(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】防犯システム及び防犯管理システム
(51)【国際特許分類】
G08B 13/194 20060101AFI20220712BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20220712BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20220712BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G08B13/194
G08B25/04 H
G08B25/00 510M
H04N5/232 290
H04N5/232 190
(21)【出願番号】P 2018175434
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 篤史
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 健宏
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-111496(JP,A)
【文献】特開2017-016344(JP,A)
【文献】特開2004-246471(JP,A)
【文献】特開2006-285399(JP,A)
【文献】特開2003-109129(JP,A)
【文献】特開2010-237873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B13/00-15/02
19/00-31/00
H04N5/222-5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体を施錠する施錠装置とを備える構造体の防犯のために用いられる防犯システムであって、
前記開閉体の付近の所定範囲を撮影エリアとして撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された映像から物体を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された物体の動作を追跡して物体の動作情報を収集する動作情報収集手段と、
前記抽出手段により抽出された物体が、長尺状かつ先端に平坦面を有する物体である場合、当該物体を要注意物体であると特定する物体特定手段と、
前記動作情報収集手段により
前記要注意物体の前記先端を支点として、所定の角度の範囲内を所定の回数で往復して移動する動作が収集された場合、異常状態であると推定する状態推定手段と、
を備えることを特徴とする防犯システム。
【請求項2】
前記抽出手段は、前記撮影手段により撮影された映像から人の画像を抽出した後、前記人が所持する物体を抽出することを特徴とする、請求項1に記載の防犯システム。
【請求項3】
前記状態推定手段は、前記動作情報収集手段によって収集された情報を用いて深層学習を実行することにより、異常状態の判定基準を生成する判定基準生成手段を備えることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の防犯システム。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の防犯システムが設けられており、
前記撮影手段が複数の前記開閉体に対応してそれぞれ設けられており、
前記防犯システムを管理する管理センタが備えられており、
前記状態推定手段により所定の開閉体において異常状態であると推定された場合、前記防犯システムは、前記異常状態である旨の警戒情報を前記所定の開閉体と紐付けして前記管理センタに報知することを特徴とする、防犯管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防犯システム及び防犯管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物においては、扉や窓部といった開口部からの不法侵入が警戒されており、屋外側から開口部付近を撮影することにより建物の防犯性能を高める防犯システムが提案されている。このような防犯システムにおいては、不法侵入をしようとする不審者をできるだけ早く検出することが望ましく、そのため、撮影された映像に基づいて不審者と不審者以外の人とを自動で識別する様々なシステムが提案されている。例えば、特許文献1では、撮影された映像に基づいて、姿勢の高さ、移動速度、移動方向等の人の動作を判定することにより、不正行為(不審者)を検出することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物の屋外側において、特許文献1の技術のように、不審者を人の動作に基づいて検出しようとする場合、不審者の動作と、不審者以外の人(例えば、住人や住人以外の訪問者等)の動作とを識別する必要がある。しかしながら、例えば、玄関扉に設けられた施錠装置を破壊して建物内に不法侵入しようとする不審者の動作は、帰宅してきた住人が玄関扉の解錠操作を行う動作と類似しており、これらを識別するのは困難である。
【0005】
したがって、建物の屋外側において人の動作のみに基づいて不審者を検出しようとすると、住人等の不審者以外の人も不審者として誤検出するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、不審者を速やかにかつ精度よく推定する防犯システム及び防犯管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、第1の発明の防犯システムは
開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体を施錠する施錠装置とを備える構造体の防犯のために用いられる防犯システムであって、
前記開閉体の付近の所定範囲を撮影エリアとして撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された映像から物体を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された物体の動作を追跡して物体の動作情報を収集する動作情報収集手段と、
前記動作情報収集手段により収集された前記物体の動作情報が、所定の異常状態であるか否かを推定する状態推定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
構造体としては、住宅用の建物の他、商業ビル、倉庫、車両、金庫など各種の構造体に適用することができるが、説明の便宜上、以下においては代表例である住宅用の建物を例にして各発明の作用効果を説明する。第1の発明では、例えば、不審者は、建物の開口部に設けられた扉や窓部、又はそれらに設けられた施錠装置等(以下、開閉体等)を破壊することにより建物内に侵入しようとする。この場合、なんらかの道具(以下、破壊用道具)を用いてこれら開閉体等を破壊すると考えられる。破壊用道具は、開閉体等に対して破壊のための力を加える。換言すれば、破壊用道具は、開閉体等に対して特徴的な動作を伴って用いられることにより、開閉体等が破壊される。第1の発明によれば、このような破壊用道具による開閉体等に対する特徴的な動作に着目し、開閉体等に対する物体の動作を特定することにより、開閉体等に対する破壊行為が実行されているか否かを推定する。
【0009】
すなわち、第1の発明によれば、撮影手段により撮影された映像から物体が抽出され、その物体の動作に基づき、異常状態か否かが判定される。帰宅した住人が通常の解錠操作を行う場合、開閉体等に対しての破壊行為とされる物体の動作は検出されない。また、宅配業者等の訪問者においても、荷物の有無等の様々な状況がありうるが、開閉体等に対しての破壊行為とされる物体の動作は検出されない。したがって、破壊行為とされる物体の動作に基づいて開口部付近にいる人が建物内に侵入しようとする不審者か否かを判定することにより、不審者以外の人を不審者と誤検出することを回避できる。
【0010】
また、第1の発明によれば、破壊の際に行われる物体の動作に基づき不審者を検出するため、不審者が建物内に侵入する前に異常状態を検出することができる。これにより、不審者の侵入に対してより速やかな対応が可能であり、被害を最小限に抑えることができる。
【0011】
第2の発明の防犯システムは、第1の発明において、
前記抽出手段は、前記撮影手段により撮影された映像から人の画像を抽出した後、前記人が所持する物体を抽出することを特徴とする。
【0012】
例えば、開口部付近に物体が放置されている場合、その物体が風等により移動することがありうる。このような場合、例えば、その放置された物体の動作が破壊行為とされる動作と判定されると異常状態として誤検出してしまう。第2の発明によれば、まず、撮影された映像において人を認識し、その認識された人の所持する物体に着目する。これにより、人がその物体を用いて行う動作に伴って生じる物体の動作を特定できる。すなわち、開閉体等に対する破壊行為は人と物体とにより行われるため、人が所持する物体の動作に基づき異常状態を推定することにより破壊行為がより確実に検出でき、誤検出を減らすことができる。
【0013】
第3の発明の防犯システムは、第1又は第2の発明において、
前記抽出手段により抽出された物体が、所定の要注意物体であることを特定する物体特定手段を備え、
前記異常状態は、前記要注意物体が所定の動作を行うことであることを特徴とする。
【0014】
第3の発明によれば、要注意物体と、その要注意物体について特定の動作とがあらかじめ定められている。例えば、住人等の不審者以外の人が要注意物体を所持したり、使用したりする場合もありうる。このような場合、たとえ要注意物体を所持していたとしても、要注意物体を用いた開閉体等に対しての破壊行為とされる物体の動作は検出されない。第3の発明によれば、要注意物体とその動作とに基づき異常状態であるか否かが判断されるため、誤検出を減らすことができ、異常状態の検出の精度を高めることができる。
【0015】
第4の発明の防犯システムは、第3の発明において、前記要注意物体は、長尺状かつ先端に平坦面を有する物体であることを特徴とする。
【0016】
第4の発明によれば、要注意物体の形状が定められている。例えば、開口部から不正侵入をする場合、開口部と、開閉体との隙間に破壊用道具を挿入し、その破壊用道具の挿入部分に力を加えることにより、開口部と開閉体に設けられた施錠装置との係合構造(施錠装置の施錠状態)を破壊することが多い。そのため、破壊用道具としては、隙間への差し込みやすさ、破壊のための力の加えやすさ等から、長尺状かつ先端に平坦面を有する物体であることが多い。第4の発明によれば、要注意物体の形状を定めることにより、撮影手段により撮影された映像に基づいて、物体の形状に従って要注意物体を検出できるため、異常状態の検出の精度をより高めることができる。
【0017】
第5の発明の防犯システムは、第4の発明において、
前記状態推定手段は、前記動作情報収集手段により前記要注意物体の前記先端を支点として、所定の角度の範囲内を所定の回数で往復して移動する動作が収集された場合、異常状態であると推定することを特徴とする。
【0018】
第5の発明によれば、要注意物体を用いて開閉体等を破壊する際の具体的な要注意物体の動作が定められている。不審者は、要注意物体の先端部分(一端側)である平坦面を開口部と開閉体との隙間に挿入し、その先端部分を支点とし、要注意物体の他端側からてこの原理を利用してその先端部分に力を加える。具体的には、要注意物体の先端部分を支点として、所定の移動範囲において要注意物体の他端側を押して引く動作(支点に向けて力を加える動作)がされることにより、その先端部分に力が加えられて、開口部と開閉体に設けられた施錠装置との係合構造(施錠装置の施錠状態)が破壊されることが多い。すなわち、第5の発明によれば、不審者が開口部から不正侵入する場合の要注意物体を用いた破壊行為に基づき、異常状態が定められている。したがって、具体的な破壊行為に基づいて異常状態を定めているため、異常状態の検出の精度をより高めることができる。
【0019】
第6の発明の防犯システムは、第1~第5の発明のいずれかにおいて、
前記状態推定手段は、前記動作情報収集手段によって収集された情報を用いて深層学習を実行することにより、異常状態の判定基準を生成する判定基準生成手段を備えることを特徴とする。
【0020】
第6の発明によれば、動作情報収集手段によって収集された情報に基づいて深層学習により異常状態の判定基準が生成されるため、異常状態とされる物体の動作の特定の精度を高めることができ、誤検出を減らすことができる。
【0021】
第7の発明の防犯管理システムは、
第1~第6のいずれかに記載の防犯システムが設けられており、
前記撮影手段が複数の前記開閉体に対応してそれぞれ設けられており、
前記防犯システムを管理する管理センタが備えられており、
前記状態推定手段により所定の開閉体において異常状態であると推定された場合、前記防犯システムは、前記異常状態である旨の警戒情報を前記所定の開閉体と紐付けして前記管理センタに報知することを特徴とする。
【0022】
第7の発明によれば、異常状態であると推定された場合は、その異常状態である旨の警戒情報が管理センタに報知される。管理センタは、警戒情報が報知されることにより、例えば建物まで出向いて建物内外の安全確認を行う等の対策を速やかに取ることができる。これにより、不審者を捕えたり、建物内に侵入した不審者の物色時間を狭めたりすることができ、被害を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態における建物周辺の構成を示す平面図。
【
図3】コントローラの要注意物体データベースに備えられた第1エリアの記憶内容を示す概念図。
【
図5】カメラにより撮影された映像の例であり、
図5(a)は居住者により玄関ドアが解錠操作される一連の動作を示す映像であり、
図5(b)は不審者により玄関ドアに設けられた施錠装置が破壊される一連の動作を示す映像。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は敷地内における建物の玄関周辺を示す平面図である。
【0025】
図1において、敷地11内には、建物10が設けられている。建物10には、出入口としての玄関口12が設けられている。この玄関口12を通じて建物10への出入りが可能となっており、玄関口12には、開閉体としての玄関ドア13が設けられている。建物10の玄関口12と公共の道路14との間には、玄関ポーチ15が設けられている。敷地11の外縁部には、玄関ポーチ15を除く部位に、例えば垣根やフェンス等の外構16が設けられている。
【0026】
玄関ドア13(屋内側)には、そのドアの上方位置と下方位置とに施錠装置21が2つ取り付けられている。なお、
図1では、便宜上、施錠装置21は1つだけ示されている。施錠装置21は通電により施解錠を行う電気錠からなる。施錠装置21は、建物10の居住者が携帯する電子キーによって施解錠されるようになっている。
【0027】
図1に示すように、施錠装置21は、デッドボルト22を有しており、このデッドボルト22に対応する受孔部23が玄関口12の側面(外壁17の開口部における側面)に設けられている。施錠装置21によりデッドボルト22を出没させて、受孔部23に挿入又は抜き出すことにより、施錠装置21が施錠又は解錠され、玄関ドア13の開閉が規制又許容される。換言すれば、デッドボルト22が受孔部23に挿入されて係合構造となることにより、施錠装置21が施錠状態とされる。
【0028】
玄関ドア13には、屋外側に取っ手としてのドアハンドル18が設けられ、ドアハンドル18にはタッチセンサ(図示略)が内蔵されている。タッチセンサは、静電容量式のセンサであり、そのセンサ部分に人が接触したことを検出する。居住者の携帯する電子キーが認証された状態でタッチセンサが人の接触を検出することにより、施錠装置21が施解錠されるようになっている。
【0029】
屋外側の玄関ドア13付近には、玄関ドア13周辺にいる人物を撮影(撮像)するカメラ25が設けられている。カメラ25は、玄関ドア13周辺(特に、ドアハンドル18付近)を撮影するように撮影方向が玄関ドア13側斜め下方向に向けられている。カメラ25による撮影エリアSAは、玄関ドア13周辺で施錠装置21の施解錠や玄関ドア13の開閉等を行う人物の全身を撮影できるように設定されている。具体的には、少なくとも屋外側において玄関ドア13付近の床面から上方へ2m程度までの範囲を撮影できるようになっている。
【0030】
続いて、防犯システムの電気的構成について
図2に基づいて説明する。
【0031】
図2に示すように、防犯システムは、制御手段としてのコントローラ31を備える。コントローラ31は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータを含んで構成され、建物10の屋内側(例えば、玄関周辺の壁面等)に設けられている。
【0032】
コントローラ31には、要注意物体に関する各種情報を登録・管理するための要注意物体データベース32が設けられており、第1エリア32aと第2エリア32bとを含む情報記憶エリアが設定されている。カメラ25により収集された要注意物体の動作情報及び要注意物体の動作情報に基づき異常状態とされた結果は第2エリア32bに登録される。
【0033】
ここで、第1エリア32aについて
図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、第1エリア32aには、要注意物体を示す物体情報及び要注意物体の動作情報が記憶される。要注意物体の物体情報は、
図3(a)に示すように、要注意物体の種類を示す識別情報と、その要注意物体の画像を示す画像情報とから構成されている。要注意物体としては、バールが登録されている。要注意物体の動作情報は、
図3(b)に示すように、異常状態であることを推定するための要注意物体の動作情報が登録されている。
【0034】
コントローラ31はカメラ25と電気的に接続されており、カメラ25から撮影内容に応じた画像信号がコントローラ31に対して出力される。コントローラ31では、カメラ25の撮影結果に基づいて玄関ドア13周辺にいる人と、その人の所持する物体とを抽出(認識)する。コントローラ31は、例えば、人の所持するカバンや傘等の複数の物体を各別に認識する。
【0035】
図2に示すように、コントローラ31には、計時機能、時計機能及びカレンダ機能を有するタイマ部33が設けられている。コントローラ31には通信部35が接続されており、コントローラ31は通信部35によってネットワークNに接続可能となっている。なお、通信部35はコントローラ31内に備えられていてもよい。
【0036】
ここで、防犯システムは複数の建物10A,10B,・・・10Nに導入されており、警備管理センタ50は複数の建物10A,10B,・・・10Nの居住者データを統括管理する。警備管理センタ50にはサーバ51が設置され、警備管理センタ50の管理者によって管理されている。
【0037】
サーバ51は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを主体に構成されている。サーバ51は、制御部52と、記憶部53と、通信部54とを備えている。通信部54は、各建物10A,10B,・・・10Nのコントローラ31やデータベース等、外部装置との間でネットワークNを介して通信が可能となっている。この場合、この通信部54を介して制御部52が外部装置(例えば、コントローラ31)との間で通信可能とされている。そして、各建物10A,10B,・・・10Nのコントローラ31から送信された各種報知結果が記憶部53に記憶されるようになっている。
【0038】
次に、コントローラ31により実行される警戒処理について説明する。
図4は、その処理を示すフローチャートである。本処理は、所定の時間周期(例えば、0.5秒)で繰り返し実行される。以下では、建物10は、警備管理センタ50の利用者として登録済みであるとする。
【0039】
まずステップS11にて、カメラ25により玄関ドア13周辺の画像を撮影する。続くステップS12では、画像認識処理が実行される。まず、カメラ25により撮影された画像を解析して特徴量(色、形状、大きさ等)を抽出し、撮影画像に含まれる人の画像を認識する。そして、人の画像が認識された場合は、その人の画像を解析して特徴量(色、形状、大きさ等)を抽出し、人の画像に含まれる物体の画像を認識する。
【0040】
ここで、
図5(a)及び
図5(b)を用いてカメラ25により撮像された画像に基づき、ユーザが所持する物体が認識されるステップを説明する。
図5(a)は居住者により玄関ドア13が解錠操作される一連の動作を示す映像であり、
図5(b)は不審者により玄関ドア13に設けられた施錠装置21が破壊される一連の動作を示す映像である。このとき、
図5(a)、
図5(b)の(x)の画像がカメラ25により取得されると、コントローラ31による画像認識処理によりまず人が認識され、認識された人が所持する物体が認識される(認識部分を破線により示す)。そして、画像認識処理により画像における人及び物体の認識処理を行った後、ステップS13へ進む。
【0041】
続くステップS13では、上記ステップS12での画像認識処理の結果に基づき、人の画像が認識されたか否か、すなわち玄関ドア13周辺に人がいるか否かを判定する。人の画像が認識されていない場合には警戒処理を終了する。一方、人の画像が認識されている場合には、ステップS14にて、その玄関ドア13付近にいる人が物体を所持しているか否かを判定する。ここでは、上記ステップS12において画像認識処理された画像において、認識された人が物体を所持しているか否かを判定する。認識された人が物体を所持していない場合、すなわち、玄関ドア13付近にいる人が物体を所持していない場合には本処理を終了する。認識された人が物体を所持している場合、すなわち、玄関ドア13付近にいる人が物体を所持している場合、ステップS15に進む。
【0042】
ステップS15では、その認識された人の所持する物体(以下、所持物体)と、第1エリア32aに登録された物体情報とを照合することにより、その所持物体が要注意物体に該当するか否かを判定する。所持物体が要注意物体に該当しない場合には本処理を終了する。所持物体が要注意物体に該当する場合にはステップS16へ進む。
【0043】
ステップS16では、その所持物体(要注意物体に該当)の動作を監視する。具体的には、タイマ部33により計時し、所定時間においてカメラ25により玄関ドア13周辺の画像を撮影する。所定時間としては、例えば、異常状態と推定される要注意物体の動作が観測されるのに要する時間であればよく、例えば5~30秒であり、本実施形態では10秒とする。10秒間において所持物体の動作をカメラ25により監視した後、ステップS17へ進む。
【0044】
続くステップS17では、カメラ25により撮影された所定時間における画像を解析して、所定時間におけるその変化に基づき、所持物体の動作情報を収集する。具体的には、撮影された画像ごとに、特徴量(色、形状、大きさ等)を抽出し、撮影画像に含まれる人の画像と、その人の画像に含まれる物体(所持物体)の画像を認識する。そして、所持物体について、その認識された位置の変化を解析することにより、所持物体の動作が抽出され、所定時間における物体の動作が認識できる。
【0045】
例えば、ステップS11により
図5(b)の(x)画像が撮影された場合、ステップS16により
図5(b)の(y)及び(z)画像が撮影されることになる。そして、
図5(b)の(y)及び(z)画像における画像認識処理により、(y)及び(z)画像における所持物体が認識され、(x)、(y)及び(z)画像に基づき所持物体の動作が把握できる。具体的には、本実施形態では、(y)画像における所持物体の位置と(z)画像における所持物体の位置との差分により、所持物体の動作が把握できる。すなわち、所定時間においてカメラ25により所持物体を監視(撮影)することにより画像が複数収集され、それらの画像を画像認識処理することにより、所定時間における所持物体の動作情報が収集できる。収集した所持物体の動作情報を第2エリア32bに記憶した後、ステップS18へ進む。
【0046】
次に、ステップS18では、所定時間における所持物体の動作情報に基づき、異常状態であるか否かを判定する。ここでは、ステップS17の画像認識処理により収集された所定時間における所持物体の動作情報と、第1エリア32aに登録された要注意物体の動作情報とを照合し、その照合の結果に基づいて上記の判定を行う。
【0047】
ここで、第1エリア32aに登録されている要注意物体の動作情報(
図3(b))に基づいて説明する。
図3(b)に示すように、要注意物体がバールだった場合、その検出されたバールの本数により、異常状態として推定される動作が登録されている。具体的には、(1)要注意物体としてバール1つ検出:バールの移動の履歴が、バール(一端)がある支点に基づき、30~150度の移動範囲において6回以上の繰り返しの往復動作の場合、(2)要注意物体としてバール2つ検出:バールの移動の履歴が、バール(一端)がある支点に基づき、30~150度の移動範囲において2つのバールで合計して3回以上の繰り返しの往復動作の場合、が登録されている。
【0048】
施錠装置21が施錠されている場合、デッドボルト22は受孔部23に挿入され、係合構造とされている。不審者は、このデッドボルト22と受孔部23との係合構造を破壊することにより、玄関ドア13の規制状態を解除し、玄関ドア13を開閉可能な状態としようとする(すなわち、こじ開ける)場合が多い。
【0049】
このようなデッドボルト22と受孔部23との係合構造の破壊は、バールにより実行されることが多い。その際の動作としては、バールの先端部分(一端側)を玄関口12と玄関ドア13との隙間に挿入し、受孔部23と係合状態とされているデッドボルト22があると想定される付近(玄関口12と玄関ドア13との隙間)にその先端部分を当接する。そして、そのバールの先端部分(バールに当接された部分)を支点とし、バールの他端側からてこの原理を利用してその先端部分に力を加える。このとき、先端部分を支点として、所定の移動範囲においてバールの他端側を押して引く動作(支点に向けて力を加える動作)が繰り返し行われることにより、玄関ドア13やデッドボルト22の突出部分等に力が加えられる。これにより、デッドボルト22の突出部分等が破壊されて、デッドボルト22と受孔部23との係合構造が破壊され、玄関ドア13が開閉可能となる。すなわち、本実施形態においては、(1)及び(2)のバールの動作情報としては、玄関ドア13がバールによりこじ開けられる(デッドボルト22がバールにより破壊される)際の動作が想定されている。
【0050】
通常、住人等の不審者以外の人がバールを用いた作業(例えば、くぎ抜き等)を行う場合、1つのバールで作業が行われることが多い。したがって、バールが2つ検出され、かつバールによりこじ開けられる際の動作(往復動作)が検出された場合、不正侵入を試みる不審者である可能性が非常に高い。また、1つの施錠装置21に対して1つのバールでの破壊行為が実施されるため、例えば、バールが2つ検出された場合は、2つの施錠装置21に対して同時に破壊行為が実施されうる。よって、本実施形態では、異常状態と推定するための要注意物体の動作情報をバールの検出本数ごとに定めている。具体的には、バールが1つ検出された場合に対して、バールが2つ検出された場合は玄関ドア13をこじ開ける際のバールの往復動作の回数を減らしている。すなわち、所持物体としてバールが2つ検出された時点ですでに警戒すべき状況であるため、この場合は玄関ドア13をバールによりこじ開ける往復動作の合計が3回検出された時点で異常状態を検出する構成としている。これにより、不審者の検出がより速やかに行われ、被害を最小限に抑えることができる。
【0051】
すなわち、ステップS19では、所持物体の動作が、施錠装置21(デッドボルト22)の破壊行為として第1エリア32aに登録された要注意物体の動作に該当するか否かを判定する。所持物体の動作情報と要注意物体の動作情報との照合の結果、所持物体の動作情報が要注意物体の動作情報と一致する場合には、施錠装置21の破壊行為が実行されている(すなわち、異常状態である)と判定して、ステップS19へ進む。一方、所持物体の動作情報が登録された要注意物体の動作情報と一致しない場合には、施錠装置21の破壊行為が実行されていない(すなわち、異常状態でない)と判定して本処理を終了する。
【0052】
ステップS19では、警備管理センタ50に通知処理を実行する。ここでは、要注意物体の動作に基づき異常状態であると判定した場合、異常状態であるという旨の情報を警備管理センタ50に送信する。これにより、警備管理センタ50は、異常状態の送信先である建物10まで出向き、建物10の内外を見回り、不審者を捕えたり安全を確認したりすることができる。異常状態である旨の情報を通知後、本処理を終了する。
【0053】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0054】
(1)本実施形態によれば、カメラ25により撮影された画像から人が抽出され、人が所持する物体が抽出される。そして、抽出された物体が要注意物体に該当する場合、その要注意物体の動作に基づき、異常状態か否かが判定され、不審者の検出が行われる。
【0055】
例えば、不審者は、玄関ドア13に設けられた施錠装置21を破壊することにより建物10内に侵入しようとする。この場合、なんらかの道具(以下、破壊用道具)を用いて施錠装置21を破壊すると考えられる。破壊用道具は、施錠装置21に対して破壊のための力を加える。換言すれば、破壊用道具は、施錠装置21に対して特徴的な動作を伴って用いられることにより、施錠装置21が破壊される。本実施形態によれば、このような破壊用道具による施錠装置21に対する特徴的な動作に着目し、施錠装置21(玄関ドア13)に対する物体の動作を特定することにより、施錠装置21(玄関ドア13)に対する破壊行為が実行されているか否かを推定する。
【0056】
帰宅した居住者が通常の解錠操作を行う場合、施錠装置21に対しての破壊行為とされる物体の動作は検出されない。また、宅配業者等の訪問者においても、荷物の有無等の様々な状況がありうるが、施錠装置21に対しての破壊行為とされる物体の動作は検出されない。したがって、本実施形態によれば、破壊行為とされる物体の動作に基づいて玄関ドア13付近にいる人が建物10内に侵入しようとする不審者か否かを判定することにより、不審者以外の人を不審者と誤検出することを回避できる。
【0057】
(2)本実施形態によれば、破壊の際に行われる物体の動作に基づき不審者を検出するため、不審者が建物10内に侵入する前に異常状態を検出することができる。これにより、不審者の侵入に対してより速やかな対応が可能であり、被害を最小限に抑えることができる。
【0058】
(3)本実施形態によれば、撮影された映像において人を認識し、その認識された人の所持する物体に着目する。例えば、玄関ドア13付近に物体が放置されている場合、その物体が風等により移動することがありうる。このような場合、例えば、その放置された物体の動作が破壊行為とされる動作と判定されると異常状態として誤検出してしまう。施錠装置21(玄関ドア13)に対する破壊行為は人と物体とにより行われる。本実施形態によれば、人が所持する物体の動作に基づき異常状態を推定するため、破壊行為がより確実に検出でき、誤検出を減らすことができる。
【0059】
(4)本実施形態によれば、要注意物体と、その要注意物体について特定の動作とがあらかじめ定められている。これにより、要注意物体の抽出と、その要注意物体の動作とに基づき異常状態であるか否かの判定とがより確実にでき、異常状態の検出の精度を高めることができる。
【0060】
(5)本実施形態によれば、異常状態であると推定された場合は、その異常状態である旨の警戒情報をサーバ51に送信することにより、異常状態であることがサーバ51を管理する警備管理センタ50に報知される。よって、異常状態が自動的に検出され、警備管理センタ50に報知される。警備管理センタ50は、報知されることにより、例えば建物10まで出向いて建物10の内外の安全確認を行う等の対策を速やかに取ることができる。これにより、不審者を捕えたり、建物10内に侵入した不審者の物色時間を狭めたりすることができ、被害を最小限に抑えることができる。
【0061】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0062】
(1)上記実施形態ではカメラ25により撮影された画像から特徴量(色、形状、大きさ等)を抽出し解析することにより、撮影画像に含まれる人と物体との画像を認識しているが、深層学習を用いた画像認識処理を実行してもよい。例えば、深層学習では、多層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)が用いられる。多層ニューラルネットワークとして、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)がある。
【0063】
(2)上記実施形態では、要注意物体と、要注意物体の動作情報とを予め定めているが、例えば、カメラ25により撮影された画像により収集される物体の動作情報を用いて深層学習を実行することにより、異常状態と判定する物体の動作情報の判定基準を生成してもよい。
【0064】
(3)上記実施形態では、画像認識により人により所持された物体が要注意物体に該当しない場合、物体の動作情報を収集せずに防犯処理を終了しているが、人により所持された物体の動作情報は全て収集し、それらの動作情報のデータを蓄積してもよい。
【0065】
(4)上記実施形態では、玄関ドア13周辺において施錠装置21を破壊する要注意物体としてバールが登録されているが、要注意物体は、施錠装置21を破壊できる物体であればこれに制限されない。例えば、長尺状かつ先端に平坦面を有する物体であれば、上記実施形態と同様にして、物体の平坦面である先端部分(一端側)を玄関口12と玄関ドア13との隙間に挿入することができ、デッドボルト22と受孔部23との係合構造を破壊できる。
【0066】
(5)上記実施形態では、玄関ドア13が設けられた玄関口12に本発明の防犯システムを適用したが、例えば扉等の開閉体が設けられた他の出入口(例えば、勝手口)や窓に本発明の防犯システムを適用してもよい。よって、上記実施形態では玄関ドア13周辺において施錠装置21を破壊する動作が異常状態とされているが、例えば、窓周辺におけるクレセント錠等の施錠装置を破壊する動作を異常状態として設定してもよい。これにより、窓からの侵入においても検出することができ、より防犯性が高められる。
【0067】
ガラス窓からの侵入の場合、バールを用いることも可能であるが、マイナスドライバが用いられることも多い。そのため、この場合は、第1エリア32aにおいて、要注意物体としてマイナスドライバを登録する。また、要注意物体の動作情報(異常状態と推定される条件)としては、例えば、マイナスドライバの先端がガラス窓のガラス面に向けられた状態でガラス面よりも屋内側へ向けて移動した場合、等が登録される。
【0068】
(6)上記実施形態ではカメラ25による撮影エリアSAは玄関ドア13周辺とされているが、例えば、玄関ポーチ15までを撮影エリアSAとしてもよい。この場合、要注意物体に該当する物体を所持した人の検出をより速やかに行うことができ、例えば、破壊行為(異常状態)と判定するための要注意物体の繰り返し動作の回数を減らすことができる。これにより、不審者が建物10内に侵入する前に、速やかに不審者を検出することができ、被害を最小限に抑えることができる。
【0069】
(7)上記実施形態では、カメラ25により撮影された映像に基づき、建物10に備えられたコントローラ31により異常状態の検出(推定)まで実行されているが、例えば、異常状態の検出は警備管理センタ50に設けられたサーバ51により実行されてもよい。この場合、建物10には、例えば、撮影手段としてのカメラ25が備えられており、カメラ25からの映像は、通信部35を介してサーバ51に送信される。サーバ51側では、映像に基づき、人の検出、所持物体の検出(要注意物体の検出)、要注意物体の場合の監視、異常状態の推定が実行される。そして、異常状態が推定された場合、上記実施形態と同様に、サーバ51は、警備管理センタ50に建物10において異常状態が推定される旨を報知すればよく、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
(8)上記実施形態では構造体として住宅用である建物10を対象とする防犯システムを説明したが、本発明の防犯システムの適用対象となる構造体は住宅用の建物10に制限されず、例えば車両、商業ビル、倉庫、金庫等の構造体でもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…建物、12…開口部としての玄関口、13…開閉体としての玄関ドア、21…施錠装置、25…撮影手段としてのカメラ、31…抽出手段、動作情報収集手段、状態推定手段を構成するコントローラ、31a…第1エリア、32…要注意物体データベース、50…警備管理センタ、51…サーバ、SA…撮影エリア。