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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
B41J2/01 211
B41J2/01 401
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018153676
(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公開番号】P2020026121
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】花岡 周平
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-217958(JP,A)
【文献】特開2005-349638(JP,A)
【文献】特開2011-000829(JP,A)
【文献】特開2015-030149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0165023(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0174625(US,A1)
【文献】特開2004-130795(JP,A)
【文献】特開2013-230690(JP,A)
【文献】特開2004-188801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体へインクを吐出するインクジェットヘッドと、
予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、
前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部と、
前記副走査動作において前記媒体に対して相対的に前記副走査方向へ前記インクジェットヘッドを移動させる距離である副走査移動量を設定する移動量設定部と、
前記副走査移動量の補正に用いる補正値として前記移動量設定部に入力される入力補正値を前記移動量設定部に入力する入力部と
を備え、
前記移動量設定部は、印刷の条件に応じて設定される基本の移動量である基本移動量と、前記入力部により入力される前記入力補正値とに基づき、前記副走査移動量を設定し、
前記入力部は、前記入力補正値として、前記入力補正値の入力時に設定されている印刷の条件において前記副走査移動量を増加又は減少させる距離を示す値を入力し、
前記入力補正値が新たに入力された場合、前記移動量設定部は、前記基本移動量と、新たに入力された前記入力補正値とに基づき、前記副走査移動量を設定し、
前記入力補正値が新たに入力された後、印刷の条件が変更された場合、前記移動量設定部は、変更後の印刷の条件に合わせて、前記入力補正値を調整し、変更後の印刷の条件に応じて設定される前記基本移動量と、変更後の印刷の条件に合わせて調整がされた前記入力補正値とに基づき、前記副走査移動量を設定し、
前記印刷装置は、互いに異なる印刷の条件が設定されている複数の印刷ジョブに対応する印刷の動作を連続して実行可能であり、
前記複数の印刷ジョブのうちの一つの前記印刷ジョブに対応する印刷物が印刷された後、次の前記印刷ジョブに対応する印刷物を印刷する動作を開始する前に、前記移動量設定部は、前記次の印刷ジョブにおいて設定されている印刷の条件に合わせて前記入力補正値を調整し、前記次の印刷ジョブに対応する印刷の条件に応じて設定される前記基本移動量と、当該印刷の条件に合わせて調整がされた前記入力補正値とに基づき、前記副走査移動量を設定することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記入力部は、前記入力補正値として、ユーザにより指定される値であるユーザフィード補正値を入力することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記入力部は、前記ユーザにより指定される値として、前記入力補正値の入力時に設定されている印刷の条件において前記副走査移動量を変化させる距離をそのまま示す値であるオフセット値の入力をユーザから受け付けることを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドは、前記副走査方向における位置を互いにずらして複数のノズルが並ぶノズル列を有し、
印刷の条件として、少なくとも、前記媒体における印刷範囲の各位置に対して行う主走査動作の平均回数を示すパス数を設定し、
前記基本移動量は、前記インクジェットヘッドの前記ノズル列の前記副走査方向における幅であるノズル長を前記パス数で除した値を示すことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記パス数として、非整数の値を含む複数種類の値を設定可能であることを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記非整数の値として、少なくとも、0.25以下の刻み幅での値を設定可能であることを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷装置は、印刷条件が設定されている印刷ジョブに基づき、印刷の動作を実行し、
一つの前記印刷ジョブに対応する印刷物を印刷している途中に前記入力部から新たな前記入力補正値が入力された場合、前記移動量設定部は、前記基本移動量と、新たに入力された前記入力補正値とに基づき、新たな前記副走査移動量を設定し、
前記一つの印刷ジョブに対応する印刷物を印刷している途中から、前記副走査駆動部は、前記新たな副走査移動量に従って、前記副走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
媒体に対して印刷を行う印刷方法であって、
前記媒体へインクを吐出するインクジェットヘッドに、
予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作と、
前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作と
を行わせ、
前記副走査動作において前記媒体に対して相対的に前記副走査方向へ前記インクジェットヘッドを移動させる距離である副走査移動量を設定する副走査移動量の設定時において、前記副走査移動量の補正に用いる補正値である入力補正値を入力し、印刷の条件に応じて設定される基本の移動量である基本移動量と、前記入力補正値とに基づき、前記副走査移動量を設定し、
前記入力補正値として、前記入力補正値の入力時に設定されている印刷の条件において前記副走査移動量を増加又は減少させる距離を示す値を入力し、
前記入力補正値が新たに入力された場合、前記基本移動量と、新たに入力された前記入力補正値とに基づき、前記副走査移動量を設定し、
前記入力補正値が新たに入力された後、印刷の条件が変更された場合、変更後の印刷の条件に合わせて、前記入力補正値を調整し、変更後の印刷の条件に応じて設定される前記基本移動量と、変更後の印刷の条件に合わせて調整がされた前記入力補正値とに基づき、前記副走査移動量を設定し、
互いに異なる印刷の条件が設定されている複数の印刷ジョブに対応する印刷の動作を連続して実行可能な印刷装置を用い、
前記複数の印刷ジョブのうちの一つの前記印刷ジョブに対応する印刷物が印刷された後、次の前記印刷ジョブに対応する印刷物を印刷する動作を開始する前に、前記次の印刷ジョブにおいて設定されている印刷の条件に合わせて前記入力補正値を調整し、前記次の印刷ジョブに対応する印刷の条件に応じて設定される前記基本移動量と、当該印刷の条件に合わせて調整がされた前記入力補正値とに基づき、前記副走査移動量を設定することを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であるインクジェットプリンタが広く用いられている。また、インクジェットプリンタの構成として、インクジェットヘッドに主走査動作(スキャン動作)を行わせるシリアル型の構成が広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-111211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリアル方式で印刷を行う場合、主走査動作の合間にインクジェットヘッドに副走査動作を行わせることで、印刷の対象物である媒体(メディア)においてインクジェットヘッドと対向する領域を順次変更する。副走査動作では、例えば、印刷の条件として設定されるパス数に応じて決まる搬送量(フィード量)だけ媒体を搬送することで、媒体に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる。
【0005】
また、副走査動作においては、様々な理由により、副走査動作時に媒体に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる距離である副走査移動量(例えば、媒体の搬送量)に誤差が生じる場合がある。そして、このような誤差が生じると、印刷結果において、意図しない縞状の模様(バンディング)が発生して、印刷の品質が低下する場合がある。そのため、副走査移動量については、単にパス数に応じて設定するのではなく、適宜補正を行うことが好ましい。
【0006】
この点に関し、例えばインクジェットプリンタにおいて設定可能なパス数の種類が数種類程度の限られたものであれば、設定可能なそれぞれのパス数に対応する副走査移動量毎に補正用のパラメータを予め用意することが考えられる。しかし、近年、インクジェットプリンタに求められる性能の高度化や多様化により、設定可能なパス数の種類が極めて多くなる場合がある。より具体的には、例えば、ミマキエンジニアリング社製のインクジェットプリンタに搭載されているMAPS(Mimaki Advanced Pass System)のような機能を用いる場合、非整数を含む多様なパス数が設定されることになる。そして、このような場合、設定可能なそれぞれのパス数に対応する副走査移動量毎に補正用のパラメータを予め用意しようとすると、必要な補正用のパラメータが極めて膨大になるおそれがある。
【0007】
そのため、従来、主走査動作及び副走査動作をインクジェットヘッドに行わせる印刷装置において、副走査移動量の補正をより適切に行うことが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
より少ない数の補正用のパラメータのみを用いて副走査移動量の補正をしようとする場合、例えば、所定の印刷の条件に対する補正用のパラメータを標準のパラメータとして用意しておき、他の印刷の条件を用いる場合には、印刷の条件の違い(例えば、パス数の違い等)に応じて、補正用のパラメータの調整を行うこと等が考えられる。しかし、実際に印刷を行う場合、より高い品質の印刷を行うためには、印刷結果を実際に確認して補正用のパラメータを設定することが好ましい場合もある。そして、このような場合、補正用のパラメータの調整を行う構成を活かしつつ、新たな補正用のパラメータを設定可能にすることが好ましい。
【0009】
これに対し、本願の発明者は、鋭意研究により、副走査移動量の補正に用いるパラメータの少なくとも一部として、ユーザの指示等(例えば、手入力)により入力される補正値(入力補正値)を用いることを考えた。また、このような入力補正値として、入力時の印刷条件において副走査移動量を変化させる距離をそのまま示す値を用い、かつ、その後に印刷の条件が変更された場合には、先に入力された入力補正値を印刷の条件の変化に応じて調整することを考えた。このように構成すれば、例えば、印刷結果を実際に確認して補正用のパラメータを設定する場合等に、容易かつ適切に入力補正値を入力することができる。また、例えば、その後に印刷の条件が変更された場合にも、変更後の印刷の条件に合わせて、入力補正値の調整を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、主走査動作及び副走査動作をインクジェットヘッドに行わせる印刷装置において、副走査移動量の補正をより適切に行うことが可能になる。
【0010】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、前記媒体へインクを吐出するインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部と、前記副走査動作において前記媒体に対して相対的に前記副走査方向へ前記インクジェットヘッドを移動させる距離である副走査移動量を設定する移動量設定部と、前記副走査移動量の補正に用いる補正値として前記移動量設定部に入力される入力補正値を前記移動量設定部に入力する入力部とを備え、前記移動量設定部は、印刷の条件に応じて設定される基本の移動量である基本移動量と、前記入力部により入力される前記入力補正値とに基づき、前記副走査移動量を設定し、前記入力部は、前記入力補正値として、前記入力補正値の入力時に設定されている印刷の条件において前記副走査移動量を増加又は減少させる距離を示す値を入力し、前記入力補正値が新たに入力された場合、前記移動量設定部は、前記基本移動量と、新たに入力された前記入力補正値とに基づき、前記副走査移動量を設定し、前記入力補正値が新たに入力された後、印刷の条件が変更された場合、前記移動量設定部は、変更後の印刷の条件に合わせて、前記入力補正値を調整し、変更後の印刷の条件に応じて設定される前記基本移動量と、変更後の印刷の条件に合わせて調整がされた前記入力補正値とに基づき、前記副走査移動量を設定することを特徴とする。
【0011】
このように構成すれば、例えば、容易かつ適切に入力補正値を入力することができる。また、例えば、その後に印刷の条件が変更された場合にも、変更後の印刷の条件に合わせて、入力補正値の調整を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、主走査動作及び副走査動作をインクジェットヘッドに行わせる印刷装置において、副走査移動量の補正をより適切に行うことが可能になる。
【0012】
また、この構成において、入力部は、入力補正値として、ユーザにより指定される値であるユーザフィード補正値を入力する。この場合、ユーザフィード補正値は、例えば、コンピュータの画面を用いたインターフェース等を介して、ユーザの手入力により入力される。このように構成すれば、例えば、印刷結果を確認したユーザの判断に基づき、副走査移動量の補正量の調整を適切に行うことができる。
【0013】
また、副走査移動量の補正については、ユーザフィード補正値以外のパラメータを更に用いて行ってもよい。この場合、移動量補正部において、例えば、印刷装置において予め設定されているパラメータに基づいて印刷の条件に応じて設定される補正値であるシステムフィード補正値を更に利用して、基本移動量、ユーザフィード補正値、及びシステムフィード補正値に基づき、副走査移動量を設定する。このように構成すれば、例えば、副走査移動量の補正をより適切に行うことができる。
【0014】
また、この構成において、入力部は、ユーザにより指定される値として、例えば、入力補正値の入力時に設定されている印刷の条件において副走査移動量を変化させる距離をそのまま示す値であるオフセット値の入力をユーザから受け付ける。この場合、副走査移動量を変化させる距離をそのまま示すとは、例えば、副走査移動量において補正が必要な距離としてユーザが見たままの距離を示すことである。また、副走査移動量において補正が必要な距離とは、例えば、印刷結果において認識される副走査移動量のずれの大きさのことである。
【0015】
また、この構成において、インクジェットヘッドは、例えば、副走査方向における位置を互いにずらして複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、印刷の条件としては、少なくとも、媒体における印刷範囲の各位置に対して行う主走査動作の平均回数を示すパス数を設定することが考えられる。そして、この場合、基本移動量としては、例えば、インクジェットヘッドのノズル列の副走査方向における幅であるノズル長をパス数で除した値を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、基本移動量を適切に設定することができる。また、この構成において、インクジェットヘッドとしては、例えば、同じ色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドにより構成される複合ヘッド(例えば、スタガヘッド等)を用いることも考えられる。この場合、インクジェットヘッドのノズル列とは、例えば、複合ヘッドにおけるノズル列のことである。また、複合ヘッドにおけるノズル列とは、例えば、複合ヘッドを構成する複数のインクジェットヘッドのそれぞれが有するノズルを合わせることで構成されるノズル列のことである。
【0016】
また、この構成において、パス数としては、例えば、非整数の値を含む複数種類の値を設定可能にすることが考えられる。また、この場合、非整数の値として、例えば、少なくとも、0.25以下の刻み幅での値を設定可能にすること等が考えられる。このような場合、様々なパス数が設定可能になることで、基本移動量として取り得る値も多様になる。これに対し、上記のように入力補正値を用いる場合、基本移動量として取り得る値が多い場合にも、副走査移動量を適切に設定することができる。また、パス数の刻み幅については、好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.01以下である。また、この場合、例えば、小数点以下が所定の桁数になる数値で、任意のパス数を設定可能にすることが考えられる。
【0017】
また、この構成においては、例えば、互いに異なる印刷の条件が設定されている複数の印刷ジョブに対応する印刷の動作を連続して実行可能な印刷装置を用いることが考えられる。この場合、複数の印刷ジョブに対応する印刷の動作を連続して実行可能であるとは、例えば、印刷装置に対して供給される複数の印刷ジョブを自動的に順次処理することで、それぞれの印刷ジョブに対応する印刷の動作を自動的に順次行うことである。また、この場合、設定される印刷の条件が印刷ジョブ毎に異なり得るため、印刷ジョブが変わることに伴って印刷条件が変わる場合もある。そのため、この場合、例えば、複数の印刷ジョブのうちの一つの印刷ジョブに対応する印刷物が印刷された後、次の印刷ジョブに対応する印刷物を印刷する動作を開始する前に、移動量設定部において、次の印刷ジョブにおいて設定されている印刷の条件に合わせて入力補正値を調整することが考えられる。また、この場合、移動量設定部は、例えば、更に、次の印刷ジョブに対応する印刷の条件に応じて設定される基本移動量と、その印刷の条件に合わせて調整がされた入力補正値とに基づき、副走査移動量を設定する。このように構成すれば、例えば、複数の印刷ジョブに対応する印刷の動作をより高い精度で適切に行うことができる。
【0018】
また、印刷装置において、印刷条件が設定されている印刷ジョブに基づいて印刷の動作を実行する場合において、例えばユーザが印刷の途中経過を観察することで、印刷の動作の途中で入力補正値を変更すること等も考えられる。より具体的に、この場合、例えば、一つの印刷ジョブに対応する印刷物を印刷している途中に入力部から新たな入力補正値が入力されることが考えられる。この場合、移動量設定部は、例えば、基本移動量と、新たに入力された入力補正値とに基づき、新たな副走査移動量を設定する。そして、一つの印刷ジョブに対応する印刷物を印刷している途中から、副走査駆動部は、新たな副走査移動量に従って、副走査動作をインクジェットヘッドに行わせる。このように構成すれば、例えば、副走査移動量の補正をより柔軟かつ適切に行うことができる。
【0019】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する印刷方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、主走査動作及び副走査動作をインクジェットヘッドに行わせる印刷装置において、副走査移動量の補正をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置10について説明をする図である。図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、インクジェットヘッド102の構成の一例を示す。
図2】フィード量を設定する動作について説明をする図である。図2(a)は、入力部24においてユーザからの設定を受け付けるパラメータの例を示す。図2(b)は、ユーザにより指定されるパラメータに基づいてフィード量を設定する動作について説明をする図である。
図3】オフセット値の調整について更に詳しく説明をする図である。図3(a)~(d)は、様々なパラメータを設定又は変更する動作の一例を示す。
図4】オフセット値の調整について更に詳しく説明をする図である。図4(a)~(c)は、様々なパラメータを設定又は変更する動作の一例を示す。
図5】フィード量の補正の仕方について更に詳しく説明をする図である。図5(a)は、印刷の条件に応じて設定される半端パスとオフセット値との関係の一例を示す表である。図5(b)は、半端パスの逆数とユーザフィード補正値との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10について説明をする図である。図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。尚、以下において説明をする点を除き、印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、印刷装置10は、以下において説明をする構成に加え、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を更に有してよい。
【0023】
印刷装置10は、印刷対象の媒体(メディア)50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタである。また、本例において、印刷装置10は、ヘッド部12、プラテン14、ガイドレール16、主走査駆動部18、副走査駆動部20、記憶部22、入力部24、及び制御部30を備える。
【0024】
ヘッド部12は、媒体50へインクを吐出する部分である。また、本例において、ヘッド部12は、キャリッジ100及び複数のインクジェットヘッド102を有する。キャリッジ100は、複数のインクジェットヘッド102を保持する保持部材である。本例において、キャリッジ100は、例えば図中に示すように、印刷装置10において予め設定された副走査方向(図中のX方向)における位置を揃えて、副走査方向と直交する主走査方向(図中のY方向)へ並ぶように、複数のインクジェットヘッド102を保持する。
【0025】
また、複数のインクジェットヘッド102のそれぞれは、印刷に使用する各色のインクを媒体50へ吐出するインクジェットヘッドであり、互いに異なる色のインクを吐出する。また、より具体的に、本例において、ヘッド部12は、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、及びブラック(K)色のそれぞれの色のインクをそれぞれが吐出する複数のインクジェットヘッド102を有する。また、本例において、それぞれのインクジェットヘッド102は、副走査方向における位置を互いにずらして複数のノズルが並ぶノズル列を有しており、各ノズルから各色のインクを吐出する。
【0026】
プラテン14は、ヘッド部12と対向する位置において媒体50を支持する台状部材である。また、ガイドレール16は、主走査方向へ延伸するレール状部材であり、主走査方向へのヘッド部12の移動をガイドする。
【0027】
主走査駆動部18は、ヘッド部12に主走査動作(スキャン動作)を行わせる駆動部である。この場合、主走査動作とは、例えば、主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。また、ヘッド部12に主走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドに主走査動作を行わせることである。また、本例においては、ヘッド部12に主走査動作を行わせることにより、印刷装置10は、シリアル方式での印刷の動作を実行する。また、本例の主走査動作時において、ヘッド部12は、ガイドレール16に沿って、主走査方向へ移動する。また、主走査動作に関し、主走査方向へのヘッド部12の移動とは、媒体50に対する相対的な移動のことである。そのため、印刷装置10の変形例においては、ヘッド部12の位置を固定して、例えばプラテン14を移動させることで、媒体50の側を移動させてもよい。
【0028】
副走査駆動部20は、ヘッド部12に副走査動作を行わせる駆動部である。この場合、副走査動作とは、例えば、副走査方向へ媒体50に対して相対的に移動する動作のことである。また、ヘッド部12に副走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドに副走査動作を行わせることである。また、本例において、副走査駆動部20は、例えば図示を省略したベルト部材等を用いて、副走査方向と平行な搬送方向へ媒体50を搬送することで、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。また、この場合において、副走査駆動部20は、各回の主走査動作の合間に、印刷のパス数等に応じて制御部30により設定されるフィード量だけ、媒体50を搬送する。この場合、副走査動作時のフィード量は、副走査移動量の一例である。また、副走査移動量とは、副走査動作において媒体50に対して相対的に副走査方向へインクジェットヘッド102を移動させる距離のことである。また、媒体50の搬送は、ベルト部材に限らず、例えばローラ等を用いて行ってもよい。また、印刷装置10の変形例においては、媒体50の位置を固定して、ヘッド部12の側を移動させることで、副走査動作を行ってもよい。
【0029】
記憶部22は、印刷の動作を指定するパラメータを記憶するための記憶手段である。本例において、記憶部22は、少なくとも、フィード量の補正に用いるパラメータを記憶する。また、入力部24は、印刷の動作を指定するパラメータを入力するための入力手段である。また、本例において、入力部24は、少なくとも、フィード量の補正に用いるパラメータをユーザ(使用者)から受け付け、制御部30へ入力する。フィード量の補正に用いるパラメータについては、後に更に詳しく説明をする。
【0030】
制御部30は、例えば印刷装置10のCPUであり、予め設定されたプログラムに従って、印刷装置10の各部の動作を制御する。より具体的に、印刷装置10は、例えば、ヘッド部12による主走査動作の制御時に、印刷すべき画像に応じて、ヘッド部12におけるそれぞれのノズルにインクを吐出させる。また、本例において、制御部30は、移動量設定部の一例でもあり、印刷の条件に応じて、副走査動作時のフィード量を設定する。また、この場合において、記憶部22に記憶されているパラメータや入力部24から入力されるパラメータに基づき、フィード量の補正を行う。制御部30においてフィード量を設定する動作についても、後に、更に詳しく説明をする。
【0031】
ここで、上記においても説明をしたように、本例の印刷装置10は、上記及び以下において説明をする点を除き、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、ヘッド部12におけるそれぞれのインクジェットヘッド102から吐出するインクとしては、公知の様々な種類のインクを用いることが考えられる。また、この場合、印刷装置10は、使用するインクの種類に応じて、媒体50にインクを定着させるための定着手段等を更に備えることが好ましい。より具体的に、インクとして、溶媒を蒸発させることで媒体50に定着するインク(蒸発乾燥型のインク)を用いる場合、定着手段として、媒体又はインクを加熱するヒータ等を用いることが考えられる。この場合、ヒータは、例えば、プラテン14内において、媒体50を挟んでヘッド部12と対向する位置等に配設される。また、このような蒸発乾燥型のインクとしては、例えば、公知の各種の水性インクや、溶剤インク(ソルベントインク)等を用いることが考えられる。また、インクとしては、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)等を用いてもよい。この場合、定着手段としては、例えばUVLED等の紫外線照射手段を用いることが考えられる。また、この場合、紫外線照射手段については、ヘッド部12において、複数のインクジェットヘッド102と隣接する位置(主走査方向において隣接する位置)に配設することが考えられる。
【0032】
また、上記においても説明をしたように、本例において、各色用のインクジェットヘッド102は、副走査方向における位置を互いにずらして複数のノズルが並ぶノズル列を有する。そして、この場合、各色用のインクジェットヘッド102としては、例えば図1(b)に示すように、同じ色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッドにより構成される複合ヘッド(例えば、スタガヘッド等)を用いてもよい。図1(b)は、インクジェットヘッド102としてスタガヘッドを用いる場合について、インクジェットヘッド102の構成の一例を示す。
【0033】
図中に示す場合において、各色用のインクジェットヘッド102は、同じ色のインクを吐出する複数の単位ヘッド202により構成される。複数の単位ヘッド202のそれぞれは、スタガヘッドを構成するインクジェットヘッドであり、例えば図中に示すように、副走査方向へノズルが並ぶノズル列を有する。そして、これらの複数の単位ヘッド202は、それぞれが有するノズル列が合わさることでインクジェットヘッド102のノズル列が構成されるように、副走査方向における位置をずらして配設される。この場合、複数の単位ヘッド202のそれぞれが有するノズル列が合わさることでインクジェットヘッド102のノズル列が構成されるとは、例えば、図1(b)の右側部分に示すように、それぞれの単位ヘッド202における各ノズルの副走査方向における位置に着目した場合に一つの仮想的なノズル列が構成されることである。また、この場合、この仮想的なノズル列について、インクジェットヘッド102のノズル列と考えることができる。また、本例において、単位ヘッド202としては、例えば、副走査方向における長さが4インチ程度のインクジェットヘッドを用いる。また、その結果、2個の単位ヘッド202により構成されるインクジェットヘッド102のノズル列の長さ(副走査方向における幅)は、220mm(220000μm)になっている。
【0034】
続いて、フィード量の補正に用いるパラメータや、制御部30においてフィード量を設定する動作等について、更に詳しく説明をする。図2は、フィード量を設定する動作について説明をする図である。図2(a)は、入力部24においてユーザからの設定を受け付けるパラメータの例を示す。図2(b)は、ユーザにより指定されるパラメータに基づいてフィード量を設定する動作について説明をする図である。
【0035】
本例において、入力部24は、ユーザから、少なくとも、入力パス値、MAPS速度値、及びオフセット(オフセット値)の入力を受け付ける。これらのうち、入力パス値及びMAPS速度値は、印刷の条件を指定するパラメータである。また、本例において、入力パス値は、パス数の設定の基本となる数値であり、ユーザにより、1以上の整数値が指定される。この場合、パス数とは、媒体における印刷範囲の各位置に対して行う主走査動作の平均回数を示す数のことである。また、本例において、パス数は、入力パス値に加え、MAPS(Mimaki Advanced Pass System)処理を適用する程度を示すMAPS速度値を考慮して設定される。そのため、入力パス値については、例えば、印刷時に設定されるパス数からMAPS処理の影響分を除いた値に相当すると考えることもできる。また、入力パス値については、例えば、MAPS処理を無効(OFF)にした場合に設定されるパス数に相当する値等と考えることもできる。
【0036】
また、MAPS速度値とは、上記のように、MAPS処理を適用する程度を示す値である。MAPS処理とは、例えば、各ノズルから吐出するインクの濃度(吐出濃度)をマスクの適用により調整することでバンディングを目立ちにくくする処理のことである。MAPS処理においては、例えば、市松模様状のマスク等ではなく、グラデーション型のマスクを用いることで、吐出濃度の調整を行う。また、この場合、マスクに従って吐出濃度を下げる分に合わせてフィード量を小さくすることで、パスの境界部分に重なりを持たせて、パスの境界を目立ちにくくする。そのため、MAPS処理を行う場合、MAPS移動速度に応じて、フィード量が変化することになる。また、これに伴い、設定されるパス数が変化することになる。
【0037】
そのため、MAPS処理を行う場合、パス数としては、例えば、入力パス値として指定される整数値に対してMAPS速度値に応じた調整を行うことで、非整数の値(半端パス)も設定し得ることになる。従って、MAPS処理を行う構成については、例えば、非整数の値を含む複数種類の値が設定可能な構成の一例と考えることができる。また、この場合、高い精度で柔軟にMAPS処理等を行うためには、パス数となる非整数の値について、少なくとも、0.25以下の刻み幅での値を設定可能にすることが好ましい。また、パス数の刻み幅は、好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.01以下である。更に、この場合、例えば、小数点以下が所定の桁数になる数値で、任意のパス数を設定可能にすることがより好ましい。また、本例において、パス数は、入力パス値及びMAPS速度値に応じて算出されることで、0.01刻みで任意の値を設定可能になっている。
【0038】
尚、MAPS速度値については、例えば、媒体上に形成されるドットを分散させる程度を示すパラメータ等と考えることもできる。また、この場合、MAPS速度値を100%にした状態は、入力パス値に相当するマスクがかかる状態を示している。そのため、MAPS速度値が100%である場合、パス数は、入力パス数と等しくなる。また、MAPS速度値が100%より小さい場合、パス数は、MAPS速度値に応じて、入力パス値よりも大きくなる。より具体的に、例えば入力パス値が2であり、MAPS速度値が100%であれば、MAPS処理において、2パス相当のマスクがかかることになる。また、入力パス値が2であり、MAPS速度値が50%であれば、MAPS処理において、4パス相当のマスクがかかることになる。また、この場合、MAPS速度値の設定が小さな値になる程、パスの境界部分で重なる幅が大きくなる(パスの重なりが増える)ため、パスの境界が見えにくくなり、バンディングを抑制する効果が大きくなる。また、入力パス値やMAPS速度等の印刷の条件については、必ずしもユーザに指定させるのではなく、印刷すべき画像を示す印刷ジョブにおいて指定されている条件を用いてもよい。また、この場合、印刷ジョブにおいて指定されている印刷の条件を初期値として用い、ユーザによる変更を受け付けること等も考えられる。
【0039】
また、図2に示したパラメータのうち、オフセット値は、フィード量の補正に用いるパラメータである。また、この場合、オフセット値は、入力部24により入力される入力補正値の一例であり、かつ、入力補正値としてユーザにより指定される値であるユーザフィード補正値の一例でもある。本例において、オフセット値は、必要に応じて、コンピュータの画面を用いたインターフェース等を介して、ユーザの手入力により入力される。また、オフセット値としては、オフセット値の入力時に設定されている印刷の条件においてフィード量を変化させる距離をそのまま示す値を用いる。フィード量を変化させる距離をそのまま示すとは、例えば、フィード量において補正が必要な距離としてユーザが見たままの距離を示すことである。また、フィード量において補正が必要な距離とは、例えば、印刷結果において認識されるフィード量のずれの大きさ(フィードずれ量、フィード補正量)のことである。また、オフセット値については、例えば、オフセット値の入力時に設定されている印刷の条件においてフィード量を増加又は減少させる距離を示す値等と考えることもできる。
【0040】
尚、フィード量の補正に用いるパラメータの入力の仕方について、本例とは異なる方法で行う場合、例えば、予め設定された標準の印刷条件に換算した値を入力すること等も考えられる。また、コンピュータのシステムとして考えた場合には、このようにしてパラメータを入力する方が、その後の処理が容易になるとも考えられる。しかし、フィード量の補正を行う場合には、ユーザの感覚に基づき、極めて微小な距離に対応するパラメータを入力することも考えられる。そして、このような場合、標準の印刷条件に合わせた換算等が必要になると、計算ミス等で意図しない変更が行われやすくなるとも考えられる。また、フィード量の補正は、例えば、印刷の動作の途中で行うこと等も考えられる。そして、このような場合、標準の印刷条件に合わせた換算等が必要になると、パラメータを入力するまでに要する時間が長くなり、その分だけ、補正が遅れることになる。これに対し、本例によれば、任意の印刷条件においてユーザが見たままのフィード量のずれ量をオフセット値として設定できるため、印刷結果を確認したユーザの判断に基づき、フィード量の補正量の調整を迅速かつ適切に行うことができる。また、これにより、例えば、容易で誤りが少ない補正の動作を適切に実現できる。
【0041】
続いて、本例においてフィード量を設定する動作について、更に詳しく説明をする。フィード量を設定する動作においては、制御部30において、先ず、図2(b)に示すように、入力パス値及びMAPS速度値に基づき、パス数及び基本移動量の設定を行う。この場合、パス数とは、上記においても説明をしたように、MAPS速度値に応じて入力パス値を調整することで得られるパス数(半端パス)のことである。また、本例において、基本移動量とは、副走査動作でのフィード量の設定時に用いられる基本の移動量であり、印刷の条件に応じて設定される。また、本例において、基本移動量は、補正を行う前のフィード量に相当する値である。また、より具体的に、基本移動量としては、インクジェットヘッドのノズル長をパス数で除した値が設定される。また、上記においても説明をしたように、本例において、パス数は、入力パス値及びMAPS速度値に応じて算出されることで、0.01刻みで任意の値を設定可能になっている。そのため、基本移動量として取り得る値も、ノズル長以下の範囲で、様々な値を設定可能になる。
【0042】
また、制御部30は、このようにして算出された基本移動量をオフセット値に基づいて補正することで、フィード量の設定を行う。また、本例においては、フィード量の補正に用いる補正値として、ユーザにより設定されるオフセット値に加え、システムフィード補正値を更に用いる。この場合、システムフィード補正値とは、印刷装置10において予め設定されているパラメータに基づいて印刷の条件に応じて設定される補正値のことである。
【0043】
そのため、本例においてフィード量を設定する動作については、例えば、基本移動量、オフセット値、及びシステムフィード補正値に基づいてフィード量を設定する動作等と考えることができる。この場合、システムフィード補正値を用いた補正を行うことで、例えば、印刷装置10の装置特性(機体間で生じる誤差)等に対応する標準の補正を容易かつ適切に行うことができる。また、ユーザにより指定されるオフセット値を更に用いて補正を行うことで、例えば、印刷の条件や使用する媒体の特性等に応じて実際の印刷時に必要となる細かい調整等を更に行うことが可能になる。そのため、本例によれば、例えば、フィード量の補正を高い精度で適切に行うことができる。
【0044】
続いて、本例におけるオフセット値の使い方等について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、オフセット値としては、オフセット値の入力時に設定されている印刷の条件においてフィード量を変化させる距離をそのまま示す値を用いる。しかし、印刷装置10においては、オフセット値を入力した後に、印刷条件が変更される場合もある。より具体的に、印刷装置10においては、例えば、印刷装置10に印刷を行わせる印刷物を示す印刷ジョブとして、印刷の条件が設定されている印刷ジョブを用いること等も考えられる。そして、この場合、印刷ジョブ毎に印刷の条件が変更されること等が考えられる。また、この場合、印刷の条件が変わることで、オフセット値として設定すべき値が変化することが考えられる。より具体的に、フィード量の設定時に適用する補正の量は、通常、ほぼ、フィード量に比例すると考えられる。そのため、印刷の条件の変更によりフィード量が変化した場合、補正時にフィード量を変化させる距離も変化することになる。これに対し、本例においては、ユーザが任意の印刷の条件において見たままの値を設定したオフセット値について、印刷の条件の変化に応じて変化するフィード量に合わせて、自動的に調整を行う。
【0045】
図3及び図4は、オフセット値の調整について更に詳しく説明をする図である。図3(a)~(d)及び図4(a)~(c)は、様々なパラメータを設定又は変更する動作の一例を示す。また、図3(a)は、オフセット値を指定せずに入力パス値及びMAPS速度値を設定した状態の一例を示す図であり、入力パス値を1とし、MAPS速度値を100%とした場合の例を示す。この状態については、例えば、ユーザにより指定されるユーザフィード補正値を用いずにフィード量を設定する状態等と考えることもできる。
【0046】
また、図3(b)は、図3(a)に示した状態から、オフセット値を1.000mmに変更した状態を示す。この場合、ユーザによるオフセット値の指定に応じて、制御部30は、例えば、オフセット値として記憶している値を更新する処理(フィード補正値更新処理)を行う。また、これにより、以降の処理において、新たに指定されたオフセット値を使用する。
【0047】
また、図3(c)は、図3(b)に示した状態から、入力パス値を2に変更した状態を示す。この場合、入力パス値の変更に伴い、入力パス値に基づいて算出される基本移動量等も変化することになる。そのため、この場合、入力パス値の変更に合わせて、オフセット値も変更することも必要になる。これに対し、本例において、入力パス値が変更された場合、制御部30は、変更後の入力パス値に基づき、フィード補正値更新処理を行う。また、より具体的に、この場合、新たな入力パス値に基づいて新たな基本移動量を算出して、基本移動量に対して比例するように、オフセット値を変化させる。その結果、図3(c)に示した場合、フィード補正値更新処理により、オフセット値は、0.500mmに変更される。
【0048】
また、図3(d)は、図3(c)に示した状態から、MAPS速度値を80%に変更した状態を示す。この場合、MAPS速度値の変更に伴い、MAPS速度値に基づいて算出される基本移動量等も変化することになる。そのため、この場合、MAPS速度値の変更に合わせて、オフセット値も変更することも必要になる。これに対し、本例において、MAPS速度値が変更された場合、制御部30は、変更後のMAPS速度値に基づき、フィード補正値更新処理を行う。また、より具体的に、この場合、新たなMAPS速度値に基づいて新たな基本移動量を算出して、基本移動量に対して比例するように、オフセット値を変化させる。その結果、図3(d)に示した場合、フィード補正値更新処理により、オフセット値は、0.400mmに変更される。
【0049】
また、印刷の条件が変更された場合において、単にオフセット値を比例計算により調整するのみでは、調整が不十分になる場合もある。そのため、このような場合には、新たな印刷条件に合わせて、新たなオフセット値をユーザにより入力すること等も考えられる。図4(a)は、図3(d)に示した状態から、オフセット値を0.250mmに変更した状態を示す。この場合、フィード補正値更新処理により、オフセット値は、ユーザにより新たに指定された値に変更される。
【0050】
また、図4(b)は、図4(a)に示した状態から、入力パス値を1に変更した状態を示す。この場合も、制御部30は、新たな入力パス値に基づいて新たな基本移動量を算出して、オフセット値を変化させる。その結果、図4(b)に示した場合、フィード補正値更新処理により、オフセット値は、0.500mmに変更される。また、図4(c)は、図4(b)に示した状態から、MAPS速度値を100%に変更した状態を示す。この場合も、制御部30は、新たなMAPS速度値に基づいて新たな基本移動量を算出して、オフセット値を変化させる。その結果、図4(c)に示した場合、フィード補正値更新処理により、オフセット値は、0.625mmに変更される。
【0051】
ここで、上記において説明をした各動作のうち、例えば図3(b)や図4(a)に示す動作については、オフセット値が新たに設定される動作の例と考えることができる。この場合、制御部30は、基本移動量と、新たなオフセット値とに基づき、フィード量を設定する。また、例えば図3(c)、(d)や、図4(b)、(c)に示す動作については、例えば、オフセット値が新たに入力された後、更に印刷の条件が変更された場合の動作の例と考えることができる。この場合、制御部30は、変更後の印刷の条件に合わせてオフセット値を調整し、変更後の印刷の条件に応じて設定される基本移動量と、変更後の印刷の条件に合わせて調整がされたオフセット値とに基づき、フィード量を設定する。このように構成すれば、例えば、容易かつ適切にオフセット値を入力することができる。また、例えば、その後に印刷の条件が変更された場合にも、変更後の印刷の条件に合わせて、オフセット値の調整を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、フィード量の補正を適切に行うことができる。また、この場合、印刷の条件に合わせてオフセット値を調整することにより、様々な印刷の条件に応じて基本移動量として取り得る値が多い場合にも、フィード量の補正を適切に行うことができる。そのため、本例によれば、フィード量の設定を高い精度で適切に行うことができる。
【0052】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、例えば、印刷の条件が設定されている印刷ジョブに基づき、印刷の動作を行うことが考えられる。そして、この場合、印刷装置10において、例えば、互いに異なる印刷の条件が設定されている複数の印刷ジョブに対応する印刷の動作を連続して実行すること等も考えられる。この場合、複数の印刷ジョブに対応する印刷の動作を連続して実行するとは、例えば、印刷装置10に対して供給される複数の印刷ジョブを自動的に順次処理することで、それぞれの印刷ジョブに対応する印刷の動作を自動的に順次行うことである。このような場合、設定される印刷の条件が印刷ジョブ毎に異なり得るため、印刷ジョブが変わることに伴って印刷条件が変わる場合もある。
【0053】
これに対し、本例においては、例えば、印刷の条件の変更に合わせて自動的にオフセット値を調整することで、それぞれの印刷ジョブに対応する印刷の動作をより適切に行うことができる。より具体的に、この場合、例えば、複数の印刷ジョブのうちの一つの印刷ジョブに対応する印刷物が印刷された後、次の印刷ジョブに対応する印刷物を印刷する動作を開始する前に、制御部30において、次の印刷ジョブにおいて設定されている印刷の条件に合わせてオフセット値を調整する。また、この場合、制御部30は、更に、次の印刷ジョブに対応する印刷の条件に応じて設定される基本移動量と、その印刷の条件に合わせて調整がされたオフセット値とに基づき、フィード量を設定する。このように構成すれば、複数の印刷ジョブに対応する印刷の動作を連続して実行する場合において、それぞれの印刷ジョブに対応するフィード量を適切に設定することができる。
【0054】
また、オフセット値の変更については、例えば、ユーザが印刷の途中経過を観察することで、一つの印刷ジョブに対応する印刷の動作の途中で行うこと等も考えられる。このように構成すれば、例えば、フィード量の補正量の調整が必要であることをユーザが認識した時点で、速やかに補正量を調整することができる。また、この場合において、見たままの値をオフセット量として用いることで、誤りの少ない補正の動作をより適切に実行することができる。より具体的に、この場合、例えば、ユーザによるオフセット値の変更により、一つの印刷ジョブに対応する印刷物を印刷している途中に入力部24から制御部30へ新たなオフセット値が入力されることになる。そして、この場合、制御部30は、一つの印刷ジョブに対応する印刷物を印刷している途中において、基本移動量と、新たに入力されたオフセット値とに基づき、新たなフィード量を設定する。そして、副走査駆動部20は、一つの印刷ジョブに対応する印刷物を印刷している途中から、新たなフィード量に従って、副走査動作をインクジェットヘッド102に行わせる。このように構成すれば、例えば、副走査移動量の補正をより柔軟かつ適切に行うことができる。
【0055】
続いて、フィード量の補正の仕方の具体例について、更に詳しく説明をする。図5は、フィード量の補正の仕方について更に詳しく説明をする図である。図5(a)は、印刷の条件に応じて設定されるパス数(半端パス)とオフセット値との関係の一例を示す表であり、上記において説明をするように印刷の条件に応じてオフセット値を調整する場合に関し、調整後のオフセット値をパス数と対応付けて示す。
【0056】
また、図5(a)に示した表において、ユーザフィード補正値とは、調整後のオフセット値に対応する値である。また、図中に示すように、調整後のオフセット値は、半端パスの逆数に比例する。また、基本ユーザフィード補正値とは、入力パス値及びMAPS速度値を所定の標準値に設定した場合のオフセット値に対応する値である。また、より具体的に、図5(a)に示した表においては、入力パス値を1とし、MAPS速度値を100%にした場合に換算したオフセット値を、基本ユーザフィード補正値として示している。
【0057】
図5(b)は、半端パスの逆数である1/パス値とユーザフィード補正値との関係の一例を示すグラフであり、基本ユーザフィード補正値が50μmになる場合について、1/パス値とユーザフィード補正値との関係の一例を示す。グラフからわかるように、本例においては、ユーザフィード補正値について、1/パス値に比例するように変化させる。また、上記の説明から理解できるように、本例において、基本移動量は、1/パス値に比例している。そのため、ユーザフィード補正値については、例えば、基本移動量に比例するように変化させると考えることもできる。
【0058】
また、図5(b)のグラフにおいては、基本ユーザフィード補正値が50μmになる場合について、符号Aを付して示した直線により示している。そして、この場合、例えば、オフセット値として新たな値を入力して、ユーザフィード補正値を直接増加又は減少させると、図中に上下方向の矢印で示すように、1/パス値とユーザフィード補正値との関係を示す直線は、例えば、符号B又はCを付して示す直線に変化する。そのため、新たなユーザ補正値を設定する動作について、例えば、1/パス値とユーザフィード補正値との関係を示す直線の傾きを変化させる動作等と考えることもできる。
【0059】
また、入力パス値又はMAPS速度値の変更により印刷条件が変化した場合、パス数(半端パス)が変化することで、1/パス値の値が変化する。そして、この場合、1/パス値とユーザフィード補正値との関係を示す直線において、印刷の条件に対応する点の位置は、図中に左右方向の矢印で示すように、1/パス値がより小さい位置又は大きい位置へ変化する。また、これに伴い、対応するユーザフィード補正値も変化する。また、その結果、ユーザフィード補正値は、印刷の条件に追従するように、調整されることになる。そのため、本例によれば、例えば、フィード量の大小によって必要な補正量が比例関係で変化する系において、フィード量の値毎に適切な補正を行うことができる。
【0060】
また、より具体的に、印刷の条件に応じてユーザフィード補正値を調整(設定)する方法については、例えば、図2(a)に示す画面で入力される入力パス値をpassとし、MAPS速度値をmapsspdとし、オフセット値の値をfeedofsとし、更に、オフセット値の算出を前回行った時点で用いた入力パス値及びMAPS速度値をsv_pass、sv_mapsspdとして、
新たなオフセット値=feedofs×(sv_pass/(sv_mapsspd/100))/(pass/(mapsspd/100))
として算出することができる。このように構成すれば、例えば、ユーザフィード補正値として用いるオフセット値の調整を適切に行うことができる。
【0061】
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明等を行う。上記においても説明をしたように、本例においては、ユーザフィード補正値として、ユーザが任意の印刷の条件において見たままの値を設定したオフセット値を用いる。これに対し、ユーザにより補正値を設定するということのみを考えた場合、例えば上記において説明をした基本ユーザフィード補正値のように、特定の印刷の条件に合わせた補正の量をユーザに指定させること等も考えられる。この場合も、フィード量の変化に応じて比例するように補正値を自動的に調整すれば、フィード量の調整を行うことができる。しかし、この場合、印刷結果においてユーザが認識したフィード量のずれ量について、特定の印刷の条件に合わせた換算を行った上で、ユーザが入力することが必要になる。より具体的に、この場合、補正値がある特定の印刷条件時の値として保持される構成になるため、例えばパス数が1の場合の補正値が保持されているとすると、実際に4パスでの印刷を行った場合のフィード量のずれ量をある値(例えば、200μm)とユーザが認識したとしても、そのずれ量を補正するためには、パス数の違いによるフィード量の違いを考慮して、認識したずれ量とは異なる値を入力することが必要になる。例えば、補正値がフィード量に単純に比例する場合、入力する補正値としては、上記の値(200μm)の4倍の800μmに換算した値を入力することが必要になる。そして、このような場合、換算のための計算が必要になることで、ユーザの手間が増大することになる。また、換算時に誤りが生じ、正しい補正を行えなくなるおそれもある。更には、印刷の動作の途中で補正値を変更しようとする場合等に、迅速な変更を行うことが難しくなること等も考えられる。これに対し、本例においては、上記のように、ユーザが見たままの値を設定したオフセット値を補正値として用いることで、これらの問題の発生を適切に防ぐことができる。
【0062】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、オフセット値として入力されるユーザフィード補正値以外に、システムフィード補正値を更に用いて、フィード量の設定を行う。そして、この場合、ユーザフィード補正値とシステムフィード補正値とを合わせた合計の補正値について、1/パス値に比例するように変化させることが考えられる。より具体的に、特定の印刷の条件に対してユーザが設定するオフセット値を反映させた合計の補正値について、入力パス値が2の場合に合計の補正量が300μmになっている場合を想定し、MAPS速度値を変更せずに入力パス値のみを1に変更した場合、合計の補正値については、600μmに調整することが考えられる。このように構成すれば、例えば、システムフィード補正値を更に用いたフィード量の補正を適切に行うことができる。
【0063】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、ユーザフィード補正値としてオフセット値を用いることにより、印刷結果を確認したユーザの判断に基づき、副走査移動量の補正量の調整を適切に行うことができる。これに対し、例えば副走査動作でのフィード量について、例えばリニアスケール等を用いて測定を行い、適宜自動的に補正を行えば、フィード量を適切に補正できるようにも思われる。しかし、実際の印刷の環境では、リニアスケール等の測定結果で正しいフィード量が実現できている場合でも、微小な誤差等の影響により、バンディングが発生する場合がある。そのため、高い精度でより適切に印刷を行う場合には、本例のように、印刷結果をユーザにより実際に確認して、フィード量を補正することがより好ましい。また、印刷に求められる条件によっては、必ずしもユーザの手入力に限らず、フィード量に対する必要な補正量を自動的に検知するシステムにより、オフセット値を入力してもよい。より具体的に、この場合、例えば、印刷結果の画像をカメラ等で撮像し、画像処理等でバンディングの有無を確認すること等により、必要な補正量を検知すること等が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば印刷装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
10・・・印刷装置、12・・・ヘッド部、14・・・プラテン、16・・・ガイドレール、18・・・主走査駆動部、20・・・副走査駆動部、22・・・記憶部、24・・・入力部、30・・・制御部、50・・・媒体、100・・・キャリッジ、102・・・インクジェットヘッド、202・・・単位ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5