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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】折り返しアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/42 20060101AFI20220712BHJP
   H01Q 9/36 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H01Q9/42
H01Q9/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020043599
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021145265
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】土屋 和彦
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-041736(JP,A)
【文献】特開2003-008331(JP,A)
【文献】特開2002-223114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/42
H01Q 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体の基材と、前記誘電体の基材の一方の面に配置されたグランドと、を有する基板と、
前記基板に対して垂直方向に折り曲げられた折り曲げ部と、前記折り曲げ部から前記基板に対して平行な方向の内側に更に折り曲げられ、前記誘電体の基材を介して前記グランドと容量結合された折り返し部と、を有するアンテナエレメントと、を備え、
前記アンテナエレメントは、一端側に給電部と第1折り曲げ部を有した第1素子と、一端側に前記第1素子の他端側と第1折り返し部を介して連設され、他端側に前記折り曲げ部を介して前記折り返し部を有した第2素子と、を備え、
前記第1素子は、前記一端側に給電部と前記第1折り曲げ部とを有しており、
前記第1折り曲げ部は、前記基板に対して垂直方向に折り曲げられ、前記給電部は、前記第1折り曲げ部から内側にL字状に折り曲げられて、前記基板のストリップラインの一端側にハンダ付け等により電気的に接続され、
前記第2素子は、前記一端側に前記第1素子の前記他端側と前記第1折り返し部を介して連設され、
前記折り曲げ部の高さ寸法を変えずに前記折り返し部の幅寸法を可変させてその面積を調節することでインピーダンスの調整を行うようにした折り返しアンテナ。
【請求項2】
前記折り返し部は、前記第2折り返し部であり、
前記折り曲げ部は、前記第2折り曲げ部であり、
前記第2折り曲げ部の高さ寸法を変えずに前記第2折り返し部の幅寸法を可変させてその面積を調節することでインピーダンスの調整を行うようにした、請求項1に記載の折り返しアンテナ。
【請求項3】
前記グランドは、前記誘電体の基材の一方の面の全面に形成された銅箔である、請求項1又は2に記載の折り返しアンテナ。
【請求項4】
前記折り返し部は、前記折り曲げ部から内側にL字状に折り曲げられた矩形板状であり、
前記矩形板状の折り返し部は、前記誘電体の基材の他方の面に形成された固定用パターンにハンダ付けにて固定されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の折り返しアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で低背な折り返しアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の折り返しアンテナとして、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に記載された折り返しアンテナは、導電性の地板(グランド)に立設された立上素子と、折曲部で給電され、第1素子と接続素子と折り返し素子を経て先端が立上素子に接続されたアンテナエレメントと、を備えている。
【0003】
そして、地板からアンテナエレメントの各素子までの高さ寸法を変更(調節)することで、インピーダンスの調整を行っている。さらに、折り返しアンテナの垂直偏波/水平面(地板と平行面)での利得を最大限大きくするために、上記高さ寸法は最大限高くしておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-17034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の折り返しアンテナでは、アンテナのもう一つの特性であるインピーダンスの調整をする際、再度高さを変更してインピーダンス性能を担保させるが、この時利得特性が低下する可能性があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、アンテナの利得を高く保った状態で、インピーダンスを調整でき、かつ、入力インピーダンスを安定させることができる小型で低背な折り返しアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る折り返しアンテナは、誘電体の基材と、前記誘電体の基材の一方の面に配置されたグランドと、を有する基板と、前記基板に対して垂直方向に折り曲げられた折り曲げ部と、前記折り曲げ部から前記基板に対して平行な方向の内側に更に折り曲げられ、前記誘電体の基材を介して前記グランドと容量結合された折り返し部と、を有するアンテナエレメントと、を備え、前記アンテナエレメントは、一端側に給電部と第1折り曲げ部を有した第1素子と、一端側に前記第1素子の他端側と第1折り返し部を介して連設され、他端側に前記折り曲げ部を介して前記折り返し部を有した第2素子と、を備え、前記第1素子は、前記一端側に給電部と前記第1折り曲げ部とを有しており、前記第1折り曲げ部は、前記基板に対して垂直方向に折り曲げられ、前記給電部は、前記第1折り曲げ部から内側にL字状に折り曲げられて、前記基板のストリップラインの一端側にハンダ付け等により電気的に接続され、前記第2素子は、前記一端側に前記第1素子の前記他端側と前記第1折り返し部を介して連設され、前記折り曲げ部の高さ寸法を変えずに前記折り返し部の幅寸法を可変させてその面積を調節することでインピーダンスの調整を行うようにしたものである。
【0008】
記折り返し部は、前記第2折り返し部であり、前記折り曲げ部は、前記第2折り曲げ部であり、前記第2折り曲げ部の高さ寸法を変えずに前記第2折り返し部の幅寸法を可変させてその面積を調節することでインピーダンスの調整を行うようにすることが好ましい。
【0009】
前記グランドは、前記誘電体の基材の一方の面の全面に形成された銅箔であることが好ましい。
【0010】
前記折り返し部は、前記折り曲げ部から内側にL字状に折り曲げられた矩形板状であり、前記矩形板状の折り返し部は、前記誘電体の基材の他方の面に形成された固定用パターンにハンダ付けにて固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンテナの利得を高く保った状態で、インピーダンスを調整でき、かつ、入力インピーダンスを安定させることができる小型で低背な折り返しアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る折り返しアンテナの一例を示す斜視図である。
図2】上記折り返しアンテナのアンテナユニットの斜視図である。
図3】上記アンテナユニットのアンテナエレメントの斜視図である。
図4】上記アンテナユニットを裏側から見た斜視図である。
図5】上記アンテナユニットの要部の側面図である。
図6図5中X部分の拡大断面図である。
図7】上記折り返しアンテナの電圧定在波比の周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る折り返しアンテナについて詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る折り返しアンテナの一例を示す斜視図である。図2は折り返しアンテナのアンテナユニットの斜視図である。図3はアンテナユニットのアンテナエレメントの斜視図である。図4はアンテナユニットを裏側から見た斜視図である。図5はアンテナユニットの要部の側面図である。図6図5中X部分の拡大断面図である。
【0015】
図1図2に示すように、折り返しアンテナ1は、1つの基板10と一対のアンテナエレメント20,20とを備えたアンテナユニット2を下面側が開口した箱形の上蓋3と矩形板状の下蓋4との間に収容されることで構成されている。すなわち、折り返しアンテナ1は、2本のアンテナとなる左右対称に形成された一対のアンテナエレメント20,20を有している。そして、この一対のアンテナエレメント20,20には、一対の同軸ケーブル(ケーブル)30,30を介してそれぞれ給電されるようになっている。
【0016】
図4図6に示すように、基板10は、誘電体の基材11と、誘電体の基材11の裏面(一方の面)11bの全面に形成され、グランドとして作用する銅箔12と、を有する。また、図2に示すように、誘電体の基材11の表面(他方の面)11aの片側の中央には、各同軸ケーブル30より供給された電力が流れるU字状のストリップライン13が一対形成されている。さらに、誘電体の基材11の表面11aの片側の両サイドには、後述する第2折り返し部27をハンダ付けにて固定する固定用パターン14が一対形成されている。尚、基板10には、丸孔15が一対形成されている。
【0017】
図2図3に示すように、各アンテナエレメント20は、矩形状の金属板を折り曲げ成形してなる第1素子21と第2素子25とを備えていて、折り返しアンテナ1として作用し所望周波数の電波を放射するものである。
【0018】
図2図3に示すように、第1素子21は、一端21a側に給電部22と第1折り曲げ部23とを有している。この第1折り曲げ部23は、基板10に対して垂直方向に折り曲げられている。また、給電部22は、第1折り曲げ部23から内側にL字状に折り曲げられていて、基板10のU字状のストリップライン13の一端13a側にハンダ付け等により電気的に接続されている。
【0019】
図2図3図5に示すように、第2素子25は、一端25a側に第1素子21の他端21b側と第1折り返し部24を介して連設され、他端25b側に第2折り曲げ部(折り曲げ部)26を介して折り曲げられた第2折り返し部(折り返し部)27を有している。第2折り曲げ部26は、基板10に対して垂直方向に折り曲げられている。また、第2折り返し部27は、第2折り曲げ部26から基板10に対して平行な方向に更に折り曲げられ、誘電体の基材11を介して銅箔(グランド)12と容量結合されている。すなわち、第2折り返し部27は、第2折り曲げ部26から内側にL字状に折り曲げられた矩形板状に形成されている。そして、第2折り曲げ部26の高さ寸法Hを変えずに、第2折り返し部27の幅寸法Rを可変させてその面積を調節することで、インピーダンスの調整を行うことが可能になっている。
【0020】
各アンテナエレメント20は、第2素子25の第2折り返し部27が誘電体の基材11を介して銅箔(グランド)12と容量結合するように、誘電体の基材11の表面11aに配置される。この容量結合は、第2折り返し部27を誘電体の基材11の表面11aに形成された固定用パターン14にハンダ付けすることによって実現される。これにより、基板10を折り返しアンテナ1のグランドとして利用することが可能となる。すなわち、基板10に対して第2折り返し部27の位置が固定できないと、アンテナ特性に影響を与えるため、第2折り返し部27は、誘電体の基材11の表面11aに形成された固定用パターン14にハンダ付けにて固定されている。
【0021】
また、固定用パターン14も第2折り返し部27と同様に誘電体の基材11の裏面11bの銅箔(グランド)12と容量結合されていて、アンテナ特性に影響を与えるため、それを踏まえた設計(固定用パターン14の面積や位置等)を行う必要がある。ここでは、例えば、固定用パターン14をT字形状等に形成して、第2折り返し部27に接触する固定用パターン14の面積や位置を可変させている。
【0022】
図7は折り返しアンテナ1の電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)の周波数特性を示すグラフである。ここでは、各アンテナエレメント20の第2素子25の第2折り曲げ部26の高さ寸法Hを変えずに、第2折り返し部27の幅寸法Rを7.0mm、12.8mm、18.6mmと変化させてその面積を調節した場合のそれぞれについて、VSWR特性を測定した。この測定結果より、幅寸法Rが12.8mmで最も共振している(Qが高い、つまり、電気が通りやすい)ことが確認できる。
【0023】
図5に示すように、各同軸ケーブル30は、その断面の内側から外側に向かって順に、内側導体31、絶縁体32、外側導体33、外皮34を備えて構成されている。そして、図2に示すように、内側導体31は、基板10のU字状のストリップライン13の他端13b側にハンダ付け等により電気的に接続されている。
【0024】
以上実施形態の折り返しアンテナ1によれば、アンテナ利得が高くなるアンテナエレメント20の高さを変えることなく、アンテナエレメント20と基板10の容量結合状態をコントロールすることで、折り返しアンテナ1のインピーダンス特性を調整できる。具体的には、第2素子25の第2折り曲げ部26の高さ寸法Hを変えずに、第2折り返し部27の幅寸法Rを7.0mm、12.8mm、18.6mmと変化させてその面積を調節することで、折り返しアンテナ1のインピーダンス特性を調整することができる。
【0025】
このように、第2素子25の第2折り曲げ部26の高さ寸法Hを変えずに、第2折り返し部27の幅寸法Rを変化させてその面積を調節することで、小型で低背な折り返しアンテナ1の垂直偏波/水平面での利得を極力大きくすることができる。すなわち、折り返しアンテナ1の利得を高く保った状態で、インピーダンスを調整でき、かつ、入力インピーダンスを安定させることができる。
【0026】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0027】
すなわち、前記実施形態によれば、第2素子の第2折り返し部を矩形板状に形成したが、この第2折り返し部の形状は、矩形板状に限らず、三角板状やT字板状等の各種の形状でも良い。
【0028】
また、前記実施形態によれば、第2素子の第2折り返し部を第2折り曲げ部から内側にL字状に折り曲げ形成したが、第2折り返し部を第2折り曲げ部から外側の逆向きにL字状に折り曲げ形成しても良い。
【0029】
さらに、前記実施形態によれば、第2素子の第2折り返し部と基板とをハンダ付けにて固定したが、第2折り返し部と基板とを接着剤等により固定しても良い。
【0030】
さらに、前記実施形態によれば、アンテナエレメントを2つ備えたが、アンテナエレメントは1つでも3つ以上でも良い。
【符号の説明】
【0031】
1 折り返しアンテナ
10 基板
11 誘電体の基材
11a 表面(他方の面)
11b 裏面(一方の面)
12 銅箔(グランド)
13 ストリップライン
13a 一端
14 固定用パターン
20 アンテナエレメント
21 第1素子
21a 一端
21b 他端
22 給電部
23 第1折り曲げ部
24 第1折り返し部
25 第2素子
25a 一端
25b 他端
26 第2折り曲げ部(折り曲げ部)
27 第2折り返し部(折り返し部)
H 折り曲げ部の高さ寸法
R 折り返し部の幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7