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特許7104124直流絶縁特性が改善された軟質ポリオレフィン樹脂組成物およびそれにより製造された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】直流絶縁特性が改善された軟質ポリオレフィン樹脂組成物およびそれにより製造された成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20220712BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220712BHJP
   C08K 3/014 20180101ALI20220712BHJP
   C08K 3/017 20180101ALI20220712BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220712BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C08L53/00
C08K3/013
C08K3/014
C08K3/017
C08L23/08
C08L23/16
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020183440
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2021075709
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】10-2019-0140824
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515253049
【氏名又は名称】ハンファ トータル ペトロケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】イ ウンウン
(72)【発明者】
【氏名】ギム ボンソク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヨンソン
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-195603(JP,A)
【文献】特開2010-265350(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1985611(KR,B1)
【文献】特開平08-007653(JP,A)
【文献】国際公開第2000/015713(WO,A1)
【文献】浅田 規 他,極性基が導入された高抵抗性オレフィン系高分子フィルムの電気伝導,電気学会論文誌A,日本,第116巻第12号,第1113-1120頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/00
C08K 3/013
C08K 3/014
C08K 3/017
C08L 23/08
C08L 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)~成分(C)の総重量を基準に、
(A)(A1)プロピレン単独重合体またはエチレン-プロピレンランダム共重合体と、(A2)エチレン-プロピレンゴム共重合体とが反応器内で段階的に重合され得られるエチレン-プロピレンブロック共重合体50重量%~95重量%;
(B)エチレン-α-オレフィンゴム共重合体4.8重量%~40重量%;および
(C)エチレンと極性単量体との共重合体0.2重量%~10重量%;を含むポリオレフィン樹脂組成物であって、
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)をキシレン溶剤により常温にて抽出する際に、前記キシレン溶剤により抽出されるゴム成分(A2)の135℃デカリン溶媒で測定される固有粘度が1.0dl/g~2.9dl/gであり、
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体中のゴム成分(A2)は、動的粘弾性測定装置による測定時のガラス転移温度が-60℃~-40℃にて表れ、
前記ポリオレフィン樹脂組成物は、2.16kgの荷重で230℃にて測定時の溶融指数が0.5g/10分~20g/10分であり、
前記ポリオレフィン樹脂組成物中のゴム成分(A2)は、動的粘弾性測定装置による測定時のガラス転移温度が-60℃~-40℃にて表れ、
前記ポリオレフィン樹脂組成物を成形して製造されるポリオレフィン樹脂成形品の体積抵抗が1016Ω・cm以上であり、直流絶縁破壊強度が100kV/mm以上であることを特徴とする、ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の溶融温度(Tm)が145℃~170℃である、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の、2.16kgの荷重で230℃にて測定時の溶融指数が0.5g/10分~20g/10分である、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)をキシレン溶剤により常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分(A2)の含有量が1重量%~50重量%である、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)が、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-1-ブテンゴム、エチレン-ブチレンゴム、エチレン-1-ペンテンゴム、エチレン-1-ヘキセンゴム、エチレン-1-ヘプテンゴム、エチレン-1-オクテンゴム、およびエチレン-4-メチル-1-ペンテンゴムからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項6】
前記エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)中のエチレン含有量が5重量%~90重量%である、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項7】
前記エチレンと極性単量体との共重合体(C)中の極性単量体がアセテート基、アクリレート基、カルボキシレート基、およびケトン基からなる群より選択される少なくとも一つの極性基を含む、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリオレフィン樹脂組成物をキシレン溶剤により常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分(A2、B、または両方)の含有量が10重量%~50重量%である、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項9】
前記抽出されたゴム成分(A2、B、または両方)の135℃デカリン溶媒で測定された固有粘度が1.0dl/g~3.0dl/gである、請求項8に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリオレフィン樹脂組成物の溶融温度(Tm)が145℃~170℃である、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項11】
酸化防止剤、中和剤、UV安定剤、長期耐熱安定剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、補強材、充填材、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、および染料からなる群より選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項12】
前記添加剤の含有量が前記ポリオレフィン樹脂組成物の総重量を基準に0.5重量%以下である、請求項11に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリオレフィン樹脂組成物を成形して製造されるポリオレフィン樹脂成形品。
【請求項14】
曲げ弾性率が500MPa以下であり、-40℃におけるIZOD衝撃強度が5kgf・cm/cm以上である、請求項13に記載のポリオレフィン樹脂成形品。
【請求項15】
伸び率が400%以上であり、同試験片を135℃にて10日間加熱した後の伸び率が初期(加熱前)伸び率対比75%以上である、請求項13に記載のポリオレフィン樹脂成形品。
【請求項16】
体積抵抗が1016Ω・cm以上であり、同試験片を135℃にて10日間加熱した後の体積抵抗が1016Ω・cm以上である、請求項13に記載のポリオレフィン樹脂成形品。
【請求項17】
直流絶縁破壊強度が100kV/mm以上であり、同試験片を135℃にて10日間加熱した後の直流絶縁破壊強度が100kV/mm以上である、請求項13に記載のポリオレフィン樹脂成形品。
【請求項18】
高圧電力機器の絶縁体である、請求項13に記載のポリオレフィン樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流絶縁特性が改善された軟質ポリオレフィン樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関するものである。詳細には、本発明は耐熱性および機械的物性に優れ、直流絶縁特性が改善された軟質ポリオレフィン樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリプロピレン樹脂は、優れた剛性と高い耐熱性、化学薬品に対する安定性と高い絶縁特性のために、電子製品の重要部品の包装、自動車用電気部品のハウジング、電気製品の主要部位の保護、小型電熱器の表面などと、高い電圧に対する絶縁特性および耐熱性を同時に求められる製品に広く用いられる。
【0003】
しかし、ポリプロピレン樹脂は、剛性が高く、屈曲の際に白化現象が発生するため、屈曲のある部品に適用することが難しく、衝撃に脆弱であり、特に低温にて破壊されやすい性質があるため、屋外環境や屈曲の多い部位における設置および使用が困難である。
【0004】
ポリプロピレン樹脂のこのような欠点を改善するために、エチレン-プロピレンゴム共重合体(ethylene-propylene rubber;EPR)、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(ethylene-α-olefin rubber)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム共重合体(ethylene-propylene-diene rubber;EPDM)などを混合して使用したりもする。
【0005】
ところで、ポリプロピレン樹脂に前述のゴム共重合体を混合して組成物の軟質性や衝撃性を改善しようとすると、相分離が発生してポリプロピレンとゴムとの間に界面が生成されることによって、電気絶縁特性が低下したり、耐熱特性が低下したりする場合が生じ得る。したがって、ゴム成分の選定および含有量の選択に注意が必要である。
【0006】
一方、ポリプロピレン樹脂の代わりに、線形低密度ポリエチレン(linear low-density polyethylene;LLDPE)、高密度ポリエチレン(high-density polyethylene;HDPE)を使用するか、これを架橋させて使用しようとする試みもある。
【0007】
ところが、線形低密度ポリエチレンを架橋させて使用すると、架橋残渣によって直流絶縁体の絶縁性能を低下させる空間電荷が累積される問題が発生する。そして、使用寿命に達した後、架橋のためリサイクルが難しいので焼却や廃棄するしかなく、リサイクルの際には別途の設備費用がさらに生じる。架橋過程において発生する架橋副産物による環境汚染の可能性も大きく、水架橋による製品の乾燥過程が追加で必要となり、押出時に発生する熱によって過剰に架橋されると、加工性が制限されるという欠点がある。
【0008】
そこで、ポリオレフィン樹脂組成物の耐熱性、軟質性、および耐寒性を確保すると同時に、絶縁特性および電気特性を向上しようとする研究が進められてきた。
【0009】
特許文献1は、ポリプロピレンに、エチレン、α-オレフィン、EPDMなどを混合して冷却速度による交流破壊電圧強度の変化について開示しているが、組成物の耐熱性および軟質性を改善しようとする試みはなかった。特許文献2は、絶縁体として使用される架橋ポリエチレン樹脂にアルミニウムシリケートナノフィラーを混合して、直流絶縁破壊強度を改善する案を提示したが、当該架橋ポリエチレン樹脂組成物は、耐熱性と環境性能に優れない。
【0010】
また、特許文献3では、線形低密度ポリエチレンにカルボキシル基を含む変性ポリエチレン樹脂を添加して直流絶縁体を成形することにより、絶縁破壊強度を改善しようとしており、特許文献4では、ナノサイズの触媒システムを適用したポリプロピレン樹脂の直流絶縁特性を改善しようとした。特許文献5では、ポリエチレンまたはポリプロピレン絶縁樹脂にナノ無機粒子(酸化マグネシウム、カーボン粒子、酸化ケイ素、二酸化チタンなど)を混合して、体積抵抗率に優れ、絶縁破壊強度に優れた絶縁物質を調製する方法を開示している。しかし、このような方法は、ナノ粒子をポリオレフィン上に均一に分散することが難しいという欠点を有している。
【0011】
特許文献6には、α-オレフィン共単量体ゴム相とプロピレンとの共重合体を混合して軟質性を確保した熱可塑性高分子材料が開示されている。しかし、ゴム相の含有量が少ないと、絶縁素材として使用する際、軟質性が低下して架設および設置が難しく、ゴム相の含有量が高いと、機械的物性を左右するポリプロピレンの利点がなくなるという問題が生じる。
【0012】
特許文献7には、ポリプロピレンに絶縁流体を添加して、絶縁特性が向上してリサイクル可能な絶縁体に関する技術が開示されており、特許文献8には、結晶サイズを減らすために有機核剤を添加したポリプロピレン樹脂を絶縁体に使用した技術が開示されている。しかし、ポリプロピレンの高い剛性により、可撓性が低下する問題を解決するために、多量のゴムをさらに混練したため、不均一な混練による部分的な物性低下が発生し得る。また、結晶サイズを減らすために添加した有機核剤によるコスト上昇と、これにより誘発される欠点が存在することとなり、絶縁体としてポリプロピレンを使用するためには、これに対する改善が必要な実情である。
【0013】
特許文献9には、ポリプロピレン樹脂とエチレン-プロピレン共重合樹脂、あるいはエチレン-α-オレフィンゴム共重合体からなるポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。しかし、-40℃にて耐寒衝撃改善に対する実際の結果が開示されておらず、軟質性確保のために混合するエチレン-プロピレンゴムあるいはエチレン-α-オレフィンゴムの含有量が増加すると、引張特性および機械的物性、加熱変形が激しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2013/148028号
【文献】国際公開第2014/029447号
【文献】特許第3424050号公報
【文献】国際公開第2013/030206号
【文献】韓国公開特許第2011-0110928号公報
【文献】韓国公開特許第2014-0040082号公報
【文献】韓国公開特許第2014-0102407号公報
【文献】韓国公開特許第2014-0053204号公報
【文献】韓国特許第246138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記のような問題点を解決するために、本発明の目的は、絶縁特性、耐熱性および機械的物性に優れた軟質ポリオレフィン樹脂組成物を提供するものである。
【0016】
本発明の他の目的は、前記ポリオレフィン樹脂組成物から製造される成形品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するための本発明の一具体例により、成分(A)~成分(C)の総重量を基準に、(A)プロピレン単独重合体またはエチレン-プロピレンランダム共重合体とエチレン-プロピレンゴム共重合体とが、反応器内で段階的に重合され得られるエチレン-プロピレンブロック共重合体50重量%~95重量%;(B)エチレン-α-オレフィンゴム共重合体4.8重量%~40重量%;および(C)エチレンと極性単量体との共重合体0.2重量%~10重量%を含むポリオレフィン樹脂組成物であって、エチレン-プロピレンブロック共重合体中のゴム成分は動的粘弾性測定装置(Dynamic Mechanical Analyzer、DMA)で測定時のガラス転移温度が-60℃~-40℃にて表れ、ポリオレフィン樹脂組成物は2.16kgの荷重で230℃にて測定時の溶融指数が0.5g/10分~20g/10分であり、ポリオレフィン樹脂組成物中のゴム成分は動的粘弾性測定装置で測定時のガラス転移温度が-60~-40℃にて表れることを特徴とする、ポリオレフィン樹脂組成物が提供される。
【0018】
エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の溶融温度(Tm)が145℃~170℃であり得る。
【0019】
エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)は、2.16kgの荷重で230℃にて測定時の溶融指数が0.5g/10分~20g/10分であり得る。
【0020】
エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)は、キシレン溶剤により常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分の含有量が1重量%~50重量%であり、好ましくは5重量%~45重量%であり得る。
【0021】
この際、キシレン溶剤により抽出されたゴム成分の、135℃デカリン溶媒で測定される固有粘度が1.0dl/g~3.0dl/gであり得る。
【0022】
エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)は、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-1-ブテンゴム、エチレン-ブチレンゴム、エチレン-1-ペンテンゴム、エチレン-1-ヘキセンゴム、エチレン-1-ヘプテンゴム、エチレン-1-オクテンゴム、およびエチレン-4-メチル-1-ペンテンゴムからなる群より選択される少なくとも一つであり得る。
【0023】
エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)は、エチレン含有量が5重量%~90重量%であり、好ましくは5重量%~80重量%であり得る。
【0024】
エチレンと極性単量体との共重合体(C)中の極性単量体は、アセテート基、アクリレート基、カルボキシレート基、およびケトン基からなる群より選択される少なくとも一つの極性基を含み得る。
【0025】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、キシレン溶剤により常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分の含有量が10重量%~50重量%であり、好ましくは15重量%~40重量%であり得る。
【0026】
この際、抽出されたゴム成分の、135℃デカリン溶媒で測定された固有粘度が1.0dl/g~3.0dl/gである。
【0027】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、溶融温度(Tm)が145℃~170℃であり得る。
【0028】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、酸化防止剤、中和剤、UV安定剤、長期耐熱安定剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、補強材、充填材、耐候安定剤、帯電防止剤、核剤、顔料、および染料からなる群より選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含み得る。
【0029】
この際、添加剤の含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物の総重量を基準に0.5重量%以下であり得る。
【0030】
本発明の他の具体例により、前記ポリオレフィン樹脂組成物を成形して製造されるポリオレフィン樹脂成形品が提供される。
【0031】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂成形品は、曲げ弾性率が500MPa以下であり、-40℃にてIZOD衝撃強度が5kgf・cm/cm以上であり得る。
【0032】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂成形品は、伸び率が400%以上であり、同試験片を135℃にて10日間加熱(aging)した後の伸び率が、初期(加熱前)伸び率対比75%以上であり得る。
【0033】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂成形品は、体積抵抗が1016Ω・cm以上であり、同試験片を135℃にて10日間加熱した後の体積抵抗もまた1016Ω・cm以上であり得る。
【0034】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂成形品は、直流絶縁破壊強度が100kV/mm以上であり、同試験片を135℃にて10日間加熱した後の直流絶縁破壊強度もまた100kV/mm以上であり得る。
【0035】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂成形品は、高圧電力機器の絶縁体であり得る。
【発明の効果】
【0036】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、耐衝撃特性、耐加熱変形、機械的物性に優れ、電気的特性が良好であるため直流絶縁体として好適であり、架橋されないためリサイクルが可能なので環境に優しい。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明の一具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、成分(A)~成分(C)の総重量を基準に、(A)プロピレン単独重合体またはエチレン-プロピレンランダム共重合体とエチレン-プロピレンゴム共重合体とが、反応器内で段階的に重合されて得られるエチレン-プロピレンブロック共重合体50重量%~95重量%;(B)エチレン-α-オレフィンゴム共重合体4.8重量%~40重量%;および(C)エチレンと極性単量体との共重合体0.2重量%~10重量%を含む。
【0038】
(A)エチレン-プロピレンブロック共重合体
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を含む。この際、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)は、プロピレン単独重合体またはエチレン-プロピレンランダム共重合体と、エチレン-プロピレンゴム共重合体とが、反応器内で段階的に重合されて得られるものである。
【0039】
たとえば、まずプロピレン単独重合体またはエチレン-プロピレンランダム共重合体のポリプロピレン系マトリックス(matrix)が重合され、次いで、該ポリプロピレン系マトリックスにエチレン-プロピレンゴムがブロック共重合され、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)樹脂が調製され得る。
【0040】
エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)は、溶融温度(Tm)が145℃~170℃であり得る。該溶融温度が145℃よりも低いと耐熱性が十分ではなく、熱による樹脂の変性が発生することがあり、成形品の寸法が崩壊され得るので、高い温度で使用される電気機器に使用するには不適である。
【0041】
エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)は、ASTM D1238に基づき、2.16kgの荷重で230℃にて測定する際の溶融指数が0.5g/10分~20g/10分であり得る。エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の溶融指数が0.5g/10分未満であると押出工程に不適であり、20g/10分を超えると分子量が少なくて耐電圧特性が低下し得る。
【0042】
エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)は、キシレン溶剤により常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分(つまり、溶剤抽出物)の含有量が1重量%~50重量%であり、好ましくは5重量%~45重量%であり得る。該ゴム成分の含有量が1重量%未満であると強度が高くて可撓性が低下し、ゴム成分の含有量が50重量%を超えると加熱変形率が高く、引張強度および伸び率強度が低いため耐熱特性および加工性が低下する。
【0043】
ここで、キシレン溶剤により抽出されたエチレン-プロピレンブロック共重合体(A)中のゴム成分は、動的粘弾性測定装置(dynamic mechanical analyzer;DMA)による測定時のガラス転移温度(glass transition temperature;Tg)が-60℃~-40℃である。この場合、-40℃にて測定される成形品は耐寒打撃特性に優れる。
【0044】
また、キシレン溶剤により抽出されたエチレン-プロピレンブロック共重合体(A)中のゴム成分は、135℃デカリン溶媒で測定される固有粘度が1.0dl/g~3.0dl/gであり得る。該固有粘度が1.0dl/g未満であると、衝撃強度が良くなく、3.0dl/gを超えると、ゴム成分の凝集が発生することがあり、界面の面積が低下して空間電荷が累積されやすい。
【0045】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、成分(A)~成分(C)の総重量を基準に、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を50重量%~95重量%の含有量で含む。エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の含有量が95%を超えると、軟質性が落ちて可撓性が低下し得る。該含有量が50%未満であると、耐熱性が落ち加熱変形特性が低下して、高温の運転において外形の変化が深刻化し得る。
【0046】
本発明において、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を調製する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知のエチレン-プロピレンブロック共重合体の調製方法をそのまま、または適切に変形して使用し得る。
【0047】
好ましくは、バルク(bulk)反応器2基と気相反応器2基とが直列に連結され、連続的に重合し得る、たとえば三井(Mitsui)社のハイポール工程(Hypol process)を利用して、通常の技術者に公知の重合方法により、エチレン-プロピレンブロック共重合体を調製し得る。
【0048】
具体的には、1段目と2段あるいは3段目の反応器では、プロピレンを単独注入してプロピレン単独重合体を生成するか、エチレンをさらに注入してエチレン-プロピレンランダム共重合体を生成し得る。エチレン-プロピレンランダム共重合体の重合時には、各重合反応器で同量のエチレンが共重合され得る。4段目あるいは3段目と4段目の反応器では、エチレンとプロピレンとを投入してエチレン-プロピレンゴムを重合することにより、最終的なエチレン-プロピレンブロック共重合体を得られる。生成される共重合体の溶融指数は、各反応器に水素を注入して制御し得る。
【0049】
前記重合段階において触媒は、当業界に公知の触媒を制限なく使用し得るが、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒を使用することが好ましい。この際、触媒は、ジアルコキシマグネシウム担体にチタン化合物とフタル酸系の内部電子供与体を反応させて調製され得、これに助触媒として有機アルミニウム化合物(例えば、トリエチルアルミニウム)および外部電子供与体としてジアルキルジアルコキシシラン系化合物(例えば、ジシクロペンチルジメトキシシラン)を使用することが好ましい。
【0050】
(B)エチレン-α-オレフィンゴム共重合体
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)を含む。
【0051】
エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)は、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-1-ブテンゴム、エチレン-ブチレンゴム、エチレン-1-ペンテンゴム、エチレン-1-ヘキセンゴム、エチレン-1-ヘプテンゴム、エチレン-1-オクテンゴム、およびエチレン-4-メチル-1-ペンテンゴムからなる群より選択される少なくとも一つであり得る。好ましくは、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)がエチレン-プロピレンゴムであり得る。
【0052】
エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)は、エチレン含有量が5重量%~90重量%であり、好ましくは5重量%~80重量%であり得る。具体的には、エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)をフーリエ変換赤外分光光度計で測定する際のエチレン含有量が5重量%~90重量%、好ましくは5重量%~80重量%である。エチレン含有量が5重量%未満であると、エチレン-プロピレンゴムが結晶化してポリオレフィン樹脂組成物の耐寒衝撃強度が減少し、エチレン含有量が90重量%を超えると、ゴム共重合体が得られない。
【0053】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、成分(A)~成分(C)の総重量を基準に、前記エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)を4.8重量%~40重量%の含有量で含む。エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)の含有量が4.8重量%未満であると、軟質性が十分に改善されず、40重量%を超えると、耐熱特性が急激に減少する。
【0054】
エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)は、ハイポール工程の気相反応器において、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)の存在下でオレフィン単量体をさらに供給して重合し得る。
【0055】
別の方法として、ハイポール工程で得られたエチレン-プロピレンブロック共重合体(A)に、商業的に入手可能なエチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)をブレンドすることにより、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を調製することもできる。商業的に入手可能なエチレン-プロピレンゴム共重合体(B)は、VERSIFY(登録商標、DOW)、VISTAMAXX(登録商標、ExxonMobil)、TAFMER(登録商標、三井化学)、KEP(クムホ(錦湖)石油化学)、ENGAGE(登録商標、DOW)、EXACT(登録商標、ExxonMobil)、LUCENE(登録商標、LG化学)、SOLUMER(SKケミカル)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
(C)エチレンと極性単量体との共重合体
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、エチレンと極性単量体との共重合体(C)を含む。
【0057】
エチレンと極性単量体との共重合体(C)中の極性単量体は、アセテート基、アクリレート基、カルボキシレート基、およびケトン基からなる群より選択される少なくとも一つの極性基を含み得るが、これらに特には制限されない。
【0058】
エチレンと極性単量体との共重合体(C)は、ハンファトータル社、アルケマ社等により、商業的に市販されているものを使用し得るが、これらに特には制限されない。
【0059】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、成分(A)~成分(C)の総重量を基準に、エチレンと極性単量体との共重合体(C)を0.2重量%~10重量%の含有量で含む。エチレンと極性単量体との共重合体(C)の含有量が0.2重量%未満であると、界面に電子移動を制御するトラップが形成されないため、体積抵抗率および絶縁破壊強度が改善されない。該含有量が10重量%を超えると、成形品の耐熱特性が低下する。
【0060】
[組成物]
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物を調製する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知のブレンド方法をそのまま、または適切に変形して使用し得る。
【0061】
具体的には、例えば、前術の各樹脂と後述する添加剤とを必要量の分ニーダー(kneader)、ロール(roll)、バンベリーミキサー(Banbury mixer)などの混練機または1軸/2軸押出機等に投入した後、これらの機器を用いて投入された原料をブレンドする方法により、本発明のポリオレフィン樹脂組成物が調製され得る。
【0062】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、溶融温度(Tm)が145℃~170℃であり得る。該溶融温度が145℃よりも低いと、耐熱性が十分ではなく、熱による樹脂の変性が発生し、運転温度および瞬間温度が130℃以上まで上昇する高電圧高耐熱電力機器の絶縁体に適用するには不適である。
【0063】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、ASTM D1238に基づき、2.16kgの荷重で230℃にて測定時の溶融指数が0.5g/10分~20g/10分である。該溶融指数が0.5g/10分未満であると、押出温度と負荷が上昇し生産性が低下して炭化物が発生し、20g/10分を超えると、押出物を形成する際にたわみ現象が発生して好ましくない。
【0064】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、キシレン溶剤により常温にて抽出する際に抽出されるゴム成分(つまり、溶剤抽出物)の含有量が10重量%~50重量%であり、好ましくは15重量%~40重量%であり得る。該ゴム成分の含有量が10重量%未満であると、軟質性が低下して製品の設置に制限があり、50重量%を超えると、耐熱特性が低下して高温の耐熱性を求められる絶縁体として不適である。
【0065】
なお、キシレン溶剤により抽出された本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物中のゴム成分は、動的粘弾性測定装置(dynamic mechanical analyzer;DMA)による測定時のガラス転移温度(glass transition temperature;Tg)が-60℃~-40℃にて表れる。この場合、-40℃にて測定される成形品は耐寒打撃特性に優れる。
【0066】
また、キシレン溶剤により抽出された本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物中のゴム成分は、135℃デカリン溶媒で測定される固有粘度が1.0dl/g~3.0dl/gであり得る。該固有粘度が1.0dl/g未満であると、衝撃強度が良くなく、3.0dl/gを超えると、ゴム成分の凝集が発生することがあり、界面の面積が低下して空間電荷の累積を制御するトラップが十分に生成されない。
【0067】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、本発明の目的に反しない範囲内で添加剤を含み得る。例えば、本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、酸化防止剤、中和剤、UV安定剤、長期耐熱安定剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、補強材、充填材、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、および染料からなる群より選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含み得るが、これらに特に制限されるものではない。
【0068】
好ましい一実施例として、本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、耐熱安定性を増加させるために酸化防止剤を含み得る。
【0069】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤などが使用されることができ、具体的にテトラキス(メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシリレート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、1,3,5-トリメチル-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゼン)およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選択される少なくとも一つであり得るが、これらに制限されるものではない。
【0070】
好ましい一実施例として、本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、触媒残渣を除去するための中和剤としてヒドロタルサイト、ステアリン酸カルシウムなどを含み得るが、これらに制限されるものではない。
【0071】
この際、添加剤の含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物の総重量を基準に0.5重量%以下であり得る。
【0072】
[成形品]
本発明の他の具体例により、前術のポリオレフィン樹脂組成物を成形して製造されるポリオレフィン樹脂成形品が提供される。
【0073】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物から成形品を製造する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知の方法を使用し得る。例えば、本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物を、射出成形、押出成形、キャスティング成形などと通常の方法により成形して、ポリオレフィン樹脂成形品を製造し得る。
【0074】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂成形品は、曲げ弾性率が500MPa以下であり、-40℃にて衝撃強度が5kgf・cm/cm以上であり得る。曲げ弾性率が500MPaよりも高いと、軟質性が低下し、-40℃にて測定した衝撃強度が5kgf・cm/cm未満であると、冬季成形品の設置および輸送する際に破壊が発生し得る。
【0075】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂成形品は、伸び率が400%以上であり、同試験片を135℃にて10日間加熱(aging)した後の伸び率が初期(加熱前)伸び率対比75%以上であり得る。伸び率が400%未満であると、成形品の曲げ部の最外郭部位で破断が起こり得る。
【0076】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂成形品は、体積抵抗が1016Ω・cm以上であり、同試験片を135℃にて10日間加熱した後の体積抵抗もまた1016Ω・cm以上であり得る。体積抵抗がこの範囲内であると、成形品が絶縁体として機能し得る。
【0077】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂成形品は、直流絶縁破壊強度が100kV/mm以上であり、同試験片を135℃にて10日間加熱した後の直流絶縁破壊強度もまた100kV/mm以上であり得る。直流絶縁破壊強度がこの範囲であると、成形品の耐電圧特性に優れて絶縁体として機能し得る。
【0078】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂成形品は、電気絶縁体であり得る。
【0079】
(実施例)
以下、実施例と比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0080】
以下の実施例と比較例において使用された樹脂成分(A)~(C)は、次のような方法により調製または入手した。
【0081】
(実施例1)
前術のハイポール工程と触媒とを利用して、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を調製した。この際、バルク反応器である1段目と2段目反応器の運転温度と圧力は、それぞれ68℃~75℃、30kg/cm~40kg/cmおよび68℃~75℃、25kg/cm~35kg/cmの範囲であり、気相反応器である3段目と4段目反応器の運転温度と圧力は、それぞれ75℃~82℃、15kg/cm~20kg/cmおよび68℃~75℃、10kg/cm~17kg/cmの範囲であった。エチレン-α-オレフィンゴム共重合体(B)としては、表1に記載の組成を有するものを使用した。
【0082】
エチレンと極性単量体との共重合体(C)としては、エチレン-ブチルアクリレートポリマー(アルケマ社のロトリル17BA04)とエチレン-酢酸ビニルポリマー(ハンファトータル社のE156W)をそれぞれ使用した。
【0083】
(実施例2)
実施例1と同じ条件下で、エチレンとプロピレンの含有量を変化させ、表1の組成を有するエチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を得た。エチレン-プロピレンゴム共重合体(B)と、エチレンと極性単量体との共重合体(C)としては、表1に記載の組成を有するものを使用した。
【0084】
(実施例3)
実施例1と同じ条件下で、エチレンとプロピレンの含有量を変化させ、表1の組成を有するエチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を得た。エチレン-オクテンゴム共重合体(B)と、エチレンと極性単量体との共重合体(C)としては、表1に記載の組成を有するものを使用した。
【0085】
(比較例1)
実施例1と同じエチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を使用し、エチレン-プロピレンゴム共重合体(B)としては、表2に記載の組成を有するものを使用した。
【0086】
(比較例2)
実施例1と同じエチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を使用し、エチレン-ブテンゴム共重合体(B)と、エチレンと極性単量体との共重合体(C)としては、表2に記載の組成を有するものを使用した。
【0087】
(比較例3)
樹脂(A)としては、ハンファトータル社のエチレン-プロピレンランダムブロック共重合体(CF335)を使用し、エチレン-オクテンゴム共重合体(B)と、エチレンと極性単量体との共重合体(C)としては、表2に記載の組成を有するものを使用した。
【0088】
(比較例4)
樹脂(A)としては、ハンファトータル社のエチレン-プロピレンランダムブロック共重合体(CF330)を使用し、エチレンと極性単量体との共重合体(C)としては表2に記載のものを使用した。
【0089】
(比較例5)
実施例1と同じ条件下で、エチレンとプロピレンの含有量を変化させ、表1の組成を有するエチレン-プロピレンブロック共重合体(A)を得た。エチレン-ブテンゴム共重合体(B)と、エチレンと極性単量体との共重合体(C)としては、表2に記載の組成を有するものを使用した。
【0090】
前記実施例1~3および比較例1~5において調製された組成物および成形品試験片の物性を、下記の方法および基準によって測定した。その結果を下記表1および表2に示す。
【0091】
(1)溶融指数(melt index)
ASTM D 1238の方法により、2.16kgの荷重で230℃にて測定した。
【0092】
(2)溶剤抽出物(xylene soluble)の含有量
ポリプロピレン樹脂を、キシレンに1%の濃度で140℃にて1時間溶解させた後、常温にて2時間経過した後抽出してその重量を測定し、ポリプロピレン樹脂全体の重量に対する百分率で表示した。
【0093】
(3)溶剤抽出物の固有粘度
粘度計を用いて、135℃のデカリン溶媒で溶媒抽出物の固有粘度を測定した。
【0094】
(4)溶融温度
TAインスツルメント社のQ2000示差走査熱量計(differential scanning calorimetry;DSC)を用いて、サンプルを200℃にて10分間等温に維持して熱履歴を除去した後、200℃から30℃まで毎分10℃ずつ冷却しながら結晶化させて、同じ熱履歴を持つようにした後、30℃にて10分間等温維持し、さらに毎分10℃ずつ昇温させながらピーク温度から溶融温度(melting temperature;Tm)を求めた。
【0095】
(5)ガラス転移温度
動的粘弾性測定装置(dynamic mechanical analyzer、DMA、TAインスツルメント社Q800)を用いて、-140℃から2℃/分の速度で145℃まで昇温させて応力緩和曲線(stress relaxation curve)からゴム成分のガラス転移温度(glass transition temperature;Tg)を求めた。
【0096】
(6)曲げ弾性率(flexural modulus;FM)
ASTM D790の方法により測定した。射出試験片の規格は、100mm×10mm×3mmであった。
【0097】
(7)加熱変形
射出温度240℃にて長さ30mm、幅15mm、厚さ2mm規格の試験片を射出し、KS C IEC 60811-508の方法により130℃、6時間1.6kgの荷重を加えて変形された厚さを得て、変形された厚さを初期厚さで除して変形率を得た。加熱変形率が50%未満であれば通過、それ以上であれば失敗として評価した。
【0098】
(8)アイゾット(IZOD)衝撃強度
ASTM D256の方法により-40℃にて測定した。
【0099】
(9)破断伸び率
IEC60811-501の方法により25mm/分で測定した。老化後の実験は、135℃の対流式オーブン(convection oven)で10日間加熱した後に伸び率を測定し、伸び残率は該値を初期伸び率で除して求めた。
【0100】
(10)直流絶縁破壊電圧
ポリプロピレン試験片は、実験用押出機(HAAKE extruder)を用いて200μm厚のシートを作製し、架橋ポリエチレン(XLPE)試験片は180℃にて200μm厚にプレス成形して準備した。ASTM D149-92の方法により、直径12.7mmである球対球電極(sphere electrodes)を使用して、常温にて直流絶縁破壊電圧を測定した。老化後の実験は135℃対流式オーブンで10日間加熱した後、直流絶縁破壊電圧を測定した。
【0101】
(11)体積抵抗
240℃の射出温度にて10cm×10cm×2mm規格の射出試験片を作製し、これを2日間常温にて加熱した後、ASTM D257に基づいて測定した。老化後の実験は135℃対流式オーブンで10日間加熱した後、体積抵抗を測定した。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
前記表1と表2において、成分(A)のガラス転移温度は、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)に存在するゴム成分のガラス転移温度を指し、組成物(熱的挙動項目)のガラス転移温度は、組成物内に存在するゴム成分のガラス転移温度を指す。組成物のガラス転移温度#2は、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A)中のゴム成分のガラス転移温度とともに、本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物の耐衝撃強度に影響を与える因子として理解され、組成物のガラス転移温度#1は、成分(B)の影響により表れるガラス転移温度として、ポリオレフィン樹脂組成物の耐衝撃強度に影響を与えないものと理解される。
【0105】
前記表から確認されるように、本発明の範囲に属する実施例で得られたポリオレフィン樹脂組成物は、軟質特性を示す曲げ弾性率が低く、耐衝撃強度が高く、同時に絶縁特性に優れている。特に、実施例の樹脂組成物は耐熱性に優れており、高温にて長期間の老化後に測定した物性の変化が大きくなかった。
【0106】
一方、比較例1~3の場合、絶縁抵抗が低く、直流絶縁破壊強度も低いため、絶縁体として使用する際に分厚い絶縁体を形成する必要があるため望ましくなく、比較例4と5の場合は耐熱性が劣って、高温における老化時に物性が急激に低下した。
【0107】
本発明の具体例によるポリオレフィン樹脂組成物は、耐寒耐衝撃強度、耐加熱変形、機械的物性に優れ、電気的特性が良好のため直流絶縁体に好適であり、架橋されないためリサイクルが可能なので環境に優しい。