IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧

特許7103853積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法
<>
  • 特許-積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法 図1
  • 特許-積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法 図2
  • 特許-積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法 図3
  • 特許-積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法 図4
  • 特許-積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法 図5
  • 特許-積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法 図6
  • 特許-積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法 図7
  • 特許-積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法 図8
  • 特許-積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法 図9
  • 特許-積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/54 20210101AFI20220712BHJP
   H01M 50/536 20210101ALI20220712BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220712BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20220712BHJP
【FI】
H01M50/54
H01M50/536
H01M10/04 Z
H01M10/0585
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018105912
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019212412
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-12-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】小倉 正也
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-326336(JP,A)
【文献】特開平09-082305(JP,A)
【文献】特表2016-531405(JP,A)
【文献】特開2018-129280(JP,A)
【文献】特開2013-196894(JP,A)
【文献】特開2012-109124(JP,A)
【文献】特開2016-225117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0069929(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 10/04
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とをセパレータを挟んで積層した極板群を有する二次電池の製造方法であって、
前記極板群の端末部であって、前記積層した方向に対して前記正極板のみが配置されている前記端末部、又は前記負極板の端縁部のみが配置されている前記端末部の各端縁部を前記積層した方向に集める端縁部集合工程と、
集めた複数の前記端末部を接合して集箔部を形成する集箔部形成工程と、
前記集箔部に集電部を当接させる当接工程と、
前記集箔部と前記集電部との当接する部分を溶接する溶接工程と、
前記集箔部に前記集電部が溶接された前記極板群を前記二次電池のケースに収容する収容工程とを備え、
前記集箔部形成工程では、前記積層した方向に対向する2つの前記端縁部を相互に界面接合させ、
前記当接工程では、前記集箔部を前記集電部の長手方向に延設されたスリットに挟み込ませることで前記集箔部に前記集電部を当接させ、
前記溶接工程では、前記集電部の前記スリットに沿って前記集箔部の少なくとも一部に前記集電部を溶接する二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記集箔部形成工程では、前記端末部の長手方向に対して前記ケースの上側に近い端部である基端部と、前記ケースの下側に近い端部である先端から所定の長さだけ前記基端部に近い位置との間の少なくとも一部に前記集箔部を形成する
請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記収容工程に先立ち、前記端末部の突出する部分が、前記突出する方向における所定の位置であって、前記積層した方向に対して全ての前記端末部が積層する前記所定の位置に切り揃える切断工程を備える
請求項1又は2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記当接工程に先立ち、複数の前記極板群を積層させる極板群積層工程を備え、
前記当接工程では、複数の前記極板群の各集箔部を前記集電部の長手方向に延設された複数のスリットのそれぞれに挟み込ませることで前記集箔部に前記集電部を当接させている
請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の積層型極板群、及び当該極板群を有する二次電池、及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池の一つであるリチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であることから、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)等の駆動用電源として用いられている。リチウムイオン二次電池は、電極芯体の両面に電極合剤層を設けた正極板及び負極板をセパレータを介して捲回あるいは積層した極板群を有する。電極芯体には、二次電池電極用のアルミニウム合金箔や銅箔が用いられている。電極板の端縁部は、電極芯体からなるリード部に外部電極端子に接続される集電板が接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の二次電池は、帯状の正負極板の少なくとも一方の極板の端縁部を他方の極板の端縁部より突出させ、セパレータを介して捲回あるいは積層された発電素子(極板群)の突出した端縁部と集電体とをレーザ溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-106536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
正極板と負極板とがセパレータを挟んで捲回された極板群は、正極板と負極板とが比較的強い拘束力で固定されることから正極板と負極板との相対位置にずれが生じるおそれは小さい。
【0006】
一方、正極板と負極板とがセパレータを挟んで積層された極板群は、正極板、負極板、及びセパレータの拘束力がほとんど無い状態で積み上げられているにすぎない。そのため、正極板や負極板が集電体に溶接されるまでの間は、製造時の振動等の外力によって極板間の位置が積層されたときの位置からずれてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造時において極板間の位置ずれの発生を抑制することのできる積層型極板群、及び当該極板群を有する二次電池、及び二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する積層型極板群は、正極板と負極板とをセパレータを挟んで積層した極板群である積層型極板群であって、前記極板群の端末部であって、前記積層した方向に対して前記正極板の端縁部のみが配置されている、又は前記負極板の端縁部のみが配置されている前記端末部と、前記端末部に設けられていて前記端末部に沿う方向に延びる集電部が接続される集箔部であって、前記端末部に配置されている前記端縁部を前記積層した方向に集合させているとともに、それら集合した前記端縁部が接合されている前記集箔部とを備える。
【0009】
上記課題を解決する二次電池は、正極板と負極板とをセパレータを挟んで積層した極板群を有する二次電池であって、前記極板群は、前記記載の積層型極板群からなり、前記極板群の集箔部と外部端子に接続される集電部との少なくとも一部は溶接されている。
【0010】
上記課題を解決する二次電池の製造方法は、正極板と負極板とをセパレータを挟んで積層した極板群を有する二次電池の製造方法であって、前記極板群の端末部であって、前記積層した方向に対して前記正極板のみが配置されている前記端末部、又は前記負極板の端縁部のみが配置されている前記端末部の各端縁部を前記積層した方向に集める端縁部集合工程と、集めた複数の前記端末部を接合して集箔部を形成する集箔部形成工程と、前記集箔部に集電部を当接させる当接工程と、前記集箔部と前記集電部との当接する部分を溶接する溶接工程と、前記集箔部に前記集電部が溶接された前記極板群を前記二次電池のケースに収容する収容工程とを備える。
【0011】
正極板、セパレータ、負極板、セパレータの順で何層にも積み重ねられた積層型極板群の極板の位置ずれは電池特性を劣化させるおそれがある。こうした位置ずれの一因として、製造時において振動等の外力が積層後に加わることが挙げられる。この点、このような構成又は方法によれば、積層された極板群は、集電部が固定されるよりも以前に、端縁部が接合されて集箔部を形成することから、正極板又は負極板が相互に連結されるようになって、製造時において極板群を構成する極板間の位置ずれの発生を抑制することができる。
【0012】
また、各極板の端縁部は剛性の低い金属薄膜であるため意図しない変形を生じやすいが、集箔部とすることで剛性が高められて意図しない変形が抑制される。また、剛性が高められることによって、集箔部と集電部との接続を行いやすくなる。
【0013】
また、集電部は全ての端縁部に接続されることが好ましいところ、予め全ての端縁部が集箔部として接合されていることから、集電部を端縁部に接続させることが容易であるとともに、各極板と集電部との間の導電性が確実に確保されるようになる。
【0014】
好ましい構成として、前記端末部は、長手方向に対して外部端子と近い端部である基端部と、前記外部端子と離れた端部である先端とを有し、前記集箔部は、前記基端部と、前記先端から所定の長さだけ前記基端部に近い位置との間の少なくとも一部に設けられている。
【0015】
好ましい方法として、前記集箔部形成工程では、前記端末部の長手方向に対して前記ケースの上側に近い端部である基端部と、前記ケースの下側に近い端部である先端から所定の長さだけ前記基端部に近い位置との間の少なくとも一部に前記集箔部を形成する。
【0016】
このような構成又は方法によれば、極板群の端末部の基端部と先端から所定の長さだけ基端部に近い位置との間の少なくとも一部が集箔部によって閉じられているが、逆に、集箔部の設けられていない部分は開放されている。端末部の先端側が開放されることで、開放された先端側から極板群に電解液が供給されやすくなる。特に、先端側が電解液の滞留する下側となるように設けることで、集箔部を有する極板群に対する電解液の浸透性を高い状態に維持することができる。
【0017】
好ましい構成として、前記集箔部は、前記積層した方向に対向する2つの前記端縁部が相互に界面接合されている。
このような構成によれば、端縁部の形状が変更されることなく接合されるため、金属箔の破断が抑制される。つまり、溶融により周囲を集めた球状を形成して箔形状を維持することができなくなったり、箔の厚みにむらが生じて破断しやすくなったりするおそれが軽減されて、積層型極板群の信頼性が向上される。
【0018】
好ましい構成として、前記極板群は、一方の前記端末部の前記端縁部がアルミニウム合金箔からなり、他方の前記端末部の前記端縁部が銅箔からなる。
このような構成によれば、リチウムイオン二次電池において、製造時に極板群を構成する極板間の位置ずれの発生を抑制することができる。
【0019】
好ましい構成として、前記集箔部は、前記端末部の突出する部分が、前記突出する方向における所定の位置で切り揃えられており、前記所定の位置は、前記積層した方向に対して全ての前記端末部が積層する位置である。
【0020】
好ましい方法として、前記収容工程に先立ち、前記端末部の突出する部分が、前記突出する方向における所定の位置であって、前記積層した方向に対して全ての前記端末部が積層する前記所定の位置に切り揃える切断工程を備える。
【0021】
このような構成又は方法によれば、集箔部の突出長を必要最小限の長さにすることで二次電池の小型化や二次電池の高容量化を図ることができる。
好ましい構成として、前記集箔部は、前記積層した方向から前記集電部に設けられたスリットの間に挟まれる。
【0022】
好ましい構成として、前記集電部は、前記集箔部を前記積層した方向に挟み込むスリットを有し、前記スリットに挟み込まれた前記集箔部の少なくとも一部は、前記集電部に溶接されている。
【0023】
好ましい方法として、前記集箔部形成工程では、前記積層した方向に対向する2つの前記端縁部を相互に界面接合させ、前記当接工程では、前記集箔部を前記集電部の長手方向に延設されたスリットに挟み込ませることで前記集箔部に前記集電部を当接させ、前記溶接工程では、前記集電部の前記スリットに沿って前記集箔部の少なくとも一部に前記集電部を溶接する。
【0024】
このような構成又は方法によれば、集電部のスリットに集箔部を挟み込むことができるようになるため、集電部と集箔部との導電性を確保できるようになる。また、集箔部は、各端末部が集合することで単体の端末部に比べて高い剛性を有する。このため、集箔部を集電部に挟み込むことが可能であるとともに、集電部の集箔部への取付が容易になる。また、集箔部は熱容量が大きくなるため、溶接するために加えるエネルギーのコントロールが容易になる。よって、例えば、レーザ溶接においてレーザが集箔部を貫通するおそれを抑制することができる。
【0025】
上記課題を解決する二次電池は、正極板と負極板とをセパレータを挟んで積層した複数の極板群を有する二次電池であって、前記極板群が、前記記載の積層型極板群からなり、複数の前記極板群の集箔部と外部端子に接続される集電部との少なくとも一部がそれぞれ溶接されている。
【0026】
好ましい方法として、前記当接工程に先立ち、複数の前記極板群を積層させる極板群積層工程を備え、前記当接工程では、複数の前記極板群の各集箔部を前記集電部の長手方向に延設された複数のスリットのそれぞれに挟み込ませることで前記集箔部に前記集電部を当接させている。
【0027】
このような構成又は方法によれば、集電部に複数の極板群の集箔部が溶接される。よって、複数の極板群を有する二次電池を構成することが容易である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、製造時において極板間の位置ずれの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】二次電池の第1の実施形態について、その構造を示す概略図。
図2】同実施形態の極板群の断面構造を示す模式図。
図3】同実施形態の極板群及び集電板の構造を示す模式図。
図4】同実施形態においてリード部を示す上面図。
図5】同実施形態においてリード部を示す上面図。
図6】同実施形態において二次電池を組み立てる手順を示すフローチャート。
図7】二次電池の第2の実施形態について、その極板群の構造を示す模式図。
図8】同実施形態において集電板の構造を示す正面図。
図9】同実施形態において二次電池を組み立てる手順を示すフローチャート。
図10】二次電池のその他の実施形態について、その構造を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
図1図6に従って、積層型極板群、二次電池及び二次電池の製造方法の第1の実施形態を説明する。なお、本実施形態では、二次電池はリチウムイオン二次電池である。
【0031】
本実施形態の二次電池は、バスバーで複数が接続されることにより組電池を構成する。組電池は、電気自動車もしくはハイブリッド自動車に搭載され、電動モータ等に電力を供給する。二次電池は、外形が直方体形状の密閉式電池である。
【0032】
図1に示すように、二次電池10は、上側に開口部を有する直方体形状の電池ケース11と、電池ケース11を封止する蓋体12と、電池ケース11の内部に収容される電極体としての極板群20と、電池ケース11内に注入された液体状の非水電解質27とを備える。電池ケース11及び蓋体12はアルミニウム合金等の金属で構成されている。二次電池10は、電池ケース11に蓋体12を取り付けることで密閉された電槽が構成される。また二次電池10は、蓋体12に、電力の充放電に用いられる2つの外部端子13を備えている。
【0033】
極板群20は、正極板21と負極板22とが交互にそれらの間にセパレータ23を挟んで積層方向(図1において紙面に垂直な方向)に積層されることで形成されている。本実施形態では、極板群20は、正極板21、負極板22及びセパレータ23がそれぞれ平面状に維持されたまま積層されることで積層型極板群を構成する。極板群20は、長手方向の一端側(図1において左側)に正極板21がはみ出た端末部としての正極のリード部214と、同長手方向の他端側(図1において右側)に負極板22がはみ出た端末部としての負極のリード部224とを有する。正極のリード部214は、極板群20の長手方向において正極板21のみが配置されている部分において、正極板21の端縁部としての先端部分211C(図2参照)が積層方向に集合されている。また、正極のリード部214は、集合された部分である集箔部30には外部端子13に接続される集電部としての集電板14が極板群20の短手方向に沿って溶接されている。負極のリード部224は、極板群20の長手方向において負極板22のみが配置されている部分において、負極板22の端縁部としての先端部分221C(図2参照)が積層方向に集合されている。また、負極のリード部224は、集合された部分である集箔部30には外部端子13に接続される集電板14が極板群20の短手方向に沿って溶接されている。
【0034】
セパレータ23は、正極板21及び負極板22の間に非水電解質27を保持するためのポリプロピレン製等の不織布である。また、セパレータ23としては、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、及び多孔性ポリ塩化ビニル膜等の多孔性ポリマー膜、又は、リチウムイオンもしくはイオン導電性ポリマー電解質膜を、単独、又は組み合わせて使用することもできる。
【0035】
(非水電解質)
非水電解質27は、非水溶媒に支持塩が含有された組成物である。ここで、非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等からなる群から選択された一種または二種以上の材料を用いることができる。また、支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。
【0036】
(正極板)
図2を参照して、正極板21は、電極芯体である二次電池正極用アルミニウム合金箔としての正極基材211の第1面211A及び第2面211Bにそれぞれ正極合剤212,213が塗布されている。正極板21の正極基材211は、導電性の良好な金属からなる導電性材料としてのアルミニウム合金からなる薄膜(箔)である。なお、正極板21の正極合剤212,213が未塗布である部分を先端部分211Cとする。
【0037】
正極合剤212,213は正極活物質を有する。正極活物質は、遷移金属元素(すなわち、Ni、Co、及びMnの少なくとも1種)の他に、付加的に、1種または複数種の元素を含有し得る。付加的な元素としては、周期表の1族(ナトリウム等のアルカリ金属)、2族(マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属)、4族(チタン、ジルコニウム等の遷移金属)、6族(クロム、タングステン等の遷移金属)、8族(鉄等の遷移金属)に属するいずれかの元素を含むことができる。また、付加的な元素としては、周期表の13族(半金属元素であるホウ素、もしくはアルミニウムのような金属)、及び17族(フッ素のようなハロゲン)に属するいずれかの元素を含むことができる。好ましくは、正極活物質は、「LiNiCoMnO系正極活物質」である。「LiNiCoMnO系正極活物質」は、LiとNiとCoとMnとを含む複合酸化物を意味し、Li、Ni、Co、及びMnとは異なる金属元素を更に含んでもよい。
【0038】
また、正極合剤212,213は導電材を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛(グラファイト)を用いることができる。
【0039】
正極板21は、例えば、正極活物質と、導電材と、溶媒と、結着剤(バインダー)とを混練し、混練後に正極合剤212を含んで生成される電極用スラリーを正極基材211に塗布して乾燥することで作製される。ここで、溶媒としては、例えばNMP(N-メチル-2-ピロリドン)溶液を用いることができる。また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。なお、本実施形態では、電極用スラリーは、固形物の割合が40%以上、かつ、70%以下の範囲に調整されている。
【0040】
(負極板)
次に負極板22は、電極芯体である集電箔としての負極基材221の第1面221A及び第2面221Bにそれぞれ負極合剤222,223が塗布されている。負極板22の負極基材221は、従来の二次電池の構成要素と同様の構成要素を用いることができる。例えば、基材の材料として、導電性の良好な金属からなる導電性材料が好ましく用いられる。例えば、負極基材221として、銅やニッケルあるいはそれらの合金からなる薄膜(箔)を用いることができる。なお、負極板22の負極合剤222,223が未塗布である部分を先端部分221Cとする。
【0041】
負極合剤222,223は、負極活物質を有する。負極活物質は、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、例えば、黒鉛(グラファイト)等からなる粉末状の炭素材料を用いることができる。そして、負極板22は、負極活物質と、溶媒と、バインダーとを正極板21と同様に混練し、混練後に負極合剤222を含んで生成される電極用スラリーを負極基材221に塗布して乾燥することで作製される。本実施形態では、バインダーはナトリウム塩を有するカルボキシメチルセルロース(CMC)を含んでいる。
【0042】
(集電板)
図3に示すように、蓋体12は、外表面側に正極の外部端子13と負極の外部端子13とが設けられ、内表面側に正極の集電板14と負極の集電板14とが設けられている。なお、正極の集電板14と負極の集電板14とは同様の構造を有することから、ここでは正極の集電板14について詳細に説明し、負極の集電板14についての説明は割愛する。
【0043】
正極の集電板14は、導電体からなる板状部材であり、蓋体12の内表面に固定される固定部14D(図1参照)と、固定部14D(図1参照)に対して直交する方向に延出されている延接部140とを備えている。固定部14D(図1参照)は、蓋体12を貫通する導電体により蓋体12に機械的に固定されるとともに、外部端子13に電気的、かつ、機械的に接続固定されている。
【0044】
延接部140は、蓋体12に固定された固定部14Dから、電池ケース11の底面に向かって延設されている。延接部140は、電池ケース11の底面に到達する手前の位置にその先端14Aを配置させる長さを有している。換言すると、延接部140は、その先端14Aが電池ケース11の底面から上方へ所定の距離だけ離れた位置に配置される。
【0045】
延接部140は、その表面を極板群20の長手方向に直交する方向に向けている。これにより、延接部140を極板群20に接続する際、極板群20の長手方向に要する長さが延接部140の厚さ程度でもよくなる。これにより、二次電池10の小型化、もしくは、二次電池10の高容量化が可能になる。
【0046】
延接部140は、先端14Aから固定部14Dに向かう方向である長手方向にスリット141が延設されている。また、スリット141は、集電板14を集電板14の厚さ方向に貫通している。延接部140は、スリット141の両側にスリット141によって区分された第1延設片142と第2延設片143とを有している。
【0047】
延接部140は、先端14Aにスリット141を開口させ、固定部側の基端部14Cにスリット141の終点を有している。すなわち、スリット141は、固定部14D側から見ると、基端部14Cで分岐して先端14Aに向かって略平行に配置される第1延設片142と第2延設片143との間に設けられている。第1延設片142及び第2延設片143は、先端14Aにおいてテーパー状であり、スリット141の幅を広げるように先端14Aを拡開させている。延接部140は、長手方向において、先端14Aに続いて挟み込み部14Bを有している。挟み込み部14Bは、スリット141の幅が狭くなっており、スリット141に挟み込んだ正極のリード部214の集箔部30を第1延設片142と第2延設片143との間に与圧することで、拘束可能になっている。また、延接部140は、挟み込み部14Bの固定部側に基端部14Cを有している。基端部14Cは、挟み込み部14Bよりもスリット141の幅が広くなっており、正極のリード部214が第1延設片142と第2延設片143との間に与圧されることなく、非拘束状態で配置される。
【0048】
(集箔部)
図2図4を参照して、正極のリード部214、負極のリード部224、及び、正極のリード部214及び負極のリード部224からそれぞれ形成される集箔部30について説明する。なお、正極のリード部214及び負極のリード部224は同様の構造であることから、正極のリード部214について詳細に説明するとともに、負極のリード部224についての説明は割愛する。
【0049】
図2に示すように、正極のリード部214は、正極基材211の先端部分211Cであって、位置P1とセパレータ23の端部の位置P3との間で構成されている。詳述すると、極板群20は、極板群20の長手方向中央から略位置P3までの間は正極板21、負極板22及びセパレータ23が積層され、位置P3から位置P2までの間は正極板21とセパレータ23とが積層され、位置P2から位置P1までの間は正極板21のみが積層される。また、正極板21の正極合剤212,213は、極板群20の長手方向中央から略位置P3までの間に設けられている。よって、位置P3付近から位置P1までの間である正極板21の先端部分211Cは、正極基材211のみで構成される。
【0050】
図3に示すように、正極のリード部214は、極板群20の短手方向を長手方向としているとともに、極板群20の長手方向に沿って極板群20から突出する方向を短手方向としている。
【0051】
正極のリード部214は、その長手方向において、上側に上端部214aを有し、下側に下端部214bを有し、上端部214aと下端部214bとの間に中央部214cを備えている。
【0052】
図4は、極板群20の上面を示すが、図示の便宜上、正極板21の正極基材211のみを図示し、負極板22及びセパレータ23の図示を割愛する。つまり、極板群20は、長手方向中央から位置P3までは正極板21と負極板22とセパレータ23とが積層され、位置P3から位置P2までは正極板21とセパレータ23とが積層され、位置P2から位置P1まで正極基材211のみが積層される。リード部214は、少なくとも、負極板22及びセパレータ23には対向しない。リード部214は、負極板22が配置されなくなる位置P3と位置P1との間で正極基材211を積層方向に折り曲げることが可能である。
【0053】
位置P3と位置P1との間において、積層された正極基材211は、積層方向に間隔を空けて整列配置されている。このとき、正極板21の先端部分である正極基材211の端辺の位置P1が積層方向に同じ位置に整列されるように正極板21は積層されている。
【0054】
図5に示すように、リード部214では、複数の正極基材211の先端部分211Cをそれぞれ隣接する正極基材211の先端部分211Cに当接させるように積層方向に折り曲げて集合させる。例えば、正極基材211の先端部分211Cの位置P1を極板群20の積層方向に対する中央CHに集合させるように正極基材211を折り曲げる。このとき、極板群20の中央CHから積層方向に離れた正極基材211は湾曲部分K3が長くなり、極板群20の中央CHにある正極基材211は湾曲部分K3が短くなる。よって、中央CHに集合したとき、各正極基材211の先端部分211Cの位置P1は、積層方向に対して中央CHが極板群20の長手方向に突出するとともに、中央CHから距離が離れるに従って階段状に短くなる階段状部分K1を形成する。
【0055】
各先端部分211Cが中央に集合されて湾曲部分K3が設けられることで、リード部214が直線状である場合に比較して、リード部214の機械的な強度(剛性)が高められるようになることから、リード部214への集電板14の取り付け等が容易になる。
【0056】
また、各先端部分211Cの集合した階段状部分K1と湾曲部分K3との間に全ての先端部分211Cが積層されて、各先端部分211Cの相互接触により生じる拘束力によって剛性が高められる積層部分K2が形成される。積層部分K2は、接合されて拘束されることで、リード部214の剛性をより高めるようにしてもよい。本実施形態では、積層部分K2と、その先端部31とから集箔部30が構成される。
【0057】
集箔部30は、リード部214において、集電板14が接続される集合部分32と、切り揃えられ後の先端部31とを備えている。
図3に示すように、集箔部30は、上端部214aと下端部214bとの間の全てが接合されている。なお、集箔部30は、リード部214の上端部214aと下端部214bとの間の少なくとも一部に設けられていればよい。つまり集箔部30の接合は、上端部214aと下端部214bとの間で連続的であってもよいし、所定の間隔毎であってもよい。接合は、薄膜である正極基材211を溶融させてしまうと破断のおそれがあるので、超音波接合による界面接合が好ましい。
【0058】
(切断)
ところで、階段状部分K1は、全ての先端部分211Cが積層されていない部分であるとともに、電池性能に影響を与えない部分である。そこで、最も短くなる階段状部分K1である位置P4かそれよりも内側の位置で切断する。切断は、トムソン型、超音波カッター、金型などで行う。これにより、集箔部30は、集合部分32と、位置P4において積層方向に切り揃えられたリード部214から形成される先端部31とを備える。階段状部分K1を切断することで、極板群20の長手方向を短くすることができるので、二次電池10の小型化、もしくは、二次電池10の高容量化が可能になる。
【0059】
(二次電池の製造方法)
図6を参照して、二次電池の製造方法についての手順をフローチャートに基づいて説明する。
【0060】
二次電池の製造方法が開始されると、正極板21、負極板22及びセパレータ23がそれぞれ平面状を維持されたまま積層される積層工程が実行される(ステップS10)。例えば、積層工程では、袋状のセパレータ23に収容された正極板21と、負極板22とが交互に積層される。
【0061】
次に、正極板21の先端部分211Cや負極板22の先端部分221Cを集合させる端末部集合工程が実行される(ステップS11)。
また、集合された正極板21の先端部分211Cや負極板22の先端部分221Cを界面接合による接合を行い集箔部30を形成する集箔部形成工程が実行される(ステップS12)。
【0062】
集箔部30が形成されると、正極のリード部214や負極のリード部224の階段状部分K1を切断する端部切断工程が実行される(ステップS13)。これにより、集箔部30から不要な部分が除かれて、集電板14が接続される集合部分32と、切り揃えられ後の先端部31とが備えられる。
【0063】
集箔部30から不要な部分が除かれたら、集箔部30に集電板14が取り付けられる集電板当接工程が実行される(ステップS14)。図3を参照して説明すると、集電板14に形成されたスリット141に極板群20の集箔部30がスライドによって挟み込まれる。まず、蓋体12が集電板14の先端14Aを極板群20の上端部214aに向けて配置される。次に、蓋体12と極板群20とが接近するように蓋体12を相対移動させて、集電板14の先端14Aにリード部214の上端部214aに形成されている集箔部30を差し込む。さらに、極板群20と蓋体12とを相対的に近づけることで、集電板14の先端14Aを集箔部30の中央部214cに移動させるとともに、続いて、下端部214bの近くまで移動させる。これに伴い、挟み込み部14Bは、集箔部30を上端部214aから中央部214cまで移動する。挟み込み部14Bは、スリット141の幅が狭くなっていることから、スリット141に挟み込んだ集箔部30を第1延設片142と第2延設片143との間に挟み込んで与圧するとともに、拘束する。また、スリット141の基端部14Cが上端部214aに配置される。基端部14Cは、挟み込み部14Bよりもスリット141の幅が広くなっており、集箔部30を与圧せず、非拘束状態とすることから、集箔部30の上端部214aに応力等を付与することが抑制される。
【0064】
集箔部30に集電板14が取り付けられると、集箔部30の集合部分32に集電板14のスリット141の挟み込み部14Bを溶接する溶接工程が実行される(ステップS15)。溶接工程では、集箔部30に集電板14がレーザ溶接により溶接される。集電板14のスリット141に集箔部30を挟み込むことで、集電板14と集箔部30との導電性が確保される。また、集箔部30は、各先端部分211Cが集合することで先端部分211C単体に比べて高い剛性を有するため、集箔部30を集電板14に挟み込むことが可能であるとともに、集箔部30への集電板14の取り付けが容易になる。この効果を奏するためには、集箔部30が上端部214aを含んで構成されていることが特に好ましい。また、集箔部30は熱容量が大きくなるため、溶接のために加えるエネルギーのコントロールが容易になる。例えば、集箔部30と集電板14との少なくとも一部がレーザ溶接等によって溶接されるが、集箔部30がレーザの貫通を抑制する役割を果たすため、レーザが極板群20の内部にまで到達することを抑制することができる。この効果を奏するためには、溶接工程において、レーザが照射される箇所に集箔部30が設けられていることが好ましい。
【0065】
蓋体12に固定された集電板14の極板群20への取り付けが完了すると、蓋体12の取り付けられた極板群20を開口部から電池ケース11に収容する収容工程が実行される(ステップS16)。
【0066】
そして、電池ケース11の開口部に蓋体12が合わせられるとともに、蓋体12が電池ケース11に溶接されて電池ケース11を封止するケース封止工程が実行される(ステップS17)。
【0067】
電池ケース11が封止されると、電池ケース11内部に非水電解質27を注液する注液工程が実行される(ステップS18)。注液は、蓋体12の注液口から行われる。そして、非水電解質27が極板群20のセパレータ23に浸透することで二次電池の製造が終了する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載するような効果が得られるようになる。
(1)積層された極板群20は、集電板14が固定されるよりも以前に、先端部分211C,221Cが接合されて集箔部30を形成することから、正極板21又は負極板22が相互に連結されるようになって、製造時において極板群20を構成する極板間の位置ずれの発生を抑制することができる。
【0069】
また、各極板の先端部分211C,221Cは剛性の低い金属薄膜であるため意図しない変形を生じやすいが、集箔部30とすることで剛性が高められて意図しない変形が抑制される。また、剛性が高められることによって、集箔部30と集電板14との接続を行いやすくなる。
【0070】
また、集電板14は全ての先端部分211C,221Cに接続されることが好ましいところ、予め全ての先端部分211C,221Cが集箔部30として接合されていることから、集電板14を先端部分211C,221Cに接続させることが容易であるとともに、各極板と集電板14との間の導電性が確実に確保されるようになる。
【0071】
(2)界面接合により先端部分211C,221Cの形状が変更されることなく接合されるため、金属箔の破断が抑制される。つまり、溶融により周囲を集めた球状を形成して箔形状を維持することができなくなったり、箔の厚みにむらが生じて破断しやすくなったりするおそれが軽減されて、積層型極板群の信頼性が向上される。
【0072】
(3)リチウムイオン二次電池において、製造時に極板群20を構成する極板間の位置ずれの発生を抑制することができる。
(4)集箔部30の突出長を必要最小限の長さにすることで二次電池10の小型化や二次電池10の高容量化を図ることができる。
【0073】
(5)集電板14のスリット141に集箔部30を挟み込むことができるようになるため、集電板14と集箔部30との導電性を確保できるようになる。また、集箔部30は、各先端部分211C,221Cが集合することで単体の先端部分211C,221Cに比べて高い剛性を有する。このため、集箔部30を集電板14に挟み込むことが可能であるとともに、集電板14の集箔部30への取付が容易になる。また、集箔部30は熱容量が大きくなるため、溶接するために加えるエネルギーのコントロールが容易になる。よって、例えば、レーザ溶接においてレーザが集箔部30を貫通するおそれを抑制することができる。
【0074】
(第2の実施形態)
図7図9に従って、積層型極板群、二次電池、及び二次電池の製造方法の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態では、複数の極板群の各集箔部を1つの集電板に接続する点が、1つの極板群20を1つの集電板14に接続する第1の実施形態と相違する。
【0075】
図7に示すように、4つの極板群40が積層されている。
各極板群40は、極板群40の長手方向において正極板21のリード部分に正極側の集箔部60を備え、極板群40の長手方向において負極板22のリード部分に負極側の集箔部60を備えている。各集箔部60は、紙面が上端部側であり、紙面の裏側が下端部側であり、上端部側から下端部側の方向に延設されているものとする。
【0076】
本実施形態では、4つの極板群40は、略同様の構造をしており、極板群40の積層方向に対して各集箔部60は位置が揃っているとともに、所定の間隔を空けて平行に配置されている。
【0077】
各集箔部60は、正極板21の先端部分、又は負極板22の先端部分を集合させた集合部分62と、階段状部分K1を切り揃えた先端部61と、集合部分62を形成するために先端部分が折り曲げられた湾曲部分63とを備えている。
【0078】
図8を参照して、集電板14について説明する。なお、正極の集電板14と負極の集電板14とは同様の構造を有することから、ここでは区別せず、集電板14として説明する。
【0079】
集電板14は、上下方向に形成されている4つのスリット141を備える。4つのスリット141は、いずれも集箔部60を配置させるものであり、同様の構造を有している。スリット141は、図8において左端に第1延設片142を備え、同右端に第2延設片143を備える。また、第1延設片142と第2延設片143との間には、第3~5延設片144~146を備えている。第3~5延設片144~146は、同様の形状をしているので、第3延設片144について詳述する。
【0080】
第3延設片144は、図8において右側に第2延設片143と同様の形状を有し、同左側に第1延設片142と同様の形状を有している。また、第3延設片144は、上下方向に直交する左右方向の幅が極板群40の集箔部60を挟み込むことが可能な幅に形成されている。同様に、第4,第5延設片145,146はそれぞれ、図8において右側に第2延設片143と同様の形状を有し、同左側に第1延設片142と同様の形状を有している。
【0081】
よって、集電板14の各スリット141はいずれも、右側が第2延設片143と同様の形状を有し、左側が第1延設片142と同様の形状を有しており、先端14Aと、挟み込み部14Bと、基端部14Cとを備えている。
【0082】
そして、積層された4つの極板群40に対して、蓋体12に固定された集電板14が取り付けられる。
図9を参照して、二次電池の製造方法についての手順をフローチャートに基づいて説明する。
【0083】
二次電池の製造方法が開始されると、複数の極板群を作製する極板群準備工程が実行される(図9のステップS20)。極板群準備工程では、第1の実施形態に記載された、積層工程(図6のステップS10)、端末部集合工程(図6のステップS11)、集箔部形成工程(図6のステップS12)、及び、端部切断工程(図6のステップS13)を通じて各極板群40を作製する。
【0084】
次に、作製された4つの極板群40を積層させる極板群積層工程が実行される(図9のステップS21)。極板群積層工程では、作製された4つの極板群40を、集箔部60が積層方向に対して同じ位置、かつ、所定の間隔を空けて平行になるように積層させる。また、4つの極板群40は、積層されるとき、極板群40の間にセパレータ23が少なくとも1枚以上配置されるように構成される。例えば、極板群40の間には、セパレータ23が1枚挟まるように積層してもよいし、2枚挟まるように積層してもよい。極板群40の間にセパレータ23が2枚挟まったとしても、電池性能に影響を与えるおそれは小さい。
【0085】
4つの極板群40が積層されると、極板群40の集箔部60に集電板14を取り付ける集電板当接工程が実行される(図9のステップS22)。集電板14に形成された4つのスリット141に4つの極板群40の各集箔部60がそれぞれ集電板14がスライドされることによって挟み込まれる。
【0086】
4つの集箔部60に各集電板14が取り付けられると、各集箔部60の集合部分62に集電板14のスリット141の挟み込み部14Bをそれぞれ溶接する溶接工程が実行される(図9のステップS23)。溶接工程では、各集電板14が挟み込んでいる集箔部60にレーザ溶接によって溶接される。なお、集電板14には、4つの集箔部60が同時にレーザ溶接されてもよいし、4つの集箔部60が1つずつレーザ溶接されてもよい。
【0087】
蓋体12に固定された集電板14に4つの極板群40の取り付けが完了すると、4つの極板群40を二次電池10として組み上げる組み上げ工程が実行される(図9のステップS24)。組み上げ工程では、第1の実施形態に記載された、収容工程(図6のステップS16)、ケース封止工程(図6のステップS17)、及び、注液工程(図6のステップS18)を通じて二次電池10が組み上げられる。そして、非水電解質27が複数の極板群40のセパレータ23に浸透することで二次電池の製造が終了する。
【0088】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態に記載した効果(1)~(5)に加え、以下に記載するような効果が得られるようになる。
(6)集電板14に複数の極板群40の集箔部60が溶接される。よって、複数の極板群40を有する二次電池を構成することが容易である。
【0089】
(7)複数の極板群40を設けることにより、これらが1つの極板群であった場合に比べて湾曲部分K3を短くすることができるため、切断される階段状部分K1を短くしたり、未塗工部である正極板21や負極板22の先端部分の長さを短くしたりすることができるようになる。
【0090】
(8)極板群40の数を増減させることにより電池容量の相違する二次電池を作製することができるようになる。
(その他の実施形態)
なお上記各実施形態は、以下の態様で実施することもできる。
【0091】
・上記第2の実施形態では、4つの極板群40が積層されている場合について例示したが、これに限らず、積層される極板群は、2つ、3つ、又は5つ以上であってもよい。
・上記各実施形態では、集箔部30は、切り揃えられた先端部31を有する場合について例示したが、これに限らず、集箔部は先端部が切り揃えられていなくてもよい。
【0092】
・上記各実施形態では、リード部214の集箔部30,60は、上端部214aと下端部214bとの間が接合されている場合について例示した。しかしこれに限らず、リード部の集箔部は、上端部と下端部との間の少なくとも一部に設けられていればよいことから、例えば、上端部から集電板の先端が到達する位置までの間が接合されたものであってもよい。換言すると、リード部は、下端部から集電板の先端が到達するまでの間に集箔部が設けられていなくてもよい。
【0093】
例えば、図10に示すように集電板14がリード部214の下端部まで到達しない場合、集箔部30を集電板14の先端14Aが到達する位置付近までとし、先端14Aが到達する位置付近から下端部までには集箔部30を設けなくてもよい。
【0094】
つまり、集箔部30の設けられている部分は、図5に示すように、リード部214の正極基材211の端部が封鎖されている一方、集箔部30の設けられていない部分は、図4に示すように、リード部214の正極基材211の端部が開放されている。リード部214の突出する先端側が開放されていることで、この開放された先端側から極板群20に非水電解質27を浸透させやすくすることができる。特に、非水電解質27の滞留する電池ケース11の下側に配置されるリード部214に集箔部30を設けないことで、集箔部30を設けた極板群20であれ、非水電解質27の浸透性を高く維持することができる。
【0095】
また、集電板14の先端14Aをリード部214の上端部214aに差し込むので、上端部214aに集箔部30が形成されていることが好ましい。
なお、リード部214において集箔部30が設けられる部分は、集電板の取り付けに適切な部分であればよい。
【0096】
例えば、集電板の平面を集箔部30の端面に押し付けて溶接する、いわゆる「端面集電」であれば、集箔部30の剛性が高められることから、集箔部30に集電板を適切な押圧力で押し付けて溶接することができる。このとき、仮に、リード部214が接合されていない複数の薄膜で構成される場合、剛性の低い薄膜に変形が生じたり、端部が短かったりして集電板に適切に溶接されないおそれがある。よって、集箔部30は、集電板がレーザ等で溶接される部分に設けられればよく、例えば、上端部214aに設けられないことがあってもよい。
【0097】
・上記各実施形態では、集電板14と集箔部30,60とをレーザ溶接する場合について例示したが、これに限らず、集電板と集箔部とを電子ビーム溶接してもよいし、抵抗溶接してもよい。
【0098】
・上記各実施形態では、リード部214が中央CHに集められる場合について例示したが、これに限らず、集電板を取り付け可能な集箔部を形成することができるのであれば、リード部が中央から外れた位置に集められてもよい。
【0099】
・上記各実施形態では、リード部214が中央CHの1箇所に集められる場合について例示したが、これに限らず、集電板を取り付け可能な集箔部を形成することができるのであれば、リード部が複数の箇所に集められて集箔部が複数箇所に形成されてもよい。
【0100】
・上記各実施形態では、極板群20,40の両側にそれぞれ集箔部30,60が設けられる場合について例示した。しかしこれに限らず、極板群のいずれか一方に集箔部が設けられてもよい。これによっても、極板群の積層ずれを多少なりとも抑制することができる。
【0101】
・上記各実施形態では、集電部としての集電板14は板状部材である場合について例示したが、これに限らず、集電部は、集箔部に接続可能であれば、柱状など板状以外の形状であってもよい。
【0102】
・上記各実施形態では、二次電池10はリチウムイオン二次電池である場合について例示したが、これに限らず、その他の非水電解質二次電池、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム電池等のアルカリ二次電池、その他の二次電池であってもよい。
【0103】
・二次電池10は、電気自動車もしくはハイブリッド自動車への搭載に限られるものではなく、ガソリン自動車やディーゼル自動車等の車両、鉄道、船舶、及び航空機等の移動体に搭載されてもよいし、ロボットや情報処理装置等の電源として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0104】
10…二次電池、11…電池ケース、12…蓋体、13…外部端子、14…集電板、14A…先端、14B…挟み込み部、14C…基端部、14D…固定部、20…極板群、21…正極板、22…負極板、23…セパレータ、27…非水電解質、30…集箔部、31…先端部、32…集合部分、40…極板群、60…集箔部、61…先端部、62…集合部分、63…湾曲部分、140…延接部、141…スリット、142…第1延設片、143…第2延設片、144…第3延設片、145…第4延設片、146…第5延設片、211…正極基材、211A…第1面、211B…第2面、211C…先端部分、212,213…正極合剤、214,224…リード部、214a…上端部、214b…下端部、214c…中央部、221…負極基材、221A…第1面、221B…第2面、221C…先端部分、222,223…負極合剤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10