(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】洪水監視および管理システム
(51)【国際特許分類】
E02B 3/00 20060101AFI20220712BHJP
G06Q 50/26 20120101ALI20220712BHJP
G06Q 10/04 20120101ALI20220712BHJP
G01W 1/10 20060101ALI20220712BHJP
G08B 31/00 20060101ALI20220712BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
E02B3/00
G06Q50/26
G06Q10/04
G01W1/10 P
G08B31/00 B
G09B29/00 Z
(21)【出願番号】P 2020557248
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(86)【国際出願番号】 US2019027600
(87)【国際公開番号】W WO2019204254
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-28
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518170963
【氏名又は名称】ワン コンサーン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ONE CONCERN,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ワニ、アフマド
(72)【発明者】
【氏名】フー、ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ワン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、スンジン
(72)【発明者】
【氏名】フランク、ジェシカ
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-197554(JP,A)
【文献】特開2017-201243(JP,A)
【文献】特開2008-083167(JP,A)
【文献】特開2002-092264(JP,A)
【文献】特開2006-004212(JP,A)
【文献】特開2003-296504(JP,A)
【文献】特開2002-269656(JP,A)
【文献】米国特許第07136756(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0156190(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0019262(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0047099(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0133530(US,A1)
【文献】米国特許第10664937(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04-3/14
E02B 1/00
G08B 23/00-31/00
G08B 19/00-21/24
G06Q 50/26
G06Q 10/04
G01W 1/10
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、複数のセルに分割された地理的領域の気象情報にアクセスすること、
前記洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、水文モデルを使用して、前記気象情報に基づいて流出データを生成することであって、前記流出データは、複数の時刻における前記地理的領域の各セルの地表面上の
自然に流れる水の予測される量を含む、前記
流出データを生成すること、
前記洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、前記複数の時刻におけるセル間の水の流入および流出の予測を生成すること、
前記地理的領域内
の複数
のセルについて、前記複数の時刻におけるセル間の流入および流出の予測および水理モデルに基づいて
各セル内の予測される水深を計算すること、
前記洪水解析システムの1つ又は複数のプロセッサが、前記複数の時刻
のうちの特定の時刻における前記地理的領域内の各セルの予測される水深を示す洪水氾濫マップを生成すること、
前記洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが
、前記洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示すること、
前記ユーザーインタフェースにおいて、前記洪水氾濫マップを示すための複数の選択可能な時刻を含む時系列バーを提供すること、
前記時系列バーにおいて新たな時刻を選択すること、
前記ユーザーインタフェースにおいて、選択された時刻における各サブセルの予測される水深を用いて前記洪水氾濫マップを更新すること、
前記地理的領域内の複数の資産の資産情報をトラッキングすることであって、前記複数の資産は、複数の構造物を含み、前記資産情報は、資産の種類、前記構造物を建設するために使用される建築材料、および前記構造物の建築年数を含む、前記複数の資産の資産情報をトラッキングすること、
トラッキングされる前記複数の資産の前記資産情報および前記セルの予測される水深に基づいて洪水による前記地理的領域における前記トラッキングされる複数の資産の損害を推定すること、
推定された前記洪水による前記トラッキングされる複数の資産の損害を前記ユーザーインタフェースにおいて提示すること、を備える方法。
【請求項2】
1つ又は複数の
量水標からの水深データの
1つ又は複数の現在の測定値にアクセスすること、
前記水深データ
の1つ又は複数の現在の測定値および前記予測される水深に基づいて前記洪水氾濫マップを再計算すること、をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記各セルの予測される水深を計算することは、
前記地理的領域のメッシュを生成することであって、前記メッシュ
によって、前記地理的領域は、重なることなく
前記地理的領域をカバーする複数のセル
に分割
される、前記
地理的領域のメッシュを生成すること、
前記セルの標高及び地表面の
粗さに基づいて、前記メッシュの各セルにおける水位を特定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各セルは、1~20メートルの範囲のサイズの複数の辺を有するポリゴンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各セルの流入および流出の予測を生成することは、
河川網に関するデータにアクセスことであって、前記河川網に関するデータは、前記河川網内の複数のセルと、前記河川網の複数の統計パラメータと、を含む、前記
河川網に関するデータにアクセスすること、
前記河川網に関するデータに基づいて、各セルの流入及び流出の予測を生成すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記地理的領域内の洪水によ
って影響を受ける資産の
数を前記ユーザーインタフェースにおいて提示すること、をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ユーザーインタフェースは、降雨レベル、色分けされた水深、洪水の影響を受ける資産、および洪水による
資産の金銭的損失の推定を
提示するための複数のオプションを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
洪水解析システムであって、
複数の命令を含むメモリと、
1つ又は複数のコンピュータプロセッサと、を備え、
前記複数の命令は、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサに、
複数のセルに分割された地理的領域の気象情報にアクセスすること、
水文モデルを使用して、前記気象情報に基づいて流出データを生成することであって、前記流出データは、複数の時刻における前記地理的領域の各セルの地表面上の
自然に流れる水の予測される量を含む、前記
流出データを生成すること、
前記複数の時刻におけるセル間の水の流入および流出の予測を生成すること、
前記地理的領域内
の複数
のセルについて、前記複数の時刻におけるセル間の流入および流出の予測および水理モデルに基づいて
各セル内の予測される水深を計算すること、
前記複数の時刻
のうちの特定の時刻における前記地理的領域内の各セルの予測される水深を示す洪水氾濫マップを生成すること、
前記洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示すること、
前記ユーザーインタフェースにおいて、前記洪水氾濫マップを示すための複数の選択可能な時刻を含む時系列バーを提供すること、
前記時系列バーにおいて新たな時刻を選択すること、
前記ユーザーインタフェースにおいて、選択された時刻における各サブセルの予測される水深を用いて前記洪水氾濫マップを更新すること、
前記地理的領域内の複数の資産の資産情報をトラッキングすることであって、前記複数の資産は、複数の構造物を含み、前記資産情報は、資産の種類、前記構造物を建設するために使用される建築材料、および前記構造物の建築年数を含む、前記複数の資産の資産情報をトラッキングすること、
トラッキングされる前記複数の資産の前記資産情報および前記セルの予測される水深に基づいて洪水による前記地理的領域における前記トラッキングされる複数の資産の損害を推定すること、
推定された前記洪水による前記トラッキングされる複数の資産の損害を前記ユーザーインタフェースにおいて提示すること、を含む複数の処理を実行させる、洪水解析システム。
【請求項9】
前記複数の命令は、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサに、
1つ又は複数の
量水標からの水深データ
の1つ又は複数の現在の測定値にアクセスすること、
前
記水深データ
の1つ又は複数の現在の測定値および前記予測される水深に基づいて前記洪水氾濫マップを再計算すること、を含む複数の処理を実行させる、請求項
8に記載の洪水解析システム。
【請求項10】
前記各セルの予測される水深を計算することは、
前記地理的領域のメッシュを生成することであって、前記メッシュ
によって、前記地理的領域は、重なることなく
前記地理的領域をカバーする複数のセル
に分割
される、前記
地理的領域のメッシュを生成すること、
前記セルの標高及び地表面の
粗さに基づいて、前記メッシュの各セルにおける水位を特定することをさらに含む、請求項
8に記載の洪水解析システム。
【請求項11】
前記複数の命令は、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサに、
前記ユーザーインタフェースにおいて前記地理的領域内の
洪水によって影響を受ける資産の
数を
提示すること、を含む複数の処理を実行させる、請求項
8に記載の洪水解析システム。
【請求項12】
複数の命令を含む非一時的な機械可読記憶媒体であって、前記複数の命令は、マシンによって実行されると、前記マシンに、
複数のセルに分割された地理的領域の気象情報にアクセスすること、
水文モデルを使用して、前記気象情報に基づいて流出データを生成することであって、前記流出データは、複数の時刻における前記地理的領域の各セルの地表面上の
自然に流れる水の予測される量を含む、前記
流出データを生成すること、
前記複数の時刻におけるセル間の水の流入および流出の予測を生成すること、
前記地理的領域内
の複数
のセルについて、前記複数の時刻におけるセル間の流入および流出の予測および水理モデルに基づいて
各セル内の予測される水深を計算すること、
前記複数の時刻
のうちの特定の時刻における前記地理的領域内の各セルの予測される水深を示す洪水氾濫マップを生成すること、
前記洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示すること、
前記ユーザーインタフェースにおいて、前記洪水氾濫マップを示すための複数の選択可能な時刻を含む時系列バーを提供すること、
前記時系列バーにおいて新たな時刻を選択すること、
前記ユーザーインタフェースにおいて、選択された時刻における各サブセルの予測される水深を用いて前記洪水氾濫マップを更新すること、
前記地理的領域内の複数の資産の資産情報をトラッキングすることであって、前記複数の資産は、複数の構造物を含み、前記資産情報は、資産の種類、前記構造物を建設するために使用される建築材料、および前記構造物の建築年数を含む、前記複数の資産の資産情報をトラッキングすること、
トラッキングされる前記複数の資産の前記資産情報および前記セルの予測される水深に基づいて洪水による前記地理的領域における前記トラッキングされる複数の資産の損害を推定すること、
推定された前記洪水による前記トラッキングされる複数の資産の損害を前記ユーザーインタフェースにおいて提示すること、を含む複数の処理を実行させる、非一時的な機械可読記憶媒体。
【請求項13】
前記マシンは、
1つ又は複数の
量水標からの水深データの
1つ又は複数の現在の測定値にアクセスすること、
前
記水深データ
の1つ又は複数の現在の測定値および前記予測される水深に基づいて前記洪水氾濫マップを再計算すること、を含む複数の処理をさらに実行する、請求項
12に記載の非一時的な機械可読記憶媒体。
【請求項14】
前記各サブセルの予測される水深を計算することは、
前記地理的領域のメッシュを生成することであって、前記メッシュ
によって、
前記地理的領域は、重なることなく
前記地理的領域をカバーする複数のセル
に分割
される、前記
地理的領域のメッシュを生成すること、
前記セルの標高及び地表面の
粗さに基づいて、前記メッシュの各セルにおける水位を特定することをさらに含む、請求項
12に記載の非一時的な機械可読記憶媒体。
【請求項15】
前記マシンは、
前記ユーザーインタフェースにおいて前記地理的領域内の
洪水によって影響を受ける資産の
数を
提示すること、を含む複数の処理をさらに実行する、請求項
12に記載の非一時的な機械可読記憶媒体。
【請求項16】
前記洪水氾濫マップを提示することは、
前記セルが浸水する確率に基づいて前記地理的領域内の各セルに洪水危険度指標を割り当てることであって、各セルの前記洪水危険度指標は、複数の予め定められた危険度指標から選択される、前記洪水危険度指標を割り当てること、
前記洪水氾濫マップにおいて前記洪水危険度指標を提示すること、前記複数の予め定められた危険度指標の各々は、前記洪水氾濫マップにおいて異なる色で色分けされる、前記洪水危険度指標を提示すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記洪水氾濫マップを提示することは、
前記セルが浸水する確率に基づいて前記地理的領域内の各セルに洪水危険度指標を割り当てることであって、各セルの前記洪水危険度指標は、複数の予め定められた危険度指標から選択される、前記洪水危険度指標を割り当てること、
前記洪水氾濫マップにおいて前記洪水危険度指標を提示すること、前記複数の予め定められた危険度指標の各々は、前記洪水氾濫マップにおいて異なる色で色分けされる、前記洪水危険度指標を提示すること、をさらに含む、請求項
8に記載の洪水解析システム。
【請求項18】
前記洪水氾濫マップを提示することは、
前記セルが浸水する確率に基づいて前記地理的領域内の各セルに洪水危険度指標を割り当てることであって、各セルの前記洪水危険度指標は、複数の予め定められた危険度指標から選択される、前記洪水危険度指標を割り当てること、
前記洪水氾濫マップにおいて前記洪水危険度指標を提示すること、前記複数の予め定められた危険度指標の各々は、前記洪水氾濫マップにおいて異なる色で色分けされる、前記洪水危険度指標を提示すること、をさらに含む、請求項
12に記載の非一時的な機械可読記憶媒体。
【請求項19】
前記地理的領域内の洪水によって影響を受けた人の数を
トラッキングすること、
前記地理的領域内の前記洪水によって影響を受けた人の数を前記ユーザーインタフェースにおいて提示すること、をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記地理的領域についての水深データの更新を受信すること、
受信された更新に基づいて前記水深を計算するためのモデルを更新すること、をさらに備える請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記洪水氾濫マップを生成することは、
前記洪水氾濫マップの水路を第1の色で表示すること、
前記水路の隣の浸水地域を第2の色で表示すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記洪水氾濫マップを生成することは、
前記洪水氾濫マップに人口動態情報を提示すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年4月17日に出願された米国特許出願第15/954,792号の継続であり、優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が組み込まれる。本明細書に開示される主題は、概して、自然災害管理に関し、より具体的には、洪水被害の予測および氾濫軽減計画のための方法、システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震、洪水、火災などの自然現象は、生命および財産に対する重大な損害を引き起こす可能性がある。そのような損害の範囲を予測することは、地震、洪水、および火災によって最も影響を受けるものに対する緊急サービスを優先させるのに助けとなる。
【0003】
浸水する可能性のあるエリアに暴風雨が到来すると予想される場合、どのエリアがどの程度浸水するかを予測することは、気象パターン、地形、表面の種類等の予測に含まれる多くの要因のために困難な問題である。
【0004】
加えて、どのような将来の洪水災害が起こるかを予測することは、特に気候変動の時期では困難である。政府関係者が将来の洪水による被害を軽減するために対策を講じる資金を有している場合があるが、さまざまな被害軽減手段に資金を費やすことの便益を評価することが難しいため、その資金を使う最善の方法を決定することには問題がある。
【発明の概要】
【0005】
例示的な方法、システム、およびコンピュータプログラムは、洪水監視および管理システムを対象とする。実施例は、可能な変形形態の典型に過ぎない。別段に明記されていない限り、構成要素および機能は任意選択であり、それらが組み合わされ、または細分されることがあり、動作は順序が変動することがあり、または動作が組み合わされ、もしくは細分されることがある。以下の説明では、説明のために、例示的実施形態の完全な理解を与える目的で多数の特定の詳細が説明される。しかしながら、こうした特定の詳細なしに本主題を実施できることは当業者には明らかであろう。
【0006】
自然災害の予測が難しいこともあり、市当局にとって自然災害への準備は困難である。特に、大きな暴風雨が到来したときの洪水の準備は、多くのツールが静的であり、複数の気象パターン及び領域の地形を考慮していないために困難である。多くの場合、市当局は、過去の歴史に基づいた専門家または静的な氾濫マップに依存する必要がある。しかし、これらの方法は信頼性の低い結果をもたらし、市当局に洪水を計画するための適切な複数のツールを提供しない。
【0007】
明細書において提供されるものは、到来する暴風雨の前に又は可能性のある将来の洪水シナリオを計画するときに、洪水に備えるための複数の汎用ツールを備えた洪水管理システムとも呼ばれる洪水解析システムを示す。到来する暴風雨が特定されると、洪水解析システムは気象情報を収集して、洪水の可能性のある複数のエリアを特定する洪水氾濫マップを生成する。洪水解析システムは、関心領域に関する情報を有し、時間の経過とともに水がそのエリアをどのように流れるかを正確に推定し得る。
【0008】
洪水氾濫マップは、時間の経過とともに氾濫を示す時系列バーを含む。ユーザーは時系列バーをクリックして、翌日、3日後、5日後などの氾濫の様子を確認し得る。氾濫データの時系列により、市当局は、時間の経過とともに洪水がどのように発生するかを確認できる。洪水解析システムはまた、地域の洪水によって生じた損害を推定し、軽減手段を実施するための費用便益解析を示してもよい。
【0009】
さらに、洪水解析システムは、ユーザーが複数の軽減手段(例えば、土嚢の設置)を設定し、複数の軽減手段が異なる時刻において氾濫マップをどのように変化させるかを観察することを可能にする。
【0010】
さらに都市計画者は洪水解析システムを利用して、マップ上のどのエリアが将来浸水する可能性が高いかを特定する洪水危険度マップを作成してもよい。都市計画者は、構造物を上げたり、用途を変更するために土地を購入したりするなどして、損害を減らす計画を立て、それらの計画の費用便益分析を確認してもよい。
【0011】
特定の実施形態では、方法が提供される。方法は、複数のセルに分割された地理的領域の気象情報にアクセスし、気象情報に基づいて流出データを生成する複数の処理を含む。流出データは、地理的領域の各セルの地表面上の予測される自然に流れる水を含む。さらに、方法は、セル間の水の流入及び流出の予測を生成し、地理的領域内の各セルの複数のサブセルについて、セル間の流入および流出の予測および水理モデルに基づいて各サブセル内の予測される水深を計算する複数の処理を含む。さらに、方法は、地理的領域内の各サブセルの予測される水深を示す洪水氾濫マップを生成し、洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示する複数の処理を含む。
【0012】
別の実施形態では、システムは、複数の命令を含むメモリと、1つまたは複数のコンピュータプロセッサと、を含む。複数の命令は、1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって実行されると、1つ又は複数のコンピュータプロセッサに、複数のセルに分割された地理的領域の気象情報にアクセスすること、気象情報に基づいて流出データを生成することであって、流出データは、地理的領域の各セルの地表面上の自然に流れる水の予測される量を含む、生成すること、セル間の水の流入及び流出の予測を生成すること、地理的領域内の各セルの複数のサブセルについて、セル間の流入および流出の予測および水理モデルに基づいて各サブセル内の予測される水深を計算すること、地理的領域内の各サブセルの予測される水深を示す洪水氾濫マップを生成すること、表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて洪水氾濫マップを提示すること、を含む複数の処理を実行させる。
【0013】
他の実施形態では、非一時的な機械可読記憶媒体は、複数の命令を含み、該複数の命令は、マシンによって実行されると、マシンに、複数のセルに分割された地理的領域の気象情報にアクセスすること、気象情報に基づいて流出データを生成することであって、流出データは、地理的領域の各セルの地表面上の自然に流れる水の予測される量を含む、生成すること、セル間の水の流入及び流出の予測を生成すること、地理的領域内の各セルの複数のサブセルについて、セル間の流入および流出の予測および水理モデルに基づいて各サブセル内の予測される水深を計算すること、地理的領域内の各サブセルの予測される水深を示す洪水氾濫マップを生成すること、表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて洪水氾濫マップを提示すること、を含む複数の処理を実行させる。
【0014】
特定の実施形態では、方法が提供される。方法は、地理的領域の気象データおよび地理的領域の地形データに基づいて、地理的領域における水深の予測を生成する処理を含む。方法は、水深の予測を示す洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示する処理を含み、ユーザーインタフェースは、複数の洪水軽減手段を入力するためのオプションを含む。ユーザーインタフェースを介して洪水軽減手段を受け取った後、地形データは、受け取った洪水軽減手段を含むように更新される。方法は、更新された地形データに基づいて地理的領域の水深の更新された予測を生成し、更新された水深の予測および洪水軽減手段の地理的位置を示す更新された洪水氾濫マップをユーザーインタフェースにおいて提示する複数の処理を含む。
【0015】
別の実施形態では、システムは、複数の命令を含むメモリと、1つまたは複数のコンピュータプロセッサと、を含む。複数の命令は、1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって実行されると、1つ又は複数のコンピュータプロセッサに、地理的領域の気象データ及び地理的領域の地形データに基づいて、地理的領域における水深の予測を生成すること、水深の予測を示す洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示することであって、ユーザーインタフェースは、複数の洪水軽減手段を入力するためのオプションを含む、提示すること、ユーザーインタフェースを介して複数の洪水軽減手段を受け取ること、受け取った複数の洪水軽減手段を含むように地形データを更新すること、更新された地形データに基づいて地理的領域の水深の更新された予測を生成すること、更新された水深の予測および洪水軽減手段の地理的位置を示す更新された洪水氾濫マップをユーザーインタフェースにおいて提示すること、を含む複数の処理を実行させる。
【0016】
他の実施形態では、非一時的な機械可読記憶媒体は、複数の命令を含み、該複数の命令は、マシンによって実行されると、マシンに、地理的領域の気象データ及び地理的領域の地形データに基づいて、地理的領域における水深の予測を生成すること、水深の予測を示す洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示することであって、ユーザーインタフェースは、複数の洪水軽減手段を入力するためのオプションを含む、提示すること、ユーザーインタフェースを介して複数の洪水軽減手段を受け取ること、受け取った複数の洪水軽減手段を含むように地形データを更新すること、更新された地形データに基づいて地理的領域の水深の更新された予測を生成すること、更新された水深の予測および洪水軽減手段の地理的位置を示す更新された洪水氾濫マップをユーザーインタフェースにおいて提示すること、を含む複数の処理を実行させる。
【0017】
特定の実施形態では、方法が提供される。方法は、洪水危険度マップを計算するための複数のオプションをグラフィカル・ユーザーインタフェースにおいて提示する処理を含む。さらに、方法は、グラフィカル・ユーザーインタフェースを介して、洪水危険度マップを計算するための地理的領域および気象シナリオを特定する入力を受け取り、地理的領域を少なくとも複数のセルに分割する複数の処理を含む。さらに、方法は、気象シナリオに基づいて地理的領域内のセル間の流入及び流出を水文モデルを用いて計算し、気象シナリオおよびセル間の水の流入及び流出に基づいて各セルの水深を水理モデルを用いて計算する複数の処理を含む。洪水危険度マップは、各セルの計算された水深に基づいて生成され、洪水危険度マップは、気象シナリオの下で、地理的領域の各セルが水に浸水する確率を示す。さらに、方法は、グラフィカル・ユーザーインタフェースにおいて洪水危険度マップを表示する処理を含む。
【0018】
別の実装では、システムは、複数の命令を含むメモリと、1つまたは複数のコンピュータプロセッサと、を含む。複数の命令は、1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって実行されると、1つ又は複数のコンピュータプロセッサに、洪水危険度マップを計算するための複数のオプションをグラフィカル・ユーザーインタフェースに表示すること、グラフィカル・ユーザーインタフェースを介して、洪水危険度マップを計算するための地理的領域および気象シナリオを特定する入力を受け取ること、地理的領域を少なくとも複数のセルに分割すること、水文モデルを用いて、気象シナリオに基づいて地理的地域内のセル間の水の流入及び流出を計算すること、水理モデルを用いて、気象シナリオ及びセル間の水の流入及び流出に基づいて、各セル内の水深を計算すること、計算された各セルの水深に基づいて洪水危険度マップを生成することであって、洪水危険度マップは、気象シナリオの下で地理的領域の各セルが浸水する確率を示す、生成すること、洪水危険度マップをグラフィカル・ユーザーインタフェースに表示すること、を含む複数の処理を実行させる。
【0019】
他の実施形態では、非一時的な機械可読記憶媒体は、複数の命令を含み、該複数の命令は、マシンによって実行されると、マシンに、洪水危険度マップを計算するための複数のオプションをグラフィカル・ユーザーインタフェースに表示すること、グラフィカル・ユーザーインタフェースを介して、洪水危険度マップを計算するための地理的領域および気象シナリオを特定する入力を受け取ること、地理的領域を少なくとも複数のセルに分割すること、水文モデルを用いて、気象シナリオに基づいて地理的地域内のセル間の水の流入及び流出を計算すること、水理モデルを用いて、気象シナリオ及びセル間の水の流入及び流出に基づいて、各セル内の水深を計算すること、計算された各セルの水深に基づいて洪水危険度マップを生成することであって、洪水危険度マップは、気象シナリオの下で地理的領域の各セルが浸水する確率を示す、生成すること、洪水危険度マップをグラフィカル・ユーザーインタフェースに表示すること、を含む複数の処理を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の図面のうちの様々なものは、本開示の例示的実施形態を例示するに過ぎず、本開示の範囲を限定するものと見なすことはできない。
【
図1】
図1は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水からの荒廃を予測することの課題を示す。
【
図2】
図2は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水解析システムを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、いくつかの例示的な実施形態による、氾濫のライブ予測のマップを含むユーザーインタフェースを示す図である。
【
図4】
図4は、いくつかの例示的な実施形態による、ユーザーインタフェースの48時間後の氾濫のライブ予測に関するマップを示す。
【
図5】
図5は、いくつかの例示的な実施形態による、ユーザーインタフェースの84時間後の氾濫のライブ予測に関するマップを示す。
【
図6】
図6は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水軽減手段の効果を予測するためのユーザーインタフェースを示す図である。
【
図7】
図7は、いくつかの例示的な実施形態による、84時間後の軽減手段の効果を示す。
【
図8】
図8は、いくつかの例示的な実施形態による、重要なインフラストラクチャを追跡するためのユーザーインタフェースを示す図である。
【
図9】
図9は、いくつかの例示的な実施形態による、重要なインフラストラクチャの追跡の詳細を示す。
【
図10】
図10は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水危険度マップのシミュレーションのためのユーザーインタフェースを示す図である。
【
図11】
図11は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水シナリオ解析を定義する複数のパラメータを入力するためのユーザーインタフェースを示す図である。
【
図12】
図12は、いくつかの例示的な実施形態による、危険度軽減手段の費用便益解析のためのユーザーインタフェースを示す図である。
【
図13】
図13は、いくつかの例示的な実施形態による、ヒューストンのハリス郡のエリアにおける洪水解析のためのユーザーインタフェースを示す図である。
【
図14】
図14は、いくつかの例示的な実施形態による、軽減解析のためのユーザーインタフェースを示す図である。
【
図15】
図15は、いくつかの例示的な実施形態による、選択された軽減手段の効果を示す。
【
図16】
図16は、いくつかの例示的な実施形態による、ハリス郡の洪水危険度マップを備えたユーザーインタフェースを示す図である。
【
図17】
図17は、いくつかの例示的な実施形態による、人口動態に基づくマップを生成するためのユーザーインタフェースを示す図である。
【
図18】
図18は、いくつかの例示的な実施形態による、選択された軽減手段の効果を示す。
【
図19】
図19は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水解析システムの簡略概略図である。
【
図20】
図20は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水モニタの機能を示す。
【
図21】
図21は、いくつかの例示的な実施形態による、河川経路モデルの機能を示す。
【
図22】
図22は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水氾濫モデルの機能を示す。
【
図23】
図23は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水氾濫モデルの一例を示す。
【
図24】
図24は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水解析システムの異なる処理に対する解像度を示す。
【
図25】
図25は、いくつかの例示的な実施形態による、リアルタイムデータ同化による洪水解析システムの最適化を示す。
【
図26】
図26は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水監視および管理システムのための方法のフローチャートである。
【
図27】
図27は、いくつかの例示的な実施形態による、軽減解析のためのシステムを示す。
【
図28】
図28は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水復旧解析ツールのための方法のフローチャートである。
【
図29】
図29は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水危険度マップの決定を示す。
【
図30】
図30は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水危険度解析及びマッピングのための方法のフローチャートである。
【
図31】
図31は、いくつかの例示的実施形態による、機械可読媒体から複数の命令を読み取り、本明細書において論じる方法のうちの任意の1つまたは複数を実施することのできるマシンの複数のコンポーネントを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水からの荒廃を予測することの課題を示している。洪水予測は問題の複雑さと優れたツールの欠如のために困難であった。多くの場合、気象サービスは、到来する暴風雨102を検出し、政府職員は、後述の量水標(stream gauge)の測定値104に頼り、再現期間計算106などの過去の事象を確認し得る。
【0022】
次いで、政府職員は、洪水専門家108に相談して対応114を準備するか、量水標110からの履歴データを確認して別の対応116を準備するか、又はFEMAの洪水危険度マップ112を確認して第3の対応118を準備し得る。
【0023】
しかし、これらの方法は、地理的領域ごとの解像度(resolution)が非常に低い降雨マップ、対象エリア全体での計測器の測定値の利用可能性の制限、再現期間の空間的・時間的変動、暴風雨の動的な特性、大きな計算の必要性、洪水危険度マップを計算するための基礎となる仮定、陸域で経時的に起こる幾何学的変化などの複数の理由120により、洪水危険度の正確な予測を得るには信頼性が非常に低いことが分かっている。
【0024】
洪水危険度管理のために本明細書において提示される複数の実施形態は、複数の入力(例えば、気象入力、履歴データ、幾何データ)の詳細な分析および複数のモデル(例えば、水文モデル、水力学的モデル)の使用を含む洪水管理のための様々なツールを提供する。これらのツールは、潜在的な氾濫マップのタイムリーな予測と、大災害を回避するための効果的な軽減手段の解析を提供する。
【0025】
図2は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水解析システム200を示すブロック図である。洪水解析システム200は、洪水推定マップ216を生成する洪水推定モジュール202を含む。洪水解析システム200は、暴風雨が到来する場合に洪水の可能性を予測するために使用され、洪水危険度を解析し、可能な軽減手段の有効性を評価することによって将来の事象の準備に使用され得る。
【0026】
一例の実施形態では、洪水推定モジュール202は、気象データ204、履歴データ206、および地理データ208を含むいくつかの入力を用いて、洪水推定マップ216を生成する。気象データ204は、国立気象局(National Weather Service)によって作成された気象データなどの気象予測データを含むが、気象情報の他の任意の情報源も利用されてもよい。気象データ204は、エリアごとの降雨量の推定値、衛星写真、気象警報などを含み得る。
【0027】
履歴データ206は、過去の気象関連データならびに洪水データを含む。次に、履歴データ206は、(例えば、都市、市外局番、地域、郡等の)任意の場所の異なる時刻における降雨のレベル、ならびに洪水レベルおよび洪水が発生した場所を特定し得る。
【0028】
地理データ208は、標高、地表被覆物の種類(例えば、舗装、草、または岩)、水路、水流障害物などのエリアの地理に関する情報を含む。
入力は、水文モデル(hydrological models)210および(本明細書では、水力学的モデルとも呼ばれる)水理モデル(hydraulic models)212によって用いられ、データ解析214は、複数のモデルからの異なる結果について実行されて、洪水推定マップ216を生成する。データ解析に関する詳細は、
図19~31を参照して以下に提供される。
【0029】
水文学は、水循環、水資源、環境流域の持続可能性などの水の動き、分布、水質に関する科学的研究である。水文学は、さまざまな解析手法および科学的手法を用いてデータを解析し、環境保全、自然災害、水管理などの水に関連する問題の解決に役立つ。
【0030】
水文学に関連した現象は浸透(infiltration)である。浸透は、水が土壌に入るプロセスである。一部の水は吸収され、残りは地下水面に浸透する。土壌が水を吸収できる最大速度である浸透能力は、いくつかの要因に依存する。既に飽和している層は、その厚さに比例した抵抗を提供し、それに土壌上の水深を加えたものが推進力(水頭(hydraulic head))を提供する。乾燥した土壌は、毛細管現象による急速な浸透を可能にし、土壌が湿ると低減する。地盤の締固めは、ポロシティ(porosity)と細孔サイズを低減する。さらに、地表被覆物は、流出を遅らせること、締固めを低減すること、およびその他のプロセスによって、容量(capacity)を増大させる。
【0031】
水文学は、地表水(surface water)の流れと溶質輸送(solute transport)を定量化することを検討する。水が川に到達した後の流量を測定するための方法のいくつかは、量水標およびトレーサー技術(tracer techniques)を含む。降水量は、水文学において使用される複数のパラメータの1つである。降水量は、例えば、細かい時間スケールでの降水特性のためのディスドロメーター(disdrometer)と、雲特性、降雨率推定、雹(hail)および雪検知のレーダーと、雨と雪の定期的で正確に測定するための雨量計と、降雨地域の特定、降雨量の推定、土地被覆及び利用、土壌水分のための衛星との様々な方法で測定されることができる。
【0032】
水文モデル210は、水資源を理解し、予測し、管理することを支援する現実世界のシステム(例えば、地表水、土壌水、湿地、地下水、河口)を単純化したものである。水の流れと水質の両方は、一般的に水文モデルを使用して研究されている。
【0033】
水文モデル210には、概念モデル、アナログモデル、統計モデル、および物理的モデルなどのいくつかのタイプがある。概念モデルは、水文学的入力を出力に関連付ける重要な構成要素(例えば、特徴、事象、プロセス)を表すために一般的に使用されている。これらの構成要素は、対象のシステムの重要な特徴を説明し、多くの場合、複数のエンティティ(たとえば、水の貯留場所)およびこれらのエンティティ間の関係(たとえば、貯留場所間の流れまたは流速)を使用して構築される。概念モデルは、シナリオと組み合わせて、特定の事象(入力シナリオまたは結果シナリオのいずれか)を記述する。アナログモデルは、非数学的なアプローチを使用して水文学をシミュレーションする。物理的モデルは、物理法則を使用して水文システムを表す。概念モデルは、重要なモデル構成要素を定義するための開始点(starting point)として使用されることができる。次に、モデル構成要素間の関係は、代数方程式、常微分方程式または偏微分方程式、または積分方程式を使用して特定される。次に、モデルは、解析的または数値的手順を使用して導出される。
【0034】
水力学は、動いている液体の流れを研究する。水力学的モデルとも呼ばれる水理モデル212は、関心領域の地表上の水の流れを予測するモデルである。水力学は、液体の流れを研究する流体力学の幅広い分野のうちの一部である。Delft3D Flexible Mesh Suite、Telemac、及びHEC-RAS(Hydrologic Engineering Center’s River Analysis System)などのいくつかのタイプの水力学的モデル212が用いられることができるが、他の水力学的モデルが用いられてもよい。
【0035】
洪水推定モジュール202はまた、ライブデータ(live data)218(例えば、計測器のメーター(meter)の測定値)を受信し、モデルを新しいライブデータ218を用いて更新して、ライブデータ224を用いて更新された新しい洪水推定マップを生成し得る。
【0036】
さらに、洪水解析システム200は、(例えば、特定の場所に土嚢を配置する)軽減手段を追加するためのユーザーインタフェースを含み、軽減手段が実施される場合、洪水推定マップ226の新しい予測を生成し得る。
【0037】
さらに、洪水解析システム200は、将来発生する可能性のある複数のシナリオ222の解析に基づいて、あるエリアの洪水危険度マップ228を作成し得る。シナリオは、過去の事象に基づいていてもよく、またはユーザーによって作成されてもよい。
【0038】
図3は、いくつかの例示的な実施形態による、氾濫のライブ予測のマップ302を含むユーザーインタフェース300を示す図である。マップ302では、エリア310,312,314は、水を表す色(例えば、青)の異なる階調(shade)であり、色が暗いほど、水位が深くなる。
【0039】
エリア310は色の最も暗い階調を有し、水を運ぶ河川を表している。なお、説明を簡単にするために、水路を河川と呼ぶこともあるが、堤防、小川、人工水路などの水を運ぶあらゆる水路も河川の定義に含められることに留意されたい。エリア312,314は、水が河川敷(riverbed)を越えたことを意味する浸水レベルを表し、エリア312は、エリア314よりも暗い。
【0040】
水域の矢印は水流の速度を表しており、矢印が長いほど水が速く流れている。洪水の影響を受けた土地(Properties)316は、その中に「!」(感嘆符)が付いた三角形で表されている。いくつかの例示的な実施形態では、三角形は黄色であるが、赤などの他の色も利用することができる。土地は、建物またはその他の重要なインフラストラクチャであり得る。
【0041】
建物は、建物の床面の高さが水位を下回る洪水時に影響を受け、例えば、水が建物に流入して建物が浸水する。洪水に関連する他の要因は、水の速度が速いと、建物は急流によって損傷を受けたり、流されたりする可能性があるため、水の速度である。
【0042】
マップ302の下部にある時系列バー308は、マップ302の予測がどれだけ進んでいるかを示し、円(例えば、赤)は予測期間を示す。
図3の例示的な実施形態では、予測は、現在の時刻(時刻ゼロ)から12時間後である。一例の実施形態では、時系列は最大5日(120時間)を予測するためのものであるが、他の時系列の期間が利用されてもよい。
【0043】
左上隅に、メッセージ306が予測に関する情報を提供する。
図3の例示的な実施形態では、メッセージ306は、266~312の影響を受けた資産、および2660~2970万ドルの損失を予測している。他の例示的な実施形態では、他の情報メッセージが提供され得る。
【0044】
右下隅の入力領域304は、ユーザーによって選択され得る複数のマップ・オプションを提供する。いくつかの例示的な実施形態では、第1のオプションは、影響を受ける資産の表示をオンにするか又はオフにするかを示す。第2のオプションは、マップ302上の降雨レベルの表示をオンまたはオフにすることを提供する。いくつかの例示的な実施形態では、降雨レベルおよび水位はインチで測定されるが、フィート、ミリメートル、センチメートル、またはメートルなどの他の単位が利用されてもよい。
図3の例示的な実施形態では、降雨レベルはオフにされている。第2のオプションは、降雨レベルを表示するためのカラーインデックス(たとえば、ダークブルー、ライトブルー、グリーン、イエロー、オレンジ、レッド)を含む。
【0045】
第3のオプションを使用すると、ユーザーは、水位指標(water-level indicators)(例えば、310、312、314)をオンまたはオフにすることができ、カラースケールは、最も浅いところから最も深いところまでの水深を示す。いくつかの例示的な実施形態では、所定の閾値は、場所が浸水していると見なすための最小水位深度として定義される。例えば、所定の閾値は、1インチ(2.54cm)から12インチ(30.48cm)の範囲であるが、他の値もまた利用されてもよい。
【0046】
図3に示される実施形態は例示的なものであり、すべての可能な実施形態を説明するものではないことに留意されたい。他の実施形態は、異なる色、異なるオプション、情報ウィンドウの異なる位置などが利用されてもよい。したがって、
図3に示されている実施形態は、排他的または限定的であると解釈されるべきではなく、むしろ例示的であると解釈されるべきである。
【0047】
ユーザーインタフェース300は、起こり得る洪水を管理するための優れた柔軟性を提供する。予測機能により、ユーザーは水が氾濫原(waterbed)からどのように広がると予測されるかを確認できる。さらに、軽減モジュールを使用すると、ユーザーは軽減手段を使用した場合の洪水への影響を評価できる。
【0048】
図4は、いくつかの例示的な実施形態による、ユーザーインタフェース400の48時間後における浸水のライブ予測のためのマップ402を示す。マップ402は、時系列バー308に示されるように、現在の時刻から48時間後の予測された浸水レベルを示している。
【0049】
12時間後の洪水に関するマップ302と比較して、マップ402は、洪水がエリア412,414に広がったことを示している。洪水が大きくなるにつれて、より多くの土地416が影響を受けたものとして表示されている。
【0050】
洪水予測は、その時点で入手可能な情報を使用して、時間ゼロ(time zero)で計算されることに留意されたい。ただし、時間の経過とともにより多くの情報が利用可能になると、洪水予測は、新しい情報を反映するように調整される。たとえば、洪水データを6時間後に受信した場合、将来の期間については、新しい洪水データに基づいて予測が変更される。
【0051】
図5は、いくつかの例示的な実施形態による、ユーザーインタフェース500の84時間後の浸水のライブ予測のためのマップ502を示す。ユーザーインタフェース500において見られるように、マップ502は、浸水が広がっており、より多くの資産が影響を受けているとして示されていることを表している。時系列バー308は、予測が84時間の時間枠に対するものであることを示している。
【0052】
図3~5に示すように、浸水のライブ予測は、水の速度と損害の指標とともに、対応を計画するために、ここでは概して「管理者」と呼ばれる政府関係者に有益な情報を提供する。時系列バーで期間を選択するだけで、管理者は、将来の浸水の進展と影響を受ける重要なインフラストラクチャを確認できる。
【0053】
これで、管理者は軽減モジュールを使用して、以下で説明するように、さまざまな軽減手段が浸水レベル及び影響を受ける資産にどのように影響するかを試験することができる。ユーザーインタフェースは、ユーザーによって選択されたさまざまな情報レイヤーを表示できるため、非常に柔軟性を有している。ユーザーは、影響を受ける資産、降雨レベル、および水位指標を表示または非表示にすることを選択できる。このようにして、マップがあまりに詳細になり、詳細過ぎて明瞭さの妨げとなることがあるので、所望の情報のみを提示することによって、可読性を改善することができる。もちろん、管理者は、ズームインしてマップの解像度を上げ、目的のエリア(たとえば、浸水している領域)にフォーカスするように選択してもよい。また管理者は、ズームアウトしてより広いエリアを含むビューを取得することも選択できる。
【0054】
図6は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水軽減手段の効果を予測するためのユーザーインタフェース600を示す図である。ユーザーインタフェース600において、管理者には、軽減手段を試験するためのいくつかのオプションが提供される。たとえば、管理者は12時間後の時間帯において、特定の場所に土嚢を置いて特定のエリアに水が浸水するのを防いだり遅くしたりするとどうなるかを知りたい場合がある。
【0055】
マップ602内の軽減ボックス604は、管理者が軽減手段を入力することを可能にする。この場合、管理者は、管理者によって特定された特定の場所に土嚢を配置するために、606を選択する。他の実施形態では、洪水ラッピングシステム(flood-wrapping systems)(例えば、水の前進を抑える壁)、空気充填または水充填チューブ(air-filled or water-filled tubes)などを追加するなど、他のタイプの軽減手段が利用されてもよい。詳細は、
図14を参照して以下に提供される。
【0056】
管理者が土嚢の設置を完了すると、「軽減のシミュレーション」ボタンをクリックして、軽減手段が浸水マップにどのように影響するかの計算を開始し得る。
マップは、色分けされた軽減失敗リスク指標を含む。軽減失敗リスク指標は、軽減(例えば、土嚢)が失敗するかまたは有意な結果を達成しない確率を示す数値である。
【0057】
計算後、前のボックス608および後のボックス610は、軽減の前後の影響を受ける資産の数及び金銭的損失の差に関する詳細を提供する。ユーザーインタフェース600の例示的な実施形態では、土嚢が配置されているだけなので、まだ違いが存在しない。
【0058】
図7は、いくつかの例示的な実施形態による、84時間後の軽減手段の効果を示す。ユーザーインタフェース700は、84時間後の軽減の効果を示すマップ702を含む。視覚的に、マップ702は、土嚢が浸水を遅くし、84時間後の浸水するエリアの大きさを小さくしたことを示している。軽減なしの84時間後の浸水を示す
図5のマップ502を比較すると、土嚢が水の流れを遅くしていることがわかる。
【0059】
さらに、前のボックス610は、軽減策がなければ、影響を受ける資産の数は796~864であり、損失は7020~7260万ドルであることを示している。後のボックス612は、影響を受ける資産の数が678~721に減少し、118~143の資産が救済されたことを示している。さらに、損失は6170~6380万ドルに減少し、850~880万ドルが救済された。
【0060】
管理者は、結果を比較するためにいくつかのシミュレーションを実行してもよい。例えば、管理者が土嚢を配置するのリソースの量が限られている場合、管理者は、土嚢のどの場所が最大の利益をもたらすかを知りたいかもしれない。例えば、管理者は、もし土嚢が浸水エリアの南端に向けて配置された場合に何が起こるかをチェックし、どれだけ影響を受けた資産を防ぐことができたか及びどれだけ損失を防ぐことができたかを確認することを決定してもよい。管理者が複数のシナリオを実行すると、管理者は決定を下して土嚢を最適な場所に配置することができる。
【0061】
シミュレーションは、複数の軽減手段を含むことができることに留意されたい。例えば、管理者は、土嚢を配置するチームと、洪水ラッピングシステムを配置する別のチームとを有し、また、管理者は、複数の手段が実施された場合の利点を観察してもよい。
【0062】
図8は、いくつかの例示的な実施形態による、重要なインフラストラクチャを追跡する(tracking)ためのユーザーインタフェース800を示す図である。ユーザーインタフェース800は、重要な資産を追跡して軽減オプション804を評価するためのオプションを提供する。この例では、時系列バー308は36時間後を示しており、マップ802は、その時間までに浸水すると予測されるエリアを示す。
【0063】
図8の例では、オーロビルダム(Oroville Dam)が、潜在的な問題について追跡される。オーロビルダムは、カリフォルニア州オーロビル市の東にあるフェザー川(Feather River)にあるサクラメントバレー(Sacramento Valley)の東にあるシエラネバダ山麓(Sierra Nevada foothills)のダムである。2017年2月には、本流及び緊急余水路(emergency spillways)が決壊し、ダム周辺の住民188,000人が避難し、エリアの住民及び企業に多大な被害をもたらした。
【0064】
洪水解析システムは、資産の種類、建築材料、建設年、場所、既知のリスク、ダムの計測値などの資産固有のデータなどの重要な資産に関する情報を収集して記憶する。
マップ802で追跡される複数の資産の1つをクリックすることによって、管理者は、資産に関する情報を迅速に収集することができる。この例では、管理者がオーロビルダムを選択すると、ユーザーインタフェース800は、資産に関する詳細情報を有する情報ボックス806を提示する。場合によっては、情報ボックス806は、管理者が資産に関する追加データを追加できるように、さらなる情報を取得するかまたはデータ入力画面に入るための追加の選択可能なボタンまたはリンクを含み得る。
【0065】
特定の実施形態では、情報ボックス806は、ダムの量水標の測定値を提示する。ダムからの水の流れを制御する8つのゲートと、対応する8つの量水標とが存在する。洪水解析システムは、量水標の測定値に基づいて、健全性指標インデックス(health indicator index)を表すゲート名の横に色分けされたアイコンとして表示される各ゲートの健全性指標インデックスを生成する。
【0066】
さらに、洪水解析システムは、健全性指標インデックスに基づいて、またはシステム内の管理者によって特定された複数のパラメータのいくつかに基づいて、アラートおよび通知を生成し得る。これは、特に暴風雨が来る前に、計画されたメンテナンスを実行したり、潜在的な問題をチェックするために管理者によって使用され得る。
【0067】
情報ボックス806はまた、経時的な量水標の傾向(strain)を示すタイムチャートを含んでもよい。これにより、量水標の傾向の変化を迅速に表し、管理者の意思決定を助ける。この例では、時間の経過とともに傾向が増大していることが示されているため、修復処置を行う必要がある。
【0068】
図9は、いくつかの例示的な実施形態による、重要なインフラストラクチャの追跡の詳細を示す。ユーザーインタフェース900は、資産追跡の別の例であり、この場合、化学プラントおよび発電プラントのための別の例である。マップ902は、X発電所周辺エリアの浸水レベルを示している。情報ボックス906は、「冷却液レベルが低い」、「爆発の危険性」及び「警告システム停止」を含むX発電所に関するいくつかの警報を示す。なお、この予測は72時間後のものであるため、管理者はリスクを低減するための軽減措置を講じることができる。
【0069】
さらに、マップ902の左側の情報ボックス904は、X発電所を含むエリアの化学発電所のリストを示す。各発電所のアドレス、ステータス、又は警報などの簡単な情報が提供される。複数の発電所のいずれかをクリックまたは選択することによって、管理者は、X発電所の情報ボックス906によって示されるように、マップ上に追加情報を提示させることができる。
【0070】
図10は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水危険度マップ1002のシミュレーションのためのユーザーインタフェース1000を示す図である。ユーザーインタフェース1000は、洪水危険度マップを計算するシミュレーションモジュールのためのものである。洪水危険度マップ1002は、シミュレーションのために特定されたシナリオに関する色分けされた危険度指標を提供する。シミュレーションの結果は、危険度レベルが地図の中央に向かうよりも地図の右上隅で高いことを示す。管理者は、ブロックレベルなどの危険度に関する詳細を取得するために、所望のエリアを拡大表示してもよい。
【0071】
シミュレーションは、異なる入力を考慮し、気候変動に基づく危険度を予測するモデルなどの異なるモデルを使用し得る。洪水危険度マップ1002は、水位、各地点の水深、(方向と実流量を含む)流速を含む浸水エリアをブロック毎に示す浸水マップを示すことにより、当該エリアで暴風雨が発生した場合に将来何が起こるかを予測する。
【0072】
シミュレーションは異なる条件下で実行され、複数のシミュレーションの結果は、1つの洪水危険度マップに組み合わされる。このように、多くのシミュレーションは、多くの異なる条件(例えば、何百もの異なる気象パターン)の下で、また、気候変動を考慮した過去のデータに基づいて実施され得る。
【0073】
気候変動を考慮することにより、過去の気象パターンとは異なる将来の気象パターンを解析することが可能である。入力は、異なる気象条件の下での複数の時間ステップにわたる空間マップ、高解像度の降雨マップ、風場データ(wind-fields data)、相対湿度、及び入射短波・長波放射(incoming shortwave and longwave radiation)を含み得る。
【0074】
場合によっては、管理者が1つまたは複数の気象パターンを定義し、シミュレーションを実行して洪水危険度マップを生成し得る。
図11は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水シナリオ解析を定義する複数のパラメータを入力するためのユーザーインタフェース1100を示す図である。ユーザーインタフェース1100により、管理者は、洪水危険度マップを計算するための気象シナリオを選択することができる。気象シナリオは、地域の水深値を計算するための条件を定義する。気象シナリオは、過去に発生した過去の洪水事象、異なる気候シナリオ、降雨場(rainfall fields)、風、温度、放射(radiation)、土地利用、その他の様々なデータを選択することによって定義され得る。上級ユーザーの場合は、詳細な気象情報を入力して、さらに詳細な気象シナリオを定義することもできる。
【0075】
マップ1102を含む洪水入力インタフェース1106は、選択された気象シナリオの下で使用される1つ又は複数の洪水シミュレーションを設定するための異なるオプションを提供する。洪水事象、降雨場及び気候シナリオは、過去の洪水事象からのデータ(例えば、降雨マップ)を利用し得る。
【0076】
気候シナリオオプション1104は、全体的な気候シナリオを選択するための異なる予め定義されたテンプレートを提供する。気候シナリオは、気候変動を考慮に入れているため、シミュレーションは、将来発生する事象に関するものであり、異なる気候パラメータの下で今日発生する可能性のある事象とは異なる可能性がある。例えば、テンプレートは、現在の気候テンプレートと、低、中、及び高排出のテンプレートとを含む。「2099年、低排出(2099,low emission)」シナリオは、低排出シナリオの下での21世紀、2099年の気候予測である。
【0077】
洪水事象オプションは、2017年1月のロシア川(Russian River)の洪水又は2017年2月のアンダーソンダム(Anderson Dam)の氾濫などの過去の洪水に関するテンプレートを提供する。
【0078】
降雨場オプションは、30年、50年、または100年の事象を選択するためのテンプレートを含むが、他の実施形態は、異なる時間枠を含んでもよい。100年の事象は、統計的に100年ごとに起こる壊滅的な事象である。特定のエリアでは、その事象はまだ起こっていないかもしれないが、今後100年以内に起こるかもしれない。例えば、一度も浸水したことのないエリアが、壊滅的な100年の事象によって浸水する可能性がある。
【0079】
図12は、いくつかの例示的な実施形態による、危険度低減手段の費用便益解析のためのユーザーインタフェース1200を示す図である。ユーザーインタフェース1200は、潜在的な軽減手段の費用便益解析を実行する軽減モジュールを示す。マップ1202内の各ポリゴンはブロックを表し、複数のブロックはマップ1202内で(さまざまな陰影で表されるように)色分けされて、異なるレベルの損害を表す。
【0080】
ユーザーインタフェース1200は、軽減計画に関するデータを入力する入力領域1206を含む。特定の例示的な実施形態では、軽減計画は、計画に含めるために最大5つの異なるブロックを選択するようにユーザーに促すが、他の実施形態では、異なる数のブロックを許容してもよく、またはユーザーに計画のブロック数を選択させてもよい。「計画を保存」オプションを使用すると、計画を永続ストレージに記憶できる。
【0081】
シミュレーションを実行して損害レベルを計算すると、複数のブロックは損害レベルに応じて色付けされる。ユーザーがブロックを選択すると、追加情報が提供される。
図12の例では、ユーザーは、(例えば、マップ1202内のブロックをクリックすることによって)ブロック1を選択している。情報ボックス1204には、費用対効果比(例えば、1:4)、ブロック内の建物の数(例えば、12)、軽減手段による洪水被害で救済された金額(例えば、340万ドル)、ブロック内の影響を受けた人数(例えば、35)などのブロックに関する情報が表示される。
【0082】
さらに、情報ボックス1204の右上隅の色分けされたアイコンは、危険度レベルが危険度レベル3から危険度レベル2に低下したことを示している。ブロックを5フィート(1.524m)上げることで、管理者は、危険度をレベル3からレベル2に下げる。「コミュニティの評価スコア(community rating score)」とも呼ばれる危険度レベルはFEMAによって定義され、レベル1が最も低い危険度、レベル9が最も高い危険度である。危険度レベルが低いと、建物の所有者は、危険度レベルの高い建物の所有者よりも低いコストで洪水保険に加入することが可能である。
【0083】
さらに、ブロックに関する情報が、入力領域1206に提供される。この例では、入力領域1206は、ブロック1の現在の危険度レベルが「3」であることを示す。さらに、ユーザーインタフェース1200によって、ユーザーは、建物をジャッキアップする(jacking up)ことによってブロックを上げる軽減手段、または、ブロック内の構造物を購入して別の用途に変更するための市による買収オプションを選択することができる。この場合、管理者は、85万ドルの推定コストの「上昇(elevate)」オプションを選択した。
【0084】
情報メッセージは、破線が建築基準要件を満たすためにこの選択されたブロックを上げる必要がある最小の高さを示していることをユーザーに通知する。グラフ尺度(graphical scale)は、高さ(例えば、5フィート(1.524m))を表す。いくつかの場合では、FEMAは、洪水危険度を軽減するために、エリア内の建物をどれだけ高くしなければならないかの最低要件を示す規制を発行している。その要件が特定のブロックに存在する場合、FEMAの要件について管理者にメッセージが通知される。
【0085】
管理者はまた、その区画を公共の公園に割り当てるか、または駐車場として使用するかを選択し、費用は240万ドルと見積もられる。さらに、他の可能な用途および情報も、ブロックに対して提供され得る。
【0086】
いくつかの例示的な実施形態では、管理者は、いくつかの計画を作成し、次いで軽減シミュレーションを実行し得る。別のスクリーン(図示せず)では、洪水解析システムは、洪水危険度を軽減するための決定を行う際に管理者を支援するために、異なる計画の比較情報を提供する。
【0087】
図13は、いくつかの例示的な実施形態による、ヒューストン(Houston)のハリス郡(Harris County)のエリアにおける洪水解析のためのユーザーインタフェース1300を示す図である。8月27日、テキサス州ヒューストンのハリス郡は、ハリケーン・ハービー(hurricane Harvey)によってそのエリアに大量の雨が降り、浸水した。ユーザーインタフェース1300は、時系列バー1308に示されるように、2017年8月27日に実施されたかのような損害のシミュレーションを示す浸水マップ1302を示し、これはまた、浸水マップ1302が、2017年8月31日に関するものであることを示す。異なる色のエリアは、異なる陰影によって示され、異なるブロックの水深を示している。濃い線は水路を示し、マップの色は水深を示している。
【0088】
例示目的で使用したこのシミュレーションに示されているように、洪水解析ツールが2017年8月27日に利用可能であった場合、管理者は、洪水被害を予測し、洪水を低減させるための軽減手段を提供するか、または影響を受ける近隣住民と協力して住民の安全のための計画を立てることができた可能性がある。
【0089】
図14は、いくつかの例示的な実施形態による、軽減解析のためのユーザーインタフェース1400を示す図である。ユーザーインタフェース1400は、複数の軽減手段を設定するための複数のオプションを提供し、選択されたオプションは、ユーザーインタフェース1400の上部選択メニューの「対応」である。これは、管理者が予測される浸水に対して1つまたは複数の対応を入力できることを意味する。
【0090】
時系列バー1406は、この例における現在の日付が2017年8月30日であり、シミュレーションが2017年8月27日に開始されたことを示す。マップ1402は、2017年8月29日に実行されたシミュレーションに関するものであり、これは、より多くのデータが利用可能になるにつれて、シミュレーションが新しいデータを考慮するように更新されることを意味する。新しいデータは、更新された天気マップ、更新されたスクリーンゲージ(screen gauge)の読み取り値、衛星画像、現場の人々からの報告、ニュース、ソーシャルメディアなどのような多くの種類の天気および状況データを含み得る。新しいデータが入ってくると、マップ1402の更新を含むシミュレーションが更新される。
【0091】
浸水マップは、2017年8月31日の浸水レベルに関するものである。したがって、マップ1402は、軽減手段が実施された後の浸水レベルへの影響を示している。
ユーザーインタフェース1400の左側には、リソースメニュー1404がユーザーにおいて提示され、ユーザーは、複数の軽減リソースから選択することができる。いくつかの例示的な実施形態では、軽減リソースは、土嚢、岩充填セル状バリア(rock fill cellular barriers)、土壌充填セル状バリア、コンクリート充填セル状バリア、ファブリックフォールバックウォール(fabric fall-back-walls)、木材バリア、仮設スチールバリア(temporary steel barrier)、仮設コンクリートバリア、水充填管状システム(water-filled tubular systems)、および空気充填管状システムを含む。これは、網羅的なリストであることを意図したものではなく、概して、軽減手段は、異なる材料や異なる形状の異なるバリア(barriers)を含み得る。
【0092】
管理者が複数のオプションのうちの1つを選択すると、管理者は、止水物を配置する場所を選択し得る。特定の例示的な実施形態では、管理者は、マウスポインタを所望の位置に配置し、マウスをクリックし得る。他の例示的な実施形態では、タッチスクリーンが使用されて、マップ1402上の所望の場所にタッチすることによって止水物を配置し得る。
【0093】
マップ1402において、ユーザーは影響を受ける資産をオンにして、マップ1402は、多数の影響を受ける資産を示している。管理者は、任意の資産を選択して、追加情報を取得し得る。
図14の例では、利用可能な情報の異なる種類のいくつかの例として、2つの異なる資産について2つの異なるチャート1408、1410が提示されている。
【0094】
チャート1408は、時間単位のリードタイムの関数としての経時的な精度を示している。チャート1410は、時間の関数として、選択された場所での水位の予測された時系列を示している。本明細書で使用される時系列は、経時的にインデックス付けされた一組のデータ点を指す。例えば、ある場所の水深の時系列は、複数の時刻におけるその場所の水深を含む。チャート1410は、観測値、予測値、信頼区間を示している。一定期間利用可能な測定値がない可能性があるため、観測値の一部が欠落している可能性があることに留意されたい。異なる場所は、予測された時系列の異なる曲線を有し、また異なる精度のチャートを有し得る。
【0095】
情報ボックス1412は、軽減手段を実施する前の損害に関する情報を提供し、情報ボックス1414は、軽減手段を実施した後の損害に関する情報を提供する。この例では、新しい軽減手段のシミュレーションがまだ実行されていないので、情報ボックス1414の値は示されていない。
【0096】
図15は、いくつかの例示的な実施形態による、選択された軽減手段の効果を示す。この例では、ユーザーは、リソースメニュー1404において土嚢を配置することを選択した。土嚢は、強調のためにマップ1402において丸で囲まれた位置1502に配置されている。
【0097】
土嚢を配置した後にシミュレーションを実行すると、土嚢を配置した効果が情報ボックス1412、1414に表示される。影響を受ける資産は、1186~1301の範囲から1010~1105の範囲に低減した。さらに、金銭的損失は、2億1,980万ドル~2億3,920万ドルの範囲から1億8,710万ドル~2億480万ドルの範囲に低減した。
【0098】
図16は、いくつかの例示的な実施形態による、ハリス郡の洪水危険度マップ1602を備えたユーザーインタフェース1600を示す図である。いくつかの例示的な実施形態では、洪水危険度マップ1602は、起こり得る将来の気象パターンに基づいて多数のシミュレーションを実行することによって作成される。いくつかの例示的な実施形態では、数百のシミュレーションが、異なる気象シナリオの下で実行され得る。したがって、洪水危険度マップ1602は、1つの事象だけを表しているのではなく、多くの可能な事象にわたる確率的分布を表している。
【0099】
洪水危険度マップ1602は、マップ内の複数の場所が一定期間内(例えば、次の10年以内、次の50年以内、次の100年以内)に浸水する確率を表す。いくつかの例示的な実施形態では、期間は、10~100年の範囲であるが、他の期間も利用されてもよい。危険度は、危険度レベルに応じて色分けされる。いくつかの例示的な実施形態では、異なる危険度レベルのカテゴリが定義され、各危険度カテゴリには特定の色が割り当てられる。
図16の例示的な実施形態では、レベル1~4の4つの危険度カテゴリが識別されている。危険度レベルは、過去に発生した洪水の頻度と将来(たとえば、30年、50年、または100年の期間)に推定される洪水の頻度に基づいて決定される。
【0100】
複数の気象シナリオを実行することにより、洪水解析システムは洪水被害の可能性をより良く表現し、洪水管理者が浸水被害を軽減する計画を立てることを可能にする。その結果、FEMAにより提供される洪水危険度マップのような他のアプローチの結果よりも正確となる。
【0101】
FEMAは、気候変動のために異なる可能性がある将来の洪水事象ではなく、過去の洪水事象を考慮する。さらに、FEMAは、雨が降ったときに、局所的な地形を考慮せずに、地域全体に均等に雨が降ると想定している。
【0102】
一方、洪水解析システムによって生成されるシミュレーションは、
図19~31を参照して以下により詳細に説明されるように、異なる気象パターンおよび局所的な地形を考慮に入れる。
【0103】
図17は、いくつかの例示的な実施形態による、人口動態に基づくマップを生成するためのユーザーインタフェース1700を示す図である。いくつかの例示的な実施形態では、マップ1702は、軽減手段の管理において都市計画担当者または都市管理者を支援するための人口動態情報を提供する。場合によっては、都市計画担当者がある人種を他の人種よりも優遇したり、特定の人口動態を無視したりして非難される可能性がある。エリアの人口動態の分布を理解することにより、市の管理者は、軽減手段に費やされた資金が人口統計全体に均等に配分されることを確認にするための支援ツールを手に入れることができ、これにより、ある人口動態が優遇されているように見えたり、別の人口動態が無視されたりすることを避けることができる。
【0104】
図17の例では、マップ1702は、地域住民におけるヒスパニック系の人の集中度について色分けされたマップである。この例示的な実施形態では、エリア内のヒスパニック系の人の密度について3つの異なるバンド(bands)が定義されている。他の例示的な実施形態では、家族所得、年齢などの他の種類の人口動態が利用されてもよい。
【0105】
図18は、いくつかの例示的な実施形態による、選択された軽減手段の効果を示す。ユーザーインタフェース1800は、洪水危険度を低減することを計画するときに軽減手段を選択する入力領域1806を含む。たとえば、管理者は、建物を上げるか、建物を買収して建物を緑地または駐車場などの別の用途に変更するか、地表の被覆物を透水性舗装に変更するかを選択し得る。
【0106】
入力領域1806には、2つの危険度スケールが提示され、1つは現在の危険度レベルに関するものであり、もう1つは、軽減手段が実施される場合の危険度レベルに関するものである。さらに、マップ1802に示される情報ボックス1804は、現在の危険度レベル、ブロック内の建物の数、および影響を受ける人の数などの選択されたブロックに関する情報を提供する。
【0107】
管理者が軽減手段を選択してシミュレーションを実行すると、洪水解析システムは、費用及び効果の推定値を提供する。洪水解析システムは、推定値を提供するために、さまざまな種類の建設および修復措置の地理的建築コストを記録する。
【0108】
便益を計算するために、洪水解析システムは、軽減手段の有無による損害の差を決定する。新しい手段を実施した場合の推定される損害が「ゼロ」の場合、その便益は、現在の危険度レベルでの洪水の推定される損害と等しくなる。
【0109】
いくつかの例示的な実施形態では、損害は、将来の所定の期間内の予測された損害として計算される。例えば、損害推定値は、次の10年以内の洪水による予想される損害に関するものであってもよいが、他の時間間隔(例えば、15年、20年、30年、50年など)を用いてもよい。
【0110】
他の例示的な実施形態では、管理者には、費用および便益の推定値を入力するか、または洪水解析システムによって提供される推定値を修正するかのオプションが与えられる。
図19は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水解析システムの簡略概略図である。
図19は、洪水解析システム1902のアーキテクチャのモデルを示す。
【0111】
いくつかの例示的な実施形態では、洪水解析システム1902は、入力気象情報1904を取り込み、1つ又は複数の洪水氾濫マップ1912を出力する。気象情報1904は、関心領域に関する1つ又は複数の詳細な気象マップ、または任意の他の種類の気象データを含み得る。
【0112】
洪水解析システム1902は、過去のデータ、地理データ、および以前のシミュレーションの結果を格納する1つ又は複数のデータベース(図示せず)を含む。過去のデータは、気象パターン、降雨平均、ある種の壊滅的な事象の降雨データ、衛星画像等を含み得る。
【0113】
洪水解析システム1902は、(本明細書では、陸面モデル(land surface model)とも呼ばれる)洪水モニタ(flood monitor)1906、河川経路モデル1908、及び(明細書において水理モデルとも呼ばれる)洪水氾濫モデル1910を含む。
【0114】
洪水モニタ1906は、本明細書では流出マップ1914とも呼ばれる氾濫流出データ(inundation runoff data)を作成するために使用され、河川経路モデル1908は、河道(river channel)または他の水路を通って移動する水の量である各格子セル(grid cell)に関する流れ1916を予測する。流出マップは、地表上の流水量を詳細に示す。
図2の水文モデル210は、洪水モニタ1906と河川経路モデル1908とを含む。
【0115】
これまでの解決策では、水理モデルを用いて洪水氾濫マップを決定しており、過去の統計データに基づいて計算されている。例えば、100年のマップには、100年に1度の洪水イベントの氾濫が示される。一方、洪水解析システム1902は、過去及び統計データだけでなく、気象情報1904も考慮して氾濫マップを計算する。このようにして、洪水解析システム1902は、過去のデータに基づくだけでなく、到来する暴風雨に関する将来の気象情報に基づいて氾濫を予測する。洪水モニタ1906の詳細は、
図20を参照して以下に提供され、河川経路モデル1908の詳細は、
図21を参照して以下に提供される。
【0116】
水文モデルが流出/河川流量マップを計算した後、
図22~23を参照して以下により詳細に説明するように、水理モデル1910は、地表上の水の流れを考慮することによって詳細な氾濫マップを決定するために使用される。
【0117】
図20は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水モニタ1906の機能を示している。洪水モニタ1906は、降水量、温度、風、および他の気象データの空間マップを含む気象情報1904を取り込む。いくつかの例示的な実施形態では、入力は国立気象局から取得されるが、他の情報源も可能である。
【0118】
いくつかの例示的な実施形態では、マップ2002は地理的に複数のグリッドセルに分割され、気象データは異なるグリッドセル2004に対して提供される。いくつかの例示的な実施形態では、各グリッドセル2004は、6km×6kmの寸法を有するが、グリッドセル2004の他のサイズも可能である。
【0119】
洪水モニタ1906は、エネルギーおよび水分の流れ(energy and moisture fluxes)を決定することを含む地表面で何が起こるかをシミュレーションする。次に、洪水モニタ1906は、地表上の流出水量を表す氾濫流出マップ1914を生成する。地表上の流出水量は、水の一部が地面に浸透する可能性があるため、グリッドセルに降る雨の量と地表にとどまる水の量とに依存する。
【0120】
氾濫流出マップ1914は、流出、基底流量(baseflow)、土壌水分、およびその他の変数の時系列に符号化され得る。氾濫流出マップ1914は、入力気象データと同じ複数のグリッドセルに対応する複数のグリッドセルに分割されたマップを含む。したがって、この時点での解像度はグリッドセルの解像度であり、時系列出力は各グリッドセルについて使用できる。次に、氾濫流出マップ1914は、河川経路モデル1908に供給される。
【0121】
図21は、いくつかの例示的な実施形態による、河川経路モデル1908の機能を示す。河川経路モデル1908は、洪水モニタ1906によって生成された氾濫流出マップ1914を受信し、静的入力パラメータである河川網統計パラメータ(river network statistical parameters)2106も使用する。河川経路モデル1908は、氾濫流出マップ1914を使用して、異なる場所において河川の水がどれだけ集中しているかを決定する。本明細書において使用される場合、「河川」は、河川または人工水路を含む任意の水路の総称である。
【0122】
自然に流れる水(free-running waters)は最終的に河川に到達し、河川に到達した水の量が川の容量を超えると、洪水が発生する。
河川経路モデル1908は、グリッドセルに基づく流出マップである空間マップ2102を使用する。河川経路モデル1908は、各地点における水の量を経時的に決定する。
【0123】
氾濫流出マップ1914及び空間マップ2102に基づいて、河川網2104は、時間の関数として、河道内の各地点(例えば、グリッドセル)について、どのくらいの水が流れているかの時系列を用いて生成される。
【0124】
河川経路モデル1908は、グリッドセルの流入および流出を含む各グリッドセルについて流れ1916を生成し、流入および流出は、グリッドセルに流入および流出する水の量をそれぞれ示す。
【0125】
図22は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水氾濫モデル1910の機能を示す。河川の各地点における流入及び流出の時系列の情報が決定されると、洪水氾濫モデル1910が実行される。
【0126】
洪水モニタ1906及び河川経路モデル1908は、バックグラウンドで頻繁に実行されることを留意されたい。洪水氾濫モデル1910は、1つまたは複数の場所における時系列が洪水段階を超えたことを示す信号が河川経路モデル1908から受信されると実行される。すなわち、洪水条件が存在する場合に洪水氾濫モデル1910が実行される。
【0127】
洪水氾濫モデル1910は、各グリッドセル内で起こっていることをシミュレーションする。以前の処理では、シミュレーションは、より大きなスケール、例えば、グリッドセルスケールで実施された。洪水氾濫モデル1910は、それぞれの木および建物が水の流れに与える影響など、水の流れに対するさまざまな障害物の影響をシミュレーションする。
【0128】
シミュレーションは細かいレベルで実施されるので、洪水氾濫モデル1910は、解析される地理に依存して大量のコンピュータ資源を使用する。
入力2202は、各セルの水の流入および流出(例えば、流れ1916)、地表面の標高を示す数値標高モデル(Digital Elevation Model : DEM)及び道路、海岸、建物、重要なインフラストラクチャのシェープファイル(shapefiles)に基づいたメッシュ(mesh)、地域の地形/水深測量、並びにその他のパラメータ(例えば、地表面の粗さ)のうちの1つ以上を含む。
【0129】
DEMは、エリア内の土地の標高データを定義する。シェープファイルは、建物、道路、海岸線などのエリア内の複数の要素のフットプリント(footprints)を定義する。さらに、重要な資産(例えば、重要なインフラストラクチャ)のシェープファイルを受信して、それらの重要な資産のより詳細な分析及びより具体的な情報を提供し得る。
【0130】
地形/水深測量は、植生、水の障害物、露出土壌、水深など、エリアのさまざまな特徴の詳細を提供する。表面粗さ及び他の統計データのような付加的パラメータは、土地利用のような特定のタイプの情報を推測するために使用され得る。粗さマップは、地表面がどれだけ滑らか(または粗さ)であるかを示す。地表面が非常に滑らかな場合(例えば、セメント、岩石)、水が速く流れるが、地表面が粗い場合(例えば、草、植生、樹木)、水はゆっくり流れる。
【0131】
場合によっては、市の管理者が粗さ情報を利用して、水の流れを遅くするかまたは速くするために地表面を変更することができる。概して、洪水を制御するためにはゆっくりと流れる水が適しているため、市の管理者が植生を設置するか又はセメントの水路の表面を変更することを計画し得る。
【0132】
土嚢または他の止水物を追加するなどの軽減手段が実施されると、この情報が洪水氾濫モデル1910に入力され、
図23を参照して後述するように、地理的メッシュが更新される。このように、軽減手段は、水の流れを変化させ、洪水氾濫マップ1912に変化をもたらす。洪水氾濫モデル1910は、水の流れに対して新しい壁バリアが存在することを知る必要があり、新しい壁バリアは、水の流れを変化させる。これは、特定のエリアに流れ込む水の量が増え、他のエリアに流れ込む水の量が減ることを意味する。目標は、重要度の低い地域または水路により早く水を運ぶことができる地域に水を送ることである。
【0133】
図23は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水氾濫モデル1910の一例を示す。洪水氾濫モデル1910は、マップ2302の複数のサンプルポイントの標高、道路シェープファイル2304、および建物シェープファイル2306を組み合わせてメッシュ2314を計算する。シェープファイルは、緯度/経度及びその他の属性を点、線分、またはポリゴンとして記憶する地理空間ベクトルデータファイル形式(geospatial vector data file format)である。たとえば、データは、建物、井戸、河川、湖などを示す。さらに、データ属性はオブジェクトを記述するために使用され、データ属性は、たとえば「名前」または「温度」を含み得る。
【0134】
メッシュ2314
によって、地理的表面
は、例えば、ポリゴン(polygons)(または他の任意の適切な形状)の形態で成形され、地理的表面全体を重なり合うことなく覆う
複数のサブセルに分割される。したがって、メッシュ2314は、地面を覆う網目のようなものである。
図23の例では、メッシュ2314は複数の三角形でできているが、他の実施形態は、より多くの辺を有する他のメッシュサブセルポリゴン(mesh sub-cell polygons)を用いてもよい。各ポリゴンは、メッシュ2314のサブセルであるかまたはこの例では三角形である。
【0135】
洪水氾濫モデル1910は、土地の標高および表面特性(例えば、粗さ)などの各サブセルの情報を保持する。各サブセルのサイズは、特定のエリアが他のエリアよりも重要であるためにメッシュ2314内で変化させてもよく、したがって、重要なエリアは、より大きなサブセルを有することになる重要度の低いエリアよりも小さなサブセルを有することになる。したがって、重要なエリアについては、それほど関連性のないエリアよりも多くの利用可能な情報が存在する。
【0136】
いくつかの例示的な実施形態では、三角形の辺は、10~30mを示すが、他の実施形態は、より小さな辺(例えば1cm程度)またはより大きな辺(例えば、100m以上)を利用してもよい。たとえば、幅10mの河川は、河川敷に関する十分な量の情報を保持するため、3mの三角形のサイズを有してもよい。
【0137】
図23は、メッシュ2314の透視図マップ2308および平面図マップ2312を含む。メッシュ2314内では、閉じた幾何学的な図形2310が堤防の位置を示しており、これは、堤防が溢れると洪水が発生するので、洪水を決定するために特に重要である。
【0138】
堤防の境界に関する多くの情報を保持することが重要であるため、マップ2308、2312において見られるように、堤防周辺エリアには多くの三角形がある。他のエリアは、堤防からさらに離れたオープンスペースを含み、より大きな三角形を有する。
【0139】
いくつかの例示的な実施形態では、マップ2380,2312内のメッシュ2314は、色の凡例表2316によって示されるように、色分けされている。色分けにより、管理者は複数のメッシュセルの標高をより正確に把握できる。たとえば、低いエリアの暗い色は水路の場所を示し、緑色は堤防の隣にある低いエリアを示し、明るい色(例えば、黄色または赤)は洪水の低い危険度を有する高い標高のエリアを示す。色分けは、洪水の高い危険度の複数の建物を迅速に特定することを支援する。
【0140】
三角形の大きさと洪水氾濫モデル1910に必要な計算リソースとの間にはバランスがある。メッシュ2314が細かいほど、メッシュ内のセルが多くなり、洪水氾濫モデル1910を作成するためにより多くの計算リソースが必要とされる。このため、重要なエリアでは小さなセルを選択し、重要でない領域または実質的に平坦で均一なエリアでは大きなセルを選択することが重要である。
【0141】
図24は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水解析システム1902の異なる処理に対する解像度を示す。洪水解析システム1902を介して情報が処理されると、異なるマップの解像度が変化し、メッシュの解像度の洪水氾濫マップ1912で終了する。
【0142】
図24は、凡例2402によって示される解像度を示し、星はグリッドレベル(例えば、6km)の解像度を示し、三角形はメッシュレベル(例えば、10m)の解像度を示す。
【0143】
したがって、いくつかの例示的な実施形態では、気象情報1904、洪水モニタ1906、氾濫流出マップ1914、河川経路モデル1908、および各セルの流れ1916は、グリッドセルサイズである。
【0144】
洪水氾濫モデル1910及び洪水氾濫マップ1912はメッシュサイズである。したがって、最初に、情報はグリッドレベルで処理されるが、その後、洪水氾濫モデル1910は、より細かい解像度を使用するので、洪水解析システム1902は、ブロックレベルまたは建物レベルなどの高解像度で洪水氾濫マップ1912を生成することができる。
【0145】
図25は、いくつかの例示的な実施形態による、リアルタイムデータ同化(real-time data assimilation)による洪水解析システム1902の最適化を示す。洪水解析システム1902は、ライブ情報を受信し、新しい情報をシミュレーションして洪水氾濫マップ1912を更新する動的システムである。
【0146】
特定の実施形態では、新しいライブデータ2510が取得されると、ライブデータ2510は、河川経路モデル1908及び洪水氾濫モデル1910に入力され得る。さらに、気象情報1904は、洪水モニタ1906に対して更新されてもよい。ライブデータ2510は、地域の衛星画像又は量水標からの読み取り値など、異なる種類のものであってもよい。米国内には約2,000カ所の観測所があり、河川沿いに位置し、リアルタイムで水位を提供している。
【0147】
ライブデータ2510が受信されると、洪水解析システム1902は、洪水予測の現在の画像(vision)を有するようにリアルタイムで洪水氾濫マップ1912を更新する。したがって、洪水解析システム1902は、変化する状況および更新された情報に迅速に適応することができるライブシステムである。
【0148】
河川経路モデル1908は、受信した新しいライブデータ2510をリアルタイムで同化し(assimilates)(2504)、洪水氾濫モデル1910は、ライブデータ2510を同化する(2508)。
【0149】
いくつかの実施形態では、ライブデータ2510が受信されると、チェックが行われて、ライブデータ2510(例えば、ある場所の水深)が所定の閾値を超える推定値と異なるかどうかを判定する。データの差がしきい値を下回っている場合、モデルは更新されない。しかし、データの差が閾値よりも大きい場合には、新たなシミュレーションが実行されて洪水氾濫マップ1912を更新する。
【0150】
さらに、推定値と現場から取得される実際の値との比較によって、モデルが最適化されて特性を改善し得る。最適化は、現実に合うようにモデルの予測関数を調整することにより行われる。これは、フィードバック情報を利用して、河川経路モデル1908を最適化し(2502)、洪水氾濫モデル1910を最適化する(2506)ことを意味する。
【0151】
洪水解析システム1902は、リアルタイム情報をシミュレーションし、異なるモデルの精度を連続的に最適化することによって、予測データの精度を改善し続けることができる。3つのモデル(洪水モニタ1906、河川経路モデル1908、及び洪水氾濫モデル1910)をライブの動的なシステムに統合することにより、洪水解析システム1902は、暴風雨の間に起こっていることの現実を反映し、現場から受信したデータの更新を同化する洪水氾濫マップ1912を生成することができる。さらに、(例えば、
図14のチャート1410に示されるような)信頼レベルは、新しいデータが利用可能になるにつれて、および予測時間が短縮されるにつれて、改善し続けている。
【0152】
図26は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水監視および管理システムのための方法2600のフローチャートである。処理2602は、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサによって、複数のセルに分割された地理的領域の気象情報にアクセスするものである。
【0153】
処理2602から、方法は、処理2604に進み、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、気象情報に基づく流出データを生成する。流出データは、地理的領域の各セルの地表面上の予測される自然に流れる水の量を含む。
【0154】
処理2604から、方法は、処理2606に進み、ここで、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、セル間の水の流入および流出の予測を生成する。処理2606から、方法は、処理2608に進み、地理的領域内の各セルの複数のサブセルについて、セル間の流入および流出の予測および水理モデルに基づいて各サブセル内の予測される水深を計算する。
【0155】
処理2608から、方法は、処理2610に進み、ここで、洪水解析システムの1つ又は複数のプロセッサが、地理的領域内の各サブセルの予測される水深を示す洪水氾濫マップを生成する。
【0156】
処理2610から、方法は、処理2612に進み、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示する。
【0157】
特定の例では、ユーザーインタフェースは、選択された時刻と複数の選択可能な時刻とを含む時系列バーを含み、複数の選択可能な時刻から異なる時刻を選択することにより、異なる時刻の洪水氾濫マップを更新する。
【0158】
特定の例では、方法2600は、さらに、1つ又は複数のサブセルに関する新たな水深データにアクセスすること、新たな水深データに基づいて洪水氾濫マップを再計算すること、を含む。
【0159】
特定の例では、各サブセルの予測される水深を計算することは、地理的領域のメッシュを生成し、メッシュによって、地理的領域は、重なり合うことなく地理的領域をカバーする複数のサブセルに分割されること、サブセルの標高と地表面の種類に基づいて、メッシュの各サブセルの水位を識別すること、をさらに含む。
【0160】
特定の例では、各サブセルは、1~20メートルの範囲のサイズの複数の辺を有するポリゴンである。
特定の例では、方法2600は、地理的領域内の資産を追跡すること、ユーザーインタフェース内で地理的領域内の資産に関する洪水情報を提供すること、をさらに含む。
【0161】
特定の例では、流出データを生成することは、水文モデルを利用して流出データを生成することをさらに含む。
特定の例では、各セルの流入および流出の予測を生成することは、河川網に関するデータ、河川網内の複数のセルを含む河川網に関するデータ、および河川網の統計パラメータにアクセスすること、ならびに河川網のデータに基づいて各セルの流入及び流出の予測を生成すること、を含む。
【0162】
特定の例では、方法2600は、さらに、洪水による地理的領域における損害を推定し、推定された損害をユーザーインタフェースにおいて提示することを含む。
特定の例では、ユーザーインタフェースは、降雨レベル、色分けされた水深、洪水の影響を受ける資産、および洪水による損失の推定を示す複数のオプションを含む。
【0163】
図27は、いくつかの例示的な実施形態による、軽減解析のためのシステムを示す。上述したように、洪水解析システム1902は、到来する暴風雨に対する氾濫を予測するために使用されることができ、また、洪水からの損害を低減するために市職員が実施し得る軽減手段の効果を解析するために使用されることができる。
【0164】
処理2702では、例えば
図15に示されるように、複数の軽減手段を選択するためのユーザーインタフェースが管理者に提供される。管理者は、地表面上の水の流れを制御するために、土嚢などの止水物を配置する場所を選択し得る。
【0165】
処理2702から、方法は、処理2704に進み、ここで、軽減手段が管理者からユーザーインタフェースを介して受け取られる。処理2706では、複数の軽減手段が洪水解析システム1902に入力され、次いで、複数の軽減手段が実施されたかのように洪水氾濫マップ1912を再計算される。
【0166】
複数の軽減手段は、例えば、メッシュ2314を変更することによって洪水氾濫モデル1910に影響を与えることができる。すなわち、メッシュ2314内のいくつかのセルのデータは、複数の軽減手段による変化を反映するように変化する。たとえば、1つまたは複数の三角形の高さ、及び1つまたは複数の三角形の地表面の種類が増加されてもよい。
【0167】
図28は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水復旧解析ツールのための方法2800のフローチャートである。処理2802は、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサによって、地理的領域の気象データおよび地理的領域の地形データに基づいて、地理的領域における水深の予測を生成するものである。
【0168】
処理2802から、方法は、処理2804に進み、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、水深の予測を示す洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示し、ユーザーインタフェースは、複数の洪水軽減手段を入力するためのオプションを備える。
【0169】
処理2804から、方法は、処理2806に進み、ここで、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、ユーザーインタフェースを介して複数の洪水軽減手段を受け取る。処理2806から、方法は、処理2808に進み、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、受け取った複数の洪水軽減手段を含むように地形データを更新する。
【0170】
処理2808から、方法は、処理2810に進み、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、更新された地形データに基づいて地理的領域内の水深の更新された予測を生成する。
【0171】
処理2810から、方法は、処理2812に進み、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、更新された水深の予測および洪水軽減手段の地理的位置を示す更新された洪水氾濫マップをユーザーインタフェースにおいて提示する。
【0172】
特定の例では、洪水軽減手段は、土嚢、岩充填セル状バリア、土壌充填セル状バリア、コンクリート充填セル状バリア、ファブリックフォールバックウォール、木材バリア、スチールバリア、コンクリートバリア、水充填管状システム、および空気充填管状システムからなるグループから選択された止水物を配置することを含む。
【0173】
特定の例では、ユーザーインタフェースは、洪水氾濫マップ内の位置を選択することによって複数の洪水軽減手段を配置するためのオプションを含む。
特定の例では、方法2800は、さらに、複数の洪水軽減手段を配置する前に、洪水によって生じる第1の損害を計算し、複数の洪水軽減手段を配置した後に、洪水によって生じる第2の損害を計算し、第1の損害と第2の損害をユーザーインタフェースにおいて提示することを含む。
【0174】
特定の例では、方法2800は、さらに、複数の洪水軽減手段を配置する前に、洪水によって損害を受けた第1の資産を決定すること、複数の洪水軽減手段を配置した後に、洪水によって損害を受けた第2の資産を決定すること、第1の資産および第2の資産をユーザーインタフェースにおいて提示すること、を含む。
【0175】
特定の例では、ユーザーインタフェースは、選択された時刻と複数の選択可能な時刻とを含む時系列バーを含み、選択された時刻について水深の予測が生成され、複数の選択可能な時刻から異なる時刻を選択すると、異なる時刻について水深の予測が更新される。
【0176】
特定の例では、方法2800は、軽減失敗リスク指標をユーザーインタフェースにおいて提示することをさらに含む。
特定の例では、水深の予測を生成することは、地理的領域のメッシュを生成し、メッシュによって、地理的領域は、重なり合うことなく地理的領域をカバーする複数のサブセルに分割されること、サブセルの標高と地表面の種類に基づいて、メッシュの各サブセルの水位を識別すること、をさらに含み、地形データを更新することは、サブセルの標高および地表面の種類の1つまたは複数を更新することを含む。
【0177】
特定の例では、ユーザーインタフェースは、洪水軽減手段を示す洪水氾濫マップに配置されたアイコンを含む。
特定の例では、ユーザーインタフェースは、降雨レベル、色分けされた水深、洪水の影響を受ける資産、および洪水による損失の推定を示す複数のオプションを含む。
【0178】
図29は、いくつかの例示的な実施形態による洪水危険度マップ1602の決定を示す。いくつかの例示的な実施形態では、処理2904においてユーザーインタフェースが提供され、このユーザーインタフェースは、洪水危険度を計算するための1つ又は複数の気象シナリオを選択するためのものである。たとえば、
図11に例示されたユーザーインタフェースを参照されたい。
【0179】
処理2904から、方法は、処理2906に進み、ここで、1つ又は複数のユーザー選択が受け取られ、ユーザー選択は、1つ又は複数の気象シナリオまたは1つ又は複数のユーザー定義シナリオに関するものである。
【0180】
次いで、ユーザー選択は、洪水危険度システム2902内のシミュレーションマネージャ2908に入力される。次いで、シミュレーションマネージャ2908は、洪水解析システム1902にシナリオを入力することにより、定義された各シナリオについてシミュレーションを実行する。次いで、洪水解析システム1902は、各シナリオについて洪水氾濫マップ1912を生成する。
【0181】
シミュレーションマネージャ2908は、各シナリオから生じる洪水氾濫マップ1912によって提供される情報を組み合わせることによって、全体的な洪水危険度マップ1602を生成する(2912)。いくつかの例示的な実施形態では、全体的な洪水危険度マップは、各シミュレーションの氾濫マップからの複数の値を平均化することによって計算される。例示的な本実施形態では、確率が各シナリオに割り当てられ、全体的な洪水危険度マップは、その確率で重み付けされた氾濫マップを追加することによって算出される。他の例示的な実施形態では、全体的な洪水危険度マップ1602は、最悪の洪水を伴う1つ又は複数のシナリオを選択し、次に選択された1つ又は複数のシナリオを組み合わせることによって計算される。いくつかの例示的な実施形態では、各シナリオからのシミュレーションは、重要度値の上位5パーセンタイル(percentile)を平均化することによって組み合わされるが、複数のシナリオを組み合わせる他の方法も可能である。
【0182】
FEMAが作成した洪水マップのアプローチ等の他のアプローチでは、100年及び500年の再現期間を有する洪水マップが計算される。これは、過去の統計データに基づいて、洪水が100年または500年に1回発生すると予想されることを意味する。
【0183】
FEMAモデルは、洪水データの過去の気象の統計分析に基づいている。ただし、多くの場所では、このタイプのデータは、過去20年または30年しか利用できない。したがって、統計分析は、データを外挿して(extrapolates)100年の事象を計算する。
【0184】
さらに、FEMAモデルは過去のデータに基づいているため、FEMAモデルは気候変動を考慮していない。しかし、複数の気象パターンは変更しており、気候変動に基づく複数の気象シナリオを生成することによって、洪水危険度システム2902は、より正確に予測される複数の危険度マップを生成し得る。たとえば、気候変動に伴い、降雨量は絶えず変化しており、さまざまな場所での降雨量の分布を含む。乾燥したエリアはより乾燥することになり、多湿のエリアはより湿ることになると考えられている。たとえば、ハリス郡の洪水は、以前の気候パターンの解析によれば、まったく予期されていなかったタイプの洪水である。気候変動モデルは、新しい気象パターンを考慮に入れることができる。
【0185】
いくつかの実施例では、気候変動は、IPCC、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)によって提供された気候変動データに基づいているが、気候変動データの他の情報源を使用することもできる。
【0186】
図30は、いくつかの例示的な実施形態による、洪水危険度解析及びマッピングのための方法3000のフローチャートである。処理3002は、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサによって、洪水危険度マップを計算するための複数のオプションをグラフィカル・ユーザーインタフェースにおいて提示するものである。
【0187】
処理3002から、方法は、処理3004に進み、グラフィカル・ユーザーインタフェースを介して、洪水危険度マップを計算するための地理的領域および気象シナリオを特定する入力を受け取る。
【0188】
処理3004から、方法は、処理3006に進み、ここで、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、地理的領域を少なくとも複数のセルに分割する。
処理3006から、方法は、処理3008に進み、水文モデルを利用して、気象シナリオに基づいて地理的領域内のセル間の水の流入および流出を計算する。
【0189】
処理3008から、方法は、処理3010に進み、水理モデルを利用して、気象シナリオおよびセル間の水の流入及び流出に基づいて、各セル内の水深を計算する。
処理3010から、方法は、処理3012に進み、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、各セル内の計算された水深に基づく洪水危険度マップを生成する。洪水危険度マップは、気象シナリオの下で、地理的領域の各セルが水に浸水する確率を示す。
【0190】
処理3012から、方法は、処理3014に進み、洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、洪水危険度マップをグラフィカル・ユーザーインタフェースにおいて提示する。
【0191】
特定の例では、気象シナリオを特定するための複数のオプションは、30年の降雨シナリオ、50年の降雨シナリオ、または100年の気象シナリオと、過去に起こった気象現象と、気候シナリオと、風と、温度と、土地利用とのうちの1つ以上を選択することを含む。
【0192】
特定の例では、洪水危険度マップを生成することは、複数の気象事象について各セルの水深を計算すること、複数の気象パターンについて各セルの水深の複数の値を平均化すること、をさらに含む。
【0193】
特定の例では、洪水危険度マップを生成することは、さらに、各気象事象に確率を割り当て、各気象事象について、割り当てられた確率によって重み付けされた各セル内の水深の複数の値を加算すること、を含む。
【0194】
特定の例では、グラフィカル・ユーザーインタフェースは、気候変動に基づいて気象シナリオを選択するための第1のオプションを含む。
特定の例では、方法3000は、各セルを複数のサブセルに分割すること、をさらに含み、ここで、水理モデルは、各サブセルについて水深を計算する。
【0195】
特定の例では、グラフィカル・ユーザーインタフェースは、複数の軽減手段を追加するための第2のオプションを含む。
特定の例では、軽減手段は、構造物を上げることまたは資産を購入することのうちの1つまたは複数を含む。
【0196】
特定の例では、方法3000は、軽減手段を適用する費用を計算すること、軽減手段を適用することによる便益を算定し、その便益は、洪水の場合に回避される損害に基づいて算定されること、費用および便益をグラフィカル・ユーザーインタフェースに表示すること、を含む。
【0197】
特定の例では、洪水危険度マップを生成することは、さらに、セルが浸水する確率に基づいて、地理的領域内の各セルに洪水危険度指標を割り当て、各セルの洪水危険度指標は、所定の複数の危険度指標から選択されること、及び洪水危険度マップにおいて洪水危険度指標を表示し、所定の複数の危険度指標の各々が、洪水危険度マップにおいて異なる色で色分けされていること、を含む。
【0198】
図31は、本明細書において記載された1つまたは複数の例示的なプロセス実施形態が実施されるかまたは制御され得るマシン3100の一例を示すブロック図である。代替実施形態では、マシン3100は、独立型デバイスとして動作してもよく、または他のマシンに接続(例えば、ネットワーク化)されてもよい。ネットワーク化された構成では、マシン3100は、サーバークライアントネットワーク環境におけるサーバーマシン、クライアントマシン、またはその両方の能力で動作してもよい。一例では、マシン3100は、ピアツーピア(peer-to-peer : P2P)(その他の分散型)ネットワーク環境においてピア・マシン(peer machine)として動作してもよい。さらに、単一のマシン3100のみが図示されているが、「マシン」という用語はまた、クラウド・コンピューティング、サービス型ソフトウェア(software as a service : SaaS)、または他のコンピュータクラスタ構成を用いるなどして、本明細書において説明される複数の方法のうちの任意の1つ又は複数を実行するための一組(または複数の組)の命令を個々に又は共同で実行する複数のマシンの任意の集合を含むと解釈されるべきである。
【0199】
本明細書において記載される複数の例は、ロジック、多数の構成要素、またはメカニズムを含んでもよく、またはそれらによって動作してもよい。回路構成は、(例えば、単純な回路、ゲート、ロジック等の)ハードウェアを含む有体物のエンティティで具体化された複数の回路の集合体である。回路構成の帰属関係(membership)は、時間にわたって柔軟性を有してもよく、このことによりハードウェアの可変性が実現されていてもよい。複数の回路は、複数の要素(member)を含み、動作する際に、単独で又は組み合わせられて、指定された演算を実行してもよい。一例では、回路構成のハードウェアは、(例えば、配線接続されるといった方法で)変わらない構成を有し、ある指定された演算を実行するように構成されてもよい。一例では、回路構成のハードウェアは、指定された演算に関する命令を符号化するように(例えば、磁気的に、電気的に、或いは不変質量粒子(invariant massed particles)の可変な配置により)物理的に修正されるコンピュータ可読媒体を含む(例えば、実行ユニット、トランジスタ、単純な回路等の)可変的に接続された複数の物理コンポーネントを含み得る。複数の物理コンポーネントを接続する際に、ハードウェア構成要素の基本的な電気特性を変化させる(例えば、絶縁体から導体へ、またはその逆)。複数の命令により、(例えば、実行ユニットまたはローディングメカニズム等の)埋め込まれたハードウェアは、可変の接続によってハードウェア内に回路の複数の要素を生成して、動作中に特定の演算の複数の部分を実行することが可能となる。したがって、コンピュータ可読媒体は、デバイスが動作している際に、回路の他のコンポーネントに通信可能に接続される。一例では、1つよりも多くの回路構成の1つよりも多くの要素の中で、これらの物理コンポーネントのうちのいずれかを使用してもよい。例えば、演算に応じて、ある時間点において第1の回路構成の第1の回路の中で複数の実行ユニットを使用してもよく、第1の回路構成の中の第2の回路によってそれらの実行ユニットを再利用してもよく、或いは、異なる時間点において第2の回路構成の中の第3の回路によってこれらの実行ユニットを使用してもよい。
【0200】
マシン(例えば、コンピュータシステム)3100は、ハードウェアプロセッサ3102(例えば、中央処理装置(CPU)、ハードウェアプロセッサコア、またはそれらの任意の組み合わせ)、グラフィックス処理ユニット(GPU)3103、メインメモリ3104、およびスタティックメモリ3106を含み、これらの一部または全部は、インターリンク(例えば、バス)3108を介して互いに通信し得る。マシン3100はさらに、表示デバイス3110、英数字入力装置3112(例えば、キーボード)、およびユーザーインタフェース(UI)ナビゲーションデバイス3114(例えば、マウス)を含み得る。一例では、表示デバイス3110、英数字入力装置3112、およびUIナビゲーションデバイス3114は、タッチスクリーンディスプレイであってもよい。マシン3100は、さらに、大容量記憶デバイス(例えば、ドライブユニット)3116、信号生成デバイス3118(例えば、スピーカー)、ネットワークインタフェースデバイス3120と、全地球測位システム(GPS)センサ、コンパス、加速度計、生体計測センサ、その他のセンサなどの1つ又は複数のセンサ3121とを含み得る。マシン3100は、1つまたは複数の周辺デバイス(例えば、プリンタ、カードリーダーなど)と通信または制御するために、シリアル(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB))、パラレル、または他の有線または無線(例えば、赤外線(IR)、近距離無線通信(NFC)など)接続などの出力コントローラ3128を含み得る。
【0201】
大容量記憶デバイス3116は、本明細書において記載される技術または機能のうちの任意の1つまたは複数によって具体化または利用される1つ又は複数の組のデータ構造または命令3124(例えば、ソフトウェア)が記憶される機械可読媒体3122を含み得る。複数の命令3124はまた、マシン3100によるその実行中に、メインメモリ3104内、スタティックメモリ3106内、ハードウェアプロセッサ3102内、またはGPU3103内に、完全にまたは少なくとも部分的に存在してもよい。一例では、ハードウェアプロセッサ3102、GPU3103、メインメモリ3104、スタティックメモリ3106、または大容量記憶デバイス3116の1つまたは任意の組み合わせが、機械可読媒体を構成してもよい。
【0202】
機械可読媒体3122が単一の媒体として示されているが、「機械可読媒体」という用語は、命令3124を記憶するように構成された単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型もしくは分散型データベース、及び/又は関連するキャッシュおよびサーバ)を含み得る。
【0203】
「機械可読媒体」という用語は、マシン3100による実行のために複数の命令3124を記憶するか、符号化するか、または転送することができ、マシン3100が本開示の技術のうちのいずれか1つ以上を実行すること、またはそのような複数の命令3124によって使用されるかまたはそれに関連する複数のデータ構造を記憶するか、符号化するか、または転送することを可能にする任意の媒体を含み得る。非限定的な機械可読媒体の例は、ソリッドステートメモリ、及び光媒体及び磁気媒体を含んでもよい。1つの例では、大規模機械可読媒体(massed machine readable medium)は、(例えば、静止質量等の)不変の質量を有する複数の粒子を使用する機械可読媒体を含む。したがって、大規模機械可読媒体は、一時的な伝播信号ではない。大規模機械可読媒体の特定の例は、(例えば、電気的プログラム可能な読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能なプログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)等の)半導体メモリ・デバイス及びフラッシュメモリデバイス等の不揮発性メモリ、内部ハードディスク及びリムーバブルディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク、CD-ROM及びDVD-ROMディスクを含んでもよい。
【0204】
命令3124は、さらに、ネットワークインタフェースデバイス3120により送信媒体を使用して通信ネットワーク3126を介して送信または受信されてもよい。
本明細書では、「メモリ」という用語は、一時的または永続的にデータを記憶することのできる機械可読媒体を指し、限定はしないが、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、バッファ・メモリ、フラッシュ・メモリ、およびキャッシュ・メモリを含むように理解することができる。例示的実施形態では機械可読媒体3122が単一の媒体であるように示されているが、「機械可読媒体」という用語は、命令3124を記憶することができる単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型もしくは分散型データベース、または関連するキャッシュおよびサーバ)を含むように理解すべきである。「機械可読媒体」という用語は、マシン3100による実行のための命令3124を記憶することのできる任意の媒体、複数の媒体の組合せを含むように理解されるものとし、したがって命令3124は、マシン3100の1つまたは複数のプロセッサ(例えば、プロセッサ3102)によって実行されるとき、本明細書で説明する方法のうちの任意の1つまたは複数を全体的または部分的にマシン3100に実施させる。したがって、「機械可読媒体」とは、単一の記憶装置またはデバイス、ならびに複数の記憶装置またはデバイスを含むクラウド・ベースの記憶システムまたは記憶ネットワークを指す。したがって「機械可読媒体」という用語は、限定はしないが、固体メモリ、光媒体、磁気媒体、またはそれらの任意の適切な組合せの形態の1つまたは複数の有形(例えば、非一時的)データ・リポジトリを含むように理解されるものとする。
【0205】
本明細書全体にわたって、複数の実例は、単一の実例として説明した構成要素、操作、または構造を実装することができる。1つまたは複数の方法の個々の操作が別々の操作として図示され、説明されるが、個々の操作のうちの1つまたは複数を同時に実施することができ、図示される順序に操作を実施する必要はない。例示的構成で別々の構成要素として提示される構造および機能を、組み合わせた構造または構成要素として実装することができる。同様に、単一の構成要素として提示した構造および機能を別々の構成要素として実装することができる。これらおよび他の変形、修正、追加、および改善は、本明細書の主題の範囲内に包含される。
【0206】
いくつかの実施形態は、ロジックもしくはいくつかの構成要素、モジュール、または機構を含むものとして本明細書で説明される。モジュールは、ソフトウェア・モジュール(例えば、機械可読媒体上、または伝送媒体内に記憶され、あるいは実施されるコード)、ハードウェア・モジュール、またはそれらの任意の適切な組合せを構成することができる。「ハードウェア・モジュール」は、いくつかの操作を実施することのできる有形(例えば、非一時的)ユニットであり、一定の物理的方式で構成または配置することができる。様々な例示的実施形態では、1つまたは複数のコンピュータシステム(例えば、スタンドアロン・コンピュータ・システム、クライアント・コンピュータ・システム、またはサーバ・コンピュータ・システム)またはコンピュータシステムの1つまたは複数のハードウェア・モジュール(例えば、プロセッサまたはプロセッサのグループ)を、ソフトウェア(例えば、アプリケーションまたはアプリケーション部分)によって、本明細書で説明するいくつかの操作を実施するように動作するハードウェア・モジュールとして構成することができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、ハードウェア・モジュールを機械的に、電子的に、またはそれらの任意の適切な組合せで実装することができる。例えば、ハードウェア・モジュールは、いくつかの操作を実施するように永続的に構成される専用回路またはロジックを含むことができる。例えば、ハードウェア・モジュールは、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)やASICなどの専用プロセッサでよい。ハードウェア・モジュールはまた、いくつかの操作を実施するようにソフトウェアによって一時的に構成されるプログラム可能ロジックまたは回路をも含むことができる。例えば、ハードウェア・モジュールは、汎用プロセッサまたは他のプログラム可能プロセッサ内に包含されるソフトウェアを含むことができる。ハードウェア・モジュールを機械的に実装し、専用の永続的に構成される回路で実装し、または(例えば、ソフトウェアによって構成される)一時的に構成される回路で実装するという決定は、コストおよび時間の考慮によって行なうことができることを理解されよう。
【0208】
したがって、「ハードウェア・モジュール」という語句は、有形実体を包含するように理解すべきであり、そのような有形実体を、一定の方式で動作するように、または本明細書で説明するいくつかの操作を実施するように、物理的に構築することができ、永続的に構成することができ(例えば、ハードワイヤード)、または一時的に構成する(例えば、プログラムする)ことができる。本明細書では、「ハードウェア実装モジュール」とはハードウェア・モジュールを指す。ハードウェア・モジュールが一時的に構成される(例えば、プログラムされる)実施形態を考慮すると、任意の一瞬にハードウェア・モジュールのそれぞれを構成し、またはインスタンス化する必要はない。例えば、ハードウェア・モジュールが、専用プロセッサとなるようにソフトウェアによって構成された汎用プロセッサを備える場合、汎用プロセッサを、異なる時間に(例えば、異なるハードウェア・モジュールを備える)それぞれ異なる専用プロセッサとして構成することができる。したがって、ソフトウェア(例えば、ソフトウェア・モジュール)は、ある瞬間に特定のハードウェア・モジュールを構成するように1つまたは複数のプロセッサを構成し、異なる瞬間に異なるハードウェア・モジュールを構成するように1つまたは複数のプロセッサを構成することができる。
【0209】
ハードウェア・モジュールは、他のハードウェア・モジュールに情報を提供し、または他のハードウェア・モジュールから情報を受け取ることができる。したがって、記載のハードウェア・モジュールは通信可能に結合されると見なすことができる。複数のハードウェア・モジュールが同時に存在する場合、ハードウェア・モジュールのうちの2つ以上の間の(例えば、適切な回路およびバスを介する)信号伝送を通じて通信を達成することができる。複数のハードウェア・モジュールが異なる時間に構成され、インスタンス化される実施形態では、例えば、複数のハードウェア・モジュールがアクセスすることのできるメモリ構造内の情報の記憶および検索を通じて、そのようなハードウェア・モジュール間の通信を達成することができる。例えば、あるハードウェア・モジュールは、操作を実施して、その操作の出力を、通信可能に結合されるメモリ・デバイス内に記憶することができる。次いで、別のハードウェア・モジュールが、その後でメモリ・デバイスにアクセスして、記憶された出力を取り出し、処理することができる。ハードウェア・モジュールはまた、入力または出力デバイスとの通信を開始することができ、リソース(例えば、情報の集合)に対して操作することができる。
【0210】
本明細書で説明する例示的方法の様々な操作は、(例えば、ソフトウェアによって)一時的に構成され、または関連する操作を実施するように永続的に構成される1つまたは複数のプロセッサによって少なくとも部分的に実施することができる。一時的に構成されるとしても、永続的に構成されるとしても、そのようなプロセッサは、本明細書で説明する1つまたは複数の操作または機能を実施するように動作するプロセッサ実装モジュールを構成することができる。本明細書では、「プロセッサ実装モジュール」とは、1つまたは複数のプロセッサを使用して実装されるハードウェア・モジュールを指す。
【0211】
同様に、本明細書で説明する方法を少なくとも部分的にプロセッサ実装することができ、プロセッサはハードウェアの1例である。例えば、方法の操作の少なくとも一部は、1つまたは複数のプロセッサまたはプロセッサ実装モジュールによって実施することができる。本明細書では、「プロセッサ実装モジュール」とは、ハードウェアが1つまたは複数のプロセッサを含むハードウェア・モジュールを指す。さらに、1つまたは複数のプロセッサはまた、「クラウド・コンピューティング」環境での、または「software as a service」(SaaS)としての、関連する操作の実施をサポートするように動作することができる。例えば、操作の少なくとも一部を(プロセッサを含むマシンの例として)コンピュータのグループによって実施することができ、これらの操作は、ネットワーク(例えば、インターネット)を介して、1つまたは複数の適切なインタフェース(例えば、アプリケーション・プログラム・インターフェース(API))を介してアクセス可能である。
【0212】
いくつかの操作の実施は、単一のマシン内にある1つまたは複数のプロセッサだけでなく、いくつかのマシンにわたって配置される1つまたは複数のプロセッサの間で分散することができる。いくつかの例示的実施形態では、1つまたは複数のプロセッサまたはプロセッサ実装モジュールは、単一の地理的位置(例えば、住居環境内、オフィス環境内、またはサーバ・ファーム内)に配置することができる。他の例示的実施形態では、1つまたは複数のプロセッサまたはプロセッサ実装モジュールは、いくつかの地理的位置にわたって分散することができる。
【0213】
本明細書で論じる主題のいくつかの部分は、マシン・メモリ(例えば、コンピュータ・メモリ)内のビットまたはバイナリ・デジタル信号として記憶されたデータに対する操作のアルゴリズムまたは記号表現によって提示することができる。そのようなアルゴリズムまたは記号表現は、データ処理の技術者によって、自分の研究の題材を他の当業者に伝達するために使用される技法の例である。本明細書では、「アルゴリズム」は、所望の結果に至る、首尾一貫した操作または類似の処理のシーケンスである。この文脈では、アルゴリズムおよび操作は、物理量の物理的操作を含む。必須ではないが、通常は、そのような量は、マシンによって記憶し、アクセスし、移送し、組み合わせ、比較し、あるいは操作することのできる電気信号、磁気信号、または光信号の形態を取ることができる。主に一般的な使用法のために、「データ」、「コンテンツ」、「ビット」、「値」、「要素」、「シンボル」、「文字」、「用語」、「番号」、「数字」などの語を用いてそのような信号を参照することがときには好都合である。しかしながら、これらの語は好都合なラベルに過ぎず、適切な物理量に関連付けられるべきである。
【0214】
別段に明記されていない限り、「処理する」、「算出する(computing)」、「決定する」、「提示する」、「表示する」などの語を用いる本明細書の議論は、1つまたは複数のメモリ(例えば、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはそれらの任意の適切な組合せ)、レジスタ、または情報を受け取り、記憶し、送り、もしくは表示する他のマシン構成要素内の物理的(例えば、電気的、磁気的、または光学的)量として表されるデータを操作または変換するマシン(例えば、コンピュータ)の動作または工程を指すことがある。さらに、別段に明記されていない限り、「a」または「an」という用語は、特許文書で一般的であるように、本明細書では1つの実例ではなく、1つまたは複数の実例を含むように用いられる。最後に、本明細書では、接続詞「または」は、別段に明記されていない限り、非排他的「論理和」を指す。
【0215】
本主題の概要が特定の例示的実施形態を参照しながら説明されるが、本開示の実施形態の広範な範囲から逸脱することなく、これらの例示的実施形態に対して様々な修正および変更を行なうことができる。本主題のそのような例示的実施形態が、単に便宜上のために、本明細書では個々にまたは集合的に「発明」という用語で参照され、実際に複数が開示される場合、本願の範囲を何らかの単一の開示または現在の概念に自発的に限定することは意図されない。
【0216】
本明細書で示される実施形態は、開示される教示を当業者が実施することを可能にするように十分に詳細に説明される。他の実施形態を使用することができ、それから導出することができ、したがって本開示の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な置換および変更を行なうことができる。したがって、詳細な説明は限定的な意味に理解されるべきではなく、様々な実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲と、そのような特許請求の範囲に権利が与えられる均等物の全範囲のみによって定義される。
以下に、上記各実施形態から把握できる技術思想を記載する。
(付記1)
方法であって、
洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、複数のセルに分割された地理的領域の気象情報にアクセスすること、
前記洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、前記気象情報に基づいて流出データを生成することであって、前記流出データは、前記地理的領域の各セルの地表面上の自然に流れる水の予測される量を含む、前記生成すること、
前記洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、セル間の水の流入および流出の予測を生成すること、
前記地理的領域内の各セルの複数のサブセルについて、セル間の流入および流出の予測および水理モデルに基づいて各サブセル内の予測される水深を計算すること、
前記洪水解析システムの1つ又は複数のプロセッサが、前記地理的領域内の各サブセルにおける予測される水深を示す洪水氾濫マップを生成すること、
前記洪水解析システムの1つまたは複数のプロセッサが、前記洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示すること、を備える方法。
(付記2)
前記ユーザーインタフェースは、選択された時刻と複数の選択可能な時刻とを含む時系列バーを含み、前記複数の選択可能な時刻から異なる時刻を選択することにより、前記異なる時刻の洪水氾濫マップを更新する、付記1に記載の方法。
(付記3)
1つ又は複数のサブセルに関する新たな水深データにアクセスすること、
前記新たな水深データに基づいて前記洪水氾濫マップを再計算すること、をさらに備える付記1に記載の方法。
(付記4)
前記各サブセルの予測される水深を計算することは、
前記地理的領域のメッシュを生成することであって、前記メッシュによって、地理的領域は、重なることなく地理的領域をカバーする複数のサブセルに分割される、前記生成すること、
前記サブセルの標高及び地表面の種類に基づいて、前記メッシュの各サブセルにおける水位を特定することをさらに含む、付記1に記載の方法。
(付記5)
各サブセルは、1~20メートルの範囲のサイズの複数の辺を有するポリゴンである、付記4に記載の方法。
(付記6)
前記地理的領域内の複数の資産を追跡すること、
前記ユーザーインタフェースにおいて前記地理的領域内の複数の資産に関する洪水情報を提供すること、をさらに備える付記1に記載の方法。
(付記7)
前記流出データを生成することは、
水文モデルを使用して前記流出データを生成することをさらに含む、付記1に記載の方法。
(付記8)
各セルの流入および流出の予測を生成することは、
河川網に関するデータにアクセスことであって、前記河川網に関するデータは、前記河川網内の複数のセルと、前記河川網の複数の統計パラメータと、を含む、前記アクセスすること、
前記河川網に関するデータに基づいて、各セルの流入及び流出の予測を生成すること、を含む、付記1に記載の方法。
(付記9)
洪水による前記地理的領域における複数の損害を推定すること、
推定された複数の損害を前記ユーザーインタフェースにおいて提示すること、をさらに備える付記1に記載の方法。
(付記10)
前記ユーザーインタフェースは、降雨レベル、色分けされた水深、洪水の影響を受ける資産、および洪水による損失の推定を示す複数のオプションを含む、付記1に記載の方法。
(付記11)
洪水解析システムであって、
複数の命令を含むメモリと、
1つ又は複数のコンピュータプロセッサと、を備え、
前記複数の命令は、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサに、
複数のセルに分割された地理的領域の気象情報にアクセスすること、
前記気象情報に基づいて流出データを生成することであって、前記流出データは、前記地理的領域の各セルの地表面上の自然に流れる水の予測される量を含む、前記生成すること、
セル間の水の流入および流出の予測を生成すること、
前記地理的領域内の各セルの複数のサブセルについて、セル間の流入および流出の予測および水理モデルに基づいて各サブセル内の予測される水深を計算すること、
前記地理的領域内の各サブセルの予測される水深を示す洪水氾濫マップを生成すること、
前記洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示すること、を含む複数の処理を実行させる、洪水解析システム。
(付記12)
前記ユーザーインタフェースは、選択された時刻と複数の選択可能な時刻とを含む時系列バーを含み、前記複数の選択可能な時刻から異なる時刻を選択することにより、前記異なる時刻の洪水氾濫マップを更新する、付記11に記載の洪水解析システム。
(付記13)
前記複数の命令は、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサに、
1つ又は複数のサブセルに関する新たな水深データにアクセスすること、
前記新たな水深データに基づいて前記洪水氾濫マップを再計算すること、を含む複数の処理を実行させる、付記11に記載の洪水解析システム。
(付記14)
前記各サブセルの予測される水深を計算することは、
前記地理的領域のメッシュを生成することであって、前記メッシュによって、地理的領域は、重なることなく地理的領域をカバーする複数のサブセルに分割される、前記生成すること、
前記サブセルの標高及び地表面の種類に基づいて、前記メッシュの各サブセルにおける水位を特定することをさらに含む、付記11に記載の洪水解析システム。
(付記15)
前記複数の命令は、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサに、
前記地理的領域内の複数の資産を追跡すること、
前記ユーザーインタフェースにおいて前記地理的領域内の複数の資産に関する洪水情報を提供すること、を含む複数の処理を実行させる、付記11に記載の洪水解析システム。
(付記16)
複数の命令を含む非一時的な機械可読記憶媒体であって、前記複数の命令は、マシンによって実行されると、前記マシンに、
複数のセルに分割された地理的領域の気象情報にアクセスすること、
前記気象情報に基づいて流出データを生成することであって、前記流出データは、前記地理的領域の各セルの地表面上の自然に流れる水の予測される量を含む、前記生成すること、
セル間の水の流入および流出の予測を生成すること、
前記地理的領域内の各セルの複数のサブセルについて、セル間の流入および流出の予測および水理モデルに基づいて各サブセル内の予測される水深を計算すること、
前記地理的領域内の各サブセルの予測される水深を示す洪水氾濫マップを生成すること、
前記洪水氾濫マップを表示デバイスのユーザーインタフェースにおいて提示すること、を含む複数の処理を実行させる、非一時的な機械可読記憶媒体。
(付記17)
前記ユーザーインタフェースは、選択された時刻と複数の選択可能な時刻とを含む時系列バーを含み、前記複数の選択可能な時刻から異なる時刻を選択することにより、前記異なる時刻の洪水氾濫マップを更新する、付記16に記載の非一時的な機械可読記憶媒体。
(付記18)
前記マシンは、
1つ又は複数のサブセルに関する新たな水深データにアクセスすること、
前記新たな水深データに基づいて前記洪水氾濫マップを再計算すること、を含む複数の処理をさらに実行する、付記16に記載の非一時的な機械可読記憶媒体。
(付記19)
前記各サブセルの予測される水深を計算することは、
前記地理的領域のメッシュを生成することであって、前記メッシュによって、地理的領域は、重なることなく地理的領域をカバーする複数のサブセルに分割される、前記生成すること、
前記サブセルの標高及び地表面の種類に基づいて、前記メッシュの各サブセルにおける水位を特定することをさらに含む、付記16に記載の非一時的な機械可読記憶媒体。
(付記20)
前記マシンは、
前記地理的領域内の複数の資産を追跡すること、
前記ユーザーインタフェースにおいて前記地理的領域内の複数の資産に関する洪水情報を提供すること、を含む複数の処理をさらに実行する、付記16に記載の非一時的な機械可読記憶媒体。