(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】非接着細胞内に生物学的に重要なカーゴを送達する為のナノストローを用いる器具及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/87 20060101AFI20220712BHJP
C12N 5/00 20060101ALI20220712BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220712BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20220712BHJP
【FI】
C12N15/87 Z
C12N5/00
C12M1/00 A
C12N5/078
(21)【出願番号】P 2020502603
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 US2018042516
(87)【国際公開番号】W WO2019018415
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-21
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ヒヨルト,カール マーティン
(72)【発明者】
【氏名】レアル-オルティス,セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】カオ,ユフォン
(72)【発明者】
【氏名】レーゼ,クリス
(72)【発明者】
【氏名】テイ,アンディ,カー ピン
(72)【発明者】
【氏名】メロッシュ,ニコラス,エー.
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0201030(US,A1)
【文献】国際公開第2014/031171(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/036306(WO,A1)
【文献】small, 2015年,Vol.11, No.42,p.5600-5610,DOI: 10.1002/smll.201501236
【文献】Nano Lett., 2012年,Vol.12,p.3881-3886,dx.doi.org/10.1021/nl204051v
【文献】NATURE COMMUNICATIONS,2014年,Vol.5:3613,p.1-8,DOI: 10.1038/ncomms4613
【文献】PNAS, 2020年,Vol.117, No.35,p.21267-21273,www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.2001367117
【文献】Nature, 2013年,Vol.496,p.461-468,doi:10.1038/nature11981
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/87
C12N 5/00
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法が:
力を適用して、複数のナノストローとの接触をする様に細胞の懸濁液を駆動する事と(此処で、複数のナノストローは、基板を通って、基板を越えて、2nm及び50μmの間である距離を延在し、更に、此処で、複数のナノストローは中空であり且つ5nm~1500nmの間の内側直径を有する);
細胞の少なくとも20%が生物学的に重要なカーゴを取り込む様に、ナノストローから細胞の細胞内容積内へとカーゴを駆動する事と、
を含む、
生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する方法。
【請求項2】
力を適用する事が、細胞と接触する様にナノストローを動かす事を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
力を適用する事が、複数のナノストローとの接触をする様に細胞を駆動する為に細胞の懸濁液を遠心する事を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
更に、磁性粒子を細胞上又は細胞内に組み込む事を含み、且つ、此処で、力を適用する事は、複数のナノストローとの接触をする様に細胞の懸濁液を駆動する為に磁場を適用する事を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
カーゴを駆動する事がパルス電場を適用する事を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
カーゴが核酸又は蛋白質の1つ又はより多くを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
更に、ナノストローから細胞を分離する事を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ナノストローから細胞を分離する事が、溶液を細胞上に流す事を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ナノストローから細胞を分離する事が、ナノストローとの接触をする様に細胞の懸濁液を駆動する為に適用される力を逆転させる事を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ナノストローが、生物学的に重要なカーゴのリザーバに接続された流体通路と流体連通している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
細胞の懸濁液が植物細胞の懸濁液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
基板が多孔構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
方法が:
力を適用して、複数のナノストローとの接触をする様に細胞の懸濁液を駆動する事と(此処で、複数のナノストローは、多孔構造を通って、多孔構造を越えて、2nm及び50μmの間である距離を延在し、更に、此処で、複数のナノストローは中空であり且つ5nm~1500nmの間の内側直径を有する);
細胞の少なくとも25%が生物学的に重要なカーゴを取り込む様に、カーゴをナノストローから細胞の細胞内容積内へと駆動する為にパルス電場を適用する事と;
ナノストローから細胞を分離する事と、
を含む、
生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する方法。
【請求項14】
器具が:
第1の流路(此処で、第1の流路は、細胞の懸濁液を受け取る様に構成される);
第1の流路の側面に沿った可撓性の基板;
可撓性の基板を通って第1の流路内へと延在する複数のナノストロー(此処で、複数のナノストローはフレキシブルな基板から延在し、更に、此処で、複数のナノストローは中空であり且つ5nm~1500nmの間の内側直径を有する);
複数のナノストローの内部と流体連通するリザーバ(リザーバは、生物学的に重要なカーゴを保持する様に構成される);
を含み、
此処で、可撓性の基板は第1の位置及び第2の位置の間に於いて撓む様に構成され、更に、此処で、複数のナノストローは第1の位置よりも第2の位置に於いて第1の流路内へと更に延在して、第1の流路を少なくとも部分的に塞ぎ、其の結果、流路内の非接着細胞が複数のナノストローの1つ又はより多くと連通する、
生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する為の器具。
【請求項15】
更に、リザーバ及び第1の流路の間に電場を適用する様に構成された、第1の流路の両側の一対の電極を含む、請求項14に記載の器具。
【請求項16】
更に、可撓性の基板が第2の位置である時にリザーバ及び第1の流路の間に電場を適用する様に構成された、第1の流路の両側の一対の電極を含む、請求項14に記載の器具。
【請求項17】
リザーバが、生物学的に重要なカーゴが流れる第2の流体チャネルとして構成される、請求項14に記載の器具。
【請求項18】
第1の流路が第1の端部の入口及び第2の端部の出口を含む、請求項14に記載の器具。
【請求項19】
可撓性の基板が多孔構造を含む、請求項14に記載の器具。
【請求項20】
複数のナノストローが基板から2nm及び50μmの間を延在する、請求項14に記載の器具。
【請求項21】
可撓性の基板が、リザーバ内の圧力に基づいて第1の位置から第2の位置へと遷移する様に構成される、請求項14に記載の器具。
【請求項22】
カートリッジとして構成される、請求項14に記載の器具。
【請求項23】
器具が:
入口ポート及び出口ポートを有する第1の流路と(此処で、第1の流路は、細胞の懸濁液を受け取る様に構成される);
第1の流路の側面に沿った可撓性の基板と;
可撓性の基板を通って第1の流路内へと延在する複数のナノストローと(此処で、複数のナノストローは基板から2nm及び50μmの間を延在し、更に、此処で、複数のナノストローは中空であり且つ5nm~1500nmの間の内側直径を有する);
複数のナノストローの内部と流体連通するリザーバと(リザーバは、生物学的に重要なカーゴを保持する様に構成される);
(此処で、可撓性の基板は、第1の位置及び第2の位置の間に於いて撓む様に構成され、更に、此処で、複数のナノストローは第1の位置よりも第2の位置に於いて第1の流路内へと更に延在して、第1の流路を少なくとも部分的に塞ぎ、其の結果、流路内の非接着細胞が複数のナノストローの1つ又はより多くと連通する);
リザーバ及び第1の流路の間に電場を適用する様に構成された第1の流路の両側の一対の電極と、
を含む、
生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する為の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2017年7月19日出願の、其の全体が参照に依って本願に組み込まれる米国仮特許出願第62/534,511号の優先権を主張する。
【0002】
参照に依る組み込み
本明細書に於いて言及される全ての公開物及び特許出願は、各個々の公開物又は特許出願が参照に依って組み込まれる事を具体的且つ個々に指示されている場合と同じ程度に、其れ等の全体が参照に依って本願に組み込まれる。
【0003】
連邦助成研究についての陳述
此の研究はNIST生物計量学合同研究所(JIMB)シード助成金NSF-STTR1549696の下で政府の支援に依って成された。政府は本発明に特定の権利を有する。
【0004】
本発明は、非接着細胞内に生物学的に重要なカーゴを送達する為のナノストローを用いる器具及び方法に関する。
【背景技術】
【0005】
細胞内へのバイオ分子の送達は、取り分け、細胞機能、増殖、分化、及びアポトーシスをコントロールする為の決定的な出発点である。多くのバイオ分子は細胞膜を自発的には透過せず、むしろ、其れ等が特定のタスクを実施し得る細胞内空間に其れ等を輸送する外的な送達方法を必要とするであろう。
【0006】
非接着細胞は、血液細胞、免疫細胞、浮遊ステージの接着細胞、胚、植物細胞、真菌、酵母、及び細菌を包含するが、此れ等に限定されない。非接着細胞については、細胞膜を通してカーゴを輸送する為の一般的方法を見出す事は特に難しい。何故なら、此れ等の細胞は様々なサイズで、且つ大変に異なる細胞膜特性を有して現れるからである。
【0007】
非接着細胞内に送達する為の現行の方法は、低い効率、低い細胞生存可能性を生じ、細胞発生若しくは増殖に影響を及ぼし、カーゴ特異的であり、及び/又は連続的な送達には好適ではなかった。現行では、効率的な送達方法の欠如は、免疫療法、遺伝子治療、農業開発、トランスジェニック動物、医薬開発、及びもっと多くに跨がる分野に於いて研究及び商業成果に重度に影響を及ぼす重大なハードルである。
【0008】
ナノストローは、生物学的に重要なカーゴを細胞内に送達する為の効率的な遣り方である事が判明している。例えば非特許文献1及び特許文献1を見よ。特許文献1は其の全体が参照に依って此処で組み込まれる。今の所、ナノストローの使い道は接着細胞タイプに限定されており、其れ故にナノストローの使用を限定している。ナノストローは非接着細胞内へと貫入し得るが、其れは高度に非蓋然的な事象であり、原則的には50nmよりももっと小さく且つ5μmよりも長いナノストロー直径にのみ適用可能であると言う事が理論付けられている。今の所、非接着細胞については、ナノストローに依って媒介される細胞内アクセスを示す研究は提示されていない。斯かるアクセスは高い科学的及び商業的価値がある。何故なら、其れは、免疫療法、遺伝子改変生物、及び医薬開発等の産業的に重要なトピックに於いて、細胞の効率的且つ容易な形質転換を可能にするであろうからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】ファンデルサール(Vandersarl)等著,ナノ・レターズ(Nano Letters),第12巻,3881頁(2012年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
生物学的に重要な分子、例えばDNA、RNA(例えば、mRNA、microRNA等)、蛋白質等を、細胞の群及び単細胞両方、例えば免疫細胞、胚、植物細胞、細菌、酵母等を包含する非接着組織内に送達する為の、ナノストロー器具、及び其れ等を利用する方法が本願に記載される。生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する為の以前の方法は、低い効率及び/若しくは低い細胞生存可能性を生じ、並びに/又は細胞増殖に影響を及ぼし、並びに/又は細胞発生に影響を及ぼし、並びに/又はカーゴ特異的であり、並びに/又は非反復可能であり、並びに/又は導入量コントロールがなかった。対照的に、本願に記載される方法の幾つかは、反復的に生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する事が出来、高い細胞生存可能性、導入量コントロール、左右されない増殖又は細胞発生を有し、高い効率を有する。他の使用の中でも、此れ等の新たな送達方法は前臨床細胞リプログラミング技術を臨床適用に迄拡大する事を許すであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ナノストローは、或る表面から延在する中空の金属酸化物ナノチューブである。ナノストローは、接着細胞タイプ(表面に結合する細胞)の細胞内空間への直接的なアクセスを与える能力がある事が示されている。細胞へのアクセスを手に入れる為のメカニズムは、細胞が表面を把持し、其れ等自体の挙動に依って其れ等自体をナノストロー上に引き下ろし、其れに依ってナノストロー先端の直上で細胞膜にストレスを加える事が原因であると考えられている。其のメカニズムについては、約50nmよりも小さい直径の且つ非常に低い面積密度を有するナノストローのみが、非接着細胞タイプについて細胞内アクセスを与える能力があるであろうと言う仮説が立てられている。其の産業的重要性にも関わらず、ナノストローに依って媒介される細胞内アクセスを非接着細胞について示すデータは提示されていない。
【0013】
非接着細胞内への細胞内アクセスをナノストロー(50nmよりも大きい直径であっても)が手に入れる事を許す器具及び方法が本願に記載される。方法は、ナノストローを有する容器内に懸濁液の細胞を置く事と、其れを、細胞がナノストローと相互作用する事を可能にするであろう外力とカップリングし、其れに依って細胞及びナノストローの間に密接な接触を提供する事とに基づく。此の外力は幾つものメカニズムに依って行使され得、遠心、機械的圧力(磁性ビーズを用いる事、ナノストローを細胞に対して駆動する事等)、電磁気力等を包含する。例えば、幾つかの変形では、ナノストローは機械的に細胞上へと押圧され得る。接触中に、生物学的に重要なカーゴはナノストローを通って細胞内に送達され得、此れは適用される電気エネルギーと併せて送達され得る。
【0014】
一般的に、本願に記載される方法及び器具は、細胞及びナノストローの間の密接な接触を成す為に外力を用いる。外力は、圧力、電場及び/又は磁場を適用する事、浸透圧及び/又は濃度勾配をコントロールする事、表面相互作用及び/又は種間相互作用の使用、物理的誘導、例えば遠心、流れ、剪断効果、及び/又は機械的圧迫であり得る。一度、細胞がナノストローとの接触をすると、カーゴは何れかの好適な遣り方で細胞内に投与され得、濃度勾配が原因の、電場及び/又は磁場に依る、圧力に依る、浸透圧勾配に依る、表面相互作用及び/又は種間相互作用に依る、物理的誘導、例えば遠心流れ及び/又は剪断効果に依る、ナノストローからの拡散を包含するが、此れ等に限定されない。
【0015】
非接着細胞内への分子の送達を可能にする為に外力を用いる為の本願に於いて提供される例は、マイクロ流体実施形態に依って提供され得る。
【0016】
幾つかの変形では、力は遠心に依って適用され得る。遠心は、懸濁液の細胞がナノストローとの接触をする様にし、細胞内空間への生物学的に重要な分子の細胞内送達を許す為に用いられ得る。此の方法では、細胞が、ナノストロー膜を組み込んでいる容器内である時に、遠心が実施され得る。一度細胞を有する容器が遠心されると、細胞はナノストロー上へとペレット化され得、細胞内送達を許す。
【0017】
図1(a)~1(c)は、物質を組織(例えば細胞)内に送達する為のナノストロー上への、例えば遠心に依る、懸濁された(非接着)組織への力の適用を模式的に図示している。此の例では、ナノストロー膜は、懸濁液の細胞を保持する容器の底部に固定されている。力(例えば遠心に依る)の適用中に、細胞はナノストロー上にペレット化され、分子の送達を可能にする。細胞をナノストロー上へと駆動する力の適用中に又は直後に何方かで、細胞が尚ナノストローとの接触をしている時に、カーゴは細胞内に送達され得る。特定の時間後に、細胞をナノストロー上へと駆動する追加の力の非存在下に於いて、細胞はナノストローから離れ、再度溶液中に戻り得る。其れに依って、遠心後に、カーゴが送達されなければならない前に人が如何程長く待ち得るかの上限を設定する。此の時間上限は細胞特異的であり得る。
【0018】
本願に記載される変形の何れかに於いては、非接着組織をナノストローに結合する為に結合剤が用いられ得る。結合剤は細胞特異的又は一般的であり得る。例えば、組織(例えば、細胞表面)上に存在する抗原に向けた抗体が、ナノストロー、及び/又はナノストローが其れから延在する膜に結合され得る。結合剤(例えば、抗体)は、ナノストローとの接触の為に組織を捕える事を助け得る。
【0019】
本願に記載される器具及び方法の何れかに於いては、要求に応じて細胞をナノストローから取り外す為に、遠心力、流体流れ、機械的な力(例えば、ナノストローを退動させる事等)等の使用を包含する力が適用され得る。幾つかの変形では、細胞を取り外す為に、1つ又はより多くの化学的及び/又は酵素的な因子も同様に、又は代替的に用いられ得る。例えば、組織(例えば細胞)をナノストローから取り外す為に、トリプシン、コラゲナーゼ、及び/又は他の因子が用いられ得る。此れ等の因子は、具体的には、組織をナノストローに確保する為に抗体等の結合剤が用いられた時に有用であり得る。
【0020】
例えば、生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する方法が本願に記載される。此れ等の方法は:複数のナノストローとの接触をする様に細胞の懸濁液を駆動する為に、力を適用する事と(此処で、複数のナノストローは、基板を通って、基板を越えて、2nm及び50μmの間である距離を延在し、更に、此処で、複数のナノストローは中空であり且つ5nm~1500nmの間の内側直径を有する);細胞の少なくとも幾らか(例えば、20%、25%、30%、35%等)が生物学的に重要なカーゴを取り込む様に、カーゴをナノストローから細胞の細胞内容積へと駆動する事と、を包含し得る。
【0021】
本願に於いて用いられる細胞は、カーゴを細胞内空間に受け取る事に依ってカーゴを取り込み得、細胞内空間の部分領域(例えば核)へのカーゴの移行を包含するが、此れに限定されない。更に、カーゴを取り込む事は、所定の閾値(例えば、検出可能なレベル。バックグラウンドよりも上のレベルを包含する)よりも上で細胞内コンパートメントにカーゴを獲得する事を包含し得る。
【0022】
力は何れかの適切な様式で適用され得、細胞と接触する様にナノストローを動かす事、及び/又は複数のナノストローとの接触をする様に細胞を駆動する為に細胞の懸濁液を遠心する事を包含する。幾つかの変形では、方法は、磁性粒子を細胞上又は細胞内に組み込む事を包含し、力を適用する事は、複数のナノストローとの接触をする様に細胞の懸濁液を駆動する為に磁場を適用する事を含む。
【0023】
此れ等の変形の何れかに於いて、カーゴを駆動する事は、パルス電場を適用する事を包含し得る。カーゴは核酸又は蛋白質の1つ又はより多くであり得る。
【0024】
此れ等の方法の何れかは、ナノストローから細胞を分離する事をも又包含し得る;例えば、ナノストローから細胞を分離する事は、溶液を細胞上に流す事;及び/又はナノストローとの接触をする様に細胞の懸濁液を駆動する為に適用される力を逆転させる事を含み得る。
【0025】
一般的に、此れ等の方法はインビトロで実施され得る。
【0026】
ナノストローは、生物学的に重要なカーゴのリザーバに接続された流体通路と流体連通にあり得る。細胞の懸濁液は植物細胞を含み得る。基板は多孔構造であり得る。
【0027】
例えば、生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する方法は:複数のナノストローとの接触をする様に細胞の懸濁液を駆動する為に、力を適用する事と(此処で、複数のナノストローは多孔構造を通って、多孔構造を越えて、2nm及び50μmの間である距離を延在し、更に、此処で、複数のナノストローは中空であり且つ5nm~1500nmの間の内側直径を有する);細胞の少なくとも25%が生物学的に重要なカーゴを取り込む様に、カーゴをナノストローから細胞の細胞内容積内へと駆動する為に、パルス電場を適用する事と;ナノストローから細胞を分離する事と、を包含し得る。
【0028】
本願に記載される方法の何れかを実施する為の器具も又、本願に記載される。例えば、生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する為の器具は:第1の流路(此処で、第1の流路は、細胞の懸濁液を受け取る様に構成される);第1の流路の側面に沿った可撓性の基板;可撓性の基板を通って第1の流路内へと延在する複数のナノストロー(此処で、複数のナノストローはフレキシブルな基板から延在し、更に、此処で、複数のナノストローは中空であり且つ5nm~1500nmの間の内側直径を有する);複数のナノストローの内部と流体連通したリザーバ(リザーバは、生物学的に重要なカーゴを保持する様に構成される);を包含し得、此処で、可撓性の基板は第1の位置及び第2の位置の間に於いて撓む様に構成され、更に、此処で、複数のナノストローは第1の位置よりも第2の位置に於いて第1の流路内へと更に延在して、第1の流路を少なくとも部分的に塞ぎ、其の結果、流路内の非接着細胞が複数のナノストローの1つ又はより多くと連通する。
【0029】
器具は、リザーバ及び第1の流路の間に電場を適用する様に構成された第1の流路の両側の一対の電極をも又包含し得る。此れ等の電極は、可撓性の基板が第2の位置である時にリザーバ及び第1の流路の間に電場を適用する様に構成(サイズ決め、位置決め、場所決め等)され得る。器具リザーバは、生物学的に重要なカーゴが流れる第2の流体チャネルとして構成され得る。
【0030】
第1の流路は、第1の端部の入口及び第2の端部の出口を含み得、此れ等の2つの間を延在し得る。可撓性の基板は多孔構造を含み得る。複数のナノストローは基板から2nm及び50μmの間を延在し得る。可撓性の基板は、リザーバ内の圧力に基づいて第1の位置から第2の位置へと遷移する様に構成され得る。
【0031】
此れ等の器具の何れかはカートリッジとして構成され得る。
【0032】
例えば、生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する為の器具は:入口ポート及び出口ポートを有する第1の流路と(此処で、第1の流路は細胞の懸濁液を受け取る様に構成される);第1の流路の側面に沿った可撓性の基板と;可撓性の基板を通って第1の流路内へと延在する複数のナノストローと(此処で、複数のナノストローは基板から2nm及び50μmの間を延在し、更に、此処で、複数のナノストローは中空であり且つ5nm~1500nmの間の内側直径を有する);複数のナノストローの内部と流体連通したリザーバと(リザーバは、生物学的に重要なカーゴを保持する様に構成される);(此処で、可撓性の基板は第1の位置及び第2の位置の間に於いて撓む様に構成され、更に、此処で、複数のナノストローは第1の位置よりも第2の位置に於いて第1の流路内へと更に延在して、第1の流路を少なくとも部分的に塞ぎ、其の結果、流路内の非接着細胞が複数のナノストローの1つ又はより多くと連通する);リザーバ及び第1の流路の間に電場を適用する様に構成された第1の流路の両側の一対の電極と、を包含し得る。
【0033】
器具及び方法の新規の特徴は、次の請求項に具体的に書かれている。特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用されている例解的な実施形態を書いている次の詳細な記載、及び付属する図面の参照に依って得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1(a)~1(c)は、
図1(a)に示されている通り、組織(細胞)の懸濁液に依って満たされたナノストロー膜を底部に組み込んでいる容器の側方像の模式図を示している。
図1(b)に示されている通り、遠心等の外力下に於いて、非接着細胞は細胞をナノストローとの密接な接触に付す様に用いられ得る。
図1(c)に示されている通り、細胞がナノストローとの接触をしており、且つナノストローの底部がナノストロー内のカーゴ溶液との接触をしている間に、カーゴは細胞内に送達され得る。模式図は一定縮尺ではない。
【
図2】
図2(a)~2(b)は、遠心に依って力が適用された、ナノストローからの浮遊ステージのヒト人工多能性幹細胞(iPSC)内へのDNAオリゴマーの送達を示している。
図2(a)の微分干渉は細胞の総数を示している。
図2(b)の緑色チャネルはオリゴマーが送達された細胞を示している。1.2μm長さを有する100nm直径ナノストロー上へと、細胞を300gで5minに渡って遠心した。遠心後に、200μs長の20V電圧パルスを40Hz周波数で80sに渡って適用する事に依って、送達を強化した。
【
図3】
図3(a)~3(d)はJurkat細胞内へのDNAオリゴマーの送達を図示している。
図3(a)はHoechst染色を示しており、核を染色する事に依って総細胞数を図示している。
図3(b)の緑色チャネルはオリゴマーが送達された細胞を示している。此の例では、1.2μm長さを有する200nm直径ナノストロー上へと、細胞を300gで5minに渡って遠心した。遠心後に、200μs長の20V電圧パルスのトレインを40Hz周波数で40sに渡って適用する事に依って、送達を強化した。送達は別の40sに渡って反復され得た。
図3(c)に示されている通り、第2の送達は類似の送達効率(カーゴを受け取った細胞のパーセンテージ)を齎したが、
図3(d)に示されている通り、細胞の蛍光強度の倍化近くを有した。
【
図4】
図4(a)~4(b)はサイトグラムであり、Jurkat細胞内への、
図4(a)ではeGFPプラスミド発現、
図4(b)ではCas9リボ核蛋白質複合体送達を示している。aでは、ナノストローに依って媒介される送達の3日後のeGFPプラスミドの発現が示されている。細胞の約30%よりも多くがプラスミドを発現した。
図4(b)では、GFPタグ付きCas9リボ核蛋白質複合体がナノストローを用いて25%よりも多い効率でJurkat細胞内に送達された。1.2μm長さを有する200nm直径ナノストロー上へ、細胞を300gで5minに渡って遠心した。遠心後に、200μs長の20V電圧パルスのトレインを40Hz周波数で40sに渡って適用する事に依って、送達を強化した。PBSが其れ等に送達された細胞を用いて、サイトグラムをゲーティングした。
【
図5】言及された通り、植物細胞を包含する何れかの組織又は細胞タイプは、本願に記載される方法及び器具に用いられ得る。
図5(a)~5(c)は、植物細胞内へのナノストロー・遠心(複数のナノストローの先端との接触をする様に、懸濁液の細胞を遠心に依って駆動した)に依って媒介される送達を示している。
図5(a)はハバナタバコプロトプラスト細胞内へのヨウ化プロピジウム(PI)の送達を示している。
図5(b)は懸濁液のハバナタバコ細胞内へのPIの送達を示している。核染色はHoechstを用いて青色に依って可視であった。赤はPIを受け取った細胞を示している。
図5(c)はST1スイッチグラスプロトプラスト細胞内へのTD18(RFP)プラスミドの送達及び発現を示している。バックグラウンドは総細胞数を示し、赤色オーバーレイは首尾良い送達後のRFPを発現する細胞を示す。約2um長さを有する100nm直径ナノストロー上へ、細胞を150~200gで10minに渡って遠心した。遠心後に、200μs長の20V電圧パルスのトレインを40Hz周波数で40sに渡って適用する事に依って、送達を強化した。プロトプラストの細胞、メリステム、花粉、カルス、細胞壁を含有する懸濁細胞)、植物胚等を包含する他の植物細胞が用いられ得る。言及された通り、細胞壁を有する植物細胞等の細胞であっても本願に記載される通り処置され得る。
【
図6】
図6(a)~6(c)は、ナノストローを細胞上へと動かす事に依って細胞をナノストロー上へと押圧する為に圧力(例えば、機械的な力)が用いられる、例示的な器具の模式的な側方像を示している。此の変形は「フレンチプレス」器具と言われ得る。
図6(d)~6(f)は、
図6(a)~6(c)に模式的に示されている物に類似の例示的な器具の別の変形を示している。
図6(d)では、チャンバーの底部は複数の開口又は細孔を包含し得、其れを通って流体が駆動され得る;此れ等の開口は、細胞が細胞の通過を許す事を許すには余りに小さくあり得るが、チャンバーから外への流体の流れは細胞を底部に対して駆動し得、
図6(f)に示されている通りカーゴの送達の為に、
図6(e)に示されている通りナノストローとの接触を許す。
【
図7】
図7(a)~7(d)は、赤色蛍光分子に依ってタグ付けされたDNAオリゴマーが其れ等に送達された後のマウス胚を示している。
図7(a)に示されている胚(明視野顕微鏡法を用いた)を、カーゴの上側に150μlのオイルを追加する事に依って押圧した。保護的な透明帯(ZP)は、無傷であり且つ卵子を取り囲んでいる事が見られ得る。
図7(b)では、蛍光を観察する時に、オリゴマーが囲卵腔(ZP及び卵子の間)内及びサテライト細胞内に行くと言う事が明らかである。然し乍ら、卵子の内部にはオリゴは見られ得ない。カーゴの上側に300μlのオイルを用いて
図7(c)の胚を押圧した。
図7(d)に示されている通り、卵子の内部の赤色蛍光に依って証明されている通り、其の圧力は、ストローが卵子其れ自体の中に透過してオリゴマーを送達する事を可能にする為に十分である。約1.2um長さを有する200nm直径ナノストローに依って、胚を押圧した。0.1×PBSに依って希釈した、100ulの赤色蛍光分子に依ってタグ付けされたDNAオリゴマーを、カーゴ溶液として仕込んだ。ナノストローを胚上へと押圧する為に余計の重量を用いるので、150又は300μlのミネラルオイルを夫々
図7(a)~7(b)及び
図7(c)~7(d)の胚に追加した。200μs長の20V電圧パルスのトレインを40Hz周波数で80sに渡って適用する事に依って、送達を強化した。胚が余り多く圧搾されないと言う事を保証する為に、50μm高さのスペーサーを両方の送達に用いた。
図7(a)の黄色の線はZPの輪郭である。
【
図8】
図8(a)~8(b)は、本願に記載される方法を実施する高スループット送達の為の流通デバイスの1つの例のレイアウトを示している。
図8(a)は、流通デバイスを作り得るコンポーネントの上側像を示している。
【
図9】
図9(a)~9(b)は使用中の流通デバイスの別の例を示している。
図9(a)では、側方像が例示的な完成デバイスのレイアウトを模式的に示している。細胞が入口2から注入され、ナノストローの下側を通過し、出口2で回収される。
図9(b)では、同じ側方像が、デバイスを流れる細胞内へのカーゴの送達中のデバイスを示している。
図9(b)では、カーゴリザーバ内の増大した圧力は、ナノストロー膜が屈曲し、其れに依って細胞との接触をする様にし、細胞内アクセスを許す。
【
図10】
図10(a)~10(c)は、
図9(a)~9(b)に示されている物等の流通デバイスに依ってトランスフェクションされた細胞の例を図示している。
図10(a)では、
図9(a)~9(b)に模式的に図示されている通り、デキストランブルーの送達後の浮遊ステージのHEK293細胞。
図10(b)は送達後に高い細胞生存可能性を有するカルセインAM染色を示している。
図10(c)はマウス卵子へのヨウ化プロピジウム(PI)色素の送達を示している(赤色チャネル)。
【
図11】
図11はナノストロートランスフェクションの為の閉鎖ループシステムの模式図である。此の例では、細胞が所望のカーゴと一緒にナノストローデバイス内へと流れる。カーゴはナノストローを通って細胞内に送達され、此れの後に、其れ等は無菌の細胞保持フラスコに移される。完了後に、フラスコは使用の為に取り外され得る。
【
図12】
図12(a)~12(c)は、
図9(a)~9(b)に示されている物に類似の、ナノストローを用いて非接着組織をトランスフェクションする為の流通デバイスの別の例を図示している。ナノストロー送達システムの此の例では、
図12(a)に示されている通り、細胞がトランスフェクションチャンバー内へと流される。
図12(b)では、圧力がカーゴチャネルに適用され、ナノストローを細胞内へと押圧する。適用される圧力の量は流量に依ってコントロールされ得る。
図12(c)に示されている通り、一度圧力が解除されると、細胞は回収容器へと輸送され得る。
【
図14】
図14(a)~14(f)は、Jurkat細胞内へのGFPタグ付きCAS9リボ核蛋白質複合体送達のサイトグラムを示しており、CAS9が希釈された緩衝液に広範囲の塩濃度を用いている;本願に記載される方法及び器具を用いてトランスフェクションが実施され、ナノストロー上への遠心に依って力を適用する。塩濃度は:DDH20(
図14(a))、0.1×PBS(
図14(b))、1×PBS(
図14(c))、2×PBS(
図14(d))である。
図14(e)は1×PBS(CAS9なし)を送達された細胞を示している。
図14(f)は未処置の細胞を示している。1.2μm長さを有する200nm直径ナノストロー上へ、細胞を300gで5minに渡って遠心した。遠心後に、200μs長の20V電圧パルスのトレインを40Hz周波数で120sに渡って適用する事に依って、送達を強化した。
【
図15】
図15(a)~15(f)は、其れから複数のナノストローが延在する基板の1つの例を図示している。
図15(a)は、其れからナノストローが延在する基板のSEMの例を示している。
図15(b)は、成長し、ナノストローを有する基板に接着した接着細胞(チャイニーズハムスター卵巣CHO細胞)の例である。
図15(c)~15(f)は、本願に記載される器具及び方法の何れかに用いられ得るナノストローを製作する1つの方法を図示している。
【
図16-1】
図16(a)は、複数のナノストローの開放端部との接触をする様に非接着細胞を駆動する為の磁性ビーズの使用を図示している。又、磁性粒子(MNP)と組み合わせられた例示的な細胞について、生存可能性の効果を示している。
図16(a)では、1又は5μL/mLの澱粉又はPEGコーティングされたMNP何方かに依る細胞生存可能性を、異なる磁場強さあり又はなしで、24hrに渡ってモニタリングした。1μL/mLの澱粉コーティングMNPに依る細胞生存可能性はコントロールに類似であったが、他の条件はより低い細胞生存可能性を有した。
【
図16-2】
図16(b)及び
図16(c)は、複数のナノストローの開放端部との接触をする様に非接着細胞を駆動する為の磁性ビーズの使用を図示している。
図16(b)は4日間の細胞の増殖を図示している。1μL/mLの澱粉コーティングMNPに依る処置は、細胞増殖を有意に左右しなかったが、NESのみを包含する他の物は細胞増殖を遅延させた。標識「A」、「B」、及び「C」は
図16(a)のレジェンドに列記されている磁場強さを言う。
図16(c)は静磁場に依る磁気機械的変調の効果を図示しており、12.8%から約30%に有意に改善された正味のトランスフェクション効率を示している。低周波数の交流磁場の使用は、正味のトランスフェクション効率の何れかの有意な差を齎さなかった。此の例では、磁石を磁石の中心から測定して細胞から約3.6cmに置き、F
max|mag=19.0pN/細胞を提供した。
【
図16-3】
図16(d)~
図16(g)は、複数のナノストローの開放端部との接触をする様に非接着細胞を駆動する為の磁性ビーズの使用を図示している。又、ナノストローの端部及び細胞の間に於ける接触を駆動する為に用いられる磁性ビーズの1つの例を図示している。
図16(d)は処置後の細胞の明視野画像を示している。
図16(e)は、細胞に依って取り込まれたMPSの蛍光マーカーに依る同じ画像を示している(細胞の大多数は結び付けられたMNPを有する)。
図16(f)は、ナノストローからカーゴとして細胞に追加されたマーカー(緑色蛍光蛋白質)をイメージングしている同じ視野であり、
図16(g)は、MNP及び送達されたカーゴGFP両方を示しているコンポジット画像である。齎された画像は、磁性粒子を用いて約30%の正味のトランスフェクション効率を示している。*:p<0.05,**:p<0.001。エラーバーは±平均の標準誤差を示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する為のナノストローの使用が本願に記載される。本願に記載される方法及び器具(デバイス及びシステムを包含する)は、中空のナノストローの先端と細胞との間の接触を駆動する(且つ幾つかの変形では、保つ)為に力を適用し得、其の結果、生物学的に重要なカーゴがリザーバからナノストローを通って細胞内に移入され得る。
【0036】
適用される力は、機械的な力、例えば、互いとの接触をする様に細胞及び/又はナノストローを押圧する事であり得、例えば、ナノストローを細胞内へと動かす事及び/又は流体流れ(例えば、流体圧力)を用いて細胞をナノストロー上へと駆動する事に依る。代替的に又は加えて、力は遠心が原因であり得る。代替的に又は加えて、力は磁気的であり得、例えば細胞にカップリングされた磁性粒子を駆動し、其の結果、細胞はナノストローに接触する。此れ等の例の何れかは、組み合わせられ得るか又は別々に用いられ得る。
【0037】
此れ等の方法及び器具の何れかに於いては、ナノストローから細胞内への生物学的に重要なカーゴの移入を強化する為に、パルス電場が用いられ得る。パルス電磁場は力の適用中又は後に適用され得る。
【0038】
此れ等の方法及び器具の何れかに於いて、十分量のカーゴの移入後に、細胞はナノストローから取り外され得る。
【0039】
何れかの適切なカーゴ(「生物学的に重要なカーゴ」)が用いられ得る。具体的には、カーゴは、ヌクレオチド(例えば、DNA、RNA。二本鎖DNA、一本鎖DNA、プラスミド、mRNA、microRNA、siRNA等を包含するが、此れ等に限定されない)、蛋白質、低分子、及び/又は此れ等の組み合わせを包含し得る。カーゴはマーカー(色素、蛍光性因子等)、又は同類をも又包含し得る。カーゴは蛋白質複合体を包含し得る(例えば、三次又は四次構造を有する蛋白質、例えば蛋白質サブユニット、酵素等)。加えて、何れかの所望の濃度のカーゴが用いられ得る(例えば、1pg/ml及び1mg/ml、1ng/ml及び1mg/mlの間等)。
【0040】
一般的に、ナノストローは、ナノ多孔ポリマーフィルムから形成され得る中空の無機ナノチューブである。
図15(a)は、基板(ナノ多孔基板)の1つの例を図示しており、基板1503を通って外へ延在する複数のナノストロー1501を有する。此れ等のナノストローは細胞膜を貫き得、ナノストローから細胞内への生物学的又は化学的なカーゴの直接的な送達を可能にする。此のプロセスは、エンドサイトーシス及び分解に関する生物学的な難問を回避し、カーゴのタイプ(例えば、DNA、RNA、蛋白質、及び低分子等)には概ねアグノスティックである。
図15(a)は、基板から突起するナノストローの1つの例のSEMである。
図15(b)は、基板上に於いてナノストロー上へと成長している接着細胞タイプ(例えば、線維芽細胞1508)の例を示している。
図15(c)~15(f)はナノストローを製作する1つの方法を模式的に図示している。此の例では、ナノストローは、ナノストローの鋳型としてトラックエッチングされたポリカーボネート膜から出発して製作される(
図15(c))。或る範囲の細孔サイズ(例えば、約20nmから約10μmの間)及び細孔密度(例えば、約1×10
5~1×10
9細孔/cm
2の間、約1×10
6~1×10
9細孔/cm
2の間、約1×10
7~1×10
9細孔/cm
2の間、約1×10
5~1×10
8細孔/cm
2の間、約1×10
6~1×10
8細孔/cm
2の間、約1×10
6~1×10
7細孔/cm
2の間、約1×10
8~1×10
9細孔/cm
2の間、約1×10
6細孔/cm
2超、約1×10
7細孔/cm
2超、約1×10
8細孔/cm
2超等)が用いられ得る。シリカ又はアルミナコーティング1511が基板上に堆積させられ得る(例えば
図15(d))。原子層堆積(ALD)が全てのナノ多孔膜表面(上側、底部、及び細孔の内部)上に実施され得る。ALD堆積プロセスの完全に等方的な気相性質は高度に均一なコーティング(+/-<5%)を生じ得、典型的には15~20nm厚である様に選ばれる(例えば、
図15(e))。真下のベア材ポリマー層を暴露し、上側表面を取り除き、ナノ細孔内のコーティングは損なわれずに残す様に、上側表面のアルミナは方向性の反応性イオンエッチング(RIE)に依って取り除かれ得る。最後に、所望のナノストロー高さ、典型的には1~2μmが得られる迄、ポリマーを選択的にエッチングする事に依って無機ナノストローを暴露する為に、酸素プラズマエッチング装置が用いられ得る(
図15(f))。酸素RIEはポリカーボネートについて高度に選択的であり、ストローが露わにされる時にアルミナナノストローが分解されないと言う事を保証する。ナノストロー寸法は、トラックエッチングされた膜特性(ストロー直径及び密度)、ALDアルミナ厚さ(ストロー壁厚さ)、及びエッチング時間(ナノストロー高さ)に合わせた調整に依って独立してコントロール可能であり得る。上の例はアルミナ及びシリカナノストロー材料を参照しているが、ハフニアを包含する他の材料が用いられ得る。
【0041】
図1(a)~1(c)は、生物学的に重要なカーゴを非接着細胞内に送達する為の本願に記載される一般的方法を図示している。
図1(a)では、非接着細胞101の溶液又は懸濁液が基板103上に示されており、此れを通って複数のナノストロー105が延在する(一定縮尺で示されてはいない)。
図9(b)に示されている通り、複数のナノストローとの接触をする様に細胞の懸濁液を駆動する為に、力109が適用される。故に、細胞は、基板を通って延在する複数のナノストローの開放した遠位先端に接触する;ナノストローは全て基板を越えて或る距離を延在する(例えば、1nm及び100μmの間、2nm及び50μmの間、1nm超、2nm超、5nm超等)。言及された通り、ナノストローでは、更に、複数のナノストローは中空である(且つ、例えば、約1nm~1750nmの間、約5nm~1500nmの間等の内側直径を有し得る)。本願に記載される方法の何れかに於いては、一度其れ等がナノストローとの接触を成したら、カーゴを細胞内へと駆動する事を助ける為に、電場(例えば、パルス電場)が適用され得る。
図1(c)に模式的に示されている通り、適切な時間(例えば、1秒、10秒、30秒、45秒、1分、2分、3分、5分、10分等)後に、カーゴは、カーゴを取り込んだ細胞の全て又は幾らか(例えば、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超等)に移入される。其の後に、細胞はナノストローから分離され得、再び溶液中に置かれ得る。其れから、其れ等は更に処理され得る。
【0042】
例えば、
図2(a)~2(b)は、非接着細胞及び複数のナノストローの間の接触を駆動する様に力を適用する為に遠心を用いた1つの例を図示している。此の例では、ナノストロー・遠心法を用いて、浮遊ステージのヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)を送達した。
図2(a)~2(b)は、此の方法が緑色蛍光分子に依ってタグ付けされたDNAオリゴマーを送達する為に用いられ得ると言う事を示している。ナノストロー膜を底部に組み込んでいる容器内に、hiPSCを置いた。細胞が表面に沈降及び接着する事を許す代わりに、其れ等を300gで5minに渡って遠心して落とした。一度遠心したら、外的な電場を適用して、ナノストローからのタグ付きオリゴマー(カーゴ)の送達を支援した。
図2(a)では、微分干渉(DIC)は総細胞数を示しており、緑色チャネル(
図2(b))はDNAオリゴマーが送達された細胞を示している。細胞の大部分がDNAオリゴマーを受け取ったと言う事が見られ得る。此れから、我々は、此の方法が分子を浮遊ステージの接着細胞内に送達する為に用いられ得ると言う事を結論付け得る。此の方法は、接着細胞タイプ内へのナノストロー送達のスループットを多大に増大させる。何故なら、其れは従来の一晩の細胞プレーティングを取り除き乍ら、高効率の送達を維持するからである。
【0043】
此の方法の別の例では、分子カーゴの効率的な送達の為に、Jurkat細胞をナノストロー上へと遠心した。JurkatはヒトT細胞リンパ腫細胞株であり、此れはT細胞との多くの類似点を持つ。T細胞及びT細胞模擬物への分子送達は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞等の免疫療法的アプローチを実装する為の鍵ステップである。Jurkat細胞は懸濁液中で成長し、其れはナノストローを用いて送達する事は以前には可能ではなかった。
図3(a)~3(d)は、此れ等の細胞をナノストロー上へと遠心して落とした結果を示しており、分子カーゴの効率的な送達が此の方法に依って初めてナノストローを用いて実施され得ると言う事を指示している。ナノストロー膜を底部に組み込んでいる容器内に、Jurkat細胞を置いた。細胞を300gで5minに渡って遠心し、此れの後に、緑色蛍光色素に依ってタグ付けされたDNAオリゴマーを合計40sに渡って送達した(短い電圧パルスを適用する事に依って強化した)。緑色の細胞数(オリゴマーが送達された細胞を指示する)vs.Hoechst33342を用いて核を染色する事に依って可視化された総細胞数を研究する事に依って、細胞の90%よりも多くが此の方法に依ってカーゴを受け取ると言う事が見出された。クロマチン凝縮の欠如に依って決定されると、Hoechst染色は95%よりも多い細胞生存可能性を示した。
【0044】
同じカーゴ溶液を用いる増大した送達時間も又、導入量がコントロールされた送達を可能にした。
図3(c)に示されている通り、送達時間を倍化させる事は、カーゴを獲得する細胞のパーセンテージを有意に変えなかったが、
図3(d)に示されている通り、其れは送達されるカーゴの量の倍化近くを齎した。
図3(d)では、細胞の内部のオリゴマーの蛍光強度を決定し、パルス電場下でナノストローとの接触をする2倍の送達時間を有する細胞が殆ど2倍のカーゴを受け取ると言う事を示した。
【0045】
非接着免疫細胞をナノストロー上へと駆動する為の力の使用、此の例では遠心は、高い細胞生存可能性で、カーゴの導入量がコントロールされた効率的な送達の為に用いられ得、其れに依って、免疫療法的適用の為の免疫細胞の効率的な遺伝子編集を可能にする。
【0046】
非接着細胞(懸濁液中)をナノストロー上へと駆動する為の力(例えば、遠心)のカップリングされた使用は、DNAオリゴマーよりももっと大きいカーゴを送達する為に用いられ得る。
図4(a)では、サイトグラムが、其れが送達されたJurkat細胞の30%よりも多くに於けるeGFPプラスミドの発現を示している。送達は、細胞を300gで5minに渡ってナノストロー上へと遠心して落とす事に依って、Jurkatに於けるオリゴマー送達に類似に実施した。パルス電場の追加に依って、送達を強化した。サイトグラムはナノストロー送達の3日後に得られ、細胞がナノストロー送達後に問題なく増殖すると言う事を示した。
図4(b)は、Jurkat細胞内へのGFPタグ付きCas9リボ核蛋白質複合体の送達を示している。Cas9蛋白質は免疫療法を包含する幾つもの遺伝子編集適用にとって高度に重要である。達成された25%よりも多い送達効率は、ナノストローに依って媒介される送達が、トランスフェクションし難い細胞に於ける部位特異的遺伝子編集の為の現実的経路であると言う事を示している。蛋白質を直接的に送達する能力と、細胞内部のDNA又はmRNAの発現に頼らなくて良い事とは、より素早く且つより確実な遺伝子編集にとっての希望を保持している。
【0047】
上で言及された通り、植物細胞は、本願に記載される方法及び器具を用いて細胞内送達の為にナノストローに依って貫かれ得る。植物細胞は、動物、例えば哺乳類細胞とは違って、細胞膜を取り囲む数マイクロメートル厚の細胞壁を包含し得る。細胞壁は多糖から作られており、取り分け機械的支持を提供する。壁を越えてのカーゴの送達は非常に難題であるが、本願に記載される方法及び器具を用いて実施され得る。幾つかの場合には、所謂培養プロトプラストを産生する為に、細胞壁は異なる酵素を用いて取り除かれ得る。
【0048】
ナノストローは細胞非透過性の分子を植物プロトプラスト及び懸濁液の細胞両方に送達し得る。
図5(a)に示されている例では、ナノストロー膜を底部に組み込んでいる容器内に、ハバナタバコ細胞の培養プロトプラストを置いた。細胞を150gで10minに渡ってナノストロー上へと遠心し、次に、細胞非透過性の染色のヨウ化プロピジウム(PI)の電圧に依って支援される送達をした。赤色の細胞はPI染色を受け取っており、Hoechstを用いる核染色の青色とPIを比較する事に依って、我々は、細胞の90%よりも多くがPIを受け取ると言う事を推定し得た。懸濁液のタバコ細胞(即ち、不足ない細胞壁を有する)、
図5(b)では、PI送達はより低い効率を有した。此れは、部分的には、懸濁細胞が提示する3次元的な集塊化に帰せられ得る。然うであっても、PIは明瞭に細胞の幾らかに送達され得る。
図5(c)は、培養スイッチグラスプロトプラストに於ける、ナノストロー・遠心に依って送達されたRFPプラスミドの発現を示している。此れ等の結果は、提示されている方法が、細胞壁あり又はなしの植物細胞内への細胞内アクセスを手に入れる為に用いられ得ると言う事を示している。
【0049】
直径10~1000nm且つ0.1~25μmの長さのナノストローでは、1~100,000gの遠心スピードが用いられ得る。細胞タイプに依存して、異なる遠心スピードが用いられ得る。何故なら、物理的透過は細胞膜破壊ストレス、細胞サイズ、及び密度に依存的であり得るからである。例えば、大部分の哺乳類細胞は、2~20minに渡る100~3000g遠心を用いて、遠心に依ってナノストロー上へと駆動され得る。5minに渡る300gで最適化された。
【0050】
類似に、幾つかの変形では、本願に記載される通り、2~20minに渡る約200~2000gの遠心スピードを用いて、T細胞がナノストロー上へと駆動され得る。此れは5minに渡る凡そ750gで最適化され得る。より高いスピードの必要は其れ等のより小さいサイズに依って説明される。例えば、懸濁液の植物細胞及びプロトプラスト化された植物細胞が用いられている。予備的な研究は、方法が、2~20minに渡る凡そ1~1000gを用いて植物細胞をナノストロー上へと駆動する事を包含すると言う事を示唆しており、此れは5minに渡る200gで最適化され得る。他の細胞タイプ(例えば、酵母細胞)は、遠心に依って力を適用する為に他のパラメータを用い得、例えば約1000~6000gで5~60minに渡ってナノストロー上へとスピンダウンする。胚は、1~1500gの間で0.1~30minに渡って遠心する事に依って適用され得る。胚のより大きいサイズは、より低い遠心スピードでの送達を許す。細菌は、例えば5~60minに渡る1500~10,000gを用いて複数のナノストロー上へと駆動され得る。細菌のより小さいサイズ及び厚い細胞壁は、より高い遠心スピードを要し得る。
【0051】
遠心後に、細胞が懸濁液中に再度脱する前に、一般的には30min前に、カーゴは送達され得る。大きい植物細胞等の幾つかの細胞タイプはより長く待ち得るが、小さいT細胞等の幾つかの細胞タイプには5min以内に送達され得る。
【0052】
一般的に、細胞が遠心中に懸濁される緩衝液は、細胞をリシスしないであろう何れかの種類の液体である様に選ばれ得る。ナノストロー上の細胞をより長時間に渡って安定化し、送達が実施されてしまう前に細胞が溶液中に脱するリスクを縮減する為に、より粘性の材料が用いられ得る。細菌では、純水は推奨されない。何故なら、其れは細菌の凝集を引き起こし得るからである。
【0053】
幾つかの変形では、細胞内アクセスを手に入れる為に、ナノストローが細胞上へと押圧され得る様に、機械的な力が適用され得る。所謂「フレンチプレス」実施形態である。
図6(a)~6(c)及び6(d)~6(e)に図示されている此の例では、ナノストロー膜601を底部に組み込んでいる容器がカーゴ溶液605,
図6(a)に依って満たされている。上に記載されている遠心に基づく方法とは違って、ナノストローは容器から外へ下向きに延在するので、細胞は、其の高さが当該細胞の高さにマッチする様に選ばれる薄いスペーサーに依って取り囲まれた表面に置かれる。ナノストロー及び細胞を接触に付す様に、ナノストロー容器601は細胞の上側に置かれる。必要とされる場合には、別の流体をカーゴ溶液の上側に追加する事に依って、余計の圧力が適用され得る。一度好適な圧力が適用されると、カーゴは細胞内に送達され得る。伝火薬を適用する事(例えば、パルス電場を適用する事)を包含する。
【0054】
「フレンチプレス」変形に於いて、細胞をナノストロー内へと駆動する為に機械的な力が用いられる時には、細胞は、定められた高さの壁に依って取り囲まれた平らな表面上に分散され得る。ナノストロー603を組み込んでいる多孔膜601から成る容器が、細胞607の上側に置かれて下方向に延在し得る。容器は、余計の圧力を提供し得る余計の重量、例えばオイル609と言うオプションと共に、当該カーゴ605を保持し得る。細胞の方に押される時に(
図6(b)に示されている通り)、細胞は圧搾され、ナノストローが細胞の密接な近傍に来る事を齎すであろう。其れから、ナノストローは、濃度勾配が原因の拡散に依って又は外的な駆動力を追加する事、例えば電場、遠心、液体流れ等に依って何方かで細胞内へのカーゴの送達に用いられ得る。
【0055】
別の変形が
図6(d)~6(f)に示されている。此の例では、上の通り、懸濁された非接着細胞617の為のレセプタクルがあり、ナノストローを有する基板はレセプタクル内へと動かされ得る;此れは流体の幾らかを変位させ得、此れは土台を通過し得る。此の例の土台は開口621(チャネル、細孔等)を包含する。此れ等は、基板及びナノストローが土台内へと下げられる時に流体を通過させ得(
図6(e)に示されている通り)、基板及びナノストローが土台に対して細胞を駆動する事を許し得る。其の結果、カーゴを細胞内へと通過させる為にナノストローが其れ等と接触する間に、其れ等は支持され得る。
【0056】
マウス胚はナノストローを其れ等の上へと押圧する事に依ってアクセスされ得る。主に卵子全体を取り囲む数マイクロメートル厚の透明帯(ZP)が原因で、胚はナノストロー送達にとって難題のタスクを提示する。遺伝子編集ツール等の多くのバイオ的に重要な分子は卵子内に送達される事を必要とし、故に、其れへの確実なアクセスは高度に興味深い。
【0057】
ナノストローが非接着細胞に対して駆動される変形に於いて、ナノストローに依って行使される圧力は、其れ等の貫入深さをコントロールする(例えば、チューニングする)為に調整又はコントロールされ得る。例えば、
図7(a)~(b)では、ナノストロー送達中に程々の圧力を適用する事は、囲卵腔内に(ZP及び卵子の間に)蛍光タグ付きオリゴマーを齎す。
図7(c)~7(d)に示されている通り、更なる圧力を追加する事に依って、我々は卵子其れ自体の中に到達する様に貫入深さをチューニングし得る。此れ等の結果は、取り分けトランスジェニック動物を高スループットで作り出す為の新たな道を提示している。何故なら、多くの胚に同時に送達され得るからである。加えて、Crispr蛋白質等の遺伝子編集ツールはナノストローから直接的に送達され得、迅速且つ効率的な遺伝子編集を許し、其れに依って、トランスジェニック動物の作製に通例結び付けられているモザイク性を取り除く。
【0058】
囲卵腔へのチューニング可能なアクセスは細胞内サンプリング適用に有用であり得る。胚の疾患スクリーニングでは、小量の細胞内分子、例えばmRNAをサンプリングする(及び取り除く)為に、ナノストローが用いられ得る。可能な限り非侵襲的なサンプリングを有する為には、卵子其れ自体からよりもむしろ囲卵腔(PVS)に排出される分子をサンプリングする事が好適であるであろう。此処で提示されている方法は、PVS又は卵子への予測可能なチューニング可能なアクセスが可能であると言う事を示している。
【0059】
幾つかの変形では、細胞内に侵入させられるナノストローの深さを調整する為に、スペーサーが用いられ得る。直径10~1000nm且つ0.1~25μmの長さのナノストローでは、細胞直径の0及び最高で50倍の間の範囲のスペーサーが用いられ得る。細胞直径の10倍よりも大きいスペーサーでは、ナノストローは細胞内送達の為に細胞に到達する能力はないであろう。胚への送達には、細胞直径の約半分のスペーサーが好適であり得る。
図7(a)~7(d)に示されている通り、細胞直径の約半分のスペーサーを用いた時には、ナノストローを押して細胞に近づける為に追加の外力が用いられる迄は、細胞内送達は見られなかった。其れ等のスペーサー厚さでは、150~300μlミネラルオイルをカーゴ溶液の上側に追加する事が、細胞内空間に到達する様にナノストローをチューニングする為に有用であった。
【0060】
図8(a)~8(b)は、ナノストローに依ってカーゴを非接着細胞に送達する為に用いられ得る器具の別の例を図示している。一般的に、ナノストローは、生物学的に重要なカーゴが非接着細胞内に送達され得るマイクロ流体セットアップに組み込まれ得る。斯かるセットアップでは、細胞はマイクロ流体チャンバー内に輸送され得、次の遣り方の1つ又は幾つかでナノストローと相互作用し得る:圧力、電場及び/又は磁場を適用する事、浸透圧及び/又は濃度勾配をコントロールする事、表面相互作用及び/又は種間相互作用の使用、物理的誘導、例えば遠心、流れ、剪断効果、及び/又は機械的圧迫。斯かる流通デバイスは、送達され得る細胞数を多大に増大させる能力があり乍ら、同時に、コンタミネーションの最小限のリスクを有する閉鎖系であるであろう。フレンチプレス技術に類似の機械的圧迫が用いられる1つの斯かる実施形態の例が
図8(a)~8(b)に示されている。
【0061】
図8(a)~8(b)に示されている例のナノストロー流通デバイスは5つの層から成る。2つの支持的なITOガラススライド801、803(層1及び5)は、機械的支持、及び電圧に依って強化された送達の為の電極を提供し得る。層2及び4の805、807は良く定められた厚さを有するレーザーカット両面テープであり得る。層3の809はナノストローを組み込んでいるポリマー膜である。
図8(b)は、入口及び出口を有する例示的な完成デバイスの上側像である。入口1及び3は細胞のマイクロ流体フォーカシング用に用いられ得る。入口2は細胞用に用いられ得る。入口4はカーゴ溶液用であり得る。此の例の出口1は送達されなかったカーゴを回収している;出口2は細胞用である。
【0062】
ナノストローを含有するポリマー膜(層3)809が2つの流体チャンバー層(層2及び4)805、807間にサンドイッチされている。層2の805のマイクロ流体路は2つの目的に奉仕し得る:其れは送達されるべきカーゴを含有し得、流体圧力はナノストローが細胞との接触をする事を可能にし得、分子送達を許し得る。層4の807は細胞の輸送チャネルとして奉仕し得る。其れ故に、細胞溶液及びカーゴ溶液はナノストロー膜を通って流体接続し得る。3層コアは2つの酸化インジウムスズ(ITO)ガラススライド(第1及び5層)801、803の間にサンドイッチされ得る。此れ等は、支持構造、及び電圧に依って強化された送達の為の電極として奉仕する。
図8(b)に示されている通り、層1は入口及び出口管の為の6つの穴を組み込んでいる。此れは電極の電気的接続をも又示している。
【0063】
送達中に、溶液中の細胞が入口2から注入され得る。此の例では、送達領域に細胞をマイクロ流体フォーカシングする為に、細胞培養培地が入口1及び3から注入される(
図8(a)~9(b))。細胞内送達の為には、カーゴ溶液が入口4から注入され得る。カーゴ溶液の液体圧力は、ナノストロー膜が湾曲し、其れに依って、通過する細胞との接触をする事を引き起こし得、其れに依って、細胞内への分子の送達を許す。送達を強化する為に、電場が層1及び5の間に適用され得る。送達された細胞は出口2に於いて回収され得、送達試薬は出口1に於いてリサイクルされ得る。此のシステムは非接着細胞の全てのタイプに用いられ得る。
図10(a)~10(c)は、類似の流通器具に於けるHEK293細胞内へのデキストランブルーの送達を図示している。カルセインAMを用いる染色は非常に高い細胞生存可能性を露わにした。
図10(c)では、マウス胚内へのヨウ化プロピジウム(PI)の送達が示されている。PIは卵子全部を赤色に染色し、且つDNAに結合し、其れに依って前核を目立たせる。此れ等の結果は、ナノストローが流通セットアップに於いても又、細胞内アクセスを提供すると言う事を示している。
【0064】
図9(a)~9(b)は使用中の流通デバイスの別の例を示している。
図9(a)では、側方像が例示的な完成デバイスのレイアウトを模式的に示している。細胞が入口2から注入され、ナノストローの真下を通過し、出口2で回収される。
図9(b)では、同じ側方像が、デバイス内を流れる細胞内へのカーゴの送達中のデバイスを示している。
図9(b)では、カーゴリザーバ内の増大した圧力は、ナノストロー膜が屈曲し、其れに依って細胞との接触をする様にし、細胞内アクセスを許す。強化された送達の為には、電場Eが2つのITOスライドの間に(ナノストロー膜及び細胞上に、例えば、リザーバ905及び細胞が流れているチャネル911の間に)適用され得る。有効領域919は第1の流路の側面に沿った可撓性の基板を包含し得る。可撓性の基板は、可撓性の基板を通って第1の流路内へと延在する複数のナノストロー917を包含し得、此処で、複数のナノストローはフレキシブルな基板から延在する(例えば、複数のナノストローは中空であり且つ5nm~1500nmの間の内側直径を有し得る)。器具は複数のナノストローの内部と流体連通しているリザーバ913をも又包含し、リザーバは、生物学的に重要なカーゴを保持する様に構成される。此の例では、可撓性の基板は第1の位置(
図9(a)に示されている)及び第2の位置(
図9(b)に示されている)の間に於いて撓む様に構成され、更に、此処で、複数のナノストローは第1の位置よりも第2の位置に於いて第1の流路内へと更に延在して、第1の流路を少なくとも部分的に塞ぎ、流路内の非接着細胞を複数のナノストローの1つ又はより多くに対して確保する。
【0065】
図11は、
図9(a)~9(b)に示されている物に類似の閉鎖ループ器具の模式図を図示している。閉鎖ループシステムは、細胞1101がデバイス1103に注入され、形質転換され、無菌容器1105に戻される総体的なワークフローを言い得る。此れはユーザーのハンドリングを縮減し得、より高い細胞数が単位時間当たりトランスフェクションされる事を可能にし得る。加えて、其れは器具が臨床的に用いられる事を許し得る。其処では、コンタミネーションの懸念が閉鎖ループデバイスの使用を必要にさせる。例えば、本願に記載される方法及び器具は、技師が形質転換プロセスをマニュアル監視する必要なしに、地域の病院に於けるCAR-T細胞リプログラミングに用いられ得る。
【0066】
図12(a)~12(c)は、
図9(a)~9(b)に示されている物に類似の流通器具の別の例を図示している。
図12(a)~12(c)では、ナノストローを細胞内へと押す為に、流体圧力が用いられ得る。例えば、
図12(a)では、第1の流体チャネル1201は入力ポート及び出力ポート(示されていない)に接続される。非接着細胞1203はチャネルを流され得る;チャネルはチャネル内の単細胞の通過を許可する様に構成され得る(例えば、チャネルの直径は単細胞だけを許可する様に構成され得る)。変位可能な(例えば、フレキシブル、屈曲可能、可動等の)基板1205は第1の流体チャネルの側壁の一部の上であり得る(且つ其れを形成し得る)。上で記載されている通り、ナノストローは、基板を通って外へ且つ第1の流体チャネル内へと延在し得る。変位可能な基板の裏側はリザーバであり得、此れは第2の流体チャネルであり得、カーゴを包含し得る(例えば、DNA、RNA、蛋白質、低分子等)。
図12(b)に示されている通り、マイクロ流体チャネル内への基板の変位は、ナノストローを細胞内へと押圧する事に依って穏やかな圧力を適用し得る;圧力を解除する事は(
図12(c)に示されている通り)、細胞が流れ去る事を許し得る。
【0067】
図12(a)~12(c)に示されている例では、2つのオーバーラップするチャネルが用いられ得、1つは流れる細胞を有し、他方はカーゴを有する。示されている通り、カーゴチャネルへの流体圧力の適用は、フレキシブルなナノストロー膜が細胞内へと押し上げられる事を引き起こす(
図12(b))。必要とされる場合には、細胞膜を局部的にエレクトロポレーションする為に及び/又は電気泳動的にカーゴを細胞内へと導く為に両方で、チャネルに於いて電極から電場が適用され得る。細胞内へのカーゴの移入を許す為に、此の第2の撓んだ構成は時間の幾らかの期間(例えば、約0.5~60秒の間、約0.5~30秒の間、約1~20secの間、約1~15秒の間等)に渡って保持され得る。此の期間後に、圧力は解除され得、細胞チャネルの流れが開始され得、形質転換された細胞を送達チャンバーへと押し流し、新たな細胞を送達領域内に持って来る。此れは可成り大スケールで成され得る。何故なら、DNA及び培養細胞チャネルは大きい領域に渡って共存する様に設計され得るからである。
【0068】
此の設計のプロトタイプデバイスが
図13に示されている。此のデバイスは、2つのカーゴポート、細胞入力ポート及び細胞出力ポートを有した。此のプロトタイプをGFPプラスミド(1mg/mLカーゴ)に用い、単純なシリンジポンプを用いてHEK細胞を注入した。カーゴポンプがオンである時には常に圧力が作り出され、一度其れがオフにされると消散した。3つの異なるレベルの圧力を作り出す為に、3つの異なるカーゴチャネル流量を調べた。此れ等は:送達なし;~30%トランスフェクション及び高いパーセンテージの細胞回復;並びに回復なしの細胞の完全な破砕を齎した。
【0069】
上で言及されている通り、非接着細胞内への送達に適用可能なナノストローは、10から1700nmの範囲である直径及び0.1~50μmの範囲である長さを有し得る。其れ等の密度は約10
4から10
12ナノストロー/cm
2の間であり得る。米国特許第9,266,725号は、ナノストロージオメトリ、ナノストローを製造する方法、及び本願に於いて用いられ得るナノストロー組成物を記載しており、其れ等の全体が参照に依って本願に組み込まれる。更に其の上、何れかの適切なカーゴ溶液が用いられ得、カーゴが希釈されるべき緩衝液が広範囲の塩濃度をカバーし得る事を包含する。カーゴが希釈されている溶液は、0から10,000mmol/Lの範囲であるイオン濃度を有し得る。プラスミド及び蛋白質等のより大きいカーゴでは、適用される外力のタイプ及び強さに関わらず且つ細胞タイプに関わらず、最も高い送達効率は、カーゴを希釈する為の緩衝液として0.1×PBSを用いて見出され得る。例えば、
図14(a)~14(f)は、200×1200nmナノストロー上へと遠心されたJurkat細胞内へのCas9蛋白質の種々の送達効率を示している。
【0070】
本願に記載される変形の何れかに於いては、カーゴを細胞内へと駆動する及び/又は細胞をナノストローに対して開放する為に、電場、具体的には変動する電場が用いられ得る。例えば、直径10~1000nm且つ0.1~50μmの長さのナノストローでは、細胞内へのカーゴの送達を支援する為に、パルス電場がナノストロー上に適用され得る。パルス長さは1μsから1s(例えば、約10μs及び500μsの間、約50μs及び約500μsの間、約150μs及び約400μsの間、約200μs等)、パルス周波数は0.01Hzから100,000Hz(例えば、約0.1Hz及び約50kHzの間、約1Hz及び約1kHzの間、約10Hz及び約100Hzの間、約10Hz、約20Hz、約30Hz、約40Hz等)、適用されるパルスの持続時間は約0.01secから10h(例えば、約0.1secから約1時間、約1secから約5分、約10secから約300sec、約40secから約180secの間等)。パルス電場は正方形/長方形、正弦波、三角形等を包含する何れかのプロファイルを有し得る。静電場は幾つかの適用でも又有効であり得る。電場はナノストロー内の荷電種の輸送を強化し得、ナノストローの直上で細胞膜を透過処理する事を助け得る。今の所、電場の効率は細胞のタイプにアグノスティックである事が見出されており;例示的なパラメータは、80~120secの持続時間に渡る30~50Hzでの150~300μsの15~25Vのパルストレインを包含し得る。幾つかの変形では、より高い電圧はより高いトランスフェクション効率を与え得るが、細胞生存可能性を下げ得る。
【0071】
磁性粒子(例えばビーズ)と結び付いた細胞をナノストロー内へと駆動する為に、非接着細胞と結び付く事及び外的に適用される磁場に応答する事に依って、磁性粒子(例えばビーズ)が用いられる変形も又本願に記載される。例えば、ナノストローエレクトロポレーション(NES)の磁気機械的変調の為に、非接着細胞が細胞保護的な澱粉コーティング磁性ナノ粒子(MNP)に依って処置され得る。此れ等の例の何れかに於いて、MNPは細胞を有する懸濁液に追加され得、細胞に依って取り込まれ得、及び/又は細胞の外面に結合し得る。幾つかの変形では、異なる細胞タイプの大きいプールからの特異的な細胞タイプを包含する細胞を磁性ビーズと結び付ける為に架橋/結合剤(例えば抗体)が用いられ得、其の結果、其れ等はナノストロー内へと駆動され得る。
図16(a)~16(c)に図示されている通り、此の様式の磁性ビーズの使用は細胞生存可能性を縮減しない。例えば、
図16(a)は、種々の濃度の磁性ビーズに暴露された細胞がコントロール細胞に類似の細胞生存可能性及び増殖を示したと言う事を示している。加えて、カルシウムシグナル(急性及び慢性)は全ての異なる方法に於いて殆ど同じであった。磁石・機械的変調に依るNESは、最小限の細胞ストレス及び遺伝子制御の意図されない撹乱を作り出し乍ら、最も高いトランスフェクション効率及び細胞生存可能性を達成した。興味深い事に、MNPを用いるアクチン撹乱はナノストローエレクトロポレーション後の膜リシールをも又促進し、此れは過剰なカルシウム流入からの細胞ストレスを最小化した。
【0072】
図16(a)は、種々の異なる澱粉及びPEGコーティングMNPの細胞毒性(又は其の欠如)を図示している。此れ等は、別の24hrに渡るJurkat細胞との爾後のインキュベーション前に、既に24hrに渡って馴化培地とインキュベーションされていた。ホールマグネトメータに依って以前にキャラクタリゼーションされた150mT、373mT、及び450mTの磁場強さを有する磁石を用いる刺激あり又はなしで、1μL/mL及び5μL/mLの何方かのMNPをJurkat細胞とインキュベーションした。1μL/mLのMNP溶液では、2.5×10
12個のMNPがあった。
図16(a)に示されている通り、全ての条件に於いて、1μL/mLの澱粉コーティングMNPは最も細胞毒性ではなかった。
図16(b)に示されている通り、NESに依って、MNPの追加後に4日間の細胞増殖をモニタリングする事に依って、類似の結果が得られた。コントロール及び1μL/mLの澱粉コーティングMNPの条件に於いて、細胞間に増殖に統計上の差はなかった。NESのみを包含する他の条件はより長い増殖時間を齎し、澱粉コーティングMNPが生体適合性であり、細胞保護効果をオファーし得ると言う事を示唆した。1μL/mLの澱粉コーティングMNPを450mT磁石と共に用いた。
【0073】
幾つかの変形では、トランスフェクション中に、450mT磁石をNES(30V,2min)下に置いた。磁石は19.0pN/細胞と言う最大磁力(F
max|mag)を提供した。此のメカニズムは、カーゴに結合したMNP及び細胞を播種した磁気プレートがより長時間に渡って、典型的には一晩用いられる磁気トランスフェクションの物とは異なる。此れを確かめる為に、蛍光レポータープラスミドをMNP/磁気刺激に依って追加したが、蛍光(GFP+)細胞は識別されなかった。NESの下に静磁場を有するセットアップは正味のトランスフェクション効率を12.8%から~30%に有意に強化した。其れ故に、本願に記載される方法の何れかには、静磁場が用いられ得る。
図16(c)に示されている通り、低周波数の交流磁場(熱を作り出す事を回避する為)はトランスフェクション効率を更に強化はしなかった(例えば、膜に結合したMNPに依る細胞膜のオン/オフ変形を増大させる事に由る)。
図16(d)~16(g)は、Jurkat細胞の~30%がナノストローエレクトロポレーション・静磁場システムで蛍光蛋白質レポータープラスミドに依ってトランスフェクションされたと言う事を示している。
【0074】
本願に記載されるナノストロー構造の何れかは、細胞をトランスフェクション又は改変する為のデバイス(deice)を包含する器具(例えば、デバイス、システム等)の一部であり得る。本願に記載される方法の何れか(ユーザーインターフェースを包含する)は、ソフトウェア、ハードウェア、又はファームウェアとして実装され得、プロセッサ(例えば、コンピュータ、タブレット、スマートホン等)に依って実行される事が出来る命令のセットを保存する非一時的なコンピュータ読み取り可能な保存メディアとして記載され得る。此れは、プロセッサに依って実行される時に、プロセッサがステップの何れかをコントロール・実施する事を引き起こす:表示する事、ユーザーとコミュニケーションする事、分析する事、パラメータ(タイミング、周波数、強度等を包含する)を改変する事、決定する事、アラートする事、又は同類を包含するが、此れ等に限定されない。
【0075】
或る特徴又は要素が本願に於いて別の特徴又は要素の「上」であると言われる時には、其れは直接的に別の特徴若しくは要素の上であり得るか、又は介在する特徴及び/若しくは要素も又存在し得る。対照的に、或る特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直接的に上」であると言われる時には、介在する特徴又は要素は存在しない。或る特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続される」、「取り付けられる」、又は「カップリングされる」と言われる時には、其れは直接的に別の特徴又は要素に「接続され」、「取り付けられ」、若しくは「カップリングされ」得るか、又は介在する特徴若しくは要素が存在し得ると言う事も又理解されるであろう。対照的に、或る特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接的に接続される」、「直接的に取り付けられる」、又は「直接的にカップリングされる」と言われる時には、介在する特徴又は要素は存在しない。1つの実施形態について記載されているか又は示されていても、其の様に記載されているか又は示されている特徴及び要素は他の実施形態に適用され得る。別の特徴に「隣接して」配置される或る構造又は特徴の参照は、隣接する特徴に対して上重ねになる又は下重ねになる部分を有し得ると言う事も又当業者に依って了解されるであろう。
【0076】
本願に於いて用いられる術語は、具体的な実施形態を記載する目的のみの為であって、本発明について限定的であると言う事は意図されていない。例えば、文脈が明瞭に別様に指示しない限り、本願に於いて用いられる単数形「a」、「an」、及び「the」は複数形をも又包含する事を意図される。更に、用語「含む(comprise)」及び/又は「含む(comprising)」は、本明細書に於いて用いられる時には、述べられている特徴、ステップ、操作、要素、及び/又はコンポーネントの存在を規定するが、1つ又はより多くの他の特徴、ステップ、操作、要素、コンポーネント、及び/又は其れ等の群の存在又は追加を妨げないと言う事は理解されるであろう。本願に於いて用いられる用語「及び/又は」は、結び付けられている列記されている項目の1つ又はより多くの何れか及び全ての組み合わせを包含し、「/」と略記され得る。
【0077】
空間的に相対的な用語、例えば「下(under)」、「下(below)」、「下(lower)」、「上(over)」、「上(upper)」、及び同類は、本願に於いて、図に図示されている通り、別の要素(単数若しくは複数)又は特徴(単数若しくは複数)に対する1つの要素又は特徴の関係性を記載する為に、記載の容易さから用いられ得る。空間的に相対的な用語は、図に描かれている定位に加えて、使用中又は操作中のデバイスの異なる定位を包摂する事を意図されると言う事は理解されるであろう。例えば、図中のデバイスが引っ繰り返される場合には、他の要素又は特徴の「下(under)」又は「下(beneath)」と記載されている要素は他の要素又は特徴の「上(over)」に定位させられるであろう。其れ故に、例示的な用語「下(under)」は上(over)及び下(under)の定位を両方包摂し得る。デバイスは別様に定位(90度又は他の定位で回転)させられ得、本願に於いて用いられる空間的に相対的な記述語は然るべく解釈され得る。類似に、具体的に別様に指示されない限り、用語「上方に」、「下方に」、「垂直」、「水平」、及び同類は本願に於いては説明の目的のみで用いられる。
【0078】
用語「第1」及び「第2」は種々の特徴/要素(ステップを包含する)を記載する為に本願に於いて用いられ得るが、文脈が別様に指示しない限り、此れ等の特徴/要素は此れ等の用語に依って限定されるべきではない。此れ等の用語は1つの特徴/要素を別の特徴/要素から区別する為に用いられ得る。其れ故に、本発明の教示から外れる事なしに、下で論ぜられる第1の特徴/要素は第2の特徴/要素と呼ばれ得、類似に、下で論ぜられる第2の特徴/要素は第1の特徴/要素と呼ばれ得る。
【0079】
本明細書及び次の請求項に於いては、文脈が別様に求めない限り、単語「含む(comprise)」及び変形、例えば「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、種々のコンポーネントが方法及び成形品(例えば、組成物、及びデバイスを包含する器具、並びに方法)に併用され得ると言う事を意味する。例えば、用語「含む」は、何れかの述べられている要素又はステップの包含を含意するが、何れかの他の要素又はステップの排除を含意しないと理解されるであろう。
【0080】
一般的に、本願に記載される器具及び方法の何れかは包含的であると理解されるべきであるが、代替的には、コンポーネント及び/又はステップの全て又は部分集合は排他的であり得、種々のコンポーネント、ステップ、部分コンポーネント、又は部分ステップ「から成る」又は代替的に「から本質的に成る」と表現され得る。
【0081】
明白に別様に規定されない限り、例に於いて用いられる事を包含する、本願に於いて本明細書及び請求項に於いて用いられる全ての数は、用語が明記されていない場合であっても、単語「約」又は「凡そ」に依って前置きされている場合の様に読み取られ得る。表現「約」又は「凡そ」は、大きさ及び/又は位置を記載する時に、記載されている値及び/又は位置が値及び/又は位置の妥当な期待範囲内であると言う事を指示する為に用いられ得る。例えば、数値は、述べられている値(又は値の範囲)の+/-0.1%、述べられている値(又は値の範囲)の+/-1%、述べられている値(又は値の範囲)の+/-2%、述べられている値(又は値の範囲)の+/-5%、述べられている値(又は値の範囲)の+/-10%等である値を有し得る。文脈が別様に指示しない限り、本願に於いて与えられる何れかの数値は、約又は凡そ其の値を包含すると理解されるべきである。例えば値「10」が開示される場合には、「約10」も又開示されている。本願に記載される何れかの数的範囲は、其の中に納まる全ての部分範囲を包含する事を意図される。或る値が開示される時には、当業者に依って適切に理解される通り、値「以下」、「値以上」、及び値の間の可能な範囲も又開示されていると言う事も、又理解される。例えば、値「X」が開示される場合には、「X以下」及び「X以上」(例えば、此処でXは数値である)も又開示されている。本願に於いて、データは幾つもの異なるフォーマットで提供されると言う事と、此のデータは終点及び始点並びにデータポイントの何れかの組み合わせの範囲を表すと言う事も又理解される。例えば、具体的なデータポイント「10」及び具体的なデータポイント「15」が開示されている場合には、10及び15超、以上、未満、以下、及び其れに等しい、並びに10及び15の間が開示されていると見做されると言う事が理解される。2つの具体的な単位間の各単位も又開示されていると言う事も又理解される。例えば、10及び15が開示されている場合には、11、12、13、及び14も又開示される。
【0082】
種々の例解的な実施形態が上に記載されているが、請求項に依って記載されている通りの本発明の範囲から外れる事なしに、幾つもの変更の何れかが種々の実施形態に成され得る。例えば、種々の記載される方法ステップが実施される順序は、代替的な実施形態では多くの場合に変更され得、他の代替的な実施形態では、1つ又はより多くの方法ステップが全く省かれ得る。種々のデバイス及びシステム実施形態の任意の特徴は、幾つかの実施形態には包含され得、他の物には包含されずにあり得る。故に、前述の記載は主として例示的な目的で提供されており、其れが請求項に書かれている通りの本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0083】
本願に包含される例及び図示は、限定ではなく例解として、主題が営まれ得る具体的な実施形態を示している。言及された通り、本開示の範囲から外れる事なしに構造的及び論理的置換及び変更が成され得る様に、他の実施形態が利用され得、其れから派生し得る。単に便宜の為に、且つ1つよりも多くが実際に開示されている場合には、本願の範囲を何れかの単一の発明又は発明概念に自発的に限定する事を意図する事なしに、本発明の主題の斯かる実施形態は本願に於いては個々に又は集合的に用語「発明」に依って参照され得る。其れ故に、具体的な実施形態が本願に図示及び記載されたが、同じ目的を達成する様に計算された何れかの改編が、示されている具体的な実施形態と置換され得る。本開示は種々の実施形態の何れか及び全ての適合物又は変形をカバーする事を意図される。上の実施形態の組み合わせ、及び具体的に本願に記載されていない他の実施形態は、上の記載を精査する事に依って当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0084】
101 非接着細胞
103 基板
105 ナノストロー
109 力
601 多孔膜又はナノストロー容器
603 ナノストロー
605 カーゴ
607 細胞
609 余計の重量
617 非接着細胞
621 開口
801 ガラススライド
803 ガラススライド
805 流体チャンバー層(層2)
807 流体チャンバー層(層4)
809 ナノストローを含有するポリマー膜(層3)
911 細胞が流れるチャネル
913 リザーバ
917 ナノストロー
919 有効領域
1101 細胞
1103 デバイス
1105 無菌容器
1201 流体チャネル
1203 非接着細胞
1205 可撓性の基板
1501 ナノストロー
1503 基板
1511 コーティング
E 電場