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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】無線装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20220712BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20220712BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20220712BHJP
   H04B 7/10 20060101ALI20220712BHJP
   H04B 1/74 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H04B1/04 D
H04W16/28 130
H04B1/16 Z
H04B7/10 B
H04B1/74
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019027141
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020136881
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】伊東 啓樹
(72)【発明者】
【氏名】四本 宏二
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-162332(JP,A)
【文献】特開2015-159700(JP,A)
【文献】特開2015-220718(JP,A)
【文献】特開2014-112832(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0177690(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
H04W 16/28
H04B 1/16
H04B 7/10
H04B 1/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平偏波と垂直偏波を送受信する第1及び第2の無線機を備え、前記第1の無線機と前記第2の無線機の一方が現用機、他方が予備機として動作する無線装置であって、
水平偏波と垂直偏波を送受信する第1及び第2のアンテナユニットと、
前記第1及び第2の無線機の状態に応じて、現用機と予備機とを切り替える制御部とを備え、
前記第1の無線機の水平偏波を入出力する第1の端子が、前記第1のアンテナユニットの水平偏波の給電点に接続され、前記第1の無線機の垂直偏波を入出力する第2の端子が、前記第2のアンテナユニットの垂直偏波の給電点に接続され、前記第2の無線機の水平偏波を入出力する第1の端子が、前記第2のアンテナユニットの水平偏波の給電点に接続され、前記第2の無線機の垂直偏波を入出力する第2の端子が、前記第1のアンテナユニットの垂直偏波の給電点に接続されたことを特徴とする無線装置。
【請求項2】
第1及び第2の無線機は、予備機として動作する場合にも受信動作を行い、
制御部が、前記第1及び第2の無線機の受信状態を監視して、受信状態が良好な方を現用機として選択することを特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項3】
第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットが、離れて設置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置に係り、特にアンテナユニットと無線機との伝送路における電力損失を抑え、更に、無線環境に応じて通信品質を向上させることができる無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[列車無線システム:図3
従来、列車に搭載され、列車無線システムで用いられる無線装置があった。
列車無線システムの概略構成について図3を用いて説明する。図3は、列車無線システムの概略構成を示す説明図である。
図3に示すように、列車無線システムは、地上制御装置(指令局)61と、沿線に配置された基地局62と、列車に搭載された移動局である無線装置63とを備えている。
【0003】
地上制御装置61は、各列車の運行状況を監視し、列車との間で種々の情報を送受信する。
基地局62は、無線システムの基地局装置であり、移動局である無線装置63と無線通信を行い、地上制御装置61と有線で通信を行う。
無線装置63は、基地局62を介して地上制御装置61からの制御情報を受信して、車上の制御装置(図示せず)に出力し、制御装置が当該制御情報に対応した制御を行う。
また、無線装置63は、例えば、地上制御装置61からの制御情報に対する応答や、列車で検出した位置情報、速度情報等を地上制御装置61に送信する。
【0004】
[従来の無線装置:図4
従来の無線装置について図4を用いて説明する。図4は、従来の無線装置の概略構成図である。
図4に示すように、従来の無線装置は、無線機10,20と、分配合成器30,40と、アンテナユニット50,60とを備えている。
【0005】
無線機10,20はそれぞれ、地上制御装置61と無線通信を行う無線機である。つまり、無線装置は、地上制御装置61との間に現用と予備の2つの無線機を備えており、冗長化を図ることにより、信頼性の高い通信システムとなっている。
【0006】
そして、従来は、地上制御装置61又は列車上の制御装置からの制御によって一方の無線機10又は無線機20が選択され、選択された無線機が現用として動作し、他方の無線機は予備として待機するようになっている。ここでは、無線機10を現用、無線機20を予備とする。
無線機の選択は、例えば、現用の無線機に不具合が発生した場合に他方(予備)の無線機に切り替えるようにしている。尚、切替制御は制御装置によって行われるが、図4では記載していない。
【0007】
無線機10,20は、それぞれ、水平偏波(H)と垂直偏波(V)を送受信する無線機である。無線機10は、水平偏波用アンテナ接続端子10aと、垂直偏波用アンテナ接続端子10bとを備え、無線機20は、水平偏波用アンテナ接続端子20aと、垂直偏波用アンテナ接続端子20bとを備えている。
【0008】
分配合成器30は、入出力端子30a,30b,30cを備えており、水平偏波の分配合成を行う。
一般的には、分配合成器30は、送信時には、無線機10及び無線機20から入出力端子30a,30bを介して入力された水平偏波を合成して入出力端子30cからアンテナユニット50に出力する。
但し、送信時は無線機10もしくは無線機20のどちらか一方からの送信となるため、無線機10もしくは無線機20のどちらか一方からの送信信号と他方の無信号(実質的には熱雑音)を合成することになる。
受信時には、入出力端子30cからの水平偏波を分配して、入出力端子30a,30bを介して無線機10及び20に出力する。
【0009】
同様に、分配合成器40は、入出力端子40a,40b,40cを備えており、垂直偏波の分配合成を行う。
分配合成器40は、送信時には、無線機10及び無線機20から入出力端子40a,40bを介して入力された垂直偏波を合成して入出力端子40cからアンテナユニット60に出力する。
但し、送信時は無線機10もしくは無線機20のどちらか一方からの送信となるため、無線機10もしくは無線機20のどちらか一方からの送信信号と他方の無信号(実質的には熱雑音)を合成することになる。
受信時には、入出力端子40cからの垂直偏波を分配して、入出力端子40a,40bを介して無線機10及び20に出力する。
【0010】
なお、上記で説明した分配合成器30,40の代わりに、切替スイッチを用いてもよい。この場合、従来の無線装置では、特に図示しないが、分配合成器30を切替スイッチとし、送信時には、現用として運用されている無線機10からの水平偏波を入出力端子30cに出力し、受信時には、入出力端子30cからの水平偏波を現用機に接続する入出力端子30aに出力する。
現用機と予備機が切り替えられた場合には、切替スイッチは、無線機20に接続する入出力端子30bと入出力端子30cとを接続して、水平偏波の入出力を行う。
【0011】
同様に、分配合成器40を切替スイッチとした場合、送信時には、現用として運用されている無線機10からの垂直偏波を入出力端子40cに出力し、受信時には、入出力端子40cからの垂直偏波を現用機に接続する入出力端子40aに出力する。
現用機と予備機が切り替えられた場合には、切替スイッチは、無線機20に接続する入出力端子40bと入出力端子40cとを接続して、垂直偏波の入出力を行う。
【0012】
アンテナユニット50は、給電点50aと、水平偏波用のアンテナ50cを備えている。
アンテナユニット60は、給電点60aと、垂直偏波用のアンテナ60cを備えている。
そして、送信時には、分配合成器(もしくは切替スイッチ)30から給電点50aを介して入力される水平偏波をアンテナ50cから放射し、分配合成器(もしくは切替スイッチ)40から給電点60aを介して入力される垂直偏波をアンテナ60cから放射する。
また、受信時には、アンテナ50cで受信した水平偏波を給電点50aから分配合成器(もしくは切替スイッチ)30に出力し、アンテナ60cで受信した垂直偏波を給電点60aから分配合成器(もしくは切替スイッチ)40に出力する。
【0013】
このように、偏波ごとに分配合成器(もしくは切替スイッチ)30,40で分配合成(若しくは現用と予備の運用に応じた切替)をすることでダイバーシティ又はMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)機能を有する無線機を冗長化することが可能となる。
【0014】
[関連技術]
尚、列車無線システムに関する従来技術としては、特開2009-67375号公報「列車制御システム」(特許文献1)、特開2012-90328号公報「無線制御方法及び無線制御システム」(特許文献2)がある。
【0015】
特許文献1には、地上制御装置と複数の車上無線制御装置との間で複数の無線通信路を用いて同時無線通信を行う列車制御システムで、複数の無線通信路の1つを選択して認証要求及び認証処理を実施し、得られた暗号鍵を複数の車上無線制御装置に共通の暗号鍵とすることが記載されている。
【0016】
また、特許文献2には、沿線に設置された複数の基地局に異なる通信周波数を割り当て、移動局は、通信周波数を探索して、探索した特定の無線周波数に対応した基地局との間で制御情報を送受信することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2009-67375号公報
【文献】特開2012-90328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、従来の無線装置では、分配合成器や切替スイッチを用いて無線装置を冗長化するため、アンテナユニットと無線機との伝送路における電力損失が発生し、送信電力の低下や受信時の雑音指数の劣化を招き、信号対雑音比が低下するという問題点があった。
【0019】
また、従来の無線装置では、現用系と予備系の経路を切替えスイッチ等で切り替えていると、現用系の無線機で運用を行っている状態では、予備系の無線機は受信状態で待機することができないため、予備系での受信状態を把握することができず、無線環境に応じて良好な無線機を選択することができないという問題点があった。
【0020】
尚、特許文献1及び特許文献2には、無線機2台に対してアンテナユニットを2台設けて、分配合成器を不要とし、現用機/予備機共に受信可能として、制御部が、受信状態が良好な無線機を現用機として選択することは記載されていない。
【0021】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、簡易な構成として電力損失が発生せず、冗長化により適宜無線機を選択でき、良好な通信品質が得られる無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、水平偏波と垂直偏波を送受信する第1及び第2の無線機を備え、第1の無線機と第2の無線機の一方が現用機、他方が予備機として動作する無線装置であって、水平偏波と垂直偏波を送受信する第1及び第2のアンテナユニットと、第1及び第2の無線機の状態に応じて、現用機と予備機とを切り替える制御部とを備え、第1の無線機の水平偏波を入出力する第1の端子が、第1のアンテナユニットの水平偏波の給電点に接続され、第1の無線機の垂直偏波を入出力する第2の端子が、第2のアンテナユニットの垂直偏波の給電点に接続され、第2の無線機の水平偏波を入出力する第1の端子が、第2のアンテナユニットの水平偏波の給電点に接続され、第2の無線機の垂直偏波を入出力する第2の端子が、第1のアンテナユニットの垂直偏波の給電点に接続されたことを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、上記無線装置において、第1及び第2の無線機は、予備機として動作する場合にも受信動作を行い、制御部が、第1及び第2の無線機の受信状態を監視して、受信状態が良好な方を現用機として選択することを特徴としている。
【0024】
また、本発明は、上記無線装置において、第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットが、離れて設置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、水平偏波と垂直偏波を送受信する第1及び第2の無線機を備え、第1の無線機と第2の無線機の一方が現用機、他方が予備機として動作する無線装置であって、水平偏波と垂直偏波を送受信する第1及び第2のアンテナユニットと、第1及び第2の無線機の状態に応じて、現用機と予備機とを切り替える制御部とを備え、第1の無線機の水平偏波を入出力する第1の端子が、第1のアンテナユニットの水平偏波の給電点に接続され、第1の無線機の垂直偏波を入出力する第2の端子が、第2のアンテナユニットの垂直偏波の給電点に接続され、第2の無線機の水平偏波を入出力する第1の端子が、第2のアンテナユニットの水平偏波の給電点に接続され、第2の無線機の垂直偏波を入出力する第2の端子が、第1のアンテナユニットの垂直偏波の給電点に接続された無線装置としているので、合成分配器や切替スイッチを用いずに無線機の冗長化を実現し、電力損失や送信電力の低下、及び受信時の雑音指数の劣化を防ぐことができる効果がある。
【0026】
また、本発明によれば、第1及び第2の無線機は、予備機として動作する場合にも受信動作を行い、制御部が、第1及び第2の無線機の受信状態を監視して、受信状態が良好な方を現用機として選択する上記無線装置としているので、通信環境に応じて、受信状態が良好な無線機を用いて通信を行うことができ、通信品質を向上させることができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットが、離れて設置されている上記無線装置としているので、空間ダイバーシティの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本無線装置の概略構成を示す説明図である。
図2】制御部5における受信レベルの監視処理を示すフローチャートである。
図3】列車無線システムの概略構成を示す説明図である。
図4】従来の無線装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線装置(本無線装置)は、水平偏波と垂直偏波を送受信する第1及び第2の無線機と、水平偏波と垂直偏波を送受信する第1及び第2のアンテナユニットとを備え、第1の無線機の水平偏波を入出力する第1の端子が、第1のアンテナユニットの水平偏波の給電点に接続され、第1の無線機の垂直偏波を入出力する第2の端子が、第2のアンテナユニットの垂直偏波の給電点に接続され、第2の無線機の水平偏波を入出力する第1の端子が、第2のアンテナユニットの水平偏波の給電点に接続され、第2の無線機の垂直偏波を入出力する第2の端子が、第1のアンテナユニットの垂直偏波の給電点に接続され、制御部が、各無線機の状態に応じて現用機と予備機とを切り替えるものであり、分配合成器や切替スイッチを用いずに無線機の冗長化を実現し、電力損失を抑えると共に、通信環境に応じて無線機の切り替えを可能とし、通信品質を向上させることができるものである。
【0030】
[本無線装置の構成:図1
本無線装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、本無線装置の概略構成を示す説明図である。
尚、以下の実施の形態では、本無線装置を図3に示した列車無線システムに用いた場合を例として説明するが、これに限るものではなく、他の無線システムにも適用可能である。
図1に示すように、本無線装置は、無線機1,2と、アンテナユニット3,4と、制御部5とを備えている。
2つのアンテナユニット3,4を用いることで、分配合成器や切替スイッチを不要として、電力損失を抑えることができるものである。
【0031】
本無線装置の各部について説明する。
無線機1,2は、従来と同様に、水平偏波(H)と垂直偏波(V)の両方を送受信する無線機であり、制御部5によって選択された一方が現用機として動作し、他方が予備機となっている。ここでは、無線機1を現用機として説明する。
無線機1は、水平偏波用アンテナ接続端子1aと、垂直偏波用アンテナ接続端子1bとを備え、無線機2は、水平偏波用アンテナ接続端子2aと、垂直偏波用アンテナ接続端子2bとを備えている。
【0032】
また、アンテナユニット3,4は、水平偏波と垂直偏波の両方を送受信するアンテナ装置である。
アンテナユニット3は、第1の給電点3aと、第2の給電点3bとを備え、第1の給電点3aは水平偏波用アンテナ3c(アンテナ3c)に接続され、第2の給電点3bは垂直偏波用アンテナ3d(アンテナ3d)に接続されている。
ここでは、第1の給電点3aを水平偏波用、第2の給電点3bを垂直偏波用としている。
なお、図面上では信号の流れを説明するうえで分かり易くするために水平偏波用アンテナ3c(アンテナ3c)と垂直偏波用アンテナ3d(アンテナ3d)を記しているが、実際にはアンテナユニット3内のアンテナ素子により実現されている。また、水平偏波と垂直偏波のように異なる偏波の場合には、それぞれの偏波に対応したアンテナ特性を同一のアンテナ素子から実現することが可能である。
【0033】
同様に、アンテナユニット4は、第1の給電点4aと、第2の給電点4bとを備え、第1の給電点4aは水平偏波用アンテナ4c(アンテナ4c)に接続され、第2の給電点4bは垂直偏波用アンテナ4d(アンテナ4d)に接続されている。ここでは、第1の給電点4aを水平偏波用、第2の給電点4bを垂直偏波用としている。
なお、上記同様に図面上では信号の流れを説明するうえで分かり易くするために水平偏波用アンテナ4c(アンテナ4c)と垂直偏波用アンテナ4d(アンテナ4d)を記しているが、実際にはアンテナユニット4内のアンテナ素子により実現されている。また、水平偏波と垂直偏波のように異なる偏波の場合には、それぞれの偏波に対応したアンテナ特性を同一のアンテナ素子から実現することが可能である。
【0034】
そして、送信時には、現用の無線機1から出力された水平偏波は、水平偏波用アンテナ接続端子1aからアンテナユニット3の第1の給電点3aに入力され、水平偏波用アンテナ3cから放射される。
また、無線機1から出力された垂直偏波は、垂直偏波用アンテナ接続端子1bからアンテナユニット4の第2の給電点4bに入力され、垂直偏波用アンテナ4dから放射される。
【0035】
受信時には、アンテナユニット3の水平偏波用アンテナ3cで受信された水平偏波は、第1の給電点3aから無線機1に出力され、垂直偏波用アンテナ3dで受信された垂直偏波は、第2の給電点3bから無線機2に出力される。
また、アンテナユニット4の水平偏波用アンテナ4cで受信された水平偏波は、第1の給電点4aから無線機2に出力され、垂直偏波用アンテナ4dで受信された垂直偏波は、第2の給電点4bから無線機1に出力される。
つまり、本無線装置では、予備系の無線機2も、常時受信可能な状態とすることが可能となっている。
尚、通常は、制御部5は、現用機で受信したデータを受信データとして採用するが、予備機における受信データも用いて受信品質の向上を図ってもよい。
【0036】
制御部5は、従来と同様に、無線機1,2の状態(故障等)を監視して、現用機と予備機とを切り替える制御を行う。図1に示した破線は、制御部5から無線機1,2に対する制御信号を示している。
【0037】
また、本無線装置の特徴として、制御部5は、例えば、現用機の送信出力や、現用機及び予備機の受信強度を監視して、現用機の送信出力が低下したり、受信強度が低下した場合に、現用機を予備機とし、予備機であった無線機を現用機に切り替える。
【0038】
その際、制御部5は、現用機として選択した無線機に対しては、送信動作を行うよう制御し、予備機に対しては送信動作を行わないよう制御する。尚、受信動作については現用・予備に関わらず両方の無線機が行うようにすることが可能となっている。
【0039】
特に、本無線装置では、予備機が受信動作を行いつつ待機することを可能としているので、制御部5は、現用機と予備機の受信状態を検出して比較し、良好な方を現用機として選択することが可能である。
具体的には、制御部5は、現用の無線機1の水平偏波及び垂直偏波の受信強度と、予備の無線機2の水平偏波及び垂直偏波の受信強度を求め、各無線機の総合的な受信強度を求めて良好な方を現用機として選択する。
あるいは、現用機における受信強度が予め設定された一定レベルより低くなった場合に、現用機と予備機の切り替えを行うようにしてもよい。
【0040】
これにより、本無線装置では、無線機そのものに不具合はなくても、無線環境によって、より良好な通信品質が得られる無線機を現用機として選択することができるものである。
尚、地上制御装置からの指示ではなく、制御部5が現用機と予備機の切り替えを行った場合には、制御部5は、その旨を地上制御装置に通知する。
【0041】
更に、制御部5は、無線機1,2の受信状態の監視において、アンテナの不具合を検出して、それに基づいて現用機と予備機の切り替えを行ってもよい。
具体的には、制御部5は、無線機1の水平偏波用アンテナ接続端子1a、垂直偏波用アンテナ接続端子1b、無線機2の水平偏波用アンテナ接続端子2a、垂直偏波用アンテナ接続端子2bの4つの接続端子の内、いずれかからの受信強度が著しく低下した場合、当該接続端子に接続するアンテナユニットのアンテナに不具合が発生したことを検出する。
また、上記では受信状態における検出について述べたが、他の方法として送信状態での電圧定在波比(VSWR)を測定することによって、送信信号の反射波からアンテナの不具合を検出してもよい。
【0042】
そして、アンテナユニット3のアンテナ3c,3d、アンテナユニット4のアンテナ4c,4dのいずれかに故障等の不具合が発生した場合には、当該アンテナを用いないように、現用機と予備機とを切り替える制御を行う。
例えば、アンテナユニット4のアンテナ4dに不具合が生じ、制御部5がそれを検出すると、当該アンテナ4dに接続される無線機1を予備機とし、無線機2を現用機とするよう切り替える。
これにより、不具合の発生したアンテナを用いずに、水平偏波と垂直偏波での送受信を行うことができるものである。
【0043】
更にまた、制御部5は、アンテナユニット3,4の一方が故障したことを検出した場合には、その時点で予備機に設定されている無線機に対して、受信動作だけでなく送信動作も行うように指示することも可能である。
例えば、アンテナユニット3からの水平偏波の受信(無線機1の水平偏波用接続端子1aからの入力)及び垂直偏波の受信(無線機2の垂直偏波用アンテナ接続端子2bからの入力)が共に著しく低下した場合には、制御部5は、アンテナユニット3が故障したことを検出する。
【0044】
この場合、制御部5は、現在予備機に設定されている無線機2に対して、送信動作を行うよう制御する。
これにより、本無線装置では、アンテナユニット4のみを用いて、無線機2からの水平偏波と無線機1からの垂直偏波を送信することができ、アンテナユニットの一方が故障しても、両方の偏波で送受信を行うことができるものである。
【0045】
なおここで、無線機1と無線機2、アンテナユニット3とアンテナユニット4、アンテナ3cとアンテナ3dとアンテナ4cとアンテナ4dについて、本願発明の構成とした更なる特徴を説明する。
電力損失を抑えるために、分配合成器や切替えスイッチを用いないで冗長構成を実現する場合、例えば従来と同様に、一方のアンテナユニットを水平偏波用、他方のアンテナユニットを垂直偏波用とする構成も考えられる。
【0046】
しかし、その場合、アンテナ素子の特性から、それぞれのアンテナユニット内に、各無線機に対応した2つのアンテナ素子が必要となる。つまり、各アンテナユニット内に2つのアンテナ素子を並べて配置しなければならず、アンテナユニットが大きくなる。
【0047】
それに対して、本願発明の構成のように、1つのアンテナユニット内で異なる偏波のアンテナ特性を実現しようとした場合には、偏波共用の平面アンテナを利用可能となり、それは一つのアンテナ素子から水平偏波用と垂直偏波用で異なる給電点に接続するだけで実現可能となる。つまり、本願発明の構成とすることで、アンテナユニットを小型化することが可能となり、アンテナユニットの配置スペースを小さくでき、アンテナユニットの設置の自由度や設置の容易性に大きく寄与する。
【0048】
[制御部5の処理:図2
次に、本無線装置の制御部5における受信レベルの監視処理について図2を用いて説明する。図2は、制御部5における受信レベルの監視処理を示すフローチャートである。
図2に示すように、本無線装置の制御部5は、無線機1及び無線機2の両偏波の受信強度を取得して、各無線機の総合的な受信強度を求める(S1)。
そして、制御部5は、無線機1と無線機2の受信強度を比較し(S2)、現用機の方が受信状態が良好か(受信強度が大きいか)どうかを判断し(S3)、現用機の方が受信状態が良好である場合(受信強度が大きい場合、Yesの場合)には処理S1に戻って監視を続ける。
【0049】
また、処理S3で予備機の方が受信状態が良好な場合(Noの場合)には、制御部5は、現用と予備を切り替えて、新たに現用機に設定した無線機には、送信動作を行うように指示を出力し、予備機に設定した無線機には、送信動作を停止するよう指示を出力する(S4)。
そして、制御部5は、処理S1に移行して受信強度の監視を行う。
これにより、2台の無線機の内、受信品質が良好な無線機を現用機として選択することができるものである。
【0050】
[アンテナユニットの配置]
本無線装置は、2つのアンテナユニット3,4を備えているため、アンテナユニット3、4を離して設置することで、空間ダイバーシティの効果が十分得られるものである。
例えば、本無線装置を列車に搭載する場合に、アンテナユニット3を列車の正面の左側に設置し、アンテナユニット4を列車の正面の右側に設置する。
無線環境によっては、偏波とアンテナ位置の組み合わせで通信品質に差が出ることもあり、より良好な品質が得られるよう、制御部5は、受信状態を監視して現用機と予備機とを切り替えるよう制御することも可能である。
【0051】
具体的には、無線機1は、水平偏波が車両の正面の右側、垂直偏波が車両の正面の左側で送受信され、無線機2は、水平偏波が左側、垂直偏波が右側で送受信されることになる。
本無線装置では、制御部5が、各無線機における受信強度を比較して、良好な通信品質が得られる方を現用機として設定することが可能となる。
【0052】
[従来の無線装置との比較]
ここで、従来の無線装置と本無線装置とを比較して、本無線装置の効果について説明する。
図3に示した従来の無線装置は、分配合成器30,40(又は切替スイッチ)を備えており、電力損失が大きく、回線利得も低下してしまうのに対し、本無線装置は、分配合成器や切替スイッチを備えておらず、電力損失を防ぎ、回線利得の低下を抑えることができるものである。
【0053】
また、従来の無線装置では、アンテナユニット50内のどちらかのアンテナが故障すると、一方の偏波が遮断されてしまうが、上述したように、本無線装置では、故障が生じたアンテナを使用しないように、現用機と予備機を切り替えることで、引き続き両方の偏波で送受信を行うことができるものである。
【0054】
更に、従来の無線装置では、アンテナユニット50自体が故障した場合には、無線送受信が完全に遮断されてしまうが、本無線装置では、制御部5が、予備機にも送信動作を行うよう制御することにより、残ったアンテナユニットを用いて両方の偏波を用いた送受信を行うことができるものである。
【0055】
更にまた、従来の無線装置では、2台の無線機を備えていても、送受信動作を行うのは現用機のみであったが、本無線装置では、予備機も受信動作を行うことにより、現用機と予備機で多重受信を行うことが可能になる。
これにより、例えば、無線機1,2で受信された信号を合成して、制御部5でノイズ除去等の処理を行い、受信品質を向上させることができるものである。
【0056】
また、制御部5が自発的な監視を行わない構成であったとしても、例えば、現用機が地上制御局61からの信号を受信できずに応答できなくなった場合に、地上制御局61で当該事態を認識して、本無線装置に対して現用機と予備機の切り替え指示を送信すれば、予備機が当該指示を受信して制御部5に出力し、制御部5が現用機と予備機の切り替えを行うことができるものである。
【0057】
[実施の形態の効果]
本無線装置によれば、水平偏波と垂直偏波を送受信する無線機1及び無線機2と、水平偏波と垂直偏波を送受信するアンテナユニット3及びアンテナユニット4とを備え、無線機1の水平偏波用アンテナ接続端子1aが、アンテナユニット3の第1の給電点3aに接続され、無線機1の垂直偏波用アンテナ接続端子1bが、アンテナユニット4の第2の給電点4bに接続され、無線機2の水平偏波用アンテナ接続端子2aが、アンテナユニット4の第1の給電点4aに接続され、無線機2の垂直偏波用アンテナ接続端子2bが、アンテナユニット3の第2の給電点3bに接続され、制御部5が、無線機1,2の状態に応じて現用機と予備機とを切り替えるものであり、分配合成器や切替スイッチを用いずに無線機の冗長化を実現し、電力損失を抑えると共に、通信環境に応じて無線機の切り替えを可能とし、通信品質を向上させることができる効果がある。
【0058】
本無線装置によれば、無線機1,2が、予備機に設定されている場合でも受信動作を行う状態で待機し、制御部5が、無線機1,2の受信品質を比較して、良好な方を現用機として設定するようにしているので、無線環境等に応じてより良い無線機を現用機として設定でき、良好な通信を行うことができる効果がある。
【0059】
更に、本無線装置によれば、2つのアンテナユニット3,4を備えているので、例えば、列車の右側と左側といったようにアンテナユニット3,4を離して設置することで、空間ダイバーシティの効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電力損失を抑え、無線環境に応じて適切に無線機を選択して、通信品質を向上させることができる無線装置に適している。
【符号の説明】
【0061】
1,2,10,20…無線機、 3,4,50,60…アンテナユニット、 5…制御部、 30,40…分配合成器、 1a,2a,10a,20a…水平偏波用アンテナ接続端子、 1b,2b,10b,20b…垂直偏波用アンテナ接続端子、 3a,3b,4a,4b,50a,60a…給電点、 30a,30b,30c,40a,40b,40c…入出力端子、 61…地上制御局、 62…基地局、 63…無線装置
図1
図2
図3
図4