IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セルラー リサーチ, インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】流体チャネルの親水性コーティング
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20220712BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220712BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
C12M1/00 A
C12Q1/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019538217
(86)(22)【出願日】2018-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 US2018013379
(87)【国際公開番号】W WO2018132610
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】62/446,223
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514215893
【氏名又は名称】セルラー リサーチ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】スプーラー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】リ,シシン
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0289669(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0035759(US,A1)
【文献】特表2016-533187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体チャネル、注入口及び放出口を含む、フローセルを有しており、
前記流体チャネルは、天井部、第1側壁部及び流体チャネル底部を含み、前記天井部及び前記第1側壁部が、天井-第1側壁端部を形成し、前記流体チャネル底部及び前記第1側壁部が底-第1側壁端部を形成し、
前記流体チャネルは、第2側壁部を含み、前記天井部及び前記第2側壁部が、天井-第2側壁端部を形成し、前記流体チャネル底部及び前記第2側壁部が底-第2側壁端部を形成し、
前記天井部の接触角は、前記第1側壁部及び前記第2側壁部の接触角より少なくとも10度小さく、
前記流体チャネルの前記流体チャネル底部は、複数のマイクロウェルを含む基板を有し、
前記注入口及び前記放出口は、前記流体チャネルを介して前記フローセルと流体連通する、装置。
【請求項2】
前記流体チャネルは、非円形の断面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流体チャネルは、ほぼ矩形の断面を有する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1側壁部は、1~15度の正の抜き勾配を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記基板は、シリコン、溶融シリカ、ガラス、ポリマー、金属、エラストマー、ポリジメチルシロキサン、アガロース、ヒドロゲル、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記フローセルは、シリコン、溶融シリカ、ガラス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリイミド、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、金属、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記天井部は親水性である、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記基板の前記複数のマイクロウェルに存在する、複数の粒子を更に含み、前記複数のマイクロウェルの少なくとも25%はそれぞれ、1つの粒子を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記粒子は、ビーズまたは細胞を含む、請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記ビーズは、複数の確率バーコードを含む、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記複数のマイクロウェルは、1000~5000000個のマイクロウェルを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
細胞サンプル、検定用試薬、ビーズ懸濁液、装置からの廃棄物、またはこれらの組み合わせを添加または除去するための、ピペット先端境界面を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記細胞サンプル、前記検定用試薬、前記ビーズ懸濁液、またはこれらの組み合わせを更に含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
サンプルを充填するための方法であって、
(a)請求項1~13のいずれか一項に記載の装置を提供することと、
(b)ガスを、前記注入口を介して前記流体チャネル内に導入することと、
(c)第1の複数の粒子を含む第1サンプルを、前記注入口を介して前記流体チャネルに導入することであって、
それによって、前記複数のマイクロウェルの少なくとも25%はそれぞれ、前記第1の複数の粒子の1つの粒子を含む、前記導入することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、流体チャネルの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコーディングなどの方法及び技術は、単細胞解析に有用である、特に、例えば、逆転写、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、及び次世代配列決定(NGS)を使用して、単細胞の状態を決定するべく遺伝子発現プロファイルを解読するために有用である。
【0003】
該方法及び技術は、粒子(例えば、底にマイクロウェルアレイを備えるフローセル上のバーコードを含有するビーズ及び細胞)の効率的な添加を必要とする。このようなフローセルは、単一ビーズ及び単細胞をマイクロウェルアレイのマイクロウェルに導入することによって、単細胞の遺伝子発現プロファイルを解読するために使用できる。
【発明の概要】
【0004】
バーコーディング(例えば、確率バーコーディング)のための装置が、本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、装置は、流体チャネル、注入口及び放出口を含むフローセルを有し、流体チャネルは、天井部、第1側壁部及び底部を含み、天井部及び第1側壁部は、天井-第1側壁端部を形成し、底部及び第1側壁部は、底-第1側壁端部を形成し、天井部の接触角は、第1側壁部の接触角より少なくとも10度小さく、流体チャネルの底部は、複数のマイクロウェルを含む基板を有し、注入口及び放出口は、流体チャネルを介してフローセルと流体連通する。流体チャネルは、第2側壁部を含むことができ、天井部及び第2側壁部は、天井第2側壁部を形成し、底部及び第2側壁部は底第2側壁部を形成する。
【0005】
いくつかの実施形態では、流体チャネルは、非円形の断面またはほぼ矩形の断面を有する。流体チャネルは、少なくとも2mm、約4mmまたは約7mmの幅を有する。流体チャネルは、少なくとも0.8mmの高さ、約1.2mmの高さであり得る。
【0006】
いくつかの実施形態では、基板は、流体チャネルの底部を形成できる、または基板は、流体チャネルの底部上にあることができる。いくつかの実施形態では、基板は、シリコン、溶融シリカ、ガラス、ポリマー、金属、エラストマー、ポリジメチルシロキサン、アガロース、ヒドロゲル、またはこれらの組み合わせを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、フローセルは、シリコン、溶融シリカ、ガラス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリイミド、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、金属、またはこれらの組み合わせを含む。環状オレフィンポリマー(COP)は、Zeonor 1020RまたはZeonor 1060Rを含むことができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、天井部は親水性である。天井部の接触角は、天井部の複数の位置の接触角の平均に対応する。いくつかの実施形態では、天井部の接触角は、0~80度、0~60度または最大で10度である。天井部の接触角は、第1側壁部の接触角より、少なくとも30度または少なくとも50度小さい場合がある。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1側壁部の接触角は、第1側壁部の複数の位置の接触角の平均に対応する。第1側壁部の接触角は、約88度であり得る。いくつかの実施形態では、天井部の接触角は第1側壁部の接触角より十分に小さく、流体チャネル中の非層流を可能にする。いくつかの実施形態では、第1側壁部は、1~15度の正の抜け角度を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、流体チャネル中の非層流は、流体チャネル中の流動による、基板表面上の粒子の振動を可能にする。流動と底部との間の境界の流動速度は、ゼロ以外であり得る。流体チャネルの断面にわたる流動の相対流速は、一定であり得る、またはほぼ一定であり得る。非層流は、プラグフローであり得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、非層流は、ほぼプラグフローであり得る。プラグフローは、ほぼ水平プラグフローであり得る。水平プラグフローは、毛細管を利用した水平プラグフローであり得る。いくつかの実施形態では、プラグフローは、ガス(例えば空気、CO2 またはN2 )の浮力に依存しなくてもよい。プラグフローは、装置を傾けることに依存しなくてもよい。プラグフローは、緩衝液-ガス界面であり得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、天井部は、親水性コーティングを含む。親水性コーティングは、超親水性コーティングであり得る。親水性コーティングは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリHema、プルロニック酸F68、プルロニック酸F108、プルロニック酸F127、ポリソルベート20、二酸化ケイ素(SiO2 )、窒化ケイ素、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。親水性コーティングは、0~80度、0~60度、または最大で23度の接触角を有する。天井部は、スパッタリング、熱成長、吸着、共有結合またはこれらの任意の組み合わせによって親水性コーティングで被覆されることができる。いくつかの実施形態では、親水性コーティングは、例えば100~1000μmだけ、または天井部の幅の1%~25%だけ、天井部及び第1側壁部により形成される端からオフセットされる。
【0013】
いくつかの実施形態では、装置は、基板の複数のマイクロウェルに存在する、複数の粒子を含み、複数のマイクロウェルの少なくとも25%はそれぞれ、1つの粒子を含有する。いくつかの実施形態では、複数のマイクロウェルの少なくとも50%または75%はそれぞれ、1つの粒子を含む。粒子は、ビーズまたは細胞を含むことができる。ビーズは、複数のバーコード(例えば、確率バーコード)を含むことができる。複数のバーコードのそれぞれは、固有の配列を有する、少なくとも100個または1000個の分子標識を含む群から選択される、分子標識を含むことができる。複数のバーコードの異なるバーコードは、同じ細胞標識を有することができる。複数のマイクロウェルは、少なくとも100個のマイクロウェル(例えば、1000個~5000000個のマイクロウェル)を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、1フェムトリットル~1マイクロリットルまたは1ピコリットル~1ナノリットルの容積を有する。複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、基板の平面に非円形断面を有することができて、基板の平面の非円形断面は、正方形または六角形であり得る。複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、深さ25~100μm(例えば、深さ50μm)であり得る。複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、25~100μm(例えば、50μm)の幅を有することができる。マイクロウェルの深さに対するマイクロウェルの幅のアスペクト比は、0.1~2であり得る。いくつかの実施形態では、複数のマイクロウェルのマイクロウェルの寸法によって、マイクロウェルは最大で1つのビーズを含有すことが可能になる。最大で1つのビーズの直径に対するマイクロウェルの幅の比は、1.2~1.8であり得る。いくつかの実施形態では、1つのビーズを含有する複数のマイクロウェルの割合は、少なくとも90%である。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリHema、プルロニック酸F68、プルロニック酸F108、プルロニック酸F127、ポリソルベート20、二酸化ケイ素(SiO2 )、窒化ケイ素、またはこれらの任意の組み合わせのコーティングを含む。複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、プラズマ処理した表面を含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、注入口及び放出口は、流体チャネルを通過する流体の流動を方向づけて、それにより、流体をマイクロウェルに接触させることが可能である。いくつかの実施形態では、装置は、細胞サンプル、検定用試薬、ビーズ懸濁液、装置からの廃棄物、またはこれらの組み合わせを添加または除去するための、ピペット先端境界面を含む。装置は、細胞サンプル、検定用試薬、ビーズ懸濁液、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0017】
サンプル添加の方法が、本明細書で開示されている。いくつかの実施形態では、方法は、(a)流体チャネル、注入口及び放出口を含むフローセルを含む装置であって、流体チャネルは、天井部、第1側壁部及び底部を含み、天井部及び第1側壁部は、天井-第1側壁端部を形成し、底部及び第1側壁部は、底-第1側壁端部を形成し、天井部の接触角は、第1側壁部の接触角より少なくとも10度小さく、底部は、複数のマイクロウェルを含む基板を有し、注入口及び放出口は、流体チャネルを介してフローセルと流体連通する、装置を提供することと、(b)ガス(例えば、空気、CO2 またはN2 )を、注入口を介して流体チャネル内に導入することと、(c)第1の複数の粒子を含む第1サンプルを、注入口を介して流体チャネル内に導入することとを含み、それによって、複数のマイクロウェルの少なくとも25%はそれぞれ、第1の複数の粒子の1つの粒子を含む。いくつかの実施形態では、複数のマイクロウェルの少なくとも50%または75%はそれぞれ、第1の複数の粒子の1つの粒子を含む。流体チャネルは、第2側壁部を含むことができ、天井部及び第2側壁部は、天井-第2側壁部を形成し、底部及び第2側壁部は底-第2側壁部を形成する。
【0018】
いくつかの実施形態では、該方法は、(d)ガス(例えば、空気、CO2 またはN2 )を、注入口を介して流体チャネル内に導入することと、(e)第1サンプルを流体チャネルに導入した後、第2サンプルを注入口を介して流体チャネル内に導入することとを含むことができ、第2サンプルは、第2の複数の粒子を含み、それによって、複数のマイクロウェルの少なくとも25%はそれぞれ、第2の複数の粒子の1つの粒子を含む。いくつかの実施形態では、複数のマイクロウェルの少なくとも50%または75%はそれぞれ、第2の複数の粒子の1つの粒子を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、(e)の注入口を介して第2サンプルを流体チャネル内に導入した後、複数のマイクロウェルの少なくとも25%または50%はそれぞれ、第1の複数の粒子の1つの粒子及び第2の複数の粒子の1つの粒子を含む。
【0020】
第1の複数の粒子は複数のビーズを含むことができ、複数のビーズのビーズは、複数のバーコード(例えば、確率バーコード)を含むことができる。第2の複数の粒子は、複数の細胞を含む。第1の複数の粒子は、複数の細胞を含む。第2の複数の粒子は複数のビーズを含むことができ、複数のビーズのビーズは、複数のバーコード(例えば、確率バーコード)を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の複数の粒子の複数の細胞、または第2の複数の粒子の複数の細胞は、幹細胞、がん細胞、血液細胞、末梢血単核細胞、循環腫瘍細胞、乳癌細胞、所望の細胞周期の細胞、またはこれらの組み合わせを含む。第1サンプルまたは第2サンプルは、生体試料、臨床試料、環境試料、またはこれらの組み合わせを含む。第1サンプルまたは第2サンプルは、患者からの生体液、組織及び細胞のうちの1つ以上を含むことができる。第1サンプルまたは第2サンプルは、血液、尿、脳脊髄液、肋膜液、羊水、精液、唾液、骨髄、生検サンプル、またはこれらの組み合わせを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、(b)の注入口を介してガスを流体チャネル内に導入することは、注入口を介してガスを流体チャネル内に注入することを含む。注入口を介して第1サンプルを流体チャネル内に導入することは、注入口を介して第1サンプルを流体チャネル内に注入することを含むことができる。(d)の注入口を介してガスを流体チャネル内に導入することは、注入口を介してガスを流体チャネル内に注入することを含むことができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、該方法は、(d)の注入口を介してガスまたは別のガスを流体チャネル内に導入する前に、注入口を介して第1の緩衝液を流体チャネル内に導入して、底部にあって、複数のマイクロウェルのいずれにも含有されない、第1の複数の粒子を除去することを含む。方法は、(e)の注入口を介して第2サンプルを流体チャネル内に導入した後に、注入口を介して第2の緩衝液を流体チャネル内に導入して、底部にあって、複数のマイクロウェルのいずれにも含有されない、第2の複数の粒子を除去することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、流体チャネルは、非円形の断面またはほぼ矩形の断面を有する。流体チャネルは、少なくとも2mm、約7mmまたは約4mmの幅を有することができる。流体チャネルは、少なくとも0.8mmの高さ、約1.2mmの高さであり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、基板は、流体チャネルの底部を形成できる、または基板は、流体チャネルの底部上にあることができる。いくつかの実施形態では、基板は、シリコン、溶融シリカ、ガラス、ポリマー、金属、エラストマー、ポリジメチルシロキサン、アガロース、ヒドロゲル、またはこれらの組み合わせを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、フローセルは、シリコン、溶融シリカ、ガラス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリイミド、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、金属、またはこれらの組み合わせを含む。環状オレフィンポリマー(COP)は、Zeonor 1020RまたはZeonor 1060Rを含むことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、天井部は親水性である。天井部の接触角は、天井部の複数の位置の接触角の平均に対応する。いくつかの実施形態では、天井部の接触角は、0~80度、0~60度または最大で10度である。天井部の接触角は、第1側壁部の接触角より、少なくとも30度または少なくとも50度小さい場合がある。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1側壁部の接触角は、第1側壁部の複数の位置の接触角の平均に対応する。第1側壁部の接触角は、約88度であり得る。いくつかの実施形態では、天井部の接触角は第1側壁部の接触角より十分に小さく、流体チャネル中の非層流を可能にする。いくつかの実施形態では、第1側壁部は、1~15度の正の抜け角度を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、流体チャネル中の非層流は、流体チャネル中の流動による、基板表面上の粒子の振動を可能にする。流動と底部との間の境界の流動速度は、ゼロ以外であり得る。流体チャネルの断面にわたる流動の相対流速は、一定であり得る、またはほぼ一定であり得る。非層流は、プラグフローであり得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、非層流は、ほぼプラグフローであり得る。プラグフローは、ほぼ水平プラグフローであり得る。水平プラグフローは、毛細管を利用した水平プラグフローであり得る。いくつかの実施形態では、プラグフローは、ガスの浮力に依存することができない。プラグフローは、装置を傾けることに依存することができない。プラグフローは、緩衝液-ガス界面であり得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、天井部は、親水性コーティングを含む。親水性コーティングは、超親水性コーティングであり得る。親水性コーティングは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリHema、プルロニック酸F68、プルロニック酸F108、プルロニック酸F127、ポリソルベート20、二酸化ケイ素(SiO2 )、窒化ケイ素、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。親水性コーティングは、0~80度、0~60度、または最大で23度の接触角を有する。天井部は、スパッタリング、熱成長、吸着、共有結合またはこれらの任意の組み合わせによって、親水性コーティングで被覆されることができる。いくつかの実施形態では、親水性コーティングは、例えば100~1000μmだけ、または天井部の幅の1%~25%だけ、天井部及び第1側壁部により形成される端からオフセットされる。
【0032】
いくつかの実施形態では、基板は、複数の粒子を含み、複数のマイクロウェルの少なくとも25%はそれぞれ、1つの粒子を含有する。複数のマイクロウェルの少なくとも50%または75%はそれぞれ、1つの粒子を含む。粒子は、ビーズまたは細胞を含むことができる。ビーズは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリスチレン、ガラス、ポリプロピレン、アガロース、ゼラチン、ヒドロゲル、常磁性体、セラミック、プラスチック、ガラス、メチルスチレン、アクリルポリマー、チタン、ラテックス、セファロース、セルロース、ナイロン、シリコーン、またはこれらの任意の組み合わせの材料を含むことができる。ビーズは、複数のバーコード(例えば、確率バーコード)を含むことができる。複数のバーコードのそれぞれは、固有の配列を有する、少なくとも100個または1000個の分子標識を含む群から選択される、分子標識を含むことができる。複数のバーコードの異なるバーコードは、同じ細胞標識を有することができる。複数のマイクロウェルは、少なくとも100個のマイクロウェル(例えば、1000~5000000個のマイクロウェル)を含むことができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、1フェムトリットル~1マイクロリットルまたは1ピコリットル~1ナノリットルの容積を有する。複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、基板の平面に非円形断面を有することができて、基板の平面の非円形断面は、正方形または六角形であり得る。複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、深さ25~100μm(例えば、深さ50μm)であり得る。複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、25~100μm(例えば、50μm)の幅を有することができる。マイクロウェルの深さに対するマイクロウェルの幅のアスペクト比は、0.1~2であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、複数のマイクロウェルのマイクロウェルの寸法によって、マイクロウェルは最大で1つのビーズを含有することが可能になる。最大で1つのビーズの直径に対するマイクロウェルの幅の比は、1.2~1.8であり得る。いくつかの実施形態では、1つのビーズを含有する複数のマイクロウェルの割合は、少なくとも90%である。
【0035】
いくつかの実施形態では、複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリHema、プルロニック酸F68、プルロニック酸F108、プルロニック酸F127、ポリソルベート20、二酸化ケイ素((SiO2 )、窒化ケイ素、またはこれらの任意の組み合わせのコーティングを含む。複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、プラズマ処理した表面を含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、注入口及び放出口は、流体チャネルを通して流体の流動を方向づけて、それにより、流体をマイクロウェルに接触させることが可能である。いくつかの実施形態では、装置は、細胞サンプル、検定用試薬、ビーズ懸濁液、装置からの廃棄物、またはこれらの組み合わせを添加または除去するための、ピペット先端境界面を含む。装置は、細胞サンプル、検定用試薬、ビーズ懸濁液、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】非限定の代表的確率バーコードを示す。
図2】確率バーコーディング及びデジタル計数の非限定の代表的ワークフローを示す。
図3】複数の標的から確率バーコーディングした標的のインデックス付加したライブラリを作製するための非限定の代表的処理を示す概略図である。
図4】A,Bは、流動の方向に沿って層流及びプラグフローの相対速度プロファイルを示す概略図である。
図5】A,Bは、ガス緩衝液プラグフローの浮力を使用することと、水平プラグフローの毛細管を利用した流れを使用することとの概略図を示す。
図6】A,Bは、流体チャネル天井部の全体が親水性コーティングで被覆されているとき、または流体チャネル天井部が、流体チャネル天井部の端を除いて、親水性コーティングで被覆されているときの、毛細管流動及び圧力駆動流の方向を示す概略図である。
図7A】バーコーディングの代表的なカートリッジの分解図を示す。
図7B図7Aに示す代表的なカートリッジの断面図を示す。
図8図7Bに示すバーコーディング用のカートリッジの代表的なチャネルの断面図を示す。
図9-1】Aは、コーティングした流体チャネルの天井部、側壁部及び/または底部を有する非限定の代表的流体チャネルの断面図を示す概略図である。
図9-2】B~Dは、コーティングした流体チャネルの天井部、側壁部及び/または底部を有する非限定の代表的流体チャネルの断面図を示す概略図である。
図9-3】E~Hは、コーティングした流体チャネルの天井部、側壁部及び/または底部を有する非限定の代表的流体チャネルの断面図を示す概略図である。
図10A】流体チャネル境界で、十分なビーズ凝集を示す、マイクロウェルアレイの画像である。マイクロウェルアレイは、フローセルの流体チャネルの底部にあった。フローセルの流体チャネルの底部は、二酸化ケイ素の親水性コーティングを有するが、フローセルの流体チャネルの天井部及び側壁部はいずれも、二酸化ケイ素の親水性コーティングを有しなかった。ビーズ凝集は、流体チャネル境界で十分あった。
図10B】流体チャネル境界で、十分なビーズ凝集を示す、マイクロウェルアレイの画像である。マイクロウェルアレイは、フローセルの流体チャネルの底部にあった。フローセルの流体チャネルの底部は、二酸化ケイ素の親水性コーティングを有するが、フローセルの流体チャネルの天井部及び側壁部はいずれも、二酸化ケイ素の親水性コーティングを有しなかった。ビーズ凝集は、流体チャネル境界で十分あった。
図11-1】Aは、マイクロウェルアレイの画像を示す。マイクロウェルアレイは、フローセルの流体チャネルの底部に位置した。フローセルの流体チャネルの天井部及び側壁部は、その表面に二酸化ケイ素の親水性コーティングを有した。流体チャネルの底部は、二酸化ケイ素の親水性コーティングを有しなかった。1及び9と標識したマイクロウェルアレイの領域は、それぞれフローセルの注入口及び放出口により近い領域に対応する。B,Cは、ビーズのダブレットを有するマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合が、マイクロウェルアレイの領域1(フローセルの注入口により近い)の流体チャネルの中心及び境界で同程度だったことを示す画像である。
図11-2】D,Eは、ビーズのダブレットを有するマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合が、マイクロウェルアレイの領域9(フローセルの放出口により近い)の流体チャネルの境界と比較して、中心で少なかったことを示す画像である。
図11-3】F~Iは、流動方向に沿ってビーズがない、1つのビーズまたはビーズのダブレットを有するマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合を示す、プロットである。
図12A】ビーズの凝集がフローセル境界で著しく低減されたことを示す、マイクロウェルアレイの画像である。マイクロウェルアレイは、フローセルの底部にある。フローセルの流体チャネルの天井部は、親水性コーティングを有したが、側壁部及び底部はそうではなかった。ビーズ凝集は、フローセル境界で著しく低減した。ビーズ充填の均一性または整合性の空間変化は、ほとんど観察されなかった。
図12B図12Aの流体チャネルの境界部分の拡大画像である。
図12C図12Aの流体チャネルの中心部分の拡大画像である。
図13A1】流体チャネル天井部だけに、親水性コーティングを有するマイクロウェルアレイの画像であり、フローセル境界のビーズ凝集の更なる減少を示す。
図13A2】流体チャネル天井部だけに、親水性コーティングを有するマイクロウェルアレイの画像であり、フローセル境界のビーズ凝集の更なる減少を示す。
図13B1】流体チャネル天井部の中心部分だけに、親水性コーティングを有するマイクロウェルアレイの画像であり、フローセル境界のビーズ凝集の更なる減少を示す。
図13B2】流体チャネル天井部の中心部分だけに、親水性コーティングを有するマイクロウェルアレイの画像であり、フローセル境界のビーズ凝集の更なる減少を示す。
図13C1】流体チャネル天井部の中心部分だけに、親水性コーティングを有するマイクロウェルアレイの画像であり、フローセル境界のビーズ凝集の更なる減少を示す。
図13C2】流体チャネル天井部の中心部分だけに、親水性コーティングを有するマイクロウェルアレイの画像であり、フローセル境界のビーズ凝集の更なる減少を示す。
図14-1】流体チャネル天井部及び側壁部により形成される端からオフセットされる、流体チャネル天井部の中心部分の二酸化ケイ素の親水性コーティングを備える、フローセル境界の最小のビーズ凝集(図14C)を示し、及びビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんど得られなかった(図14B図14G)ことを示す。Aは、1つの充填試験のU型カートリッジのフローセルのマイクロウェルアレイの画像である。
図14-2】B,Cは、ビーズのダブレットを有するマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合が、マイクロウェルアレイの流体チャネルの中心及び境界で同程度だったことを示す、図14Aの一部を拡大した画像である。
図14-3】D~Gは、流動方向に沿ってビーズがない、1つのビーズまたはビーズのダブレットを有するマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合に関して、端部効果がないことを示す、2つの充填試験のプロットである。
図15A1】フローセル境界の良好な充填効率、最小のビーズ凝集を示し、ビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことを示す、流体チャネル天井部の中心部分の二酸化ケイ素の親水性コーティングを有する、マイクロウェルアレイまたはその一部の画像である。
図15A2図15A1の一部の拡大画像である。
図15B1】フローセル境界の良好な充填効率、最小のビーズ凝集を示し、ビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことを示す、流体チャネル天井部の中心部分の二酸化ケイ素の親水性コーティングを有する、マイクロウェルアレイまたはその一部の画像である。
図15B2図15B1の一部の拡大画像である。
図15C1】フローセル境界の良好な充填効率、最小のビーズ凝集を示し、ビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことを示す、流体チャネル天井部の中心部分の二酸化ケイ素の親水性コーティングを有する、マイクロウェルアレイまたはその一部の画像である。
図15C2図15C1の一部の拡大画像である。
図15D1】フローセル境界の良好な充填効率、最小のビーズ凝集を示し、ビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことを示す、流体チャネル天井部の中心部分の二酸化ケイ素の親水性コーティングを有する、マイクロウェルアレイまたはその一部の画像である。
図15D2図15D1の一部の拡大画像である。
図15E1】フローセル境界の良好な充填効率、最小のビーズ凝集を示し、ビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことを示す、流体チャネル天井部の中心部分の二酸化ケイ素の親水性コーティングを有する、マイクロウェルアレイまたはその一部の画像である。
図15E2図15E1の一部の拡大画像である。
図15F1】フローセル境界の良好な充填効率、最小のビーズ凝集を示し、ビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことを示す、流体チャネル天井部の中心部分の二酸化ケイ素の親水性コーティングを有する、マイクロウェルアレイまたはその一部の画像である。
図15F2図15F1の一部の拡大画像である。
図15G1】フローセル境界の良好な充填効率、最小のビーズ凝集を示し、ビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことを示す、流体チャネル天井部の中心部分の二酸化ケイ素の親水性コーティングを有する、マイクロウェルアレイまたはその一部の画像である。
図15G2図15G1の一部の拡大画像である。
図15H1】フローセル境界の良好な充填効率、最小のビーズ凝集を示し、ビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことを示す、流体チャネル天井部の中心部分の二酸化ケイ素の親水性コーティングを有する、マイクロウェルアレイまたはその一部の画像である。
図15H2図15H1の一部の拡大画像である。
図15I1】フローセル境界の良好な充填効率、最小のビーズ凝集を示し、ビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことを示す、流体チャネル天井部の中心部分の二酸化ケイ素の親水性コーティングを有する、マイクロウェルアレイまたはその一部の画像である。
図15I2図15I1の一部の拡大画像である。
図15J1】フローセル境界の良好な充填効率、最小のビーズ凝集を示し、ビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことを示す、流体チャネル天井部の中心部分の二酸化ケイ素の親水性コーティングを有する、マイクロウェルアレイまたはその一部の画像である。
図15J2図15J1の一部の拡大画像である。
図16】A~Dは、流体チャネルの天井部及び側壁部により形成される端からのオフセットを備える、流体チャネル天井部の中心部分の親水性コーティングを有することが、充填効率を改善できることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する、添付の図面を参照する。図面で、文脈が別のものを指示しない限り、類似した記号は一般的に類似の要素を同定する。詳細な説明、図面及び請求項に記載されている、例示を目的とする実施形態は、制限することを意味しない。本明細書に提示する発明の趣旨または範囲を逸脱せずに、他の実施形態を用い、他の変更を行うことができる。概ね本明細書に記載され、図に示されるように、本開示の態様は、多種多様の異なる構成で配置され、置換され、組み合わされ、分離され、設計され得ることが直ちに理解されて、そのすべては本明細書に明確に想到されており、本明細書の開示の一部になる。
【0039】
すべての特許、公開された特許出願、他の刊行物、及びGenBankからの配列、ならびに本明細書において参照される他のデータベースはすべて、関連技術に関してその全体が参照により組み込まれる。
【0040】
バーコーディングのための方法及びシステムが開示されている。いくつかの実施形態では、装置は、流体チャネル、注入口及び放出口を含むフローセルを有し、流体チャネルは、天井部、第1側壁部及び底部を含み、天井部の接触角は、第1側壁部の接触角より少なくとも10度小さく、流体チャネルの底部は、複数のマイクロウェルを含む基板を有し、注入口及び放出口は、流体チャネルを介してフローセルと流体連通する。流体チャネルは、第2側壁を含むことができる。いくつかの実施形態では、親水性コーティングは、例えば100~1000μmだけ、または天井部の幅の1%~25%だけ、天井部及び第1側壁部により形成される端からオフセットされる。このような装置は、フローセルチャンバの幅にわたってプラグフローを作成するために使用できる。プラグフローは、フローセルチャンバの底部で、マイクロウェルアレイのマイクロウェル内及びそれからの粒子(例えば、ビーズ及び細胞)の効果的な充填及び回収を可能にすることができる。
【0041】
フローセルの流体チャネル中の上壁(天井部、流体チャネル天井部または流体チャネルの天井部と呼ばれる)の超親水性コーティングまたは処理は、水平非傾斜ワークフローにより(すなわち、フローセルを傾けずに)ガスプラグ及び緩衝液プラグをフローセルに導入するために使用できる。超親水性コーティングは、緩衝液によるガス置換を得るために、またはガスによる緩衝液置換を得るために、浮力を用いずに、毛細管を利用した流動をガスプラグ及び緩衝液プラグの均一な流体前部に提供する。したがって、緩衝液でガスを置換する、またはガスで緩衝液を置換するために、浮力を利用する必要性を排除できる。次に、フローセルの非水平傾斜ワークフローの必要性を、排除できる。いくつかの実施形態では、構造親水性及び疎水性コーティングは、流体チャネル天井部または流体チャネルの天井部に使用されて、フローセルのガス緩衝液流体前部の特性を調整することができる。流体チャネル境界(フローセル境界とも呼ばれる)の選択的コーティング(機能化とも呼ばれる)は、フローセルの特定部分中の毛細管流動の方向に影響を及ぼして、ガス緩衝液流体前部の特性を制御する。毛細管を利用した流動は、緩衝液プラグ及びガスプラグの崩壊を防ぐために、ガス緩衝液プラグフローによるフローセルの水平操作のために利用できる。そのうえ、プラグフローは、フローセル境界で高い流速を得るために利用できる。これの1つの目的は、フローセル内のマイクロウェルアレイの表面上の過剰なビーズを流しだすことであり得る。
【0042】
サンプル添加の方法が、本明細書で開示されている。いくつかの実施形態では、方法は、(a)流体チャネル、注入口及び放出口を含む、フローセルを有する、装置を提供することであって、流体チャネルは、流体チャネル天井部、第1側壁部及び底部を含み、流体チャネル天井部の接触角は、第1側壁部の接触角より少なくとも10度小さく、底部は、複数のマイクロウェルを含む基板を含み、複数のマイクロウェルは少なくとも100個のマイクロウェルを含み、注入口及び放出口は、流体チャネルを介してフローセルと流体連通する、該装置を提供することと、(b)ガスを、注入口を介して流体チャネル内に導入することと、(c)第1サンプルを、注入口を介して流体チャネル内に導入することとを含み、第1サンプルは、第1の複数の粒子を含み、注入口を介してサンプルを流体チャネル内に導入した後、複数のマイクロウェルの少なくとも25%はそれぞれ、第1の複数の粒子の1つの粒子を含む。いくつかの実施形態では、複数のマイクロウェルの少なくとも50%または75%はそれぞれ、第1の複数の粒子の1つの粒子を含む。流体チャネルは、第2側壁を含むことができる。
【0043】
定義
特段の記載がない限り、本明細書で用いられる科学技術用語は、本開示が属する技術の当業者が共通に理解する意味と同じ意味を持つ。例えば、Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY1994);Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(Cold Spring Harbor,NY 1989)を参照のこと。本開示の目的のために、以下の用語を次のように定義する。
【0044】
本明細書で使用する場合、「アダプター」という用語は、関連する核酸の増幅または配列決定を容易にするための配列を意味することができる。関連する核酸は、標的核酸を含むことができる。関連する核酸は、1つ以上の空間標識、標的標識、サンプル標識、インデキシング標識、バーコード、確率バーコードまたは分子標識を含むことができる。アダプターは、線形であり得る。アダプターは、プレアデニル化アダプターであり得る。アダプターは、二本鎖または一本鎖であり得る。1つ以上のアダプターは、核酸の5’末端または3’末端に位置することができる。アダプターが5’末端及び3’末端上の周知の配列を含むとき、周知の配列は、同じであり得る、または異なる配列であり得る。ポリヌクレオチドの5’末端及び/または3’末端にあるアダプターは、表面に固定化される1つ以上のオリゴヌクレオチドへのハイブリッド形成を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、アダプターは、ユニバーサル配列を含むことができる。ユニバーサル配列は、2つ以上の核酸分子に共通のヌクレオチド配列の領域であり得る。2つ以上の核酸分子は、異なる配列の領域があることができる。したがって、例えば、5’アダプターは同一の及び/またはユニバーサル核酸配列を含むことができて、3’アダプターは同一の及び/またはユニバーサル配列を含むことができる。複数の核酸分子の異なるメンバーに存在し得るユニバーサル配列は、ユニバーサル配列と相補的である1つのユニバーサルプライマーを使用して、複数の異なる配列の複製または増幅を可能にする。同様に、核酸分子の一群の異なるメンバーに存在し得る、少なくとも1つ、2つ(例えば、一対)またはそれ以上のユニバーサル配列は、ユニバーサル配列と相補的な少なくとも1つ、2つ(例えば、一対)またはそれ以上の単一のユニバーサルプライマーを使用して、複数の異なる配列の複製または増幅を可能にする。したがって、ユニバーサルプライマーは、このようなユニバーサル配列にハイブリッド形成できる配列を含む。標的核酸配列を含有する分子は、ユニバーサルアダプター(例えば、非標的核酸配列)を異なる標的核酸配列の一方の末端または両方の末端に結合させるために、修飾されることができる。標的核酸に結合される1つ以上のユニバーサルプライマーは、ユニバーサルプライマーのハイブリッド形成に部位を提供できる。標的核酸に結合される1つ以上のユニバーサルプライマーは、同一であり得る、または互いに異なることができる。
【0045】
本明細書で使用する場合、「関連する」または「と関連する」という用語は、2つ以上の種が、ある時点で共配置されているとして同定できることを意味し得る。関連付けは、2つ以上の種が類似の容器内にある、またはあったことを意味し得る。関連付けは、インフォマティクス的関連付けであり得る。この場合、例えば、2つ以上の種に関するデジタル情報が記憶され、その情報を用いて、これらの種のうちの1つ以上がある時点で共配置されたことを決定することができる。関連付けは、物理的関連付けであり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の関連する種は、互いにまたは共通の固体もしくは半固体の表面に「テザー係留」「結合」または「固定化」される。関連付けは、ビーズなどの固体または半固体の担体に標識を結合するための共有結合手段または非共有結合手段を意味し得る。関連付けは、標的と標識との間の共有結合であり得る。
【0046】
本明細書で使用する場合、「相補的」という用語は、2つのヌクレオチドの間の精密な対合の能力を意味し得る。例えば、核酸の所与の位置のヌクレオチドが、別の核酸のヌクレオチドと水素結合可能である場合、2つの核酸はその位置で互いに相補的であるとみなされる。2つの一本鎖核酸分子の間の相補性は、ヌクレオチドの一部のみが結合する場合には「部分的」であり得る、または一本鎖分子の間のすべてに相補性が存在する場合には完全であり得る。第1のヌクレオチド配列が第2のヌクレオチド配列に相補的である場合、第1のヌクレオチド配列は第2の配列の「相補体」であるということができる。第1のヌクレオチド配列が第2の配列の逆(すなわち、ヌクレオチドの順序が逆)の配列に相補的である場合、第1のヌクレオチド配列は第2の配列の「逆相補体」であるということができる。本明細書で使用する場合「相補体」「相補的」及び「逆相補体」という用語は、区別せずに使用できる。ある分子が他の分子にハイブリッド形成し得る場合、それはハイブリッド形成している分子の相補体であり得ることが、本開示から理解される。
【0047】
本明細書で使用する場合、「デジタル計数」という用語は、サンプル中の標的分子の数を推定する方法を意味する。デジタル計数は、サンプル中の標的に関連する固有の標識の数を決定する工程を含み得る。この方法は、分子を計数する問題を、同一の分子の位置決定及び同定の問題から、所定の標識のセットの検出に関する一連の有/無デジタル質問に変換する。
【0048】
本明細書で使用する場合、「標識」という用語は、サンプル内の標的に関連する核酸コードを意味し得る。標識は、例えば核酸標識であり得る。標識は、全体または一部が増幅可能な標識であり得る。標識は、全体または一部が配列決定可能標識であり得る。標識は、個別に同定可能な天然核酸の一部であり得る。標識は、既知の配列であり得る。標識は、核酸配列の接合(例えば、天然配列と非天然配列との接合)を含み得る。本明細書で使用する場合「標識」という用語は、「インデックス」「タグ」または「標識タグ」という用語と区別せずに使用できる。標識は、情報を伝達できる。例えば、種々の実施形態では、標識は、サンプル同一性、サンプル源、細胞同一性及び/または標的を決定するために使用できる。
【0049】
本明細書で使用する場合、「核酸」とは、ポリヌクレオチド配列またはその断片を意味する。核酸はヌクレオチドを含み得る。核酸は、細胞に対して外因性または内因性であり得る。核酸は、無細胞環境中に存在し得る。核酸は、遺伝子またはその断片であり得る。核酸はDNAであり得る。核酸はRNAであり得る。核酸は、1つ以上のアナログ(例えば、改変骨格、糖または核酸塩基)を含み得る。アナログのいくつかの非限定例としては、5-ブロモウラシル、ペプチド核酸、ゼノ核酸、モルホリノ体、ロックド核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、ジデオキシヌクレオチド、コルジセピン、7-デアザ-GTP、フルオロフォア(例えば、糖に結合したローダミンまたはフルオレセイン)、チオール含有ヌクレオチド、ビオチン結合ヌクレオチド、蛍光塩基アナログ、CpGアイランド、メチル-7-グアノシン、メチル化ヌクレオチド、イノシン、チオウリジン、プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、キューオシン、及びワイオシンが挙げられる。「核酸」「ポリヌクレオチド」「標的ポリヌクレオチド」及び「標的核酸」は、区別せずに使用できる。
【0050】
核酸は、新しいまたは向上した特徴(例えば、改善した安定性)を有する核酸を提供するために、1つ以上の修飾(例えば、塩基修飾、骨格修飾)を含むことができる。核酸は、核酸親和性タグを含み得る。ヌクレオシドは、塩基-糖の組み合わせであり得る。ヌクレオシドの塩基部分は、複素環塩基であり得る。このような複素環塩基の2つの最も一般的な種類は、プリン及びピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合されたリン酸基を更に含む、ヌクレオシドであり得る。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドでは、リン酸基は、糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分に結合できる。核酸を形成する際、リン酸基は、隣接するヌクレオシドを互いに共有結合して、線状ポリマー化合物を形成できる。次に、この線状ポリマー化合物のそれぞれの末端を更に接合して、環状化合物を形成できるが、線状化合物が一般には好適である。そのうえ、線状化合物は、内部ヌクレオチド塩基相補性を有し得て、そうして、完全な二本鎖または部分的二本鎖の化合物を生成するようにフォールディングし得る。核酸内では、リン酸基は、通常、核酸のヌクレオシド間骨格を形成するものとして称され得る。核酸の結合または骨格は、3’から5’方向のホスホジエステル結合であり得る。
【0051】
核酸は、修飾骨格及び/または修飾ヌクレオシド間結合を含み得る。修飾骨格は、骨格中にリン原子を保持するもの、及び骨格中にリン原子を有していないものを含み得る。内部にリン原子を含有する好適な修飾核酸骨格は、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル、及び他のアルキルホスホネート(例えば、3’-アルキレンホスホネート、5’-アルキレンホスホネート、キラルホスホネート)、ホスフィネート、ホスホロアミダート(3’-アミノホスホロアミダート及びアミノアルキルホスホロアミダートを含む)、ホスホロジアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェート、及びボラノホスフェート(通常3’-5’結合、2’-5’結合アナログを有する)、ならびに1つ以上のヌクレオチド間結合が3’から3’方向、5’から5’方向、または2’から2’方向結合である逆極性を有するものを含み得る。
【0052】
核酸は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子もしくはヘテロ環のヌクレオシド間結合により形成される、ポリヌクレオチド骨格を含み得る。これらは、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される)、シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;リボアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホネート及びスルホンアミド骨格;アミド骨格を有するものと、ならびに混合N、O、S及びCH2 構成要素部分を有する、他のものと、を含み得る。
【0053】
核酸は、核酸ミメティックを含み得る。「ミメティック」という用語は、フラノース環のみまたはフラノース環及びヌクレオチド間結合の両方が、非フラノース基で置換されているポリヌクレオチドを含むことを意図することができ、フラノース環のみの置換は、糖サロゲートであるとして称され得る。ヘテロ環塩基部分または修飾ヘテロ環塩基部分は、適切な標的核酸とのハイブリッド形成のために維持されることができる。このような核酸の1つは、ペプチド核酸(PNA)であり得る。PNAでは、ポリヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置き換え可能である。ヌクレオチドは保持可能であり、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合される。PNA化合物中の骨格は、PNAにアミド含有骨格を付与する、2つ以上の結合されたアミノエチルグリシン単位を含み得る。ヘテロ環塩基部分は、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合可能である。
【0054】
核酸は、モルホリノ骨格構造を含み得る。例えば、核酸は、リボース環の代わりに6員モルホリノ環を含み得る。これらの実施形態のいくつかでは、ホスホロジアミデートまたは他の非ホスホジエステルのヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル結合を置き換えできる。
【0055】
核酸は、モルホリノ環に結合されたヘテロ環塩基を有する、結合されたモルホリノ単位(すなわち、モルホリノ核酸)を含み得る。結合基は、モルホリノ核酸中のモルホリノモノマー単位を結合できる。非イオン性モルホリノ系オリゴマー化合物は、細胞タンパク質との望ましくない相互作用が少ない可能性がある。モルホリノ系ポリヌクレオチドは、核酸の非イオン性ミミックであり得る。モルホリノクラス内の種々の化合物は、異なる結合基を用いて接合できる。ポリヌクレオチドミメティックの更なる種類は、シクロヘキセニル核酸(CeNA)として称され得る。核酸分子中に通常存在するフラノース環は、シクロヘキセニル環で置き換え可能である。CeNA DMT保護ホスホロアミダイトモノマーは、ホスホロアミダイト化学作用を用いたオリゴマー化合物合成のために、調製及び使用できる。核酸鎖中へのCeNAモノマーの取り込みは、DNA/RNAハイブリッドの安定性を増加させることができる。CeNAオリゴアデニレートは、天然複合体に類似した安定性を有する、核酸相補体との複合体を形成できる。更なる修飾は、2’-ヒドロキシル基が糖環の4’炭素原子に結合されて、それにより2’-C,4’-C-オキシメチレン結合を形成することにより、二環式糖部分を形成する、ロックド核酸(LNA)を含み得る。結合は、2’酸素原子と4’炭素原子とを架橋するメチレン(-CH2 -)基であり得て、nは1または2である。LNA及びLNAアナログは、相補的核酸との非常に高い二本鎖の熱安定性(Tm=+3~+10℃)、3’-エキソヌクレアーゼ分解に対する安定性、及び良好な溶解性を示し得る。
【0056】
核酸は、核酸塩基(多くの場合、単に「塩基」という)の修飾または置換も含み得る。本明細書で使用する場合「非修飾」または「天然」の核酸塩基は、プリン塩基(例えば、アデニン(A)及びグアニン(G))ならびにピリミジン塩基(例えば、チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U))を含み得る。修飾核酸塩基は、他の合成及び天然の核酸塩基(例えば、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチルならびに他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピルならびに他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニル(-C=C-CH3 )ウラシル及びシトシンならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルならびに他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルならびに他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノアデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニン及び3-デアアデニン)を含み得る。修飾核酸塩基は、三環式ピリミジン(例えば、フェノキサジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾオキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾチアジン-2(3H)-オン))、G-クランプ(例えば、置換フェノキサジンシチジン(例えば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド(5,4-(b)(1,4)ベンゾオキサジン-2(3H)-オン))、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド(4,5-b)インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド(3,2’:4,5)ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン))を含み得る。
【0057】
本明細書で使用する場合、「サンプル」という用語は、標的を含む組成物を意味する。本開示の方法、装置及びシステムによる解析に好適なサンプルとしては、細胞、組織、器官または微生物が挙げられる。
【0058】
本明細書で使用する場合、「サンプリング装置」または「装置」という用語は、サンプルの一片の採取及び/または基板上への一片の配置を行い得る、装置を意味することができる。サンプル装置とは、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)機、細胞選別機、生検針、生検装置、組織切片化装置、マイクロ流体装置、ブレードグリッド及び/またはミクロトームを意味し得る。
【0059】
本明細書で使用する場合、「固体担体」という用語は、複数のバーコード(例えば、確率バーコード)を結合し得る、不連続の固体または半固体の表面を意味し得る。固体担体は、核酸を(例えば、共有結合または非共有結合で)固定化し得る、プラスチック、セラミック、金属もしくはポリマー材料(例えば、ヒドロゲル)からなる、任意の種類の中実、多孔性もしくは中空の球体、ボール、ベアリング、円筒または他の類似の形状を包含し得る。固体担体は、球状(例えば、微小球)であり得る、または非球状もしくは不規則形状(例えば、立方体、直方体、角錐、円柱、円錐、楕円形、ディスク形など)を有し得る、離散粒子を含むことができる。アレイ状に離間配置された複数の固体担体は、基板を含まなくてもよい。固体担体は、「ビーズ」という用語と同義的に使用できる。
【0060】
固体担体は、「基板」を意味することができる。基板は、固体担体の一種であり得る。基板は、本開示の方法を実行し得る、連続した固体または半固体の表面を意味できる。基板は、例えばアレイ、カートリッジ、チップ、装置及びスライドを意味できる。
【0061】
本明細書で使用する場合、「バーコード」という用語は、標識を含む、ポリヌクレオチド配列を意味することができる。バーコードは、バーコーディングに使用可能なポリヌクレオチド配列であり得る。バーコード(例えば、確率バーコード)は、サンプル中の標的を定量するために使用できる。バーコードは、標識を標的に関連付けた後に起こり得る、エラーを制御するために使用できる。例えば、バーコードは、増幅または配列決定のエラーを評価するために使用できる。標的に関連するバーコードは、バーコード標的またはバーコードタグ標的と呼ぶことができる。
【0062】
本明細書で使用する場合、「遺伝子特異的バーコード」という用語は、遺伝子特異的である標識及び標的結合領域を含む、ポリヌクレオチド配列を指すことができる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「バーコーディング」という用語は、核酸のランダム標識化(例えば、確率バーコーディング)を指すことができる。バーコーディングは、標識を標的に関連付けて、それを定量化するために、再帰的ポアソン法を利用できる。本明細書で使用する場合「バーコーディング」という用語は、「遺伝子特異的バーコーディング」と同義的に使用できる。
【0064】
本明細書で使用する場合「標的」という用語は、確率バーコードに関連し得る組成物を意味できる。本開示の方法、装置及びシステムによる解析に好適な例示的な標的としては、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、マイクロRNA、tRNAなどが挙げられる。標的は一本鎖または二本鎖であり得る。いくつかの実施形態では、標的はタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、標的は脂質である。
【0065】
本明細書で使用する場合「逆転写酵素」という用語は、逆転写酵素活性を有する(すなわち、RNA鋳型からのDNAの合成を触媒する)酵素の群を意味できる。一般的には、このような酵素としては、レトロウイルス逆転写酵素、レトロトランスポゾン逆転写酵素、レトロプラスミド逆転写酵素、レトロン逆転写酵素、細菌逆転写酵素、グループIIイントロン由来逆転写酵素、及びこれらの突然変異体、バリアントまたは誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。非レトロウイルス逆転写酵素としては、非LTRレトロトランスポゾン逆転写酵素、レトロプラスミド逆転写酵素、レトロン逆転写酵素、及びグループIIイントロン逆転写酵素が挙げられる。グループIIイントロン逆転写酵素の例としては、Lactococcus lactis LI.LtrBイントロン逆転写酵素、Thermosynechococcus elongatesTeI4cイントロン逆転写酵素、またはGeobacillus stearothermophilus GsI-IICイントロン逆転写酵素が挙げられる。他の種類の逆転写酵素としては、多くの種類の非レトロウイルス逆転写酵素(すなわち、レトロン、グループIIイントロン、及び多様性を生じさせるレトロエレメントなど)を含むことができる。
【0066】
PCR及び/または配列決定の間に生じるエラーを検出する及び/または修正するための方法ならびにシステムを、本明細書で開示する。エラーの種類は変化できて、例えば、置換エラー(1つ以上の塩基)及び非置換エラーを含むが、これらに限定されない。置換エラーの中で、1塩基置換エラーは、1塩基より更に離れているものよりも頻繁に生じ得る。方法及び装置は、例えば確率バーコーディングによる、分子標的の正確な計数を提供するために使用できる。
【0067】
バーコード
バーコーディング(例えば、確率バーコーディング)は、例えば、US20150299784、WO2015031691、及びFu et al,Proc Natl Acad Sci U.S.A.2011 May31;108(22):9026-31に記載されており、これらの刊行物の内容はその全体が参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示するバーコードは、確率的に標的を標識化する(例えば、バーコード、タグ)ために使用できる、ポリヌクレオチド配列であり得る、確率バーコードであり得る。確率バーコードの異なる配列の数と標識化される標的のいずれかの出現数との比が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1である、もしくはおよそこれらの比である、またはこれらの値の任意の2つ間の数もしくは範囲である場合、バーコードは確率バーコードということができる。標的は、同一、またはほとんど同一の配列を有するmRNA分子を含む、mRNA種であり得る。確率バーコードの異なる配列の数と標識化される標的のいずれかの出現数との比が、少なくともまたは多くても1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、もしくは100:1である場合、バーコードは確率バーコードとして称されることができる。確率バーコードのバーコード配列は、分子標識と呼ばれることができる。
【0068】
バーコード(例えば、確率バーコード)は、1つ以上の標識を含むことができる。代表的な標識は、ユニバーサル標識、細胞標識、バーコード配列(例えば、分子標識)、サンプル標識、プレート標識、空間標識及び/またはプレ空間標識を含むことができる。図1は、空間標識による代表的なバーコード104を示す。バーコード104は、バーコードを固体担体105に連結できる5’アミンを含むことができる。バーコードは、ユニバーサル標識、次元標識、空間標識、細胞標識及び/または分子標識を含むことができる。バーコードの異なる標識(ユニバーサル標識、次元標識、空間標識、細胞標識及び分子標識を含むが、これらに限定されない)の順序は、変化できる。例えば、図1に示すように、ユニバーサル標識は、最も5’側の標識であり得て、分子標識は、最も3’側の標識であり得る。空間標識、次元標識及び細胞標識は、任意の順序であり得る。いくつかの実施形態では、ユニバーサル標識、空間標識、次元標識、細胞標識及び分子標識は、任意の順序である。バーコードは、標的結合領域を含むことができる。標的結合領域は、サンプル中の標的(例えば、標的核酸、RNA、mRNA、DNA)と相互作用できる。例えば、標的結合領域は、mRNAのポリA尾部と相互作用可能なオリゴdT配列を含み得る。いくつかの場合には、バーコードの標識(例えば、ユニバーサル標識、次元標識、空間標識、細胞標識、及びバーコード配列)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20個のヌクレオチドまたはそれ以上に分離し得る。
【0069】
標識(例えば、細胞標識)は、エラー訂正能力を提供するように設計される、規定の長さ(例えば、それぞれ7ヌクレオチド(いくつかのハミングエラー訂正コードで使用される、ビット数と同じ))の核酸サブ配列の固有のセットを含むことができる。7ヌクレオチド配列を含む、エラー訂正サブ配列のセットは、該セット中の配列における任意の一対の組み合わせが、定義された「遺伝的距離」(または、不適正塩基の数)を示すように設計することができ、例えば、エラー訂正サブ配列のセットは、3ヌクレオチドの遺伝的距離を示すように設計されてもよい。この場合、標識化された標的核酸分子(更に詳細に後述する)のための配列データのセットのエラー訂正配列の再審査によって、増幅または配列決定エラーを検出する、または訂正するのを可能にし得る。いくつかの実施形態では、エラー訂正コードを作成するために使用する核酸サブ配列の長さは、変化することができ、例えば、それらは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、31、40、50ヌクレオチド長であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、他の長さの核酸サブ配列を、エラー訂正コードを作成するために使用できる。
【0070】
確率バーコードは、「非枯渇貯蔵部」(多種多様な標識から構成された確率バーコードのプール)から得られる。非枯渇貯蔵部は、非枯渇貯蔵部が標的のプールに関連する場合、各標的が固有の確率バーコードに関連する可能性が高くなるように、多数の異なる確率バーコードを含み得る。各標識化した標的分子の固有性は、ランダム選択の統計量により決定可能であり、標識の多様性と比較してコレクション中の同一の標的分子のコピー数に依存する。得られる標識化した標的分子のセットのサイズは、バーコーディング工程の確率的性質により決定され得ることができ、次いで、検出された確率バーコードの数の解析は、元のコレクションまたはサンプル中に存在する標的分子の数の計算を可能にする。固有の確率バーコードの数に対する存在する標的分子のコピー数の比率が低い場合、標識化した標的分子は、非常に特有である(すなわち、2つ以上の標的分子が1つの所与の標識で標識化される確率は非常に低い)。
【0071】
バーコードは、標的結合領域を含むことができる。標的結合領域は、サンプル中の標的と相互作用できる。標的は、リボ核酸(RNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、RNA分解産物、それぞれがポリA尾部を含むRNA、またはこれらの任意の組み合わせであり得る、またはそれらを含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の標的はデオキシリボ核酸(DNA)を含むことができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、標的結合領域は、mRNAのポリA尾部と相互作用可能なオリゴdT配列を含み得る。バーコードの標識のうちの1つ以上(例えば、ユニバーサル標識、次元標識、空間標識、細胞標識及びバーコード配列(例えば、分子標識))は、バーコードの残りの標識の別の1つまたは2つから、スペーサによって分離されることができる。スペーサは、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個またはそれ以上のヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では、バーコードの標識のいずれも、スペーサによって分離されない。
【0073】
ユニバーサル標識
バーコードは、1つ以上のユニバーサル標識を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のユニバーサル標識は、所与の固体担体に結合される、バーコードのセット中のすべてのバーコードで同一であり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のユニバーサル標識は、複数のビーズに結合される、すべてのバーコードで同一であり得る。いくつかの実施形態では、ユニバーサル標識は、配列決定プライマーにハイブリッド形成可能な核酸配列を含み得る。配列決定プライマーは、ユニバーサル標識を含む、バーコードを配列決定するために使用できる。配列決定プライマー(例えば、ユニバーサル配列決定プライマー)は、ハイスループット配列決定プラットフォームに関連する配列決定プライマーを含み得る。いくつかの実施形態では、ユニバーサル標識は、PCRプライマーにハイブッド形成可能な核酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、ユニバーサル標識は、配列決定プライマー及びPCRプライマーにハイブリッド形成可能な核酸配列を含み得る。配列決定プライマーまたはPCRプライマーにハイブリッド形成可能なユニバーサル標識の核酸配列は、プライマー結合部位として称され得る。ユニバーサル標識は、バーコードの転写を開始するために使用できる、配列を含み得る。ユニバーサル標識は、バーコードまたはバーコード内の領域を伸長させるために使用できる、配列を含み得る。ユニバーサル標識は、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。例えばユニバーサル標識は、少なくとも約10個のヌクレオチドを含み得る。ユニバーサル標識は、少なくともまたは多くても約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200もしくは300ヌクレオチド長であり得る。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーまたは修飾ヌクレオチドは、担体からのバーコードの切断除去を可能にする、ユニバーサル標識配列の一部であり得る。
【0074】
次元標識
バーコードは、1つ以上の次元標識を含むことができる。次元標識は、標識化(例えば、確率標識化)が行われた次元に関する情報を提供する、核酸配列を含むことができる。例えば、次元標識は、標的に確率的にバーコーディングした時点に関する情報を提供できる。次元標識は、サンプルのバーコーディング(例えば、確率バーコーディング)の時点に関連することができる。次元標識は、標識化の時点で活性化できる。異なる次元標識を、異なる時点で活性化できる。次元標識は、標的、標的の群及び/またはサンプルに確率的にバーコーディングした順序に関する情報を提供する。例えば、細胞集団は、細胞周期のG0期に確率的にバーコーディングすることができる。細胞は、細胞周期のG1期にバーコード(例えば、確率バーコード)で再びパルス標識することができる。細胞は、細胞周期のS期にバーコードで再びパルス標識することができる、などである。各パルス時(例えば、細胞周期の各期)のバーコードは、異なる次元標識を含むことができる。こうして、次元標識は、細胞周期のどの期にどの標的を標識化したかに関する情報を提供する。次元標識は、多種多様な生理学的時間を精査できる。例示的な生理学的時間としては、細胞周期、転写(例えば、転写開始)、及び転写物分解を含むことができるが、これらに限定されない。別の例として、薬剤治療及び/または療法の前及び/または後に、サンプル(例えば、細胞、細胞集団)に確率的に標識化することができる。識別可能な標的のコピー数の変化は、薬剤及び/または療法に対するサンプルの反応の指標であり得る。
【0075】
次元標識は、活性化可能であり得る。活性化できる次元標識は、特定の時点で活性化できる。活性化できる次元標識は、例えば構成的に活性化できる(例えば、オフに切り替わらない)。活性化できる次元標識は、例えば、可逆的に活性化できる(例えば、活性化できる次元標識は、オン/オフの切り替えができる)。次元標識は、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回またはそれ以上、可逆的に活性化できる。次元標識は、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回またはそれ以上、可逆的に活性化できる。いくつかの実施形態では、次元標識は、蛍光、光、化学的事象(例えば、切断、別の分子のライゲーション)、修飾(例えば、ペグ化、SUMO化、アセチル化、メチル化、脱アセチル化、脱メチル化)の追加、光化学的事象(例えば、光ケージング)、及び非天然ヌクレオチドの導入により活性化できる。
【0076】
いくつかの実施形態では、次元標識は、所与の固体担体(例えば、ビーズ)に結合される、すべてのバーコード(例えば、確率バーコード)で同一であり得るが、異なる固体担体(例えば、ビーズ)では異なり得る。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上のバーコードの少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または100%は、同一の次元標識を含むことができる。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上のバーコードの少なくとも60%は、同一の次元標識を含むことができる。いくつかの実施形態では、同一の固体担体上のバーコードの少なくとも95%は、同一の次元標識を含むことができる。
【0077】
複数の固体担体(例えば、ビーズ)に、106 程度またはそれ以上の固有の次元標識配列が存在できる。次元標識は、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。次元標識は、少なくともまたは多くても約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200もしくは300ヌクレオチド長であり得る。次元標識は、約5~約200個の間のヌクレオチドを含んでもよい。次元標識は、約10~約150個の間のヌクレオチドを含んでもよい。次元標識は、約20~約125個の間のヌクレオチド長を含んでもよい。
【0078】
空間標識
バーコードは、1つ以上の空間標識を含むことができる。いくつかの実施形態では、空間標識は、バーコードに関連する標的分子の空間配向に関する情報を提供する、核酸配列を含むことができる。空間標識は、サンプル中の座標に関連することができる。座標は、固定座標であり得る。例えば、座標は基板に対して固定できる。空間標識は、二次元または三次元グリッドを基準にし得る。座標は、ランドマークに対して固定できる。ランドマークは、空間内で同定可能である。ランドマークは、撮像できる構造体であり得る。ランドマークは、生物学的構造体(例えば、解剖学的ランドマーク)であり得る。ランドマークは、細胞ランドマーク(例えば、細胞小器官)であり得る。ランドマークは、非天然ランドマーク(例えば、カラーコード、バーコード、磁性、蛍光、放射能、または固有のサイズもしくは形状などの同定可能な識別子を有する構造体)であり得る。空間標識は、物理的区画(例えば、ウェル、容器、または液滴)に関連することができる。いくつかの場合には、複数の空間標識は、空間内の1つ以上の位置をコードするために一緒に使用される。
【0079】
空間標識は、所与の固体担体(例えば、ビーズ)に結合される、すべてのバーコードで同一であり得るが、異なる固体担体(例えば、ビーズ)では異なり得る。いくつかの実施形態では、同じ空間標識を含む、同じ固体担体上のバーコードの割合は、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、100%であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、同じ空間標識を含む、同じ固体担体上のバーコードの割合は、少なくとも、または多くても60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、もしくは100%であり得る。いくつかの実施形態では、同じ固体担体上のバーコードの少なくとも60%は、同じ空間標識を含み得る。いくつかの実施形態では、同じ固体担体上のバーコードの少なくとも95%は、同じ空間標識を含むことができる。
【0080】
複数の固体担体(例えば、ビーズ)に、106 程度またはそれ以上の固有の空間標識配列が存在できる。空間標識は、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。空間標識は、少なくともまたは多くても約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200もしくは300ヌクレオチド長であり得る。空間標識は、約5~約200個の間のヌクレオチドを含んでもよい。空間標識は、約10~約150個の間のヌクレオチドを含んでもよい。空間標識は、約20~約125個の間のヌクレオチド長を含んでもよい。
【0081】
細胞標識
バーコードは、1つ以上の細胞標識を含むことができる。いくつかの実施形態では、細胞標識は、どの標的核酸がどの細胞に由来したかを決定するための情報を提供する、核酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、細胞標識は、所与の固体担体(例えば、ビーズ)に結合される、すべてのバーコードで同一であり得るが、異なる固体担体(例えば、ビーズ)では異なり得る。いくつかの実施形態では、同じ細胞標識を含む、同じ固体担体上のバーコードの割合は、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、100%であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、同じ細胞標識を含む、同じ固体担体上のバーコードの割合は、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、もしくは100%であり得る、またはおよそそれらであり得る。例えば、同じ固体担体上のバーコードの少なくとも60%は、同じ細胞標識を含むことができる。別の例では、同じ固体担体上のバーコードの少なくとも95%は、同じ細胞標識を含むことができる。
【0082】
複数の固体担体(例えば、ビーズ)に、106 程度またはそれ以上の固有の細胞標識配列が存在できる。細胞標識は、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。細胞標識は、少なくともまたは多くても約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200もしくは300ヌクレオチド長であり得る。例えば、細胞標識は、約5~約200個の間のヌクレオチドを含んでもよい。別の例で、細胞標識は、約10~約150個の間のヌクレオチドを含んでもよい。更に別の例で、細胞標識は、約20~約125個の間のヌクレオチド長を含んでもよい。
【0083】
バーコード配列
バーコードは、1つ以上のバーコード配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、バーコード配列は、バーコードにハイブリッド形成する、特定の種類の標的核酸種に関する識別情報を提供する、核酸配列を含むことができる。バーコード配列は、バーコード(例えば、標的結合領域)にハイブリッド形成する標的核酸種の特異的出現に関する計数器(例えば、大まかな近似値を提供する)を提供する、核酸配列を含むことができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、バーコード配列の多様なセットは、所与の固体担体(例えば、ビーズ)に結合される。いくつかの実施形態では、102 、103 、104 、105 、106 、107 、108 、109 の固有の分子標識配列があり得る、もしくはおよそそれらがあり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲があり得る。例えば、複数のバーコードは、異なる配列を有する約6561のバーコード配列を含むことができる。別の例として、複数のバーコードは、異なる配列を有する約65536のバーコード配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、少なくともまたは多くても約102 、103 、104 、105 、106 、107 、108 もしくは109 の固有のバーコード配列があり得る。固有の分子標識配列は、所与の固体担体(例えば、ビーズ)に結合することができる。
【0085】
バーコードは、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。バーコードは、少なくともまたは多くても約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200もしくは300ヌクレオチド長であり得る。
【0086】
分子標識
確率的バーコードは、1つ以上の分子標識を含むことができる。分子標識は、バーコード配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、分子標識は、確率的バーコードにハイブリッド形成する、特定の種類の標的核酸種に関する識別情報を提供する、核酸配列を含むことができる。分子標識は、確率バーコード(例えば、標的結合領域)にハイブリッド形成する標的核酸種の特異的出現に関する計数器を提供する、核酸配列を含むことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、分子標識の多様なセットは、所与の固体担体(例えば、ビーズ)に結合される。いくつかの実施形態では、固有の分子標識配列が102 、103 、104 、105 、106 、107 、108 、109 だけあり得る、もしくはおよそそれらだけあり得る、または固有の分子標識配列の数もしくは範囲があり得る。例えば、複数の確率バーコードは、異なる配列を有する約6561の分子標識を含むことができる。別の例として、複数の確率バーコードは、異なる配列を有する約65536の分子標識を含むことができる。いくつかの実施形態では、少なくともまたは多くても約102 、103 、104 、105 、106 、107 、108 もしくは109 の固有の分子標識配列があり得る。固有の分子標識配列を有する確率バーコードは、所与の固体担体(例えば、ビーズ)に結合することができる。
【0088】
複数の確率バーコードを使用する確率バーコーディングにおいて、異なる分子標識配列の数と標的のいずれかの出現数との比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1であり得る、もしくはおよそこれらの比であり得る、またはこれらの値の任意の2つ間の数もしくは範囲であり得る。標的は、同一、またはほとんど同一の配列を有するmRNA分子を含む、mRNA種であり得る。いくつかの実施形態では、異なる分子標識配列の数と標的のいずれかの出現数との比は、少なくともまたは多くても1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、もしくは100:1である。
【0089】
分子標識は、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。分子標識は、少なくともまたは多くても約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200もしくは300ヌクレオチド長であり得る。
【0090】
標的結合領域
バーコードは、1つ以上の標的結合領域(例えば、キャプチャープローブ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、標的結合領域は、目的の標的とハイブリッド形成することができる。いくつかの実施形態では、標的結合領域は、標的に(例えば、標的核酸、標的分子(例えば、分析される細胞核酸))、例えば特定の遺伝子配列に特異的にハイブリッド形成する核酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、標的結合領域は、特定の標的核酸の特定の位置に結合(例えば、ハイブリッド形成)し得る、核酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、標的結合領域は、制限酵素部位オーバーハング(例えば、EcoRI付着末端オーバーハング)への特異的なハイブリッド形成が可能な、核酸配列を含むことができる。次いで、バーコードは、制限部位オーバーハングへの相補的な配列を含む、任意の核酸分子にライゲートできる。
【0091】
いくつかの実施形態では、標的結合領域は、非特異的標的核酸配列を含むことができる。非特異的標的核酸配列は、標的核酸の特定の配列に依存せずに、複数の標的核酸に結合できる配列を意味し得る。例えば、標的結合領域は、ランダムマルチマー配列を含むことができる、またはmRNA分子のポリA尾部にハイブリッド形成する、オリゴdT配列を含むことができる。ランダムマルチマー配列は、例えば、ランダムダイマー、ランダムトリマー、ランダムクアトラマー、ランダムペンタマー、ランダムヘキサマー、ランダムセプタマー、ランダムオクタマー、ランダムノナマー、ランダムデカマー、または任意の長さのより高次のランダムマルチマーの配列であり得る。いくつかの実施形態では、標的結合領域は、所与のビーズに結合されたすべてのバーコードで同じである。いくつかの実施形態では、所与のビーズに結合された複数のバーコードにおける標的結合領域は、2つ以上の異なる標的結合配列を含むことができる。標的結合領域は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。標的結合領域は、多くても約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50もしくはそれ以上のヌクレオチド長であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、標的結合領域は、ポリアデニル化末端を含むmRNAとハイブリッド形成することができる、オリゴdTを含み得る。標的結合領域は、遺伝子特異的であり得る。例えば標的結合領域は、標的の特定の領域にハイブリッド形成するように構成されることができる。標的結合領域は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26 27、28、29、30ヌクレオチド長であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。標的結合領域は、少なくともまたは多くても1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30ヌクレオチド長であり得る。標的結合領域は、約5~30のヌクレオチド長であり得る。バーコードが遺伝子特異的標的結合領域を含むとき、バーコードは、本明細書にて遺伝子特異的バーコードと称されることができる。
【0093】
配向性
バーコードは、バーコードを配向させる(例えば、整列させる)ために使用できる、1つ以上の配向性を含むことができる。バーコードは、等電点電気泳動用の部分を含むことができる。異なるバーコードは、異なる等電点電気泳動点を含むことができる。このようなバーコードをサンプルに導入した場合、サンプルは、バーコードを既知の様式に配向するために、等電点電気泳動を行うことができる。このように、配向性は、サンプルにバーコードの既知の地図を作成するために使用できる。代表的な配向性は、電気泳動移動度(例えば、バーコードのサイズに基づく)、等電点、スピン、伝導率及び/または自己集合化を含むことができる。例えば、自己集合化の配向性を備えるバーコードは、活性化時に特定の配向(例えば、核酸ナノ構造)に自己集合化できる。
【0094】
親和性
バーコードは、1つ以上の親和性を含むことができる。例えば空間標識は、親和性を含むことができる。親和性は、別の実体(例えば、細胞レセプター)へのバーコードの結合を促進することができる、化学的及び/または生物学的部分を含むことができる。例えば、親和性は、抗体(例えば、サンプル上の特定の部分(例えば、レセプター)に特異的な抗体)を含むことができる。いくつかの実施形態では、抗体は、バーコードを特定の細胞型または分子に導くことができる。特定の細胞型もしくは分子の及び/またはその近くにある標的は、確率標識化できる。いくつかの実施形態では、抗体がバーコードを特定の位置に導くことができるので、親和性は、空間標識のヌクレオチド配列に加えて、空間情報を提供できる。抗体は、治療用抗体(例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)であり得る。抗体は、ヒト化できる、またはキメラであり得る。抗体は、ネイキッド抗体または融合抗体であり得る。
【0095】
抗体は、全長(すなわち、天然に存在する、もしくは通常の免疫グロブリン遺伝子断片組換え工程により形成される)免疫グロブリン分子(例えば、IgG抗体)、または免疫グロブリン分子の免疫活性(すなわち、特異的結合)部分(例えば、抗体フラグメント)であり得る。
【0096】
抗体フラグメントは、例えば、抗体の一部(例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、sFvなど)であり得る。いくつかの実施形態では、抗体フラグメントは、全長抗体により認識される、同じ抗原に結合できる。抗体フラグメントは、抗体の可変領域からなる単離された断片(例えば、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメント、ならびに軽鎖及び重鎖の可変領域がペプチドリンカーにより接続された組換え一本鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」))を含むことができる。例示的な抗体としては、がん細胞に対する抗体、ウイルスに対する抗体、細胞表面レセプター(CD8、CD34、CD45)に結合する抗体、及び治療用抗体を含むが、これらに限定されない。
【0097】
固体担体
いくつかの実施形態では、本明細書に開示するバーコード(例えば、確率バーコード)は、固体担体に関連することができる。固体担体は、例えば、合成粒子であり得る。いくつかの実施形態では、バーコード配列(例えば、固体担体上の複数のバーコード(例えば、第1の複数のバーコード)の確率バーコード(例えば、第1のバーコード配列)の分子標識)の一部または全部は、少なくとも1つのヌクレオチドが異なる。同じ固体担体上のバーコードの細胞標識は、同一であり得る。異なる固体担体上のバーコードの細胞標識は、少なくとも1つのヌクレオチドが異なることができる。例えば、第1の固体担体上の第1の複数のバーコードの第1の細胞標識は、同じ配列を有することができ、第2に固体担体上の第2の複数のバーコードの第2の細胞標識は、同じ配列を有することができる。第1の固体担体上の第1の複数のバーコードの第1の細胞標識、及び第2の固体担体上の第2の複数のバーコードの第2の細胞標識は、少なくとも1つのヌクレオチドが異なることができる。細胞標識は、例えば、約5~20ヌクレオチド長であり得る。バーコード配列は、例えば、約5~20ヌクレオチド長であり得る。合成粒子は、例えばビーズであり得る。
【0098】
ビーズは、例えば、シリカゲルビーズ、制御孔ガラスビーズ、磁気ビーズ、Dynabead、Sephadex/Sepharoseビーズ、セルロースビーズ、ポリスチレンビーズ、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。ビーズは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリスチレン、ガラス、ポリプロピレン、アガロース、ゼラチン、ヒドロゲル、常磁性体、セラミック、プラスチック、ガラス、メチルスチレン、アクリルポリマーなどの物質を含むことができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、ビーズは、ポリマービーズ(例えば、バーコードまたは確率バーコードによって機能化した変形可能なビーズまたはゲルビーズ(例えば、10X Genomics(San Francisco、CA)製のゲルビーズ))であり得る。いくつかの実施態様では、ゲルビーズは、ポリマー系ゲルを含むことができる。ゲルビーズは、例えば、液滴に1つ以上のポリマー前駆体を封入することによって作製できる。促進剤(例えば、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED))へのポリマー前駆体の曝露の際、ゲルビーズは作製できる。
【0100】
いくつかの実施形態では、粒子は、分解可能であり得る。例えば、ポリマービーズは、例えば所望の条件下で、融解、溶解または分解できる。所望の条件は、環境条件を含むことができる。所望の条件は、制御された方法で融解する、溶解する、または分解するポリマービーズをもたらすことができる。ゲルビーズは、化学的刺激、物理的刺激、生物学的刺激、熱的刺激、磁気刺激、電気刺激、光刺激もしくはこれらの任意の組み合わせに起因して、融解、溶解または分解できる。
【0101】
例えば、解析物及び/または試薬(例えば、オリゴヌクレオチドバーコード)は、ゲルビーズの内面(例えば、オリゴヌクレオチドバーコード及び/またはオリゴヌクレオチドバーコードを作製するために使用する材料の拡散を介して、アクセスできる内部)及び/または本明細書に記載のゲルビーズまたは他の任意のマイクロカプセルの外面に、結合されることができる/固定化されることができる。結合/固定化は、任意の形態の化学結合(例えば、共有結合、イオン結合)または物理現象(例えば、ファンデルワールス力、双極子相互作用など)を介することができる。いくつかの実施形態では、ゲルビーズまたは本明細書に記載の他の任意のマイクロカプセルへの試薬の結合/固定化は、可逆的(例えば、易動性部分を介して(例えば、本明細書に記載の化学架橋剤を含む、化学架橋剤を介して)でもよい。刺激の適用の際、易動性部分は切断されることができ、固定化試薬は放出される。いくつかの実施形態では、易動性部分はジスルフィド結合である。例えば、オリゴヌクレオチドバーコードがジスルフィド結合を介してゲルビーズに固定化される場合、還元剤へのジスルフィド結合の曝露は、ジスルフィド結合を切断して、オリゴヌクレオチドバーコードをビーズから放出できる。易動化部分は、ゲルビーズもしくはマイクロカプセルの一部として、試薬もしくは解析物をゲルビーズまたはマイクロカプセルに連結する化学リンカーの一部として、及び/または試薬または解析物の一部として含まれることができる。いくつかの実施形態では、複数のバーコードの少なくとも1つのバーコードは、粒子に固定化されることができる、部分的に粒子に固定化されることができる、粒子に封入されることができる、部分的に粒子に封入されることができる、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、ゲルビーズは、ポリマー、感熱性ポリマー、感光性ポリマー、磁性ポリマー、pH感受性ポリマー、塩感受性ポリマー、化学的に敏感なポリマー、ポリマー電解質、多糖類、ペプチド、タンパク質及び/またはプラスチックを含む、広範囲にわたる異なるポリマーを含むことができるが、これらに限定されない。ポリマーは、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ(スチレンスルホネート)(PSS)、ポリ(アリルアミン)(PAAm)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(ジアリルジメチル-塩化アンモニウム)(PDADMAC)、ポリ(ピロール)(PPy)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVPON)、ポリ(ビニルピリジン)(PVP)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(メタクリル酸エチル)(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリ(テトラヒドロフラン)(PTHF)、ポリ(フタルアルデヒド)(PTHF)、ポリ(ヘキシルビオロゲン)(PHV)、ポリ(L-リジン)(PLL)、ポリ(L-アルギニン)(PARG)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)などの材料を含むが、これらに限定されない。
【0103】
多数の化学的刺激は、ビーズの破壊、溶解または分解を誘発するために使用できる。これらの化学変化の例は、ビーズ壁に対するpH介在性変化、架橋結合の化学切断を介したビーズ壁の崩壊、ビーズ壁への誘発解重合、及びビーズ壁スイッチング反応を含むが、これらに限定されない。バルク変化は、ビーズの破壊を誘発させるためにも使用できる。
【0104】
種々の刺激によるマイクロカプセルに対するバルク変化または物理的変化は、カプセルを設計して、試薬を放出する際に多くの利点を提供する。バルク変化または物理的変化は、巨視的規模で生じて、そこで、ビーズの破壊は、刺激により誘導される機械物理力の結果である。これらの工程は、圧力により誘発された破壊、ビーズ壁融解またはビーズ壁の多孔性の変化を含むが、これらに限定されない。
【0105】
生物学的刺激も、ビーズの破壊、溶解または分解を誘発するために使用できる。通常、生物学的トリガーは化学的トリガーに似ているが、多くの例は、生体分子、または一般に生物系で見つかる分子(例えば、酵素、ペプチド、糖類、脂肪酸、核酸など)を使用する。例えば、ビーズは、特定のプロテアーゼによる切断の影響を受けやすい、ペプチド架橋を有するポリマーを含むことができる。より具体的には、一例は、GFLGKペプチド架橋を含む、マイクロカプセルを含むことができる。プロテアーゼCathepsin Bなどの生物学的トリガーの添加の際、シェル壁のペプチド架橋は切断されて、ビーズの内容物は放出される。他の場合には、プロテアーゼは熱活性化できる。別の例では、ビーズは、セルロースを含む、シェル壁を含む。加水分解酵素のキトサンの添加は、セルロース結合の切断、シェル壁の解重合及びその内部の内容物の放出の生物学的トリガーとして機能する。
【0106】
ビーズは、熱的刺激の適用の際、その内容物を放出するように誘導されることができる。温度の変化は、ビーズに種々の変化を引き起こすことができる。熱の変化は、ビーズ壁が分解するように、ビーズの融解を生じさせることができる。他の場合には、熱は、ビーズが破裂する、または爆発するように、ビーズの内部成分の内圧を増加させることができる。更に他の場合には、熱は、ビーズを縮んだ脱水状態に変えることができる。熱は、ビーズの壁内の感熱性ポリマーにも作用して、ビーズの破壊を引き起こすことができる。
【0107】
マイクロカプセルのビーズ壁に対する磁気ナノ粒子の包含は、ビーズの誘発された破裂を可能にすると共に、アレイにビーズを導くことができる。この開示の装置は、いずれかの目的のための磁気ビーズを含むことができる。一例にて、Fe34 ナノ粒子の、高分子電解質を含有するビーズへの取り込みは、振動磁場刺激の存在下で、破裂を誘発する。
【0108】
ビーズは、電気刺激の結果として、破壊される、溶解される、または分解されることもできる。以前の段落で記載した磁気粒子と同様に、電気感応性ビーズは、ビーズの誘発された破裂、及び他の機能(例えば、電界での整列、電気伝導度またはレドックス反応)の両方を可能にすることができる。一例にて、電気感応性材料を含有するビーズは、内部の試薬の放出が制御され得るように、電界で整列配置される。他の例で、電界は、多孔性を増加させ得る、ビーズ壁自体内でレドックス反応を誘発できる。
【0109】
光刺激は、ビーズを破壊するためにも使用できる。多数の光トリガーが可能であり、特定の周波数の範囲の光子を吸収できる、種々の分子(例えば、ナノ粒子及び発色団)を使用する系を含むことができる。例えば、金属酸化物コーティングを、カプセルトリガーとして使用できる。SiO2 でコーティングした高分子電解質カプセルのUV照射は、ビーズ壁の破壊をもたらす。更に別の例では、光による切り替え可能な材料(例えば、アゾベンゼン基)は、ビーズ壁に取り込まれることができる。UVまたは可視光の適用の際、これらのような化学薬品は、光子の吸収で、可逆的シス-トランス異性化を受ける。この態様にて、光子スイッチの取り込みは、光トリガーの使用の際、崩壊できる、またはより多孔性になり得る、ビーズ壁をもたらす。
【0110】
例えば、図2に示すバーコーディング(例えば、確率バーコーディング)の非限定例で、ブロック208でマイクロウェルアレイの複数のマイクロウェル上に単細胞などの細胞を導入した後、ビーズは、ブロック212でマイクロウェルアレイの複数のマイクロウェル上に導入されることができる。各マイクロウェルは、1つのビーズを含むことができる。ビーズは、複数のバーコードを含むことができる。バーコードは、ビーズに結合した5’アミン領域を含むことができる。バーコードは、ユニバーサル標識、バーコード配列(例えば、分子標識)、標的結合領域またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0111】
本明細書で開示されるバーコードは、固体担体(例えば、ビーズ)と関連する(例えば、結合する)ことができる。固体担体と関連したバーコードはそれぞれ、固有の配列を有する少なくとも100個または1000個のバーコード配列を含む群から選択される、バーコード配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、固体担体と関連する異なるバーコードは、異なる配列のバーコード配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、固体担体と関連するバーコードの割合は、同じ細胞標識を含むことができる。例えば、該割合は、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、100%であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。別の例として、該割合は、少なくとも、または多くても60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%であり得る。いくつかの実施形態では、固体担体と関連するバーコードは、同じ細胞標識を有することができる。異なる固体担体と関連するバーコードは、固有の配列を有する少なくとも100個または1000個の細胞標識を含む群から選択される、異なる細胞標識を有することができる。
【0112】
本明細書で開示されるバーコードは、固体担体(例えば、ビーズ)に関連する(例えば、結合する)ことができる。いくつかの実施形態では、サンプル中の複数の標的を確率バーコーディングすることは、複数のバーコードと関連する複数の合成粒子を含む、固体担体により実行されることができる。いくつかの実施形態では、固体担体は、複数のバーコードに関連する複数の合成粒子を含むことができる。異なる固体担体上の複数のバーコードの空間標識は、少なくとも1つのヌクレオチドが異なることができる。例えば、固体担体は、二次元にまたは三次元に複数のバーコードを含むことができる。合成粒子は、ビーズであり得る。ビーズは、シリカゲルビーズ、制御孔ガラスビーズ、磁気ビーズ、Dynabead、Sephadex/Sepharoseビーズ、セルロースビーズ、ポリスチレンビーズ、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。固体担体は、ポリマー、マトリックス、ヒドロゲル、ニードルアレイ装置、抗体、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、固体担体は、浮動性であり得る。いくつかの実施形態では、固体担体は、半固体アレイまたは固体アレイに埋め込むことができる。バーコードは、固体担体と関連しなくてもよい。バーコードは、個々のヌクレオチドであり得る。バーコードは、基板と関連することができる。
【0113】
本明細書で使用する場合「テザー係留」「結合」及び「固定化」という用語は、同義的に使用されており、バーコードを固体担体に結合するための共有結合または非共有結合の手段を意味することができる。様々な異なる固体担体のいずれも、予め合成したバーコードを結合するための、またはバーコードをin situ固相合成するための固体担体として使用できる。
【0114】
いくつかの実施形態では、固体担体はビーズである。ビーズは、核酸を(例えば、共有結合または非共有結合で)固定化し得る、中実、多孔性もしくは中空の球体、ボール、ベアリング、円筒または他の類似の形状のうちの1つ以上の種類を含むことができる。ビーズは、例えば、プラスチック、セラミック、金属、ポリマー材料、またはこれらの任意の組み合わせからなることができる。ビーズは、球状(例えば、微小球)である、または非球状もしくは不規則形状(例えば、立方体、直方体、角錐、円柱、円錐、楕円形、ディスク形など)を有する、離散粒子であり得る、またはそれを含むことができる。いくつかの実施形態にて、ビーズは、非球状の形状であり得る。
【0115】
ビーズは、常磁性材料(例えば、マグネシウム、モリブデン、リチウム、及びタンタル)、超常磁性材料(例えば、フェライト(Fe34 、マグネタイト)ナノ粒子)、強磁性材料(例えば、鉄、ニッケル、コバルト、それらのいくつかの合金、及びいくつかの希土類金属化合物)、セラミック、プラスチック、ガラス、ポリスチレン、シリカ、メチルスチレン、アクリルポリマー、チタン、ラテックス、セファロース、アガロース、ヒドロゲル、ポリマー、セルロース、ナイロン、ならびにこれらの任意の組み合わせを含む、様々な材料を含むことができるが、これらに限定されない。
【0116】
いくつかの実施形態にて、ビーズ(例えば、標識を結合されるビーズ)は、ヒドロゲルビーズである。いくつかの実施形態にて、ビーズはヒドロゲルを含む。
【0117】
粒子のサイズは、変化できる。例えば、粒子の直径は、0.1μm~50μmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、粒子の直径は、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50μmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。
【0118】
粒子の直径は、基板のウェルの直径に関連することができる。いくつかの実施形態では、粒子の直径は、ウェルの直径よりも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%だけ長いもしくは短い場合がある、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、粒子の直径は、細胞の直径より10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%だけ長いもしくは短い場合がある、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。
【0119】
粒子は、基板への結合及び/または埋め込みができる。粒子は、ゲル、ヒドロゲル、ポリマー及び/またはマトリックスへの結合及び/または埋め込みができる。基板(例えば、ゲル、マトリックス、スキャフォールド、またはポリマー)内の粒子の空間位置は、位置アドレスとして機能可能な粒子上のバーコードに存在する空間標識を使用して、同定できる。
【0120】
粒子の例としては、ストレプトアビジンビーズ、アガロースビーズ、磁気ビーズ、Dynabead(登録商標)、MACS(登録商標)マイクロビーズ、抗体コンジュゲート化ビーズ(例えば、抗免疫グロブリンマイクロビーズ)、プロテインAコンジュゲート化ビーズ、プロテインGコンジュゲート化ビーズ、プロテインA/Gコンジュゲート化ビーズ、プロテインLコンジュゲート化ビーズ、オリゴdTコンジュゲート化ビーズ、シリカビーズ、シリカ様ビーズ、抗ビオチンマイクロビーズ、抗蛍光色素マイクロビーズ、及びBcMag(商標)カルボキシ末端磁気ビーズを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0121】
粒子は、1つの蛍光光学チャネルもしくは複数の光学チャネルで蛍光を発するように、量子ドットまたは蛍光色素と関連する(例えば、それらを含浸)ことができる。粒子は、常磁性もしくは強磁性にするために、酸化鉄または酸化クロムと関連することができる。粒子は同定できる。例えば、粒子は、カメラを使用して撮像できる。粒子は、粒子に関連する検出可能なコードを有し得る。例えば、粒子はバーコードを含むことができる。粒子は、例えば、有機または無機の溶液中での膨潤に起因して、サイズ変化し得る。粒子は疎水性であり得る。粒子は親水性であり得る。粒子は生体適合性であり得る。
【0122】
固体担体(例えば、粒子)は、可視化できる。固体担体は、可視化タグ(例えば、蛍光色素)を含むことができる。固体担体(例えば、粒子)は識別子(例えば、数字)でエッチングできる。識別子は、粒子を撮像することにより可視化できる。
【0123】
基板及びマイクロウェルアレイ
本明細書で使用する場合、基板は、固体担体の種類を意味し得る。基板は、本開示の確率バーコードを含むことができる、固体担体を意味し得る。基板は、例えば、複数のマイクロウェルを含むことができる。例えば、基板は、2つ以上のマイクロウェルを含む、ウェルアレイであり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルは、所定の容積の小さい反応チャンバを含むことができる。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルは、1つ以上の細胞を捕捉できる。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルは、1つのみの細胞を捕捉できる。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルは、1つ以上の固体担体を捕捉できる。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルは、1つのみの固体担体を捕捉できる。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルは、1つの細胞及び1つの固体担体(例えば、ビーズ)を捕捉する。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルは、1つの粒子(例えば、細胞またはビーズ)を含有できる。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルは、2つの異なる粒子(例えば、細胞及びビーズ)を含有できる。
【0124】
マイクロウェルの形状
マイクロウェルは、様々な形状で作製されることができる。非限定例のウェルの形状は、円柱、円錐、半球、矩体、または多面体(例えば、いくつかの平面からなる三次元形状(例えば、六角柱、八角柱、逆三角錐、逆正四角錐、逆五角錐、逆六角錐、または逆角錐台))を含むことができる。マイクロウェルは、これらの形状を2つ以上を組み合わせた形状を含み得る。例えば、マイクロウェルは、部分的に円柱形であり得ると共に、残りの部分は逆円錐の形状を有し得る。マイクロウェルは、2つの並列する円柱を含み得る。その一方は、他方の直径(例えば、ほぼ細胞の直径に対応する)よりも長い直径(例えば、ほぼビーズの直径に対応する)であり、それらは、円柱の全長(深さ)にわたる垂直チャネル(すなわち、円柱軸に平行)により接続される。マイクロウェルの開口部の位置は、変化することができる。例えば、マイクロウェルの開口部は、基板の上側表面に存在し得る。例えば、マイクロウェルの開口部は、基板の下側表面に存在し得る。マイクロウェルの閉鎖端(例えば、底部)の形状は、変化することができる。例えば、マイクロウェルの閉鎖端は、平坦であり得る。例えば、マイクロウェルの閉鎖端は、湾曲表面(例えば、凸状または凹状)を有し得る。マイクロウェルの形状及び/またはサイズは、マイクロウェル内に捕捉される細胞または固体担体の種類に基づいて決定されることができる。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルは、基板の平面に非円形断面(例えば、正方形または六角形)であり得る。
【0125】
マイクロウェルのサイズ
マイクロウェルは、様々なサイズで作製されることができる。マイクロウェルのサイズは、例えばマイクロウェルの直径及び/または深さに関して特徴付けされ得る。マイクロウェルの直径は、マイクロウェルの形状の平面断面内に内接され得る、最大の円を意味することができる。マイクロウェルの直径は、いくつかの実施形態にて、マイクロウェル内に捕捉される細胞または固体担体の直径の約1倍~約10倍の範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの直径は、マイクロウェル内に捕捉される細胞または固体担体の直径の1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの直径は、少なくとも、または多くても、マイクロウェル内に捕捉される細胞もしくは固体担体の直径の1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの直径は、マイクロウェル内に捕捉される細胞または固体担体の直径の約2.5倍であり得る。
【0126】
マイクロウェルの直径は、絶対寸法に関して特定化できる。マイクロウェルの直径は、約1nm~約1000μmの範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの直径は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの直径は、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μmであり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの直径は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの直径は、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μmであり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの直径は約30μmであり得る。
【0127】
マイクロウェルの深さは、例えば細胞及び固体担体の液滴の効率的捕捉を提供するために、またはウェル内に含有されるアッセイ緩衝液及び他の試薬の効率的交換を提供するために、変化することができる。直径対高さの比(すなわち、アスペクト比)は、細胞及び/または固体担体をマイクロウェル内部に静置したとき、それらがマイクロウェルを超える流体運動により変位しないように、変化することができる。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの深さは、ビーズの直径より小さい場合がある。例えば、マイクロウェルの深さは、ビーズの直径より5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、99.9%、100%だけ小さい場合がある、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。例えば、マイクロウェルの深さは、ビーズの直径の少なくとも、または多くても5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、99.9%、100%であり得る。いくつかの実施形態にて、合成粒子(例えば、ビーズ)は、マイクロウェルの外側に突出することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、マイクロウェルの寸法によって、マイクロウェルは最大で1つのビーズを含有することが可能になる。ビーズの直径に対するマイクロウェルの幅の比は、1~1.9の範囲で変化できる。いくつかの実施形態では、ビーズの直径に対するマイクロウェルの幅の比は、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ビーズの直径に対するマイクロウェルの幅の比は、少なくとも、もしくは多くても1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、または1.9であり得る。
【0129】
マイクロウェルの寸法は、マイクロウェルが十分な空間を有して、マイクロウェルを上の流体運動により脱落することなく、種々のサイズの固体担体及び細胞に適合するように、変化できる。マイクロウェルの深さは、マイクロウェル内に捕捉される細胞または固体担体の直径の約1倍~約10倍の範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの深さは、マイクロウェル内に捕捉される細胞または固体担体の直径の1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの深さは、少なくとも、または多くても、マイクロウェル内に捕捉される細胞もしくは固体担体の直径の1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍もしくは10倍であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの深さは、マイクロウェル内に捕捉される細胞または固体担体の直径の約2.5倍であり得る。
【0130】
マイクロウェルの深さに対するマイクロウェルの幅のアスペクト比は、例えば0.1~2の範囲で変化できる。いくつかの実施形態では、マイクロウェルの深さに対するマイクロウェルの幅のアスペクト比は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの深さに対するマイクロウェルの幅のアスペクト比は、少なくとも、または多くても、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、もしくは2であり得る。
【0131】
マイクロウェルの深さは、絶対寸法に関して特定化できる。例えば、マイクロウェルの深さは、約1nm~約1000μmの範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの深さは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの深さは、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μmであり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの深さは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの深さは、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μmであり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの深さは約30μmであり得る。
【0132】
マイクロウェルの容積は、例えば、約1ピコリットル~約1000マイクロリットルの範囲で変化できる。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの容積は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000ピコリットルであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの容積は、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000ピコリットルであり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの容積は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000ナノリットルであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの容積は、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000ナノリットルであり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの容積は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000マイクロリットルであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの容積は、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000マイクロリットルであり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの容積は約1マイクロリットルであり得る。
【0133】
マイクロウェルの容積は、1つのマイクロウェルから別のものへの容積の変化に関して特徴付けすることができる。マイクロウェルの容積における変動係数(パーセンテージで表示)は、約1%~約100%の範囲であり得る。マイクロウェルの容積における変動係数は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。マイクロウェルの容積における変動係数は、少なくとも、または多くても1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの容積における変動係数は、約2.5%であり得る。
【0134】
ビーズの表面積に対する(または、確率バーコードオリゴヌクレオチドを結合できる、固体担体の表面積に対する)マイクロウェルの容積の比は、例えば約2.5~約1520μmの範囲で変化できる。いくつかの実施形態では、該比は、2.5、5、10、100、500、750、1000、1520μmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、該比は、少なくとも、もしくは多くても2.5、5、10、100、500、750、1000、もしくは1520μmであり得る。いくつかの実施形態にて、該比は約67.5μmであり得る。
【0135】
マイクロウェルの配列
マイクロウェルは、一次元、二次元、または三次元のアレイに配置できる。三次元アレイは、例えば、一連の2つ以上の二次元アレイを積み重ねることにより(例えば、マイクロウェルアレイを含む、2つ以上の基板を積み重ねることにより)得ることができる。
【0136】
マイクロウェルの間のパターン及び間隙は、各ウェル中に1つの細胞及び1つの固体担体(例えば、ビーズ)を捕捉する効率を最適化するために、ならびにアレイの単位面積当たりのウェルの数を最大化するために、変化できる。マイクロウェルは、様々なランダムパターンまたは非ランダムパターンに従って分布させ得る。例えば、マイクロウェルは、アレイ基板の表面全体にわたり完全にランダムに分布させ得る、またはそれは、正方グリッド、矩形グリッド、六角グリッドなどに配置し得る。
【0137】
ウェルの間の中心間距離、または中心間の間隙は、約1μm~約1000μmで変化し得る。いくつかの実施形態にて、ウェルの間の中心間距離は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、ウェルの間の中心間距離は、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000μmであり得る。いくつかの実施形態にて、ウェルの間の中心間距離は、約4890μmであり得る。
【0138】
マイクロウェルの両端の間の距離、または間隙は、約1μm~約1000μmで変化し得る。いくつかの実施形態にて、ウェルの両端の間の距離は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、ウェルの両端の間の距離は、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000μmであり得る。いくつかの実施形態にて、ウェルの両端の間の距離は、約80μmであり得る。
【0139】
マイクロウェルの密度
マイクロウェルアレイは、様々な密度(例えば、1平方インチ当たり100マイクロウェル~1平方インチ当たり1000000マイクロウェルの範囲)でマイクロウェルを含むことができる。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルアレイの密度は、1平方インチ当たり100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、2000000、3000000、4000000、5000000、6000000、7000000、8000000、9000000、10000000マイクロウェルであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルアレイの密度は、少なくとも、または多くても、1平方インチ当たり100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、2000000、3000000、4000000、5000000、6000000、7000000、8000000、9000000、もしくは10000000マイクロウェルであり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルアレイの密度は、1cm2 当たり10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000マイクロウェルであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルアレイの密度は、少なくとも、または多くても、1cm2 当たり10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、もしくは100000マイクロウェルであり得る。
【0140】
基板上のマイクロウェルの総数は、ウェルのパターン及び間隙、ならびにアレイの全体の寸法に基づいて変化できる。アレイのマイクロウェルの数は、例えば、約96~約1000000個の範囲で変化できる。いくつかの実施形態にて、マイクロアレイのマイクロウェルの数は、96、384、1536、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、2000000、3000000、4000000、5000000、6000000、7000000、8000000、9000000、10000000、108 、109 個であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロアレイのマイクロウェルの数は、少なくとも、または多くても、96、384、1536、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、2000000、3000000、4000000、5000000、6000000、7000000、8000000、9000000、10000000、108 、109 個であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルアレイのマイクロウェルの数は、約96個であり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルの数は、約150000個であり得る。
【0141】
マイクロウェルアレイの表面特徴
マイクロウェルアレイは、細胞及び固体担体をウェル内に導くために役立つように、及び/またはそれらがウェルの間の表面上に静置することを防ぐように設計される、マイクロウェルの間の表面特徴を含むことができる。好適な表面特徴の非限定例としては、ウェルを取り囲む、またはウェル間の表面をまたぐドーム状、隆起状、またはピーク状の表面特徴が挙げられる。
【0142】
基板の製造技術
マイクロウェルは、多数の製造技術のいずれかを使用して、製造することができる。使用できる製造方法の非限定例としては、バルクマイクロマシニング技術(例えば、フォトリソグラフィ及び湿式化学エッチング、プラズマエッチング、または深堀り反応性イオンエッチング)、マイクロ成形及びマイクロエンボス加工、レーザーマイクロマシニング、3Dプリンティング、または硬化性材料を用いた他の直接描画製造プロセス、ならびに類似の技術が挙げられる。
【0143】
マイクロウェルアレイは、様々な基板材料から製造されることができる。材料の選択は、製造技術の選択に依存することができて、逆もまた同じである。好適な材料の非限定例としては、溶融シリカ、ガラス、ポリマー(例えば、アガロース、ゼラチン、ヒドロゲル、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、エラストマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリイミド、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、チオール-エン系樹脂)、金属または金属フィルム(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル、クロム、及びチタン)などが挙げられる。マイクロウェルアレイの製造のために(例えば、湿潤性を向上させるために、ならびに細胞及び他の生体物質の非特異的結合を最小限に抑えるために)、親水性材料が望ましい場合もある。処理または被覆(例えば、酸素プラズマ処理またはポリエチレンオキシド表面層のグラフト化による)が可能な疎水性材料を、マイクロウェルアレイの製造のために使用できる。装置に封入されたガスまたは気泡の毛細管ウィッキング/通気を促進するために、マイクロウェルアレイの製造に多孔性親水性材料の使用が望ましい場合がある。マイクロウェルアレイは、単一物質から製造され得る。マイクロウェルアレイは、一緒に結合された、または機械的に接合された2つ以上の異なる材料を含むことができる。
【0144】
基板の形状及びサイズ
基板は、様々なサイズ及び形状を有することができる。例えば、内部にマイクロウェルが製造される基板の形状(または、フットプリント)は、正方形、矩形、円形または不規則形状であり得る。サイズは、その幅、高さ及び深さによって特徴づけられ得る。
【0145】
基板の幅は、0.1インチ~10インチの範囲で変化できる。いくつかの実施形態では、基板の幅は、0.1、0.2、0.3、0.4、05、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10インチであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、基板の幅は、少なくとも、または大きくても、0.1、0.2、0.3、0.4、05、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10インチであり得る。基板の幅は、0.2cm~20cmの範囲で変化できる。いくつかの実施形態では、基板の幅は、0.2、0.2、0.3、0.4、05、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20cmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、基板の幅は、少なくとも、または大きくても、0.2、0.3、0.4、05、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくは20cmであり得る。
【0146】
基板の長さは、0.1インチ~10インチの範囲で変化できる。いくつかの実施形態では、基板の長さは、0.1、0.2、0.3、0.4、05、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10インチであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、基板の長さは、少なくとも、または大きくても、0.1、0.2、0.3、0.4、05、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10インチであり得る。基板の長さは、0.2cm~20cmの範囲で変化できる。いくつかの実施形態では、基板の長さは、0.2、0.2、0.3、0.4、0 5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20cmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、基板の長さは、少なくとも、または大きくても、0.2、0.3、0.4、05、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくは20cmであり得る。
【0147】
いくつかの実施形態にて、例えばその幅及び長さによって画定される、マイクロウェルアレイのフットプリントは、マイクロタイタープレートのものに類似したものであり得る。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルアレイ基板のフットプリントは、標準的な顕微鏡スライドガラスのものに類似したものであり得る。標準的な顕微鏡スライドガラスのフットプリントの非限定例は、長さ約75mm×幅25mm(長さ約3インチ×幅約1インチ)、及び長さ約75mm×幅50mm(長さ約3インチ×幅2インチ)を含む。
【0148】
内部にマイクロウェルが製造される基板の厚さは、厚さ約0.1mm~厚さ約10mm、またはそれ以上の範囲であり得る。マイクロウェルアレイ基板の厚さは、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。マイクロウェルアレイ基板の厚さは、少なくとも、または厚くても、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1mmであり得る。マイクロウェルアレイ基板の厚さは、厚さ約1mmであり得る。マイクロウェルアレイ基板の厚さは、これらの範囲内の任意の値であり得る。例えば、マイクロウェルアレイ基板の厚さは、約0.2mmと約9.5mmとの間であり得る。
【0149】
マイクロウェルアレイの表面処理
マイクロウェルアレイ表面の性質を改変するために、様々な表面処理及び表面改質技術を使用できる。例としては、疎水性材料表面をより親水性にするための酸素プラズマ処理;ガラス及びシリコンの表面を平滑化もしくは粗面化するための湿式または乾式エッチング技術の使用;より親水性にするための、ならびにバイオ分子及び細胞の非特異的吸着を起こしにくくするための基板表面へのポリエチレンオキシドもしくは他のポリマー層(例えば、プルロニック)、もしくはウシ血清アルブミンの吸着またはグラフト化;シリコン及びガラスの表面を他の形で不活性化するように、化学反応性官能基をグラフトするためのシラン反応の使用;などが挙げられるが、これらに限定されない。アレイ構造の特定の位置で、化学反応性官能基を選択的に活性化させるために、光脱保護技術を使用することができる。例えば、オリゴヌクレオチドプローブ、ペプチド、タンパク質、または他のバイオ分子をマイクロウェルの壁に共有結合するために、マイクロウェルの内壁上で化学反応性官能基(例えば、1級アミンやカルボキシル基)の選択的付加または活性化を使用できる。利用される表面処理または表面改質の選択は、望まれる表面の性質の種類及び/またはマイクロウェルアレイを作製する材料の種類に依存し得る。
【0150】
マイクロウェルの封止
隣接するマイクロウェル間での標的核酸の交差ハイブリッド形成を防ぐために、例えば、細胞溶解工程の間に、マイクロウェルの開口部を封止できる。例えば、マイクロウェルアレイ基板の表面にクランプする、固体材料の可撓性膜もしくはシート(すなわち、プレートもしくはプラテン)を使用して、またはビーズの直径がマイクロウェルの直径よりも大きい場合には好適なビーズを使用して、マイクロウェル(または、マイクロウェルのアレイ)を封止できる、または表面を覆うことができる。
【0151】
固体材料の可撓性膜またはシートを使用して形成される封止は、例えば、無機ナノ細孔膜(例えば、酸化アルミニウム)、透析膜、スライドガラス、カバースリップ、エラストマーフィルム(例えば、PDMS)、または親水性ポリマーフィルム(例えば、溶解緩衝液で水和されたアガロースの薄膜で被覆されたポリマーフィルム)を含むことができる。
【0152】
マイクロウェルをキャッピングするために使用される固体担体(例えば、ビーズ)は、本開示の固体担体のいずれか(例えば、ビーズ)を含むことができる。いくつかの実施形態にて、固体担体は、架橋デキストランビーズ(例えば、Sephadex)である。架橋デキストランは、約10μm~約80μmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、キャッピングで使用する架橋デキストランビーズは、10、20、30、40、50、60、70、80μmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、キャッピングで使用する架橋デキストランビーズは、少なくとも、もしくは大きくても10、20、30、40、50、60、70、または80μmであり得る。ビーズは、マイクロウェルの直径より大きい場合がある。いくつかの実施形態では、ビーズは、マイクロウェルの直径よりも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%だけ大きい場合がある、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、ビーズは、マイクロウェルの直径よりも、少なくとも、もしくは大きくても10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または99%だけ大きい場合がある。
【0153】
封止またはキャップは、ウェルからの巨大分子(例えば、核酸)の移行を防止しつつ、マイクロウェルへの緩衝液の出入りを可能にし得る。いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、20個のヌクレオチドの、もしくはおよそそれらの、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲のヌクレオチドの巨大分子は、封止もしくはキャップによりマイクロウェル内へ、またはその外への移行を阻止され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも、もしくは多くても1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のヌクレオチドの巨大分子は、封止もしくはキャップによりマイクロウェル内へ、またはその外への移行を阻止され得る。
【0154】
固体担体の操作
固体担体(例えば、合成粒子またはビーズ)は、基板中に分散されることができる。固体担体は、基板のウェル中に分散できる、基板のウェルから除去できる、または遠心分離法もしくは他の非磁気的方法によって、1つ以上のマイクロウェルアレイを含む装置により輸送されることができる。基板のマイクロウェルは、固体担体を予め充填できる。基板のマイクロウェルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の固体担体を保持できる、またはおよそそれらの数の担体を保持できる。基板のマイクロウェルは、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の固体担体を保持できる。いくつかの実施形態にて、基板のマイクロウェルは、1つの固体担体を保持できる。
【0155】
消耗材
マイクロウェルアレイは、アッセイシステムの消耗構成要素であり得る。マイクロウェルアレイは、再使用可能であり得る。マイクロウェルアレイは、アッセイを手作業で行うための独立型装置として使用するように構成可能である、またはアッセイ手順の完全もしくは部分的自動化を提供する、機器システムの固定したもしくは取り外し可能な構成要素を含むように構成されることができる。本開示の方法のいくつかの実施形態では、確率バーコードのビーズベースのライブラリは、アッセイ手順の一部としてマイクロウェルアレイのウェル内に堆積できる。いくつかの実施形態では、ビーズは、マイクロウェルアレイのウェル内に予め充填されることができ、例えば、核酸標的の確率バーコーディング及びデジタル計数を行うためのキットの一部としてユーザーに提供され得る。
【0156】
2つの対になるマイクロウェルアレイ
いくつかの実施形態では、2つの対になるマイクロウェルアレイが提供され、一方は、第1の磁石により所定の位置に保持されたビーズを予め充填されており、他方は、個別細胞を充填する際にユーザーにより使用される。第2のマイクロウェルアレイ中に細胞を分配した後、2つのアレイを向かい合うように配置し、第2の磁石を使用して、第1のアレイのビーズを第2のアレイの対応するマイクロウェル中に引き入れつつ、第1の磁石を除去して、それにより、ビーズが第2のマイクロウェルアレイ中の細胞上に確実に静止するようにし、そうして、ビーズ上の確率バーコードへの標的分子の効率的結合を最大化しつつ、細胞溶解後の標的分子の拡散損失を最小限に抑える。
【0157】
マイクロウェルがない基板
いくつかの実施形態にて、基板はマイクロウェルを含まない。例えば、ビーズは集合化されることができる。例えば、ビーズは自己集合化できる。ビーズは、単層内に自己集合化できる。単層は、基板の平坦な表面上にあることができる。単層は、基板の湾曲した表面上にあることができる。ビーズの単層は、任意の方法(例えば、アルコール蒸散)により形成され得る。
【0158】
個別細胞及びビーズは、代替手段を使用して、マイクロウェルに区分化され得る。例えば、単一固体担体及び単一細胞は、エマルションの単一液滴内に閉じ込められ得る(例えば、液滴デジタルマイクロ流体システムで)。
【0159】
細胞は、多孔性ビーズであって、複数のテザー係留した確率バーコードをそれ自体が含む、多孔性ビーズ内に閉じ込められることができる。個別の細胞及び固体担体は、任意の種類の容器、マイクロ容器、反応チャンバ、反応槽などに区分化され得る。
【0160】
単一細胞確率バーコーディングは、マイクロウェルを使用せずに、実施できる。単一細胞確率バーコーディングアッセイは、任意の物理的容器を使用せずに、実施できる。例えば、物理的容器を使用しない確率バーコーディングは、ポリマー層またはゲル層内に細胞及びビーズを互いに近接して埋め込んで、異なる細胞/ビーズの対の間に拡散障壁を形成することにより、実施することができる。例えば、物理的容器を使用しない確率バーコーディングは、インタクトな固体組織上、インタクトな細胞上及び/または細胞内で、in situ、in vivoで実施することができる。
【0161】
バーコーディングの方法
身体サンプル(例えば、組織、器官、腫瘍、細胞)中の異なる位置の異なる標的の数を推定する方法を、本明細書で提供する。該方法は、サンプルに近接して確率バーコードを配置することと、サンプルを溶解させることと、異なる標的を確率バーコードと関連させることと、標的を増幅させることと、及び/または標的をデジタル計数することとを含むことができる。該方法は、確率バーコードの空間標識から得られる情報を解析すること、及び/または視覚化することを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、該方法は、サンプルの複数の標的を視覚化することを含む。複数の標的をサンプルの地図にマッピングすることは、サンプルの二次元地図または三次元地図を作成することを含むことができる。二次元地図及び三次元地図は、サンプルの複数の標的を確率バーコーディングする前に、またはその後に、作製され得る。サンプルの複数の標的を視覚化することは、複数の標的をサンプルの地図にマッピングすることを含むことができる。複数の標的をサンプルの地図にマッピングすることは、サンプルの二次元地図または三次元地図を作製することを含むことができる。二次元地図及び三次元地図は、サンプルの複数の標的を確率バーコーディングする前に、またはその後に、作製され得る。いくつかの実施形態にて、二次元地図及び三次元地図は、サンプルを溶解させる前に、またはその後に、作製され得る。二次元地図もしくは三次元地図を作製する前またはその後に、サンプルを溶解させることは、サンプルを加熱することと、サンプルを界面活性剤に接触させることと、サンプルのpHを変えることと、またはこれらの任意の組み合わせとを含むことができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、複数の標的を確率バーコーディングすることは、複数の確率バーコードを複数の標的とハイブリッド形成して、確率バーコーディングした標的を作製することを含む。複数の標的を確率バーコーディングすることは、確率バーコーディングした標的のインデックス付加したライブラリを作製することを含むことができる。確率バーコーディングした標的のインデックス付加したライブラリを作製することは、複数の確率バーコードを含む固体担体で実行することができる。
【0163】
サンプルと確率バーコード(複数可)を接触させること
サンプル(例えば、細胞)を本開示の基板へ接触させる方法を、本開示は提供する。例えば細胞、器官または組織の薄切片を含むサンプルは、確率バーコードに接触させることができる。細胞は、例えば細胞が定着して、単層を作成できる重力流により、接触させることができる。サンプルは、組織の薄切片であり得る。薄切片は、基板上に配置されることができる。サンプルは、一次元であり得る(例えば、平坦な表面を形成する)。サンプル(例えば、細胞)は、例えば、基板上に細胞を増殖させる/培養することによって、基板全体に広げられることができる。
【0164】
確率バーコードが標的に近接している場合、標的は確率バーコードにハイブリッド形成できる。確率バーコードは、各識別可能な標的を本開示の識別可能な確率バーコードに関連することができるように、非枯渇比で接触できる。標的と確率バーコードとの間の効率的関連付けを確実にするために、標的は、確率バーコードに架橋できる。
【0165】
細胞溶解
細胞及び確率バーコードの分配の後、細胞は、標的分子を遊離するために溶解できる。細胞溶解は、様々な手段のいずれかにより(例えば、化学的もしくは生化学的手段により、浸透圧ショックにより、または熱溶解、機械溶解もしくは光学溶解により)行うことができる。細胞は、界面活性剤(例えば、SDS、Liドデシルサルフェート、Triton X-100、Tween-20、もしくはNP-40)、有機溶媒(例えば、メタノールもしくはアセトン)、または消化酵素(例えば、プロテイナーゼK、ペプシンまたはトリプシン)、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む、細胞溶解緩衝液の添加により溶解し得る。標的と確率バーコードとの関連付けを向上させるために、例えば、温度の低下及び/または溶解物の粘度の増加により、標的分子の拡散速度を変化させることができる。
【0166】
いくつかの実施形態では、サンプルは、濾紙を使用して溶解できる。濾紙は、濾紙の上部を溶解緩衝液で浸漬できる。濾紙は、基板へのサンプルの溶解及びサンプルの標的のハイブリッド形成を促進できる圧力により、サンプルに適用され得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、溶解は、機械的溶解、熱溶解、光学溶解及び/または化学溶解により実行されることができる。化学溶解は、消化酵素(例えば、プロテイナーゼK、ペプシン及びトリプシン)の使用を含むことができる。溶解は、溶解緩衝液の基板への添加により実行されることができる。溶解緩衝液は、トリスHClを含むことができる。溶解緩衝液は、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.5または1M以上のトリスHClを含むことができる。溶解緩衝液は、多くても約0.01、0.05、0.1、0.5または1M以上のトリスHClを含むことができる。溶解緩衝液は、約0.1MのトリスHClを含むことができる。溶解緩衝液のpHは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上であり得る。溶解緩衝液のpHは、高くても約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上であり得る。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液のpHは約7.5である。溶解緩衝液は、塩(例えば、LiCl)を含むことができる。溶解緩衝液の塩の濃度は、少なくとも約0.1、0.5または1M以上であり得る。溶解緩衝液の塩の濃度は、最大でも約0.1、0.5または1M以上であり得る。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液の塩の濃度は、約0.5Mである。溶解緩衝液は、界面活性剤(例えば、SDS、Liドデシルサルフェート、Triton X、Tween、NP-40)を含むことができる。溶解緩衝液中の界面活性剤の濃度は、少なくとも約0.0001%、0,0005%、0.001%、0.005%、0.01%、0.05%、0、1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、または7%以上であり得る。溶解緩衝液中の界面活性剤の濃度は、高くても約0.0001%、0,0005%、0.001%、0.005%、0.01%、0.05%、0、1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、または7%以上であり得る。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液中の界面活性剤の濃度は、約1%のLiドデシルサルフェートである。溶解のための方法で使用する時間は、使用する界面活性剤の量に依存する。いくつかの実施形態では、使用する界面活性剤が多ければ、溶解に必要な時間は短くなる。溶解緩衝液は、キレート剤(例えば、EDTA、EGTA)を含むことができる。溶解緩衝液中のキレート剤の濃度は、少なくとも約1、5、10、15、20、25または30mM以上であり得る。溶解緩衝液中のキレート剤の濃度は、最大でも約1、5、10、15、20、25または30mM以上であり得る。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液のキレート薬の濃度は、約10mMである。溶解緩衝液は、還元剤(例えば、β-メルカプトエタノール、DTT)を含むことができる。溶解緩衝液の還元剤の濃度は、少なくとも約1、5、10、15または20mM以上であり得る。溶解緩衝液の還元剤の濃度は、最大でも約1、5、10、15または20mM以上であり得る。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液の還元剤の濃度は、約5mMである。いくつかの実施形態では、溶解緩衝液は、約0、1MのTrisHCl(pH7.5)、約0.5MのLiCl、約1%のリチウムドデシルサルフェート、約10mMのEDTA、及び約5mMのDTTを含むことができる。
【0168】
溶解は、約4、10、15、20、25または30℃の温度で実行できる。溶解は、約1、5、10、15または20分以上実行されることができる。溶解細胞は、少なくとも約100000、200000、300000、400000、500000、600000または700000個以上の標的核酸分子を含むことができる。溶解細胞は、最大で約100000、200000、300000、400000、500000、600000または700000個以上の標的核酸分子を含むことができる。
【0169】
確率バーコードの標的核酸分子への付着
細胞の溶解及びそれからの核酸分子の放出の後、核酸分子は、共局在化された固体担体の確率バーコードにランダムに関連付けされ得る。関連付けは、標的核酸分子の相補的部分への確率バーコードの標的認識領域のハイブリッド形成を含み得る(例えば、確率バーコードのオリゴdTは、標的のポリA尾部と相互作用できる)。ハイブリッド形成に使用されるアッセイ条件(例えば、緩衝液pH、イオン強度、温度など)は、特定の安定なハイブリッド形成を促進するように選択できる。いくつかの実施形態では、溶解する細胞から放出される核酸分子は、基板上の複数のプローブと関連できる(例えば、基板上のプローブとハイブリッド形成する)。プローブがオリゴdTを含むときに、mRNA分子はプローブにハイブリッド形成することができて、逆転写され得る。オリゴヌクレオチドのオリゴdT部分は、cDNA分子の第1鎖合成のためのプライマーとして作用できる。例えば、図2に示す、確率バーコーディングの非限定例にて、216で、mRNA分子は、ビーズ上の確率バーコードにハイブリッド形成できる。例えば、一本鎖ヌクレオチド断片は、確率バーコードの標的結合領域にハイブリッド形成できる。
【0170】
結合は、確率バーコードの標的認識領域と標的核酸分子の一部とのライゲーションを更に含み得る。例えば、標的結合領域は、制限部位オーバーハング(例えば、EcoRI付着末端オーバーハング)への特異的なハイブリッド形成が可能な、核酸配列を含むことができる。アッセイ手順は、制限部位オーバーハングを生成するために、制限酵素(例えば、EcoRI)で標的核酸を処理することを更に含み得る。次いで、確率バーコードは、制限部位オーバーハングに相補的な配列を含む、任意の核酸分子にライゲートできる。リガーゼ(例えば、T4 DNAリガーゼ)は2つの断片を連結するために使用できる。
【0171】
例えば、図2に示す確率バーコーディングの非限定例で、220にて、複数の細胞(または、複数のサンプル)の標識標的(例えば、標的-バーコード分子)は、例えば、管内にその後プールできる。標識標的は、例えば、確率バーコード及び/または標的-バーコード分子が結合されたビーズを回収することにより、プールできる。
【0172】
結合した標的-バーコード分子の固体担体ベースの集合体の回収は、磁気ビーズ及び外部から印加した磁界の使用により実現できる。標的-バーコード分子をプールした後、すべての更なる処理を1つの反応槽で進行できる。更なる処理は、例えば、逆転写反応、増幅反応、切断反応、解離反応、及び/または核酸伸長反応を含むことができる。更なる処理反応は、マイクロウェル内で、すなわち、複数の細胞からの標識標的核酸分子を最初にプールすることなく、実施できる。
【0173】
逆転写
本開示は、逆転写を用いて確率標的-バーコード複合体を生成する方法を提供する(例えば、図2の224)。確率標的-バーコード複合体は、確率バーコードと、標的核酸の全部または一部の相補的配列と(すなわち、確率バーコード付きcDNA分子)を含み得る。関連付けられたRNA分子の逆転写は、逆転写酵素と共に逆転写プライマーを添加することにより行うことができる。逆転写プライマーは、オリゴdTプライマー、ランダムヘキサヌクレオチドプライマー、または標的特異的オリゴヌクレオチドプライマーであり得る。オリゴdTプライマーは、12~18ヌクレオチド長であり得る、またはおよそそれらであり得ると共に、哺乳動物mRNAの3’末端の内因性ポリA尾部に結合できる。ランダムヘキサヌクレオチドプライマーは、様々な相補的部位でmRNAと結合できる。標的特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、一般的には目的のmRNAを選択的に刺激する。
【0174】
いくつかの実施形態では、標識化RNA分子の逆転写は、逆転写プライマーの添加によって行うことができる。いくつかの実施形態では、逆転写プライマーは、オリゴdTプライマー、ランダムヘキサヌクレオチドプライマー、または標的特異的オリゴヌクレオチドプライマーである。一般的に、オリゴdTプライマーは、12~18ヌクレオチド長であり、哺乳動物mRNAの3’末端の内因性ポリA+尾部に結合できる。ランダムヘキサヌクレオチドプライマーは、様々な相補的部位でmRNAと結合できる。標的特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、一般的には目的のmRNAを選択的に刺激する。
【0175】
逆転写は、複数の標識化cDNA分子を作成するために、繰り返し行うことができる。本明細書で開示する方法は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の逆転写反応を行うことを含むことができる。該方法は、少なくとも約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100個の逆転写反応を行うことを含むことができる。
【0176】
増幅
1つ以上の核酸増幅反応(例えば、図2の228)は、標識化した標的核酸分子の複数のコピーを生成するために、行うことができる。増幅は、複数の標的核酸配列が同時に増幅される場合、多重方式で行うことができる。増幅反応は、核酸分子に配列決定アダプターを付加するために使用できる。増幅反応は、存在するのであれば、サンプル標識の少なくとも一部を増幅することを含むことができる。増幅反応は、細胞及び/または分子標識の少なくとも一部を増幅することを含むことができる。増幅反応は、サンプルタグ、細胞標識、空間標識、分子標識、標的核酸、またはそれらの組み合わせの少なくとも一部を増幅することを含むことができる。増幅反応は、複数の核酸の0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、もしくは100%、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲を増幅することを含むことができる。該方法は、サンプル標識、細胞標識、空間標識及び/または分子標識を含む、標的-バーコード分子の1つ以上のcDNAコピーを生成するために、1つ以上のcDNA合成反応を行うことを更に含むことができる。
【0177】
いくつかの実施形態では、増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して実施できる。本明細書で使用する場合、PCRとは、DNAの相補鎖の同時プライマー伸長法により、特定のDNA配列のin vitro増幅を行う反応を意味し得る。本明細書で使用する場合、PCRは、RT-PCR、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、定量PCR、多重PCR、デジタルPCR、及びアセンブリPCRを含む、反応の派生形を包含できるが、これらに限定されない。
【0178】
標識核酸の増幅は、非PCR系の方法を含み得る。非PCR系の方法の例としては、多重置換増幅(MDA)、転写媒介性増幅(TMA)、核酸配列系の増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、リアルタイムSDA、ローリングサークル増幅、またはサークル-サークル増幅が挙げられるが、これらに限定されない。他の非PCR系の増幅方法としては、DNAもしくはRNA標的を増幅するためのDNA依存性RNAポリメラーゼ駆動RNA転写増幅またはRNA指向DNA合成及び転写の多重サイクル、リガーゼ連鎖反応(LCR)及びQβレプリカーゼ(Qβ)法、パリンドロームプローブの使用、鎖置換増幅、制限エンドヌクレアーゼを用いたオリゴヌクレオチド駆動増幅、プライマーが核酸配列にハイブリッド形成されて、得られた二本鎖が伸長反応及び増幅の前に切断される増幅方法、5’エキソヌクレアーゼ活性の欠如した核酸ポリメラーゼを用いた鎖置換増幅、ローリングサークル増幅、及び分岐伸長増幅(RAM)が挙げられる。いくつかの実施形態では、増幅は、環状転写物を生成しない。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、確率標識アンプリコンを生成するために、標識核酸(例えば、標識RNA、標識DNA、標識cDNA)上でポリメラーゼ連鎖反応を行うことを更に含む。標識アンプリコンは、二本鎖分子であり得る。二本鎖分子は、二本鎖RNA分子、二本鎖DNA分子、またはDNA分子にハイブリッド形成されたRNA分子を含むことができる。二本鎖分子の一方または両方の鎖は、サンプル標識、空間標識、細胞標識、及び/または分子標識を含むことができる。確率標識アンプリコンは、一本鎖分子であり得る。一本鎖分子は、DNA、RNA、またはそれらの組み合わせを含み得る。本開示の核酸は、合成核酸または改変核酸を含み得る。
【0180】
増幅は、1つ以上の非天然ヌクレオチドの使用を含むことができる。非天然ヌクレオチドは、光不安定性またはトリガー性ヌクレオチドを含むことができる。非天然ヌクレオチドの例としては、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸及びロックド核酸(LNA)、ならびにグリコール核酸(GNA)及びトレオース核酸(TNA)が挙げられ得るが、これらに限定されない。非天然ヌクレオチドは、増幅反応の1つ以上のサイクルに添加できる。非天然ヌクレオチドの添加は、増幅反応の特定のサイクルまたは時点で産物を同定するために使用できる。
【0181】
1回以上の増幅反応を行うことは、1つ以上のプライマーの使用を含むことができる。1つ以上のプライマーは、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15個のヌクレオチド、またはそれ以上を含み得る。1つ以上のプライマーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15個のヌクレオチド、またはそれ以上を含み得る。1つ以上のプライマーは、12~15個未満のヌクレオチドを含み得る。1つ以上のプライマーは、複数の確率標識標的の少なくとも一部にアニールできる。1つ以上のプライマーは、複数の確率標識標的の3’末端または5’末端にアニールできる。1つ以上のプライマーは、複数の確率標識標的の内部領域にアニールできる。内部領域は、複数の確率標識標的の3’末端から、少なくとも約50、100、150、200、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、650、700、750、800、850、900、または1000個のヌクレオチドであり得る。1つ以上のプライマーは、固定したプライマーパネルを含むことができる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上のカスタムプライマーを含むことができる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上の対照プライマーを含むことができる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上の遺伝子特異的プライマーを含むことができる。
【0182】
1つ以上のプライマーは、ユニバーサルプライマーを含むことができる。ユニバーサルプライマーは、ユニバーサルプライマー結合部位にアニールされ得る。1つ以上のカスタムプライマーは、第1のサンプル標識、第2のサンプル標識、空間標識、細胞標識、分子標識、標的、またはそれらの任意の組み合わせにアニールできる。1つ以上のプライマーは、ユニバーサルプライマー及びカスタムプライマーを含むことができる。カスタムプライマーは、1つ以上の標的を増幅するように設計できる。標的は、1つ以上のサンプル中の全核酸のサブセットを含むことができる。標的は、1つ以上のサンプル中の全確率標識標的のサブセットを含むことができる。1つ以上のプライマーは、少なくとも96個以上のカスタムプライマーを含むことができる。1つ以上のプライマーは、少なくとも960個以上のカスタムプライマーを含むことができる。1つ以上のプライマーは、少なくとも9600個以上のカスタムプライマーを含むことができる。1つ以上のカスタムプライマーは、2つ以上の異なる標識核酸にアニールできる。2つ以上の異なる標識核酸は、1つ以上の遺伝子に相当し得る。
【0183】
任意の増幅スキームを、本開示の方法で使用できる。例えば、一スキームでは、第1ラウンドのPCRは、遺伝子特異的プライマー、及びユニバーサルIllumina配列決定プライマー1配列に対するプライマーを用いて、ビーズに結合した分子を増幅することができる。第2ラウンドのPCRは、Illumina配列決定プライマー2配列によって隣接するネステッド遺伝子特異的プライマーと、ユニバーサルIllumina配列決定プライマー1配列に対するプライマーとを使用して、第1のPCR産物を増幅することができる。第3ラウンドのPCRは、P5とP7とサンプル指標インデックスとを付加して、PCR産物をIllumina配列決定ライブラリにする。150bp×2配列決定を用いた配列決定は、リード1上の細胞標識及び分子標識、リード2上の遺伝子、ならびにインデックス1リード上のサンプルインデックスを明らかにできる。
【0184】
いくつかの実施形態では、核酸は、化学切断を使用して基板から除去されることができる。例えば、核酸に存在する化学基または修飾塩基は、固体担体からのその除去を容易にするために使用できる。例えば、酵素は、基板から核酸を除去するために使用することができる。例えば、核酸は、制限エンドヌクレアーゼ消化によって基板から除去されることができる。例えば、ウラシル-d-グリコシラーゼ(UDG)による、dUTPまたはddUTPを含有する核酸の処理は、基板から核酸を除去するために使用できる。例えば、核酸は、ヌクレオチド除去を実行する酵素(例えば、塩基除去修復酵素(例えば、アプリン/アピリミジン(AP)エンドヌクレアーゼ))を使用して、基板から除去されることができる。いくつかの実施形態では、核酸は、光切断性基及び光を使用して、基板から除去されることができる。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、基板から核酸を除去するために使用できる。例えば、切断可能なリンカーは、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ビオチン/ニュートラアビジン、Ig-プロテインA、光解離性リンカー、酸もしくは塩基解離性リンカー基、またはアプタマーのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0185】
プローブが遺伝子特異的であるとき、分子は、プローブにハイブリッド形成することができて、逆転写され得る及び/または増幅され得る。いくつかの実施形態では、核酸が合成された(例えば、逆転写された)後、それを増幅できる。増幅は、多重方式で行うことができ、複数の標的核酸配列が同時に増幅される。増幅は、配列決定アダプターを核酸に加えることができる。
【0186】
いくつかの実施形態では、増幅は、例えばブリッジ増幅により、基板に実行されることができる。cDNAは、基板上のオリゴdTプローブを使用して、ブリッジ増幅のための適合末端を生成するために、末端処理したホモポリマーであり得る。ブリッジ増幅で、鋳型核酸の3’末端と相補的であるプライマーは、固体粒子に共有結合する各対の第1プライマーであり得る。鋳型核酸を含有するサンプルが粒子と接触されて、1つの熱サイクルが実行されるとき、鋳型分子は、第1プライマーにアニールされることができて、第1プライマーは、ヌクレオチドの添加により順方向に伸長されて、鋳型分子及び鋳型と相補的である新しく形成されたDNA鎖からなる、二重鎖分子を形成する。次のサイクルの加熱工程にて、二重鎖分子は変性されることができ、粒子から鋳型分子を放出して、相補的DNA鎖を第1プライマーにより粒子に結合したままにしておく。続くアニール及び伸長工程のアニール段階にて、相補鎖は、第2プライマーにハイブリッド形成でき、それは、第1プライマーから除去される位置で相補鎖のセグメントと相補的である。このハイブリッド形成は、相補鎖に、共有結合により第1プライマーに及びハイブリッド形成により第2プライマーに固着する、第1及び第2のプライマーの間のブリッジを形成させることができる。伸長段階にて、第2プライマーは、同じ反応混合物中のヌクレオチドの添加によって、逆方向に伸長されて、それによりブリッジを二本鎖ブリッジに変換することができる。それから次のサイクルが開始されて、二本鎖ブリッジは、2つの一本鎖核酸分子を産生するために変性でき、それぞれ、第1及び第2のプライマーを介してそれぞれ粒子表面に取り付けられた一端を有し、それぞれの他端は付着されていない。この第2サイクルのアニール及び伸長工程にて、各鎖は、同じ粒子上の以前使用していない、更なる相補的プライマーにハイブリッド形成して、新しい一本鎖ブリッジを形成できる。ここでハイブリッド形成される、2つの以前使用していないプライマーは、2つの新しいブリッジを二本鎖ブリッジに変換するために伸長する。
【0187】
増幅反応は、複数の核酸のうちの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または100%を増幅することを含むことができる。
【0188】
標識核酸の増幅は、PCR系の方法または非PCR系の方法を含むことができる。標識核酸の増幅は、標識核酸の指数関数的な増幅を含むことができる。標識核酸の増幅は、標識核酸の線形増幅を含むことができる。増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって実施できる。PCRとは、DNAの相補鎖の同時プライマー伸長法により、特定のDNA配列のin vitro増幅を行う反応を意味し得る。PCRは、RT-PCR、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、定量PCR、多重PCR、デジタルPCR、抑制PCR、半抑制PCR及びアセンブリPCRを含む、反応の派生形を包含できるが、これらに限定されない。
【0189】
いくつかの実施形態にて、標識核酸の増幅は、非PCR系の方法を含む。非PCR系の方法の例としては、多重置換増幅(MDA)、転写媒介性増幅(TMA)、核酸配列系の増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、リアルタイムSDA、ローリングサークル増幅、またはサークル-サークル増幅が挙げられるが、これらに限定されない。他の非PCR系の増幅方法としては、DNA標的もしくはRNA標的を増幅するためのDNA依存性RNAポリメラーゼ駆動RNA転写増幅またはRNA指向DNA合成及び転写の多重サイクル、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβレプリカーゼ(Qβ)、パリンドロームプローブの使用、鎖置換増幅、制限エンドヌクレアーゼを用いたオリゴヌクレオチド駆動増幅、プライマーが核酸配列にハイブリッド形成されて、得られた二本鎖が伸長反応及び増幅の前に切断される増幅方法、5’エキソヌクレアーゼ活性の欠如した核酸ポリメラーゼを用いた鎖置換増幅、ローリングサークル増幅、及び分岐伸長増幅(RAM)が挙げられる。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示する方法は、増幅したアンプリコン(例えば、標的)上でネステッドポリメラーゼ連鎖反応を実行することを更に含む。アンプリコンは、二本鎖分子であり得る。二本鎖分子は、二本鎖RNA分子、二本鎖DNA分子、またはDNA分子にハイブリッド形成されたRNA分子を含むことができる。二本鎖分子の一方または両方の鎖は、サンプルタグまたは分子識別子標識を含むことができる。あるいは、アンプリコンは一本鎖分子であり得る。一本鎖分子は、DNA、RNA、またはそれらの組み合わせを含み得る。本発明の核酸は、合成核酸または改変核酸を含み得る。
【0191】
いくつかの実施形態では、該方法は、標識核酸を繰り返し増幅して、複数のアンプリコンを作成することを含む。本明細書で開示する方法は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の増幅反応を行うことを含むことができる。あるいは、該方法は、少なくとも約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100個の増幅反応を行うことを含むことができる。
【0192】
増幅は、1つ以上の対照核酸を、複数の核酸を含む1つ以上のサンプルに添加することを更に含むことができる。増幅は、1つ以上の対照核酸を、複数の核酸に添加することを更に含むことができる。対照核酸は、対照標識を含むことができる、
【0193】
増幅は、1つ以上の非天然ヌクレオチドの使用を含むことができる。非天然ヌクレオチドは、光不安定性及び/またはトリガー性ヌクレオチドを含むことができる。非天然ヌクレオチドの例としては、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸及びロックド核酸(LNA)、ならびにグリコール核酸(GNA)及びトレオース核酸(TNA)が挙げられるが、これらに限定されない。非天然ヌクレオチドは、増幅反応の1つ以上のサイクルに添加できる。非天然ヌクレオチドの添加は、増幅反応の特定のサイクルまたは時点で生成物を同定するために使用できる。
【0194】
1回以上の増幅反応を行うことは、1つ以上のプライマーの使用を含むことができる。1つ以上のプライマーは、1つ以上のオリゴヌクレオチドを含むことができる。1つ以上のオリゴヌクレオチドは、少なくとも約7~9つのヌクレオチドを含むことができる。1つ以上のオリゴヌクレオチドは、12~15個未満のヌクレオチドを含むことができる。1つ以上のプライマーは、複数の標識核酸の少なくとも一部にアニールできる。1つ以上のプライマーは、複数の標識核酸の3’末端及び/または5’末端にアニールできる。1つ以上のプライマーは、複数の標識核酸の内部領域にアニールできる。内部領域は、複数の標識核酸の3’末端から、少なくとも約50、100、150、200、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、650、700、750、800、850、900、または1000個のヌクレオチドであり得る。1つ以上のプライマーは、固定したプライマーパネルを含むことができる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上のカスタムプライマーを含むことができる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上の対照プライマーを含むことができる。1つ以上のプライマーは、少なくとも1つ以上のハウスキーピング遺伝子プライマーを含むことができる。1つ以上のプライマーは、ユニバーサルプライマーを含むことができる。ユニバーサルプライマーは、ユニバーサルプライマー結合部位にアニールされ得る。1つ以上のカスタムプライマーは、第1のサンプルタグ、第2のサンプルタグ、分子識別子標識、核酸、またはその生成物にアニールできる。1つ以上のプライマーは、ユニバーサルプライマー及びカスタムプライマーを含むことができる。カスタムプライマーは、1つ以上の標的核酸を増幅するように設計できる。標的核酸は、1つ以上のサンプル中の全核酸のサブセットを含むことができる。いくつかの実施形態にて、プライマーは、本開示のアレイに取り付けたプローブである。
【0195】
いくつかの実施形態にて、サンプルの複数の標的を確率バーコーディングすることは、確率バーコーディングした断片のインデックス付加したライブラリを作製することを更に含む。異なる確率バーコードの分子標識は、互いと異なることができる。確率バーコーディングした標的のインデックス付加したライブラリを作製することは、サンプルの複数の標的から複数のインデックス付加したポリヌクレオチドを作製することを含む。例えば、第1のインデックス付加した標的及び第2のインデックス付加した標的を含む、確率バーコーディングした標的のインデックス付加したライブラリにおいて、第1のインデックス付加したポリヌクレオチドの標識領域は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50個のヌクレオチドだけ、およそそれらだけ、少なくともそれらだけ、もしくは多くてもそれらだけ、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲だけ、第2のインデックス付加したポリヌクレオチドの標識領域と異なることができる。いくつかの実施形態では、確率バーコーディングした標的のインデックス付加したライブラリを作製することは、ポリ(T)領域及び標的領域を含む複数のオリゴヌクレオチドと、複数の標的(例えば、mNA分子)とを接触させることと、逆転写酵素を使用して第1鎖合成を行って、それぞれがcDNA領域及び標的領域を含む、一本鎖標識cDNA分子を作製することとを含み、複数の標的は、異なる配列の少なくとも2つのmRNA分子を含み、複数のオリゴヌクレオチドは、異なる配列の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含む。確率バーコーディングした標的のインデックス付加したライブラリを作製することは、一本鎖標識cDNA分子を増幅して、二本鎖標識cDNA分子を作製することと、二本鎖標識cDNA分子上でネステッドPCRを実施して、標識アンプリコンを作製することとを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、該方法は、アダプター-標識アンプリコンを作製することを含むことができる。
【0196】
確率バーコーディングは、核酸バーコードまたはタグを使用して、個々の核酸(例えば、DNAまたはRNA)分子を標識化することができる。いくつかの実施形態では、それは、mRNAから作製される際、DNAバーコードまたはタグをcDNA分子に添加することを含む。ネステッドPCRは、PCR増幅バイアスを最小化するために実行されることができる。アダプターは、例えば、次世代配列決定(NGS)を使用する、配列決定のために添加されることができる。配列決定の結果は、例えば図2の232で、標的の1つ以上のコピーのヌクレオチド断片の細胞標識、分子標識及び配列を決定するために使用できる。
【0197】
図3は、例示のmRNAにおける確率バーコーディングした標的のインデックス付加したライブラリを作製するための、非限定の代表的処理を示す概略図である。工程1に示すように、逆転写処理は、固有の分子標識、細胞標識及びユニバーサルPCR部位により、各mRNA分子をコードできる。特に、RNA分子302は逆転写されて、RNA分子302のポリA尾部領域308への一組の分子識別子標識310の確率的ハイブリッド形成によって、cDNA領域306を含む、標識cDNA分子304を作製できる。分子識別子標識310のそれぞれは、標的結合領域(例えば、ポリdT領域312、標的領域314、及びユニバーサルPCR領域316)を含むことができる。
【0198】
いくつかの態様において、細胞標識は、3~20個のヌクレオチドを含むことができる。いくつかの態様において、分子標識は、3~20個のヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の確率バーコードのそれぞれは、ユニバーサル標識及び細胞標識のうちの1つ以上を更に含み、ユニバーサル標識は、固体担体上の複数の確率バーコードで同じであり、細胞標識は固体担体上の複数の確率バーコードで同じである。いくつかの実施形態にて、ユニバーサル標識は、3~20個のヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態にて、細胞標識は、3~20個のヌクレオチドを含むことができる。
【0199】
いくつかの実施形態では、標識領域314は、分子標識318及び細胞標識320を含むことができる。いくつかの実施形態では、標識領域314は、ユニバーサル標識、次元標識、及び細胞標識の1つ以上を含むことができる。分子標識318は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100ヌクレオチド長であり得る、およそそれらであり得る、少なくともそれらであり得る、もしくは多くてもそれらであり得る、またはこれらの値のいずれかの間の数もしくは範囲であり得る。細胞標識320は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100ヌクレオチド長であり得る、およそそれらであり得る、少なくともそれらであり得る、もしくは多くてもそれらであり得る、またはこれらの値のいずれかの間の数もしくは範囲であり得る。ユニバーサル標識は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100ヌクレオチド長であり得る、およそそれらであり得る、少なくともそれらであり得る、もしくは多くてもそれらであり得る、またはこれらの値のいずれかの間の数もしくは範囲であり得る。ユニバーサル標識は、固体担体上の複数の確率バーコードで同一であり得て、細胞標識は、固体担体上の複数の確率バーコードで同一である。次元標識は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100ヌクレオチド長であり得る、およそそれらであり得る、少なくともそれらであり得る、もしくは多くてもそれらであり得る、またはこれらの値のいずれかの間の数もしくは範囲であり得る。
【0200】
いくつかの実施形態にて、標識領域314は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000個の異なる標識(例えば、分子標識318及び細胞標識320)を含むことができる、およそそれらを含むことができる、少なくともそれらを含むことができる、もしくは多くてもそれらを含むことができる、またはこれらの値のいずれかの間の数もしくは範囲を含むことができる。各標識は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100ヌクレオチド長であり得る、およそそれらであり得る、少なくともそれらであり得る、もしくは多くてもそれらであり得る、またはこれらの値のいずれかの間の数もしくは範囲であり得る。一組の分子識別子標識310は、10、20、40、50、70、80、90、102 、103 、104 、105 、106 、107 、108 、109 、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1020個の分子識別子標識310を含むことができる、およそそれらを含むことができる、少なくともそれらを含むことができる、もしくは多くてもそれらであることができる、またはこれらの値のいずれかの間の数もしくは範囲を含むことができる。更に、一組の分子識別子標識ラベル310はそれぞれ、例えば、固有の標識領域314を含むことができる。標識cDNA分子304は、過剰な分子識別子標識310を除去するために、精製されることができる。精製は、Ampureビーズ精製を含むことができる。
【0201】
工程2に示すように、工程1の逆転写処理からの生成物は、1つの管内にプールされることができ、PCRは、第1のPCRプライマープール及び第1のユニバーサルPCRプライマーにより増幅する。プールは、固有の標識領域314のため、可能である。特に、標識cDNA分子304は、ネステッドPCR標識アンプリコン322を作製するために、増幅されることができる。増幅は、多重PCR増幅を含むことができる。増幅は、単一反応容積の96の多重プライマーによる多重PCR増幅を含むことができる。いくつかの実施形態にあって、多重PCR増幅は、単一反応容積の10、20、40、50、70、80、90、102 、103 、104 、105 、106 、107 、108 、109 、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1020個の多重プライマーを利用できる、およそそれらを利用できる、少なくともそれらを利用できる、もしくは多くてもそれらを利用できる、またはこれらの値のいずれかの間の数もしくは範囲を利用できる。増幅は、特定の遺伝子を標的とするカスタムプライマー326A~Cの第1のPCRプライマープール324及びユニバーサルプライマー328を含むことができる。カスタムプライマー326は、標識cDNA分子304のcDNA部分306’内の領域にハイブリッド形成できる。ユニバーサルプライマー328は、標識cDNA分子304のユニバーサルPCR領域316にハイブリッド形成できる。
【0202】
図3の工程3に示すように、工程2のPCR増幅からの生成物は、ネステッドPCRプライマープール及び第2のユニバーサルPCRプライマーにより増幅され得る。ネステッドPCRは、PCR増幅バイアスを最小化することができる。特に、ネステッドPCR標識アンプリコン322は、ネステッドPCRにより更に増幅され得る。ネステッドPCRは、単一反応容積のネステッドPCRプライマー332a~cのネステッドPCRプライマープール330及び第2のユニバーサルPCRプライマー328’による、多重PCRを含むことができる。ネステッドPCRプライマープール328は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000個の異なるネステッドPCRプライマー330を含むことができる、およそそれらを含むことができる、少なくともそれらを含むことができる、もしくは多くてもそれらを含むことができる、またはこれらの値のいずれかの間の数もしくは範囲を含むことができる。ネステッドPCRプライマー332は、アダプター334を含むことができて、標識アンプリコン322のcDNA部分306’’内の領域にハイブリッド形成できる。ユニバーサルプライマー328’は、アダプター336を含むことができて、標識アンプリコン322のユニバーサルPCR領域316にハイブリッド形成できる。したがって、工程3は、アダプター標識アンプリコン338を生成する。いくつかの実施形態では、ネステッドPCRプライマー332及び第2のユニバーサルPCRプライマー328’は、アダプター334及び336を含むことができない。アダプター334及び336は、代わりにネステッドPCRの生成物にライゲートされて、アダプター標識アンプリコン338を作成できる。
【0203】
工程4に示すように、工程3からのPCR生成物は、ライブラリ増幅プライマーを使用する配列決定のために増幅されるPCRであり得る。特に、アダプター334及び336は、アダプター標識アンプリコン338上の1つ以上の追加のアッセイを行うために使用することができる。アダプター334及び336は、プライマー340及び342にハイブリッド形成されることができる。1つ以上のプライマー340及び342は、PCR増幅プライマーであり得る。1つ以上のプライマー340及び342は、配列決定プライマーであり得る。1つ以上のアダプター334及び336は、アダプター標識アンプリコン338の更なる増幅のために使用され得る。1つ以上のアダプター334及び336は、アダプター標識アンプリコン338を配列決定するために使用できる。分子識別子標識318の同一セットを使用して、作製されるアンプリコンが、次世代配列決定(NGS)を使用して、1つの配列決定反応で配列決定され得るように、プライマー342は、プレートインデックス344を含むことができる。
【0204】
配列決定
いくつかの実施形態にて、異なる確率バーコード標的の数を推定することは、標識標的、空間標識、分子標識、サンプル標識、及び細胞標識、またはその任意の生成物(例えば、標識アンプリコン、標識cDNA分子)の配列を決定することを含むことができる。増幅標的は、配列決定を受けることができる。確率バーコード標的またはその任意の生成物の配列を決定することは、サンプル標識、空間標識、細胞標識、分子標識の少なくとも一部、確率標識標的の少なくとも一部、それらの相補体、それらの逆相補体、またはそれらの任意の組み合わせの配列を決定するために、配列決定反応を行うことを含み得る。
【0205】
確率バーコード標的(例えば、増幅核酸、標識核酸、標識核酸のcDNAコピーなど)の配列決定は、ハイブリッド形成による配列決定(SBH)、ライゲーションによる配列決定(SBL)、定量漸進蛍光ヌクレオチド付加配列決定(QIFNAS)、段階的ライゲーション及び切断、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、分子ビーコン、TaqManレポータープローブ消化、パイロシーケンシング、蛍光in situ配列決定(FISSEQ)、FISSEQビーズ、ウォブル配列決定、多重配列決定、重合コロニー(POLONY)配列決定、ナノグリッドローリングサークル配列決定(ROLONY)、対立遺伝子特異的オリゴライゲーションアッセイ(例えば、オリゴライゲーションアッセイ(OLA)、ライゲート線状プローブとローリングサークル増幅(RCA)リードアウトとを用いた1つの鋳型分子OLA、ライゲートパドロックプローブ、またはライゲート環状パドロックプローブとローリングサークル増幅(RCA)リードアウトとを用いた1つの鋳型分子OLA)などを含む、様々な配列決定方法を使用して実施できるが、これらに限定されない。
【0206】
いくつかの実施形態では、確率バーコード標的またはその任意の生成物の配列を決定することは、ペアエンドシーケンシング、ナノ細孔シーケンシング、ハイスループットシーケンシング、ショットガンシーケンシング、ダイターミネータシーケンシング、複数プライマーDNAシーケンシング、プライマウォーキング、Sangerジデオキシシーケンシング、Maxim-Gilbertシーケンシング、パイロシーケンシング、トルー一分子シーケンシング(true single molecule sequencing)またはこれらの任意の組み合わせを含む。あるいは、確率バーコード標的またはその任意の生成物の配列は、電子顕微鏡法または化学感応性電界効果トランジスタ(chemFET)アレイで決定されることができる。
【0207】
ハイスループットな配列決定方法(例えば、Roche 454、Alumina Solexa、ABI-SOLiD、ION Torrent、Complete Genomics、Pacific Bioscience、HelicosまたはPolonatorプラットフォームなどのプラットフォームを使用する、環状アレイ配列決定)を利用できる。いくつかの実施形態では、配列決定は、MiSeq配列決定を含むことができる。いくつかの実施形態では、配列決定は、HiSeq配列決定を含むことができる。
【0208】
確率標識標的は、生命体ゲノム遺伝子の約0.01%~生命体ゲノム遺伝子の約100%を表す、核酸を含むことができる。例えば、生命体ゲノム遺伝子の約0.01%~生命体ゲノム遺伝子の約100%は、サンプルからの相補的配列を含有する遺伝子を捕捉することにより、複数のマルチマーを含む標的相補的領域を使用して、配列決定できる。いくつかの実施形態では、確率バーコード標的は、生命体トランスクリプトームの転写物の約0.01%~生命体トランスクリプトームの転写物の約100%を表す、核酸を含む。例えば、生命体トランスクリプトームの転写物の約0.501%~生命体トランスクリプトームの転写物の約100%は、サンプルからのmRNAを捕捉することにより、ポリT尾部を含む、標的相補的領域を使用して、配列決定できる。
【0209】
複数の確率バーコードの空間標識及び分子標識の配列を決定することは、複数の確率バーコードの0.00001%、0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、100%、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲を配列決定することを含むことができる。複数の確率バーコードの標識(例えば、サンプル標識、空間標識及び分子標識)の配列を決定することは、複数の確率バーコードの1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、103 、104 、105 、106 、107 、108 、109 、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016、1017、1018、1019、1020、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲を配列決定することを含むことができる。複数の確率バーコードのいくつかまたはすべてを配列決定することは、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000個のヌクレオチドまたは塩基の、およそそれらの、少なくともそれらの、多くともそれらの、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲の、リード長を備える配列を作製することを含む。
【0210】
配列決定することは、確率バーコード標的の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100個以上のヌクレオチドもしくは塩基対、また少なくともおよそそれらを配列決定することを含むことができる。例えば、配列決定することは、複数の確率バーコード標的のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を実行することにより、50、75または100個以上のヌクレオチドのリード長を備える配列を有する、配列決定データを作製することを含むことができる。配列決定することは、確率バーコード標的の少なくとも200、300、400、500、600、700、800、900、1,000個以上のヌクレオチドもしくは塩基対、また少なくともおよそそれらを配列決定することを含むことができる。配列決定することは、確率バーコード標的の少なくとも約1500、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、もしくは10000個以上のヌクレオチドもしくは塩基対、または少なくともおよそそれらを配列決定することを含むことができる。
【0211】
配列決定することは、少なくとも約200、300、400、500、600、700、800、900または1,000個以上の1ラン当たりの配列リードを含むことができる。いくつかの実施形態にて、配列決定することは、少なくとも1500、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000個以上の1ラン当たりの配列リード、または少なくともおよそそれらを配列決定することを含む。配列決定することは、約1,600,000,000個未満、またはそれに等しい1ラン当たりの配列リードを含む。配列決定することは、約200,000,000個未満、またはそれに等しい1ラン当たりの配列リードを含む。
【0212】
サンプル
いくつかの実施形態では、複数の標的は、1つ以上のサンプル中に含まれることができる。サンプルは、1つ以上の細胞、または1つ以上の細胞からの核酸を含むことができる。サンプルは、単細胞、または単細胞からの核酸であり得る。1つ以上の細胞は、1つ以上の細胞型であり得る。1つ以上の細胞型のうちの少なくとも1つは、脳細胞、心臓細胞、がん細胞、循環腫瘍細胞、器官細胞、上皮細胞、転移性細胞、良性細胞、初代細胞、循環細胞、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0213】
本開示の方法で使用するサンプルは、1つ以上の細胞を含むことができる。サンプルは、1つ以上の細胞を意味することができる。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、1つ以上の細胞型を含むことができる。1つ以上の細胞型のうちの少なくとも1つは、脳細胞、心臓細胞、がん細胞、循環腫瘍細胞、器官細胞、上皮細胞、転移性細胞、良性細胞、初代細胞、循環細胞、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、がん組織(例えば、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、脳癌、黒色腫、非黒色腫皮膚癌など)から摘出されたがん細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、がんに由来するが、体液から採取される(例えば、循環腫瘍細胞)。がんの非限定例としては、腺腫、腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、小細胞癌、大細胞未分化細胞癌、軟骨肉腫、及び線維肉腫が挙げられる。サンプルは、組織、細胞単層、固定細胞、組織切片、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。サンプルは、対象からの生体試料、臨床試料、環境試料、生体液、組織または細胞を含むことができる。サンプルは、ヒト、哺乳動物、イヌ、ラット、マウス、魚、ハエ、昆虫、植物、真菌、バクテリア、ウイルス、脊椎動物、または無脊椎動物から得ることができる。
【0214】
いくつかの実施形態では、細胞は、ウイルスに感染していて、ウイルスオリゴヌクレオチドを含有する細胞である。いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、ウイルス(例えば、一本鎖(+鎖または「センス」)DNAウイルス(例えば、パルボウイルス))、または二本鎖RNAウイルス(例えば、レオウイルス)により引き起こされることができる。いくつかの実施形態では、細胞は細菌である。これらは、グラム陽性細菌、またはグラム陰性細菌のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、細胞は菌類である。いくつかの実施形態では、細胞は原生動物または他の寄生体である。
【0215】
本明細書で使用する場合「細胞」という用語は、1つ以上の細胞を意味し得る。いくつかの実施形態では、細胞は、正常細胞(例えば、発生の異なる段階のヒト細胞、または異なる器官もしくは組織型のヒト細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は、非ヒト細胞(例えば、他の種類の哺乳動物細胞(例えば、マウス、ラット、ブタ、イヌ、ウシ、またはウマ))である。いくつかの実施形態では、細胞は、他の種類の動物または植物細胞である。他の実施形態では、細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であり得る。
【0216】
いくつかの実施形態では、細胞は、細胞をビーズに関連付ける前に選別される。例えば、細胞は、蛍光活性化細胞選別もしくは磁気活性化細胞選別、またはより一般的にはフローサイトメトリーにより選別され得る。細胞は、サイズにより濾過されることができる。いくつかの実施形態では、保持液は、ビーズに関連付けられる細胞を含有する。いくつかの実施形態では、フロースルーは、ビーズに関連付けられる細胞を含有する。
【0217】
サンプルとは、複数の細胞を意味することができる。サンプルとは、細胞の単層を意味することができる。サンプルとは、薄切片(例えば、組織の薄切片)を意味することができる。サンプルとは、アレイに一次元で配置され得る、細胞の固体または半固体の集合体を意味することができる。
【0218】
装置
確率バーコーディングのための装置が、本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、装置は、流体チャネル、注入口及び放出口を含む、フローセルを有し、流体チャネルは、天井部、流体チャネル側壁部及び底部を含む。この他の流体チャネル側壁部は、天井部と端を、及び底部と別の端を形成する。天井部の接触角は、流体チャネル側壁部の接触角より、少なくとも10度小さい場合がある。流体チャネルの底部は、複数のマイクロウェルを含む、基板を有する。注入口及び放出口は、流体チャネルを介してフローセルと流体連通する。流体チャネルは、別の流体チャネル側壁部を含むことができる。この他の流体チャネル側壁部は、天井部と端を、及び底部と別の端を形成する。
【0219】
フローセル
マイクロウェルアレイ基板は、残りの流体操作システムとの好都合な連動を提供して、マイクロウェルアレイ及び/またはエマルション液滴に送達される流体(例えば、細胞及び固体担体懸濁液、溶解緩衝液、リンス緩衝液など)の交換を容易にする、フローセル内にパッケージ化されることができる。設計の特徴は、(i)細胞サンプル、固体担体懸濁液または他のアッセイ用試薬を導入するための1つ以上の注入口と、(ii)逆渦流またはデッドゾーンを最小化すると共に、効率的な(例えば、均一な)充填及び流体交換を提供するように設計された、1つ以上のマイクロアレイチャンバと、(iii)サンプル採集位置または廃物貯蔵部への流体の送達のための1つ以上の放出口とを含むことができる。
【0220】
フローセルの設計は、1つ以上の異なる細胞サンプルが平行して処理されることができるように、複数のマイクロウェルアレイと連動する、複数のマイクロアレイチャンバを含むことができる。フローセルの設計は、例えば、「フロー拡散器」として、チャンバ注入口の近く及びマイクロウェルアレイの上流に位置する多孔質隔壁を使用することにより、または各アレイチャンバを、同じ全体のアレイ領域を集合的にカバーするが、分かれた注入口の流体の流れが平行して流れる、いくつかのサブセクションに分けることによって、マイクロウェルに細胞及びビーズのより効率的な(例えば、均一な)送達を提供するアレイチャンバの幅にわたって、一貫した(例えば、均一な)流速特性(すなわち、プラグフロー)を作成するための特徴を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、フローセルは、1つを超えるマイクロウェルアレイ基板を封入する、または組み込むことができる。いくつかの実施形態では、一体化されたマイクロウェルアレイ/フローセルアセンブリは、固定されたシステムの要素を構成できる。いくつかの実施形態では、マイクロウェルアレイ/フローセルアセンブリは、器具から取り外し可能であり得る。
【0221】
一般に、フローセル設計での流体チャネル(複数可)及びアレイチャンバ(複数可)の寸法は、(i)細胞及びビーズの効率的な(例えば、均一な)送達をマイクロウェルアレイに提供するために、及び(ii)サンプル及び試薬の消費を最小化するために、最適化される。流体チャネルの幅は、例えば0.1mm~100mmの範囲で、異なる実施態様にて異なることができる。いくつかの実施形態にて、該幅は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100mmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、該幅は、少なくとも、または大きくても、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100mmであり得る。
【0222】
流体チャネルの高さは、例えば0.1mm~100mmの範囲で、異なる実施態様にて異なることができる。いくつかの実施形態にて、該高さは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10mmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、該高さは、少なくとも、または高くても、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10mmであり得る。
【0223】
フローセルは、当業者に周知の様々な技術及び材料を使用して、製造されることができる。一般に、フローセルは、別個の部品として製造され、その後、マイクロウェルアレイ基板に機械的に固定される、または永久に結合されることができる。適切な製造技術の例は、従来の機械加工、CNC機械加工、射出成形、3Dプリント、レーザーの1つ以上の層の配列及び積層、もしくはダイカットポリマーフィルム、または多くのマイクロ加工技術(例えば、フォトリソグラフィ及び湿式化学エッチング、ドライエッチング、深堀り反応性イオンエッチングまたはレーザー超微細機械加工)のいずれかを含む。
【0224】
フローセル部分が作製されると、それは、例えば、マイクロウェルアレイ基板(ガスケットの使用の有無に関わらず)にそれを挟持することによって、マイクロウェルアレイ基板に機械的に取り付けられることができる、または、それは、(使用する材料の選択に応じて)当業者に周知の様々な技術のいずれかを使用することによって(例えば、陽極接合、熱結合、またはエポキシ系、アクリル系、シリコーン系、UV硬化、ポリウレタン系もしくはシアノアクリレート系接着剤を含む、様々な接着剤もしくは接着フィルムの使用により)マイクロウェルアレイ基板に直接結合されることができる。いくつかの実施形態では、基板は、流体チャネルの流体チャネル底部を形成できる、または基板は、流体チャネルの流体チャネル底部上にあることができる。いくつかの実施形態では、基板は、シリコン、溶融シリカ、ガラス、ポリマー、金属、エラストマー、ポリジメチルシロキサン、アガロース、ヒドロゲル、またはこれらの組み合わせを含む。
【0225】
フローセルは、当業者に周知の様々な材料を使用して、製造されることができる。一般に、使用する材料の選択は、使用する製造技術の選択に依存し、逆もまた同じである。好適な材料の例は、シリコン、溶融シリカ、ガラス、様々なポリマーのいずれか(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS、エラストマー)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリイミド、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂)、金属(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル、クロム及びチタン)、非粘着性材料(例えば、テフロン(PTFE;登録商標))、またはこれらの材料の組み合わせを含むが、これらに限定されない。環状オレフィンポリマー(COP)は、Zeonor 1020RまたはZeonor 1060Rを含むことができる。
【0226】
プラグフロー
いくつかの実施形態にて、フローセルの設計は、例えば、「フロー拡散器」として、チャンバ注入口の近く及びマイクロウェルの上流に位置する多孔質隔壁を使用することにより、または各マイクロウェルチャンバを、同じ全体のアレイ領域を集合的にカバーするが、分かれた注入口の流体の流れが平行して流れる、いくつかのサブセクションに分けることによって、マイクロウェルに細胞及びビーズのより効率的な(例えば、均一な)送達を提供するマイクロウェルチャンバの幅にわたって、一貫した(例えば、均一な)流速特性(すなわち、プラグフロー)を作成するための特徴を更に含んでよい。プラグフローは、(1)フローセルの効率的な(例えば、均一な)細胞及びビーズ充填を提供するために、(2)フローセルに充填されるビーズ及び細胞緩衝液のフロースルーを除去するために(それは、フローセルの細胞及びビーズ捕捉効率を増大させる)、及び/または(3)マイクロウェルの表面で微粒子の振動を可能にするために(それは、ビーズのダブレットを除去できる)、使用できる。
【0227】
図4Aは、流動の方向に沿った層流の相対速度特性を示す、概略図である。層流において、相対速度特性は、放物線状であり得る。最大流速は、流体チャネルの中心で、またはその近くに発生する。流速は、流体チャネル境界(また、フローセル境界とも呼ばれる)、流動と流体チャネルの表面(例えば、流体チャネル底部及び側壁部)との間の境界で、低下することができる、またはゼロに近づくことができる。流体チャネル境界の低流速は、マイクロウェルアレイの表面またはマイクロウェルを含む基板の表面で、ビーズまたは細胞の低いまたは最小の振動をもたらし得る。
【0228】
図4Bは、流動の方向に沿った非層流(例えば、プラグフロー)の相対速度特性を示す、概略図である。いくつかの実施形態では、プラグフローによって、相対流速は、流体チャネルの断面にわたって一定であり得る。プラグフローは、マイクロウェルアレイの表面で、またはマイクロウェルを含む基板の表面でビーズまたは細胞の振動を可能にすることができる。このようなビーズまたは細胞の振動について、各マイクロウェルは、1つのビーズ及び/または1つの細胞を含むことができる。しかし、流体チャネル境界での不均一なガス(例えば、空気、CO2 またはN2 )置換は、流体チャネル境界で相対流速がゼロに近づくことにより、不均一なプラグフローをもたらし得る。
【0229】
フローセルの流体チャネル中の上壁(天井部、流体チャネル天井部または流体チャネルの天井部と呼ばれる)の親水性コーティングもしくは超親水性コーティングまたは処理は、水平非傾斜ワークフローにより(すなわち、フローセルを傾けずに)ガスプラグ及び緩衝液プラグをフローセルに導入するために使用できる。超親水性コーティングは、緩衝液によるガス置換を得るために、またはガスによる緩衝液置換を得るために、浮力を用いずに、毛細管を利用した流動をガスプラグ及び緩衝液プラグの均一な流体前部に提供する。図5Aは、ガス-緩衝液プラグフローのために浮力を使用する、概略図を示す。浮力は、ガス-緩衝液プラグフロー及びプラグフローの他の形態(例えば、油-水プラグフロー)を得るために使用することができ、そこで、プラグ質量密度は、バルク溶液とは異なる。緩衝液によるガスの置換は、フローセルの上方への傾斜を必要とする。ガスによる緩衝液の置換は、フローセルの下方への傾斜を必要とする。したがって、浮力がガス-緩衝液プラグフローで使われるとき、水平ワークフローは可能でない場合がある。プラグフローを得るための1つの要件は、液体またはガスが、フローセルから移動される緩衝液と混合しないということである。
【0230】
図5Bは、水平プラグフローのために毛細管を利用した流動を使用する、概略図を示す。親水性表面または超親水性表面は、緩衝液-ガス界面で流体前部の均一なメニスカス及び移動を容易にすることができ、そうして、浮力を用いずにフローセル内のプラグの崩壊を防ぐ。親水性コーティングまたは超親水性コーティングの使用は、水平ワークフローによるフローセル内のプラグフローを可能にすることができる。親水性コーティングまたは超親水性コーティングにより、流動と流体チャネル底部との間の境界の流動速度は、ゼロ以外であり得る。流体チャネルの断面にわたる相対流速は、一定であり得る、またはほぼ一定であり得る。いくつかの実施形態では、プラグフローは、ほぼ水平プラグフローであり得る。水平プラグフローは、毛細管を利用した水平プラグフローであり得る。いくつかの実施形態では、プラグフローは、ガスの浮力に依存しなくてもよい。プラグフローは、装置を傾けることに依存しなくてもよい。プラグフローは、緩衝液-ガス界面またはプラグフローの他の形態(例えば、油-水プラグフロー)であり得る。
【0231】
コーティングオフセット
図6Aは、流体チャネル天井部の全体が親水性コーティングで覆われるとき、毛細管流動及び圧力駆動流の方向を示す概略図である。フローセルの天井全体は、親水性コーティングによって機能化される、またはそれで覆われている。ガスプラグ(例えば、空気プラグ)は、水性緩衝液で満たされるフローセル内に注入されることができる。ガス-緩衝液の流体前部の形状は、毛細管流動及び圧力駆動流によって引き起こされて、そこで、毛細管流動は、ガスプラグの圧力駆動流への方向に対向する。ガス-緩衝液界面の形状は、円形であり得て、流体チャネル境界の近くのガスプラグの膨張は、流体チャネル境界に対して直交してもよい。
【0232】
いくつかの実施形態では、親水性及び疎水性コーティングは、流体チャネル天井部または流体チャネルの天井部に使用されて、フローセルのガス緩衝液流体前部の特性を調整することができる。流体チャネル境界(本明細書では、フローセル境界とも呼ばれる)の選択的コーティング(本明細書では、機能化とも呼ばれる)は、フローセルの特定部分中の毛細管流動の方向に影響を及ぼして、ガス緩衝液流体前部の特性を制御する。図6Bは、流体チャネル天井部が、流体チャネル天井部の端を除いて、親水性コーティングで覆われるとき、毛細管流動及び圧力駆動流の方向を示す概略図である。いくつかの実施形態では、親水性コーティングは、流体チャネル境界(流体チャネル天井部及び側壁部によって形成される1つ以上の端部)からオフセットされる。オフセットは、親水性コーティングでコーティングされていない(疎水性材料によって機能化されたともいう)流体チャネル境界で、流体チャネル天井部に生じる。流体チャネル天井部の残りは、親水性または超親水性材料によって機能化できる。流体チャネル天井部の端部での流体チャネル天井部の疎水性の結果、毛細管流動は、この領域で低減される、または逆方向になることができる。その結果、ガス-緩衝液界面の形状は修正されて、流体チャネル境界の近くのガスプラグの膨張は、端に対して直交しなくなる場合がある。
【0233】
使用する緩衝液は、異なる実施態様で異なることができる。いくつかの実施形態では、緩衝液は、親水性であり得る。緩衝液-ガスプラグフローにおいて、天井部の端は疎水性コーティングによって機能化されることができて、残りは親水性コーティングによって機能化できる。いくつかの実施形態では、緩衝液は、親水性よりはむしろ疎水性であり得る。緩衝液-ガスプラグフローにおいて、天井部の端は親水性コーティングによって機能化されることができて、残りは疎水性コーティングによって機能化できる。他のフローセル境界(例えば、側壁部または底部)は、同じように機能化できる。
【0234】
マイクロウェルの粒子充填
いくつかの実施形態では、流体チャネルは、その底部上に基板を含む。基板は、複数のマイクロウェルを備えるマイクロウェルアレイを含むことができる。いくつかの実施形態にて、マイクロウェルは、1つの粒子(例えば、細胞またはビーズ)を含有できる。1つの単一粒子を備えるマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合は、例えば25%~90%の範囲で変化できる。いくつかの実施形態では、単一の粒子(例えば、単細胞または単一ビーズ)を備えるマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合は、単細胞及び合成粒子を含むことができるマイクロウェルアレイのマイクロウェルの25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、99%以上であり得る、またはおよそそれらであり得る。いくつかの実施形態では、単一の粒子(例えば、単細胞または単一ビーズ)を備えるマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合は、少なくともまたは多くても25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは99%であり得る。
【0235】
マイクロウェルは、2つの異なる種類の粒子(例えば、細胞及びビーズ)を含むことができる。2つの異なる種類の粒子のそれぞれの1つの粒子を備えるマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合は、例えば25%~90%の範囲で変化できる。いくつかの実施形態では、2つの異なる種類の粒子のそれぞれの1つの粒子(例えば、単細胞または単一ビーズ)を備えるマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合は、単細胞及び合成粒子を含むことができるマイクロウェルアレイのマイクロウェルの25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、99%以上であり得る、またはおよそそれらであり得る。いくつかの実施形態では、2つの異なる種類の粒子のそれぞれの1つの粒子(例えば、単細胞または単一ビーズ)を備えるマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合は、少なくともまたは多くても25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは99%であり得る。
【0236】
いくつかの実施形態にて、複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、コーティングを含むことができる。コーティングは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリHema、プルロニック酸F68、プルロニック酸F108、プルロニック酸F127、ポリソルベート20、二酸化ケイ素(SiO2 )、窒化ケイ素、もしくはこれらの組み合わせを含むことができる、またはそれらであり得る。いくつかの実施形態にて、複数のマイクロウェルのマイクロウェルは、プラズマ処理した表面を含むことができる。
【0237】
カートリッジ
いくつかの実施形態では、マイクロウェルアレイ及びフローセルは、残りの流体操作システムと好都合に連動することを提供する、消耗型カートリッジ内にパッケージ化されることができる。フローセルは、マイクロウェルに送達される流体(例えば、細胞及びビーズ懸濁液、溶解緩衝液、リンス緩衝液など)の交換を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、フローセルは、複数のマイクロウェルにわたる細胞及びビーズの効率的な(例えば、均一な)分配を容易にするように設計されてもよい。設計の特徴は、(i)細胞サンプル、ビーズ懸濁液または他のアッセイ用試薬を導入するための1つ以上の注入口と、(ii)逆渦流またはデッドゾーンを最小化すると共に、効率的な(例えば、均一な)充填及び効率的な流体交換を提供するように設計された、1つ以上のマイクロチャンバと、(iii)サンプル採集位置または廃物貯蔵部への流体の送達のための1つ以上の放出口と、を含むことができる。いくつかの実施形態にて、フローセルの設計は、1つ以上の異なる細胞サンプルが平行して処理され得るように、1つの基板上の複数のマイクロウェルアレイと、または複数のマイクロウェルアレイ基板と連動する、複数のマイクロウェルチャンバを含んでよい。いくつかの実施形態では、フローセルの設計(例えば、流体チャネル及びチャンバのレイアウト)は、マイクロウェルの異なるパターン(すなわち、設定可能なマイクロアレイパターン)が所与の設計の流体により接近されるように、調整され得る。
【0238】
いくつかの実施形態にて、フローセルは、カートリッジの一部であり得る。図7Aは、確率バーコーディングの代表的なカートリッジ700の分解図を示す。カートリッジ700は、マイクロウェルアレイ基板708により形成される流体チャネル704を備えるフローセル702、流体チャネル層712、及びカバープレート716を含むことができる。フローセル700を形成する層の数は、1~20の範囲で、異なる実施態様で異なることができる。いくつかの実施形態では、フローセル700を形成する層の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、フローセル700を形成する層の数は、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり得る。図7Aは、カートリッジ700が、それぞれカバープレート716及び流体チャネル層712上の注入口要素720a及び720bにより形成される、1つの注入口を含むことを示す。注入口要素720a及び720bは、軸722に沿って同軸であり得る。カートリッジ700は、流体チャネル層712上の1つの放出口724を含む。放出口の位置は、異なる実施態様で異なることができる。いくつかの実施形態では、放出口は、カバープレート716上にあることができる。いくつかの実施形態では、放出口は、カバープレート716及び流体チャネル層712上の放出口要素により形成されることができる。
【0239】
カートリッジ700またはフローセル702は、(i)器具との流体接続を作製するための、または手動で細胞サンプル、ビーズ懸濁液または他のアッセイ試薬をカートリッジ内に導入するための1つ以上の注入口を含むことができる。フローセルは、(ii)充填しすぎ、または逆流を回避するための1つ以上バイパスチャネル(すなわち、細胞サンプル及びビーズ懸濁液の自動調量のための)、(iii)1つ以上の一体化したマイクロウェルアレイ/フローセルアセンブリ、または内部にマイクロアレイ基板(複数可)が配置される、1つ以上のチャンバ、(iv)装置を通過する流動の制御のための、一体化した小型ポンプまたは他の流動作動機構、(v)予め充填した試薬(例えば、ビーズ懸濁液)の区分化、または装置を通過する流動の制御のための、一体化した小型バルブ(または、他の封じ込め機構)、(vi)脱出経路を閉じ込められたガスに提供するための1つ以上の孔、(vii)1つ以上のサンプル及び試薬廃物貯蔵部、(viii)器具との流体接続を作製する、または処理済みサンプル採集位置を提供するための1つ以上の放出口、(ix)器具システムに対して取り外し可能で、消耗できるカートリッジを再現的に配置するための、及び外部磁石がマイクロウェルアレイに近接され得るようにアクセスを提供するための、機械的インターフェース機能、(x)機器システムとの良好な熱接触を提供する、一体型温度調節要素または熱界面、(xi)マイクロウェルアレイの光学的読み取りで使用する光インターフェース機能(例えば、透明な窓)、またはこれらの任意の組み合わせ、のうちの1つ以上を含むことができる。
【0240】
図7Bは、図7Aの平面728に沿って取った、代表的なカートリッジ700の断面図を示す。図7Bは、流体チャネル704の2つの流体チャネル部704a及び704bを示す。流体チャネル部704aは、流体チャネル天井部732、2つの流体チャネル側壁部736a及び736b(第1側壁部736a及び第2側壁部736bとも呼ばれる)、ならびに流体チャネル底部740を含む。流体チャネル天井部732及び流体チャネル側壁部736aは、端部744a(天井-第1側壁端部とも呼ばれる)を形成する。流体チャネル天井部732及び流体チャネル側壁部736bは、別の端部744b(天井-第2側壁端部とも呼ばれる)を形成する。流体チャネル側壁部736a及び736bは、例えば1~15度の範囲で、流体チャネル天井部732に対して正の抜け角度を有することができる。いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部732に対する流体チャネル側壁部736aまたは736bの抜け角度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15度であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部732に対する流体チャネル側壁部736aまたは736bの抜け角度は、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15度であり得る。
【0241】
流体チャネル底部740及び流体チャネル側壁部736aは、端部748a(底-第1側壁端部とも呼ばれる)を形成する。流体チャネル底部740及び流体チャネル側壁部736bは、別の端部748b(底-第2側壁端部とも呼ばれる)を形成する。流体チャネル側壁部736a及び736bは、例えば-1~-15度の範囲で、流体チャネル底部740に対して負の抜け角度を有することができる。いくつかの実施形態では、流体チャネル底部740に対する流体チャネル側壁部736aまたは736bの抜け角度は、-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15度であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、流体チャネル底部740に対する流体チャネル側壁部736aまたは736bの抜け角度は、少なくとも、または大きくても-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、もしくは-15度であり得る。
【0242】
カートリッジは、1つ以上のサンプルを平行して処理するように設計され得る。カートリッジは、独立型PCRサーマルサイクラーまたは配列決定計器と連動するために好適な、1つ以上の取り外し可能なサンプル採集チャンバ(複数可)を更に含むことができる。カートリッジ自体は、独立型PCRサーマルサイクラーまたは配列決定計器と連動するために好適であり得る。本開示で使用する場合「カートリッジ」という用語は、解析の実行中、サンプル及びビーズを含む部品の任意の集合体を含むことを意味できる。
【0243】
カートリッジは、マイクロウェルの間の相互汚染を最小化するために、大きな分子の拡散を防ぐ(または、経路長及び拡散時間を増加させる)、物理的または化学的なバリアを作製するように設計されている構成要素を更に含むことができる。このようなバリアの例は、細胞及び固体支持体(例えば、ビーズ)のマイクロウェルアレイへの送達のために使用するS字パターンのチャネル、溶解またはインキュベーション工程の間、マイクロウェルアレイ基板の表面に押し込まれて接触する、伸縮自在なプラテンまたは変形可能な膜、マイクロウェルを開口部をブロックするための、より大きなビーズの使用(例えば、上記したSephadexビーズ)、またはアレイの各マイクロウェルを効果的に切り離して、区分化するために、溶解またはインキュベーション工程の間、カートリッジ内の貯蔵部からの非混和性、疎水性流体の放出を含むが、これらに限定されない。
【0244】
カートリッジは、当業者に周知の様々な技術及び材料を使用して、製造されることができる。一般に、カートリッジは、一連の別個の構成要素として製作されて、多くの機械的アセンブリまたは結合技術のいずれかを使用して、その後に組み立てられる。適切な製造技術の例は、従来の機械加工、CNC機械加工、射出成形、熱成形、及び3Dプリントを含むが、これらに限定されない。カートリッジ要素が製作されると、それらは、ネジ、クリップなどを使用して機械的に組み立てられることができる、または、例えば熱結合/溶接に使用により、もしくはエポキシ系、アクリル系、シリコーン系、UV硬化、ポリウレタン系もしくはシアノアクリレート系接着剤を含む、様々な接着剤もしくは接着フィルムのいずれかの使用により、様々な技術のいずれかを使用して(使用される材料の選択に応じて)永久に結合されることができる。
【0245】
カートリッジ要素は、シリコン、溶融シリカ、ガラス、ポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS、エラストマー)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリイミド、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂)、非粘着性材料(例えば、テフロン(PTFE))、金属(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル、クロム、及びチタン)、またはこれらの任意の組み合わせなどを含む、多数の好適な材料のいずれかを使用して作製することができるが、これらに限定されない。
【0246】
カートリッジの注入口及び放出口の特徴は、機器との好都合及び漏れ防止型の流体連通に器具を提供するように設計されることができる、またはカートリッジ内に、もしくはそれからサンプル及び試薬を手動でピペットで取るための開放型貯蔵部として機能できる。注入口及び放出口コネクタの都合がよい機械的設計の例は、ネジ付きコネクタ、ルアーロックコネクタ、ルアースリップまたは「スリップティップ」コネクタ、圧入コネクタなどを含むが、これらに限定されない。カートリッジの注入口及び放出口は、カートリッジが器具に置かれるとき、開いていることができる、もしくは孔を開けられていることができる、キャップ、ばね荷重式カバーもしくは蓋、またはポリマー膜を更に含むことができ、それは、貯蔵中、内部のカートリッジ表面の汚染を防ぐために機能する、またはカートリッジが器具から取り外されるとき、流体が流出することを防ぐ。カートリッジの1つ以上の放出口は、独立型PCRサーマルサイクラーまたは配列決定計器と連動するために好適な、取り外し可能なサンプル採集チャンバを更に含むことができる。
【0247】
いくつかの実施形態では、注入口及び放出口は、流体チャネルを通過する流体の流動を方向づけて、それにより、流体をマイクロウェルに接触させることが可能であり得る。いくつかの実施形態では、装置は、細胞サンプル、検定用試薬、ビーズ懸濁液、装置からの廃棄物、またはこれらの組み合わせを添加または除去するための、ピペット先端境界面を含む。装置は、細胞サンプル、検定用試薬、ビーズ懸濁液、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0248】
カートリッジは、装置を通過する流動の制御のための、一体化した小型ポンプまたは他の流動作動機構を含むことができる。好適な小型ポンプまたは流動作動機構動の例としては、電気機械的にもしくは空気圧によって作動する小型シリンジまたはプランジャ機構、空気圧によってもしくは外部ピストンによって作動する膜ダイアフラムポンプ、空気圧により作動する試薬パウチもしくは袋、または電気浸透ポンプを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0249】
カートリッジは、予め充填した試薬の区分化、または装置を通過する流動の制御の小型バルブを含むことができる。好適な小型バルブの例は、溶解され得る、もしくは分解され得る、ワックスもしくはポリマープラグ、または穿刺され得るポリマー膜を使用して製作される、1回限りの「バルブ」、変形可能な膜、及び空気圧、磁気、電磁気、電気機械(ソレノイド)作動を使用して製造されるピンチバルブ、変形可能な膜フラップを使用して製造される、一方向弁;ならびに小型ゲートバルブを含み得るが、これらに限定されない。
【0250】
カートリッジは、閉じ込められた空気またはガス(例えば、CO2 またはN2 )に脱出経路を提供するための孔を含むことができる。孔は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の多孔質プラグ、または毛細管の空気もしくはガスのウィッキングを可能にするが、水の浸透を遮断する他の疎水性材料を使用して、様々な技術により製造されることができる。
【0251】
カートリッジの機械的インターフェース機能は、器具システムに対する、カートリッジの容易に取り外し可能であるが、非常に正確かつ再現性が高い配置を提供することができる。好適な機械的インターフェース機能は、位置合わせピン、位置合わせガイド、機械的停止などを含み得るが、これらに限定されない。機械的設計機能は、外部装置(例えば、磁石または光学要素)をマイクロウェルアレイチャンバに隣接するように移動させるためのリリーフ機能を含むことができる。
【0252】
カートリッジは、外部の温度制御モジュールへ嵌合するための、温度制御要素または熱インターフェース機能を含むことができる。好適な温度制御要素の例は、抵抗型加熱要素、小型赤外線発光源、ペルチエエ加熱または冷却装置、ヒートシンク、サーミスタ、熱電対などを含み得るが、これらに限定されない。熱インターフェース機能は、良好な熱伝導体(例えば、銅、金、銀など)である材料から製造されることができて、外部の加熱ブロックまたは冷却ブロックと良好な熱接触を可能にする、1つ以上の平坦な表面を含むことができる、
【0253】
カートリッジは、マイクロウェルアレイの光学撮像または分光監視で使用する、光インターフェース機能を含むことができる。カートリッジは、光学的に透明な窓(例えば、撮像のスペクトル要件を満たす材料から製造される、またはマイクロウェルアレイを探索するために使用する分光器技術から製造される、マイクロウェル基板それ自体、またはマイクロウェルアレイの反対側にある、フローセルまたはマイクロアレイの側部)を含むことができる。好適な光学的な窓の材料の例は、ガラス、溶融シリカ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンポリマー(COP)または環状オレフィンコポリマー(COC)を含むことができるが、これらに限定されない。
【0254】
流体チャネル
図8は、確率バーコーディングのカートリッジ700の代表的な流体チャネル704の断面図を示す。流体チャネル704は、流体チャネル天井部732、2つの流体チャネル側壁部736a及び736b、ならびに流体チャネル底部740を含む。流体チャネル天井部732及び流体チャネル側壁部736aは、端部を形成する。流体チャネル天井部732及び流体チャネル側壁部736bは、別の端部を形成する。流体チャネル側壁部736a及び736bは、例えば1~15度の範囲の正の抜け角度を有する。図8に示される流体チャネル704の幅及び高さは、それぞれ7mm及び1.2mmであり得る。
【0255】
流体チャネル704の幅は、例えば1mm~20mmの範囲で、異なる実施態様にて異なることができる。いくつかの実施形態では、流体チャネル704の幅は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、流体チャネル704の幅は、少なくとも、または大きくても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20mmであり得る。より大きな幅(例えば、7mm)は、所与のフローセル長さのフローセル面積を増大させることができる。
【0256】
流体チャネル704の高さは、例えば0.1mm~2mmの範囲で、異なる実施態様にて異なることができる。いくつかの実施形態では、流体チャネル704の高さは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20mmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、流体チャネル704の高さは、少なくとも、または多くても、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、もしくは0.20mmであり得る。
【0257】
流体チャネル天井部及び側壁部の特性
本明細書で記載されているように、いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部の接触角は、例えば10度だけ、流体チャネル側壁部の接触角より小さい場合がある。いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部は親水性である。流体チャネル天井部の親水性の程度は、流体チャネル天井部の接触角により表されることができる。いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部の接触角は、流体チャネル天井部の複数の位置の接触角の平均に対応する。流体チャネル天井部の接触角は、0~90度の範囲で、異なる実施態様にて異なることができる。いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部の接触角は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90度であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部の接触角は、少なくとも、または多くても、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、もしくは90度であり得る。
【0258】
流体チャネル天井部の接触角は、流体チャネル側壁部の接触角より小さい場合がある。流体チャネル天井部の接触角と流体チャネル側壁部の接触角との差は、異なる実施態様で異なることができる。いくつかの実施形態では、該差は、10、20、30、40、50、60、70、80、90度であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、該差は、少なくとも、もしくは多くても10、20、30、40、50、60、70、80もしくは90度であり得る。
【0259】
流体チャネル側壁部の親水性の程度は、流体チャネル側壁部の接触角により表されることができる。いくつかの実施形態では、流体チャネル側壁部の接触角は、流体チャネル側壁部の複数の位置の接触角の平均に対応する。流体チャネル側壁部の接触角は、異なる実施態様で異なることができる。いくつかの実施形態では、流体チャネル側壁部の接触角は、10、20、30、40、50、60、70、80、88、90度であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、流体チャネル側壁部の接触角は、少なくとも、または多くても、10、20、30、40、50、60、70、80、88、もしくは90度であり得る。いくつかの実施形態では、流体チャネル側壁部は、1~15度の正の抜け角度を有する。
【0260】
いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部の接触角は、流体チャネル側壁部の接触角より十分に小さく(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80度以上)、流体チャネル中の非層流を可能にする。いくつかの実施形態では、流体チャネル中の非層流は、流体チャネル中の流動による、基板表面上の粒子の振動を可能にする。流動と流体チャネル底部との間の境界の流動速度は、ゼロ以外であり得る。流体チャネルの断面にわたる流動の相対流速は、一定であり得る、またはほぼ一定であり得る。非層流は、プラグフローであり得る。
【0261】
いくつかの実施形態では、非層流は、ほぼプラグフローであり得る。プラグフローは、ほぼ水平プラグフローであり得る。水平プラグフローは、毛細管を利用した水平プラグフローであり得る。いくつかの実施形態では、プラグフローは、ガスの浮力に依存しなくてもよい。プラグフローは、装置を傾けることに依存しなくてもよい。プラグフローは、緩衝液-ガス界面であり得る。
【0262】
図9A図9Hのそれぞれは、コーティングを含む流体チャネル天井部732、側壁部736a、736b及び/または底部740を有する、非限定の代表的流体チャネル704の断面図を示す概略図である。流体チャネル704は、流体チャネル天井部732、2つの流体チャネル側壁部736a及び736b、ならびに流体チャネル底部740を含む。流体チャネル天井部732及び流体チャネル側壁部736aは、端部744aを形成する。流体チャネル底部740及び流体チャネル側壁部736aは、端部748aを形成する。流体チャネル底部740及び流体チャネル側壁部736bは、別の端部748bを形成する。流体チャネル天井部732及び流体チャネル側壁部736bは、別の端部744bを形成する。流体チャネル側壁部736a及び736bは、ゼロ角度、または例えば1~15度の範囲の正の抜け角度を有する。
【0263】
いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部732は、親水性コーティング752を含む。例えば、親水性コーティング752は、超親水性コーティングであり得る。親水性コーティング752は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリHema、プルロニック酸F68、プルロニック酸F108、プルロニック酸F127、ポリソルベート20、二酸化ケイ素(SiO2 )、窒化ケイ素、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。親水性コーティング752の接触角は、異なる実施態様で異なることができる。いくつかの実施形態では、親水性コーティング752の接触角は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、23、30、40、50、60、70、80、90度であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、親水性コーティング752の接触角は、少なくとも、または多くても、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、23、30、40、50、60、70、80、もしくは90度であり得る。天井732は、スパッタリング、熱成長、吸着、共有結合(例えば、流体チャネル天井部732、または中に溶解したコーティング材料を有する液体中で流体チャネル天井部732の表面をインキュベートすることによって)、またはこれらの任意の組み合わせによる、親水性コーティングで被覆されることができる。
【0264】
いくつかの実施形態では、親水性コーティング752は、流体チャネル天井部732及び流体チャネル側壁部744a、744bにより形成される端部744a、744bからのオフセット754a、754bを有することができる。例えば、親水性コーティング753は、流体チャネル天井部732の非中心部分が親水性コーティングを含まない一方で、流体チャネル天井部732の中心部分が親水性コーティング753を含むように、端部744a、744bのうちの1つからオフセットされることができる。別の例として、親水性コーティング753は、両方の端部744a、744bからオフセットされることができる。オフセット754a、754bは、例えば1μm~4000μmの範囲で、異なる実施態様にて異なることができる。いくつかの実施形態にて、オフセット744a、744bは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000μmであり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態にて、オフセット744a、744bは、少なくとも、または多くても、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、もしくは4000μmであり得る。オフセット744a、744bは、例えば、流体チャネル天井部732の幅の1%~25%の範囲で、異なる実施態様にて異なることができる。いくつかの実施形態では、オフセット744a、744bは、流体チャネル天井部732の幅の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%であり得る、もしくはおよそそれらであり得る、またはこれらの値の任意の2つの間の数もしくは範囲であり得る。いくつかの実施形態では、オフセット744a、744bは、少なくとも、または多くても、流体チャネル天井部732の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、もしくは25%であり得る。
【0265】
いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部732及び流体チャネル704のもう1つの表面は、コーティング(例えば、親水性コーティング)を含む。図9B図9Dは、側壁部756a(図9B)、756b(図9C)またはコーティング756a、756b、760を含む底部760(図9D)を示す。いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部732及び流体チャネル704のあと2つの表面は、コーティング(例えば、親水性コーティング)を含む(図9E図9G)。いくつかの実施形態では、流体チャネル天井部732及び流体チャネルのあと3つの表面は、コーティング(例えば、親水性コーティング)を含む(図9H)。コーティング752、756a、756b、760は、同一であり得る、または異なることができる。例えば、コーティング752、756a、756b、760は、異なる親水性コーティングであり得る。別の例として、流体チャネル天井部732上のコーティング752は、親水性コーティングであり得て、流体チャネル側壁部736a、736b及び底部740上のコーティング756a、756b、760は、親水性コーティングまたは疎水性コーティングであり得る。図9A図9Hは、すべてのコーティング752、756a、756b、760が端部744a、744b、748a、748bからオフセットされていることを示すが、このようなオフセットは例示にすぎず、制限することを意図するものではない。端部744a、744b、748a、748bからオフセットされているコーティング752、756a、756b、760の数は、異なる実施態様で異なることができる(例えば0、1、2、3または4)。各コーティング752、756a、756b、760は、1つ以上の端部744a、744b、748a、748bからオフセットされることができる。
【実施例
【0266】
上述の実施形態のいくつかの態様は、以下の実施例で更に詳細に開示されており、それは、いかなる場合であっても、本開示の範囲を制限することを意図するものではない。
【0267】
実施例1
流体チャネルの天井部及び側壁部が親水性コーティングを有しない場合の流体チャネル境界のビーズ凝集
この実施例は、流体チャネルの天井部と側壁部との間の接触角が小さい差を有することは、流体チャネル境界のビーズ凝集をもたらすことを示す。
【0268】
図10A図10Bは、流体チャネル境界で、十分なビーズ凝集を示す、マイクロウェルアレイの画像である。マイクロウェルアレイは、フローセルの底部にあった。フローセルの流体チャネルは、幅7mmだった。フローセルの流体チャネルの天井部及び側壁部は、二酸化ケイ素の親水性コーティングがなかった。ビーズ凝集は、不完全なガス置換のため、流体チャネル境界で十分あった。不均一な流体前部は更に、フローセルの中央で高いビーズ損失になり、マイクロウェルアレイ全体にわたる、ビーズの斑状の被覆をもたらした。
【0269】
要するに、これらのデータは、流体チャネルの天井部と側壁部との間の接触角が小さい差を有することが、不完全なガス置換になって、それは次に、流体チャネル境界でのかなりのビーズ凝集をもたらし得ることを示す。
【0270】
実施例2
フローセルチャネルの天井部及び側壁部の親水性コーティング
この実施例は、フローセルチャネルの天井部及び側壁部に親水性コーティングをすることが、フローセルチャネルの天井部と側壁部の間の接触角との差がより小さい場合であっても、水平非傾斜ワークフローにより、流体チャネル境界でビーズ凝集のいくらかの減少をもたらし得ることを示す。
【0271】
図11Aは、マイクロウェルアレイの画像を示す。マイクロウェルアレイは、フローセルの底部にある。フローセルの流体チャネルは、幅4mmである。フローセルの流体チャネルの天井部及び側壁部は、その表面に親水性コーティングを有する。1及び9と標識したマイクロウェルアレイの領域は、それぞれフローセルの注入口及び放出口により近い領域に対応する。天井部及び側壁部上に親水性コーティングを有することは、水平非傾斜ワークフローにより、流体チャネル境界の近くで、いくらかの不完全なガス置換をもたらした。
【0272】
図11B図11Cは、ビーズのダブレットを有するマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合が、マイクロウェルアレイの領域1(フローセルの注入口により近い)の流体チャネルの中心及び境界で同程度だったことを示す画像である。図11D図11Eは、ビーズのダブレットを有するマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合が、マイクロウェルアレイの領域9(フローセルの放出口により近い)の流体チャネルの境界と比較して、中心で少なかったことを示す画像である。
【0273】
図11F図11Iは、流動方向に沿ってビーズがない、1つのビーズまたはビーズのダブレットを有するマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合を示す、プロットである。流体チャネルの天井部及び側壁部に親水性コーティングを有することは、水平非傾斜ワークフローにより、流体チャネル境界の近くで、いくらかの不完全なガス置換をもたらした。不完全なガス置換の効果は、領域9により近い、流体チャネルの端部へ向かう、流体チャネル境界でより明らかだった。
【0274】
要するに、これらのデータは、フローセルチャネルの天井部及び側壁部が小さい接触角を有する場合(例えば、フローセルチャネルの天井部及び側壁部が、親水性コーティングを含む場合)、フローセルチャネルの天井部と側壁部との間の接触角の差が小さい場合であっても、フローセル境界線でのビーズ凝集のいくらかの減少が、フローセルを傾けずに得ることができることを示す。したがって、フローセルは、水平非傾斜ワークフローと共に使用できる。しかし、流体チャネル境界の近くの不完全なガス置換の効果は、流体チャネルの端部に向かう、流体チャネル境界でより明らかだった。
【0275】
実施例3
フローセル境界でのビーズ凝集の更なる低減
この実施例は、流体チャネル天井部の接触角がフローセル側壁部の接触角より小さい場合、フローセル境界でのビーズ凝集の更なる減少を達成し得ることを示す。
【0276】
図12A図12Cは、ビーズの集合体がフローセル境界で著しく低減したことを示す、マイクロウェルアレイの画像である。マイクロウェルアレイは、フローセルの底部にあった。フローセルの流体チャネルは、幅7mmだった。7mmの幅は(4mmの幅と比べて)、所与のフローセル長さのフローセル面積を増大させることができる。フローセルの流体チャネルの天井部は、親水性コーティングを有し、側壁部はそうではなかった。ビーズ凝集は、フローセル境界でさらに低減した。ビーズ充填の均一性または整合性の空間変化は、ほとんど観察されなかった。したがって、緩衝液でガスを置換する、またはガスで緩衝液を置換するために、浮力を利用する必要性を排除できる。次に、フローセルの非水平傾斜ワークフローの必要性を、排除できる。
【0277】
要するに、これらのデータは、流体チャネル天井部の接触角が、フローセル側壁部の接触角より小さい場合(例えば、フローセルチャネルの天井部に親水性コーティングがあり、側壁部にはない場合)、フローセルの境界でのビーズ凝集の更なる減少が、フローセルを傾けずに達成され得ることを示す。したがって、フローセルは、水平非傾斜ワークフローと共に使用できる。
【0278】
実施例4
流体チャネル表面の他の処理
この実施例は、流体チャネル表面の他の処理の特性を示す。
【0279】
プラズマ処理した環状オレフィンコポリマー(COC)は、SiO2 コーティングと同様の良好な湿潤特徴を有した。しかし、プラズマ処理は、表面へのビーズの付着をもたらし、ビーズをフローセルから回収する能力に影響を及ぼす。プラズマ処理の保存期間は変化できる、または乾燥状態のフローセルの貯蔵を必要とし得る。マスキングによる選択的プラズマ処理は、簡単ではなかった。
【0280】
比較として、COCへのPEGグラフト化は、オリゴヌクレオチド、細胞またはビーズの減少した非特異的吸着のために、非常に不活性な表面を提供できる。しかし、COCへのPEGグラフト化は、簡単ではなかった。
【0281】
別の表面処理を、マイクロウェル基板をSiO2 でコーティングすることで試験した。このようなコーティングは、良好な湿潤特性をもたらし、マイクロウェルの自己湿潤を提供した。しかし、プラグフロー挙動は変化した。更に、マイクロウェルの表面の振動も低減し、増加したビーズダブレット密度をもたらした。基板からのビーズの回収も、悪影響を受けた。
【0282】
まとめると、これらのデータは、流体チャネル天井部のSiO2 コーティングが、プラズマ処理、PEGグラフト化及びマイクロウェル表面のSiO2 コーティングと比較して、改善した細胞充填、ビーズ充填及びビーズ回収で有利だったことを示す。
【0283】
実施例5
流体チャネル境界でのビーズ凝集の更なる低減
この実施例は、流体チャネル天井部とフローセル側壁部との非中心部分の接触角より小さい、流体チャネル天井部の中心部分の接触角を有することは、フローセル境界線でのビーズ凝集の更なる減少をもたらし得ることを示す。
【0284】
図13A1図13C2は、流体チャネル天井部(図13A1図13A2)、または流体チャネル天井部の中心部分(図13B1図13C2)に、二酸化ケイ素の親水性コーティングを有するマイクロウェルアレイの画像であり、フローセル境界のビーズ凝集の更なる減少を示す。図13A1図13C2の流体チャネルは、幅7mmだった。図13A1図13A2は、流体チャネル天井部で、親水性コーティングを備える、フローセルのマイクロウェルアレイの画像である。いくらかのビーズ凝集が、流体チャネル境界で観察された。図13A1は、フローセルの端部で、流体前部の直交する膨張が、フローセル端部近くでビーズの無効な洗いながしをもたらしたことを示す。
【0285】
過剰なビーズを効果的に流しだすために、ガス/緩衝液の流体前部の形状は、フローセルの端部に対して直交するというよりはむしろ平行である、構成要素を有しなければならない。図13B1図13C2は、それぞれ500μm及び1000μmだけ流体チャネル境界からオフセットされる、流体チャネル天井部の中心部分の親水性コーティングを備える、フローセルのマイクロウェルアレイの画像である。図13B1図13C2は、流体チャネル天井部のオフセットが、過剰なビーズを流しだす能力を改善したことを示す。
【0286】
要するに、これらのデータは、流体チャネル天井部の中心部分の接触角が、流体チャネル天井部とフローセル側壁部との非中心部分の接触角より小さい場合(例えば、流体チャネル天井部の中心部分をコーティングすることにより)、フローセルの境界でのビーズ凝集の更なる減少が達成される得ることを示す。したがって、フローセルは、水平非傾斜ワークフローと共に使用できる。
【0287】
実施例6
一貫した高い充填効率
この実施例は、フローセルの流体チャネル天井部の中心部分の接触角が、流体チャネル天井部とフローセル側壁部との非中心部分の接触角より小さいときの、一貫した高い充填効率を示す。
【0288】
各充填実験において、ビーズは、カートリッジのU型フローセルのマイクロウェルアレイ上に積載されて(図14A)、過剰なビーズは洗い流された。フローセルの流体チャネルは、幅7mmだった。過剰なビーズを効果的に流しだすために、ガス/緩衝液の流体前部の形状は、フローセルの端部に対して直交するというよりはむしろ平行である、構成要素を有しなければならず、それは、二酸化ケイ素の親水性コーティングを有する、流体チャネル天井部によって達成された。流体チャネル側壁部及び流体チャネル底部は、二酸化ケイ素の親水性コーティングを有しなかった。したがって、フローセルの流体チャネル天井部の中心部分の接触角は、流体チャネル天井部とフローセル側壁部との非中心部分の接触角より小さい。流体チャネル天井部の親水性コーティングは、流体チャネル天井部及び流体チャネル側壁部により形成した、端部からオフセットされた。充填試験を207回繰り返した。
【0289】
図15A1図15J2は、207回の充填実験のうちの10回における、フローセルのマイクロウェルアレイの画像である。10回の充填実験は、良好な充填効率が、フローセル天井部の中心部分(図14B図14C図15A1図15J2)での二酸化ケイ素の親水性コーティングによって、達成され得ることを示す。表1は、10回の充填実験の充填効率の要約である。充填実験は更に、フローセル境界での最小のビーズ凝集を示し、ビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことが達成されたことを示す(図14D図14G図15A1図15J2)。図14B図14Cは、ビーズのダブレットを有するマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合が、マイクロウェルアレイの流体チャネルの中心及び境界で同程度だったことを示す、充填実験の1つからの画像である。図14D図14Gは、流動方向に沿ってビーズがない、1つのビーズまたはビーズのダブレットを有するマイクロウェルアレイのマイクロウェルの割合に関して、端部効果がないことを示す、2つの積載試験のプロットである。
【0290】
【表1】
【0291】
【表2】
【0292】
図16A図16Dは、207回の充填実験の一貫した高い充填効率を示す。図16Aは、207回の充填実験における、充填効率を示すプロットである。図16Bは、207回の充填実験における、一貫した高い充填効率を示す棒グラフである。図16C及び図16Dは、207回の充填実験の統計を要約する表である。表2は、207回の充填実験の充填効率の要約である。
【0293】
要するに、これらのデータは、フローセルの流体チャネル天井部の中心部分の接触角が、流体チャネル天井部とフローセル側壁部との非中心部分の接触角より小さいとき、一貫した高い充填効率、フローセル境界の最小のビーズ凝集を示し、及びビーズ充填の均一性または整合性の変化がほとんどないことが可能であることを示す。
【0294】
上述の実施形態の少なくともいくつかでは、実施形態で使用される1つ以上の要素は、別の実施形態で区別なく使用できるが、このような代替が技術的に実現可能である場合に限る。特許請求されている主題の範囲から逸脱することなく、上述の方法及び構造に様々な他の省略、追加及び変更を行い得ることは、当業者には理解される。このようなすべて修正及び変更は、添付の特許請求の範囲により画定される、本主題の範囲内にあることを意図している。
【0295】
本明細書に記載の実質的に任意の複数形及び/または単数形の用語の使用に関連して、文脈上及び/または適用上適切であれば、当業者は、複数形から単数形へ及び/または単数形から複数形への変換が可能である。明確にするために、種々の単数形/複数形の入れ替えを本明細書に明示的に記述し得る。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」「an」及び「the」は、文脈が別段明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書での「または」の意味はいずれも、特に明記されていない限り、「及び/または」を包含することを意図する。
【0296】
一般に、本明細書で、及び特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語が、通常「制限がない」用語を意図することは、当業者には理解される(例えば、用語「含有する」は「含有するが、これに限定されるものではない」と解釈されなければならず、用語「有する」は「少なくとも有する」と解釈されなければならず、用語「含む」は「含むが、これに限定されるものではない」と解釈されなければならないなど)。更に、導入されたクレーム記載の特定数が意図される場合、そのような意図は請求項で明示的に記載され、そのような記載がなければ、そのような意図は存在しないことは当業者であれば理解する。例えば、理解の一助として、以下の添付の特許請求の範囲は、クレーム記載を導入するために導入語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含み得る。しかし、このような語句を使用するからといって、「a」または「an」といった不定冠詞によりクレーム記載を導入した場合に、たとえ同一のクレーム内に、「1つ以上の」または「少なくとも1つの」といった導入句と「a」または「an」といった不定冠詞との両方が含まれるとしても、このような導入されたクレーム記載を含む特定のクレームが、このような記載事項を1つのみ含む実施形態に限定されるということが示唆されると解釈されるべきではない(例えば、「a」及び/または「an」は、通常は、「少なくとも1つの」または「1つ以上の」を意味すると解釈されるべきである)。クレーム記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても同じことが言える。加えて、導入されたクレーム記載において特定の数が明示されている場合であっても、そのような記載は、通常、少なくとも記載された数を意味するように解釈されるべきであることは、当業者には理解される(例えば、他に修飾語のない、単なる「2つの記載事項」という記載がある場合、この記載は、少なくとも2つの記載事項、または2つ以上の記載事項を意味する)。更に、「A、B及びCなどのうち少なくとも1つ」と同様の表記が使用される場合、一般的には、このような記載は、当業者がその構造を理解する意味であることが意図される(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有する系」は、Aだけ、Bだけ、Cだけ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、及び/またはAとBとCの全部などを有する系を含むが、これらに限定されない)。「A、BまたはCなどのうち少なくとも1つ」と同様の表記が使用される場合、一般的には、このような記載は、当業者がその構造を理解する意味であることが意図される(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有する系」は、Aだけ、Bだけ、Cだけ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、及び/またはAとBとCの全部などを有する系を含むが、これらに限定されない)。更に、2つ以上の選択可能な用語を表す、あらゆる離接語及び/または離接句は、明細書、特許請求の範囲、または図面のいずれにあろうと、それら用語のうちの1つ、それらの用語のうちのいずれか、またはそれらの用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者には理解される。例えば、「AまたはB」という語句は、「A」または「B」、または「A及びB」の可能性を含むものと理解される。
【0297】
更に、本開示の特徴または態様が、マーカッシュ群に関して記載されている場合、本開示が、それによりマーカッシュ群の任意の個々の部分またはサブグループの部分に関して記載されていることは、当業者ならば理解する。
【0298】
当業者であれば理解するが、あらゆる目的で、例えば、明細書の提供に関して、本明細書に開示された範囲はすべて、あらゆる可能なサブ範囲及びそのサブ範囲の組み合わせをも包含する。いずれの列挙された範囲も、十分に記述されたものとして、及びその範囲が少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などされ得るものとして、容易に認識可能である。非限定的な例として、本明細書で考察した各範囲は、下3分の1、中3分の1、上3分の1に容易に分解できる。更に当業者であれば理解するが、「まで」「少なくとも」「超」「未満」などの表現はすべて、記載された数を含み、以上で考察したように、その後にサブ範囲に分解可能な範囲を意味する。最終的に、当業者であれば理解するが、範囲は各個別の部分を含む。したがって、例えば、1~3つの物品を有する群は、1、2または3つの物品を有する群を意味する。同様に、1~5つの物品を有する群は、1、2、3、4または5つの物品を有する群を意味し、他も同様である。
【0299】
種々の態様及び実施形態が本明細書にて開示される一方で、他の態様及び実施形態も当業者にとって明らかである。本明細書で開示した種々の態様及び実施形態は、例示のものであって、限定を意図しておらず、実際の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【0300】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2017年1月13日出願の米国特許仮出願第62/446,223号に対する優先権を主張する。この関連出願の内容は、その全体が参照により明白に本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10A
図10B
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12A
図12B
図12C
図13A1
図13A2
図13B1
図13B2
図13C1
図13C2
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図15A1
図15A2
図15B1
図15B2
図15C1
図15C2
図15D1
図15D2
図15E1
図15E2
図15F1
図15F2
図15G1
図15G2
図15H1
図15H2
図15I1
図15I2
図15J1
図15J2
図16