(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】OLED駆動装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/60 20220101AFI20220712BHJP
H05B 47/10 20200101ALI20220712BHJP
【FI】
H05B45/60
H05B47/10
(21)【出願番号】P 2018207986
(22)【出願日】2018-11-05
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】596099446
【氏名又は名称】シーシーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 秀和
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-45071(JP,A)
【文献】特開2014-103321(JP,A)
【文献】特開2009-16280(JP,A)
【文献】特表2018-508033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査照明用のOLEDをストロボ発光させるOLED駆動装置であって、
第1の定電流を用いて前記OLEDを前記ストロボ発光させる第1の制御をし、予め算出された蓄積期間の下で、前記第1の制御前に前記第1の定電流よりも大きい第2の定電流を用いて、前記OLEDの寄生容量に電荷を蓄積する第2の制御をする制御部と、
前記蓄積期間を予め算出する期間算出部と、を備える、OLED駆動装置。
【請求項2】
前記OLEDの一方電極と接続することができ、前記OLEDに駆動電圧を供給する電圧源と、
オン状態にされることにより、前記第1の定電流よりも小さく、前記OLEDが発光可能な第3の定電流を流し、オフ状態にされることにより、前記第3の定電流を流さない第3の定電流用スイッチング素子と、
前記第3の定電流用スイッチング素子が前記オフ状態から前記オン状態に切り換えられることにより、前記OLEDの他方電極に印加される電圧Vi3を測定することができる電圧測定部と、をさらに備え、
前記電圧測定部は、前記蓄積期間を算出するモードにおいて、前記第3の定電流用スイッチング素子が前記オフ状態から前記オン状態に切り換えられることにより、前記寄生容量に前記電荷が蓄積し、前記電圧Vi3が一定になったときの前記電圧Vi3を測定し、
前記OLED駆動装置は、
以下の式1を用いて、前記OLEDの現在の順方向電圧と見なす見なし順方向電圧を算出する電圧算出部をさらに備え、
前記期間算出部は、
以下の式2を用いて、前記蓄積期間を算出する、請求項1に記載のOLED駆動装置。
Vvf=Vin-Vi3_con・・・式1
Pacc=(Cd×Vvf)÷I2・・・式2
Vvfは、前記見なし順方向電圧、Vinは、前記駆動電圧、Vi3_conは、前記電圧Vi3が一定になったときの前記電圧Vi3、Paccは、前記蓄積期間、Cdは、前記寄生容量、I2は、前記第2の定電流を示す。
【請求項3】
前記第3の定電流の値を予め記憶する記憶部をさらに備え、
前記電圧測定部は、前記蓄積期間を算出するモードにおいて、前記第3の定電流用スイッチング素子が前記オフ状態から前記オン状態に切り換えられることにより、前記寄生容量に前記電荷の蓄積が開始し、前記電圧Vi3が変化した状態において、第1のタイミングおよび第2のタイミングで、それぞれ、前記電圧Vi3を測定し、
前記OLED駆動装置は、
以下の式3を用いて、前記寄生容量を算出する容量算出部をさらに備える、請求項2に記載のOLED駆動装置。
Cd=(I3×P_t1t2)÷ΔVi3・・・式3
Cdは、前記寄生容量、I3は、前記第3の定電流、P_t1t2は、前記第1のタイミングから前記第2のタイミングまでの期間、ΔVi3は、前記第1のタイミングで測定された前記電圧Vi3と前記第2のタイミングで測定された前記電圧Vi3との差を示す。
【請求項4】
前記第2の定電流を生成する第2の定電流用電流源、および、前記OLEDは、前記OLED駆動装置と別体のOLEDパネルに備えられており、
前記OLED駆動装置は、
オン状態にされることにより、前記第2の定電流を流し、オフ状態にされることにより、前記第2の定電流を流さない第2の定電流用スイッチング素子をさらに備え、
前記電圧測定部は、前記第2の定電流用スイッチング素子が前記オフ状態から前記オン状態に切り換えられることにより、前記OLEDの前記他方電極に印加される電圧Vi2を測定することができ、
前記電圧測定部は、前記蓄積期間を算出するモードにおいて、前記第2の定電流用スイッチング素子が前記オフ状態から前記オン状態に切り換えられることにより、前記寄生容量に前記電荷の蓄積が開始し、前記電圧Vi2が変化した状態において、第3のタイミングおよび第4のタイミングで、それぞれ、前記電圧Vi2を測定し、
前記OLED駆動装置は、
以下の式4を用いて、前記第2の定電流を算出する電流算出部をさらに備える、請求項2または3に記載のOLED駆動装置。
I2=(ΔVi2×Cd)÷P_t3t4・・・式4
I2は、前記第2の定電流、ΔVi2は、前記第3のタイミングで測定された前記電圧Vi2と前記第4のタイミングで測定された前記電圧Vi2との差、Cdは、前記寄生容量、P_t3t4は、前記第3のタイミングから前記第4のタイミングまでの期間を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査用OLED照明に用いられるOLEDを駆動するOLED駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)照明、OLED(Organic Light Emitting Diode)照明の用途として、居室等の空間の照明がある。この用途に関する技術として、例えば、特許文献1に開示された調光制御装置がある。この調光制御装置は、半導体発光素子を有する光源回路と直流電源との間に電気的に接続されたスイッチング素子と、前記光源回路の調光レベルを設定する複数種類の調光信号にそれぞれ対応して設けられた複数の信号入力端子と、前記複数の信号入力端子に入力された2以上の調光信号から調光制御に使用する調光信号を選択する信号選択回路と、前記信号選択回路が選択した前記調光信号の表す調光レベルに応じたデューティ比で前記スイッチング素子をスイッチングすることによって、前記直流電源から出力される直流電圧を矩形波電圧に変換して前記光源回路に出力する制御回路と、を備え、前記調光信号は、当該調光信号の大きさが最小の場合に前記光源回路の調光レベルを最大に設定するような信号であって、前記信号選択回路は、前記2以上の調光信号から調光レベルがより小さい調光信号を選択するように構成されている。
【0003】
LED照明、OLED照明の他の用途として、製品の検査用照明がある。ここでの製品は、例えば、半導体、電子・電気部品、FPD関連、搬送・ロボット、鉄・金属部品、紙・フィルム・ガラス、自動車、ゴム・樹脂・プラスチック製品、食品、薬品、容器、包装、医療機器である。例えば、マシンビジョン(Machine Vision)を用いて、これらを検査するときに、照明として、LED照明、または、OLED照明が用いられることがある。
【0004】
検査用LED照明は、検査用OLED照明と比べて実用化が進んでおり、例えば、ストロボ発光(閃光発光)の機能を有するLED駆動装置が既に実用化されている。ストロボ発光は、定格電流(定格電流値)以下の電流で光源(ここでは、LED)を間欠発光させる方式である。定格電流は、照明パネル(ここでは、LEDパネル)を製造するメーカが保証する、照明パネルを安定的に使用できる電流値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、OLEDをストロボ発光させるOLED駆動装置の実用化を検討した。検討の結果、以下の課題を見出した。
【0007】
OLEDを点灯(発光)させるためには、OLEDの電圧を順方向電圧以上にする必要がある。OLEDは、LEDと異なり、寄生容量を有する。OLEDの寄生容量への電荷の蓄積が完了しなければ、OLEDの電圧は、順方向電圧に到達しない。寄生容量が大きければ、電荷の蓄積に要する時間が長くなる。OLEDは、面発光なので、比較的大きい寄生容量を有する。従って、OLEDの点灯開始(発光開始)が遅延する。マシンビジョンでは、大量の検査対象を高速で検査する場合があり、この場合、カメラの撮影範囲を検査対象が高速で通過する。このため、カメラのシャッタースピードは速く設定されている。ストロボ発光するOLEDの点灯開始の遅延が大きければ、OLEDが点灯を開始するタイミングとカメラのシャッターのタイミングとのズレが大きくなり、この照明をマシンビジョンの照明に用いることが困難となる。
【0008】
本発明の目的は、検査照明用のOLEDをストロボ発光させるとき、OLEDの発光(点灯)開始の遅延を少なくできるOLED駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るOLED駆動装置は、検査照明用のOLEDをストロボ発光させるOLED駆動装置であって、第1の定電流を用いて前記OLEDを前記ストロボ発光させる第1の制御をし、予め算出された蓄積期間の下で、前記第1の制御前に前記第1の定電流よりも大きい第2の定電流を用いて、前記OLEDの寄生容量に電荷を蓄積する第2の制御をする制御部と、前記蓄積期間を予め算出する期間算出部と、を備える。
【0010】
OLEDの順方向電圧は、経時変化し、上昇する。蓄積期間が固定されていれば、経時変化に対応できず、検査照明用のOLEDのストロボ発光において、OLEDの点灯開始の遅延を少なくする効果が小さくなる。本発明に係るOLED駆動装置は、蓄積期間を予め算出する期間算出部を備えるので、OLEDの順方向電圧の経時変化に対応することができる。従って、本発明に係るOLED駆動装置によれば、検査照明用のOLEDをストロボ発光させるとき、OLEDの点灯開始の遅延を少なくできる。
【0011】
上記構成において、
前記OLEDの一方電極と接続することができ、前記OLEDに駆動電圧を供給する電圧源と、
オン状態にされることにより、前記第1の定電流よりも小さく、前記OLEDが発光可能な第3の定電流を流し、オフ状態にされることにより、前記第3の定電流を流さない第3の定電流用スイッチング素子と、
前記第3の定電流用スイッチング素子が前記オフ状態から前記オン状態に切り換えられることにより、前記OLEDの他方電極に印加される電圧Vi3を測定することができる電圧測定部と、をさらに備え、
前記電圧測定部は、前記蓄積期間を算出するモードにおいて、前記第3の定電流用スイッチング素子が前記オフ状態から前記オン状態に切り換えられることにより、前記寄生容量に前記電荷が蓄積し、前記電圧Vi3が一定になったときの前記電圧Vi3を測定し、
前記OLED駆動装置は、
以下の式1を用いて、前記OLEDの現在の順方向電圧と見なす見なし順方向電圧を算出する電圧算出部をさらに備え、
前記期間算出部は、
以下の式2を用いて、前記蓄積期間を算出する。
【0012】
Vvf=Vin-Vi3_con・・・式1
Pacc=(Cd×Vvf)÷I2・・・式2
Vvfは、前記見なし順方向電圧、Vinは、前記駆動電圧、Vi3_conは、前記電圧Vi3が一定になったときの前記電圧Vi3、Paccは、前記蓄積期間、Cdは、前記寄生容量、I2は、前記第2の定電流を示す。
【0013】
この構成は、蓄積期間を算出する具体的構成の一例である。第3の定電流は、例えば、OLEDが僅かに発光する程度の微小な定電流であり、OLEDのリーク電流より大きく、OLED駆動装置に対してユーザ操作で設定可能な第1の定電流の下限値より小さい定電流である。
【0014】
上記構成において、
前記第3の定電流の値を予め記憶する記憶部をさらに備え、
前記電圧測定部は、前記蓄積期間を算出するモードにおいて、前記第3の定電流用スイッチング素子が前記オフ状態から前記オン状態に切り換えられることにより、前記寄生容量に前記電荷の蓄積が開始し、前記電圧Vi3が変化した状態において、第1のタイミングおよび第2のタイミングで、それぞれ、前記電圧Vi3を測定し、
前記OLED駆動装置は、
以下の式3を用いて、前記寄生容量を算出する容量算出部をさらに備える。
【0015】
Cd=(I3×P_t1t2)÷ΔVi3・・・式3
Cdは、前記寄生容量、I3は、前記第3の定電流、P_t1t2は、前記第1のタイミングから前記第2のタイミングまでの期間、ΔVi3は、前記第1のタイミングで測定された前記電圧Vi3と前記第2のタイミングで測定された前記電圧Vi3との差を示す。
【0016】
この構成は、寄生容量を算出する具体的構成の一例である。なお、寄生容量の値は、OLEDパネルに備えられるメモリに予め記憶されていてもよい。OLEDパネルは、OLEDおよびメモリを備え、OLED駆動装置と別体の装置である。
【0017】
上記構成において、
前記第2の定電流を生成する第2の定電流用電流源、および、前記OLEDは、前記OLED駆動装置と別体のOLEDパネルに備えられており、
前記OLED駆動装置は、
オン状態にされることにより、前記第2の定電流を流し、オフ状態にされることにより、前記第2の定電流を流さない第2の定電流用スイッチング素子をさらに備え、
前記電圧測定部は、前記第2の定電流用スイッチング素子が前記オフ状態から前記オン状態に切り換えられることにより、前記OLEDの前記他方電極に印加される電圧Vi2を測定することができ、
前記電圧測定部は、前記蓄積期間を算出するモードにおいて、前記第2の定電流用スイッチング素子が前記オフ状態から前記オン状態に切り換えられることにより、前記寄生容量に前記電荷の蓄積が開始し、前記電圧Vi2が変化した状態において、第3のタイミングおよび第4のタイミングで、それぞれ、前記電圧Vi2を測定し、
前記OLED駆動装置は、
以下の式4を用いて、前記第2の定電流を算出する電流算出部をさらに備える。
【0018】
I2=(ΔVi2×Cd)÷P_t3t4・・・式4
I2は、前記第2の定電流、ΔVi2は、前記第3のタイミングで測定された前記電圧Vi2と前記第4のタイミングで測定された前記電圧Vi2との差、Cdは、前記寄生容量、P_t3t4は、前記第3のタイミングから前記第4のタイミングまでの期間を示す。
【0019】
この構成は、第2の定電流を算出する具体的構成の一例である。なお、第2の定電流の値は、OLEDパネルに備えられるメモリに予め記憶されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、検査照明用のOLEDをストロボ発光させるとき、OLEDの発光(点灯)開始の遅延を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係るOLED照明システムの等価回路図である。
【
図2】OLEDの発光方式および調光方式を説明する説明図である。
【
図3】実施形態に係るOLED駆動装置に備えられるMCUの機能ブロック図である。
【
図4】蓄積期間の算出を説明するフローチャートである。
【
図5】寄生容量および見なし順方向電圧の算出を説明するフローチャートである。
【
図6】寄生容量および見なし順方向電圧の算出を説明するタイミングチャートである。
【
図7】第2の定電流の算出を説明するフローチャートである。
【
図8】第2の定電流の算出を説明するタイミングチャートである。
【
図9】実施形態に係るOLED駆動装置を用いたOLEDのストロボ発光の動作を説明するフローチャートである。
【
図10】実施形態および比較例に係るOLED駆動装置を用いたOLEDのストロボ発光の動作を説明するタイミングチャートである。
【
図11】比較例に係るOLED照明システムの等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
OLED駆動装置が、第1の定電流(例えば、OLEDの定格電流以下の定電流)を用いてOLEDをストロボ発光させる制御をする前に、所定の蓄積期間の下で、第1の定電流より大きい第2の定電流(例えば、オーバードライブ電流)を用いてOLEDの寄生容量に電荷を蓄積させる制御をする。このようにすれば、OLEDのストロボ発光において、OLEDの発光開始の遅延を少なくすることが可能となる。
【0023】
蓄積期間が短ければ、第2の定電流によってOLEDの寄生容量に電荷の蓄積が完了する前に、第2の定電流から第1の定電流に切り換えられる。このため、第1の定電流によってOLEDの寄生容量に、残りの電荷を蓄積しなければならず、OLEDの発光開始の遅延を少なくする効果が小さくなる。
【0024】
一方、蓄積期間が長ければ、第2の定電流によってOLEDの寄生容量に電荷の蓄積が完了し、第2の定電流がOLEDに流れて、OLEDが発光する。そして、第2の定電流から第1の定電流に切り換えられるまで、第2の定電流によって、OLEDが発光する。第2の定電流は、第1の定電流よりも大きいので、OLEDの劣化が早まる原因となる。
【0025】
そこで、本発明者は、適切な長さの蓄積期間を算出することができるOLED駆動装置を発明した。
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。各図において、同一符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その構成について、既に説明している内容については、その説明を省略する。
【0027】
図1は、実施形態に係るOLED照明システム100の等価回路図である。OLED照明システム100は、検査用照明に用いられ、OLEDパネル1と、OLED駆動装置2と、ケーブル3と、を備える。OLEDパネル1とOLED駆動装置2とは別体であり、これらはケーブル3によって接続されている。
【0028】
OLEDパネル1は、OLED11と、第1の定電流ダイオードD1と、第2の定電流ダイオードD2と、を備える。OLED11は、1つのOLED素子、または、直列接続された複数のOLED素子であり、面発光をする。Cdは、OLED11の寄生容量を示す。RIは、OLED11のリーク電流が要因となるインピーダンスを示す。Rは、OLED11に接続されている配線(ケーブル3、OLEDパネル1内の配線、OLED駆動装置2内の配線)の抵抗と、OLED11のアノード電極の抵抗と、OLED11のカソード電極の抵抗とを合わせた抵抗を示す。Iinは、OLEDパネル1に流れる全電流を示す。Voledは、OLED11に印加される電圧、すなわち、OLED11のアノードとカソードの間の電圧(以下、OLED11の電圧)を示す。Ioledは、OLED11を流れる電流(以下、OLEDの電流)を示す。
【0029】
OLED11の電圧Voledが、OLED11の順方向電圧に到達したとき、OLED11に電流が流れ始め、OLED11は点灯を開始する。
【0030】
第1の定電流ダイオードD1のアノードおよび第2の定電流ダイオードD2のアノードがOLED11のカソードと接続されている。第1の定電流ダイオードD1は、第1の定電流I1を生成する電流源である。第1の定電流I1は、OLED11の定格電流でもよいし、定格電流より小さい電流でもよい。第2の定電流ダイオードD2は、第2の定電流I2を生成する電流源である。第2の定電流I2は、OLED11の定格電流より大きい。実施形態では、第2の定電流I2をオーバードライブの電流としている。第1の定電流ダイオードD1、第2の定電流ダイオードD2の換わりに、定電流回路が用いられてもよい。
【0031】
第1の定電流ダイオードD1および第2の定電流ダイオードD2は、OLEDパネル1のカソード側に配置されているが、OLEDパネル1のアノード側に配置されていてもよい。第1の定電流ダイオードD1および第2の定電流ダイオードD2は、OLEDパネル1に配置されているが、ケーブル3に配置されていてもよい。
【0032】
OLED駆動装置2は、電圧源21と、MCU(Micro Controller Unit)22と、第3の定電流ダイオードD3と、第1の定電流用スイッチング素子S1と、第2の定電流用スイッチング素子S2と、第3の定電流用スイッチング素子S3と、電圧検知回路26と、を備えており、OLED11を駆動する。
【0033】
MCU22は、OLED11の発光を制御する機能、蓄積期間Paccの算出に必要なパラメータ(OLED11の寄生容量Cd、OLED11の見なし順方向電圧Vvf、第2の定電流I2)を算出する機能、および、蓄積期間Paccを算出する機能を有する。なお、MCU22の替わりに、PLD(Programmable Logic Device)を用いてもよい。
【0034】
OLED11の見なし順方向電圧Vvfは、OLED11の現在の順方向電圧と見なす電圧である。OLED11の順方向電圧は、経時変化する。これに対応するために、OLED駆動装置2は、OLED11の現在の順方向電圧として、見なし順方向電圧Vvfを算出する。OLED11の寄生容量Cd、見なし順方向電圧Vvf、第2の定電流I2、蓄積期間Paccとは、以下の関係が成立する。
【0035】
Cd×Vvf=I2×Pacc
この式より、蓄積期間Paccは、以下の式2で示される。MCU22は、式2を用いて、蓄積期間Paccを算出する。
【0036】
Pacc=(Cd×Vvf)÷I2・・・式2
電圧源21は、例えば、AC-DCコンバータまたはDC-DCコンバータであり、ケーブル3を介して、OLED11のアノード(一方電極)と接続されている。電圧源21は、OLED11のアノードに正電圧を印加する。この電圧がOLED11の駆動電圧Vinとなる。
【0037】
第3の定電流ダイオードD3のアノードは、ケーブル3を介して、第2の定電流ダイオードD2のカソードと接続されている。第3の定電流ダイオードD3は、第3の定電流I3を生成する電流源である。第3の定電流I3は、第1の定電流I1より小さく、OLED11が僅かに発光する微小な値(例えば、1mA)である。第3の定電流I3は、寄生容量Cdおよび見なし順方向電圧Vvfの算出に用いられる。第3の定電流ダイオードD3の換わりに、定電流回路が用いられてもよい。
【0038】
第1の定電流用スイッチング素子S1、第2の定電流用スイッチング素子S2、第3の定電流用スイッチング素子S3は、例えば、NチャネルパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0039】
第1の定電流用スイッチング素子S1のゲートGは、MCU22の端子2221と接続されている。第1の定電流用スイッチング素子S1のドレインDは、ケーブル3を介して、第1の定電流ダイオードD1のカソードと接続されている。第1の定電流用スイッチング素子S1のソースSは、接地されている。
【0040】
MCU22で生成され、端子2221から出力された信号sg1(パルス信号)が、第1の定電流用スイッチング素子S1のゲートGに入力すると、第1の定電流用スイッチング素子S1がオンする。第1の定電流用スイッチング素子S1のゲートGに信号sg1が入力されている期間中、第1の定電流用スイッチング素子S1がオン状態となり、第1の定電流I1は流れる。そのゲートGに信号sg1が入力されていない期間中、第1の定電流用スイッチング素子S1がオフ状態となり、第1の定電流I1は流れない。
【0041】
第2の定電流用スイッチング素子S2のゲートGは、MCU22の端子2222と接続されている。第2の定電流用スイッチング素子S2のドレインDは、ケーブル3を介して、第2の定電流ダイオードD2のカソードと接続されている。第2の定電流用スイッチング素子S2のソースSは、接地されている。
【0042】
MCU22で生成され、端子2222から出力された信号sg2(パルス信号)が、第2の定電流用スイッチング素子S2のゲートGに入力すると、第2の定電流用スイッチング素子S2がオンする。第2の定電流用スイッチング素子S2のゲートGに信号sg2が入力されている期間中、第2の定電流用スイッチング素子S2がオン状態となり、第2の定電流I2は流れる。そのゲートGに信号sg2が入力されていない期間中、第2の定電流用スイッチング素子S2がオフ状態となり、第2の定電流I2は流れない。
【0043】
第3の定電流用スイッチング素子S3のゲートGは、MCU22の端子2223と接続されている。第3の定電流用スイッチング素子S3のドレインDは、第3の定電流ダイオードD3のカソードと接続されている。第3の定電流用スイッチング素子S3のソースSは、接地されている。
【0044】
MCU22で生成され、端子2223から出力された信号sg3(パルス信号)が、第3の定電流用スイッチング素子S3のゲートGに入力すると、第3の定電流用スイッチング素子S3がオンする。第3の定電流用スイッチング素子S3のゲートGに信号sg3が入力されている期間中、第3の定電流用スイッチング素子S3がオン状態となり、第3の定電流I3は流れる。そのゲートGに信号sg3が入力されていない期間中、第3の定電流用スイッチング素子S3がオフ状態となり、第3の定電流I3は流れない。
【0045】
電圧検知回路26は、抵抗R1と抵抗R2とが直列接続された抵抗分割回路である。電圧検知回路26の高圧側の端子は、ケーブル3を介して、OLED11のカソード(他方電極)と接続されている。電圧検知回路26の低圧側の端子は、接地されている。抵抗R1と抵抗R2との接続点とMCU22の端子2224とが接続されている。
【0046】
電圧検知回路26は、第2の定電流用スイッチング素子S2がオフ状態からオン状態に切り換えられることにより、OLED11のカソード(他方電極)に印加される電圧Vi2を検知する。ここでは、電圧Vi2は、OLED11のカソードと接地との間の電圧である。電圧Vi2は、第2の定電流I2の算出に用いられる。
【0047】
電圧検知回路26は、第3の定電流用スイッチング素子S3がオフ状態からオン状態に切り換えられることにより、OLED11のカソード(他方電極)に印加される電圧Vi3を検知する。ここでは、電圧Vi3は、OLED11のカソードと接地との間の電圧である。電圧Vi3は、寄生容量Cdおよび見なし順方向電圧Vvfの算出に用いられる。
【0048】
電圧検知回路26は、抵抗分割回路に限定されず、電圧Vi2、電圧Vi3を検知できる回路であればよい。
【0049】
図2は、OLED11の発光方式および調光方式を説明する説明図である。OLED11の発光方式には、連続発光方式と間欠発光方式がある。連続発光方式は、OLED11を定常発光させる。間欠発光方式は、OLED11をパルス発光させる。ストロボ発光およびオーバードライブ発光は、間欠発光方式であり、外部トリガーによってパルス発光が制御される。
【0050】
ストロボ発光は、定格電流以下の電流をOLED11に流す方式である。オーバードライブ発光は、定格電流よりも大きな電流をOLED11に流す方式である。これにより、照明をより明るくすることができる。OLED11の故障、劣化の加速を防止するために、オーバードライブの期間は短く制限されている(例えば、1μs~1000μs)。
【0051】
OLED11の調光方式には、連続調光方式と間欠調光方式がある。連続調光方式は、OLED11をDC(Direct Current)調光する。間欠調光方式は、OLED11をPWM(Pulse Width Modulation)調光する。
【0052】
図3は、実施形態に係るOLED駆動装置2に備えられるMCU22の機能ブロック図である。MCU22は、制御処理部221と、I/O部222と、制御部223と、期間算出部224と、電圧算出部225と、記憶部226と、電圧算出部227と、容量算出部228と、電流算出部229と、を備える。
【0053】
制御処理部221は、各機能ブロック(I/O部222、制御部223、期間算出部224、電圧算出部225、記憶部226、電圧算出部227、容量算出部228、電流算出部229)を、当該各機能ブロックの機能に応じてそれぞれ制御および処理をする。
【0054】
I/O部222は、MCU22の外部へ信号を出力し、MCU22の外部から信号が入力する。具体的に説明すると、
図1および
図3を参照して、I/O部222は、端子2221~2224を含む。I/O部222は、端子2221から信号sg1を第1の定電流用スイッチング素子S1のゲートへ出力し、端子2222から信号sg2を第2の定電流用スイッチング素子S2のゲートへ出力し、端子2223から信号sg3を第3の定電流用スイッチング素子S3のゲートへ出力する。I/O部222には、端子2224を介して、抵抗R1と抵抗R2との接続点の電圧を示す信号Voutが入力される。
【0055】
制御部223は、第1の制御および第2の制御をする。第1の制御は、第1の定電流I1を用いてOLED11をストロボ発光させる制御である。第2の制御は、予め算出された蓄積期間Paccの下で、第1の制御前に第2の定電流I2を用いて、OLED11の寄生容量Cdに電荷を蓄積する制御である。第2の制御と第1の制御とは連続しており、これらの制御の間に時間間隔がない。制御部223は、第1の制御前に第2の制御をすることにより、OLED11の点灯開始の遅延を少なくすることが可能となる。
【0056】
制御部223は、信号sg1、信号sg2、信号sg3をそれぞれ生成し、I/O部222へ送る。制御部223は、信号sg1を用いて、第1の定電流用スイッチング素子S1をオン状態にし、第1の制御をし、信号sg2を用いて、第2の定電流用スイッチング素子S2をオン状態にし、第2の制御をする。制御部223は、蓄積期間Paccを算出するモードにおいて、信号sg2を用いて、第2の定電流用スイッチング素子S2をオン状態にする制御をし、信号sg3を用いて、第3の定電流用スイッチング素子S3をオン状態にする制御をする。
【0057】
期間算出部224は、蓄積期間Paccを所定のタイミングで算出する。所定のタイミングは、例えば、OLED駆動装置2の電源がオンされたタイミング、言い換えれば、OLED駆動装置2が立ち上げられたタイミングである。
【0058】
電圧算出部225は、電圧検知回路26から出力された信号Voutを基にして、電圧Vi2および電圧Vi3を算出する。電圧算出部225と電圧検出回路26とによって、電圧Vi2および電圧Vi3を測定する電圧測定部4が構成される。
【0059】
記憶部226は、OLED駆動装置2の動作に必要な各種のプログラム、データおよび情報を記憶している。情報には、第3の定電流I3の値、駆動電圧Vinの値が含まれる。記憶部226は、第3の定電流I3の値および駆動電圧Vinの値を予め記憶している。
【0060】
電圧算出部227は、OLED11の現在の順方向電圧と見なす見なし順方向電圧Vvfを算出する。容量算出部228は、OLED11の寄生容量Cdを算出する。電流算出部229は、第2の定電流I2を算出する。
【0061】
蓄積期間Paccを算出するためには、寄生容量Cd、見なし順方向電圧Vvf、第2の定電流I2が必要となる。
図4は、蓄積期間Paccの算出を説明するフローチャートである。
図3および
図4を参照して、OLED駆動装置2の電源がオンされる毎に、蓄積期間Paccが算出され、この算出された蓄積期間Paccの下で、第2の制御がされる。OLED駆動装置2の電源がオンされると、制御部223の制御モードは、蓄積期間Paccの算出モードとなる(ステップS1)。容量算出部228、電圧算出部227は、それぞれ、寄生容量Cdおよび見なし順方向電圧Vvfを算出し(ステップS2)。電流算出部229は、第2の定電流I2を算出する(ステップS3)。期間算出部224は、上記式2を用いて、蓄積期間Paccを算出する(ステップS4)。
【0062】
なお、OLEDパネル1に搭載されたメモリ(不図示)に、OLED11の寄生容量Cdの値および第2の定電流I2の値が予め記憶されていてもよい。この場合、寄生容量Cdの算出および第2の定電流I2の算出は不要となる。その替わりに、期間算出部224は、OLEDパネル1に搭載されたメモリから、寄生容量Cdの値および第2の定電流I2の値を読み出し、これらと、ステップS2で算出された見なし順方向電圧Vvfと、式2と、を用いて、蓄積期間Paccを算出する。
【0063】
寄生容量Cdおよび見なし順方向電圧Vvfの算出について詳しく説明する。
図5は、寄生容量Cdおよび見なし順方向電圧Vvfの算出を説明するフローチャートである。
図6は、これらの算出を説明するタイミングチャートである。
図6の横軸は、時間tを示し、縦軸は、第3の定電流I3、第3の定電流用スイッチング素子S3のオンオフ状態 電圧Vi3を示す。
【0064】
図1および
図3を参照して、第3の定電流I3は、インピーダンスRIが要因となるリーク電流より大きく設定されている。第3の定電流I3とリーク電流とが区別できるようにするためである。インピーダンスRIは、数百kΩ程度であり、OLED11の順方向電圧は、数V~20V程度である。従って、第3の定電流I3の値は、1mA程度であればよい。第3の定電流I3は、このような微小電流である。従って、これを基にして算出される見なし順方向電圧Vvfは、順方向電圧と近い値にすることができる。
【0065】
図1、
図3および
図6を参照して、制御部223は、第1の定電流用スイッチング素子S1、第2の定電流用スイッチング素子S2、および、第3の定電流用スイッチング素子S3をオフ状態にする(
図5のステップS21)。この状態では、寄生容量Cdに電荷が蓄積されておらず、電圧Vi3は、駆動電圧Vinとほぼ等しくなる(電圧Vi3≒駆動電圧Vin)。詳しく説明する。OLED11には、駆動電圧Vinが印加されているが、第1の定電流用スイッチング素子S1、第2の定電流用スイッチング素子S2、および、第3の定電流用スイッチング素子S3がオフ状態である。このため、OLED11の電圧Voledは、ほぼゼロとなる。従って、駆動電圧Vinと電圧Vi3との間には、以下の関係が成立する。
【0066】
Vi3={(R1+R2)÷(R1+R2+RI)}×Vin
RI<<R1+R2である。従って、寄生容量Cdに電荷が蓄積されていない状態において、電圧Vi3は、駆動電圧Vinとほぼ等しい。
【0067】
制御部223は、信号sg3(パルス信号)を生成し、信号sg3は、I/O部222から出力され、第3の定電流用スイッチング素子S3のゲートGに印加される。これにより、第3の定電流用スイッチング素子S3がオフ状態からオン状態に切り換えられる(
図5のステップS22)。このタイミングを時間t_onとする。OLED11、第2の定電流ダイオードD2、第3の定電流ダイオードD3および第3の定電流用スイッチング素子S3により構成される回路が閉回路となる。これにより、第3の定電流ダイオードD3が生成した第3の定電流I3が第3の定電流用スイッチング素子S3に流れ、寄生容量Cdに電荷の蓄積が開始される。寄生容量Cdに電荷の蓄積が完了していないので、この時点では、OLED11には電流が流れていない(OLED11は発光していない)。
【0068】
電圧測定部4は、所定のタイミング毎に、電圧Vi3を測定することによって、電圧Vi3の値をモニターする(
図5のステップS23)。第3の定電流I3によって寄生容量Cdに電荷が蓄積されるので、電圧Vi3が低下する。この低下を示す式は、一次関数と見なすことができる。
【0069】
電圧測定部4は、電圧Vi3が一定か否かを判断する(
図5のステップS24)。電圧測定部4は、電圧Vi3が一定でないと判断したとき(ステップS24でNo)、ステップS23の処理に戻る。
【0070】
電圧測定部4は、電圧Vi3が一定と判断したとき(ステップS24でYes)、電圧Vi3が低下(変化)している期間の中から2つのタイミング(第1のタイミングt1、第2のタイミングt2)を選択する。この選択の一例を説明する。第1のタイミングt1は、電圧Vi3の低下が開始したタイミングであり、第2のタイミングt2は、第1のタイミングt1から所定期間が経過したときのタイミングである。この例の場合、第1のタイミングt1と時間t_onとが一致する。OLED駆動装置2の設計者、製造者等によって、電圧Vi3が低下している期間が予め求められており、この期間よりも所定期間は、短く設定される。電圧測定部4は、第1のタイミングt1での電圧Vi3および第2のタイミングt2での電圧Vi3を、容量算出部228へ送る。
【0071】
容量算出部228は、第1のタイミングt1での電圧Vi3と第2のタイミングt2での電圧Vi3との差ΔVi3を算出する(
図5のステップS25)。そして、容量算出部228は、第1のタイミングt1から第2のタイミングt2までの期間P_t1t2を算出する(
図5のステップS26)。
【0072】
容量算出部228は、記憶部226から第3の定電流I3の値を読み出し、第3の定電流I3、ステップS25で算出された差ΔVi3、ステップS26で算出された期間P_t1t2、および、式3を用いて、寄生容量Cdを算出する(
図5のステップS27)。容量算出部228は、算出した寄生容量Cdの値を記憶部226に記憶させる。
【0073】
Cd=(I3×P_t1t2)÷ΔVi3・・・式3
電圧測定部4は、電圧Vi3が一定になったときの電圧Vi3(電圧Vi3_con)の値を、電圧算出部227へ送る。電圧算出部227は、記憶部226から駆動電圧Vinの値を読み出し、駆動電圧Vin、電圧Vi3_con、および、式1を用いて、見なし順方向電圧Vvfを算出する(
図5のステップS28)。電圧算出部227は、算出した見なし順方向電圧Vvfの値を記憶部226に記憶させる。
【0074】
Vvf=Vin-Vi3_con・・・式1
第3の定電流用スイッチング素子S3のゲートGに、信号sg3(パルス信号)が印加される期間が終了したとき、第3の定電流用スイッチング素子S3がオン状態からオフ状態に切り換えられる(
図5のステップS29)。このタイミングを時間t_offとする。
【0075】
次に、第2の定電流I2の算出を説明する。
図7は、第2の定電流I2の算出を説明するフローチャートである。
図8は、この算出を説明するタイミングチャートである。
図8の横軸は、時間tを示し、縦軸は、第2の定電流I2、第2の定電流用スイッチング素子S2のオンオフ状態 電圧Vi2を示す。
【0076】
図1、
図3および
図8を参照して、
図5のステップS29後、制御部223は、信号sg1、信号sg2および信号sg3を生成していない。このため、第1の定電流用スイッチング素子S1、第2の定電流用スイッチング素子S2、および、第3の定電流用スイッチング素子S3は、オフ状態となる(
図7のステップS31)。これにより、寄生容量Cdに蓄積された電荷がなくなる。よって、電圧Vi2は、駆動電圧Vinとほぼ等しくなる(電圧Vi2≒駆動電圧Vin)。理由は、電圧Vi3が駆動電圧Vinとほぼ等しくなる理由と同じである。
【0077】
制御部223は、信号sg2(パルス信号)を生成する。信号sg2が第2の定電流用スイッチング素子S2のゲートGに印加されることによって、第2の定電流用スイッチング素子S2をオフ状態からオン状態に切り換える(
図7のステップS32)。このタイミングを時間t_onとする。OLED11、第2の定電流ダイオードD2および第2の定電流用スイッチング素子S2により構成される回路が閉回路となる。これにより、第2の定電流ダイオードD2が生成した第2の定電流I2が第2の定電流用スイッチング素子S2に流れ、寄生容量Cdに電荷の蓄積が開始される。寄生容量Cdに電荷の蓄積が完了していないので、この時点では、OLED11には電流が流れていない(OLED11は発光していない)。
【0078】
電圧測定部4は、所定のタイミング毎に、電圧Vi2を測定することによって、電圧Vi2の値をモニターする(
図7のステップS33)。第2の定電流I2によって寄生容量Cdに電荷が蓄積されるので、電圧Vi2が低下する。この低下を示す式は、一次関数と見なすことができる。
【0079】
電圧測定部4は、電圧Vi2が一定か否かを判断する(
図7のステップS34)。電圧測定部4は、電圧Vi2が一定でないと判断したとき(ステップS34でNo)、ステップS33の処理に戻る。
【0080】
電圧測定部4は、電圧Vi2が一定と判断したとき(ステップS34でYes)、電圧Vi2が低下(変化)している期間の中から2つのタイミング(第3のタイミングt3、第4のタイミングt4)を選択する。この選択の一例を説明する。第3のタイミングt3は、電圧Vi2の低下が開始したタイミングであり、第4のタイミングt4は、第3のタイミングt3から所定期間が経過したときのタイミングである。この例の場合、第3のタイミングt3と時間t_onとが一致する。OLED駆動装置2の設計者、製造者等によって、電圧Vi2が低下している期間が予め求められており、この期間よりも所定期間は、短く設定される。電圧測定部4は、第3のタイミングt3での電圧Vi2および第4のタイミングt4での電圧Vi2を、電流算出部229へ送る。
【0081】
電流算出部229は、第3のタイミングt3での電圧Vi2と第4のタイミングt4での電圧Vi2との差ΔVi2を算出する(
図7のステップS35)。そして、電流算出部229は、第3のタイミングt3から第4のタイミングt4までの期間P_t3t4を算出する(
図7のステップS36)。
【0082】
電流算出部229は、記憶部226から寄生容量Cdの値を読み出し、寄生容量Cd、ステップS35で算出された差ΔVi2、ステップS36で算出された期間P_t3t4、および、式4を用いて、第2の定電流I2を算出する(
図7のステップS37)。電流算出部229は、算出した第2の定電流I2の値を記憶部226に記憶させる。
【0083】
I2=(ΔVi2×Cd)÷P_t3t4・・・式4
第2の定電流用スイッチング素子S2のゲートGに、信号sg2(パルス信号)が印加される期間が終了したとき、第2の定電流用スイッチング素子S2がオン状態からオフ状態に切り換えられる(
図7のステップS38)。このタイミングを時間t_offとする。
【0084】
実施形態に係るOLED駆動装置2を用いたOLED11のストロボ発光の動作について説明する。
図9は、この動作を説明するフローチャートである。
図10は、この動作を説明するタイミングチャートである。
図10の横軸は、時間tを示し、縦軸は、第1の定電流用スイッチング素子S1のオンオフ状態、第2の定電流用スイッチング素子S2のオンオフ状態 第1の定電流I1、第2の定電流I2、OLED11の電圧Voled、OLED11の電流Ioledを示す。なお、
図10は、比較例に係るOLED駆動装置2を用いたOLED11のストロボ発光の動作を説明するタイミングチャートを含むが、これについては後で説明する。
【0085】
図1、
図3および
図10を参照して、ユーザがOLED駆動装置2の動作モードを、ストロボ発光モードに設定する(
図9のステップS51)。制御部223は、第1の定電流用スイッチング素子S1、第2の定電流用スイッチング素子S2、および、第3の定電流用スイッチング素子S3をオフ状態にする(
図9のステップS52)。
【0086】
マシンビジョンにおいて、OLED駆動装置2は、外部からトリガー信号(パルス信号)が入力されることにより、OLED11をストロボ発光させる。トリガー信号は、カメラ(不図示)がシャッターを切るタイミング信号であり、カメラは、トリガー信号を生成し、出力し、カメラが出力したトリガー信号がOLED駆動装置2に入力する。
【0087】
制御部223は、OLED駆動装置2にトリガー信号が入力したか否かを判断する(
図9のステップS53)。制御部223は、OLED駆動装置2にトリガー信号が入力していないと判断したとき(ステップS53でNo)、制御部223は、ステップS52の処理に戻る。
【0088】
制御部223は、OLED駆動装置2にトリガー信号が入力したと判断したとき(ステップS53でYes)、予め算出された蓄積期間Paccの下で、第2の制御をする(ステップS54)。詳しく説明する。制御部223は、信号sg2(パルス信号)を生成し、信号sg2は、I/O部222から出力され、第2の定電流用スイッチング素子S2のゲートGに印加される。これにより、第2の定電流用スイッチング素子S2がオフ状態からオン状態に切り換えられる。第2の定電流用スイッチング素子S2のゲートGに信号sg2が印加される期間が、蓄積期間Paccである。
【0089】
第2の定電流用スイッチング素子S2がオン状態になることによって、OLED11、第2の定電流ダイオードD2および第2の定電流用スイッチング素子S2により構成される回路が閉回路となる。これにより、第2の定電流ダイオードD2が生成した第2の定電流I2が第2の定電流用スイッチング素子S2に流れ、寄生容量Cdに電荷の蓄積が開始される。寄生容量Cdに電荷の蓄積が完了していないので、蓄積期間Pacc中、OLED11には電流が流れていない(OLED11は発光しない)。
【0090】
制御部223は、蓄積期間Paccが経過した否かを判断する(
図9のステップS55)。制御部223は、蓄積期間Paccが経過していないと判断したとき(ステップS55でNo)、ステップS55の処理を繰り返す。
【0091】
制御部223は、蓄積期間Paccが経過したと判断したとき(ステップS55でYes)、第1の制御(ストロボ発光)を実行する(
図9のステップS56)。詳しく説明する。蓄積期間Paccが経過したとき、OLED11の電圧Voledは、見なし順方向電圧Vvfに到達する。OLED11には、微少電流(例えば、1mA)が流れるので、OLED11は僅かに発光する。僅かに発光する期間は、一瞬である。なぜならば、次に説明するように、蓄積期間Paccが経過したとき、第2の定電流用スイッチング素子S2がオフされ、かつ、第1の定電流用スイッチング素子S1がオンされ、これにより、OLED11に第1の定電流I1が供給されるからである。
【0092】
蓄積期間Paccが経過したとき、第2の定電流用スイッチング素子S2のゲートGに信号sg2が印加されなくなる。これにより、第2の定電流用スイッチング素子S2は、オン状態からオフ状態に切り換えられる。
【0093】
制御部223は、蓄積期間Paccが経過したと判断したとき、信号sg1(パルス信号)を生成し、信号sg1は、I/O部222から出力され、第1の定電流用スイッチング素子S1のゲートGに印加される。これにより、第1の定電流用スイッチング素子S1がオフ状態からオン状態に切り換えられる。第1の定電流用スイッチング素子S1がオン状態の期間(すなわち、第1の定電流用スイッチング素子S1のゲートGに信号sg1が印加される期間)が、ストロボ発光期間Pstrである。
【0094】
OLED11、第1の定電流ダイオードD1および第1の定電流用スイッチング素子S1により構成される回路が閉回路となる。これにより、第1の定電流ダイオードD1が生成した第1の定電流I1が第1の定電流用スイッチング素子S1に流れる。そして、OLED11の電圧VoledおよびOLED11の電流Ioledは上昇し、OLED11がストロボ発光に必要な電圧V1および電流(第1の定電流I1)に到達する。以上が第1の制御である。
【0095】
制御部223は、ステップS56後、
図9のステップS53の処理に戻る。これにより、外部からのトリガー信号がOLED駆動装置2に入力する毎に、OLED駆動装置2は、OLED11をストロボ発光させる。
【0096】
比較例について説明する。比較例は、第1の定電流I1のみでOLED11をストロボ発光させる。
図11は、比較例に係るOLED照明システム100aの等価回路図である。OLED照明システム100aについて、
図1に示すOLED照明システム100と相違する点を説明する。OLED照明システム100aのOLEDパネル1は、第2の定電流ダイオードD2を備えていない。OLED照明システム100aのOLED駆動装置2は、第3の定電流ダイオードD3、第2の定電流用スイッチング素子S2、第3の定電流用スイッチング素子S3および電圧検知回路26を備えていない。
【0097】
上述したように、
図10は、比較例に係るOLED駆動装置2を用いたOLED11のストロボ発光の動作を説明するタイミングチャートを含む。比較例において、縦軸は、第1の定電流用スイッチング素子S1のオンオフ状態、第1の定電流I1、OLED11の電圧Voled、OLED11の電流Ioledを示す。比較例は、第1の定電流I1のみで寄生容量Cdに電荷を蓄積するので、実施形態と比べて、寄生容量Cdへの電荷の蓄積が完了する期間が長くなる。この結果、OLED11の電流Ioledが第1の定電流I1に到達するまでの期間が長くなる(すなわち、OLED11の点灯開始が遅延する)。
【0098】
これに対して、実施形態によれば、第1の制御(第1の定電流I1を用いてOLED11をストロボ発光させる)前に、第2の制御(第1の定電流I1より大きい第2の定電流I2を用いて寄生容量Cdに電荷を蓄積させる)をする。よって、実施形態は、比較例と比べて、OLED11の点灯開始の遅延を少なくできる。具体的に説明する。蓄積期間Pacc、第2の定電流I2、第1の定電流I1を用いた蓄積期間Pacc_1、第1の定電流I1とは、以下の式が成立する。
【0099】
Pacc×I2=Pacc_1×I1
例えば、第2の定電流I2が第1の定電流I1の5倍とする。蓄積期間Pacc_1は、蓄積期間Paccの5倍となる。
【0100】
さらに、実施形態に係るOLED駆動装置2は、蓄積期間Paccを予め算出する期間算出部224を備えるので、OLED11の順方向電圧が経時変化により上昇しても、OLED11の点灯開始の遅延を少なくできる。
【符号の説明】
【0101】
1 OLEDパネル
2 OLED駆動装置
4 電圧測定部
11 OLED
26 電圧検知回路
100 OLED照明システム
Cd OLEDの寄生容量
D1 第1の定電流ダイオード
D2 第2の定電流ダイオード
D3 第3の定電流ダイオード
I1 第1の定電流
I2 第2の定電流
I3 第3の定電流
Pacc 蓄積期間
S1 第1の定電流用スイッチング素子
S2 第2の定電流用スイッチング素子
S3 第3の定電流用スイッチング素子