(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】ボディ特性の残響剪断波フィールド推定
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20220712BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20220712BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20220712BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A61B8/08 ZDM
A61B5/055 390
A61B10/00 E
A61B6/00 350A
(21)【出願番号】P 2019546760
(86)(22)【出願日】2017-11-03
(86)【国際出願番号】 US2017059875
(87)【国際公開番号】W WO2018093584
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-02
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507245021
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ロチェスター
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】パーカー, ケビン
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524740(JP,A)
【文献】特表2014-506523(JP,A)
【文献】特表2008-534198(JP,A)
【文献】特開2012-249776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ内の隠れた興味のある領域の粘弾性特性を推定するために該ボディ内で残響剪断波フィールドを使用するシステムにおいて、
測定期間にわたり振動し且つ相互に且つ該ボディ内の構造物と相互作用する選択した周波数において複数の剪断波を発生させてその際に前記複数の剪断波の連続的な三次元重ね合わせである
残響剪断波フィールドを該ボディ内に発生させる形態とされている振動源、
前記残響剪断波フィールドの存在下において第1の選択した方向において前記測定期間にわたり該ボディ内の興味のある領域の運動を測定し且つ該測定した運動の推定値を発生させる形態とされているイメージング装置、
該剪断波の該選択した周波数及び前記測定した運動の推定値を入力として受け取り且つ剪断波の複数の方向を同様に分布しているとして処理するコンピュータアルゴリズムで該入力を処理して該ボディにおける前記興味のある領域の一つ又はそれ以上の粘弾性特性の推定値を提供する形態とされているイメージプロセッサ、
該興味のある領域の前記一つ又はそれ以上の粘弾性特性の前記推定値を表示する形態とされているコンピュータディスプレイ、及び
前記振動源、イメージング装置、イメージプロセッサ、及びコンピュータディスプレイと動作結合されておりそれらの動作を制御するコントローラ、
を有しているシステム。
【請求項2】
該イメージング装置が、超音波変換器を包含しており且つ該興味のある領域の超音波画像の時間シーケンス及び前記測定した運動の推定値を提供する形態とされている超音波スキャナーである請求項1記載のシステム。
【請求項3】
該イメージング装置が、該興味のある領域の磁気共鳴画像の時間シーケンス及び前記測定した運動の推定値を提供する形態とされている磁気共鳴イメージング(MRI)マシンである請求項1記載のシステム。
【請求項4】
該イメージング装置が、該興味のある領域のOTC画像の時間シーケンス及び前記測定した運動の推定値を提供する形態とされている光学的コヒーレンストモグラフィ(OTC)システムである請求項1記載のシステム。
【請求項5】
該イメージング装置が、該興味のある領域のX線画像の時間シーケンス及び前記測定した運動の推定値を提供する形態とされているX線イメージングシステムである請求項1記載のシステム。
【請求項6】
該振動源
が同一の周波数を有する剪断波を発生する形態とされている請求項1記載のシステム。
【請求項7】
該振動源が30-1000Hzの範囲内の一つ又はそれ以上の周波数において剪断波を発生する請求項1記載のシステム。
【請求項8】
該振動源が1600-2400Hzの範囲内の一つ又はそれ以上の周波数において剪断波を発生する請求項1記載のシステム。
【請求項9】
該振動源が1000-4000Hzの範囲内の一つ又はそれ以上の周波数において剪断波を発生する請求項1記載のシステム。
【請求項10】
該振動源が3-7個の個別的な振動源を具備している請求項1記載のシステム。
【請求項11】
該振動源が7個を超える数の個別的な振動源を具備している請求項1記載のシステム。
【請求項12】
該振動源が拡張型振動表面である請求項1記載のシステム。
【請求項13】
前記測定した運動の推定値が、複数のそれぞれの時間においての該興味のある領域の前記第1の選択した方向においての位置及び前記第1の選択した方向においての該位置の変化の速度を包含しており、且つ該イメージプロセッサが該興味のある領域の画像を採取し且つ前記一つ又はそれ以上の推定値を前記画像の自己相関の関数として計算する形態とされている請求項1記載のシステム。
【請求項14】
該イメージング装置が、更に、第2の選択した方向における運動を測定し且つ該第2の
選択した方向においての該測定した運動の推定値を提供する形態とされている請求項1記載のシステム。
【請求項15】
該イメージプロセッサが該興味のある領域内の複数の点の各々の前記一つ又はそれ以上の粘弾性特性からなるマップを提供する形態とされている請求項1記載のシステム。
【請求項16】
該イメージプロセッサが該興味のある領域内の複数の点の各々の前記一つ又はそれ以上の粘弾性特性からなる二次元マップを提供する形態とされている請求項1記載のシステム。
【請求項17】
該イメージプロセッサが該興味のある領域内の複数の点の各々の前記一つ又はそれ以上の粘弾性特性からなる三次元マップを提供する形態とされている請求項1記載のシステム。
【請求項18】
ボディ内の隠れた興味のある領域の粘弾性特性を推定するために該ボディ内の残響剪断波フィールドを使用する方法において、
該ボディ内に残響剪断波フィールドを発生させるために相互に且つ該ボディ内の構造物と相互作用する複数の剪断波を選択した周波数において発生させ
るステップ、
前記残響剪断波フィールドの存在下において該ボディ内の興味のある領域を撮像し且つ選択した第1の方向において該興味のある領域の運動の推定値を発生させるためにイメージング装置を使用
するステップ、
該ボディ内の前記興味のある領域の一つ又はそれ以上の粘弾性特性を提供するために、該剪断波の該選択した周波数の測定値及び前記測定した運動の推定値を剪断波の複数の方向が同様に分布しているとして取り扱うコンピュータアルゴリズムによってコンピュータ処理
するステップ、
該興味のある領域の一つ又はそれ以上の粘弾性特性の前記推定値をコンピュータディスプレイ上に表示させ
るステップ、及び
剪断波を発生させる前記ステップ、イメージング
装置を使用する前記ステップ、コンピュータ処理を行う前記ステップ、コンピュータ
ディスプレイ上に表示
させる前記ステップの夫々の動作を制御するために前記各ステップと相互作用する、
ことを包含している方法。
【請求項19】
前記イメージング装置を使用するステップが、該興味のある領域の超音波画像
の時間シーケンス及び前記運動の推定値を発生するために超音波スキャナーを使用することを包含している請求項18記載の方法。
【請求項20】
該イメージング装置を使用するステップが、該興味のある領域の超音波画像の前記時間シーケンス及び前記運動の推定値を発生するためにMRIスキャナーを使用することを包含している請求項18記載の方法。
【請求項21】
該イメージング装置を使用するステップが、該興味のある領域のOTC画像の時間シーケンス及び前記運動の推定値を提供する形態とされている光学的コヒーレンストモグラフィ(OTC)を使用することを包含している請求項18記載の方法。
【請求項22】
該イメージング装置を使用するステップが、該興味のある領域のX線画像の時間シーケンス及び前記運動の推定値を発生する形態とされているX線イメージングシステムを使用することを包含している請求項18記載の方法。
【請求項23】
該イメージング装置を使用するステップが、更に、第2の選択した方向において該興味のある領域の運動を測定し且つ該第2の
選択した方向における該測定した運動の測定値を提供することを包含しており、且つ該コンピュータ処理を行うステップが、該第1及び第2
の選択した方向の両方における運動の推定値を使用して一つ又はそれ以上の粘弾性特性の前記推定値を提供することを包含している請求項18記載の方法。
【請求項24】
該コンピュータ処理を行うステップが、更に、該興味のある領域内の複数の点の各々の前記一つ又はそれ以上の粘弾性特性の推定値を提供することを包含している請求項18記載の方法。
【請求項25】
該コンピュータ処理を行うステップが、該興味のある領域内の複数の点の各々の前記一つ又はそれ以上の粘弾性特性からなる三次元マップを提供する請求項18記載の方法。
【請求項26】
該イメージング装置を使用するステップが、
該興味のある領域の一連の画像を形成し且つ前記運動の推定値を発生させるために前記
一連の画像の自己相関を実施することを包含している請求項18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、例えば患者における病変などの内部ボディ構造の弾性及び硬さなどの粘弾性特性を推定するシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、腹部や胸部における或る塊が良性であるか又はガン性であるかを決定する場合の助けとしてその塊の硬さを評価するため、又は病変のその他の特性を決定するために、患者の興味のある領域(ROI)などの生物力学的特性を推定するためにエラストグラフィ(elastography)が最近使用されている。原理的には、該ROIへ力を付与し、超音波又はMRIなどのイメージングモダリティ、即ち撮像技法、によって測定されるような該ROIが該付与された力に応答して変形又は移動する態様が硬さの表示として使用される。既知の技術は、(a)準静的エラストグラフィ、この場合には、圧縮に起因する興味のある領域及びその周辺部の形状変化が測定される、(b)音響放射力インパルスイメージング(ARFI)、この場合には、フォーカスした超音波ビームがビーム方向に沿ってROIを押す態様が硬さの分量として使用される、(c)剪断波弾性イメージング(SWEI)、これはARFIに類似しているがビーム方向に対して垂直なROI変位が硬さの分量である、及び(d)超音波剪断イメージング(SSI)、この場合には、ROIを押す音響放射力が剪断波を発生し且つこれらの波の速度が硬さの分量である、を包含している。磁気共鳴エラストグラフィにおいては、患者における剪断波の速度が硬さの分量として使用される。
【0003】
以下の背景のより詳細な説明において、及び本新たなアプローチの記載において、文献を括弧をつけて同定しており、これらの文献の完全なる引用は本明細書の終わりに提供している。全ての引用文献は引用により本書に取り込まれている。
【0004】
細胞組織の生物力学的特性を推定し且つ画像形成するための技術のたくましい開発が行われている(Parker et al.,2011)。印加する刺激は準静的、過渡的、又は連続的な波とすることが可能である。これらの各々は逆解法に対する独特の数学及び技術を有している(Doyley,2012)が、全て生物力学的応答の一つの連続体上に存在している(Parker et al.,2005;Parker,2013)。剪断波伝播は顕著な注目を集めたが、多くのアプローチにおける固有的なチャレンジは器官境界及び内部不均一部分からの反射波の存在である。これらの反射波は、連続波適用例におけるモーダルパターン(Parker及びLerner,1992;Tayler al.、2000)、及び過渡的実験における後方進行波(Ringleb et al.、2005)が原因となるものである。反射波の幾つかのタイプは指向性フィルタリングを使用して取り除くことが可能である(Pengfei et al.,2012:McLaughlin及びRenzi,2006;Deffieux et al.,2011;Manduca et al.、2003;Engel及びBashford,2015:Hah et al.,2012)。
【0005】
未知の組織硬さを取り除くために、連続的剪断波インバージョンアプローチが開発されている。該アプローチは、磁気共鳴エラストグラフィ(MRE)(Van Houten et al.,2001;Ringleb et al.,2005;Romano et al.,2000;Sinkus et al.,2000;Oliphant et al.,2001)及び音響エラストグラフィ(Parker及びLerner,1992;Fai et al.,1998;Fu et al.,1999)におけるヘルムホルツ方程式のインバージョンを包含している。ランダム信号を使用する水中音響及び地力学に対する別のクラスの推定が開発されており(Roux et al.,2005)、且つ柔らかい組織におけるノイズ相関測定に拡張されている(Gallot et al.,2011;Gatheline et al.,2008;Brum et al.,2015)。これらは、2つの点において測定されたノイズ関数の空間コヒーレンスを関与させ、且つグリーンの関数(Green’s functions)及び時間逆解としてリキャスト、即ち、作り直すことが可能である。肝臓のような大きな器官において多数の波方向を発生させるために機械的振動源を使用するアプローチがTzschatzsch et al.によって開発されている(2014;2015;2016)。確率アプローチを使用して、彼らは方向の関数として最小波数を見つけることにより剪断波速度を特性付ける。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】アブラモウイッツ エム及びステガン アイ エイ 1964ハンドブックオブマセマティカルファンクションズ ウィズ フォームラズ、グラフス、アンドマセマティカルテーブルズ(Abramowitz M and Stegun IA 1964 Handbook of mathematicalfunctions with formulas, graphs, and mathematical tables)(Washington; U.S. Govt. Print. Offi.)
【文献】バヅール エヌ 2011 マルチディメンジョナル ウエーブフィールドシグナルセオリ:マセマティカルファウンデーションズ(Baddour N 2011 Multidimensional wave field signal theory: mathematical foundations)AIP Advances 1 0221201-02212024
【文献】ブレースウエル アール エヌ 1965 ザ フーリエトランスフォームアンドイッツアプリケーションズ(Bracewell R N 1965 The Fourier transform and its applications)(New York; McGraw-Hill)
【文献】ブラム ジェイ、キャスリン エス、ベネチ エヌ、アンド ネグレイラ シー 2015 クヮンティテイティブ シェア エラスティシティ イメージング フロム ア コンプレックス エラスティック ウエーブフィールド イン ソフト ソリッド ウイズ アプリケーション ツー パッシブ エラストグラフィ(Brum J, Catheline S, Benech N and Negreria C 2015 Quantitative shear elasticity imaging from a complex elastic wavefield in soft solids with applications to passive elastography) IEEE Trans. Ultrason Ferroelectgr Freq Control 62 673-85
【文献】キャスリン エス、ベネチ エヌ、ブラム ジェイ アンド ネグレイラ シー 2008 タイムリバーサル オブ エラスティック ウエーブ イン ソフト ソリッド(Catheline S, Benech N, Brum J and Negreira C 2008 Time reversal of elastic waves in soft solids) Physical review letters 100 064301
【文献】クック アール ケイ、ウオーターハウス アール ブイ、ベレンド アール ディ、イーデルマン エス、アンド トンプソン エム シー 1955 メジャメント オブ コリレーション コエフィシェント イン リバービラント サウンド フィールド(Cook R K, Waterhouse R V, Berendt R D, Edelman S and Thompson M C 1955 Measurement of correlation coefficients in reverberant sound fields) Jacoust Soc Am 27 1072-7
【文献】デフュクス ティ、ゲニソン ジェイ エル、バーコフ ジェイ、アンド タンター エム 2011 オン ザ エフェクツ オブ リフレクテッド ウエーブ イン トランジエント シェア ウエーブ エラストグラフィ(Deffieux T, Gennisson J L, Bercoff J and Tanter M 2011 On the effects of refleclted waves in transient shear wave elastography) IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Freq Control 58 2032-5
【文献】ドイリー エム エム 2012 モデルベースト エラストグラフィ: ア サーベイ オブ アプローチズ ツー ザ インバース エラスティシチ プロブレム(Doyley M M 2012 Model-based elastography: a survey of approaches to the inverse elasticity problem) Phys Med Biol 57 R35-R73
【文献】エンゲル エイ ジェイ アンド バッシュフォード ジー アール 2015 ア ニュウ メサッド フォー シェア ウエーブ スピード エスティメーション イン シェア ウエーブ エラストグラフィ(Engel A J and Bashford G R 2015 A new method for shear wave speed estimation in shear wave elastography) IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Freq Control 62 2106-14
【文献】ファイ ワイ、レビンソン エス エフ、ドングシャン エフ、アンド パーカー ケイ ジェイ 1998 フィーチャーアダプティブ モーション トラッキング オブ ウルトラサウンド イメージ シーケンシズ ユージング ア デフォーマブル メッシュ(Fai Y, Levinson S F, Dongshan F and Parker K J 1998 Feature-adaptive motion tracking of ultrasound image sequences using a deformable mesh) IEEE Trans Med Imaging 17 945-56
【文献】フー ディ、レビンソン エス エフ、グレースウキ エス エム、アンド パーカー ケイ ジェイ 1999 ソリューション オブ ザ インバース プロブレム イン ソノエラストグラフィ ユージング アン アイタレイティブ フォアワード アプローチ(Fu D, Levinson S F, Graceswki S M and Parker K J 1999 Solution of the inverse problem in sonoelllllastography using an iterative forward approach) Ultrasonic Imaging and Tissue Characterization Symposium, pp 61-2
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【文献】マンヂュカ エイ、レイク ディ エス、クルース エス エイ、アンド イーマン アール エル 2003 スペーシオ-テンポラル ディレクショナル フィルタリング フォー インプルーブド インバージョン オブ エムアール エラストグラフィ イメージズ(Manduca A, Lake D S, Kruse S A and Ehman R L 2003 Spatio-temopral directional filtering for improved inversion of MR elastography images) Med Image Anal 7 465-73
【文献】マクローリン ジェイ アンド レンジ ディ 2006 シェア ウエーブ スピード リカバリ イン トランジエント エラストグラフィ アンド スーパーソニック イメージング ユージング プロパゲイティング フロンツ(MaLaughlin J and Renzi D 2006 Shear wave speed recovery in transient elastography and supersonic imaging using propagating fronts) Inverse Probl 22 681-706
【文献】オリファンと ティ イー、マンヂュカ エイ、イーマン アール エル アンド グリーンリーフ ジェイ エフ 2001 コンプレックス-バリュード スティッフネス リコンストラクション フォー マグネティック レゾナンス エラストグラフィ バイ アルジェブレイク インバージョン オブ ザ ディフィレンシャル イクエーション(Oliphant T E, Manduca A, Ehman R L and Greenleaf J F 2001 Complex-valued stiffness reconstruction for magnetic resonance elastography by algebraic inversion of the differential equation) Magn Reson med 45 299-310
【文献】パーカー ケイ ジェイ 2013 イメージング イン メディカル ダイアゴノシス アンド セラピイ(Parker K J 2013 Imaging in medical diagnosis and therapy) (Boca Raton, FL: CRC Press) pp xvii, 331p
【文献】パーカー ケイ ジェイ、ドイリイ エム エム アンド ルーベンス ディ ジェイ 2011 イメージング ザ エラスティック プロパティズ オブ ティッシュー: ザ 20イヤー パースペクティブ(Parker K J, Doyley M M and Rubens D J 2011 Imaging the elastic properties of tissue: the 20 year perspective) Phys Med Bilo 56 R1-R29
【文献】パーカー ケイ ジェイ アンド ラーナー アール エム 1992 ソノエラスティシティ オブ オーガンズ: シェア ウエーブズ リング ア ベル(Parker K J and lerner R M 1992 Sonoelasticity of organs: shear waves ring a bell) J Ultrasound Med 11 387-92
【文献】パーカー ケイ ジェイ アンド メイ ビー エイ 1984 パーシャリ コヒーレント ラディエーション フロム リバービラント チャンバーズ(Parker K J and Maye B A 1984 Partially coherent radiation from reverberant chambers) J Acoust SocAm 76 309-13
【文献】パーカー ケイ ジェイ、テイラー エル エス、グレースウスキ エス、アンド ルーベンス ディ ジェイ 2005 ア ユニファイド ビュー オブ イメージング ザ エラスティック プロパティズ オブ ティッシュー(Parker K J, Taylor L S, Gracewski S and Rubens D J 2005 A unified view of imaging the elastic properties of tissue) J Acoust Soc M 117 2705-12
【文献】ペンフェイ エス、ヘング ゼット、マンヂュカ エイ、アーバン エム ダブリュ、グリーンリーフ ジェイ エフ、アンド シガオ シー 2012 コーム-プッシュ エラスティシティ シェア エラストグラフィ(CUSE): ア ノーベル メッソド フォー ツージメンジョナル シェア エラスティシティ イメージング オブ ソフト ティッシュー(Pengfei S, Heng Z, Manduca A, Urban M W, Greenleaf J F and Shigao C 2012 Comb-push ultrasound shear elastography (CUSE): a novel method for two-dimensional shear elasticity imaging of soft tissues) IEEE Trans Med Imaging 31 1821-32
【文献】ピアース エイ ディ 1981 マクグローヒル シリーズ イン メカニカルエンジニアリング(Pierce A D 1981 McGraw-Hill series in mechanical engineering)(New York: McGraw-Hill Book Co.)
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【文献】ロー ピイ、サブラ ケイ ジー、クッパーマン ダブリュ エイ アンド ロー エイ 2005 エンビエント ノイズ クロス コリレーション イン フリー スぺース: セオリティカル アプローチ(Roux P, Sabra K G, Kuperman W A and Roux A 2005 Ambient noise cross correlation in free space: theoretical approach) J Acoust Soc Am 117 79-84
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【文献】ツシャッシュ エイチ、グオ ジェイ、ディットマン エフ、ヒルシュ エス、バーンヒル イー、ジョーレンズ ケイ、ブラウン ジェイ、アンド サック アイ 2016 トモエラストグラフィ バイ マルチフリークエンシ ウエーブ ナンバー リカバリ フロム タイム-ハーモニック プロパゲイティング シェア ウエーブズ(Tzscheatzsch H, Guo J, Dittmann F, Hirsch S, Barnhill E, Johrens K, Braun J and Sack I 2016 Tomoelastography by multifrequency wave number rexovery from time-harmonic propagating shear waves) Med Image Anal 30 1-10
【文献】ツシャッシュ エイチ、イペク-ユゲイ エス、グオ ジェイ、ストレイトベーガー ケイ ジェイ、ゲンツ イー、フィッシャー ティ、クラウア アール、シュルツ エム、ブラウン ジェイ、アンド サック アイ 2014 インビボ タイム-ハーモニック マルチフリークエンシ エラストグラフィ オブ ザ ヒューマン リバー(Tzscheatzsch H, Ipek-Ugay S, Guo J, Streitgerger K J, Gentz E, Fischer T, Klaua R, Schultz M, Braun J and Sack I 2014 In vivo time-harmonic multifrequency elastography of the human liver) Phys Med Biol 59 1641-54
【文献】ツシャッシュ エイチ、イペク-ユゲイ エス、トロング エム エヌ、グオ ジェイ、エッガー ジェイ、ゲンツ イー、フィッシャー ティ、シュルツ エム、ブラウン ジェイ、アンド サック アイ 2015 マルチフリークエンシ タイム-ハーモニック エラストグラフィ フォー ザ メジャメント オブ リバー ビスコエラスティシティ イン ラージ ティッシュー ウインドウズ(Tzscheatzsch H, Ipek-Ugay S, Trong M N, Guo J, Eggers J, Gentz E, Fischer T, Schultz M, Braun J and Sack I 2015 Multifrequency time-harmonic elastography for the measurement of liver viscoelsasicity in large tissue windows) Ultrasound Med Biol 41 724-33
【文献】バンフーテン イー イー、ミガ エム アイ、ウイーバー ジェイ ビー、ケネディ エフ イー、アンド ポウルセン ケー ディ 2001 スリーディメンジョナル サブゾーン-ベースト リコンストラクション アルゴリズム フォー MR エラストグラフィ(Van Houten E E, Miga M I, Weaver J B, Kennedy F E and Paulsen K D 2001 Three-dimensional subzone-based reconstruction algorithm for MR elastography) Magn Reson Med 45 827-37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
該既知の技術は有用であり且つ有益的なものである場合があるが、改善された性能及び結果を提供することが可能なボディ内の興味のある領域の硬さなどの特性を推定するための新たなアプローチに対する必要性が未だに存在している。例えば、腹部の奥深く等、患者、特に太った患者において一層深い興味のある領域の硬さを測定するための一層効果的な方法に対する必要性が存在している。更に又、興味のある領域以外の組織との音響エネルギ干渉の不所望な効果を減少させる必要性が存在している。又、一般的に、性能を改善し且つ装置及びその動作のコストを低下させることの必要性が存在している。本特許明細書はこのような新たなアプローチを記載するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本特許明細書は、興味のある領域即ちボディ内部の解剖学的器官の弾性特性を測定し且つ推定する新たなアプローチを記載するものである。概略的な枠組みは、境界が決められている弾性媒体において残響剪断波を使用することを関与させることである。
【0009】
ボディ内の隠れた興味のある領域の粘弾性特性を測定するためにボディにおいて残響剪断波フィールド(reverberant shear wave field)を使用するシステムの非制限的な1例は、所望の残響剪断波フィールドを発生させるために互いに且つボディにおける構造物と相互作用する或る選択した周波数における剪断波を発生させる形態とされている複数個の振動源、前記残響剪断波フィールドの存在下において第1選択方向における該ボディ内の興味のある領域の運動を測定し且つ該測定した運動の推定を発生させる形態とされているイメージング装置、該剪断波の該選択した周波数を入力として受け取り且つ該ボディにおける前記興味のある領域の一つ又はそれ以上の粘弾性特性の推定を与えるためにコンピュータアルゴリズムで該入力を処理する形態とされているイメージプロセッサ、該興味のある領域の一つ又はそれ以上の粘弾性特性の前記推定を表示させる形態とされているコンピュータディスプレイ、及び前記振動源、イメージング装置、及びコンピュータディスプレイの夫々の動作を制御するためにそれらと動作結合されているコントローラ、を有している。
【0010】
該イメージング装置は、該測定した運動の推定及び該興味のある領域の超音波画像の時間シーケンスを提供する形態とされている超音波変換器を包含している超音波スキャナーとすることが可能である。別の例として、該イメージング装置は、該測定した運動の推定及び該興味のある領域の磁気共鳴画像の時間シーケンスを提供する形態とされている磁気共鳴イメージング(MRI)マシンとすることが可能である。イメージング装置のその他の例は、該興味のある領域のX線画像の迅速な繋がりを取るX線イメージング装置、及び同様に複数画像の迅速なシーケンスを取る光学的コヒーレンストモグラフィ(OCT)装置を包含している。該振動源は、実質的に同一の周波数を有しているか、又は同一の範囲内であって、例えば30-1000Hz又はそれ以上、即ち1600-2400、の一層広い範囲内、及び1000-4000Hz等の更に一層広い範囲内の剪断波を発生する形態とさせることが可能である。1例においては、3-7個の個別的な振動源を使用することが可能であるが、その他の例においては7個を超える数を使用することが可能である。
【0011】
該測定した運動の推定は、複数の夫々の時間において該興味のある領域の該選択した方向における一つの位置、及びその方向における位置変化の速度を包含している。該イメージプロセッサは、夫々の時間において、該ROIの位置の自己相関の関数として該運動及び速度の一つ又はそれ以上の推定値を計算する形態とさせることが可能である。本システムは、更に、運動を測定し且一つ又は二つの付加的な方向における該測定した運動の推定を提供する形態とさせることが可能であり、その場合には、2Dにおける一つの面又は3Dにおける一つの体積における硬さなどの一つ又はそれ以上の粘弾性パラメータの空間的分布を示すためにマップを発生させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1はイメージング変換器の配向及び残響剪断波フィールドの理論と一貫性のあるその内部を介して伝播する剪断波の等方的ランダム分布を有しているオブジェクトを例示している。座標系のx軸はイメージング変換器の軸方向に整合されており、且つイメージングシステムがx方向における運動を検知することが仮定されている。
【数0】
は、残響内部を介して分布されている個別的な平面波の方向ベクトルである。
【
図2】
図2は速度ベクトルの検知された成分に関してΔεの相対的方向に自己相関B
υυ(t=0,Δε)が依存することを例示している。この場合には、運動の検知された方向はx軸として取られる。太線はxに関しての自己相関を与えており、細線はΔεが垂直のz方向に取られる場合の自己相関を示している。波数κはこれらの曲線に対して1の値に設定されている。
【
図3】
図3A乃至3Fからなる
図3はシミュレーションを例示しており、
図3Aは胸部モデルの3Dメッシュを示しており、
図3BはAbaqus/CAEで表示した境界条件とロードとを具備する
図3Aにおけるメッシュモデルの2Dプロファイルとして成形した胸部の幾何学的モデルを示しており、
図3Cはバックグラウンドにおける物質特性定義及びインクルージョン(直径=17mm)、及び興味のある領域の境界決定を具備している
図3Bの有限シェル要素メッシュを示しており、且つ
図3D-3Fは、夫々、400Hz,500Hz,600Hzの動作周波数に対するx軸における変位フィールドを示している。
【
図4】
図4A及び4Bからなる
図4は、或る内部平面内の複素正弦定常状態解の大きさ変位フィールドを具備する胸部のAbaqus/CAEにおける3D有限要素ソリッドモデルを例示している。
図4Aは450Hzの動作周波数に対するz軸における変位フィールドを例示しており、且つ
図4Bはバックグラウンド及びインクルージョン(直径=13mm)領域における500Hzに対する同様の例示である。
【
図5】
図5は、胸部組織をシミュレートするファントム内部の残響剪断波フィールドを発生するための4個の外部振動源と運動パラメータを測定する超音波変換器とを使用している実験装置を例示している。
【
図6】
図6は
図6A乃至6Dからなっており、
図6AはAbaqus/CAEにおけるシェル要素シミュレーションモデルを使用して得られた400Hzにおいての変位パターンを例示しており、
図6Bは第2モーメントアルゴリズムを使用した
図6Aから計算された剪断波速度マップを例示しており、且つ
図6C及び6Dは、夫々、x軸及びy軸においての
図6Bから抽出された自己相関パターンを例示している。
【
図7】
図7は
図7A乃至7Cからなっており、
図7AはAbaqus/CAEを使用して得られた450Hzにおいての胸部内部の3D変位パターンの2Dプロファイルを例示しており、且つ
図3B及び3Cは、夫々、450Hz及び500Hzの周波数に対しての第2モーメントアルゴリズムを使用して
図3Aから得られた剪断波速度マップを例示している。
【
図8】
図8は
図8A乃至8Eからなっており、
図8Aはゼラチンファントムに対して得られた400Hzにおける変位パターンを示しており、
図8Bは
図8Aの位相マップを示しており、
図8CはBモード超音波画像であり、
図8Dは第2モーメントアルゴリズムを使用した
図8Aから計算されたSWSマップであって、点線は該SWSプロファイルの深さを示しており、且つ
図8Eは病変を横断してのSWSプロファイルを示している。
【
図9】
図9は
図9A乃至9Eからなっており、
図9Aはzerdine胸部ファントムに適用した450Hzにおける変位パターンを例示しており、
図9Bは
図9Aの位相マップであり、
図9CはBモード超音波画像であり、
図9Dは450Hzにおける第2モーメントアルゴリズムを使用した
図9Aから計算されたSWSマップであって、点線はSWSプロファイルの位置を示しており、且つ
図9Eは
図9Dから横方向に渡っての或る病変を介しての一定深さにおけるSWSプロファイルである。
【
図10】
図10はバックグラウンド及びインクルージョンROIに対するSWS推定要約を示しているバイオリン図であって、夫々、400Hzにおけるゼラチンを基礎としたファントム及び450Hzにおけるzerdine胸部ファントムに対するSWS要約を示している
図10A及び10Bからなっている。
【
図11】硬さなどの興味のある領域の特性を推定するためにボディ内の残響剪断波フィールドを使用するシステムの主要な要素を例示している。
【
図12】本特許明細書に記載するアプローチの1例を使用して興味のある領域の硬さなどのパラメータを推定するプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適な実施例の幾つかの例の詳細な説明を以下に与える。幾つかの実施例について説明するが、本特許明細書に記載する新規な要旨は、ここに記載する幾つかの実施例の内のいずれか一つの実施例又はそれらの組み合わせに制限されるものではなく、多数の代替物、修正物、及び均等物を包含するものである。更に、完全なる理解を与えるために以下の説明において多数の特定の詳細について記載するが、幾つかの実施例はこれらの詳細の内の幾つか無しで実施することが可能である。更に、明瞭性及び簡潔性のために、関連技術において既知である或る技術的事項についてはここに記載する新規な要旨を不必要にぼかすことを回避するために詳細には記載していない。ここに記載する特定の実施例の一つ又はいくつかの個別的な特徴はその他の記載した実施例の特徴と結合して使用することが可能であることは明らかである。更に、種々の図面における同様の参照番号及び記号は同様の要素を表すものである。
【0014】
最初に、内部ROIの硬さを推定するための本新たなアプローチに対する理論的基礎について説明し、次いで、特定の実現例の幾つかの例について記載する。
【0015】
図1は、以下の説明を理解する上で有用となりえる幾何学的形状及び座標系を例示している。本図はイメージング変換器106、及び残響剪断波フィールドの理論に一致して残響内部にわたり且つ興味のある領域104aにおいて分布している個別的な平面波の
【数0】
方向ベクトル104bによって表されるその内部にわたり伝播する剪断波の等方的なランダム分布を有しているオブジェクト104、を示している。該座標系のx軸はイメージング変換器106の軸方向と整合しており、且つ本イメージングシステムはx方向における運動を検知することが仮定されている。
【0016】
位置εにおいての複素圧力
【数01】
は、全ての方向から入射する複数の平面波の重
【0017】
ね合わせとして考えることが可能である(Pierce,1981;Parker及びMaye,1984)。
【0018】
【0019】
尚、インデックスqは方向を表し、nqは4π立体角周りに一様に分布されている単位ベクトルであり、κ及びωは平面波の波数及びラジアル周波数であり、且つ
【数1a】
はランダムな大きさ及び位相の独立した同一に分布されている変数である。
【0020】
或る点における対応する速度は以下の如くに与えられる。
【0021】
【0022】
その場合に、平面波インピーダンス関係から、次式が得られる。
【0023】
【0024】
尚、pは媒体密度であり、且つcは音速である。
【0025】
自己相関関数を計算するために、組織内の或る位置εにおける速度のx成分は以下の如くに書くことが可能である。
【0026】
【0027】
尚、
【数4a】
はX方向における単位ベクトルであり、且つ以下の通りである。
【0028】
【0029】
qに関する加算は4π立体角にわたり取られるべきものと理解される。
【0030】
該相関関数定義を書き次いで式(4)に代入すると、次式が得られる。
【0031】
【0032】
尚、E{}はアンサンブル平均を表しており且つアステリスクは共役を表している。これら2つの級数の積は以下の形式のクロス項を包含している。
【0033】
【0034】
しかし、n
xq及び
【数7a】
は独立的であり且つ
【数7a】
は非相関であるから、この項は消える。
【0035】
従って、次式となる。
【0036】
【0037】
式(8)の実部を取ると、以下の如くである。
【0038】
【0039】
尚、V
qはn
qx及び余弦項とは独立的であるから、該速度の平均二乗値は波括弧から取り出される。残響室内には理想的な拡散フィールドが存在するものと仮定されるので、アンサンブル即ち空間平均化は入射音の全ての方向に対して等しい重み付けを割り当てる。従って、離散的方向にわたっての加算の平均は
図1の極座標周りの入射波の全ての方向にわたっての平均となる(Pierce,1981;Cook et al,1955)。
【0040】
【0041】
汎用性を失うこと無しに、ベクトルΔεは
図1におけるz軸と整合させることが可能である。球面座標を使用して、
【0042】
【0043】
【0044】
及び差分立体角は、
【0045】
【0046】
従って、
【0047】
【0048】
である。
【0049】
最初にφにわたり積分し且つ余弦項を展開すると、次式が得られる。
【0050】
【0051】
尚、j1(x)は、次数1の第1種類の球面ベッセル関数である。この結果は、フーリエ及びハンケル変換を介してのヘルムホルツ方程式に対する解における球面ベッセル関数の役割と同等である(Baddour,2011)。又、式(15)は、三角関数又は次数3/2のベッセル関数で書くことが可能である(Parker及びMaye,1984;Abramowitz及びStegun,1964)。
【0052】
次に、剪断波へスイッチすると、主要な差異は、伝播方向が変位方向と直交しているということである。従って、nqを伝播方向として取ると、nqpは剪断変位及び速度の垂直方向である。従って、nq・nqp=0である。
【0053】
剪断波の場合における垂直関係を説明するために、90°即ちπ/2がqとx(検知された方向)とによって形成される角度へ加算される。従って、式(12)は以下の如くになる。
【0054】
【0055】
及び、前と同じ論理的進行に従って、式(14)は以下の通りになる。
【0056】
【0057】
Δεがx軸(検知された速度の方向)に沿って取られる場合には、
【数17a】
であり、式(17)中の引数はcos(ω
0At-kAz
xsinΘcosφ)となり、その積分結果は以下の通りとなる。
【0058】
【0059】
式(17)及び(18)からの2つの関数を
図2に示してあり、それは、自己相関B
υυ(t=0,Δε)が速度ベクトルの検知された成分に関してAεの相対的方向に依存することを示している。この場合には、運動の検知された方向はx軸として取られる。太線はxに関しての自己相関を与えており、細線はAεが垂直なz方向に取られる場合を示している。波数κはこれらの曲線に対して1の値に設定される。
【0060】
基本的に「正弦」及び「jinc」空間関数である式(17)及び(18)が簡単であることは実際の実現例に対して有用である。超音波又は磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナーは興味のある領域内の組織の運動を追跡することが可能である。このことは或る興味のある領域(ROI)に沿って関数v(x)を発生させる。組織は、典型的に30-1000Hzの範囲内の周波数において動作している複数の剪断波源に露呈される。相関関数自己相関Bυυが計算され且つ未知のパラメータκを推定するために式(17)又は(18)に対して当て嵌められる。κの局所的推定値を使用して、剪断波速度、従って異なる位置においての組織の硬さを表す、典型的にカラーで表示されるマップを作成する。
【0061】
式(17)における未知のκに対する効率的な推定器が以下のように自己相関関数のフーリエ変換を検査することにより実現される。
【0062】
【0063】
尚、sは空間変換変数である。これは、未知の波数であるκによって設定される空間周波数の上限を有する厳格に帯域制限された関数である。従って、該変換の第2モーメントm2は同様にκによって決定される。Bracewell第8章143頁(1965)から、次式が得られる。
【0064】
【0065】
同様に、式(18)の空間項のフーリエ変換は以下の通りである。
【0066】
【0067】
そして、該関数はsの実及び偶数関数である。この場合に対する第2モーメントとは以下の通りである。
【0068】
【0069】
更に、或る変換の第2モーメントは原点においての該関数の第2導関数に精密に関係していることはよく知られている(Bracewell,1965)。これは有限差分によって近似させることが可能である。従って、以下の通りである。
【0070】
【0071】
尚、
【数23a】
は推定値であり、CはAx
2に反比例して依存する定数であり、データの或るセグメントからAt=0における自己相関の実部のAx遅延及びゼロ遅延値が使用される。同様の式がAzを使用する推定値に適用される。
【0072】
本特許明細書に記載する新規なアプローチは以下に説明する数値的シミュレーションを介して確認されている。
【0073】
本特許明細書において以下に更に説明するゼラチンファントム実験(シェル要素解析)及び胸部ファントム(3Dソリッド有限要素解析)を確証するために、Abaqus/CAEバージョン6.14-1(ダッスルトシステムズ(Dassault Systems)、ベリジ-ビラクブレイ、フランス)を使用して有限要素解析を使用する数値的シミュレーションを実施した。
【0074】
図3はシミュレーションを例示しており、その場合に、(A)は胸部モデルの3Dメッシュを示しており、(B)はAbaqus/CAEで表示される境界条件とロードとを有する(A)におけるメッシュモデルの2Dプロファイルとして形成した胸部の幾何学的モデルを示しており、(C)はバックグラウンド及びインクルージョン(直径=17mm)における物質特性定義及び興味のある領域の区画決定を有する(B)の有限シェル要素メッシュを示しており、且つ(D)乃至(F)は、夫々、400Hz、500Hz、及び600Hzの動作周波数に対してのx軸における変位フィールドを示している。
【0075】
シェル要素解析において、胸部(
図3A)の3Dメッシュモデルを使用して、腫瘍をシミュレートする硬質インクルージョンを有する均質な胸部の2Dソリッドモデルを作成する。該境界条件は、動作周波数における剪断変位を発生させるために該胸部モデルの別個の部分に位置させた8個の表面牽引ロード即ち荷重を有するように設定される(
図3B)。該モデルに約1,500,000個のハイブリッド及び四角形のシェル要素を使用してメッシュ付けさせた(
図3C)。組織を表すために、冪乗則周波数依存性粘弾性物質特性を選択した。バックグラウンド及びインクルージョンに割り当てた弾性係数、密度、及び粘弾性パラメータを表1に記載してある。これらのパラメータは、後述する機械的テストを使用して抽出したゼラチンファントム値の範囲内のものである。シミュレーションのタイプは、100Hzと1000Hzとの間の周波数の範囲に対する定常動的直接解であるように選択した。このタイプの解析は、定義したロード即ち荷重が該モデルに振動を導入する場合に、該胸部の粒子速度及び変位の3D複素正弦定常状態解を計算する。
【0076】
【0077】
シミュレーションを行った後に、粒子速度の複素数値を後部後処理ステップのために格納した。
図3(D)乃至(F)は異なる周波数に対してのバックグラウンド及びインクルージョン内の残響ベクトルフィールドを示している。
【0078】
3Dソリッド有限要素解析において、硬質インクルージョンを有する均質な胸部の3D幾何学的ソリッドモデルを作成し且つ
図3(A)におけるメッシュモデルの形状を使用して約400,000個のハイブリッド及び四角形四面体要素を使用してメッシュ付けした。表2に記載されるようなバックグラウンド及びインクルージョン部分に対して割り当てたzerdine胸部ファントム(モデル509、CIRSインコーポレイテッド、ノーフォーク、バージニア)の仕様に基づいて物質特性を選択した。
【0079】
【0080】
選択したシミュレーションのタイプは、450Hz及び500Hzの2つの動作周波数に対する定常状態動的直接解であった。境界条件は、胸部壁を表すセクターにおいてゼロ変位に設定した。更に、動作周波数においての剪断変位を発生させるために該胸部モデルの異なる部分に8個の表面けん引荷重を位置させた。粒子速度の複素数値を後処理のために格納した。該モデルのプロファイルカットは450Hz及び500Hz(
図4(A)及び(B))の動作周波数に対してのバックグラウンド及びインクルージョン内の残響ベクトルフィールドを示している。この例において、内部平面内の複素数正弦定常状態解の大きさ変位フィールドを有する胸部のAbaqus/CAEにおける3D有限要素ソリッドモデルを使用した。
図4(A)は450Hzの動作周波数に対してのz軸における変位フィールドを示しており、且つ
図3(B)は、バックグラウンド及びインクルージョン(直径=13mm)領域においての500Hzに対する同様の例示である。
【0081】
上述した本新規なアプローチの或る側面を検証するために実験を行った。
【0082】
図5は、zerdine胸部ファントム500を使用した実験装置を示しており、該ファントム内に2個の機械的バイブレータ502a,502b及び2個のミニチュア振動源504a,504bによって残響剪断波フィールドを誘起させる。イメージング超音波変換器506は超音波イメージングシステム(本図中には不図示)の一部である。デユアルチャンネルファンクションジェネレータ(モデルAFG3022B,テキトロニクス、ビーバートン、オレゴン、USA)によって駆動されるパワーアンプ(モデル2718、ブルエルアンドクジャール、ナエラム、デンマーク)及びデジタルパワーアンプ(モデルLO-2020A+、レパイ、ブカン、中国)が、ゼラチン基礎及びzerdine胸部ファントムと接触して400及び500Hzの間の周波数で振動する2個の機械的振動源(モデル4810、ブルエルアンドクジャール、ナエラム、デンマーク)及び2個のミニチュア振動源(モデルNCM02-05-005-4JB、H2W,リニアアクチュエータ、サンタクララ、カリフォルニア、USA)へ入力信号を供給した。Hah et al.(2012)によって使用された手順に従って、そうでなければ均質なバックグラウンド内に一層硬い円筒状で直径が12.6mmのインクルージョンを埋め込んだものを構築した。バックグラウンドに対して4%でインクルージョンに対して7%のゼラチン(300ブルームポークゼラチン、ゼラチンイノベーションズインコーポレイテッド、シラーパーク、イリノイ、USA)濃度を有する一つのファントムを、ゼラチンと、0.7lの脱気水と、6.3gのNa-Clと、1.05gのカンテンとからなる混合物を50℃へ加熱させることにより作成した。該混合物を、次いで、約30℃へ冷却させ且つ立方体鋳型(14×10×10cm
3)内に注ぎ込み、次いで一晩中4℃でそのままとさせた。実験の前に、このファントムをその鋳型から取り出し且つ3時間の間室温に保持させた。zerdineファントムの寸法及び形状は、仰向けの位置にある患者を模しており、且つそれはバックグラウンドよりも少なくとも2倍一層硬い幾つかのソリッドの塊を包含している。病変は、直径で3乃至10mmの寸法の範囲であり且つバックグラウンドにわたりランダムに位置されている。更に、高フレームレート採取及びコヒーレント平面波合成採取手法を可能とさせるベラソニックス超音波システム(V-1,ベラソニックスインコーポレイテッド、カークランド、ワシントン、USA)及びリニアアレイ超音波変換器506(モデルL7-4,ベラソニックスインコーポレイテッド、レドモンド、ワシントン、USA)を、ローパス推定器(Loupas et al.,1995)を使用して誘起された変位を追跡するために、使用した。IQデータの3-Dマトリクスを後処理のために格納した。全ての実験において、中心周波数は5MHzであり、追跡パルス繰り返し周波数(PRF)はサイクル当たり少なくとも20個のサンプル、即ちPRF=振動周波数の20倍、を採取すべく設定している。
【0083】
ゼラチン基礎ファントム物質の場合、ゼラチン基礎媒体を構築するために使用した同一の物質で構成した3個の円筒状サンプル(直径が約38mmで長さが33mm)について圧縮テストを実施した。応力-歪応答を測定するために、5Nロードセルを有するQT/5機械的装置(MTSシステムズカンパニー、エデンプレイリー、ミネソタ、USA)を使用した。圧縮率は0.5mm/sに調節させた。該円筒状ファントムの弾性特性を評価する場合に、これらの従来の機械的測定値は基準であると考えた。
【0084】
数値的シミュレーション及び実験からの結果について以下に説明する。
【0085】
シェル要素解析結果:病変を包含している前部ROI内の残響パターンの複素数値変位フレームを解析のために格納した。
図6(A)は400Hzの励起周波数に対する変位パターンの実部を示しており、その場合に、バックグラウンドとインクルージョンとは干渉の頂部と谷部の全体的な分離寸法によって識別することが可能である。
図6(B)は、全ROIをカバーするために動かされる自己相関ウィンドウ(1.3×1.3cm
2)に対して本新規なアプローチを適用することによって得られる2D剪断波速度(SWS)マップを示している。x及びy方向におけるプロファイルは2Dクロス相関から取ったものであり、それらは、夫々、
図6(C)及び(D)における式(17)及び(18)と比較した場合に、理論と良好に一致している。その後に、シミュレーションから以前に得たスケールファクタCを考慮に入れながら、式(23)に記載した第2モーメントアプローチを該相関プロファイルに適用する。両方の軸における
【数23a】
の推定値を平均し且つ
【数23b】
による剪断波速度の計算に使用する。
【0086】
3-Dソリッド有限要素解析結果:シミュレーション期間中に450Hz及び500Hzにおける残響の複素数値変位フレームを得た。
図7(A)は、450Hz励起周波数に対しての変位パターンの実部のプロファイルを示している。粘性(減衰)及び境界条件の効果は残響パターンの品質に影響を与える。シェル要素シミュレーションデータについてのSWSMの計算のための本新規なアプローチを
図7(B)及び(C)に示した如くに3D有限要素ケースに適用する。剪断波速度の平均値は、バックグラウンドにおいてc
s=2.45±0.1m/s(グラウンドトルース c
s=2.58m/s)であり、且つインクルージョンにおいてc
s=3.49±0.26m/s(グラウンドトルース c
s=3.65m/s)を報告している。等方的残響フィールドの仮定が保持されない場合がある外側境界近くで幾らかのアーチファクトが見られる。
【0087】
ゼラチン基礎ファントムを使用した場合の超音波実験結果:
図8(A)は400Hzでのゼラチン基礎ファントムからの残響変位を示している。
図8(B)は各(軸-横方向)位置において時間を介しての変位パターンのフーリエ変換によって得られた位相マップを表している。Bモード及びSWS画像(寸法が1.3×1.3cm
2のウィンドウに対して本新規なアプローチを適用することにより得られている)を夫々
図8(C)及び(D)に示してある。夫々1.22±0.01m/s、2.15±0.13m/sである、各領域の平均値を得るためにバックグラウンド及びインクルージョンから興味のある領域(7×7mm
2)を取った。両方の領域に対するSWS結果は、夫々、1.32±0.16m/s、2.46±0.21m/sである、機械的測定で得られた弾性特性と一致している。最後に、
図8(E)は
図8(D)に対応する固定した深さに対するSWSプロファイルを示している。
【0088】
Zerdine胸部ファントムを使用した場合の超音波実験結果:
図9はCIRS胸部ファントムからの残響結果を示している。450Hzの振動周波数を使用した変位パターンを
図9(A)に示してある。
図9(B)は450Hzにおける残響パターンの位相マップであり、軸方向において2cmと3cmとの間の2つの異なる波長が存在していることに気が付くことが可能であり、それはインクルージョンが位置している領域である(Bモード画像(
図9(C))参照)。Bモード画像の上側にある(寸法が1.3×1.3cm
2の相関ウィンドウに対して本アプローチを適用して得られた)SWSマップは
図9(D)に示してある。夫々450Hzに対して2.28±0.14m/s、3.43±0.18m/sである各領域に対する平均値を得るためにバックグラウンド及びインクルージョンから興味のある領域(7×7mm
2)を取った。バックグラウンドに対するSWS結果はCIRS製造業者によって特定されている弾性特性である2.58±0.32と一致している。インクルージョンにおけるSWS結果の場合、ファントム製造業者は、インクルージョンの硬さは少なくともバックグラウンドよりも2倍一層高いということを報告しているにすぎなかった。従って、インクルージョンに対するSWS結果もその情報に一致している。最後に、
図9(E)は
図9(D)に対応する固定した深さに対するSWSプロファイルである。
【0089】
図10は、夫々、(A)及び(B)において、ゼラチン基礎ファントム及び胸部ファントムに対するSWS推定要約、バックグラウンド、及びインクルージョンROIを示している。バイオリンプロットの幅は異なる値におけるデータの確率密度を示している。実線及び点線は該データの平均値及び中央値を表している。
【0090】
本新規なアプローチの実際的な実現例の1例について以下に説明するが、これはいくつかの可能な実現例の内の一つであり且つ本新規なアプローチはこの例に制限されるものではないことを注意すべきである。
【0091】
図11にブロック形態で例示した如く、システム100は振動源102を有しており、それは、本例においては、ボディ即ちボディ104で結合されており且つ互いに且つボディ104内の構造物と相互作用して該ボディ内に残響剪断波フィールドを発生させる形態とされている個別的な複数の振動源102-1乃至102-Nの形である。その他の例においては、統合型振動源102を使用することが可能であり、例えば、ボディ104内に所要の残響剪断波フィールドを発生させる態様で表面上の異なる点において異なって動きそれにより個別的な複数の振動源からなるアレイに類似して機能する拡張型表面である。矢印104bは、ボディ104においての残響剪断波フィールドにおける剪断波のランダム又はほぼランダムに分布されている方向を示している。イメージングシステム106が,残響剪断波フィールドの存在下において、イメージング超音波変換器のビーム方向などの好適には単一の選択した方向においてのボディ104における興味のある領域(ROI)104aの運動を測定する。イメージプロセッサ108がイメージング変換器106からの運動測定値及び振動源102の周波数のパラメータに対してコンピュータ処理を適用して、硬さ特性等のROI104aの一つ又はそれ以上の粘弾性特性の推定値を発生させる。コンピュータディスプレイ110が該推定値を表示し、且つ、典型的に、インターフェース110aを包含しており、それを介して、ユーザは本システムと通信を行う。コントローラ112は要素102,106,108,110,110aと通信を行ってそれらの動作をモニターし且つ制御する。
【0092】
システム100の重要な側面は、単一の方向におけるROIの運動を測定することに必要であるに過ぎないということであり、且つボディ104における剪断波は典型的に全ての又はほぼ全ての方向におけるものであるということである。振動源102は、幾つかの、典型的には3乃至7個又はそれ以上のそれらから剪断波が射出され、特定した残響剪断波フィールドを発生させることに貢献する限り精密であることが必要のない態様でボディ104間周りに配列されている個別的な発生源又は点を有することが可能である。振動源102が発生する剪断波は精密に指向付けさせることは必要ではない。個別的な振動源102は互いに独立的に動作するように使用することが可能であり、又は一つ又はそれ以上の統合した組又は複数組の振動源102を使用することが可能である。個別的な振動源を使用する場合において一般化すると、複数の振動源102-1乃至102-Nが使用され、尚Nは1且つ好適には2より大きな正の整数である。統合型振動源の場合には、該振動源は1乃至N個の点又は部分を有しており、それらが夫々の剪断波を発生し、該夫々の剪断波が所要の残響フィールドを発生する。イメージングシステム106は、興味のある領域をイメージングするのに適した周波数、例えば5MHz又は別の適宜の周波数、において動作する複数の変換器要素からなる1D又は2Dアレイを具備する超音波変換器を包含することが可能である。別の例として、イメージングシステム106は、磁気共鳴等の別のイメージング形式を使用することが可能であり、その場合は、所要のイメージングパルスシーケンスが簡単化され且つ2D又は3DMRイメージングの場合よりも一層高速である。何故ならば、単一方向におけるROI104aの運動を測定することが必要であるに過ぎないからである。別の例として、イメージングシステム106は光学的コヒーレンストモグラフィ(OCT)又はX線イメージングを使用することが可能である。画像は、例えば、ボディにおける興味のある領域における残響剪断波フィールドの興味のある最も高い周波数の2倍又は好適にはそれ以上、例えば5倍又は10倍という所要の時間シーケンス頻度で取るべきである。イメージプロセッサ108は、ROI104aの変位及び選択した方向における該変位の速度を派生し且つその後に該ROIの所望の一つ又はそれ以上の粘弾性特性を派生させるために自己相関させることが可能な画像へ該超音波変換器からのエコーを処理すべく適合されている既知の超音波エンジンとすることが可能である。イメージング変換器106が磁気共鳴スキャナーである場合には、イメージプロセッサ108は、ROI104aの変位の測定値及び究極的には所望の一つ又はそれ以上の粘弾性特性を提供すべく適合されているMRIシステムの既知のコンピュータ施設とすることが可能である。OCT又はX線イメージングの場合には、イメージプロセッサ108は、それから変位の測定値を派生させ且つ究極的には所望の粘弾性特性を派生させることが可能なROIの画像を提供すべくプログラムされている既存システムのコンピュータとすることが可能である。コンピュータディスプレイ110は、典型的に、超音波、MRI、又はOCTスキャナー又はX線イメージングシステムの一部であるディスプレイとすることが可能である。コントローラ112は、超音波又はMRI又はOCTスキャナー又はX線イメージングシステムの既存のコンピュータ施設を適宜プログラミングし且つインターフェースすることにより実現することが可能な表示された機能を司る別個の装置とすることが可能である。
【0093】
動作について説明すると、患者の胸部等のボディ104をプラットフォーム114上に配置させる。該プラットフォーム114は、個別的な振動源102-1乃至102-N、例えば3乃至7個又はそれ以上で胸部104と結合されてその中に残響剪断波フィールドを形成する振動源102が設けられている。該振動源は、該ボディ104の十分な区域がイメージング超音波変換器を患者に結合させて該ROIを撮像し且つボディ104内に所要の残響フィールドを誘起させることが可能である限り、該プラットフォーム上とするか、別個の構造体とするか、又は患者の腹部を取り囲むことの可能なベルト内とするか、又は何らかのその他の統合型構造とすることが可能である。MRIが該ROIを撮像するために使用される場合には、該振動源を選択し且つ使用する場合及び患者のボディ及びRFコイルなどのMRI部品と相対的なそれらの配置において、強力な定常磁界及び磁気勾配の存在に対して適切なる予防策を講じることが必要である。残響剪断波フィールドの存在下においてその運動を示す該ROIの画像の所要の時間シーケンスを発生させることが可能である限り、超音波及びMRIの代わりに、例えばOCT(光学的コヒーレンストモグラフィ)又はX線イメージング等のその他のイメージング形式を使用することが可能である。
【0094】
本プロセスの主要なステップを
図12に示してある。ステップ302において、健康管理者等のユーザが剪断波の周波数、又は周波数帯域を選択し、且つその選択をインターフェース110aを介してコントローラ112へ入力する。選択した周波数は、好適には、30-1000Hzの範囲内であり、且つ1例としては500Hzとすることが可能であるが、例えば、患者の骨を評価することが興味がある場合には、制限すること無しに、1600-2400Hz、又は1000-4000Hz等の異なる範囲とすることが可能である。代替的に、該周波数又は1つ又は複数の周波数範囲をプリセットしておくか、又はその他の態様で1つ又は複数の振動源へ通信させることが可能であり、その場合には、ユーザは各患者の検査のためにそれらを入力することは必要ではない。プリセットされていた場合であっても、本システムは尚且つユーザがそのプリセットを上書きし且つ或る患者の検査のために異なる振動周波数又は1つ又は複数の帯域を選択することを可能とする。好適には、該振動源は、実質的に同一の周波数、又は例えば30-1000Hz又は別の比較的広い範囲で例えば1600-2400Hz又は1000-4000Hz等の一層広い帯域内の狭い帯域内である複数の周波数を有する剪断波を発生するが、周波数及び/又は位相が互いに実質的に異なる剪断波を発生させることが可能であり、その場合には、ROIの画像の処理はこの様な実質的な差異を考慮に入れることが必要である。ステップ304において、ユーザは、例えば、イメージングシステム106の一部である超音波変換器を胸部104にわたって動かすことによってROIを撮像し、且つ結果的に得られる画像を観察して該ROIが該画像内にある該変換器の位置及び配向を選択する。そのために、ユーザは、商品名LOGIQとしてGEヘルスケアによって提供されているもの、商品名S3000としてジーメンス(アクソン)によって提供されているもの等の市販されている超音波システム、又は別の市販されている超音波スキャナー、又は
図11のシステム100に対して特別に目的設計されたスキャナーを操作することが可能である。この様な超音波スキャナーは、イメージングシステム106の1要素として機能する超音波変換器、1要素108として機能する超音波エンジン、及び
図12において例示した要素110及び110aとして機能するディスプレイ及びインターフェースを包含している。ステップ306において、ユーザは1個又は複数個の振動源102を稼働させて、胸部104又は少なくともROI104a及びその周辺に所要の残響剪断波フィールドを発生させる。残響剪断波フィールドが胸部104又は少なくともROI104a及びその周辺に存在している間に、ステップ308において、超音波スキャナーが継続してROI104aを撮像して該ROIの複数の画像の迅速な時間シーケンスを発生させる。イメージプロセッサ108は、イメージングシステム106から、所要の画像を受け取り、且つステップ310において、残響剪断波の少なくとも一つのベクトル方向を推定する。イメージプロセッサ108は、本特許明細書に記載される動作を実施するために必要に応じてプログラムされている前述した市販されている超音波スキャナーの超音波エンジンとすることが可能であり、且つ、ステップ310において、振動源102の振動周波数と該ベクトル推定値とを入力として受け取り、且つ、ステップ312において、測定した変位を自己相関値へ変換させるために既知の自己相関アルゴリズムを使用して、夫々、式(17)及び(18)で同定した自己相関関数Bυ
xυ
x(Δt,Δε
ζ)及びBυ
xυ
x(Δt,Δε
χ)を計算する。(自己相関は、Δε
ζ及びΔε
χ方向bに沿って自己相関を取ることの代わりに又はそれに加えて、一つ又はそれ以上のその他のΔε線に沿って取ることが可能であり、例えば、x及びy軸の間の対角線に沿ってとか、又はイメージング超音波ビームの又は該ビームに垂直な方向ではない何らかのその他の方向に沿って取ることが可能である。)そのために、ステップ312はステップ310からの増分Δt及び、Δε
ζに対する変位を使用する。ステップ314において、イメージプロセッサ108は、式(23)に従って該自己相関から波数κ及び剪断波速度c=w/κの推定値を計算する。ステップ316において、本システムは、ROI又は興味のある器官の硬さなどの剪断波速度及び/又は粘弾性パラメータの推定値のマップをコンピュータディスプレイへ出力する。
【0095】
要するに、式(17)及び(18)で同定した自己相関関数Bυxυx(Δt,Δεζ)及びBυxυx(Δt,Δεχ)の計算は、ROI及びその周辺部の相継ぐ超音波又はMR又はOCT画像において該ROI又は該ROIの複数個の点の位置をマッチングさせて、本例においてはx方向に沿って及び/又はz方向に沿って、或る時刻から別の時刻へどのようにしてこれらの位置が形状又は位置において変化したかを決定し、従って該ROI又はその複数の点の一つ又はそれ以上の方向における運動を推定することを包含している。Bυxυx(Δt,Δεζ)はz方向、例えば超音波変換器からのイメージングビームに対して垂直な方向、における運動に関係しており、且つBυxυx(Δt,Δεχ)はx方向、例えば超音波変換器からのビームの方向に沿っての運動に関係している。該ROIの画像の相継ぐものからΔt、Δεζ、Δεχの値を取得し且つそれらを使用して自己相関値を計算し、次いで該計算した自己相関値を式(23)において使用するために、通常のコンピュータプログラマーの技術の範囲内の従来の処理を使用することが可能である。自己相関処理の1例としてLoupas,1995を参照すると良い。硬さ又は速度などの該ROIの所望の1つ又は複数の弾性特性を派生させるためには原理的には一つの方向のみに沿っての自己相関だけで十分であるが、実際の適用例においては、2つ又はそれ以上の方向に沿っての自己相関を取ることが測定の冗長性から発生するノイズ効果の減少などの利点を発生させる場合がある。一度該自己相関値の内の少なくとも一つが得られると、式(23)はどのようにそれを使用してκ(波数)推定値を派生させるかを示している。式(23)における係数Cは胸部ファントム等の既知のオブジェクトでのテストによって経験的に派生されるものであり、一方、C以外の式(23)のパラメータは既知であるか又は推定することが可能なものであり、従ってCについて解くことが可能である。例えばParker,2011で説明されているように、硬さは波数κに関係しており、且つ該ROIにおける単一の点における、該ROIにおける複数の点の2Dマップとしての、又は複数の点の3Dマップとしての硬さを推定し且つ表示させるために、該ROIにおける各興味のある点に対して派生させることが可能である。
【0096】
残響フィールドのフレームワークを使用することに幾つかの利点が存在している。第1に、境界及び内部不均一性からの反射の存在はいくつかの一般的なエラストグラフィアプローチにおいては不可避的なものであり、且つこれらの反射及び複数個の振動源及びモード変換の適用は全て残響剪断波フィールドの生成に寄与することが可能である。一度確立されると、根底にある剪断波位相速度及び/又は粘弾性特性を推定するためにそのフィールドの特性を利用することが可能である。第2に、検知された速度の唯一つのベクトル成分を取って自己相関関数の予測される値を派生させている。このことは超音波及びMRIの両方に対して最も簡単で且つ最も迅速なデータ採取であることを表している。というのは、剪断波速度の付加的なベクトル成分を決定するためには付加的な送信方向(超音波において)又は付加的な位相エンコーディング(MRIにおいて)が必要となるが、本書で開発したフレームワークではそれらが不必要だからである。第3に、根底にある演算では複数の波の重ね合わせを考慮に入れているので、本残響フレームワークにおいては、波伝播の主要な方向を検証することの必要性を取り除いている。第4に、境界条件の明示的な知識又は幾つかの逆アプローチ(Doyley,2012)においては基本的である第2導関数に対する必要性が本残響アプローチでは回避されている。
【0097】
器官寸法、減衰、周波数、及び剪断波供給源等のファクタは本モデルからの劣化又は逸れを発生させる場合がある。更に、同じパラメータの関数としての剪断波速度の推定器の性能は一層詳細な評価を必要とする場合がある。最後に、剪断波速度の周波数依存性、従って分散及び粘弾性特性を評価するために、本新規なアプローチの多数周波数バージョンを実現することが可能である。
【0098】
本特許明細書は上述した既知のアプローチに対する代替案を記載しており、且つ組織内に多数の波の狭帯域残響フィールドを適用することを包含している。これらの波は、実際の状態においては自然に確立され(不可避的でさえもある)、且つ興味のある組織近くに複数の剪断波供給源を使用することにより強化させることが可能である。この新規なアプローチは、一層簡単な解決、一層容易な実現、及び局所的な組織剪断波長又は剪断波速度、従って硬さ又は弾性の迅速な推定とさせている。