(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】磁気結合型コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20220712BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20220712BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20220712BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/04 A
H01F27/00 R
H01F41/04 C
(21)【出願番号】P 2018143889
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】柏 智男
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/110952(WO,A1)
【文献】特開2006-253322(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038505(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F17/00-H01F41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1絶縁体層及び複数の第2絶縁体層が積層方向に積層されている絶縁体本体と、
前記複数の第1絶縁体層に形成された複数の第1導体パターンと、
前記複数の第2絶縁体層に形成された複数の第2導体パターンと、
を備え、
前記絶縁体本体は、前記積層方向の上端に配されている第1端部領域と、前記積層方向の下端に配されている第2端部領域と、前記第1端部領域と前記第2端部領域との間に配されている中間領域と、を有し、
前記第1端部領域には
前記複数の第1導体パターン及び前記複数の第2導体パターンのうち前記複数の第1導体パターンに含まれる導体パターンのみが含まれるように前記第1絶縁体層のみが配され、
前記第2端部領域には
前記複数の第1導体パターン及び前記複数の第2導体パターンのうち前記複数の第2導体パターンに含まれる導体パターンのみが含まれるように前記第2絶縁体層のみが配され、
前記中間領域においては、前記第1絶縁体層と前記第2絶縁体層とが前記積層方向において交互に配置され、
前記絶縁体本体は、前記複数の第1導体パターンのうち前記中間領域にある一または複数の中間第1導体パターンのうちの少なくとも一つの上面及び下面を覆う第1の部分と、前記第1の部分以外の第2の部分と、を含み、
前記第1の部分の電気抵抗率が前記第2の部分の電気抵抗率よりも高い、
コイル部品。
【請求項2】
前記第1の部分は、前記複数の第2導体パターンのうち前記中間領域にある一または複数の中間第2導体パターンのうちの少なくとも一つの上面及び下面をさらに覆うように設けられる、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記複数の第1導体パターンを含む第1コイルユニットの第1の端部に電気的に接続された第1外部電極と、
前記第1コイルユニットの第2の端部に電気的に接続された第2外部電極と、
をさらに備え、
前記複数の第1導体パターンは、前記第1外部電極の最も近くに設けられている第1エッジ導体パターンと、前記第2外部電極の最も近くに設けられている第2エッジ導体パターンと、を含み、
前記第1エッジ導体パターンは、前記一または複数の中間第1導体パターンに含まれており、
前記第1の部分は、前記第1エッジ導体パターンの上面及び下面を覆うように設けられる、
請求項
2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記複数の第2導体パターンを含む第2コイルユニットの第1の端部に電気的に接続された第3外部電極と、
前記第2コイルユニットの第2の端部に電気的に接続された第4外部電極と、
をさらに備え、
前記複数の第2導体パターンは、前記第3外部電極の最も近くに設けられている第3エッジ導体パターンと、前記第4外部電極の最も近くに設けられている第4エッジ導体パターンと、を含み、
前記第4エッジ導体パターンは、前記一または複数の中間第
2導体パターンに含まれており、
前記第1の部分は、前記第4エッジ導体パターンの上面及び下面を覆うように設けられる、
請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1外部電極、前記第2外部電極、前記第3外部電極、及び前記第4外部電極はいずれも前記絶縁体本体の下面に設けられ、
前記第1外部電極と前記第1エッジ導体パターンとは第1引出ビア導体で接続され、
前記第2外部電極と前記第2エッジ導体パターンとは第2引出ビア導体で接続され、
前記第3外部電極と前記第
3エッジ導体パターンとは第3引出ビア導体で接続され、
前記第4外部電極と前記第
4エッジ導体パターンとは第4引出ビア導体で接続され、
前記第1の部分は、前記第1引出ビア導体と前記複数の第2導体パターンとの間、前記第2引出ビア導体と前記複数の第2導体パターンとの間、及び前記第4引出ビア導体と前記複数の第1導体パターンとの間に介在するように設けられている、
請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記複数の第1導体パターン同士を接続する一又は複数の第1接続ビア導体と、
前記複数の第2導体パターン同士を接続する一又は複数の第2接続ビア導体と、
をさらに備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関し、より具体的には、互いと磁気結合する一組のコイル導体を有する磁気結合型コイル部品に関する。さらに具体的には、本発明は、積層プロセスによって作製される磁気結合型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気結合型コイル部品は、互いに磁気結合する一組のコイル導体を有する。互いに磁気結合する一組のコイル導体を有する磁気結合型コイル部品として、コモンモードチョークコイル、トランス及び結合型インダクタがある。このような磁気結合型コイル部品においては、多くの場合、一組のコイル導体間の結合係数が高いことが望ましい。
【0003】
積層プロセスによって作製される磁気結合型コイル部品が特開2016-131208号公報及び国際公開第2014/136342号に記載されている。
【0004】
特開2016-131208号公報に記載された結合型コイル部品は、絶縁体に埋め込まれた複数のコイルユニットを有している。この複数のコイルユニットは、各ユニットのコイル導体の巻回軸が略一致し、当該コイルユニット同士が密着するように構成されており、これにより当該コイル導体間の結合度が高められるとされている。
【0005】
この特開2016-131208号公報においては、磁気結合型コイル部品においては、2つのコイル導体間を通過する漏れ磁束が存在するため、この漏れ磁束によって漏れインダクタンスが生じてしまう。この漏れインダクタンスは、磁気結合型コイル部品における結合係数を悪化させる。
【0006】
国際公開第2014/136342号に記載された結合型コイル部品は、第1の系統のコイル導体が複数の絶縁体層に跨がって形成されており、第2の系統のコイル導体は第1の系統のコイル導体が形成されている絶縁体層とは別の複数の絶縁体層に跨がって形成されている。当該結合型コイル部品においては、当該第1の系統のコイル導体の層と当該第2の系統のコイル導体の層とが積層方向に沿って交互に配置されており、これにより両系統間の結合度が高められるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-131208号公報
【文献】国際公開第2014/136342号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
国際公開第2014/136342号に記載された結合型コイル部品においては、異なる系統のコイル導体同士が絶縁体層1層分しか離れていない。特に、各系統のコイル導体へ流れる電流の向きによっては、隣接する絶縁体層に配されているコイル導体間での電位差が大きくなる。よって、異なる系統のコイル導体間での絶縁の確保が困難である。
【0009】
本発明の目的の一つは、磁気結合型コイル部品における改善を提供することである。
【0010】
本発明のより具体的な目的の一つは、異なる系統のコイル間の結合係数が高く、また、当該コイル間の絶縁信頼性が高い磁気結合型コイル部品を提供することである。
【0011】
本発明のこれら以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によるコイル部品は、複数の第1絶縁体層及び複数の第2絶縁体層が積層方向に積層されている絶縁体本体と、前記複数の第1絶縁体層に形成された複数の第1導体パターンと、前記複数の第2絶縁体層に形成された複数の第2導体パターンと、を備える。当該実施形態によるコイル部品において、前記絶縁体本体は、前記積層方向の上端に配されている第1端部領域と、前記積層方向の下端に配されている第2端部領域と、前記第1端部領域と前記第2端部領域との間に配されている中間領域と、を有し、前記第1端部領域には前記第1絶縁体層のみが配され、前記第2端部領域には前記第2絶縁体層のみが配されている。前記中間領域においては、前記第1絶縁体層と前記第2絶縁体層とが前記積層方向において交互に配置されている。また、当該コイル部品の前記絶縁体本体は、前記複数の第1導体パターンのうち前記中間領域にある一または複数の中間第1導体パターンのうちの少なくとも一つの上面及び下面を覆う第1の部分と、前記第1の部分以外の第2の部分と、を含み、前記第1の部分の電気抵抗率が前記第2の部分の電気抵抗率よりも高くなっている。
【0013】
第1端部領域に第1絶縁体層「のみ」が配されるとは、当該第1端部領域には、複数の第1絶縁体層と複数の第2絶縁体層のうち当該複数の第1絶縁体層に含まれる絶縁体層が配されるが当該複数の第2絶縁体層に含まれる絶縁体層は配されないことを意味する。つまり、第1端部領域には、当該複数の第2絶縁体層に含まれる絶縁体層は配されない。その結果、第2絶縁体層に形成される複数の第2導体パターンも第1端部領域には含まれない。他方、第1端部領域には、絶縁体層以外であれば、第1絶縁体層以外の部材を含み得る。例えば、第1絶縁体層に形成される第1導体パターンや当該第1導体パターン同士を接続するビア電極も第1端部領域に含まれ得る。
【0014】
第2端部領域に第2絶縁体層「のみ」が配されるというときも、第1端部領域について説明したのと同様に、あくまで絶縁体層に着目した説明である。つまり、第2端部領域に第2絶縁体層「のみ」が配されるとは、当該第2端部領域には、複数の第2絶縁体層に含まれる絶縁体層は配されるが複数の第1絶縁体層に含まれる絶縁体層は配されないことを意味する。
【0015】
上記実施形態によれば、第1端部領域には第1導体パターンが配される一方で第2導体パターンは配されず、また、第2端部領域には第2導体パターンが配される一方で第1導体パターンは配されない。隣接する絶縁体層に設けられている同系統の導体パターン同士の電位差(つまり、第1導体パターン同士の電位差及び第2導体パターン同士の電位差)は、通常、絶縁破壊が起きるほど大きくはならないので、第1端部領域及び第2端部領域では絶縁破壊は起こりがたい。
【0016】
中間領域においては、隣接する絶縁体層に別系統の導体パターンが設けられている。よって、隣接する絶縁体層間での絶縁性を改善することが望ましい。例えば、中間領域に含まれる絶縁体層の厚さを厚くすることで、当該中間領域に配されている隣接する導体パターン同士の絶縁を改善することができる。上記実施形態によれば、絶縁層を厚くすることによって絶縁性を改善する場合、中間領域に配されている絶縁体層についてのみ厚く形成すればよいので、絶縁体層全体を厚く形成する場合と比較して低背化を図りやすい。
【0017】
上記実施形態において、中間領域においては、前記第1絶縁体層と前記第2絶縁体層とが前記積層方向において交互に配置されている。よって、当該中間領域では、第1導体パターンと第2導体パターンとが隣接する絶縁体層に配されることになる。したがって、第1導体パターンを含むコイルと第2導体パターンを含むコイルとの間の結合係数を高めることができる。
【0018】
上記実施形態によれば、前記複数の第1導体パターンのうち前記中間領域にある一または複数の中間第1導体パターンのうちの少なくとも一つの上面及び下面が、高い電気抵抗率を有する第1の部分で覆われているので、絶縁信頼性をさらに向上させることができる。
【0019】
一実施形態によるコイル部品において、前記第1の部分は、前記複数の第2導体パターンのうち前記中間領域にある一または複数の中間第2導体パターンのうちの少なくとも一つの上面及び下面をさらに覆うように設けられる。
【0020】
上記実施形態によれば、中間第2導体パターンの電位に起因する絶縁破壊を抑制することができるので、絶縁信頼性をさらに向上させることができる。
【0021】
一実施形態によるコイル部品は、前記複数の第1導体パターンを含む第1コイルユニットの第1の端部に電気的に接続された第1外部電極と、前記第1コイルユニットの第2の端部に電気的に接続された第2外部電極と、をさらに備え、前記複数の第1導体パターンは、前記第1外部電極の最も近くに設けられている第1エッジ導体パターンと、前記第2外部電極の最も近くに設けられている第2エッジ導体パターンと、を含み、前記第1エッジ導体パターンは、前記一または複数の中間第1導体パターンに含まれており、前記第1の部分は、前記第1エッジ導体パターンの上面及び下面を覆うように設けられる。
【0022】
上記実施形態によれば、第1外部電極の近くに設けられていることにより高い電位が生じる第1エッジ導体パターンが高い電気抵抗率を有する第1の部分で覆われているので、絶縁信頼性をさらに向上させることができる。
【0023】
一実施形態によるコイル部品は、前記複数の第2導体パターンを含む第2コイルユニットの第1の端部に電気的に接続された第3外部電極と、前記第2コイルユニットの第2の端部に電気的に接続された第4外部電極と、をさらに備え、前記複数の第2導体パターンは、前記第3外部電極の最も近くに設けられている第3エッジ導体パターンと、前記第4外部電極の最も近くに設けられている第4エッジ導体パターンと、を含み、前記第4エッジ導体パターンは、前記一または複数の中間第1導体パターンに含まれており、前記第1の部分は、前記第4エッジ導体パターンの上面及び下面を覆うように設けられる。
【0024】
上記実施形態によれば、第4外部電極の近くに設けられていることにより高い電位が生じる第4エッジ導体パターンが高い電気抵抗率を有する第1の部分で覆われているので、絶縁信頼性をさらに向上させることができる。
【0025】
一実施形態によるコイル部品において、前記第1外部電極、前記第2外部電極、前記第3外部電極、及び前記第4外部電極はいずれも前記絶縁体本体の下面に設けられ、前記第1外部電極と前記第1エッジ導体パターンとは第1引出ビア導体で接続され、前記第2外部電極と前記第2エッジ導体パターンとは第2引出ビア導体で接続され、前記第3外部電極と前記第1エッジ導体パターンとは第3引出ビア導体で接続され、前記第4外部電極と前記第1エッジ導体パターンとは第4引出ビア導体で接続され、前記第1の部分は、前記第1引出ビア導体と前記複数の第2導体パターンとの間、前記第2引出ビア導体と前記複数の第2導体パターンとの間、及び前記第4引出ビア導体と前記複数の第1導体パターンとの間に介在するように設けられている。
【0026】
上記実施形態によれば、4つの外部電極が全て絶縁体本体の下面に設けられているため、コイル部品を長さ方向において小型化することができる。また、第1の部分が、第1引出ビア導体と複数の第2導体パターンとの間、第2引出ビア導体と複数の第2導体パターンとの間、及び第4引出ビア導体と複数の第1導体パターンとの間に介在するように設けられているので、各引出ビア導体に起因する絶縁破壊を抑制することができる。
【0027】
一実施形態によるコイル部品は、前記複数の第1導体パターン同士を接続する一又は複数の第1接続ビア導体と、前記複数の第2導体パターン同士を接続する一又は複数の第2接続ビア導体と、をさらに備える。
【発明の効果】
【0028】
本明細書に開示された発明の様々な実施形態によって、異なる系統のコイル間の結合係数が高く、また、当該コイル間の絶縁信頼性が高い磁気結合型コイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態によるコイル部品の斜視図である。
【
図2】
図1のコイル部品の内部を正面から透視した模式的な透視図である。
【
図3a】
図1のコイル部品に含まれる絶縁体層を模式的に示す斜視図である。
【
図3b】
図1のコイル部品に含まれる絶縁体層を模式的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の別の実施形態によるコイル部品を正面から透視した模式的な透視図である。
【
図5】本発明の別の実施形態によるコイル部品の斜視図である。
【
図6】
図5のコイル部品の内部を正面から透視した模式的な透視図である。
【
図7】
図5のコイル部品の内部を正面から透視した模式的な透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0031】
図1から
図3bを参照して本発明の一実施形態によるコイル部品1について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコイル部品1の斜視図であり、
図2は、
図1のコイル部品の内部を正面から透視した模式的な透視図であり、
図3a及び
図3bは、コイル部品1に含まれる絶縁体層を模式的に示す斜視図である。
【0032】
これらの図に示されているコイル部品1は、積層プロセス、薄膜プロセス、又はこれら以外のプロセスによって作成された積層型の磁気結合コイル部品である。コイル部品1は、コモンモードチョークコイル以外にも、トランス、結合型インダクタ及びこれら以外の様々なコイル部品として使用され得る。
【0033】
コイル部品1は、絶縁性に優れた磁性材料から成る絶縁体本体10と、絶縁体本体10に埋設された第1コイルユニットと、絶縁体本体10に埋設された第2のコイルユニットと、当該第1コイルユニットの一端と電気的に接続された外部電極21と、当該第1コイルユニットの他端と電気的に接続された外部電極22と、当該第2のコイルユニットの一端と電気的に接続された外部電極23と、当該当該第2のコイルユニットの他端と電気的に接続された外部電極24と、を備える。第1コイルユニット及び第2のコイルユニットについては後述する。外部電極21は第1外部電極の例であり、外部電極22は第2外部電極の例であり、外部電極23は第3外部電極の例であり、外部電極24は第4外部電極の例である。
【0034】
絶縁体本体10は、ほぼ直方体形状を有する。絶縁体本体10は、第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fを有する。絶縁体本体10は、これらの6つの面によってその外面が画定される。第1の主面10aと第2の主面10bとは互いに対向し、第1の端面10cと第2の端面10dとは互いに対向し、第1の側面10eと第2の側面10fとは互いに対向している。
【0035】
図1において第1の主面10aは絶縁体本体10の上側にあるため、第1の主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2の主面10bを「下面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2の主面10bが回路基板(不図示)と対向するように配置されるので、第2の主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。また、コイル部品1の上下方向に言及する際には、
図1の上下方向を基準とする。
【0036】
説明の便宜上、第1の側面10eをコイル部品1の正面とする。
図2は、コイル部品1の第1の側面10eから見たコイル部品1の内部を模式的に示している。
【0037】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向、及び「厚さ」方向はそれぞれ、
図1の「L」方向、「W」方向、及び「T」方向とする。
【0038】
外部電極21及び外部電極23は、絶縁体本体10の第1の端面10cに設けられる。外部電極22及び外部電極24は、絶縁体本体10の第2の端面10dに設けられる。各外部電極は、図示のように、絶縁体本体10の上面10a及び下面10bまで延伸する。
【0039】
図2に示すように、絶縁体本体10は、絶縁体部20、この絶縁体部20の上面に設けられた上部カバー層17、及びこの絶縁体部20の下面に設けられた下部カバー層18を備える。
【0040】
絶縁体部20は、絶縁体層20a~20lを備える。絶縁体部20においては、T軸方向の正方向側から負方向側に向かって、絶縁体層20a、絶縁体層20b、絶縁体層20c、絶縁体層20d、絶縁体層20e、絶縁体層20f、絶縁体層20g、絶縁体層20h、絶縁体層20i、絶縁体層20j、絶縁体層20k、絶縁体層20lの順に積層されている。
【0041】
本発明の一実施形態において、絶縁体層19、絶縁体層20a~20lは、樹脂及び多数のフィラー粒子を含む。このフィラー粒子は、当該樹脂に分散されている。絶縁体層20a~20lは、フィラー粒子を含まなくともよい。
【0042】
上部カバー層17は、複数枚の絶縁体層が積層された積層体である。同様に、下部カバー層18は、複数枚の絶縁体層が積層された積層体である。上部カバー層17及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層は、多数のフィラー粒子を分散させた樹脂から成る。これらの絶縁体層は、フィラー粒子を含まなくともよい。
【0043】
絶縁体層19、絶縁体層20a~20l、上部カバー層17を構成する各絶縁体層、及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層は、絶縁性に優れた磁性材料から成る。絶縁体層19、絶縁体層20a~20l、上部カバー層17を構成する各絶縁体層、及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層用の磁性材料として、フェライト材料、軟磁性金属又は軟磁性合金の粒子群、樹脂に磁性材料から成る多数のフィラー粒子を分散させた複合材料、又はこれら以外の任意の公知の磁性材料を用いることができる。軟磁性金属又は軟磁性合金の粒子群に含まれる各粒子には、絶縁性に優れた絶縁材料から成る絶縁膜が形成される。
【0044】
絶縁体層19、絶縁体層20a~20l、上部カバー層17を構成する各絶縁体層、及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層用の材料となるフェライトには、Ni-Zn系フェライト、Ni-Zn-Cu系フェライト、Mn-Zn系フェライト、又はこれら以外の任意のフェライトが含まれ得る。
【0045】
絶縁体層19、絶縁体層20a~20l、上部カバー層17を構成する各絶縁体層、及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層用の材料となる軟磁性金属には、Fe、Ni、Co、及びこれら以外の任意の軟磁性金属のうちの一または複数が含まれる。
【0046】
絶縁体層19、絶縁体層20a~20l、上部カバー層17を構成する各絶縁体層、及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層用の材料となる軟磁性合金には、Fe-Si系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Co系合金、Fe-Cr-Si系合金、Fe-Si-Al系合金、Fe-Si-B-Cr系合金、又はこれら以外の任意の軟磁性合金が含まれる。
【0047】
絶縁体層19、絶縁体層20a~20l、上部カバー層17を構成する各絶縁体層、及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層が樹脂に多数のフィラー粒子を分散させた複合材料からなる場合、当該樹脂として、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、又はポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂を用いることができる。当該フィラー粒子として、フェライト材料の粒子、金属磁性粒子、又はこれら以外の任意の公知のフィラー粒子を用いることができる。本発明に適用可能なフェライト材料の粒子は、例えば、Ni-Znフェライトの粒子またはNi-Zn-Cuフェライトの粒子である。本発明に適用可能な金属磁性粒子は、例えば、(1)金属系のFeもしくはNi、(2)合金系のFe-Si-Cr、Fe-Si-Al、もしくはFe-Ni、(3)非晶質のFe―Si-Cr-B-C、もしくはFe-Si-B-Cr、(4)またはこれらの混合材料の粒子である。
【0048】
絶縁体層19、絶縁体層20a~20l、上部カバー層17を構成する各絶縁体層、及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層は、その全てがフェライト材料から形成されてもよく、その全てが軟磁性金属材料または軟磁性合金材料から形成されてもよく、その全てが樹脂に多数のフィラー粒子を分散させた複合材料から形成されてもよい。
【0049】
後述するように、絶縁体本体10は、他の部分よりも電気抵抗率が高い第1の部分を有する。この第1の部分の一部又は全部は、磁性材料又は非磁性材料から成る。第1の部分用の磁性材料としては、絶縁性を高めるために、上記の磁性材料に石英ガラス等の各種ガラスから成るガラス粉、アルミナ粉、ジルコニア粉、及びこれら以外の絶縁性に優れた酸化物の粉末が添加された混合磁性材料を用いることができる。第1の部分用の非磁性材料としては、石英ガラス等の各種ガラスから成るガラス粉、アルミナ粉、ジルコニア粉、及びこれら以外の絶縁性に優れた酸化物の粉末が添加された混合材料を用いることができる。
【0050】
絶縁体層20a~20lの各々の上面には、導体パターン31a~31lがそれぞれ形成されている。導体パターン31a~31lは、例えば、導電性に優れた金属又は合金から成る導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷することにより形成される。この導電ペーストの材料としては、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金を用いることができる。導体パターン31a~31lは、これ以外の材料及び方法により形成されてもよい。
【0051】
導体パターン31a~31lは、コイル軸CLの周りの周方向に延伸するように形成される。導体パターン31a~31lの各々は、一部が切り離された形状を有している。したがって、導体パターン31a~31lの各々は、一組の端部を有する。導体パターン31a~31lの各々は、例えば、平面視でC字形状やU字形状を有するように形成される。
【0052】
導体パターン31aは、周方向に延伸する周回部31a1と、この周回部31a1の一端から絶縁体本体10の第2の端面10dまで径方向に延伸する引出部31a2と、を有する。導体パターン31aは、引出部31a2を介して外部電極22と電気的に接続される。導体パターン31iは、周方向に延伸する周回部31i1と、この周回部31i1の一端から絶縁体本体10の第1の端面10cまで径方向に延伸する引出部31i2と、を有する。導体パターン31iは、引出部31i2を介して外部電極21と電気的に接続される。
【0053】
導体パターン31dは、周方向に延伸する周回部31d1と、この周回部31d1の一端から絶縁体本体10の第2の端面10dまで径方向に延伸する引出部31d2と、を有する。導体パターン31dは、引出部31d2を介して外部電極24と電気的に接続される。導体パターン31iは、周方向に延伸する周回部31l1と、この周回部31l1の一端から絶縁体本体10の第1の端面10cまで径方向に延伸する引出部31l2と、を有する。導体パターン31lは、引出部31l2を介して外部電極23と電気的に接続される。
【0054】
絶縁体層20a~絶縁体層20hの所定の位置には、接続ビア導体32a~接続ビア導体32eが形成される。接続ビア導体32a~接続接続ビア導体32eは、絶縁体層20a~絶縁体層20hの所定の位置にT軸方向に伸びる貫通孔を形成し、当該貫通孔に導電ペーストを埋め込むことにより形成される。
【0055】
上記のように、導体パターン31aの一方の端部は、外部電極22に接続されている。接続ビア導体32aは、導体パターン31aの外部電極22に接続されている端部とは反対側の端部と導体パターン31bの一方の端部とを電気的に接続する。
【0056】
接続ビア導体32bは、導体パターン31bの他方の端部と導体パターン31cの一方の端部とを電気的に接続する。接続ビア導体32cは、導体パターン31cの他方の端部と導体パターン31eの一方の端部とを電気的に接続する。接続ビア導体32dは、導体パターン31eの他方の端部と導体パターン31gの一方の端部とを電気的に接続する。
【0057】
上記のように、導体パターン31iの一方の端部は、外部電極21に接続されている。接続ビア導体32eは、導体パターン31gの他方の端部と導体パターン31iの外部電極21に接続されている端部とは反対側の端部とを電気的に接続する。
【0058】
絶縁体層20d~絶縁体層20kの所定の位置には、接続ビア導体33a~接続ビア導体33eが形成される。接続ビア導体33a~接続ビア導体33eは、絶縁体層20d~絶縁体層20kの所定の位置にT軸方向に伸びる貫通孔を形成し、当該貫通孔に導電ペーストを埋め込むことにより形成される。
【0059】
上記のように、導体パターン31dの一方の端部は、外部電極24に接続されている。接続ビア導体33aは、導体パターン31dの外部電極24に接続されている端部とは反対側の端部と導体パターン3fの一方の端部とを電気的に接続する。
【0060】
接続ビア導体33bは、導体パターン31fの他方の端部と導体パターン31hの一方の端部とを電気的に接続する。接続ビア導体33cは、導体パターン31hの他方の端部と導体パターン31jの一方の端部とを電気的に接続する。接続ビア導体33dは、導体パターン31jの他方の端部と導体パターン31kの一方の端部とを電気的に接続する。
【0061】
上記のように、導体パターン31lの一方の端部は、外部電極23に接続されている。接続ビア導体33eは、導体パターン31kの他方の端部と導体パターン31lの外部電極23に接続されている端部とは反対側の端部とを電気的に接続する。
【0062】
以上のように、外部電極22と外部電極21との間には、導体パターン31a、接続ビア導体32a、導体パターン31b、接続ビア導体32b、導体パターン31c、接続ビア導体32c、導体パターン31e、接続ビア導体32d、導体パターン31g、接続ビア導体32e、及び導体パターン31iから成る第1コイルユニットが設けられている。
【0063】
本明細書においては、第1コイルユニットを構成する絶縁体層を第1絶縁体層と称することがある。例えば、
図2に示した実施形態においては、絶縁体層20a,20b,20c,20e,20g,20iが第1絶縁体層とされる。
【0064】
本明細書においては、第1コイルユニットを構成する導体パターンを第1導体パターンと称することがある。例えば、
図2に示した実施形態においては、導体パターン31a,31b,31c,31e,31g,31iが第1導体パターンとされる。本明細書においては、この複数の第1導体パターンのうち外部電極21の最も近くに設けられる導体パターン31iを第1エッジ導体パターンと呼ぶことがあり、外部電極22の最も近くに設けられる導体パターン31aを第2エッジ導体パターンと呼ぶことがある。つまり、外部電極21と外部電極22とを接続する電気的な経路において、第1コイルユニットを構成する複数の第1導体パターンのうち、導体パターン31iが最も外部電極21の近くに配置されており、導体パターン31aが最も外部電極22の近くに配置されている。
【0065】
外部電極24と外部電極23との間には、導体パターン31d、接続ビア導体33a、導体パターン31f、接続ビア導体33b、導体パターン31h、接続ビア導体33c、導体パターン31j、接続ビア導体33d、導体パターン31k、接続ビア導体33e、及び導体パターン31lから成る第2のコイルユニットが設けられている。
【0066】
本明細書においては、第2のコイルユニットを構成する絶縁体層を第2絶縁体層と称することがある。例えば、
図2に示した実施形態においては、絶縁体層20d,20f,20h,20j,20k,20lが第2絶縁体層とされる。
【0067】
本明細書においては、第2のコイルユニットを構成する導体パターンを第2導体パターンと称することがある。例えば、
図2に示した実施形態においては、導体パターン31d,31f,31h,31j,31k,31lが第2導体パターンとされる。本明細書においては、この複数の第3導体パターンのうち外部電極23の最も近くに設けられる導体パターン31lを第3エッジ導体パターンと呼ぶことがあり、外部電極24の最も近くに設けられる導体パターン31dを第4エッジ導体パターンと呼ぶことがある。
【0068】
本発明の一実施形態において、絶縁体層20a~20lを構成する各絶縁体層は、
図3a及び
図3bに示すように板状に形成される。絶縁体層20aは、WL平面の任意の位置において、均一な絶縁性を有するように構成されてもよい。言い換えると、絶縁体層20aは、その電気抵抗率が概ね均一になるように構成されてもよい。例えば、絶縁体層20aにおいて異なる5点の電気抵抗率を測定し、5点での測定値の算術平均ρ
avgを求め、当該算術平均ρ
avgに対する当該5点の測定値の最大値と最小値との差ρΔの割合(100・ρΔ/ρ
avg)が十分に小さい場合に、絶縁体層20aは、その電気抵抗率が概ね均一になっているということができる。例えば、100・ρΔ/ρ
avgが20%以内、15%以内、10%以内、又は5%以内の場合に、絶縁体層20aの電気抵抗率が概ね均一になっているということができる。図示の実施形態では、絶縁体層20b,20e,20f,20g,20j,20k,20lも絶縁体層20aと同様に構成されてもよい。すなわち、絶縁体層20b,20e,20f,20g,20j,20k,20lの各々は、その電気抵抗率が概ね均一になるように構成されてもよい。
【0069】
図3bに示すように、一実施形態においては、絶縁体層20cは、絶縁体層本体20c1と、当該絶縁体層本体20cに埋め込まれており平面視で円環形状をとる環状部41aと、を有する。環状部41aは、その上面及び下面が絶縁体層本体20c1の上面及び下面とそれぞれ面一となるように設けられてもよい。一実施形態において、環状部41aは、絶縁体層20cの下面に設けられている導体パターン31dの周回部31d1と平面視において一致する形状に構成されてもよい。環状部41aは、平面視において、絶縁体層20cの下面に設けられている導体パターン31dの周回部31d1を覆う形状となるように構成されてもよい。この場合、環状部41aは、その外縁41a1が導体パターン31dの外縁よりもコイル軸の径方向外側にあるように設けられてもよい。環状部41aは、平面視において、絶縁体層20cの下面に設けられている導体パターン31dの周回部31d1及び引出部31d2を両方とも覆う形状に構成されてもよい。環状部41aは、後述する引出ビア導体35~38や接続ビア導体32a~32e,33a~33eによって厚さ方向に貫かれることもある。
【0070】
環状部41aは、絶縁体層本体20c1よりも高い電気抵抗率を有するように構成される。例えば、絶縁体層本体20c1が樹脂にFe-Si系合金から成るフィラー粒子を混合させた複合材料から形成される場合、環状部41aは、絶縁体層本体20c1用の複合材料に高絶縁性を有する酸化物の粉末を添加した高絶縁性材料からを形成されてもよい。このように、高絶縁性の添加物(例えば、上述したガラス粉、アルミナ粉、及び/又はジルコニア粉)を含有する混合磁性材料から環状部41aを形成することにより、環状部41aの電気抵抗率を絶縁体層本体20c1よりも高くすることができる。他の実施形態においては、環状部41aの内部に絶縁体層本体20c1よりも多くの空隙を含むようにすることで、環状部41aの絶縁抵抗率を絶縁体層本体20c1の電気抵抗率よりも高くすることができる。絶縁体層本体20c1と比較して環状部41aの電気抵抗率を高くする手法は、本明細書に具体的に開示される手法には限られない。任意の公知の手法を用いて、絶縁体層本体20c1よりも高い絶縁抵抗率を有する環状部41aを作成することができる。
【0071】
絶縁体層20cと同様に、絶縁体層20dは環状部41bを有し、絶縁体層20hは環状部42aを有し、絶縁体層20iは環状部42bを有する。環状部41b,42a,42bは、平面視において環状部41aと一致する形状に構成されてもよい。
【0072】
環状部41bは、絶縁体層20dの上面に設けられている導体パターン31d及び絶縁体層20dの下面に設けられている導体パターン31eの少なくとも一方と平面視において一致する形状に構成されてもよい。環状部41bは、導体パターン31d及び導体パターン31eの少なくとも一方の平面視形状の外縁よりも一回り大きな平面視形状を有するように構成されてもよい。
【0073】
環状部42aは、絶縁体層20hの上面に設けられている導体パターン31h及び絶縁体層20hの下面に設けられている導体パターン31iの少なくとも一方と平面視において一致する形状に構成されてもよい。環状部42aは、導体パターン31h及び導体パターン31iの少なくとも一方の平面視形状の外縁よりも一回り大きな平面視形状を有するように構成されてもよい。
【0074】
環状部42bは、絶縁体層20iの下面に設けられている(又は絶縁体層20jの上面に設けられている)導体パターン31jと平面視において一致する形状に構成されてもよい。環状部42bは、導体パターン31jの平面視形状の外縁よりも一回り大きな平面視形状を有するように構成されてもよい。
【0075】
絶縁体層20dの環状部41bは、当該絶縁体層20dのうち環状部41b以外の部分である絶縁体層本体よりも高い電気抵抗率を有するように構成される。同様に、絶縁体層20hの環状部42aは、当該絶縁体層20hのうち環状部42a以外の部分である絶縁体層本体よりも高い電気抵抗率を有するように構成され、絶縁体層20iの環状部42bは、当該絶縁体層20iのうち環状部42b以外の部分である絶縁体層本体よりも高い電気抵抗率を有するように構成される。環状部41b,42a,42bは、環状部41aと同様の方法を用いて作成され得る。
【0076】
上記のように、絶縁体層20cにおいて、環状部41aは、その周囲にある絶縁体層本体20c1よりも高い電気抵抗率を有する。同様に、絶縁体層20d,20h,20iにおいて、環状部41b,42a,42bは、各絶縁層内で当該環状部の周囲にある絶縁体層本体よりも高い電気抵抗率を有する。一実施形態における絶縁体本体10において、環状部41a,41b,42a,42bは、絶縁体層20c,20d,20h,20i以外の絶縁体層20a,20b,20e,20f,20g,20j,20k,20l、絶縁体層19、上部カバー層17を構成する各絶縁体層、及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層のいずれよりも高い電気抵抗率を有する。
【0077】
このように、絶縁体本体10は、周囲よりも高い絶縁抵抗率を有する第1の部分と、当該第1の部分以外の第2の部分と、を有するように構成される。
図2に示されている実施形態においては、環状部41a,41b,42a,42bが第1の部分に該当し、絶縁体本体10のうちこれら以外の部分(絶縁体層20c,20d,20h,20iの絶縁体層本体、絶縁体層20c,20d,20h,20i以外の絶縁体層20a,20b,20e,20f,20g,20j,20k,20l、絶縁体層19、上部カバー層17を構成する各絶縁体層、及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層を含む)が第2の部分に該当する。
【0078】
図2に示されている環状部41a,41b,42a,42bは、絶縁体本体10における第1の部分の例示である。第1の部分の形状及び配置は、
図2に示されている実施形態には限定されない。例えば、別の実施形態において、絶縁体層20a,20b,20e,20f,20g,20j,20k,20lのうちの一部の又は全部の絶縁体層20aに、環状部41aに対応する高絶縁性の部位を設けることができる。
図4には、別の実施形態によるコイル部品51を正面から透視した模式的な透視図が示されている。
図4に示されているコイル部品51においては、絶縁体層20c,20d,20h,20iに設けられている環状部41a,41b,42a,42bに加えて、絶縁体層20e,20f,20gのそれぞれに、環状部43a,43b,43cが設けられている。環状部43a,43b,43cの各々は、環状部41aと同様の材料から同様の形状に形成され得る。したがって、コイル部品51においては、環状部41a,41b,42a,42bに加えて環状部43a,43b,43cも第1の部分を構成している。
図4に示されている実施形態においては、環状部41a,41b,42a,42b,43a,43b,43cは平面視において互いに等しい形状を有している。
図4に示した態様以外にも、第1の部分の形状及び配置は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更され得る。
【0079】
各絶縁体層の電気抵抗率の測定は、公知の手法により行うことができる。例えば、絶縁体層20aにおける電気抵抗率を測定する場合には、シート抵抗測定器を用いて当該絶縁体層20aのシート抵抗を測定し、また、当該絶縁体層20aの厚さをマイクロプローブにより測定し、測定された絶縁体層20aのシート抵抗と厚さとに基づいて算出される。各環状部の電気抵抗率も、各環状部のシート抵抗及び厚さの測定値に基づいて算出可能である。
【0080】
絶縁体部20は、上端領域25と、下端領域26と、この上端領域25と下端領域26との間に配されている中間領域27と、に区分される。
【0081】
上端領域25は、絶縁体層20a,20b,20cと、導体パターン31a,31b,31cと、を含む。上端領域25は、その上端が絶縁体層19の下面に接している。
【0082】
下端領域26は、絶縁体層20j,20k,20lと、導体パターン31j,31k,31lと、を含む。下端領域26は、その下端が下部カバー層18の上面に接している。
【0083】
中間領域27は、絶縁体層20d,20e,20f,20g,20h,20iと、導体パターン31d,31e,31f,31g,31h,31iと、を含む。中間領域27は、その上端が上端領域25の下端と接しており、その下端が下端領域26の上端に接している。
【0084】
上端領域25には、絶縁体本体10に埋設されている導体パターン31a~31lのうち、第1コイルユニットに属する導体パターン(具体的には、導体パターン31a,31b,31c)のみが含まれている。上端領域25には、絶縁体部20を構成する絶縁体層20a~20lのうち、第1コイルユニットに属する導体パターンが形成されている絶縁体層(具体的には、絶縁体層20a,20b,20c)のみが含まれている。
【0085】
上端領域25には、第1コイルユニットに属する導体パターン31a,31b,31cが配される一方で第2のコイルユニットに属する第2導体パターンは配されない。第1コイルユニットの導体パターン同士の電位差は、通常、絶縁破壊が起きるほど大きくはならないので、上端領域25では絶縁破壊は起こりがたい。
【0086】
下端領域26には、絶縁体本体10に埋設されている導体パターン31a~31lのうち、第2のコイルユニットに属する導体パターン(具体的には、導体パターン31j,31k,31l)のみが含まれている。下端領域26には、絶縁体部20を構成する絶縁体層20a~20lのうち、第2のコイルユニットに属する導体パターンが形成されている絶縁体層(具体的には、絶縁体層20j,20k,20l)のみが含まれている。
【0087】
下端領域26には、第2のコイルユニットに属する導体パターン31j,31k,31lが配される一方で第1コイルユニットに属する第1導体パターンは配されない。第2のコイルユニットの導体パターン同士の電位差は、通常、絶縁破壊が起きるほど大きくはならないので、下端領域26でも絶縁破壊は起こりがたい。
【0088】
中間領域27には、絶縁体本体10に埋設されている導体パターン31a~31lのうち第1コイルユニットに属する導体パターンが形成された絶縁体層と第2のコイルユニットに属する導体パターンが形成された絶縁体層とが積層方向(コイル軸CLに平行な方向)において交互に配置されている。
図2に示した実施形態においては、中間領域27の積層方向の上方から下方に向かって、導体パターン31dが形成された絶縁体層20d、導体パターン31eが形成された絶縁体層20e、導体パターン31fが形成された絶縁体層20f、導体パターン31gが形成された絶縁体層20g、導体パターン31hが形成された絶縁体層20h、導体パターン31iが形成された絶縁体層20iの順に積層されている。このうち、導体パターン31d,31f,31hはいずれも第2コイルユニットに属しており、導体パターン31e,31g,31iはいずれも第1のコイルユニットに属している。本明細書において、第1導体パターンのうち中間領域27に設けられたものを中間第1導体パターンと呼ぶことがある。
図2に示されている例では、第1導体パターンに含まれる導体パターン31a,31b,31c,31e,31g,31iのうち、導体パターン31e,31g,31iが中間領域27に設けられている。よって、導体パターン31e,31g,31iは、中間第1導体パターンの例である。同様に、第2導体パターンのうち中間領域27に設けられたものを中間第1導体パターンと呼ぶことがある。第2導体パターンに含まれる導体パターン31d,31f,31h,31j,31k,31lのうち、導体パターン31d,31f,31hが中間領域27に設けられている。よって、導体パターン31d,31f,31hは、中間第2導体パターンの例である。
【0089】
上記のように、中間領域27においては、第1コイルユニットに属する導体パターン31d,31f,31hが形成された絶縁体層20d,20f,20hと、第1コイルユニットに属する導体パターン31e,31g,31iが形成された絶縁体層20e,20g,20iとが積層方向において交互に配置されている。このように、中間領域27では、第1導体パターンと第2導体パターンとが隣接する絶縁体層に配されているので、第1コイルユニットと第2のコイルユニットとの間の結合係数を高めることができる。
【0090】
第1コイルユニットは、その一方の端部(導体パターン31aの端部)が外部電極22に接続され、その他方の端部(導体パターン31iの端部)が外部電極21に接続されている。このように、図示の実施形態において、第1コイルユニットは、その一方の端部が上端領域25に配されており、他方の端部が中間領域27に配されている。
【0091】
第2のコイルユニットは、その一方の端部(導体パターン31dの端部)が外部電極24に接続され、その他方の端部(導体パターン31lの端部)が外部電極23に接続されている。このように、図示の実施形態において、第2のコイルユニットは、その一方の端部が中間領域27に配されており、他方の端部が下端領域26に配されている。
【0092】
本発明の一実施形態において、コイル部品1は、外部電極22から第1コイルユニットを通って外部電極21へ電流が流れ、外部電極23から第2のコイルユニットを通って外部電極24へ電流が流れるように、不図示の電子回路に取り付けられる。この場合、外部電極22から第1コイルユニットの上端領域25に配されている端部(導体パターン31aの端部)に供給される電圧の電位は、外部電極23から第2のコイルユニットの下端領域26に配されている端部(導体パターン31lの端部)に供給される電圧の電位と等しい。このように、本発明の一実施形態においては、第1コイルユニットの一方の端部に外部電極22から供給される電圧の電位と、第2のコイルユニットの一方の端部に外部電極23から供給される電圧の電位とが等しくなるように、当該第1コイルユニット及び当該第2のコイルユニットが構成及び配置される。
【0093】
第1コイルユニットの中間領域27における電位は、当該第1コイルユニットの上端領域25に配されている導体パターン(導体パターン31a,31b,31c)での電圧降下により、外部電極22から供給された電圧の電位よりも低下している。同様に、第2のコイルユニットの中間領域27における電位は、当該第2のコイルユニットの下端領域26に配されている導体パターン(導体パターン31j,31k,31l)での電圧降下により、外部電極23から供給された電圧の電位よりも低下している。よって、上記の実施形態によれば、中間領域27において、第1コイルユニットと第2のコイルユニットとの間の電位差を小さくすることができる。これにより、中間領域27において、第1のコイルユニットと第2のコイルユニットとの間での絶縁の確保が容易になる。
【0094】
上記のように、絶縁体本体10は、高い電気抵抗率を有する第1の部分と、当該第1の部分よりも低い電気抵抗率を有する第2の部分と、を有する。一実施形態において、この第1の部分は、絶縁体本体10において、一または複数の中間第1導体パターンのうちの少なくとも一つの上面及び下面を覆うように設けられる。一実施形態において、当該第1の部分は、絶縁体本体10において、一または複数の中間第2導体パターンのうちの少なくとも一つの上面及び下面さらに覆うように設けられる。例えば、
図2に示されている実施形態においては、環状部41a,41b,42a,42bが第1の部分に該当する。このうち環状部42aが中間第1導体パターンの一つである導体パターン31iの上面を覆い、環状部42bが導体パターン31iの下面を覆っている。また、環状部41aが中間第2導体パターンの一つである導体パターン31dの上面を覆い、環状部41bが導体パターン31dの下面を覆っている。このように、
図4に示されている実施形態では、第1の部分に含まれる環状部42a及び環状部42bによって中間第1導体パターンの一つである導体パターン31iの上面及び下面が覆われ、当該第1の部分に含まれる環状部41a及び環状部41bによって中間第2導体パターンの一つである導体パターン31dの上面及び下面が覆われている。中間領域27においては、第1コイルユニットに含まれる導体パターンと第2コイルユニットに含まれる導体パターンとが交互に積層されているため、中間領域27において隣接する導体パターン間での電位差は、上端領域25及び下端領域26において隣接する導体パターン間での電位差よりも大きくなることがある。上記の実施形態においては、この中間領域27に設けられている導体パターン(中間第1導体パターン及び/又は中間第2導体パターン)のうちの少なくとも一つの上面及び下面が高い電気抵抗率を有する第1の部分で覆われているため、中間領域27における絶縁信頼性を向上させることができる。
【0095】
導体パターン31iは、第1導体パターンのうち外部電極21の最も近くに設けられる第1エッジ導体パターンであるから、第1の部分は、この第1エッジ導体パターンの上面及び下面を覆うように設けられている。上記実施形態によれば、第1コイルユニットにおいて外部電極21の最も近くに配置されているため電位が高くなる第1エッジ導体パターンの上面及び下面が第1の部分で覆われるため、絶縁体本体10において第1エッジ導体パターンの周囲における絶縁信頼性を向上させることができる。第2エッジ導体パターンである導体パターン31aは、上端領域25に設けられているため、導体パターン31aに隣接するのは同系統の(すなわち、第1のコイルユニットの)導体パターン31bである。同系統の導体パターン間では絶縁破壊は起きにくいため、第1の部分は、第2エッジ導体パターンの上面及び下面を覆うように設けられなくともよい。第1の部分は、絶縁信頼性の向上に寄与する一方で透磁率を低下させる可能性があるので、絶縁体本体10における第1の部分の占める割合を減らすことが望ましい。第1エッジ導体パターンの上面及び下面を覆う一方で第2エッジ導体パターンの上面及び下面は覆わないように第1の部分を設けることにより、絶縁信頼性を向上させるとともにQ値の劣化を抑制することができる。
【0096】
導体パターン31dは、第2導体パターンのうち外部電極24の最も近くに設けられる第4エッジ導体パターンであるから、第1の部分は、この第4エッジ導体パターンの上面及び下面を覆うように設けられている。上記実施形態によれば、第2コイルユニットにおいて外部電極24の最も近くに配置されているため電位が高くなる第4エッジ導体パターンの上面及び下面が第1の部分で覆われるため、絶縁体本体10において第4エッジ導体パターンの周囲における絶縁信頼性を向上させることができる。第3エッジ導体パターンである導体パターン31lは、下端領域26に設けられているため、導体パターン31lに隣接するのは同系統の(すなわち、第2のコイルユニットの)導体パターン31kである。同系統の導体パターン間では絶縁破壊は起きにくいため、第1の部分は、第3エッジ導体パターンの上面及び下面を覆うように設けられなくともよい。第4エッジ導体パターンの上面及び下面を覆う一方で第3エッジ導体パターンの上面及び下面は覆わないように第1の部分を設けることにより、絶縁信頼性を向上させるとともに透磁率の低下を抑制することができる。
【0097】
第1の部分の形状及び配置は適宜変更することができる。
図4に示されている実施形態においては、絶縁体層20e,20f,20gのそれぞれに、環状部43a,43b,43cが設けられている。環状部43a,43b,43cは、環状部41aと同様に構成されているため、第1の部分の一部である。よって、
図4の実施形態においては、中間領域27に含まれている中間第1導体パターン31e,31g,31i及び中間第2導体パターン31d,31f,31hの各々の上面及び下面が第1の部分によって覆われている。これにより、絶縁体本体10の絶縁信頼性をさらに向上させることができる。
【0098】
コイル部品1においては、中間領域27に含まれる導体パターン及び絶縁体層の積層数を増やすことにより、結合係数をより高めることができる。上記の実施形態によれば、異系統の導体パターン間の絶縁性が向上しているため、当該異系統の導体パターン間の間隔を狭めても絶縁破壊が起こりにくい。これにより、上記実施形態においては、結合に寄与する導体パターンの積層数を増やすことが容易になっている。
【0099】
次に、コイル部品1の製造方法の一例を説明する。コイル部品1は、例えば積層プロセスによって製造することができる。具体的には、まず、絶縁体層19、絶縁体層20a~絶縁体層20l、上部カバー層17を構成する各絶縁体層、及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層を作成する。
【0100】
具体的には、これらの各絶縁体層の作成のために、フィラー粒子を分散させた熱硬化性の樹脂(例えばエポキシ樹脂)へ溶剤を加えてスラリーを作成する。このスラリーをプラスチック製のベースフィルムの表面に塗布して乾燥させ、この乾燥後のスラリーを所定サイズに切断することで絶縁体層19、絶縁体層20a,20b,20e,20f,20g,20j,20k,20l、上部カバー層17を構成する各絶縁体層、及び下部カバー層18を構成する各絶縁体層となる磁性体シートがそれぞれ得られる。
【0101】
次に環状部41a,41b,42a,42bとなるリング状シートを形成する。この環状部41a,41b,42a,42bとなるリング状シートは、上記の磁性体シート用のスラリーに絶縁性に優れた酸化物(ガラス粉、アルミナ粉、ジルコニア粉、又はこれらの混合物)を添加し、この酸化物が添加されたスラリーをプラスチック製のベースフィルムの表面に塗布して乾燥させ、この乾燥後のスラリーをリング形状にカットすることで得られる。リング状シートの周囲に、フィラー粒子を含む樹脂を印刷することにより、絶縁体層20c,20d,20h,20iとなる磁性体シートが得られる。
【0102】
次に、絶縁体層20a1~絶縁体層20kとなる各磁性体シートの所定の位置に、各磁性体シートをT軸方向に貫く貫通孔を形成する。
【0103】
次に、絶縁体層20a~絶縁体層20lとなる各磁性体シートの上面に金属材料(例えばAg)から成る導体ペーストをスクリーン印刷法により印刷して導体パターン31a~31lを形成するとともに、当該各磁性体シートに形成された貫通孔に当該金属ペーストを埋め込んで接続ビア導体32a~32e及び接続ビア導体33a~33eを形成する。
【0104】
次に、絶縁体層20a~絶縁体層20lとなる各磁性体シートを積層して、絶縁体部20となるコイル積層体を得る。次に、上部カバー層17用の各磁性体シートを積層して、上部カバー層17に相当する上部カバー層積層体を形成し、下部カバー層18用の各磁性体シートを積層して、下部カバー層18に相当する下部カバー層積層体を形成する。
【0105】
次に、下部カバー層18となる下部カバー層積層体、絶縁体部20となるコイル積層体、絶縁体層19となる磁性体シート、及び上部カバー層17となる上部カバー層積層体を積層して、プレス機を用いて熱圧着することで本体積層体を得る。
【0106】
次に、ダイシング機やレーザ加工機等の切断機を用いて当該本体積層体を所望のサイズに個片化することで、絶縁体本体10に相当するチップ積層体が得られる。次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を加熱処理する。
【0107】
次に、加熱処理されたチップ積層体の両端部に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21、外部電極22、外部電極23、及び外部電極24を形成する。以上により、コイル部品1が得られる。
【0108】
続いて、
図5~
図7を参照して、本発明の他の実施形態に係るコイル部品101について説明する。
図7に示されているコイル部品101は、コイル部品1の外部電極21~24に代えて外部電極121~124を有している。また、この外部電極の配置の変更に伴って、コイル部品101の導体パターン31a,31d,31j,31lの形状は、コイル部品1の導体パターン31a,31d,31j,31lから若干変更されている。コイル部品101の構成要素のうちコイル部品1の構成要素と同じ又は類似するものについては適宜説明を省略する。
【0109】
図5は、本発明の一実施形態に係るコイル部品101の斜視図であり、
図6及び
図7は、
図5のコイル部品101の内部を正面から透視した模式的な透視図である。
図6においては、外部電極121及び外部電極122のそれぞれに接続される引出ビア導体が示されており、
図7においては、外部電極123及び外部電極124のそれぞれに接続される引出ビア導体が示されている。
【0110】
図示のように、外部電極121~外部電極124はそれぞれ、絶縁本体10の下面10bに設けられている。外部電極121~外部電極124は、その各々の一部が第1の端面110c、第2の端面110d、第1の側面110e、及び第2の側面110fの少なくとも一つに沿って延伸するように形成されてもよい。本明細書で明示的に説明される外部電極121~外部電極124の形状及び配置は例示である。よって、本発明に適用可能な外部電極の形状及び配置は、本明細書で明示的に説明されるものに限定されない。
【0111】
図6に示されているように、導体パターン31aは、周方向に延伸する周回部31a1と、この周回部31a1の一端から径方向に延伸する引出部31a2と、を有する。
図6の実施形態において、引出部31a2は、絶縁体本体10の第2の端面10dから露出していない。導体パターン31iは、周方向に延伸する周回部31i1と、この周回部31i1の一端から径方向に延伸する引出部31i2と、を有する。引出部31i2は、絶縁体本体10の第1の端面10cから露出していない。
【0112】
絶縁体層20i~20l及び下部カバー層18の所定の位置には、各層をT軸方向に貫く第1貫通孔が形成されている。この第1貫通孔に、導体パターン31iの引出部31i2と外部電極121とを電気的に接続するように引出ビア導体35が設けられる。引出ビア導体35は、第1引出ビア導体の例である。
【0113】
絶縁体層20a~20l及び下部カバー層18の所定の位置には、各層をT軸方向に貫く第2貫通孔が形成されている。この第2貫通孔に、導体パターン31aの引出部31a2と外部電極122とを電気的に接続するように引出ビア導体36が設けられる。引出ビア導体36は、第2引出ビア導体の例である。
【0114】
このように、導体パターン31iは、引出ビア導体35を介して外部電極121に接続され、導体パターン31aは、引出ビア導体36を介して外部電極1212接続されている。
【0115】
図7に示されているように、導体パターン31dは、周方向に延伸する周回部31d1と、この周回部31d1の一端から径方向に延伸する引出部31d2と、を有する。
図7の実施形態において、引出部31d2は、絶縁体本体10の第2の端面10dから露出していない。導体パターン31lは、周方向に延伸する周回部31l1と、この周回部31l1の一端から径方向に延伸する引出部31l2と、を有する。引出部31l2は、絶縁体本体10の第1の端面10cから露出していない。
【0116】
絶縁体層20l及び下部カバー層18の所定の位置には、各層をT軸方向に貫く第3貫通孔が形成されている。この第3貫通孔に、導体パターン31lの引出部31l2と外部電極123とを電気的に接続するように引出ビア導体37が設けられる。引出ビア導体37は、第3引出ビア導体の例である。
【0117】
絶縁体層20d~20l及び下部カバー層18の所定の位置には、各層をT軸方向に貫く第4貫通孔が形成されている。この第4貫通孔に、導体パターン31dの引出部31d2と外部電極124とを電気的に接続するように引出ビア導体38が設けられる。引出ビア導体38は、第4引出ビア導体の例である。
【0118】
このように、導体パターン31dは、引出ビア導体38を介して外部電極124に接続され、導体パターン31lは、引出ビア導体37を介して外部電極123に接続されている。
【0119】
図6及び
図7に示されているように、絶縁体層20c~20kの各々には、高い電気抵抗率を有する環状部が設けられている。絶縁体層20c~20iに設けられている環状部41a,41b,42a,42b,43a~43cについては、
図4に示されているコイル部品51が備える対応する環状部と同様に構成される。これらに加えて、絶縁体層20jは環状部44aを有し、絶縁体層20kは環状部44bを有する。環状部44a,44bは、環状部41a,41b,42a,42b,43a~43cの各々の平面視形状と一致する平面視形状をとるように構成されてもよい。
【0120】
絶縁体層20jの環状部44aは、当該絶縁体層20jのうち環状部44a以外の部分である絶縁体層本体よりも高い電気抵抗率を有するように構成される。同様に、絶縁体層20kの環状部44bは、当該絶縁体層20kのうち環状部44b以外の部分である絶縁体層本体よりも高い電気抵抗率を有するように構成される。環状部44a,44bは、環状部41aと同様の方法を用いて作成され得る。
【0121】
コイル部品101においては、環状部41a,41b,42a,42b,43a~43c、44a,44bが第1の部分を構成する。この第1の部分は、導体パターン間だけでなく、引出ビア導体35と第2導体パターン(具体的には、導体パターン31j,31k,31l)との間、引出ビア導体36と第2導体パターン(具体的には、導体パターン31d,31f,31h,31j,31k,31l)との間、及び引出ビア導体38と複数の第1導体パターン(具体的には、導体パターン31e,31g,31i)との間にも介在している。
【0122】
上記の実施形態による作用効果について説明する。第1コイルユニット及び第2コイルユニットの中間領域27における電位は、外部電極22及び外部電極23から中間領域27までの間で、外部電極22及び外部電極23の電位から降下している。よって、上記の実施形態によれば、中間領域27において、第1コイルユニットと第2のコイルユニットとの間の電位差を小さくすることができる。これにより、絶縁体本体10の絶縁信頼性を高めることができる。
【0123】
一実施形態においては、この中間領域27に設けられている導体パターン(中間第1導体パターン及び/又は中間第2導体パターン)のうちの少なくとも一つの上面及び下面が高い電気抵抗率を有する第1の部分で覆われているため、中間領域27における絶縁信頼性を向上させることができる。
【0124】
一実施形態によれば、中間領域27にある第1エッジ導体パターン(導体パターン31i)の上面及び下面を覆う一方で上端領域25にある第2エッジ導体パターン(導体パターン31a)の上面及び下面は覆わないように第1の部分を設けることにより、絶縁信頼性を向上させるとともに透磁率の低下を抑制することができる。
【0125】
一実施形態によれば、中間領域27にある第4エッジ導体パターン(導体パターン31d)の上面及び下面を覆う一方で下端領域27にある第3エッジ導体パターン(導体パターン31l)の上面及び下面は覆わないように第1の部分を設けることにより、絶縁信頼性を向上させるとともに透磁率の低下を抑制することができる。
【0126】
一実施形態によれば、中間領域27に含まれている中間第1導体パターン31e,31g,31i及び中間第2導体パターン31d,31f,31hの各々の上面及び下面が第1の部分によって覆われているので、絶縁体本体10の絶縁信頼性をさらに向上させることができる。
【0127】
一実施形態によれば、外部電極121~124と導体パターンとの接続のために引出ビア導体35~38が設けられる場合でも、当該引出ビア導体35~38と各導体パターンとの間の絶縁信頼性を高めることができる。
【0128】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0129】
1,51,101 コイル部品
10 絶縁体本体
19,20a~20l 絶縁体層
21,22,23,24,121,122,123,124 外部電極
25 上端領域
26 下端領域
27 中間領域
31a~31l 導体パターン
32a~32e,33a~33e 接続ビア導体
35~38 引出ビア導体
41a,41b,42a,42b,43a~43c,44a,44b 環状部