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特許7104130超微細キュービットにおける漏れエラーの抑制/変換
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】超微細キュービットにおける漏れエラーの抑制/変換
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20220712BHJP
   B82Y 10/00 20110101ALI20220712BHJP
【FI】
G06N10/40
B82Y10/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020203332
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2021093160
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】16/709,290
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】デビット・ヘイズ
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル・ストゥッツ
【審査官】金木 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534638(JP,A)
【文献】国際公開第2019/152020(WO,A2)
【文献】BRUZEWICZ, C.D., et al.,Trapped-Ion Quantum Computing: Progress and Challenges,arXiv.org [online],2019年04月08日,[Retrieved on 2021-11-25] Retrieved from the Internet: <URL: https://arxiv.org/abs/1904.04178>
【文献】BROWN, N. C. et al.,Leakage mitigation for quantum error correction using a mixed qubit scheme,Physical Review A [online],2019年09月18日,Vol. 100, No. 3,p. 032325,[retrieved on 2022-05-26], Retrieved from the Internet: <https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevA.100.032325>,<DOI: 10.1103/PhysRevA.100.032325>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00
B82Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子コンピュータであって、
内部に1つ以上の原子オブジェクトを有する装置と、
第1の操作信号を提供するように構成された第1の操作ソースと、
第2の操作信号を提供するように構成された第2の操作ソースと、
コントローラであって、前記コントローラが、
前記第1の操作ソースに、前記第1の操作信号を前記装置の特定の領域に提供させることであって、前記第1の操作信号が、キュービット空間から漏れた前記装置の前記特定の領域内の原子オブジェクトを漏れた状態から中間マニフォールドに励起し、かつ前記キュービット空間内にある原子オブジェクトの励起を抑制するように調整されている、ことと、
前記第2の操作ソースに、前記第2の操作信号を前記装置の前記特定の領域に提供させることであって、(a)前記第2の操作信号は、原子オブジェクトを前記中間マニフォールドから減衰マニフォールドに励起するように調整されており、(b)原子オブジェクトが減衰マニフォールドからキュービット空間内に減衰する非ゼロの確率が存在する、ことと、を行うように構成されている、コントローラと、を備える、量子コンピュータ。
【請求項2】
前記コントローラが、前記第1及び第2の操作ソースに、前記第1及び第2の操作信号を複数回連続的に提供させて、所望の漏れ抑制係数を達成するように構成されており、前記第2の操作ソースが前記第2の操作信号を提供した後、前記コントローラは、減衰時間後に前記第1の操作ソースに別の前記第1の操作信号を提供させ、前記減衰時間は、原子オブジェクトが前記減衰マニフォールドから基底状態マニフォールドに減衰するための時間に基づいて決定され、前記キュービット空間が、前記基底状態マニフォールド内に定義されている、請求項1に記載の量子コンピュータ。
【請求項3】
前記キュービット空間が、前記1つ以上の原子オブジェクトの基底状態マニフォールドの超微細構造と、
前記第1の操作信号が、前記漏れた状態から前記中間マニフォールドへの四重極遷移を励起するように調整されていること、
前記キュービット空間内にある原子オブジェクトの励起が、望ましくない遷移に対して大きなエネルギー離調を引き起こす高磁場によって抑制されていること、
前記第1の操作信号の波数ベクトル及び偏光が、前記キュービット空間から外への原子オブジェクトの励起を最小限に抑えるように構成されていること、又は
前記第1の操作信号の波数ベクトル及び偏光が、前記装置の前記特定の領域内の磁場に対して実質的に直交していること、のうちの少なくとも1つと、に基づいて定義されている、請求項1に記載の量子コンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な実施形態は、原子オブジェクトトラップ型量子コンピュータにおける漏れエラーを抑制/変換することに関する。例えば、様々な実施形態は、超微細キュービットにおける漏れエラーを抑制/変換することに関する。
【背景技術】
【0002】
原子オブジェクトトラップ型量子コンピュータでは、トラップされた原子オブジェクト(例えば、原子、イオンなど)が量子コンピュータのキュービットとして使用される。キュービットは、古典的なビットと同様に、2つの状態(例えば、0又は1)のうちの1つであり得る。しかしながら、トラップ内の原子オブジェクトは、3つ以上の状態であってもよい。原子オブジェクトは、定義された2状態キュービット空間から出ると、漏れたと言われる。この漏れは漏れエラーをもたらす。加えられる努力、工夫、及び革新を通じて、かかるシステムの多くの欠陥は、本発明の実施形態に従って構造化される解決策を開発することによって解決され、それらの多くの実施例が本明細書で詳細に記載される。
【発明の概要】
【0003】
例示的な実施形態は、量子コンピュータ、システム、装置など、並びに漏れ抑制/変換動作を実行するための対応する方法を提供する。様々な実施形態において、漏れ抑制/変換動作は、量子コンピュータによって経験される漏れエラーを低減するために実行され得る。
【0004】
一態様によれば、量子コンピュータが提供される。例示的な実施形態では、量子コンピュータは、内部に1つ以上の原子オブジェクトを有する装置と、第1の操作信号を提供するように構成された第1の操作ソースと、第2の操作信号を提供するように構成された第2の操作ソースと、コントローラと、を備える。コントローラは、第1の操作ソースに、第1の操作信号を装置の特定の領域に提供させることと、第2の操作ソースに、第2の操作信号を装置の特定の領域に提供させることと、を行うように構成されている。第1の操作信号は、キュービット空間から漏れた装置の特定の領域内の原子オブジェクトを漏れた状態から中間マニフォールドに励起し、かつキュービット空間内にある装置の特定の領域内の原子オブジェクトの励起を抑制するように調整されている。第2の操作信号は、原子オブジェクトを中間マニフォールドから減衰マニフォールドに励起するように調整されている。
【0005】
例示的な実施形態では、キュービット空間は、1つ以上の原子オブジェクトの基底状態マニフォールドの超微細分裂に基づいて定義されている。例示的な実施形態では、コントローラは、第1の操作ソースに第1の操作信号を提供させ、第2の操作ソースに第2の操作信号を提供させることを、連続的に、複数回行うように構成されている。例示的な実施形態では、第2の操作ソースが第2の操作信号を提供した後、コントローラは、減衰時間後に第1の操作ソースに第1の操作信号を提供させる。例示的な実施形態では、減衰時間は、原子オブジェクトが減衰マニフォールドから基底状態マニフォールドに減衰するための平均時間に基づいて決定され、キュービット空間は、基底状態マニフォールド内に定義されている。例示的な実施形態では、(a)1つ以上の原子オブジェクトはスピン1/2核を有し、(b)中間マニフォールドは3/2マニフォールドであり、(c)減衰マニフォールドは、1/2マニフォールド又は[3/2]1/2マニフォールドのうちの1つである。例示的な実施形態では、第1の操作信号は、漏れた状態から中間マニフォールドへの四重極遷移を励起するように調整されている。例示的な実施形態では、第1の操作信号の波数ベクトル及び偏光は、装置の特定の領域内の磁場に対して実質的に直交している。例示的な実施形態では、第1の操作信号は、キュービット空間から外への遷移を抑制するように整形されている。例示的な実施形態では、第1の操作信号は、双曲線正割形状のパルスとなるように整形されている。例示的な実施形態では、第1の操作信号のパルス時間は、およそ0.8μs~30μsの範囲内にある。
【0006】
別の態様によれば、量子コンピュータにおける漏れエラーを抑制/変換するための漏れ抑制/変換動作を実行する方法が提供される。例示的な実施形態では、方法は、量子コンピュータのコントローラによって、第1の操作ソースに、第1の操作信号を、内部に1つ以上の原子オブジェクトを有する量子コンピュータの装置の特定の領域に提供させることであって、第1の操作信号が、キュービット空間から漏れた装置の特定の領域内の原子オブジェクトを漏れた状態から中間マニフォールドに励起し、かつキュービット空間内にある装置の特定の領域内の原子オブジェクトの励起を抑制するように調整されている、ことと、コントローラによって、第2の操作ソースに、第2の操作信号を装置の特定の領域に提供させることであって、第2の操作信号が、原子オブジェクトを中間マニフォールドから減衰マニフォールドに励起するように調整されている、ことと、を含む。
【0007】
例示的な実施形態では、キュービット空間は、1つ以上の原子オブジェクトの基底状態マニフォールドの超微細分裂に基づいて定義されている。例示的な実施形態では、コントローラは、第1の操作ソースに第1の操作信号を提供させ、第2の操作ソースに第2の操作信号を提供させることを、連続的に、複数回行うように構成されている。例示的な実施形態では、第2の操作ソースが第2の操作信号を提供した後、コントローラは、減衰時間後に第1の操作ソースに第1の操作信号を提供させる。例示的な実施形態では、減衰時間は、原子オブジェクトが減衰マニフォールドから基底状態マニフォールドに減衰するための平均時間に基づいて決定され、キュービット空間は、基底状態マニフォールド内に定義されている。例示的な実施形態では、(a)1つ以上の原子オブジェクトはスピン1/2核を有し、(b)中間マニフォールドは3/2マニフォールドであり、(c)減衰マニフォールドは、1/2マニフォールド又は[3/2]1/2マニフォールドのうちの1つである。例示的な実施形態では、第1の操作信号は、漏れた状態から中間マニフォールドへの四重極遷移を励起するように調整されている。例示的な実施形態では、第1の操作信号の波数ベクトル及び偏光は、装置の特定の領域内の磁場に対して実質的に直交している。例示的な実施形態では、第1の操作信号は、キュービット空間から外への遷移を抑制するように整形されている。例示的な実施形態では、第1の操作信号は、双曲線正割形状のパルスとなるように整形されている。例示的な実施形態では、第1の操作信号のパルス時間は、およそ0.8μs~30μsの範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
このように本発明を一般的な用語で説明してきたが、ここで、必ずしも縮尺どおりに描かれていない添付図面を参照する。
【0009】
図1】例示的な実施形態による、例示的な原子オブジェクト量子コンピュータのブロックダイアグラムを提供する。
【0010】
図2】例示的な実施形態による、原子オブジェクトにおける漏れエラーがどのように生じ得るかの例を示す概略ダイアグラムを提供する。
【0011】
図3A】例示的な実施形態による、漏れ抑制/変換動作を実行するために使用される総時間Tの関数としての最終漏れエラーのシミュレーション結果を示すプロットを提供する。
【0012】
図3B】例示的な実施形態による、漏れ抑制/変換動作中に実行されるサイクル数Nの関数としての最終漏れエラーのシミュレーション結果を示すプロットを提供する。
【0013】
図3C】例示的な実施形態による、双曲線正割形状の第1の操作信号が使用されるときの漏れ抑制/変換動作を実行するために使用される総時間Tの関数としての最終漏れエラーのシミュレーション結果を示すプロットを提供する。
【0014】
図4】例示的な実施形態による、漏れ抑制/変換方法の様々なプロセス、手順、及び/又は動作を示すフローチャートを提供する。
【0015】
図5A】それぞれ、例示的な実施形態による、漏れ抑制/変換方法を実行する工程の概略ダイアグラムを提供する。
図5B】それぞれ、例示的な実施形態による、漏れ抑制/変換方法を実行する工程の概略ダイアグラムを提供する。
図5C】それぞれ、例示的な実施形態による、漏れ抑制/変換方法を実行する工程の概略ダイアグラムを提供する。
【0016】
図5D】例示的な実施形態による、減衰マニフォールドが[3/2]1/2マニフォールドである、図5B及び図5Cと同様の概略ダイアグラムを提供する。
【0017】
図6】例示的な実施形態による、内部に原子オブジェクトを有する装置を備える量子コンピュータの例示的なコントローラの概略ダイアグラムを提供する。
【0018】
図7】例示的な実施形態による、使用され得る量子コンピュータシステムの例示的な計算エンティティの概略ダイアグラムを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、本発明を、本発明の全てではなくいくつかの実施形態が示される添付図面を参照しながら以下により完全に説明する。実際に、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。「又は」という用語(「/」とも示される)は、別様に示唆されない限り、代替的及び連言的な意味の両方で本明細書にて使用される。「図示の」及び「例示的な」という用語は、品質レベルの指示のない例として使用される。「概して」及び「およそ」という用語は、別様に示されない限り、エンジニアリング及び/若しくは製造限度内、並びに/又はユーザ測定能力内のものを指す。同様の数字は、全体をとおして同様の要素を指す。
【0020】
キュービットは、量子ビットであり、古典的なコンピューティングの2進数字又はビットに対する量子コンピューティングにおける対応物である。ビットが古典的なコンピュータにおける情報の基本単位であるのと全く同じように、キュービットは、量子コンピュータにおける情報の基本単位である。キュービットは、2状態(2準位)の量子力学系であり、量子力学の特異性を示す最も単純な量子系のうちの1つである。キュービットとして使用されてきた2状態の量子力学系の例としては、2つの準位をスピンアップ及びスピンダウンと見なすことができる電子又は原子核のスピン、並びに2つの状態を垂直偏光及び水平偏光とすることができる単一光子の偏光が挙げられる。
【0021】
様々な実施形態において、超微細分裂は、原子オブジェクトの核の状態と電子雲の状態との間の相互作用に起因する原子オブジェクトのエネルギー準位の分裂である。様々な実施形態において、原子オブジェクトは、原子又はイオンであり得る。例示的な実施形態では、原子オブジェクトは、1つ以上の元素及び/又は種の1つ以上の原子又はイオンである。本明細書で使用するとき、「マニフォールド」という用語は、特定の主量子数及び角運動量量子数に対応する複数の状態を指す。
【0022】
様々な量子力学系において、2状態のキュービット空間が定義され得る。例えば、2状態のキュービット空間は、原子オブジェクトの2つの超微細準位として定義され得る。例えば、111Cd+、133Ba+、171Yb+、199Hg+、及び/又は同様のものなど、スピン1/2核を有する原子オブジェクトでは、図2に示されるように、2つの超微細準位が2状態のキュービット空間215として定義され得る。例えば、2状態は、F=0,1/2状態(例えば、|0>状態)が占有されているかどうか、又はF=1,m=0,1/2状態(例えば、|1>状態)が占有されているかどうかに対応し得、Fは、原子オブジェクトの全角運動量を示す(例えば、Fは、原子オブジェクトの核スピンと電子角運動量との和である)に対応し得る。しかしながら、基底準位1/2マニフォールドの状態は、m=0,1/2状態だけではない。したがって、原子オブジェクトは、キュービット空間215から漏れる可能性がある。例えば、F=0,1/2状態(例えば、|0>状態)又はF=1,m=0,1/2状態(例えば、|1>状態)にあるのではなくて、原子オブジェクトは、F=1,m=-1又は1,1/2状態にある可能性がある。本明細書で使用するとき、量子数mは、例えば、全角運動量のz成分を指す。様々な実施形態は、これらの漏れた原子オブジェクトによって引き起こされる漏れエラーを抑制/変換するための技術、並びに対応する装置及び/又はシステムを提供する。例えば、様々な実施形態は、これらの漏れた原子オブジェクトをキュービット空間215に戻すための技術、並びに対応する装置及び/又はシステムを提供する。様々な実施形態において、漏れエラーは、標準的な量子コンピューティングエラー(例えば、望ましくないシュタルクシフトの蓄積など)に変換される。これらの標準エラーは、量子エラー訂正などを介して訂正及び/又は調整され得る。例えば、量子エラー訂正コードを使用することによって、キュービットをキュービット空間の外側で移動させない標準エラーが訂正され得、量子コンピュータの全体的なエラーレベルが低減され得る。したがって、様々な実施形態は、量子コンピュータによって実行された計算に発生する漏れエラーを低減及び/又は変換して、量子コンピュータの全体的なエラー率を低減することによって、量子コンピューティング技術、特に、超微細キュービットを使用する及び/又は核スピン1/2原子オブジェクトをキュービットとして使用する量子コンピューティング技術に改善をもたらす。
例示的な量子コンピュータシステム
【0023】
図1は、例示的な量子コンピュータシステム100のブロックダイアグラムを提供する。様々な実施形態において、量子コンピュータシステム100は、計算エンティティ10と、量子コンピュータ110と、を備える。様々な実施形態において、量子コンピュータ110は、コントローラ30と、内部に原子オブジェクトを有する装置50を封入する極低温及び/又は真空チャンバ40と、1つ以上の操作ソース64(例えば、64A、64B、64C)と、を備える。例示的な実施形態では、1つ以上の操作ソース64は、1つ以上のレーザ(例えば、光学レーザ、マイクロ波ソース及び/又はメーザなど)又は別の操作ソースを含み得る。様々な実施形態において、1つ以上の操作ソース64は、装置50内の1つ以上の原子オブジェクトの制御された量子状態発展を操作及び/又は引き起こすように構成されている。例示的な実施形態では、原子オブジェクトは、1つ以上の元素及び/又は種の1つ以上の原子又はイオンである。例示的な実施形態では、装置50は、原子オブジェクトトラップ、イオントラップ、並びに/又は内部に原子オブジェクトを閉じ込める、収容する、トラップする、及び/若しくは他の方法で有するように構成された他の装置である。例えば、装置50は、例示的な実施形態において、表面イオントラップであり得る。1つ以上の操作ソース64が1つ以上のレーザを含む例示的な実施形態では、レーザは、1つ以上のレーザビームを、極低温及び/又は真空チャンバ40内の装置50に提供し得る。様々な実施形態において、操作ソース64は、ゲート動作、冷却動作、漏れ抑制/変換動作などを実行するために使用され得る。例示的な実施形態では、1つ以上の操作ソース64は各々、対応するビーム経路66(例えば、66A、66B、66C)を介して、レーザビームなどを装置50に提供する。様々な実施形態において、少なくとも1つのビーム経路66は、ビーム経路66を介して装置50に提供される操作ビームを変調するように構成された変調器を含む。様々な実施形態において、量子コンピュータ110の操作ソース64、変調器、及び/又は他の構成要素は、コントローラ30によって制御される。
【0024】
様々な実施形態において、計算エンティティ10は、ユーザが、入力を(例えば、計算エンティティ10のユーザインターフェースを介して)量子コンピュータ110に提供し、量子コンピュータ110からの出力を受信すること、視認することなどを可能にするように構成される。計算エンティティ10は、1つ以上の有線若しくは無線ネットワーク20を介して、並びに/又は直接有線及び/若しくは無線通信を介して、量子コンピュータ110のコントローラ30と通信し得る。例示的な実施形態では、計算エンティティ10は、構成、フォーマットなどの情報/データ、量子計算アルゴリズムなどを、コントローラ30が理解及び/若しくは実装し得るコンピュータ言語、実行可能な命令、コマンドセットなどに変換することができる。
【0025】
様々な実施形態において、コントローラ30は、装置50及び/若しくは装置50内の原子オブジェクトの移送を制御する電気信号ソース並びに/又はドライバ、極低温及び/若しくは真空チャンバ40内の温度及び圧力を制御する極低温システム並びに/又は真空システム、操作ソース60、並びに/又は極低温及び/若しくは真空チャンバ40内の環境条件(例えば、温度、湿度、圧力など)を制御する他のシステムを制御するように構成され、かつ/又は装置50内の1つ以上の原子オブジェクトの量子状態の制御された発展を操作し、かつ/又は発展を引き起こすように構成されている。様々な実施形態において、装置50内にトラップされた原子オブジェクトは、量子コンピュータ110のキュービットとして使用される。
漏れ抑制/変換動作の概要
【0026】
様々な実施形態において、装置50内に収容された、トラップされた、及び/又は他の方法で存在する原子オブジェクトは、スピン1/2核を有する。例えば、原子オブジェクトは、111Cd+、133Ba+、171Yb+、199Hg+、及び/若しくは他の核スピン1/2原子オブジェクト、並びに/又はキュービット空間を定義するのに適切な状態を呈する他の原子オブジェクトであり得る。図2は、超微細構造を含む、例示的な核スピン1/2原子オブジェクトのS1/2及びP1/2マニフォールド210、230の概略ダイアグラムを提供する。キュービット空間215は、基底状態又はS1/2マニフォールド210のm=0状態を含み、これは、小さい磁場に対して1次の非感受性であり、当然のことながら、比較的長いコヒーレンス時間が状態にもたらされる。様々な実施形態において、単一及び/又は2キュービット動作は、2つのキュービット状態を1つ以上の中間状態230に結合して(例えば、場合によっては仮想状態220を介して)動作を実行する誘導ラマン遷移202を使用して実行され得る。例えば、単一及び/又は2キュービット動作は、P1/2及びP3/2状態を介して伝達される2光子遷移を介してキュービット空間215の2つの状態を結合する誘導ラマン遷移202を使用して実行され得る。これらの操作における1つのエラー源は、図2に示されるような自然放出イベント204につながり得る励起された状態の有限寿命に起因するものである。例えば、自然放出イベント204は、原子オブジェクトが、外部刺激信号(例えば、操作信号など)の印加なしで、励起された状態から励起解除するイベントである。これらの自然放出イベント204は、キュービット空間215の外側への量子情報の漏れをもたらし得る。例えば、図示された各自然放出イベント204は、等しい発生確率を有する。したがって、平均して、自然放出イベントの3回に1回は、原子オブジェクトがF=1,m=-1又は1,1/2状態のうちの1つになる。例えば、自然放出イベント204の3回に1回は、原子オブジェクトがキュービット空間215の外側に漏れることになる。
【0027】
様々な実施形態は、漏れエラーを抑制し、漏れた原子オブジェクトをキュービット空間215に戻すために、再ポンピングスキームを使用する漏れ抑制/変換動作を提供する。例えば、漏れ抑制/変換動作は、漏れエラーを、例えば、量子エラー訂正を介して対処され得る標準的な量子コンピューティングエラーに変換し得る。様々な実施形態において、再ポンピングスキームは、漏れた原子オブジェクトをキュービット空間215内に戻すために使用され得る。例えば、コントローラ30は、第1の操作ソース64Aに、装置50内の1つ以上の原子オブジェクトに入射し、かつ任意の漏れた原子オブジェクトに対処する、第1の操作ビーム、プラス(plus)、及び/又はパルスのセット(例えば、レーザビーム、パルス、及び/又はパルスのセット、本明細書では、第1の操作信号と称される)を提供させ得る。例示的な実施形態では、第1の操作ソース64Aはレーザである。第1の操作信号は、キュービット空間内の原子オブジェクト(例えば、F=0又は1,m=0,1/2状態にある原子オブジェクト)に対処しないが、漏れた原子オブジェクト(例えば、F=1,m=-1又は1,1/2状態の漏れた状態にある原子オブジェクト)に対処するように構成され得る。例えば、第1の操作信号は、漏れた状態から四重極遷移を励起するように構成され得る。例えば、第1の操作信号は、漏れた状態(例えば、F=1,m=-1又は1,1/2状態)から中間マニフォールド240への遷移と共鳴するように調整され得る。様々な実施形態において、第1の操作信号は、キュービット空間215内(例えば、F=0又は1,m=0,1/2状態)から始まる遷移に対してオフレゾナンスになるように調整され得る。例えば、漏れた原子オブジェクトは、第1の操作信号を介して(例えば、場合によっては四重極遷移を使用して)漏れた状態から中間マニフォールド240の状態に遷移されてよく、キュービット空間内の原子オブジェクトは、一般に、第1の操作信号による影響を受けなくてよい(及び/又は最小限に影響を受けてよい)。
【0028】
次いで、コントローラ30は、第2の操作ソース64Bに、装置50内の1つ以上の原子オブジェクトに入射し、中間状態にある原子オブジェクトに対処する、第2の操作ビーム、パルス、及び/又はパルスのセット(例えば、レーザビーム、パルス、及び/又はパルスのセット、本明細書では、第2の操作信号と称される)を提供させ得る。例示的な実施形態では、第2の操作ソース64Bはレーザである。様々な実施形態において、第2の操作信号は、中間マニフォールド240内の原子オブジェクトを、減衰マニフォールド230内の1つ以上の状態に遷移させ得る。様々な実施形態において、減衰マニフォールド230は、内部にある状態がS1/2マニフォールドに急速に減衰するマニフォールドであり、有意な割合の原子オブジェクトが、減衰マニフォールド230内の1つ以上の状態から基底及び/又はS1/2マニフォールド210に減衰し、キュービット空間215内へ減衰すると予測される。例えば、原子オブジェクトが減衰マニフォールド230からキュービット空間215内へと減衰する非ゼロの確率が存在する。様々な実施形態において、有意な割合は、少なくともおよそ15%、20%、25%、30%、33%、40%、50%、66%などの割合であり得る。様々な実施形態において、減衰マニフォールド230内の原子オブジェクトは、基底及び/又はS1/2マニフォールド210に自然に減衰することが可能であり得る。
【0029】
様々な実施形態において、第1の操作ビーム、1つのパルス、及び/又は複数のパルス(例えば、第1の操作信号)を印加して、漏れた原子オブジェクトを中間マニフォールド240に遷移させるプロセス、並びに第2の操作ビーム、1つのパルス及び/又は複数のパルス(例えば、第2の操作信号)を印加して、中間マニフォールド240内の原子オブジェクトを減衰マニフォールド230に遷移させることは、複数のサイクルにわたって繰り返され得る。例えば、プロセスは、Nサイクルにわたって繰り返され得る。例示的な実施形態では、サイクル数Nは、設定されたサイクル数である。例えば、サイクル数Nは、漏れ集団(例えば、漏れた原子オブジェクトの集団)を閾値係数、閾値割合などによって低減するように構成され得る。様々な実施形態において、漏れ集団は、漏れた原子オブジェクトをキュービット空間215に戻すことによって低減される。様々な実施形態において、閾値係数、閾値割合などは、時間制約、計算忠実度制約などに基づいて選択される。
【0030】
例示的な実施形態では、中間マニフォールド240は、D3/2マニフォールドである。例示的な実施形態では、第1の操作信号は、S1/2マニフォールドからD3/2マニフォールドへの四重極遷移を使用するように構成され得る。特に、パルスの第1の操作信号は、キュービット空間内の原子オブジェクト(例えば、F=0又は1,m=0,1/2状態にある原子オブジェクト)に対処しないが、漏れた原子オブジェクト(例えば、F=1,m=-1又は1,1/2状態にある原子オブジェクト)に対処するように構成され得る。例えば、第1の操作信号は、S1/2|F=1〉からD3/2|F=1〉への遷移と共鳴するように調整され得る。しかしながら、S1/2及びD3/2マニフォールドにおける超微細分裂は、他の遷移をファーオフレゾナンス(far off-resonance)にする。例えば、第1の操作信号は、S1/2|F=1,m=0〉又はS1/2|F=0,m=0〉からD3/2マニフォールドへの遷移を刺激しないが、S1/2|F=1,m=-1〉からD3/2|F=1,m=1〉へ及びS1/2|F=1,m=1〉からD3/2|F=1,m=-1〉への遷移を刺激するように調整され得る。様々な実施形態において、減衰マニフォールド230は、P1/2マニフォールド並びに/又は[3/2]1/2状態及び/若しくはマニフォールドである。
【0031】
様々な実施形態において、第1の操作信号は、|Δm|=2遷移を駆動し、かつ|Δm|=0又は1遷移を抑制するように構成されている。例えば、第1の操作信号の波数ベクトル(例えば、kベクトル又は伝搬方向)及び第1の操作信号の偏光(例えば、電気振動)は(例えば、第1の操作信号が原子オブジェクトと相互作用するとき)、第1の操作信号が原子オブジェクトと相互作用する位置において磁場に直交するように設定され得る。例えば、例示的な実施形態では、第1の操作信号の波数ベクトルは第1の方向であり、第1の操作信号の偏光は第2の方向であり、原子オブジェクトの位置における磁場は第3の方向である。第1の操作信号は、第1及び第2の方向の両方が第3の方向に垂直であるように構成され得る。したがって、第1の操作信号は、キュービット空間215内の原子オブジェクトをキュービット空間215から外にポンピングさせないが、漏れた原子オブジェクトを中間マニフォールド240にポンピングするために使用され得る。
【0032】
様々な実施形態において、漏れ抑制/変換サイクル(例えば、中間マニフォールド240にポンピングされ、次いで減衰マニフォールド230にポンピングされ、次いで基底マニフォールド210内に減衰する)によって対処された原子オブジェクトがキュービット空間215に戻る確率は、確率pである。様々な実施形態において、π光(例えば、第2の操作信号が磁場に平行に直線偏光されている)を使用して中間マニフォールド240(例えば、D3/2マニフォールド)から減衰マニフォールド230(例えば、P1/2マニフォールド)に再ポンピングすることは、p=2/3という結果になる。様々な実施形態において、σ光(例えば、第2の操作信号が磁場に直交して円偏光又は直線偏光されている)を使用して中間マニフォールド240(例えば、D3/2マニフォールド)から減衰マニフォールド230(例えば、P1/2マニフォールド)に再ポンピングすることは、p=1/3という結果になる。様々な実施形態において、第2の操作信号のためにパワーブロードニング及び等方性偏光を使用することは、p≒1/2という結果になる。
【0033】
第1及び第2の操作信号が単位忠実度で実行されると仮定すると、漏れ集団(例えば、漏れた原子オブジェクトの集団)は、(1-pによって抑制されることになり、式中、Nはサイクル数である。したがって、様々な実施形態において、サイクル数Nは、漏れ集団が係数ηによって抑制されるように、
【数1】
に設定される。例示的な実施形態では、ηは、漏れ抑制の目標を指定する閾値係数である。
【0034】
上記のように、第1の操作信号は、|Δm|=2遷移を駆動し、かつ|Δm|=0又は1遷移を抑制するように構成されている。この再ポンピングスキームにおける1つの可能なエラー源は、キュービット空間215内の原子オブジェクトをD3/2,F=2マニフォールドにオフ共鳴結合させることである。例えば、キュービット空間215内の原子オブジェクトは、第1の操作信号との相互作用を介してD3/2,F=2,m=±2状態に移され得、その後、減衰マニフォールド230に再ポンピングされ、いくらかの確率pで漏れエラーになる可能性がある。これが単一サイクルで生じる確率は、p(Ω(1,0),(2,2)/Δhfにほぼ等しくなり得、式中、Ω(1,0),(2,2)は、S1/2,F=1,m=0⇔D3/2,F=2,m=±2遷移の共鳴ラビ周波数であり、Δ-hfは、D3/2状態での超微細分裂に等しいであろう離調である。この漏れエラーは後続のサイクル中も抑制されるので、このプロセスからの漏れエラーの合計は、
【数2】
であり得、これは、目標漏れエラー
【数3】
より下に維持されるべき量である。四重極ラビ周波数Ωに基づいて、パルス時間τπの定義のためにΩτπ=πを使用すると、目標漏れエラーを
【数4】
より下に維持するための、第1のパルス時間に対する以下のおよその上限が得られる:
【数5】
式中、第1のパルス時間は、第1の操作信号のパルスの時間的長さである。
【0035】
別のエラー源は、磁場と第1の操作信号の偏光及び波数ベクトルとの間の不完全な位置合わせに起因する。これは、第1のパルス時間に別の制約、すなわち、
【数6】
を課し、式中、βは、磁場と第1の操作信号の偏光及び波数ベクトルとの間の不完全な位置合わせに起因してラビ周波数が抑制される抑制係数であり、Δは、対象のマニフォールドにおけるゼーマンエネルギー分裂である。小さい角度エラーでは、抑制係数は、
【数7】
であり、式中、γは磁場と偏光との間の角度である。この2つの制約を第1のパルス時間に一緒に課すことは、
【数8】
として記述することができる。
【0036】
これらの2つの制限を等しくすることにより、速度を犠牲にすることなく許容することができる角度エラーはどの程度小さいか、すなわち、
【数9】
が決定され得る。例えば、133Ba+及び171Yb+におけるD3/2超微細分裂は、それぞれ937MHz及び860MHzであり、5ガウスの公称磁場(例えば、B場)を仮定すると26mrad及び28mradの角度エラー耐性が得られる。
【0037】
【数10】
の漏れエラーで開始すると、Nサイクル後、最終漏れエラー
【数11】
は、抑制された初期漏れエラーとオフ共鳴結合によって誘発された漏れエラーとの和、又は
【数12】
は、漏れ抑制/変換動作を実行するために使用された総時間である(再ポンピング工程(例えば、第2の操作信号を提供すること、及び減衰マニフォールド230からS1/2又は基底状態マニフォールド210への原子オブジェクトの減衰を可能にすること)は、動作全体にわたって総時間に対する寄与が無視できるほど小さいと仮定されている)。
【0038】
図3Aは、漏れ抑制/変換動作を実行するために使用された総時間の関数としての最終漏れエラー
【数13】
のシミュレーション結果を示すプロットを提供し、図3Bは、サイクル数Nの関数としての最終漏れエラー
【数14】
のシミュレーション結果を示すプロットを提供する。シミュレーション中、
【数15】
である。図3A及び図3Bに示される結果は、およそ1μsの第1のパルス時間を使用すると、漏れエラーが、およそT=25μsで10-4~10-7に抑制され得ることを示す。様々な実施形態において、漏れ抑制/変換動作Tを実行するために使用される総時間は、およそ50μs未満である。様々な実施形態において、漏れ抑制/変換動作Tを実行する総時間は、およそ30μs未満である。様々な実施形態において、第1のパルス時間は、およそ0.5~3μsの範囲内である。
【0039】
ラビ周波数のための式を使用して、漏れ抑制/変換動作の例示的な実施形態のための必要なレーザ出力が推定される。例示的な実施形態では、15μmのビームウエストを有する場合、133Ba+原子オブジェクト(例えば、イオン)に対して、第1の操作信号は、1μsの第1のパルス時間を達成するために少なくとも100mWの出力を有し得る。例示的な実施形態では、15μmのビームウエストを有する場合、171Yb+原子オブジェクト(例えば、イオン)に対して、第1の操作信号は、1μsの第1のパルス時間を達成するために少なくとも7.4mWの出力を有し得る。
【0040】
上述したように、シミュレーション結果では、磁場は5ガウスであると見なされる。しかしながら、より大きな磁場を使用すると、標的遷移のスペクトル分離を増加させる更なるゼーマン分裂が引き起こされ、また選択則を介してΔm=±1及びΔm=0の遷移の抑制の必要性が軽減され、プロトコルがより高い核スピンの原子オブジェクトに拡張され得る。例示的な実施形態では、磁場はおよそ5ガウスである。しかしながら、様々な実施形態において、磁場は、用途に応じて5ガウス超又は未満であり得る。例えば、例示的な実施形態では、高磁場(例えば、様々な実施形態において、3ガウスを超える又は5ガウスを超える磁場)が、望ましくない遷移(例えば、原子オブジェクトをキュービット空間から外に励起する遷移)のための離調を増加させるために使用され得る。
【0041】
様々な実施形態において、1つ以上のパルス整形技術が、第1の操作信号のパルスを整形するために使用され得る。例示的な実施形態では、第1の操作信号は、例えば、およそ30μs~0.8μs-の範囲内の第1のパルス時間を有する双曲線正割形状のパルスになるように整形されている。様々な実施形態において、第1の操作信号は、第1の操作信号に応じて中間マニフォールド240への及び/又はキュービット空間215から外へのキュービット空間215内のキュービットの遷移を低減するように整形され得る。
【0042】
様々な実施形態において、第1及び/又は第2の操作ソースは、キュービット空間215内の原子オブジェクト及び/又はキュービット空間に戻された原子オブジェクトに、シュタルクシフトを経験させ得る。様々な実施形態において、コントローラ30及び/又は計算エンティティ10は、このシフトを補正するために、1回以上のZ回転をキュービットに(例えば、物理的に及び/又は量子コンピュータ110によって生成された結果の後処理中に)適用し得る。
漏れ抑制/変換動作の例示的な動作
【0043】
図4は、漏れエラーを抑制し、原子オブジェクトをキュービット空間215内に戻すために実行されるプロセス、手順、動作などを示すフローチャートを提供する。例えば、漏れエラーは、対処可能及び/又は訂正可能である標準的な量子コンピューティングエラーに変換され得る。例えば、標準的な量子コンピューティングエラーは、量子エラー訂正を介して対処可能及び/又は訂正可能であり得る。様々な実施形態において、量子コンピュータ110は、(例えば、装置50内にトラップされた)複数の原子オブジェクトを備え得る。原子オブジェクトの超微細準位は、キュービット空間215を定義するために使用され得る。例えば、原子オブジェクトは、核スピン1/2原子オブジェクトであり得、基底状態の超微細構造(例えば、1/2マニフォールド)は、キュービット空間215(例えば、F=0及び1,m=0,1/2状態を含む)を定義するために使用され得る。様々なシナリオでは、原子オブジェクトが、キュービット空間215から漏れ得る。例えば、原子オブジェクトは、自然放出イベント又は他の励起イベントを経験し、最終的に漏れた状態(例えば、F=1,m=-1又は1,1/2状態のうちの1つ)になり得る。原子オブジェクトを漏れた状態からキュービット空間215に戻すために、漏れ抑制/変換動作が使用され得る。
【0044】
工程/動作402において開始すると、漏れ抑制/変換動作トリガが識別される。様々な実施形態において、トリガは、コンピューティング動作の実行、特定のタイプのコンピューティング動作の実行、漏れ抑制/変換動作が最後に実行されてからの経過時間の設定量などである。例えば、コンピューティング動作のタイプとしては、ゲート動作、冷却動作、移送動作、キュービット相互作用動作、キュービット測定動作などが挙げられ得る。例えば、コントローラ30は、受信された量子アルゴリズム又は量子回路(例えば、計算エンティティ10によって提供される)に基づいて、1つ以上のコンピューティング動作をスケジュールし得る。トリガとして識別される動作のスケジューリングに基づいて、コントローラ30は、漏れ抑制/変換動作の実行をスケジュールし得る。例えば、量子コンピュータ110によって実行されている及び/又は実行される量子アルゴリズム及び/又は量子回路による、装置50の特定の領域におけるゲート動作のスケジューリング及び/又は実行は、トリガとして識別され得る。装置50の特定の領域におけるゲート動作のスケジューリング及び/又は実行を識別したことに応じて、コントローラ30は、装置50の特定の領域において実行される漏れ抑制/変換動作をスケジュール及び/又は実行し得る。例えば、漏れ抑制/変換動作のスケジューリング/実行をトリガした動作は、装置50の特定の領域内に位置する1つ以上の原子オブジェクトに対処し得、漏れ抑制/変換動作は、装置50の特定の領域内に位置する1つ以上の原子オブジェクトに対処するように構成され得る。
【0045】
例示的な実施形態では、計算エンティティ10は、量子アルゴリズム及び/又は量子回路を提供し得る。コントローラ30は、量子アルゴリズム及び/又は量子回路を受信し、1つ以上の動作(例えば、ゲート動作、冷却動作、移送動作、キュービット相互作用動作、キュービット測定動作などのコンピューティング動作、漏れ抑制/変換動作など)をスケジュール及び/又は実行し得る。例示的な実施形態では、量子アルゴリズム及び/又は量子回路は、漏れ抑制/変換動作が実行されるときを示し得る。例示的な実施形態では、コントローラ30は、量子アルゴリズム及び/又は量子回路のコンピューティング動作に基づいて、漏れ抑制/変換動作を実行するときを判定し得る。
【0046】
工程/動作404において、漏れ抑制/変換動作が開始され得る。例えば、コントローラ30が、漏れ抑制/変換動作を開始し得る。例えば、トリガを識別したことに応じて、コントローラ30は、漏れ抑制/変換動作の実行をスケジュールし得、及び/又は漏れ抑制/変換動作を(例えば、特定の時間において及び/又は量子コンピュータ110によって実行される一連の動作の特定の位置で)実行させ得る。コントローラ30がコマンドを実行して漏れ抑制/変換動作の実行を(例えば、スケジュールされた時間に)引き起こすとき、コントローラは、サイクル数nをゼロに設定させること(例えば、n=0を設定する)、第1及び/又は第2の操作ソース64A、64Bをオンに又はウォームアップさせること、漏れ抑制/変換動作に対応する1つ以上のパラメータ(例えば、第1のパルス時間、第2のパルス時間、第1の操作信号出力、第2の操作信号出力、サイクル数N、漏れ抑制/変換動作の総時間T、減衰時間、及び/又は他のパラメータ)にメモリ(例えば、メモリ610)からアクセスすることなどを行い得る。
【0047】
工程/動作406において、コントローラ30は、第1の操作ソース64Aに、第1の操作信号を装置50の特定の領域に提供させる。例えば、コントローラ30は、第1の操作ソース64Aに、装置50の特定の領域内の1つ以上の原子オブジェクトに入射し、かつ装置50の特定の領域内の任意の漏れた原子オブジェクトに対処する第1の操作信号を提供させ得る。例示的な実施形態では、第1の操作ソース64Aはレーザである。第1の操作信号は、キュービット空間内の原子オブジェクト(例えば、F=0又は1,m=0,1/2状態にある原子オブジェクト)に対処しないが、漏れた原子オブジェクト(例えば、F=1,m=-1又は1,1/2状態の漏れた状態にある原子オブジェクト)に対処するように構成され得る。例えば、第1の操作信号は、漏れた状態から四重極遷移を励起するように構成され得る。例えば、第1の操作信号は、漏れた状態(例えば、F=1,m=-1又は1,1/2状態)から中間マニフォールド240への遷移と共鳴するように調整され得る。様々な実施形態において、中間マニフォールド240は、D3/2マニフォールドである。様々な実施形態において、第1の操作信号は、キュービット空間215内(例えば、F=0又は1,m=0,1/2状態)から始まる遷移に対してオフレゾナンスになるように調整され得る。例えば、漏れた原子オブジェクトは、第1の操作信号を介して(例えば、場合によっては四重極遷移を使用して)漏れた状態から中間マニフォールド240の状態に遷移されてよく、キュービット空間215内の原子オブジェクトは、一般に、第1の操作信号による影響を受けなくてよい(及び/又は最小限に影響を受けてよい)。例えば、第1の操作信号は、S1/2|F=1,m=0〉又はS1/2|F=0,m=0〉状態からD3/2マニフォールドへの遷移を刺激しないが、S1/2|F=1,m=-1〉からD3/2|F=1,m=1〉へ及びS1/2|F=1,m=1〉からD3/2|F=1,m=-1〉への遷移を刺激するように調整され得る。
【0048】
様々な実施形態において、第1の操作信号の波数ベクトルは第1の方向であり、第1の操作信号の偏光は第2の方向であり、装置50の特定の領域内の磁場は第3の方向である。様々な実施形態において、第1の方向及び第2の方向は、第3の方向とほぼ直交している。例えば、第1の操作信号の波数ベクトル及び偏光は、望ましい遷移を励起し、望ましくない遷移を抑制するように調整され得る。様々な実施形態において、第1の操作信号は、キュービット空間215から外への遷移を抑制する形状を有するように、(例えば、第1の操作ソース64Aと装置50の特定の領域との間の光路内にあるパルス整形器によって)整形される。例えば、第1の操作信号は、双曲線正割形状を有するように整形され得る。
【0049】
様々な実施形態において、第1のパルス時間(例えば、第1の操作信号の時間的長さ)は、およそ30μs~0.8μsの範囲内である。例えば、様々な実施形態において、第1のパルス時間はおよそ1μsであり得る。様々な実施形態において、第1の操作信号は、およそ0.1~500mWの範囲内であり得る。例えば、例示的な実施形態では、第1の操作信号は、15μmのビームウエスト及びおよそ5~200mWの範囲内の出力を有する。図5Aは、装置50の特定の領域内の原子オブジェクトに第1の操作信号を印加する概略図を提供する。例えば、図5Aに示されるように、漏れた状態にある原子オブジェクト(例えば、F=1,m=-1又は1,1/2)は、中間マニフォールド240(例えば、F=1,m=1又は-1,3/2)の状態になる。
【0050】
引き続き図4で、工程/動作408を参照すると、コントローラ30は、第2の操作ソース64Bに、漏れた原子オブジェクトを中間マニフォールド240から減衰マニフォールド230に再ポンピングするための第2の操作信号を提供させる。例えば、コントローラ30は、第2の操作ソース64Bに、第2の操作信号を装置50の特定の領域に提供させ得る。第2の操作信号は、中間マニフォールド240から減衰マニフォールド230への遷移を励起するように調整され得る。様々な実施形態において、第2の操作信号は、キュービット空間215から外への遷移からファーオフレゾナンスである。様々な実施形態において、減衰マニフォールド230は、P1/2マニフォールド並びに/又は[3/2]1/2状態及び/若しくはマニフォールドである。様々な実施形態において、第2のパルス時間(例えば、第2の操作信号の時間的長さ)は、およそ30μs~0.8μsの範囲内である。例えば、様々な実施形態において、第2のパルス時間はおよそ1μsであり得る。
【0051】
図5Bは、装置50の特定の領域内の原子オブジェクトに第2の操作信号を印加する概略図を提供する。例えば、図5Bに示されるように、中間マニフォールド240の状態にある原子オブジェクトは、減衰マニフォールド230の状態に励起され得、及び/又はこれに遷移し得、減衰マニフォールド230は、1/2マニフォールドである。図5Dは、第2の操作信号が原子オブジェクトを中間マニフォールド240の状態から減衰マニフォールド230の状態のうちの1つに励起及び/又は遷移させる概略図を提供し、減衰マニフォールドは、[3/2]1/2マニフォールドである。
【0052】
引き続き図4を参照すると、工程/動作410において、減衰マニフォールド230内の原子オブジェクトは、基底マニフォールド210内に減衰することが可能である。例えば、コントローラ30は、減衰マニフォールド230内の原子オブジェクトが基底マニフォールド210内に減衰することを可能にするために、減衰時間待機する。様々な実施形態において、減衰時間は、減衰マニフォールド230の励起された状態の有限寿命に基づいて予め決定されている。図5Cは、原子オブジェクトが減衰マニフォールド230の状態のうちの1つから基底マニフォールド210内に減衰する概略図を提供する。図5Cに見られるように、原子オブジェクトが減衰マニフォールド230から基底状態マニフォールド210内に減衰するとき、原子オブジェクトは、特定の尤度(例えば、p)でキュービット空間215内に減衰し、相補的な尤度(例えば、1-p)で漏れた状態に減衰する。図5Dは、原子オブジェクトが減衰マニフォールド230の状態のうちの1つから基底マニフォールド内に減衰する概略図を提供し、減衰マニフォールドは、[3/2]1/2マニフォールドである。
【0053】
様々な実施形態において、コントローラ30は、複数のポンピングサイクルを実行させ得る。様々な実施形態において、サイクルは、第1の操作信号を装置50の特定の領域に印加することと、第2の操作信号を装置50の特定の領域に印加することと、減衰マニフォールド230内の原子オブジェクトが基底状態マニフォールド210に逆に減衰することを可能にするために減衰時間待機することと、を含み得る。様々な実施形態において、減衰マニフォールド230から減衰する原子オブジェクトは、各サイクル中に、基底状態マニフォールド210内に定義されたキュービット空間215内へと減衰する機会がある。次のサイクルでは、任意の原子オブジェクトが、第1の操作信号によって励起されるべき漏れた状態にある確率はより小さくなる。このようにして、各サイクルで、原子オブジェクトの漏れ集団は低減される。サイクル数Nの実行後、閾値係数、閾値割合などの漏れた原子オブジェクトが、キュービット空間215に戻される。様々な実施形態において、サイクル時間t(例えば、漏れ抑制/変換動作のサイクルを実行するために必要とされる時間量)は、第1のパルス時間、第2のパルス時間、及び減衰時間の和である。例えば、例示的な実施形態では、漏れ抑制/変換動作を実行するために使用される総時間Tは、サイクル数Nとサイクル時間t(例えば、第1のパルス時間、第2のパルス時間、及び減衰時間の和にほぼ等しい)との積である。
【0054】
図4に戻ると、工程/動作412において、コントローラ30は、サイクル数nを反復する。例えば、コントローラ30は、n->n+1となるように、サイクル数nを反復し得る。例えば、コントローラ30は、実行されたサイクルの数を追跡するためにサイクル数nを使用し得、コントローラ30は、サイクルの実行後にサイクル数nを反復し得る。
【0055】
工程/動作414において、コントローラ30は、サイクル数nがサイクル数Nに等しいか否かを判定する。例えば、コントローラ30は、サイクル数Nの漏れ動作(例えば、第1の操作信号の印加、第2の操作信号の印加、減衰時間待機すること)を実行するように構成及び/又はプログラムされ得る。コントローラ30は、サイクル数Nが実行されたかどうかを判定するために、サイクル数nを使用し得る。例示的な実施形態では、サイクル数nの反復及びサイクル数nがサイクル数Nに等しいかどうかの判定は、コントローラ30が減衰時間待機している間に実行され得る。
【0056】
工程/動作414において、サイクル数nがサイクル数Nに等しくない(例えば、n<N)とコントローラ30が判定すると、プロセスは工程/動作406に戻り、別のサイクルが実行され得る。工程/動作414において、サイクル数nがサイクル数Nに等しい(例えば、n=N)とコントローラ30が判定すると、プロセスは工程/動作416に進む。工程/動作416において、コントローラ30は、漏れ抑制動作/変換が完了したことを判定する。例えば、コントローラ30は、漏れ抑制/変換動作が完了したことを示すために(例えば、メモリ610に記憶されている)ログを更新すること、次の動作を実行させるために次のコマンドを実行することなどを行い得る。
技術的利点
【0057】
様々な実施形態において、2状態のキュービット空間215が定義される。様々な実施形態において、キュービットは、量子コンピュータ110の装置50内に収容された、トラップされた、及び/又は他の方法で存在する原子オブジェクトである。装置50内に収容された、トラップされた、及び/又は他の方法で存在する原子オブジェクトは、キュービット空間215の状態よりも多くの状態へのアクセスを有し得る。例えば、図5A図5Dの例示された実施形態では、原子オブジェクトが核スピン1/2原子オブジェクトであるとき、原子オブジェクトの基底状態マニフォールド210は、4つの状態(例えば、キュービット空間215内の2つの状態、及び2つの漏れた状態)を含み得る。したがって、量子コンピュータ110が様々な動作を実行すると、装置50内にトラップされた1つ以上の原子オブジェクトが、漏れた状態に漏れ得る。原子オブジェクトが漏れた状態に漏れることは、量子コンピュータ110によって実行される計算にエラーをもたらす。漏れ抑制/変換動作を実行することにより、様々な実施形態によれば、最終漏れエラーは(例えば、漏れ抑制/変換動作を実行しないことに対して)数桁低減され得る。例えば、図3A図3Cは、漏れ抑制/変換動作を実行するために使用された総時間Tが20~25μsのとき、又はサイクル数N≧10のときに、最終漏れエラーが10-7程度に低減され得ることを示す。したがって、例示的な実施形態による漏れ抑制/変換動作は、量子コンピュータ110によって実行された計算の忠実度を改善する量子エラー訂正のための手段を提供する。例えば、漏れた原子オブジェクトをキュービット空間215に戻すことにより、様々な実施形態は、量子エラー訂正手順が、量子コンピュータ110によって実行された計算の忠実度の改善においてより有効になることを可能にする。したがって、様々な実施形態は、原子オブジェクトトラップ型量子コンピュータ110の機能を改善することによって、量子コンピューティングの分野に改善をもたらす。
例示的なコントローラ
【0058】
様々な実施形態において、量子コンピュータ110は、量子コンピュータ110の様々な要素を制御するように構成されたコントローラ30を更に備える。様々な実施形態において、コントローラ30は、量子コンピュータ110に、様々な動作(例えば、ゲート動作、冷却動作、移送動作、キュービット相互作用動作、キュービット測定動作などのコンピューティング動作、漏れ抑制/変換動作など)を実行させるように構成され得る。例えば、コントローラ30は、トリガを識別すること、漏れ抑制/変換動作をスケジュールする及び/又は漏れ抑制/変換動作を実行させること、第1及び/又は第2の操作信号を提供するように第1及び/又は第2の操作ソースを制御することなどを行うように構成され得る。例えば、コントローラ30は、極低温及び/若しくは真空チャンバ40内の温度及び圧力を制御する極低温システム及び/若しくは真空システム、操作ソース64、並びに/又は極低温及び/若しくは真空チャンバ40内の環境条件(例えば、温度、湿度、圧力など)を制御する他のシステムを制御するように構成され、かつ/又は装置50内の1つ以上の原子オブジェクトの量子状態の制御された発展を操作及び/若しくは引き起こすように構成され得る。
【0059】
図6に示されるように、様々な実施形態において、コントローラ30は、処理要素605、メモリ610、ドライバコントローラ要素615、通信インターフェース620、アナログ-デジタル変換機要素625などを含む様々なコントローラ要素を備え得る。例えば、処理要素605は、プログラマブル論理デバイス(programmable logic device、CPLD)、マイクロプロセッサ、共処理エンティティ、特定用途向けプロセッサのための命令セット(application-specific instruction-set processor、ASIP)、集積回路、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)、プログラマブル論理アレイ(programmable logic array、PLA)、ハードウェアアクセラレータ、他の処理デバイス及び/若しくは回路機構など、並びに/又はコントローラを含み得る。回路機構という用語は、ハードウェア全体の実施形態、又はハードウェア及びコンピュータプログラム製品の組み合わせを指し得る。例示的な実施形態では、コントローラ30の処理要素605は、クロックを含み、かつ/又はクロックと通信する。
【0060】
例えば、メモリ610は、ハードディスク、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、MMC、SDメモリカード、メモリスティック、CBRAM、PRAM、FeRAM、RRAM、SONOS、レーストラックメモリ、RAM、DRAM、SRAM、FPM DRAM、EDO DRAM、SDRAM、DDR SDRAM、DDR2 SDRAM、DDR3 SDRAM、RDRAM、RIMM、DIMM、SIMM、VRAM、キャッシュメモリ、レジスタメモリなどのうちの1つ以上のような、揮発性及び/又は不揮発性記憶域などの非一時的なメモリを含み得る。様々な実施形態において、メモリ610は、(例えば、キュービット記録データ記憶、キュービット記録データベース、キュービット記録テーブルなどの)量子コンピュータのキュービットに対応するキュービット記憶、較正テーブル、実行可能な待ち行列、(例えば、1つ以上のコンピュータ言語、専門コントローラ言語(複数可)などの)コンピュータプログラムコードなどを記憶し得る。例示的な実施形態では、メモリ610に記憶されたコンピュータプログラムコードの少なくとも一部分を(例えば、処理要素605によって)実行することにより、コントローラ30は、本明細書に記載される1つ以上の工程、動作、プロセス、手順などを実行する。
【0061】
様々な実施形態において、ドライバコントローラ要素615は、1つ以上のドライバ及び/又は各々が1つ以上のドライバを制御するように構成されたコントローラ要素を含み得る。様々な実施形態において、ドライバコントローラ要素615は、ドライバ及び/又はドライバコントローラを備え得る。例えば、ドライバコントローラは、コントローラ30によって(例えば、処理要素605によって)スケジュール及び実行される、実行可能な命令、コマンドなどに従って、1つ以上の対応するドライバを動作させるように構成され得る。様々な実施形態において、ドライバコントローラ要素615は、コントローラ30が操作ソース64を動作させ、真空及び/又は極低温システムなどを動作させることを可能にし得る。様々な実施形態において、ドライバは、レーザドライバ、真空構成要素ドライバ、極低温及び/又は真空システム構成要素ドライバなどであり得る。様々な実施形態において、コントローラ30は、カメラ、MEMカメラ、CCDカメラ、フォトダイオード、光電子増倍管などのような1つ以上の光学受信機構成要素から信号を通信及び/又は受信するための手段を備える。例えば、コントローラ30は、1つ以上の光受信機構成要素、較正センサなどから信号を受信するように構成された1つ以上のアナログ-デジタル変換機要素625を備え得る。
【0062】
様々な実施形態において、コントローラ30は、計算エンティティ10とインターフェース接続及び/又は通信するための通信インターフェース620を備え得る。例えば、コントローラ30は、実行可能な命令、コマンドセットなどを計算エンティティ10から受信し、量子コンピュータ110から(例えば、光学収集システムから)受信した出力及び/又はこの出力を処理した結果を計算エンティティ10に提供するための通信インターフェース620を備え得る。様々な実施形態において、計算エンティティ10及びコントローラ30は、直接有線及び/若しくは無線接続、並びに/又は1つ以上の有線及び/若しくは無線ネットワーク20を介して通信し得る。
例示的な計算エンティティ
【0063】
図7は、本発明の実施形態と共に使用することができる例示的な計算エンティティ10の例示的な概略図を提供する。様々な実施形態において、計算エンティティ10は、ユーザが、入力を(例えば、計算エンティティ10のユーザインターフェースを介して)量子コンピュータ110に提供し、量子コンピュータ110からの出力を受信すること、表示すること、分析することなどを可能にするように構成される。例えば、ユーザは、計算エンティティ10を動作させて、量子アルゴリズム及び/又は量子回路を発生させ、かつ/又はプログラムすることができ、量子アルゴリズム及び/又は量子回路は、コントローラ30が量子アルゴリズム及び/又は量子回路を受信し、量子コンピュータ110に量子アルゴリズム及び/又は量子回路を実行させることができるように提供され得る。
【0064】
図7に示されるように、計算エンティティ10は、アンテナ712、伝送機714(例えば、無線機)、受信機706(例えば、無線機)、並びに伝送機714及び受信機706のそれぞれに信号を提供し、それぞれから信号を受信する処理要素708を含み得る。伝送機714及び受信機706のそれぞれに提供され、それぞれから受信される信号は、コントローラ30、他の計算エンティティ10などのような様々なエンティティと通信するための、適用可能な無線システムのエアインターフェース標準に従って、信号情報/データを含み得る。この点に関して、計算エンティティ10は、1つ以上のエアインターフェース標準、通信プロトコル、変調タイプ、及びアクセスタイプで動作することができる場合がある。例えば、計算エンティティ10は、ファイバ分散データインターフェース(fiber distributed data interface、FDDI)、デジタル加入者線(digital subscriber line、DSL)、Ethernet、非同期転送モード(asynchronous transfer mode、ATM)、フレームリレー、ケーブルによるデータサービスインターフェース仕様(data over cable service interface specification、DOCSIS)、又は任意の他の有線伝送プロトコルなどの有線データ伝送プロトコルを使用して通信を受信及び/又は提供するように構成さ得る。同様に、計算エンティティ10は、汎用パケット無線サービス(general packet radio service、GPRS)、ユニバーサル移動体通信システム(Universal Mobile Telecommunications System、UMTS)、符号分割多元接続2000(Code Division Multiple Access 2000、CDMA2000)、CDMA2000 1X(1xRTT)、広帯域符号分割多元接続(Wideband Code Division Multiple Access、WCDMA)、世界移動体通信システム(Global System for Mobile Communication、GSM)、GSM革新のための強化データレート(Enhanced Data rates for GSM Evolution、EDGE)、時分割-同期符号分割多元接続(Time Division-Synchronous Code Division Multiple Access、TD-SCDMA)、ロングタームエボリューション(Long Term Evolution、LTE)、進化型ユニバーサル地上無線アクセスネットワーク(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network、E-UTRAN)、エボリューションデータオプティマイズド(Evolution-Data Optimized、EVDO)、高速パケットアクセス(High Speed Packet Access、HSPA)、高速ダウンリンクパケットアクセス(High-Speed Downlink Packet Access、HSDPA)、IEEE802.11(Wi-Fi)、Wi-Fi Direct、802.16(WiMAX)、超広帯域(ultra wideband、UWB)、赤外線(infrared、IR)プロトコル、近距離通信(near field communication、NFC)プロトコル、Wibree、Bluetoothプロトコル、無線ユニバーサルシリアルバス(wireless universal serial bus、USB)プロトコル、及び/又は任意の他の無線プロトコルなどの様々なプロトコルのいずれかを使用して、無線外部通信ネットワークを介して通信するように構成され得る。計算エンティティ10は、かかるプロトコル及び標準を、ボーダゲートウェイプロトコル(Border Gateway Protocol、BGP)、動的ホスト構成プロトコル(Dynamic Host Configuration Protocol、DHCP)、ドメイン名システム(Domain Name System、DNS)、ファイル転送プロトコル(File Transfer Protocol、FTP)、ハイパーテキスト転送プロトコル(Hypertext Transfer Protocol、HTTP)、HTTPオーバーTLS/SSL/Secure、インターネットメッセージアクセスプロトコル(Internet Message Access Protocol、IMAP)、ネットワークタイムプロトコル(Network Time Protocol、NTP)、シンプルメール転送プロトコル(Simple Mail Transfer Protocol、SMTP)、Telnet、トランスポートレイヤーセキュリティ(Transport Layer Security、TLS)、セキュアソケットレイヤー(Secure Sockets Layer、SSL)、インターネットプロトコル(Internet Protocol、IP)、伝送制御プロトコル(Transmission Control Protocol、TCP)、ユーザデータグラムプロトコル(User Datagram Protocol、UDP)、データグラムコンジェスチョンコントロールプロトコル(Datagram Congestion Control Protocol、DCCP)、ストリーム制御伝送プロトコル(Stream Control Transmission Protocol、SCTP)、ハイパーテキストマークアップ言語(HyperText Markup Language、HTML)などを使用した通信のために使用することができる。
【0065】
これらの通信標準及びプロトコルを介して、計算エンティティ10は、非構造付加サービス情報/データ(Unstructured Supplementary Service information/data、USSD)、ショートメッセージサービス(Short Message Service、SMS)、マルチメディアメッセージサービス(Multimedia Messaging Service、MMS)、デュアルトーンマルチ周波数信号(Dual-Tone Multi-Frequency Signaling、DTMF)、及び/又は加入者識別モジュールダイヤラ(Subscriber Identity Module Dialer、SIMダイヤラ)などの概念を使用して、様々な他のエンティティと通信することができる。計算エンティティ10はまた、例えば、そのファームウェア、ソフトウェア(例えば、実行可能な命令、アプリケーション、プログラムモジュールを含む)、及びオペレーティングシステムに、変更、アドオン、及び更新をダウンロードすることができる。
【0066】
計算エンティティ10はまた、1つ以上のユーザ入力/出力インターフェース(例えば、処理要素708に連結されたディスプレイ716及び/又はスピーカ/スピーカドライバ、並びに処理要素708に連結されたタッチスクリーン、キーボード、マウス、及び/又はマイクロフォン)を備えるユーザインターフェースデバイスも含み得る。例えば、ユーザ出力インターフェースは、アプリケーション、ブラウザ、ユーザインターフェース、インターフェース、ダッシュボード、スクリーン、ウェブページ、ページ、及び/又は本明細書で互換可能に使用される類似の単語を提供するように構成され、情報/データを表示又は可聴提示させるため、及び1つ以上のユーザ入力インターフェースを介して情報/データと相互作用させるように、計算エンティティ10上で実行され、かつ/又は計算エンティティ10を介してアクセス可能であってもよい。ユーザ入力インターフェースは、キーパッド718(ハード又はソフト)、タッチディスプレイ、音声/発話若しくは運動インターフェース、スキャナ、リーダ、又は他の入力デバイスなど、計算エンティティ10がデータを受信することを可能にする複数のデバイスのうちのいずれかを含み得る。キーパッド718を含む実施形態では、キーパッド718は、従来の数字キー(0~9)及び関連するキー(#、)、並びに計算エンティティ10を動作させるために使用される他のキーを含む(又はそれらを表示させる)ことができ、英字キーの完全なセット、又は英数字キーの完全なセットを提供するように起動され得るキーのセットを含み得る。入力を提供することに加えて、例えば、ユーザ入力インターフェースを使用して、スクリーンセーバ及び/若しくはスリープモードなどのある特定の機能を起動又は起動解除することができる。かかる入力により、計算エンティティ10は、情報/データ、ユーザ対話/入力などを収集することができる。
【0067】
計算エンティティ10はまた、揮発性記憶域若しくはメモリ722、及び/又は不揮発性記憶域若しくはメモリ724を含むこともでき、これらは、組み込むことができ、及び/又は取り外し可能であり得る。例えば、不揮発性メモリは、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、MMC、SDメモリカード、メモリスティック、CBRAM、PRAM、FeRAM、RRAM、SONOS、レーストラックメモリなどであってもよい。揮発性メモリは、RAM、DRAM、SRAM、FPM DRAM、EDO DRAM、SDRAM、DDR SDRAM、DDR2 SDRAM、DDR3 SDRAM、RDRAM、RIMM、DIMM、SIMM、VRAM、キャッシュメモリ、レジスタメモリなどであってもよい。揮発性及び不揮発性記憶域又はメモリは、データベース、データベースインスタンス、データベース管理システムエンティティ、データ、アプリケーション、プログラム、プログラムモジュール、スクリプト、ソースコード、オブジェクトコード、バイトコード、コンパイルされたコード、解釈されたコード、マシンコード、実行可能な命令などを記憶して、計算エンティティ10の機能を実装することができる。
結論
【0068】
本明細書に記載される本発明の多くの修正例及び他の実施形態は、前述の説明及び関連付けられた図面に提示される教示の利益を有する、本発明に関係がある当業者に着想されるであろう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるものではないこと、並びに修正例及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。特定の用語が本明細書で用いられているが、これらは一般的かつ記述的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7