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特許7104125可搬ロボット穿孔装置及び天井及び壁への穿孔方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】可搬ロボット穿孔装置及び天井及び壁への穿孔方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20220712BHJP
   E04F 21/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B25J11/00 A
E04F21/00 Z
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2020188842
(22)【出願日】2020-11-12
(62)【分割の表示】P 2017542289の分割
【原出願日】2015-10-27
(65)【公開番号】P2021014013
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】1419182.9
(32)【優先日】2014-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521468785
【氏名又は名称】ヒルティ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルヴォルセン、ホーヴァルド
(72)【発明者】
【氏名】ヘンニンゲ、トム アスル
(72)【発明者】
【氏名】ファゲルタン、コンラッド
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-111892(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0296807(US,A1)
【文献】特開平10-205268(JP,A)
【文献】特開平06-179108(JP,A)
【文献】特開2007-001005(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0502693(KR,B1)
【文献】特開2011-000661(JP,A)
【文献】特開2013-035121(JP,A)
【文献】特開2005-297318(JP,A)
【文献】特開平06-047609(JP,A)
【文献】特開平06-031514(JP,A)
【文献】鹿又一秀 他,建築設備Q&A,空気調和衛生工学 6月号 ,日本,社団法人空気調和・衛生工学会,2010年06月05日,第84巻 第6号,pp.53-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B23B 35/00 - 45/16
B28D 1/14
B23Q 11/00 - 11/14
E21D 20/00
E04F 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場における天井及び壁に孔を開けるようになっているロボット穿孔装置であって、
下部構造に取り付けられたロボットアームを備え、
前記下部構造が、前記ロボットアームを作業位置に上げるよう配置された昇降機構を備え、
前記ロボットアームが基端及び可動端を備え、
前記基端が前記昇降機構の上面に取り付けられ、前記可動端が3次元空間内で前記基端に対して移動可能であり、
前記可動端に設けられた、穿孔デバイスを保持するためのマウントと、
前記ロボットアームの動作を制御するための制御ユニットと、
前記マウントに装着された穿孔デバイスと、
前記穿孔デバイスに取り付けられ且つ真空デバイスに接続されて、前記穿孔デバイスのドリルビットの周囲の領域を吸引するシュラウドと、
を更に備え、
前記シュラウドは、前記ドリルビットが貫通する障壁を備え、
前記障壁が、空気流に渦流を発生させるように配置された複数の羽根を備え
前記シュラウドには前記シュラウド内の吸引を制御する弁が設けられており、
前記弁は所定の穿孔深さに達すると開かれる、
ロボット穿孔装置。
【請求項2】
前記昇降機構が、シザージャッキの昇降台を備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記昇降機構が、テレスコピックリフトを備える請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ロボットアーム及び前記ロボットアームの任意の支持構造の重量が46kg未満であり、個々の重量が23kg未満である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記ロボットアームの前記基端が、垂直面に取り付けられ、前記垂直面から横方向に延出しているショルダージョイントを備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御ユニットが、前記下部構造の前記昇降機構及び前記下部構造の動作も制御するように構成されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ロボットアームが、前記ロボットアームの前記可動端を6自由度で操作可能にする複数のジョイントを有する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記シュラウドが、前記ドリルビットのドリル先端を越えた位置まで延設されている請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記シュラウドが、天井又は壁に孔を開けるときに前記シュラウドを収縮させるベローズを備える請求項1又は請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記ベローズの内部が、前記ドリルビットの回転時に削りかすが前記真空デバイスの真空源に向かって移動し易くなる螺旋状に形成されている請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記シュラウドが、天井又は壁に孔を開けるときに前記シュラウドを収縮させるテレスコピックボディを備える請求項1又は請求項8記載の装置。
【請求項12】
前記障壁が、任意の空気流を前記ドリルビットの回転方向に沿って前記障壁を通過し前記真空デバイスの真空源に向わせる請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記障壁が、前記障壁の上方と下方とで圧力を等しく維持するのに十分な流体連通を可能にする請求項1又は請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記マウントが、振動を吸収するのに十分な移動を可能にする懸架システムを備える請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記懸架システムが、前記ドリルビットの軸線と平行な方向にブッシュ内を摺動するように配置された1本以上のロッド又はレールを備える請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記懸架システムの一方側が、前記ロボットアームの前記可動端に取り付けるプレートを備え、
前記懸架システムの他方側が、前記穿孔デバイスの座部を提供する構造のプレートを備える
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記懸架システムが、前記マウントを中立位置に戻す1つ以上の付勢デバイスを含む請求項14,請求項15又は請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記1つ以上の付勢デバイスの予荷重を調節する予荷重調節器を更に備える請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記懸架システムが、前記ロボットアームと前記穿孔デバイスとの間の振動による瞬間的な相対的変位を測定する直線位置センサ備える請求項14から請求項18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記ロボット穿孔装置が天井又は壁上の基準位置を特定するための視覚システムを更に備える請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
レーザトータルステーションを更に備える請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
BIMファイルへのアクセス及び/又は前記BIMファイルの読み出しのためのインターネット接続又は通信ポートを更に備える請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記制御ユニットが、BIMファイルを分析し、前記BIMファイルで指定された孔を開ける順序を決定することで前記ロボット穿孔装置の作業スケジュールを決定するように構成されている請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記制御ユニットが、孔の大きさに基づいて、ある配置の孔についての順序を決定するように構成されている請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記制御ユニットが、場所に基づき且つ前記ロボットアームのリーチを考慮して、ある配置の孔についての順序を決定するように構成されている請求項23又は請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記制御ユニットが、穿孔作業の開始前に、建設現場における前記ロボット穿孔装置を配置する1つ以上の場所を決定するように構成されている請求項23,請求項24又は請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記制御ユニットが、開けられた孔に対する仕上げを決定するように構成されたロボットサーバを備える請求項23から請求項26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
建設現場における天井及び壁に孔を開ける方法であって、
ロボットアームと、穿孔デバイスと、制御ユニットとを備えるロボット穿孔装置を用意し、
一連の穿孔作業を実行するための指示を前記制御ユニットのメモリにインストールし、
第1の場所を設定し、
前記メモリに記憶されている穿孔作業を開始し、インストールされた前記指示に従って、前記穿孔デバイスを操作してある配置の孔を天井又は壁に開ける一連の制御された動作を前記ロボットアームに行わせ、
穿孔動作中の振動を、前記穿孔デバイス上のシュラウド内を吸引することで低減し、
前記穿孔デバイスのドリルビットが貫通する前記シュラウドの障壁の複数の羽根の配置により、空気流に渦流を発生させ
前記シュラウドに設けられ前記シュラウド内の吸引を制御する弁を所定の穿孔深さに達すると開く、
ことを含む方法。
【請求項29】
前記ロボットアームを可動下部構造上の昇降機構の上面に固定し、所定のパターンの配置の孔を開け始める前に前記ロボットアームを作業位置まで上げるステップを含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記指示をインストールするステップが、前記制御ユニットがBIMファイルにアクセスする又は前記BIMファイルを読み出すことを含む請求項28又は請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記制御ユニットが前記BIMファイルを分析し、
ライブラリファイルにアクセスする又は前記ライブラリファイルをダウンロードして、前記BIMファイルが示す部品又はアセンブリに対応する孔の位置を特定する
ことを更に含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記制御ユニットが前記BIMファイルを分析し、
前記BIMファイルで指定されている孔を開ける順序を決定し、に前記孔に対する仕上げを決定することで前記ロボット穿孔装置の作業スケジュールを決定する、
ことを更に含む請求項30から請求項31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記制御ユニットが、孔の大きさに基づいて、あるパターンの配置の孔についての順序を決定する請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記制御ユニットが、場所に基づき且つ前記ロボットアームのリーチを考慮して、ある配置の孔についての順序を決定する請求項32又は請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記制御ユニットが、穿孔作業の開始前に、建設現場における前記ロボット穿孔装置を配置する1つ以上の場所を決定する請求項32,請求項33又は請求項34に記載の方法。
【請求項36】
穿孔動作中の振動を、懸架システムを用いて前記穿孔デバイスを前記ロボットアームとは独立して振動させることで低減する請求項28又は請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ロボット穿孔装置が慣性計測装置(IMU:Inertial Mearsurement Unit)を備え、
伸びた状態の前記ロボットアームの位置を測定するステップと、
前記昇降機構の傾きに対する補正量を算出するステップと、
算出した前記補正量に従ってドリルの位置又は角度を調節するステップと
を含む請求項29から請求項36のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井及び壁への穿孔を行うための可搬ロボット穿孔装置及びその装置を用いた穿孔方法に関する。更に、本発明は、振動低減アセンブリ及びそれを採用した可搬ロボット穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の建設、特に新しい事務所スペースやショッピングモール等の大型の建物の建設時には、表面の測定、特に天井及び壁の測定、並びにこれに続く部品及び建物のインフラを取り付けるための孔を開ける作業には膨大な労力が消費される。上記の部品及び建物のインフラは、配線、給水管及び排水管、加熱/冷却流体用の管、空調ダクト、そして勿論これらのサービスに関連するポンプや制御器等の機器が含まれる。ここで挙げたものは、勿論全ての例では決してない。
【0003】
とりわけ天井への穿孔は、通常、作業者が穿孔位置に届くように梯子又は台の上に立って、その後重い穿孔装置を頭上まで持ち上げる必要があるため、本質的に困難な作業である。この作業では、通常、大量の埃が生じるため、耳、目、及び呼吸の保護等、作業者が最低限順守する必要がある衛生安全要件ある。
【0004】
とりわけ印を付けるプロセスは、非常に多くの時間を要する作業であり、開けられた孔の最終的な位置、深さ、及び穿孔角度の正確性は、全て作業者の技能に依存している。
【0005】
今日では、作業者は、コンピュータ上で電子モデルとして事前に用意された計画に沿って作業を行う。コンピュータの処理能力の向上に伴い、電子建物情報モデル(いわゆる「BIM(Building Information File)」ファイル)に含まれる詳細も増えている。このため、現在では、表面への取り付け対象の製品や部品のモデルもこのBIMファイルに詳細に記載されている。
【0006】
天井への穿孔、特にコンクリートの天井への穿孔に関連した課題は以前から認識されており、この作業を課せられた作業者の負担を軽減する試みがいくつか提案されている。
【0007】
穿孔時における主な問題の1つは、騒音及び埃の発生であり、これらは建設現場の過酷な環境を更に過酷なものする可能性がある。通常真空源に接続される埃回収カラー又はシュラウドが利用可能であり、例えばコンクリートへの穿孔といった行われた作業の直接的な結果として生じる埃の悪影響のいくつかを低減することに成功している。
【0008】
ロータリーハンマ等の電動工具の使用における課題の1つはその重さであり、特に頭上での作業の場合に、長時間の使用を難しいものにしている。既知のカラー又は覆いは、埃関連の問題を解決するかもしれないが、穿孔システムに重さを大幅に加えてしまう可能性がある。
【0009】
ロータリーハンマ等の電動工具の他の問題は、工具の操作時に生じる大きな振動である。
【0010】
先行技術は、電動工具にアタッチメントとして又は最初から組み込まれる形で用いられる振動減衰技術の多数の例を示している。これは、例えばロータリードリル等のロータリーハンマや衝撃工具には特に一般的であり、これらの工具がワークへの直接的な同軸エネルギ伝達に頼るため、このような振動減衰機能から利益を得る。このような電動工具が普及している建設業界では、上記の先行技術による減衰解決手段は、通常カウンターウェイトを利用して、作業者の手や腕又は工具を保持・制御している装置に伝わる振動を制限している。
【0011】
別の文献は、ロータリーハンマ等の電動工具をワークに固定するためのデバイスを開示している。この固定は、大型且つ硬質のワークに作業する場合、真空を用いることで実現可能である。これにより、表面に恒久的な跡を残すことなく、工具又は工具の治具を表面に効果的に保持することができる。
【0012】
特許文献1は、固定、穿孔、及び削りかすの除去を行うためのシステムを開示しており、これらの動作に用いる空圧について詳細に説明している。このシステムは、ドリルスタンドの形態であり、孔を開けたい箇所の下に配置するための台車に取り付けられた穿孔装置を備える。埃回収シュラウド内の負圧は、削りかすを除去するだけでなく、ワークに孔を開けるときに制御された量の圧力をドリルに与えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開パンプレット第2001/068300号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような可搬マニピュレータは、理論上はよく機能するものの、それ自体が重く、扱い難いことが多い。建設業界には、特許文献1に記載されたデバイスと同様の特徴を有し、従来のロータリーハンマ等に取り付け可能でありつつ、重さを大幅に加えず、人間の作業員が苦労せずに使用可能な軽量のデバイスが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の広義の態様によれば、本発明は、建物の建設現場における天井又は壁に孔を開けるように構成されたロボット穿孔装置を提供すると見なせる。
【0016】
また、本発明は、建設現場における天井及び壁に孔を開ける方法であって、ロボットアームと、穿孔デバイスと、制御ユニットとを備えるロボット穿孔装置を提供し、一連の穿孔作業を実行するための指示を制御ユニットのメモリにインストールし、第1の場所を設定し、メモリに記憶されている穿孔作業を開始し、インストールされた指示に従って、穿孔デバイスを操作してある配置の孔を天井又は壁に開ける一連の制御された動作をロボットアームに行わせることを含む方法を提供すると見なせる。
【0017】
また、本発明は、コンピュータプログラム製品であって、ロボット穿孔装置の制御ユニットのプロセッサに読み込まれると、建設現場において天井又は壁にある配置の孔を開ける位置に穿孔デバイスを操作するようにロボットアームが実行する一連の動作を決定可能なコンピュータプログラム製品を提供すると見なせる。コンピュータプログラム製品は、決定の一部として、天井又は壁に関するBIMファイルにアクセスするように更に構成されていてもよい。また、BIMファイルで指定された孔を開ける順序を決定することで、建物に対する作業のスケジュールを決定してもよい。更に、穿孔作業の開始前に、建物におけるロボット穿孔装置を配置する1つ以上の場所を決定してもよい。
【0018】
1つの広義の態様によれば、例えば建設現場における天井及び壁に孔を開けるようになっているロボット穿孔装置が提供される。装置は、基端及び可動端を有し、可動端が3次元空間内で基端に対して移動可能なロボットアームと、ロボットアームの基端が固定され、ロボットアームを作業高さまで上げるように配置された昇降機構を備える下部構造と、ロボットアームの可動端に設けられた、天井又は壁に孔を開けるように構成された穿孔デバイスを保持するためのマウントと、ロボットアームの動作を制御するための制御ユニットとを備えてよい。
【0019】
上記のロボット穿孔装置は、昇降機構により、ロボットアームが比較的コンパクト且つ軽量になり、また、穿孔デバイスが容易に通常の天井高さに完全に届く(吊り天井を取り付ける前の商用品の場合でも)という利点がある。下部構造は相当の重量を有してよい一方で、ロボットアームと指示構造(例えば、制御ユニット及びロボットアームの付属品)は、2人だけ、好適には1人だけで下部構造に取り付けられる程度の軽さでよい。
適宜選択可能ないくつかの特徴の簡単な説明
【0020】
以下は、本発明の適宜選択可能な代表的ないくつかの特徴の簡単な説明である。
【0021】
上述したように、装置は、ロボットアームと、ロボットアームを作業高さまで上げるための下部構造を備えてよい。好適な実施形態では、下部構造には、モータが取り付けられており、また、下部構造は、シザージャッキの昇降台(シザーリフト)を備えてよい。このような台は、ロボットアームを高い位置まで上げた状態でも比較的安定した土台を提供できる。出入り口を通れる、幅狭のシザーリフトが利用可能である。これらの構成要素の組み合わせ(モータを取り付けた下部構造とロボットアーム)は、建設現場において1人の操作者だけで比較的容易に操作可能である。
【0022】
ロボットアームは、穿孔デバイスを3次元空間内で自由に移動可能であり且つ穿孔デバイスの姿勢をこの空間内で制御可能な6自由度を有するものでよい。
【0023】
ロボットアームは、硬質プラスチック、複合材料、軽量合金などの軽量材料から構成される現在入手可能なロボットでよい。ロボットアームのリーチは、最長で2mあればよく、より好適にはそれ未満、例えば1~1.5m程度でよい。ロボットアームは、穿孔デバイスを持ち上げるのに十分な強度を有し、且つ穿孔、好適には歪みを生じさせずにハンマ動作を行うのに十分な力をドリル先に加えられる必要がある。50Nより大きな上方への力が必要であり、好適には100Nより大きな上方への力(例えば100N~200N)が必要である。しかし、上記よりも非常に大きな負荷を扱う能力がある工業機械ロボットである必要はない。本発明では、下部構造によって作業高さまで上げられることで、より一層扱いやすいロボットを使用可能である。
【0024】
好適には、制御ユニットは、ロボットアームが1組の孔を開けたい領域の下に配置された後、操作者の更なる介入を伴わずに、自律的にその1組の孔を全て開けるようにプログラムされている。このため、穿孔対象の孔の深さ及び向きを高い精度で制御可能である。また、孔毎に移動する必要がある既知のドリルスタンドと比較して、1つの組又は配置における各孔の位置は最初に開けた孔又は基準マークに対して正確に設定可能であり、ロボットアームが1組の位置に届き、ロボット穿孔装置の位置を移動する必要がない。更に重要なのは、これにより、事前に全ての孔の印を付ける必要がなくなる又は少なくともその必要が減るということである。
【0025】
好適には、ロボット穿孔装置は、例えばレーザ誘導システム等の位置誘導システムを含む。この場合、装置は、建物に対して設定された座標に対して、この装置自体を誘導又は操作することができる。これにより、建築士の設計に沿って孔を正確に開けることができ、穿孔作業の開始前に孔の位置を印すという多くの時間と労力を要する行程が必要なくなる。
【0026】
ロボット穿孔装置は、ロボットアーム(及び好適には下部構造)の動作を制御する制御ユニットと連動するレーザトータルステーション、好適には独立した従来のレーザトータルステーション等の電子測定デバイスを含んでよい。これにより、ロボット穿孔装置は、部屋又は建物の寸法を特定でき、部屋内における装置自体の位置を高い正確度で判定できる。
【0027】
なお、好適には、ロボット穿孔装置の制御ユニットは、BIMファイル(又はその関連性がある部分)を受信する又はそれにアクセス可能である。これにより、ロボット穿孔装置は、建築士の設計に忠実に沿って動作する。上記の電子測定デバイス及びレーザ誘導システムの好適な追加によって、ロボット穿孔装置は、建築士の設計に沿って動作するだけでなく、これを高い正確度で行うことができる。
【0028】
制御ユニットは、BIMファイルで指定されている使用予定の部品又はアセンブリを示すために用いられるコードを認識できるソフトウェアでプログラムされてよい。これは、例えば英数字コード、バーコード、又は別のファイルへのリンクでよい。制御ユニットは、この部品又はアセンブリについてライブラリファイルを参照し、ライブラリファイルから取得した情報に基づいて1組の穿孔位置を算出するようにプログラムされてよい。これにより、部品又はアセンブリについての正確な穿孔位置をBIMファイル内に示す必要がなく、対象の部品又はアセンブリを示すコードだけで済む。
【0029】
制御ユニットは、BIMファイルを分析して、建物に行う作業のスケジュールを決定してよい。例えば、制御ユニットは、場所(例えば建物内の領域や部屋)又は孔の種類(例えば必要な孔の大きさや穿孔を行う材料)に基づいて、穿孔作業の順序を決定してよい。これにより、穿孔時間を最小限に抑えることが可能になる。更に、制御ユニットは、ロボット穿孔装置の位置を移動する回数が最小限に抑えられる作業のスケジュールに基づいて、ロボット穿孔装置に対して最適な場所を判定してもよい。また、制御ユニットは、この情報を操作者のディスプレイに送り、更に、より大きな面積をより効率的に穿孔できる作業高さを特定、提案してもよい。
【0030】
従来から、建設現場では、様々な業種の作業者が、その業種の部品またはアセンブリを取り付けるためだけに孔の印を付けに来る。例えば、電気技師が電気回路を設置する前に配線用の孔の印を付け、情報技術の専門家がデータシステム用の孔の印を付け、空調設置業者が空調ダクト用の孔の印を付ける。
【0031】
ロボット穿孔装置は、制御ユニットがBIMファイルの一部にアクセス又はそれを受信するため、BIMファイルで特定されている一部または全ての業種に対して、天井又は壁の特定の領域に開ける必要がある全ての孔を特定できるという1つの利点を有する。
【0032】
したがって、このような好適な構成では、印を付ける必要がない。代わりに、全ての業種に対して、孔の位置及び詳細を全ての保持する電子ファイルが生成される。そして、ロボット穿孔装置は、1回の穿孔プロセスで全ての孔を開けるように指示される。これにより、全ての孔が事前に用意され、様々な作業者が特定の部品やアセンブリを取り付けに建設現場に到着したときには、使用可能になっている。
【0033】
ロボット穿孔デバイスは、穿孔デバイスが必要に応じて選択可能なサイズの異なるドリルを一式含んでよい。また、様々な作業者に対して、開けた孔のうちどれがどの作業者の孔なのかを示すために、例えばペンキや他のマーカーを用いて孔を色で塗り分け可能な道具を含んでいてもよい。
【0034】
穿孔装置には、各孔にプラグを挿入するためのデバイスが更に設けられてもよい。これにより、開けられた孔に例えばねじ又はボルトなどの締結部材を入れる準備が完全に整った状態にすることができる。開けられた孔に対応する製品又は作業者の業種を示すようにプラグの色を選択してよい。この他に、プラグは製品や業種を示す形状や印を有してもよい。
【0035】
このため、新規の本ロボット穿孔装置は、少なくともこのような好適な実施形態において、建設現場に配置され、BIMファイルの少なくとも一部を用いてプログラムされ、操作者から指示を受けると、BIMファイル内の情報に応じて一連の穿孔作業を自律的に実行して、該当領域に設定された孔の一部又は全てを開けることが可能である。また、ロボット穿孔装置は、BIMファイルで指定されている色コードやプラグ、又は他の仕上げを用いて、孔を仕上げてよい。BIMファイルには、色コードや他の印の詳細が含まれてよい(例えば、どの締結部材に対してどの色のプラグが必要かが記載されてよい)。
【0036】
これにより、ある業者が部品を間違った位置に配置してしまう且つ/又は別の業者のために用意された穿孔領域へのアクセスを妨げてしまうということに関連した問題を回避できる。このため、後から来た業者は、孔の準備を行うために他者の部品に対する対応作業を行う必要はなく、現場に来て、BIMファイルに従って部品を所定位置に固定するだけでよい。結果として、いくつかの部品同士を近接させて配置することもできる。更に、特定の作業者の現場にいる時間が大幅に減るため、デベロッパの潜在的な責任が減る。そして、最も重要な点として、工数の削減によって費用が削減される。
【0037】
レーザトータルステーション等の電子測定デバイスが追加されることで、ロボット穿孔装置は、実際の建物における仮想建物よりも正確でない部分の情報、例えば、測定した差分が理論的な差分と異なる部分の情報を収集することもできる。好適な実施形態として、ロボット穿孔装置は、実際の建物の寸法を反映させた更新BIMファイルを生成し、これを建築士に送ってもよい。このため、ロボット穿孔装置は、測量及びBIMファイルの更新も行うように機能してよい。また、建物の仮想的な寸法ではなく実際の寸法を考慮して、対象の部品やアセンブリの配置及び位置の変更を提案する必要がある場合もある。
【0038】
好適には、ロボット穿孔装置は、穿孔で生じる振動の伝達を低減するように構成されたアセンブリを備える。例えば、このアセンブリは伝達を50%以上低減してよい(即ち、振動の振幅を半減させる)。
【0039】
好適な実施形態として、この振動低減アセンブリは、穿孔デバイスにおける例えばドリルビットがチャックから延出する箇所の周囲に嵌合されたシュラウドを備える。このシュラウドは、真空デバイスに接続され、穿孔で生じた埃や削りかすの回収に用いられてよい。吸引によりシュラウド内に生じた低圧は、振動の振幅を低減するように作用してよい。これにより、伝達する騒音の量を低減できる。これは、居住者又は利用者がいる既存の建物を改装する場合に特に有利である。
【0040】
更に、シュラウド内の吸引は、穿孔デバイス及び/又はロボットアームの重さの一部又は全体を相殺できる上方への力又はスラストを発生させることによって、ロボットアームが受ける負荷を低減するように作用してよい。
【0041】
上記吸引の量は、シュラウド又は真空路内に空気を漏入される弁を調節することで制御されてよい。これは穿孔を補助することになる。例えば、最初に吸引量を増やしてより大きな量の上方へのスラストを最初に作用させることで、ドリルビットがワークの表面を貫通し始め易くなる。そして、望ましくは、穿孔が進むにつれ、吸引量を減らして、より小さな量の上方へのスラストを作用させる。弁は、シュラウドに配置されてもよいし、真空路のより下流側に配置されていてもよい。真空デバイスの出力を制御することで、吸引量を制御してもよい。
【0042】
好適には、シュラウドは、ドリルビットに対して、従来のダストシュラウドよりも長く、ドリルビットの先端を越えた位置まで延在している。孔の位置を既に把握しているロボットが穿孔を行う場合、ドリルビットの先端が見えなくても問題は生じない。シュラウドの上記の余分な高さによって、ドリルビットがワークに接触する前に最大レベルの吸引を発生させることができる。これにより、穿孔動作が開始してから直ぐにドリルビットに上方へのスラストを加え易くなる。また、この吸引により、ドリルビットをワークの表面で横滑りし難くなり、孔の正確度が向上する。加えて、確実に埃及び削りかすが可能な限り回収されるようになる。
【0043】
振動低減アセンブリは、穿孔デバイスからロボットアームへの振動伝達を最小限に抑えるようになっているマウントを備えてもよい。好適な実施形態として、振動低減アセンブリは、振動の振幅を吸収するのに十分な距離の移動を可能にする懸架システムを備えてよい。これにより、穿孔中に生じる振動がロボットアームに伝わる前に、この振動を上記マウントにおいて絶縁又は少なくとも低減できる。
【0044】
懸架システムは、好適にはドリルビットの軸線と平行な方向にブッシュ内を摺動するように配置された1本以上のロッド又はレールを備えてよい。懸架システムの一方側は、ロボットアームの可動端に取り付けるプレートを備えてよく、懸架システムの他方側は、穿孔デバイスのための台座を形成する構造のプレートを有してよい。懸架システムは、マウントを中立位置に戻す1つ以上の付勢デバイスを含んでよい。
【0045】
振動伝達を低減する懸架システムを備えたマウントと、ロボットアームが受ける力を低減するシュラウドとを組み合わせて用いることで、ロボットを安全停止モードにする可能性がある振動の種類及び大きさが減少するため、ロボットの動作が大幅に向上する。ロボットアームのジョイントを摩耗させる有害な振動を低減させることもできる。更に、負荷及び振動が低減されたため、重量又は強度がこれまで可能と考えられてきたものよりも小さいロボットアームを使用してよい。したがって、軽量化によって、ロボットアームが操作者にとってより扱い易いものになり、また、下部構造の領域を越えてロボットアームを伸ばした場合に生じる問題が少なくなる。
【0046】
懸架システムによって、ドリルはロボットアームからある程度分離した状態にある。穿孔デバイスの正確な位置を測定するために、懸架システムには、ロボットアームに対するドリルの穿孔軸線に沿った直線位置を連続的に監視する直線位置センサが装着されている。直線変位は、懸架システムの技術的特性によって制限される。システムに用いられるばねの物理的特性を考慮することで、直線位置センサを用いて、ロボットアームとドリルとの間で穿孔軸線に沿って作用する力を測定できる。
【0047】
このため、システムソフトウェアは、ロボットに対するドリルの位置を連続的に制御する。システムは、直線位置が平衡位置からの最大許容移動距離に近いことを検出すると、この変位を低減するようにロボットをドリル軸線に沿って移動させる。これにより、穿孔対象の孔の実際の深さを制限せずに、直線移動が制限された懸架システムの設計を実現できる。ロボット穿孔装置は、昇降機構の傾きの影響を阻止又は最小限に抑える特徴を含んでよい。例えば、天井に対して力を作用させることができる1つ以上のジャッキが設けられてよい。ジャッキは、昇降機構の上面から押し上げるものでもよいし、床から天井までに及ぶ機構の一部でもよい。1つ以上のジャッキを昇降機構のベースに向けて設けることで、ロボットアームを側方に伸ばした際に、穿孔装置を操作するために用いられる車輪、軌道、又は他の機構の撓みによって生じる傾きを取り去るようにしてもよい。
【0048】
ロボット穿孔装置は、ロボットサーバに測定フィードバックを提供する慣性計測装置を含んでいてもよい。測定フィードバックを用いて、IMUが検出した傾き量と同等のドリル位置の移動又はドリルの回転という形で補正量を求めてもよい。1つ以上の反射プリズムをロボットアーム及び/又は昇降機構に取り付けてもよい。そして、レーザトータルステーションからの測定結果を(IMUの測定結果と共に又はその代わりに)用いて、位置測定フィードバックをロボットサーバに提供して、傾きに対する補正量を求めるようにしてもよい。
【0049】
これにより、ロボットアームをシザージャッキなどの従来の昇降機構の上から遠い位置まで伸ばした状態でも、正確な穿孔を実現できる。シザージャッキは、建設現場において作業者が操作し慣れた馴染みある装置であるが、精密な装置であることを意図して作られてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
添付図面を参照して、本発明のいくつかの好適な実施形態をより詳細に、例示のためにのみ説明する。図面は以下の通りである。
図1】本発明の1つの態様に係る、代表的なロボット穿孔装置を示す。
図2図1に示すロボット穿孔装置のロボットアームの拡大図であり、複数の動きを示す。
図3a】ロボット穿孔装置の代表的な指示構造の別の図を示す。
図3b】ロボット穿孔装置の代表的な指示構造の別の図を示す。
図4図1に示すロボット穿孔装置と同様の穿孔機能を有する別の代表的なロボット穿孔装置を示す。
図5】穿孔デバイスをマウントに取り付けたロボット穿孔アームの図を示す。
図6】好適なマウントをより詳細に示す。
図7a】本発明の他の態様に係る振動低減アセンブリの一部として用いられる好適なシュラウドの断面図を示す。
図7b】本発明の他の態様に係る振動低減アセンブリの一部として用いられる好適なシュラウドの断面図を示す。
図8a】好適なロボット穿孔装置における様々な構成要素の連携の形態のフローチャートを示す。
図8b】好適なロボット穿孔装置における様々な構成要素の連携の形態のフローチャートを示す。
図9a】側方に伸ばしきった状態のロボットアームの図である。
図9b】伸ばし切った状態におけるドリルビットを誇張して示した図である。
図10a】更に好適なシュラウドの斜視図及び断面図を示す。
図10b】更に好適なシュラウドの斜視図及び断面図を示す。
図10c】好適な埃よけの拡大図を示す。
図11】BIMファイルからの情報を用いる場合における、穿孔装置に対する準備として行う処理ステップを示すフローチャートである。
図12】穿孔装置用のサーボ制御された誘導レーザの概略図である。
図13】代表的な真空アタッチメントの構造の斜視図である。
図14a】反射プリズムに使用可能なプリズムキャップの斜視図及び側面図である。
図14b】更に好適なシュラウドの斜視図及び断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、本発明の好適な実施形態の1つの態様の概略的に示す。
【0052】
本実施形態では、ロボットアーム110を有するロボット穿孔装置100が提供される。ロボットアーム110の一端(基端110a)は下部構造112に取り付けられ、ロボットアーム110の可動端110bは、穿孔デバイス122を保持するためのマウント120に接続されている。
【0053】
穿孔デバイス122を操作して天井124又は壁126に孔を開けるために、不図示のプロセッサが、ロボットアーム110及び下部構造112の動作を制御可能になっている。例えば、下部構造112の高さを調節することで、穿孔デバイス122を天井124に向かって垂直方向に移動させたり、壁126上の特定の高さまで移動させたりすることが可能である。また、ロボットアーム110を様々な軸線に沿って調節することで、天井又は壁へ孔を開けるための天井又は壁に対して穿孔デバイス122の位置や姿勢を決める又は穿孔デバイス122を移動させることも可能である。
【0054】
図1に示すように、ロボットアーム110は、支持構造130を介して下部構造112上に搭載されてよい。支持構造130は、好適にはボルトや簡易着脱システムなどの締結手段を用いて下部構造112に取り付け又は固定されてよい。図示した好適な実施形態では、支持構造130は、下部構造112として設けられたシザーリフトの昇降台114の上面に搭載されている。
【0055】
下部構造112のベース116は、建設現場において下部構造112を容易に移動できるように、被駆動車輪117を備えてよい。一部又は全ての車輪117が方向転換可能であってもよい。
【0056】
従来のシザーリフトでは、車輪は、建設現場でのパンクによる問題を避けるために、中実(即ち空気入りではない)タイヤを備えることが多い。また、タイヤの中実という特性により、昇降台上で重さが移動したときのタイヤの撓みによって生じる昇降台上での変位や不安定さを防ぎ易くなる。下部構造112を操作するための他の構成として、同様に大きな撓みが発生しない無限軌道や、下部構造を空気クッションで移動し且つ地面又はスタンド上で静止させて装置を安定に保持するホバークラフト構成なども考えられる。
【0057】
昇降台114は、パンタグラフ(交差するように配置して蝶着された支持部材)の動作によって、下部構造112のベース16に対して上げられる。これにより、ロボットアーム110は、天井124に向かって上げられるか、壁126上の特定の高さまで上げられる。シザーリフトは、建設現場において一般的な道具であり、建設現場において作業者が1人又は数人で容易に扱えるだけでなく、出入り口や他の動きが制限される同様の箇所を通れるようにも開発されている。
【0058】
好適には、ロボットアーム110は複数の部分21,22を備える。これらは、互いに対して回動及び/又は回転することで、穿孔デバイス122を複数の軸線周りに操作して、天井124又は壁126に孔を開けることが可能である。一例として、ロボットアーム110は6軸ロボットアームであってよい。しかし、穿孔デバイス122の所望の動作を容易にするために、他の数の軸線を用いてもよいことに留意されたい。
【0059】
モータが取り付けられた下部構造112によりロボットアーム110が適切な作業高さまで上げられた後、ロボットアーム110の様々な部分を複数の軸線周りに移動させて、穿孔デバイス122を天井124又は壁126への穿孔を行う位置に配置することができる。更に、必要に応じて、穿孔デバイス122をロボットアーム110の所定のリーチ内における様々な位置まで移動させて、天井124又は壁126に複数の孔を開けることも可能である。
【0060】
支持構造130内に制御ユニット134を設けてもよい。制御ユニット134は、ロボットアーム110の制御、下部構造112の制御、及び天井124又は壁126における穿孔位置を特定するためのBIMファイルへのアクセス及び分析を行うために1つ以上のプロセッサを含んでよい。
【0061】
ロボット穿孔装置100は、BIMファイルに提供された寸法に従って動作することで、建築士の設計に忠実に沿って建物に孔を開けることができる。建設現場において操作者がロボット穿孔装置100を移動させるとき、天井又は壁における特定の領域への穿孔に関するガイダンスを制御ユニット134に提供するために、ロボット穿孔装置100は、建物の該当する箇所に関連したBIMファイルの別の部分にアクセスし且つそれを受信してよい。
【0062】
更に、図1に示すように、真空源132がロボット穿孔装置100に適宜設けてられてよい。真空源132は、穿孔デバイス122による天井124又は壁126への穿孔時における削りかす及び埃の除去の補助として、穿孔デバイス122の周囲を吸引するようになっていてよい。図1の示す例では、真空源132はホース138を含む。真空源132は、下部構造112の昇降台114に取り外し可能に取り付けられてよい。
【0063】
好適な実施形態として、ロボットアーム110は、例えば、硬質プラスチック、繊維強化複合材料、又は軽量合金などの軽量材料から構成される。一方、一般的な工業用の機械ハンドリングロボットは、270kgを超える重量を有することがあり、床に設置する必要がある。
【0064】
衛生安全規則(例えばOccupational Health & Safety、ohsonline.comを参照)では、作業者は1人で約23kgまでの物体を安全に持ち上げられるとされている(規定された数値は、法域によって僅かに異なる場合がある)。好適な構成として、ロボットアーム110及び支持構造130は、合計46kg未満の重量を有する。これにより、例えば、ロボットアーム110及び支持構造130を昇降台114に取り付けるときに、2人の作業者によって、ロボットアーム110及び支持構造130を安全に持ち上げ、組み付けることが可能である。ロボットアーム110及び支持構造130の個々の重量を23kg未満に抑えられる場合は、1人の作業者だけで装置100を組み立てることが可能である。また、上記ロボット用の制御キャビネットは通常23kg未満である。
【0065】
昇降台が下げられた位置で適切な作業高さにあるときに、前記パーツを昇降台に取り付けることができる。通常、上記ロボットの組立は、支持構造のフレーム内に制御キャビネットを載置し、ケーブルを電源に接続し、ロボットアームを接続するだけで済み、これらはわずか数分で完了し、特別な訓練を必要としない。
【0066】
本実施形態では、軽量且つ適度な大きさのロボットアーム110は、操作者の更なる労力を必要とせずに、下部構造112と協働して標準的な天井の高さに届くことができる。即ち、ロボットアーム110を下部構造112に取り付けた後は、天井又は壁に孔を開けるために、例えば制御ユニット134への指示入力や消費部品の交換を除いて、操作者の更なる物理的介入を伴わずに、穿孔デバイス122を垂直方向及びロボットアーム110の軸線周りの他の方向に移動させることができる。また、ロボットアーム110を下部構造112に取り付けた後は、建設現場においてロボット穿孔装置100を1人の操作者で操作できる。モータが取り付けられた下部構造112は、完全自立型でもよく、例えばBIMファイル内の建物の情報及び電子測定デバイスを介した下部構造の位置の認識に基づいて建設現場を走行してもよい。
【0067】
図2は、具体的には6軸ロボットアームであるロボットアーム110の好適な実施形態を示す。
【0068】
図2に示す実施形態では、ロボットアーム110は、ベースマウント20(基端110a)、第1アーム部21、第2アーム部22、第1リスト23、及び第2リスト24を含む。図5からわかるように、穿孔デバイス122は、第2リスト24(可動端110b)上の工具フランジに取り付け可能である。
【0069】
ベースマウント20は、ロボットアーム110を水平軸線周りに回転させるようにベース軸線200周りに回転してよい(支持構造130及び下部構造112の配置によっては、「水平」及び「垂直」という記載は全て「略水平」及び「略垂直」とそれぞれ解釈されることを意図している)。第1アーム部21は、ショルダージョイント201を介してベースマウント20に取り付けられてよい。ショルダージョイント201により、第1アーム部21は矢印A’及びA”の方向に回動可能になっている。第2アーム部22は、エルボージョイント202を介して第1アーム部21に連結されてよい。これにより、第2アーム部22は、矢印B及び矢印B’,B”が示す方向に移動して、可動端110bの高さ及び横方向の位置を調節することができる。
【0070】
第1リスト23は、第1リストジョイント203を介して第2アーム部22に連結されてよい。第1リストジョイント203により、第1リスト23は矢印Cが示す方向に360°回転可能になっている。第2リスト24は、第2リストジョイント204で第1リスト23に連結されてよい。第2リストジョイント204により、第2リスト24は矢印Dが示す方向に360°回転可能になっている。第2リスト24には工具フランジ205が取り付けられてよい。工具フランジ205は、穿孔デバイス(図2では不図示)が工具フランジ205に取り付けられた状態において更に別の回転軸線周りに回転移動できるように、矢印Eが示す方向に360°回転してよい。
【0071】
方向C,D及びEの回転により、穿孔デバイス122のロール、ヨー及びピッチを制御でき、軸線200周りの回転及び方向A及びBの回転により、上下方向、左右方向及び前後方向の変位を制御できる。
【0072】
図2に示す構成は6軸ロボットアームを示している。しかし、この構成に代わる構成として、任意の数の軸線を用いて、ロボットアームを様々な方向に動かせるようにしてもよい。重要なのは、天井又は壁に孔を開けるために、ロボットアームが天井又は壁に届き、天井又は壁に対して穿孔デバイス122が適切に配置されるようにロボットアームを制御下で3次元空間内において移動可能にすることである。床に設置されたロボットアームを用いるのではなく、ロボットアーム110と、ロボットアーム110を適切な作業高さまで上げることができる、図1に示すシザーリフト又は(間もなく説明する)図4に示すテレスコピックリフトなどの下部構造112と協働させて用いることで、天井の高さに届くようにしている。
【0073】
図3a及び図3bは、ロボットアーム110及び支持構造130であるフレームの好適な実施形態を示す。支持構造130は垂直壁301を含んでよい。好適な実施形態として、ロボットアーム110は垂直壁301に取り付けられてよい。これにより、支持構造130及び昇降台114の上方付近を中心とする領域の全体にロボットアーム110が届く。有利には、図3aに示すようにベースマウント20を垂直壁301に取り付けることで、ロボットが第1位置(破線で図示)から第2位置(実線で図示)に移動可能になる。これらの位置の間でロボットアーム110を伸ばすことができるため、ベースマウント20が支持構造130の水平部分に取り付けられた場合よりも、より大きな天井の領域にロボットアーム110が届く。
【0074】
図3bは、ロボットアーム110がベース軸線200周りにどのように回転可能かを示している。好適には、エルボージョイント202は、エルボージョイント202が支持構造130に衝突しないように、常にショルダージョイント201と同じかそれより高い位置に維持される。
【0075】
好適には、穿孔中にロボットアーム110を介して伝達されてきた力ができるだけ下部構造112の中央を介して伝達されるように、ロボットアーム110の基端110aは昇降台の上面の略中央に配置される。これにより、正確な穿孔を維持し易くなる。
【0076】
好適な実施形態として、制御ユニット134は支持構造130に収納されてよい、即ち、支持構造130内部に保持されてよい。これにより、重心が低く保たれ、使用時にロボットアーム110が安定し易くなる。更に、制御ユニット134を支持構造130とは別体の要素とすることで、重量を最小限に抑えることができる。ロボットアーム110及び支持構造130の重量は、できるだけ小さいことが理想的であり、2人の作業者でこれらを昇降台114上に持ち上げ、載せることができる特定の衛生安全範囲内であることが好適である。制御ユニットは、1人の作業者でそれを支持構造130内に載置できるように23kg未満であることが好適である。
【0077】
支持構造130に隣接して視覚システム136が取り付けられていてもよい。視覚システム136は、建物に対して設定された座標又は建設現場内の基準位置に対してロボット穿孔装置100(図1に図示)が装置自体を誘導・操作できるようにロボット穿孔装置100にガイダンスを提供する。好適には、視覚システム136はレーザ誘導システムであるが、これに限定されない。
【0078】
視覚システム136は、制御ユニット134と連携して動作可能であり、例えば、BIMファイルと連携して動作可能である。これによって、建築士の設計に沿って行う穿孔が正確になる。したがって、視覚システム136により、穿孔を開始する前に作業者が建物の天井又は壁に全ての孔の印をつける必要がなくなる。
【0079】
好適には、視覚システム136は、支持構造130におけるロボットアーム110のベースマウント20が取り付けられた垂直壁301とは反対側に隣接して配置される、即ち、ロボットアーム110から離間して配置される。これにより、図3aに示すような天井124に対する遮るものがない投影範囲Pを提供しやすくなる。
【0080】
図4は、他の好適なロボット穿孔装置400を示す。ロボット穿孔装置400は、機能的に図1に示したものと同様である。ロボットアーム110’は前述のものと同一であってよい。一方、昇降機構は、図1に示したシザーリフトの代わりに、ベース部401及びテレスコピック部402を有するテレスコピックリフトを備える。
【0081】
ロボットアーム110’のベースマウント20’は、図3aにおける支持構造130の垂直壁301に取り付けたベースマウント20とほぼ同じように、テレスコピック部402の上端における側面に取り付けられてよい。これにより、ロボットアーム110’が、天井124のより大きな領域に届く。テレスコピック部402は、ベース部401内にぴったりと嵌合されてよく、制御下でベース部401内を垂直方向に前進・後退するようにモータが取り付けられていてもよい。テレスコピック部402は、前述の実施形態における支持構造130を実質的に提供している。
【0082】
テレスコピックリフト401,402は、建設現場において操作者が装置を移動できるように、可動ベース116’上に設けられてよい。図1の構成と同様に、ベース116’にもモータを取り付けて、制御ユニット134’から提供される指示又は作業者の指示に従って自律的に移動可能にしてもよい。上記ロボット用の制御キャビネットは、可動ベース116’とテレスコピックリフトのベース部401との間に取り付けられてよい。
【0083】
有利には、テレスコピックリフト401,402が、ロボットアーム110’を垂直方向に更に安定させるようになっていてもよい。こうすることで、特に長いリーチが必要な場合に、天井又は壁への穿孔がより正確になる。
【0084】
図5は、可動端110bに穿孔デバイス122が取り付けられたロボットアーム110を示す。このロボットアーム110は、図2で説明したロボットアームと同じ特徴を有してよい。しかし、本実施形態では、ロボットアーム110の穿孔デバイス122が取り付けられた箇所に振動低減アセンブリ501が設けられている。図5に示す例では、振動低減装置501は、穿孔デバイス122用のマウントでもあり、第2リスト24の工具フランジ205上に設けられている。
【0085】
より詳細には、図6に示すように、第2リスト24の工具フランジ205には、マウント501が取り付け可能である。第2リスト24は、上述したように第1リスト23に連結され、これを介して第2及び第1アーム部22,21に連結されてよい。マウント501は、第1レッグ603及び第2レッグ613を備えてよい。第1レッグ603は、工具フランジ205の回転に伴って回転するように工具フランジ205に締結されてよい。第1レッグ603(工具フランジアダプタ)は、工具フランジ205の軸線に対して垂直に延在している。第2レッグ613は、第1レッグ603に対して直角に延在し、第2リスト24の外面に沿いつつ間隔を空けて延在している。これにより、第2レッグ613は、工具フランジ205の回転に伴って第2リスト24の周りを自由に移動できる。
【0086】
好適には、振動の伝達を低減するために、上記マウントに懸架システムが設けられている。リニアブッシング604を設けることで、1本以上の案内ロッド607(例えば、ブッシング604を貫通して平行に延在する複数の案内ロッド607)に沿って懸架システムの一方の半部分を案内ができる。案内ロッド607は、懸架システムの他方の半部分、具体的にはマウントプレート605に取り付けられている。
【0087】
図6に示すように、例えばバネ606である振動減衰デバイスが、マウントプレート605とリニアブッシング604との間に配置されてよい。バネ606は、好適にはコイルばねであるが、空気ばね等の他の種類のばねを用いてもよい。これにより、案内ロッド607の軸線に沿った一定の移動を可能にして振動を吸収するセミリジッドなマウントが提供される。
【0088】
上記ばねがリニアブッシング604とマウントプレート605との間にあると説明したが、ばねは、例えばリニアブッシング604の間に、並進運動をばね606に伝達する適切なペグ又はプレートを介して配置されていてもよい。
【0089】
ばね606の予荷重の大きさは、例えばブッシングとコイルばねとの間に設けられる予荷重調節ナットで調節可能である。このような予荷重調節器によって、異なる穿孔デバイスの質量に応じた調節及び所与の穿孔デバイス122のストローク/振動の振幅を調整可能になる。
【0090】
必要に応じて、穿孔で生じる埃及び削りかすが懸架システムに入らないようにするために、埃カバーをマウント501に装着可能である。
【0091】
穿孔デバイス122は、穿孔デバイス122のネックの周囲に延在するドリルクランプ608によってマウントプレート605に取り付けられてよい(ドリルの本体に通常設けられる切り欠き及びショルダを利用するのが好ましい)。好適には、ドリルクランプ608は、マウントプレート605のねじ部(不図示)と係合するボルト609によって、所定位置に固定される。
【0092】
マウントプレート605は、穿孔デバイス122の取り付けに加えて、案内ロッド607の軸線に沿った穿孔デバイス122の移動を吸収することもできる。これにより、穿孔の間、特にコンクリートなどの硬質材料に対してハンマ機能を用いるときに生じる振動の一定の絶縁が可能になる。
【0093】
ロボットアームに対するマウントプレート605の現在位置を測定するために、直線位置センサをマウント501に配置できる。センサの測定値を、懸架ばね606の数学モデル及びロボットアームのジョイントの位置と共に用いることで、ドリルからワーク面に加えられる圧力及び穿孔の深さが細かく制御される。
【0094】
ドリルマウント501によって、穿孔デバイスは、ロボット工具フランジ205に対してドリル軸線に沿って直線的に移動できる。この移動は、装置に力が加えられていないときに直線位置が平衡位置に戻るように、1つ以上のばね606によって規制されている。加えられる力の例として、穿孔デバイス122の重さ、穿孔時の抵抗、真空吸引の作用等が挙げられる。装置には、直線位置を連続的に監視する直線位置センサが装着されてよい。直線移動の距離は、装置の技術的特性によって制限されている。直線位置がばね606で規制されているため、直線位置センサをドリル軸線に沿った合力の測定に用いることができる。
【0095】
システムソフトウェアは、直線位置センサの値及びロボットの動作を連続的に制御する。システムは、直線位置が平衡位置からの最大許容移動距離に近いことを検出すると、これとを低減するようにロボットをドリル軸線に沿って移動させて、振動絶縁手段における許容可能な限られた直線移動を確保することができる。ドリル装置の観点から、この組み合わせの構成は、ロボットアーム110のリーチのみによって移動が制限される直線作動手段として機能する。これにより、直線移動の距離が減りながらも、直線移動の延長のメリットを妥協していない工具フランジアダプタ603の機械設計を実現できる。
【0096】
この構成は、固定式の装置よりも多くの利点を有する。
・ばねによる直線移動の減衰は、ハンマードリル122によるドリル軸線に沿った振動を実質的に100%相殺する。これは、ばねの抵抗が速度ではなく、位置にのみ依存しているからである。これにより、ロボットアームの摩耗が少なくなり、より低剛性且つ廉価であるとともに、より軽量なロボットアームが可能となる。
・ドリル軸線に沿って過度の力が加えられることに起因するドリルのはまり込みやロボットアームの故障の可能性は実質的にない。
・ドリル軸線に沿って天井に作用する力を以下のようにより良好に制御できる。
○真空吸引を用いて穿孔を行っている間は、直線運動が常に平衡位置又はその近傍で生じるようにシステムがロボットアームを制御するため、工具フランジ205は、ドリルからドリル軸線に沿って実質的に分離されることになる。したがって、作用させた真空力を用いてドリルの貫通力を制御できる。ドリル軸線に沿ったロボットアームの動きは、PID等の周知の制御アルゴリズムを用いて計算できる。
・直線の軸線に沿った位置は、ばねの力学が周知であるため、十分な精度の力センサとして使用でき、また、装置に用いているばねの特性に基づいて、位置や加えた力から容易に算出できる。測定の解像度は、直線運動の許容移動距離に直線運動センサの正確度を乗算したものである。
・直線センサとドリル軸線に沿ったロボットアームの位置との組み合わせの位置を用いて、穿孔動作の経過を時間に沿って記録することができる。プロットの分析により、以下のような有用な情報がシステムに提供される。
○ドリルの貫通が規定の順序で進んでいるかを確認できる。曲線の始点において段差が見られる。この段差は、真空源が作動し、シュラウドの上側シールがワークに係合したことに起因するものである。その結果、真空力によって、直ぐに穿孔デバイスが下側の案内ロッドのばねに座した状態で下方位置から上方に引っ張られ、ワークに接触する。最初の段差の後、穿孔デバイスが通電されて一定速度でワークを貫通し始めると、位置-時間プロットが直線状に現れる。
○ドリルの貫通速度が急に低速に変化した場合又は完全に停止した場合、ドリルがコンクリートよりも硬質のもの(金属等)に当たったか、ドリルビットが壊れたことを意味している。これにより、位置-時間プロットの勾配が減少する。
○ドリルの貫通速度が急に上昇した場合、ドリルが貫通している材料がより軟質なものであるか、材料が無くなったことを意味している。ドリルが空洞に達した場合やプラスチック配管に当たった場合等がこれに該当する。これにより、位置-時間プロットの勾配が増加する。
【0097】
図7aは、本発明で用いる好適なシュラウド構造を示す。本願の発明者らは、このようなシュラウドが、真空源と共に使用される場合に、穿孔時に周囲に飛散する埃及び削りかすの量を低減できるだけでなく、穿孔デバイス122を天井124まで持ち上げたときにロボットアームが受ける負荷を低減する上で役立つという1つの大きな利点を発見した。これは、20N以上、好適には35N以上、より好適には50N以上の低減となり得る。更に、100~200Nのスラストを加えることまでも可能であり、コンクリート等の硬質材料に孔を開けたときにロボットアームが通常必要とする大きさの力を再現することが可能である。シュラウドの直径を大きくすることで、発生させる力の量を増やすができる。
【0098】
天井124への穿孔の場合、これは特に有益である。コンクリート等の硬質材料へのハンマ穿孔の間に受ける振動が、上記のような穿孔デバイス122の一般的な負荷と組み合わさると、最大負荷に近い状態で動作する軽量のロボットアームを損傷させ得るためである。このような振動は、ロボットを物理的に損傷させないとしても、緊急応答としてロボットを停止させる可能性がある。しかし、穿孔デバイス122を吸引によって上方に上げる真空源に接続されたシュラウドを採用してロボットアーム110の有効負荷を低減することで、ロボットジョイントに対する振動の有害な作用及びロボットが動作不良に陥る可能性が低減される。振動を最小限に抑える又は絶縁するようになっているマウント501を更に加えることで、ロボット穿孔アセンブリ100の寿命及び堅牢性を大幅に高められる。また、埃及び削りかすが回収され、振動により発生するノイズが大幅に低減される。これにより、この好適なロボット穿孔装置100は、修理や改良工事を行っている使用中の建築物、例えば、居住者や利用者がいながらも作業が行われているアパートやホテル等での使用に特に適したものとなっている。
【0099】
図7aのシュラウドは、図1~6に示した上記の実施形態のいずれにおいても使用可能である。シュラウド70によって得られる吸引は、特にロボットアーム110がそのリーチの最も先端で動作している場合において、ロボット穿孔装置100に加えられる圧力を大きく低減する。
【0100】
図7aは、振動低減アセンブリと共に用いる好適なシュラウド構造70の断面を示している。シュラウド70は、穿孔デバイス122の上部に外嵌するシュラウド本体700を含む。シュラウド本体700は、ドリルビット704を穿孔デバイス122のチャック(不図示)に挿入するための隙間を残しつつ、チャックの上方で内側に先細るドリルビットシール703を有する。ドリルビットシール703は、ドリルビット上に配置されたて機能するものであり、ドリルビット704が挿入された状態においてドリルビット704にぴったりと接するようになっている。ドリルビットシール703は、任意のサイズのドリルビット704に周囲にシールを形成できるように、一定の柔軟性を有するゴム等の材料から構成されてよい。シールとして機能するドリルビットシール703は、ドリルビット704の動きを妨げるものではない。
【0101】
シュラウド70から、ベローズ706が上方に延出して、シュラウド70の上部71を形成している。ベローズ706内には、穿孔で生じる埃及び削りかすを回収するための主真空室705が画成されている。ドリルビットシール703は、主真空室705内に真空を形成できるように主真空室705の底部を閉塞している(本明細書において「真空」という記載は、いずれも大気圧よりも圧力が低い領域を示すことを意図している。これらの部分において高真空を作る必要はなく、削りかすを十分に取り除き且つロボットアームにかかる重さを低減するのに十分な程度だけ減圧される)。
【0102】
例えば真空ホース138を用いて真空源132に接続するための真空口702が設けられている。真空口702は、真空接続部720によりシュラウド70の主真空室705に接続されている。ベローズ706は、ドリルビット704の全長に渡ってドリルビット704の周囲に延在している。真空接続部720及びシュラウド70の外面は、主真空室705から真空口702まで流体の流路756になっている。
【0103】
流路756の表面は、シュラウド本体700の上部の上面の突出部として延出し、真空接続部720に向かって下方から下流方向に傾斜する傾斜面701によって画成されてよい。傾斜面701は、穿孔デバイスが天井124に孔を開けている間、埃及び削りかすが真空口702に落下しやすくなるという利点がある。真空口702は、天井への穿孔に使用される状態においてシュラウド本体700の上部703よりも下方に配置されている。これは、真空ホース138が邪魔にならないように、真空ホース138をシュラウド本体700の側方から離れないようにするためである。
【0104】
ベローズ706の上部における上側シール707は、穿孔を行う天井(又は壁)をシールするように配置されている。好適には、上側シール707は、ベローズ706と天井(又は壁)との間に真空シールを容易に形成できるような材料及び構成を有する。
【0105】
ベローズは、上側シール707がドリルビット704よりも上方に位置して、ドリルビットが天井124に接触する前の主真空室705内に真空が形成され始めるように構成されている。ベローズ706は、穿孔方向、即ちドリルビット704の長手方向の軸線に沿って収縮可能である。ベローズ706は、作業面に対して垂直ではない角度で孔を開けることが望ましい場合に斜め方向に収縮できるように配置されていてもよい。
【0106】
シュラウドを用いて穿孔を行ったときに天井(又は壁)に付く埃の跡を減らす目的から、上側シール707とベローズ706との間には埃よけ708が配置され、穿孔方向に対して垂直に延在している。作業者は、シュラウドを取り付けて天井に孔を開ける際に、跡が残ることを避けるために、真空シュラウドを天井から僅かに離すことで、真空室を形成せず、シュラウドを埃回収用のカップのように用いて孔を開けることを好む場合が多い。このように、作業者は、作業後に埃の跡を消したくないがために、真空の有益な効果を理解していながら犠牲にしている。埃よけ708は、シュラウド70の真空の効果を最大限まで利用しつつ、このような跡の形成を回避するように意図されている。
【0107】
埃よけ708には、ドリルビット704が埃よけ708を自由に通り抜けられるように隙間yが形成されている。また、埃よけ708の上側と下側で圧力を均等に保つために、開口709が埃よけ708に設けられている。開口709により、埃及び削りかすが主真空室705内に落下し、真空口702から排出される。埃及び削りかすを真空口702側に移動し易くするために、ベローズ706に1つ以上の漏入孔771が設けられてもよい。この漏入孔771によって空気が主真空室705に流れ込むことで、埃及び削りかすが真空口702側に引き込まれ、そこから真空源(付図示)に向かって排出される。
【0108】
真空接続部720には、必要に応じて減衰弁710が設けられていてもよい。減衰弁710は、主真空室705内の真空が高過ぎて穿孔デバイスの機能を維持できない場合に、開弁して更に空気を取り込んで、真空を下げるようにしてもよい。したがって、減衰弁710は、穿孔デバイス122が適切に機能するように、調整された環境を主真空室705内に提供する。
【0109】
真空源132を介して埃や削りかすを回収するだけでなく、ロボットアームの有効負荷及び伝達振動の振幅を低減することでロボットアーム110の動作不良や損傷の危険性を低減するシュラウド70は、特に図6で説明したような懸架システムを用いて穿孔デバイス122の振動を絶縁する場合に、相乗効果を奏する。
【0110】
図7bは、シュラウド70の代替実施形態を示す。この代替実施形態では、ベローズ706の代わりに、主真空室705内の真空を維持するように互いに組み付けられた剛性の高い上側及び下側係合部761,762から構成されるテレスコピックボディが設けられている。図が示すように、上側部761は2重の壁になっており、上側部761及び下側部762の係合面からの埃の侵入をより良好に防いでいる。
【0111】
本実施形態は、まず、直線懸架システムが必要ない点で前述の実施形態と異なる。代わりに、上側部761が、固定マウント763を介して工具フランジ205及び工具フランジアダプタに直接接続されている。
【0112】
主室705内の真空は、前述の実施形態と同じように作用して、ドリル122に接続された下側部762をワークに押し付ける吸引を発生させる。しかし、上側部761と下側部762との間の摩擦が最小である限り、工具ビット704をワークに貫入させることによって発生するいかなる振動も、上側部761に伝達されることはない。下側部762は、移動規制部764により、上側部761から外れることを抑制される。
【0113】
テレスコープ構成の実施形態における下側部に工具フランジアダプタが取り付けられている場合は、戻しばね765が含まれる。この戻しばねは、上側部761がワークに接触していない状態において、上側部761を下側部762から離れる方向に押して、完全に伸びた状態の主真空室705を形成できればよい。戻しばね765は、真空が形成されている状態では、ワークへの穿孔時におけるテレスコピックな主真空室がつぶれることを妨げない。
【0114】
本実施形態は、上縁707が、単に軸方向に作用する吸引力ではなく、横方向の摩擦によってワークを強固に把持する複数の突起を更に含む点で更に異なる。剛性の高い壁である上側部761及び固定マウント763から工具フランジまでを共に用いることで、本代替実施形態は、地面から天井まで達するジャッキのように機能する。これは、ワークからロボットアーム110、支持構造130、及び下部構造116を介して下部構造116下方の地面までが強固に連結されるからである。ロボットアーム110は、持ち得る全ての力を作用させて、上側部をワークに固定することができる。このため、上述の好適な実施形態と同様に、正確性が上がり、ロボットアーム110の摩耗の増加が緩和される。本代替実施形態では、上述したワークへの強固な連結によって、ドリル軸線に対して垂直な軸線に沿ってロボットアームに伝達される振動も低減される。
【0115】
図8a及び図8bは、ロボット穿孔装置における様々な構成要素の連携の形態のフローチャートを示す。
【0116】
好適なロボット穿孔装置100は、例えばタブレットやスマートフォン等のwifiルータ802と通信可能な演算デバイス801を備える。wifiルータ802は、ロボットコントローラ804に接続されたロボットサーバ803と通信できる。ロボットコントローラ804は、穿孔デバイス805、ロボットアーム806、真空源807、及びラインレーザデバイス808を制御できる。ロボットサーバ803は、レーザトータルステーション810に接続されたトータルステーションインターフェース809及び視覚システム811から更なる入力を受信する。また、ロボットサーバ803は、図8(b)における同様の構成に示す慣性計測装置(IMU)812からデータを受信してもよい。この詳細は後述する。
【0117】
ノートパソコン、タブレット、又はスマートフォン等の演算デバイス801は、ロボットサーバ803と通信するために用いられてよい。この通信は、有線接続で行うことも可能だが、無線接続、例えばwifi、インターネット接続、Bluetooth接続、又は無線伝送で行うことが好適である。
【0118】
ロボットサーバ803は、ロボット穿孔装置100及びその穿孔デバイス122の正確な位置を算出でき、ロボット穿孔装置の全ての動きを追跡できる。ロボットサーバ803は、現在位置に関する状況を、演算デバイス801を介して操作者にフィードバックできる。
【0119】
現在位置は、レーザトータルステーション810及び視覚システム811(好適には、ロボット穿孔装置100に配置される)からの入力に基づいて算出されてよい。レーザトータルステーション810は、建設現場におけるロボット穿孔装置100近傍の穿孔が行われる箇所の床(又は壁)に設置されてよい。
【0120】
効率が優先される状況では、慣性計測装置(IMU)812がヨーや移動距離等の位置や向きのデータをロボットサーバ803に送ることができる。例えば、吊り天井の場合等、精度がそれほど重要でない状況では、IMU812が測定データを取得する速度(これは、トータルステーションの測定、特に複数のプリズムを用いたヨー及び距離の測定よりもはるかに速い)により、穿孔作業の速度を上げることができる。IMU812を単独又はトータルステーション810と組み合わせて使用して、例えばジャイロのドリフトを較正することが可能である。
【0121】
ロボットサーバ803は、建物の仮想モデル及びそれに関する要件を提供するために、BIMファイルを受信できる。この情報は、ロボットアーム806及び穿孔デバイス805の動きを案内するために用いることができる。ロボットサーバ803は、BIMファイルをUSBデバイスや他のメモリデバイスから受信するために、USBポート又は同様の入力ポートを含んでよい。ロボットサーバ803は、例えば、インターネット接続経由でルータ802を介してオンラインサーバからBIMファイルを受信してもよい。また、例えば、BIMファイル又はBIMファイルの関連性がある部分が操作者の使用する演算デバイス801にダウンロードされている場合、例えば、操作者のタブレットが現場事務所に持ち込まれ、所与の建設プロジェクトに関するファイルがダウンロードされている場合、演算デバイス801からそのBIMファイルを受信することも可能である。
【0122】
小さな場所では、レーザトータルステーション810が必要ないこともある。そのような場所での作業においては、ロボット穿孔装置はその地球上の位置を特定する必要はなく、局所的な位置及び向きを視覚システム811で把握するだけでよい。天井124又は壁126上に(ラインレーザ808から)レーザ線を視覚システム811用の基準線として映してよい。一対のレーザ線を用いて、視覚システム811の視野内にレーザの十字線を形成してもよい。
【0123】
上記の2つの動作モード(即ち、ロボットサーバが地球上の位置を把握するモードと局所的な位置のみを把握するモード)は、例えば操作者のタブレット801上の制御ソフトウェア又はアプリケーションによってサポート可能である。これにより、操作者は、トータルステーションモード、レーザ線のみのモード、及び例えば操作者がある配置の孔のうちの1つが開けられていない箇所を発見した際に役立つ単一孔モードの中から選択することができる。この後は、操作者は、レーザポインタで視覚システム811の視野内に開けるべき1つの孔の位置を示すだけでよい。
【0124】
例えば操作者が操作するタブレットやスマートフォン等の演算デバイス801は、好適にはスタンドアロンのデバイスである。好適には、演算デバイス801は、ロボット穿孔装置100が穿孔を開始するときに操作者がロボット穿孔装置100から下がって距離を置けるように、ロボット穿孔装置100の他の部分と無線通信を行ってよい。
【0125】
また、ロボットコントローラ804は、内部リレーを制御して、視覚システム811が使用するラインレーザ808に電力を供給する。ロボットコントローラ804は、穿孔デバイス805及び真空源807の電源を制御することもできる。
【0126】
wifiルータ802、トータルステーションインターフェース809、ロボットサーバ803、視覚システム811、ロボットコントローラ804、ラインレーザ808、穿孔デバイス805、ロボットアーム806、及び真空源807は、例えば、下部構造112に搭載された構成要素の集合として、全て互いに近接して配置可能である。電源コードは1本だけでよく、内部からこれらの構成要素の全てに電力を供給可能である。
【0127】
上述したように、ロボット穿孔装置100は、天井124又は壁126に所定の配置の孔を開けるために、BIMファイルにアクセスし、それを読み出して、穿孔デバイス122を配置する位置を決定してよい。ロボット穿孔装置100は、BIMファイルを参照することで、作業者に全ての孔の測定を最初に行わせることなく、建築士の設計に沿って孔を開けることができる。BIMファイルは、天井124又は壁126における孔の位置だけでなく、孔の深さ及び所与の基準位置に対する角度も示す情報を含んでよい。
【0128】
ロボットコントローラ804は、BIMファイルで特定された所与の部品に対応する孔の寸法、位置、及び向きをライブラリファイルで検索可能であってもよい。ライブラリファイルは、ルータ802を介してアクセスされるリモートサーバに記憶されていてよい。ライブラリファイルは、製造会社から提供されてもよいし、一般的に用いられる様々な指定の備品の孔に関する要件のデータベースでもよい。
【0129】
ロボットコントローラ804は、BIMファイルの情報から、例えば孔の直径や特定のフロアや部屋の種類に応じて、作業を分類し、作業スケジュールとしてまとめられるようになっていてもよい。また、ロボットコントローラ804は、ロボット穿孔装置の位置及びロボットアームの高さを変更する回数を最小限に抑えるために、作業スケジュールを実行する上でロボット穿孔装置が配置されるべき最適な位置と、ロボットアームが上げられるべき最適な高さとを算出できるようになっていてもよい。最適な生産性を実現するためのロボット穿孔装置100の次の移動先に関する詳細を、演算デバイス801のディスプレイを介して操作者に伝えることが可能である。
【0130】
したがって、好適な実施形態では、操作者はロボット穿孔装置100を配置し、起動するだけでよい。その後は、ロボット穿孔装置100は、自律的にある配置の孔を天井又は壁に開け、様々な業者が器具や部品を来て取り付けるために、プラグやカラーコードで孔の仕上げを行うことができる。
【0131】
カラーコードは、開けられた孔の内部及び周囲に塗布されるペンキ、インク、顔料、ジェル、又は他の着色した物質でよい。着色した物質は、その印が見えてしまう又は他の塗装仕上げの障害になってしまわないように、水又は他の溶剤で除去可能なものでよい。コードは、種々の孔を表すステッカー又は他のフラグや印も含んでよい。
【0132】
開けた孔のプラグは、通常プラグ又は孔の大きさを示すために、様々な色で提供可能であることが知られている。本発明では、各プラグは、そのプラグが対象とする特定の取付具を示すか、用意された孔が対象とする特定の業種又はそのような括りを細分化したものを示すように色分けされてよい。例えば、ある色は照明、ある色は電源、ある色はデータ線、ある色はセキュリティシステム、ある色は安全システムといったように用いられる。プラグは、色の代わりに、例えば形状やコード等の他の形態の印を有してもよい。このように印が付けられたプラグは、取付具(又は他の取付部品)に覆われるため、工事が終了した後の建物では、その印が見えないという利点を有する。
【0133】
特定の取付具や特定の業種の孔がBIMファイルに設定されている場合は、建物にものを取り付けるときに、BIMファイルに含まれている情報を基に、発光デバイスで特定の取付具や特定の業種の孔を照らすことも可能である。開けられた孔は、このようなマッピング用の座標を設定する際にも使用できる。
【0134】
物理的な印の代わりに、BIMファイルによって生成され、部屋の画像に重ねられる仮想的な印(この印が無い場合は、例えば、開けられた孔の位置を確認済みのロボットサーバがこの孔をBIMファイルに追加することで作成するエンリッチ電子ファイルが用いられる)を視認する視覚支援手段を建設作業員に提供してもよい。例えば、この仮想的な印は、タブレットやスマートフォン等のポータブル電子デバイスに、部屋のカメラ画像にオーバーレイとして表示されるか、電子眼鏡の視界にオーバーレイとして表示される。
【0135】
一般的には、建設現場で見られる全ての可動昇降台は、標準的な出入り口を通れるように十分に幅狭に設計されている。ロボットアーム110は、軽量でありつつ、リーチができるだけ長いことが望ましい。実際の使用時には、これは、リーチがシザーリフトの台の領域の外側にまで及ぶということになる。シザーリフトは、垂直方向には強度があるものの、作業台上にある質量の横方向の移動、特に台の領域の外側にまで及ぶ重さの移動に対する剛性が幾分欠如している。この剛性の欠如により、台の外側で孔を開けようとすると、正確性が低下してしまう。
【0136】
図9aは、ロボットアーム110をここでは下部構造116の右側に伸ばしきった状態で、天井124に孔を開けている様子を示している。コンクリートに孔を開けるには、100~200Nの上方への力が必要である。このため、穿孔が開始する前に、増加した曲げモーメントが右側から発生することになる。この結果、ドリルビットが横方向に移動する(図9bのL)と共に、作業台の角度の変化に伴ってドリルビットの角度も変化してしまう(図9bの角度θ)。これにより、ドリルビット704は、意図した位置を越えて、この位置から外れ易くなる。また、ドリルビットが表面を貫通して孔を開けたとしても、はまり込んでしまう可能性が高い。
【0137】
ここでの問題は、通常、穿孔力が穿孔の開始時において最も大きいということである(ドリルにもよる)。これは、ロータリーハンマの動作で説明できる。ハンマ部を作動させるには、一定の大きさの力が必要である。一方、開始後に穿孔を維持するために必要な力は、開始時のピークの力よりも僅かに小さい。この結果、台が開始時の穿孔を耐えられたとしても、中立位置に近い位置まで揺動して戻ることになる。ドリルビットがワークに深く入ってしまっていると、はまり込み易い。仮にはまり込まなかったとしても、孔壁との摩擦が増加しているため、穿孔を継続するために必要な力も増加している。より大きな力を加えると、上記の一連の動作が再び始まってしまう。振動減衰手段やより高剛性の構造なしでは、定常揺動が発生して、ロボットが安全停止モードに入ってしまうため、その有用性が失われる。
【0138】
正確性は可動ロボット穿孔装置の1つの重要な特徴である。本質的に正確性が限られている可動及び昇降下部構造と正確性が高いロボットアームとの組み合わせを備えることで、必要な範囲の動き(具体的には高さ方向の動き)及び正確性(好適には1mm以内)が得られる。質量の移動により生じるいかなる曲げも、視覚システム811及び/又はレーザシステム808,810及び/又は慣性計測装置812によって、ドリル122,704が接触する前に補正可能である。このため、全体としては、顕著な正確性の低下はないはずである。シザーリフト等の昇降下部構造112の使用には、ロボットアームを側方に伸ばした状態における曲げモーメントによって生じる傾きの量を予測するのが困難であるという側面がある。慣性計測装置812を用いて、傾き量を測定し、誤差を低減する補正量を求めることができる。真空シュラウド70と組み合わせることで、更に確実に孔を正しい位置に開けることができる。
【0139】
シザーリフトは、完全に伸ばされ且つ作業台114上に人間が少なくとも1人いる状態において転倒しないように、重い装置である必要がある。一方、ロボットアーム110は可能な限り軽量であることが求められている。ロボットアームの質量が台の設置領域の外側にある状態、例えば、アームを伸ばしきった状態では、アームが転倒する危険がある。重いロボットアームであれば、揺動に起因する潜在的な問題を減らすことができるが、実際にその設置には時間がかかり過ぎる。このため、設置が容易でありながら、軽量であるロボットアームが求められる。
【0140】
なお、振動は2つの種類に分類できる。1つは穿孔デバイス122から直接発生する振動である。これは、高周波数で低振幅の振動であり、「手腕振動障害症候群(白蝋病)」(hand-arm vibration syndrome(HAVS)、職業病とされている(ソース:hse.gov.uk))の原因としても知られている。ロボットアームに振動する工具を保持させることで、人間の作業員はこの障害のリスクをから解放される一方、この振動によってロボットに問題が生じる可能性がある。ロボットが精密機械であり、外部からの歪みの影響を受け易いことを考慮すると、振動する工具とロボットアームとの間に振動減衰デバイスが必要である。
【0141】
上記の振動減衰手段は、それ単体では、ワークへの穿孔に要する力を消すことはない。ドリルビットがワークを貫通するには、過渡/ピーク部分がスムーズになっても大きな力が必要である。この力が、台の設置領域の外側で合力(穿孔力及び穿孔デバイスを装着したロボットアームにかかる重力)が作用する状況において、上げた状態の台に対する曲げモーメントを発生させている。この曲げモーメントは、潜在的に危険であり、台を転倒させる可能性がある。
【0142】
真空デバイス(シュラウド及び真空源132)は、この場合では穿孔力に抗する真空力を発生させることで、穿孔力を閉鎖された環境内に抑制するために追加されている。このため、台を曲げるように作用する力は、ロボットアーム110の重さ及び位置によって生じる一定の力だけになる。
【0143】
真空力を穿孔力に抗して作用させるだけでなく、ロボットアームの重さにも抗して作用させるという構成も考えられるが、実際にはその効果は小さい。これは、穿孔デバイスを所定位置に移動させている間は、ワークへの強固な流体接続が必要である真空力をロボットの重さに抗して作用させることできないためである。曲げモーメント及び転倒の危険は、軽量のロボットアームを用いることによってのみ低減できる。しかし、物理の法則により、アームが軽量であるほど、工具の振動の影響が大きくなり、振動減衰手段を用いることで得られる効果がより重要になる。
【0144】
この問題に対し、最後に1つ詳細が必要である。ロボット等の精密機械を採用する理由は、高い正確性の実現である。本明細書で説明した振動減衰手段を導入した場合、少なくとも穿孔方向における正確性が低下する。しかし、総合的に見れば、ロボットの動作に関わる堅牢性を改善した振動低減減衰システム及びその寿命の改善というメリットの方が優先される。
【0145】
図10a~図10cは、シュラウド70の埃よけ708を別の好適な形態にしたシュラウドを示す。図10aはシュラウドの斜視図、図10bは縦断面図、図10cは埃よけを下方から見た図である。
【0146】
本実施形態では、漏入孔711を垂直埃よけ羽根781の上方に配置することで、埃の除去のために制御された空気の流れを促すことができる。垂直羽根781は、空気中に渦流が形成され易くなるように、タービン翼のように傾斜、湾曲している。これにより、通常の動作時に、回転するドリルビット704により発生する埃が主真空室705内に導き易くなる。埃等のより重い粒子は、遠心力によって、渦流の外側に向かって移動する。ベローズ706の壁は、天井124(又は壁126)から離れる方向に沿って螺旋状に形成されており、慣性を利用して、埃を真空口702に向かって回転させる。予備試験(2015年8月)から、上記の埃よけにより、天井を通常地面から見るときの距離よりも近い距離から注視しない限り、天井の埃の跡が視認できない程度まで天井の埃の跡を減らせることがわかった。
【0147】
埃よけ708の中央に突出している円筒部783の先端782は、容易に圧縮可能な軟質材料から構成されている。これにより、いかなる接触も妨げず且つ上側シール707とワーク124,126との間のシールを低下させずに、ワーク124,126との接触が可能になっている。
【0148】
ドリルは、上記ドリル取付デバイスによって、ロボットの工具フランジに対してドリル軸線に沿って直線移動が可能になっている。この移動は、装置に力が加えられていない状態で直線位置を平衡位置に戻すように配置された1つ以上のばねによって規制されている。加えられる力の例として、ドリルの重さ、穿孔時の抵抗、真空吸引の作用等が挙げられる。装置には、直線位置を連続的に監視する直線位置センサが装着されてよい。直線移動の距離は、装置の技術的特性によって制限されている。直線位置がばねによって規制されているため、直線位置センサをドリル軸線に沿った合力の測定に用いることができる。
【0149】
図11は、穿孔装置100がBIMファイルで計画された通りに1組の孔の開けるときの準備として実行する代表的な処理ステップを示すフローチャートである。図における左側の長方形1100内のステップは、例えば計画室や建設現場の事務所等の任意の場所で実行できる。図の右側のステップは、実際の建設現場で実行される。
【0150】
ステップ1101において、BIMファイルにアクセスする。BIMファイルは、クラウドサーバに記憶されていてもよいし、ローカルコンピュータ、例えばコンピュータの記憶ドライブやUSBスティック等のポータブルメモリデバイスに記憶されていてもよい。そしてステップ1102において、BIMファイルにフィルタをかけて、穿孔装置100が必要なパラメータを抽出する。例えば、穿孔が必要な部品だけが選択されるようにBIMファイルにフィルタをかけてよい。BIMファイルからは、孔のパラメータを抽出できる。例えば、各孔の座標、深さ、直径、仕上げ等を抽出できる。
【0151】
このステップ1102では、所与の製品に関する穿孔情報を検索するステップを実行してもよい。例えば、BIMファイルには、コンピュータシステムが参照可能な製品を特定するためのコードを含まれていてよく、また、製品寸法等が記載されたウェブサイトへのハイパーリンクが設けられてもよい。このような検索動作を行うコンピュータシステムは、図8a又は図8bのロボットサーバ803でもよいし、ロボットが通信可能なリモートサーバでもよい。BIMファイルのコピーを保持する同じコンピュータシステムでもよい。
【0152】
孔のパラメータを特定すると、コンピュータシステムは次にステップ1103の1組の穿孔対象孔を表すための座標系の原点及び向きを選択する。
【0153】
そして、コンピュータシステム(リモートサーバでもよいし、ロボットサーバでもよい)は、BIMファイル情報(フィルタ後)から、穿孔対象孔の座標値のファイルを作成する。これは例えばCSVファイル形式でよい。
【0154】
孔の座標値及び他の記述を含むファイルが現場外で作成された場合は、ステップ1104において、このファイルをロボットサーバ803に送信する。ファイルは、ステップ1109において作業スケジュール表に組み込むことが可能である。
【0155】
ステップ1101~1104は、例えば建築士のサーバ、計画室や建設現場の事務所のコンピュータシステム、又はロボット穿孔装置100に対して対応業務を行う会社のコンピュータシステム等の外部のコンピュータシステム上で実行してもよい。一例として、これらのステップはノートパソコン又はタブレットのプロセッサによって実行され、その情報はステップ1104においてWi-Fi又はBluetooth通信でロボットサーバに送信される。別の例では、ロボットサーバ803が、操作者の使用する例えばノートパソコン又はタブレットコンピュータ等のインターフェースの制御下で、ステップ1101~1104のうちの1つ以上のステップ、場合によっては全てのステップを実行可能である。
【0156】
建設現場では、トータルステーション810が建物内に設置される(ステップ1105)。トータルステーション810を実際にどこに配置するかは重要ではない。作業を行う天井又は壁に視線を向けた状態でトータルステーション810が任意の位置に設置されていればよい。
【0157】
ここで注目すべき点は、操作者がトータルステーション810の位置を測定する必要がないことである。通常であれば、現場測量のときにこれを行う必要がある。従って、時間を節約できる(トータルステーション810の測定は、後述する後続のステップ1108において穿孔装置100に対して仮想穿孔線をマッピングするときに間接的に行われる)。
【0158】
次に、ステップ1106において、操作者は穿孔基準線の開始点を測定する。これは、通常、1列に並ぶ複数の照明器具の中の最初の照明器具の中心である。1つの部屋において複数の列の器具が互いに平行に並んでいることが多い。手作業で孔を開ける場合と同様に、照明壁や隅等の特徴部分を探すことで、図面上の開始点を現実世界でも見つけることができる。天井(又は壁)に印を付けることで、現実世界において開始点を特定することができる。
【0159】
そして、ステップ1107において、操作者は、例えば照明器具の列の反対側における位置を特定することで穿孔基準線の終点を測定し、同様に印を付ける。
【0160】
反射プリズムを開始点に固定してもよい。トータルステーション810は、ロボットのソフトウェア用のインターフェースを用いて、この位置を測定できる。この位置は、ロボットサーバに自動的に記憶されてよく、好適には、BIMファイルの座標系と同じ原点(0,0)が与えられる。この後、反射プリズムを天井に印した終点まで穿孔基準線に沿って移動し、その位置をトータルステーション810で測定し、ロボットサーバに記憶させることが可能である。終点の位置は、BIMファイルと同じ原点を用いて記憶されてよい。例えば、XをBIM座標系の概念的なx軸に沿った距離とした場合、(X,0)として記憶される。
【0161】
上記の2つの点により、原点(0,0)と向きの両方がマッピングされたことになる。これは、マッピングされた1本の軸線の方向が、直交座標系の他の軸線に直交するからである。また、仮想穿孔線に対するトータルステーション810の相対位置も間接的に測定されたことになる。この位置は、作業領域における全ての孔の基準位置として用いることができる。
【0162】
ステップ1108において、トータルステーション810の座標系(トータルステーション座標系)で穿孔装置100の位置、具体的にはロボットアームが装着されたロボットの位置が測定される。これにより、上記位置がBIM座標系でマッピングされる。
【0163】
穿孔装置100の相対的な向きも測定する必要がある。以下に説明するように、これは、複数の方法で実現可能である。
【0164】
操作者は、穿孔線に対して平行に可視レーザ線を合わせることができる。これにより、ロボットの視覚システム811は穿孔線に基づいて向きを直すことができ、ロボットサーバは穿孔線に対する穿孔装置100の相対的な回転を自動的に算出する。この方法は、ロボットに必要なものが1つの反射プリズムだけであるため、時間が節約できるという利点を有する。したがって、トータルステーション810は、あるプリズムを測定し、その後に次のプリズムを探して再度測定する必要がない。また、例えば、視覚システム811が実際の穿孔線を視認できないほど穿孔線の近傍にロボットを配置する必要がある状況において、平行レーザ線をロボットの視覚システム811の視野内に入れることができるため、上記の方法は非常に汎用性が高い。
【0165】
このため、ラインレーザを穿孔線と完全に平行になるように配置することができる。操作者は、穿孔線に平行な1組の位置の印を事前に付けておくことができる。これらは、レーザの位置合わせ用に、作業者が任意の位置から少なくとも2つの印が見えるような間隔で配置されるべきである。このレーザの位置合わせは、穿孔時間を増やさないために、ロボットが穿孔を行っている間に行うことができる。この方法の考えられる欠点は、可視レーザラインを配置する人間に頼っているため、配置が不正確になり、孔が正確に開けられない可能性があることである。しかし、この不正確性は、ロボットの現在位置に限られており、穿孔線には及ばない。
【0166】
別の方法では、2つ又は3つの反射プリズムをロボットに用いる。例えば、ロボットの両側(左右)に一つずつ配置する。トータルステーション810から各プリズムまでの距離を用いて、穿孔線に対するロボットの回転を算出する。この方法には、人間によるエラーや誤差がなくなり、全ての孔がトータルステーション810の測定システムの能力の範囲内で保証された正確性を有するという利点がある。一方、ロボットが穿孔位置に到達、停止した後、トータルステーション810が2つのプリズムの位置を測定する必要があるため、より長い時間を要する可能性がある。各プリズムの測定を多少素早く行うことは可能であるが、トータルステーション810を次のプリズムに向けて、再度測定を行う必要がある。
【0167】
更に別の方法では、3スペースセンサ(例えば、慣性計測装置のような、3軸加速度計、3軸ジャイロ、及び3軸磁気計の組み合わせ)又はより高品質のジャイロ(例えば、6又は9自由度のジャイロ又はIMU)を用いて、ロボットのヨー又は回転を測定する。ジャイロに対して基準位置を設定するために、開始位置において平行線の測定又は2つのプリズムの測定が必要である。所与の既知のジャイロセンサのドリフト及び既知の正確性に基づいて、IMU812の較正を行う頻度を算出することができる。
【0168】
吊り天井等の特定の穿孔作業における孔の正確さは、例えば据え付け品等の電気設備と同等の精度を必要としない。このため、正確性が過度に高い測定プロセスを用いた場合、穿孔時間が不要に増えて、穿孔装置100の効率が低下してしまう。
【0169】
ジャイロ/IMU812は、データをロボットサーバ803に瞬時に提供できるため、穿孔装置100が静止したタイミングと穿孔が開始可能なタイミングとの間に遅延が生じない。
【0170】
このような構成では、ロボットに設けられた視覚システム811を用いて、ロボットに対する天井の平面を探し、測定してよい。視覚システム811は、ロボットと天井との間の距離を測定することもできる。この追加的な情報は、ロボットがロボットアーム110を具体的にどのように動かすべきかを判断する上で役立ち、また、ミリオーダの精度を有する屋内位置決めシステムを穿孔装置100に提供できる。視覚システム811はスキャナを含むことができ、これにより、例えば、天井に取り付け済みの部品の位置及びその物理的な境界を特定し、更には意図的に非平面になっている天井にも対応できる。
【0171】
ロボットサーバ803は穿孔対象孔の座標を含むファイル(ステップ1104のCSVファイル)を受信すると、ステップ1109においてロボットアームが現在位置から届く範囲内の穿孔対象孔の作業リストを作成する。
【0172】
この時点で、穿孔対象孔の座標(各孔の深さも含む)を、BIM座標系からレーザーステーション座標の現実世界の位置にマッピングできる。穿孔装置100の位置も、ステップ1108により既知である。穿孔装置100の位置は、ロボットアーム110のベース又は装置の他の部分に反射プリズムを取り付けて、プリズムの位置とロボットアームのベースとが固定の既知の関係となるようにすることで、容易に測定可能である。
【0173】
ステップ1109の一部として、操作者に対して、通常この段階で作業リストが例えばスクリーン上に表示物として提示され、特定の穿孔動作を優先したり、整理し直したりする機会が与えられる。作業リストが最適であると判断すると、ロボットサーバは、ステップ1110においてロボットアームにBIMファイルの計画に沿って1組の孔を開けさせることで、作業リストを実行する。
【0174】
ステップ1110においてBIMファイルの指示に従って上記1組の孔が開けられ、用意された後は、穿孔装置100の位置を移動し、ステップ1108から処理を繰り返してよい。したがって、ステップ1108において穿孔装置100の位置が再度測定され、ステップ1109において新たな作業リストが作成され、ステップ1110においてBIMファイルに従って新たな1組の孔が開けられ、用意される。
【0175】
上記のステップは、BIMファイルの指示に従って、建物の特定の領域における全ての孔又は特定の作業スケジュールにおける全ての孔が開けられ、用意されるまで繰り返してよい。
【0176】
穿孔装置100の傾きをどのように補正するべきかという問題ある。ロボットアーム110が取り付けられた昇降機構は、例えば離れた位置に孔を開けるためにロボットアーム110を伸ばしたことで上げられた状態の載置物の重心が移動した場合、傾いてしまう可能性が高い。従来のシザーリフトは、特にジョイントが摩耗すると、この傾きが発生する可能性があり、リフトを上げる高さに応じて傾き量が増加する。ロボットアームのジョイントも動いてしまうことがあるが、昇降機構に比べれば無視できるほどであることが多い。
【0177】
昇降機構が数度傾いただけでも、ドリル先の位置が数ミリ変位し、開けられた孔は、意図した穿孔位置から外側に僅かに離れてしまう。また、ドリル先が天井に対して直角ではなく鋭角で接触するため、ドリル先が激しく振動し且つ横方向にずれてしまい、穿孔動作が困難になってしまう。傾きが大きい場合は、孔が広がり、孔の内径に対応して作られた締結プラグがきつく嵌合しない可能性がある。この結果、重い設備が天井に取り付けられた場合、プラグが緩む危険性があり、また、取り付けられた設備が落下する危険性さえある。一方、傾きを回避できれば、ドリルビットがはまり込む可能性が低くなり、より整っており且つより円形な、意図した寸法に忠実な孔になる。
【0178】
この傾きの問題を解決するために、9自由度又は6自由度のスペースセンサ(上記した基準線に対する穿孔装置100の向きを測定するためのセンサと同じものが使用可能)をロボットに搭載可能である。これにより、ロボットの移動前の位置と、ロボットアームを伸ばした後であり且つ穿孔の開始前の位置を測定して、傾きの有無を判定し、適宜ドリルの位置を移動させ且つ/又はドリルを回転させて補正を行うことが可能である。
【0179】
別の方法では、穿孔中に上記のようなセンサからのデータを監視又は記録する。これにより、特定の穿孔装置100に対する補正の量及び穿孔中に受ける力を調整するために、穿孔中に通常何が起こっているのかをシステムに認識させることができる。しかし、トータルステーション810とプリズムとの間又は視覚システム811と天井との間の視線の制限により、穿孔動作中に傾き又は撓みを監視し続けるは困難である可能性がある。記録データは、穿孔中に作用する力の増加に起因する追加的な傾き又は撓みの補正を考慮に入れる場合に使用できる。
【0180】
更に別の方法では、穿孔の開始前にドリル122の正確な位置を判定できるように、ロボットアームの可動端の近傍にプリズムを取り付けてもよい。フィードバックシステムを用いて、傾きによって生じるドリル先の変位が所定の閾値を超えたことをロボットサーバ803に伝えることが可能であり、これに対して、ロボットサーバ803は適宜ドリル122の位置を移動させる又はドリル122を回転させて補正を行える。
【0181】
図12は、穿孔装置100で使用可能な1組のサーボ制御された誘導レーザを示す。
【0182】
視覚システム811は、誘導レーザを用いて天井に線(2本)を投影する。これらは、ロボットに対する天井の距離及び角度(ピッチ及びロール)等の特定のパラメータを算出するために用いられる。建設現場での経験により、誘導レーザを固定の角度に設定すると問題が発生し得ることがわかっている。しかし、誘導レーザをロボットサーバ803により制御可能なサーボ機構に取り付けることで、これらの誘導レーザは、ロボットの視覚システムのカメラの視野内のどこにでも線を投影できるようになる。これは、例えば主天井から下方に突出する梁、特に幅狭の梁に沿って孔を開けるときに非常に役立つ。通常、固定式の誘導レーザは、このような梁を示すには幅が広すぎであり、視覚システムが梁を全く視認できず、ロボットが梁に衝突するという場合も考えられる
【0183】
このため、図12に示すように、視覚システム811は、第1及び第2誘導レーザ1201,1202及びそれぞれのレーザ光線1203、1204を備える。誘導レーザ1201,1202のそれぞれは、光線の角度を幅狭設定用と幅広設定用の角度の間で切り替えられるように、サーボ機構に取り付けられている。
【0184】
図13は、ロボットアーム上のドリル用の真空アタッチメントの斜視図を示す。現在入手可能な真空アタッチメントは、ドリルに直接接続されるものであり、ドリルのハウジングの形状に一致した状態で係合する必要がある。本発展例では、真空カラー301がドリルクランプを介してロボットアームに取り付け可能になっている。これにより、真空カラーを交換することなく、ドリルを交換できる。また、カラーを交換することなく、ドリルのチャックをSDSから通常のチャックに交換できる。更に、物体又は壁に対して穿孔を行うときに真空機器を一方側に移動することができ、穿孔装置100全体の位置を移動することなく穿孔作業を進めることができる。真空機器は、真空システムの取り付け及び取り外しを容易にする簡易着脱コネクタ1302を備えてよい。
【0185】
図14aは、穿孔装置100に取り付けられ、トータルステーション測定システムと共に用いられるプリズムの上部に嵌合可能な代表的なプリズムキャップ1401の斜視図である。図14bは、プリズムキャップ1401の側面図である。以下のような問題が生じている。標準的なプリズムは、ねじ釘状に上方に突出した上部を有する形状を有することが多い。この形状は、穿孔時にロボットがプリズムの周囲を動き回るときに通過するケーブルがプリズムに引っかかるため、邪魔になる。図示したようなプリズムキャップ1401はねじ釘状の部分を覆うことができるため、ケーブルが引っかかりにくい。
【0186】
プリズムキャップ1401には更なる働きがある。トータルステーションは、穿孔線の測定中に間違ったプリズムにロックし易いという問題が確認されている。プリズムキャップ1401を上部に載せたプリズムを穿孔装置100に取り付けた場合、操作者は、容易にプリズムキャップ1401を回して、トータルステーションの視界からプリズムを隠すことができる。プリズムが視界から消えるため、トータルステーションは、穿孔ラインのマーキングに用いられている正しいプリズムにロックすることになる。
【0187】
1つの態様として、プリズムキャップは、外周1402aを有する上面1402と、上面1402の下側に設けられ、プリズムが取り付けられるように構成されたねじ穴1403と、上面の外周から延在する遮蔽部1404とを備える。遮蔽部は、上面の下側におけるプリズムが配置される領域を遮蔽するように構成される。遮蔽部は、上面の外周1402aにおける90°~270°と等しい角距離だけ外周に沿って延在している。好適には、遮蔽部は、100°以上且つ150°未満(例えば、120°)だけ延在する。プリズムキャップ1401は、プラスチックや他の適した不透明材料の成形品であってよい。好適には、上面1402は円形であり、遮蔽部1404は上面1402から垂下する円筒壁の一部を形成する。しかし、他の形状も等しく可能である。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図11
図12
図13
図14a
図14b