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特許7103947相互に連結された少なくとも3つの液体貯留槽を有する、特にフローティング支持体のための安定化システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】相互に連結された少なくとも3つの液体貯留槽を有する、特にフローティング支持体のための安定化システム
(51)【国際特許分類】
   B63B 39/03 20060101AFI20220712BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20220712BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20220712BHJP
【FI】
B63B39/03 Z
F03D13/25
B63B35/00 T
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018545936
(86)(22)【出願日】2017-02-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2017052294
(87)【国際公開番号】W WO2017148647
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2019-11-19
(31)【優先権主張番号】1651746
(32)【優先日】2016-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ルプル、 オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】クウェデュリエ、 クリストフ
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02998338(FR,A1)
【文献】特公昭39-023046(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0339828(US,A1)
【文献】国際公開第2015/048147(WO,A1)
【文献】特開2004-291702(JP,A)
【文献】特表2010-540854(JP,A)
【文献】特開2000-018319(JP,A)
【文献】国際公開第2006/062390(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/44
B63B 39/03
F16F 15/023
F16F 7/10
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の単一のフロータと、
前記単一のフロータにその全体が含まれる安定化システムと、
を有し、
前記安定化システムは、
少なくとも3つの液体貯留槽(2)と、
少なくとも3つの連結管(3)と、を有し、
前記液体貯留槽(2)は、上から見たときに、前記液体貯留槽(2)の中心が少なくとも2つの異なるライン上に位置するように分散され、
前記連結管(3)が、前記液体貯留槽(2)間で自由に液体が流れるように前記液体貯留槽(2)どうしを連結し、
前記液体貯留槽(2)が、その上部に気体を含み、少なくとも1つの前記液体貯留槽(2)が、気体の流れを制限するための手段を含む、外部媒質からの気体との連結部(7)を有し、
複数の前記連結管(3)が、全ての前記液体貯留槽(2)を互いに連結することを特徴とする、フローティング支持体。
【請求項2】
複数の前記連結管(3)は、星形または多角形を形成し、前記星形または前記多角形の頂点が前記液体貯留槽(2)によって形成され、前記星形または前記多角形の辺が前記連結管(3)によって形成される、請求項1に記載のフローティング支持体
【請求項3】
前記安定化システム(1)は、前記星形または前記多角形の中心に液体貯留槽(2)を有する、請求項2に記載のフローティング支持体
【請求項4】
前記安定化システム(1)は、少なくとも2つの液体貯留槽(2)を連結して、前記気体を通過させる、少なくとも1つの配管(5)を有する、請求項1に記載のフローティング支持体
【請求項5】
前記配管(5)は、前記連結管(3)と平行である、請求項4に記載のフローティング支持体
【請求項6】
少なくとも1つの前記配管(5)は、気体通過制限手段(6)を有する、請求項4または5に記載のフローティング支持体
【請求項7】
前記液体貯留槽(2)は、筒形状である、請求項1から6のいずれか1項に記載のフローティング支持体
【請求項8】
前記安定化システム(1)は、3つから8つの液体貯留槽(2)を有する、請求項1から7のいずれか項に記載のフローティング支持体
【請求項9】
前記連結管(3)は、前記液体貯留槽(2)の下部に配置される、請求項1から8のいずれか1項に記載のフローティング支持体
【請求項10】
前記連結管(3)は、平である、請求項1から9のいずれか1項に記載のフローティング支持体
【請求項11】
風力タービンと、請求項1から10のいずれか1項に記載のフローティング支持体とを有する、洋上エネルギー生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上フローティング支持構造の分野に関し、特に洋上風力タービンのための支持構造に関する。本発明は、洋上底部固定支持構造の分野に関し、特に底部固定風力タービンのための支持構造に関する。並びに、本発明は、土木工学の分野に関し、特に超高層ビルまたは橋梁の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力タービンの場合、フローティング支持構造は、洋上に現れている部分における、フローティング支持体上に固定されたブレード、ロータ、ナセル及びタワーから構成された風力タービンを支持する。これらのフローティング支持体は、緊張係留索、半緊張(semi-taut)係留索または懸垂係留索によって海底に固定できる。フローティング支持体の目的は、風力タービンに浮力及び安定性をもたらし、この組立体の動きを制限しつつ風力タービンに加わる応力を吸収することである。
【0003】
現在、多くの国において、洋上にマルチメガワット風力タービンを設置することを目的とした様々なフローティング支持構造が開発されている。検討中の海域の深さに応じて、いくつかの構造選択肢が考えられる。フローティング支持構造は非常に多様であるにもかかわらず、以下に示す幾つかのフローティング支持体グループが明らかになってきている。
・SPAR型フロータは、細長い幾何学的形状と、構造全体の重心を最大限に低くし、安定性をもたらすような顕著なバラストを有することを特徴とする。
・バージ型フロータは、非常に広く、喫水の浅い支持構造である。バージ型フロータの安定性はその広い喫水面によってもたらされる。しかしながら、この種の支持構造は波動の影響を非常に受けやすい。
・TLP(緊張係留式プラットフォーム)型支持構造は、構造安定性をもたらす緊張ケーブルによって海底に係留される特有の特徴を有する。
・半潜水型フロータは、剛性を付与するアームによって連結された少なくとも3つのフロータからなる支持構造である。これらの支持構造は、概して変位量が少なく、喫水面慣性が高く、それ故、構造の安定性に関して十分な復原力を提供する。さらに、この種のフロータはバージよりも波動の影響を受け難い。
【0004】
フローティング支持構造は、(海における)洋上風力タービン設置以外の分野、例えば、炭化水素生成手段、(波エネルギーを機械的エネルギーまたは電気的エネルギーに変換する)波エネルギー変換システム等でも使用できる。
【0005】
波によって生じる動きを減衰させることができるように、これらのフロータでは様々な減衰解決策が検討されている。
【0006】
第1の解決策によれば、減衰は、U字の2つの垂直部の間を移動できる液体を含む「U字管」を有するバラストシステムを用いて実現できる。この解決策は、特に非特許文献1に記載されている。
【0007】
しかしながら、この解決策では、単一方向における波によって生じる動きのみ減衰させることができる。実際に、方向が「U字管」と平行ではない波の場合、動きは減衰されない。さらに、海では、波動の方向が時間と共に変化するため、動きが常に「U字管」と平行であるとは限らない。
【0008】
さらに、安定性の問題は、他の分野、例えば波動によって応力を受ける底部固定構造(特に底部固定風力タービン)、並びに波または地震によって応力を受ける可能性がある土木構造物(建物、橋梁)でも生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】C. Coudurier, O. Lepreux and N. Petit, “Passive and semi-active control of an offshore floating wind turbine using a tuned liquid column damper” (調整された液柱ダンパーを使用する洋上フローティング風力タービンの受動制御及び半能動制御), in Proc. of 10th IFAC Conference on Manoeuvring and Control of Marine Craft, MCMC, 2015.
【発明の概要】
【0010】
本発明は、少なくとも3つの液体貯留槽と少なくとも3つの連結管とを有する、外部応力を受けるシステムのための安定化システムに関する。複数の液体貯留槽は空間的に分散されている(1つの平面内には位置していない)。さらに、複数の連結管は、全ての液体貯留槽間で液体を循環させる。そのため、液体が全ての方向に流れて、波動の方向にかかわらず励起(excitations)を減衰させることができる。
【0011】
本発明は、特にフローティング支持構造のための安定化システムであって、少なくとも3つの液体貯留槽と少なくとも3つの連結管とを有し、前記液体貯留槽が、上から見たときに、複数の前記液体貯留槽の中心が少なくとも2つの異なるライン上に位置するように分散され、複数の前記連結管が、前記液体貯留槽間で液体を循環させるように複数の前記液体貯留槽どうしを連結する安定化システムに関する。複数の前記連結管は、全ての前記液体貯留槽を互いに連結する。
【0012】
一実施形態によれば、前記連結管は、前記液体の通過を制限する手段を有する。
【0013】
複数の前記連結管は、星形または多角形、好ましくは正多角形を形成し、前記星形または多角形の頂点が前記液体貯留槽によって形成され、前記星形または多角形の辺が前記連結管によって形成されるのが有利である。
【0014】
一変形実施形態によれば、前記安定化システムは、前記星形または多角形の中心に液体貯留槽を有する。
【0015】
一実装形態によれば、前記液体の貯留槽は、その上部に気体を含む。
【0016】
前記安定化システムは、少なくとも2つの液体貯留槽を連結して、前記気体を通過させる、少なくとも1つの配管を有するのが有利である。
【0017】
前記気体通過配管は、前記連結管と平行であることが好ましい。
【0018】
一デザインによれば、少なくとも1つの気体通過配管は、気体通過制限手段を有する。
【0019】
少なくとも1つの液体貯留槽は、外部媒質からの気体との連結部を有するのが有利である。
【0020】
一実施形態によれば、前記液体貯留槽は、概ね円筒形状である。
【0021】
一特徴によれば、前記安定化システムは、3つから8つの液体貯留槽を有する。
【0022】
一デザインによれば、前記連結管は、前記液体貯留槽の下部に配置される。
【0023】
一実装形態によれば、前記連結管は、概ね水平である。
【0024】
さらに、本発明は、少なくとも1つのフロータと、上記の特徴のうちの1つによる安定化システムとを有する、フローティング支持構造に関する。
【0025】
一実装形態によれば、前記フローティング支持構造は、少なくとも3つのフロータを有し、各フロータは前記安定化システムの液体貯留槽を有する。
【0026】
さらに、本発明は、風力タービンと、上記の特徴のうちの1つによるフローティング支持構造とを有する、洋上エネルギー生成システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明によるシステムの他の特徴並びに利点は、非限定的な例として与えられる後述する実施形態の説明を添付の図面と併せて読むことで明らかになるであろう。
図1図1は、本発明の第1の実施形態による安定化システムを示している。
図2a図2aは、第1の実施形態の変形実施形態を示している。
図2b図2bは、第1の実施形態の変形実施形態を示している。
図2c図2cは、第1の実施形態の変形実施形態を示している。
図2d図2dは、第1の実施形態の変形実施形態を示している。
図3図3は、本発明の第2の実施形態による安定化システムを示している。
図4a図4aは、第2の実施形態の変形実施形態を示している。
図4b図4bは、第2の実施形態の変形実施形態を示している。
図4c図4cは、第2の実施形態の変形実施形態を示している。
図4d図4dは、第2の実施形態の変形実施形態を示している。
図5a図5aは、本発明による安定化システムの様々な実施形態を示している。
図5b図5bは、本発明による安定化システムの様々な実施形態を示している。
図5c図5cは、本発明による安定化システムの様々な実施形態を示している。
図5d図5dは、本発明による安定化システムの様々な実施形態を示している。
図5e図5eは、本発明による安定化システムの様々な実施形態を示している。
図5f図5fは、本発明による安定化システムの様々な実施形態を示している。
図6図6は、様々な入射角に関する、従来技術によるシステムためのフロータ及び本発明によるフロータの変位振幅を示す曲線を示している。
図7a図7aは、図6の例に関する波動の向きを示している。
図7b図7bは、図6の例に関する波動の向きを示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、外部応力を受ける可能性があるシステムのための安定化システムに関する。安定化システムは、少なくとも3つの液体貯留槽と、少なくとも3つの連結管とを有する。複数の液体貯留槽は、三次元的に(空間的に)分散されている、すなわち上から見たときに複数の液体貯留槽の中心が少なくとも2つの異なるライン上に位置する。そのため、複数の液体貯留槽は、少なくとも2つの異なる平面内に分散されている。言い換えれば、複数の液体貯留槽は、単一の平面内に位置しておらず、上面図において複数の液体貯留槽の中心が単一のラインに沿って整列することに相当する。この三次元分散は、フローティング支持体の動きを、波動の全ての方向において減衰させることができる。複数の連結管で液体貯留槽どうしを連結することで、液体が液体貯留槽間を自由に循環できる。本発明によれば、複数の連結管が全ての液体貯留槽を互いに連結する。すなわち、液体は、安定化システムの1つの貯留槽から任意の他の貯留槽に自由に動的に(すなわち、制御されることも外部からエネルギーを供給されることもなしに)流れることができる。この特有の特徴は、動的応力を減衰させることが可能な動的システムの手段によって多方向減衰を最適化できる。さらに、この特徴は、フローティングシステム内で単一の減衰システムを用いることでコストを削減することが可能であり、複数の液体貯留槽に対する空間要件を制限することが可能であり、フローティング支持構造を容易に調整できる(このことは従来のU字管では必ずしも可能であるとは限らない)。複数の連結管は、隣接する液体貯留槽を互いに連結すること、及び/またはある液体貯留槽を中央液体貯留槽に連結すること、及び/またはある液体貯留槽を別の液体貯留槽に連結することのうちの少なくとも1つを可能にする。
【0029】
応力を受ける可能性があるシステムは、波動によって応力を受けるフローティング支持体であってもよい。また、このシステムは、波動によって応力を受ける底部固定構造であってもよい。あるいは、このシステムは、風または地震によって応力を受ける建物、橋梁等の土木構造物であってもよい。本明細書では、フローティング支持構造についてのみ説明するが、本明細書において説明する様々な安定化システムの変形実施形態は、外部応力を受ける任意のタイプのシステムにも適している。
【0030】
使用する液体は、水、例えば海水であるのが有利である。液体は、任意の種類であってもよく、特に漏れが生じた場合に周囲媒質の水をほとんど汚染しない液体であればよい。
【0031】
複数の連結管は、液体貯留槽間の液体の移動を促進させるように複数の液体貯留槽の下部に(ベース部に)配置するのが有利である。
【0032】
さらに、複数の連結管は、概ね水平であればよく、その場合、重力による液体の移動量を制限する。
【0033】
以下の説明及び特許請求の範囲において、波、波力及び波動の用語は同等と見なす。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、複数の連結管は星形または多角形を形成してもよい。その場合、複数の液体貯留槽は星形または多角形の頂点を形成し、複数の連結管は星形または多角形の辺を形成する。多角形または星形の選択は、特にフローティング支持構造のアーキテクチャに適合させるために行う。通常、半潜水型フローティング支持体の場合、複数の貯留槽が半潜水型構造の複数のフロータに配置され、複数の連結管は複数のフロータどうしを連結する複数のアームで支持される。これら複数のアームは星形または多角形にできるため、安定化システムはその形状に応じて適合させればよい。
【0035】
「星形」デザインは、より短い連結管を用いることができる。「多角形」デザインは、複数の連結管どうしの連結を避けることで、より簡単なデザインが可能になる。
【0036】
例えば、星形は3つから6つの分岐部を有することができる。さらに、星形はその中心に液体貯留槽を有することができる。複数の連結管で多角形を形成する場合、該多角形は正多角形であることが好ましい。その場合、液体をバランスよく分散させて、フローティング支持体の三次元減衰を促進させる。例えば、安定化システムは、三角形、好ましくは正三角形を形成する複数の連結管によって連結された3つの液体貯留槽を有していてもよい。別の例によれば、安定化システムは、四角形、好ましくは菱形、より好ましくは方形を形成する4つの連結管によって連結された4つの貯留槽を有していてもよい。多角形は、五角形、六角形、(8つの液体貯留槽を有する)八角形等であってもよい。
【0037】
本発明の一実装形態によれば、少なくとも1つの連結管は、鋼、複合材料、プラスチック、コンクリートまたは任意の同様の材料で製造してもよい。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの連結管、好ましくは全ての連結管は、液体通過制限手段を有する。液体通過制限手段は、そこを流れる自由流を減速させることが可能であり、安定化システムによって提供される減衰を最適化する。これらの液体通過制限手段は、受動手段であってもよく、あるいは能動手段であってもよい。能動制限手段は、減衰性能を向上させることができる。能動制限手段の目的は、液体を移動させることではなく、むしろ、唯一の目的は、液体の自由な流れを抑制/部分的に制限することである。この制限手段は、例えば、局所管径縮小部、バルブ、ポンプまたはコンプレッサ等から構成できる。この制限量を調整することは、減衰システムに特有の特性の調整を可能にする。
【0039】
複数の液体貯留槽は様々な形状としてもよい。その場合、各液体貯留槽をそれぞれ異なるフローティング支持形状に適合させることができる。本発明の好ましいデザインによれば、複数の液体貯留槽は概ね円筒形状である。その場合、複数の液体貯留槽は円柱と呼んでもよい。
【0040】
本発明の一実装形態によれば、少なくとも1つの液体貯留槽は、鋼、複合材料、プラスチック、コンクリートまたは任意の同様の材料で製造してもよい。
【0041】
本発明の一実装形態によれば、複数の液体貯留槽の下部に液体を含み、上部に、気体、特に空気を含む。第1のデザインによれば、複数の液体貯留槽は外部媒質と自由に気体を交換できる。
【0042】
(上部に気体を含む)この実装形態では、安定化システムに複数の液体貯留槽どうしを連結する複数の気体通過配管を有していてもよい。この場合、複数の液体貯留槽を外気から遮断できるため、一方の液体貯留槽内の過圧によって、気体流が気体通過配管を通してより低い圧力を有する液体貯留槽の方へ流れる。複数の気体通過配管は、複数の液体貯留槽の上部に配置するのが有利である。複数の気体通過配管は、複数の連結管と平行であってもよい。この平行構成によって安定化システムのサイズを制限できる。あるいは、複数の気体通過配管は、複数の連結管と異なるように複数の液体貯留槽どうしを連結してもよい。例えば、複数の連結管で星形を形成するとき、複数の気体通過配管は多角形を形成してもよく、複数の連結管で多角形を形成するとき、複数の気体通過配管は星形を形成してもよい。
【0043】
一特徴によれば、複数の気体通過配管は気体通過制限手段を有していてもよい。気体通過制限手段は、ある液体貯留槽から別の液体貯留槽への気体の流れを制限できる。これらの気体通過制限手段は、受動手段であってもよく、あるいは能動手段であってもよい。能動制限手段の目的は、気体を移動させることではなく、むしろ、唯一の目的は、気体の自由な流れを抑制/部分的に制限することである。能動制限手段は、減衰性能を向上させることができる。気体制限手段は、例えば、局所管径縮小部、バルブ、ポンプまたはコンプレッサから構成できる。この制限量を調整することは、安定化システムの減衰に関する特有の特性の調整を可能にする。
【0044】
さらに、気体通過配管の代替または追加として、少なくとも1つの液体貯留槽に外部媒質との連結部を有していてもよく、その場合、外部媒質からの空気が液体貯留槽の上部に流れる、または液体貯留槽の上部からの空気が外部媒質に流れることが可能になる。そのため、液体貯留槽内の過圧によって外部へ向かう気体流が生成される。この連結部は制限を加えるものであってもよい。この過圧を調整することは、安定化システムの減衰に関する特有の特性の調整を可能にする。
【0045】
複数の連結管の寸法及び複数の液体貯留槽の寸法は、フローティング支持体の寸法に依存する。フローティング支持体において、複数の水貯留槽をできるだけ遠くに配置することを望む場合、複数の連結管はその距離に応じて適合される。例えば、直径が36mの円形バージの場合、三角の多角形構成では、長さが約30mで直径が約1.5mの複数の連結管、高さが5m~10mで直径が3mの複数の貯留槽を使用できる。通常、総質量が、フローティング支持体の質量の5%~15%程度の(各液体貯留槽及び各連結管内に含まれる)液体を使用できる。この概念は全てのスケールにおいて有効である。
【0046】
一実施形態によれば、安定化システムは、同数の液体貯留槽及び連結管を有する。あるいは、液体貯留槽の数と連結管の数との差を1としてもよい。このように数が等しい、あるいはほぼ等しいことで、全ての液体貯留槽を連結管によって互いに確実に連結できる。一方、より多くの連結管を有する安定化システムは、安定化システムの固有振動数を増やすことで、単一の安定化システムによって波動の幾つかの成分(通常は回転及び並進)を同時に減衰できる。
【0047】
図1は、本発明の第1の実施形態による安定化システムを、非限定的な例として概略的に示している。安定化システム1は、3つの液体貯留槽2と3つの連結管3とから構成される。複数の液体貯留槽2の中心は、2つの異なるライン上に位置する、すなわち複数の液体貯留槽2は単一の平面内に配置されておらず、空間的に分散されている。複数の液体貯留槽2は概ね円筒形状である。各連結管3は2つの液体貯留槽2を連結する。そのため、複数の連結管3は三角形を形成する。図示の例では、この三角形が正三角形である。複数の連結管3は、複数の液体貯留槽2の下部に配置されている。この構成は、トリフロータ型フローティング支持体に適しており、各フロータは液体貯留槽2を有する。この変形実施形態は、安定化システム全体を備える単一のフロータを有するフローティング支持体にも適している。
【0048】
図2a~図2dは、第1の実施形態の4つの変形実施形態、すなわち3つの液体貯留槽が三角形に連結された変形実施形態を、非限定的な例として、上面図において概略的に示している。
【0049】
図2aの変形実施形態による安定化システムは、図1で示された各要素に加えて複数の液体通過制限手段4を有する。複数の液体通過制限手段4は、各連結管3上に設けられている。液体通過制限手段4は、連結管3を通過する液体の流量を低減できる。
【0050】
図2bの変形実施形態による安定化システムは、図1で示された各要素に加えて複数の気体通過配管5(点線で示されている)と複数の気体通過制限手段6とを有する。複数の気体通過配管5は、ある液体貯留槽から別の液体貯留槽に気体が流れるように液体貯留槽2の上部どうしを連結する。この変形実施形態の場合、複数の気体通過配管5は、複数の連結管3と平行であり、三角形を形成する。さらに、複数の気体通過配管5は複数の気体通過制限手段6を有する。気体通過制限手段6は、液体貯留槽2間の気体の流れを制限できる。なお、これらの気体通過制限手段6は省略可能である。
【0051】
図2cの変形実施形態による安定化システムは、図1で示された各要素に加えて複数の気体通過配管5(点線で示されている)と複数の気体通過制限手段6とを有する。複数の気体通過配管5は、ある液体貯留槽から別の液体貯留槽に気体が流れるように液体貯留槽2の上部どうしを連結する。この変形実施形態の場合、複数の気体通過配管5は、複数の連結管3と平行ではなく、複数の連結管3で形成された三角形の中心において合流することで星形を形成する。さらに、各気体通過配管5は気体通過制限手段6を有する。気体通過制限手段6は、液体貯留槽2間の気体の流量を制限できる。なお、これらの気体通過制限手段6は省略可能である。
【0052】
図2dの変形実施形態による安定化システムは、図1で示された各要素に加えて複数の外部媒質との連結部を有する。複数の連結部7は、制限を加えつつ、気体が外部媒質から複数の液体貯留槽2の上部に流れることを可能にし、かつ気体が複数の液体貯留槽2の上部から外部媒質に流れることを可能にする。さらに、この変形実施形態は複数の気体通過配管(不図示)を有していてもよい。
【0053】
これらの変形実施形態は、互いに組み合わせることが可能であり、特に図2bから図2dの変形実施形態の安定化システムは、図2aで示された液体通過制限手段4を有していてもよい。
【0054】
図3は、本発明の第2の実施形態による安定化システムを、非限定的な例として、上面図において概略的に示している。安定化システム1は、3つの液体貯留槽2と3つの連結管3とで構成される。複数の液体貯留槽2の中心は、2つの異なるライン上に位置する、すなわち複数の液体貯留槽2は単一の平面内に配置されておらず、空間的に分散されている。複数の液体貯留槽2は概ね円筒形状である。各連結管3は1つの液体貯留槽2を他の2つの連結管3に連結する。そのため、複数の連結管3は、3つの分岐部を有する星形を形成する。図示の例では、この三角形は正三角形である。複数の連結管3は、複数の液体貯留槽の下部に配置されている。この構成は、三角フロータ型フローティング支持体に適しており、各フロータは液体貯留槽2を有する。この変形実施形態は、安定化システム全体を備える単一のフロータを有するフローティング支持体にも適している。
【0055】
図4aから図4dは、第2の実施形態の4つの変形実施形態、すなわち3つの液体貯留槽が星形に連結された変形実施形態を、非限定的な例として、上面図において概略的に示している。
【0056】
図4aの変形実施形態による安定化システムは、図3で示された各要素に加えて複数の液体通過制限手段4を有する。複数の液体通過制限手段4は各連結管3上に配置される。液体通過制限手段4は、連結管3を通過する液体の流量を低減できる。
【0057】
図4bの変形実施形態による安定化システムは、図3で示された各要素に加えて、複数の液体通過制限手段と、複数の気体通過配管5(点線で示されている)と、複数の気体通過制限手段6と、複数の外部媒質との連結部7とを有する。複数の液体通過制限手段4は各連結管3上に設けられている。液体通過制限手段4は、連結管3を通過する液体の流量を低減できる。複数の気体通過配管5は、ある液体貯留槽2から別の液体貯留槽に気体が流れるように液体貯留槽2の上部どうしを連結する。この変形実施形態の場合、複数の気体通過配管5は、複数の連結管3と平行ではなく、三角形を形成する。さらに、各気体通過配管5は複数の気体通過制限手段6を有する。気体通過制限手段6は、液体貯留槽2間の気体の流量を制限できる。なお、これらの気体通過制限手段6は省略可能である。さらに、複数の連結部7は、制限を加えつつ、気体が外部媒質から複数の液体貯留槽2の上部に流れることを可能にし、かつ気体が複数の液体貯留槽2の上部から外部媒質に流れることを可能にする。
【0058】
図4cの変形実施形態による安定化システムは、図3で示された各要素に加えて複数の気体通過配管5(点線で示されている)と複数の気体通過制限手段6とを有する。複数の気体通過配管5は、ある液体貯留槽から別の液体貯留槽に気体が流れるように液体貯留槽2の上部どうしを連結する。この変形実施形態の場合、複数の気体通過配管5は、複数の連結管3と平行であり、星形を形成する。さらに、各気体通過配管5は複数の気体通過制限手段6を有する。気体通過制限手段6は、液体貯留槽2間の気体の流量を制限できる。なお、これらの気体通過制限手段6は省略可能である。
【0059】
図4dの変形実施形態による安定化システムは、図3で示された各要素に加えて複数の外部媒質との連結部7を有する。複数の連結部7は、制限を加えつつ、気体が外部媒質から複数の液体貯留槽2の上部に流れることを可能にし、かつ気体が複数の液体貯留槽2の上部から外部媒質に流れることを可能にする。この変形実施形態は、複数の気体通過配管(不図示)をさらに有していてもよい。
【0060】
これらの変形実施形態は、互いに組み合わせることが可能であり、特に図4c及び図4dの変形実施形態の安定化システムは、液体通過制限手段を有していてもよい。さらに、図4a~図4dの各変形実施形態は、星形の中心に液体貯留槽を有していてもよい。
【0061】
図5a~図5fは、本発明による安定化システムの他の実施形態を、非限定的な例として、上面図において概略的に示している。これらの図では、主要な要素のみが示されている。これらの実施形態は、複数の気体通過配管、複数の液体通過制限手段、複数の気体通過制限手段、複数の外部媒質との連結部等を使用してもよい。
【0062】
図5aの実施形態による安定化システムは、6つの液体貯留槽2と6つの連結管3とを有する。複数の液体貯留槽2の中心は2つの異なるライン上に位置する、すなわち複数の液体貯留槽2は単一の平面内に配置されておらず、空間的に分散されている。複数の液体貯留槽2は概ね円筒形状である。各連結管3は2つの液体貯留槽2を連結する。したがって、複数の連結管3は、六角形を形成する。図示の例では、この六角形は正六角形である。複数の連結管3は、複数の液体貯留槽の下部に配置されている。この構成は、各フロータが液体貯留槽2を有する、六角フロータ型フローティング支持体に適している。この変形実施形態は、安定化システム全体を備える単一のフロータを有するフローティング支持体にも適している。
【0063】
図5bは、本発明の別の実施形態による安定化システムを、非限定的な例として、上面図において概略的に示している。安定化システム1は、6つの液体貯留槽2と6つの連結管3とから構成される。複数の液体貯留槽2の中心は3つの異なるライン上に位置する、すなわち複数の液体貯留槽2は単一の平面内に配置されておらず、空間的に分散されている。複数の液体貯留槽2は概ね円筒形状である。各連結管3は液体貯留槽2を他の連結管3に連結する。そのため、複数の連結管3は、6つの分岐部を備えた星形を形成する。複数の連結管3は、複数の液体貯留槽の下部に配置されている。この構成は、各フロータが液体貯留槽2を有する、六角フロータ型フローティング支持体に適している。この変形実施形態は、安定化システム全体を備える単一のフロータを有するフローティング支持体にも適している。この実施形態では、星形の中心に液体貯留槽を有していてもよい(不図示)。
【0064】
図5cは、本発明の別の実施形態による安定化システムを、非限定的な例として、上面図において概略的に示している。安定化システム1は、4つの液体貯留槽2と3つの連結管3とから構成される。複数の液体貯留槽2の中心は2つの異なるライン上に位置する、すなわち複数の液体貯留槽2は単一の平面内に配置されておらず、空間的に分散されている。複数の液体貯留槽2は概ね円筒形状である。各連結管3は液体貯留槽2を他の連結管3に連結する。そのため、複数の連結管3は、3つの分岐部を備えた星形を形成しており、(星形の中心に)中央液体貯留槽を有する。複数の連結管3は、複数の液体貯留槽の下部に配置されている。この構成は、各フロータが液体貯留槽2を有する、三角フロータ型フローティング支持体に適している。この変形実施形態は、安定化システム全体を備える単一のフロータを有するフローティング支持体にも適している。
【0065】
図5dの実施形態による安定化システムは、4つの液体貯留槽2と4つの連結管3とを有する。複数の液体貯留槽2は、単一の平面内に配置されておらず、空間的に分散されている。複数の液体貯留槽2の中心は2つの異なるライン上に位置する、すなわち複数の液体貯留槽2は概ね円筒形状である。各連結管3は2つの液体貯留槽2を連結する。そのため、複数の連結管3は、四角形を形成する。図示の例では、この四角形は方形である。複数の連結管3は、複数の液体貯留槽の下部に配置されている。この構成は、各フロータが液体貯留槽2を有する、四角フロータ型フローティング支持体に適している。この変形実施形態は、安定化システム全体を備える単一のフロータを有するフローティング支持体にも適している。
【0066】
図5eの実施形態による安定化システムは、5つの液体貯留槽2と5つの連結管3とを有する。複数の液体貯留槽2の中心は3つの異なるライン上に位置する、すなわち複数の液体貯留槽2は単一の平面内に配置されておらず、空間的に分散されている。複数の液体貯留槽2は概ね円筒形状である。各連結管3は2つの液体貯留槽2を連結する。そのため、複数の連結管3は、五角形を形成する。図示の例では、この五角形は正五角形である。複数の連結管3は、複数の液体貯留槽の下部に配置されている。この構成は、各フロータが液体貯留槽2を有する、五角フロータ型フローティング支持体に適している。この変形実施形態は、安定化システム全体を備える単一のフロータを有するフローティング支持体にも適している。
【0067】
図5fの実施形態による安定化システムは、4つの液体貯留槽2と6つの連結管3とを有する。複数の液体貯留槽2の中心は2つの異なるライン上に位置する、すなわち複数の液体貯留槽2は単一の平面内に配置されておらず、空間的に分散されている。複数の液体貯留槽2は概ね円筒形状である。各連結管3は2つの液体貯留槽2を連結する。この実施形態では、複数の連結管3は、星形及び三角形、特に正三角形を形成しており、三角形の中心に液体貯留槽2が配置されている。複数の連結管3は、複数の液体貯留槽の下部に配置されている。この構成は、各フロータが液体貯留槽2を有する、四角フロータ型フローティング支持体に適している。この変形実施形態は、安定化システム全体を備える単一のフロータを有するフローティング支持体にも適している。この構成は、単一の減衰システムによって(このことが可能になるのは、固有振動数が増えるからである)波動の2つの成分(通常は回転及び並進)を減衰させることができる。
【0068】
さらに、本発明は、フローティング支持体に関する。このフローティング支持体は、上述した変形実施形態の組合せのうちの任意の1つによる安定化システムを有する。この安定化システムは、フローティング支持体に対する波の多方向運動を減衰させることができる。
【0069】
フローティング支持体は、例えば仏国特許出願公開第2998338号明細書に記載されているように、概ね円筒状の単一のフロータを有していてもよい。この場合、安定化システムは単一のフロータに含めることができる。
【0070】
あるいは、フローティング支持体は、互いに連結された複数のフロータを有していてもよい。このフローティング支持体は、特に仏国特許出願公開第2990005号明細書(米国特許出願公開第2015/0071779号明細書)に記載されたような三角フロータ型のフローティング支持体であってもよい。いくつかのフロータを有するこのデザインは、概して変位量が少なく、喫水面慣性が高く、それ故、構造の安定性に関して十分な復原力をもたらす。さらに、この種のフロータは、バージよりも波動の影響を受け難い。複数のフロータの場合、各フロータは安定化システムの液体貯留槽を有していてもよく、その場合、安定化システムの複数の連結管は、様々なフロータを互いに連結し、マルチフロータフローティング支持体の構造によって支持できる。
【0071】
これらのフローティング支持体は、緊張係留索、半緊張係留索または懸垂係留索によって海底に固定できる。
【0072】
本発明は、ある範囲に広がる水(例えば、海)上における風力タービン設置にも関する。この設置は、垂直軸風力タービンまたは水平軸風力タービンと、上述した様々な組合せのうちのいずれか1つによるフローティング支持体とを含む。フローティング支持体の目的は、風力タービンの浮力及び安定性をもたらし、この組立体の動きを制限しつつ風力タービンに加わる応力を吸収することである。本発明によるフローティング支持体は、波動の減衰及び風力タービンの安定性をもたらすために、(海における)洋上風力タービンを設置するのに特に適している。
【0073】
本発明によるフローティング支持体は、(海における)洋上風力タービンの設置以外の他の分野、例えば、炭化水素生成手段、(波エネルギーを機械的エネルギーまたは電気的エネルギーに変換する)波エネルギー転換システム、並びに、例えば超高層ビルまたは橋梁に関する土木工学においても使用できる。
【0074】
実施例
本発明による安定化システムを備えたフローティング支持体(フロータ)の性能を評価することで、一方で安定化システムとフロータとの相互作用を表し、他方でフロータと波動との相互作用を表すことができる。この運動方程式を得るためにラグランジュ的アプローチが用いられる。その一般形態は次式によって与えられる。
【0075】
【数1】
【0076】
ここで、Lはフロータと安定化システムとからなるシステムのラグランジュアンであり、qはシステムのパラメータであり、Qは一般力である。
【0077】
この例では、本発明による安定化システムの多方向特性が示されている。そのため、波動の様々な入射角に関して、図1で示された本発明による安定化システムを備えるフロータの応答を評価する。図7aで定義されるように、各入射角に局所基準フレームを関連付ける。入射角にかかわらず、特に(Xに沿って)入射する波と垂直な方向における角運動振幅に関して、入射波の動き(したがって、励起)の局所的基準フレームにおけるフロータの動きを評価する。
【0078】
(文献J.M. Jonkman, “Dynamics modeling and loads analysis of an offshore floating wind turbine” (洋上フローティング風力タービンの動的モデリングおよび負荷分析), PhD Thesis NREL/TP-500-41958, National Renewable Energy Laboratory, Nov.2007に記載されているように)MITバージをフロータとして使用した結果が図6に示されている。図6は、波周期Th(s)の関数として、波高に対する角度振幅の比A(°/m)の曲線を示している。このフロータは対称的な円形であり、減衰装置が無い場合のフロータの応答、すなわち従来技術によるフロータの応答は入射角にかかわらず同じである。この応答は曲線REFによって示されている。本発明による安定化システムを備えるフロータの、波の入射角に対する応答感度を評価するため、この角度を-30°から+30°の間において15°間隔で変化させる(図7b参照)。本発明による「正三角形」の支持体は、120°単位で回転させても、それ形状は変わりがなく、対称であるため、この60°走査は入射角の360°走査と同等である。本発明によるシステムで得られる曲線(波入射角毎に1つの曲線)はINVによって示されている。これらの曲線はほぼ1つになっている。従来技術による基準REFに対して、本発明のINVによる安定化システムを使用すると、波の入射平面に配置された単純な「U字管」を備えたバージの場合のように、広範囲の励起周期にわたって非常に顕著な運動振幅の低減(約50%)を実現できる。さらに、曲線どうしが重なることで、入射角に対する感度が非常に低くなることが分かる。したがって、本発明による安定化システムは、減衰に関して多方向特性を有すると言える。これに対して、単純な「U字管」を有するシステムでは、入射角が「U字管」の軸に対して垂直な波動に対する減衰が生じない。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図6
図7a
図7b