(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】蓋体開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/34 20140101AFI20220712BHJP
E05B 81/18 20140101ALI20220712BHJP
E05C 19/02 20060101ALI20220712BHJP
B60K 15/05 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
E05B83/34
E05B81/18
E05C19/02 A
B60K15/05 B
(21)【出願番号】P 2018135090
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼山 年雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-106478(JP,A)
【文献】特開2002-89106(JP,A)
【文献】特開昭58-146680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0239646(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05C 19/02
B60K 15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉する蓋体の開閉装置において、
第1位置と第2位置との間を変位するロッドと、
前記ロッドが出没可能に挿入された挿入穴を有する筒状のケーシングと、
前記ロッド及び前記ケーシングに対して変位可能な閂部材であって、「前記蓋体に設けられた被係止部に対して係止可能となるロック位置」と「前記被係止部に対して係止不可となる開放位置」との間で変位可能な閂部材と、
前記ロッドを当該ロッドの中心軸線と平行な方向に変位させる力を利用して前記閂部材を変位させる変位機構とを具備し、
前記閂部材は、前記ロック位置と前記開放位置との間で回転変位可能であり、
前記変位機構は、
前記ロッドが前記第1位置側から前記第2位置側に変位する際に当該ロッドに作用する力の少なくとも一部を、前記閂部材を前記開放位置側から前記ロック位置側に回転変位させる力に変換する変換部を備え、
前記ロッドの一部が前記ケーシングから突出した位置を突出位置とし、当該一部の少なくとも一部が前記ケーシング内に格納された位置を格納位置としたとき、
前記変換部は、
前記閂部材のうち当該閂部材の回転中心からずれた位置に設けられ、当該閂部材と一体的に回転変位する当接部、及び
前記ロッドに設けられ、当該ロッドが前記突出位置側から前記格納位置側に変位する際に前記当接部に接触する被当接部を有している蓋体開閉装置。
【請求項2】
前記当接部は、前記回転中心側から前記ロッド側に向かう向きに突出した少なくとも1つの突起部により構成され、
前記被当接部は、前記ロッド側から前記回転中心側に向かう向きに突出した少なくとも1つの突起部により構成されている請求項1に記載の蓋体開閉装置。
【請求項3】
前記閂部材は、前記ケーシングに回転可能に支持されており、
さらに、前記変位機構は、前記閂部材を前記ロック位置側から前記開放位置側に向けて回転変位させる弾性力を発揮可能なばねを備える請求項1又は2に記載の蓋体開閉装置。
【請求項4】
前記ロッドに押圧力が作用する度に当該ロッドを前記第1位置と前記第2位置との間で交番変位させる交番機構を具備する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の蓋体開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓋体を開閉するための蓋体開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の蓋体開閉装置は、蓋体を開く向きに押圧するプッシュリフタ、開口を閉じた位置に蓋体を維持するロック部材、並びにラック、ピニオン、減速機及び電動モータを有して構成された駆動装置を備えている。駆動装置は、係止位置と開放位置との間でロック部材を変位させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、プッシュリフタ等のプッシュロッドに加えて、ラック、ピニオン、減速機及び電動モータを有して構成された駆動装置を必要とするので、蓋体開閉装置の構成が複雑になってしまう。
【0005】
本開示は、上記点に鑑み、構成の複雑化を抑制可能な蓋体開閉装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開口部を開閉する蓋体(3)の開閉装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、当該構成要件は、第1位置と第2位置との間で変位可能なロッド(51)と、ロッド(51)及びケーシング(52)に対して変位可能な閂部材(57)であって、「蓋体(3)に設けられた被係止部(3B)に対して係止可能となるロック位置」と「被係止部(3B)に対して係止不可となる開放位置」との間で変位可能な閂部材(57)と、ロッド(51)を当該ロッド(51)の中心軸線(Lp)と平行な方向に変位させる力を利用して閂部材(57)を変位させる変位機構(54)とである。
【0007】
そして、閂部材(57)は、ロック位置と開放位置との間で回転変位可能であり、変位機構(54)は、ロッド(51)が第1位置側から第2位置側に変位する際に当該ロッド(51)に作用する力の少なくとも一部を、閂部材(57)を開放位置側からロック位置側に回転変位させる力に変換する変換部(58)を備える。
【0008】
変換部(58)は、閂部材(57)のうち当該閂部材(57)の回転中心からずれた位置に設けられ、当該閂部材(57)と一体的に回転変位する当接部(58A)、及びロッド(51)に設けられ、当該ロッド(51)が突出位置側から格納位置側に変位する際に当接部(58A)に接触する被当接部(58D)を有していることが望ましい。
【0009】
これにより、当該蓋体開閉装置では、ロッド(51)の変位に機械的に連動して閂部材(57)がロック位置と開放位置との間で変位する。したがって、当該蓋体開閉装置から上記駆動装置を廃止することが可能となるので、蓋体開閉装置の構成が複雑になることが抑制され得る。
【0010】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る蓋体開閉装置を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る蓋体開閉装置を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る交番機構の分解図である。
【
図4】第1実施形態における開放位置及び突出位置を示す図である。
【
図5】第1実施形態におけるロック位置及び格納位置を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る交番機構の作動説明図である。
【
図7】第1実施形態に係る交番機構の作動説明図である。
【
図8】第1実施形態に係る蓋体開閉装置の作動説明図である。
【
図9】第1実施形態に係る蓋体開閉装置の作動説明図である。
【
図10】第1実施形態に係る閂部材及びプッシュロッドを示す図である。
【
図11】第1実施形態に係るプッシュロッドを示す図である。
【
図12】第1実施形態に係る閂部材を示す図である。
【
図13】第1実施形態に係る閂部材及びプッシュロッドを示す図である。
【
図14】第1実施形態に係る閂部材及びプッシュロッドを示す図である。
【
図15】第1実施形態に係る交番機構の作動説明図である。
【
図16】第1実施形態に係る蓋体開閉装置の作動説明図である。
【
図17】第1実施形態に係る蓋体開閉装置の作動説明図である。
【
図18】第2実施形態における開放位置及び突出位置を示す図である。
【
図19】第2実施形態におけるロック位置及び格納位置を示す図である。
【
図20】第3実施形態に係る蓋体開閉装置を示す図である。
【
図21】第3実施形態に係る蓋体開閉装置を示す図である。
【
図22】第3実施形態における開放位置及び突出位置を示す図である。
【
図23】第3実施形態における開放位置及び突出位置からロック位置側及び格納位置側に変位した状態を示す図である。
【
図24】第3実施形態における開放位置及び突出位置からロック位置側及び格納位置側に変位した状態を示す図である。
【
図25】第3実施形態におけるロック位置及び格納位置を示す図である。
【
図26】第3実施形態における開放位置及び突出位置を示す図である。
【
図27】第4実施形態における開放位置及び突出位置を示す図である。
【
図28】第4実施形態におけるロック位置及び格納位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0013】
なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載されたものである。本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0014】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された蓋体開閉装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素を備える。
【0015】
(第1実施形態)
1.蓋体開閉装置の概要
本実施形態は、本開示に係る蓋体開閉装置の一例を車両に適用したものである。具体的には、
図1に示されるように、当該蓋体開閉装置1は、蓋体3の開閉作動を制御する装置の一例である。
【0016】
蓋体3は、車両の給油口(図示せず。)を開閉する閉塞体の一例である。給油口は、車両の外板(図示せず。)に設けられた開口部の一例である。蓋体3は、ヒンジ部3Aを介して当該外板に装着される。当該蓋体3は、紙面と直交する仮想線を回転中心線として、当該外板に対して回転可能である。
【0017】
2.蓋体開閉装置の構成
2.1 蓋体開閉装置の概要
蓋体開閉装置1は、
図2に示されるように、ロッド装置5及びロック装置7等を少なくとも備える。ロッド装置5は蓋体3の開閉作動を制御するための装置である。ロック装置7は、ロッド装置5の作動を規制するための装置である。
【0018】
2.2 ロッド装置の構成
ロッド装置5は、
図3に示されるように、プッシュロッド51、ロッドケーシング52、閂部材53、変位機構54及び交番機構55等を少なくとも有する。
【0019】
<プッシュロッド>
プッシュロッド51は、突出位置(
図4参照)と格納位置(
図5参照)との間を変位する棒状の部材である。プッシュロッド51は、当該プッシュロッド51の長手方向の押圧力F(
図4、
図5参照)を受ける度に、突出位置と格納位置との間を交番変位する。
【0020】
つまり、プッシュロッド51は、突出位置にあるときに押圧力Fを受けると、当該押圧力Fにより格納位置に変位にする。プッシュロッド51は、格納位置にあるときに、押圧力Fを受けると、ばね55A(
図3参照)の弾性力により突出位置に変位する。
【0021】
突出位置とは、
図4に示されるように、プッシュロッド51の一部51Aがロッドケーシング52から突出した位置である。格納位置とは、
図5に示されるように、当該一部51Aの少なくとも一部がロッドケーシング52内に格納された位置である。なお、突出位置は第1位置の一例である。格納位置は第2位置の一例である。
【0022】
ロッドケーシング52は、
図4に示されるように、プッシュロッド51が出没可能に挿入された挿入穴52Aを有する筒状の部材である。挿入穴52Aの断面形状は、プッシュロッド51が当該プッシュロッド51の中心軸線Lp(
図3参照)を中心として回転することを規制可能な形状(例えば、矩形状)である。
【0023】
<交番機構>
交番機構55は、プッシュロッド51を交番変位させるための機構である。当該交番機構55は、
図3に示されるように、ばね55A、第1カム55B、第2カム55C、規制筒55D及び軸部材55E等を少なくとも有する。
【0024】
ばね55Aは、
図7における紙面上方向きの弾性力を発揮可能なばねである。「
図7における紙面上方向き」とは、格納位置側から突出位置側に向かう向きである。以下、当該向きを「突出の向きD1」という。突出の向きD1と反対向きを「格納の向きD2」という。
【0025】
第1カム55B及び第2カム55Cには、
図6に示されるように、軸部材55Eが回転可能に挿入されている。軸部材55Eは、中心軸線Lpと共通の中心軸線を有し、かつ、圧入等の固定手法によりプッシュロッド51に一体化されている。
【0026】
つまり、第1カム55B及び第2カム55Cは、中心軸線Lpを中心線として回転可能な状態でプッシュロッド51に一体化されている。第1カム55Bの外周面には、少なくとも1つ(本実施形態では、3つ)の突起部55Fが設けられている。
【0027】
第2カム55Cの外周面にも、少なくとも1つの突起部55Gが設けられている。本実施形態に係る突起部55Gは、突起部55Fと同数である。各突起部55F及び各突起部55Gは、それぞれ外周面から中心軸線Lpと直交する方向に向けて突出している。
【0028】
規制筒55Dの外周壁55Hには、
図3に示されるように、突起部55Gと同数の溝部55Jが設けられている。それらの溝部55Jは、中心軸線Lpと平行に規制筒55Dの端部まで延びている。
【0029】
複数の突起部55Fそれぞれは、複数の溝部55Jそれぞれに嵌り込んだ状態で、当該溝部55J内において溝部55Jの延び方向に沿って変位可能である(
図6及び
図7参照)。つまり、第1カム55Bは、中心軸線Lp周りに回転することなく、中心軸線Lp方向に平行変位する。
【0030】
複数の突起部55Gそれぞれは、各溝部55Jのいずれかに嵌り込んだ状態(
図6参照)と当該溝部55Jから離脱した状態(
図7参照)との間で変位可能である。つまり、各突起部55Gがいずれかの溝部55Jに嵌り込んだ状態においては、第2カム55Cは、中心軸線Lp周りに回転することなく、中心軸線Lp方向に平行変位する。
【0031】
各突起部55Gが溝部55Jから離脱した状態では、第2カム55Cは、中心軸線Lp周りに回転可能な状態となる。規制筒55Dの端部、つまり各溝部55Jの延び方向開放端側には、各突起部55Gと係合可能な係合突起部55Kが少なくとも1つ設けられている。
【0032】
各係合突起部55Kは、規制筒55Dの端部から格納の向きD2に向けて突出した突起部である。そして、いずれかの突起部55Gがいずれかの係合突起部55Kに引っ掛かって係合した状態(以下、係合状態という。)では、第2カム55Cの回転が規制される。
【0033】
各係合突起部55Kの根元位置は、各溝部55Jの延び方向開放端に対して突出の向きD1側にずれている。ばね55Aは、第2カム55Cを常に突出の向きD1に押圧している。このため、
図7に示される状態においては、ばね55Aの弾性力は、突起部55Gと係合突起部55Kとの係合状態を維持する力として機能する。
【0034】
第1カム55B及び第2カム55Cは、
図6に示されるように、格納の向きD2の押圧力Fを回転力Frに変換する機能を発揮可能である。回転力Frは、第2カム55Cを当該矢印の向きに回転させる力である。
【0035】
すなわち、第1カム55Bには、傾斜面55Lが少なくとも1つ(本実施形態では、複数)設けられている。第2カム55Cには、傾斜面55Mが少なくとも1つ(本実施形態では、複数)設けられている。
【0036】
各傾斜面55L、55Mは、押圧力Fの向きに対して傾いた面である。各傾斜面55L、55Mの傾斜の向きは、傾斜面55Lと傾斜面55Mとが接触したときに、傾斜面55Mで発生する押圧力Fの分力が回転力Frとなる向きである。
【0037】
<閂部材>
閂部材53は、プッシュロッド51及びロッドケーシング52に対して変位可能、かつ、ロック位置(
図9参照)と開放位置(
図8参照)との間で変位可能な部材である。ロック位置は、
図9に示されるように、被係止部3Bに対して閂部材53が係止可能となる位置である。
【0038】
被係止部3Bは蓋体3に設けられた部位である。当該被係止部3Bは、中心軸線Lpと交差する面を有して構成されている。本実施形態に係る被係止部3Bは、箱状の被係止体3Cを介して蓋体3に一体化されている。
【0039】
被係止体3Cのうちプッシュロッド51に面した部位には、プッシュロッド51が貫通可能な貫通穴3Dが設けられている。当該被係止部3Bは、貫通穴3Dの外縁部に設けられている。
【0040】
開放位置は、
図8に示されるように、被係止部3Bに対して係止不可となる位置であって、ロック位置より中心軸線Lpに近接した位置である。換言すれば、ロック位置は、開放位置に対して中心軸線Lpと交差する方向にずれた位置にある。つまり、閂部材53は、中心軸線Lpと交差する方向に変位する。
【0041】
<変位機構>
変位機構54は、プッシュロッド51を中心軸線Lpと平行な方向に変位させる力(以下、押圧力Fという。)を利用して閂部材53を変位させる機構である。押圧力Fの源は、運転者等の利用者が蓋体3を閉じる向きに「押圧する力」である。つまり、押圧力Fは、当該「押圧する力」のうち中心軸線Lpと平行な成分の力である。
【0042】
利用者が蓋体3を押圧した力は、押圧部3Eを介してプッシュロッド51に伝達される。押圧部3Eは、蓋体3のプッシュロッド51側の部位に設けられている。本実施形態に係る押圧部3Eは、被係止体3C内に位置している。
【0043】
変位機構54は、少なくとも変換部56を有する。変換部56は、押圧力Fの少なくとも一部を作動力Fdに変換可能である。押圧力Fは、プッシュロッド51が突出位置側から格納位置側に変位する際に当該プッシュロッド51に作用する力の一例である。作動力Fdは、閂部材53を開放位置側からロック位置側に変位させる力である。
【0044】
変換部56は、
図10に示されるように、カム部56A及び従動部56C等を少なくとも有して構成されている。カム部56Aは、
図11に示されるように、中心軸線Lpに対して傾斜したテーパ面56Bが設けられた部位であって、プッシュロッド51と一体的に変位する部位である。
【0045】
つまり、カム部56Aは、プッシュロッド51の先端側に設けられたテーパ面56Bにより構成されている。従動部56Cは、テーパ面56Bと滑り接触又は転がり接触(本実施形態では、滑り接触)する部位であって、
図12に示されるように、閂部材53に一体化された部位である。
【0046】
本実施形態に係る従動部56Cは、2つの三角状壁部56D、56Eにより構成されている。当該2つの三角状壁部56D、56Eは、補強壁56F(
図11参照)を幅方向から挟み込む位置に設けられている。幅方向とは、中心軸線Lp及び閂部材53の変位方向と直交する方向である。
【0047】
補強壁56Fの幅方向中間部には、空隙部56G(
図11参照)が設けられている。当該空隙部56Gには、復帰ばね54A(
図12参照)が収納されている。復帰ばね54Aは、閂部材53を開放位置に向けて変位させる弾性力(以下、復帰力という。)を発揮可能なばねである。
【0048】
本実施形態に係る復帰ばね54Aは、
図13に示されるように、引っ張りコイルばねである。当該復帰ばね54Aは、一端側が閂部材53に係止され、他端側がプッシュロッド51に係止されている。
【0049】
従動部56C、つまり三角状壁部56D、56Eそれぞれには、規制部56Hが設けられている。規制部56Hは、第1被規制部51B及び第2被規制部52Bと滑り接触可能な部位である。
【0050】
第1被規制部51Bは、プッシュロッド51に設けられた面であって、中心軸線Lpと交差(本実施形態では、直交)する平面である。これにより、閂部材53が開放位置にある場合に、当該閂部材53がプッシュロッド51に対して変位してしまうことが規制される。
【0051】
つまり、本実施形態に係る復帰ばね54Aは、テーパ面56Bと平行な方向に伸縮する。このため、当該復帰ばね54Aの発揮する弾性力には、復帰力に加えて、従動部56Cを格納の向きD2に変位させる力が発生する。
【0052】
そして、規制部56Hが第1被規制部51Bと接触すると、規制部56Hが第1被規制部51Bに接触して当該第1被規制部51Bがストッパとして機能する。このため、閂部材53がプッシュロッド51に対して変位してしまうことが規制される。
【0053】
第2被規制部52Bは、閂部材53が開放位置からロック位置に変位する際に、規制部56Hと滑り接触する。当該第2被規制部52Bは、ロッドケーシング52等の不動部分に設けられている。
【0054】
第2被規制部52Bは、中心軸線Lpと交差(本実施形態では、直交)する平面にて構成されている。規制部56Hが第2被規制部52Bと接触した状態では、閂部材53がプッシュロッド51と共に中心軸線Lpに沿って変位してしまうことが規制される。
【0055】
なお、本実施形態に係る第2被規制部52Bは、挿入穴52Aの内方に設けられている。このため、挿入穴52Aの入口部は、第2被規制部52Bを有する段付き状に構成されている。
【0056】
<ロック装置>
ロック装置7は、プッシュロッド51を格納位置に保持するための機能を発揮する。具体的には、ロック装置7は、
図14に示されるように、ロック棒7A等を少なくとも有する。
【0057】
ロック棒7Aは、ロッドケーシング52を貫通して凹部51Cに嵌り込み可能な部材である。凹部51Cは、プッシュロッド51に設けられている。ロック棒7Aが凹部51Cに嵌り込んだ状態では、プッシュロッド51は不動状態となる。
【0058】
すなわち、ロッドケーシング52は、
図2に示されるように、ハウジング9に固定されている。ハウジング9は車両に固定されている。ロック棒7Aは、凹部51Cに嵌り込んだ位置と凹部51Cから離脱した位置との間で変位可能である。
【0059】
ロック棒7Aは、ヘリカルラック7Bに一体化されている。ヘリカルラック7Bは、ロッドケーシング52の長手方向と直交する方向に変位可能である。当該ヘリカルラック7Bは、ヘリカル歯車7Cから力を得て変位する。
【0060】
ヘリカル歯車7Cは、ウォーム7Dから回転力を得て回転可能である。ウォーム7Dは、電動モータ7Eにより回転駆動される。本実施形態に係る電動モータ7E、つまりロック装置7は、乗降用ドア(図示せず。)の施錠装置(図示せず。)と連動して作動する。
【0061】
具体的には、電動モータ7Eは、施錠装置が施錠状態になると、ロック棒7Aが凹部51Cに嵌り込み、かつ、施錠装置が解錠状態になると、ロック棒7Aが凹部51Cから離脱するように作動する。
【0062】
3.開閉装置の作動
3.1 交番機構の作動
交番機構55は、プッシュロッド51に押圧力Fが作用する度に当該プッシュロッド51を突出位置と格納位置との間で変位させる。プッシュロッド51が突出位置にある場合、交番機構55は
図6に示される状態である。
【0063】
図6に示される状態、つまり突出位置にあるプッシュロッド51に押圧力Fが作用すると、複数の突起部55F及び複数の突起部55Gそれぞれは、複数の溝部55Jのいずれかに嵌り込んだ状態で、押圧力Fの向き、つまり格納の向きD2に変位する。
【0064】
複数の突起部55Gそれぞれが各溝部55Jの延び方向開放端に到達すると(
図15参照)、第2カム55Cに作用する回転力Frにより、各突起部55Gが中心軸線Lp周りに回転する。
【0065】
これにより、いずれかの突起部55Gがいずれかの係合突起部55Kに係合して係合状態となる(
図7参照)。このとき、当該係合状態は、ばね55Aの弾性力により維持されるので、プッシュロッド51が格納状態に維持される。
【0066】
図7に示される状態、つまり格納位置にあるプッシュロッド51に押圧力Fが作用すると、第2カム55Cが格納の向きD2に変位し、各突起部55Gが各係合突起部55Kから外れる。
【0067】
このとき、第2カム55Cに作用する回転力Frにより、各突起部55Gが案内部55N(
図15参照)に沿って中心軸線Lp周りに回転する。このため、各突起部55Gはいずれかの溝部55Jに延び方向開放端に案内される。
【0068】
そして、押圧力Fが消失すると、複数の突起部55F及び複数の突起部55Gそれぞれは、複数の溝部55Jのいずれかに嵌り込んだ状態で、ばね55Aの弾性力により突出の向きD1に変位するので、プッシュロッド51が突出位置に復帰する。
【0069】
なお、案内部55Nは、規制筒55Dの端部に設けられた傾斜面である。当該案内部55Nの傾きは、傾斜面55L、55Mと同一の向きの傾きである。各突起部55Gの頂部55Pは、
図15に示されるように、滑らかな曲面にて構成されている。
【0070】
3.2 変位機構の作動
プッシュロッド51が突出位置にある場合、閂部材53は、
図8に示されるように、開放位置にある。プッシュロッド51が突出位置にある状態で、当該プッシュロッド51に押圧力Fが作用すると、閂部材53とプッシュロッド51とは一体として格納の向きD2に変位する。
【0071】
そして、規制部56Hが第2被規制部52Bに接触すると(
図16参照)、閂部材53が格納の向きD2に変位することが規制されるとともに、押圧力F少なくとも一部が、変換部56により作動力Fdに変換され始める。
【0072】
これにより、閂部材53は、
図17→
図9の順に示されるように、開放位置からロック位置に向けて変位する。そして、プッシュロッド51が格納位置になると、閂部材53がロック位置となり、当該閂部材53と被係止部3Bとが係止状態となるため、給油口を閉じる位置に蓋体3が保持される。
【0073】
図9に示される状態において、プッシュロッド51に押圧力Fが作用すると、前述したように、当該プッシュロッド51は突出位置に向けて変位する。このとき、閂部材53は、復帰ばね54Aの弾性力により、ロック位置から開放位置に復帰する。
【0074】
4.本実施形態に係る蓋体開閉装置の特徴
蓋体開閉装置1は、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備える。
すなわち、当該構成要件は、突出位置と格納位置との間で変位可能なプッシュロッド51と、プッシュロッド51及びロッドケーシング52のうち少なくとも一方に対して変位可能、かつ、ロック位置と開放位置との間で変位可能な閂部材53と、プッシュロッド51を中心軸線Lpと平行な方向に変位させる力を利用して閂部材53を変位させる変位機構54とである。
【0075】
これにより、当該蓋体開閉装置1では、プッシュロッド51の変位に機械的に連動して閂部材53がロック位置と開放位置との間で変位する(
図8、
図9、
図16及び
図17参照)。したがって、蓋体開閉装置1は、特許文献1に記載の駆動装置が廃止された構成となる。このため、蓋体開閉装置1の構成が複雑になることが抑制され得る。
【0076】
プッシュロッド51に押圧力Fが作用する度に当該プッシュロッド51を突出位置と格納位置との間で交番変位させる交番機構55を備える。これにより、プッシュロッド51を容易に往復動させることが可能となる。
【0077】
変位機構54は、押圧力Fの少なくとも一部を、開放位置側からロック位置側に閂部材53を変位させる力に変換する変換部56を備えている。これにより、蓋体開閉装置1は、閂部材53をロック位置とすることができる。
【0078】
変位機構54は、閂部材53を開放位置に向けて変位させる弾性力を発揮可能な復帰ばね54Aを備えている。これにより、蓋体開閉装置1は、閂部材53を開放位置とすることができる。
【0079】
変換部56は、テーパ面56Bが設けられたカム部56A、及びテーパ面56Bと滑り接触する従動部56Cを有している。これにより、蓋体開閉装置1は、押圧力Fを確実に作動力Fdに変換できる。
【0080】
変換部56は、不動箇所に設けられた第2被規制部52Bと滑り接触可能な規制部56Hを有し、規制部56Hが第2被規制部52Bと接触した状態では、閂部材53がプッシュロッド51と共に中心軸線Lpに沿って変位してしまうことが規制される。これにより、蓋体開閉装置1は、押圧力Fを確実に作動力Fdに変換できる。
【0081】
ロッドケーシング52には、プッシュロッド51が出没可能に挿入された挿入穴52Aが設けられ、第2被規制部52Bは、挿入穴52Aの内方に設けられ、当該挿入穴52Aの入口部は、第2被規制部52Bを有する段付き状に構成されている。
【0082】
これにより、プッシュロッド51が格納位置にあるときに、当該プッシュロッド51先端側が広範囲でロッドケーシング52内に収納された状態となり得る。これにより、プッシュロッド51及び閂部材53をロッドケーシング52にて保護することが可能となり得る。
【0083】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る蓋体開閉装置1は、1つの閂部材53を備える構成であった。これに対して、本実施形態に係る蓋体開閉装置1では、
図18及び
図19に示されるように、複数(本実施形態では、2つ)の閂部材53を備える。
【0084】
以下の説明は、上述の実施形態に係る蓋体開閉装置1との相違点に関する説明である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0085】
2つの閂部材53、つまり第1閂部材53A及び第2閂部材53Bは、プッシュロッド51を挟んで対称の位置に設けられている。これに伴い、変位機構54は、2つの変換部56、つまり第1変換部561及び第2変換部562を有して構成されている。
【0086】
第1変換部561と第2変換部562とは、プッシュロッド51を挟んで対称な構成である。第1変換部561及び第2変換部562それぞれの構成は、第1実施形態に係る変換部56と同様な構成である。本実施形態に係る復帰ばね54Aは、略矩形枠状のばねにて構成されている。
【0087】
なお、
図18では、プッシュロッド51は突出位置にあり、第1閂部材53A及び第2閂部材53Bは開放位置にある。
図19では、プッシュロッド51は格納位置にあり、第1閂部材53A及び第2閂部材53Bはロック位置にある。
【0088】
(第3実施形態)
上述の実施形態に係る蓋体開閉装置1の閂部材53は、プッシュロッド51に対して中心軸線Lpと略直交する方向に平行変位することにより、ロック位置と開放位置との間を変位する構成であった。これに対して、本実施形態に係る蓋体開閉装置1の閂部材57は、
図20及び
図21に示されるように、ロック位置と開放位置との間で回転変位可能な構成である。
【0089】
以下の説明は、上述の実施形態に係る蓋体開閉装置1との相違点に関する説明である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0090】
<変換部の概要>
本実施形態に係る変位機構54が有する変換部58は、プッシュロッド51が突出位置側から格納位置側に変位する際にプッシュロッド51に作用する力の少なくとも一部を、閂部材53を開放位置側からロック位置側に回転変位させる力に変換する。
【0091】
<変換部の詳細>
閂部材57は、
図22に示されるように、軸部57Aを介してロッドケーシング52に回転変位可能に支持されている。当該軸部57Aは、閂部材57を貫通してロッドケーシング52に装着されている。
【0092】
軸部57Aの中心軸線は、プッシュロッド51の中心軸線Lpに対してねじれの位置にある。したがって、閂部材57は、プッシュロッド51の中心軸線Lp周りに回転しない。閂部材57は、中心軸線Lpに対してねじれの位置にある中心軸線周りに回転する。
【0093】
プッシュロッド51は、閂部材57に設けられた貫通穴57Bを貫通している(
図26参照)。閂部材57の先端部57Cは、閂部材57のうち被係止部3Bに係止される部位である。当該先端部57Cは、プッシュロッド51、つまり貫通穴57Bを挟んで軸部57Aと反対側に位置する。
【0094】
変換部58は、
図22に示されるように、当接部58A及び被当接部58D等を有して構成されている。当接部58Aは閂部材57と一体的に回転変位する。当該当接部58Aは、閂部材57のうち軸部57Aから先端部57C側ずれた位置に設けられている。被当接部58Dは、プッシュロッド51に設けられている。
【0095】
具体的には、当接部58Aは、貫通穴57Bの軸部57A側の壁面に設けられた部位であって、閂部材57と共に樹脂にて一体成形された一体成形部である。当該当接部58Aは、軸部57A側からプッシュロッド51側に向かう向きに突出した少なくとも1つの突起部により構成されている。
【0096】
本実施形態に係る突起部は、2つの突起部58B、58Cにより構成されている。2つの突起部58B、58Cは、閂部材57の回転方向に沿って直列に並んで配置されている。このため、2つの突起部58B、58Cは、軸部57Aを回転中心とするセクター歯車を構成する。
【0097】
被当接部58Dは、少なくともプッシュロッド51が突出位置側から格納位置側に変位する際に当接部58Aに接触する(
図24及び
図25参照)。当該被当接部58Dは、プッシュロッド51側から軸部57A側に向かう向きに突出した少なくとも1つの突起部により構成されている。
【0098】
本実施形態に係る突起部は、2つの突起部58E、58Fにより構成されている。2つの突起部58E、58Fは、格納の向きD2に沿って直列に並んで配置されている。このため、2つの突起部58E、58Fは、セクター歯車を構成する2つの突起部58B、58Cと噛み合うラックを構成する。
【0099】
変位機構54は復帰ばね54Bを備えている。復帰ばね54Bは、閂部材57をロック位置側から開放位置側に向けて回転変位させる弾性力を発揮可能である。なお、当該復帰ばね54Bは、閂部材57及びロッドケーシング52に係止された捻りコイルばねにより構成されている。
【0100】
<変位機構(変換部)の作動>
プッシュロッド51が突出位置にある場合、閂部材57は、
図22に示されるように、開放位置にある。プッシュロッド51が突出位置にある状態で、当該プッシュロッド51に押圧力Fが作用すると、プッシュロッド51は格納の向きD2に変位する(
図23参照)。
【0101】
そして、当接部58Aが被当接部58Dに接触すると、閂部材57は、
図24→
図25の順に示されるように、開放位置からロック位置に向けて回転変位する。そして、プッシュロッド51が格納位置になると、閂部材57がロック位置となり、当該閂部材57と被係止部3Bとが係止状態となるため、給油口を閉じる位置に蓋体3が保持される。
【0102】
図25に示される状態において、プッシュロッド51に押圧力Fが作用すると、前述したように、当該プッシュロッド51は突出位置に向けて変位する。このとき、閂部材57は、復帰ばね54Bの弾性力により、ロック位置から開放位置に復帰する。
【0103】
<本実施形態に係る蓋体開閉装置の特徴>
本実施形態に係る蓋体開閉装置1は、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えている。
【0104】
すなわち、当該構成要件は、突出位置と格納位置との間で変位可能なプッシュロッド51と、プッシュロッド51及びロッドケーシング52のうち少なくとも一方に対して変位可能、かつ、ロック位置と係止不可な開放位置との間で変位可能な閂部材57と、プッシュロッド51を中心軸線Lpと平行な方向に変位させる力を利用して閂部材57を変位させる変位機構54とである。
【0105】
そして、閂部材57は、ロック位置と開放位置との間で回転変位可能であり、変位機構54は、プッシュロッド51が突出位置側から格納位置側に変位する際に当該プッシュロッド51に作用する力の少なくとも一部を、閂部材57を開放位置側からロック位置側に回転変位させる力に変換する変換部58を備える。
【0106】
変換部58は、閂部材57のうち当該閂部材57の回転中心からずれた位置に設けられ、当該閂部材57と一体的に回転変位する当接部58A、及びプッシュロッド51に設けられ、当該プッシュロッド51が突出位置側から格納位置側に変位する際に当接部58Aに接触する被当接部58Dを有している。
【0107】
これにより、当該蓋体開閉装置1では、プッシュロッド51の変位に機械的に連動して閂部材57がロック位置と開放位置との間で変位する。したがって、蓋体開閉装置1は、特許文献1に記載の駆動装置が廃止された構成となる。このため、蓋体開閉装置1の構成が複雑になることが抑制され得る。
【0108】
当接部58Aは、回転中心側からプッシュロッド51側に向かう向きに突出した突起部58C、58Dにより構成され、被当接部58Dは、プッシュロッド51側から回転中心側に向かう向きに突出した突起部58E、58Fにより構成されている。
【0109】
さらに、閂部材57は、ロッドケーシング52に回転可能に支持されており、さらに、変位機構54は、閂部材57をロック位置側から開放位置側に向けて回転変位させる弾性力を発揮可能な復帰ばね54Bを備える。
【0110】
(第4実施形態)
第3実施形態に係る蓋体開閉装置1は、1つの閂部材57を備える構成であった。これに対して、本実施形態に係る蓋体開閉装置1では、
図27及び
図28に示されるように、複数(本実施形態では、2つ)の閂部材57を備える。
【0111】
以下の説明は、上述の実施形態に係る蓋体開閉装置1との相違点に関する説明である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0112】
<変換部の構成>
本実施形態に係る変換部59は、第3実施形態に係る変換部58と同様に、プッシュロッド51が突出位置側から格納位置側に変位する際にプッシュロッド51に作用する力の少なくとも一部を、閂部材57を開放位置側からロック位置側に回転変位させる力に変換する。
【0113】
本実施形態に係る閂部材57は、
図27に示されるように、第1閂部材571及び第2閂部材572にて構成されている。第1閂部材571は、プッシュロッド51を挟んで第2閂部材572と反対側に配置されている。
【0114】
第1閂部材571及び第2閂部材572それぞれは、軸部57Aを介してロッドケーシング52に回転変位可能に支持されている。各軸部57Aは、閂部材57を貫通してロッドケーシング52に装着されている。
【0115】
プッシュロッド51には、第1閂部材571と接触可能な第1テーパ面59A、及び第2閂部材572と接触可能な第2テーパ面59Bが設けられている。第1テーパ面59A及び第2テーパ面59Bは、格納位置側から突出位置側に向かうほど中心軸線Lpから離間するように当該中心軸線Lpに対して傾いた面である。
【0116】
第1閂部材571には、第1テーパ面59Aと接触可能な第1カム面59Cが設けられている。第2閂部材572には、第2テーパ面59Bと接触可能な第2カム面59Dが設けられている。
【0117】
第1カム面59C及び第2カム面59Dは、押圧力Fを回転力に変換可能な形状に構成されている。当該回転力は、第1閂部材571及び第2閂部材572をロック位置に回転変位させる力である。具体的には、第1カム面59C及び第2カム面59Dは、サイクロイド曲線やインボリュート曲線等の凸状の曲線にて構成された曲面である。
【0118】
<変位機構(変換部)の作動>
プッシュロッド51が突出位置にある場合、つまり、第1テーパ面59Aと第1カム面59Cとが非接触であり、かつ、第2テーパ面59Bと第2カム面59Dとが非接触である場合には、
図27に示されるように、第1閂部材571及び第2閂部材572それぞれは開放位置にある。
【0119】
プッシュロッド51が突出位置にある状態で、当該プッシュロッド51に押圧力Fが作用すると、プッシュロッド51は格納の向きD2に変位するため、第1テーパ面59Aと第1カム面59Cとが接触し、かつ、第2テーパ面59Bと第2カム面59Dとが接触する。
【0120】
これにより、押圧力Fが第1閂部材571及び第2閂部材572を回転変位させる回転力に変換されるので、
図28に示されるように、第1閂部材571及び第2閂部材572は、開放位置からロック位置に回転変位する。
【0121】
プッシュロッド51が格納位置にあるとき、第1テーパ面59Aと第1カム面59Cとの接触状態、及び第2テーパ面59Bと第2カム面59Dとの接触状態が維持されるので、第1閂部材571及び第2閂部材572は、ロック位置に保持される。
【0122】
プッシュロッド51が突出位置に復帰すると、第1閂部材571及び第2閂部材572をロック位置に保持する保持力が消失するので、第1閂部材571及び第2閂部材572それぞれは開放位置となる。
【0123】
なお、第1閂部材571及び第2閂部材572を開放位置とする力は、例えば、図示されていないばね等の弾性部材による弾性力、又は第1閂部材571及び第2閂部材572に作用する重力によるモーメント等である。
【0124】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る蓋体開閉装置1は、車両の給油口(図示せず。)を開閉する閉塞体の開閉装置であった。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、当該発明は、例えば、電気自動車の充電部を開閉する閉塞体の開閉装置等のその他(車両以外も含む。)の蓋体開閉装置にも適用可能である。
【0125】
上述の実施形態に係る交番機構、変位機構及び変換部は、上記に示された構成に限定されるものではない。交番機構、変位機構及び変換部は、上記に示された構成以外の構成であってもよい。
【0126】
上述の実施形態に係る閂部材53、57は、プッシュロッド51及びロッドケーシング52に対して変位可能であった。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、当該発明は、例えば、閂部材53は、プッシュロッド51又はロッドケーシング52に対して変位可能な構成であってもよい。
【0127】
上述の実施形態に係る従動部56Cは、テーパ面56Bと滑り接触する部位であった。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、当該発明は、例えば、従動部56Cにローラが設けられ、当該ローラにより従動部56Cがテーパ面56Bと転がり接触する構成であってもよい。
【0128】
上述の実施形態に係る電動モータ7Eは、施錠装置が施錠状態になると、ロック棒7Aが凹部51Cに嵌り込み、かつ、施錠装置が解錠状態になると、ロック棒7Aが凹部51Cから離脱するように作動した。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。
【0129】
上述の第3実施形態に係る当接部58A及び被当接部58Dそれぞれは、2つの突起部により構成されていた。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、当該発明は、例えば、当接部58A及び被当接部58Dそれぞれは、1つ又は3つ以上の突起部により構成されていてもよい。
【0130】
上述の実施形態に係る蓋体開閉装置1は、交番機構55を利用してプッシュロッド51を変位させる構成であった。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。
【0131】
すなわち、当該発明は、例えば、(a)交番機構55が廃止された構成、(b)当該交番機構55に代えてプッシュロッド51を変位させる電動モータ等のアクチュエータが設けられた構成、(c)又は当該交番機構55に代えてプッシュロッド51を変位させる操作ケーブルが設けられた構成であってもよい。
【0132】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0133】
3… 蓋体 3A… ヒンジ部 3B… 被係止部 3C… 被係止体
3D… 貫通穴 3E… 押圧部 5… ロッド装置
5H… 外周壁 7… ロック装置 7A… ロック棒
7B… ヘリカルラック 7C… ヘリカル歯車 7D… ウォーム
7E… 電動モータ 9… ハウジング 51… プッシュロッド
51B… 第1被規制部 51C… 凹部 52… ロッドケーシング
52A… 挿入穴 52B… 第2被規制部 53… 閂部材
54… 変位機構 55… 交番機構 55B… 第1カム
55C… 第2カム 55D… 規制筒 55E… 軸部材