IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧 ▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

特許7104028リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法
<>
  • 特許-リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法 図1
  • 特許-リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法 図2
  • 特許-リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法 図3
  • 特許-リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法 図4
  • 特許-リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法 図5
  • 特許-リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法 図6
  • 特許-リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法 図7
  • 特許-リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法 図8
  • 特許-リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法 図9
  • 特許-リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20220712BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220712BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220712BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20220712BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220712BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/36 C
H01M10/0585
H01M10/052
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019513704
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2018016338
(87)【国際公開番号】W WO2018194163
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2017084620
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 卓也
(72)【発明者】
【氏名】川北 健一
(72)【発明者】
【氏名】草地 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】大澤 康彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一
(72)【発明者】
【氏名】赤間 弘
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-067508(JP,A)
【文献】特開2017-098235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/36
H01M 10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用電極活物質と電解液とを含む組成物を成形してリチウムイオン電池用電極活物質の非結着体であるリチウムイオン電池用電極活物質成形体を得る成形工程を含み、
前記組成物の電解液含有量が前記組成物の重量を基準として0.1~40重量%であり、
前記成形工程では、底面及び側面を有する型内に前記型の底面全体と前記型の側面の少なくとも一部を覆うようにセパレータを配置し、前記組成物をセパレータが配置された前記型内に充填して成形することによって、前記組成物を成形するとともに、前記組成物のうち前記型の底面に対応する面の全部と前記型の側面に対応する面の少なくとも一部を前記セパレータにより連続的に覆うことを特徴とするリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法。
【請求項2】
前記リチウムイオン電池用電極活物質は、表面の少なくとも一部が被覆用樹脂を含む被覆剤で被覆された被覆活物質である請求項1に記載のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法。
【請求項3】
前記組成物に含まれる前記リチウムイオン電池用電極活物質の重量割合が、組成物の固形分重量の合計に基づいて、80~100重量%である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法により製造されたリチウムイオン電池用電極活物質成形体を、少なくとも一部に収容部が形成された電池外装体の前記収容部内に配置し、前記電極活物質成形体を前記電池外装体と一体化させて電極構造体を準備する組み合わせ工程を含むことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項5】
前記成形工程において、前記リチウムイオン電池用電極活物質が正極活物質である正極活物質成形体及び前記リチウムイオン電池用電極活物質が負極活物質である負極活物質成形体をそれぞれ得て、
前記組み合わせ工程において、前記正極活物質成形体を正極外装体と一体化させた正極構造体と、前記負極活物質成形体を負極外装体と一体化させた負極構造体を準備し、
さらに、前記正極構造体と、前記負極構造体とを、前記正極活物質成形体と前記負極活物質成形体とがセパレータを介して対向するよう配置し、前記正極外装体と前記負極外装体とを封止する封止工程を行う請求項に記載のリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法により製造されたリチウムイオン電池用電極活物質成形体を電池外装体内に収容する収容工程を備えるリチウムイオン電池の製造方法であって、
前記成形工程において、前記リチウムイオン電池用電極活物質が正極活物質である正極活物質成形体と、前記リチウムイオン電池用電極活物質が負極活物質である負極活物質成形体とを準備し、
前記収容工程において、前記正極活物質成形体と前記負極活物質成形体とがセパレータを介して配置された電池単位構成体が、複数個、並列又は直列に接続されるように前記正極活物質成形体及び前記負極活物質成形体を前記電池外装体内に収容することを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びリチウムイオン電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(二次)電池は、高容量で小型軽量な二次電池として、近年様々な用途に多用されている。このようなリチウムイオン電池の製造方法の一例として、シート状の正極及び負極集電体の表面にそれぞれ正極活物質層及び負極活物質層を形成して、これら正極活物質層及び負極活物質層の間にセパレータ層を介在させ、正極及び負極集電体の周縁部を絶縁材料を介して接合する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-260739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のリチウムイオン電池の製造方法では、シート状の集電体の表面に、活物質がバインダにより固定された活物質層を形成する工程が必要であり、かかる工程は、集電体の表面に活物質とバインダを非水溶媒中に分散させたスラリーを塗布した後、乾燥、焼結等することにより行われているので、活物質層を形成する工程に手間を要していた。また、スラリー中の非水溶媒を回収する必要があることから、製造工程、製造装置の簡略化が困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、製造に係る時間、労力、設備等を抑制することのできるリチウムイオン電池の製造に適したリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法及びこれを用いたリチウムイオン電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、リチウムイオン電池用電極活物質と電解液とを含む組成物を成形してリチウムイオン電池用電極活物質の非結着体であるリチウムイオン電池用電極活物質成形体を得る成形工程を含み、
上記組成物の電解液含有量が上記組成物の重量を基準として0.1~40重量%であることを特徴とするリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法、この製造方法により製造されたリチウムイオン電池用電極活物質成形体を、少なくとも一部に収容部が形成された電池外装体の上記収容部内に配置し、上記電極活物質成形体を上記電池外装体と一体化させて電極構造体を準備する組み合わせ工程を含むことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法、及び、この製造方法により製造されたリチウムイオン電池用電極活物質成形体を電池外装体内に収容する収容工程を備えるリチウムイオン電池の製造方法であって、上記成形工程において、上記リチウムイオン電池用電極活物質が正極活物質である正極活物質成形体と、上記リチウムイオン電池用電極活物質が負極活物質である負極活物質成形体とを準備し、上記収容工程において、上記正極活物質成形体と上記負極活物質成形体とがセパレータを介して配置された電池単位構成体が、複数個、並列又は直列に接続されるように上記正極活物質成形体及び上記負極活物質成形体を上記電池外装体内に収容することを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法、及び、本発明のリチウムイオン電池の製造方法によると、集電体の表面への活物質スラリーの塗布が不要となり、リチウムイオン電池の製造に係る時間、労力、設備等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)~図1(c)は、成形工程で用いられる型の一例を示した模式図である。
図2図2(a)~図2(f)は、成形工程の一例を示した模式図である。
図3図3(a)~図3(c)は、成形工程で用いられる型の別の一例を示した模式図である。
図4図4(a)~図4(g)は、成形工程の別の一例を示した模式図である。
図5図5(a)~図5(c)は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法の一例を示す模式図である。
図6図6(a)~図6(c)は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法の別の一例を示す模式図である。
図7図7(a)~図7(c)は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法のさらに別の一例を示す模式図である。
図8図8は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法において正極活物質成形体及び負極活物質成形体の配置を説明するための、電池単位構成体を示す模式図である。
図9図9は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法によって製造されるリチウムイオン電池の一例を示す模式図である。
図10図10は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法によって製造されるリチウムイオン電池の別の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法は、リチウムイオン電池用電極活物質と電解液とを含む組成物を成形してリチウムイオン電池用電極活物質の非結着体であるリチウムイオン電池用電極活物質成形体を得る成形工程を含み、上記組成物の電解液含有量が上記組成物の重量を基準として0.1~40重量%であることを特徴とする。
【0011】
本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法では、成形工程において、リチウムイオン電池用電極活物質(以下、単に活物質ともいう)と電解液を含んでなる組成物を成形してリチウムイオン電池用電極活物質の非結着体であるリチウムイオン電池用電極活物質成形体(以下、単に電極活物質成形体ともいう)を得る。
成形工程により得られる電極活物質成形体は、リチウムイオン電池用電極活物質と電解液とを含んでおり、リチウムイオン電池用の電極としての構成を満足する。そして、電極活物質成形体は成形されているから、リチウムイオン電池用電極活物質として異なる種類の活物質を使用したものを2つ用意し、セパレータを介して配置することによって、リチウムイオン電池とすることができる。従って、従来のリチウムイオン電池の製造方法のように、集電体上に活物質スラリーを塗布し、乾燥する工程が不要となる。さらに、電極活物質成形体は成形されているため、取扱性が良好であり、製造工程が煩雑となることもない。
すなわち、本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法を用いると、従来よりも簡易な手順によりリチウムイオン電池を製造することができ、製造に係る時間、労力、設備等を抑制することができる。
【0012】
成形工程において、組成物を成形する方法は特に限定されないが、例えば、リチウムイオン電池用電極活物質及び電解液の混合物である組成物を、底面及び側面を有する型内に充填して任意の形状に加圧成形する方法、押出成形により連続的に成形する方法、カレンダー成形(圧延加工)によって成形する方法等が挙げられる。
【0013】
成形工程で用いることのできる型について説明する。
図1(a)~図1(c)は、成形工程で用いられる型の一例を示した模式図である。図1(a)は、成形工程で用いられる型の一例を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA-A線断面図であり、図1(c)は、図1(a)に示す型を構成部分毎に分離した状態を模式的に示す斜視図である。
図1(a)~図1(c)に示すように、型100は、側面を構成する型101と底面を構成する型103からなる。図1(b)に示すように、型100には、側面を構成する型101の内壁面101aと底面を構成する型103の上底面103aにより囲まれた空間Vが形成されている。図1(c)に示すように、側面を構成する型101と底面を構成する型103とは分離可能であることが好ましい。
【0014】
続いて、図1(a)~図1(c)に示す型を用いた成形工程について図2(a)~図2(f)を例に説明する。
図2(a)~図2(f)は、成形工程の一例を示した模式図である。図2(a)は、成形工程において用いられる型の一例を、図2(b)は、成形工程において型内に組成物を充填する様子の一例を、図2(c)及び図2(d)は組成物を圧縮する様子の一例を、図2(e)は、圧縮した電極活物質成形体を型から取り出す様子の一例を、それぞれ示している。
図2(a)に示すように、型100は、底面を構成する型103により底面が形成され、側面を構成する型101により側面が形成された空間Vを有している。
【0015】
図2(b)~図2(d)に示すように、空間Vには組成物110が充填され、圧縮用治具104により加圧される。なお、組成物110を圧縮する程度は、組成物110を成形できるような圧力であれば特に限定されず、図2(c)に示す電極活物質成形体15(最終的にリチウムイオン電池として使用される状態よりも密度の低い状態)であってもよく、図2(d)に示す電極活物質成形体10(最終的にリチウムイオン電池として使用される状態)であってもよい。
【0016】
成形された電極活物質成形体10は、図2(e)に示すように、型100から取り出される。なお、図2(c)に示す電極活物質成形体15を型100から取り出してもよい。図2(a)~図2(e)に示す工程を経ることで、電極活物質組成物を成形した、図2(f)に示す電極活物質成形体10が得られる。
【0017】
組成物はリチウムイオン電池用電極活物質と電解液とを含むため、砂と水との混合物が成形されるのと同様に、所定の形状の型を用いる等の方法によって、一定の形状に成形することができ、電極活物質成形体が得られる。リチウムイオン電池用電極活物質が、その表面の少なくとも一部が被覆用樹脂を含む被覆剤で被覆された被覆活物質である場合には、電解液を含んだ被覆剤が膨潤して粘着性を示すため、より簡便な条件で成形することができる。
【0018】
本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法において、「充填」とは、型の空間内に組成物の全部が収容されている状態を意味する。
組成物を構成する活物質及び電解液は均一に混合された状態で充填されていることが望ましいが、型内にまず活物質のみを収容し、その後活物質に電解液を含浸させることによって、型内に組成物を充填する方法を採用してもよい。
【0019】
本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法においては、組成物を型の空間内に充填する際に、振動、衝撃を与えることが好ましい。
組成物を型の空間内に充填する際に、振動、衝撃を与えることで、組成物を型の空間内に均一に充填しやすくなる。
【0020】
本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法において、組成物の電解液含有量が組成物の重量を基準として0.1~40重量%であればよく、成形する前の組成物(活物質と電解液との混合物)の性状は、流動性のある固液混合物(スラリー状ともいう)、流動性の低い固液混合物(ペンデュラー状又はファニキュラー状ともいう)、ゲル状、及び湿潤粉末状等がありうる。
なお、スラリー状とは、組成物において、少なくとも活物質同士の空隙の全てが電解液で満たされている状態又はそれを超える体積の電解液を有する性状であり、ペンデュラー状又はファニキュラー状は活物質同士の空隙の一部が電解液で満たされた状態であり、ファニキュラー状とは活物質同士の空隙の合計体積に満たない体積の電解液と活物質とを混合することで得られる性状である。最密充填された粒子群に液体が加わると、液体量が少ないと液体は粒子の接触点を中心として環状に付着して不連続に存在する(ペンデュラー状態)。そして、液体の量が増すと環状に付着した液体は大きさを増してゆき、ついには環相互の連繋ができて、空隙はあるものの液相が連続構造を持つようになる(ファニキュラー状態)。さらに液体の量が増すと空隙がなくなり、固液2相のみが連続構造をとるようになり、スラリー状態に移行する。
これらの中でも、ペンデュラー状、ファニキュラー状、ゲル状及び湿潤粉末状であることが望ましい。電極活物質の性状が上記のものであると、より簡便な条件で成形することができる。
【0021】
本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法において、上記成形工程では、底面及び側面を有する型内に、上記型の底面全体と上記型の側面の少なくとも一部を覆うようにセパレータを配置し、上記組成物をセパレータが配置された上記型内に充填して成形するとともに、上記組成物のうち上記型の底面に対応する面の全部と上記型の側面に対応する面の少なくとも一部を上記セパレータにより連続的に覆うことが望ましい。
上記方法により、成形工程において、電極活物質成形体とセパレータとが一体化した電極活物質成形体ユニットを得ることができる。
【0022】
上述した電極活物質成形体ユニットを製造できる型の例を、図3(a)~図3(c)を用いて説明する。
図3(a)~図3(c)は、成形工程で用いられる型の別の一例を示した模式図である。図3(a)は、成形工程で用いられる型の一例を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)におけるB-B線断面図であり、図3(c)は、図3(a)に示す型を構成部分毎に分離した状態を模式的に示す斜視図である。
図3(a)及び図3(b)に示すように、型200は、側面を構成する型201、底面を構成する型203、及び、角部を構成する型202からなり、型200には、側面を構成する型201の内壁面201aと、底面を構成する型203の上底面203aにより囲まれた空間Vが形成されている。
図3(c)に示すように、側面を構成する型201、底面を構成する型203及び角部を構成する型202は互いに分離可能であってよい。
角部を構成する型202は、図3(a)及び図3(b)に示す状態では、底面を構成する型203を所定の位置に固定する機能を果たしているが、後述する工程において底面を構成する型203を下方に移動させた際に、側面を構成する型として機能する。
【0023】
続いて、上記型を用いて電極活物質成形体をセパレータと一体化させた電極活物質成形体ユニットを得る方法について、図4(a)~図4(g)を用いて説明する。
図4(a)~図4(g)は、図3(a)~図3(c)に示す型を用いた成形工程の一例を模式的に示す説明図でもある。
図4(a)~図4(g)は、成形工程の別の一例を示した模式図である。図4(a)は成形工程において用いられる型の一例を、図4(b)は成形工程において型内にセパレータを配置する様子の一例を、図4(c)は組成物を型内に充填する様子の一例を、図4(d)~図4(f)は組成物を圧縮する様子の一例を、図4(g)は図4(a)~図4(f)に示す工程により得られる電極活物質成形体ユニットの一例をそれぞれ示している。
図4(a)に示すように、型200は、底面を構成する型203により底面が形成され、側面を構成する型201により側面が形成された空間Vを有している。
【0024】
続いて、図4(b)を用いて、型内にセパレータを配置する方法の一例を説明する。
セパレータを配置する際、例えば、図4(b)に示すように、底面を構成する型203及び角部を構成する型202上にセパレータ20を配置する。
セパレータ20は底面を構成する型203上、かつ、側面を構成する型201と角部を構成する型202との間に配置されている。セパレータ20は底面を構成する型203の上底面全体を覆い、かつ、底面を構成する型203の上底面よりも面積が大きい。
なお、図4(b)ではセパレータ20が側面を構成する型201と角部を構成する型202との間に配置されているが、側面を構成する型201と角部を構成する型202とを分離可能とせずに(すなわち、図1(a)~図1(c)に示す型100を用いて)、U字状に折り曲げた状態でセパレータ20を型内に配置してもよい。セパレータ20を型内にU字状に配置した場合には、セパレータ20と型200との接触性を向上させるため、空間の形状に対応する形状を有する治具等を用いてセパレータ20を底面を構成する型203の上底面に押し当てる方法等により、型200の底面にセパレータを密着させてもよい。
【0025】
続いて、図4(c)を用いて、セパレータが配置された型内に組成物を充填する方法の一例について説明する。
セパレータが配置された型内に組成物を充填する方法としては例えば、図4(c)に示すように、型200内の空間Vに活物質及び電解液を含んでなる組成物110を充填する。型200の底面にはセパレータ20が配置されているため、型200内に充填された組成物110はセパレータ20上に配置されることとなる。
【0026】
続いて、図4(d)~図4(f)を用いて、型内に充填された組成物を成形する方法を説明する。
型内に充填された組成物を成形する方法としては例えば、図4(d)及び図4(e)に示すように、型200内に充填された組成物110を、底面を構成する型203とは反対側の面から、圧縮用治具204を用いて圧縮する方法が挙げられる。
圧縮用治具204は型200に形成された空間Vの形状に略対応する形状であることが望ましい。圧縮用治具204を用いて空間V内に充填された組成物110を圧縮することにより、組成物110を成形して、図4(d)に示す電極活物質成形体15とし、さらに圧縮することにより図4(e)に示す電極活物質成形体11とする。
続いて、図4(f)に示すように、底面を構成する型203を圧縮用治具204の圧縮方向と同じ方向に移動させることにより、側面を構成する型201及び角部を構成する型202の間に挟持されていたセパレータの端部20c、20dを角部を構成する型202の側面に引き出し、かつ、電極活物質成形体11の側面に配置することができる。
図4(e)に加えて図4(f)に示す工程を経ることにより、電極活物質成形体11とセパレータ20とを一体化させ、電極活物質成形体11のうち型200の底面に対応する面の全部と、型200の側面に対応する面の少なくとも一部がセパレータ20により連続的に覆われた、図4(g)に示すような電極活物質成形体ユニット30を得ることができる。
なお、図4(f)に示すように、得られた電極活物質成形体ユニット30は底面を構成する型203側から取り出すことが望ましい。反対方向(圧縮用治具204の存在する方向)に取り出そうとすると、型の側面に配置されたセパレータ20がめくれたり、破損するおそれがある。
なお、セパレータ20をU字状に型200内に配置した場合、図4(f)に示す工程は不要である。
【0027】
組成物110を圧縮する程度は、組成物110を成形できるような圧力であれば特に限定されず、図4(d)に示す電極活物質成形体15(最終的にリチウムイオン電池として使用される状態よりも密度の低い状態)であってもよく、図4(e)に示す電極活物質成形体11(最終的にリチウムイオン電池として使用される状態)であってもよい。すなわち、成形工程においては、図4(d)に示す状態から、底面を構成する型203を圧縮用治具204の圧縮方向と同じ方向に移動させることにより、側面を構成する型201及び角部を構成する型202の間に挟持されていたセパレータの端部20c、20dを角部を構成する型202の側面に引き出し、かつ、電極活物質成形体15の側面に配置することによって、電極活物質成形体15とセパレータ20とを一体化させることによって電極を得てもよい。
【0028】
型の形状は、底面及び側面を有していればよく、その他の形状は特に限定されない。
底面を構成する型と側面を構成する型は一体化していてもよいが、図1(a)~図1(c)に記載したように、側面を構成する型と底面を構成する型とが分離可能に構成されていることが望ましく、図3(a)~図3(c)に記載したように、側面を構成する型が、底面の高さで2つに分離可能に構成されていることがさらに望ましい。
側面を構成する型のうち、底面の高さよりも低い部分を構成する型は、実質的には側面を構成するものではないため、角部を構成する型ともいう。
【0029】
型を構成する材料としては、金型等に使用される金属等の一般的な材料が挙げられる。
また、型と電極活物質成形体との間で発生する摩擦を低減するため、型の表面にはフッ素コート等が施されていてもよい。
型内に形成された空間(以下、単に空間ともいう)の形状は、得たい電極活物質成形体の形状に応じて調整すればよく、圧縮方向における形状変化がないものであることが望ましく、例えば、円柱形、角柱形等であることが望ましい。
空間の形状が円柱形の型を用いた場合には平面視略円形の、空間の形状が角柱状の型を用いた場合には平面視矩形の電極活物質成形体が得られる。
【0030】
成形工程では、型の底面全体と側面の少なくとも一部を覆うようにセパレータを配置してもよい。型の底面全体と側面の少なくとも一部を覆うようにセパレータを配置することで、セパレータと電極活物質成形体が一体化した電極活物質成形体ユニットを得ることができる。このような電極活物質成形体ユニットは、電極活物質成形体ユニット同士を組み合わせてリチウムイオン電池を製造する際にセパレータを別途準備する必要がなく、電極活物質成形体の取扱性が向上するため、好ましい。また、型の底面に対応する面の全体と型の側面に対応する面の少なくとも一部がセパレータにより覆われた電極活物質成形体ユニットは、組み合わせ工程において電池外装体と一体化させた場合に、電極活物質成形体が露出する面積が減少するため、製造されるリチウムイオン電池の品質にバラツキが発生しにくく、好ましい。
【0031】
使用するセパレータは、型の底面を完全に覆うことができ、かつ、型の側面の少なくとも一部を覆うことができる形状であることが望ましい。セパレータは型の底面に密着している必要はないが、密着していることがより望ましい。
セパレータを型の底面に密着させる方法としては、例えば、型の底面に配置したセパレータを治具等を用いて型の底面に押し当てる方法等が挙げられる。
【0032】
セパレータを型内に配置する際には、セパレータを型の底面及び側面に密着させるために、予め成形後の電極活物質成形体の大きさに合致する折り目をセパレータに形成していてもよく、予め所定の立体形状に成形したセパレータを型内に配置してもよい。
また、型内に配置するセパレータは、必ずしも型の底面及び側面に密着する立体形状となっていなくてもよい。その場合、セパレータを配置した型の内部に組成物を充填する際やこれを圧縮する際に、底面及び側面に密着する立体形状とすればよい。
【0033】
セパレータの面積は、電極活物質成形体のうち型の底面に対応する面(すなわち電極活物質成形体の底面)の全部と型の側面に対応する面(すなわち電極活物質成形体の側面)の少なくとも一部を覆うことができる面積であることが好ましく、型の底面に対応する面の全部と型の側面に対応する面の全部を覆うことができる面積であることがより好ましく、型の底面に対応する面の全部と型の側面に対応する面の全部だけでなく、さらに型の底面に対向する面に対応する面(すなわち電極活物質成形体の上面)の全部を覆うことがさらに好ましい。ただし、電極活物質成形体の上面に集電体を積層した状態でセパレータによって上面の全部を覆う場合には、セパレータの内側(電極活物質成形体側)に配置された集電体の一部が外側へと露出するように集電体を配置しておく必要がある。セパレータの内側に配置された集電体の一部を外側へと露出させる方法としては、重なるセパレータ同士の間に集電体が折りたたまれるように配置する方法や、セパレータに切り込みを設け、該切り込みを通じて集電体を外部に引き出す方法が挙げられる。
セパレータが、電極活物質成形体の底面全体を覆う場合、正極活物質成形体と負極活物質組成物とが直接接触することを防ぐことができる。さらに、電極活物質成形体の底面全体と側面の少なくとも一部(より好ましくは、電極活物質成形体の底面全体、側面全体及び電極活物質成形体の上面全体)を覆う場合、電極活物質成形体を電池外装体と一体化させた際の電極活物質成形体の露出部分が減少するため、電池内部で正極部材(正極集電体及び正極活物質成形体)と負極部材(負極集電体及び負極活物質成形体)とが直接に接触することがなくなり、製造されるリチウムイオン電池の品質にバラツキが発生しにくく、好ましい。
【0034】
本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法においては、セパレータを配置せずに成形工程を行った場合、成形工程後に電極活物質成形体の表面を別途セパレータで覆う工程を設けてもよい。
この時、電極活物質成形体の表面のうちセパレータで覆われることが好ましい領域、セパレータの面積、集電体の配置については、成形工程において電極活物質成形体をセパレータで覆う場合と同様である。
【0035】
セパレータを構成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン製フィルムの微多孔膜、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる不織布及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等が挙げられる。
【0036】
電極活物質成形体は、側面の5~100%がセパレータにより覆われていることが好ましい。
【0037】
圧縮用治具を組成物に押し当てる強さ(プレス強度ともいう)は特に限定されないが、10~2000MPaであることが望ましく、50~1000MPaであることがさらに望ましい。
このとき、成形された組成物の充填率は、活物質が正極活物質の場合(すなわち、正極活物質成形体の場合)には40~70%とすることが望ましく、活物質が負極活物質の場合(すなわち、負極活物質成形体の場合)には、50~80%とすることが望ましい。なお、充填率は、電極活物質成形体の体積に対する電極活物質成形体に含まれる固形分の体積の割合(体積百分率)で表される。
【0038】
続いて、電極活物質成形体を得る方法のうち、押出成形について説明する。
押出成形によって電極活物質成形体を得る方法としては、従来公知の押出成形機を用いる方法が挙げられる。
押出成形機としては、例えば、原料が供給される原料筒と、原料筒の原料吐出側に取り付けられたダイス(モールドともいう)と、原料筒内に配置された原料をダイスの方へ押し出すための回転軸状のスクリュとを有するものが挙げられる。
原料筒に電極活物質成形体の原料である活物質及び電解液を投入し、スクリュの回転により原料筒を移動した活物質及び電解液をダイスから押し出すことにより、電極活物質成形体を得る事ができる。電極活物質成形体の形状は、ダイスの形状、及び、スクリュの回転速度を調整することによって適宜調整することができる。
【0039】
ダイスから吐出される組成物の形状は特に限定されないが、円柱形又は四角柱形であることが好ましい。ダイスから吐出される組成物を所定の長さで切断することにより、リチウムイオン電池用電極活物質成形体が得られる。
【0040】
ダイスから吐出された組成物を切断する方法は、特に限定されないが、ロータリーカッター、糸等によって切断する方法が挙げられる。
【0041】
押出成形時の組成物の温度は特に限定されないが、成形性等の観点から、40℃以下であることが好ましい。
活物質と電解液との好ましい混合比率、及び、成形する前の組成物の好ましい性状は、型を用いた加圧成形の場合と同じである。
【0042】
押出成形により得られる電極活物質成形体は、型内にセパレータを配置せずに電極活物質成形体を成形する方法により得られる電極活物質成形体と同様の方法で、電池外装体の収容部に収容すればよい。
【0043】
カレンダー成形によって電極活物質成形体を得る方法としては、公知のロールプレス装置を用いる方法が挙げられる。
ニーダー等の連続混合機から混合物を投入し、ドクターブレード等によってフィルム等の平滑な面上に一定の厚みに広げた活物質と電解液との混合物をロールプレス処理することでシート状の電極活物質成形体を得る事ができる。シート状の電極活物質成形体を所定の長さで切断することにより、成形工程が完了する。
なお、活物質と電解液との好ましい混合比率、及び成形する前の組成物の好ましい性状は、型を用いた加圧成形の場合と同じである。
【0044】
本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法で得られるリチウムイオン電池用電極活物質成形体は電解液を含んでいるが、電解液の使用量が成形工程に最適な条件であった場合には、リチウムイオン電池の電池性能を満足しない場合があるため、成形工程により得られる電極活物質成形体を電池外装体の収容部に収容した後、該電極活物質成形体にさらに電解液を添加してもよい。
【0045】
続いて、組成物について説明する。
組成物は、活物質と電解液を含んでなり、必要に応じて導電助剤や粘度調整剤等を含んでいてもよい。組成物における電解液量は、0.1~40.0重量%である。
また、成形する前の組成物(活物質と電解液との混合物)は、リチウムイオン電池用電極活物質と電解液との混合物の非結着体である。そして、該組成物を成形して得られる電極活物質成形体もまた、リチウムイオン電池用電極活物質と電解液との混合物の非結着体である。
組成物が導電助剤や粘度調整剤等を含んだ場合であっても、導電助剤や粘度調整剤等によって活物質同士が結着することはないため、これらを用いて調製された組成物を成形したリチウムイオン電池用電極活物質成形体もまた、リチウムイオン電池用電極活物質と電解液との混合物の非結着体である。
組成物の電解液含有量は、組成物の重量を基準として0.1~40重量%である。組成物の電解液含有量が組成物の重量を基準として0.1重量%未満であると、液架橋力が不足して成形体の形状保持性が不充分となる。一方、組成物の電解液含有量が40重量%を超えると液流れが生じ、成形体の形状保持性が不充分となる。
組成物の電解液含有量は、活物質に添加する電解液の量を調整することで上記範囲内とすることができる。組成物の電解液含有量は、組成物の重量を基準として5~35重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。電解液含有量がこの範囲であると、小さな圧力でも高密度かつ形状保持性の高い成形体を得ることができるうえ、工程補助材として有機溶媒ではなく、電解液を用いることで、成形体の成型後に有機溶媒を留去する必要が無く、工程数を大幅に短縮することができる。
なお、上記電解液量は、組成物を成形する際の形状保持においては上記組成物の電解液量で充分であるが、リチウムイオン電池の電池性能を満たすためには不充分な場合がある。そのような場合には、成形体にさらに電解液を添加することによって成形体の電解液量を調整することができる。このとき、成形体中には既に電解液が存在するため、減圧操作などを経なくても、添加した電解液が容易に組成物中に浸透することができ、電解液を吸液させるために係る時間を短縮することができる。
【0046】
組成物に含まれる活物質の重量割合は、形状保持と電池性能の両立の観点から、組成物の固形分重量の合計に基づいて、80~100重量%であることが望ましい。
リチウムイオン電池用電極活物質が、表面の少なくとも一部が被覆用樹脂を含む被覆剤で被覆された被覆活物質である場合、被覆剤の重量は、活物質の重量に含めないこととする。
【0047】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法において、組成物が活物質と電解液との混合物の非結着体であるとは、組成物を構成する活物質同士が結着剤(バインダともいう)により互いの位置を固定されていないこと、及び、組成物中の活物質は全て、互いに結着していないことを意味する。
従来のリチウムイオン電池における活物質層(本発明のリチウムイオン電池の製造方法における電極活物質成形体に相当する)は、活物質及び結着剤を溶媒中に分散させたスラリーを集電体等の表面に塗布し、加熱・乾燥させることにより製造されるため、活物質層は結着剤により固められた状態となっている。このとき、活物質は結着剤により互いに結着されており、活物質同士の位置が不可逆的に固定されている。
一方、本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法により製造される電極活物質成形体中のリチウムイオン電池用電極活物質は互いに結着されておらず、リチウムイオン電池用電極活物質同士の位置も固定されていない。そのため、互いに結着されていないリチウムイオン電池用電極活物質を含む組成物を取り出した場合、組成物に含まれるリチウムイオン電池用電極活物質は容易に手でほぐすことができ、その状態を確認することができる。
なお、結着剤としては、デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びスチレン-ブタジエンゴム(SBR)等の公知のリチウムイオン電池用結着剤が挙げられるが、本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法においては、これらの化合物は結着剤として組成物に添加しないことが望ましく、後述する被覆剤を構成する化合物としてもこれらの化合物を用いないことがより望ましい。
【0048】
電極活物質成形体を構成するリチウムイオン電池用電極活物質は、正極活物質であっても負極活物質であってもよい。
リチウムイオン電池用電極活物質として正極活物質を用いた組成物を正極組成物ともいい、リチウムイオン電池用電極活物質として負極活物質を用いた組成物を負極組成物ともいう。リチウムイオン電池用電極活物質が正極活物質である場合の被覆剤は正極被覆剤ともいい、リチウムイオン電池用電極活物質が負極活物質である場合の被覆剤を負極被覆剤ともいう。また、組成物として正極組成物を用いた電極活物質成形体を正極活物質成形体ともいい、組成物として負極組成物を用いた電極活物質成形体を負極活物質成形体ともいう。さらに、組成物として正極組成物を用いた電極活物質成形体ユニットを正極活物質成形体ユニットともいい、組成物として負極組成物を用いた電極活物質成形体ユニットを負極活物質成形体ユニットともいう。
正極活物質成形体と負極活物質成形体を、組成物同士がセパレータを介して配置されるように組み合わせ、電池外装体等により周囲を覆うことで、リチウムイオン電池が製造される。
【0049】
正極組成物を構成する正極活物質としては、従来公知のものを好適に使用することができ、ある電位を与えることでリチウムイオンの挿入と脱離が可能な化合物であって、対極に用いる負極活物質よりも高い電位でリチウムイオンの挿入と脱離が可能な化合物を用いることができる。
【0050】
正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び遷移金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0051】
正極活物質の体積平均粒子径は、リチウムイオン電池の電気特性の観点から、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~35μmであることがより好ましく、1~30μmであることがさらに好ましい。
【0052】
続いて、負極活物質について説明する。
負極活物質としては、炭素系材料[例えば黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭化ケイ素及び炭素繊維等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物、リチウム・チタン酸化物及びケイ素酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
上記負極活物質のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め活物質の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
【0053】
負極活物質の体積平均粒子径は、リチウムイオン電池の電気特性の観点から、0.01~100μmが好ましく、0.1~40μmであることがより好ましく、2~35μmであることがさらに好ましい。
【0054】
本明細書において、正極活物質及び負極活物質の体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0055】
続いて、活物質の構成について説明する。
本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法において、リチウムイオン電池用電極活物質は、表面の少なくとも一部が被覆用樹脂を含む被覆剤で被覆された被覆活物質であることが望ましい。リチウムイオン電池用電極活物質が被覆活物質であると、電解液を含んだ被覆剤が膨潤して粘着性を示すため、成形がより簡便な条件で行える。
被覆活物質は、リチウムイオン電池用電極活物質の表面の少なくとも一部が被覆用樹脂を含む被覆剤で被覆されたものである。
被覆剤は、被覆用樹脂を含んでなり、必要に応じてさらに導電材料を含んでいてもよい。
なお、被覆活物質は、リチウムイオン電池用電極活物質の表面の少なくとも一部が、被覆用樹脂を含む被覆剤で被覆されたものであるが、組成物中において、例え被覆活物質同士が接触したとしても、接触面においてリチウムイオン電池用電極活物質同士が不可逆的に接着されることはなく、接着は一時的なもので、容易に手でほぐすことができるものであるから、リチウムイオン電池用電極活物質同士が被覆剤によって固定されることはない。従って、被覆活物質を含んでなる組成物は、リチウムイオン電池用電極活物質が互いに結着されているものではない。
【0056】
被覆用樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられ、例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、ポリサッカロイド(アルギン酸ナトリウム等)及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中ではアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
これらの中では、電解液に浸漬した際の吸液率が10%以上であり、飽和吸液状態での引張破断伸び率が10%以上である被覆用樹脂がより好ましい。
【0057】
電解液に浸漬した際の吸液率は、電解液に浸漬する前、浸漬した後の被覆用樹脂の重量を測定して、以下の式で求められる。
吸液率(%)=[(電解液浸漬後の被覆用樹脂の重量-電解液浸漬前の被覆用樹脂の重量)/電解液浸漬前の被覆用樹脂の重量]×100
吸液率を求めるための電解液としては、好ましくはエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積割合でEC:DEC=1:1で混合した混合溶媒に、電解質としてLiPFを1mol/Lの濃度になるように溶解した電解液を用いる。
吸液率を求める際の電解液への浸漬は、50℃、3日間行う。50℃、3日間の浸漬を行うことにより被覆用樹脂が飽和吸液状態となる。なお、飽和吸液状態とは、それ以上電解液に浸漬しても被覆用樹脂の重量が増えない状態をいう。
なお、リチウムイオン電池を製造する際に使用する電解液は、上記電解液に限定されるものではなく、他の電解液を使用してもよい。
【0058】
吸液率が10%以上であると、リチウムイオンが被覆用樹脂を容易に透過することができるため、組成物内でのイオン抵抗を低く保つことができる。吸液率が10%未満であると、リチウムイオンの伝導性が低くなり、リチウムイオン電池としての性能が充分に発揮されないことがある。
吸液率は20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
また、吸液率の好ましい上限値としては、400%であり、より好ましい上限値としては300%である。
【0059】
飽和吸液状態での引張破断伸び率は、被覆用樹脂をダンベル状に打ち抜き、上記吸液率の測定と同様に電解液への浸漬を50℃、3日間行って被覆用樹脂を飽和吸液状態として、ASTM D683(試験片形状TypeII)に準拠して測定することができる。引張破断伸び率は、引張試験において試験片が破断するまでの伸び率を下記式によって算出した値である。
引張破断伸び率(%)=[(破断時試験片長さ-試験前試験片長さ)/試験前試験片長さ]×100
【0060】
被覆用樹脂の飽和吸液状態での引張破断伸び率が10%以上であると、被覆用樹脂が適度な柔軟性を有するため、充放電時のリチウムイオン電池用電極活物質の体積変化によって被覆剤が剥離することを抑制しやすくなる。
引張破断伸び率は20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
また、引張破断伸び率の好ましい上限値としては、400%であり、より好ましい上限値としては300%である。
【0061】
上述した被覆用樹脂のなかでも、国際公開第2015/005117号公報に被覆用樹脂として記載されているものは、本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法において、被覆剤を構成する被覆用樹脂として特に好適に用いることができる。
【0062】
導電材料は、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電材料は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電材料としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性の材料(上記した導電材料の材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0063】
導電材料の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、リチウムイオン電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましく、0.02~5μmであることがより好ましく、0.03~1μmであることがさらに好ましい。
なお、「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0064】
導電材料の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性材料として実用化されている形態であってもよい。
【0065】
導電材料は、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電材料が導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1~20μmであることが好ましい。
【0066】
以下、リチウムイオン電池用電極活物質が正極活物質の場合について説明する。
正極活物質の重量に対する被覆用樹脂と導電材料との合計重量の割合は、特に限定されるものではないが、2~25重量%であることが好ましい。
【0067】
正極活物質の重量に対する被覆用樹脂の重量の割合は、特に限定されるものではないが、0.1~10重量%であることが好ましい。正極活物質の重量に対する導電材料の重量の割合は、特に限定されるものではないが、2~15重量%であることが好ましい。
【0068】
正極被覆剤の導電率は、0.001~10mS/cmであることが好ましく、0.01~5mS/cmであることがより好ましい。
正極被覆剤の導電率は、四端子法によって求めることができる。
正極被覆剤の導電率が0.001mS/cm以上であると、正極活物質成形体の電気抵抗が高くなりにくい。
【0069】
続いて、リチウムイオン電池用電極活物質が負極活物質の場合について説明する。
負極被覆剤が含有する被覆用樹脂と導電材料との合計重量の割合は、特に限定されるものではないが、負極活物質の重量に対して25重量%以下であることが好ましい。
【0070】
負極活物質の重量に対する被覆用樹脂の重量の割合は、特に限定されないが、0.1~20重量%であることが好ましい。
負極活物質の重量に対する導電材料の重量の割合は、特に限定されないが、10重量%以下であることが好ましい。
【0071】
組成物を構成していてもよい導電助剤としては、被覆剤に含まれていてもよい導電材料と同様のものを好適に用いることができる。
【0072】
続いて、電解液について説明する。
電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有するものを使用することができる。
【0073】
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩系電解質、LiN(SOCF及びLiN(SO等のイミド系電解質、LiC(SOCF等のアルキルリチウム系電解質等が挙げられる。これらの内、高濃度時のイオン伝導性及び熱分解温度の観点から好ましいのはLiPFである。LiPFは、他の電解質と併用してもよいが、単独で使用することがより好ましい。
【0074】
電解液の電解質濃度としては、特に限定されないが、0.5~5mol/Lであることが好ましく、0.8~4mol/Lであることがより好ましく、1~2mol/Lであることがさらに好ましい。
【0075】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0076】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環のラクトン化合物(δ-バレロラクトン等)等を挙げることができる。
【0077】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びブチレンカーボネート等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0078】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0079】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等の鎖状スルホン及びスルホラン等の環状スルホン等が挙げられる。
非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
非水溶媒の内、リチウムイオン電池の出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルである。更に好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、特に好ましいのは環状炭酸エステル又は環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。最も好ましいのはエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合液、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合液である。
【0081】
続いて、本発明のリチウムイオン電池の製造方法の一の態様について説明する。
本発明のリチウムイオン電池の製造方法の一の態様は、本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法により製造されたリチウムイオン電池用電極活物質成形体を、少なくとも一部に収容部が形成された電池外装体の上記収容部内に配置し、上記電極活物質成形体を上記電池外装体と一体化させて電極構造体を準備する組み合わせ工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0082】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法の一の態様において、リチウムイオン電池用電極活物質は、表面の少なくとも一部が被覆用樹脂を含む被覆剤で被覆された被覆活物質であることが望ましい。リチウムイオン電池用電極活物質が被覆活物質であると、電解液を含んだ被覆剤が膨潤して粘着性を示すため、成形がより簡便な条件で行える。
【0083】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法の一の態様について、図5(a)~図5(c)を用いて説明する。なお、本発明のリチウムイオン電池の製造方法の一の態様における成形工程は、本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法を構成する成形工程と同様であるため説明を省略する。
図5(a)~図5(c)は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法の一例を示す模式図である。図5(a)は、組み合わせ工程の一例を模式的に示す説明図であり、図5(b)及び図5(c)は、組み合わせ工程によって準備された電極構造体を用いてリチウムイオン電池を製造する方法の一例を示す模式図である。
図5(a)に示すように、組み合わせ工程では、少なくとも一部に正極収容部55aが形成された正極外装体50aの収容部内に正極活物質成形体10aを配置し、正極活物質成形体10aと正極外装体50aとを一体化し、正極構造体12aを得る。
このとき、正極外装体50aの内面(正極活物質成形体10aと接する面)が正極集電体として充分に機能するものではない場合、図5(a)に示すように、正極活物質成形体10aと接触するように、別途正極集電体40aを配置してもよい。
【0084】
続いて、組み合わせ工程により得られた電極構造体を用いてリチウムイオン電池を製造する方法を、図5(b)及び図5(c)を用いて説明する。なお、組み合わせ工程により得られた電極構造体を用いてリチウムイオン電池を製造するためには、活物質の種類が異なる2種類の電極が必要となる。
図5(b)及び図5(c)では、電極活物質として正極活物質を用いた正極構造体と、電極活物質として負極活物質を用いた負極構造体と、を用いてリチウムイオン電池を製造する方法を説明する。
図5(b)に示すように、電極活物質成形体が正極活物質成形体10aである正極構造体12aと、電極活物質成形体が負極活物質成形体10bである負極構造体12bを、セパレータ21を介して対向するように配置する。負極構造体12bの構成は正極構造体12aとほぼ同様であり、負極活物質成形体10bと負極外装体50bとの間には負極集電体40bが配置されている。
負極外装体50bと対向する正極外装体50aの面のうち、収容部が形成されていない部分には、絶縁性の接着樹脂層60aが設けられている。また正極外装体50aと対向する負極外装体50bの面のうち、収容部が形成されていない部分には、絶縁性の接着樹脂層60bが設けられている。そのため、正極外装体50aと負極外装体50bとが直接接触せず、短絡することはない。従って、正極外装体50aと負極外装体50bとを、接着樹脂層60a、60bにより接着して封止する封止工程を行うことで、図5(c)に示すように、正極外装体50a及び負極外装体50bが接着樹脂層60により封止されたリチウムイオン電池1が得られる。
【0085】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法においては、上記図5(a)~図5(c)で説明した電極活物質成形体に代わって、電極活物質成形体とセパレータとが一体化した電極活物質成形体ユニットを用いてもよい。
電極活物質成形体ユニットを用いたリチウムイオン電池の製造方法について、図6(a)~図6(c)を用いて説明する。
【0086】
図6(a)~図6(c)は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法の別の一例を示す模式図である。
図6(a)は、組み合わせ工程の別の一例を模式的に示す説明図であり、図6(b)及び図6(c)は、組み合わせ工程によって得られた電極構造体を用いてリチウムイオン電池を製造する方法の別の一例を模式的に示す説明図である。
図6(a)に示すように、組み合わせ工程において、正極外装体51aの正極収容部56aに、正極活物質成形体11aとセパレータ20aとが一体化した正極活物質成形体ユニット30aが収容される。セパレータ20aは正極活物質成形体11aの正極外装体51aとは反対側に向かうよう配置されており、正極外装体51aと正極活物質成形体11aとの間には、正極集電体41aが配置されている。
図6(b)に示すように、正極外装体51aの正極収容部56aに、正極活物質成形体ユニット30aが収容されている正極構造体13aと、負極外装体51bの収容部に、負極活物質成形体11bとセパレータ20bとが一体化した負極活物質成形体ユニット30bが収容され、負極活物質成形体ユニット30bと負極外装体51bとの間に負極集電体41bが配置されている負極構造体13bとが、接着樹脂層61(61a、61b)によって接着されることにより、図6(c)に示すリチウムイオン電池2が得られる。
電極活物質成形体とセパレータとが一体化したものを用いることによって、図5(b)におけるセパレータを配置する工程を省略することができ、製造工程を簡略化することができる。また、セパレータを配置する際には、正極活物質と負極活物質とが接触しないよう、正極活物質と負極活物質の接触面積よりも大きな面積を覆うようにセパレータを配置する必要があるが、この場合、正極活物質と負極活物質との接触面積からセパレータがはみ出した分だけ、電池外装体を封止できる最小面積が大きくなってしまう。従って、電極活物質成形体ユニットを用いることによって、リチウムイオン電池全体の体積に占める正極活物質及び負極活物質の体積の割合を増加させることができる。
【0087】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法においては、上記組み合わせ工程において準備される電極活物質成形体ユニットは、電池外装体の収容部から電極活物質成形体がはみ出したものであってもよい。
このような場合には、電池外装体を封止する際に、電極活物質成形体を圧縮することによって、リチウムイオン電池を製造することができる。
このような場合について、図7(a)~図7(c)を用いて説明する。
図7(a)~図7(c)は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法のさらに別の一例を示す模式図である。図7(a)は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法における組み合わせ工程のさらに別の一例を模式的に説明する説明図であり、図7(b)及び図7(c)は、組み合わせ工程において準備される電極構造体を用いてリチウムイオン電池を製造する方法を模式的に示す説明図である。
図7(a)に示すように、組み合わせ工程において、正極外装体51aの正極収容部56aに正極活物質成形体15aとセパレータ20aとが一体化した正極活物質成形体ユニット35aが収容されることにより、正極構造体14aが準備される。
なお、正極活物質成形体ユニット35aは、図4(d)に示す成形工程まで加圧を行い、図4(e)に示す成形工程まで加圧しなかった場合に得られる電極活物質成形体ユニットに相当する。
【0088】
正極収容部56aの体積は正極活物質成形体15a及びセパレータ20aの合計体積よりも小さいため、図7(b)に示すように、正極活物質成形体ユニット35aは、その一部が正極外装体51aの正極収容部56aからはみ出している。
図7(b)では、負極構造体14bも、正極構造体14aと同様に、負極活物質成形体ユニット35bが負極外装体51bの負極収容部からはみ出している。そして、図7(b)に示すように、治具105、106を用いて正極活物質成形体15a及び負極活物質成形体15bを圧縮しながら、正極外装体51a及び負極外装体51bとを、接着樹脂層61(61a、61b)により接着して封止する封止工程を行うことにより、図7(c)に示すようなリチウムイオン電池2が得られる。
なお、図7(b)及び図7(c)に示すように、正極活物質成形体15a及び負極活物質成形体15bを、図4(e)に示す成形工程と同じ密度になるまで圧縮することにより、正極活物質成形体15a及び負極活物質成形体15bはそれぞれ、正極活物質成形体11a及び負極活物質成形体11bとなり、図7(c)に示すリチウムイオン電池2は、図6(c)に示すリチウムイオン電池2と同じものとなる。
【0089】
組み合わせ工程では、成形工程により得られた電極活物質成形体を、少なくとも一部に収容部が形成された電池外装体の収容部内に配置し、電極活物質成形体を電池外装体と一体化させて電極構造体を準備する。
電極活物質成形体を電池外装体の収容部内に配置する方法は、特に限定されないが、平滑面上に静置された電極活物質成形体に対して電池外装体を被せるように配置する方法や、平滑面上に静置された電池外装体に対して、電極活物質成形体が該電池外装体の収容部内に収まるように載置する方法等が挙げられる。
【0090】
電池外装体は集電体としての機能を兼ねるものであってもよく、電池外装体の内面(電極活物質成形体と接触する面)に集電体が配置されていてもよい。
集電体として機能する材料としては、金属集電体や導電剤と樹脂からなる樹脂集電体と同様の材料を好適に用いることができる。金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン、及びこれら1種以上を含む合金、ならびにステンレス合金からなる群から選択される1種以上の金属材料を薄板や金属箔等の形態で用いてもよく、基材表面にスパッタリング、電着、塗布などの手段により上記金属材料を形成したものであってもよい。
【0091】
電池外装体として、集電体の表面の一部又は全体に絶縁性樹脂からなる樹脂層を設けたものを用いてもよい。表面に樹脂層を設けた集電体としては、ラミネート加工を施したアルミニウム箔(アルミラミネートフィルム)等が挙げられる。
樹脂層は単層であってもよく積層されていてもよいが、電池外装体のうち、対極を構成する電池外装体と接触する部分には、電池外装体同士を熱圧着等により接着できる接着性樹脂で構成された層が設けられていることが望ましい。樹脂層のうち、上記接着性樹脂で構成された層を接着樹脂層ともいう。
接着樹脂層は、電池外装材に対する接着性と電解液に対する耐久性を有する材料であれば特に限定されず、高分子材料、特に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。樹脂接着層としては、上記の材料を両面テープ状にしたもの(平面状の基材の両面に上述の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を塗布して形成したもの)等を用いることができ、三層構造のシールフィルム(ポリエチレンナフタレートフィルムの上下に変性ポリプロピレンフィルム又はエポキシ樹脂を積層したフィルム等)等の公知のものを用いることができる。
【0092】
樹脂集電体を構成する導電剤としては、被覆剤に含まれていてもよい導電材料と同様のものを好適に用いることができる。
【0093】
電池外装体は少なくとも一部に収容部を有し、収容部の体積は収容される電極活物質成形体の全体又は一部が収まる体積であればよく、電極活物質成形体の体積と同一又は電極活物質成形体の体積よりも小さいことが望ましい。
収容部の体積を収容される電極活物質成形体の体積よりも小さくすると、正極外装体と負極外装体を向かい合わせに配置しただけでは、正極外装体と負極外装体とが接触しないため封止することができない。そこで、正極活物質成形体及び負極活物質成形体を圧縮しながら正極外装体と負極外装体とを封止する必要が生じ、電極活物質成形体が圧縮される。
電極活物質成形体が圧縮されると、電極活物質成形体を構成する活物質には膨張方向の力が働くので、電極活物質成形体と集電体との接触性、及び、電極活物質成形体を構成する活物質同士の接触性を良好に保つことができる。収容部の大きさ及び形状は特に限定されないが、収容部の体積は、収容される電極活物質成形体の体積の50~96体積%であることが望ましい。
【0094】
収容部の形状は特に限定されないが、電極活物質成形体を圧縮することを考慮すると、あまり複雑な形状でないことが望ましく、例えば、平面視略円形かつ断面図において略矩形形状、又は、平面視多角形かつ断面図において略矩形形状であることが望ましい。また、収容部の形状が平面視多角形等の角部を有する形状の場合、角部に丸みを持たせてもよい。
【0095】
また、電池外装体として、複数の収容部が一定間隔で規則的に配置された電池外装体を用いてもよい。このような電池外装体を用いると、各収容部内に電極活物質成形体が配置された電極構造体を得ることができる。得られた電極構造体は、必要に応じて、組み合わせ工程の前、又は組み合わせ工程の後に各収容部ごとに切断してもよい。
また、隣り合う収容部にそれぞれ異なる種類の電極活物質成形体を配置することにより、正極構造体と負極構造体とが繋がった電極構造体の連続体を準備することができる。このような電極構造体の連続体は、電池外装体を折り曲げることによって正極活物質成形体と負極活物質成形体を相対向させることができるため、製造工程を簡易化することができ好ましい。
【0096】
なお、本発明のリチウムイオン電池の製造方法においては、成形工程と組み合わせ工程とを同時に行ってもよい。成形工程と組み合わせ工程とを同時に行う方法としては、例えば、少なくとも一部に収容部が形成された電池外装体を、所定形状の型の内部に該収容部の形状と型の形状とが対応するように配置し、該収容部に組成物を充填した後、治具等により加圧成形する方法が挙げられる。このような方法を用いると、成形工程と組み合わせ工程とを同時に行うことができる。
また、成形工程と組み合わせ工程とを同じ場所で連続して行っても、成形工程を行った後に別の場所で組み合わせ工程を行ってもよい。
【0097】
なお、本発明のリチウムイオン電池の製造方法の一の態様においては、正極構造体及び負極構造体のいずれか一方が、成形工程により製造されたものであればよいが、正極構造体及び負極構造体の両方が、成形工程により製造されたものであることが好ましい。
【0098】
また、本発明のリチウムイオン電池の製造方法では、下記に示すように、電池外装体内に3つ以上の電極活物質成形体を収容してもよい。
【0099】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法の別の態様は、本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法により製造されたリチウムイオン電池用電極活物質成形体を電池外装体内に収容する収容工程を備えるリチウムイオン電池の製造方法であって、上記成形工程において、上記リチウムイオン電池用電極活物質が正極活物質である正極活物質成形体と、上記リチウムイオン電池用電極活物質が負極活物質である負極活物質成形体とを準備し、上記収容工程において、上記正極活物質成形体と上記負極活物質成形体とがセパレータを介して配置された電池単位構成体が、複数個、並列又は直列に接続されるように上記正極活物質成形体及び上記負極活物質成形体を上記電池外装体内に収容する、ことを特徴とする。
【0100】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法の別の態様を構成する成形工程は、既に説明した本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法、及び、本発明のリチウムイオン電池の製造方法の一の態様を構成する成形工程と同様である。
ただし、リチウムイオン電池用電極活物質が正極活物質である正極活物質成形体と、リチウムイオン電池用電極活物質が負極活物質である負極活物質成形体の2種類の成形体を準備する。
【0101】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法の別の態様において、リチウムイオン電池用電極活物質は、表面の少なくとも一部が被覆用樹脂を含む被覆剤で被覆された被覆活物質であることが望ましい。リチウムイオン電池用電極活物質が被覆活物質であると、電解液を含んだ被覆剤が膨潤して粘着性を示すため、成形がより簡便な条件で行える。
【0102】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法の別の態様を構成する収容工程について説明する。
収容工程では、電池外装体内に、正極活物質成形体及び負極活物質成形体並びに集電体、セパレータを適宜収容する。このとき、正極活物質成形体、負極活物質成形体、集電体及びセパレータの配置としては、正極活物質成形体と負極活物質成形体とがセパレータを介して配置された電池単位構成体を仮定したときに、該電池単位構成体が並列又は直列に接続されるように収容する。
具体例を挙げて、図8図9及び図10で説明する。
【0103】
まず、説明のために、正極活物質成形体と負極活物質成形体とがセパレータを介して配置された電池単位構成体について、図8を用いて説明する。
図8は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法において正極活物質成形体及び負極活物質成形体の配置を説明するための、電池単位構成体を示す模式図である。
図8に示すように、電池単位構成体70は、セパレータ20a及び20bを介して正極活物質成形体11aと負極活物質成形体11bが配置されてなる。電池単位構成体70では、正極活物質と負極活物質とがセパレータを介して対向するよう配置されているから、両端部に集電体が配置されることによってリチウムイオン電池として機能する。
【0104】
なお、電池単位構成体70は、正極活物質成形体、負極活物質成形体、セパレータ及び集電体の配置を説明するための便宜的な単位であり、実際に電池単位構成体70を準備する必要はない。
本発明のリチウムイオン電池の製造方法においては、収容工程において、電池外装体内に、集電体、セパレータ、並びに、成形工程によって準備された正極活物質成形体及び/又は負極活物質成形体を適宜収容することによってリチウムイオン電池を製造することができる。すなわち、本発明のリチウムイオン電池の製造方法は、電池単位構成体70を準備して、電池単位構成体70及び集電体を電池外装体内に適宜収容する方法であってもよく、電池外装体内に、正極活物質成形体、負極活物質成形体、セパレータ及び集電体をそれぞれ適宜配置する方法であってもよい。
また、図8に示す電池単位構成体70は、2つのセパレータ(20a、20b)を含むが、セパレータの数は2つに限定されず、1つのセパレータであってもよく、3つ以上のセパレータが配置されていてもよい。セパレータの配置も、正極活物質成形体と負極活物質成形体とが直接接触することのないように配置されていればよく、図8に示す態様に限定されるものではない。
【0105】
まず、電池単位構成体が直列に接続されている場合を図9を用いて説明する。
図9は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法によって製造されるリチウムイオン電池の一例を示す模式図であり、電池単位構成体が直列に接続されている場合の例である。
図9に示すように、複数の電池単位構成体70を直列に配置した状態で内面が絶縁性の電池外装体52に密閉封止して収容することで、リチウムイオン電池3を得ることができる。リチウムイオン電池3では、最下段に配置された電池単位構成体71の底部が負極集電体42bと電気的に接続されており、最上段に配置された電池単位構成体73の上面が正極集電体42aと電気的に接続されており、中段に配置された電池単位構成体72と最下段及び最上段に配置された電池単位構成体71、73との間には、正極集電体及び負極集電体の両方の性質を有する両極集電体42cが配置されている。
なお図9では、正極集電体42aと負極集電体42bとが電池外装体52から露出することで電流を取り出す端子として機能する態様を説明しているが、電流を取り出すための端子の態様は図9の態様に限定されず、正極集電体42aと負極集電体42bとが電池外装体52から露出せずに、正極集電体42aと負極集電体42bが電池外装体52内で電流を取り出すための端子とそれぞれ接続され、該端子が電池外装体52の外部に露出する態様であってもよい。
【0106】
両極集電体とは、正極活物質と接する面において正極集電体として機能し、負極活物質と接する面において負極集電体として機能する集電体であればよい。
両極集電体としては、正極集電体と負極集電体を導電性接着剤や溶接等で接合したものや、正極集電体及び負極集電体のいずれにも使用できる樹脂集電体等が挙げられる。
【0107】
続いて、電池単位構成体が並列に接続されている場合を図10を用いて説明する。
図10は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法によって製造されるリチウムイオン電池の別の一例を示す模式図であり、電池単位構成体が並列に接続されている場合の例である。
図10に示すリチウムイオン電池4は、内面が絶縁性の電池外装体53内に、電池単位構成体70が並列に接続された状態で収容されている。
図10に示す電池単位構成体70の側面は絶縁性のシール材80で覆われており、正極集電体43a及び負極集電体43bは、シール材80を貫通して正極端子44及び負極端子45にそれぞれ接続している。
下から数えて1段目に配置された電池単位構成体74と2段目に配置された電池単位構成体75はそれぞれ、正極活物質成形体11aを向けて正極集電体43aを介して対向している。また、3段目に配置された電池単位構成体76と4段目に配置された電池単位構成体77も、1段目及び2段目と同様に、正極活物質成形体11aを向けて正極43aを介して対向している。そして2つの正極集電体43aは、電池外装体53外に露出する正極端子44に接続されている。一方、1段目に配置された電池単位構成体74と4段目に配置された電池単位構成体77は、それぞれ、底面側及び上面側に負極活物質成形体11bが配置されており、それぞれ、負極集電体43bと接触している。また、2段目に配置された電池単位構成体75と3段目に配置された電池単位構成体76は、負極活物質成形体11bを向けて負極集電体43bを介して対向している。そして3つの負極集電体43bは、電池外装体53外に露出する負極端子45に接続されている。
リチウムイオン電池4を構成する全ての正極活物質成形体11aは正極集電体43aを介して正極端子44と接続されており、全ての負極活物質成形体11bは、負極集電体43bを介して負極端子45と接続されているから、4つの電池単位構成体70(74、75、76、77)は、電池外装体53内で並列に接続されているといえる。
シール材80は、正極部材(正極集電体及び正極活物質成形体)と負極部材(負極集電体及び負極活物質成形体)との接触を防止するものであるから、他の絶縁材を配置してこれらの接触を防ぐ方法、セパレータで電極活物質成形体の全体を覆って接触を防ぐ方法等、正極部材と負極部材との接触を防止する他の方法を採用する場合には、シール材80を使用しなくてもよい。
【0108】
なお、図9に示すリチウムイオン電池3では、電池外装体52内で電池単位構成体70が3つ直列に接続されており、図10に示すリチウムイオン電池4では、電池外装体53内で電池単位構成体70が4つ並列に接続されているが、本発明のリチウムイオン電池の製造方法の別の態様において、電池単位構成体の数は2個以上であれば特に限定されない。
【0109】
また、本発明のリチウムイオン電池が2つ以上の正極活物質成形体及び負極活物質成形体をそれぞれ備える場合に、リチウムイオン電池を構成する最小単位(電池単位)の構成は、図8に示す電池単位構成体70の構成に限定されるものではない。
本発明のリチウムイオン電池の構成としては、図9図10に説明したような、電池単位構成体70が電池外装体内に積層されたもののほかに、セパレータを介して積層された正極活物質成形体及び負極活物質成形体、正極集電体と負極集電体の間に封止して得られる電池単位構成体を適宜積層したもの、図5(c)図6(c)及び図7(c)に記載のリチウムイオン電池1、2を複数個、さらに電池外装体内に積層して配置したもの、及び図5(c)、図6(c)及び図7(c)において、電池外装材50及び51として集電体の機能を兼ねるものを採用して電池単位(単電池)となるリチウムイオン電池を準備し、この電池単位を電池外装体内に積層して配置したもの等が挙げられる。
なお、図5(c)、図6(c)及び図7(c)において電池外装材50(50a、50b)及び電池外装体51(51a、51b)として、集電体の機能を兼ねるものを用いた場合には、集電体40(40a、40b)及び集電体41(41a、41b)を別途配置してもよく、配置しなくてもよい。
【0110】
なお、シール材(シール部材ともいう)としては、上述の樹脂接着層と同様のものを用いることができる。
【0111】
電池単位構成体が直列又は並列に接続されるように、複数の電極活物質成形体を電池外装体内に収容することによって、蓄電デバイスの容量、電圧等の設計が容易となる。
【0112】
なお、本発明のリチウムイオン電池の製造方法により得られるリチウムイオン電池はさらに、ラミネートパックや電池缶等に収納されていてもよい。本発明のリチウムイオン電池の製造方法により得られるリチウムイオン電池がラミネートパックや電池缶等に収容されている場合、電池外装体に電流取り出し用の端子を設置してもよい。
【実施例
【0113】
次に本発明の実施態様の一例を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0114】
<製造例1:被覆用高分子化合物とその溶液の作製>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF407.9部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸242.8部、メチルメタクリレート97.1部、2-エチルヘキシルメタクリレート242.8部、及びDMF116.5部を配合したモノマー配合液と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.7部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)4.7部をDMF58.3部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。これにDMFを789.8部加えて、樹脂固形分濃度30重量%である被覆用高分子化合物溶液を得た。
【0115】
<製造例2:被覆正極活物質粒子(CA-1)の作製>
正極活物質粉末(LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末、体積平均粒子径4μm)100部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、製造例1で得られた被覆用高分子化合物溶液20.3部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電材料であるアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]6.1部を分割しながら6分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆正極活物質粒子(CA-1)を得た。
【0116】
<製造例3:被覆正極活物質粒子(CA-2)の作製>
製造例2と同様に正極活物質粉末(LiNi0.5Mn0.3Co0.2粉末、体積平均粒子径5μm)100部を万能混合機に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、製造例1で得られた被覆用高分子化合物溶液9.3部を3分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電材料であるアセチレンブラック10部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆正極活物質粒子(CA-2)を得た。
【0117】
<製造例4:被覆正極活物質粒子(CA-3)の作製>
製造例2と同様に正極活物質粉末(LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末、体積平均粒子径4μm)100部を万能混合機に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、製造例1で得られた被覆用高分子化合物溶液86.7部を25分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電材料であるアセチレンブラック7.2部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆正極活物質粒子(CA-3)を得た。
【0118】
<製造例5:被覆負極活物質粒子(AA-1)の作製>
製造例2と同様に負極活物質粉末(難黒鉛活性炭素粉末、体積平均粒子径7μm)100部を万能混合機に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、製造例1で得られた被覆用高分子化合物溶液11.3部を3分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電材料であるアセチレンブラック1.0部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆負極活物質粒子(AA-1)を得た。
【0119】
<製造例6:被覆負極活物質粒子(AA-2)の作製>
製造例2と同様に負極活物質粉末(人造黒鉛粉末、体積平均粒子径12μm)100部を万能混合機に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、製造例1で得られた被覆用高分子化合物溶液1.3部を30秒かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電材料であるアセチレンブラック0.6部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆負極活物質粒子(AA-2)を得た。
【0120】
<製造例7:被覆負極活物質粒子(AA-3)の作製>
製造例2と同様に負極活物質粉末(難黒鉛活性炭素粉末、体積平均粒子径7μm)100部を万能混合機に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、製造例1で得られた被覆用高分子化合物溶液104部を30分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電材料であるアセチレンブラック3.3部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆負極活物質粒子(AA-3)を得た。
【0121】
<製造例8:電解液の作製>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiPFを1mol/Lの割合で溶解させ、リチウムイオン電池用電解液を作製した。
【0122】
(実施例1)正極活物質成形体(CE-1)の製造
製造例2で得た被覆正極活物質粒子(CA-1)5gと導電助剤である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-242]0.1gとを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.02gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を2回繰り返し、合計0.04gの電解液を加えた。
上記混合物0.217gを秤量し、内径15mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された正極活物質成形体(CE-1)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0123】
(実施例2)正極活物質成形体(CE-2)の製造
製造例2で得た被覆正極活物質粒子(CA-1)5gと導電助剤である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-242]0.05gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.1gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計0.3gの電解液を加えた。
上記混合物0.227gを秤量し、内径15mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された正極活物質成形体(CE-2)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0124】
(実施例3)正極活物質成形体(CE-3)の製造
製造例2で得た被覆正極活物質粒子(CA-1)5gと導電助剤である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243]0.1gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて2000rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.2gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計0.6gの電解液を加えた。
上記混合物0.241gを秤量し、内径15mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された正極活物質成形体(CE-3)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0125】
(実施例4)正極活物質成形体(CE-4)の製造
製造例3で得た被覆正極活物質粒子(CA-2)5gと導電助剤である炭素繊維[日本ポリマー産業(株)製 ミルドファイバー CFMP-300X]0.25gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.5gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計1.5gの電解液を加えた。
上記混合物0.298gを秤量し、内径15mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された正極活物質成形体(CE-4)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0126】
(実施例5)正極活物質成形体(CE-5)の製造
製造例3で得た被覆正極活物質粒子(CA-2)5gに製造例8で作製した電解液0.6gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計1.8gの電解液を加えた。
上記混合物0.305gを秤量し、内径15mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された正極活物質成形体(CE-5)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0127】
(実施例6)正極活物質成形体(CE-6)の製造
製造例2で得た被覆正極活物質粒子(CA-1)5gと導電助剤である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243]0.15g及び炭素繊維[日本ポリマー産業(株)製 ミルドファイバー CFMP-300X]0.6gを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.3gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計0.9gの電解液を加えた。
上記混合物0.244gを秤量し、内径15mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された正極活物質成形体(CE-6)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0128】
(実施例7)正極活物質成形体(CE-7)の製造
製造例4で得た被覆正極活物質粒子(CA-3)5gと導電助剤である炭素繊維[日本ポリマー産業(株)製 ミルドファイバー CFMP-300X]0.4gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.4gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計1.2gの電解液を加えた。
上記混合物0.271gを秤量し、内径15mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された正極活物質成形体(CE-7)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0129】
(比較例1)正極活物質成形体(CE-8)の製造
製造例2で得た被覆正極活物質粒子(CA-1)5gと導電助剤である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243]0.1gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、上記混合物0.216gを秤量し、内径15mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された正極活物質成形体(CE-8)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0130】
(比較例2)正極活物質成形体(CE-9)の製造
製造例3で得た被覆正極活物質粒子(CA-2)5gと導電助剤である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243]0.1gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.9gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を6回繰り返し、合計5.4gの電解液を加えた。
上記混合物0.458gを秤量し、内径15mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された正極活物質成形体(CE-9)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0131】
(実施例8)負極活物質成形体(AE-1)の製造
製造例5で得た被覆負極活物質粒子(AA-1)5gと導電助剤である炭素繊維[日本ポリマー産業(株)製 ミルドファイバー CFMP-300X]0.05gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.02gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計0.06gの電解液を加えた。
上記混合物0.107gを秤量し、内径16mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された負極活物質成形体(AE-1)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0132】
(実施例9)負極活物質成形体(AE-2)の製造
製造例5で得た被覆負極活物質粒子(AA-1)5gと導電助剤である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243]0.05gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.13gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計0.39gの電解液を加えた。
上記混合物0.115gを秤量し、内径16mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された負極活物質成形体(AE-2)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0133】
(実施例10)負極活物質成形体(AE-3)の製造
製造例5で得た被覆負極活物質粒子(AA-1)5gに対して製造例8で作製した電解液0.3gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計0.9gの電解液を加えた。
上記混合物0.121gを秤量し、内径16mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された負極活物質成形体(AE-3)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0134】
(実施例11)負極活物質成形体(AE-4)の製造
製造例6で得た被覆負極活物質粒子(AA-2)5gに対して製造例8で作製した電解液0.6gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計1.8gの電解液を加えた。
上記混合物0.169gを秤量し、内径16mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された負極活物質成形体(AE-4)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0135】
(実施例12)負極活物質成形体(AE-5)の製造
製造例6で得た被覆負極活物質粒子(AA-2)5gと導電助剤である炭素繊維[日本ポリマー産業(株)製 ミルドファイバー CFMP-300X]0.05gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.94gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計2.82gの電解液を加えた。
上記混合物0.192gを秤量し、内径16mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された負極活物質成形体(AE-5)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0136】
(実施例13)負極活物質成形体(AE-6)の製造
製造例5で得た被覆負極活物質粒子(AA-1)5gと導電助剤である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243]0.3g及び炭素繊維[日本ポリマー産業(株)製 ミルドファイバー CFMP-300X]0.95gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.4gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計1.2gの電解液を加えた。
上記混合物0.155gを秤量し、内径16mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された負極活物質成形体(AE-6)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0137】
(実施例14)負極活物質成形体(AE-7)の製造
製造例7で得た被覆負極活物質粒子(AA-3)5gと導電助剤である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-242]0.05gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、製造例8で作製した電解液0.4gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計1.2gの電解液を加えた。
上記混合物0.169gを秤量し、内径16mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された負極活物質成形体(AE-7)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0138】
(比較例3)負極活物質成形体(AE-8)の製造
製造例5で得た被覆負極活物質粒子(AA-1)5gと導電助剤である炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-242]0.05gとを遊星撹拌型混合混練装置を用いて1500rpmで3分間混合した。
さらに、上記混合物0.105gを秤量し、内径16mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された負極活物質成形体(AE-8)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0139】
(比較例4)負極活物質成形体(AE-9)の製造
製造例6で得た被覆負極活物質粒子(AA-2)5gに対して製造例8で作製した電解液2.9gを加えて1500rpmで1分間混合する工程を3回繰り返し、合計8.7gの電解液を加えた。
上記混合物0.331gを秤量し、内径16mmの円筒形状の有底容器内に混合物を入れて加圧装置により圧縮することで円柱形状に成形された負極活物質成形体(AE-9)を得た。
加圧条件は、加圧圧力150MPa、加圧時間5秒であり、加圧装置(加圧治具)の温度は加圧時の室温と等しく20℃であった。
【0140】
<製造例9:電池外装材の製造>
幅5mm、長さ3cmのニッケル箔端子が超音波溶接された銅箔(3cm×3cm、厚さ17μm)と幅5mm、長さ3cmのアルミ箔端子が超音波溶接されたカーボンコートアルミ箔(3cm×3cm、厚さ21μm)を、同じ方向に2つの端子が出る向きで順に積層し、それを2枚の市販の熱融着型アルミラミネートフィルム(10cm×8cm)に挟み、端子の出ている1辺を熱融着し、電池外装材を作製した。
【0141】
(実施例15)リチウムイオン電池(L-1)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例10で得られた負極活物質成形体(AE-3)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータ(5cm×5cm、厚さ23μm、セルガード2500 ポリプロピレン製)を負極活物質成形体(AE-3)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例1で得られた正極活物質成形体(CE-1)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-3)に対向するように積層し、電解液を50μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-1)を得た。
【0142】
(実施例16)リチウムイオン電池(L-2)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例10で得られた負極組活物質形体(AE-3)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-3)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例2で得られた正極活物質成形体(CE-2)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-3)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-2)を得た。
【0143】
(実施例17)リチウムイオン電池(L-3)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例10で得られた負極活物質成形体(AE-3)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-3)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例3で得られた正極活物質成形体(CE-3)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-3)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-3)を得た。
【0144】
(実施例18)リチウムイオン電池(L-4)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例10で得られた負極活物質成形体(AE-3)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-3)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例4で得られた正極活物質成形体(CE-4)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-3)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-4)を得た。
【0145】
(実施例19)リチウムイオン電池(L-5)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例10で得られた負極活物質成形体(AE-3)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-3)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例5で得られた正極活物質成形体(CE-5)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-3)に対向するように積層し、電解液を30μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-5)を得た。
【0146】
(実施例20)リチウムイオン電池(L-6)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例10で得られた負極活物質成形体(AE-3)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-3)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例6で得られた正極活物質成形体(CE―6)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-3)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-6)を得た。
【0147】
(実施例21)リチウムイオン電池(L-7)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例10で得られた負極活物質成形体(AE-3)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-3)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例7で得られた正極活物質成形体(CE―7)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-3)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-7)を得た。
【0148】
(比較例5)リチウムイオン電池(L-8)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例10で得られた負極活物質成形体(AE-3)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-3)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに比較例1で得られた正極活物質成形体(CE-8)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-3)に対向するように積層し、電解液を50μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-8)を得た。
【0149】
(比較例6)リチウムイオン電池(L-9)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例10で得られた負極活物質成形体(AE-3)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-3)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに比較例2で得られた正極活物質成形体(CE-9)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-3)に対向するように積層し、電解液を10μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-9)を得た。
【0150】
(実施例22)リチウムイオン電池(L-10)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例8で得られた負極活物質成形体(AE-1)を配置し、電解液を50μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-1)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例3で得られた正極活物質成形体(CE-3)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-1)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-10)を得た。
【0151】
(実施例23)リチウムイオン電池(L-11)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例9で得られた負極活物質成形体(AE-2)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-2)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例3で得られた正極活物質成形体(CE-3)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-2)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-11)を得た。
【0152】
(実施例24)リチウムイオン電池(L-12)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例11で得られた負極活物質成形体(AE-4)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-4)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例3で得られた正極活物質成形体(CE-3)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-4)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-12)を得た。
【0153】
(実施例25)リチウムイオン電池(L-13)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例12で得られた負極活物質成形体(AE-5)を配置し、電解液を30μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-5)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例3で得られた正極活物質成形体(CE-3)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-5)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-13)を得た。
【0154】
(実施例26)リチウムイオン電池(L-14)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例13で得られた負極活物質成形体(AE-6)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-6)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例3で得られた正極活物質成形体(CE-3)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-6)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-14)を得た。
【0155】
(実施例27)リチウムイオン電池(L-15)の製造
電池外装材の銅箔上に実施例14で得られた負極活物質成形体(AE-7)を配置し、電解液を40μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-7)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例3で得られた正極活物質成形体(CE-3)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-7)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-15)を得た。
【0156】
(比較例7)リチウムイオン電池(L-16)の製造
電池外装材の銅箔上に比較例3で得られた負極活物質成形体(AE-8)を配置し、電解液を50μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-8)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例3で得られた正極活物質成形体(CE-3)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-8)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-16)を得た。
【0157】
(比較例8)リチウムイオン電池(L-17)の製造
電池外装材の銅箔上に比較例4で得られた負極活物質成形体(AE-9)を配置し、電解液を10μL添加した。次いで、セパレータを負極活物質成形体(AE-9)上に配置し、さらに電解液を20μL添加した。さらに実施例3で得られた正極活物質成形体(CE-3)をセパレータを介して負極活物質成形体(AE-9)に対向するように積層し、電解液を40μL添加した。さらに正極活物質成形体上にカーボンコートアルミ箔が重なるように電池外装材を被せた。電池外装材内を真空にしながら熱融着されていない3辺をヒートシールすることで電池外装材を密封してリチウムイオン電池(L-17)を得た。
【0158】
<電極活物質成形体の成型性評価>
実施例1~14、及び比較例1~4の電極活物質成形体の成型性について以下の基準で目視での外観評価を実施した。
◎:ひび割れや脱落、流れが生じておらず、形状を維持している。
○:ひび割れや脱落、流れがやや生じているが、ある程度形状を維持している。
×:ひび割れや脱落、流れが生じ、形状を維持していない。
【0159】
<電極活物質成形体の形状維持性評価>
実施例15~27及び比較例5~8において、実施例1~14及び比較例1~4で作製された電極活物質成形体に電解液を注液した後の形状維持性について以下の基準で目視評価した。ただし、実施例3で作製された正極活物質成形体(CE-3)は実施例17においてその形状維持性を評価し、実施例10で作製された負極活物質成形体(AE-3)は実施例15においてその形状維持性を評価した。
◎:ひび割れや脱落、流れが生じておらず、形状を維持している。
○:ひび割れや脱落、流れがやや生じているが、形状を維持している。
△:ひび割れや脱落、流れがやや生じ、形状が崩れかけているが、実用上問題ない。
×:ひび割れや脱落、流れが生じ、形状を維持していない。
-:電解液を注液する前から形状が維持されておらず、評価不能。
【0160】
【表1】
【0161】
<リチウムイオン電池の初回放電評価>
25℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法によりリチウムイオン電池の初回性能の評価を行った。
定電流定電圧充電方式(CCCVモードともいう)で0.1Cの電流で4.2Vまで充電した後4.2Vを維持した状態で電流値が0.01Cになるまで充電した。10分間の休止後、0.1Cの電流で2.5Vまで放電した。
このとき充電した容量を[初回充電容量(mAh)]、放電した容量を[初回放電容量(mAh)]とした。
【0162】
<リチウムイオン電池の初回クーロン効率の評価>
上記の測定で得られた初回充電容量と初回放電容量を用い、以下の式で初回クーロン効率を算出した。
[クーロン効率(%)]=[初回放電容量]÷[初回充電容量]×100
【0163】
<リチウムイオン電池の20サイクル容量維持率の評価>
25℃下、充放電測定装置を用いて以下の方法によりリチウムイオン電池の20サイクル目の評価を行った。
定電流定電圧充電方式で0.1Cの電流で4.2Vまで充電した後4.2Vを維持した状態で電流値が0.01Cになるまで充電した。10分間の休止後、0.1Cの電流で2.5Vまで放電し、10分間休止した。
この操作を1サイクルとし、合計20サイクル完了まで測定を実施した。20サイクル目の放電容量を[20サイクル放電容量(mAh)]とした時、初回放電容量と20サイクル放電容量を用い、以下の式で20サイクル容量維持率を算出した。
[20サイクル容量維持率(%)]=[20サイクル放電容量]÷[初回放電容量]×100
【0164】
【表2】
【0165】
実施例1~14で作製した電極活物質成形体は、実施例15~27で行ったリチウムイオン電池の製造中においても形状維持ができ、取り扱い性が良好であったため、簡便な工程でリチウムイオン電池を製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明のリチウムイオン電池用電極活物質成形体の製造方法により得られるリチウムイオン電池は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用として有用である。
【符号の説明】
【0167】
1、2、3、4 リチウムイオン電池
10、11、15 電極活物質成形体
10a、11a、15a 正極活物質成形体
10b、11b、15b 負極活物質成形体
12a、13a、14a 正極構造体
12b、13b、14b 負極構造体
20、20a、20b、21 セパレータ
20c、20d セパレータの端部
30 電極活物質成形体ユニット
30a、35a 正極活物質成形体ユニット
30b、35b 負極活物質成形体ユニット
40a、41a、42a、43a 正極集電体
40b、41a、42b、43b 負極集電体
42c 両極集電体
44 正極端子
45 負極端子
50a、51a 正極外装体
50b、51b 負極外装体
52、53 電池外装体
55 収容部
55a、56a 正極収容部
60、60a、60b 接着樹脂層
61、61a、61b 接着樹脂層
70~77 電池単位構成体
80 シール材
100、200 型
101、201 側面を構成する型
101a 側面を構成する型101の内壁面
103、203 底面を構成する型
103a 底面を構成する型103の上底面
201a 側面を構成する型201の内壁面
202 角部を構成する型
203a 底面を構成する型203の上底面
104、204 圧縮用治具
105、106 治具
110 組成物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10