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特許7104074射出成形工程に使用される積層製造された犠牲型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】射出成形工程に使用される積層製造された犠牲型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/52 20060101AFI20220712BHJP
   B29C 45/44 20060101ALI20220712BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B29C33/52
B29C45/44
B29C45/17
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019570435
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018069073
(87)【国際公開番号】W WO2019012103
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】PA201770573
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201770689
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】517388853
【氏名又は名称】アディファブ アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】イェスン、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ストール、ラッセ グルボー
(72)【発明者】
【氏名】オルセン ターニャ エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ラングホルツ トレ
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0354981(US,A1)
【文献】特開2015-036420(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103801696(CN,A)
【文献】特表2005-523178(JP,A)
【文献】特開2012-000966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0375419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 30/00
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
70~450℃の範囲のプラスチックが溶融する温度および0.2~400MPaの範囲の射出圧力で、熱可塑性の射出成形工程において使用するための、光照射硬化性の溶解性材料からなる、積層製造犠牲型。
【請求項2】
前記光照射硬化性の溶解性材料は、硬化剤と、4-(1-オキソ-2-プロペニル)-モルホリン、トリメチロールプロパン(EO)9トリアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、スクロースベンゾエート、変性アクリレートポリエステルおよび変性アクリレートポリエチレンポリオールの少なくとも1つとを含む光照射硬化性の溶解性樹脂配合物である、請求項1に記載の積層製造犠牲型。
【請求項3】
前記硬化剤は紫外線により硬化する硬化剤である、請求項2に記載の積層製造犠牲型。
【請求項4】
前記溶解性樹脂配合物が、安定化剤をさらに含む、請求項2または3に記載の積層製造犠牲型。
【請求項5】
前記溶解性樹脂配合物が、紫外線遮断剤をさらに含む、請求項2から4のいずれか1項に記載の積層製造犠牲型。
【請求項6】
前記溶解性樹脂配合物が、エポキシ、ブロックトイソシアネートおよび粉末アルミニウムからなる群から選択された、前記積層製造犠牲型の熱後硬化を促進することができる薬剤をさらに含む、請求項2から5のいずれか1項に記載の積層製造犠牲型。
【請求項7】
光照射硬化性の溶解性材料からなる積層製造された犠牲型を印刷する工程aと、
前記工程aで得られた前記犠牲型を後処理する工程bと、
前記工程bで得られた前記犠牲型に、熱可塑性射出成形、熱可塑性ゴム射出成形、熱可塑性マイクロ射出成形、熱可塑性金属射出成形および熱可塑性セラミック射出成形のうち少なくとも1つの熱可塑性粉末射出成形、熱可塑性オーバーモールド成形、熱可塑性圧縮成形、熱可塑性インサート成形または熱可塑性マルチショット成形を使用して、成形材料を充填する工程cと、
前記工程cの成形材料を処理して前記犠牲型の内部に成形品を製造する工程dと、
前記工程dで得られた成形品を解放するために前記犠牲型を溶解する工程eと、
前記成形品を任意ですすぐ工程fと、
を有する熱可塑性射出成形品の製造方法。
【請求項8】
積層製造された前記犠牲型は、UV Digital Light Processing(DLP)、UV、レーザー、LCD、またはステンシルステレオリソグラフィー(SL)、連続液相界面生成(CLIP)、材料噴射または結合剤噴射、光学的製造、光凝固、ソリッドフリーフォーム製造、ソリッドイメージングおよび他の3D印刷システム、又は液滴/インクジェットベースのシステムの手段によって印刷される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
積層製造された前記犠牲型は、前記溶解性材料に紫外線を照射することによって硬化される、
請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程bの後処理が、前記犠牲型を洗浄する工程、前記犠牲型を乾燥する工程、前記犠牲型を表面処理する工程、および前記犠牲型を後硬化する工程のうちの少なくとも1つを含む、
請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
積層製造された前記犠牲型は、前記犠牲型をUV後硬化もしくは熱後硬化、またはUV後硬化と熱後硬化との組み合わせに供することによって後硬化される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記犠牲型が、熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマー、熱可塑性複合材料、熱可塑性ゴム、金属粉末を含む熱可塑性供給原料、およびセラミック粉末を含む熱可塑性供給原料からなる群から選択される成形材料で充填される、
請求項7から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記犠牲型は前記工程cにおいて前記犠牲型を充填する前および充填中に、型工具によって締め付けられおよび/または支持され、前記型工具は、前記犠牲型の外形寸法に一致する寸法を有するキャビティを有する、
請求項7から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
インサートが、型工具の大きさを前記犠牲型の外側寸法に適合する寸法に適合させるために使用され、前記工程cにおいて、前記犠牲型は、前記犠牲型を充填する前および充填する間に、適合された大きさを有する前記型工具によって締め付けられ、かつ/または支持される、
請求項7から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記犠牲型は前記犠牲型のキャビティと流体連通する真空チャネルを備える型工具によって締め付けられ、かつ/または支持され、充填は前記工程cにおける前記犠牲型の充填前または充填中に前記キャビティ内に真空を引き込むことによって補助される、
請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記犠牲型が、水、水酸化ナトリウム、リモネン、アセトンおよびエタノールからなる群から選択される溶媒または複数の溶媒の組み合わせ中に前記犠牲型を成形品と共に浸漬することによって、前記工程eにおいて溶解される、
請求項7から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記工程a、b、c、d、eおよびfのうちの少なくとも2つが、異なる装置において互いに独立して実行される、
請求項7から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
異なる装置間の前記犠牲型の移送は、自動または手動移送と自動移送との組み合わせによって実行される、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
光照射硬化性の溶解性材料からなる積層製造された犠牲型を印刷する工程aと、
前記工程aで得られた前記犠牲型を後処理する工程bと、
前記工程bで得られた前記犠牲型に成形材料を充填する工程cと、
前記工程cの成形材料を処理して前記犠牲型の内部に成形品を製造する工程dと、
前記工程dで得られた成形品を解放するために前記犠牲型を溶解する工程eと、
前記成形品を任意ですすぐ工程fと、
を有し、
前記工程bの後処理が、前記犠牲型を洗浄する工程、前記犠牲型を乾燥する工程、前記犠牲型を表面処理する工程、および前記犠牲型を後硬化する工程のうちの少なくとも1つを含む、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、70~450℃の範囲のプラスチック溶融温度および0.2~400MPaの範囲の射出圧力で熱可塑性射出成形工程に使用するための溶解性材料からなる積層製造された犠牲型に関する。本発明はまた、上記の積層製造された犠牲型を使用して成形品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3D印刷とも呼ばれる積層製造は、製品開発だけでなく、製品の実際の生産にも重要なツールとなっている。迅速なプロトタイピング、反復設計、および概念検証は、3Dプリンタによってかなり容易にされる3つの分野である。
【0003】
しかしながら、3D印刷の主な欠点は、現在の付加的な製造技術を用いた材料の選択が限られていることである。この理由から、積層製造装置および材料のいくつかの製造業者は、ポリマー積層製造の分野を鋳造または成形の分野と組み合わせる方法を探し始めている。これらの組み合わせにおいて、ダイカスト型または型は、鋳造または成形された物品が、積層製造された型を使用して鋳造(キャスティング)または成形(モールディング)によって製造された後に、ポリマー積層製造によって製造される。ポリマー積層製造の分野が、標準的なアルミニウムまたは鋼のインサートよりも短い提供時間を有し、設計ニーズの変化を反映するように容易に改変され得る複雑な幾何学的形状を有する型を印刷する選択肢を提供する一方で、この融合の背後にある重要な理論的根拠は鋳造および成形の分野が実証された材料の幅広い選択を提供する。
【0004】
ポリマー積層製造を鋳造または成形と組み合わせることを望む製造業者には、2つの一般的なアプローチが利用可能である。第1のアプローチは耐久性があるように意図された型または型インサートのポリマー積層製造に基づいており、重要な目的は、型または型インサートが多数の繰り返し充填サイクルに耐えることができなければならないことである。先行技術文献から、高分子積層製造によって製造された型または型インサートが、多数の同一の構成要素を製造するために熱可塑性射出成形による充填を使用する製造業者によって採用されてきたことが知られている。熱可塑性射出成形による充填は、ポリマー型の熱容量が低く、製造速度が速く、利用可能な熱可塑性材料が広く選択されるため、非常に有利である。
【0005】
しかし、熱可塑性射出成形は典型的には熱可塑性材料(例えば、プラスチック、ゴム、または粉末/結合剤複合体)を70~450℃に加熱し、0.2~400MPAの圧力を使用して型に射出することを必要とする。さらに、射出材料(例えば、ガラス繊維、金属粉末または類似の添加剤を含む複合材料)は、研磨性が高い場合があり、そして高い熱容量を有し得る。
【0006】
さらに、吸い戻し(suck-back)を回避し、適切な充填を確実にするために、最初の射出後に成形圧力が維持されなければならない場合がある。最後に、抜き勾配及び分割線を含む必要性、及び充填後の成形品の排出を可能にするために型を分離する必要性は、積層製造から幾何学的自由度が失われることを意味する。柔らかいおよび/または脆い材料の成形品および/または繊細な特徴を有する成形品が望まれる場合、これらの物品は、破壊または歪曲することなく、積層製造されたポリマー型または型インサートから除去することができない場合があるため、特定の課題が生じる。可動コア、プル、スライダ、および他の機構の使用が非常に複雑な幾何学的形状の成形に必要とされる場合、これらの可動要素は、積層製造されたポリマー鋳型または鋳型インサートの急速な破壊をもたらすので、他の特定の課題が生じる。
【0007】
別のアプローチは、犠牲となる型のポリマー積層製造に基づいており、重要な目的は、充填後に型を分解して、射出成形できない幾何学的形状を有する複雑な物体の製造を可能にすることである。この原則は充填後に熱処理されてもされなくてもよい熱硬化性材料を鋳造するために積層製造された犠牲型を使用する製造業者によって採用されていることが、先行技術文献から知られている。積層製造された犠牲型の使用は、分割線を必要とせずに非常に複雑な形状の製造を可能にするので有利である。
【0008】
同時に、使い捨て型と重力注入または低圧射出との組合せは、研磨性を有するコンポジット材料を扱うことがあまり問題にならないことを意味する。しかしながら、利用可能な熱硬化性材料の範囲は利用可能な熱可塑性材料の範囲よりもかなり狭く、熱硬化性部品は射出成形に使用される熱可塑性材料よりも実質的に遅い硬化または固化速度を有するので、製造速度はかなり遅い。
【0009】
一例として、米国特許出願番号が挙げられる。米国特許出願公開第2016/0354981号明細書は、混成製造の手段による現場鋳造のための器具および器具に関する。このハイブリッド製造工程では、装置が型を印刷し、型が依然として装置内に位置している間に、熱硬化性材料を型に充填する。成形品の硬化後、型は、好ましくは型を溶解することによって廃棄される。ハイブリッド製造工程は、製品を製造することができる速度を増大させ、製品を製造するコストおよび困難さを低減すると主張されている。この文献は、特に、充填前に予備混合され、脱気される熱硬化性材料の使用を開示し、さらに、これらが積層製造装置内に依然として保持されている間に型に充填するための方法を開示する。最後に、この文献は、硬化を加速するために硬化する材料を加熱することを明記している。
【0010】
別の例は米国特許第6,609,043号であり、これは、構造発泡体部品を成形するための方法を開示している。この方法は、3つの工程を含む。工程1は、例えばステレオリソグラフィーのようなラピッドプロトタイピング工程を使用して、ポリマー型を作製する。工程2は、ポリマー型に材料を充填することを必要とする。この文献は、特に、重力下で型に充填することによって、低粘度スラリーを型に充填することを開示している。代替の充填方法は、材料のポンピングまたは材料の化学蒸着を含む。最後の工程はポリマー型および材料を加熱して材料を熱硬化させ、型材料を熱分解することによってポリマー型を除去し、それによって構造発泡体部品を形成することを必要とする。
【0011】
第3の例として、米国特許出願第2015/0375419号は、第1の工程で、層状化方法を使用して、特に粉末床ベースの層状化方法を使用して、水溶性鋳型が製造される、鋳型部品を製造するための方法を開示している。
【0012】
第2の工程では、鋳型の表面を水不溶性材料で封止し、次いで鋳型に自由流動性硬化性材料、特に水硬性材料を充填することによって、成形部品の鋳造物を形成する。鋳型が固化した後、鋳型は水溶液、特に加熱された水溶液を用いて溶解される。
【0013】
上述のアプローチの各々は、ポリマー積層製造と鋳造/成形との組み合わせを発展させるのに寄与した重要な利点を有する。しかしながら、先行技術文献によって開示され、繰り返し使用するための型または型インサートの重合体積層製造を目的とする材料が、研磨材料の繰り返し加工および/または高温および/または高圧での材料の加工を支持するのに充分な耐久性および耐摩耗性を有していないことは、依然として重要な制限である。先行技術文献によって開示され、繰り返しのための型または型インサートの高分子積層製造を目的とする材料が、軟質および/または脆性材料の成形品の円滑な排出を可能にしないことは、別の重要な制限として残っている。先行技術文献によって開示され、繰り返し使用するための型または型インサートの重合体積層製造を目的とする材料が、格納式コア、プルまたはスライドなどの可動型工具要素の使用を可能にする耐久性、機械的安定性、または耐摩耗性を有さないことは、さらに別の重要な制限として残っている。
【0014】
同時に、犠牲型の手段による成形品の製造のための先行技術文献によって開示された方法が、できるだけ高いスループットを確保し、製造のボトルネックを回避するために、多数の別個のユニットに連続的な処理工程を分配する手段を開示していないことは、依然として重要な制約である。先行技術文献によって開示され、犠牲型の付加的な製造を目的とする材料が、熱硬化性材料を対象としており、高温および高圧での熱可塑性射出成形工程での使用に必要とされる機械的または熱的安定性を有さないことは、別の重要な制限として残っている。
【0015】
したがって、これらの限界の少なくともいくつかを解決するデバイス、方法、および材料に対する満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、70~450℃の範囲のプラスチック溶融温度および0.2~400MPaの範囲の射出圧力で熱可塑性射出成形工程に使用することができ、溶解性材料からなる積層製造された犠牲型を提供することである。従って、本発明は、例えば光重合のような積層製造の手段によって処理されて、高プラスチック溶融温度及び射出圧力での熱可塑性射出成形工程に適した犠牲型を作り出すことができる溶解性材料を提供する。特に、この型は、犠牲熱可塑性射出成形(STIM)に適している。このような材料はまた、インベストメント鋳造、および高い分解能、高い表面品質および溶解度を必要とする他の用途に非常に有用である。
【0017】
また、本発明の目的は犠牲熱可塑性射出成形(STIM)におけるそれらの有用性をサポートするために、積層製造された犠牲型を活用し、補完し、強化することができるデバイス(「型工具」)を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、溶解可能な材料からなる積層製造された型を印刷する工程aと、前記工程aで得られた前記型を後処理する工程bと、前記工程bで得られた前記型に成形材料を充填する工程cと、前記工程cの成形材料を処理して前記型の内部に成形品を製造する工程dと、前記工程dで得られた成形品を解放するために前記型を溶解する工程eと、前記成形品を任意ですすぐ工程fと、を含む成形品の製造方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は任意の所望の形状および幾何学的形状を有することができ、任意の所望の材料で作ることができる射出成形品を作り出すために、型材料、および任意選択で型工具を利用する方法、特にSTIM方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】物体を製造するための成形システムの例示的な実施形態を概略的に示す。
図2】犠牲型およびインサートを含む射出成形システムの工具可動部を概略的に示す。
図3】いくつかの実施形態による射出成形システムの形態の成形システムを概略的に示す。
図4】ワンピースの積層製造された犠牲型と、図3の成形システムの例示的な実施形態と、物体を製造するために使用される成形工程とを概略的に示す。
図5図1に示される例示的な実施形態に対応するが、工具可動部が本明細書に開示されるような使用のための真空チャネルを備える、物体を製造するための成形システムの例示的な実施形態を概略的に示す。
図6】成形平面またはプラットフォームから解放され、例えば、図5に示されるような成形システムによって受容される準備ができている単一キャビティ犠牲型を概略的に示す。
図7】成形システムの工具可動部に挿入された単一キャビティ犠牲型を概略的に示す。
図8】真空チャネルを有するインサートを有する、図5の物体に対応する物体を製造するための成形システムを概略的に示す。
図9図3および4a~4dの物体に対応するが真空チャネルを有する物体を製造するための成形システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記に開示したように、本発明の目的は、70~450℃の範囲のプラスチック溶融温度および0.2~400MPaの範囲の射出圧力で熱可塑性射出成形工程に使用することができる溶解性材料からなる積層製造された犠牲型を提供することである。
【0022】
犠牲型は例えば、機械的手段、熱分解などの高温、または溶解などの化学的手段を使用することによって、成形品が型から解放されるときに犠牲にされる使い捨て型である。
【0023】
本明細書で使用される「犠牲型」という用語は少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を有する少なくとも1つの型キャビティを取り囲み、封入する、溶解可能な材料で作製された少なくとも1つの外側シェルからなる型ユニットを意味する。本明細書に開示される型は70~450℃の範囲のプラスチック溶融温度および0.2~400MPaの範囲の射出圧力に耐えることができ、熱可塑性射出成形工程での使用に適している。射出成形工程中、空気が出口を通して排出されている間、または真空になっている間に、成形キャビティは、型の入口を介して型のキャビティ内に成形材料を射出することによって成形材料で充填される。型の好ましい例を図6および7に示す。
【0024】
積層製造された犠牲型は、液体樹脂配合物を選択的に硬化させることによって製造することができる。樹脂配合物は溶解可能な樹脂配合物であり、これは、型を印刷し、それを所望の成形材料で満たして成形物体を作製した後、硬化した樹脂が水または他の溶剤と反応することができ、それによって印刷された型が溶解して成形物体を解放することを意味する。
【0025】
好ましい実施形態では、積層製造された犠牲型が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願PCT/EP2017/055841の図5または図6に示される積層製造システムによって製造される。
【0026】
溶解性樹脂配合物は、1)例えばステレオリソグラフィー法によって型を積層製造することができるように選択的に硬化可能であること、および2)型充填工程中の高塑性溶融温度および射出圧力に耐えることができること、および3)適切な溶剤と接触させたときに型を溶解させることができることの要件を満たす任意の公知の溶解性樹脂または樹脂の混合物を含むことができる。
【0027】
一実施形態では、溶解性樹脂製剤が4-(1-オキソ-2-プロペニル)-モルホリン、トリメチロールプロパン(EO)9トリアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、スクロースベンゾエート、変性アクリレートポリエステル、および変性アクリレートポリエチレンポリオールのうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
本明細書で使用される「変性アクリレートポリエステル」という用語は、アクリレートポリエステルの化学的変性物、特にアクリレートポリエステルのポリエチレングリコール変性物を意味する。本明細書で使用する「変性アクリレートポリエチレンポリオール」という用語は、例えばトリ(N-フェノチアジニル)トリフェニルアミン(TPTTA)上の第三級アミン基との反応のように、アクリレートポリエチレンポリオールの化学的変性物、特にアクリレートポリエチレンポリオールのアミン変性物を意味する。
【0029】
特定の実施形態では、溶解性樹脂製剤が4-(1-オキソ-2-プロペニル)-モルホリン、トリメチロールプロパン(EO)9トリアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、スクロースベンゾエート、ポリエチレングリコール変性アクリレートポリエステル、およびアミン変性アクリレートポリエチレンポリオールのうちの少なくとも1つを含む。
【0030】
別の実施形態では、溶解性樹脂製剤が4-(1-オキソ-2-プロペニル)-モルホリン、トリメチロールプロパン(EO)9トリアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレートおよびスクロースベンゾエートのうちの少なくとも1つを含む。
【0031】
例えばポリプロピレンのSTIMに適した別の実施形態では、溶解性樹脂製剤が4-(1-オキソ-2-プロペニル)-モルホリン、トリメチロールプロパン(EO)9トリアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、スクロースベンゾエート、変性アクリレートポリエステル、および変性アクリレートポリエチレンポリオールのうちの少なくとも1つを含む。
【0032】
例えばポリプロピレンのSTIMに適した特定の実施形態では、溶解性樹脂製剤が4-(1-オキソ-2-プロペニル)-モルホリン、トリメチロールプロパン(EO)9トリアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、スクロースベンゾエート、ポリエチレングリコール変性アクリレートポリエステル、およびアミン変性アクリレートポリエチレンポリオールのうちの少なくとも1つを含む。
【0033】
例えばポリプロピレンのSTIMに適した別の実施形態では、溶解性樹脂製剤が4-(1-オキソ-2-プロペニル)-モルホリン、トリメチロールプロパン(EO)9トリアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレートおよびスクロースベンゾエートのうちの少なくとも1つを含む。
他の実施形態は、意図される成形材料の特定の特性に適合するように調整されてもよい。
光重合等の手段による積層製造を可能にするために、溶解性レジン配合物は、硬化剤を更に含んでいてもよい。硬化剤の種類は、配合物中の樹脂および硬化のための好ましい方法に依存する。いくつかの実施形態では、溶解性樹脂がエネルギー硬化性としても知られる照射線硬化性であることが意図され、そのような場合、樹脂は例えば、紫外線または電子ビーム照射線を樹脂配合物に適用することによって硬化される。
【0034】
一実施形態では、溶解性樹脂製剤が光開始剤として作用することが知られているジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどのUV硬化剤と、例えばベンゾオキサゾール、2,2'-(チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)]などのUV遮断剤とを含む。安定剤、例えば重合抑制剤、例えばGenorad 20を添加して、貯蔵寿命を延ばすことができる。
【0035】
溶解性樹脂配合物は、所望の特性を促進することができるさらなる積層材料(additives)を含むことができる。特に、一実施形態では、溶解性樹脂配合物が例えば、エポキシ、ブロックトイソシアネート、および粉末アルミニウムからなる群から選択することができる、熱後硬化を促進することができる薬剤をさらに含む。特定の実施形態では、エポキシは、Delo AGから購入したMonopox 6093であってもよい。モノポックス6093の添加は、積層製造された鋳型に、より高い機械的強度、熱安定性および熱容量を提供すると考えられ、したがって、このような添加は、要求の厳しい用途にとって非常に魅力的であると考えられる。
【0036】
別の実施形態では、ブロックされたイソシアネートがメチルエチルケトキシムであってもよい。メチルエチルケトキシムはブロックされたイソシアネートが休止状態である第1のステージと、イソシアネートが後硬化を可能にするためにブロックされていない、ある温度しきい値(例えば、メチルエチルケトキシムについて120~140℃)を超えた温度で生じる第2のステージとを有することを特徴とする。その他の実施形態は、例えば、硬化深さの正確な制御を可能にする蛍光増白剤(例えば、スティルベンまたはベンゾオキサゾール)または他のUV遮断剤、および/または溶解性樹脂の有用な貯蔵寿命を延長する重合抑制剤(例えば、ヒドロキノンまたはジノラド)を含み得る。
【0037】
本発明のさらなる目的は、溶解性材料からなる積層製造された犠牲型を印刷する工程aと、工程aで得られた型を後処理する工程bと、工程bで得られた型に成形材料を充填する工程cと、工程cの成形材料を処理して型内に成形品を製造する工程dと、工程dで得られた成形品を解放するために型を溶解する工程eと、任意選択で成形品をすすぐ工程fと、を含む成形品の製造方法を提供することである。
【0038】
工程aでは、溶解性樹脂を含む樹脂配合物を印刷することによって、積層製造された犠牲型が製造される。このような用途に適した溶解性樹脂の例は上述されている。
【0039】
原則として、例えば、光重合(例えば、UV-デジタル光処理(DLP)、UV、レーザー、LCDまたはステンシルステレオリソグラフィー(SL))、連続液体界面生成(CLIP)、溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザー溶融(SLM)、材料噴射、バインダー噴射、光学製作、光固化、固体フリーフォーム製作、固体画像化および他の3D印刷システム、(選択的)レーザー焼結システム、突出システム、押出ベースの3Dプリンターシステム、3Dバイオ印刷またはバイオプロッティングシステム、液滴/「インクジェットベースのシステム」、粉末床溶融システム、または指向性エネルギー堆積システムなどの、任意の種類の公知の印刷工程を使用することができる。複雑な形状、高い公差、高い解像度、高い表面品質および/または高い再現性が必要とされる場合には、UV DLPプロセスおよびSLプロセスが好ましい。
【0040】
DLPまたはSLの手段による精密物体の製造において最高の精度を達成するために、積層製造ユニットにおける蓄積の間に第1の硬化/固化が起こり、これが積層製造された鋳型の個々の層の所望の形、および最終的には鋳型全体の所望の形を設定するために役立つ。各個々の層の完全な硬化は、内部応力、反り、強度の損失、および他の望ましくないアーチファクトをもたらすので、この第1の硬化/固化は部分的であることが望ましい。最小の幾何学的歪みで完全な強度を達成するために、印刷後に積層製造された鋳型を清浄にし、その後、以下にさらに説明するように、積層製造された鋳型の第2(後)硬化を実施することが望ましい。積層製造装置を可能な限り利用し、ボトルネックを防止するために、洗浄および後硬化は、積層製造装置から分離された後処理システムによって実行されることが有利である。適切な後処理システムは、国際特許出願に開示されているものである。
【0041】
PCT/EP2017/055841、44ページ、14行目~46ページ、2行目、および図12、項目600に示され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
したがって、工程bでは、積層製造された犠牲型が後処理されて、レディ・トゥ・フィル(RTF)型が得られる。
【0043】
後処理は、型を洗浄する工程、型を乾燥させる工程、型を表面処理する工程、および型を後硬化させる工程のうちの少なくとも1つを含む。
【0044】
型の洗浄は、DLPまたはSLが使用される場合に特に重要であり、特に、型をイソプロパノール、TPM(トリプロピレングリコールメチルエーテル)または類似の溶媒の浴に浸漬して未硬化材料を除去する洗浄工程を含んでもよい。洗浄が行われない場合、未硬化材料は例えば、型の底部に溜まることによって、充填工程を妨害し得る。そのような妨害は、幾何学的精度の損失、不完全に成形された物体、射出成形装置の汚染、および/または他の望ましくないアーチファクトをもたらし得る。任意選択で、洗浄工程は、昇温させること、超音波処理すること、撹拌すること、かき混ぜること、真空吸引すること、またはそれらの任意の組合せで実施される。
【0045】
洗浄中または洗浄後に型を乾燥させることは、任意の周知の乾燥方法を含み、特に、真空乾燥工程および/またはオーブン乾燥工程および/または化学乾燥工程を使用することを含み得る。
【0046】
洗浄中または洗浄後に型を表面処理することは、当技術分野で知られている任意の表面処理方法を含み、特に、表面処理剤を含む浴に型を浸漬することを含むことができる。
いくつかの実施形態では、表面処理剤が例えば、表面の平滑化を提供することができる型材料の溶剤である。別の実施形態では、表面処理剤が型の溶解を促進する溶媒である。さらに別の実施形態では、表面処理剤が構造表面剤、例えば、成形物体の表面に浸透させることができるマイクロビーズまたは他の材料を含む剤(agent)である。
【0047】
上述したように、精密な犠牲型の製造にDLP又はSLが使用される場合、特に、より高い温度及び/又は圧力に適応するために型の壁の厚さを増加させる必要がある場合、型の後硬化は特に重要である。このような後硬化は任意の周知の後硬化法を含むことができ、特に、型を反射チャンバ内に配置し、型を紫外線照射にさらし、および/または型を炉内に配置し、型をジュール加熱、マイクロ波加熱、または別の手段の熱エネルギーにさらし、および/または型を特定の種類の化学硬化および/または熱硬化のために導電性の環境(例えば、水)内に配置することを含むことができる。所望の後硬化効果を得るとともに、速度を上げ、操作を容易にするために、1つ以上の後硬化原理を単一の後硬化装置に組み合わせることが有利である。
【0048】
代替的に又は追加的に、犠牲型の材料中に特定の成分又は積層材料を含めることは、完全な後硬化を促進するのに役立つことができる。上記に開示された配合物は第1(光)硬化が印刷中に起こり、所望の幾何学的形状を有する型の付加的製造を可能にするハイブリッド硬化レジームに適していることを特徴とする。第2の硬化は、後硬化の間に行われ、可能な限り高い強度を提供するために犠牲型を完全に固化させることが意図される。この第2の硬化は、好ましくは熱硬化である。
【0049】
工程cでは、積層製造された犠牲型に成形材料を充填する。成形材料は、熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマー、熱可塑性複合材料、熱可塑性ゴム、金属粉末を含む熱可塑性供給原料、セラミック粉末を含む熱可塑性供給原料、および他の適切な粉末を含む熱可塑性供給原料を含むが、これらに限定されない。
【0050】
型への充填は例えば、熱可塑性射出成形、熱可塑性ゴム射出成形、熱可塑性マイクロ射出成形、熱可塑性粉末射出成形(熱可塑性金属射出成形および熱可塑性セラミック射出成形を含む)、熱可塑性ブロー成形、熱可塑性オーバーモールド成形、熱可塑性圧縮成形、熱可塑性インサート成形または熱可塑性マルチショット成形などの任意の公知の射出成形方法によって行うことができる。
【0051】
好ましい実施形態では、成形材料による鋳型の充填が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願PCT/EP2017/055841の図9、10または11に示されるように行われる。
【0052】
本発明では、型の充填が70~450℃の範囲のプラスチック溶融温度および0.2~400MPaの範囲の射出圧力で行われる。
【0053】
速度を上げ、使い易くするために、効率的な充填のために型工具および取扱い固定具を使用することがしばしば望ましい。充填中に、犠牲型を型内の適切に構成されたキャビティまたは凹部内に締め付ける(clamp)ことが望ましい場合がある。これは、例えば、特に、より高い温度および圧力が使用され、そのような締め付けが、そのようなより高い温度および圧力から生じ得る変形のリスクを軽減するのに役立つ場合に望ましい。
【0054】
一実施形態では、工程cで型を充填する前および充填する間に、犠牲型が型工具によって締め付けられ、かつ/または型工具によって支持される。この実施形態では、型内のキャビティが犠牲型の外側寸法に一致する寸法を有し、その結果、型キャビティ内で犠牲型が締め付けられまたは支持される。
【0055】
場合によっては、犠牲型が型内のキャビティよりも小さいことがあり、そのような場合には型の充填前および充填中に犠牲型が型によって締め付けられ、および/または支持されるように、適合された型の寸法が犠牲型の外側寸法と一致するように、型内のキャビティのサイズを適合させることができるインサートを使用することが有益である。
したがって、一実施形態では、インサートを使用して、型工具のサイズを犠牲型の外側寸法に合う寸法に適合させ、それによって、犠牲型は工程cで型を充填する前および充填する間に、適合されたサイズで型工具によって締め付けられ、かつ/または支持される。
【0056】
好ましい実施形態では、犠牲型が型キャビティと流体連通する真空チャネルを備える型工具によって締め付けられ、かつ/または支持される。このような真空チャネルを導入することによって、工程cにおける型の充填前または充填中に、キャビティ内を真空引きすることによって、型への充填が補助される。真空チャネルを有する好ましい型の例は、例えば図6、7および8に示される。
【0057】
図8a-8c, 9a-9h, 10a-lOd, 11a-l idおよび同一申請者による出願番号PCT/EP2017/055841 を伴う複製PCT特許出願に関する関連記述は、ここでは参考までに盛り込まれている。
【0058】
図1は、物体を製造するための成形システムの例示的な実施形態を概略的に示す。
ここでは、射出成形システムの形態の成形システムが示されている。この実施形態および対応する実施形態では、射出成形システムが工具固定部および工具可動部を含み、工具可動部は、犠牲型キャビティを含む。当該犠牲型キャビティは、解放されるか、または成形平面から解放された犠牲型を受け入れるように構成される。
【0059】
図2は、犠牲型およびインサートを含む射出成形システムの工具可動部を概略的に示す。工具可動部を含む射出成形システムの形態の成形システムが示されており、工具可動部の犠牲型キャビティは、より小さい犠牲型を収容するためのインサート等を含む。
【0060】
図3は、いくつかの実施形態による射出成形システムの形態の成形システムを概略的に示す。いくつかの実施形態による工具可動部と工具固定部とを備える射出成形システムの形態の成形システムが示されている。
【0061】
この実施形態では、犠牲型が1つまたは複数の解放可能な固定要素を備える積層製造装置から成形プラットフォームに取り付けられるか、または固定される。図示の実施形態において、解放可能な固定要素は、標準化された工業用チャックのような対応する嵌合工具又は機器に接続されたエロワ(Erowa)スピゴット又は同様のものである。しかしながら、追加の製造装置(例えば、静止または摺動可能なレール、溝、ピンなど)から成形プレートまたは成形プラットフォームを解放可能に受容し、保持し、解放するための他の機構が、工具可動部への成形プレートまたは成形プラットフォームの解放可能な取り付けのために使用されてもよい。この実施形態および対応する実施形態では、成形プラットフォームが成形プレートの形態であり、射出成形機への、および射出成形機からの犠牲型の迅速な移送を可能にする目的で、取り付けられた型のためのバッキングプレートとして機能する。いくつかの実施形態では移送が手動であり、他の実施形態は自動移送のための手段を含む。また、バッキングプレートは、ある種の比較的脆い型に対して有利である。
【0062】
図4a図4dは、ワンピースの積層製造された犠牲型と、図3の成形システムの例示的な実施形態と、物体を製造するために使用される成形工程とを概略的に示す。図4a~4dは、図3の射出成形装置および本明細書に開示される犠牲型を使用する成形または物体製造工程の様々なステージを示す。
【0063】
図4aでは、矢印で示すように、型が取り付けられた工具可動部が工具固定部に向かって移動する。図4bでは、工具可動部は(多かれ少なかれ)適所にある。図4cでは、矢印で示すように、少なくとも1つの成形材料が湯口などに導入され、さらに型に導入され、射出成形工程の一部としてそれを充填する。
【0064】
図4dでは、成形された物体が生成され、工具可動部が工具固定部から離れるように移動される。工具固定部の湯口に保持されている硬化物質はそれに沿って引っ張られることがあり、これは、後のステージで除去される必要がある成形物体の望ましくない部分を作り出すことがある。
【0065】
特定の実施形態では、構成可能なキャビティを有する型工具が提供される。当該キャビティは、第1のより大きな犠牲型を受け入れるように寸法決めされてもよく、より小さな犠牲型を受け入れるために、当該キャビティの寸法は、段階的に、または目立たない程度に縮小することを可能にする1つまたは複数のインサートを含んでもよい。この実施形態は同じ型工具を使用して、異なるサイズを有する多数の構成要素の材料効率のよい製造を可能にし、充填前に、犠牲型が積層製造装置の成形プレートから取り外される場合に、特に有利である。
【0066】
個々の型の熱容量が低く、その結果、型と成形材料との間の熱交換が小さくなるため、型工具の導入および制御された型温度の必要性を本質的に排除することができるので、この種の用途にはさらなる利点もたらされる。
【0067】
別の実施形態では、犠牲型が依然として取り付けられた状態で成形プレートを自動的に受け入れて保持するように構成された型工具が提供される。この実施形態は、STIMが統合された自動化された一連の付加的な製造工程に基づいている場合に特に有利であり、複数のキャビティを有する犠牲型が使用される場合にはさらに最適であり得る。このような用途では、成形プレートが、自動的に受け入れられる(雄)型工具のバッキングプレートとして働くことができ、犠牲型は犠牲型の外側輪郭に対応する(雌)キャビティ内に受け入れることができる。したがって、複数の構成要素の費用効率のよい製造が、単一の自動化された工程で実行され得る。
【0068】
特定の用途では、第1の設計を有する1つまたは複数の構成要素を含む第1の犠牲型を、第2の設計を有する1つまたは複数の構成要素を含む第2の犠牲型に自動的に置き換えることができる。個々の型の熱容量が低く、その結果、型と成形材料との間の熱交換が小さくなるため、型工具の導入および制御された型温度の必要性を本質的に排除することができるので、この種の用途にはさらなる利点もたらされる。
【0069】
型の完全かつ効率的な充填に必要な圧力を低下させるために、射出工程を真空工程と組み合わせるか、または補完することがしばしば望ましい。犠牲型を充填するのに必要な圧力を減らすために真空を使用することによって、いくつかの利点が得られる:
【0070】
1.型の壁の厚さを減少させることができ、これは、型材料を節約するのに役立つと同時に、型の製造工程を高速化する
2.充填速度を上げることができる
3.複雑な幾何学的形状の充填を容易にすることができる
いくつかの実施形態では、例えば、犠牲型上の少なくとも第1の真空入口に、またはより合理的には型上の好適な固定具に取り付けられる真空ホースの手段によって、犠牲型キャビティが直接的に真空引きされる。代替的に、または相補的に、型工具を犠牲型で完全に取り囲み、囲むように構成された真空チャンバを真空引きすることができる。
【0071】
図5は、図1に示される例示的な実施形態に対応する物体を製造するための成形システムの例示的な実施形態を概略的に示すが、工具可動部は本明細書に開示されるように使用するための少なくとも第1の真空チャネルを備える。
【0072】
図からわかるように、ガイド穴を含む工具可動部の部分と犠牲型のキャビティとは、ホースまたは同様の物のためのコネクタを有する真空チャネルの一部を含む。コネクタを有する端部とは反対側の真空チャネルの端部は、犠牲型のキャビティ内で終端する。
【0073】
図6は、成形平面またはプラットフォームから解放され、例えば、図5に示されるような成形システムによって受容される準備ができている単一のキャビティを有する犠牲型を概略的に示す。
【0074】
図からわかるように、型は使用時に整列する少なくとも第1の真空チャネルを備える(例えば、図7を参照されたい。)は、成形システムの真空チャネルを有する。この実施形態および対応する実施形態では、真空チャネルが型の内部空間に接続された型の空気出口の代わりに、入口を介して成形材料を受け入れるときに内部空間から空気を放出する。
【0075】
図7は、成形システムの工具可動部に挿入された単一のキャビティを有する犠牲型を概略的に示す。図示されているのは、輸送機構、例えばピックアンドプレースアームなどに取り付けられた単一のキャビティを有する犠牲型であり、これは型が成形システムの工具可動部に適切に挿入されて、型のそれぞれの真空チャネルと工具可動部とが整列するように、積層製造されたワンピースの型を自動的に移送させるように適合されている。図示の実施形態では、ピックアンドプレースアームが犠牲型の移送のために使用される。代替の実施形態(図示せず)では、犠牲型が積層製造装置の成形プラットフォーム上に依然として保持されたまま、(例えば、ロボットアームによって)移送される。そのような実施形態では、例えば、成形プラットフォームを一時的に冷却して解放熱収縮を発生させることによって、犠牲型のキャビティは、工具可動部の犠牲型のキャビティ内に配置されるとプラットフォームから解放される。
【0076】
図8は、真空チャネルを有するインサートを有する、図5の物体に対応する物体を製造するための成形システムを概略的に示す。インサートは、インサートが真空チャネルを有する工具可動部の犠牲型のキャビティよりも小さい犠牲型の受け入れを容易にするように構成される。
【0077】
図5のものに対応する成形システムおよび図2のものに対応するインサートが示されているが、このインサートは、使用時に、挿入された型および成形システムのそれぞれの真空チャネルと整列する真空チャネルを備える点が異なる。
【0078】
図9は、図3および図4a図4dの物体に対応するが真空チャネルを有する物体を製造するための成形システムを概略的に示す。
【0079】
エロワベースのバッキングプレートを有する図3および図4a図4dのものに対応する成形システムが示されているが、この実施形態および対応する実施形態によれば、真空チャネルおよびコネクタをさらに有し、真空チャネルは、使用時に、(図示されているような)型の真空チャネルまたはインサートと整列する。
【0080】
いくつかの実施形態では、取り付けられた型のためのバッキングプレートとして機能する成形プレートが追加的に製造され、これは成形プレートの真空チャネルの複雑な幾何学的形状を可能にする。
【0081】
工程dにおいて、成形材料は、成形品が製造されるように加工される。そのような工程は当技術分野で周知であり、典型的には、型の内側の成形材料の滞留および冷却を含む。ポリマー犠牲型が使用される場合、アルミニウムまたは鉄の工具と比較して、ポリマー犠牲型のより低い熱容量が、標準的な射出成形と比較して、滞留時間および冷却時間を長くし得る。しかしながら、犠牲型は成形材料が吸い戻されることなく分離を可能にするのに十分な程度に硬化すると、すぐに射出成形機から取り外すことができ、これは、全体のスループットを増加させ、射出型サイクル時間を短縮するのに役立つ。
【0082】
工程eにおいて、積層製造された犠牲型が溶解され、それによって成形品が解放される。型の溶解は、例えば、成形品を有する型を、水、無機溶媒または有機溶媒などの溶媒に浸漬することによって行うことができる。溶媒の適切な例としては、水、水酸化ナトリウム、リモネン、アセトンおよびエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施形態では、溶媒はアルカリ性または酸性溶媒である。いくつかの実施形態では、溶媒が例えば1M水酸化ナトリウムまたは2M水酸化ナトリウムなどの水酸化ナトリウムの水溶液である。いくつかの実施形態では、溶解工程はまた、例えば50℃などの40~80℃の範囲の温度に溶媒を加熱することを含み、いくつかの実施形態では、撹拌および/または超音波処理の適用によって溶解が補助される。
【0084】
工程fにおいて、成形品は、型の残留物を完全に排除するためにすすがれる。好ましい実施形態では、型の印刷および充填が、互いに独立した2つの工程で、好ましくは2つの異なる装置で行われて、工程全体のスループットを増大させる。
【0085】
いくつかの実施形態では、工程a、b、c、d、e、およびfのうちの少なくとも2つが異なる装置を使用して互いに独立して実行される。
このような場合、犠牲型は本発明の方法の間に、1つの装置から別の装置に移送される必要がある。好ましい一実施形態では、移送は手動で行われる。別の好ましい実施形態では、転送は自動的に実行される。さらに別の好ましい実施形態では、転送が手動移送および自動転送の組合せによって実行される。手動および/または自動的に実行され得る移送の例は、参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願第PCT/EP2017/055841に開示されている。
【0086】
好ましい実施形態では鋳型を印刷することと、後続の成形工程において前記印刷された鋳型を使用することとの組み合わせは、参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願PCT/EP2017/055841に記載されている通りである。
【0087】
[実施例1]
(材料)
M3190(TMP(EO)9TA):Rahn AGから購入したトリメチロールプロパン(EO)9トリアクリレート、
M284(PEG300DA):Rahn AGから購入したアクリレートポリエチレングリコール(PEG)、
ACMO:Rahn AGから購入したアクリロイルモルホリン、
TPO:Rahn AGから購入したジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
(光開始剤)
Tinopal OB 100:BASF Corporationから購入したベンゾオキサゾール、2,2'-(チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)](UV遮断剤)
【0088】
1.1 溶解性樹脂配合物の調製
30グラムのM3190、30グラムのM284および140グラムのACMOを、不透明な褐色のPEボトルに注ぎ、マグネチックスターラー上で均一なテクスチャーに混合した。5分間以上撹拌した後、TPO(光開始剤)およびTinopal OB 100(UV遮断剤)を添加し、磁気撹拌機で120分間撹拌を続けた。
【0089】
1.2 積層製造された犠牲型を印刷する
所望の形状を有する型キャビティを有する型を形成するために、樹脂の硬化を含む工程で溶解可能な樹脂を固化させた。UV-DLP原理に基づく積層製造が望ましい方法であり、積層製造装置における適切な容器に樹脂を入れる工程を有する。容器は、透明な底部を備え、この底部を通して、レーザーからの適切に構成されたUV光線またはDLPプロジェクタからの光線の束に樹脂を選択的に曝露して、選択的な固化を促進する。
【0090】
あるいは、樹脂の上面のすぐ下に配置された成形面上に光を投影するプロジェクタを使用することによって、選択的な固化が達成され得る。365nmの波長を持つUV-DLPプロジェクタを透明ボトムで容器の下に置き、容器の底部を通して48×60mmの面積を有する成形面に光を投影するように構成した。成形面は連続的に又は段階的にプロジェクタから離れるように移動され、UV光は各段階の前、間又は後に成形面上に投影された。
【0091】
実施例では、所望の形状を有する型キャビティを有する型を以下のように調製した:
容器の底部の上面に対して一層の厚さだけ上方に成形面を配置し、固化されるべき樹脂の領域上に光を選択的に投影してバーンイン層を含む第1の固化形状を生成し、成形面をプロジェクタおよび容器の底部から一層の厚さだけ離して移動させて、固化されていない樹脂を固化領域の下方の領域に流入させ、選択的な反復暴露を繰り返して、後続のバーンイン層/固化形状を生成し、成形面を容器の底部から離れるように段階的に移動させて、所望の形状を有する型キャビティを有する1つの型を生成する。
【0092】
樹脂の固化のために使用されたパラメータのセットは、8.1711mW/cm2の光強度、第1(バーンイン)層のための4500ミリ秒の露光時間、および後続の非バーンイン層のための750ミリ秒の露光時間を含んでいた。
【0093】
選択的に露出された最後の幾何学的形状を形成した後、成形面を積層製造装置から除去した。少なくとも1つの型を成形面から取り出し、40kHzのElmasonic P120H中のイソプロパノールを含有するバット中に浸漬することによって洗浄した。それぞれ10分間の持続時間を有する2つの洗浄円を流した。次に、加圧空気を用いて型をさらに清浄化した。
【0094】
その後、清浄化された型をUV後硬化ユニットに入れて、完全な凝固が達成されることを確実にした。この工程では、9.000フラッシュを有するNK-Optik G171を使用した。
【0095】
1.3 物品の射出成形
射出成形品は、A.B.プラスチックインジェクターAB-200、半自動テーブルトッププラスチック射出機を用いて製造した。射出工程中に型を支持するために、溶解可能な型の外側形状に対応する内側形状を有するキャビティを含む射出成形工具を使用した。成形品は熱可塑性ポリプロピレン製であり、ポリプロピレンを有する射出機バレルを245℃に加熱し、射出時間を3秒に設定し、射出圧力を65psi(0.4MPaに相当)に設定した。
【0096】
1.4積層製造された犠牲型の溶解
溶解可能な型を、その容量の3/4まで1M水酸化ナトリウムで満たされた密閉蓋を有する500mlジャーに浸漬することによって、成形品から除去した。次に、ジャーを50℃に加熱し、その温度で24時間保持した。型の溶解が完了した後、成形品を1M水酸化ナトリウムで残渣を除去し、続いてイソプロパノールに浸漬し、最後に乾燥させた。
【0097】
(実施例2)
この実施例では、溶解性樹脂配合物がエポキシ鋳造樹脂を含む。
溶解性樹脂へのエポキシ鋳造樹脂の添加、およびこの樹脂で積層製造された型のその後の熱後硬化は、このようなエポキシの添加物を含まず、熱後硬化を受けない溶解性樹脂配合物により積層製造された型(例えば、実施例1で製造されたもの)よりも高い機械的強度、熱安定性および熱容量を有する型をもたらす。
【0098】
(材料)
M3190(TMP(EO)9TA):Rahn AGから購入したトリメチロールプロパン(EO)9トリアクリレート、
M284(PEG300DA):Rahn AGから購入したアクリレートポリエチレングリコール(PEG)、
ACMO:Rahn AGから購入したアクリロイルモルホリン、
TPO:Rahn AGから購入したジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(光開始剤)、
Tinopal OB 100:BASF Corporationから購入したベンゾオキサゾール、2,2'-(チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)](UV遮断剤)、
モノポックス6093:Delo AGから購入したエポキシ鋳造樹脂
【0099】
2.1 溶解性樹脂配合物の調整
30グラムのM3190、30グラムのM284、140グラムのACMO、および5グラムのMonopox 6093を、不透明な褐色のPEボトルに注ぎ、磁気撹拌機上で均一なテクスチャーに混合した。5分間以上撹拌した後、TPO(光開始剤)およびTinopal OB 100(UV遮断剤)を添加し、磁気撹拌機で120分間撹拌を続けた。
【0100】
2.2積層製造された犠牲型の印刷
所望の形状を有する型キャビティを有する型を形成するために、溶解可能な樹脂は、樹脂の硬化を含む工程で固化された。
【0101】
UV-DLP原理に基づく積層製造が望ましい方法であり、積層製造装置における適切な容器に樹脂を入れることを含む。容器は、透明な底部を備え、この底部を通して、適切に構成されたレーザーからのUV光線またはDLPプロジェクタからの光線の束に樹脂を選択的に曝露して、選択的な固化を促進する。あるいは、樹脂の上面のすぐ下に配置された成形面上に光を投影するプロジェクタを使用することによって、選択的な固化が達成され得る。
【0102】
365nmの波長を持つUV-DLPプロジェクタを透明ボトムで容器の下に置き、容器ボトムを通して、48×60mmの面積を有する成形面上に光を投影するように構成した。連続的に又は段階的にプロジェクタから離れるように成形面は移動され、各段階の前、間又は後に、成形面にUV光を投影した。
【0103】
実施例では、所望の形状を有する型キャビティを有する型を以下のように調製した:
容器底部の上面の1つの層厚さだけ上方に成形面を配置し、硬化されるべき樹脂の領域に光を選択的に投影してバーンイン層を含む第1の凝固形状を生成し、プロジェクタおよび容器の底部から1つの層厚さだけ離れるように成形面を移動させて、未硬化樹脂を凝固領域の下方の領域に流入させ、選択的反復露光を繰り返して、後続のバーンイン層/凝固形状を生成し、成形面を容器の底部から離れるように段階的に移動させて、所望の形状を有する型キャビティを有する1つの型を生成する。
【0104】
樹脂の固化のために使用されたパラメータのセットは、8.1711mW/cm2の光強度、第1(バーンイン)層のための4500ミリ秒の露光時間、および後続の非バーンイン層のための750ミリ秒の露光時間を含んでいた。
【0105】
最後の選択的に露出された幾何学的形状を形成した後、成形面を積層製造装置から除去した。少なくとも1つの型を成形面から取り出し、40kHzのElmasonic P120H中のイソプロパノールを含有するバット中に浸漬することによって洗浄した。それぞれ10分間の持続時間を有する2つの洗浄サイクルを実行した。次に、加圧空気を用いて型をさらに清浄化した。
【0106】
その後、清浄化された型をUV後硬化ユニットに入れて、完全な凝固が達成されることを確実にした。この工程では、9.000フラッシュを有するNK-Optik G171を使用した。型の機械的強度をさらに高めるために、熱安定性、130℃で30分間の熱後硬化を行った。
【0107】
2.3 物品の射出成形
射出成形品は、A.B.プラスチックインジェクターAB-200、半自動テーブルトッププラスチック射出機を用いて製造した。射出工程中に型を支持するために、溶解可能な型の外側形状に対応する内側形状を有するキャビティを含む射出成形工具を使用した。成形品は熱可塑性ポリプロピレン製であり、ポリプロピレンを有する射出機バレルを245℃に加熱し、射出時間を3秒に設定し、射出圧力を65psi(0.4MPaに相当)に設定した。
【0108】
2.4積層製造した犠牲型の溶解
溶解可能な型を、その容量の3/4まで1M水酸化ナトリウムで満たされた密閉蓋を有する500mlジャーに浸漬することによって、成形品から除去した。次に、ジャーを50℃に加熱し、そこで24時間保持した。型の溶解が完了した後、成形品を1M水酸化ナトリウムで残渣を除去し、続いてイソプロパノールに浸漬し、最後に乾燥させた。
【0109】
(実施例3)
この実施形態では、溶解性レジン配合物が第1の休止ステージと、熱後硬化が起こるある温度しきい値を超えて起こる第2の反応性ステージとを有するブロックされたイソシアネートであるメチルエチルケトキシムを含む。
【0110】
溶解可能な樹脂へのメチルエチルケトキシムの添加、およびこの樹脂で積層製造された型のその後の熱後硬化はこのようなメチルエチルケトキシム添加剤を含まず、熱後硬化に供されない溶解可能な樹脂配合物から積層製造された型(例えば、実施例1で製造されたもの)よりも高い機械的強度、熱安定性および熱容量を有する型をもたらす。
【0111】
(材料)
M3190(TMP(EO)9TA):Rahn AGから購入したトリメチロールプロパン(EO)9トリアクリレート、
M284(PEG300DA):Rahn AGから購入したアクリレートポリエチレングリコール(PEG)、
ACMO:Rahn AGから購入したアクリロイルモルホリン、
TPO:Rahn AGから購入したジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(光開始剤)、
Tinopal OB 100:BASF Corporationから購入したベンゾオキサゾール、2,2'-(チオフェンジイル)ビス[5-(1,1-ジメチルエチル)](UV遮断剤)、
Sigma-Aldrich社から購入したエチルケトキシム
【0112】
3.1 溶解性樹脂配合物の調製
30グラムのM3190、30グラムのM284、5グラムのメチルエチルケトキシム、および140グラムのACMOを、不透明な褐色のPEボトルに注ぎ、マグネチックスターラー上で均一なテクスチャーに混合した。5分間以上撹拌した後、TPO(光開始剤)およびTinopal OB 100(UV遮断剤)を添加し、磁気撹拌機で120分間撹拌を続けた。
【0113】
3.2 積層製造された犠牲型の印刷
所望の形状を有する型キャビティを有する型を形成するために、溶解可能な樹脂は、樹脂の硬化を含む工程で固化された。UV-DLP原理に基づく積層製造が望ましい方法であり、積層製造装置における適切な容器に樹脂を入れることを含む。容器は、透明な底部を備え、この底部を通して、レーザーからの適切に構成されたUV光線またはDLPプロジェクタからの光線の束に樹脂を選択的に曝露して、選択的な固化を促進する。あるいは、選択的な固化が、樹脂の上面のすぐ下に配置された成形面上に光を投影するプロジェクタを使用することによって達成され得る。
【0114】
365nmの波長を持つUV-DLPプロジェクタを透明ボトムで容器の下に置き、容器ボトムを通して、48×60mmの面積を有する成形面に光を投影するように構成した。成形面は連続的に又は段階的にプロジェクタから離れるように移動され、各段階の前、間又は後に成形面にUV光を投影した。
【0115】
実施例では、所望の形状を有する型キャビティを有する型を以下のように調製した:
容器底部の上面の1つの層厚さだけ上方に成形面を配置し、硬化されるべき樹脂の領域上に光を選択的に投射してバーンイン層を含む第1の凝固形状を生成し、プロジェクタおよび容器の底部から1つの層厚さだけ離れるように成形面を移動させて、未硬化樹脂を凝固領域の下方の領域に流入させ、選択的反復露光を繰り返して、後続のバーンイン層/凝固形状を生成し、容器の底部から離れるように段階的に成形面を移動させて、所望の形状を有する型キャビティを有する1つの型を生成する。
【0116】
樹脂の固化のために使用されたパラメータのセットは、8.1711mW/cm2の光強度、第1(バーンイン)層のための4500ミリ秒の露光時間、および後続の非バーンイン層のための750ミリ秒の露光時間を含んでいた。
【0117】
最後に選択的に露出された幾何学的形状を形成した後、成形面を積層製造装置から除去した。少なくとも1つの型を成形面から取り出し、40kHzのElmasonic P120H中のイソプロパノールを含有するバット中に浸漬することによって洗浄した。それぞれ10分間の持続時間を有する2つの洗浄サイクルを実行した。次に、加圧空気を用いて型をさらに清浄化した。
【0118】
その後、清浄化された型をUV後硬化ユニットに入れて、完全な凝固が達成されることを確実にした。この工程では、9.000フラッシュを有するNK-Optik G171を使用した。型の機械的強度及び熱安定性をさらに高めるために、130℃で30分間の熱後硬化を行った。
【0119】
3.3 物品の射出成形
射出成形品は、A.B.プラスチックインジェクターAB-200、半自動テーブルトッププラスチック射出機を用いて製造した。射出工程中に型を支持するために、溶解可能な型の外側形状に対応する内側形状を有するキャビティを含む射出成形工具を使用した。成形品は熱可塑性ポリプロピレン製であり、ポリプロピレンを有する射出機バレルを245℃に加熱し、射出時間を3秒に設定し、射出圧力を65psi(0.4MPaに相当)に設定した。
【0120】
3.4積層製造された犠牲型の溶解
溶解可能な型を、その容量の3/4まで1M水酸化ナトリウムで満たされた密閉蓋を有する500mlジャーに浸漬することによって、成形品から除去した。次に、ジャーを50℃に加熱し、その温度で24時間保持した。型の溶解が完了した後、成形品を1M水酸化ナトリウムで残渣を除去し、続いてイソプロパノールに浸漬し、最後に乾燥させた。

図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
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図5
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図7
図8
図9