部材65Aの位置関係のときに、
図1に示すように第1シャワーアーム43Aは使用状態(特定状態)P1Aである。第1シャワーアーム43Aが使用状態P1Aのときから、
図7において、支持部77に対して第1シャワーアーム43Aが方向D1に移動することは、
図1に示すように支持部77に対して第1シャワーアーム43Aが軸線70A周りの方向D3に回転することを意味する。このとき、第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aが下がり、第1シャワーアーム43Aは
図8及び
図9に示す退避状態P0Aになる。なお、
図9は、シャワーアーム43A,43Bが退避状態P0A,P0Bのシャワーシステム1を前後方向Yから見たときの図(正面図)である。
例えば、使用状態P1Aから退避状態P0Aまでの第1シャワーアーム43Aの軸線70A周りの回転角度は、70°である。
【0039】
一方で、第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aが使用状態P1Aのときから、
図7において、支持部77に対して第1シャワーアーム43Aが方向D2に移動することは、
図1に示すように支持部77に対して第1シャワーアーム43Aが軸線70A周りの方向D4に回転することを意味する。このとき、第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aが上がり、
図10に示す跳ね上げ状態P2Aになる。
同様に、第2シャワーアーム43Bは、
図1に示す使用状態(特定状態)P1Bから先端部材46Bが下がると、
図8及び
図9に示す退避状態P0Bになる。
図1に示す使用状態P1Bから先端部材46Bが上がると、
図10に示す跳ね上げ状態P2Bになる。
【0040】
このように、シャワーアーム43A,43Bの基端部材48A,48Bは、本体42を左右方向Xに挟むように本体42に回転可能に支持されている。そして、第1シャワーアーム43Aの基端部材48Aは、本体42の右端部において、軸線70A周りに回転可能に支持されている。同様に、第2シャワーアーム43Bの基端部材48Bは、本体42の左端部において、軸線70B周りに回転可能に支持されている。
以下では、支持部77と第1シャワーアーム43Aとの接続部分の詳細について説明する。
【0041】
図7に示すように、支持部77の外面87Aには、外面87Aから突出した一対の突起90A,91Aが設けられている。突起90Aは、外面87Aにおける方向D1側に配置され、突起91Aは、外面87Aにおける方向D2側に配置されている。
図7は、支持部77の軸線70A周りの形状を展開した形状であるため、実際には、突起90A,91Aは、支持部77の外面87Aに軸線70A周りに互いに間隔を空けて並べて配置されている。
支持部77の外面87Aには、凹部93A,94Aが形成されている。凹部93Aは、突起90Aと突起91Aとの間の外面87Aのうち、突起90A寄りの端部に形成されている。凹部94Aは、外面87Aのうち、突起90Aと突起91Aとの中間部に形成されている。
【0042】
外面87Aにおける凹部94Aに対して方向D2側に隣接する部分には、板バネ96Aが固定されていることが好ましい。板バネ96Aは、凹部94Aよりも方向D2側に配置されている。
板バネ96Aの方向D2側の端部は、支持部77の外面87Aに固定されている。一方で、板バネ96Aの方向D1側の端部は、板バネ96Aに外力が作用しない自然状態で外面87Aから離間している。板バネ96Aの方向D1側の端部を外面87Aに向かって付勢すると、板バネ96Aは弾性的に変形し、
図7中に二点鎖線による線L1で示すように、板バネ96Aの方向D1側の端部が外面87Aに接触する。また、この付勢力を解放すると、板バネ96Aは元の形状に弾性復帰する。
【0043】
第1シャワーアーム43Aの連結部材65Aの外面65aAには、突起98Aが形成されている。なお、この突起98A、及び前述の支持部77の突起91Aにより、跳ね上げ状態P2Aの第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aが上がるのを規制する規制部95Aが構成される。
突起98Aは、支持部77の一対の突起90A,91Aの間に配置されている。支持部77に対して第1シャワーアーム43Aが方向D1に移動すると、突起90Aに突起98Aが係止して、第1シャワーアーム43Aがこれ以上、方向D1に移動できなくなる。一方で、支持部77に対して第1シャワーアーム43Aが方向D2に移動すると、突起91Aに突起98Aが係止して、第1シャワーアーム43Aがこれ以上、方向D2に移動できなくなる。
【0044】
突起98Aの先端部には、バネ等の付勢部99Aを介して係止部100Aが固定されている。
例えば、係止部100Aは、球状に形成されている。係止部100Aは、支持部77の一対の凹部93A,94Aにそれぞれ係止可能である。一方で、係止部100Aは、支持部77の外面87Aに接触していても、この外面87Aに対して滑らかに(抵抗無く)方向D1及び方向D2に移動することができる。
付勢部99Aは、突起98Aに対して係止部100Aを支持部77の外面87Aに向かって付勢する。
【0045】
図7に示す状態では、支持部77の凹部94Aに係止部100Aが係止している。このとき、第1シャワーアーム43Aは使用状態P1Aである。
このため、使用状態P1Aである第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aを上げたり下げたりするのには、付勢部99Aの付勢力に抗して付勢部99Aを突起98Aに向かって押し返して縮ませる必要がある。すなわち、使用状態P1Aである第1シャワーアーム43Aを軸線70A周りに回転させるためには、付勢部99Aを縮ませる力が必要であり、支持部77の凹部94Aにより第1シャワーアーム43Aの使用状態P1Aが位置決めされている。
【0046】
さらに、板バネ96Aを備えるため、使用状態P1Aである第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aを上げるためには、板バネ96Aの方向D1側の端部を外面87Aに向かって変形させる必要がある。使用状態P1Aである第1シャワーアーム43Aが使用者の意図することなく跳ね上げ状態P2Aにならないように、シャワー装置41に板バネ96Aが備えらている。
係止部100Aが、凹部94A及び板バネ96Aを一度方向D2側に越えると、第1シャワーアーム43Aを方向D2に移動させるのに、付勢部99A又は板バネ96Aを変形させる必要が無くなる。すなわち、第1シャワーアーム43Aを軸線70A周りに容易に回転できるようになる。
【0047】
図11、
図12に、シャワーアーム43A,43Bが使用状態P1A,P1Bであるときのシャワーシステム1の側面図、正面図をそれぞれ示す。シャワーシステム1のシャワーアーム43A,43Bは、使用者が椅子11の座部13に座り、使用状態P1A,P1Bにしたうえで使用される。使用状態P1A,P1Bのシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bは、
図8及び
図9に示す退避状態P0A,P0Bの先端部材46A,46Bよりも位置が上がっている。
【0048】
図12に示す正面視において、シャワーアーム43A,43Bが使用状態P1A,P1Bであるときに、シャワーアーム43A,43Bはそれぞれ上下方向Zに沿って延びるように配置されている。言い換えると、
図11及び
図12に示すように、使用状態P1A,P1Bであるシャワーアーム43A,43Bは、左右方向Xに直交する基準面SA,SB上にそれぞれ配置されている。
また、
図11に示すように、使用状態P1A,P1Bであるシャワーアーム43A,43Bは、椅子11の背もたれ部14よりも、前方Y1に向かって延びるように配置されている。シャワーアーム43A,43Bの吐出孔50A,50Bは、シャワーアーム43A,43Bが使用状態P1A,P1Bであるときに、水が後方Y2と下方との間の斜めの向き等に吐出するように形成されている。
なお、シャワーアーム43A,43Bは、使用状態P1A,P1Bのときに、少なくとも吐出孔50A,50Bが形成されている部分が背もたれ部14よりも、前方Y1に向かって延びるように配置されていればよい。
【0049】
第1シャワーアーム43Aは軸線70Aに対して先端部材46A側に延びているため、、第1シャワーアーム43Aは自身の自重(自身に作用する重力)により、軸線70A周りに先端部材46Aが下がる向きに回転しようとする。
使用状態P1Aにある第1シャワーアーム43Aがこのように回転することを、支持部77の凹部94Aに係止部100Aが係止していることと、付勢部99Aの弾性力とにより防いでいる。
【0050】
一方で、
図8及び
図9に示すように、退避状態P0A,P0Bであるときのシャワーアーム43A,43Bは、使用者がシャワーアーム43A,43Bを使用しないときの状態である。このとき、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bは、
図11、
図12に示すシャワーアーム43A,43Bが使用状態P1A,P1Bであるときの先端部材46A,46Bよりも下がっている。
図9に示すように、退避状態P0A,P0Bであるときのシャワーアーム43A,43Bは、下方に向かうに従い漸次、互いに左右方向Xに離間するように配置されている。シャワーアーム43A,43Bは、全体としてハ字状(上下を逆にしたV字状)である。
より詳しく説明すると、第1シャワーアーム43Aは、下方に向かうに従い漸次、右側X1に向かうように傾斜している。一方で、第2シャワーアーム43Bは、下方に向かうに従い漸次、左側X2に向かうように傾斜している。
【0051】
前述のように軸線70A,70Bが上下方向Zに対して傾いているため、シャワーアーム43A,43Bを使用状態P1A,P1Bから退避状態P0A,P0Bにすると、シャワーアーム43A,43Bは、下方に向かうに従い漸次、互いに離間する。
なお、退避状態P0A,P0Bのとき、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46B間の距離は、椅子11の一対の肘掛け15全体の左右方向Xの長さよりも長い。さらに、退避状態P0A,P0Bのときのシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46B間の距離は、使用状態P1A,P1Bのときのシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46B間の距離よりも長い。
図8に示す側面視において、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bは、基端部材48A,48Bの下方にそれぞれ配置されている。シャワーアーム43A,43Bが退避状態P0A,P0Bであるときに、シャワーアーム43A,43Bの吐出孔50A,50Bは後方Y2を向いている。
【0052】
シャワーアーム43A,43Bが退避状態P0A,P0Bのときに、突起98A及び係止部100Aは、
図7において二点鎖線による線L5で示す位置に配置されている。そして、支持部77の凹部93Aに係止部100Aが係止していて、支持部77の突起90Aに突起98Aが方向D2側から係止している。このため、支持部77に対して第1シャワーアーム43Aがこれ以上方向D1に移動できなくなり、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bが、これ以上下がらなくなる。
【0053】
図10に示すように、跳ね上げ状態P2A,P2Bは、使用者が使用状態P1A,P1Bで使用していたシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bを上方に移動させた(跳ね上げた)状態である。シャワーアーム43A,43Bでは、使用状態P1A,P1Bよりも跳ね上げ状態P2A,P2Bの方が、先端部材46A,46Bが上方に位置する。
このとき、突起98A及び係止部100Aは、
図7において二点鎖線による線L6で示す位置に配置されている。支持部77の突起91Aに、突起98Aが方向D1側から係止している。このため、支持部77に対して第1シャワーアーム43Aがこれ以上方向D2に移動できなくなり、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bが、これ以上上がらなくなる。
【0054】
なお、跳ね上げ状態P2Aの第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aは、自重により使用状態P1Aの第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aの位置まで下がる。
この第1シャワーアーム43Aの自重に逆らって、跳ね上げ状態P2Aと使用状態P1Aとの間では、第1シャワーアーム43Aを軸線70A周りにほぼ外力を作用させることなく回転させることができるようにバネを設けてもよい。このバネは、第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aが上がるように、第1シャワーアーム43Aを軸線70A周りに付勢する。
【0055】
図1に示すように、接続部44は、例えば、ホース103等が着脱可能に接続されるコネクタである。接続部44は、本体42の支持部77の後面に固定されている。接続部44には、ホース103を介して外部から水が供給される。接続部44に供給された水は、図示しない2又分岐、及び支持部77の流路77aを通して、シャワーアーム43A,43Bに供給される。
【0056】
次に、以上のように構成されたシャワーシステム1の動作について説明する。
予め、椅子11は折り畳み状態になっていて、シャワー装置41は椅子11に取付けられている。シャワーアーム43A,43Bは、退避状態P0A,P0Bになっている。退避状態P0A,P0Bであるシャワーアーム43A,43Bは、正面視において、基端部材48A,48Bから下方に向かうに従い漸次互いに左右方向Xに離間するように配置されているため、シャワーアーム43A,43Bが椅子11の一対の肘掛け15を左右方向Xの外側に避けやすい。
【0057】
使用者は、
図1に示すように、椅子11を展開状態にし、浴室B等の床B1上にシャワーシステム1を設置する。このとき、図示しない水栓にホース103を接続し、このホース103を、シャワー装置41の接続部44に接続する。水栓から出る水の温度を、例えば35℃~40℃程度の所望の温度に設定し、水栓を開ける。
水栓から流れ出る水は、当初は15℃~25℃程度の常温である。水栓から流れ出る水は、ホース103、接続部44、支持部77の流路77aを通して、シャワーアーム43A,43Bに供給され、吐出孔50A,50Bから外部に吐出する。このとき、シャワーアーム43A,43Bの吐出孔50A,50Bは後方Y2を向いているため、常温の水が使用者に掛かることが抑制される。
【0058】
使用者は、背もたれ部14の前方Y1で椅子11に座る。一定の時間が経過すると、吐出孔50A,50Bから吐出する水の温度が所望の温度になる。
図13に示すように、使用者Pは、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bを上げて、シャワーアーム43A,43Bを使用状態P1A,P1Bにする。シャワーアーム43A,43Bの連結部材47A,47Bが柔らかい場合には、使用者Pはシャワーアーム43A,43Bの基端部材48A,48Bを持ち上げる。
【0059】
使用状態P1A,P1Bであるシャワーアーム43A,43Bは、正面視においてそれぞれ上下方向Zに沿って延び、使用状態P1A,P1Bのときのシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46B間の距離は、退避状態P0A,P0Bのときのシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46B間の距離よりも短い。このため、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bは、退避状態P0A,P0Bのときよりも使用者Pの左右方向Xの中心に近づく。
退避状態P0A,P0Bにおいて左右方向Xに互いに離間していたシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bは、使用状態P1A,P1Bにおいて使用者Pの肩幅程度の長さに近づくため、退避状態P0A,P0Bから使用状態P1A,P1Bになる過程で、シャワーアーム43A,43Bが椅子11の一対の肘掛け15や、使用者Pの身体等に干渉しにくい。
【0060】
図7における線L5で示す位置に配置され、支持部77の凹部93Aに係止していた係止部100Aは方向D2に移動し、支持部77の凹部94Aに係止する。
図13に示すように、使用者Pは、シャワーアーム43A,43Bの吐出孔50A,50Bから吐出する水Wを浴び、シャワーを浴びる。
なお、使用者Pは、シャワーアーム43A,43Bを退避状態P0A,P0Bにして、自身の身体を洗ってもよい。この際に、シャワーアーム43A,43Bが退避状態P0A,P0Bであるため、シャワーアーム43A,43Bが身体を洗う作業の支障になりにくい。
【0061】
使用者Pは、シャワーを浴び終えると、シャワーアーム43A,43Bを退避状態P0A,P0Bにする。浴室Bの水栓を閉じる。
【0062】
仮に、シャワーアーム43A,43Bを使用状態P1A,P1Bにしてシャワーを浴びている使用者Pが、緊急事態が発生したためにシャワーシステム1からとっさに脱出する場合には、以下の手順を行う。
使用者Pは、手等により、使用状態P1A,P1Bであるシャワーアーム43A,43Bをそれぞれ持ち上げる(跳ね上げる)。
図7において、支持部77の凹部94Aに係止していた係止部100Aは方向D2に移動し、板バネ96Aを線L1で示すように弾性的に変形させて乗り越える。
【0063】
係止部100Aは
図7における線L6で示す位置に配置され、支持部77の突起91Aに第1シャワーアーム43Aの突起98Aが方向D1側から係止して、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bがこれ以上上がらなくなる。
【0064】
椅子11の座部13とシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bとが上下方向Zに広がったため、使用者Pはシャワーアーム43A,43Bにほぼ干渉することなく椅子11から立ち上がり、シャワーシステム1から脱出する。使用状態P1A,P1Bであるシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bを上げる際には、シャワーアーム43A,43Bが固定されないため、使用者Pの身体がシャワーアーム43A,43Bに接触すると、ほぼ抵抗なくシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bが上がる。
使用者Pが手等をシャワーアーム43A,43Bから放すと、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bは、シャワーアーム43A,43Bの自重により板バネ96A,96Bを変形させながら、使用状態P1A,P1Bのシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bの位置までそれぞれ下がる。このとき、支持部77の凹部94Aに係止部100Aが係止する。
【0065】
また、使用者Pがシャワーシステム1から脱出する際に、シャワーアーム43A,43Bの連結部材47A,47Bを変形させ、先端部材46A,46Bを所望の方向に曲げてもよい。
例えば、使用者Pは、第1シャワーアーム43Aの連結部材47Aを変形させて、例えば先端部材46Aを後方Y2に向かって折り返す等した後で、椅子11の右側X1から脱出する。この際に、連結部材47Aが変形するため、第1シャワーアーム43Aの基端部材48Aに過剰な力が作用しなく、第1シャワーアーム43Aが破損するのが防止できる。
以上のように、緊急事態が発生した場合でも、使用者Pはシャワーシステム1から容易に脱出することができる。
【0066】
なお、前述のシャワーシステム1や水栓を操作する使用者は、実際にシャワーを浴びてシャワーシステム1を使用する使用者(以下、実際の使用者と言う)に限定されず、実際の使用者の補助者としてシャワーシステム1を使用する介助者であってもよい。
すなわち、実際の使用者がシャワーシステム1等を操作するのが困難である場合には、介助者がシャワーシステム1の操作等を行う。
【0067】
以上説明したように、本実施形態のシャワー装置41によれば、使用者Pは背もたれ部14の前方Y1で椅子11に座り、シャワーアーム43A,43Bを使用状態P1A,P1Bにして、接続部44から供給されシャワーアーム43A,43Bにおける背もたれ部14よりも前方Y1に延びている部分の吐出孔50A,50Bから吐出する水Wに当たることによりシャワーを浴びる。
この際に、緊急事態が発生したため等により、シャワーシステム1から使用者Pが脱出する場合には、例えば使用者Pはシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bを上方に移動させて、シャワーアーム43A,43Bを跳ね上げ状態P2A,P2Bにする。使用者Pは椅子11から立ち上がるが、椅子11の座部13からシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bまでの距離が上下方向Zに広がったため、使用者Pは座部13とシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bとの間を通して椅子11から容易に立ち上がることができる。従って、使用状態P1A,P1Bであるシャワーアーム43A,43Bから使用者Pが容易に脱出することができる。
【0068】
跳ね上げ状態P2Aの第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aは、第1シャワーアーム43Aの自重により使用状態P1Aの第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aの位置まで下がる。このため、跳ね上げ状態P2Aにした第1シャワーアーム43Aから手等を放すだけで、第1シャワーアーム43Aに作用する重力により、第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aを使用状態P1Aの位置まで自動的に移動させることができる。
シャワー装置41は、跳ね上げ状態P2Aの第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aが上がるのを規制する規制部95Aを備える。これにより、第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aが跳ね上げ状態P2Aよりも上がるのを規制し、第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aが上がり過ぎて第1シャワーアーム43Aが損傷するのを抑制することができる。
【0069】
シャワー装置41が第2シャワーアーム43Bを備えるため、第1シャワーアーム43Aの吐出孔50Aから吐出する水Wだけでなく、第1シャワーアーム43Aとともに本体42を左右方向Xに挟んだ第2シャワーアーム43Bの吐出孔50Bから吐出する水Wにより、使用者Pにシャワーを浴びさせることができる。
また、本実施形態のシャワーシステム1によれば、使用状態P1A,P1Bであるシャワーアーム43A,43Bから使用者Pが容易に脱出可能なシャワー装置41を用いてシャワーシステム1を構成することができる。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、シャワー装置41は、第2シャワーアーム43Bを備えなくてもよい。
この場合、第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aは、第1シャワーアーム43Aの自重により、使用状態P1Aの第1シャワーアーム43Aの先端部材46Aの位置まで下がらなくてもよい。シャワー装置41は、規制部95Aを備えなくてもよい。
第1シャワーアーム43Aは、本体42の左側X2や、本体42における左右方向Xの中間部に配置されていてもよい。
本体42は、浴室Bに、椅子11とは別に設けられた支柱等の支持部に取付けられてもよい。浴室Bは、ユニットバスでもよいし、在来工法による浴室であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 シャワーシステム
11 椅子
14 背もたれ部
41 シャワー装置
42 本体
43A 第1シャワーアーム(第1腕部)
43B 第2シャワーアーム(第2腕部)
44 接続部
46A 先端部材(先端部)
48A,48B 基端部材(基端部)
50A,50B 吐出孔
70A,70B 軸線
95A 規制部
P 使用者
P1A 使用状態(特定状態)
P2A 跳ね上げ状態
W 水
X 左右方向(第1方向)
Y 前後方向(第2方向)
Y1 前方(一方側)