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特許71040243Dプリント・ルーネブルグ・レンズを使用する新規な自動車用レーダ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】3Dプリント・ルーネブルグ・レンズを使用する新規な自動車用レーダ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20220712BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20220712BHJP
   H01Q 19/06 20060101ALI20220712BHJP
   H01Q 25/04 20060101ALI20220712BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G01S7/03 212
G01S13/931
H01Q19/06
H01Q25/04
G08G1/16 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019507940
(86)(22)【出願日】2017-08-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 US2017046998
(87)【国際公開番号】W WO2018035148
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/375,349
(32)【優先日】2016-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517342844
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ アリゾナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン、ハオ
(72)【発明者】
【氏名】リャン、ミン
(72)【発明者】
【氏名】カオ、シヤン
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07667665(US,B1)
【文献】特開2009-250626(JP,A)
【文献】特開2008-128807(JP,A)
【文献】国際公開第2015/197223(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0202538(US,A1)
【文献】特開2012-037306(JP,A)
【文献】特表2005-534231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0061936(US,A1)
【文献】米国特許第06085151(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
H01Q 3/00 - 3/46
H01Q 15/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センシング方法であって、
(a)ミリメートル波自動車用レーダを用意するステップであって、前記ミリメートル波自動車用レーダは、
(i)1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置、
(ii)ルーネブルグ・レンズ、
(iii)前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置に動作可能に結合された複数のアンテナ・フィード素子、及び
(iv)前記複数のアンテナ・フィード素子及び前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置に動作可能に結合された1つ又は複数の処理要素
を備える、ステップと、
(b)環境の第1のスキャンを実行するステップであって、
(i)前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置を介して前記環境へ送信される1つ又は複数のワイド・ビーム・パターンを前記複数の処理要素を介して発生させるステップと、
(ii)前記1つ又は複数のワイド・ビーム・パターンと前記環境との間の相互作用から結果として生じる第1の信号セットを前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置を介して受信するステップであって、各信号は信号強度を有し、前記ルーネブルグ・レンズは、前記第1の信号セットを、それが前記複数のアンテナ・フィード素子によって受信される前に焦点に集める、ステップと、
(iii)前記第1の信号セットを前記複数の処理要素を介して処理するステップであって、処理要素によって処理された信号の前記信号強度が第1の所定の閾値を超える場合に、前記環境の特定の領域が関心領域である、ステップと
を含むステップと、
(c)各関心領域の詳細スキャンを実行するステップであって、
(i)前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置を介して各関心領域へ送信されるビームを、前記複数のアンテナ・フィード素子を介して発生させるステップと、
(ii)第2の信号セットを前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置を介して受信するステップであって、前記第2の信号セットは、前記ビームと各関心領域との間の相互作用の結果であり、前記ルーネブルグ・レンズは、前記第2の信号セットを、それが前記複数のアンテナ・フィード素子によって受信される前に焦点に集める、ステップと、
(iii)前記第2の信号セットを前記複数の処理要素を介して処理して、各関心領域についての情報を決定するステップと
を含むステップと
を含み、
マルチ・インプット・マルチ・アウトプット(「MIMO」)技法が、前記ミリメートル波自動車用レーダの角度分解能を改善させるために用いられ、前記MIMO技法は、
(d)ミリメートル波送信機ごとに1つ又は複数のミリメートル波受信機の大きさ及び位相を測定するステップと、
(e)前記ミリメートル波送信機の各々の間の異なるターゲット方向についての複数の位相差を計算するステップと、
(f)前記複数の位相差を補償するステップと、
(g)前記ルーネブルグ・レンズの出力ビーム半値幅よりも狭いスキャンニング・ビームを発生させるように異なるミリメートル波送信機からの複数のレーダの結果をコヒーレントに加え、それによって改善された角度分解能を実現するステップと
を含み、
前記スキャンニング・ビームは、ナロー・スキャンニング・ビームとして各関心領域へ送信される、センシング方法。
【請求項2】
所与の処理要素によって処理される前記信号の前記信号強度は、前記信号が1つ又は複数の関心対象と相互作用するときに、前記第1の所定の閾値を超え、前記第2の信号セットの処理により、前記1つ又は複数の関心対象についての情報をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の第1の所定の閾値は、前記ミリメートル波自動車用レーダから離れた複数の距離のうちの一距離にそれぞれある前記1つ又は複数の関心対象の存在を検出するように前記複数の距離について設定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置は、1つ又は複数のミリメートル波受信機及び1つ又は複数のミリメートル波送信機である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数のワイド・ビーム・パターン及前記ナロー・スキャンニング・ビームは、ミリメートル波スペクトルの1つ又は複数のチャンネルを通じて前記環境へ送信され、オポチュニティー・スペクトル・アクセス(「OSA」)は、所与の期間についての前記1つ又は複数のチャンネルの利用可能性を決定するために評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
部分観測マルコフ決定過程は、前記ミリメートル波自動車用レーダについての前記OSAを評価するために使用される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
干渉抑制技法が、前記第1及び第2の信号セットを含む受信信号から干渉を除去するために適用され、前記干渉抑制技法は、前記受信信号の時間ドメイン内で実行され
記受信信号の振幅を測定するステップと、
前記振幅が第2の所定の閾値を超えるか判定するステップと
記第2の所定の閾値を超える前記受信信号の前記振幅の一部を削るステップと
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)は、決定された回数反復され、各反復は更に、いくつかの前記関心領域を狭くし、より詳細に各関心領域についての情報をもたらし、又はいくつかの前記関心領域を狭くしてより詳細に各関心領域についての情報をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
各処理要素はメモリを備え前記メモリは、前記メモリに記憶されている1つ又は複数の命令セットを実行するプロセッサに動作可能に結合され、前記1つ又は複数の命令セットは、前記1つ又は複数のワイド・ビーム・パターン及び前記ナロー・スキャンニング・ビームを発生させることと、前記第1の信号セット及び前記第2の信号セットを処理することと、前記MIMO技法及び干渉抑制技法を実行することとを含み、前記メモリは、複数の前記第1の所定の閾値、及び前記第2の所定の閾値を更に記憶している、請求項に記載の方法。
【請求項10】
ミリメートル波自動車用レーダであって
つ又は複数のミリメートル波送受信機装置と
リメートル波範囲内に周波数の上限を有するルーネブルグ・レンズと
記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置に動作可能に結合された複数のアンテナ・フィード素子であって、前記ルーネブルグ・レンズの表面に取り付けられ、決定された方向にそれぞれ位置決めされる、複数のアンテナ・フィード素子と
記複数のアンテナ・フィード素子及び前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置に動作可能に結合された1つ又は複数の処理要素と
を備え
環境の粗スキャンは、前記1つ又は複数の処理要素によって発生させられる1つ又は複数のワイド・ビーム・パターンを介して実行され、前記1つ又は複数のワイド・ビーム・パターンは、前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置を介して前記環境へ送信され、第1の信号セットは、前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置によって受信され、前記第1の信号セットは、1つ又は複数の関心領域を決定するように前記1つ又は複数の処理要素によって処理され、
次いで、詳細スキャンは、ナロー・スキャンニング・ビームを発生させ送信し、前記1つ又は複数の関心領域をスキャンすることによって実行され、これによって前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置により受信される第2の信号セットになり、前記第2の信号セットは、各関心領域についての情報を決定するように前記1つ又は複数の処理要素を介して処理され、
前記ルーネブルグ・レンズは、前記第1及び第2の信号セットを、それらが前記複数のアンテナ・フィード素子によって受信される前に焦点に集め、この焦点集めにより、従来の平面フェイズド・アレイと比べて前記ミリメートル波自動車用レーダの信号対雑音比、角度分解能、処理速度、及び検出範囲の改善となり、
前記粗スキャンの実行、及び続く前記詳細スキャンの実行は、前記粗スキャンが前記詳細スキャンの前記ナロー・スキャンニング・ビームを介してセンシングの結果を更新するときに、前記環境に従って空間センシング・パターン、掃引周波数帯域、パルス繰返し周波数、及びコヒーレント処理間隔を適応的に調整することができる、ミリメートル波自動車用レーダ。
【請求項11】
前記第1の信号セットの各信号は、信号強度を有し、処理要素によって処理された信号の前記信号強度が第1の所定の閾値を超える場合に、前記環境の特定の領域が前記1つ又は複数の関心領域のうちの一関心領域であり
記信号強度は、1つ又は複数の関心対象が前記特定の領域内にあるときに、前記第1の所定の閾値を超え
記第2の信号セットを処理することにより、前記1つ又は複数の関心対象についての情報がもたらされ
数の第1の所定の閾値は、前記ミリメートル波自動車用レーダから離れた複数の距離のうちの一距離にそれぞれある前記1つ又は複数の関心対象の存在を検出するように前記複数の距離について設定され、
1つ又は複数のミリメートル波受信機及び1つ又は複数のミリメートル波送信機は、前記1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置の代わりに使用される、
請求項1に記載のミリメートル波自動車用レーダ
【請求項12】
前記1つ又は複数のワイド・ビーム・パターン及び前記ナロー・スキャンニング・ビームは、ミリメートル波スペクトルの1つ又は複数のチャンネルを通じて前記環境へ送信され、オポチュニティー・スペクトル・アクセス(「OSA」)は、所与の期間についての前記1つ又は複数のチャンネルの利用可能性を決定するために評価される、請求項1に記載のミリメートル波自動車用レーダ
【請求項13】
干渉抑制技法が、前記第1及び第2の信号セットを含む受信信号から干渉を除去するために適用され、前記干渉抑制技法は、前記受信信号の時間ドメイン内で実行され、
前記受信信号の振幅を測定するステップと、
前記振幅が第2の所定の閾値を超えるか判定するステップと、
前記第2の所定の閾値を超える前記受信信号の前記振幅の一部を削るステップと
を含む、請求項11に記載のミリメートル波自動車用レーダ。
【請求項14】
各処理要素はメモリを備え前記メモリは、前記メモリに記憶されている1つ又は複数の命令セットを実行するプロセッサに動作可能に結合され、前記1つ又は複数の命令セットは、前記1つ又は複数のワイド・ビーム・パターン及び前記ナロー・スキャンニング・ビームを発生させることと、前記第1の信号セット及び前記第2の信号セットを処理することと、マルチ・インプット・マルチ・アウトプット(MIMO技法及び干渉抑制技法を実行することとを含み、前記メモリは、前記複数の第1の所定の閾値、及び前記第2の所定の閾値を更に記憶している、請求項1に記載のミリメートル波自動車用レーダ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリント・ルーネブルグ・レンズ式のミリメートル波レーダを用いて自律型自動車の周囲環境を適応センシングする方法、及びこのレーダの干渉を緩和させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年まで、自律型輸送は、サイエンス・フィクションの中に存在しているものにすぎなかった。いくつかのわくわくさせる実験が示されたことで、自動運転の自動車が現実のものにより近づいていることが明らかである。米国における2億5000万台を超える自動車、及び世界中の12億台の自動車について考えると、自律型輸送は、政府、民間産業、及び個別消費者等のステークホルダを含む巨大エマージング市場を表す。必要に応じて現実のものとなる自律型輸送については、高性能、高信頼性、及び手ごろさを伴うセンサ・システムが必要である。現在、レーダ、ライダー、超音波、及びカメラ式のセンサ等のいくつかの技術が、自動車センシング応用に利用されている。しかしながら、既存のシステムは、分解能、感度、全天候性、及び手ごろさを欠くことにより、複雑なシナリオにおける自律運転に十分なものはない。
【0003】
本発明は、自律運転の難しい要件を満足する重要なセンサ・ソリューションを示し得る高い角度分解能(<2°)、長い検出範囲(>200m)、及び自動車の周囲の全カバーを伴う新規なミリメートル波(30~300GHz)のレーダ(76~81GHz)の調査及び開発を提案する。提案されたレーダは、革新的なハードウェア(3次元(「3D」)プリンティングが使用可能なルーネブルグ・レンズ)及び高度センシング(適応レーダ技法)と干渉回避及び高速処理能力とを兼ね備えている。それは、コンパクトなサイズ及び手ごろなコストを維持しつつ、10ミリ秒内で自動車の周囲の全ての移動中のターゲット及び静止ターゲットを位置特定し認識するのに十分な感度及び分解能(角度、範囲、及びドップラー/速度)を有する。
【0004】
超音波センサと比較して、ミリメートル波レーダは、より小型のサイズ、より軽い重量、より高い分解能、及びより長い範囲という利点を有する。ライダー及びカメラ式のセンサと比較して、ミリメートル波レーダは、雨、雪、霧、煙、及び土埃を通り抜ける際にずっと良い性能を有し、自律運転にとって欠くことができないより高い信頼性をもたらす。ライダーは全ての既存のセンサの中で最高の分解能をもたらし、現在の自律型自動車のプロトタイプの大部分に使用されているが、ライダーはコストが高く、荒天に対して不利に応答することが主要な欠点である。
【0005】
屈折率勾配を有する3Dルーネブルグ・レンズは、多くの無線センシング及び通信応用にとって非常に望ましい高いゲイン、広帯域の機能性、及び複数のビームを同時に形成する能力という利点を有する。しかしながら、ルーネブルグ・レンズを作るための従来の製造方法は、時間がかかり、費用がかかり、又は2Dレンズを造るために使用できるものにすぎない。結果として、商業的に利用可能な3Dルーネブルグ・レンズのための周波数の上限は、わずか10GHzであり、ミリメートル波レーダに適していない。本発明は、ミリメートル波の範囲内で動作する3Dプリント・ルーネブルグ・レンズを利用する。そのようなレンズの例示的な製造技法は、非特許文献1に開示されている。従来の製造技法と比較して、Xinの3Dプリント手法は、よりずっと便利であり、高速であり、安価であり、且つミリメートル波の範囲内でルーネブルグ・レンズを実装可能である。
【0006】
3Dプリント・ルーネブルグ・レンズ表面上にフィーディング素子(例えば、アンテナ)を取り付けることによって、フィーディング素子が非平坦面に取り付けられているので、高性能なビーム・ステアリングが実行できる。今日使用されている従来の平面フェイズド・アレイ・レーダと比較して、提案されたルーネブルグ・レンズ式のレーダは、かなり改善されたゲイン及びより鋭いビームを有し、同じ個数のフィーディング素子を用いてずっと良いSNR(>2倍)、角度分解能(>2倍)、及び検出範囲をもたらす。また、ルーネブルグ・レンズが球対称なことにより、提案されたレーダは、従来の平面フェイズド・アレイ・レーダと同じ性能動作で、全ての方位角及び仰角をカバーすることができ、したがって遠距離、中距離、及び近距離範囲のハードウェアに分離する必要性がない。更に、ルーネブルグ・レンズの球状の集光特性により、従来の平面アレイ・レーダと比較して角度評価における計算コストが大いに減少することが可能になる。その結果、処理時間は、特に広い視野域について高い角度分解能を有する、この新規なルーネブルグ・レンズ式の構成を用いて大いに減少させられ得る。ルーネブルグ・レンズ・アレイの特徴的な広帯域幅及びナチュラル・ビームの形成を用いて、本発明のルーネブルグ・レンズ式のレーダは、環境に従ってその空間センシング・パターン、掃引周波数帯域、パルス繰返し周波数、及びコヒーレント処理間隔を適応的に調整することができる。
【0007】
本明細書に記載された任意の特徴又は特徴同士の組合せは、文脈、本明細書、及び当業者の知識から明らかであるように任意のそのような組合せに含まれた特徴が相互に一貫性があるならば、本発明の範囲内に含まれる。本発明の追加の利点及び態様は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲において明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2007/0296640号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0158369号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】“A 3D Luneburg Lens Antenna Fabricated by Polymer Jetting Raped Prototyping,” Xin, et. al.
【文献】Liang, M., Ng, W. R., Chang, K., Gbele, K., Gehm, M. E., & Xin, H. (2014). A 3-D luneburg lens antenna fabricated by polymer jetting rapid prototyping. IEEE Transactions on Antennas and Propagation, 62(4), 1799-1807. [6698375]. DOI:
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要するに、本発明の目的は、より効率的なレーダ・センシング・システムを提供することである。本発明の実施例は、自律型自動車の周囲の複数の特定の領域を含む環境をスキャンニングする適応センシング方法を特徴とする。いくつかの実施例では、方法は、ミリメートル波自動車用レーダを用意することを含む。他の実施例では、ミリメートル波自動車用レーダは、1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置と、ミリメートル波範囲内に周波数の上限を有する3Dプリント・ルーネブルグ・レンズと、1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置に動作可能に結合された複数のアンテナ・フィード素子と、複数のアンテナ・フィード素子に動作可能に結合された1つ又は複数の処理要素とを備える。一実施例では、複数のアンテナ・フィード素子は、3Dプリント・ルーネブルグ・レンズの表面に取り付けられるとともに、決定された方向にそれぞれ位置決めされる。別の実施例では、各処理要素は、複数の特定の領域の特定の領域から生じる所与の信号を処理する。
【0011】
さらなる実施例では、環境の粗スキャンは、ミリメートル波自動車用レーダを介して実行される。好ましい実施例では、粗スキャンは、
(i)1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置によって環境へ送信される1つ又は複数のワイド・ビーム・パターンを複数の処理要素を介して発生させるステップと、
(ii)1つ又は複数のワイド・ビーム・パターンと環境との間の相互作用から結果として生じる第1の信号セットを1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置を介して受信するステップであって、第1の信号セットが、複数のアンテナ・フィード素子によってそれが受信される前に3Dプリント・ルーネブルグ・レンズによってフォーカスされる、受信するステップと、
(iii)信号の信号強度が第1の所定の閾値を超える場合に、処理要素の特定の領域が関心領域とみなされる第1の信号セットを複数の処理要素を介して処理するステップと、を含む。
【0012】
追加の実施例では、次いで、
(i)1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置を介して各関心領域へ送信されるナロー・スキャンニング・ビームを、複数処理要素を介して発生させるステップと、
(ii)ナロー・ビームと各関心領域との間の相互作用から結果として生じる第2の信号セットを、複数のミリメートル波送受信機装置を介して受信するステップであって、3Dプリント・ルーネブルグ・レンズは、複数のアンテナ・フィード素子によってそれが受信される前に、第2の信号セットをフォーカスするステップと、
(iii)第2の信号セットを複数の処理要素を介して処理して各関心領域についての情報を決定するステップと、
を含む詳細スキャンが実行される。
【0013】
処理前に第1及び第2の信号セットをデジタル処理する3Dプリント・ルーネブルグ・レンズの使用により、従来の平面フェイズド・アレイと比べて信号対雑音比、角度分解能、検出範囲、及びより高速な処理が改善する結果となる。更に、粗スキャンの実行、及び続いて詳細スキャンの実行により、環境に従って空間センシング・パターン、引周波数帯域、パルス繰返し周波数、及びコヒーレント処理間隔を適応的に調整する。
【0014】
いくつかの実施例では、方法は、オポチュニティー・スペクトル・アクセス(「OSA」)を評価するためにある期間にわたって利用可能であるミリメートル波スペクトルのチャンネルを決定するステップを更に含む。他の実施例では、部分観測可能マルコフ決定過程(「POMDP」)は、OSAを評価するために使用される。ミリメートル波スペクトルの周波数帯域は、複数のチャンネルに分割され、POMDPは、チャンネルの利用可能性を説明するために使用される。過去の干渉の観測に従って、POMDPは、近い将来における所与のチャンネル中の干渉の存在を予測する。利用可能なチャンネルは、干渉の確率が低いチャンネルと考えられる。
【0015】
自律型自動車に使用するためのレーダの角度分解能(すなわち、空間分解能)を改善するシステム及び方法は、様々な特許の対象となっている。しかしながら、これらのシステム及び方法は、レーダの設計の複雑さがかなり増大することを一貫して要し、これによりコスト及び信号処理の負担が増大する。例えば、特許文献1は、長い範囲及び短い範囲の自動車用レーダ検出に用いるために球状の共有型誘電体レンズを利用するマルチビーム・アンテナを詳述する。所定の位置にあるレンズの表面に結合された導波路フィードが、選択された周波数で電磁波を伝搬させる。誘電体レンズ及び導波路フィードは、サイズ及びシステムのサイズの複雑さをかなり増大させ、したがって、高い製造コストを必要とする。更に、導波路フィードの大きいサイズは、高い角度分解能の実現を阻害する。
【0016】
更に、特許文献2は、自律運転に使用するためのミリメートル波自動車用レーダを記載している。レーダは、送信用アンテナ及び2つの受信用アンテナが配置されているアンテナ板と、基準方向に対してターゲットの方位角を検出するプロセッサとからなる。角度の有効範囲の改善の必要性は、ここでも対処されているが、設計の複雑さの増大が犠牲になっている(回転アンテナ板を動作させるモータを必要とする)。
【0017】
したがって、自律型自動車に使用するためのレーダのスキャンニング分解能を改善する技術的な問題は、ほとんどないし全くコストなしで、残っている。本発明のルーネブルグ・レンズ式のミリメートル波自動車用レーダは、ミリメートル波の範囲内に周波数の上限を有するルーネブルグ・レンズの高ゲイン、広帯域の機能性、及び同時に複数のビームを形成する能力として技術的解決策を提供し、かなり改善されたゲイン及びより鋭いビームを提供し、改善された角度分解能(>2倍)をもたらす。この改善は、同じ個数のフィーディング素子が要求されるときに、設計の複雑さの増大なしで取得される。また、本発明は、送受信機装置の個数の増加を必要とすることなく、本ミリメートル波自動車用レーダの角度分解能を更に改善させるマルチ・インプット・マルチ・アウトプット(「MIMO」)技法も特徴とする。
【0018】
更に、本ミリメートル波自動車用レーダを介して実行される提案された適応センシング方法は、従来のレーダと比べて(環境の複雑さに応じて)2~10倍の間の(スキャン速度に直接関連している)改善されたスキャンニング効率を示している。
【0019】
本発明の特徴及び利点は、添付図面に関連して示された以下の詳細な説明を検討することにより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本ミリメートル波自動車用レーダの例示的な図である。
図2】例示的な実施例による本ミリメートル波自動車用レーダのスキャンニング手順を詳述する流れ図である。
図3】本発明のミリメートル波自動車用レーダによって用いられる適応センシング方法の図である。
図4】干渉を予測するのに使用される動的スペクトル・アクセス方法の図である。
図5A】検出された対象と使用中のレーダとの間の角度を計算する際の、従来のレーダ・センシングと本ミリメートル波自動車用レーダとの間のレーダ出力の比較の一例を示す図であって、ターゲット1は0度に位置し、レーダから200メートル離れており、ターゲット2は30度に位置し、レーダから50メートル離れており、ターゲット3は-45度に位置し、レーダから150離れている図である。
図5B】検出された対象と使用中のレーダとの間の角度を計算する際の、従来のレーダ・センシングと本ミリメートル波自動車用レーダとの間のレーダ出力の比較の一例を示す図であって、ターゲット1は0度に位置し、レーダから200メートル離れており、ターゲット2は30に位置し、レーダから50メートル離れており、ターゲット3は-45度に位置し、レーダから150離れている図である。
図6】従来の方法を用いて得られる結果と比較した本適応センシング方法の結果を示す。本適応センシング方法の結果は、従来の自律型自動車レーダと比べてセンシングの結果を得るのにより少ないサンプルを必要とする図である。
図7】各送信機/受信機が環境のある角度エリアをカバーする本ミリメートル波自動車用レーダの概略図である。
図8】適応センシング方法のための空間センシング・パターンの一例を示す図である。
図9A】本適応センシング方法を適用しないで本ミリメートル波自動車用レーダによって生成されたターゲット画像を示す図である。
図9B】本適応センシング方法を適用する本ミリメートル波自動車用レーダによって生成されたターゲット画像を示す図である。
図10】2つの信号が交わるときに発生する干渉を示す図である。
図11A】干渉前の検出された受信信号を示す図である。
図11B】干渉が存在中の検出された受信信号を示す図である。
図11C】干渉信号が削られた後の検出された受信信号を示す図である。
図12A図11Aの検出された受信信号の範囲/ドップラーの結果を示すグラフである。
図12B図11Bの検出された受信信号の範囲/ドップラーの結果を示すグラフである。
図12C図11Cの検出された受信信号の範囲/ドップラーの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図1図12Cを参照すると、本発明は、自律型自動車の周囲の複数の特定の領域を含む環境をスキャンニングする適応センシング方法を特徴として備えている。いくつかの実施例では、この方法は、ミリメートル波自動車用レーダを用意することを含む。他の実施例では、ミリメートル波自動車用レーダは、1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置と、ミリメートル波範囲内に周波数の上限を有する3Dプリント・ルーネブルグ・レンズと、1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置に動作可能に結合された複数のアンテナ・フィード素子と、複数のアンテナ・フィード素子及び送受信機装置に動作可能に結合された1つ又は複数の処理要素とを備える。代替実施例では、1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置は、それぞれ別々の送信機及び受信機である。一実施例では、複数のアンテナ・フィード素子は、3Dプリント・ルーネブルグ・レンズの表面に取り付けられるとともに、決定された方向にそれぞれ位置決めされる。別の実施例では、1つ又は複数の処理要素は、複数の特定の領域の特定の領域から生じる所与の信号を処理する。
【0022】
さらなる実施例では、環境の粗スキャンは、ミリメートル波自動車用レーダを介して実行される。好ましい実施例では、粗スキャンは、
(i)1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置によって環境へ送信される1つ又は複数のワイド・ビーム・パターンを複数の処理要素を介して発生させるステップ(202)と、
(ii)複数のワイド・ビーム・パターンと環境との間の相互作用から結果として生じる第1の信号セットであって、複数のアンテナ・フィード素子によってそれが受信される前に3Dプリント・ルーネブルグ・レンズによってフォーカスされる第1の信号セットを、複数のアンテナ・フィード素子を介して受信するステップ(203)と、
(iii)信号の信号強度が第1の所定の閾値を超える場合に、処理要素の特定の領域が関心領域とみなされる第1の信号セットを複数の処理要素を介して処理するステップ(205)と、を含む。
【0023】
追加の実施例では、次いで、
(i)1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置を介して各関心領域へ送信されるナロー・スキャンニング・ビームを複数のアンテナ・フィード素子を介して発生させるステップ(206)と、
(ii)第2の信号セットを1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置を介して受信するステップ(208)であって、第2の信号セットは、ナロー・スキャンニング・ビームと各関心領域との間の相互作用の結果であり、3Dプリント・ルーネブルグ・レンズは、複数のアンテナ・フィード素子によってそれが受信される前に第2の信号セットをフォーカスする(207)ステップと、
(iii)第2の信号セットを複数の処理要素によって処理して各関心領域についての情報を決定するステップ(209)と、
を含む各関心領域の詳細スキャンが実行される。
処理前に第1及び第2の信号セットをデジタルフォーカスするための3Dプリント・ルーネブルグ・レンズの使用により、従来の平面フェイズド・アレイと比較してミリメートル波自動車用レーダの信号対雑音比、角度分解能、検出範囲、及び処理速度の改善という結果になる。更に、粗スキャンを実行し、続いて詳細スキャンを実行することにより、粗スキャンが詳細スキャンのナロー・スキャンニング・ビームを介してセンシングの結果を更新するときに、環境に従って空間センシング・パターン、掃引周波数帯域、パルス繰返し周波数、及びコヒーレント処理間隔を適応的に調整する。
【0024】
補足の実施例では、所与の処理要素によって処理される信号の信号強度は、信号が1つ又は複数の関心対象ときに相互作用するときに、第1の所定の閾値を超える。このようにして、環境中の対象のセンシングは達成される。第2の信号セットの処理により、ミリメートル波自動車用レーダによってセンシングされた1つ又は複数の関心対象についての情報をもたらす。
【0025】
いくつかの実施例では、複数の第1の所定の閾値は、ミリメートル波自動車用レーダから離れた距離にそれぞれある1つ又は複数の関心対象の存在を検出するように複数の距離について設定される。
【0026】
一実施例では、1つ又は複数のミリメートル波受信機及び1つ又は複数のミリメートル波送信機は、1つ又は複数のミリメートル波送受信機装置の代わりに使用される。
【0027】
他の実施例では、MIMO技法が、ミリメートル波自動車用レーダの角度分解能を改善するために用いられる。さらなる実施例では、MIMO技法は、ミリメートル波送信機ごとに1つ又は複数のミリメートル波受信機の大きさ及び位相を測定するステップと、1つ又は複数のミリメートル波送信機の各々の間の異なるターゲット方向についての複数の位相差を計算するステップとを含む。次いで、複数の位相差が補償され得、(1つ又は複数のミリメートル波送信機の)異なるミリメートル波送信機からの複数のレーダ結果は、3Dプリント・ルーネブルグ・レンズの出力ビーム半値幅よりも狭いスキャンニング・ビームを発生させるようにコヒーレントに加えられ、それによって改善された角度分解能を実現する。次いで、スキャンニング・ビームは、ナロー・スキャンニング・ビームとして各関心領域へ送信することができる。前述したように、MIMO技法は、所与の個数の受信機装置のためにミリメートル波自動車用レーダの角度分解能を改善するのに有効である。代替実施例では、MIMO技法は、所与の角度分解能に必要とされる送受信機装置の個数を減少させるように適用され得る。従来の平面アレイ・レーダの角度発見方法と本ミリメートル波自動車用レーダの角度発見方法の出力された比較が、図5に示されている。
【0028】
追加の実施例では、1つ又は複数のワイド・ビーム・パターン及びナロー・スキャンニング・ビームは、ミリメートル波スペクトルの1つ又は複数のチャンネル(或いは、代替として、周波数帯域)を通じて環境へ送信され得る。好ましい実施例では、OSAは、所与の期間についての1つ又は複数のチャンネルの利用可能性を決定するために評価される。いくつかの実施例では、POMDPを使用してOSAを評価する。POMDPは、チャンネルの利用可能性を説明するために使用される。過去の干渉の観測に従って、POMDPは、近い将来における所与のチャンネル中の干渉の存在を予測する。利用可能なチャンネルは、干渉の確率が低いチャンネルである。
【0029】
一実施例では、続くナロー・スキャンニング・ビームが、決定された反復回数にわたって関心領域へ送信される。各反復は、いくつかのかの関心領域を更に狭くする、及び/又はより詳細に各関心領域についての情報をもたらすことができる。
【0030】
補足の実施例では、干渉抑制技法は、任意の受信信号から干渉を除去するように用いられる。いくつかの実施例では、受信信号は、第1の信号セット、2の信号セット、又は関心領域への続くナロー・スキャンニング・ビームの送信から結果として生じる信号であり得る。典型的には、本ミリメートル波自動車用レーダは、線形周波数変調された波形を送信信号として用いる(図10参照)。干渉は、侵入者レーダの信号がこれらの送信信号と交わるときに生じる。干渉は、受信信号を処理するときに、本適応センシング方法に偽のターゲットを検出させ、雑音フロアを増加させ、又は実際のターゲットを見逃させてしまう可能性がある。この干渉を抑制する1つのやり方は、時間ドメイン内で受信信号を削ることである。干渉は、侵入者の信号が本レーダの送信信号と交わるときにのみ存在することに留意されたい。典型的には、干渉は、図11Bに示されるように短い持続期間と、受信信号よりもかなり高い振幅とを有するものであり、(共に距離に対して)これは受信信号の出力が4の累乗だけ減少する一方、干渉の出力は、2の累乗だけ減少するからである。例示的な実施例では、干渉抑制技法は、時間ドメイン内で実行され、
(i)受信信号の振幅を測定するステップと、
(ii)振幅が第2の所定の閾値を超えるか判定するステップと、
(iii)第2の所定の閾値を超える受信信号の振幅の一部を削るステップと、を含む。
【0031】
さらなる実施例では、各処理要素は、ロセッサに動作可能に結合されたメモリを備え、メモリに記憶されている1つ又は複数の命令セットを実行する。一実施例では、1つ又は複数の命令セットは、1つ又は複数のワイド・ビーム・パターン、及びナロー・スキャンニング・ビームを発生させることと、第1の信号セット及び第2の信号セットを処理することと、MIMO技法及び干渉技法を実行することとを含む。別の実施例では、メモリは、複数の第1の所定の閾値、及び第2の所定の閾値を更に記憶している。
【0032】
いくつかの実施例では、ミリメートル波自動車用レーダに対しての検出された対象の角度は、第1の信号セットの振幅値及び複数の処理要素の較正された感度ファクタを用いて検出される。ルーネブルグ・レンズの球状の集光特性の結果として、角度発見の計算コストは、(角度発見計算における高速フーリエ変換(「FFT」)を用いる)平面アレイを使用する従来のレーダ・システムと比較して大いに減じられる。従来のレーダ・システムについては、角度発見手法は、異なる受信機(代替として、素子)間の測定された位相差に基づく。N個の素子平面アレイ・レーダ・システムの場合、FFTを用いる角度発見技法における計算コストは、N*log(N)に比例している。本ルーネブルグ・レンズ式のミリメートル波自動車用レーダに関しては、異なる方向からの電磁波(例えば、受信信号)がレンズによってフォーカスされるので、角度発見手順は、ずっとより簡単になる。正確な角度発見の結果は、各受信機の測定された振幅値及び較正された感度ファクタから直接得ることができる。N個の素子のルーネブルグ・レンズミリメートル波レーダの場合、計算コストは、Nに比例し、これは従来のレーダ・システムよりもずっと高速である。例えば、16個の素子のルーネブルグ・レンズ式のレーダの場合、処理時間は、同じ個数の素子を有する従来のレーダよりも少なくとも4倍速くなる。評価によって、1ミリ秒未満の計算時間が、本レーダを用いた角度発見に必要とされる。本ミリメートル波自動車用レーダの角度発見技法は、振幅に基づくので、受信機素子間の相違を補償する較正が、角度発見結果を改善するために実行されてもよい。
【0033】
POMDPの詳細
N個の周波数帯域は、M=2状態を有する離散時間マルコフ連鎖によってモデル化することができ、ただし、この状態は、各帯域の利用可能性として定義されている。遷移確率p(k)ijは、
【数1】

から容易に得ることができ、ただし、kは干渉レーダの波形のタイプを表し、αはビジーからアイドルへのチャンネルの確率を表し、アイドルからビジーへのチャンネルの確率を表わし、i及びjは、異なるチャンネルを表す。N=2の状態図は、図4に示されており、ただし、
【数2】

であり、状態{1,0}は、第1の帯域が利用可能である一方、第2の帯域は混雑していることを示す。時間スロットごとに、ユーザは、信号を送信するとともに干渉を決定する1つの帯域を選択することしかできないので、ミリメートル波スペクトルの状態は、部分的に可観測であるにすぎない。n(n=1,...,T)とすることにより、残りの決定間隔の数を示す。T個の時間スロットにわたっての有限水平POMDPについて、残りのn個の決定間隔における性能を最適化する時間スロットT-n+1及びアクションaが選択される。情報ベクトルπの動的挙動は、離散時間連続状態マルコフ過程である。ミリメートル波スペクトルの状態に関する所与の従前の情報π、現在の知識π’、アクションa下の観測後θは、ベイズ則
【数3】

によって容易に得ることができ、ただし、前の式は、観測θ及びアクションαに基づくπからの更新された情報ベクトルである。
【0034】
実験の詳細
本ミリメートル波自動車用レーダの詳細な実施例では、Infineonからの送信機(RPN7720、10dBmの出力パワー)及び受信機(RRN7745、14dBの雑音指数)のチップが使用された。ルーネブルグ・レンズのゲインが23dBであると仮定すると、受信機における受信信号は、関心対象が10mのレーダ断面積(「RCS」)を有するとともに、30MHzのレーダ・システム帯域幅を有するレーダ(自動車についての典型的なRCSは約100mである)から20メートル離れているときに、P=P・G・σ・λ/(4π)・R=-67dBmである。熱雑音、及び典型的な14dBの受信機雑音指数を考慮すると、信号対雑音比は、受信機チャンネルにおいて18dBになる。レーダから100メートルで1mのRCS(歩行者にとって典型的なRCS)を有する対象に関して最悪な場合のシナリオは、26dBのゲインを必要とする。
【0035】
図9A図9Bは、本適応センシング方法を適用した状態又は適用しない状態で本ミリメートル波自動車用レーダが発生したターゲット画像を示す。この例では、処理時間は、本適応センシング方法を用いて10分の1だけ短縮される。
【0036】
本明細書に使用されるとき、用語「約(about)」は、参照された数字のプラス又はマイナス10%を指す。
【0037】
本明細書で説明されたものに加えて、本発明の様々な修正例は、前述の説明から当業者に明らかである。そのような修正例は、添付の特許請求の範囲内に含まれることがやはり意図されている。本出願に引用された各参考文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
本発明の好ましい実施例を図示及び説明してきたが、添付の特許請求の範囲を超えない修正がそれになされてもよいことは当業者に容易に明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって限定されるものにすぎない。特許請求の範囲に挙げられた参照番号は、例示的であり、特許庁が審査しやするするためのものにすぎず、形はどうであれ限定されない。いくつかの実施例では、本特許出願に示された図は、角度、寸法の割合等を含めて原寸に比例しない。いくつかの実施例では、図は、代表的なものにすぎず、特許請求の範囲は、図の寸法によって限定されない。いくつかの実施例では、本明細書に記載した本発明の説明は、「備える、含む(comprising)」という語句を用いることは、「からなる(consisting of)」として記載されてもよい実施例を含み、したがって、語句「からなる」を用いた本発明の1つ又は複数の実施例を特許請求するための明細書の記載要件は満たされている。
【0039】
添付の特許請求の範囲に挙げられた参照番号は、本特許出願の審査を簡単にするためのものにすぎず、例示的であり、形はどうであれ、特許請求の範囲を図面中に対応する参照番号を有する特定の特徴に限定することは意図されていない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C