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特許7104151耐破壊性が高いガラス‐セラミック物品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】耐破壊性が高いガラス‐セラミック物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/12 20060101AFI20220712BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20220712BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20220712BHJP
   C03C 10/04 20060101ALI20220712BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20220712BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220712BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C03C10/12
C03C21/00 101
C03B32/02
C03C10/04
H05K5/02 J
G09F9/00 313
G06F1/16 312G
G06F1/16 312F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020526427
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 US2019040906
(87)【国際公開番号】W WO2020018309
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】62/698,532
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/736,682
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】クリック,キャロル アン
(72)【発明者】
【氏名】デュッタ,インドラジット
(72)【発明者】
【氏名】エドモンストン,ジェームズ ハワード
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フゥ,チアン
(72)【発明者】
【氏名】ギュルビテン,オズグル
(72)【発明者】
【氏名】ホール,ジル マリー
(72)【発明者】
【氏名】ユベール,マチュー ジェラール ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,ダナンジェイ
(72)【発明者】
【氏名】キテルソン,アンドリュー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ローヒット
(72)【発明者】
【氏名】サルツァー,ジョン ロバート ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】スミス,シャーリーン マリー
(72)【発明者】
【氏名】トローサ,マシュー ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】タグル,マシュー アルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】ウォルク,ジェームズ クラーク ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ホイッティア,アラナ マリー
(72)【発明者】
【氏名】ジォン,ジャァミン
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530933(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107902909(CN,A)
【文献】特表2014-515722(JP,A)
【文献】国際公開第2017/030736(WO,A1)
【文献】特表2018-513091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 -14/00
C03C 21/00
C03B 32/02
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス‐セラミック物品を形成する方法であって、前記方法は:
ラス組成物を核形成温度(T)まで加熱して、核形成された結晶化性ガラス組成物を生成するステップ;
前記核形成された結晶化性ガラス組成物を、前記核形成温度より高く結晶化温度より低い中間温度まで加熱し、前記中間温度を所定の期間にわたって維持するステップ;
前記核形成された結晶化性ガラス組成物を前記中間温度から前記結晶化温度(T )まで加熱するステップ;及び
前記結晶化温度を所定の期間(t)にわたって維持して、前記ガラス‐セラミック物品を製造するステップ
を含み、
前記ガラス‐セラミック物品は:
1.0MPa√m超の破壊じん性;及び
0.2未満のヘイズ
を備える、方法。
【請求項2】
ガラス‐セラミック物品を形成する方法であって、前記方法は:
ガラス組成物を核形成温度(T )まで加熱して、核形成された結晶化性ガラス組成物を生成するステップ;
前記核形成された結晶化性ガラス組成物を結晶化温度(T )まで加熱するステップ;及び
前記結晶化温度を所定の期間(t )にわたって維持して、前記ガラス‐セラミック物品を製造するステップ
を含み、
前記ガラス‐セラミック物品は:
1.0MPa√m超の破壊じん性;及び
0.2未満のヘイズ
を備え、
前記核形成温度は520℃~650℃であり、
前記核形成温度まで加熱する前記ステップは、室温から前記核形成温度まで0.01℃/分~50℃/分の加熱速度で加熱するステップを含む、
方法
【請求項3】
ガラス‐セラミック物品を形成する方法であって、前記方法は:
ガラス組成物を核形成温度(T )まで加熱して、核形成された結晶化性ガラス組成物を生成するステップ;
前記核形成された結晶化性ガラス組成物を結晶化温度(T )まで加熱するステップ;及び
前記結晶化温度を所定の期間(t )にわたって維持して、前記ガラス‐セラミック物品を製造するステップ
を含み、
以下の(a)又は(b):
(a)第1の冷却段階において、前記ガラス‐セラミック物品を前記結晶化温度から第1の温度まで第1の冷却速度で冷却するステップ;及び
第2の冷却段階において、前記ガラス‐セラミック物品を前記第1の温度から第2の温度まで第2の冷却速度で冷却するステップ
(ここで前記第1の冷却速度は、前記第2の冷却速度より遅い);
(b)第1の冷却段階において、前記ガラス‐セラミック物品を前記結晶化温度から第1の温度まで第1の冷却速度で冷却するステップ;
中間冷却段階において、前記ガラス‐セラミック物品を前記第1の温度から第2の温度まで第2の冷却速度で冷却するステップ;
第2の冷却段階において、前記ガラス‐セラミック物品を前記第2の温度から第3の温度まで第3の冷却速度で冷却するステップ
(ここで、(i)前記第1の冷却速度は、前記第2の冷却速度及び前記第3の冷却速度より遅く、(ii)前記第2の冷却速度は、前記第3の冷却速度より遅い)
を更に含む、方法であって、
前記ガラス‐セラミック物品は:
1.0MPa√m超の破壊じん性;及び
0.2未満のヘイズ
を備える、方法。
【請求項4】
前記核形成温度を所定の期間にわたって維持して、前記核形成された結晶化性ガラス組成物を製造するステップを更に含み、
前記核形成温度を維持するための前記期間は、1分~6時間である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記核形成された結晶化性ガラス組成物を前記核形成温度から前記中間温度まで加熱するための加熱速度は、前記核形成された結晶化性ガラス組成物を前記中間温度から前記結晶化温度まで加熱するための加熱速度とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ガラス‐セラミック物品をイオン交換処理に供して、前記ガラス‐セラミック物品の第1の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力層を生成するステップを更に含み、
前記イオン交換処理後、前記ガラス‐セラミック物品は70MPa超の最大中央張力及び22J/m超の貯蔵引張エネルギを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記結晶化温度は680℃~800℃であり、
前記結晶化温度を維持するための前記所定の期間は1分~4時間である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記結晶化温度まで加熱する前記ステップは、前記核形成温度から前記結晶化温度まで0.01℃/分~50℃/分の加熱速度で加熱するステップを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記核形成温度を第1の所定の期間(t)にわたって維持して、核形成された結晶化性ガラス組成物を製造するステップを更に含み、
(103-0.260T+0.000203(T-7.96t+0.1532(t-0.019T-0.000008(T-10.03t+0.00597T*t+0.00463t*T+0.01342T*t)<0.2である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下で、2018年7月16日出願の米国仮特許出願第62/698532号、及び2018年9月26日出願の米国仮特許出願第62/736682号の優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は依拠され、参照によりその全体が本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、耐破壊性が向上したガラス‐セラミック物品に関し、より詳細には、高い破壊じん性及び貯蔵引張エネルギ並びに低いヘイズを有するイオン交換済みガラス‐セラミック物品、並びに上記イオン交換済みガラス‐セラミック物品を作製するためのセラミック化スケジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス‐セラミック物品は、移動体電子デバイス用のカバー基板及びハウジングとして使用できる。一部の例では、ガラス‐セラミック物品は、割れの侵入に対する耐性及び落下性能といった機械的特性に関して、ガラスよりも良好な機械的特性を有し得る。割れの侵入に対する耐性及び落下性能は、移動体電子デバイス用のカバー基板及びハウジングに関する重要な機械的特性であり、ガラス‐セラミック物品においてこれらの機械的特性を向上させる必要がある。
【0004】
ガラス‐セラミック物品が、透明度が重要であるカバー基板として使用される場合、ガラス‐セラミックが好適な光学特性を有することが望ましい。この光学特性は、ガラスをガラス‐セラミックに変換する加熱処理によって達成できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラス‐セラミック物品における望ましい光学特性を達成するために、加熱処理を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、ガラス‐セラミック物品は:第1の表面;上記第1の表面の反対側の第2の表面;1つ以上の結晶相;残留ガラス相;上記第1の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力層;70MPa超の最大中央張力;22J/m超の貯蔵引張エネルギ;1.0MPa√m超の破壊じん性であって、上記ガラス‐セラミック物品の中心における組成及び相構成と同一の組成及び相構成を有するガラス‐セラミックに関して測定される、破壊じん性;並びに0.2未満のヘイズを備える。
【0007】
第2の態様では、ガラス‐セラミック物品は:第1の表面;上記第1の表面の反対側の第2の表面;1つ以上の結晶相;残留ガラス相;上記第1の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力層;70MPa超の最大中央張力;22J/m超の貯蔵引張エネルギ;95GPa超のヤング率であって、上記ガラス‐セラミック物品の中心における組成及び相構成と同一の組成及び相構成を有するガラス‐セラミックに関して測定される、ヤング率;並びに0.2未満のヘイズを備える。
【0008】
第3の態様では、ガラス‐セラミック物品は:第1の表面;上記第1の表面の反対側の第2の表面;1つ以上の結晶相;残留ガラス相;上記第1の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力層;70MPa超の最大中央張力;22J/m超の貯蔵引張エネルギ;並びに1.7モル%~4.5モル%のZrOを備え、LiO(モル%)/RO(モル%)の比は0.85超であり、ROはアルカリ金属酸化物の合計である。
【0009】
第4の態様では、ガラス‐セラミック物品を形成する方法は:ガラス組成物を核形成温度まで加熱して、核形成された結晶化性ガラス組成物を生成するステップ;上記核形成された結晶化性ガラス組成物を結晶化温度まで加熱するステップ;及び上記結晶化温度を所定の期間にわたって維持して、上記ガラス‐セラミック物品を製造するステップを含み、上記ガラス‐セラミック物品は:1.0MPa√m超の破壊じん性;及び0.2未満のヘイズを備える。
【0010】
第5の態様では、ガラス‐セラミック物品を形成する方法は:ガラス組成物を核形成温度(T)まで加熱するステップ;上記核形成温度を第1の所定の期間(t)にわたって維持して、核形成された結晶化性ガラス組成物を製造するステップ;上記核形成された結晶化性ガラス組成物を結晶化温度(T)まで加熱するステップ;及び上記結晶化温度を第2の所定の期間(t)にわたって維持して、上記ガラス‐セラミック物品を製造するステップを含み、ここで(103-0.260T+0.000203(T-7.96t+0.1532(t-0.019T-0.000008(T-10.03t+0.00597T*t+0.00463t*T+0.01342T*t)<0.2である。
【0011】
第6の態様では、ガラス‐セラミック物品のヘイズを制御するための方法は:核形成温度(T)、第1の所定の期間(t)、結晶化温度(T)、及び第2の所定の期間(t)を、(103-0.260T+0.000203(T-7.96t+0.1532(t-0.019T-0.000008(T-10.03t+0.00597T*t+0.00463t*T+0.01342T*t)<0.2.となるように選択するステップを含む。
【0012】
更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、またその一部は、「発明を実施するための形態」から、又は以下の「発明を実施するための形態」、特許請求の範囲及び添付の図面を含む本明細書に記載されている実施形態を実践することによって、当業者には容易に明らかとなるだろう。
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」の両方は、単なる例であり、特許請求の範囲の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、更なる理解を提供するために含まれており、また本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は、1つ以上の実施形態を図示しており、本説明と併せて、これら様々な実施形態の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】強化ガラス‐セラミック物品の例示的な断面図
図2】冷却サイクルの例示的な図
図3】別の冷却サイクルの例示的な図
図4A】本明細書中で開示されるガラス‐セラミック物品のうちのいずれを組み込んだ例示的な電子デバイスの平面図
図4B図4Aの例示的な電子デバイスの斜視図
図5】実施例1による応力プロファイルのプロット
図6】実施例2による増大するイオン交換持続時間に対する中央張力のプロット
図7】実施例3によるガラス‐セラミックの相構成
図8】実施例3によるガラス‐セラミックの透過率のプロット
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義及び測定技法
本明細書中で使用される場合、用語「ガラス‐セラミック(glass‐ceramic)」は、前駆体ガラスの制御された結晶化によって調製された、1つ以上の結晶相及び残留ガラス相を有する固体である。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「圧縮深さ(depth of compression)」又は「DOC」は、圧縮応力(CS)層の深さを指し、ガラス‐セラミック物品内の応力が圧縮応力から引張応力に変化する、応力値がゼロとなる深さである。当該技術分野において通常用いられてきた慣例によると、圧縮応力は負(<0)の応力として表され、引張応力は正(>0)の応力として表される。しかしながら本記載全体を通して、特段の注記がない限り、CSは正の値又は絶対値として表される。即ち本明細書中に記載される場合、特段の注記がない限りCS=|CS|である。
【0016】
DOC値及び最大中央張力(CT)値は、エストニアのタリンにあるGlasStress Ltd.から入手可能な散乱光偏光器(scattered light polariscope:SCALP)型番SCALP‐04を使用して測定される。
【0017】
表面CS測定方法は、イオン交換中に、ガラス質領域又は層がガラス‐セラミック物品の表面に形成されるかどうかに依存する。ガラス質層又は領域が存在しない場合、表面CSは、折原製作所(日本)製のFSM‐6000等の市販の機器を用いて、表面応力計(FSM)によって測定される。表面応力測定は、応力光係数(stress optical coefficient:SOC)の正確な測定に依存し、これはガラス‐セラミックの複屈折に関係する。SOCは、ガラスの応力光係数の測定のための標準試験法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress‐Optical Coefficient)」という名称のASTM規格C770‐16(その内容全体は参照により本出願に援用される)に記載された手順C(ガラスディスク法)に従って測定される。ガラス質領域又は層が形成される場合、表面CS(及びガラス質層又は領域のCS)は、プリズム結合測定においてガラス質領域の第1の透過(結合)共鳴の複屈折によって測定され、ガラス質領域の層の深さは、第1の透過共鳴と第2の透過共鳴との間の間隔、又は第1の透過共鳴の幅によって測定される。
【0018】
CS領域の残部のCSは、米国特許第8,854,623号明細書、発明の名称「Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample」(参照によりその全体が本出願に援用される)に記載されている屈折近視野(refracted near‐field:RNF)法によって測定される。RNF測定は、SCALP測定によって提供される最大CT値に対して強制的に平衡価及び較正される。特に、RNF法は:ガラス物品を基準ブロックに隣接して配置するステップ;1Hz~50Hzのレートで直交偏光と直交偏光との間で切り替えられた、偏光切り替え光ビームを生成するステップ;偏光切り替え光ビームの出力の量を測定するステップ;及び偏光切り替え基準信号を生成するステップを含み、ここで、測定された各上記直交偏光のパワー量は、互いの50%以内である。上記方法は更に:偏光切り替え光ビームを、ガラス試料及び基準ブロックを通して、ガラス試料の異なる複数の深さまで透過させるステップ;その後、中継光学系を用いて、透過した上記偏光切り替え光ビームを信号光検出器へと中継し、信号光検出器が偏光切り替え検出器信号を生成するステップを含む。上記方法は:基準信号によって検出器信号を除算して、正規化された検出器信号を形成するステップ;及び上記正規化された検出器信号からガラス試料のプロファイル特性を決定するステップも含む。
【0019】
応力プロファイルは、内部CSのためのRNFと、CT領域のためのSCALPと、表面CSを測定するために使用される方法との組み合わせによって測定できる。
【0020】
貯蔵引張エネルギ(J/m)は、以下の等式(1)を用いて算出される:
貯蔵引張エネルギ(J/m)=[(1-ν)/E]∫(σ)(dt) (1)
ここでνはポアソン比であり、Eはヤング率であり、σは応力であり、tは厚さであり、積分は張力領域のみの厚さにわたって算出される。
【0021】
結晶相及び残留ガラス相の結晶相構成(イオン交換前)及び重量百分率は、リートベルト分析を用いたX線回折(XRD)に基づいて決定される。
【0022】
本明細書中で「破片試験(Fragment Test)」と呼ばれる以下の手順は、破砕時にガラス‐セラミック物品が割れる破片の個数を決定するために使用される。寸法が50mm×50mm×0.8mmであるイオン交換済みガラス‐セラミック物品を、Newport Corporationから入手可能なMVN精密垂直ステージ等の鋼鉄表面上に配置する。重量40gの、炭化タングステンチップを有するスタイラス(Fisher Scientific Industriesから入手可能、商品名TOSCO(登録商標)、メーカー識別番号#13‐378、60°の球錐チップを有する)を、スタイラスを上下に動かす歯車駆動機構上のクランプに接続する。スタイラスのチップをガラス‐セラミック物品に接触させて配置し、続いて歯車機構をガラス‐セラミック物品が破損するまで徐々に回転させる。その後破片の個数を計数する。
【0023】
破壊じん性値(K1C)は、Bubsey, R.T. et al., “Closed‐Form Expressions for Crack‐Mouth Displacement and Stress Intensity Factors for Chevron‐Notched Short Bar and Short Rod Specimens Based on Experimental Compliance Measurements,” NASA Technical Memorandum 83796, pp. 1‐30(1992年10月)の等式5を用いてY*を計算することを除いて、Reddy, K.P.R. et al, “Fracture Toughness Measurement of Glass and Ceramic Materials Using Chevron‐Notched Specimens,” J. Am. Ceram. Soc., 71 [6], C‐310‐C‐313 (1988)に開示されているシェブロン切欠き付きショートバー(chevron notched short bar:CNSB)法によって測定した。(K1C)は、イオン交換されていないガラス‐セラミック物品上で測定される。イオン交換済みガラス‐セラミック物品に関して、K1Cは、イオン交換済みガラス‐セラミック物品の中心(厚さの半分)における組成及び結晶相構成と同一の組成及び結晶相構成を有する非イオン交換済みガラス‐セラミック物品上で測定できる。イオン交換済みガラス‐セラミック物品の中心の組成は、マイクロプローブで、表面から表面への線状走査を実施して、中心における組成を決定した後、中心における結晶相構成をX線回折から決定することによって、決定できる。
【0024】
本開示において列挙されるヤング率値は、ASTM E2001‐13に記載される一般的なタイプの超音波共鳴法によって測定された値を指す。ヤング率は、イオン交換されていないガラス‐セラミック物品上で測定する。イオン交換済みガラス‐セラミック物品に関して、ヤング率は、組成及び結晶相構成イオン交換済みガラス‐セラミック物品の中心(厚さの半分)における組成及び結晶相構成と同一の組成及び結晶相構成を有する非イオン交換済みガラス‐セラミック物品上で測定できる。イオン交換済みガラス‐セラミック物品の中心の組成は、マイクロプローブで、表面から表面への線状走査を実施して、中心における組成を決定した後、中心における結晶相構成をX線回折から決定することによって、決定できる。
【0025】
ガラス‐セラミック物品のヘイズは、BYK Gardner社のHaze‐Gard i等のヘイズメータを用いて測定される。
【0026】
本明細書中で用いられる場合、透過率は全透過率を指し、150mm積分球を有するPerkin Elmer Lambda 950 UV/VIS/NIR分光光度計で測定される。試料を、広角の散乱光の収集を可能とする球の入口ポートに設置する。球の出口ポートを覆うスペクトラロン標準反射板ディスクを用いて全透過率データを収集した。全透過率のパーセント(%T)を、オープンビームベースライン測定値に対して算出した。
【0027】
ガラス‐セラミック物品の特性の概観
これより、本発明の1つ以上の好ましい実施形態について詳述する。上記1つ以上の好ましい実施形態の例は、添付の図面に図示されている。可能な限り、同一の又は同様の部品を指すために、図面全体を通して同一の参照番号を使用する。
【0028】
ガラス‐セラミック物品は、移動体電子デバイス用のカバー基板及び/又はハウジングとして使用するために調整できる属性を有する。例えば、理論に拘束されることなく、高い破壊じん性及び/又はヤング率を有するガラス‐セラミック物品は、割れの侵入に対する耐性及び落下性能を提供できる。このようなガラス‐セラミック物品を、例えばイオン交換によって化学強化すると、割れの侵入に対する耐性及び落下性能を更に高めることができる。高い破壊じん性及び/又はヤング率はまた、ガラス‐セラミック物品の破砕時の望ましい断片化を維持しながら、化学強化によってガラス‐セラミック物品に付与できる貯蔵引張エネルギ及び最大中央張力の量を増大させることができる。別の例として、透明度及びヘイズといったガラス‐セラミック物品の光学特性は、ガラス物品をガラス‐セラミック物品に変えるために使用される加熱/セラミック化スケジュールを調整することによって、及びガラス‐セラミック物品の特性を設計又は制御するためのイオン交換によるもの等の化学強化によって、調整できる。
【0029】
図1は、厚さ(t)によって隔てられた第1の表面102及び反対側の第2の表面104を有する、強化ガラス‐セラミック物品100の例示的な断面側面図である。いくつかの実施形態では、強化ガラス‐セラミック物品100はイオン交換されており、第1の表面102から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力(CS)層106(又は第1の領域)を有する。いくつかの実施形態では、図1に示すように、ガラス‐セラミック物品100は、第2の表面104から圧縮深さDOC’まで延在する圧縮応力(CS)層108も有する。DOCとDOC’との間に、引張応力下にある中央張力領域110も存在する。いくつかの実施形態では、DOC及びDOC’は、0*t超~0.3*t、0*t~0.25*t、0*t~0.2*t、0*t~0.15*t、0*t~0.1*t、0*t~0.05*t、0.05*t~0.3*t、0.05*t~0.25*t、0.05*t~0.2*t、0.05*t~0.15*t、0.05*t~0.1*t、0.1*t~0.3*t、0.1*t~0.25*t、0.1*t~0.2*t、0.1*t~0.15*t、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内であってよく、ここでtはガラス‐セラミック物品100の厚さである。例えば、圧縮応力層(DOC、DOC’)の深さは、0.05*t超、0.06*t、0.07*t、0.08*t、0.09*t、0.1*t、0.11*t、0.12*t、0.13*t、0.14*t、0.15*t、0.16*t、0.17*t、0.18*t、0.19*t、0.2*t、0.21*t、0.22*t、0.23*t、0.24*t、0.25*t、0.26*t、0.27*t、0.28*t、0.29*t、又は0.3*tとすることができる。他の実施形態では、圧縮応力層(DOC、DOC’)の深さは、0.05mm~0.6mm、0.05mm~0.5mm、0.05mm~0.4mm、0.05mm~0.3mm、0.05mm~0.2mm、0.05mm~0.1mm、0.1mm~0.6mm、0.1mm~0.5mm、0.1mm~0.4mm、0.1mm~0.3mm、0.2mm~0.6mm、0.2mm~0.5mm、0.2mm~0.4mm、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内である。いくつかの実施形態では、圧縮応力層の深さは、0.05mm以上、0.06mm、0.07mm、0.08mm.0.09mm、0.1mm.0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mm、0.35mm、0.4mm.0.45mm、0.5mm、0.55mm又は0.6mmである。いくつかの実施形態では、DOCはDOC’と同一であってよい。他の実施形態では、DOCはDOC’と異なっていてよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、最大中央張力(CT)は70MPa超~180MPaである。いくつかの実施形態では、最大CTは、70MPa以上、80MPa、90MPa、100MPa、110MPa、120MPa、130MPa、140MPa、150MPa、160MPa、又は170MPaである。いくつかの実施形態では、最大CTは、70MPa超~180MPa、70MPa超~170MPa、70MPa超~160MPa、70MPa超~150MPa、70MPa超~140MPa、80MPa超~180MPa、80MPa超~170MPa、80MPa超~160MPa、80MPa超~150MPa、80MPa超~140MPa、90MPa超~180MPa、90MPa超~170MPa、90MPa超~160MPa、90MPa超~150MPa、90MPa超~140MPa、100MPa~180MPa、100MPa~170MPa、100MPa~160MPa、100MPa~150MPa、100MPa~140MPa、110MPa~180MPa、110MPa~170MPa、110MPa~160MPa、110MPa~150MPa、110MPa~140MPa、120MPa~180MPa、120MPa~170MPa、120MPa~160MPa、120MPa~150MPa、120MPa~140MPa、130MPa~180MPa、130MPa~170MPa、130MPa~1500MPa、又はその間のいずれの範囲及び部分範囲内とすることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品の貯蔵引張エネルギは、22J/m超~100J/m、22J/m超~90J/m 22J/m超~80J/m 22J/m超~70J/m 22J/m超~65J/m 22J/m超~60J/m 22J/m超~55J/m 22J/m超~50J/m、22J/m超~45J/m、22J/m超~40J/m、22J/m超~35J/m、22J/m超~30J/m、25J/m~100J/m、25J/m~90J/m、25J/m~80J/m、25J/m~70J/m、25J/m~65J/m、25J/m~60J/m、25J/m~55J/m、25J/m~50J/m、25J/m~45J/m、25J/m~40J/m、25J/m~35J/m、25J/m~30J/m、30J/m~100J/m、30J/m~90J/m、30J/m~80J/m、30J/m~70J/m、30J/m~65J/m、30J/m~60J/m、30J/m~55J/m、30J/m~50J/m、30J/m~45J/m、30J/m~40J/m、30J/m~35J/m、35J/m~60J/m、35J/m~100J/m、35J/m~90J/m、35J/m~80J/m、35J/m~70J/m、35J/m~65J/m、35J/m~60J/m、35J/m~55J/m、35J/m~50J/m、35J/m~45J/m、35J/m~40J/m、40J/m~100J/m、40J/m~90J/m、40J/m~80J/m、40J/m~70J/m、40J/m~65J/m、40J/m~60J/m、40J/m~55J/m、40J/m~50J/m、40J/m~45J/m、45J/m~100J/m、45J/m~90J/m、45J/m~80J/m、45J/m~70J/m、45J/m~65J/m、45J/m~60J/m、45J/m~55J/m、45J/m~50J/m、65J/m~100J/m、65J/m~90J/m、65J/m~80J/m、65J/m~70J/m、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内である。いくつかの実施形態では、貯蔵引張エネルギは、22J/m以上、23J/m、24J/m、25J/m、30J/m、35J/m、40J/m、45J/m、50J/m、55J/m、60J/m、65J/m、70J/m、75J/m、80J/m、85J/m、90J/m、又は95J/mとすることができる。いくつかの実施形態では、例えば破片試験下で5個未満の破片が望ましい場合、ガラス‐セラミック物品の貯蔵引張エネルギは22J/m超~65J/mである。
【0032】
いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品の厚さtは、0.2mm~4mm、0.2mm~3mm、0.2mm~2mm、0.2mm~1.5mm、0.2mm~1mm、0.2mm~0.9mm、0.2mm~0.8mm、0.2mm~0.7mm、0.2mm~0.6mm、0.2mm~0.5mm、0.3mm~4mm、0.3mm~3mm、0.3mm~2mm、0.3mm~1.5mm、0.3mm~1mm、0.3mm~0.9mm、0.3mm~0.8mm、0.3mm~0.7mm、0.3mm~0.6mm、0.3mm~0.5mm、0.4mm~4mm、0.4mm~3mm、0.4mm~2mm、0.4mm~1.5mm、0.4mm~1mm、0.4mm~0.9mm、0.4mm~0.8mm、0.4mm~0.7mm、0.4mm~0.6mm、0.5mm~4mm、0.5mm~3mm、0.5mm~2mm、0.5mm~1.5mm、0.5mm~1mm、0.5mm~0.9mm、0.5mm~0.8mm、0.5mm~0.7mm、0.8mm~4mm、0.8mm~3mm、0.8mm~2mm、0.8mm~1.5mm、0.8mm~1mm、1mm~2mm、1mm~1.5mm、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内である。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品は、略平面状又は平坦であってよい。他の実施形態では、ガラス‐セラミック物品を成形してよく、例えばガラス‐セラミック物品は2.5D又は3D形状を有してよい。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品の厚さは均一であってよく、他の実施形態では、ガラス‐セラミック物品の厚さは均一でなくてよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品の破壊じん性は、1.0MPa√m~2.0MPa√m、1.1MPa√m~2.0MPa√m、1.2MPa√m~2.0MPa√m、1.3MPa√m~2.0MPa√m、1.4MPa√m~2.0MPa√m、1.5MPa√m~2.0MPa√m、1.0MPa√m~1.9MPa√m、1.1MPa√m~1.9MPa√m、1.2MPa√m~1.9MPa√m、1.3MPa√m~1.9MPa√m、1.4MPa√m~1.9MPa√m、1.5MPa√m~1.9MPa√m、1.0MPa√m~1.8MPa√m、1.1MPa√m~1.8MPa√m、1.2MPa√m~1.8MPa√m、1.3MPa√m~1.8MPa√m、1.4MPa√m~1.8MPa√m、1.5MPa√m~1.8MPa√m、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内である。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品の破壊じん性は、1.0MPa√m以上、1.1MPa√m、1.2MPa√m、1.3MPa√m、1.4MPa√m、1.5MPa√m、1.6MPa√m、1.7MPa√m、1.8MPa√m、又は1.9MPa√mである。理論に拘束されることなく、この範囲内の破壊じん性を有するガラス‐セラミック物品は、破片試験下で5個未満の破片をもたらす貯蔵引張エネルギの増大を可能とする。
【0034】
いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品のヤング率は、95GPa~110GPa、95GPa~105GPa、95GPa~100GPa、100GPa~110GPa、100GPa~105GPa、105GPa~110GPa並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内である。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品のヤング率は、95Gpa以上、96GPa、97GPa、98GPa、99GPa、100GPa、101GPa、102GPa、103GPa、104GPa、105GPa、106GPa、107GPa、108GPa、又は109Gpaである。理論に拘束されることなく、この範囲内の破壊じん性を有するガラス‐セラミック物品は、破片試験下で5個未満の破片をもたらす貯蔵引張エネルギの増大を可能とする。
【0035】
いくつかの実施形態では、上述の(50mm×50mm×0.8mmの試料に基づいた)破片試験を適用すると、ガラス‐セラミック物品は割れて、5個未満の破片、4個未満の破片、又は3個未満の破片となる。
【0036】
組成
本明細書に記載の前駆体ガラス及びガラス‐セラミックは一般に、リチウム含有アルミノシリケートガラス又はガラス‐セラミックとして説明でき、SiO、Al、及びLiOを含む。SiO、Al、及びLiOに加えて、本明細書中で具現化されるガラス及びガラス‐セラミックは更に、NaO、KO、RbO、又はCsOといったアルカリ塩、並びにP、並びにZrO及び以下に記載の多数の他の成分を含有してよい。いくつかの実施形態では、前駆体ガラス(セラミック化前)及び/又はガラス‐セラミック(セラミック化後)は、酸化物基準のモル百分率で以下の組成を有してよい:
SiO:60~72%;
Al:0~6%;
LiO:20~32%;
:0~2%;
NaO:0~2%;
O:0~2%;
:0.7~2.2%;及び
ZrO:1.7~4.5%
いくつかの実施形態では、前駆体ガラス及び/又はガラス‐セラミックは、酸化物基準のモル百分率で以下の追加の成分を有してよい:
SnO:0.05~0.5%;
Fe:0~0.5%;
MgO:0~1%;
ZnO:0~1%;
BaO:0~1%
SrO:0~1%;
La:0~1%;
GeO:0~1%;
Ta:0~1%
例示的な前駆体ガラス及びガラス‐セラミックの組成は、金属酸化物基準のモル%で以下の表1に列挙されている。
【0037】
【表1-1】
【0038】
【表1-2】
【0039】
ガラスの形成に関与する酸化物であるSiOは、ガラス及びガラス‐セラミックのネットワーク構造を安定化させるよう機能できる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約60~約72モル%のSiOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約60~約72モル%、約60~約70モル%、約60~約67モル%、約60~約65モル%、65~約72モル%、約65~約70モル%、約65~約67モル%、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内のSiOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、又は72モル%のSiOを含む。
【0040】
粘度及び機械的性能に関して、粘度及び機械的性能は、ガラス組成物の影響を受ける。ガラス及びガラス‐セラミックにおいて、SiOは前駆体ガラスのための主要なガラス形成酸化物として作用し、またガラス及びガラス‐セラミックのネットワーク構造を安定化させるよう機能できる。純粋なSiOガラス又は高SiOガラスの融点は不必要に高いため、SiOの量を制限して、融点(200ポアズ温度)を制御してよい。
【0041】
Alもまた、ネットワークに安定化をもたらすことができ、また改善された機械的特性及び化学的耐久性を提供できる。しかしながらAlの量が多すぎる場合、リチウムシリケート結晶の画分が連結構造を形成できない程度まで減少し得る。Alの量を調整することにより、粘度を制御できる。更に、Alの量が多すぎる場合、溶融物の粘度も一般に増大する。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約0~約6モル%並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内のAlを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約1、2、3、4、5、又は6モル%のAlを含むことができる。
【0042】
本明細書に記載のガラス及びガラス‐セラミックでは、LiOは結晶相の形成を補助する。具現化されるいくつかの組成物では、ガラス又はガラスセラミックは、約20モル%~約32モル%のLiOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約20~約32モル%、約20~約30モル%、約20~約27モル%、約20~約25モル%、約25~約32モル%、約25~約30モル%、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内のLiOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、又は32モル%のLiOを含むことができる。
【0043】
上述のように、LiOは一般に、具現化されるガラス‐セラミックを形成するために有用であるが、他のアルカリ酸化物は、ガラス‐セラミックの形成を減少させ、ガラス‐セラミック中にアルミノシリケート残留ガラスを形成する傾向がある。NaO、KO、RbO、CsOといった他のアルカリ金属酸化物の量が多すぎるほど、結晶化中の変形及び機械的特性の観点から望ましくない微小構造をもたらし得る望ましくない残留ガラスの量が多くなることが分かっている。残留ガラスの組成を調整することにより、結晶化中の粘度を制御して、変形若しくは望ましくない熱膨張を最小化する、又は微小構造特性を制御することができる。従って、一般に、本明細書中で望ましい組成物は、少量の非リチウムアルカリ酸化物を有する。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約0.85超~1.0、0.85超~0.97、0.85超~0.95、0.86~1.0、0.86~0.97、0.86~0.95、0.87~1.0、0.87~0.97、0.87~0.95、0.88~1.0、0.88~0.97、0.88~0.95、0.89~1.0、0.89~0.97、0.89~0.95、0.9~1.0、0.9~0.97、0.9~0.95、0.91~1.0、0.91~0.97、0.91~0.95、0.92~1.0、0.92~0.97、0.93~1.0、0.93~0.97、0.94~1.0、0.95~1.0、0.96~1.0、0.97~1.0並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内のLiO(モル%)/RO(モル%)の比を有することができる。ROは、LiO、NaO、KO、RbO、及びCsOを含む全てのアルカリ金属酸化物の合計である。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約0.85以上、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、又は0.99のLiO(モル%)/RO(モル%)の比を有することができる。
【0044】
ガラス及びガラス‐セラミック組成物は、Pを含むことができる。Pは、核形成剤として機能して、バルク核形成を生成できる。Pの濃度が低すぎる場合、前駆体ガラスは結晶化するものの、(粘度が低いため)高温において表面から内部へと結晶化するのみであり、脆弱で多くの場合変形した本体が得られる。しかしながら、Pの濃度が高すぎる場合、前駆体ガラス形成中に冷却される際に、失透を制御するのが困難になり得る。具現化された組成物は、0.7~約2.2モル%、0.7~約2モル%、0.7~約1.5モル%、0.7~約1モル%、約1~約2.2モル%、約1~約2モル%、約1.5~約2.2モル%、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内のPを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、又は2.2モル%のPを含むことができる。
【0045】
本明細書に記載されるガラス及びガラス‐セラミックでは、ZrOは、形成中及び液相線温度が低下する間のガラスの失透を大幅に低減することにより、LiO‐Al‐SiO‐Pガラスの安定性を改善できることが一般に分かっている。理論に拘束されることなく、ZrOの量の増大により、残留ガラス中のアルカリ金属酸化物の量が増大する。ZrOの添加は結晶の粒径の低減を助けることもでき、これは透明なガラスセラミックの形成を補助する。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約1.7~約4.5モル%、約1.7~約4モル%、約1.7~約3.5モル%、約1.7~約3モル%、約1.7~2.5モル%、約2~約4.5モル%、2~約4モル%、約2~約3.5モル%、約2~約3モル%、約2.5~約4.5モル%、約2.5~4モル%、約2.5~約3.5モル%、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内のZrOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、又は4.5モル%のZrOを含むことができる。
【0046】
は、融点が低い前駆体ガラスを提供するのに役立つ。更に、前駆体ガラス、従ってガラス‐セラミックへのBの添加は、連結結晶微小構造の達成を助け、ガラス‐セラミックの耐損傷性を改善することもできる。残留ガラス中のホウ素がアルカリ酸化物又は二価カチオン酸化物によって電荷平衡されない場合、ホウ素は三方配位状態(又は三配位ホウ素)となり、これにより、ガラスの構造が開放状態となる。これらの三配位ホウ素の周りのネットワークは、四面体配位(又は四配位)ホウ素ほど強固でない。理論に拘束されることなく、三配位ホウ素を含む前駆体ガラス及びガラス‐セラミックは、割れが形成される前にある程度の変形に耐えることができると考えられる。多少の変形に耐えることにより、ビッカース押込み割れ開始値が上昇する。三配位ホウ素を含む前駆体ガラス及びガラス‐セラミックの破壊じん性も増大し得る。理論に拘束されることなく、ガラス‐セラミック(及び前駆体ガラス)の残留ガラス中のホウ素の存在は、残留ガラス(又は前駆体ガラス)の粘度を低下させ、これによりケイ酸リチウム結晶、特に高いアスペクト比を有する大きな結晶の成長が促進されると考えられる。(四配位ホウ素に対して)三配位ホウ素の量が多いことにより、比較的大きなビッカース押込み割れ開始荷重を呈するガラス‐セラミックが得られると考えられる。いくつかの実施形態では、(合計Bのパーセントとしての)三配位ホウ素の量は、約40%以上、50%以上、75%以上、約85%以上、又は約95%以上でさえあってよい。ホウ素の量は一般に、セラミック化されたバルクガラス‐セラミックの化学的耐久性及び機械的強度を維持するよう制御されるべきである。
【0047】
1つ以上の実施形態では、本明細書中のガラス及びガラス‐セラミックは、0~約2モル%並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内のBを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約0、>0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2モル%のBを含むことができる。
【0048】
1つ以上の実施形態では、本明細書中のガラス及びガラス‐セラミックは、清澄剤として使用される0~約0.5モル%のSnOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、0~約0.5モル%、0~約0.4モル%、0~約0.3モル%、0~約0.2モル%、0~約0.1モル%、約0.05~約0.5モル%、0.05~約0.4モル%、0.05~約0.3モル%、0.05~約0.2モル%、0.05~約0.1モル%、約0.1~約0.5モル%、約0.1~約0.4モル%、約0.1~約0.3モル%、約0.1~約0.2モル%、約0.2~約0.5モル%、約0.2~約0.4モル%、約0.2~約0.3モル%、約0.3~約0.5モル%、約0.3~約0.4モル%、約0.4~約0.5モル%、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内のSnOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は約0、>0、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5モル%のSnOを含むことができる。
【0049】
酸化鉄(例えばFe)、酸化銅(例えばCu)、酸化クロム(例えばCr)及び/又は酸化モリブデン(例えばMoO)を含むがこれらに限定されない遷移金属酸化物の量が高すぎる場合、これらはガラス‐セラミックの色に影響し得、従ってガラス‐セラミックの透明度に影響し得る。いくつかの実施形態では、ガラス及び/又はガラス‐セラミック組成物は、0.5モル%未満、0.4モル%、0.3モル%、0.2モル%、0.1モル%、又は0.05モル%のFeCu、Cr、及び/又はMoOを個別に又は総計として含むことができる。
結晶化/セラミック化のための熱処理
1つ以上の実施形態では、ガラス‐セラミックを作製するためのプロセスは、前駆体ガラスを1つ以上の予め選択した温度で1つ以上の予め選択した時間にわたって熱処理して、(例えば1つ以上の組成物、量、形態、径又は径分布等を有する)ガラスの均質化及び1つ以上の結晶相の結晶化(即ち核形成及び成長)を誘発するステップを含む。いくつかの実施形態では、熱処理は:(i)前駆体ガラスを0.01~50℃/分の速度で核形成温度(Tn)まで加熱するステップ;(ii)結晶化性ガラスを第1の所定の期間(t)にわたって核形成温度に維持して、核形成された結晶化性ガラス組成物を製造するステップ;(iii)上記核形成された結晶化性ガラスを、約0.01℃/分~約50℃/分の速度で結晶化温度(Tc)まで加熱するステップ;(iv)上記核形成された結晶化性ガラスを、第2の所定の期間(t)にわたって上記結晶化温度に維持して、本明細書に記載のガラス‐セラミック物品を製造するステップ;及び(v)形成されたガラス‐セラミックを室温まで冷却するステップを含んでよい。前述の実施形態における用語「セラミック化(ceram又はceramming)」は、ステップ(iii)、(iv)及び任意に(v)をまとめて指すために使用できる。いくつかの実施形態では、上記核形成温度は、500℃~650℃(例えば500℃、510℃、520℃、530℃、540℃、550℃、560℃、570℃、580℃、590℃、600℃、610℃、620℃、630℃、640℃、若しくは650℃)並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内とすることができ;並びに/又は上記結晶化温度は、680℃~800℃(例えば680℃、690℃、700℃、710℃、720℃、730℃、740℃、750℃、760℃、770℃、780℃、790℃、若しくは800℃)並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内とすることができる。いくつかの実施形態では、上記核形成温度を維持するための上記第1の所定の時間は、1分~6時間(例えば1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、5.5時間、又は6時間)並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内とすることができる。いくつかの実施形態では、上記結晶化温度を維持するための上記第2の所定の時間は、1分~4時間(例えば1分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、又は4時間)並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内とすることができる。いくつかの実施形態では、上記結晶化温度は、透明なガラス‐セラミックと半透明/不透明なガラス‐セラミックとのいずれが望ましいかに依存する。いくつかの実施形態では、約750℃以下の結晶化温度は透明なガラスセラミックをもたらし、約750℃超の結晶化温度は半透明の/不透明なガラス‐セラミックをもたらす。いくつかの実施形態では、ガラスを室温から570℃の核形成温度まで5℃/分の速度で加熱でき、核形成温度に4時間維持し、その後740℃の結晶化温度まで5℃/分の速度で加熱し、結晶化温度に1時間維持できる。
【0050】
いくつかの実施形態では、核形成温度と結晶化温度との間に1つ以上の追加の温度保持があってよい。理論に拘束されることなく、上記追加の温度保持により、(光学リターダンスによって測定される)残留応力、及びセラミック化プロセスによって誘発される歪み/変形が減少する。従って、いくつかの実施形態では、物品を核形成温度に維持した後、上記物品を1つ以上の中間温度(上記中間温度は核形成温度から結晶化温度の範囲である)まで加熱してよく、所定の時間(例えば、10分~4時間並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内)にわたって上記1つ以上の中間温度に保持し、その後結晶化温度まで加熱してよい。以下の実施例5は、中間温度保持を含む例示的な3段階熱処理サイクルを実証する。
【0051】
いくつかの実施形態では、組成物を核形成温度まで加熱した後、上記組成物を上記核形成温度に維持せず、結晶化温度に到達するまで1つ以上の中間温度まで連続的に加熱する(即ち温度が上記中間温度又は上記核形成温度のいずれにも維持されない)。いくつかの実施形態では、室温から核形成温度までの加熱速度、核形成温度から中間温度までの加熱速度、中間温度から結晶化温度までの加熱速度は様々である。複数の中間温度が存在する実施形態では、個々の中間温度の間の加熱速度も様々であってよい。以下の実施例6は、このような例示的な熱処理スケジュールを実証する。いくつかの実施形態では、加熱速度は様々であってよく、約0.01℃/分~約50℃/分、約0.01℃/分、約0.1℃/分、約0.5℃/分、約1℃/分、約2℃/分、約3℃/分、約4℃/分、約5℃/分、約10℃/分、約15℃/分、約20℃/分、約25℃/分、約30℃/分、約40℃/分、約45℃/分、約50℃/分、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内であってよい。いくつかの実施形態では、加熱速度は、ある加熱速度から別の加熱速度まで上昇させてよい。他の実施形態では、加熱速度は、ある加熱速度から別の加熱速度まで低下させてよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品は、結晶化温度に保持した後で冷却される。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品は、一定の冷却速度で1段階で、それぞれ異なる冷却速度を用いて2段階で、又はそれぞれ異なる冷却速度を用いて3段階以上で、室温まで冷却してよい。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品は、複数の物品間の温度勾配を最小化するように、及び複数の物品間の残留応力の差を最小化するように制御された速度で、結晶化温度から冷却される。温度勾配及び残留応力の差は、冷却中に物品の歪みをもたらす場合がある。従って、冷却を制御して温度勾配及び残留応力を制御することにより、ガラス‐セラミック物品の歪みを最小化することもできる。
【0053】
いくつかの実施形態では、例えば図2に示すように、冷却は2つの冷却段階で実施してよい。このような実施形態では、第1の冷却段階では、温度は、Tmax(即ちT‐結晶化温度)からTまで第1の冷却速度で冷却される。第2の冷却段階では、温度は、Tからおおよそ室温(TRoom)まで第2の冷却速度で冷却される。図2に示すように、第1の冷却速度は、第2の冷却速度より遅い。第1の段階の間の第1の冷却速度は、ガラス‐セラミック物品にわたる温度勾配を最小化するために遅くする。いくつかの実施形態では、第1の冷却段階から第2の冷却段階への移行が発生する温度Tは、その温度を下回るとガラス‐セラミック物品が弾性材料として挙動する温度に基づいて決定される。理論に拘束されることなく、第1の冷却段階の比較的遅い冷却速度は、ガラス‐セラミック物品が、当該ガラス‐セラミック物品が弾性材料として挙動する温度に到達するまで、温度勾配を制御するためだけに必要であると考えられる。いくつかの実施形態では、温度Tは、450℃~650℃、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内であってよい。いくつかの実施形態では、温度Tは、650℃以下、640℃、630℃、620℃、610℃、600℃、590℃、580℃、570℃、560℃、550℃、540℃、530℃、520℃、510℃、500℃、490℃、480℃、470℃、460℃、又は450℃であってよい。いくつかの実施形態では、第1の冷却段階における温度降下(Tmax-T)は、第2の冷却段階における温度降下(T-TRoom)より小さい。理論に拘束されることなく、第1の冷却段階において発生する温度勾配は、室温に達したときの(光学リターダンスの形態の)ガラス‐セラミック物品中の残留応力(従って歪み)に対する影響が、第2の冷却段階において発生する温度勾配に比べて大きいと考えられる。従って、いくつかの実施形態では、第1の冷却段階における制御された冷却の後、ガラス‐セラミック物品を、制御されていない環境において室温まで冷却してよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、例えば図3に示すように、冷却サイクルは、全部で3つの冷却段階として、第1の冷却段階と第2の冷却段階との間に中間冷却段階を有してよい。このような実施形態では、第1の冷却段階では、温度は、Tmax(即ちT‐結晶化温度)からTまで第1の冷却速度で冷却される。中間冷却段階では、温度は、TからTまで第2の冷却速度で冷却される。いくつかの実施形態ではTは、ガラス‐セラミックの歪み点未満、例えば約50℃~約200℃であってよい。第2の段階では、温度は、Tから約室温(TRoom)まで第3の冷却速度で冷却される。図3に示すように、冷却速度は、(i)第1の冷却段階中の第1の冷却速度が、中間冷却段階中の第2の冷却速度及び第2の冷却段階中の第3の冷却速度より小さく、(ii)中間冷却段階中の第2の冷却速度が第2の冷却段階中の第3の冷却速度より小さくなるように、段階毎に上昇する。いくつかの実施形態では、(i)第1の冷却段階における温度降下(Tmax-T)は、中間冷却段階における温度降下(T-T)及び第2の冷却段階における温度降下(T-TRoom)より小さく、(ii)中間冷却段階における温度降下(T-T)は第2の冷却段階における温度降下(T-TRoom)より小さい。中間冷却段階により、温度勾配及び残留応力を依然として最小化しながら、より迅速な冷却サイクルが可能となる。いくつかの実施形態では、Tmaxは約740℃であってよく、Tは約640℃であってよく、Tは約580℃であってよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、冷却サイクルに複数の冷却段階を有する場合、第1の冷却段階中のガラス‐セラミック物品の平面にわたる温度勾配は、20℃未満、19℃未満、18℃未満、17℃未満、16℃未満、15℃未満、14℃未満、13℃未満、12℃未満、11℃未満、10℃未満、9℃未満、8℃未満、7℃未満、6℃未満、5℃未満、4℃未満、若しくは3℃未満であってよく、及び/又は室温における光学リターダンスは、厚さ1mmあたり40nm未満、厚さ1mmあたり35nm未満、厚さ1mmあたり30nm未満、厚さ1mmあたり25nm未満、厚さ1mmあたり200nm未満、厚さ1mmあたり15nm未満、厚さ1mmあたり14nm未満、厚さ1mmあたり13nm未満、厚さ1mmあたり12nm未満、厚さ1mmあたり11nm未満、厚さ1mmあたり10nm未満、厚さ1mmあたり9nm未満、厚さ1mmあたり8nm未満、厚さ1mmあたり7nm未満、厚さ1mmあたり6nm未満、厚さ1mmあたり5nm未満、厚さ1mmあたり4nm未満、若しくは厚さ1mmあたり3nm未満であってよい。光学リターダンスは、Stress Photonics, Incから入手可能なグレーフィールド偏光器GFP‐1400等の光弾性応力測定システムを用いて測定してよい。
【0056】
上述の熱処理を前駆体ガラスに実施すると、得られたガラス‐セラミックは1つ以上の結晶相及び残留ガラス相を有する。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミックは、以下の例示的な結晶相:二ケイ酸リチウム、ペタライト、β‐スポジュメン固溶体、β‐石英固溶体、リチウムメタシリケート、バージライト、クリストバライト、リン酸リチウム、バデライト及びジルコニア、並びにこれらのいずれの組み合わせを含有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、二ケイ酸リチウムは、重量百分率が最も高い結晶相である。二ケイ酸リチウム、LiSiは、{Si}四面体配列の波板をベースとする斜方晶系結晶である。この結晶は典型的には、際立ったへき開面を有する管状又はラス状である。二ケイ酸リチウムをベースとするガラス‐セラミックは、ランダムに配向された連結結晶(これらの結晶の周りの曲がりくねった経路を介して材料中に割れを伝播させる結晶構造)であるその微小構造により、高い本体強度及び破壊じん性を含む非常に望ましい機械的特性を提供する。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック組成物中の二ケイ酸リチウム結晶相の重量百分率は、約20~約60重量%、約20~約55重量%、約20~約50重量%、約20~約45重量%、約20~約40重量%、約20~約35重量%、約20~約30重量%、約20~約25重量%、約25~約60重量%、約25~約55重量%、約25~約50重量%、約25~約45重量%、約25~約40重量%、約25~約35重量%、約25~約30重量%、約30~約60重量%、約30~約55重量%、約30~約50重量%、約30~約45重量%、約30~約40重量%、約30~約35重量%、約35~約60重量%、約35~約55重量%、約35~約50重量%、約35~約45重量%、約35~約40重量%、約40~約60重量%、約40~約55重量%、約40~約50重量%、約40~約45重量%、約45~約60重量%、約45~約55重量%、約45~約50重量%、約50~約60重量%、約50~約55重量%、又は約55~約60重量%とすることができる。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミックは、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60重量%の二ケイ酸リチウム結晶相を有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、ペタライトは、重量百分率が最も高い結晶相である。ペタライト、LiAlSi10は、Li及びAl四面体によって連結された、折り重なったSi層を有する層状構造を備えた三次元フレームワーク構造を有する単斜晶である。Liは、酸素を伴った四面体配位である。鉱物ペタライトはリチウム源であり、ガラス‐セラミック又はセラミック部品の熱ダウンショック耐性を改善するための低熱膨張相として使用される。更に、ペタライト相をベースとするガラス‐セラミック物品は、塩浴中で化学強化でき、上記化学強化中に、Na(及び/又はK)がペタライト構造のLiを置換し、これは表面圧縮及び強化をもたらす。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック組成物中のペタライト結晶相の重量百分率は、約20~約70重量%、約20~約65重量%、約20~約60重量%、約20~約55重量%、約20~約50重量%、約20~約45重量%、約20~約40重量%、約20~約35重量%、約20~約30重量%、約20~約25重量%、約25~約70重量%、約25~約65重量%、約25~約60重量%、約25~約55重量%、約25~約50重量%、約25~約45重量%、約25~約40重量%、約25~約35重量%、約25~約30重量%、約30~約70重量%、約30~約65重量%、約30~約60重量%、約30~約55重量%、約30~約50重量%、約30~約45重量%、約30~約40重量%、約30~約35重量%、約35~約70重量%、約35~約65重量%、約35~約60重量%、約35~約55重量%、約35~約50重量%、約35~約45重量%、約35~約40重量%、約40~約70重量%、約40~約65重量%、約40~約60重量%、約40~約55重量%、約40~約50重量%、約40~約45重量%、約45~約70重量%、約45~約65重量%、約45~約60重量%、約45~約55重量%、約45~約50重量%、約50~約70重量%、約50~約65重量%、約50~約60重量%、約50~約55重量%、約55~約70重量%、約55~約65重量%、約55~約60重量%、約60~約70重量%、約60~約65重量%、又は約65~約70重量%とすることができる。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミックは、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、又は70重量%のペタライト結晶相を有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、二ケイ酸リチウム及びペタライト以外の結晶相は、ガラス‐セラミック物品中で、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、又は1重量%未満の総重量%を有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミックの残留ガラス含有量は、約5~約50重量%、約5~約45重量%、約5~約40重量%、約5~約35重量%、約5~約30重量%、約5~約25重量%、約5~約20重量%、約5~約15重量%約5~約10重量%、約10~約50重量%、約10~約45重量%、約10~約40重量%、約10~約35重量%、約10~約30重量%、約10~約25重量%、約10~約20重量%、約10~約15重量%、約15~約50重量%、約15~約45重量%、約15~約40重量%、約15~約35重量%、約15~約30重量%、約15~約25重量%、約15~約20重量%、約20~約50重量%、約20~約45重量%、約20~約40重量%、約20~約35重量%、約20~約30重量%約20~約25重量%、約25~約30重量%、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内である。いくつかの実施形態では、残留ガラス含有量は、50重量%以下、45、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1重量%とすることができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミックの結晶の重量百分率は、20重量%超~100重量%、20重量%超~90重量%、20重量%超~80重量%、20重量%超~70重量%、30重量%~100重量%、30重量%~90重量%、30重量%~80重量%、30重量%~70重量%、40重量%~100重量%、40重量%~90重量%、40重量%~80重量%、40重量%~70重量%、50重量%~100重量%、50重量%~90重量%、50重量%~80重量%、50重量%~70重量%、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内であってよい。いくつかの実施形態では、内部領域の結晶の重量百分率は、20重量%超、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、又は90重量%であってよい。
【0062】
結晶相中の結晶の粒径は、ガラス‐セラミックの透明度に影響する要因である。いくつかの実施形態では、粒子は、約5nm~約150nm、約5nm~約125nm、約5nm~約100nm、約5nm~約75nm、約5nm~約50nm、約25nm~約150nm、約25nm~約125nm、約25nm~約100nm、約25nm~約75nm、約50nm~約150nm、約50nm~約125nm、約50nm~約100nm、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内の最長寸法を有する。いくつかの実施形態では、粒子の最長寸法は、150nm未満、125nm未満、100nm未満、75nm未満、50nm未満、又は25nm未満である。粒子の最長寸法は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて測定される。
【0063】
いくつかの実施形態では、相構成及び熱処理条件は、移動体電子デバイス用のカバーガラスとして使用するための、透明度及び低いヘイズといった好適な光学特性を有するガラス‐セラミック物品を作製するために選択される。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品は、厚さ1mmのガラス‐セラミック物品に関して450nm~600nmの波長範囲にわたる光の平均透過率が85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上(表面反射損失を含む)であるという点において、透明である。他の実施形態では、ガラス‐セラミックは、450nm~600nmの波長範囲にわたって半透明であってよい。いくつかの実施形態では、半透明のガラス‐セラミックの、厚さ1mmのガラス‐セラミック物品に関する約450nm~約800nmの波長範囲にわたる光の平均透過率は、約20%~約85%未満であってよい。いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品のヘイズは、0.2未満、0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11.又は0.1である。
【0064】
以下の等式(2)は、核形成温度(TN)、核形成保持時間(tN)、結晶化温度(TC)、及び結晶化保持時間(tC)に基づいて、ガラス‐セラミック物品のヘイズを推定するものである。
【0065】
推定ヘイズ=103-0.260T+0.000203(T-7.96t+0.1532(t-0.019T-0.000008(T-10.03t+0.00597T*t+0.00463t*T+0.01342T*t (2)
いくつかの実施形態では、熱処理サイクルに関する核形成温度(TN)、核形成保持時間(tN)、結晶化温度(TC)、及び結晶化保持時間(tC)は、等式(2)によって得られる推定ヘイズに基づいて、推定ヘイズが0.2未満、0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11.又は0.1となるように選択できる。いくつかの実施形態では、熱処理は(i)前駆体ガラスを0.01~50℃/分の速度で核形成温度(Tn)まで加熱するステップ;(ii)結晶化性ガラスを第1の所定の期間(t)にわたって核形成温度に維持して、核形成された結晶化性ガラス組成物を製造するステップ;(iii)上記核形成された結晶化性ガラスを、約0.01℃/分~約50℃/分の速度で結晶化温度(Tc)まで加熱するステップ;(iv)上記核形成された結晶化性ガラスを、第2の所定の期間(t)にわたって上記結晶化温度に維持して、本明細書に記載のガラス‐セラミック物品を製造するステップ;及び(v)形成されたガラス‐セラミックを室温まで冷却するステップを含んでよく、これにより等式(2)の値は、0.2未満、0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11.又は0.1となる。
【0066】
イオン交換
いくつかの実施形態では、ガラス‐セラミック物品は、1つ以上のイオン交換技法を用いて化学強化できる。これらの実施形態では、イオン交換は、このようなガラス‐セラミック物品の1つ以上の表面を、特定の組成及び温度を有する1つ以上のイオン交換媒体(例えば溶融塩浴)に、特定の期間にわたり曝露することによって実施でき、これにより1つ以上の表面に(1つ以上の)圧縮応力層を付与できる。いくつかの実施形態では、イオン交換媒体は、ガラス‐セラミック物品中に存在するイオン(例えばアルカリ金属イオン)よりも大きなイオン(例えばアルカリ金属イオン)を含有する溶融浴であり、溶融浴由来の比較的大きなイオンを、ガラス‐セラミック物品中の比較的小さなイオンと交換することによって、ガラス‐セラミック物品に圧縮応力を付与し、これによってガラス‐セラミック物品の強度を高める。
【0067】
いくつかの実施形態では、1段階イオン交換プロセスを用いることができ、他の実施形態では多段階イオン交換プロセスを用いることができる。いくつかの実施形態では、1段階イオン交換プロセス及び多段階イオン交換プロセスの両方に関して、イオン交換媒体(例えば溶融浴)は、100重量%のナトリウム含有塩(例えばNaNO)を含むことができ、又は混合塩浴、例えばナトリウム含有塩(例えばNaNO)とカリウム含有塩(例えばKNO)との組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、溶融塩浴は、3重量%~100重量%、3重量%~95重量%、3重量%~90重量%、3重量%~85重量%、3重量%~80重量%、3重量%~75重量%、5重量%~100重量%、5重量%~95重量%、5重量%~90重量%、5重量%~85重量%、5重量%~80重量%、5重量%~75重量%、10重量%~100重量%、10重量%~95重量%、10重量%~90重量%、10重量%~85重量%、10重量%~80重量%、10重量%~75重量%、20重量%~100重量%、20重量%~95重量%、20重量%~90重量%、20重量%~85重量%、20重量%~80重量%、20重量%~75重量%、30重量%~100重量%、30重量%~95重量%、30重量%~90重量%、30重量%~85重量%、30重量%~80重量%、30重量%~75重量%、並びにその間の全ての範囲及び部分範囲内のナトリウム含有塩(例えばNaNO)を含有する。いくつかの実施形態では、例えばナトリウム又はカリウムの亜硝酸塩、リン酸塩、又は硫酸塩といった他のナトリウム塩及びカリウム塩をイオン交換溶液中で用いてよい。
【0068】
イオン交換プロセスの実施後、ガラス‐セラミックの表面の組成は、形成時のままのガラス‐セラミック(即ちイオン交換プロセスを受ける前のガラス‐セラミック)の組成とは異なることを理解されたい。これは、形成時のままのガラス‐セラミック中の、例えばLi又はNaといった1種類のアルカリ金属イオンが、例えばそれぞれNa又はKといった、比較的大きなアルカリ金属イオンと交換されたためである。しかしながら、実施形態では、ガラス‐セラミック物品の深さの中心又は中心付近におけるガラス‐セラミックの組成は、形成時のままのガラス‐セラミックの組成を依然として有することになる。
【0069】
最終製品
本明細書中で開示されるガラス‐セラミック物品は、ディスプレイを有する物品(又はディスプレイ物品)(例えば携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステム、ウェアラブルデバイス(腕時計)等を含む消費者向け電子機器)、建築用物品、輸送物品(例えば自動車、鉄道、航空機、船舶等(例えば車内ディスプレイカバー、窓、若しくはフロントガラスとして使用))、電気製品物品、又は多少の透明度、耐傷性、耐摩耗性若しくはこれらの組み合わせを必要とするいずれの物品といった別の物品に組み込んでよい。本明細書中で開示される強化ガラス‐セラミック物品のうちのいずれを組み込んだ例示的な物品は、図4A及び4Bに示されている。具体的には、図4A及び4Bは:前面204、後面206、及び側面208を有するハウジング202;少なくとも一部分又は全体がハウジング内にあり、少なくともコントローラ、メモリ、及びハウジングの前面にある又はその付近にあるディスプレイ210を含む、電気部品(図示せず);並びにディスプレイを覆うように、ハウジングの前面又は前面上にある、カバー基板212を含む、消費者向け電子デバイス200を示す。いくつかの実施形態では、カバー基板212又はハウジング202の一部分のうちの少なくとも一方は、本明細書中で開示される強化ガラス‐セラミック物品のうちのいずれを含んでよい。
【実施例
【0070】
様々な実施形態が以下の実施例により更に明らかとなる。
【0071】
実施例1
上の表1に列挙した組成物3の組成を有する、厚さ0.8mmの前駆体ガラス試料を形成した。試料を室温からおよそ560℃まで5℃/分の加熱速度で加熱し、4時間にわたって保持した。続いて、試料を730℃まで5℃/分の加熱速度で加熱し、1時間にわたって保持し、ガラス‐セラミック物品を形成した。続いて、ガラス‐セラミック試料を、95重量%NaNO及び5重量%KNOを含有する溶融塩浴中で、470℃でイオン交換した。第1の試料を2時間にわたってイオン交換し、第2の試料を4時間にわたってイオン交換し、第3の試料を7時間にわたってイオン交換し、第4の試料を16時間にわたってイオン交換し、第5の試料を24時間にわたってイオン交換した。各試料の応力プロファイルは図5に示されており、ここでCTは正の応力として示され、CSは負の応力として示されている。16時間にわたってイオン交換した試料は、最大CTが約135MPa、貯蔵引張応力が約37J/mであり、破片試験に供した際に2つの破片に割れた。
【0072】
実施例2
表1に列挙した組成物3の組成及び以下の表2に列挙した比較組成物1を有する、厚さ0.8mmの前駆体ガラス試料を形成した。
【0073】
【表2】
【0074】
続いてガラス試料を、室温からおよそ560℃まで5℃/分の加熱速度で加熱し、4時間にわたって保持した。続いて、試料を730℃まで5℃/分の加熱速度で加熱し、1時間にわたって保持し、ガラス‐セラミック物品を形成した。続いて、ガラス‐セラミック試料を、95重量%NaNO及び5重量%KNOを含有する溶融塩浴中で、470℃でイオン交換した。第1の試料のセットを2時間にわたってイオン交換し、第2の試料のセットを4時間にわたってイオン交換、第3の試料のセットを7時間にわたってイオン交換し、第4の試料のセットを16時間にわたってイオン交換し、第5の試料(組成物3のみ)を24時間にわたってイオン交換した。図6は、x軸上のイオン交換時間に対するy軸の各試料の最大CTを示すプロットである。組成物3から作製したガラス‐セラミック物品はおよそ135MPaの最大CTを達成したが、比較組成物1から作製したガラス‐セラミック物品は、90MPa超である所望の最大CTを達成しなかった(約70MPaには到達した)。理論に拘束されることなく、組成物3中の比較的高いモル%のZrOにより、組成物3から作製したガラス‐セラミックが比較的高いCTを達成できると考えられる。理論に拘束されることなく、1.7モル%以上のZrO濃度により、最大CTが90MPa超であり、貯蔵引張エネルギが22J/m超であるイオン交換済みガラス‐セラミック物品が得られると考えられる。
【0075】
実施例3
上の表1に列挙した組成物1の組成を有する、厚さ0.8mmの前駆体ガラス試料を形成した。試料を、室温からおよそ570℃まで5℃/分の加熱速度で加熱し、4時間にわたって保持した。その後、試料を740℃まで5℃/分の加熱速度で加熱し、1時間にわたって保持し、ガラス‐セラミック物品を形成した。ガラス‐セラミック物品を、室温まで5℃/分の冷却速度で冷却した。ガラス‐セラミック物品の相構成は:約12±2重量%の残留ガラス;44±2重量%のペタライト結晶相;及び44±2重量%の二ケイ酸リチウム結晶相であった。(例えばペタライト及び二ケイ酸リチウム以外の)全ての他の結晶相の合計は、2重量%未満であった。図7は、相構成に関するリートベルト分析を用いたX線回折(XRD)結果である。ガラス‐セラミックは、図8に示すように、可視波長において90%の透過率を有していた。
【0076】
実施例4
上の表1に列挙した組成物1の組成を有する、厚さ0.8mmの前駆体ガラス試料を形成した。試料を、相構成及びヘイズと共に以下の表3に示した熱処理サイクルに供した。確認できるように、熱処理サイクルは相構成及びヘイズに影響する。特にヘイズは、二ケイ酸リチウム及びペタライト以外の結晶相の重量%がガラス‐セラミック物品の2重量%より小さい場合に、0.2未満となる。
【0077】
【表3】
【0078】
実施例5
上の表1に列挙した組成物1の組成を有する、厚さ0.8mmの前駆体ガラス試料を形成した。試料を表4に示した熱処理サイクルに供した。相構成を以下の表5に示す。本実施例の熱処理サイクルは、2段階の熱サイクルではなく3段階の熱サイクルが存在するという点において、実施例4の熱処理サイクルとは異なる。特に、試料は中間温度に保持され、ここで中間温度は、核形成温度より高く結晶化温度より低い。本実施例は、所望の相構成(二ケイ酸リチウム及びペタライト以外の結晶相の重量%がガラス‐セラミック物品の2重量%未満である)を、2段階の熱処理サイクルではなく3段階の熱処理サイクルで達成できることを実証する。
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
実施例6
上の表1に列挙した組成物1の組成を有する、厚さ0.8mmの前駆体ガラス試料を形成した。試料を表6に示した熱処理サイクルに供した。相構成を以下の表7に示す。本実施例の熱処理サイクルは、試料が核形成温度に保持されず、結晶化温度に到達するまで様々な加熱速度で様々な温度に加熱されるという点において、実施例4の熱処理サイクルとは異なる。本実施例は、所望の相構成(二ケイ酸リチウム及びペタライト以外の結晶相の重量%がガラス‐セラミック物品の2重量%未満である)を、代替的な熱処理サイクルで達成できることを実証する。
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
本開示の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、本開示の様々な要素を、以下の実施形態に従って組み合わせて利用してよい。
【0085】
実施形態1
ガラス‐セラミック物品であって:
第1の表面;
上記第1の表面の反対側の第2の表面;
1つ以上の結晶相;
残留ガラス相;
上記第1の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力層;
70MPa超の最大中央張力;
22J/m超の貯蔵引張エネルギ;
1.0MPa√m超の破壊じん性であって、上記ガラス‐セラミック物品の中心における組成及び相構成と同一の組成及び相構成を有するガラス‐セラミックに関して測定される、破壊じん性;並びに
0.2未満のヘイズ
を備える、ガラス‐セラミック物品。
【0086】
実施形態2
95GPa超のヤング率を更に備え、上記ヤング率は、上記ガラス‐セラミック物品の中心における組成及び相構成と同一の組成及び相構成を有するガラス‐セラミックに関して測定される、実施形態1に記載のガラス‐セラミック物品。
【0087】
実施形態3
上記破壊じん性は1.0MPa√m超~2.0MPa√mである、実施形態1又は2に記載のガラス‐セラミック物品。
【0088】
実施形態4
ガラス‐セラミック物品であって:
第1の表面;
上記第1の表面の反対側の第2の表面;
1つ以上の結晶相;
残留ガラス相;
上記第1の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力層;
70MPa超の最大中央張力;
22J/m超の貯蔵引張エネルギ;
95GPa超のヤング率であって、上記ガラス‐セラミック物品の中心における組成及び相構成と同一の組成及び相構成を有するガラス‐セラミックに関して測定される、ヤング率;並びに
0.2未満のヘイズ
を備える、ガラス‐セラミック物品。
【0089】
実施形態5
上記ヤング率は、95Gpa超~110Gpaである、実施形態4に記載のガラス‐セラミック物品。
【0090】
実施形態6
LiO(モル%)/RO(モル%)の比は0.85超であり、ROはアルカリ金属酸化物の合計である、実施形態1~5のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0091】
実施形態7
1.7モル%~4.5モル%のZrOを更に含む、実施形態6に記載のガラス‐セラミック物品。
【0092】
実施形態8
ガラス‐セラミック物品であって、上記ガラス‐セラミック物品は:
第1の表面;
上記第1の表面の反対側の第2の表面;
1つ以上の結晶相;
残留ガラス相;
上記第1の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力層;
70MPa超の最大中央張力;
22J/m超の貯蔵引張エネルギ;並びに
1.7モル%~4.5モル%のZrO
を備え、
LiO(モル%)/RO(モル%)の比は0.85超であり、ROはアルカリ金属酸化物の合計である、ガラス‐セラミック物品。
【0093】
実施形態9
上記残留ガラス相は、上記ガラス‐セラミック物品の50重量%以下である、実施形態1~8のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0094】
実施形態10
上記1つ以上の結晶相はペタライトを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0095】
実施形態11
上記1つ以上の結晶相は二ケイ酸リチウムを含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0096】
実施形態12
二ケイ酸リチウム及びペタライト以外の結晶相の合計は、上記ガラス‐セラミック物品の2重量%未満である、実施形態1~11のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0097】
実施形態13
上記ガラス‐セラミック物品は、透明であり、1mmの厚さにおいて、450nm~800nmの波長の光に関して少なくとも85%の光の透過率を有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0098】
実施形態14
上記ガラス‐セラミック物品は、破片試験に供された場合に、割れて5個未満の破片となる、実施形態1~13のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0099】
実施形態15
上記最大中央張力は、90MPa超~180MPaである、実施形態1~14のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0100】
実施形態16
上記貯蔵引張エネルギは、22J/m超~60J/mである、実施形態1~15のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0101】
実施形態17
150nm以下の最長寸法を有する粒子を更に含む、実施形態1に記載のガラス‐セラミック物品。
【0102】
実施形態18
消費者向け電子製品であって、上記消費者向け電子は:
前面、後面、及び側面を有するハウジング;
少なくとも一部分が上記ハウジング内にある電気部品であって、上記電気部品は、少なくともコントローラ、メモリ、及び上記ハウジングの上記前面にある又は上記ハウジングの上記前面付近にあるディスプレイを備える、電気部品;並びに
上記ディスプレイを覆うように配置されたカバー基板
を備え、
上記ハウジング又は上記カバー基板の少なくとも一方は、実施形態1~17のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品を含む、消費者向け電子製品。
【0103】
実施形態19
ガラス‐セラミック物品を形成する方法であって、上記方法は:
上記ガラス組成物を核形成温度まで加熱して、核形成された結晶化性ガラス組成物を生成するステップ;
上記核形成された結晶化性ガラス組成物を結晶化温度まで加熱するステップ;及び
上記結晶化温度を所定の期間にわたって維持して、上記ガラス‐セラミック物品を製造するステップ
を含み、
上記ガラス‐セラミック物品は:
1.0MPa√m超の破壊じん性;及び
0.2未満のヘイズ
を備える、方法。
【0104】
実施形態20
上記核形成温度を所定の期間にわたって維持して、上記核形成された結晶化性ガラス組成物を製造するステップを更に含む、実施形態19に記載の方法。
【0105】
実施形態21
上記核形成温度を維持するための上記期間は、1分~6時間である、実施形態20に記載の方法。
【0106】
実施形態22
上記ガラス組成物は、上記核形成温度に維持されない、実施形態19に記載の方法。
【0107】
実施形態23
上記核形成された結晶化性ガラス組成物を中間温度まで加熱するステップであって、上記中間温度は上記核形成温度より高く上記結晶化温度より低い、ステップ;及び
上記核形成された結晶化性ガラス組成物を上記中間温度から上記結晶化温度まで加熱するステップ
を更に含む、実施形態19~22のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態24
上記中間温度を所定の期間にわたって維持するステップを更に含む、実施形態23に記載の方法。
【0109】
実施形態25
上記核形成された結晶化性ガラス組成物を上記核形成温度から上記中間温度まで加熱するための加熱速度は、上記核形成された結晶化性ガラス組成物を上記中間温度から上記結晶化温度まで加熱するための上記加熱速度とは異なる、実施形態23又は24に記載の方法。
【0110】
実施形態26
上記核形成する結晶化性ガラス組成物は、上記中間温度に維持されない、実施形態25に記載の方法。
【0111】
実施形態27
上記ガラス‐セラミック物品をイオン交換処理に供して、上記ガラス‐セラミック物品の第1の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力層を生成するステップを更に含み、
上記イオン交換処理後、上記ガラス‐セラミック物品は70MPa超の最大中央張力及び22J/m超の貯蔵引張エネルギを有する、実施形態19~26のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態28
上記核形成温度は550℃~650℃である、実施形態19~27のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態29
上記核形成温度まで加熱する上記ステップは、室温から上記核形成温度まで0.01℃/分~50℃/分の加熱速度で加熱するステップを含む、実施形態19~28のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
実施形態30
上記結晶化温度は680℃~800℃である、実施形態19~29のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
実施形態31
上記結晶化温度を維持するための上記所定の期間は1分~4時間である、実施形態19~30のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
実施形態32
上記結晶化温度まで加熱する上記ステップは、上記核形成温度から上記結晶化温度まで0.01℃/分~50℃/分の加熱速度で加熱するステップを含む、実施形態19~31のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
実施形態33
第1の冷却段階において、上記ガラス‐セラミック物品を上記結晶化温度から第1の温度まで第1の冷却速度で冷却するステップ;及び
第2の冷却段階において、上記ガラス‐セラミック物品を上記第1の温度から第2の温度まで第2の冷却速度で冷却するステップ
を更に含み、
上記第1の冷却速度は、上記第2の冷却速度より遅い、実施形態19~32のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
実施形態34
第1の冷却段階において、上記ガラス‐セラミック物品を上記結晶化温度から第1の温度まで第1の冷却速度で冷却するステップ;
中間冷却段階において、上記ガラス‐セラミック物品を上記第1の温度から第2の温度まで第2の冷却速度で冷却するステップ;
第2の冷却段階において、上記ガラス‐セラミック物品を上記第2の温度から第3の温度まで第3の冷却速度で冷却するステップ
を更に含み、
(i)上記第1の冷却速度は、上記第2の冷却速度及び上記第3の冷却速度より遅く、(ii)上記第2の冷却速度は、上記第3の冷却速度より遅い、実施形態19~32のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
実施形態35
ガラス‐セラミックの光学リターダンスは、厚さ1mmあたり15nm未満である、実施形態19~34のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
実施形態36
ガラス‐セラミック物品を形成する方法であって、上記方法は:
上記ガラス組成物を核形成温度(T)まで加熱するステップ;
上記核形成温度を第1の所定の期間(t)にわたって維持して、核形成された結晶化性ガラス組成物を製造するステップ;
上記核形成された結晶化性ガラス組成物を結晶化温度(T)まで加熱するステップ;及び
上記結晶化温度を第2の所定の期間(t)にわたって維持して、上記ガラス‐セラミック物品を製造するステップ
を含み、
(103-0.260T+0.000203(T-7.96t+0.1532(t-0.019T-0.000008(T-10.03t+0.00597T*t+0.00463t*T+0.01342T*t)<0.2である、方法。
【0121】
実施形態37
ガラス‐セラミック物品のヘイズを制御するための方法であって、上記方法は:核形成温度(TN)、第1の所定の期間(tN)、結晶化温度(TC)、及び第2の所定の期間(tC)を、(103-0.260TN+0.000203(TN)2-7.96tN+0.1532(tN)2-0.019TC-0.000008(TC)2-10.03tC+0.00597TN*tN+0.00463tN*TC+0.01342TC*tC)<0.2.となるように選択するステップを含む、方法。
【0122】
実施形態38
ガラス組成物を上記核形成温度(T)まで加熱するステップ;
上記核形成温度を上記第1の所定の期間(t)にわたって維持して、核形成された結晶化性ガラス組成物を製造するステップ;
上記核形成された結晶化性ガラス組成物を上記結晶化温度(T)まで加熱するステップ;及び
上記結晶化温度を上記第2の所定の期間(t)にわたって維持して、上記ガラス‐セラミック物品を製造するステップ
を更に含む、実施形態37に記載の方法。
【0123】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0124】
実施形態1
ガラス‐セラミック物品であって:
第1の表面;
上記第1の表面の反対側の第2の表面;
1つ以上の結晶相;
残留ガラス相;
上記第1の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力層;
70MPa超の最大中央張力;
22J/m超の貯蔵引張エネルギ;並びに
以下のうちのいずれの1つ以上:
(a)1.0MPa√m超の破壊じん性であって、上記ガラス‐セラミック物品の中心における組成及び相構成と同一の組成及び相構成を有するガラス‐セラミックに関して測定される、破壊じん性、並びに0.2未満のヘイズ;
(b)95GPa超のヤング率であって、上記ヤング率は、上記ガラス‐セラミック物品の中心における組成及び相構成と同一の組成及び相構成を有するガラス‐セラミックに関して測定される、ヤング率、並びに0.2未満のヘイズ;並びに
(c)1.7モル%~4.5モル%のZrO
を備え、 LiO(モル%)/RO(モル%)の比は0.85超であり、ROはアルカリ金属酸化物の合計である、ガラス‐セラミック物品。
【0125】
実施形態2
上記残留ガラス相は、上記ガラス‐セラミック物品の50重量%以下である、実施形態1に記載のガラス‐セラミック物品。
【0126】
実施形態3
上記1つ以上の結晶相はペタライトを含む、実施形態1又は2に記載のガラス‐セラミック物品。
【0127】
実施形態4
上記1つ以上の結晶相は二ケイ酸リチウムを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0128】
実施形態5
二ケイ酸リチウム及びペタライト以外の結晶相の合計は、上記ガラス‐セラミック物品の2重量%未満である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0129】
実施形態6
上記ガラス‐セラミック物品は、透明であり、1mmの厚さにおいて、450nm~800nmの波長の光に関して少なくとも85%の光の透過率を有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0130】
実施形態7
上記ガラス‐セラミック物品は、破片試験に供された場合に、割れて5個未満の破片となる、実施形態1~6のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0131】
実施形態8
上記最大中央張力は、90MPa超~180MPaである、実施形態1~7のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0132】
実施形態9
上記貯蔵引張エネルギは、22J/m超~60J/mである、実施形態1~8のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品。
【0133】
実施形態10
150nm以下の最長寸法を有する粒子を更に含む、実施形態1に記載のガラス‐セラミック物品。
【0134】
実施形態11
消費者向け電子製品であって、上記消費者向け電子は:
前面、後面、及び側面を有するハウジング;
少なくとも一部分が上記ハウジング内にある電気部品であって、上記電気部品は、少なくともコントローラ、メモリ、及び上記ハウジングの上記前面にある又は上記ハウジングの上記前面付近にあるディスプレイを備える、電気部品;並びに
上記ディスプレイを覆うように配置されたカバー基板
を備え、
上記ハウジング又は上記カバー基板の少なくとも一方は、実施形態1~10のいずれか1つに記載のガラス‐セラミック物品を含む、消費者向け電子製品。
【0135】
実施形態12
ガラス‐セラミック物品を形成する方法であって、上記方法は:
上記ガラス組成物を核形成温度(T)まで加熱して、核形成された結晶化性ガラス組成物を生成するステップ;
上記核形成された結晶化性ガラス組成物を結晶化温度(T)まで加熱するステップ;及び
上記結晶化温度を所定の期間(t)にわたって維持して、上記ガラス‐セラミック物品を製造するステップ
を含み、
上記ガラス‐セラミック物品は:
1.0MPa√m超の破壊じん性;及び
0.2未満のヘイズ
を備える、方法。
【0136】
実施形態13
上記核形成温度を所定の期間にわたって維持して、上記核形成された結晶化性ガラス組成物を製造するステップを更に含む、実施形態12に記載の方法。
【0137】
実施形態14
上記核形成温度を維持するための上記期間は、1分~6時間である、実施形態13に記載の方法。
【0138】
実施形態15
上記ガラス組成物は、上記核形成温度に維持されない、実施形態12に記載の方法。
【0139】
実施形態16
上記核形成された結晶化性ガラス組成物を中間温度まで加熱するステップであって、上記中間温度は上記核形成温度より高く上記結晶化温度より低い、ステップ;及び
上記核形成された結晶化性ガラス組成物を上記中間温度から上記結晶化温度まで加熱するステップ
を更に含む、実施形態12~15のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
実施形態17
上記中間温度を所定の期間にわたって維持するステップを更に含む、実施形態16に記載の方法。
【0141】
実施形態18
上記核形成された結晶化性ガラス組成物を上記核形成温度から上記中間温度まで加熱するための加熱速度は、上記核形成された結晶化性ガラス組成物を上記中間温度から上記結晶化温度まで加熱するための上記加熱速度とは異なる、実施形態16又は17に記載の方法。
【0142】
実施形態19
上記核形成する結晶化性ガラス組成物は、上記中間温度に維持されない、実施形態18に記載の方法。
【0143】
実施形態20
上記ガラス‐セラミック物品をイオン交換処理に供して、上記ガラス‐セラミック物品の第1の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力層を生成するステップを更に含み、
上記イオン交換処理後、上記ガラス‐セラミック物品は70MPa超の最大中央張力及び22J/m超の貯蔵引張エネルギを有する、実施形態12~19のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
実施形態21
上記核形成温度は550℃~650℃である、実施形態12~20のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
実施形態22
上記核形成温度まで加熱する上記ステップは、室温から上記核形成温度まで0.01℃/分~50℃/分の加熱速度で加熱するステップを含む、実施形態12~21のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
実施形態23
上記結晶化温度は680℃~800℃である、実施形態12~22のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
実施形態24
上記結晶化温度を維持するための上記所定の期間は1分~4時間である、実施形態12~23のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
実施形態25
上記結晶化温度まで加熱する上記ステップは、上記核形成温度から上記結晶化温度まで0.01℃/分~50℃/分の加熱速度で加熱するステップを含む、実施形態12~24のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
実施形態26
第1の冷却段階において、上記ガラス‐セラミック物品を上記結晶化温度から第1の温度まで第1の冷却速度で冷却するステップ;及び
第2の冷却段階において、上記ガラス‐セラミック物品を上記第1の温度から第2の温度まで第2の冷却速度で冷却するステップ
を更に含み、
上記第1の冷却速度は、上記第2の冷却速度より遅い、実施形態12~25のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施形態27
第1の冷却段階において、上記ガラス‐セラミック物品を上記結晶化温度から第1の温度まで第1の冷却速度で冷却するステップ;
中間冷却段階において、上記ガラス‐セラミック物品を上記第1の温度から第2の温度まで第2の冷却速度で冷却するステップ;
第2の冷却段階において、上記ガラス‐セラミック物品を上記第2の温度から第3の温度まで第3の冷却速度で冷却するステップ
を更に含み、
(i)上記第1の冷却速度は、上記第2の冷却速度及び上記第3の冷却速度より遅く、(ii)上記第2の冷却速度は、上記第3の冷却速度より遅い、実施形態12~26のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
実施形態28
ガラス‐セラミックの光学リターダンスは、厚さ1mmあたり15nm未満である、実施形態12~27のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
実施形態29
上記核形成温度を第1の所定の期間(t)にわたって維持して、核形成された結晶化性ガラス組成物を製造するステップを更に含み、
(103-0.260T+0.000203(T-7.96t+0.1532(t-0.019T-0.000008(T-10.03t+0.00597T*t+0.00463t*T+0.01342T*t)<0.2である、実施形態12~28のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
実施形態30
ガラス‐セラミック物品のヘイズを制御するための方法であって、上記方法は:核形成温度(TN)、第1の所定の期間(tN)、結晶化温度(TC)、及び第2の所定の期間(tC)を、(103-0.260TN+0.000203(TN)2-7.96tN+0.1532(tN)2-0.019TC-0.000008(TC)2-10.03tC+0.00597TN*tN+0.00463tN*TC+0.01342TC*tC)<0.2.となるように選択するステップを含む、方法。
【0154】
実施形態31
ガラス組成物を上記核形成温度(T)まで加熱するステップ;
上記核形成温度を上記第1の所定の期間(t)にわたって維持して、核形成された結晶化性ガラス組成物を製造するステップ;
上記核形成された結晶化性ガラス組成物を上記結晶化温度(T)まで加熱するステップ;及び
上記結晶化温度を上記第2の所定の期間(t)にわたって維持して、上記ガラス‐セラミック物品を製造するステップ
を更に含む、実施形態30に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8