(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】抗分解及び抗疲労効力を有する化合物及び前記化合物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 211/54 20060101AFI20220712BHJP
C10M 133/12 20060101ALI20220712BHJP
C10L 1/223 20060101ALI20220712BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220712BHJP
C10N 30/10 20060101ALN20220712BHJP
【FI】
C07C211/54 CSP
C10M133/12
C10L1/223
B60C1/00 B
B60C1/00 Z
C10N30:10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020136768
(22)【出願日】2020-08-13
(62)【分割の表示】P 2018532369の分割
【原出願日】2016-12-12
【審査請求日】2020-08-24
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】マシュー アレン ブーン
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド エル.フィールズ,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】フレドリック イグナッツ-フーバー
【審査官】東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-221857(JP,A)
【文献】特開2015-221856(JP,A)
【文献】特開昭54-155245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】
(上式中、Rは置換又は非置換アリーレンであり、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、
アルキル及び水素からなる群より各々選ばれ、
R
1
、R
2
、R
3
及びR
4
は、アルキル及び水素からなる群より各々選ばれる)により表される化合物。
【請求項2】
N,N'-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)。
【請求項3】
N,N'-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)。
【請求項4】
N,N'-(1,4-フェニレンビス(エタン-1,1-ジイル))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)。
【請求項5】
N,N'-(1,3-フェニレンビス(エタン-1,1-ジイル))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)。
【請求項6】
請求項1記載の化合物の混合物であって、各前記化合物は下記式:
【化2】
(上式中、X
1
, X
2
, X
3
及びX
4
はCH
3
及びH からなる群より各々選ばれる)により表される、混合物。
【請求項7】
請求項1記載の化合物及び前記化合物のためのキャリアを含む、抗分解剤組成物。
【請求項8】
潤滑剤及び請求項1記載の化合物を含む、潤滑剤組成物。
【請求項9】
エラストマー及び請求項1記載の化合物を含む、加硫性エラストマー配合物。
【請求項10】
前記化合物は100部のエラストマー当たりに0.1~20.0部の量で存在する、請求項9記載の配合物。
【請求項11】
前記化合物は100部のエラストマー当たりに0.1~5.0部の量で存在する、請求項9記載の配合物。
【請求項12】
請求項9記載の加硫性エラストマー配合物を含む、加硫エラストマー物品。
【請求項13】
前記加硫エラストマー物品は乗物タイヤである、請求項12記載の加硫エラストマー物品。
【請求項14】
当該構成要素がサイドウォールである、請求項13記載の乗物タイヤ。
【請求項15】
可燃性燃料及び請求項1記載の化合物を含む、可燃性燃料組成物。
【請求項16】
燃料添加剤及び請求項1記載の化合物を含む、燃料添加剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年12月22日に出願された「抗分解及び抗疲労効力を有する化合物及び前記化合物を含む組成物」という発明の名称の米国仮特許出願第62/270,909号の優先権を主張するものであり、その全体の開示を参照により本明細書中に取り込む。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、抗分解及び抗疲労効力を有する化合物であって、加硫ゴム物品、加硫性エラストマー配合物、潤滑剤、燃料、燃料添加剤及びかかる効力を必要とする他の組成物のための添加剤として有用であり、又は、そのような効力を付与するための組成物としてそれ自体が有用である組成物中の添加剤として有用である化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
プラスチック、エラストマー、潤滑剤、化粧品、石油製品(例えば、液圧作動液、油、自動車及び航空機用途の燃料及び油/燃料添加剤など)などの多くの材料は、光、熱、酸素、オゾン、反復的な機械動作などへの長期間の暴露時に分解する傾向がある。従って、抗分解効力を示す化合物及び組成物は当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第8,987,515号明細書は、特に潤滑剤組成物における酸化分解を抑制するのに有用な芳香族ポリアミンを開示している。米国特許出願公開第2014/0316163号明細書は、多くの市販の油及び潤滑剤中で改善された溶解度が示されている抗酸化性巨大分子を開示している。
【0004】
エラストマー、プラスチックなどから形成される物品の製造に有用な抗分解剤は、達成が困難でありうる非常に特異的な品質の組み合わせを要求する。抗分解剤は、商業的に許容可能な効力を明らかに有していなければならないが、特に、光、酸素及びオゾンなどの環境要因による分解が主に生じる物品の露出表面において、物品の使用に関連する長期間にわたる効力も示さなければならない。表面露出構成要素の保護と同様に重要なこととして、複合材料の埋め込まれた構成要素を酸化老化及び反復機械作用の影響から保護する効力は極めて重要である。抗分解剤は、最終製品において他の添加剤の効力又は望ましい特性に悪影響を及ぼさずに、これらの結果を達成しなければならない。さらに、物品が使用中に酸化により又はオゾン暴露により老化した後の機械疲労寿命を提供又は改善する抗分解剤は、物品の有用な機械可使寿命を本質的に改善するので価値が高い。その結果、使用中の繰り返しの機械撓み、伸長又は圧縮を受けるエラストマー物品は、このような発見から非常に利益を得るであろう。
【0005】
天然ゴム、特にタイヤなどの汎用エラストマーから形成される物品は、特に酸素及びオゾンの両方からの分解を受ける傾向がある。米国特許第2,905,654号明細書で議論されているように、酸素による分解によるゴムへの影響は、オゾンからの分解による影響とは異なる。しかしながら、両方の影響は、タイヤの性能、外観及び寿命に有害であることができる。疲労及び亀裂伝播は、特に、スチールベルトのエッジ領域及びタイヤのサイドウォールで特に問題であり、それらは、膨張し、部分的に膨張した屈曲した状態で、タイヤの可使寿命にわたって有意な応力及び伸張力を受ける。米国特許第8,833,417号明細書は、すぐ下で論じる公知の抗酸化剤に比べて、疲労及び亀裂伝播に対する長期耐久性を増加させるものと言われる抗酸化剤系を記載している。
【0006】
抗分解効力を有する材料はタイヤ用途に使用するための当該技術分野において周知であり、市販されている。例えば、イーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company)からSantoflex(登録商標)の商標で販売されているものなどのN,N'-二置換-パラフェニレンジアミンは、一般に、この目的のために多くのタイヤ製造業者から選好されている。政府規制、市場ニーズ及び顧客の期待が、燃料効率を高め、天然資源原料を保全するように、ゴム産業を軽量タイヤに仕向けているので、(i)疲労、亀裂伝播及び様々な分解機構に対する多くの効力、(ii)特により低濃度での効力の増大、及び、(iii)現在の市販材料と比較したときの有効期間の延長を示す、改善された抗分解剤の継続的な要求がなおも存在する。
【発明の概要】
【0007】
発明の要旨
第一の態様において、本発明は下記式により表される化合物に関する。
【化1】
上式中、Rは(i) 両端を含めてC=0~12である置換又は非置換アルキル、(ii)置換又は非置換アリール、及び、(iii)置換及び非置換アルキルアリールからなる群より選ばれ、
X
1, X
2, X
3 及びX
4 はアルキル、アリール、アルキルアリール基及び水素からなる群より各々選ばれ、R
1, R
2, R
3及びR
4 はアルキル、アリール、アルキルアリール基及び水素からなる群より各々選ばれ、そしてR
2 及びR
3 は場合により、ポリメチレン基により橋掛けされていてよく、RにおいてC=0である場合には、組み合わされた基R
1 R
2 は組み合わされた基R
3 R
4 と同一であり、そしてRにおいてC=1である場合には、R
1, R
2, R
3及びR
4 の各々は水素である。
【0008】
第二の態様において、本発明は下記式により表される化合物を含む組成物に関する。
【化2】
上式中、Rは(i) 両端を含めてC=0~12である置換又は非置換アルキル、(ii)置換又は非置換アリール、及び、(iii)置換及び非置換アルキルアリールからなる群より選ばれ、
X
1, X
2, X
3 及びX
4 はアルキル、アリール、アルキルアリール基及び水素からなる群より各々選ばれ、R
1, R
2, R
3及びR
4 はアルキル、アリール、アルキルアリール基及び水素からなる群より各々選ばれ、そしてR
2 及びR
3 は場合により、ポリメチレン基により橋掛けされていてよく、RにおいてC=0である場合には、組み合わされた基R
1 R
2 は組み合わされた基R
3 R
4 と同一であり、そしてRにおいてC=1である場合には、R
1, R
2, R
3及びR
4 の各々は水素である。
【0009】
さらなる態様において、本発明は本発明の化合物を含む抗分解剤組成物に関する。
【0010】
別の態様において、本発明は本発明の化合物を含む潤滑剤組成物に関する。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は本発明の化合物を含む加硫性エラストマー配合物に関する。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は本発明の加硫性エラストマー配合物から形成された少なくとも1つの構成要素を含む加硫エラストマーゴム物品に関する。
【0013】
本発明の化合物は、驚くべきことに、抗分解及び抗疲労剤効力を示し、したがって、様々な用途において、亀裂伝播、分解及びその多くの兆候に対する耐性を付与するのに特に有用である。本発明の化合物は、加硫ゴム物品を形成するための加硫性エラストマー配合物中の成分、特に乗物タイヤ及びその構成要素中の成分として利用されるときに、酸化分解、オゾン分解、及び、疲労及び亀裂伝播に対する耐性の特に望ましくかつ驚くべき組み合わせ効力を示し、それは先行技術の材料によってこれまでに達成された組み合わせよりも優れている。さらなる利点及び応用可能な分野は、本明細書で提供される記載から明らかになるであろう。記載及び特定の実施例は、例示のみを目的としており、本発明の主旨及び範囲を限定することが意図されないことは理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本明細書で使用されるときに、以下の用語又は語句は以下のとおりに定義される。
【0015】
「抗分解剤」は、それが添加又は適用された組成物、配合物又は物品の分解(例えば、熱、光、酸化及び/又はオゾン化によって引き起こされる)又はその兆候を抑制する材料を指す。
【0016】
「抗疲労剤」は、それが添加又は適用された組成物、配合物又は物品の耐屈曲疲労性を、組成物、配合物又は物品が熱、酸化、オゾン及び機械分解力を受ける使用期間の後に改善する材料を指す。
【0017】
「抗酸化剤」は、それが添加又は適用された組成物、配合物又は物品の酸化分解を抑制する材料を指す。
【0018】
「抗オゾン化剤」は、それが添加又は適用された組成物、配合物又は物品のオゾン暴露分解を抑制する材料を指す。
【0019】
「エラストマー」は、加硫(又は架橋)後に、室温で低応力下にその元の長さの少なくとも2倍に延伸することができ、そして応力の即時解放時に、ほぼ元の長さに力とともに戻る任意のポリマーを意味し、制限するわけではないが、ゴムを含む。
【0020】
「加硫性エラストマー配合物」は、エラストマーを含み、そして加硫条件下に置かれたときに加硫することができる組成物を意味する。
【0021】
第一の態様において、本発明は下記式により表される化合物に関する。
【化3】
上式中、Rは(i) 両端を含めてC=0~12である置換又は非置換アルキル、(ii)置換又は非置換アリール、及び、(iii)置換及び非置換アルキルアリールからなる群より選ばれ、
X
1, X
2, X
3 及びX
4 はアルキル、アリール、アルキルアリール基及び水素からなる群より各々選ばれ、R
1, R
2, R
3及びR
4 はアルキル、アリール、アルキルアリール基及び水素からなる群より各々選ばれ、そしてR
2 及びR
3 は場合により、ポリメチレン基により橋掛けされていてよく、RにおいてC=0である場合には、組み合わされた基R
1 R
2 は組み合わされた基R
3 R
4 と同一であり、そしてRにおいてC=1である場合には、R
1, R
2, R
3及びR
4 の各々は水素である。
【0022】
本発明の化合物の非制限的な例としては、N,N'-(エタン-1,2-ジイル)ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン); N,N'-(ブタン-2,3-ジイル)ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン); N,N'-(オクタン-1,8-ジイル)ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン); N,N'-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン); N,N'-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン); N,N’-(1,4-フェニレンビス(エタン-1,1-ジイル))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)及びN,N’-(1,3-フェニレンビス(エタン-1,1-ジイル))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)が挙げられる。これらは概略的に下記のとおりに表され、各々、製造方法を記載する、対応する下記の実施例に関連する。
【化4】
【0023】
本発明の化合物は、均一系又は不均一系触媒を用いて、水素自己転化手順によって、ポリアルコール出発材料から調製されうる(例えば、機構の一般説明についてはGuillenaら Chem. Rev. 2010, 110, 1611を参照されたい)。注目の化合物はまた、水素の存在下に不均一系遷移金属触媒を用いて、ポリカルボニル出発材料から調製されうる。
【0024】
本発明の化合物のための前駆体、本発明の化合物及びその製造方法を下記の実施例により示す。該実施例は本発明の主旨及び範囲を決して限定することが意図されない。
例1:前駆体(N,N',N,N')-N,N'-(エタン-1,2-ジイリデン)ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化5】
【0025】
オーバーヘッドスターラを備えた1L3つ口丸底フラスコにおいて、4-ADPA (127 g, 689 mmol)をEtOH (200プルーフ、363 mL)中で溶解した。別個のビーカーにおいて、グリオキサール(水中40%、50 g、345 mmol)をEtOH:水(1:1,100 mL)混合物に添加した。次いで、グリオキサール溶液を滴下して反応混合物に50分間にわたって添加した。添加の間に赤色固形分が形成し始めた。混合物をさらに20分間撹拌し、その後、水(150 mL)をすべて一度に添加し、暗赤色固形分をさらに沈殿させた。スラリーを一晩撹拌した。ろ過により固形分を回収しそしてさらなる水により洗浄した後に、赤色固形分を50° C真空炉(窒素スィープあり)に一晩入れた(131.57 g, 98%収率)。 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 8.49 (bs, 2H), 8.47 (s, 2H), 7.38 (m, 4H), 7.31-7.28 (m, 4H), 7.16-7.11 (m, 8H), 6.92-6.89 (m, 2H)。
【0026】
例2: N,N'-(エタン-1,2-ジイル)ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化6】
【0027】
DIBAL-H (122 g、トルエン中25 wt. %) を、THF (102 mL)を含有する1L丸底フラスコ中にゆっくりとカニューレで導入した。その後、ジイミン1 (20.0 g, 50.2 mmol)を周囲温度で注意深く添加した。添加が完了した後に、混合物を60°Cに加熱し、19.25時間反応させた。次いで、反応物を、氷水浴を用いて約5~10°Cに冷却し、その時点で、反応混合物がゲルを形成するまで、NaK 酒石酸塩の飽和溶液を滴下して加えた。その時点で、250 mLのNaK酒石酸塩溶液を素早く添加し、次いで、500 mLのEtOAcを添加した。二相混合物を激しく一晩撹拌した。次いで、混合物を1-L 分液漏斗に移し、その後、層は分離した。有機相をNa
2SO
4で乾燥した。次いで、混合物をシリカゲルの短プラグを通してろ過し、そしてケークを少量のEtOAc及びTHFで濯いだ。生成物を淡褐色粉末として分離した(17.3 g, 86%収率)。ICP分析: 86 ppmアルミニウム。Tm = 167.09°C。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 7.50 (bs, 2H), 7.10 (m, 4H), 6.91 (m, 4H), 6.79 (m, 4H), 6.62-6.58 (m, 6H), 5.35 (bs, 2H), 3.21 (m, 4H)。
例3: 前駆体(N,N')-N,N'-(ブタン-2,3-ジイリデン)ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化7】
【0028】
オーバーヘッドスターラを備えた1L3-つ口丸底フラスコにおいて、4-ADPA (128 g, 689 mmol)をEtOH (200プルーフ、375 mL)中に溶解した。ビアセチル(30.0 g, 348 mmol)を20分間にわたって均圧添加漏斗を介して滴下して加えた。13時間後に、ヘプタン(375 mL)を約50 mL部分ずつ40分間にわたって添加した(ヘプタンのゆっくりとした添加は凝集を低減するのを助けた)。混合物を15分間激しく撹拌し、次いでろ過した。固形分をさらなるヘプタンで洗浄し、次いで、窒素スィープを行いながら50°C真空炉中で乾燥した(67.45 g, 46%収率)。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.13 (bs, 2H), 7.24 (m, 4H), 7.12 (m, 4H), 7.06 (m, 4H), 6.82-6.79 (m, 6H) 2.17 (s, 6H)。
例4: N,N'-(ブタン-2,3-ジイル)ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化8】
【0029】
1L丸底フラスコ中でLiAlH
4 (7.40 g, 1995 mmol)を注意深くTHF (162 mL)に添加した。ジイミン3 (20.4 g, 48.7 mmol)を注意深く溶液に添加した。添加が完了した後に、反応物を4時間還流した。この後、混合物を氷水浴を用いて冷却し、その後、水(25 mL)を滴下して加え、次いで、15% NaOH (50 mL)を滴下して加えることにより注意深くクエンチした。さらに150 mLの水を混合物に添加し、次いで、一晩撹拌した。ろ過の後に、褐色液体をロータリーエバポレータを用いて減圧下に濃縮した。得られた褐色固形分をヘプタンで洗浄し、次いで、窒素スィープを行いながら45°C真空炉中で乾燥した(16.5 g, 80%収率)。 (
1H NMR はメソ化合物及び対応する異性体の混合物を示した)。 Tm = 175.02°C。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.24 (m, 4H), 7.00 (m, 4H), 6.85-6.75 (m, 6H), 6.70-6.55 (m, 4H), 5.40 (bs, 2H), 3.75-3.50 (m, 4H), 1.25 (m, 6H)。
例5: N,N'-(オクタン-1,8-ジイル)ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化9】
【0030】
オクタン-1,8-ジオール(10.0 g, 68.4 mmol)、4-ADPA (25.2 g, 137 mmol)及びRuCl2(PPh3)3 (3.28 g, 3.42 mmol)を、テフロンスクリューキャップを備えた250 mL 厚壁丸底フラスコに移した。マグネティック撹拌棒を追加した。フラスコをシールし、次いで、135°Cに加熱した。この温度で2.5時間後に、反応物を次いで周囲温度に冷却した。得られた単斜晶系青色固形分をTHF (150 mL)中に溶解した。次いで、溶液をシリカゲルのプラグを通してろ過し、ヘプタン:EtOAc (1:1)で濯いだ。揮発物を減圧下にストリップした。固形分をある量のトルエンで濯ぎ、50°C真空炉内で窒素スィープを行いながら乾燥した。固形分のXRF分析は1,000 ppmのルテニウム汚染を表した。シリカプラグ及び活性炭を通した複数回の通過の後に、化合物5 を淡灰色固形分として分離した(1.81 g, 2.65%収率)。 XRF分析= 95 ppm ルテニウム。Tm = 129.13°C。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.46 (bs, 2H), 7.09 (m, 4H), 6.88 (m, 4H), 6.77 (m, 4H), 6.60 (m, 2H), 6.53 (m, 4H), 5.23 (at, J = 5.5 Hz, 2H), 2.97 (m, 4H), 1.56 (m, 4H), 1.43-1.28 (m, 8H)。
例6: 前駆体(N,N,N,N)-N,N'-(1,4-フェニレンビス(メタニリリデン))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化10】
【0031】
テレフタルアルデヒド(10.0 g, 74.6 mmol)、4-ADPA (32.9 g, 178 mmol)及びp-TSA (709 mg, 3.73 mmol)を、マグネティック撹拌棒及び熱電対を備えた500 mL3つ口丸底フラスコに移した。トルエン(298 mL)を添加した。凝縮器を備えたディーンスタークをフラスコに配置し、そして混合物を加熱還流した。10時間後に、約3 mLの水を回収した。混合物を周囲温度に冷却した。得られた緑色固形分をろ過し、次いで、ある量のトルエンで濯ぎ、次いで、ヘプタンで濯いだ。50°C真空炉内で窒素スィープを行いながら乾燥した後に化合物6 を結晶性緑色固形分として分離した(34.8 g, 定量的)。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.74 (s, 2H), 8.35 (bs, 2H), 8.03 (s, 4H), 7.35 (m, 4H), 7.27 (m, 4H), 7.13 (m, 8H), 6.87 (m, 2H)。
例7: N,N'-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化11】
【0032】
DIBAL-H (101 g, トルエン中25 wt.%)を、THF (86 mL)を含む1L丸底フラスコ中にゆっくりとカニューレで導入した。次いで、ジイミン6 (20.0 g, 42.9 mmol)を周囲温度で注意深く添加した。添加が完了した後に、混合物を60°Cに加熱し、そして19時間反応させた(3時間の反応時間の後に、追加のDIBAL-H (20.0 g, トルエン中25 wt. %)を添加した)。次いで、反応物を、氷水浴を用いて約5~10°Cに冷却し、その時点で、NaK酒石酸塩の飽和溶液を、反応混合物がゲル生じるまで滴下して添加した。その時点で、275 mLのNaK酒石酸塩溶液を素早く添加し、次いで、500 mLのEtOAcを添加した。二相混合物を一晩激しく撹拌した。次いで、混合物を1-L分液漏斗に移し、次いで、層を分離した。次いで、有機物(幾らかの懸濁固形分とともに)を10% NaOH (250 mL)で洗浄した。合わされた水性成分をEtOAc (400 mL)で抽出した。有機物を合わせ、そして水(200 mL)で洗浄した。有機物をNa
2SO
4で乾燥した。次いで、混合物をろ過し、そして揮発分を減圧下に除去した。固形分を10% NaOH (125 mL)で洗浄し、次いで、水で洗浄した。次いで、固形分を、撹拌棒を備えたフラスコに入れ、そしてさらなる水とともに激しく撹拌した。ろ過の後に、次いで、固形分をヘプタン(200 mL)中で激しく撹拌した。固形分をろ過し、そして幾らかの追加のヘプタンで洗浄した。淡灰色固形分を45°C真空炉内で窒素スィープを行いながら入れた(17.45 gの単離生成物)。 ICP分析: 397 ppmアルミニウム。固形分をEtOAc:THF (1:1)中で再溶解した。混合物をシリカゲルの短プラグを通して通過させた。プラグを追加のEtOAc:THFで濯いだ。次いで、揮発分を減圧下に除去した。フラスコからの取り出しを補助するためにヘプタンを用いて固形分をろ過により回収した。真空炉内での一晩の乾燥後に(15.2 g, 75%収率)、固形分をICPを用いて再分析した。ICP分析: 13 ppm アルミニウム。Tm = 165.34°C。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 7.47 (bs, 2H), 7.33 (s, 4H), 7.08 (m, 4H), 6.85 (m, 4H), 6.79 (m, 4H), 6.77 (m, 4H), 6.59 (m, 2H), 6.55 (m, 4H), 5.91 (at, J = 5.0 Hz, 2H), 4.21 (d, J = 6.0 Hz, 4H)。
例8: 前駆体(N,N')-N,N'-(1,3-フェニレンビス(メタニリリデン))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化12】
【0033】
イソフタルアルデヒド(10.0 g, 74.6 mmol)、4-ADPA (27.5 g, 149 mmol)及びp-TSA (709 mg, 3.73 mmol)を、マグネティック撹拌棒及び熱電対を備えた500 mL3つ口丸底フラスコに移した。トルエン(149 mL)を添加した。凝縮器を備えたディーンスタークをフラスコに配置し、そして混合物を加熱還流した(加熱の間に緑色固形分が沈殿したが、さらなる加熱時に再溶解した)。2時間後に、約3 mLの水を回収した。混合物を周囲温度に冷却した。ヘプタン(300 mL)をフラスコに添加し、そして内容物をさらに45分間撹拌した。固形分をろ過により回収し、その後、NaHCO
3の飽和溶液、EtOH、水、次いで、最終EtOH洗浄液で洗浄した。乾燥後に、固形分をトルエン(400 mL)で研和し、次いで、再びろ過した。得られた残留物をある量のEtOAcで濯いだ。ろ液を減圧下に濃縮し、黄色固形分が現れ、それを50°C真空炉内で窒素スィープを行いながら乾燥した(24.7 g, 70.9% 収率)。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.77 (s, 2H), 8.47 (t, J = 1.7 Hz, 1H), 8.32 (s, 2H), 8.02 (dd, J = 1.6, 7.6 Hz, 2H), 7.64 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.34 (m, 4H), 7.27 (m, 4H), 7.13 (m, 8H), 6.86 (m, 2H)。
例9: N,N'-(1,3-フェニレンビス(メチレン))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化13】
【0034】
DIBAL-H (98.0 g, トルエン中25 wt.%)を、THF (106 mL)を含む1L丸底フラスコ中にゆっくりとカニューレで導入した。次いで、ジイミン8 (24.7 g, 52.8 mmol)を周囲温度で注意深く添加した。添加が完了した後に、混合物を60°Cに加熱し、そして17.5時間反応させた。次いで、反応物を氷水浴を用いて約5~10°Cに冷却し、その時点で、NaK酒石酸塩の飽和溶液を、反応混合物がゲルを形成するまで滴下して加えた。その時点で、650 mLのNaK酒石酸塩溶液を素早く添加し、次いで、500 mLのEtOAcを添加した。二相混合物を一晩激しく撹拌した。次いで、混合物を1-L分液漏斗に移し、次いで、層を分離させた。有機物をNa
2SO
4で乾燥した。次いで、混合物をシリカゲルの短プラグを通してろ過し、そしてケークを少量のEtOAc及びTHFで濯いだ。生成物を淡褐色粉末として単離した(21.5 g, 86%収率)。 Tm = 103.92°C。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 7.47 (bs, 2H), 7.41 (t, J = 1.6 Hz, 1H), 7.27 (m, 4H), 7.08 (m, 4H), 6.87 (m, 4H), 6.78 (m, 4H), 6.62-6.56 (m, 6H), 5.92 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 4.22 (d, J = 6.0 Hz, 4H)。
例10: 前駆体(N,N',N,N')-N,N'-(1,4-フェニレンビス(エタン-1-イル-1-イリデン))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化14】
【0035】
1,4-ジアセチルベンゼン(50.0 g, 310 mmol)、4-ADPA (128 g, 690 mmol)及びp-TSA (4.37 g, 23.1 mmol)を、オーバーヘッドスターラ及び熱電対を備えた3L4つ口丸底フラスコに移した。トルエン(750 mL)を添加した。凝縮器を備えたディーンスタークをフラスコに配置し、そして混合物を加熱還流した(緑色固形分は加熱の間に沈殿したが、さらなる加熱時に再溶解した)。7時間後に、約10 mLの水を回収した。混合物を周囲温度に冷却した。固形分をろ過により回収し、その後、NaHCO
3の飽和溶液、水、次いでEtOHで洗浄した。50°C真空炉内で窒素スィープを行いながら乾燥した後に、生成物を緑色結晶性固形分として分離した(139.1 g, 91%収率)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.08 (bs, 6H), 7.23 (m, 4H), 7.12 (m, 4H), 7.06 (m, 4H), 6.80 (m, 6H), 2.33 (s, 6H)。
例11: N,N’-(1,4-フェニレンビス(エタン-1,1-ジイル))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化15】
【0036】
DIBAL-H (134 g, トルエン中25 wt.%)を1L丸底フラスコ中にゆっくりとカニューレで導入した。次いで、THF (81 mL)をゆっくりと添加した。次いで、ジイミン10 (20.0 g, 40.4 mmol)を周囲温度で注意深く添加した。添加が完了した後に、混合物を60°Cに加熱し、そして25時間反応させた。次いで、反応物を氷水浴を用いて約5~10°Cに冷却し、その時点で、NaK酒石酸塩の飽和溶液を、反応混合物がゲルを形成するまで滴下して加えた。その時点で、500 mLのNaK酒石酸塩溶液を素早く添加し、次いで、500 mLのEtOAcを添加した。二相混合物を一晩激しく撹拌した。次いで、混合物を1-L分液漏斗に移し、次いで、層を分離させた。有機物を10% NaOH溶液(110 mL)で洗浄し、次いで、水(200 mL x 2)で洗浄した。有機物をNa
2SO
4で乾燥した。次いで、混合物をろ過した。固形分をヘプタン(約250 mL)中に懸濁させ、そして激しく撹拌した。固形分をろ過により回収し、次いで、50° C真空炉内で窒素スィープを行いながら乾燥した。生成物を褐色粉末としてとして分離した(17.8 g, 88%収率)。 ICP分析: 11 ppmのアルミニウム。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 7.41 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 7.32 (bs, 4H), 7.06 (m, 4H), 6.80 (m, 4H), 6.74 (m, 4H), 6.58 (m, 2H), 6.48 (m, 4H), 5.81 (m, 2H), 4.39 (m, 2H), 1.39 (d, J = 6.5 Hz, 6H)。
例12: 前駆体(N,N',N,N')-N,N'-(1,3-フェニレンビス(エタン-1-イル-1-イリデン))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【化16】
【0037】
1,3-ジアセチルベンゼン(30.0 g, 185 mmol)、4-ADPA (77.0 g, 184 mmol)及びp-TSA (2.62 g, 13.9 mmol)を、オーバーヘッドスターラ及び熱電対を備えた3-L4つ口丸底フラスコに移した。トルエン(450 mL)を添加した。凝縮器を備えたディーンスタークをフラスコに配置し、そして混合物を加熱還流した。8時間後に、約6.1 mLの水を回収した。混合物を周囲温度に冷却した。固形分をろ過により回収し、その後、NaHCO
3の飽和溶液、水、次いで、EtOHで洗浄した。50°C真空炉内で窒素スィープを行いながら乾燥し、化合物12を緑色結晶性固形分として分離した(41.0 g, 45%収率)。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.59 (m, 2H), 8.10 (dd, J = 1.8, 7.8 Hz, 2H), 8.07 (bs, 2H), 7.12 (m, 4H), 7.59 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.22 (m, 4H), 7.12 (m, 4H), 7.05 (m, 4H), 6.79 (m, 6H), 2.34 (s, 6H)。
例13: N,N'-(1,3-フェニレンビス(エタン-1,1-ジイル))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)
【化17】
【0038】
DIBAL-H (99.0 g, トルエン中25 wt.%)を、氷水浴を用いて冷却されたTHF (99.0 mL)を含む1L丸底フラスコ中にゆっくりとカニューレで導入した。次いで、ジイミン12 (24.5 g, 49.4 mmol)を周囲温度で注意深く添加した。添加が完了した後に、混合物を60°C に加熱し、そして17.5時間反応させた。次いで、反応物を氷水浴を用いて約5~10°Cに冷却し、その時点で、NaK酒石酸塩飽和溶液を、反応混合物がゲルを形成するまで滴下して加えた。その時点で、300 mLのNaK酒石酸塩溶液を素早く添加し、次いで、300 mLのEtOAcを添加した。二相混合物を一晩激しく撹拌した。次いで、混合物を1-L分液漏斗に移し、次いで、層を分離させた。水性層をさらなるEtOAc (250 mL)で抽出した。有機物を合わせ、そしてNa2SO4で乾燥した。ろ過後に、揮発物を減圧下に除去した。次いで、固形分を50°C真空炉内で窒素スィープを行いながら乾燥した。生成物を褐色粉末として分離した(18.7 g, 76%収率)。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 7.41 (m, 2H), 7.37 (bs, 1H), 7.21 (m, 3H), 7.05 (m, 4H), 6.79 (m, 4H), 6.73 (m, 4H), 6.58 (m, 2H), 6.48 (m, 4H), 5.80 (m, 2H), 1.39 (at, J = 6.5 Hz, 6H)。
例14: N-フェニル-N-(1-(4-(1-((4-(フェニルアミノ)フェニル)アミノ)エチル)フェニル)エチル)ベンゼン-1,4-ジアミンのN-メチル化混合物
【化18】
【0039】
化合物11のメチル化誘導体も本発明の範囲に入る有効な抗分解剤であることを確認するための試験の一部として、化合物11 (51.2 g, 103 mmol)を、オーバーヘッドスターラを備えた1L2つ口丸底フラスコ中に入れ、次いで、アセトン中に溶解した(0.50 M, 206 mL)。硫酸ジメチル(26.0 g, 206 mmol)を一度に混合物に添加した。NaOH (10.34 g, 258 mmol)をH2O (10.6 g)中の溶解し、次いで、一度にすべて添加した。反応物を24時間撹拌し、そして揮発物を減圧下に除去した。褐色残留物をEtOAc (250 mL)及びH2O (250 mL)に吸収させた。層を分離させた。水性成分をさらなるEtOAc (100 mL)で抽出した。有機物を合わせそしてMgSO4で乾燥した。ろ過後に、揮発物を減圧下に除去し、生成物を淡褐色固形分として生じた(回収された50.3 g)。 1H NMRは各化合物が「14」として上記式により表される本発明の化合物の混合物を示した。
【0040】
本発明の化合物はまた、ポリカルボニル出発材料から触媒還元アルキル化法によって、不均一系触媒を水素の存在下に用いて合成されうる。この方法の例を下記に示す。
例15: N,N’-(1,4-フェニレンビス(エタン-1,1-ジイル))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【0041】
6.8 gの4-アミノジフェニルアミン(4-ADPA)、3.0 gの1,4-ジアセチルベンゼン、75 mlの無水エタノール、0.6 gの硫化3% Pt/C触媒及び1 gの1% リン酸の混合物を300 mlパーオートクレーブに装填した。系を、100 psigに加圧しそして解放することにより窒素で3回パージした。窒素パージの後に、系を150Cに加熱し、次いで、加圧し、そして水素で400 psigに維持し、その際、1800 rpmの撹拌速度で撹拌した。系を120分間反応させ、そのとき、さらなる水素消費は検知されなかった。
【0042】
オートクレーブを室温に冷却し、そして重い白色固形分を含む混合物を分析した。HPLC-MS分析は4-ADPAの完全な転化を示した。白色固形分は同分析により、所望の生成物のN,N’-(1,4-フェニレンビス(エタン-1,1-ジイル))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)であることを示した。
例16: N,N'-(1,3-フェニレンビス(エタン-1,1-ジイル))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)の調製
【0043】
6.8 gの4-アミノジフェニルアミン(4-ADPA)、3.0 gの1,3-ジアセチルベンゼン、75 mlの無水エタノール、0.6 gの硫化3% Pt/C触媒及び1 gの1% リン酸の混合物を300 mlパーオートクレーブに装填した。系を、100 psigに加圧しそして解放することにより窒素で3回パージした。窒素パージの後に、系を150Cに加熱し、次いで、加圧し、そして水素で400 psigに維持し、その際、1800 rpmの撹拌速度で撹拌した。系を120分間反応させ、そのとき、さらなる水素消費は検知されなかった。
【0044】
オートクレーブを室温に冷却し、そして淡褐色溶液を分析した。溶液のHPLC-MS 分析は主要生成物として所望の生成物N,N'-(1,3-フェニレンビス(エタン-1,1-ジイル))ビス(N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン)を、そして1,3-ジアセチルベンゼンに対して4-ADPA わずか1分子を付加することより生じる少量の副生成物を示した。
【0045】
本発明の化合物の複数の効力を示すために、酸化分解防止、オゾン分解防止及び疲労及び亀裂防止を測定するための分析手順を実施した。抗酸化剤効力を示すために、選択された実施例の酸化誘導時間(OIT)を評価した。示差走査熱量測定(DSC)において行われる手順によりOITを測定し、そしてOITは材料の熱酸化性能を予測するために当業者により使用される。この手順において、サンプルはサンプルセルに保持されそして事前に選定した温度(本出願では150°C)に窒素雰囲気下に加熱される。次いで、酸素をサンプルセルに導入し、そしてDSC トレースにおける吸熱プロセスの開始により理解されるとおりの、分解開始の前の時間長さを測定する。Eastman Chemical Companyから商標名Santoflex(登録商標)で市販されているゴムのための抗分解添加剤として知られている[N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン (6PPD)及びN-(1,4-ジメチルペンチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン (7PPD)もOITの対照として試験した。結果を下記の表に示す。
【表1】
【0046】
上記データにより示されるとおり、本発明の化合物は6PPD及び7PPDによく匹敵する驚くほど優れた抗酸化剤性能を示し、そして燃料、潤滑剤、タイヤ及び高度に活性の抗酸化剤化合物から利益を得ることができる他の用途における有用性を示す。
【0047】
抗オゾン化効力を実証するために、本発明の化合物の選択例を含む液体ニトリルゴムの薄膜オゾン分解を変性赤外スペクトル技術を用いて行った。ニトリル基はオゾン分解反応の程度をモニタリングするための便利な内部基準として作用する2237 cm-1 での非摂動赤外線吸光度を有するので、液体ニトリルゴムをオゾン分解研究のための基材として選択した。反応の程度を2237 cm-1での基準ピークに対する1725 cm-1でのカルボニル吸光ピークの比の増加により追跡した。
【0048】
この分析のためのサンプルを調製するために、液体ニトリルゴム(1312LV, Zeon Chemicals L.P., Louisville, KY)をTHF中に溶解し、10%溶液を作った。下記の表2中にサンプルに関して、例2及び11において形成された抗分解剤を各々別の量の液体ニトリルゴム溶液に加え、それにより、サンプルは各々、ニトリルゴムの質量を基準として1質量%の濃度の抗分解剤を含んだ。600マイクロリットルの各々の抗分解剤含有組成物をZnSe水平減衰総反射クリスタルトラフプレート(HATR)上に配置し、そして窒素流下に乾燥して、試験用の各組成物の薄膜を形成した。市販の6PPD抗分解剤を用いた対照サンプルも(i) ニトリルゴムの質量を基準として1質量%の量の6PPDを含む液体ニトリル10%溶液中に6PPD抗分解剤を含む組成物を形成すること、及び、(ii) 上記のとおりの対照組成物の薄膜を形成することにより形成した。
【0049】
各薄膜サンプルは、次いで、A2Z Ozone Inc. (Louisville, KY) モデルMP-1000オゾン発生器を用いてオゾンを発生するShel LabモデルCE5F炉 (Shel Lab, Cornelius, OR.)中で40°Cにて熱的に平衡した状態のポリスチレンチャンバー中のオゾン分解に付した。オゾン分解反応をオゾン濃度約5 ppmで100分間進行させた。赤外スペクトルをPerkin-Elmer Spectrum-2分光光度計を用いて記録した。6PPDに対するオゾン反応の程度を6PPDについての1725 cm
-1/2237 cm
-1 吸光度の比により割った試験材料についての1725 cm
-1/2237 cm
-1 吸光度比として決定した。
【表2】
【0050】
上記のデータにより示されるように、本発明の抗分解剤は6PPDと比較したときに、100分後のオゾン分解の相対程度を約60%だけ低減した。それゆえ、本発明の化合物は現在市販の抗分解剤よりも優れた、驚くほど優れた抗オゾン化剤性能を実証することを示し、そして高度に活性の抗オゾン性化合物から利益を得ることができる用途において有用性を示す。
【0051】
上記のように、ゴムコンパウンドの耐疲労性の改良は使用時のゴムコンパウンド(例えば、タイヤゴムコンパウンド)の性能を劇的に改良することができる。従って、本発明の加硫性エラストマー配合物から形成された加硫物品の製造に使用される場合の抗疲労剤としての本発明の化合物の効力を下記の方法に従って決定した。
【0052】
試験サンプルの作成の予備工程として、以下の表3に示す組成物の抗分解剤マスターバッチを調製し、2つの項目は、抗分解剤としての本発明の化合物(具体的には、上記例2及び11の化合物)を含み、1つの対照項目は従来の6PPD抗分解剤を含み、そして第二の対照は4,4 ',4 "-トリス(1,3-ジメチルブチルアミノ)トリフェニルアミン(米国特許第8,833,417号明細書に記載の化合物IV-a)を抗分解剤として含んだ。マスターバッチは、25rpmのローター速度に設定された4翼H型ローターを備えたKobelco Inc. 1.6Lバンバリースタイルミキサーを使用して調製した。DeltaTherm Delta TシステムモデルAB431S温度コントローラーを使用してミキサー温度を80℃に制御した。表3に示される割合の材料重量は混合チャンバ体積の74%を満たすように決定された。カーボンブラック、ZnO、ステアリン酸、抗分解剤及び1/3のゴムをミキサーに添加し、ラムをミキサーを閉止するように設定し、ラムが閉鎖位置にあるときに混合時間の開始をとった。 30秒の混合の後に、ラムを持ち上げ、1/3のゴムを加え、再びラムを閉止に設定した。ラムを閉じた後に、さらに30秒間の混合の後に、最後の1/3のゴムを加え、ラムを閉止した。ローター速度を65rpmに調整し、ミキサー熱電対センサーが170℃になるまで成分を混合した。これらの工程に必要な合計時間は約5分であった。放電直後に測定した組成物の温度は約170℃であった。
【0053】
マスターバッチ調製物を一晩放置し、次いで、カーボンブラックが十分に確実に分散されるように翌日に再度ミキサーに通した。この「再混錬」工程を、ミキサーの制御を80℃に設定し、ローター速度を65rpmに設定して、同じ1.6Lミキサーで行った。最初の通過混合物をミキサーに加え、ラムを閉止した。熱電対センサーが157℃になるまで混合を続けた。再混錬工程に必要な合計時間は約3分と3/4分であった。放出直後に測定した組成物の温度は約160℃であった。
【表3】
【0054】
本発明の加硫性エラストマー配合物の試験サンプル(ならびに対照加硫性エラストマー配合物)を形成するために、従来の加硫剤(ポリマー硫黄)及び従来の加硫促進剤、N,N'-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド(DCBS )を、下記の表4に示す濃度で、表3に示す予備形成された抗分解剤含有ゴムマスターバッチのそれぞれにブレンドした。
【表4】
【0055】
同一の1.6L実験用ミキサーを用いて混合を行い、温度コントローラーを80℃に設定し、ローター速度を35rpmに設定した。組成物をミキサーに装填し、ラムを閉止に設定した。ラムを閉止した後に、バッチをさらに3分間混合した。最後の混合工程に必要な合計時間は約3分と3/4分であった。放出直後に測定された加硫性エラストマー配合物の温度は約95℃であった。
【0056】
試験のための加硫エラストマー物品サンプルを形成するために、加硫性エラストマー配合物を2ロールミルで2~3ミリメートルの厚さにシート化した。ASTM D4482-11に従って、シートを切断し、プレスし、モールド内で140℃で60分間加硫して、各配合物から6つの試験サンプルを形成した。次いで、加硫物品を77℃及び相対湿度40%で25日間老化させた。老化後に、サンプルをASTM D4482-11に準拠して100%歪みで試験した。相対老化疲労性能は、本発明の6つのサンプルの平均の6-PPD含有材料の6つの対照サンプルの平均に対する比として以下の表5に報告されている。
【表5】
【0057】
上記のデータによって示されるように、本発明の加硫性エラストマー配合物から形成された物品は、驚くほど優れた耐疲労及び亀裂伝播性を示し、これは従来の6PPD抗分解剤を用いて形成された物品よりも著しく良好である。したがって、本発明の化合物は、非常に望ましいレベルの抗疲労耐性を付与し、したがって効果的な抗疲労剤である。
【0058】
上記で簡潔に参照される別の態様において、本発明は、上記のとおりの本発明の少なくとも1種の化合物を含む組成物に関する。組成物中に含まれる本発明の化合物の具体的な量は、組成物の意図する用途に応じて広範囲に変わりうる。本発明の組成物は、所望の抗分解効力を達成するのに必要な各々個々の化合物の濃度がより低くなるように、本発明の1種以上の化合物を含むことができることは、当業者に理解されるであろう。さらに、低減された量の本発明の化合物が全体の所望の抗分解効力を達成するために必要とされるように、他の既知の抗分解添加剤を組成物に含めることができる。
【0059】
上記で詳細に例示した1つの実施形態において、本発明の組成物は加硫性エラストマー配合物である。本発明の加硫性エラストマー配合物は、少なくとも1種のエラストマー及び本発明の化合物を含む。好ましくは、本発明の化合物は、加硫性エラストマー配合物中に、エラストマー100部当たり0.1~20.0部、好ましくは0.1~5.0部の量で存在する。
【0060】
加硫性エラストマー配合物中のエラストマーは、当業者に公知の任意の加硫性不飽和炭化水素エラストマーであることができる。これらのエラストマーには、限定するわけではないが、天然ゴム又は任意の合成ゴム、例えば、ジエン含有エラストマー、例えば、ブタジエン、イソプレン、又は、スチレンとブタジエン、又は、スチレンとイソプレン、又は、スチレンとブタジエンとイソプレンとの組み合わせから形成されるポリマー、又は、エチレン、プロピレン及びジエンモノマー、例えばエチリデン、ノルボルナジエン又は1,5-ヘキサジエンから形成されるポリマーを挙げることができる。加硫性エラストマー配合物は、場合により、加工/流れ助剤、増量剤、可塑剤、樹脂、接着促進剤、結合剤、緩衝剤、充填剤、顔料、活性化剤、予備加硫剤、酸抑制剤、促進剤、脂肪酸、酸化亜鉛、又は、加硫性エラストマー配合物又はそれから形成される加硫エラストマー物品の特性をさらに向上させ、及び/又は、性能を向上させるための他の配合成分又は添加剤などのゴム加工に従来から使用されている他の添加剤を含むこともできる。好適な促進剤としては、限定するわけではないが、グアニジン、チアゾール、スルフェンアミド、スルフェンイミド、ジチオカルバメート、キサンテート、チウラム及びそれらの組み合わせ又は混合物を挙げることができる。
【0061】
本発明の加硫性エラストマー配合物は、ゴムベルト及びホース、風防ワイパーブレード、乗物タイヤ及びトレッド、ショルダー、サイドウォール及びインナーライナーなどのその構成要素などの加硫エラストマー物品の製造に有用である。従って、別の態様において、本発明は、本発明の加硫性エラストマー配合物から形成された少なくとも1つの構成要素を有する加硫エラストマー物品に関する。1つの特定の実施形態において、加硫エラストマー物品は乗物タイヤであり、タイヤ構成要素はサイドウォールである。
【0062】
本発明の前述の態様は、加硫エラストマー物品製造に関連する組成物の分野に主に焦点を当てた用途を記載したが、本発明の化合物はまた、抗酸化性及び/又は抗オゾン性効力が望まれる他の用途のための組成物にも有用であることができる。従って、また、上記のように、本発明は一般的な態様において、本発明の化合物を含む組成物に関する。1つの実施形態において、組成物は、組成物、配合物又はそれを添加し又は適用した物品の分解の防止の有用性及び効力を有する抗分解性組成物である。したがって、本発明の抗分解性組成物は、本発明の化合物及び場合によりその化合物のためのキャリアを含む。適切なキャリアは、化合物に対して実質的に不活性であり、ワックス、油又はカーボンブラック又はシリカなどの固形分を含む。
【0063】
別の実施形態において、本発明の組成物は別個の主要な有用性又は機能性(例えば、コーティング、潤滑剤、油、燃料添加剤又は燃料組成物など)を有し、機能的成分及び本発明の化合物を成分として含む。機能性成分は、典型的には、炭化水素などの分解性材料であるが、他の分解性材料も含むことができる。したがって、この実施形態は、例えば、機能性成分としての潤滑剤及び本発明の化合物を含む潤滑剤組成物を包含する。この実施形態は、機能性成分として可燃性燃料及び本発明の化合物を含む可燃性燃料組成物をさらに包含する。この実施形態は、機能性成分としての燃料添加剤及び本発明の化合物を含む燃料添加剤組成物をさらに包含する。
【0064】
当業者は、本明細書に記載される測定値は、様々な異なる試験方法によって得ることができる標準的な測定値であることを認識するであろう。記載された試験方法は、必要な測定値の各々を得るための1つの利用可能な方法を表すのみである。
【0065】
本発明の様々な実施形態の前述の説明は、例示及び説明のために提示されたものである。それは網羅的であること、又は、開示された厳密な実施形態に本発明を限定することを意図するものではない。上記の教示に照らして多くの変更又は変形が可能である。議論された実施形態は、当業者が様々な実施形態において本発明を利用することを可能にするために、本発明の原理及びその実際的な応用の最良の説明を提供するために、考えられる特定の用途に適する様々な変更とともに選択され、記載される。すべてのそのような変更及び変形は、それらが公正に、法的に、公平に権利を与えられる範囲に従って解釈されるときに、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内にある。