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  • 特許-酸化タングステン系材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】酸化タングステン系材料
(51)【国際特許分類】
   C01G 41/00 20060101AFI20220712BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C01G41/00 A
C09K3/00 105
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2019560395
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 GB2018050316
(87)【国際公開番号】W WO2018203026
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】1707255.4
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519387597
【氏名又は名称】ウィリアム ブライス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM BLYTHE LIMITED
【住所又は居所原語表記】Synthomer Building, Temple Fields, Harlow, Essex CM20 2BH (GB)
(74)【代理人】
【識別番号】100104581
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 伊章
(72)【発明者】
【氏名】マーク・カーター
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・キャロル
(72)【発明者】
【氏名】デービッド・クロスリー
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第103449526(CN,B)
【文献】特開2013-159553(JP,A)
【文献】特開2008-274047(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0030802(US,A1)
【文献】国際公開第2006/025470(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00 - 47/00
C01G 49/10 - 99/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
WO(I)
の材料であって、
Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、Cu、Ag、Zn、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、及びBiの1以上を表し、
AはNH し、
はタングステンであり、Oは酸素であり、yは非ゼロで0.32以下、xは非ゼロで0.32以下、及びzは2.5~4.0、但しx+y≦0.33である、
式(I)の材料。
【請求項2】
x+y≧0.30である、請求項1記載の材料。
【請求項3】
x+y=0.33である、請求項2記載の材料。
【請求項4】
Mがアルカリ金属、アルカリ土類金属、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、Nb、Mo及びTaの1以上を表す、請求項1~3のいずれかに記載の材料。
【請求項5】
Mがアルカリ金属、Sn及びPbの1以上を表す、請求項記載の材料。
【請求項6】
Mが1以上のアルカリ金属及びSn又はPbのどちらかを表す、請求項記載の材料。
【請求項7】
Mが1つのアルカリ金属及びSn又はPbのどちらかを表す、請求項記載の材料。
【請求項8】
Mがn単原子種、M1、M2、....Mn、を表し、nは2以上であって、MがM1y1、M2y2、....Mnynを表し、x=Σ(y1、y2、....yn)である、請求項1~7のいずれかに記載の材料。
【請求項9】
Mが1以上の第I族元素を含む、請求項1~8のいずれかに記載の材料。
【請求項10】
MがSn又はPbを含む、請求項1~9のいずれかに記載の材料。
【請求項11】
Mが1以上の第I族元素及びSnを含む、請求項10記載の材料。
【請求項12】
xが少なくとも0.02である、請求項1~11のいずれかに記載の材料。
【請求項13】
xが0.25以下である、請求項1~12のいずれかに記載の材料。
【請求項14】
xが0.02~0.18である、請求項1~13のいずれかに記載の材料。
【請求項15】
yが少なくとも0.05である、請求項1~14のいずれかに記載の材料。
【請求項16】
yが0.30以下である、請求項1~15のいずれかに記載の材料。
【請求項17】
yが0.10~0.30である、請求項1~16のいずれかに記載の材料。
【請求項18】
zが2.5~3.5である、請求項1~17のいずれかに記載の材料。
【請求項19】
zが少なくとも2.8である、請求項1~18のいずれかに記載の材料。
【請求項20】
zが少なくとも3.0である、請求項1~19のいずれかに記載の材料。
【請求項21】
zが3.3以下である、請求項19又は請求項20記載の材料。
【請求項22】
xが0.10~0.20、yが0.10~0.20であり、Aがアンモニウムを表し、Mがアルカリ金属、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、Nb、Mo及びTaの1以上(任意で、一つ)を表す、請求項1記載の材料。
【請求項23】
xが0.02~0.10、yが0.20~0.31、x+y≧0.30であり、Aがアンモニウムを表し、MがNa、K及びCsの1以上、並びにSn、Pb、Nb、Mo及びTaの1以上を表す、請求項1記載の材料。
【請求項24】
担体に分散された請求項1~23のいずれかに記載の材料を含む、組成物。
【請求項25】
担体が蒸発性液体を含む、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
請求項1~16のいずれかに記載の材料の製造方法であって、該方法は混合物に単原子種M(又はその源)、多原子種A(又はその源)及びWOzの源を提供することを含む、製造方法。
【請求項27】
WOzの源がタングステン(VI)種及び還元剤を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
WOzの源がタングステン酸又はタングステン酸塩(WO 2-)を含む、請求項26又は請求項27記載の方法。
【請求項29】
該単原子種M(又はその源)、多原子種A(又はその源)及びWOzの源が酸性条件で混合物に提供されている、請求項2628のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
生成物を生じさせるために前記混合物を加熱することを含む、請求項2629のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
上記の生じさせられた生成物が不活性雰囲気で濾過、乾燥、及び加熱される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
物体に赤外線吸収能を提供する方法であって、請求項1~23のいずれかに記載の材料を前記物体に提供することを含む、方法。
【請求項33】
請求項24又は25に記載の組成物を前記物体に提供することを含む、請求項32記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は酸化タングステンに関係する。
【0002】
本発明は酸化タングステンに関する。より具体的には、但し限定的にではなく、本発明は更に、酸化タングステンを含む組成物及び酸化タングステンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(アンモニウムのような)多原子陽イオン又は(カリウムのような)金属を組み込んでいる酸化タングステンが知られている。そのような酸化タングステンは赤外(IR)線を吸収するので、IR吸収性を提供するために用いられる。とはいえ、そのような酸化タングステンのIR吸収性は十分に高くない。酸化タングステンの中にはスペクトルの可視部分の光を吸収するものがあり、これは、例えば、酸化タングステンが、酸化タングステンが分散されたマトリックスの可視色に重大な悪影響を及ぼさないことが望まれる特定の状況下では望ましくないかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題の1つ以上を軽減しようとするものである。代替的または追加的に、本発明は改良された酸化タングステンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に従い、式(I)
WO(I)
の材料であって、
Mは1以上の単原子種を表し、
Aは1以上の多原子イオン種を表し、それぞれ2Å以下のイオン半径を有し、
Wはタングステンであり、Oは酸素であり、yは非ゼロで0.32以下、xは非ゼロで0.32以下、及びzは2.5~4.0、但しx+y≦0.33である、
式(I)の材料が提供される。
【0006】
本発明の第1の態様の材料は、IR吸収性を提供することが発見された。
【0007】
Wはタングステンを、任意でイオン形態で、表す。該タングステンは1より多くの酸化状態において存在してもよい。
【0008】
A及びM種は、概して格子の組織間のギャップ又は空隙に位置している。
【0009】
式(1)の材料は、タングステン及び酸素の酸化タングステン格子を、任意でA及びM種を格子の組織間のギャップ又は空隙に伴って、含んでよい。
【0010】
式(1)の材料は、酸素及びタングステン以外のどんな種も実質的に欠いている格子を含んでよい。
【0011】
Aは任意で1以上の多原子陽イオン種を表す。
【0012】
xは任意で少なくとも0.02、任意で少なくとも0.03、任意で少なくとも0.04、任意で少なくとも0.05、任意で少なくとも0.08、任意で少なくとも0.10、任意で少なくとも0.15、任意で少なくとも0.18、任意で少なくとも0.20及び任意で少なくとも0.25である。xは任意で0.30以下、任意で0.28以下、任意で0.25以下、任意で0.20以下、任意で0.18以下及び任意で0.15以下である。xは任意で0.02~0.20、任意で0.02~0.18、及び任意で0.02~0.17であってよい。xは、例えば、任意で0.11、0.18、0.22又は0.25であってよい。xが0.11の場合、AとWの比率は1:9である。xが0.22の場合、AとWの比率は2:9である。
【0013】
特定の事例において、xは任意で0.02~0.10、任意で0.02~0.08、任意で0.02~0.06、及び任意で0.02~0.05である。これらの事例では、yは任意で0.20~0.30である。比較的少量の多原子種(特に、アンモニウム)を他の種と組み合わせて含有する特定の材料は、材料にIR吸収性を提供できることが発見された。
【0014】
特定の事例において、xは0.10~0.30及び任意で0.10~0.20である。(モルで)ほぼ同量の多原子種A(特に、アンモニウム)及びM種を含む材料は、材料にIR吸収性を提供することがあることが発見された。
【0015】
xはAの総量を表す。疑念を避けるために、Aは1より多くの多原子種を表してよい。例えば、Aがnが2以上であるn多原子種、A1、A2、....Anを表す場合、AはA1x1、A2x2、....Anxnを表し、x=Σ(x1、x2、....xn)である。例えば、Aが2つの多原子種、A1及びA2を表す場合、AはA1x1A2x2を表し、x=x1+x2である。
【0016】
yは任意で少なくとも0.05、任意で少なくとも0.08、任意で少なくとも0.12及び任意で少なくとも0.15、任意で少なくとも0.20及び任意で少なくとも0.25である。yは任意で0.31以下、任意で0.30以下、任意で0.28以下、任意で0.25以下、任意で0.22以下、任意で0.20以下、任意で0.18以下、任意で0.15以下及び任意で0.10以下である。yは、例えば、任意で0.08、0.11、0.15又は0.22である。yが0.11の場合、MとWの比率は任意で1:9であり、yが0.22の場合、MとWの比率は任意で2:9である。
【0017】
特定の事例において、yは任意で0.02~0.31、任意で0.05~0.30、任意で0.10~0.30及び任意で0.10~0.20である。(モルで)ほぼ同量の多原子種A(特に、アンモニウム)及びM種を含む材料は、材料にIR吸収性を提供することがあることが発見された。
【0018】
特定の事例において、yは任意で0.20~0.30、任意で0.22~0.30、任意で0.24~0.30、及び任意で0.24~0.30である。それらの事例では、xは任意で0.02~0.10、任意で0.02~0.05であってよい。比較的少量の多原子種(特に、アンモニ)を他の種と組み合わせて含有する特定の材料は、材料にIR吸収性を提供できることが発見された。
【0019】
yはMの総量を表す。疑念を避けるために、Mは1より多くの単原子種を表してよい。例えば、Mがnが2以上であるn単原子種、M1、M2、....Mnを表す場合、MはM1y1、M2y2、....Mnynを表し、x=Σ(y1、y2、....yn)である。例えば、Mが2つの単原子種、M1及びM2を表す場合、MはM1x1M2x2を表し、y=y1+y2である。
【0020】
任意で、x+y≧0.15、x+y≧0.18、x+y≧0.20、x+y≧0.23、x+y≧0.25、任意でx+y≧0.28、任意でx+y≧0.30、任意でx+y≧0.31、任意でx+y≧0.32及び任意でx+y=0.33である。
【0021】
Mは任意で1以上の単原子種を表す。Mは任意で1以上の単原子イオンである。Mの種はそれぞれ、任意で2Å以下のイオン又は原子半径を有する。Mは任意で複数の単原子種、任意で2つの単原子種、任意で2つの単原子イオンを表す。Mの種の1以上は金属種であってよい。Mは1以上の単原子金属種、任意で複数の単原子金属種、任意で2つの単原子金属種を表してよい。Mは:H、He、アルカリ金属(第I族)、アルカリ土類金属(第II族)、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、Cl、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi及びIの1以上を含んで(又は任意で表して)よい。
【0022】
Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、Cu、Ag、Zn、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、及びBiの1以上を含んで(又は任意で表して)よい。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、Ti、Nb、V、Mo及びTaの1以上を含んで(又は任意で表して)よい。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、Nb、Mo、Taの1以上を含んで(又は任意で表して)よい。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、Sn及びPbの1以上を含んで(又は任意で表して)よい。Mは任意でアルカリ金属(特に、ナトリウム、カリウム及びセシウムの1以上)、Sn及びPbをもう1つ;任意で1以上のアルカリ金属及びSn又はPbの1つを含む(又は任意で表す)。Sn及びアルカリ(第I族)金属(単独でも組み合わせても)は、多原子種A(特に、アンモニウム)と組み合わせて用いられる場合、材料に良好なIR吸収性を提供するのに効果的かもしれないことが発見された。
【0023】
Mが複数の単原子種を表す場合、好ましくは、前記単原子種はそれぞれ、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、Cl、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi及びIから選択されてよい。Mが複数の単原子種を表す場合、任意で、前記単原子種はそれぞれ、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、Cu、Ag、Zn、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、及びBiから選択されてよい。Mが複数の単原子種を表す場合、任意で、前記単原子種はそれぞれ、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Zr、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、Ti、Nb、V、Mo及びTaから選択されてよい。Mが複数の単原子種を表す場合、任意で、前記単原子種はそれぞれ、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、Nb、Mo、Taから選択されてよい。Mが複数の単原子種を表す場合、任意で、前記単原子種はそれぞれ、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Sn及びPbから選択されてよい。Mは任意で1以上のアルカリ金属(任意で1つのアルカリ金属、任意で2つのアルカリ金属)及びSn又はPbのどちらかを表す。
【0024】
Mは1以上の第I族要素を、任意でイオンとして、及び/又は1以上の第II族要素を、任意でイオンとして、任意で単原子金属種のような更なる単原子種であって、任意でTi、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、Nb、Mo、及びTaからなる群から選択され、任意でPb及びSnからなる群から選択され、任意でSn、任意でイオンである単原子種と組み合わせて、含んでよい。MはNa、K、Cs、Mg、Ca、Sr又はBaの1以上を、(任意でNa、K及びCsの1以上を)、任意でイオン形態で、任意で単原子金属種のような更なる単原子種であって、任意でTi、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、Nb、Mo、及びTaからなる群から選択され、任意でPb及びSnからなる群から選択され、任意でSn、任意でSnのイオンのようなイオン形態である単原子種と組み合わせて、含んでよい。MはNa及びCsの1つまたは両方を、任意でイオン形態で、任意でSnのイオンのような単原子金属種のような更なる単原子種と組み合わせて、含んでよい。
【0025】
MはTi、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、Nb、Mo、及びTaの1以上を、(任意でPb及びSnの1つまたは両方を)任意でイオンとして、任意で1以上の第I族要素のような1以上の更なる単原子種であって、任意でイオン形態である単原子種、及び/又は1以上の第II族要素であって、任意でイオン形態である第II族要素と組み合わせて含んでよい。MはTi、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、Nb、Mo、及びTaの1以上を、(任意でPb及びSnの1つまたは両方を)、Na、K、及びCsの1以上のイオン、任意でNa及びCsの1つまたは両方のイオン、任意でNaのイオン及び任意でCsのイオンと組み合わせて含んでよい。MはSiを(任意でイオン形態で)、任意で(i)Na及びCs、(ii)Na及びK、(iii)K及びCs又は(iv)Na、K及びCsと組み合わせて含んでよい。
【0026】
式(I)の材料は式(II)のものでもよく、xは0.10~0.20(任意で0.15~0.20)、yは0.10~0.20(任意で0.15~0.20)であり、Aはアンモニウムを表し、x+y≧0.30、及びMはアルカリ金属、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、Nb、Mo及びTaの1以上、任意でLi、Na、K、Cs、Rb、Pb及びSnの1以上、及び任意でNa、K、Cs、Pb及びSnの1以上、任意でNa、K、Cs、Pb及びSnの1つを表す。そのような材料はIR吸収性を提供するのに効果的かもしれないことが発見された。
【0027】
式(I)の材料は式(III)のものでもよく、xは0.02~0.10(任意で0.02~0.08、任意で0.03~0.06)、yは0.20~0.31、x+y≧0.30、Aはアンモニウムのような単一の多原子種を表し、及びMはNa、K、Cs、Mg、Ca、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、Nb、Mo及びTaの1以上を表す。任意で、MはNa、K、Cs、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、Nb、Mo及びTaの1以上を表す。任意で、MはNa、K、Cs、Sn、Pb、Nb、Mo及びTaの1以上を表す。任意で、MはNa、K、及びCsの1以上、並びにSn、Pb、Nb、Mo及びTaの1以上を表す。任意で、MはNa、K、及びCsの1以上、並びにSn及びPbの1つ又は両方を表し;この場合、Na、K及びCsのyは任意で0.10~0.28(任意で0.15~0.25)並びにSn及びPbのyは0.02~0.15(任意で0.05~0.15)である。
【0028】
Aは任意でアンモニウムのような1以上の多原子陽イオンのような1以上の多原子種を表す。
【0029】
Aは任意で1つ(そしてただ一つ)のアンモニウムのような、多原子陽イオンのような、多原子イオンのような、多原子種を表す。アンモニウムは、他のドーパントと組み合わせて、特定の状況下でIR吸収性を増すことが発見された。
【0030】
Aは任意で複数の多原子陽イオンのような多原子種を表す。
【0031】
AはNH 、H、VO2+、H及びHの1以上、例えばNH をH、VO2+、H及びHの1以上との組み合わせ、を含んでよい。AはNH 及びH、又はNH 及びVO2+、又はNH 及びH、又はNH 及びHを含んでよい。
【0032】
Aは金属を(概して他の要素と組み合わせて)含んでよい。Aは金属を含まなくてよい。
【0033】
任意で、AはNH を表す。任意で、MはSnを(任意で第I族要素又は第II族要素と組み合わせて)表し、yは任意で少なくとも0.02、任意で0.08又は0.15である。
【0034】
zは2.5~3.5、任意で2.5~3.2及び任意で2.7~3.1及び任意で2.9~3.1であってよい。zは少なくとも2.7、任意で少なくとも2.8、任意で少なくとも3.0及び任意で少なくとも3.2であってよい。zは任意で3.5以下及び任意で3.3以下であってよい。zは3であってよい(該材料は任意でWOを含む)。
【0035】
本発明の第1の態様の式(I)の酸化タングステンは、複数の異なる材料の混合又はブレンドではなく単相材料、又は酸化タングステン担体に単にブレンドされた単原子種又は多原子種である。これはx線回折を用いて証明できる。該単相材料は概して、その材料の回折図形特性を生じる。異なる材料の混合又はブレンドはそれぞれの異なる材料のx線回折図形を生じる。同様に、WOのような担体に単原子材料がブレンドされた場合、人は該担体からx線回折図形を、そしておそらく該単原子材料からx線回折図形を観察することを予期するだろう。
【0036】
本発明の第2の態様に従い、担体に分散された式(I)の材料を含む組成物が提供されている。
【0037】
担体は、例えば、コーティングに用いられるような蒸発性液体を含んでよい。該蒸発性液体は水性又は非水性であってよい。「蒸発性」という単語は、概してコーティングを提供するといった組成物が使用される条件において、該液体(又はその十分に大部分)が蒸発することを示す。例えば、「蒸発性」は、使用において、任意でコーティングを提供するために、該液体が12時間以下という期間で20℃で蒸発することを示してよい。
【0038】
該担体は任意で液体又は固体であってよい。該担体は、固体を形成するよう取り扱える液体(例えば、該液体又は該液体の大部分の蒸発後)であってよい。固体を形成するために取り扱われた後形成された固体は、前記固体に分散された式(I)の材料を含む。
【0039】
担体に分散された式(I)の材料の量は組成物の使用目的に依存する。任意で、効果的な赤外(IR)吸収/遮蔽特性を提供するため、式(I)の十分な材料が存在する。そのような吸収/遮蔽特性は、任意で1039nmの公称波長で測定されてよい。
【0040】
本発明の第3の態様に従い、式(I)の材料の製造方法であって、該方法は、単原子種M(又はその源)、多原子種A(又はその源)及びWOの源を混合物に提供することを含む製造方法が提供されている。
【0041】
WOzの源はタングステン(VI)種及び乳酸又はクエン酸のような還元性の酸のよう
な還元剤、任意で乳酸を含んでよい。
【0042】
WOの源はタングステン酸、メタタングステン酸塩、パラタングステン酸塩又はタングステン酸塩(WO 2-)を含んでよい。タングステン酸は、例えば、タングステン酸塩をイオン交換樹脂に通過させることによって提供されてよい。WOの源は多原子種A及びM種の1以上を提供してもよい。例えば、タングステン酸ナトリウム及びメタタングステン酸アンモニウムはWOを提供するため、並びにナトリウム及びアンモニウムイオンが該材料に組み込まれるために用いられてよい。
【0043】
該単原子種M(又はその源)、多原子種A(又はその源)及びWOの源は、任意で酸性条件で混合物に提供され、任意でpHが3以下、任意で2.5以下、任意で2以下、任意で1.5以下及び任意で1.0~1.5である。
【0044】
該方法は、生成物を生じさせるために前記混合物を加熱することを含んでよい。該混合物は少なくとも5時間、任意で少なくとも6時間、任意で少なくとも10時間、任意で少なくとも20時間、任意で少なくとも30時間、任意で少なくとも40時間、任意で少なくとも50時間、任意で少なくとも60時間及び任意で少なくとも70時間加熱されてよい。
【0045】
該方法は、前記混合物を90時間以下、任意で80時間以下、任意で70時間以下、任意で60時間以下、任意で50時間以下及び任意で40時間以下加熱することを含んでよい。
【0046】
該方法は、前記混合物を5~100時間、任意で10~100時間、任意で20~90時間及び任意で40~80時間加熱することを含んでよい。
【0047】
該方法は、該混合物を少なくとも100℃、任意で少なくとも120℃、任意で少なくとも140℃、任意で少なくとも150℃、任意で少なくとも160℃、任意で少なくとも170℃、任意で少なくとも180℃及び任意で少なくとも190℃の温度に加熱することを含んでよい。
【0048】
該方法は、該混合物を250℃以下、240℃以下、220℃以下及び任意で200℃以下の温度に加熱することを含んでよい。
【0049】
該方法は、該混合物を100~220℃、任意で140~200℃及び任意で150~190℃の温度に加熱することを含んでよい。
【0050】
そのように生じさせられた生成物は、不活性雰囲気で濾過及び/又は乾燥及び/又は加熱されてよい。そのように生じさせられた生成物は、任意で不活性雰囲気で濾過、乾燥及び加熱される。本文脈において、不活性雰囲気とは(式(I)の材料の組成物の1以上を酸化するような)十分な酸素の量を含有しないものである。不活性雰囲気で加熱することは、少なくとも100℃、任意で少なくとも200℃、任意で少なくとも300℃、任意で少なくとも400℃及び任意で少なくとも500℃の温度に加熱することを含んでよい。不活性雰囲気で加熱することは、800℃以下、任意で700℃以下、任意で600℃以下、任意で500℃以下及び任意で400℃以下の温度に加熱することを含んでよい。不活性雰囲気で加熱することは、100~800℃及び任意で100~600℃に加熱することを含んでよい。不活性雰囲気で加熱することは、10時間まで、任意で8時間まで、任意で6時間まで、任意で4時間まで及び任意で2時間まで加熱することを含んでよい。不活性雰囲気で加熱することは、少なくとも0.5時間及び少なくとも1時間加熱することを含んでよい。不活性雰囲気で加熱することは、0.5~10時間、0.5~6時間、及び0.5~4時間加熱することを含んでよい。
【0051】
本発明の第4の態様に従い, 物体に赤外吸収能を提供する方法であって、該方法は前記物体に式(I)の材料を提供することを含む方法が提供されている。
【0052】
本発明の第4の態様の方法は、前記物体に本発明の第2の態様に従った組成物を提供することを含んでよい。該方法は、前記物体に本発明の第2の態様に従った液体組成物を提供し、その後(例えば、1以上の該液体組成物の構成要素の蒸発を可能にすることにより)該液体組成物から固体組成物を形成することを含んでよい。
【0053】
もちろん、本発明の1つの態様に関して説明されている特色は、本発明の他の態様に組み込まれてよいことが理解される。例えば、該発明の方法は、該発明の材料に関連して説明されている特色のいずれかを組み込んでよく、逆もしかりである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の実施形態を、本発明及び比較例に従い、酸化タングステンの例示的な実施形態のx線回析データを表す附随する図面、図1に関連して、例としてのみこれから説明する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明に従って、式(I)の様々な材料の例示的な実施形態の統合をこれから説明する。
【0056】
実施例1
【0057】
タングステン酸ナトリウム溶液(100mlの水に6.6g)が、タングステン酸を生じさせるために、イオン交換カラムを通過させられた。乳酸(90%、6.03g、Alfa Aesar社)が、続いて重炭酸アンモニウム(0.57g、VWR International社)、及びすず粉末(0.36g、Royal Metal Powders社)が添加された。該混合物は、生成物を産するよう、約48時間150℃までオートクレーブで加熱された。該生成物は、予期される式(NH0.18Sn0.15WOの材料を提供するよう、濾過により分離され、真空下で乾燥され、窒素の流れの下で1時間500℃で加熱される。XPSデータは、酸素含有量が2.7~3.1であることを示す。XRFはすず含有量が0.15であることを表した。ケルダール分析は、少なくとも0.04のレベルでの材料中のアンモニウムの存在を表した。なお、材料の不溶性により、材料は「最小含有量」のアンモニウムを有すると定義される。ケルダール分析では、生成物が完全に解けない場合、予期されるよりも、又は他の分析方法に表されるよりも、低いアンモニウム含有量を表す結果につながる可能性があることは、当該分野で周知である。今、サンプルで測定されたアンモニウムの量がアンモニウム含有量と定義される。実施例1の材料として、該アンモニウムドーパントが過剰に添加され、酸化タングステンの格子間位置が埋められていないことを出願人が信じる理由は何らない。その上、実施例1の材料について下に説明されているIR吸収性能は、高レベルのドーピングと一貫している。ゆえに、アンモニウムのレベルが0.04~0.15であることが予期され、より具体的には、アンモニウムのレベルが0.15であることが予期される。
【0058】
すべての試薬は供給された通り使用された。
【0059】
実施例2
【0060】
本発明に従った材料の例示的な実施形態を準備するために、さらなる方法が用いられてよい。(タングステン酸ナトリウム[3.34g]のような)金属タングステン酸塩、メタタングステン酸アンモニウム[2.25g、Alfa Aesar社]、及び乳酸(90%、6.03g)が透明の溶液に溶解され、すず(0.36g)そしてその後硫酸がpH1.1まで添加される。該混合物はその後、40時間190℃でオートクレーブで加熱される。該固体生成物は、濾過により分離され、真空下で乾燥され、その後窒素の流れの下で1時間500℃で加熱される。結果として生じる酸化タングステンは、式Na0.19(NH0.03Sn0.11WOのものであった。該すず及びナトリウム含有量はXRFを用いて測定された。ここのナトリウム含有量は最大含有量であることが予期され、XRFを用いて測定されたよりもやや低いかもしれない。ケルダール分析は、0.03の最小アンモニウム含有量を表し、実施例2の材料が用いられた溶媒に完全に溶けなかったことを考えると、それはケルダール分析において予期されるよりも低い測定値を生じる傾向があるのだが、やや高いかもしれない。ナトリウム、アンモニウム及びすずの総量は約0.33と予期される。
【0061】
実施例3
【0062】
タングステン酸ナトリウム二水和物(6.6g、0.02mol、Alfa Aesar社)が総量100mlのDI水に溶解された。この溶液は、タングステン酸を生じさせるために、酸性型陽イオン交換樹脂のカラムを通過させられた。無色、透明の溶液をもたらすために、90%乳酸(6.0g)が添加された。無色透明の溶液を生じさせるために、重炭酸アンモニウム(0.61g、7.72x10-3mol、VWR社)及び炭酸ナトリウム(0.37g、3.49x10-3mol、Solvay社)が添加された。この溶液は、72時間190℃に加熱された水熱反応装置(容量200ml)に移された。該青色生成物は、濾過により分離され、水で洗浄され、その後40℃で真空下で乾燥された。産せられた固体はその後、Nの流れの下で1時間500℃で焼きなまされた。該生産物は式Na0.165(NH0.165WOを有することが予期される。
【0063】
実施例4
【0064】
タングステン酸ナトリウム溶液(100mlの水に6.6g)が、タングステン酸を生じさせるために、イオン交換カラムを通過させられた。乳酸(80%、6.6g)が、続いて重炭酸アンモニウム(0.54g)及び硝酸鉛(1.13g、VWR社)が添加された。該混合物は、生成物を産するよう、約72時間190℃までオートクレーブで加熱された。該生成物は、予期される式(NH0.165Pb0.165WOの材料を提供するよう、濾過により分離され、真空下で乾燥され、窒素の流れの下で1時間500℃で加熱される。
【0065】
実施例5
【0066】
タングステン酸ナトリウム溶液(100mlの水に6.6g)が、タングステン酸を生じさせるために、イオン交換カラムを通過させられた。乳酸(80%、6.6g)が、続いて重炭酸アンモニウム(0.54g)及び炭酸カリウム(0.23g、VWR社)が添加された。該混合物は、生成物を産するよう、約72時間190℃までオートクレーブで加熱された。該生成物は、予期される式(NH0.1650.165WOの材料を提供するよう、濾過により分離され、真空下で乾燥され、窒素の流れの下で1時間500℃で加熱される。
【0067】
比較例も、その特性を実施例のものと比較するために統合された。
【0068】
比較例1
【0069】
式(NH0.33WOの材料が、実施例1に関して説明されているのと実質的に同じ方法を用いて、ただしすずなしで、作られた。実施例1のように反応時間は72時間で、反応温度は150℃であった。
【0070】
比較例2
【0071】
式Sn0.2WOの材料が、実施例1に関して説明されているのと実質的に同じ方法を用いて、ただし重炭酸アンモニウムなしで、及び窒素内で加熱せずに、作られた。用いられたすずの質量は0.48gであった。
【0072】
比較例3
【0073】
タングステン酸ナトリウム溶液(100mlの水に6.6g)が、タングステン酸を生じさせるために、イオン交換カラムを通過させられた。乳酸(90%、6.03g、Alfa Aesar社)が、続いて炭酸セシウム(1.5g、Alfa Aesar社)が添加された。該混合物は、生成物を産するよう、約48時間190℃までオートクレーブで加熱された。該生成物は、式Cs0.33WOの材料を提供するよう、濾過により分離され、真空下で乾燥され、窒素の流れの下で1時間500℃で加熱される。
【0074】
比較例4
【0075】
タングステン酸ナトリウム二水和物(6.6g、0.02mol)が100ml量のDI水に溶解された。この溶液は、タングステン酸を生じさせるために、酸性型陽イオン交換樹脂のカラムを通過させられた。無色、透明の溶液をもたらすために、90%乳酸(6.0g)が添加された。無色透明の溶液を生じさせるために、炭酸ナトリウム(0.7g、6.6x10-3mol)が添加された。この溶液は、48時間190℃まで加熱された水熱反応装置(容量200ml)に移された。該青色生成物は、濾過により分離され、水で洗浄され、その後40℃で真空下で乾燥された。産せられた固体はその後、Nの流れの下で1時間500℃で焼きなまされた。予期される式Na0.33WOの材料が提供された。
【0076】
比較例5
【0077】
タングステン酸ナトリウム溶液(100mlの水に6.6g)が、タングステン酸を生じさせるために、イオン交換カラムを通過させられた。乳酸(80%、6.6g)が、続いて硝酸鉛(2.25g)が添加された。該混合物は、生成物を産するよう、約72時間190℃までオートクレーブで加熱された。該生成物は、予期される式Pb0.33WOの材料を提供するよう、濾過により分離され、真空下で乾燥され、窒素の流れの下で1時間500℃で加熱される。
【0078】
比較例6
【0079】
タングステン酸ナトリウム二水和物(6.6g、0.02mol)が総量100mlの脱イオン水に溶解された。この溶液は、タングステン酸溶液を生じさせるために、酸性型イオン交換樹脂を通過させられた。これに、6.0g90%乳酸溶液が、続いて硫酸カリウム(5.0g,0.0287mol)が添加された。該懸濁液は200mlの水熱反応ボンベに移された。これは、生成物を産するよう、72時間190℃まで加熱された。該生成物は、式K0.33WOの材料を提供するよう、濾過により分離され、真空下で乾燥され、窒素の流れの下で1時間500℃で加熱される。
【0080】
比較例7
【0081】
タングステン酸ナトリウム二水和物(6.7g、0.02mol)が100ml量のDI水に溶解され、90%乳酸(6g)が添加された。20%硫酸がpH1.1まで添加され、その後ずず(0.36g、3.03*10-3mol)が添加された。この混合物は、48時間190℃まで加熱された水熱反応装置(容量200ml)に移された。該青色生成物は、濾過により分離され、水で洗浄され、その後40℃で真空下で乾燥された。産せられた固体はその後、予期される式Na0.18Sn0.15WOの材料を算出するよう、Nの流れの下で1時間500℃で焼きなまされた。
【0082】
実施例1並びに比較例1及び2の材料が、x線回折パターンによって特徴づけられた。
【0083】
5~85度の2シータ範囲でBruker D8 Advance回折計(CuKα線、波長1.54Å、40kV、40mAで管作動)を用い、室温(約25℃)で、粉末サンプルについてx線回折測定が行われた。回折図形は図1に示されており、より濃い連続線は実施例1からのものであり、より薄い連続線は比較例2からのものであり、ピーク位置を示す垂直線は比較例1からのものである。
【0084】
図1のx線回析データは、実施例1の材料が比較例1及び2のそれぞれとは異なる回折図形を生じること、そして実施例1の回折図形は、例えば比較例1及び2の混合物について予期されるかもしれない、比較例1及び2の回折図形の単なる組み合わせではないことを示す。
【0085】
実施例及び比較例の材料の赤外吸収特性は下に説明されているように調べられた。該材料は脱イオン水に0.01%w/vの濃度で分散された。当業者は、%w/vが100mlの脱イオン水あたりのグラムで表した赤外吸収材料の重量に基づき算出されることに気付くだろう。該懸濁液のIR吸収特性は、経路長10mmのセルのHach DR2000又はHach DR3900分光光度計及び脱イオン水が提供された例見本を用い、1039nmの公称波長で測定された。吸光度の測定値を下の表1に表す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1-吸光度の測定値
【0088】
(アンモニウム及びすずを含む)実施例1の材料によって表されている吸光度は、(アンモニウムのみを含む)比較例1及び(すずのみを含む)比較例2によって証明されている吸光度の値よりはるかに大きい(そして予想外にそうである)ことが観察できる。
【0089】
(アンモニウム、すず及びナトリウムを含む)実施例2も、比較例1(アンモニウムのみ、吸光度0.56)、比較例2(すずのみ、吸光度1.43)、比較例4(ナトリウムのみ、吸光度0.31)及び比較例7(ナトリウム及びすず、吸光度1.43)と比較して、予想外に高いIR吸光度(2.01)を表す。
【0090】
その上、実施例3の材料(Na0.165(NH0165WO)は、ナトリウムを単独で含む材料(比較例4、吸光度0.31)及びアンモニウムを単独で含む材料(比較例1、吸光度0.56)よりも、高い吸光度(0.64)を予想外に表す。
【0091】
同様に、予想外に高い吸光度の値が実施例4及び5から観察される。比較例1(アンモニウムのみ、吸光度0.56)及び比較例5(鉛のみ、吸光度0.90)の吸光度の値を考えると、アンモニウム及び鉛を含む実施例4は予想外に高い吸光度の値1.13を表す。実施例4の600nm(黄橙色)での吸光度(0.43)は、比較例5について測定されたそれ(0.38)と非常によく似ていることは注目に値する。それは、可視波長において、吸光度のかなりの増加がなくても、IR吸光度のかなりの増加が達成できることを示唆している。比較例1(アンモニウムのみ、吸光度0.56)及び比較例6(カリウムのみ、吸光度0.60)を考えると、アンモニウム及びカリウムを含む実施例5は予想外に高い吸光度の値0.70を表す。
【0092】
よって、アンモニウムが(すず、鉛及び/又は第I族金属のような金属のような)他の種と組み合わせて酸化タングステンに組み込まれる場合、結果として生じる材料のIR吸収性は予期されるよりも高いことが発見された。
【0093】
本発明が特定の実施形態に関連して説明及び例示されてきた一方で、当業者は該発明が、ここに明確に例示されていない多くの異なるバリエーションに適していることを理解するだろう。例としてのみ、特定の考え得るバリエーションをこれから説明する。
【0094】
上の実施例は、単一の多原子陽イオンとしてのアンモニウムの使用を説明している。当業者は1より多くの多原子陽イオン、例えばアンモニウム及びH、を用い得ることに気付くだろう。その上、単一の多原子陽イオンのみを用いる場合、これはアンモニウムである必要はない。例えば、Hが用いられてよい。
【0095】
上の実施例は、多原子陽イオン及び金属の特定の化学量論量の使用を説明している。当業者は代替量を用い得ることに気付くだろう。
【0096】
上の実施例は、アンモニウムを伴った様々な金蔵の使用を説明している。当業者は他の金属及び金属の組み合わせを用い得ることに気付くだろう。
【0097】
前述の説明で既知、明白又は予見可能な同等物を有する整数又は要素が言及されている場合、そのような同等物は、個別に述べられているかのようにここに組み込まれる。本発明の真の範囲を定義する際は、請求項を参照すべきであり、それはそのような同等物を包含するように解釈されるべきである。読者は、好ましい、有利、便利などとして説明されている該発明の整数又は特色は任意であり、独立クレームの範囲を限定しないことも理解するだろう。また、そのような任意の整数又は特色は該発明のいくつかの実施形態では可能な利益であるが、他の実施形態では望ましくないかもしれず、よって存在しないかもしれないと理解される。
図1