(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】高分子量の親水性添加剤を含有するイソポーラス自己集合ブロックコポリマーフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 69/00 20060101AFI20220712BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/44 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/38 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/10 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/08 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20220712BHJP
B01D 69/06 20060101ALI20220712BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20220712BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20220712BHJP
B01D 63/10 20060101ALI20220712BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20220712BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20220712BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/24 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/28 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/36 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/60 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/42 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/76 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/30 20060101ALI20220712BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20220712BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20220712BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220712BHJP
C08J 9/28 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B01D69/00
B01D71/40
B01D71/44
B01D71/38
B01D71/10
B01D71/08
B01D71/52
B01D71/68
B01D69/06
B01D69/08
B01D63/02
B01D63/10
B01D63/08
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/24
B01D71/26
B01D71/28
B01D71/34
B01D71/36
B01D71/60
B01D71/42
B01D71/76
B01D71/30
C08L53/00
C08L101/14
C08J5/18 CEZ
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEQ
C08J5/18 CEP
C08J9/28 101
(21)【出願番号】P 2019527322
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(86)【国際出願番号】 US2017061278
(87)【国際公開番号】W WO2018093714
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-26
(32)【優先日】2016-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519176050
【氏名又は名称】シースジ,ジェイラジ ケー.
(73)【特許権者】
【識別番号】519176061
【氏名又は名称】ドリン,レイチェル エム.
(73)【特許権者】
【識別番号】519176072
【氏名又は名称】ロビンズ,スペンサー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】シースジ,ジェイラジ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ドリン,レイチェル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ロビンズ,スペンサー
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/066661(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/111679(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031834(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/023765(WO,A1)
【文献】特表2016-526089(JP,A)
【文献】国際公開第2012/151482(WO,A2)
【文献】特表2016-514049(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012207338(DE,A1)
【文献】米国特許第06592991(US,B1)
【文献】特開2015-167914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C08L 53/00
C08L 101/14
C08J 5/18
C08J 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのブロックコポリマーと、少なくとも1つの高分子量親水性ポリマーとを含む、細孔の少なくとも一部がメソポーラスである、ブロックコポリマー(BCP)フィルムであって、
ここで、
前記高分子量親水性ポリマーの分子量は、前記少なくとも1つのブロックコポリマーの分子量の50%以上であり、かつ、前記BCPに対して0.1重量%~15重量%の範囲で存在する、
BCPフィルム。
【請求項2】
少なくとも1つのブロックコポリマーが少なくとも1つの親水性ブロックを含む、
請求項1に記載のBCPフィルム。
【請求項3】
少なくとも1つのブロックコポリマーが5重量%~25重量%の範囲で存在する、請求項1に記載のBCPフィルム。
【請求項4】
フィルムが対称又は非対称のいずれかである、請求項1に記載のBCPフィルム。
【請求項5】
フィルムが経時的に減少したフラックス低下を示す、請求項1に記載のBCPフィルム。
【請求項6】
少なくとも1つの高分子量親水性ポリマーが、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、天然由来のポリマー、ポリ(エーテル)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(スルホン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(エチレングリコール)、又はこれらのいずれの置換等価物、を含む、請求項1に記載のBCPフィルム。
【請求項7】
BCPフィルムのタンパク質吸着は低下している、請求項1に記載のBCPフィルム。
【請求項8】
湿潤剤溶液への曝露後の乾燥時に、フィルムのフラックス保持力は高まっている、請求項1に記載のBCPフィルム。
【請求項9】
高分子量親水性ポリマーはポリ(ビニルピロリドン)であり、ポリ(ビニルピロリドン)の平均分子量じゃ360,000Daである、請求項1に記載のBCPフィルム。
【請求項10】
少なくとも1つのBCPは、AB又はABCトリブロックコポリマーである、請求項1に記載のBCPフィルム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のBCPフィルムを含む、分離又はろ過デバイス。
【請求項12】
デバイスは、シリンジフィルター、カプセル、カートリッジ、フラットシート、らせん巻き材料、又は中空繊維のうちのいずれか1つとして包装されている、請求項11に記載の分離又はろ過デバイス。
【請求項13】
以下のステップ:
(a)少なくとも1つのブロックコポリマーを少なくとも1つの溶媒及び少なくとも1つの高分子量親水性ポリマーと混合することによってポリマー溶液を配合するステップ;
(b)前記ポリマー溶液をフィルムに成形するステップ;
(c)前記少なくとも1つの溶媒の一部を蒸発させるステップ;
(d)前記フィルムを凝固浴に浸漬するステップ;かつ、
(e)場合により、前記フィルムを水ですすぐステップ;
を含む、メソポーラスのブロックコポリマー(BCP)フィルムを形成するための方法であって、細孔の少なくとも一部がメソポーラスであり、
ここで、
前記高分子量親水性ポリマーの分子量は、前記少なくとも1つのブロックコポリマーの分子量の50%以上であり、かつ、前記BCPに対して0.1重量%~15重量%の範囲で存在する、
方法。
【請求項14】
少なくとも1つのブロックコポリマーが少なくとも1つの親水性ブロックを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのブロックコポリマーが、
ポリ(ブタジエン)、ポリ(イソブチレン)、ポリ(イソプレン)、ポリ(エチレン)、ポリ(スチレン)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(n-ブチルアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(グリシジルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(スルホン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(N、N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポ
リ(3-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(アミド酸)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(乳酸)、ポリ(イソシアネート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(ヒドロキシスチレン)、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)、ポリ(2-(ペルフルオロヘキシル)エチルメタクリレート)、又はこれらの置換等価物、
を含む少なくとも1つのブロックを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
溶媒が、
a. アセトアルデヒド、
b. 酢酸、
c. アセトン、
d. アセトニトリル、
e. ベンゼン、
f. クロロホルム、
g. シクロヘキサン、
h. ジクロロメタン、
i. ジメトキシエタン、
j. ジメチルスルホキシド、
k. ジメチルアセトアミド、
l. ジメチルホルムアミド、
m. 1,4-ジオキサン、
n. エタノール、
o. 酢酸エチル
p. ギ酸
q. ヘキサン、
r. メタノール、
s. N-メチル-2-ピロリドン、
t. プロパノール、
u. ピリジン、
v. スルホラン、
w. テトラヒドロフラン、又は
x. トルエン、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
フィルムが基板の上に形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
高分子量親水性ポリマーが、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリビニルアルコール、天然由来ポリマー、ポリ(エーテル)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(スルホン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(エチレングリコール)、又はこれらの置換等価物、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
ブロックコポリマーが、5重量%~25重量%の範囲で存在する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、イソポーラス(isoporous)ブロックコポリマー(「BCP」)フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
膜ファウリング及び膜圧縮は、膜濾過プロセスにおけるフラックス劣化の2つの主な原因である。膜ファウリングは、膜性能に対する一般的に知られている障害である。使用中に溶液又は粒子状物質が膜上に堆積すると、それは発生する。膜ファウリングは、膜性能の低下を招く。膜ファウリングメカニズムはよく理解されており、ファウリングによるフラックス劣化は、汚損防止膜の設計、プロセスの改善、及び現場洗浄技術によって、多くのろ過用途で完全に回復することができる。
【0003】
多くの用途において可逆的である膜ファウリングとは異なり、膜圧縮は、不可逆的なフラックス劣化及び膜の多孔性下部構造における不可逆的な変化をもたらす。従って、膜圧縮は濾過選択性に影響を与える。膜圧縮は、使用中に膜を横切る圧力差によって引き起こされる膜の変形である。膜が高い圧力差にさらされると、水及び溶解成分のフラックスは経時的に膜を通って減少する。フラックスを維持するために、より大きい圧力差を適用しなければならず、その結果、多孔質領域においてさらに高い応力が生じ、その結果、材料の密度を増加させるポリマーの再編成がもたらされ得る。加えて、物理的圧縮は膜の全体的な多孔度を減少させ、それ故に膜のファウリングを悪化させる可能性がある。同じ処理量を維持するためには、適用される供給圧力を経時的に増加させる必要があるため、膜圧縮は克服するのが難しい問題である。より高いエネルギー需要及び膜の耐用年数の短縮に起因して、これらすべてが、事業の資本支出対営業費用(「CAPEX/OPEX」)、利益が減少する。
【0004】
既存の膜技術は、そのようなトリブロックポリマー、例えばポリ(イソプレン-b-スチレン-b-4-ビニル-ピリジン)(「ISV」)、に基づくブロックコポリマー(BCP)膜を利用する。そのようなBCP膜は、WO2012/151482A3に開示されており、これは、制御された溶媒蒸発と確立された浸漬沈殿プロセスとの組み合わせによるそのような膜の製造を記載している。しかしながら、従来のポリマーから製造された膜と同様に、ニート(neat)ISVポリマーから製造されたBCP膜もまた物理的圧縮の影響を受けやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国特許出願第2010/0224555A1号(「Hoekら」)は、圧縮に抵抗するように設計された他の膜を開示している。この出願は、ポリマーマトリックス中にナノ粒子を組み込むことによって膜圧縮が改善され得ることを教示している。この参考文献は、これらのナノ粒子を含めることにより、膜材料の剛性及び靭性、及びしたがってその多孔質構造を保存し、且つ、物理的圧縮に抵抗するその能力を改善することを開示している。しかしながら、ナノ粒子を膜のブロックコポリマーマトリックスに組み込むことは、ミクロ相分離ドメインの規則正しい自己集合を乱す傾向がある。さらに、BCP膜を製造するためのキャスティングドープ配合物への任意の外来添加剤(例えば、ナノ粒子、孔形成剤)の添加は複雑であり、且つ、従来のポリマーから製造される膜の場合ほど単純ではない。ISVポリマーのユニークな利点の1つは、キャスティング溶液中で自己組織化しそして均一サイズのミセルを形成するそれらの能力であり、それは今度は膜の表面上に高度に規則正しいアイソポーラス構造を提供する。高度に規則正しい均一サイズの細孔は非常にシャープな分子量カットオフを与え、そして異なるサイズの分子を分離するための優れた選択性を提供する。この観点から、膜の自己組織化構造を維持することが最も重要である。それ故、Hoek等の開示は、当該技術分野に存在する膜圧縮問題を解決しない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当技術分野におけるこれら及び他の欠点を解決するために、本発明は、分子の分離において高レベルの選択性を維持しながら圧縮に耐性のあるBCP膜に関する。そのような膜の製造方法も開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面の簡単な説明
本発明及びその付随する利点の多くをより完全に理解することは、添付の図面と関連して考慮したときに以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるにつれて、容易に得られるであろう。
【
図1】
図1は、ISV29のみを用いて形成されたBCPフィルムと、1SV29及び5%PVP-K90を用いて形成されたBCPフィルムとの粘度の比較を示す。
【
図2B】
図2A及び
図2Bは、高分子量添加剤、ポリエチレングリコール(PEG-150K)を組み込んだ、及び組み入れていない、BCP膜の顕微鏡スキャンを示す。
【
図3】
図3は、異なる溶媒系中の高分子量添加剤を含む及び含まないISV BCPフィルムの上面を示す。
【
図4】
図4は、ニート(neat)ISVポリマーフィルムと比較した、本発明によって開示されたISVフィルムのフラックス低下(flux decline)を示す。
【
図5】
図5は、本発明を具体化するBCPフィルムについてのフラックス低下(flux decline)の表を示す。
【
図6】
図6は、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP-K90)又は低分子量ポリエチレングリコール(PEG400)のいずれかを組み込んだ4つのISV22 BCPフィルムについての70分の時間間隔にわたるフラックスのチャートを示す。
【
図7A】
図7Aは、PVP-K90を組み込んだISV29 BCPフィルムの吸着と比較した、ニートポリマーフィルムのタンパク質吸着を示す。
【
図7B】
図7Bは、7nm~20nmの間のPVP-K90を組み込んだBCPフィルムのフィルム選択性のグラフを示す。矢印は、データポイントがどの軸に対応するかを示す。
【
図7C】
図7Cは、本発明のBCPフィルムにおけるフラックス性能の再現性を示すチャートである。
【
図7D】
図7Dは、PVP-K90を組み込んだBCPフィルムにおける透過性に対する溶媒系の影響を示す。
【
図8】
図8は、PVP-K90高分子量添加剤を含むか(白丸)又は含まないか(+記号)のいずれかである、2つのISV43 BCPフィルムについて270分(4.5時間)の時間間隔にわたって保持されたフラックス(J/J
0)のチャートである。
【
図9】
図9は、6枚のフィルムの平均純水透過度(PWP)を示すチャートである。各キャストは、PVP-K90を含まないか(左)又はPVP-K90高分子量添加剤を含むか(右)のいずれかである、BCP ISV43からのものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましい実施形態の詳細な説明
図面に示された本発明の好ましい実施形態を説明する際に、明確にするために特定の用語を使用する。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではなく、各特定の用語は、同様の目的を達成するために同様に動作するすべての技術的均等物を包含することを理解されたい。本発明のいくつかの好ましい実施形態は例示目的で記載されており、本発明は図面に具体的に示されていない他の形態で具体化され得ることが理解される。いくつかの実施形態では、フィルムは膜であり、これ膜はフィルムのサブセットである。本発明の文脈において、「高分子量」は、本発明の材料を含むマジョリティブロックコポリマーの分子量の50%以上であると定義される。フィルムは、約1nmから200nmの間と定義されるメソポーラスを有する。本発明の文脈において、イソポーラス(isoporous)とは、実質的に狭い孔径分布を有することを意味する。フィルムは対称又は非対称のどちらかである。
【0009】
従来のポリマーから製造されたフィルムでは、水分流動、親水性を改善するため、孔径を調整するため、流延溶液の粘度を調整するために、異なる分子量のポリ(ビニルピロリドン)(PVP)がフィルムキャスティング溶液に添加される。本明細書に開示されるように、本発明者らは、フィルムの配合物への高分子量PVPの添加がその圧縮抵抗性(compaction resistance)を改善することを発見した。キャスティング溶液への高分子量(360,000Da)のポリビニルピロリドン)(PVP-K90)の少量(0.1~15重量%)の添加は(BCPと比較して)、ニートISVポリマーから製造されたフィルムと比較して、BCPフィルムの圧縮抵抗を著しく改善する。本発明者らは、これらの有益な効果がPVPに起因し得ると仮定している。PVPは、分離層内の表面上に留まるだけでなく、下部構造(substructure)内にも留まり、フィルムの剛性、及びしたがってその耐圧縮性を改善する強化剤として作用する。他の可能性は、PVPの存在が浸漬沈殿プロセスの間の遅延した混合をもたらし、それによりマクロボイドの形成を抑制しそして緻密な分離層を有する海綿状下部構造(substructure)を形成することである。より注目すべきことに、PVPの添加は、織布/不織布上に支持された下に開放マクロ空隙構造を有するフィルムの高度に規則正しい自己組織化選択的分離層を維持する。添加剤の分子量が前駆体ポリマーの分子量より実質的に高い場合、理論上、自己集合が破壊される可能性が高いため、この結果は当技術分野における従来の知識に反し、及びしたがって驚くべき結果である。他の驚くべき結果は、文献に記載されていることとは対照的に、高分子量PVPの添加がキャスティング溶液の粘度を有利に低下させる傾向があることである。
図1に示されるように、ISVポリマーの同じ重量%での溶液の粘度は、5%のPVP-K90の添加により粘度がほぼ20%減少することを示す。具体的には、室温でそして同様の剪断条件として測定したところ、添加剤を含まないISV溶液は1473cPで測定されたが、5%PVP-K90を溶液に添加すると粘度は1180cPに減少した。本明細書に開示されているように、ニートISVポリマー(すなわちPVPを含まないISVポリマー)からキャストしたフィルムのフラックス低下(時間の関数としての%損失)は60~70%の範囲である一方、高分子量添加剤を含有するキャスティング溶液から製造されたフィルムのそれは、溶媒系の種類に応じて5~30%である。PVPを有するフィルムのタンパク質吸着は、ニートISVポリマーからのフィルムと比較して約35%少ない。これは、高分子量の添加剤がポリマーマトリックス中に閉じ込められてフィルムに親水性を付与することが原因と考えられる。これらのフィルムは、タンパク質に対して優れた選択性を示し、大きさは約3倍異なる。例えば、サイログロブリン(thyroglobulin)についての96%(20nm)と比較して、開示された新規のフィルムによってウシ血清アルブミンの56%(7nm)しか拒絶されなかった。さらに、BCPフィルムの孔径は、溶媒系を変えることによって調整することができる。例えば、ジオキサン/テトラヒドロフラン溶媒系中に5% PVP-K90を組み込んだISVポリマーフィルムは、透過性の47%の増加を示した一方で、同じフィルムは、ジオキサン/アセトン溶媒系における同様のキャスティング条件下で透過性の60%の減少を示した。以下でさらに詳細に論じる
図7Dを参照のこと。イソポーラスブロックコポリマー(BCP)フィルムを形成する方法は、以下のステップ:
少なくとも1つのブロックコポリマーを少なくとも1つの溶媒及び少なくとも1つの高分子量親水性ポリマーと混合することによってポリマー溶液を配合するステップと;
前記ポリマー溶液をフィルムに成形するステップと;
前記溶媒(複数可)の一部を蒸発させるステップと;
前記フィルムを凝固浴に浸漬するステップと;
場合により、前記BCPフィルムを水ですすぐステップと;
を含む。ポリマー溶液BCPフィルムキャスティング溶液溶媒のための溶媒は、アセトアルデヒド、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ギ酸ヘキサン、メタノール、N-メチル-2-ピロリドン、プロパノールピリジン、スルホラン、テトラヒドロフラン、又はトルエン、のうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
前述の方法の一実施形態は、以下のように実行することができる。プロセスの第1のステップは、複合構造の作成である。このプロセスは、(1)及び(2)を含むポリマー溶液をポリエステルのような織/不織微孔質基材上に配合し、それによって非常に多孔質の布地を溶液中に埋め込むことを含む。:
(1)ポリ(イソプレン-b-スチレン-b-4-ビニル-ピリジン)(ISV)(モル質量50~500kg/mol)のようなブロックコポリマー;
(2)1,4-ジオキサン、及び場合によりテトラヒドロフラン(THF)又はアセトンなどの溶媒。
他の公知のブロックコポリマーが本明細書に開示された1SVポリマーの代わりになり得ることは当業者には容易に明らかであろう。本明細書に記載のISVは、以下のような分子量を有する。:
ISV22: 94,000Da;
ISV28: 124,000Da;
ISV29: 91,000Da;
ISV43: 53,000Da。
【0011】
このステップの後に、押し出されたBCPフィルム中の溶媒を蒸発させること(60~160秒間)が続く。次いで、BCPフィルムを凝固水浴中に、好ましくは5℃~45℃の間の温度で浸漬する。この溶液は、よく知られている浸漬沈殿法によって凝固して固体分離層を形成する。結果として得られる多孔質複合体は、多孔質下部構造の上に存在する約5~50nmの範囲の孔径を有する薄い自己組織化イソポーラス最上層を示す。形成された多孔質複合体は、限外濾過サイズ(約5~25nm)の孔をもたらす。
【0012】
図1は、ISV29のみを用いて形成されたBCPフィルムと、1SV29及び5%PVP-K90を用いて形成されたBCPフィルムとの粘度の比較を示す。粘度はセンチポアズ(cP)で計算し、測定は室温で同様の剪断条件下で行った。
図1に示すように、一般的な(generic)ISV29フィルムは1473cPの粘度を示したが、5%のPVP-K90を有するISV29フィルムは1180cPの粘度を示し、約20%低かった。PVP-K90を添加した際の粘度のこの減少は、本発明のフィルムの改良された圧縮抵抗性に影響を与える驚くべき、好ましい結果である。
【0013】
図2A及び2Bは、BCPフィルムのキャスティングにおける高分子量添加剤の使用に関する予備研究を示す。後に続く図及び関連する開示に開示されているように、PEG-150Kの使用は、おそらく溶解性の問題のためにフィルムに欠陥を導入しながら、フィルムの自己組織化が添加剤の導入によって影響されないことを実証するのに成功した。より詳細には、
図2Bに示すように、30%PEG-150K ISV29 BCPフィルムの顕微鏡分析は、形成されたフィルムの下部構造中にマクロボイドの存在を示した。添加剤なしではISV29 BCPフィルムには存在しない好ましい特性である。
【0014】
図3は、異なる溶媒系における高分子量添加剤を含む及び含まないISV BCPフィルムの最上面の顕微鏡スキャンを示す。画像は、DOX/THF及びDOX/Ace溶媒溶液の両方において、5%PVP K90の添加後にISV BCPフィルムの自己組織化が乱されなかったという驚くべき結果を示している。フィルムの自己組織化は乱されないので、フィルムはキャスティング溶液中に均一な大きさのミセルを形成し、それが今度はフィルムの表面に高度に規則的なイソポーラス構造を提供する。購読に規則的な均一サイズの細孔は非常にシャープな分子量カットオフを与え、そして異なるサイズの分子を分離するための優れた選択性を提供する。
【0015】
図4は、一般的なBCPフィルムと比較した、本発明によって開示されたフィルムの性能を示す。特に、
図4は、ポリ(ビニルピロリドン)(「PVP」)及びポリ(エチレングリコール)(「PEG」)を含む新規のISVポリマーフィルムに対して、当技術分野において以前から知られている「ニート(neat)」ISVポリマーフィルムの性能を比較する。示されているチャートでは、4つのフィルムがそれらのフラックス低下について比較されている。より良好な性能のフィルムは経時的にフラックスの減少が少ないことを実証するので、フラックス低下はフィルムの性能を測定するのに使用する。
図4において、fフラックス(純水透過、PWP)は[(リットル/m
2/h)/barg]として測定され、一般にLMH/barと注釈された。試験されたフィルムのこのフラックス測定値はチャートのy軸上に示されている。X軸は分単位の時間の測定値である。したがって、
図4は、フィルムのフラックスが経時的にどのように変化するかを示す。試験された第1のフィルムは、いかなるPVPも含まない、ISV28、当業界で以前から知られているポリ(イソプレン-b-スチレン-b-4-ビニル-ピリジン)フィルムであった(「ニート」ISVポリマーフィルム)。試験した第2のフィルムは、1.3%のPVP360K-1、平均分子量360,000Daを有するポリ(ビニルピロリドン)、を含むISV28フィルムであった。試験した第3のフィルムは、1.3%のPVP360K-2、平均分子量360,000Daを有するポリ(ビニルピロリドン)、を含むISV28フィルムであった。試験した第4のフィルムは、1%のPEG58K、平均分子量58,000Daを有するポリエチレングリコール、を含むISV29フィルムであった。次いで、フラックスを250分間にわたって測定した。
【0016】
一般的なISVフィルム、ISV28 BCPフィルムは、最初は約650LMH/barのフラックスを示した。しかしながら、250分の期間にわたって、ISV28フィルムは300LMH/bar未満へのフラックス低下を示した。このフラックスの低下は溶液が通過する際の主にフィルムの圧縮によるものであり、新規に製造されたフィルムの性能を比較することができるベースラインを確立した。試験した第2及び第3のフィルムは、高分子量PVPを組み込んだISV BCPフィルムを表した。ISV28 BCPフィルムとは異なり、1.3%PVP360K-1を含むISV28フィルムは約300LMH/barのフラックスを維持した一方、1.3%PVP360K-2を含むISV28フィルムは250分間の時間間隔にわたって約200LMH/barのフラックスを維持した。試験した4番目のフィルム、1%のPEG58Kを含むISV29フィルムは、ISV28フィルムに対して経時的に減少したフラックス低下を示し、250分後に約480LMH/barの初期フラックスから約300LMH/barまで減少した。
図4は2つの点を実証している。第一に、高分子量PVPを配合すると、圧縮によるフラックスの低下からISVフィルムを保護することにおいて驚くべき改良がもたらされることである。第二に、
図4は、これらの驚くべき効果が、別の高分子量添加剤、PEGと比較して、高分子量PVPで特に顕著であることを示している。
【0017】
図5は、本発明を具体化する様々な加工フィルムのフラックス低下率を計算した、追加のデータを示す。試験されたフィルムの全てにおいて、フィルムを形成するためにISV BCPが使用されている。次に、種々の実施形態は、PVP-K90の0.5重量%~5重量%の間で、平均分子量360,000Daを有する高分子量PVPを組み込む。
図3に開示されているように、実施形態では、オキサンとアセトンの70:30ミックス(DOX/Ace)、及びジオキサンとテトラヒドロフランの70:30ミックス(DOX/THF)を包含する、様々な溶媒系が使用された。
【0018】
図6では、低分子量PEG400添加剤を含むISV BCPと同様に、
図5に開示された実施形態のいくつかについてのフラックス低下パターンがチャート化された。次いで、フィルムの圧縮抵抗を示す百分率フラックス低下を以下のように計算した。:
(1-最後の4つのデータ点の平均/最初の4つのデータ点の平均)×100
図6は、高分子量PVP K90又は低分子量PEG400を組み込んだことを除いて、同一の4つのISV22 BCPフィルム(フィルムID: L160520及びLI60422)について70分の時間間隔にわたるフラックス低下を示す。PVP-K90を組み込んだフィルムは、小分子量PEG400を有するフィルムよりも有意に少ないフラックス低下を示した。
【0019】
図6において、PVP-K90を組み込んだフィルムは、PEG400を組み込んだものよりも明らかに高い圧縮抵抗を示す。PEG400及びPEG400を組み込んだフィルムは、それぞれ約750LMH/bar及び690LMH/barの初期フラックスで始まる。70分後、それらのフラックスは著しく、それぞれ約450LMH/bar及び350LMH/barまで、即ち40%及び49%、減少する。このフラックスの低下は、圧縮抵抗が限られていることを示す。PEGを組み込んだISV BCPフィルムのフィルムフラックスの低下は、このように、当該技術分野において以前から知られているISV BCPフィルムのそれと非常に類似している。対照的に、PVP-K90を組み込んだISV BCPフィルムは、測定された時間間隔にわたって強い圧縮抵抗を示す。1A-PVP-K90を組み込んだフィルムは70分の時間間隔にわたって約500 LMH/barのフラックスを保持した一方で、3B-PVP-K90を組み込んだフィルムはその時間間隔の間、約480 LMH/barのフラックスを保持した。これは、PVP-K90の配合がISV BCPフィルムの圧縮抵抗に対して著しくポジティブな効果を及ぼすことを実証している。まとめると、
図5及び6は、ISV BCPフィルム中へのPVP-K90の組み込みの驚くべき圧縮抵抗が、PVP-K90が0.5~5重量%の間で組み込まれるときに特に有意であることを示す。
【0020】
開示された新規なフィルムの好ましい特徴は、圧縮抵抗性に限定されない。
図7Aから7Dに示されるように、開示された新規なフィルムは、より少ない程度のファウリングを示し、製造における高レベルの再現性を示す。そのようにして、使用される溶媒系に基づいてフィルムの孔径を調整するために、フィルムの透過性を調節することができるようにする。ニートポリマーフィルム、ISV29のタンパク質吸着を、PVP-K90(フィルムID L160729JS-2B)をさらに組み込んだ本発明の実施形態、ISV29 BCPフィルムと比較する。ISV29フィルムでは、IgG抗体は、時間間隔にわたって261μg/cm
2の量で収集されたが、PVP-K90を組み込んだフィルム上で同じ時間間隔にわたって171μg/cm
2の量で収集されただけであり、したがって約35%少ない吸着(及びフィルムファウリング)を示した。
【0021】
図7Bは、本発明の新規フィルムにおける粒子状物質の透過に対する高レベルの選択性を示す。同じ作製したフィルム、1.3%PVP-K90を組み込んだISV28 BCPフィルムを、BSA(~7nm)及びサイログロブリン(thyroglobin)(~20nm)について透過性(LMH/bar)について試験した。その透過性を使用して、BSA及びサイログロブリンについての排除(rejection)百分率を計算した。フィルムを最初にBSAで試験し、0.1NのNaOHで洗浄し、脱イオン水中に48時間を超えて浸漬し、次いでサイログロブリンで試験した。
図7Bに示されるように、フィルムはBSAに対して157LMH/barの透過率及び56%の排除百分率を示した。しかしながら、より大きい粒径では、フィルムは、サイログロブリンに対してわずか95LMH/barの透過性及び96%の排除百分率を示した。
【0022】
図7Cは、開示された方法及び新規のBCPフィルムの再現性の要約を提供する。添加剤としてのPVP-K90はISVポリマーからキャストしたフィルムの再現性を有意に改善する。ここで、添加剤を含まないISVフィルムは、218±195LMH/barの5つの別々のフィルムにわたって平均した純水透過性を示し、5%PVP-K90を有するISVフィルムは、451±24LMH/barの8つのフィルムにわたって平均して純水透過性を示す。したがって、
図7Cは、高分子量添加剤を含まないものと比較して本発明のBCPフィルムの再現性が優れていることを実証している。
【0023】
図7Dは、PVP-K90を組み込んだ新規フィルムが濾過中に使用される溶媒系の変化によってどのように影響を受けるかを示す。ニートISV28 BCPフィルムを、5%PVP-K90を組み込んだISV28 BCPフィルムと比較した。フィルムの透過性は、DOX/THF(70/30)及びDOX/Ace(70/30)溶媒環境中で試験した。ISV28 BCPフィルムは、445LMH/barから537.5LMH/barまで増加する、透過性のわずかな変化を示したが、5%PVP-K90を組み込んだISV28 BCPフィルムは、658LMH/barから217LMH/barへの透過性の著しい減少を示した。透過率は孔径に比例するので、
図7Bに開示されるもののような既知のデータと共にそれらの透過性の尺度を使用することは、使用される溶媒系に基づいてPVP-K90を含むフィルムの孔径を調整するために使用され得る。
【0024】
図8において、BCPに対して5%(質量基準)のPVP-K90を組み込んだフィルムは、PVP-K90を含まないものよりも明らかに高い圧縮抵抗を示す。PVP-K90を含まないISV43フィルムは、約202LMH/barの初期フラックスを有する。270分後、そのフラックスは、およそ135LMH/barに、すなわち33%低下、著しく減少する。このフラックスの低下は大幅な圧縮を示す。対照的に、PVP-K90を組み込んだISV43 BCPフィルムは、測定された時間間隔にわたって強力な圧縮抵抗を示す。PVP-K90を組み込んだフィルムは、270分の時間間隔にわたって約267LMH/barのフラックスを保持し、わずか6%の低下であった。PVP-K90の組み込みは、ISV BCPフィルムの圧縮抵抗性に対して著しくポジティブな効果をもたらす。
【0025】
図9は、ISV43 BCPフィルムにPVP-K90を含めることによるフィルムのフラックス増加を示すチャートである。高分子量添加剤を含まない6枚のISV43フィルムの平均フラックスは203±16LMH/barであった。BCPに対して5%(質量基準)のPVP-K90を有する6つのISV43フィルムの平均フラックスは355±59LMH/bar、即ちPVP-K90を含まないフィルムと比較して82%の増加、であった。
【0026】
乾燥時の孔の崩壊(及びしたがってフラックスの喪失)を防ぐためにフィルム/膜をグリセロール溶液にさらすことは、当技術分野において周知である。PVP-K90を含まないISV43フィルムと比較して、PVP-K90を含むISV43フィルムは、1:1(質量基準)のグリセロール:水にさらした後の乾燥時に、それらのフラックスのより多くを保持する。PVP-K90を含まない2枚の未乾燥ISV43フィルムの平均フラックスは199LMH/barの平均フラックスを有した。1:1グリセロール:水への暴露後に乾燥させたPVP-K90を含まない4つのISV43フィルムの平均フラックスは168LMH/bar、即ち85%のフラックス保持率、であった。PVP-K90を含む2枚の未乾燥ISV43フィルムの平均フラックスは279LMH/barの平均フラックスを有した。1:1のグリセロール:水にさらした後に乾燥させたPVP-K90を有する4つのISV43フィルムの平均フラックスは268LMH/bar、即ち96%のフラックス保持率、であった。この結果は、親水性高分子量ポリマーを含ませることがグリセロール溶液への暴露後の乾燥時のフラックス保持を増加させることを示している。この効果は添加剤の親水性によるものであり得、それはグリセロールの保持を補助し得る。この効果は、フラックスの増加及び圧縮抵抗と共に、イソポーラスBCPフィルム中に高分子量親水性ポリマー添加剤を含めることの予想外の利点を実証する。
【0027】
いくつかの実施形態では、フィルムは分離又は濾過用途に使用される。
【0028】
いくつかの実施形態では、フィルムは、シリンジフィルター、カプセル、カートリッジ、フラットシート、らせん巻き、又は中空糸として包装される。
【0029】
いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは複雑なアーキテクチャを含む。複雑なアーキテクチャは、非線形ブロック配置を有する、すなわち、少なくとも1つのブロック内に又は隣接して1つより多い化学物質/構成/構造を有するアーキテクチャとして定義される。
【0030】
本発明をその特定の形態及び実施形態に関連して説明してきたが、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、上で論じたもの以外の様々な修正に頼ることができることが理解されよう。例えば、他の高分子量添加剤としては、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、天然由来のポリマー(セルロース、キトサン、複合炭水化物を包含するがこれらに限定されない)、ポリ(エーテル)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(スルホン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(エチレングリコール)、又はこれらの置換等価物、を包含してよい。高分子量添加剤は、少なくとも50%のブロックコポリマー分子量の分子量を有し得る。さらに、具体的に示され説明されたものの代わりに他の要素を用いてもよく、他の特徴とは無関係に特定の特徴を用いてもよい。場合によっては、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、要素の特定の位置を逆にするか又は挿入することができる。