(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】牽引部材を含む相互交差トラック付きアウトソールを具備するゴルフ靴
(51)【国際特許分類】
A43B 5/00 20220101AFI20220712BHJP
A43B 13/22 20060101ALI20220712BHJP
A43B 1/14 20060101ALI20220712BHJP
A43C 15/16 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
A43B5/00 303
A43B13/22 A
A43B1/14
A43C15/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020137277
(22)【出願日】2020-08-17
【審査請求日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023593
【氏名又は名称】アクシュネット カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【氏名又は名称】山田 英治
(72)【発明者】
【氏名】ジャン=マリー ビダール
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エフ. スウィガート
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0021977(US,A1)
【文献】米国特許第05987783(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0084862(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0326908(US,A1)
【文献】特表平02-503527(JP,A)
【文献】米国特許第07886460(US,B2)
【文献】米国特許第04494320(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0107258(US,A1)
【文献】特開2007-135827(JP,A)
【文献】特開平08-214910(JP,A)
【文献】特公昭61-038681(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00-23/30
A43C 1/00-19/00
A43D 1/00-999/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーと、
アウトソールと、
上記アッパーおよび上記アウトソールに結合されるミッドソールとを有し、
上記アッパー、上記ミッドソール、および上記アウトソールの各々は、前方足部領域、中央足部領域、および後方足部領域、ならびに、外側サイドおよび内側サイドを有し、
上記ミッドソールは、(i)第1の材料から形成された上側領域、および(ii)第2の材料から形成された下側領域を有し、上記第2の材料のショアC硬度は上記第1の材料のショアC硬度より大きく、
上記アウトソールは、第1組の牽引部材を含むトラック(A)および第2組の牽引部材を含むトラック(B)を有し、トラック(A)は上記前方足部領域の上記内側サイドの周辺から上記中央足部領域を通り抜けて上記後方足部領域の上記外側サイドの周辺に延び、トラック(B)は上記前方足部領域の上記外側サイドの周辺から上記中央足部領域を通り抜けて上記後方足部領域の上記内側サイドの周辺に延びて、上記中央足部領域において相互に交差
し、
トラック(A)は、外側エッジおよび内側エッジを具備し、トラック(B)は外側エッジおよび内側エッジを具備し、トラック(A)およびトラック(B)の一方が他方の上を横切るようになすことを特徴とするゴルフ靴。
【請求項2】
上記ミッドソールの上記上側領域を形成するために使用される上記第1の材料は約40から約75ショアCの範囲の硬度を有し、上記ミッドソールの上記下側領域を形成するために使用される上記第2の材料は約45から約80ショアCの範囲の硬度を有する請求項1記載のゴルフ靴。
【請求項3】
第1のエチレンビニルアセテート発泡性組成物が上記ミッドソールの上記上側領域を形成するために使用され、第2のエチレンビニルアセテート発泡性組成物が上記ミッドソールの上記下側領域を形成するために使用される請求項1記載のゴルフ靴。
【請求項4】
第1のポリウレタン発泡性組成物が上記ミッドソールの上記上側領域を形成するために使用され、第2のポリウレタン発泡性組成物が上記ミッドソールの上記下側領域を形成するために使用される請求項1記載のゴルフ靴。
【請求項5】
トラックAの上記牽引部材が複数の第1の牽引部材ベースから外側に突出し、上記第1の牽引部材ベースはトラックAに結ばれ、トラックBの上記牽引部材が複数の第2の牽引部材ベースから外側に突出し、上記第1の牽引部材ベースはトラックAに結ばれる請求項1記載のゴルフ靴。
【請求項6】
トラックAおよびBの上記牽引部材は、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択される材料から形成される請求項5記載のゴルフ靴。
【請求項7】
トラックAの上記牽引部材の少なくとも一部、および、トラックBの上記牽引部材の少なくとも一部は、環状、長方形、三角形、正方形、球形、楕円形、星形、ひし形、ピラミッド、矢印、円錐、ブレード、およびロッドの形状、ならびに、それらの組み合わせからなるグループから選択された形状を有する、請求項1記載のゴルフ靴。
【請求項8】
トラックAの上記牽引部材およびトラックBの上記牽引部材は同一の形状を有する請求項7記載のゴルフ靴。
【請求項9】
トラックAの上記牽引部材およびトラックBの上記牽引部材は異なる形状を有する請求項7記載のゴルフ靴。
【請求項10】
上記アウトソールは、第1および第2の組の安定性牽引隆起をさらに含み、上記牽引隆起は、トラックAとトラックBの間の中央領域に配置され、上記第1の組の牽引隆起は、前方足部領域に位置付けられ、上記第2の組の牽引隆起は、後方足部領域に位置付けられる請求項1記載のゴルフ靴。
【請求項11】
アッパーと、
アウトソールと、
上記アッパーおよび上記アウトソールに結合されるミッドソールとを有し、
上記アッパー、上記ミッドソール、および上記アウトソールの各々は、前方足部領域、中央足部領域、および後方足部領域、ならびに、外側サイドおよび内側サイドを有し、
上記ミッドソールは、(i)第1の材料から形成された上側領域、(ii)第2の材料から形成された下側領域、および、(iii)上記上側および下側領域の間に配置された繊維強化複合材料プレートを有し、上記第2の材料のショアC硬度は上記第1の材料のショアC硬度より大きく、
上記アウトソールは、第1組の牽引部材を含むトラック(A)および第2組の牽引部材を含むトラック(B)を有し、トラック(A)は上記前方足部領域の上記内側サイドの周辺から上記中央足部領域を通り抜けて上記後方足部領域の上記外側サイドの周辺に延び、トラック(B)は上記前方足部領域の上記外側サイドの周辺から上記中央足部領域を通り抜けて上記後方足部領域の上記内側サイドの周辺に延びて、上記中央足部領域において相互に交差
し、
トラック(A)は、外側エッジおよび内側エッジを具備し、トラック(B)は外側エッジおよび内側エッジを具備し、トラック(A)およびトラック(B)の一方が他方の上を横切るようになすことを特徴とするゴルフ靴。
【請求項12】
上記複合材料プレートは、当該複合材料プレートが、第1の端部を上記
ミッドソールの上記前方足部領域に有し、第2の端部を上記
ミッドソールの上記後方足部領域に有するように位置決めされ、上記複合材料プレートの上記第1の端部から上記前方足部領域への距離が、上記複合材料プレートの上記第2の端部から上記後方足部領域への距離より短い請求項11記載のゴルフ靴。
【請求項13】
上記
複合材料プレートはカーボンファイバを含む請求項11記載のゴルフ靴。
【請求項14】
上記ミッドソールの上記上側領域を形成するために使用される上記第1の材料は約40から約75ショアCの範囲の硬度を有し、上記ミッドソールの上記下側領域を形成するために使用される上記第2の材料は約45から約80ショアCの範囲の硬度を有する請求項11記載のゴルフ靴。
【請求項15】
第1のエチレンビニルアセテート発泡性組成物が上記ミッドソールの上記上側領域を形成するために使用され、第2のエチレンビニルアセテート発泡性組成物が上記ミッドソールの上記下側領域を形成するために使用される請求項11記載のゴルフ靴。
【請求項16】
第1のポリウレタン発泡性組成物が上記ミッドソールの上記上側領域を形成するために使用され、第2のポリウレタン発泡性組成物が上記ミッドソールの上記下側領域を形成するために使用される請求項11記載のゴルフ靴。
【請求項17】
トラックAの上記牽引部材が複数の第1の牽引部材ベースから外側に突出し、上記第1の牽引部材ベースはトラックAに結ばれ、トラックBの上記牽引部材が複数の第2の牽引部材ベースから外側に突出し、上記第1の牽引部材ベースはトラックAに結ばれる請求項11記載のゴルフ靴。
【請求項18】
トラックAおよびBの上記牽引部材は、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択される材料から形成される請求項17記載のゴルフ靴。
【請求項19】
トラックAの上記牽引部材の少なくとも一部、および、トラックBの上記牽引部材の少なくとも一部は、環状、長方形、三角形、正方形、球形、楕円形、星形、ひし形、ピラミッド、矢印、円錐、ブレード、およびロッドの形状、ならびに、それらの組み合わせからなるグループから選択された形状を有する、請求項1記載のゴルフ靴。
【請求項20】
上記アウトソールは、第1および第2の組の安定性牽引隆起をさらに含み、上記牽引隆起は、トラックAとトラックBの間の中央領域に配置され、上記第1の組の牽引隆起は、前方足部領域に位置付けられ、上記第2の組の牽引隆起は、後方足部領域に位置付けられる請求項11記載のゴルフ靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全般的には、靴に関し、より詳細には、良好な柔軟性、安定性、および牽引力を有するゴルフ靴に関する。ミッドソールは、好ましくは、異なる特性を有する2つの発泡材料でできている。アウトソールは複数の牽引部材を含み、高い牽引力と地面接触を提供する幾何学的構造を持っている。
【背景技術】
【0002】
今日、プロおよびアマチュアのゴルファーの双方が特別に設計されたゴルフ靴を使用している。典型的には、ゴルフ靴は、アッパーをアウトソールに接続するミッドソールと共に、アッパー部分およびアウトソール部分を含む。アッパーは、ユーザーの足を挿入するための従来の形状で、靴の足を覆って保護する。アッパーは足の輪郭に快適にフィットするように設計されている。ミッドソールは比較的軽量で、靴にクッションを提供する。アウトソールは、ゴルファーに安定性と牽引力を提供するように設計されている。アウトソールの底面は、地面との接触および地面の貫通を通じて地面に係合するように設計されたスパイクまたはクリートを含んで良い。これらの要素は、ゴルファーが徒歩でコースをまわりプレーするときの安定性および牽引力を向上させるのに役立つ。
【0003】
しばしば、「スパイク」および「クリート」という用語は、ゴルフ業界で互換的に使用される。一部のゴルファーは、クリートが野球、サッカー、サッカーなどの他のスポーツに関連していることが多いため、「スパイク」という用語を好む。他のゴルファーは、スパイクは、より一般的にはトラックやサイクリングなどの芝生以外のスポーツに関連しているため、「クリート」という用語を使用することを好む。以下の説明では、「スパイク」という用語を便宜上使用する。ゴルフ靴のスパイクは、金属またはプラスチック材料で作ることができる。ただし、金属スパイクの1つの問題は、通常、細長く尖った部分が下向きに伸びており、パッティンググリーンの表面を突き破って穴が開いて他の損傷を引き起こす可能性があることです。これらの金属スパイクは、ゴルフコースの他のグラウンド、たとえば、クラブハウスのカーペットやフローリングにも損傷を与える可能性がある。今日、ほとんどのゴルフコースでは、ゴルファーが非金属スパイクを使用する必要がある。プラスチック製のスパイクは、通常、1つの面に中央のスタッドが付いた丸みを帯びたベースを具備している。丸みを帯びたベースのもう一方の面には、地面に接触するための牽引突起を備えた放射状のアームがある。以下でさらに説明するように、ねじ山が、靴のアウトソールのねじ付きレセプタクルに挿入するために、スパイクのスタッドの周りに設けられる。これらのプラスチック製スパイクは簡単に固定でき、後でアウトソールのロックレセプタクルから取り外すことができるため、グリーンやクラブハウスの床の表面への損傷が少なくなる傾向がある。
【0004】
スパイクがゴルフ靴上にある場合、それらは、好ましくは、アウトソールのレセプタクル(ソケット)に取り外し可能に固定される。レセプタクルは、アウトソールに取り付けられた成形ポッドに配置できる。成形ポッドは、靴にさらなる安定性とバランスを提供するのに役立つ。スパイクは、レセプタクルから簡単に挿入および取り外すことができる。通常、スパイクはレセプタクルに挿入し、時計回りに少しねじることで固定できる。スパイクは、反時計回りの方向に少しねじることによって、レセプタクルから取り外せる。
【0005】
近年、「スパイクレス」または「クリートレス」の靴がより一般的になっている。これらの靴のアウトソールには、ゴム製またはプラスチック製の牽引部材が含まれているけれども、スパイクやクリートは含まれていない。これらの牽引部材は、アウトソールの底面から突出して地面に接触する。
【0006】
ゴルファーがクラブをスイングして体重を移すとき、彼らの足は途方もない力を吸収する。たとえば、右利きのゴルファーがクラブスイングモーションを開始する前に最初に足を置くとき(つまり、ボールをアドレス指定しているとき)、体重は前方の足と後方の足の間で均等に分配される。ゴルファーがバックスイングを始めると、主に体重が後方の足に移動する。ダウンスイングの開始時に、後方の足にかなりの圧力がかかる。したがって、後方の足を駆動足と呼び、前方の足を安定足と呼ぶことができる。ゴルファーがスイングを続けてボールをドライブすると、その重量は駆動足から前方の(安定)足に移動する。スイングモーション中、後方の足と前方の足のピボット動作があるけれども、このピボットの動きは制御する必要がある。ショットをするとき、足が実質的に動いたり滑ったりしないことが重要である。ゴルフのショットサイクルでは、足の牽引力が重要である。靴が優れた安定性を提供することが重要である。ゴルファーは、スイング動作をしながらバランスを維持できるように、安定したプラットフォームを必要とする。ゴルフ靴の製造業者は、ゴルフ靴の安定性を改善するためのさまざまな方法を検討してきた。たとえば、製造業者は、牽引部材とスパイクをアウトソール全体のさまざまな場所に配置することを検討している。
【0007】
ゴルフ靴製造業者は、ゴルファーに牽引力と安定性を提供するために異なるスパイクを備えた靴を開発してきた。例えば、米国特許第6,161,315号(Dalton)は、前方足部セクション、シャンク・セクションおよびヒール・セクションを有するアウトソールを開示している。外表面に、前方足部とかかとの周囲に沿って安定性隆起(リッジ)が配置されている。'315特許によると、この外側の尾根はゴルファーのスイングに悪影響を与えることなく、ねじれ牽引力と安定性を提供する。隆起は、1つ以上のスパイクを含み得る。
【0008】
米国特許第8,082,686号(Campbell等)は、クッション支持および横方向の安定性を提供するクリート付き靴を開示している。靴は下部と上部を含む。下部には、プライマリミッドソール、クッション要素、およびアウトソールを含めることができる。クリートがアウトソールに結合されていた良い。少なくとも1つのクッションが、プライマリミッドソールとアウトソールの間に配置されて良い。
【0009】
米国特許第8,677,657号(Bacon等)は、その底面に成形された複数のポッド部分を備えたアウトソールを有するゴルフ靴を開示している。各ポッドセクションには、取り外し可能なクリート(スパイク)を保持するためのレセプタクルが含まれている。好ましくは、8つの別個のポッドセクションがある。ポッドセクションには、アウトソールの通常の輪郭を超えて広がるフレア状の外周がある。'657特許によると、スパイクと外側の外面を備えた、これらのポッドは、アウトソールの通常の輪郭からフレア加工されており、ゴルフスイング中の安定性とサポートを向上させる。
【0010】
米国特許第9,609,915号(Rushbrook等)は、フレックスゾーンによって分離されたアウトソール底面の領域間の相対移動を可能にするスパイクおよびフレックスゾーンを備えたアウトソールを開示している。'915特許によれば、このような相対的な動きは、スパイクとともに、ゴルファーに牽引力と安定性を提供するのに役立つ。
【0011】
しかしながら、いくつかの従来のゴルフ靴の1つの欠点は、これらの靴がゴルファーに良好な安定性と牽引力を提供するのに役立つかもしれないが、靴の柔軟性を損なうことがあることである。一部の従来のゴルフ靴は比較的硬い。硬いプラットフォームを提供するけれども、ゴルファーに必要な柔軟性を提供しない。以下でさらに説明するように、ゴルファーがクラブをスイングして自分の体重を足に移すとき、足には大きな力がかかる。ゴルファーがスイングを行うとき、靴はゴルファーに安定したプラットフォームを提供する必要があるけれども、足部もある程度曲がることができなければならない。ゴルファーがコースを歩いているとき、しゃがみ込んでパットを整列させるとき、また、その他のゴルフ動作のとき、靴の曲がりも重要である。
【0012】
したがって、高レベルの安定性と牽引力を提供でき、しかも高い柔軟性も提供できるゴルフ靴が必要とされている。ゴルフショットをしている間に体重が移動するとき、靴はゴルファーの足の内側と外側を保持してサポートする必要がある。靴は、安定性と牽引を提供するため、滑りがなく、これによって、ゴルファーはクラブをスイングするときにバランスを保つことができる。同時に、靴には優れた柔軟性も必要である。靴を履いたゴルファーは、歩きながらコースをプレーし、他のゴルフ活動に快適に参加できる必要がある。この発明は、ゴルファーに高い安定性および牽引力ならびに柔軟性を提供し、他の有利な特性および特徴を有する新しいゴルフ靴構造を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第6,161,315号明細書
【文献】米国特許第8,082,686号明細書
【文献】米国特許第8,677,657号明細書
【文献】米国特許第9,609,915号明細書
【発明の概要】
【0014】
この発明は、アッパーと、アウトソールと、上記アッパーおよび上記アウトソールに結合されるミッドソールとを有するゴルフ靴を実現する。上記アッパー、上記ミッドソール、および上記アウトソールの各々は、前方足部領域、中央足部領域、および後方足部領域、ならびに、外側サイドおよび内側サイドを具備する。具体的には、上記ミッドソールは、(i)第1の材料から形成された上側領域、(ii)第2の材料から形成された下側領域、および、(iii)上記上側および下側領域の間に配置された繊維強化複合材料板(複合板)を有し、上記第2の材料のショアC硬度は上記第1の材料のショアC硬度より大きい。
【0015】
複合板は、ミッドソールの前部領域から後部領域まで延びる。一実施例において、複合板は、ミッドソールの前方足部領域に第1の端部を有し、ミッドソールの後足領域に第2の端部を有するように配置され、複合板の第1の端部から前方足部領域までの距離は、複合板の2番目の端から後足領域までの距離より短い。一例において、グラファイトなどの炭素繊維が複合板の強化繊維として使用される。炭素繊維に加えて、または炭素繊維の代わりに、アラミド(例えば、Kevlar(商標))、アルミニウム、またはガラス繊維などの他の繊維を使用することができる。
【0016】
ミッドソールの下部領域を形成するために使用される第2の材料は、例えば、約45から約80ショアCの範囲の硬度を有することができる。ミッドソールの上部領域を形成するために使用される第1の材料は、例えば、約40から約75ショアCの範囲の硬度を有することができる。種々のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)発泡性組成物を使用して、ミッドソールの下部および上部領域を形成することができる。他の適切な材料には、ポリウレタン発泡性組成物が含まれる。
【0017】
アウトソールは、第1の組の牽引部材を含む第1のトラックAと、第2の組の牽引部材を含む第2のトラックBとを有し、トラックAは、前方足部の内側(medial)がわの周辺から中央足部領域を通って後方足部部領域の外側(lateral)がわの周辺まで延びる。他方、トラックBは、前方足部の外側がわの周辺から中央足部領域を通って後方足部領域の内側がわの周辺まで伸びており、トラックAとBは、中央足部領域において互いに交差するようになっている。トラックAおよびBは、例えば、EVAおよびポリウレタン発泡性組成物などの任意の適切な材料で形成することができる。
【0018】
トラックAの第1の組の牽引部材は、トラックAに固定された複数の第1の牽引部材ベースから外向きに突出することができる。トラックBの第2の組の牽引部材は、トラックBに固定された複数の第1の牽引部材ベースから外向きに突出することができる。それぞれの牽引部材ベースは、縫い付け、接着剤、または他の適切な固定手段によってトラックAおよびBに固定することができる。牽引部材および当該牽引部材のベースは、例えば、熱可塑性ポリウレタンなどの任意の適切な材料で作ることができる。牽引部材およびそれらのそれぞれのベースは、例えば、環状、長方形、三角形、正方形、球形、楕円形、星形、ひし形、ピラミッド形、矢印形、円錐形、刃状、および棒形などの様々な形状を有することができる。トラックAの牽引部材とトラックBの牽引部材は、同じ形状でも異なる形状でも良い。1つの好ましい実施例において、トラックAの牽引部材の少なくとも一部およびトラックBの牽引部材の少なくとも一部は円錐形を有する。
【0019】
1つの実施例において、アウトソールは、第1および第2の組の安定性牽引隆起(リッジ)をさらに含み、隆起は、トラックAとBとの間の中央領域に配置され、第1の組は前方足部領域に配置され、第2の組は後方足部領域に配置される。1つの実施例において、アウトソールは、一組の中央足部安定性牽引部品をさらに含み、第1の部品は、中央足部領域の外側に配置され、第2の部品は、中央足部領域の内側に配置される。第3の組の牽引部材は、第1の安定部品から外向きに突出し、第4の組の牽引部材は、第2の安定部品から外向きに突出する。牽引部材と安定部品は、熱可塑性ポリウレタンから作ることができる。
【0020】
この発明の靴は、多くの有利な特徴を有する。靴は安定性と牽引性に優れているため、滑りがなく、ゴルファーはクラブをスイングするときにバランスを保つことができる。同時に、靴は前方足部の柔軟性も優れている。ゴルファーは自然にそして自由にコースを歩いてプレーすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
この発明の特徴である新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかし、この発明の好ましい実施形態は、さらなる目的および付随する利点とともに、添付の図面と関連して以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解される。
【
図1】この発明のゴルフ靴の一例の斜視図であり、そのアッパー部分を詳細に示す。
【
図2】この発明のゴルフ靴の一例の底面図であり、アウトソール部分を詳細に示す。
【
図3】
図2の線A-A'に沿うゴルフ靴の断面図である。
【
図4】
図2の線B-B'沿うゴルフ靴の断面図である。
【
図5】
図2の線C-C'沿うゴルフ靴の断面図である。
【
図6】
図2の線D-D'に沿うゴルフ靴の断面図である。
【
図7】この発明のゴルフ靴のミッドソールおよびアウトソールの一例の分解図であり、ミッドソールおよびアウトソールの異なる構成要素を詳細に示す。
【
図8A】この発明のゴルフ靴の一例の側面図であり、人の歩行サイクルの第1段階中にアウトソールの後方部分が地面に当たることを示す。
【
図8B】
図8Aのゴルフ靴の側面図であり、人の歩行サイクルの第2段階中に地面と接触するアウトソールの後方部分および前方部分を示す。
【
図8C】
図8Aのゴルフ靴の側面図であり、人の歩行サイクルの第3段階中に人が足部を押し離すときに地面と接触するアウトソールの前部を示す。
【
図9】この発明のゴルフ靴のアウトソールの一例の概略図であり、縦軸Aに沿ったミッドソールのねじれおよび回転を示している。
【
図10A】この発明のゴルフ靴の一例を、フェアウェイなどのゴルフコースのほぼ水平な表面において着用しているゴルファーの模式図である。
【
図10B】ラフなどのゴルフコースの概して平坦でない表面上において従来技術のゴルフ靴の一例を着用しているゴルファーの模式図である。
【
図10D】ラフなどのゴルフコースの概して平坦でない表面上においてこの発明のゴルフ靴の一例を着ているゴルファーの模式図である。
【
図11】この発明のゴルフ靴の一例の底面図であり、牽引部材を詳細に示す、
【
図12】この発明のゴルフ靴のミッドソールおよびアウトソールの別の例の分解図であり、ミッドソールに配置された繊維強化複合板を示す。
【
図13】この発明のゴルフ靴の別の例の底面図であり、アウトソール部分を詳細に示す。
【
図14】
図13に示されたゴルフ靴の線A-A'に沿う断面図である。
【
図15】
図13に示されたゴルフ靴の線A-A'に沿う断面図である。
【
図16】
図13に示されたゴルフ靴の線C-C'に沿う断面図である。
【
図17】
図13に示されたゴルフ靴の線D-D'に沿う断面図である。
【
図18】この発明のゴルフ靴の一例の底面図であり、牽引部材を詳細に示す。
【
図19A】この発明の靴の一例の模式図であり、靴の第1の領域に配置された複合板を示す。
【
図19B】この発明の靴の一例の模式図であり、靴の第2の領域に配置された複合板を示す。
【
図19C】この発明の靴の一例の模式図であり、靴の第3の領域に配置された複合板を示す。
【
図19D】この発明の靴の一例の模式図であり、靴の第4の領域に配置された複合板を示す。
【
図20】所定領域の慣性モーメントをどのように計算できるかを示す長方形断面の概略図である。
【
図21】所定領域の慣性モーメントをどのように計算できるかを示すIビーム断面の概略図である。
【発明の詳細な説明】
【0022】
図において、同様の参照番号が同様の要素を示すために使用される。以下図を参照する。具体的に
図1を参照すると、この発明のゴルフ靴(10)の一実施形態が示されている。靴(10)は、アッパー部分(12)およびアウトソール部分(16)のほかに、アッパー(12)をアウトソール(16)に接続するミッドソール(14)を含む。ミッドソール(14)は、以下で詳しく説明するように、アッパー(12)とアウトソール(16)に結合されている。図に示されている見え方は、左右の靴の図のものであり、左右の靴、および、それぞれの靴のコンポーネントは、互いの鏡像であることが理解される。また、靴は様々なサイズで製造することができ、したがって、靴の構成要素のサイズは、靴のサイズに応じて調整することができることを理解されたい。
【0023】
アッパー(12)は、伝統的な形状を有し、例えば、天然皮革、合成皮革、不織布材料、天然繊維、および合成繊維などの標準的なアッパー材料から作られている。例えば、通気性メッシュ、およびナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、およびそれらの組み合わせから作られた合成繊維布を使用することができる。アッパーの構成に使用される材料は、通気性、耐久性、柔軟性、快適さなどの望ましい特性に基づいて選択される。一例では、アッパー(12)は、防水性を有する柔らかく通気性のある革材料でできている。アッパーの材料は、従来の製造方法を使用して、縫い合わされるか結合されてアッパー構造を形成する。
図1を参照すると、アッパー(12)は、一般に、足部を挿入するための開口部(20)を備えた甲領域(17)を含む。アッパー(12)は、好ましくは、快適性および適合性を増強するために、柔らかく成形された発泡性ヒールカラー(18)を含む。オプションのギルストリップ(31)がヒールカラーに巻き付けられている。アッパーには、足部の前部を覆うためのつま皮(19)が含まれている。甲領域は、舌部材(22)およびパワーハーネス(21)を含み、このパワーハーネス(21)はアッパーのクォーターセクション(23)を覆い、ヒール領域において甲皮(29)に連結される。パワーハーネス(21)は、足部の医療的な制御とサポートに役立つ。通常、靴ひも(24)は、足部の輪郭の周りで靴を締めるために使用される。ただし、ダイヤル、スプール、ハウジング、およびケーブルを所定の位置にロックするためのロック機構を含む金属ケーブル(レース)締め付けアセンブリなど、他の締め付けシステムを使用することもできる。そのようなレース締め付けアセンブリは、コロラド州デンバーのボアテクノロジー社から入手可能である。
図1に示される上述のアッパー(12)はこの発明の靴構造に使用できるアッパー設計の一例に過ぎず、他のアッパー設計も、この発明の精神および範囲から逸脱することなく使用することができることを理解されたい。
【0024】
ミッドソール(14)は比較的軽量であり、靴にクッション性を付与する。ミッドソール(14)は、例えば、発泡エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)または発泡ポリウレタン組成物などのミッドソール材料から作製することができる。1つの好ましい実施例において、ミッドソール(14)は、以下に説明するように、2つの異なる発泡材料を使用して構築される。
【0025】
図2~6を参照すると、ミッドソール(14)は一般に2つの領域、すなわち、(a)上部(内部)領域(28)、および、(b)下部(外部)領域(30)を含む。1つの好ましい実施例において、上部領域(28)は、比較的柔らかくて柔軟な材料でできている。例えば、上部領域(28)は、約40から約75ショアCの範囲の硬度を有する比較的柔らかい第1のEVA発泡性組成物から作製され得る。1つの具体的な例において、比較的柔らかい第1のEVA発泡性組成物は、約50から約70の範囲のショアC硬度を有する。1つの好ましい実施例において、比較的柔らかい第1のEVA発泡性組成物は、約55から約60ショアCの範囲の硬度を有する。他方、下部領域(30)は、好ましくは、第2のEVA発泡性組成物などの比較的硬い材料から製造される。一実施例において、EVAとスチレンブロック共重合体ゴム(「SI」、「SIS」、「SB」、「SBS」、「SIBS」、「SEBS」、「SEPS」などのようなもの。「S」はスチレン、「I」はイソブチレン、「E」はエチレン、「P」はプロピレン、「B」はブタジエン)のブレンドを使用して、比較的硬い第2のEVA発泡体組成物を形成することができる。下部領域(30)の硬度は、好ましくは、上部領域(28)の硬度よりも大きい。例えば、下部領域(30)は、約45から約80ショアCの範囲の硬度を有する比較的硬い第2のEVA発泡性組成物から製造されて良い。1つの具体的な例において、比較的硬い第2のEVA発泡性組成物は、約50から約75の範囲のショアC硬度を有する。1つの好ましい実施例において、比較的硬い第2のEVA発泡体組成物は、約65から約70ショアCの範囲の硬度を有する。例えば、発泡性の下部領域(30)の硬度は、発泡性の上部領域(28)の硬度よりも少なくとも5%大きくすることができる。いくつかの実施例において、発泡性の下部領域(30)の硬度は、少なくとも10%または15%大きくなって良く、他の実施例において、少なくとも20%または25%大きくて良い。第1の発泡性組成物および第2の発泡性組成物の密度も、また、好ましくは異なる。例えば、下部領域(30)を形成するために使用される比較的硬い第2のEVA発泡性組成物の密度は、好ましくは、上部領域(28)を形成するために使用される比較的柔らかい第1のEVA発泡性組成物の密度よりも大きい。
【0026】
先に検討したように、EVA発泡性組成物は、好ましくは、ミッドソールを形成するために使用される。EVA発泡体の製造には、種々の発泡添加剤および触媒が使用される。たとえば、EVA発泡性組成物には通常ポリエチレンが含まれる。EVA発泡性組成物は、ミッドソールの構築に特に適している種々の特性を備えており、これは、優れたクッション性や衝撃吸収性;高い耐水性と耐湿性;そして長期的な耐久性を含む。
【0027】
図7を参照すると、ミッドソール(14)の上部および下部領域(28、30)が分解図で示されている。1つの製造プロセスにおいて、ミッドソール(14)は、別個の部品として成形され、次いで、当技術分野で知られている標準的な技術を使用して、ステッチ、接着剤、または他の適切な手段によってアウトソール(16)の上面(33)に接合され得る。例えば、ミッドソール(14)は、熱プレスされ、アウトソール(16)の上面(33)に接着され得る。ミッドソール(14)は、「ツーショット」成形方法を使用してモールドすることができる。
【0028】
アウトソール(16)を参照すると、この部分は、主に靴の支持および牽引力を提供するように設計されている。アウトソール(16)の底面(27)は、
図1の(25)によって一般的に示されている複数の牽引部材を含む。牽引部材(25)は、靴とゴルフコースのさまざまな表面との間に牽引を付与するのに役立つ。牽引部材(25)は、ゴム、プラスチック、およびそれらの組み合わせなどの任意の適切な材料で作ることができる。ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタンなどの熱可塑性プラスチックを使用できる。1つの好ましい実施例において、牽引部材は、比較的硬い熱可塑性ポリウレタン組成物でできている。ポリアミドコポリマーおよびアラミドを含む異なるポリアミド組成物も、また、牽引部材を形成するために使用することができる。例えば、硬質ポリアミドブロックと軟質ポリエーテルブロックのブロック共重合体であるPebax(商標)エラストマー(Arkemaから入手可能)を使用することができる。適切なゴム材料には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレンプロピレンゴム(「EPR」)、エチレンプロピレンジエン(「EPDM」)ゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンブロック共重合体ゴム(例えば、SI」、「SIS」、「SB」、「SBS」、「SIBS」、「SEBS」、「SEPS」など。ここで、「S」はスチレン、「I」はイソブチレン、「E」はエチレン、「P」はプロピレンであり、「B」はブタジエン)、ポリアルケナマー、ブチルゴム、ニトリルゴム、およびそれらの2つ以上のブレンドである。この発明の異なる牽引部材(25)およびアウトソール(16)の構造および形状は、以下でさらに詳細に説明される。
【0029】
一般に、足部の解剖学的構造は、3つの骨の領域に分割することができる。後方足部領域には通常、足首(距骨)とかかと(踵骨)の骨が含まれる。中央足部領域には、足の縦アーチを形成する直方骨、楔状骨、舟状骨が含まれる。前方足部領域には中足骨とつま先が含まれる。
図1に示されるように、アウトソール(16)は、上面(図示せず)および下面(27)を有する。ミッドソール(14)はアウトソール(16)の上面に接合される。アッパー(12)はミッドソール(14)に結合されている。
【0030】
図2を参照すると、アウトソール(16)は、一般に、前方足部エリアを支持するための前方足部領域(40);アーチエリアを含む中央足部を支持するための中央足部領域(42);かかとエリアを含む後方足部を支えるための後方領域(44)を含む。一般に、前方足部領域(40)は、つま先、および、中足骨を指骨に接続する関節に対応するアウトソールの部分を含む。中央足部領域(42)は、一般に、足部のアーチエリアに対応するアウトソールの部分を含む。後方足部領域(44)は、一般に、踵骨を含む、足部の後方部分に対応するアウトソールの部分を含む。
【0031】
アウトソール(16)は、また、外側(lateral側)(46)および内側(medial側)(48)を含む。外側(46)および内側(48)は、各足部領域(40、42、および44)を通って延在し、アウトソールの反対側に対応する。アウトソールの外側または外側縁(46)は、着用者の足の外側領域に対応する側である。外側縁(46)は、着用者の足の、着用者の他の足から一般に最も遠い側である(すなわち、それは、第5趾[小足指]に近い側である。)。アウトソールの内側または内側縁(48)は、着用者の足部の内側の領域に対応する側である。内側縁(48)は、着用者のもう一方の足部に一般的に最も近い着用者の足の側(すなわち、母趾[足の親指]に近い側)である。より具体的には、外側および内側は、アウトソール(16)の周辺または周囲(50)の周りに、アウトソールの前端(52)から後端(54)まで延びる。前端(52)は、つま先領域に対応するアウトソールの部分であり、後端(54)は、かかと領域に対応する部分である。上述のアウトソールの領域、側部(側、サイド)、およびエリアは、アウトソールの正確な領域を区別することを意図していない。むしろ、これらの領域、側面、およびエリアは、アウトソールの一般的なエリアを表すことを目的としている。アッパー(12)とミッドソール(14)にも、このような領域、側部、エリアがある。各領域、側部、およびエリアには、前部および後部も含まれる場合がある。
【0032】
[前方足部領域]
図1に戻ると、牽引部材(25)は、前方足部(40)領域のアウトソール(16)の底面(27)から突き出て、地面に接触している。牽引部材(25)は、ゴルファーが上記のようにコースを歩いてプレーしているときに、ゴルファーに良好な安定性および牽引を付与するのに役立つ。突出した牽引部材(25)は、アウトソール(16)の長さに沿って延在し、前方足部、中央足部、および後方足部領域(40、42、および44)に見られる。
【0033】
アウトソール(16)は、多種多様な牽引部材(25)を含むことができるので、種々のゴルフコース表面の牽引およびグリップ力が最大化され、提供される牽引の量に対してその表面に加えられる損傷が少ない。牽引部材(25)は、例えば、環状、長方形、三角形、正方形、球形、楕円形、星形、ダイアモンド、ピラミッド、矢印、円錐形、刃状、および棒状の形状を含むけれども、これらに限定されず、多くの種々の形状を有することができる。また、種々の牽引部材(25)の高さと面積を必要に応じて調整できる。1つの好ましい実施例において、この発明のゴルフ靴は、アウトソール(16)の長さに沿って延びる5つの異なる牽引部材(25)を有し、これらの牽引部材について、以下でさらに詳細に説明する。
【0034】
ゴルフ靴(10)の前方足部、中央足部、および後方足部領域(40、42、および44)は、牽引力に加えて、足部に安定性および快適さを提供するために重要である。たとえば、多くのゴルフコースでは、ゴルファーは電動カートを運転するか、コースを歩くかを選択できる。一部のゴルファーはコース全体を歩くことを好む。カートを運転することを好むゴルファーでさえ、プレーのラウンド中にかなりの距離を歩く。コースの長さ、プレーの速度、およびその他の要因に応じて、ゴルファーはラウンドで数マイル歩くことがある。したがって、ゴルフ靴は履き心地が良く、ゴルファーが自然に自由に歩くことができるようにする必要がある。つまり、靴は足を支える必要があるけれども、柔軟性も必要である。ゴルファーは、ボールに対処し、スイングをし、コースを快適に歩き、パットを並べるためにしゃがむなど、ゴルフ特有のアクションを実行できる必要がある。考慮しなければならない足部の動きの2つの重要な方向がある。すなわち、(1)背屈と(2)足底屈である。一般に、背屈は、足部(60)を脛に向かって上向きに持ち上げる動作である。つまり、足部(60)が背側または上方向に曲がっている。足首の関節に通される足と脚の前部にある筋肉と腱は、足を背屈方向に動かすために使用される。一般に、足部(60)は、約10度から約30度の範囲で上方に移動する。他方、足底屈は、足部(60)を地面に向かって下向きに動かす動作である。足首の関節に通される足部と脚部の後ろと内側にある筋肉と腱は、足部を足底屈方向に動かすために使用される。一般に、足部(60)は、約20度から約50度の範囲で上方に移動する。
【0035】
図8A~8Cを参照すると、通常の歩行サイクルが概略的に示されている。典型的には、人が自然に歩き始めると、かかとの外側部分が最初に地面にぶつかり、足部(60)がわずかに回外した位置になる。
図8Aは、ゴルファーが歩行を開始するときに、アウトソール(16)のかかと部分が最初に地面に当たる、この発明のゴルフ靴(10)の1つのバージョン(右足)を示す。人が足部(60)の内側部分に体重を移すと、土踏まずが平らになり、足が下向きに押される。足部(60)もわずかに内側に転がり始め、回内位置になる。場合によっては、足部(60)が過度に内側に転がることがあり、これは過剰回内と呼ばれるタイプの歩行である。他の例では、足部(60)が十分に内側に回転せず、これは回内運動不足と呼ばれる。
図8Bは、地面と接触しているアウトソール(16)の後方および前方部分を示している。通常の足圧が下向きに加えられ、足部60)が通常の回内位置に移動し始め、これが衝撃吸収に役立つ。足部(60)がこの中立位置に達した後(
図8B)、人はその足部の拇指を離着させて歩き続ける(
図8C)。この時点で、足部(60)もわずかに外側に回転する。
図8Cにおいて、アウトソール(16)の前方部分は、人が自分の足部を押しのけて次のステップを開始するときに地面と接触していることが示されている。この発明のゴルフ靴(10)は、良好な安定性を有し、それでも、ゴルファーが自分の自然な歩行行動を容易かつ快適に実行できるように、良好な前方足部の柔軟性も実現する。
【0036】
[中央足部領域]
この発明の靴(10)のミッドソール(14)は、クッション性および支持を提供するなど、多くの利点および有利な特徴を有する。歩いたりゴルフをしたりするとき、足部(60)と靴のさまざまな部分(10)に作用する力は多種多様である。例えば、下向きおよび上向きの力は、ゴルフスイング中にミッドソール(14)に作用する可能性がある。この発明のミッドソール(14)は、そのような力が加えられたときに一貫した快適さと支持を提供することができる。
【0037】
前方足部領域(40)と同様に、中央足部領域(42)も、また、地面に接触するためにアウトソール(16)の底面(27)から突出する牽引部材(25)を含む。中央足部領域(42)は、地面との高表面積接触を提供し、アウトソールが滑ったり、ずれたりするのを防ぐのを支援する牽引部材(25)を含む。1つの好ましい実施例において、この発明のゴルフ靴(10)は、アウトソール(16)の前方足部、中央足部、および後方足部領域(40、42、および44)に沿って延びる5つの異なる牽引部材(25)を有し、これらの牽引部材については、以下でさらに詳しく説明する。また、中央足部領域(42)には、高い安定性とサポートを提供するのに役立つフットブリッジまたはシャンクが含まれている。これについても、以下で詳しく説明します。
【0038】
図9に示されるように、この発明のゴルフ靴(10)は、良好なねじれ安定性を有する。すなわち、ミッドソール(14)およびアウトソール(16)は、靴(10)に高い機械的強度および構造的完全性を提供するのに役立ち、長手方向軸Aに沿った中央足部領域(42)の過度のねじれまたは回転を可能にしない。。靴(10)は、ゴルファーに安定したプラットフォームを提供するのを支援し、これはゴルファーがスイングしてボールを打つときに特に重要である。
【0039】
ゴルフ中、ゴルファーは、岩、棒、および他の破片が散らばっている表面などの非水平な表面に足を置く必要があることが多い。この起伏の多い地形は、足に強い力を生み出し、ゴルファーにとって不安定なプラットフォームを生み出す可能性がある。この不安定さは、ゴルファーがボールに対処してショットをする必要がある場合に特に難しい問題である。また、これらの継続的なストレスにより、足の靭帯、腱、筋肉が痛くなり、捻挫や涙が出ることがある。この発明のゴルフ靴(10)は、足部の安定性および支持が改善されることにより、これらの問題に対処するのに役立つ。靴(10)は、ゴルファーがボールに取り組み、スイングすることができるように、安定したプラットフォームを提供するのに役立つ。靴(10)は、足底の屈曲方向の曲がりに抵抗することにより、この安定したプラットフォームを提供する。同時に、靴(10)は、前方足部の柔軟性が良好であり、背側屈曲方向に曲げることができる。したがって、この発明の靴は、柔軟性を犠牲にすることなく安定したプラットフォームを提供する。したがって、ゴルファーは、以下でより詳細に説明するように、粗い表面および非平坦な表面を有する表面を含むすべてのタイプのゴルフコース地形でそのスイングを実行することができる。同時に、靴は前方足部の柔軟性が高く、ゴルファーが自然な歩行で快適に歩くことができるように完全にサポートする。
【0040】
図10A~10Eを参照すると、この発明のゴルフ靴(10)の高い安定性および牽引力が、模式図においてより詳細に示されている。
図10Aにおいて、ゴルファーは、例えば、ゴルフコースのフェアウェイなどの平坦な表面を有する地形上でこの発明のゴルフ靴(10)を履いていることが示されている。一般的に、フェアウェイはゴルフコース上の非常に短く刈られた芝生のあるエリアで、ティーボックスとパッティンググリーンの間を走っている。この発明の靴は、ゴルファーにフェアウェイおよび他の実質的に水平な表面での高い安定性および支持を提供する。次に、
図10Bおよび10Cにおいて、ゴルファーは、例えば、ゴルフコースのラフなどの非平坦な表面を有する地形上で従来のゴルフ靴(65)を履いていることが示されている。一般的に、ラフは、ゴルフコースの草が高くて厚いエリアである。刈り取られていない高い草はフェアウェイの境界の外にある。多くの場合、ラフには自然に成長する野生の植物が含まれている。これらの従来の靴(65)は、その実質的に平らでない表面を有するラフ上で高い安定性および支持を提供しない傾向がある。むしろ、
図10Cにより詳細に示されるように、これらの従来の靴(65)は、凹状に曲がる傾向がある。この凹状の曲げ屈曲は、ゴルフスイングのロードおよびアンロード中に垂直な後方足部の動きを生み出すため、問題である。つぎに
図10Dおよび10Eを参照すると、ゴルファーは、
図10Aおよび
図10Bに示されるのと同じ非水平ラフ上にこの発明のゴルフ靴(10)を着用して示されている。しかしながら、この例において、この発明のゴルフ靴(10)は、この実質的に水平でない表面上で高い安定性および支持を提供する。
図10Eにより詳細に示されるように、ゴルファーがこの平坦でなく起伏の多い地形に立っているとき、靴(10)の凹状の曲げ屈曲はない。これは、
図10Cに示されるような従来の靴(65)で発生する傾向がある凹状の屈曲とは対照的である。そのような従来の靴(65)とは反対に、この発明のゴルフ靴(10)は、ゴルファーに堅くて安定したプラットフォームを提供する。ゴルフ靴(10)は、足をしっかりとサポートする。これらの靴(10)の独自の構造により、ゴルファーは、スイングのロードおよびアンロード中に、後方足部の動きを最小限に抑えるか、まったく動かさずにスイングを行うことができる。
【0041】
[後方足部領域]
前方足部および中央足部領域(40)、(42)と同様に、後方足部領域(44)も、また、アウトソール(16)の底面(27)から突出して、地面と接触する牽引部材(25)を含む。後方足部」領域(44)は比較的広い。この比較的広い幅は、特にかかと部分で、靴(10)に良好な安定性を提供するのにさらに役立つ。後方足部領域(44)は、地面との高表面積接触を提供し、アウトソールがズレたり滑ったりするのを防ぐのを支援する牽引部材(25)を含む。牽引部材(25)による最大の接触は、上述のように、後方足部領域(44)ならびに前方足部(40)および中央足部(42)領域で維持される。種々の牽引部材(25)は、ゴルフ特有の牽引を提供する。つまり、これらの牽引部材は、前方足部、中央足部、および後方足部の横方向の牽引を制御し、ゴルファーがコースを歩いたりプレイしたりするときに足部がズレたり滑ったりするのを防ぐ。
【0042】
[牽引部材]
図11を参照すると、アウトソール(16)上の牽引部材(25)のセットの1つの好ましい実施例がより詳細に示されている。牽引部材の第1のセットは、トラックAに取り付けられており、このトラックAは、前方足部(40)の内側(48)の周辺(50)から中央足部(42)領域を通って、後方足部領域(44)の外側(46)の周辺(50)まで延びる。牽引部材の第2のセットは、トラックBに取り付けられており、このトラックBは、前方足部(40)の外側(46)の周辺(50)から中央足部(42)領域を通って後方足部領域(44)の内側(48)の周辺(50)まで延びる。
【0043】
トラックA上に配置された牽引部材の第1のセットは、トラックAに固定された複数の第1の牽引部材ベースから外向きに突出することができる。トラックB上に配置された牽引部材の第2のセットは、トラックBに固定された複数の第1の牽引部材ベースから外向きに突出することができる。牽引部材は、様々な形状および寸法を有することができ、例えば、牽引部材(70、72、74、76、および78)は、以下でさらに詳細に説明するように使用することができる。牽引部材およびそれらの支持ベース(79)は、好ましくは、熱可塑性ポリウレタンまたはポリアミド組成物などの比較的硬い材料でできている。それぞれの牽引部材支持ベース(79)は、縫い合わせ、接着剤、または他の任意の適切な固定手段によってトラックAおよびBに固定することができる。牽引部材およびそれらのそれぞれの基部は、例えば、環状、長方形、三角形、正方形、球形、楕円形、星形、ひし形、ピラミッド形、矢印形、円錐形、刃状、および棒形などの様々な形状を有することができる。トラックAの牽引部材とトラックBの牽引部材は、同じ形状でも異なる形状でも良い。1つの好ましい実施例において、トラックAの牽引部材の少なくとも一部およびトラックBの牽引部材の少なくとも一部は円錐形を有する。トラックAおよびBは、好ましくは、ミッドソールを作製するために使用される材料、例えば、上述のEVAまたはポリウレタン発泡性組成物から形成される。
【0044】
したがって、トラックAおよびBは、足の中央領域で互いに交差している(42)。トラックAとBが互いに交差し、X字型のパターンを形成すると、無限大(∞)の数学的記号に似たジオメトリがアウトソール(16)に提供される。トラックAおよびBは、一般に、約2から約6mmの厚さを有する。トラックの厚さは、アウトソール(16)の輪郭に沿って変化し、前方足部から中央足部、後方足部領域(40、42、および44)に変化して良い。
【0045】
トラックAおよびBは、中央足部領域(42)においてX字形のパターンを形成する。このX字型の構造と無限大(∞)の形状は、靴のアウトソール(16)のシャンク(フットブリッジ)(66)の曲げ剛性を高めるのに役立つ。この正確な幾何学的構造は、靴(10)に優れたねじれ安定性を提供するのにも役立つ。中央足部領域のこの無限大(∞)形状とX字型構造(66)は、靴(10)に高い機械的強度と構造的完全性を提供し、靴を過度にねじったり回転させたりしないようにする。X字型のフットブリッジ(66)は、前方足部と後方足部(40、44)の間に橋を形成し、中央足部(42)を支えるのに役立つ。また、好ましい実施例において、中央足部安定性牽引部品(83、85)は、それぞれ、中央足部領域(42)の外側(46)および内側(48)の周辺側にそれぞれ配置され、またフットブリッジ(66)に隣接して配置される。中央足部安定性牽引部品(83、85)はトラックAおよびBに配置されていない。むしろ、これらの安定性牽引部品(83、85)は、トラックAとBとの間のアウトソールに配置される。第3のセットの牽引部材(87)は、第1の牽引部品(83)から外側に突出し、第4のセットの牽引部材(89)は、第2の牽引部品(85)から外側に突出する。これらの安定性牽引部品(83、85)およびそれぞれの突出した牽引部材(87、89)は、ねじり安定性を提供するのにさらに役立つ。これらの安定性牽引部品(83、85)と牽引部材(87、89)は、靴の前方足部の柔軟性を犠牲にすることなく、靴に剛性を付与するのを支援する。
【0046】
X字形状のフットブリッジ(66)の中央に、ロゴ(81)を配置して良い。目に見えるロゴ(81)を形成するための1つの好ましい材料は、熱可塑性ポリウレタンである。ロゴ(81)は、透明なポリウレタンフィルムで覆われ、保護されて良い。強化されたシャンク(フットブリッジ)(66)は、アウトソールに剛性と構造的サポートを与えるのに役立つ。次に、このアウトソール(16)は、その高い機械的強度特性により、ゴルファーが歩いたりコースでプレーしたりする際の安定性とバランスを向上させる。
【0047】
上述したように、アウトソール(16)上の牽引部材は、多くの種々の形状を具備して良く、これらの形状は、これに限定されないけれども、例えば、環状、長方形、三角形、正方形、球形、楕円形、星、ダイアモンド、ピラミッド、矢印、円錐形、刃のような形、および棒の形を含む。また、牽引部材の高さと面積はさまざまでる。
図2に示すアウトソールの実施例において、これらの牽引部材は、「中型寸法円錐」と呼ぶことができる円錐構造を有するタイプ1の牽引部材(70)を含む。タイプ2の牽引部材(72)も円錐構造を有し、「小型寸法円錐」と呼ぶことができる。タイプ3の牽引部材(74)はヘリンボーン構造を有し、「ヘリンボーン」と呼ぶことができる。タイプ4の牽引部材(76)は円錐形であり、「ピボットコーン」と呼ぶことができる。タイプ5の牽引部材(78)も円錐構造を有し、「ロッキングコーン」と呼ぶことができる。牽引部材(70、72、74、76、および78)およびそれらの支持ベース(79)は、好ましくは、熱可塑性ポリウレタンなどの比較的硬い材料でできている。また、
図11に示されるように、ゴルフ靴は、牽引部材ベース(79)を接続する熱可塑性ポリウレタンブリッジ(80)を含む。アウトソール(16)は、中央領域に安定隆起(82)を含めることもできる。これらの安定隆起(82)は、トラックAおよびBには配置されていない。むしろ、それらはトラックAとBの間に配置される。この発明の靴のアウトソール(16)は、多くの従来のゴルフ靴とは対照的に、より多くの牽引部材(25)を有し、この大量の牽引部材は、高い牽引力、および、良好な接地接触を提供するのに役立つ。さらに、先に検討したように、アウトソール(16)は、多くの従来のゴルフ靴に比べてヒール面積が広く、この機能により高い安定性が得られる。
【0048】
さらに、先に検討され、
図3~7に示されるように、ミッドソール(14)の下部領域(30)は、好ましくは、高デュロメータの第2の発泡性EVA組成物などの比較的硬い材料でできている。ミッドソール(14)のこの下部領域(30)は、ミッドソール(14)の側壁を形成し、これらの堅くて強い側壁は、ゴルフショットを行う際に体重を移動するときにゴルファーの足の内側がわ、および外側がわを保持および支持するのに役立つ。下部領域(30)でのこの材料のビルドアップは、X字型のフットブリッジ(66)構造が配置されている中央足部領域(42)のサポートにも役立つ。
【0049】
得られた靴(10)は、構造的剛性および柔軟性の最適な組み合わせを有する。靴を履いたゴルファーは、快適に歩き、コースをプレーすることができる。ゴルファーは、一部の従来の靴で発生する可能性がある、靴の調整に過度の時間とエネルギーを費やす必要がない。この靴についての些細な作業は、ゴルファーの疲労につながり、ゴルフコースでの競技パフォーマンスに悪影響を与える可能性がある。むしろ、この発明のゴルフ靴(10)は、自由かつ自然に着用することができる。靴(10)は、前方足部の柔軟性が高いが、それでも、安定性、牽引力、および上記のような他の重要な特性を犠牲にすることはない。アッパー(12)、ミッドソール(14)、および牽引部材(25)を含むアウトソール(16)の独特の形状および構造は、ゴルファーに多くの有益な特性を有する靴を提供する。
【0050】
上述の靴構造は、全般的にa)アッパー(12);b)5つの異なる牽引部材を備えたアウトソール(16);c)アッパー(12)とアウトソール(16)を接続するミッドソール(14)であって、当該ミッドソールは、i)第1の材料から形成された上部領域と、ii)第2の材料から形成された下部領域を有し、この第2の材料の材料硬度が第1の材料の材料硬度よりも大きくなるようなされており、この靴構造は、この発明の靴構造の一例にすぎないことに留意されたい。
【0051】
上述のように、2つの発泡性EVA材料などの2つの異なる材料から作られた独特のミッドソール(14)構造は、ゴルファーに様々な表面での高い安定性およびバランスを提供するのに役立つ。しかしながら、この発明の精神および範囲から逸脱することなく、他のミッドソールおよび靴の構造を使用できることが認識されている。
【0052】
例えば、ミッドソール構造の別の実施例において、繊維強化複合板がミッドソールに配置されている。より具体的には、
図12の分解図に示されるように、この例においては、ミッドソールは、ミッドソール(14)の上部領域と下部領域(28、30)との間に配置された繊維強化複合板(32)を含む。繊維強化複合板(32)を含む靴(10)のこの例は、上述の靴の例よりも比較的高い構造的剛性を有する。しかしながら、この発明の靴(10)のすべての実施例は、高い安定性および牽引力を提供した。この発明の靴は、ゴルフショットを行う際に体重を移動するときに、ゴルファーの足の内側および外側を保持および支持することができる。靴はゴルファーに安定したプラットフォームを提供し、コースでショットをするときにバランスを保つのに役立つ。靴はゴルファーに高い構造的サポートを提供するけれども、柔軟性、牽引、およびその他のゴルフパフォーマンス特性を犠牲にすることはない。したがって、ゴルファーは、歩いてコースをプレーし、他のゴルフ活動に快適に行うことができる。
【0053】
この発明のゴルフ靴の異なる実施例は、高レベルの安定性および牽引力、ならびに高レベルの前方足部の柔軟性の双方を実現する。靴は安定性と牽引を提供するので、滑りがなく、ゴルファーはクラブを振るときにバランスを保つことができる。同時に、靴は柔軟性が高いので、ゴルファーは歩いてコースをプレーしたり、他のゴルフ活動を快適に行うことが
できる。
図9および
図10A~10Eに戻ると、この発明のゴルフ靴(10)の高い安定性および牽引力が示されている。
【0054】
例えば、
図13~19Cを参照すると、この発明のゴルフ靴のミッドソール構造の別の実施例が示されている。このバージョンのミッドソール(14)は、上部(28)と下部(30)の領域の間に配置された繊維強化複合板(32)をさらに含むので、上で論じたミッドソール構造とは異なる。繊維強化複合板(32)を含むこのミッドソールラミネート構造は、以下でさらに詳細に説明される。この実施例における繊維強化複合板(32)を含むゴルフ靴(10)は、複合板(32)を含まない上述の靴よりも比較的高い構造剛性を有する。この複合板の靴(10)は、ゴルファーに安定したプラットフォームを提供し、コースでショットを行うときにバランスを保つのに役立つ。靴(10)は、ゴルファーに高い構造的支持を提供するが、それでも、柔軟性、牽引力、および他のゴルフ性能特性を犠牲にすることはない。
【0055】
例えば、通常のゴルフプレー中に、ゴルファーは多種多様なクラブでショットを行う。ゴルファーがショットをするときにクラブを振って体重を移動すると、足は途方もない力を吸収する。多くの場合、右利きのゴルファーがボールをアドレスしているとき、彼らの右足と左足はニュートラルな位置にある。ゴルファーがバックスイングを行うと、右足が前方足部およびかかとの内側領域を押し下げ、右膝が押し込まれたままになると、右足が地面にトルクを発生させて、外部の足の回転に抵抗する。ショットに続いて、ゴルファーの左靴は左足の内側(メディアル、すなわちインサイド)から左足の外側(ラテラル、すなわちアウトサイド)に向かって転がる。その間、彼らの右の靴は同時に前方足部に曲がり、かかとが上がると内部で回転する。
【0056】
繊維強化複合板(32)を含む靴(10)のこの実施例は、高い安定性および牽引力を提供するのに役立つ。靴(10)は、ゴルフショットを行う際に体重を移動するときに、ゴルファーの足の内側と外側を保持して支えることができる。したがって、ゴルファーは、クラブの完全なスイング動作をフォローしながら、バランスを保つことができる。より具体的には、繊維強化複合板(32)は、シャンク(フットブリッジ)(66)においてより大きな曲げ剛性を提供するのに役立つ。複合繊維板(32)は、靴(10)に高い機械的強度および構造的完全性を提供するのに役立ち、靴の過度のねじれまたは回転を許さない。したがって、靴(10)は良好なねじれ安定性を有する。同時に、靴(10)は前足の柔軟性が良好であるため、ゴルファーは歩いてコースをプレーしたり、他のゴルフ活動を快適に行うことができる。このバージョンのゴルフ靴には、高いレベルの安定性と牽引、および高い柔軟性を与えるのに役立ついくつかの要素がある。
【0057】
まず、
図13に示されるように、この靴の例においては、アウトソールも、上述のようにX字形の構造を有し、これは、靴のアウトソールのシャンク(フットブリッジ)に高い曲げ剛性を提供するのに役立つ。シャンク(フットブリッジ)の形状と構造は、アウトソールに剛性と構造的サポートを与えるのに役立つ。すなわち、
図18に示されるように、牽引部材は、前足の内側の周辺から中足領域を通って後足領域の外側の周辺まで延びるトラックAに取り付けられている。対向する牽引部材は、前足の外側の周辺から中足領域を通って後足領域の内側の周辺まで延びるトラックBに取り付けられている。したがって、トラックAとトラックBは、足部の中央の領域で互いに交差している。トラックAとBは、中央足部にX字型のパターンを形成する。このX字型の構造と形状は、靴のアウトソールのシャンク(フットブリッジ)の剛性を高めるのに役立つ。X字型のパターンは、前方足部と後方足部の領域の間にブリッジを形成し、中央足部の領域をサポートし、より大きな曲げ剛性を提供するのに役立つ。また、
図18に示すアウトソールの実施例において、上述のように、タイプ1、タイプ2、タイプ3、タイプ4、およびタイプ5の牽引部材が存在する。
【0058】
第二に、
図14~17に示すように、この実施例の靴のミッドソールも、先に検討したように2つの異なる材料を使用して作られている。例えば、比較的柔らかく柔軟性があるEVA発泡体および比較的硬く堅固なEVA発泡体である。これは中央足部領域を支持し、ここでは、X字型構造が配置されている。ミッドソールの下部領域(30)は、ミッドソールの側壁を形成し、これらの堅くて強い側壁は、前述のように、ゴルファーの靴の内側および外側を保持および支持するのに役立つ。
【0059】
第三に、
図13の分解図を参照し、再び検討するように、このバージョンのミッドソールは、ミッドソール(14)の上部領域と下部領域(28、30)との間に配置された繊維強化複合板(32)を含む。ミッドソールの上部および下部領域(28、30)に対する繊維強化複合板(32)の配置については、以下で詳しく説明する。
【0060】
繊維強化複合板(32)は、結合マトリックス(樹脂)および強化繊維を含む。結合ポリマーは、エポキシまたはゴムなどの熱硬化性材料であって良い。ポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂も使用できる。好ましくは、グラファイトなどの炭素繊維が強化繊維として使用される。炭素繊維に加えて、または炭素繊維の代わりに、アラミド(例えば、Kevlar(商標))、アルミニウム、またはガラス繊維などの他の繊維を使用することができる。繊維強化複合板は、強化繊維にエポキシなどの樹脂材料を含浸させる標準的な技術を使用して製造できる。この樹脂は、強化繊維を結合するためのマトリックスとして使用される。これらの含浸材料は、複合材料を固化するために高温で硬化される板(プレート)などの積層構造を形成するために積み重ねることができる。得られた繊維強化複合板は、軽量で、高剛性、高引張強度、低重量対強度比などの優れた機械的特性を備えている。上述のように、ミッドソール(14)は、サンドイッチ状またはラミネート構造を有し、繊維強化複合板(32)は、比較的柔らかい発泡性上部領域(28)と比較的硬い発泡性下部領域(30)との間に配置される。
【0061】
図19A~19Cにおいて、複合材板(32)は、ミッドソール(14)の前端(52)から後端(54)まで延びるように配置されて示されている。足部(60)は、靴(10)に配置されて示されている。1つのバージョンにおいて、
図19Aに示されるように、複合材板(32)は、前方足部(62)に対して比較的近い位置(例えば、約2から約6mm、好ましくは約4mmの範囲の距離)に配置された一端(前方)を有する。他方、複合板(32)は、後方足部(64)に対して比較的遠い位置(例えば、約12から約16mmの範囲の距離)に位置する反対側の第2の端部(後部)を有する。すなわち、複合材板(32)は、靴(10)の前部では地面から比較的遠くに配置され、靴の後部では地面に比較的近い位置にある。靴構造における複合材板(32)のこの配置は、靴(10)がゴルファーに安定したプラットフォームを提供するのに役立つ。ミッドソール(14)のラミネート構造における複合材板(32)のこの配置は、足部を支持するのを助け、ゴルファーに改善されたバランスを与える。
【0062】
第2のバージョンにおいては、
図19Bに示されるように、複合材板(32)は、ミッドソールの前端(52)から後端(54)まで延びるように配置されて示され、それは本質的にミッドソール構造(14)の上面に位置する。複合材板(32)の第1および第2の端部は、それぞれミッドソール(14)の前方足部(62)および後方足部(64)領域の近くに配置されている。すなわち、この靴構造では、複合材板(32)は、前方足部(62)および後方足部(64)の両方の領域で地面から比較的遠くに配置されている。
【0063】
第3のバージョンにおいては、
図19Cに示されるように、複合材板(32)は、ミッドソールの前端(52)から後端(54)まで延びるように配置されて示され、ミッドソールラミネート構造(14)の上面と下面の間で本質的に中心に置かれる。複合材板(32)は、前方足部領域(62)と地面との間のほぼ等距離に配置され、後方足部(64)領域と地面の間のほぼ等距離に配置されている。複合材板(32)は、前方足部(62)の中距離に位置する一端(前部)を有する。他方、複合材板(32)は、後方足部(64)に対して反対側の第2の端部(後部)が中距離に位置している。すなわち、この靴構造では、複合材板(32)は、ミッドソール(14)ラミネート構造のほぼ中央の位置に配置されている。
【0064】
第4のバージョンにおいては、
図19Dに示されるように、複合材板(32)は、ミッドソールの前端(52)から後端(54)まで延びるように配置されて示され、それは本質的にミッドソール構造(14)の下面に位置する。複合材板(32)は、ミッドソール(14)の前方足部(62)および後方足部(64)の両方から遠く離れて配置されている。すなわち、この靴の構造では、複合材板(32)は、前方足部(62)および後方足部(64)の両方の領域で地面に比較的近い位置に配置されている。
【0065】
繊維強化複合板(32)の領域の慣性モーメントも考慮されるべきである。一般に、領域の慣性モーメントは、任意の軸に関して領域の各点がどのように分布しているかを反映する幾何学的特徴である。領域の慣性モーメントは、XやYなどの参照軸を基準にして計算され、これは、通常、中心軸または中立軸である。こらは、R.C.Hibbeler,Statics,14th ed.(Pearson Prentice Hall,Hoboken NJ. 2016) pp.528-531、および、Editors of Mechanical Design in Optical Engineering,(optics.arizona.edu)pp.32-36を参照されたい。
【0066】
図20に示されるような長方形などの標準的な形状の場合。領域の慣性モーメントは次の式で計算できる。
I
x=BH
3/12
ここで、Bはオブジェクトのベース(水平)、Hはオブジェクトの高さ(垂直)である。
【0067】
長方形断面のこの例では、曲げは、重心軸であるX軸の周りで発生する。
【0068】
図21に示されるように、「Iビーム」などの複数の断面積を有するより複雑な形状の場合、平行軸の定理を使用して、断面二次モーメント(area moment of inertia)を見つけることができる。これらの例では、オブジェクトは複数の単純な断面領域に分割されている。平行軸の定理は、ある軸の周りの領域の慣性モーメントが、その領域の中心を通る平行軸の周りの慣性モーメントに、面積と軸間の垂直距離の2乗を加えたものに等しいことを示している。この定理を使用して、Iビームの3つの長方形領域(ダイアグラムII)のそれぞれの個々の領域慣性モーメントを、1つの共通の曲げ軸に関して計算し、合計して、I-ビームの断面二次モーメントの合計を決定できる。平行軸の定理は、曲げ軸からの領域の距離が増加するにつれて、領域の慣性モーメントの大きさへの寄与も増加することを示している。
【0069】
この発明において、繊維強化複合板を足の自然曲げ軸に近づけたり遠ざけたりすることにより、平行軸の定理に従って板の断面二次モーメントを実質的に変えることができる。換言すれば、発明者らは、足の屈曲曲げ軸および伸長曲げ軸に対して当該板をどのように配置するかによって、板の曲げ抵抗を方向的に制御できることを見出した。
【0070】
繊維強化複合板が足部の屈曲曲げ軸の近くに配置されている場合、断面二次モーメントが低下し、板はより容易に曲げられる。曲げ抵抗が少なくなる。他方、板が足部の屈曲曲げ軸から離れて配置されている場合、断面二次モーメントが増加し、板は背屈に大きく抵抗することができる。
【0071】
図19Aに戻ると示されるように、発明者らは、この実施例において、複合板を、後方足部領域において足部から比較的遠い距離に位置付けられ、かつ、前方足部領域において足部に比較的近い距離に位置付けられるように配置した。
【0072】
このようにして、
図19Aの複合板は、踵領域において耐曲げ性が高いように配置されている。また、板がかかとから比較的離れて位置付けられるように当該板をミッドソールに配置することにより、ミッドソールの当該領域は、足部により多くの快適さとクッション性を提供することもできる。対照的に、
図19Aにおける複合板は、前方足部領域において足部に非常に近いようにミッドソールに配置されている。このようにして、板は前方足部領域での曲げ抵抗が少なくなる。これにより、人は足部の拇指を簡単に押しのけることができる。これは、人がより自然にそして快適に歩くのを支援する。靴は前方足部領域において硬さが少なく感じられる。アウトソールの前方部分は、人が足部で飛び跳ねるときに地面としっかりと接触する。さらに、板を、前方足部に比較的近い位置に位置付けるようにミッドソールに配置することで、パットをライン合わせするときにつま先でしゃがむときなど、ゴルフ特有のアクションの曲げ抵抗が少なくなる。靴は、足部の重さ(荷重)が板に作用するとき、この前方足部領域においてより容易に屈曲可能であり、これは、足部の重さがかかと領域において作用するときに比べてどうである。発明者らは、板を異なる位置に配置し、プ板と足部との間の垂直距離を正確に変更することによって、靴の屈曲バイアスを設計できることを発見した。
【0073】
この発明のゴルフ靴(10)の種々の実施例のすべては、高レベルの安定性および牽引力、ならびに高レベルの柔軟性の両方を提供する。靴は安定性と牽引を提供するので、滑りがなく、ゴルファーはクラブを振るときにバランスを保つことができる。同時に、靴は柔軟性が高いので、ゴルファーは歩いてコースをプレーしたり、他のゴルフ活動を快適に行うことができる。
図10A~10Eに戻って参照すると、種々の表面でのこの発明のゴルフ靴の高い安定性および牽引力が示されている。
【0074】
本明細書に数値の下限および数値の上限が記載される場合、これらの値の任意の組み合わせが使用されて良いことが意図されている。動作例以外、または明示的に指定されていない限り、「約」という用語が、値、量、または範囲とともに明示的に表示されなくとも、数値の範囲、量、値、および材料の量などの明細書のパーセントなどはすべて、「約」という言葉で始まるように解釈されて良い。したがって、そうでないことが示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、この発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。
【0075】
用語「第1」、「第2」、「第3」、「トップ」、「ボトム」、「上側」、「下側」、「下方」、「右」、「左」、「中間」、「近位」、「遠位」、「外側」(ラテラル)、「内側」(メディアル)、「前方」、「後方」などは、1つの視点に基づいて要素の1つの位置を指すために使用される任意の用語であり、この発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0076】
優先権書類を含む、本明細書で引用されるすべての特許、刊行物、試験手順、および他の参考文献は、そのような開示がこの発明と矛盾しない範囲で、およびそのような組み込みが許可されるすべての管轄区域について、参照により完全に組み込まれる。ここに記載され、また図示されている、靴の素材、デザイン、構造、靴の部品、靴アセンブリおよびサブアセンブリは、この発明のいくつかの実施例を表すだけであることを留意されたい。当業者は、この発明の精神および範囲から逸脱することなく、そのような製品および材料に様々な変更および追加を行うことができることを理解している。そのような実施例はすべて、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0077】
10 ゴルフ靴
12 アッパー
14 ミッドソール
16 アウトソール
17 甲領域
18 発泡性ヒールカラー
19 つま皮
20 開口部
21 パワーハーネス
22 舌部材
23 クォーターセクション
25 牽引部材
27 底面
28 上部領域
29 甲皮
30 下部領域
31 ギルストリップ
32 繊維強化複合板
33 上面
40 前方足部領域
42 中央足部領域
44 後方足部領域
46 外側
48 内側
50 周囲
52 前端
54 後端
60 足部
62 前方足部
64 後方足部
65 ゴルフ靴
66 シャンク(X字型構造)
70、72、74、76、78 牽引部材
79 牽引部材支持ベース