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特許7104041酸素化物転化方法における微多孔質構造の安定動作方法
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  • 特許-酸素化物転化方法における微多孔質構造の安定動作方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】酸素化物転化方法における微多孔質構造の安定動作方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/20 20060101AFI20220712BHJP
   C07C 9/06 20060101ALI20220712BHJP
   C07C 9/08 20060101ALI20220712BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20220712BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20220712BHJP
   B01J 29/40 20060101ALN20220712BHJP
   B01J 29/85 20060101ALN20220712BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220712BHJP
【FI】
C07C1/20
C07C9/06
C07C9/08
C07C11/04
C07C11/06
B01J29/40 Z
B01J29/85 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019531201
(86)(22)【出願日】2017-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017066263
(87)【国際公開番号】W WO2018118608
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】62/437,165
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】デイビー・エル.エス・ニースケンス
(72)【発明者】
【氏名】アイセガル・シフチ・サンディッキ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・イー・フルネンデイク
(72)【発明者】
【氏名】アンジェイ・マレック
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4423272(US,A)
【文献】特開昭58-118521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/20
C07C 9/06
C07C 9/08
C07C 11/04
C07C 11/06
B01J 29/40
B01J 29/85
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素化物を炭化水素に転化する方法であって、
少なくとも1種の酸素化物を含む供給物流を反応域に導入することと、
水素ガス流を前記反応域に導入することと、
前記供給物流および前記水素ガス流を同時に前記反応域内の触媒と接触させることであって、前記触媒が、8-MR~10-MRアクセスを有する固体微多孔質酸成分を含む、接触させることと、を含み、
前記反応域内の前記水素ガス流が、1バール(100kPa)以上、48バール(4800kPa)以下の分圧を有し、前記反応域が、350℃以上、500℃以下の温度である、方法。
【請求項2】
前記反応域における前記少なくとも1種の酸素化物の前記分圧が、0.01バール(1kPa)以上、7.00バール(700kPa)以下である、請求項1に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法。
【請求項3】
前記固体微多孔質酸成分が、8-MRアクセスを有する分子ふるいである、請求項1および2のいずれか一項に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の酸素化物が、メタノール、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法。
【請求項5】
前記反応域が、400℃以上、450℃以下の温度である、請求項1~4のいずれか一項に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法。
【請求項6】
前記固体微多孔質酸成分が、以下の基準のうちの1つを満たしている、請求項1~5のいずれか一項に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法であって、
前記固体微多孔質酸成分が、8-MRアクセスを有し、前記固体微多孔質酸成分の寿命が、転化酸素化物15g/固体微多孔質酸成分1gを超える、または
前記固体微多孔質酸成分が、10-MRアクセスを有し、前記固体微多孔質酸成分の寿命が、転化酸素化物150g/固体微多孔質酸成分1gを超え、
前記固体微多孔質酸成分の前記寿命が、酸素化物のC+C炭化水素への転化がゼロになる時点までの、微多孔質酸成分1グラム当たりのC+C炭化水素に転化される前記酸素化物の累積量として定義される、方法。
【請求項7】
生成物流中のオレフィン対パラフィンの平均体積比が、0.01以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法。
【請求項8】
生成物流中のC生成物対C生成物の体積比が、0.1以上、2.7以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法。
【請求項9】
不活性ガス流が、前記反応域に導入される、請求項1~8のいずれか一項に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法。
【請求項10】
酸素化物を炭化水素に転化する方法であって、
少なくとも1種の酸素化物を含む供給物流を反応域に導入することと、
水素ガス流を前記反応域に導入することと、
前記供給物流および前記水素ガス流を同時に前記反応域内の触媒と接触させることであって、前記触媒が、8-MR~10-MRアクセスを有する固体微多孔質酸成分を含む、接触させることと、を含み、
前記反応域内の前記水素ガス流が、1バール(100kPa)以上、40バール(4000kPa)以下の分圧を有し、
前記反応域内の前記少なくとも1種の酸素化物が、0.01バール(1kPa)以上、0.05バール(5kPa)以下の分圧を有し、
前記反応域が、375℃以上、425℃以下の温度である、方法。
【請求項11】
前記固体微多孔質酸成分が、以下の基準のうちの1つを満たしている、請求項10に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法であって、
前記固体微多孔質酸成分が、8-MRアクセスを有し、前記固体微多孔質酸成分の寿命が、転化酸素化物15g/固体微多孔質酸成分1gを超える、または
前記固体微多孔質酸成分が、10-MRアクセスを有し、前記固体微多孔質酸成分の寿命が、転化酸素化物150g/固体微多孔質酸成分1gを超え、
前記固体微多孔質酸成分の前記寿命が、酸素化物のC+C炭化水素への転化がゼロになる時点までの、微多孔質酸成分1グラム当たりのC+C炭化水素に転化される前記酸素化物の累積量として定義される、方法。
【請求項12】
生成物流中のオレフィン対パラフィンの平均体積比が、1以上であり、
生成物流中のC生成物対C生成物の体積比が、0.5以上、1.2以下である、請求項10および11のいずれか一項に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法。
【請求項13】
酸素化物を炭化水素に転化する方法であって、
少なくとも1種の酸素化物を含む供給物流を反応域に導入することと、
水素ガス流を前記反応域に導入することと、
前記供給物流および前記水素ガス流を同時に前記反応域内の触媒と接触させることであって、前記触媒が、8-MR~10-MRアクセスを有する固体微多孔質酸成分を含む、接触させることと、を含み、
前記反応域内の前記水素ガス流が、1バール(100kPa)以上、48バール(4800kPa)以下の分圧を有し、
前記反応域内の前記少なくとも1種の酸素化物が、0.1バール(10kPa)以上、6.75バール(675kPa)以下の分圧を有し、
前記反応域が、425℃以上、475℃以下の温度である、方法。
【請求項14】
前記固体微多孔質酸成分が、以下の基準のうちの1つを満たしている、請求項13に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法であって、
前記固体微多孔質酸成分が、8-MRアクセスを有し、前記固体微多孔質酸成分の寿命が、転化酸素化物15g/固体微多孔質酸成分1gを超える、または
前記固体微多孔質酸成分が、10-MRアクセスを有し、前記固体微多孔質酸成分の寿命が、転化酸素化物150g/固体微多孔質酸成分1gを超え、
前記固体微多孔質酸成分の前記寿命が、酸素化物のC+C炭化水素への転化がゼロになる時点までの、微多孔質酸成分1グラム当たりのC+C炭化水素に転化される前記酸素化物の累積量として定義される、方法。
【請求項15】
生成物流中のオレフィン対パラフィンの平均体積比が、0.01以上、22以下であり、
生成物流中のC生成物対C生成物の体積比が、0.2以上、1.5以下である、請求項13および14のいずれか一項に記載の酸素化物を炭化水素に転化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる、2016年12月21日に出願された米国仮特許出願第62/437,165号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本明細書は、一般に、触媒パッケージに使用される微多孔質構造の寿命および効率を最大にしながら、酸素化物を所望の生成物に転化するための方法および系に関する。具体的には、本明細書は、酸素化物を炭化水素に転化する方法に関し、ここで水素ガス流および酸素化物を含む供給物流は、固体微多孔質酸成分を含む触媒パッケージと接触する。
【0003】
固体微多孔質酸成分は、メタノールからオレフィン(MTO)プロセス、メタノールからプロピレン(MTP)プロセス、メタノールからガソリン(MTG)プロセス、およびハイブリッド触媒プロセス(例えば、メタノール中間体を介した合成ガスの炭化水素への転化)などにおける、酸素化物の炭化水素への転化のために工業的に使用される。これらのプロセスでは、供給物および/または反応器内の酸素化物濃度は、MTO型用途におけるような比較的高いものから、ハイブリッド触媒型プロセスにおけるような比較的低いものまで幅広く変化し得る。使用されるプロセスに関係なく、固体微多孔質酸成分を使用することの問題は、それらの比較的短い寿命である。供給物から生成物への反応中、固体微多孔質酸成分は、不活性化され、再生を必要とし、再生は、高価な再生装置、高価な再生プロセス、流動床反応器ならびに連続的除去および再生を伴う他のものなどの高価な反応器、ならびに生成時間の損失を含み得る。
【0004】
したがって、触媒パッケージ中の固体微多孔質酸成分の寿命を延ばすことができ、それによって高価な再生プロセスおよび装置の必要性を低減させることができるプロセスに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態によれば、酸素化物を炭化水素に転化するプロセスは、少なくとも1種の酸素化物を含む供給物流を反応域に導入することと、水素ガス流を反応域に導入することと、供給物流および水素ガス流を同時に反応域内の触媒と接触させることであって、触媒が、8-MR~10-MRアクセスを有する固体微多孔質酸成分を含む、接触させることと、を含む。反応域内の水素ガス流は、1バール(100kPa)以上、48バール(4800kPa)以下の分圧を有し、反応域は、350℃以上、500℃以下の温度である。
【0006】
別の実施形態によれば、酸素化物を炭化水素に転化するプロセスは、少なくとも1種の酸素化物を含む供給物流を反応域に導入することと、水素ガス流を反応域に導入することと、供給物流および水素ガス流を同時に反応域内の触媒と接触させることであって、触媒が、8-MR~10-MRアクセスを有する固体微多孔質酸成分を含む、接触させることと、を含む。反応域内の水素ガス流は、1バール(100kPa)以上、40バール(4000kPa)以下の分圧を有する。反応域内の少なくとも1種の酸素化物は、0.01バール(1kPa)以上、0.05バール(5kPa)以下の分圧を有し、反応域は、375℃以上、425℃以下の温度である。
【0007】
さらに別の実施形態によれば、酸素化物を炭化水素に転化するプロセスは、少なくとも1種の酸素化物を含む供給物流を反応域に導入することと、水素ガス流を反応域に導入することと、供給物流および水素ガス流を同時に反応域内の触媒と接触させることであって、触媒が、8-MR~10-MRアクセスを有する固体微多孔質酸成分を含む、接触させることと、を含む。反応域内の水素ガス流は、1バール(100kPa)以上、48バール(4800kPa)以下の分圧を有する。反応域内の少なくとも1種の酸素化物は、0.1バール(10kPa)以上、6.75バール(675kPa)以下の分圧を有し、反応域は、425℃以上、475℃以下の温度である。
【0008】
追加の特徴および利点は、後に続く詳細な説明において記載され、その説明から当業者にとって容易に部分的に明らかになるか、後に続く詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0009】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。添付の図面が、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、それを構成する。図面は、本明細書に記載される様々な実施形態を例示し、説明と共に、特許請求される主題の原則および動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本明細書に開示および記載される実施形態による反応域を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
触媒パッケージ中の固体微多孔質酸成分を安定化させながら、酸素化物を炭化水素に転化するプロセスの実施態様をここで詳細に参照し、それらの実施態様は、添付図面に示される。一実施形態では、酸素化物を炭化水素に転化するプロセスは、少なくとも1種の酸素化物を含む供給物流を反応域に導入することと、水素ガス流を反応域に導入することと、供給物流および水素ガス流を同時に反応域内の触媒と接触させることであって、触媒が、8-MR~10-MRアクセスを有する固体微多孔質酸成分を含む、接触させることと、を含み、反応域内の水素ガス流は、1バール(100kPa)以上、48バール(4800kPa)以下の分圧を有し、反応域は、350℃以上、500℃以下の温度である。
【0012】
従来の酸素化物転化プロセスでは、固体微多孔質酸成分の寿命は、比較的短い。本明細書で使用される場合、固体微多孔質酸成分の寿命は、C+C炭化水素への収量がゼロになる時点までの、微多孔質酸成分1グラム当たりのC+C炭化水素に転化される酸素化物の累積量として定義される。例えば、MTOプロセスにおけるSAPO-34の寿命は、SAPO-34の1グラム当たりのC-C炭化水素に転化されるMeOHが、最大約10グラムであることが報告されている。例えば、Marchi,A.J.ら,71 Appl.Catal.,139(1991)を参照されたい。さらに、MTOプロセスにおけるZSM-5の寿命は、ZSM-5の1グラム当たりの炭化水素に転化されるMeOHが、123グラムであることが報告されている。例えば、Schulzetら,154 Catalysis Today 183-194(2010)を参照されたい。SAPO-34およびZSM-5のこれらの寿命は、MTOおよびMTPプロセスにおいて工業的に使用されている固体微多孔質酸成分の寿命の代表例である。しかしながら、酸素化物の炭化水素への転化における固体微多孔質酸の寿命は、結晶サイズ、酸強度、および細孔構造などの多くの要因に依存することが知られている。SAPO-34およびZSM-5はいずれも、長寿命の固体微多孔質酸を表し、他の多くの固体微多孔質酸はより短い寿命を有する。固体微多孔質酸成分は、酸素化物から炭化水素を効率的に生成するのに役立つが、固体微多孔質酸成分の限られた寿命は、本明細書に開示されるプロセスの実施形態によって取り組まれる、酸素化物を炭化水素に転化することにおける1つの制限である。具体的には、酸素化物が炭化水素に転化される反応域に水素を導入することにより、触媒パッケージ中の固体微多孔質酸成分の寿命が延びることがわかった。
【0013】
具体的には、特定の圧力および特定の温度で反応域に水素ガス導入することにより、酸素化物から炭化水素へのプロセスにおける固体微多孔質酸成分の寿命が効果的かつ有意に延びることが見出された。したがって、実施形態は、酸素化物の炭化水素への転化が行われる反応域に一定量の水素が同時供給または再循環されるプロセスを含む。このような反応域内の水素の存在により、触媒の寿命が延びる。いくつかの実施形態では、特定の酸素化物の分圧は、特定の水素ガスの分圧および特定の反応温度と一致し、その結果、いくつかの実施形態では、固体微多孔質酸成分の寿命は、少なくとも転化酸素化物450g/固体微多孔質酸成分1gに延びる。水素ガスを酸素化物から炭化水素への転化プロセスに導入することにより、このような結果をもたらすことになるとは、以前は考えられていなかった。
【0014】
以前は、水素は、供給原料中に、例えばメタノールなどの酸素化物を希釈し、酸素化物を、あまり望ましくないパラフィン生成物とは対照的に、望ましいオレフィン生成物へより効率的に転化することを可能にする不活性希釈剤として、酸素化物から炭化水素への転化プロセスにおいて使用されてきた。米国特許第6,534,692、米国特許第6,872,867、およびWO 2008/110530 A1を参照されたい。従来の考えでは、水素は、反応プロセスにおいて比較的不活性であり、酸素化物から炭化水素への転化プロセスにおいて触媒の寿命にプラスまたはマイナスのどちらの影響も及ぼさなかった。しかしながら、本明細書に開示および記載される実施形態による酸素化物から炭化水素への転化プロセスの実施形態は、酸素化物から炭化水素へのプロセスが行われる反応域内に水素が存在する場合、固体微多孔質酸成分の寿命が延ばされ得ることを示す。
【0015】
ここで図を参照すると、反応域100は、触媒110、水素ガス流101の入口、供給物流102の入口、および生成物流103の出口を備える。反応域100に加えて、分離器120が用いられて生成物流103から水素を水素再循環流104と最終生成物流105に分離することができる。
【0016】
実施形態において、触媒110は、固体微多孔質酸成分を含み、いくつかの実施形態では、触媒は、8~10員環(MR)アクセスを有する固体微多孔質酸成分を含む。特定の実施形態では、触媒は、8-MRアクセスを有する固体微多孔質酸成分を含む。このような実施形態では、固体微多孔質酸成分は、生成物のサイズ分布を制限するために、8-MRアクセスを有し、かつ以下の骨格型CHA、AEI、AFX、ERI、LTA、UFI、RTH、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される骨格型を有する分子ふるいから選択される。この骨格型は、国際ゼオライト協会(International Zeolite Association)の命名規則に対応する。他の実施形態では、触媒は、10-MRアクセスを有し、国際ゼオライト協会の命名規則に対応するMFI骨格型を有する固体微多孔質酸成分を含む。実施形態では、アルミノシリケートとシリコアルミノホスフェート骨格の両方が使用され得ることを理解されたい。特定の実施形態では、分子ふるいは、CHA骨格型を有するSAPO-34シリコアルミノホスフェートであり得る。これらの例としては、SAPO-34およびSSZ-13から選択されるCHAの実施形態、ならびにSAPO-18などのAEIの実施形態を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、用語「SAPO」分子ふるいは、少なくとも0.1重量%、および少なくとも0.5重量%などの、少なくとも0.01重量%のケイ素含有量を有するシリコアルミノホスフェート材料として定義される。これらの材料の多くは、少なくとも5重量%以上のケイ素含有量を有するであろう。したがって、この定義に基づいて、主にアルミノホスフェートであるが、実際には非常に少量のケイ素(すなわち、0.01重量%未満)を含有する分子ふるいは、依然として「AlPO」分子ふるいとして分類されることになる。他の実施形態では、分子ふるいは、MFI骨格型を有するZSM-5アルミノシリケートであり得る。本明細書で使用される場合、用語「ZSM-5」分子ふるいは、少なくとも0.1重量%、および少なくとも0.5重量%などの、少なくとも0.01重量%のアルミニウム含有量を有するアルミノシリケート材料として定義される。上記の骨格型のうちのいずれかを有する分子ふるいの組み合わせもまた、実施形態において使用され得る。固体微多孔質酸成分は、所望の生成物に応じて異なる員環アクセスを有し得ることを理解されたい。例えば、所望の生成物に応じて、8-MR~10-MRアクセスを有する固体微多孔質酸成分が使用され得る。
【0017】
上記のように、固体微多孔質酸成分の寿命は比較的短い。しかし、本明細書に開示および記載される実施形態のプロセスでは、固体微多孔質酸成分の寿命を延ばすために水素が反応域100に添加される。いかなる特定の理論にも縛られることなく、酸素化物から炭化水素への転化は、この微多孔質酸成分の上または中に炭素質種を堆積させることによって、固体微多孔質酸成分を経時的に失活させると考えられる。この劣化は、主に、触媒温度と組み合わされた、触媒の活性部位(すなわち、微多孔質酸成分)での、例えばメタノールなどの酸素化物の分圧の関数である。水素ガス流は、炭素質種の堆積物の形成を防止することによって、またはこの劣化した触媒からこれらの炭素質堆積物と反応して(部分的に)除去することによって炭素質種の堆積に影響を及ぼし、それによって触媒寿命を延ばすと考えられる。この「炭素質堆積物除去速度」は、主に、触媒温度と組み合わされた、触媒の活性部位での水素の分圧の関数である。しかしながら、水素分圧が触媒の活性部位で高すぎた場合、酸素化物から炭化水素への転化が低減し、非効率的なプロセスとなる。したがって、触媒の活性部位での触媒温度、水素の分圧、および酸素化物の分圧は、調和され、酸素化物から炭化水素への転化を著しく低下させることなく、固体微多孔質酸成分の寿命を延ばすことができる。
【0018】
本実施形態によるプロセスでは、水素ガス流101が、反応域100に供給される。水素ガス流101は、本質的には、99.5体積%以上のH、またはさらに100体積%のHなどの、99.0体積%以上のHを含む高純度の水素ガス流である。以下により詳細に議論される水素再循環流104は、水素ガス流101と同じ純度を有することはないであろうと理解されたい。水素ガス流101は、反応域100内の水素ガスが、所望の分圧を有するように、反応域100に導入される他のガスに対して、任意の好適な流量で反応域100に導入することができる。反応域100内の水素ガスの分圧は、実施形態において、1バール(100kPa)以上、48バール(4800kPa)以下である。いくつかの実施形態では、反応域100内の水素の分圧は、1バール(100kPa)以上48バール(4800kPa)以下、3バール(300kPa)以上48バール(4800kPa)以下、8バール(800kPa)以上48バール(4800kPa)以下、10バール(1000kPa)以上48バール(4800kPa)以下、15バール(1500kPa)以上48バール(4800kPa)以下、20バール(2000kPa)以上48バール(4800kPa)以下、25バール(2500kPa)以上48バール(4800kPa)以下、30バール(3500kPa)以上48バール(4800kPa)以下、35バール(3500kPa)以上48バール(4800kPa)以下、または40バール(4000kPa)以上48バール(4800kPa)以下である。
【0019】
さらに他の実施形態では、反応域100内の水素の分圧は、1バール(100kPa)以上45バール(4500kPa)以下、1バール(100kPa)以上40バール(4000kPa)以下、1バール(100kPa)以上35バール(3000kPa)以下、1バール(100kPa)以上30バール(3000kPa)以下、1バール(100kPa)以上25バール(2500kPa)以下、1バール(100kPa)以上20バール(2000kPa)以下、1バール(100kPa)以上15バール(1500kPa)以下、1バール(100kPa)以上10バール(1000kPa)以下、1バール(100kPa)以上8バール(800kPa)以下、1バール(100kPa)以上6バール(600kPa)以下、または1バール(100kPa)以上4バール(400kPa)以下である。
【0020】
実施形態によるプロセスでは、供給ガス流102は、反応域100に供給される。供給ガス流102は、少なくとも1種の酸素化物を含む。いくつかの実施形態において、供給ガス流102中の酸素化物は、主にメタノール、ジメチルエーテル(DME)、およびこれらの混合物である。しかしながら、様々な実施形態において、他の酸素化物(メタノールおよびDME以外)は、不純物として0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満、または0.1重量%未満の量などの少量で、供給ガス流102中に存在し得る。これらの酸素化物としては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ホルムアルデヒド、炭酸ジメチル、ジメチルケトン、酢酸、およびこれらの混合物が挙げられる。不純物を含む供給物流の例として、米国連邦グレードAAメタノールは、0.15重量%未満の総不純物含有量を規定し、その結果、メタノール含有量は99.85重量%を超え、10mg/kg未満のエタノール含有量、20mg/kg未満のアセトン含有量、30mg/kg未満のアセトンとアルデヒドの総含有量、および30mg/kg未満の酢酸として表される総酸、および0.10重量%未満の水含有量を伴う。追加の実施形態では、供給ガス流102は、供給ガス蒸気102に意図的に加えられた、またはメタノールからDMEへの転化の副生成物である水を含み得る。したがって、実施形態では、供給ガス流102は、0重量%以上78重量%以下の水、5重量%以上70重量%以下の水、10重量%以上65重量%以下の水、15重量%以上60重量%以下の水、20重量%以上55重量%以下の水、25重量%以上50重量%以下の水、30重量%以上45重量%以下の水、または40重量%以上45重量%以下の水を含み得る。
【0021】
供給ガス流102は、反応域100内の酸素化物が、所望の分圧を有するように、反応域100に導入される他のガスに対して、任意の好適な流量で反応域100に導入することができる。反応域100内の酸素化物の分圧は、実施形態において、0.01バール(1kPa)以上、7.00バール(700kPa)以下である。いくつかの実施形態では、反応域100内の水素の分圧は、0.02バール(2kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、0.05バール(5kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、0.1バール(10kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、0.5バール(50kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、0.75バール(75kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、1.00バール(100kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、1.50バール(150kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、2.00バール(200kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、2.50バール(250kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、3.00バール(300kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、3.50バール(350kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、4.00バール(400kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、4.50バール(450kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、5.00バール(500kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、5.50バール(550kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、6.00バール(600kPa)以上7.00バール(700kPa)以下、または6.50バール(650kPa)以上7.00バール(700kPa)以下である。
【0022】
さらに他の実施形態では、反応域100内の酸素化物の分圧は、0.01バール(1kPa)以上6.50バール(650kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上6.00バール(600kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上5.50バール(550kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上5.00バール(500kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上4.50バール(450kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上4.00バール(400kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上3.50バール(350kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上3.00バール(300kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上2.50バール(250kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上2.00バール(200kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上1.50バール(150kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上1.00バール(100kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上0.75バール(75kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上0.50バール(50kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上0.10バール(10kPa)以下、0.01バール(1kPa)以上0.05バール(5kPa)以下、または0.01バール(1kPa)以上0.02バール(2kPa)以下である。
【0023】
さらに他の実施形態では、反応域100内の酸素化物の分圧は、0.01バール(1kPa)以上0.05バール(5kPa)以下、0.02バール(2kPa)以上0.05バール(5kPa)以下、0.03バール(3kPa)以上0.05バール(5kPa)以下、または0.04バール(4kPa)以上0.05バール(5kPa)以下である。
【0024】
なおさらなる実施形態では、反応域100内の酸素化物の分圧は、0.10バール(10kPa)以上6.75バール(675kPa)以下、0.50バール(50kPa)以上6.50バール(650kPa)以下、1.00バール(100kPa)以上6.00バール(600kPa)以下、1.50バール(150kPa)以上5.50バール(550kPa)以下、2.00バール(200kPa)以上5.00バール(500kPa)以下、2.50バール(250kPa)以上4.50バール(450kPa)以下、または3.00バール(300kPa)以上4.00バール(400kPa)以下である。
【0025】
実施形態では、水素ガス流101および供給ガス流102の流量は、反応域100内で所望の水素の分圧および酸素化物の分圧を達成するように調整され得る。追加の実施形態では、再循環流104の流量もまた、反応域100内の水素の分圧を調整するように使用され得る。さらに他の実施形態では、不活性ガス流(図示せず)は、水素ガス流101および供給ガス流102と共に導入され、反応域100内の水素および酸素化物の分圧を調節することができる。特定の実施形態では、不活性ガスは、窒素、ヘリウム、またはアルゴンであり得る。反応域100内の水素の分圧を調整するために、上記の流れのうちのいずれかの流量は、個々にまたは任意の組み合わせで使用され得るのを理解されたい。酸素化物が固体微多孔質酸成分と反応する場合、水素の存在が必要である。したがって、実施形態では、水素ガス流101は、供給ガス流102と同時に反応域100に導入される。他の実施形態では、水素ガス流101は、供給ガス流102の導入前に反応域100に導入され、供給ガス流102の導入前に反応域100に水素を予備投入する。
【0026】
触媒の活性部位での水素および酸素化物の分圧は、固体微多孔質酸成分の寿命に影響を与える唯一の反応条件ではない。触媒の温度もまた、固体微多孔質酸成分の寿命に影響を与える。したがって、実施形態では、反応域100内の水素の分圧、反応域100内の酸素化物の分圧、および反応域100の温度は、酸素化物から炭化水素への転化効率を維持しながら、固体微多孔質酸成分の寿命を延ばすために調和される。
【0027】
いくつかの実施形態では、酸素化物から炭化水素への転化中の反応域100内の温度は、350℃以上、500℃以下などの、350℃以上、600℃以下である。他の実施形態では、酸素化物から炭化水素への転化中の反応域100内の温度は、375℃以上500℃以下、400℃以上500℃以下、425℃以上500℃以下、または425℃以上475℃以下である。さらに他の実施形態では、酸素化物から炭化水素への転化中の反応域100内の温度は、350℃以上475℃以下、350℃以上450℃以下、350℃以上425℃以下、または375℃以上425℃以下である。さらに他の実施形態では、酸素化物から炭化水素への転化中の反応域100内の温度は、375℃以上、425℃以下、または425℃以上、475℃以下である。
【0028】
酸素化物から炭化水素への転化中に、反応域100内の水素の分圧、反応域100内の酸素化物の分圧、および反応域100の温度を調和させることにより、固体微多孔質酸成分の寿命を延ばす。本明細書で定義される場合、微多孔質酸成分の「寿命」は、C+C炭化水素への収量がゼロになる時点までの、微多孔質酸成分1グラム当たりのC+C炭化水素に転化される酸素化物の累積量として計算される。触媒の活性部位に水素を含ませることにより、水素が添加されていない反応域と比較して、微多孔質酸成分の寿命を延ばす。微多孔質酸成分の寿命の延長の程度は、酸素化物の分圧、水素の分圧、および温度が調和されるにつれて変化するであろう。本明細書に記載される様々な実施形態は、微多孔質酸成分の最大寿命を有すると定義されるが、いくつかの実施形態では、触媒の活性部位での酸素化物の分圧、触媒の活性部位での水素の分圧、および触媒の温度は、微多孔質酸成分の寿命が本質的に無限大となるように、調和させることができると理解されたい。
【0029】
触媒が8-MRアクセスを有する微多孔質酸成分を含むいくつかの実施形態では、固体微多孔質酸成分の寿命は、転化酸素化物15g超/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物30g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物50g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物75g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物100g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物125g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物150g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物175g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物200g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物225g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物250g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物275g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物300g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物325g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物350g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物375g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物400g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物425g以上/固体微多孔質酸成分1g、または転化酸素化物450g以上/固体微多孔質酸成分1gである。他の実施形態では、固体微多孔質酸成分の寿命は、転化酸素化物6以上450g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物10以上425g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物25以上400g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物50以上375g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物75以上350g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物100以上325g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物125以上300g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物150以上275g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物175以上250g以下/固体微多孔質酸成分1g、または転化酸素化物200以上225g以下/固体微多孔質酸成分1gである。
【0030】
触媒が10-MRアクセスを有する微多孔質酸成分を含むいくつかの実施形態では、固体微多孔質酸成分の寿命は、転化酸素化物150g超/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物175g超/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物200g超/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物225g超/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物250g超/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物275g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物300g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物325g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物350g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物375g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物400g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物425g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物450g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物475g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物500g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物525g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物550g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物575g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物600g以上/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物625g以上/固体微多孔質酸成分1g、または転化酸素化物650g以上/固体微多孔質酸成分1gである。他の実施形態では、固体微多孔質酸成分の寿命は、転化酸素化物6以上625g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物10以上600g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物25以上550g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物50以上500g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物75以上450g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物100以上400g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物125以上350g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物150以上325g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物175以上300g以下/固体微多孔質酸成分1g、転化酸素化物200以上275g以下/固体微多孔質酸成分1g、または転化酸素化物225以上250g以下/固体微多孔質酸成分1gである。
【0031】
固体微多孔質酸成分の寿命は、反応域100内の水素の分圧を増加させることによって延ばされ得るが、過度に反応域100内の水素の分圧を増加させることは、酸素化物から炭化水素への転化に悪影響を及ぼすであろう。しかしながら、水素の分圧、酸素化物の分圧、および温度を調和させることによって、生成物流の組成が制御され得る。例えば、生成物流中のオレフィン対パラフィンの比は、制御され得る。実施形態において、生成物流103中のオレフィン対パラフィンの平均比は、0.01以上である。本明細書で言及されるように、オレフィン対パラフィンの比は、生成物流中のオレフィンの体積対パラフィンの体積として表される。いくつかの実施形態では、生成物流103中のオレフィン対パラフィンの平均比は、0.05以上、0.10以上、0.50以上、1.00以上、1.50以上、または2.00以上である。さらに他の実施形態では、生成物流103中のオレフィン対パラフィンの平均比は、7.00以上、8.00以上、または9.00以上である。いくつかの実施形態では、オレフィン対パラフィンの比が無限大(すなわち、パラフィンの量が本質的に0である場合)に近づくように、水素の分圧、酸素化物の分圧、および温度は、調和させることができる。
【0032】
同様に、実施形態において、酸素化物の分圧、水素の分圧、および温度を調和させることは、Cの体積対Cの体積を制御することを可能にする。本明細書で言及されるように、C対Cの比は、生成物流中のC生成物の体積対C生成物の体積として表される。実施形態では、生成物流103中のC生成物対C生成物の比は、0.1以上、2.7以下である。いくつかの実施形態では、生成物流103中のC生成物対C生成物の比は、0.4以上2.6以下、0.6以上2.5以下、0.8以上2.4以下、1.0以上2.2以下、1.2以上2.0以下、または1.4以上1.8以下である。
【0033】
生成物流が、反応域100を出ると、生成物流は、いくつかの実施形態では、生成物流103中のメタンを含み得る水素成分を炭化水素生成物から分離する分離器120に導入され得る。生成物流103からの水素成分は、次いで水素再循環流104を介して反応域100に送られ得る。図面には示されていないが、水素再循環流は、水素成分を高純度の水素に転化する処理装置に導入され得ることを理解されたい。
【0034】
最終生成物流105もまた、分離器120を出る。最終生成物流は、例えばC~Cのオレフィンまたはパラフィンなどの所望の炭化水素生成物を含有する。最終生成物流105は、最終生成物流105中の望ましくない構成成分から所望の生成物を分離する、または最終生成物流105中の所望の生成物を互いに分離する任意の好適な分離装置に導入され得ることを理解されたい。
【0035】
様々な実施形態において、上に開示された酸素化物から炭化水素への転化中の反応域における水素の分圧、反応域における酸素化物の分圧、および反応域の温度はそれぞれ、個々に選択され得る、また個々に開示されている任意の他の反応域の水素の分圧、酸素化物の分圧、および温度と組み合わされ得る。本明細書に開示される実施形態は、上に開示されたプロセス条件の任意の変化を想像し、含む。
【0036】
特定の実施形態では、酸素化物から炭化水素への転化中の、反応域内の水素の分圧は、2バール(200kPa)以上、35バール(3500kPa)以下などの、1バール(100kPa)以上、40バール(4000kPa)以下であり、反応域内の酸素化物の分圧は、0.01バール(1kPa)以上、0.02バール(2kPa)以下などの、0.01バール(1kPa)以上、0.05バール(5kPa)以下であり、反応域の温度は、約400℃などの、375℃以上、425℃以下である。この実施形態において、固体微多孔質酸成分の寿命は、酸素化物6以上450g以下/固体微多孔質酸成分1gである。さらに、この実施形態によって生成される生成物流のオレフィン対パラフィンの平均比は、3以上などの、1以上である。この実施形態によって生成される生成物流のC対Cの比は、0.6以上、1.0以下などの、0.5以上、1.2以下である。
【0037】
別の特定の実施形態では、酸素化物から炭化水素への転化中の、反応域内の水素の分圧は、5バール(500kPa)以上、40バール(4000kPa)以下などの、1バール(100kPa)以上、48バール(4800kPa)以下であり、反応域内の酸素化物の分圧は、0.5バール(50kPa)以上、6.50バール(650kPa)以下などの、0.1バール(10kPa)以上、6.75バール(675kPa)以下であり、反応域の温度は、約450℃などの、425℃以上、475℃以下である。この実施形態において、固体微多孔質酸成分の寿命は、酸素化物6以上225g以下/固体微多孔質酸成分1gである。さらに、この実施形態によって生成される生成物流のオレフィン対パラフィンの平均比は、0.05以上などの、0.01以上である。この実施形態によって生成される生成物流のC対Cの比は、0.2以上、1.5以下である。
【実施例
【0038】
実施形態は、以下の実施例によってさらに明確になるであろう。
【0039】
実施例1
実施例1では、実施例1においてメタノールである酸素化物の分圧が、従来のレベルに維持され、水素の分圧が、固体微多孔質酸の寿命に及ぼす水素の分圧の影響を示すために変えられるプロセスが比較され、固体微多孔質酸は、実施例1の試料ではSAPO-34である。実施例1は、水素の分圧が、固体微多孔質酸の寿命に大きな影響を及ぼすことを示す。
【0040】
アルミニウムイソプロポキシド(Al(OC)8.2グラムと、85重量%のオルトリン酸3.9グラムの水8.4グラム溶液を一緒に撹拌することによって、固体微多孔質酸の成分(すなわち、SAPO-34)を形成した。続いて、30重量%のSiOの水性ゾル(Ludox AS-30)1.2グラムおよび水0.5グラムを、結果として生じるものが均質になるまで、混合物中で攪拌した。最後に、35重量%の水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)の水溶液16.8グラムを、混合物に添加して、反応混合物を形成した。
【0041】
配合したら、反応混合物をステンレス鋼撹拌パー(Parr)反応器に入れ、0.5℃/分で200℃に加熱した。60RPMで撹拌しながら、温度を自発性圧力下で120時間維持した。生成物を遠心分離により回収し、水で洗浄し、90℃で一晩中乾燥した。
【0042】
触媒試験に必要な回収生成物の一部を、空気中のマッフル炉中で焼成して、鋳型剤を除去した。これは、炉内の温度を2℃/分の加熱速度で600℃まで徐々に上げ、600℃で4時間保持することによって達成された。この焼成材料を、SAPO-34成分として、後続の試料および実施例において用いた。
【0043】
上記開示されたようにSAPO-34を生成したら、上記で処方されたSAPO-34の2.4mgを、シリコンカーバイド(SiC)2.5gと混合し、この混合物を反応器に投入した。
【0044】
実施例1の試料それぞれについてのプロセスは、以下のように始まる。10sccmの窒素流を反応器床に適用した。反応器圧力を50バール(5000KPa)に設定し、反応器温度を個々の試料のそれぞれについて以下に示すような値に設定した。温度および圧力設定点に達したら、下記に示すような供給物流を適用し、反応器出口組成を測定した。
【0045】
実施例1の試料のそれぞれの供給物流は、以下のとおりである。供給物A1は、710体積(ppm)のメタノール/10体積%の窒素/90体積%のヘリウムの混合物であり、供給物A2は、1065体積(ppm)のメタノール/10体積%の窒素/90体積%のヘリウムの混合物であり、供給物Bは、100体積%のヘリウムであり、供給物Cは、100体積%の水素であった。
【0046】
試料CE1
実施例1の第1の試料(CE1)は、プロセス中に水素が反応域に添加されない比較例である。試料CE1を、400℃で、次の供給物および流量、100sccmでの供給物A1、および200sccmでの供給物Bを用いて行った。CE1についての測定結果を以下の表1に示す。
【0047】
試料E1
第2~第6の試料(E1~E5)は、SAPO-34の寿命に及ぼす水素分圧の影響を示す。試料E1を、400℃で、次の供給物および流量、100sccmでの供給物A2、180sccmでの供給物B、および6sccmでの供給物Cを用いて行った。E1についての測定結果を以下の表1に示す。
【0048】
試料E2
試料E2を、400℃で、次の供給物および流量、100sccmでの供給物A1、180sccmでの供給物B、および20sccmでの供給物Cを用いて行った。E2についての測定結果を以下の表1に示す。
【0049】
試料E3
試料E3を、400℃で、次の供給物および流量、100sccmでの供給物A1、150sccmでの供給物B、および50sccmでの供給物Cを用いて行った。E3についての測定結果を以下の表1に示す。
【0050】
試料E4
試料E3を、400℃で、次の供給物および流量、100sccmでの供給物A1、および200sccmでの供給物Cを用いて行った。E4についての測定結果を以下の表1に示す。
【0051】
試料E5
試料E5を、400℃で、次の供給物および流量、50sccmでの供給物A2、および200sccmでの供給物Cを用いて行った。E5についての測定結果を以下の表1に示す。
【0052】
試料E6
第7および第8の試料(E6およびE7)は、SAPO-34の寿命に及ぼす温度の影響を示す。試料E6を、350℃で、次の供給物および流量、100sccmでの供給物A2、150sccmでの供給物B、および50sccmでの供給物Cを用いて行った。E6についての測定結果を以下の表1に示す。
【0053】
試料E7
試料E7を、500℃で、次の供給物および流量、100sccmでの供給物A2、150sccmでの供給物B、および50sccmでの供給物Cを用いて行った。E7についての測定結果を以下の表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例2
実施例2では、実施例2においてメタノールである酸素化物の分圧、および水素の分圧は、各分圧が固体微多孔質酸の寿命に及ぼす影響を示すために変えられるプロセスが比較され、固体微多孔質酸は、実施例2の試料ではSAPO-34である。実施例2は、酸素化物の分圧および水素の分圧が、固体微多孔質酸の寿命に大きな影響を及ぼし、固体微多孔質酸の寿命を延ばす一方で同時に、所望の生成物を提供するプロセスをもたらすように調和され得る。
【0056】
上記の実施例1に開示されたようにSAPO-34を生成したら、500mgのSAPO-34を反応器に投入した。
【0057】
実施例2の試料それぞれについてのプロセスは、以下のように始まる。10sccmの窒素流を反応器床に適用した。反応器圧力および反応器温度を、個々の試料のそれぞれについて以下に示すような値に設定した。温度および圧力設定点に達したら、下記に示すような供給物流を適用し、反応器出口組成を測定した。
【0058】
実施例2の試料のそれぞれの供給物流は、以下のとおりである。供給物Aは、高純度メタノールの液体流であり(液体がガスとして反応器に入る前に、液体を予熱器で蒸発させる)、供給物Bは、100体積%の窒素であり、供給物Cは、100体積%の水素であった。
【0059】
試料CE2
実施例2の第1の試料(CE2)は、プロセス中に水素が反応域に添加されない比較例である。試料CE2を、450℃、1バール(100kPa)で、次の供給物および流量、0.01ml液体/分での供給物A、および55sccmでの供給物Bを用いて行った。CE2についての測定結果を以下の表2に示す。
【0060】
試料E8
試料E8を、450℃、1バール(100kPa)で、次の供給物および流量、0.01ml液体/分での供給物A、10sccmでの供給物B、および45sccmでの供給物Cを用いて行った。E8についての測定結果を以下の表2に示す。
【0061】
試料E9
試料E9を、450℃、20バール(2000kPa)で、次の供給物および流量、0.01ml液体/分での供給物A、10sccmでの供給物B、および45sccmでの供給物Cを用いて行った。E9についての測定結果を以下の表2に示す。
【0062】
試料E10
試料E10を、450℃、30バール(3000kPa)で、次の供給物および流量、0.01ml液体/分での供給物A、10sccmでの供給物B、および45sccmでの供給物Cを用いて行った。E10についての測定結果を以下の表2に示す。
【0063】
試料E11
試料E11を、450℃、50バール(5000kPa)で、次の供給物および流量、0.01ml液体/分での供給物A、10sccmでの供給物B、および45sccmでの供給物Cを用いて行った。E11についての測定結果を以下の表2に示す。
【0064】
試料E12
試料E12を、450℃、65バール(6500kPa)で、次の供給物および流量、0.01ml液体/分での供給物A、10sccmでの供給物B、および45sccmでの供給物Cを用いて行った。E12についての測定結果を以下の表2に示す。
【0065】
試料E13
試料E13を、350℃、50バール(5000kPa)で、次の供給物および流量、0.01ml液体/分での供給物A、10sccmでの供給物B、および45sccmでの供給物Cを用いて行った。E13についての測定結果を以下の表2に示す。
【0066】
試料E14
試料E14を、500℃、50バール(5000kPa)で、次の供給物および流量、0.01ml液体/分での供給物A、10sccmでの供給物B、および45sccmでの供給物Cを用いて行った。E14についての測定結果を以下の表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例3
実施例3は、水素分圧および実施例3においてメタノールである酸素化物分圧が、実施例3においてZSM-5である固体微多孔質酸の寿命に及ぼす影響を示す。実施例3は、酸素化物の分圧および水素の分圧が、ZSM-5固体微多孔質酸の寿命に大きな影響を及ぼすことを示す。
【0069】
ZSM-5触媒(Zeolyst CBV28014として市販されている)95mgを、炭化ケイ素(SiC)1.5グラムと混合した。次いで、この混合物を反応器に投入した。
【0070】
実施例3の試料それぞれについてのプロセスは、以下のように始まる。10sccmの窒素流を反応器床に適用した。反応器温度を450℃に設定し、反応器圧力を個々の試料のそれぞれについて以下に示すような値に設定した。温度および圧力設定点に達したら、下記に示すような供給物流を適用し、反応器出口組成を測定した。
【0071】
実施例3の試料のそれぞれの供給物流は、以下のとおりである。供給物Aは、高純度メタノールの液体流であり(液体がガスとして反応器に入る前に、液体を予熱器で蒸発させる)、供給物Bは、100体積%の窒素であり、供給物Cは、100体積%の水素であった。
【0072】
試料CE3
実施例3の第1の試料(CE3)は、プロセス中に水素が反応域に添加されない比較例である。試料CE3を、1バール(100kPa)で、次の供給物および流量、0.04ml液体/分での供給物A、および200sccmでの供給物Bを用いて行った。CE3についての測定結果を以下の表3に示す。
【0073】
試料E15
試料E15を、10バール(1000kPa)で、次の供給物および流量、0.04ml液体/分での供給物A、22sccmでの供給物B、および178sccmでの供給物Cを用いて行った。E15についての測定結果を以下の表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書で記載される実施形態に様々な修正および変更を加え得ることが当業者には明らかであろう。したがって、そのような修正および変更が添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に入る限り、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態の修正および変更を包含することが意図される。
図1