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  • 特許-結露水吸収構造体及びキット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】結露水吸収構造体及びキット
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/14 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
E06B7/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020141775
(22)【出願日】2020-08-25
(62)【分割の表示】P 2019000678の分割
【原出願日】2019-01-07
(65)【公開番号】P2020190195
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】515181409
【氏名又は名称】宇部興産建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】喜井 敏典
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-144656(JP,A)
【文献】特開2001-132356(JP,A)
【文献】実開平3-80885(JP,U)
【文献】実開平4-86893(JP,U)
【文献】実公平8-7022(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結露によって窓の表面に生じた水が流れ落ちる箇所に設置される結露水吸収構造体であって、
複数の珪藻土タイルと、
横方向に延びる溝部を構成し、前記溝部に並ぶように配置される前記複数の珪藻土タイルを支持する支持部材と、
を備え、
前記複数の珪藻土タイルが前記溝部に対して着脱自在であり、
前記複数の珪藻土タイルが、第1の幅を有する第1のタイル群と、第2の幅を有する第2のタイル群とを含み、前記第1の幅と前記第2の幅が互いに異なる、結露水吸収構造体。
【請求項2】
前記支持部材は前記珪藻土タイルの下部を支持する、請求項1に記載の結露水吸収構造体。
【請求項3】
前記珪藻土タイルの厚さと、前記支持部材における前記珪藻土タイルを接する箇所の厚さの合計が10mm未満である、請求項1又は2に記載の結露水吸収構造体。
【請求項4】
前記複数の珪藻土タイルの幅の合計が前記溝部の長さよりも短い、請求項1~3のいずれか一項に記載の結露水吸収構造体。
【請求項5】
前記溝部の両端が開放されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の結露水吸収構造体。
【請求項6】
前記溝部が複数の前記支持部材によって構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の結露水吸収構造体。
【請求項7】
前記支持部材が鋏で切断可能な材料からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の結露水吸収構造体。
【請求項8】
前記支持部材が、窓の表面に固定される第1の面と、前記珪藻土タイルの底面と対面する第2の面と、前記珪藻土タイルの表面と対面する第3の面とを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の結露水吸収構造体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の結露水吸収構造体用のキットであり、
前記複数の珪藻土タイルと、
前記支持部材と、
前記複数の珪藻土タイル及び前記支持部材を収容する包装材と、
を備える、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結露水吸収構造体及びこれ用のキットに関する。
【背景技術】
【0002】
結露は、低温の物体の表面に空気が接触することで、空気中の水蒸気が凝結してその表面に水滴が付着する現象をいい、特に表面結露と称されることもある。結露は冬の窓ガラスで生じることがよく知られている。結露によって生じる水(以下、結露水という。)は、木製建材の腐食及びカビの発生等の原因となるため、結露自体を抑制する技術及び結露水を吸収除去する技術について種々の検討がなされてきた(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-019276号公報
【文献】特開2004-223869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、結露対策に係る従来技術は必ずしも結露を十分に抑制できず、また、結露水を吸収するための材料の機能を回復させる作業(例えば、結露水を吸収した不織布を絞る作業)が煩雑であるなどの点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、使用者に煩雑な作業を強いることなく、結露に起因する不具合(例えば、木製建材の腐食及びカビの発生)を解消できる結露水吸収構造体及びこれ用のキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る結露水吸収構造体は、結露によって窓の表面に生じた水が流れ落ちる箇所に設置されるものであって、複数の珪藻土タイルと、横方向に延びる溝部を窓の表面とともに構成し、溝部に並ぶように配置される複数の珪藻土タイルを支持する支持部材とを備え、複数の珪藻土タイルが溝部に対して着脱自在である。
【0007】
本発明によれば、吸水材料として複数の珪藻土タイルを採用したことで、夜間に生じる結露水が珪藻土タイルに吸収され、結露水に起因する不具合を十分に抑制できる。水を吸収した珪藻土タイルは、湿度が低い環境下において水を自発的に放出する。湿度が低い昼間に珪藻土タイルが水を自発的に放出するため、使用者が特別な処理を施さなくても夜間に再び十分な量の結露水を吸収できる状態となる。なお、吸水性に優れる珪藻土タイルが窓とカーテンとの間の空間に存在することで、この空間の湿度が低下し、結露の発生自体も抑制できると考えられる。夜間に水又は湿気を効率的に吸収するとともに昼間に水を効率的に放出する観点から、珪藻土タイルは支持部材に支持された状態において十分に露出していることが好ましい。例えば、支持部材は珪藻土タイルの下部を支持しており、上部が露出していることが好ましい。
【0008】
上記支持部材は、横方向に延びる溝部を窓の表面とともに構成しており、溝部に並ぶように複数の珪藻土タイルが配置される。この溝部が樋の役割を果たし、これよりも下に結露水が流れ落ちることを防止する。かかる構成によれば、例えば、結露水が必ずしも珪藻土タイルに直接流れ落ちなくても、換言すれば、窓の横方向に隙間なく複数の珪藻土タイルを配置しなくても、溝部でせき止められた結露水は溝部を通じて珪藻土タイルに至って吸収される。したがって、複数の珪藻土タイルの幅の合計は溝部の長さよりも短くてもよい。つまり、隣接する二つの珪藻土タイルの間に隙間があってもよい。
【0009】
複数の珪藻土タイルは溝部に対して着脱自在である。これにより、珪藻土タイルの洗浄又は交換を必要に応じて容易に実施できる。また、結露が発生する季節が終了したら、珪藻土タイルを容易に回収することができる。なお、回収した珪藻土タイルに対して洗浄及び乾燥の処置を施した後、再度必要な時期まで保管しておけばよい。
【0010】
本発明に係る結露水吸収構造体を引き違い窓に適用する観点から、藻土タイルの厚さと、支持部材における珪藻土タイルを接する箇所の厚さの合計は10mm未満であることが好ましい。支持部材の具体的な構成として、窓の表面に固定される第1の面と、珪藻土タイルの底面と対面する第2の面と、珪藻土タイルの表面と対面する第3の面とを有する構成が挙げられる(図2参照)。
【0011】
本発明は、結露水吸収構造体用のキットを提供する。すなわち、本発明に係る結露水吸収構造体用のキットは、複数の珪藻土タイルと、支持部材と、複数の珪藻土タイル及び支持部材を収容する包装材とを備える。このキットは、当該キットを購入した使用者自らが結露に起因する不具合を防ぎたい箇所に比較的簡便に設置できるように工夫されたものであってもよい。
【0012】
例えば、複数の珪藻土タイルが、第1の幅を有する第1のタイル群と、第2の幅を有する第2のタイル群とを含み、第1の幅と第2の幅が互いに異なるものであってもよい。幅の異なる珪藻土タイルを適宜組み合わせて使用することで種々の幅の窓に対応できる。上述のとおり、隣接する二つの珪藻土タイルの間に隙間があってもよい構成は種々の幅の窓に対応する上で有用である。溝部が複数の支持部材によって構成されていてもよい。また、キットを購入した使用者が特別な工具を使用せずに窓の幅に合わせて支持部材の長さを調整できるように、支持部材が鋏で切断可能な材料(例えば、ポリ塩化ビニル)からなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用者に煩雑な作業を強いることなく、結露に起因する不具合を解消できる結露水吸収構造体及びこれ用のキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る結露水吸収構造体が窓ガラスの下部に配置された状態を模式的に示す正面図である。
図2図2図1に示す結露水吸収構造体の構造を模式的に示す断面図である。
図3図3は本発明の一実施形態に係るキットの内容物を模式的に示す平面図である。
図4図4は本発明に係る結露水吸収構造体の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は本実施形態に係る結露水吸収構造体が引き違い窓Wの下枠Sの上方に設置された状態を模式的に示す正面図である。引き違い窓Wの下部は、結露によって窓ガラスの表面Fに生じた水が流れ落ちる箇所である。引き違い窓Wは左右の窓W1,W2によって構成され、引き違い窓Wを開くと、窓W1,W2が重なった状態となり、室内から見て左側の窓W1が外側に配置され、右側の窓W2が室内側に配置される。図2図1に示すII-II線における断面図である。図1,2に示すとおり、窓W1,W2にそれぞれ一つの結露水吸収構造体10が設置されている。結露水吸収構造体10は、複数の珪藻土タイル1,2と、珪藻土タイル1,2を支持するための支持部材5とによって構成されている。支持部材5は窓ガラスの表面Fに両面テープ7(厚さ0.8mm程度)で接着されている。結露水吸収構造体10を引き違い窓に適用する観点から、藻土タイルの厚さと、支持部材5における珪藻土タイルを接する箇所の厚さの合計は、例えば、10mm未満である。
【0017】
本実施形態で例示する珪藻土タイル1,2は、高さ(約50mm)及び厚さ(約9mm)が互いに同じである一方、幅が互いに異なっている。珪藻土タイル1の幅は約200mmであり、珪藻土タイル2の幅は約100mmである。本実施形態で例示する窓W1の幅は840mmであり、図1に示すように、2枚の珪藻土タイル1と、4枚の珪藻土タイル2とが併用されている。なお、複数の珪藻土タイル1,2の幅の合計は約800mmである。かかる構成は窓W2についても同様である。
【0018】
珪藻土タイル1,2は、十分な吸水性を有することが好ましく、珪藻土タイルの乾燥時の質量を100質量部とすると、80質量部以上(より好ましくは90質量部以上)の水を吸収できることが好ましい。珪藻土タイル1,2の水を吸収できる量(珪藻土タイルの乾燥時の質量基準)の上限値は、材料費等の観点から、例えば、107質量部であり、100質量部であってもよい。かかる珪藻土タイルは、宇部興産建材株式会社から購入することができる。なお、珪藻土タイル1の質量は約72gであり、珪藻土タイル2の質量は約35gである。
【0019】
支持部材5は、図2に示すように、窓ガラスの表面Fに接着される第1の面5aと、珪藻土タイル1,2の底面と対面する第2の面5bと、珪藻土タイル1,2の表面と対面する第3の面5cとを有する。支持部材5は、窓ガラスの表面Fとともに、珪藻土タイル1,2を配置するための溝部Gを構成する。すなわち、溝部Gは、窓ガラスの表面Fと、支持部材5の第2の面5b及び第3の面5cとによって構成される。本実施形態においては、第3の面5cの高さは約20mmである。このため、珪藻土タイル1,2の下側20mm程度が支持部材5に覆われ、残りの高さ30mm分の表面は露出した状態で溝部Gに配置されている。珪藻土タイル1,2は溝部Gに対して着脱自在に配置されている。
【0020】
溝部Gは、窓W1、W2の窓ガラスの幅方向の全体にわたって設けられている。これにより、溝部Gは、珪藻土タイル1,2を支持する役割を果たす他に、樋の役割も果たす。すなわち、溝部Gが窓ガラスの幅方向の全体にわたって形成されていることで、下に結露水が流れ落ちることを防止する。したがって、例えば、結露水が必ずしも珪藻土タイル1,2に直接流れ落ちなくても、換言すれば、窓ガラスの横方向に隙間なく複数の珪藻土タイルを配置しなくても(図1参照)、溝部Gでせき止められた結露水は溝部Gを通じて珪藻土タイル1,2に至って吸収される。
【0021】
上記構成の結露水吸収構造体10によれば、夜間に生じる結露水が珪藻土タイル1,2に吸収され、結露水に起因する不具合を十分に抑制できる。また、湿度が低い昼間に珪藻土タイル1,2は水を自発的に放出するため、使用者が特別な処理を施さなくても夜間に再び十分な量の結露水を吸収できる状態となる。珪藻土タイル1,2は溝部Gに対して着脱自在に配置されている。これにより、珪藻土タイル1,2の洗浄又は交換を必要に応じて容易に実施できる。また、結露が発生する季節が終了したら、珪藻土タイル1,2を容易に回収することができる。なお、回収した珪藻土タイル1,2に対して洗浄及び乾燥の処置を施した後、再度必要な時期まで保管しておけばよい。
【0022】
上記構成の結露水吸収構造体10は、例えば、使用者がキットを購入して自分で設置できることが好ましい。以下、本実施形態に係る結露水吸収構造体用のキットについて説明する。本実施形態に係るキットは、複数の珪藻土タイルと、支持部材と、これらを収容する包装材とを備える。なお、キットは、結露水吸収構造体の設置方法及び珪藻土タイルのメンテナンス方法等が記載された説明書を更に含んでもよい。
【0023】
図3は本実施形態に係るキットの内容物を模式的に示す平面図である。キットの内容物は以下のとおりである。
・珪藻土タイル1(幅200mm×高さ50mm×厚さ9mm):4枚
・珪藻土タイル2(幅100mm×高さ50mm×厚さ9mm):8枚
・珪藻土タイル3(幅50mm×高さ50mm×厚さ9mm):4枚
・支持部材5(長さ450mm×高さ40mm、ポリ塩化ビニル製):4本
【0024】
図3において、第1のタイル群G1は4つの珪藻土タイル1からなり、第2のタイル群G2は8つの珪藻土タイル2からなり、第3のタイル群G3は4つの珪藻土タイル3からなる。図3に示す内容物は一つの引き違い窓Wに二つの結露水吸収構造体を設置すること、すなわち、左右の窓W1,W2に一つずつの結露水吸収構造体を設置することを想定したものである。なお、図1に示す結露水吸収構造体10では珪藻土タイル3が使用されていない。図1に示す窓W1,W2(それぞれの幅:840mm)と異なる幅の窓に結露水吸収構造体を設置する場合、必要に応じて珪藻土タイル3も使用すればよい。支持部材5は1本の長さが450mmであるから、図1に示す窓W1(幅840mm)に適用するには、1本をそのまま使用するとともに、他の1本の長さが390mmとなるように切断して使用すればよい。キットを購入した使用者が特別な工具を使用せずに窓の幅に合わせて支持部材5の長さを調整できるように、支持部材5は鋏で切断可能なポリ塩化ビニル製である。
【0025】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、引き違い窓に好適に適用できる観点から、図2に示す形状の支持部材5を窓ガラスの表面Fに接着する態様を例示したが、引き違い窓以外の窓に適用する場合、あるいは、引き違い窓であっても窓の開閉の妨げとならない限り、図4に示すように、例えば、プレート状の支持部材6を窓の下枠Sの表面に接着してもよい。図4に示す結露水吸収構造体20においては、窓ガラスの表面Fと、窓の下枠Sの上面Saと、支持部材6の内面とによって溝部Gが構成される。
【符号の説明】
【0026】
1,2,3…珪藻土タイル、5,6…支持部材、5a…第1の面、5b…第2の面、5c…第3の面、7…両面テープ、10,20…結露水吸収構造体、F…窓ガラスの表面、G…溝部、G1…第1のタイル群、G2…第2のタイル群、G3…第3のタイル群、S…窓の下枠、Sa…上面、W…引き違い窓、W1,W2…窓
図1
図2
図3
図4