(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/072 20060101AFI20220712BHJP
F24F 13/08 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
F24F13/072 A
F24F13/08 A
(21)【出願番号】P 2018125559
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 洋
(72)【発明者】
【氏名】七岡 寛
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
(72)【発明者】
【氏名】熊埜御堂 令
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 香織
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-177027(JP,U)
【文献】実開昭60-079641(JP,U)
【文献】実開昭56-144234(JP,U)
【文献】特開2001-133028(JP,A)
【文献】特開昭48-020344(JP,A)
【文献】国際公開第2014/184958(WO,A1)
【文献】特開2001-153446(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1672486(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/072
F24F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅で延在した吹き出し口から室内に空気を送る送風装置であって、
空気が流れるダクトと、
前記ダクトに接続され、前記ダクトから送風された空気を貯留するチャンバ部と、
前記チャンバ部で貯留された空気を前記吹き出し口まで案内し、前記吹き出し口から空気を吹き出す吹き出し部と、を備えており、
前記チャンバ部は、前記吹き出し口の幅方向に延在し、前記幅方向の中央において前記ダクトに接続されており、
前記チャンバ部と前記吹き出し部には、前記チャンバ部と前記吹き出し部とを連通するように、前記幅方向に沿って間隔をあけて形成された複数の連通口が形成されており、
前記吹き出し部は、前記複数の連通口から流れる空気を前記吹き出し口まで案内する本体と、前記本体の内部において、前記各連通口から流れる空気を仕切るように、前記各連通口同士の間から前記吹き出し口に沿って形成された複数の仕切り板と、を備え
、
前記複数の仕切り板により仕切られた前記本体内の複数の領域において、前記各領域の前記幅方向の大きさは、前記幅方向の中央から前記幅方向の端部に進むにしたがって、大きくなっていることを特徴とする送風装置。
【請求項2】
前記複数の連通口のうち少なくとも前記幅方向の端部側に位置する連通口は、前記仕切り板により仕切られた各領域内において、前記幅方向の中央側に形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の送風装置。
【請求項3】
所定の幅で延在した吹き出し口から室内に空気を送る送風装置であって、
空気が流れるダクトと、
前記ダクトに接続され、前記ダクトから送風された空気を貯留するチャンバ部と、
前記チャンバ部で貯留された空気を前記吹き出し口まで案内し、前記吹き出し口から空気を吹き出す吹き出し部と、を備えており、
前記チャンバ部は、前記吹き出し口の幅方向に延在し、前記幅方向の中央において前記ダクトに接続されており、
前記チャンバ部と前記吹き出し部には、前記チャンバ部と前記吹き出し部とを連通するように、前記幅方向に沿って間隔をあけて形成された複数の連通口が形成されており、
前記吹き出し部は、前記複数の連通口から流れる空気を前記吹き出し口まで案内する本体と、前記本体の内部において、前記各連通口から流れる空気を仕切るように、前記各連通口同士の間から前記吹き出し口に沿って形成された複数の仕切り板と、を備え
、
前記複数の連通口のうち少なくとも前記幅方向の端部側に位置する連通口は、前記仕切り板により仕切られた各領域内において、前記幅方向の中央側に形成されていることを特徴とする送風装置。
【請求項4】
前記複数の連通口の開口面積は、前記幅方向の中央から前記幅方向の端部に進むにしたがって、大きくなっていることを特徴とする請求項1
~3のいずれか一項に記載の送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置に係り、特に、住宅等で室内に空気を送る送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の送風装置として、例えば、特許文献1には、室内を形成する天井部等に配置され、室内に対し、所定の幅で延在したライン状の吹き出し口から、空気を吹き出してカーテン状の気流を生じさせる送風装置が提案されている。この送風装置は、空気を貯留するチャンバ部を備えており、チャンバ部には、気流の方向と直交する方向に仕切り板が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の送風装置では、ライン状に設けられた吹き出し口から吹き出した空気は、その下流において、均一な風速になり難く、吹き出し口の幅に応じた下流のエリアに、均一に空気を送風することが難しい。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、吹き出し口から吹き出した空気を、吹き出し口の幅に応じた下流のエリアに、より均一な流速で送風することができる送風装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明に係る送風装置は、所定の幅で延在した吹き出し口から室内に空気を送る送風装置であって、空気が流れるダクトと、前記ダクトに接続され、前記ダクトから送風された空気を貯留するチャンバ部と、前記チャンバ部で貯留された空気を前記吹き出し口まで案内し、前記吹き出し口から空気を吹き出す吹き出し部と、を備えており、前記チャンバ部は、前記吹き出し口の幅方向に延在し、前記幅方向の中央において前記ダクトに接続されており、前記チャンバ部と前記吹き出し部には、前記チャンバ部と前記吹き出し部とを連通するように、前記幅方向に沿って間隔をあけて形成された複数の連通口が形成されており、前記吹き出し部は、前記複数の連通口から流れる空気を前記吹き出し口まで案内する本体と、前記本体の内部において、前記各連通口から流れる空気を仕切るように、前記各連通口同士の間から前記吹き出し口に沿って形成された複数の仕切り板と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ダクトを流れる空気は、チャンバ部に一旦貯留され、貯留された空気は、吹き出し部で案内されて、所定の幅を有した吹き出し口から室内に吹き出される。ここで、チャンバ部は、幅方向の中央においてダクトに接続されており、チャンバ部および吹き出し部には、幅方向に沿って間隔をあけて形成された複数の連通口が形成されている。これにより、幅方向に沿って1つの長い連通口を設けた場合に比べて、ダクトからチャンバ部の中央に流れた空気がチャンバ部に貯留され、各連通口から均一な流速分布で空気を流すことができる。なお、本発明でいう「幅方向の中央」とは、吹き出し部の幅方向に延在したチャンバ部の両端の間の中心とその中心の近傍のことをいう。
【0008】
さらに、吹き出し部は、各連通口から流れる空気を仕切るように、各連通口同士の間から吹き出し口に沿って形成された複数の仕切り板を備えるため、連通口から流れた空気は、仕切り板同士の間において整流され、吹き出し口から吹き出される。このような結果、吹き出し口から吹き出した空気を、吹き出し口の幅に応じた下流のエリアに、より均一な流速で均一に吹き付けることができる。さらに、仕切り板は、吹き出し部を流れる気流を遮らないため、吹き出し口から、効率良く空気を吹き出すことができる。
【0009】
前記の構成において、吹き出し口の幅に応じた下流のエリアに、より均一な流速で空気を流すことができるのであれば、チャンバ部に形成された複数の連通口の大きさは、特に限定されるものではないが、より好ましい態様としては、前記複数の連通口の開口面積は、前記幅方向の中央から前記幅方向の端部に進むにしたがって、大きくなっている。
【0010】
ここで、チャンバ部の幅方向の中央に接続されたダクトから、チャンバ部の中央に送風される空気の流速は、チャンバ部の幅方向の中央で大きくなる傾向にある。しかしながら、幅方向の中央の連通口の開口面積が小さく、幅方向の端部に進むにしたがって開口面積が大きくなるため、チャンバ部の幅方向の端部の連通口まで、空気を効率良く流すことができ、吹き出し口から吹き出される空気の風速を均一にすることができる。
【0011】
特に、チャンバ部の幅方向の端部の連通口を流れる空気の流速を、他の連通口を流れる空気の流速に比べて高くするように、これらの開口面積を設定すれば、吹き出し口の端部から流れる空気と、略流れの無い室内の空気と間のせん断抵抗による、空気の吹き付け幅の減少を抑えることができる。これにより、吹き出し口の幅に応じた下流のエリアに、より均一な流速で均一に吹き付けることができる。
【0012】
また、各連通口から流れる空気を仕切ることにより、仕切り板同士の間に流れる空気を整流することができるのであれば、仕切り板により仕切られた領域の大きさは、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記複数の仕切り板により仕切られた前記本体内の複数の領域において、前記各領域の前記幅方向の大きさは、前記幅方向の中央から前記幅方向の端部に進むにしたがって、大きくなっている。
【0013】
この態様によれば、各領域の幅方向の大きさは、幅方向の中央から幅方向の端部に進むにしたがって大きくなっているため、圧力の高い幅方向の中央の領域では、間隔が狭い仕切り板同士の間で気流を一方向に向けて安定させることができる。また、圧力の低い幅方向の端部の領域では、空気が流れる領域を広くすることにより、流体抵抗を減らして気流を一方向に向けて安定させることができる。
【0014】
さらに、好ましい態様としては、前記複数の連通口のうち少なくとも前記幅方向の端部側に位置する連通口は、前記仕切り板により仕切られた各領域内において、前記幅方向の中央側に形成されている。
【0015】
この態様によれば、端部側に位置する連通口は、仕切り板により仕切られた各領域内において、幅方向の中央側に形成されているため、各連通口を通過した気流は、吹き出し口の幅よりも広がる方向に流れる。この結果、吹き出し口の幅方向の端部から流れる空気と、略流れのない室内の空気と間のせん断抵抗により、空気の吹き出し幅が僅かに減少したとしても、それ以上の吹き出し幅を確保しているので、吹き出し口の幅に応じた下流のエリアに、より均一な流速で均一に空気を送風することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吹き出し口から吹き出した空気を、吹き出し口の幅に応じた下流のエリアに、より均一な流速で均一に送風することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る送風装置の一実施形態の平面図である。
【
図3】
図1、
図2に示す送風装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す送風装置の要部構成を示す斜視図である。
【
図5】チャンバ部の連通口と吹き出し部の仕切り板における空気の流れを示す説明図である。
【
図6】本実施形態に係る送風装置の作用効果を示すシミュレーション結果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る送風装置の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1~5において、本実施形態の送風装置1は、天井裏等に設置され、天井面2から室内に向けて所定の幅で空気を送る装置であり、具体的には、所定の幅で延在したライン状の吹き出し口17からカーテン状に空気を吹き出す送風装置である。送風装置1は、住宅等の天井面2の上部の空間に設置される。天井面2を構成する石膏ボード等の板材は、間隔を有して配列された複数の角材3で支持されている。
【0019】
送風装置1は、天井面2の上部に設置され、空気が流れるダクト5と、ダクト5に接続され、ダクト5から送風された空気を貯留するチャンバ部10と、貯留された空気を吹き出す吹き出し部15とを備えている。送風装置1は、ダクト5の上流側において、ダクト5に接続されたファン装置6をさらに備えている。
【0020】
本実施形態では、ファン装置6は、ダクト5の上流に接続されており、室内の空気を吸込んで加圧し、ダクト5に空気を送る装置である。ファン装置6は、天井面2の上部にある角材3にねじ等で固定されている。具体的には、ファン装置6は、筐体7に収容された渦巻状のケーシング9と、ケーシング9内に配置されたファン8とを備えており、ケーシング9にはダクト5が接続されている。しかしながら、例えば、他の設備の送風機器等に接続されて、ダクト5に空気が流れるのであれば、送風装置1は、ファン装置6を必ずしも備えなくていなくてもよい。
【0021】
ファン8は、モータ8aに回転自在に接続されており、モータ8aの駆動により、ファン8が回転するように構成されている。これにより、渦巻状のケーシング9で空気が加圧され、加圧された空気を、ダクト5内に流すことができる。
【0022】
ダクト5は、ファン装置6とチャンバ部10とを接続しており、金属板材を螺旋状に巻くことで円筒状に形成されている。なお、ダクト5に伸縮可能のアルミニウム等の蛇腹管や他の素材のパイプを用いてもよい。
【0023】
ダクト5の長さは室内の広さに応じて適宜の長さに設定されている。本実施形態では、ファン装置6の吸込み口6aと吹き出し部15の吹き出し口17との間隔が、少なくとも1m以上となるようにダクト5の長さが設定されていることが好ましい。これにより、吹き出し口17から流れる空気を、直接ファン装置6で吸込むこと(ショートサーキット)を防止することができる。
【0024】
チャンバ部10は、ダクト5から送風された空気を一時的に貯留する機能を有しており、貯留された空気は、後述する複数の連通口13を通して下流側に位置する吹き出し部15に流れるように構成されている。
【0025】
具体的には、チャンバ部10は、吹き出し口17の幅方向(水平方向)に延在しており、幅方向におけるチャンバ部10の中央においてダクト5に接続されている。より具体的には、チャンバ部10は、金属製または樹脂製の板材により、水平方向に幅W1を有する直方体状の筐体11で構成され、内部には、ダクト5からの空気が貯留される空間が形成されている。なお、本明細書でいう「幅方向」とは、長辺と短辺とを有した矩形状の吹き出し口17の長辺方向のことであり、吹き出し口17が、所定の幅で延在した方向のことをいう。
【0026】
チャンバ部10のダクト5が接続される上流側の立面は、水平方向を長辺とした幅W1を有する長方形状をしており、幅方向の中央にダクト5に連通するように接続される連結部12が形成されている。一方、チャンバ部10の下流側の立面には、吹き出し部15の上流側の立面が上下方向にずれて接触しており、チャンバ部10の下流側の立面の下方部分に、吹き出し部15の上流側の立面の上方部分が重なるように連結されている。
【0027】
チャンバ部10と吹き出し部15との重なり部分14には、チャンバ部10と吹き出し部15とを連通するように、チャンバ部10の幅方向に沿って間隔をあけて形成された複数の連通口13(13a~13j)が形成されている。より具体的には、各連通口13は、チャンバ部10の筐体11の内部と、吹き出し部15の筐体16の内部とを連通している。
【0028】
これにより、複数の連通口13(13a~13j)を介して、チャンバ部10で貯留された空気を下流側の吹き出し部15に流すことができる。なお、チャンバ部10と吹き出し部15との重なり部分14において、一方の立面に複数の連通口13が形成され、他方の立面には幅方向の長孔が形成されていてもよい。
【0029】
吹き出し部15は、内部空間を有する筐体16を備えており、筐体16は、金属製または樹脂製の板材で形成されている。筐体16は、チャンバ部10で貯留された空気を吹き出し口17まで案内し、吹き出し口17から室内に空気を吹き出す機能を有しており、複数の連通口13から流れる空気を吹き出し口17まで案内する吹き出し部15の本体である。この筐体16が、本発明でいう吹き出し部の「本体」に相当する。
【0030】
筐体16の内部には、チャンバ部10から連通口13を介して流れ出た空気が通過する空間が形成されている。筐体16に形成された吹き出し口17は、天井面2から室内に向けて、下方に開口している。吹き出し部15(具体的には筐体16)は、吹き出し口17の幅方向(水平方向)に延在しており、水平方向に幅W2を有している。
【0031】
チャンバ部10を構成する筐体11の幅方向の中心は、吹き出し部15を構成する筐体16の幅方向の中心と一致しており、チャンバ部10の水平方向の幅W1より、吹き出し部15の水平方向の幅W2が大きく設定されている。
【0032】
チャンバ部10に対して吹き出し部15は水平方向に両側が突出しており、その突出長さ(突出した部分の幅)は均等になっている。空気を室内に送る吹き出し口17の幅は、1~2mに設定されており、本実施形態では、たとえば1.6mに設定されている。
【0033】
筐体16の内部において、吹き出し部15は、複数の連通口13(13a~13i)の各連通口から流れる空気を仕切るように、各連通口13、13同士の間から吹き出し口17に向かって延在する複数の仕切り板18(18a~18i)を備えている。なお、後述する説明では、連通口の位置を特定する場合、連通口に13a~13jの符号を付し、それ以外の場合、連通口には、13の符号を付し、仕切り板の位置を特定する場合、仕切り板に18a~18iの符号を付し、それ以外の場合、仕切り板には、18の符号を付す。
【0034】
仕切り板18は、各連通口同士13、13の間において、鉛直方向に延在し、吹き出し口17の幅方向と直交する板材で形成されている。本実施形態では、仕切り板18は、中央の仕切り板18aに対して、左側に外側に向けて仕切り板18b、18c、18d、18eがあり、右側に外側に向けて仕切り板18f、18g、18h、18iがあり、合計9枚の仕切り板18が備えられている。これらの仕切り板18は、筐体16内で複数の領域を仕切り(区画し)、区画した各領域内に各連通口13から流れる空気の流れを整流するものである。
【0035】
本実施形態では、上述したように、複数の連通口13の間に、複数の仕切り板18が配置されており、さらに、筐体16の端板16a、16bは、端部に位置する連通口13i、13jの仕切り板として機能する。したがって、複数の連通口13の両側に仕切り板があり、各連通口13を仕切り板18で挟むように配置されることになる。
【0036】
チャンバ部10と吹き出し部15との重なり部分14に形成された複数の連通口13は、チャンバ部10と吹き出し部15の幅方向の中央から、幅方向の端部に進むにしたがって大きくなっており、具体的には中央に位置する連通口13a、13bの開口面積が最小となり、左右の端部に行くにしたがって開口面積が大きくなっており、左端の連通口13iと、右端の連通口13jの開口面積が最大となっている。
【0037】
また、吹き出し部15の内部に備えられた複数の仕切り板18の間隔は、チャンバ部10と吹き出し部15の幅方向の中央から、幅方向の端部に進むにしたがって広くなっている。具体的には、複数の仕切り板18により、幅方向に仕切られた筐体16内の領域において、各領域の幅方向の大きさが、幅方向における吹き出し部15の中央から、幅方向における吹き出し部15の端部に進むにしたがって大きくなっている。
【0038】
より具体的には、中央に位置する仕切り板18aと左隣の仕切り板18bとの間隔、および右隣の仕切り板18fとの間隔が最も狭く、左右の端部に進むにしたがって隣接する仕切り板同士の間隔は広くなっている。そして、左端の仕切り板18eと筐体16の左端の端板(仕切り板)16aとの間隔と、右端の仕切り板18iと筐体16の右端の端板(仕切り板)16bとの間隔が最大となっている。
【0039】
このようにして、間隔が最小の中央の仕切り板18aと左隣の仕切り板18bとの間と、間隔が最小の中央の仕切り板18aと右隣の仕切り板18fとの間には、開口面積が最小の連通口13a、13bが位置することになる。
【0040】
中央の仕切り板18aから幅方向に沿った端部に進むにしたがって、仕切り板18同士の間隔が広くなり、これに伴い連通口13の開口面積も大きくなる。そして、間隔が最大の仕切り板18eと筐体16の左端の端板16aとの間と、間隔が最大の仕切り板18iと右端の端板16bとの間とには、開口面積が最大の連通口13i、13jが位置することになる。
【0041】
さらに、
図4、
図5に示すように、各連通口13a~13jのうち、幅方向の端部側に位置する連通口13c~13jは、仕切り板18a~18iに仕切られた(区画された)各領域内において、吹き出し口17の幅方向の中央側に寄せて形成されている。本実施形態では、
図5において、中央の仕切り板18aの両側に位置する連通口13a、13bは、仕切り板18b、18a、18fの間隔の全幅の幅を有する細長の長方形であり、連通口13a、13bは、中央側に寄せられていない。なお、連通口13a、13bが、中央側(すなわち仕切り板18a側)に寄せられていてもよい。
【0042】
その両脇の仕切り板18bと仕切り板18c間に位置する連通口13c、および、仕切り板18fと仕切り板18g間に位置する連通口13dは、連通口13a、13bに対して幅方向の端部側に位置している。したがって、連通口13cは中央側、すなわち右側に寄せて形成され、連通口13dは中央側、すなわち左側に寄せて形成されている。
【0043】
同様に、仕切り板18cと仕切り板18d間に位置する連通口13e、仕切り板18dと仕切り板18e間に位置する連通口13g、および、一番左側に位置する連通口13iは、中央側、すなわち右側に寄せて形成されている。さらに、仕切り板18gと仕切り板18h間に位置する連通口13f、仕切り板18hと仕切り板18i間に位置する連通口13h、および、一番右側に位置する連通口13jは、中央側、すなわち左側に寄せて形成されている。
【0044】
前記の如く構成された本実施形態の送風装置の作用について以下に説明する。ファン装置6を作動させると、モータ8aによりファン8が回転され、ケーシング9内をファン8が回ることで
図1において右回転の気流が発生し、気流が発生した空気は、ダクト5内に流れる。ダクト5を流れた空気は、中央の連結部12からチャンバ部10内に貯留される。
【0045】
チャンバ部10内では、貯留された空気により空気が加圧され、加圧された空気はチャンバ部10と吹き出し部15との重なり部分14に形成された複数の連通口13を通して、吹き出し部15に流される。そして、吹き出し部15内の空気は、筐体16により吹き出し口17に案内されて、ライン状の広い幅で室内空間に吹き出される。
【0046】
このような結果、幅方向に沿って1つの長い連通口を設けた場合に比べて、ダクト5からチャンバ部10の中央に流れた空気がチャンバ部10に貯留され、各連通口13から均一な流速分布で空気を流すことができる。
【0047】
さらに、連通口13から流れた空気は、仕切り板18同士の間において整流され、吹き出し口17から吹き出される。このような結果、吹き出し口17から吹き出した空気を、吹き出し口17の幅に応じた下流のエリアに、より均一な流速で均一に送風することができる。さらに、仕切り板18は、吹き出し部を流れる気流を遮らないため、吹き出し口17から、効率良く空気を吹き出すことができる。
【0048】
さらに、チャンバ部10から吹き出し部15に複数の連通口13を通して空気が流れる際に、中央の連通口13a、13bは開口面積が小さいため、空気の流量は制限され、制限された空気は、チャンバ部10の端部側の連通口13c~13j側に向かって流れる。連通口13c~13jは、幅方向の端部に進むにしたがって開口面積が大きくなるため、これらの順に、連通口13c~13jを通過する空気の流量の制限が緩和される。この結果、チャンバ部10の幅方向の端部の連通口13i、13jまで、空気を効率良く流すことができ、吹き出し口17から吹き出される空気の風速を均一にすることができる。
【0049】
これに加えて、複数の仕切り板18により仕切られた筐体16内の領域の幅方向の大きさが、吹き出し部15の中央から端部に進むにしたがって大きくなっているので、圧力の高い幅方向の中央の領域では、間隔が狭い仕切り板18a、18b(18c)同士の間で気流を一方向に向けて安定させることができる。圧力の低い幅方向の端部の領域では、空気が流れる領域を広くすることにより、流体抵抗を減らして気流を一方向に向けて安定させることができる。しかも、各連通口13a~13jは、仕切り板18の間において、吹き出し部の幅方向の中央側に寄せて形成されているため、各連通口13a~13jを通過した空気は、すぐに仕切り板18a~18iに直接当たることがなくなり、円滑な状態に空気を整流することができる。
【0050】
さらに、中央の連通口13a、13bよりも端部側に位置する連通口13c~13jは、仕切り板18b~18iにより仕切られた各領域内において、幅方向の中央側に形成されているため、
図5に示すように、各連通口13c~13jを通過した気流は、吹き出し口17の幅よりも広がる方向に流れる。
【0051】
この結果、吹き出し口17の幅方向の端部から流れる空気と、略流れのない室内の空気と間のせん断抵抗により、空気の吹き出し幅が僅かに減少したとしても、それ以上の吹き出し幅を確保しているので、吹き出し口17の幅に応じた下流のエリアに、より均一な流速で均一に送風することができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、吹き出し部15の吹き出し口17から室内に向けて吹き出された空気は、基本的には室内空間を循環し、ファン装置6の吸込み口6aのガラリから吸込まれる。このようにして、ファン装置6、ダクト5、チャンバ部10、吹き出し部15を循環する空気流が形成される。
【0053】
図6は、本実施形態に係る送風装置の作用効果を示すシミュレーション結果の説明図である。(a)は、吹き出し口17の水平方向と直交する方向から視た、送風装置から吹き出される空気の風速の分布を示しており、(b)は、床面から1200mmの水平面Pを流れる空気の風速を示している。
【0054】
図6では、吹き出し口の幅方向の大きさが1.4mとなる吹き出し口を有する吹き出し部15を天井面2に設置し、吹き出し口17から1.0m/sの速度で空気を吹き出したときの気流の流れを解析した。吹き出し口17の近傍では、風速の大きい0.9~1.0m/sを示す気流の領域A1が形成されており、空気は床面90側に向かって流れている。
【0055】
領域A2で示す気流は、風速が0.7~0.8m/s程度であり、拡散が進まずに平坦に下方に広がっている。風速が0.5~0.6m/s程度の気流も、領域A3で示すように、平坦な状態で広がる気流となっている。風速が0.2~0.4m/s程度の気流も、領域A4、領域A5で示すように、平坦な状態で広がる気流となっている。
【0056】
床面90に向かう空気は、床面90から高さ1200mmの位置で、吹き出し口17の幅方向に対して1600mの幅で、幅方向に直交する方向では500mmの範囲で送風され、0.3~0.6m/sの風速が確保されて、均一な気流が得られた。
【0057】
通常、幅広の吹き出し部に空気を送り、幅広の吹き出し口から室内に空気を吹き出す場合には、基本的には吹き出された空気は中央が強く、風量も多く、外側に進むにしたがって風速および風量が少なくなる。しかしながら、
図6に示す結果から、本実施形態に係る送風装置1では、吹き出し口17から吹き出される空気は、複数の連通口13により均一に流れ、複数の仕切り板18で整流されるため、幅方向において風量および風速が均一な気流を吹き出すことが可能となったと考えられる。
【0058】
このように、吹き出し口17から吹き出される気流の効果範囲では、風速のばらつきが少なく、緩やかな安定した気流で涼感を感じることができる。このため、室内にいる人に不快な気流を感じさせることがなく、空調する際の設定温度を高めにしても心地よい涼感を感じることができ、空調の電気代を抑えることができる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0060】
1:送風装置、2:天井面、5:ダクト、6:ファン装置、10:チャンバ部、11:筐体、13,13a~13j:連通口、14:チャンバ部と吹き出し部との重なり部分、15:吹き出し部、16:筐体(本体)、17:吹き出し口、18,18a~18i:仕切り板