(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】不整脈ドライバ部位をマッピングするためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20220712BHJP
A61B 5/339 20210101ALI20220712BHJP
【FI】
A61B5/367 100
A61B5/339
(21)【出願番号】P 2020558963
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 US2019028175
(87)【国際公開番号】W WO2019209626
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-21
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドン. カーティス デノ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ キム
(72)【発明者】
【氏名】フィクリ ゴクス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハートリー
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-023788(JP,A)
【文献】国際公開第2017/024107(WO,A1)
【文献】特表2002-543908(JP,A)
【文献】特開2001-037730(JP,A)
【文献】特表2016-518217(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0079539(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/367
A61B 5/339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが多次元カテーテルによって行われた電気生理学的測定を使用して不整脈病巣をマッピングする方法であって、
前記多次元カテーテルを使用して電気生理学的データ点が収集された患者の心臓内の位置について、
前記コンピュータが前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークを識別する工程と、
前記コンピュータが前記3つ以上の電極のクリークの最大双極性電圧を識別する工程と、
前記コンピュータが前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算する工程と、
前記コンピュータが前記3つ以上の電極のクリークの前記識別された最大双極性電圧に対する前記3つ以上の電極のクリークの前記計算された平均単極性電圧の比を使用して病巣スコアを計算する工程と、を備える、方法。
【請求項2】
前記コンピュータが前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算する工程は、
前記コンピュータが前記3つ以上の電極のクリークの平均のピーク・ツー・ピーク電圧を計算する工程を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンピュータが前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算する工程は、
前記コンピュータが前記3つ以上の電極のクリークの平均ピーク負電圧を計算する工程を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記病巣スコアが事前設定されたしきい値を超えたときに、
前記コンピュータが前記電気生理学的データ点が収集された前記患者の心臓内の前記位置を焦点源として識別する工程をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の心臓内の複数の位置について、
前記コンピュータが前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークを識別する工程と、
前記コンピュータが前記3つ以上の電極のクリークの最大双極性電圧を識別する工程と、
前記コンピュータが前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算する工程と、
前記コンピュータが前記3つ以上の電極のクリークの前記識別された最大双極性電圧に対する前記3つ以上の電極のクリークの前記計算された平均単極性電圧の比を使用して病巣スコアを計算する工程と、
を
前記コンピュータが繰り返し、それによって
前記コンピュータが病巣スコア・マップを生成する工程をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記コンピュータが3次元解剖学的モデルに前記病巣スコア・マップのグラフ表示を出力する工程をさらに備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コンピュータが前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークを識別する工程は、
前記コンピュータが前記多次元カテーテルによって運ばれる4つの電極のクリークを識別する工程を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
不整脈病巣をマッピングするための電気解剖学的マッピング・システムであって、
多次元カテーテルを介して収集された電気解剖学的データ点を入力として受信することと、
前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークを識別することと、
前記3つ以上の電極のクリークの最大双極性電圧を識別することと、
前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算することと、
前記3つ以上の電極のクリークの前記識別された最大双極性電圧に対する前記3つの電極のクリークの前記計算された平均単極性電圧の比を使用して病巣スコアを計算することと、
を実行するように構成された病巣マッピング・モジュールを備える、電気解剖学的マッピング・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、本明細書に完全に記載されているように、参照により本明細書に組み込まれる、2018年4月26日に出願した米国仮出願第62/663,193号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、一般的に、心臓診断及び治療処理において実行され得るような、電気生理学的マッピングに関する。具体的には、本開示は、不整脈病巣などの不整脈ドライバ部位をマッピングするためのシステム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心房細動(「AF」)を開始する及び維持すると考えられるメカニズムの中で、活性化波が広がり、互いに衝突し、AFに伴う可能性があるカオス的電位図を生成する局所化されたドライバの存在がある(本明細書では、「不整脈病巣」と呼ばれる)。これらの病巣を標的とするアブレーションは、横隔神経などの近くの構造への付帯的損害を回避しながら、AFを終了させ、AFが再発するのを防止し、複数のアブレーション手術から生じる可能性があるタンポナーデの可能性を最小限に抑えると考えられている。
【0004】
しかしながら、不整脈病巣を正確に位置特定することは、複雑になる可能性がある。例えば、局所的活性化タイミング(「LAT」)マップを使用する場合、病巣を数ミリメートル以内に位置特定することは、タイミングが数ミリ秒以内に正確に決定されることを必要とする。しかしながら、タイミング測定は、電位図の形状の変化によって影響を受ける可能性がある。カテーテルの設計も、位置精度に影響を与える可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で開示するものは、多次元カテーテルによって行われた電気生理学的測定を使用して不整脈病巣をマッピングする方法である。前記方法は、前記多次元カテーテルを使用して電気生理学的データ点が収集された患者の心臓内の位置について、前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークを識別する工程と、前記3つ以上の電極のクリークの最大双極性電圧を識別する工程と、前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算する工程と、前記3つ以上の電極のクリークの前記識別された最大双極性電圧に対する前記3つ以上の電極のクリークの前記計算された平均単極性電圧の比を使用して病巣スコアを計算する工程と、を含む。平均単極性電圧は、平均のピーク・ツー・ピーク電圧として、または平均ピーク負電圧として計算され得る。
【0006】
前記病巣スコアが事前設定されたしきい値を超えたときに、前記電気生理学的データ点が収集された前記患者の心臓内の前記位置は、焦点源として識別され得る。
【0007】
前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークを識別するステップと、前記3つ以上の電極のクリークの最大双極性電圧を識別するステップと、前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算するステップと、前記3つ以上の電極のクリークの前記識別された最大双極性電圧に対する前記3つ以上の電極のクリークの前記計算された平均単極性電圧の比を使用して病巣スコアを計算するステップは、前記患者の心臓内の複数の位置について繰り返され、それによって病巣スコア・マップが生成され得る。本開示の態様では、前記方法は、3次元解剖学的モデルに前記病巣スコア・マップのグラフ表示を出力することを含む。
【0008】
本開示の実施形態では、前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークは、前記多次元カテーテルによって運ばれる4つの電極のクリークである。
【0009】
また、本明細書で開示するものは、多次元カテーテルによって行われた電気生理学的測定を使用して不整脈病巣をマッピングする方法である。前記方法は、前記多次元カテーテルを使用して電気生理学的データ点が収集された患者の心臓内の位置について、以下のステップ、即ち、前記患者の心臓内の前記位置に関する評価領域を定義するステップであって、前記評価領域が複数のロッドを包含し、前記複数のロッドの各ロッドは、それぞれの最大振幅双極軸とそれぞれの最小振幅双極軸とを有するそれぞれの電界ループに関連付けられ、前記ロッドは、前記電界ループの前記それぞれの最大振幅双極軸を使用して定義される、前記ステップと、前記評価領域のロッド向き信頼スコアを計算するステップと、前記ロッド向き信頼スコアが事前設定されたロッド向き信頼しきい値を超えたときに、前記評価領域の病巣スコアを計算するステップであって、前記病巣スコアは、前記評価領域内のロッドの向きの一貫性を示す、前記ステップと、を含む。
【0010】
本開示の態様では、前記患者の心臓内の前記位置に関する評価領域を定義するステップは、前記患者の心臓内の前記位置に関する球形領域を定義することを含む。または、前記患者の心臓内の前記位置に関する評価領域を定義するステップは、前記多次元カテーテルによって運ばれる複数の電極を包含するように前記評価領域を定義することを含む。
【0011】
前記評価領域のロッド向き信頼スコアを計算するステップは、事前設定されたしきい値の大きさを超えた関連するそれぞれの最大振幅双極軸を有する前記複数のロッドのサブセットを識別することを含み得る。前記事前設定されたしきい値の大きさは、電位図ノイズ・フロアの2倍の値など、電位図ノイズ・フロアに関して定義され得る。
【0012】
本開示の他の態様では、前記評価領域のロッド向き信頼スコアを計算するステップは、事前設定された偏心しきい値を超えた関連するそれぞれの電界ループ偏心を有する前記複数のロッドのサブセットを識別することを含み得る。
【0013】
前記評価領域の病巣スコアを計算するステップは、前記複数のロッドの対蹠点の主成分分析を実施することを含み得ると考えられる。または、前記評価領域の病巣スコアを計算するステップは、前記複数のロッドの平均ペアワイズ・ドット積を計算することを含み得る。
【0014】
さらに他の実施形態では、前記評価領域の病巣スコアを計算するステップは、複数の方向を定義することと、各方向について、(1)前記複数のロッドの各ロッドと、(2)前記それぞれの方向における単位ベクトルとの間で計算された複数のドット積の平均ドット積を計算することと、最大の計算された平均ドット積を有する前記複数の方向のうちの方向を識別することと、を含み得る。
【0015】
さらなる実施形態では、前記評価領域の病巣スコアを計算するステップは、前記複数のロッドの各ロッドについて、前記評価領域の中心から前記ロッドの中点まで延びる単位ベクトルを定義することと、前記ロッドと前記単位ベクトルとの間のドット積を計算することと、それによって、複数のドット積を計算することと、前記複数のドット積の平均を計算することと、を含み得る。
【0016】
前記患者の心臓内の前記位置に関する評価領域を定義するステップであって、前記評価領域は複数のロッドを包含し、前記複数のロッドの各ロッドは、それぞれの最大振幅双極軸とそれぞれの最小振幅双極軸とを有するそれぞれの電界ループに関連付けられ、前記ロッドは、前記電界ループの前記それぞれの最大振幅双極軸を使用して定義される、前記ステップと、前記評価領域のロッド向き信頼スコアを計算するステップと、前記ロッド向き信頼スコアが事前設定されたロッド向き信頼しきい値を超えたときに、前記評価領域の病巣スコアを計算するステップであって、前記病巣スコアは、前記評価領域内のロッドの向きの一貫性を示す、前記ステップは、前記患者の心臓内の複数の位置について、繰り返され、それによって、病巣スコア・マップが生成され得る。前記方法は、任意に、3次元解剖学的モデルに前記病巣スコア・マップのグラフ表示を出力することを含む。
【0017】
また、本明細書で開示するものは、不整脈病巣をマッピングするための電気解剖学的マッピング・システムである。前記電気解剖学的マッピング・システムは、多次元カテーテルを介して収集された電気解剖学的データ点を入力として受信することと、前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークを識別することと、前記3つ以上の電極のクリークの最大双極性電圧を識別することと、前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算することと、前記3つ以上の電極のクリークの前記識別された最大双極性電圧に対する前記3つの電極のクリークの前記計算された平均単極性電圧の比を使用して病巣スコアを計算することと、を実行するように構成された病巣マッピング・モジュールを含む。
【0018】
本開示はまた、不整脈病巣をマッピングするための電気解剖学的マッピング・システムを提供する。前記電気解剖学的マッピング・システムは、患者の心臓内の位置において多次元カテーテルを介して収集された電気生理学的データ点を入力として受信することと、前記患者の心臓内の前記位置に関する評価領域を定義することであって、前記評価領域は複数のロッドを包含し、前記複数のロッドの各ロッドは、それぞれの最大振幅双極軸とそれぞれの最小振幅双極軸とを有するそれぞれの電界ループに関連付けられ、前記ロッドは、前記電界ループの前記それぞれの最大振幅双極軸を使用して定義されることと、前記評価領域のロッド向き信頼スコアを計算することと、前記ロッド向き信頼スコアが事前設定されたロッド向き信頼しきい値を超えたときに、前記評価領域の病巣スコアを計算することであって、前記病巣スコアは、前記評価領域内のロッドの向きの一貫性を示すことと、を実行するように構成された病巣マッピング・モジュールを含む。
【0019】
本発明の上記及び他の態様、特徴、詳細、有用性、及び、利点は、以下の説明及び特許請求の範囲を読み、添付図面を検討することから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】例示的な電気解剖学的マッピングシステムの概略図である。
【
図2】本開示の態様に関連して使用することができる例示的なカテーテルを示す図である。
【
図3】本明細書に開示される第1の実施形態による多次元カテーテルによって測定された電圧の大きさに基づいて不整脈ドライバを識別するために実行され得る典型的なステップのフローチャート図である。
【
図4】
図3に示す典型的なステップに従って作成された例示的な病巣スコア・マップのグラフ表示を示す図である。
【
図5】本明細書に開示される第2の実施形態による多次元カテーテルによって測定された最大双極軸の相対方向に基づいて不整脈ドライバを識別するために実行され得る典型的なステップのフローチャート図である。
【
図6】本開示の態様による、電気生理学的データ点に関する評価領域を定義するための1つの手法を示す図である。
【
図7A】本開示の追加の態様による、電気生理学的データ点に関する評価領域を定義するための追加の手法を示す図である。
【
図7B】本開示の追加の態様による、電気生理学的データ点に関する評価領域を定義するための追加の手法を示す図である。
【
図8A】ロッド向きの一貫性を決定するための様々な手法を示す図である。
【
図8B】ロッド向きの一貫性を決定するための様々な手法を示す図である。
【
図8C】ロッド向きの一貫性を決定するための様々な手法を示す図である。
【
図8D】ロッド向きの一貫性を決定するための様々な手法を示す図である。
【
図9】
図5に示す典型的なステップに従って作成された例示的な病巣スコア・マップのグラフ表示を示す図である。
【
図10】例示的なコヒーレンス・マップのグラフ表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
複数の実施形態が開示されるが、本開示のさらに他の実施形態が、例示的な実施形態を示し、説明する以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0022】
本開示は、心臓活動に関する情報を提供する電気生理学的マップ(例えば、心電図マップ)の作成のためのシステム、装置、及び、方法を提供する。本開示の特定の実施形態は、電気生理学的マップを作成するため、特に不整脈病巣のマップを作成するために、Abbott LaboratoriesからのAdvisor(商標)HDグリッド・マッピング・カテーテルなどの高密度グリッド(「HD」)グリッド・カテーテルの使用を参照して説明される。本開示の態様は、本明細書で、電気生理学的マッピングシステムを使用して(例えば、Abbott LaboratoriesからのEnSite Precision(商標)心臓マッピングシステムなどの電気解剖学的マッピングシステムを使用して)実行される心臓マッピング処置の状況で詳細に説明される。
【0023】
図1は、心臓カテーテルをナビゲートし、患者11の心臓10に生じる電気的活動を測定し、電気的活動、及び/又は、そのように測定された電気的活動に関連する情報又はその電気的活動を3次元マッピングすることによって、心臓電気生理学的検査を行うための例示的な解剖学的マッピングシステム8の概略図を示す。システム8は、例えば、1つ又は複数の電極を使用して、患者の心臓10の解剖学的モデルを作成するために使用することができる。システム8は、例えば、患者の心臓10の診断データマップを作成するために、心臓表面に沿った複数の点において電気生理学的データを測定し、電気生理学的データが測定された各測定点に関する位置情報と関連付けて測定データを記憶するために使用することができる。
【0024】
当業者が認識し、以下でさらに説明するように、システム8は、典型的には3次元空間内の物体の位置と、いくつかの実施形態では向きと、を決定し、少なくとも1つの基準に対して決定された位置情報としてそれらの位置を表す。
【0025】
説明を簡単にするために、患者11は、概略的に楕円形として描かれている。
図1に示す実施形態では、3つのセットの表面電極(例えば、パッチ電極)が患者11の表面に適用されて示されている。本明細書では、x軸、y軸、及び、z軸と呼ばれる3つの略直交する軸が定義される。他の実施形態では、電極は、他の配置、例えば、複数の電極を特定の身体表面上に配置することができる。さらなる代替として、電極は、身体表面上にある必要はなく、身体の内部に配置することができる。
【0026】
図1において、x軸表面電極12、14は、患者の胸郭領域の側部上など、第1の軸に沿って患者(例えば、各腕の下の患者の皮膚)に適用され、左電極及び右電極と呼ぶことができる。y軸電極18、19は、患者の内腿領域及び頸部領域に沿うなど、x軸に略直交する第2の軸に沿って患者に適用され、左脚電極及び頸部電極と呼ぶことができる。z軸電極16、22は、胸郭領域において患者の胸骨及び脊椎に沿うなど、x軸とy軸の両方に略直交する第3の軸に沿って適用され、胸部電極及び背部電極と呼ぶことができる。心臓10は、これらの表面電極のペア12/14、18/19、及び、16/22の間に位置する。
【0027】
追加の表面基準電極(例えば、「腹部パッチ」)21は、システム8のための基準電極及び/又は接地電極を提供する。腹部パッチ電極21は、以下でさらに詳細に説明する固定心臓内電極31の代替であってもよい。加えて、患者11は、従来の心電図(「ECG」又は「EKG」)システムリード線の大部分又はすべてを定位置に有してもよいことも理解されるべきである。特定の実施形態では、例えば、患者の心臓10の心電図を感知するために、12個のECGリード線の標準セットが利用されてもよい。このECG情報は、システム8で利用可能である(例えば、コンピュータシステム20への入力として提供することができる)。ECGリード線が十分に理解されている限りにおいて、図面の明瞭化のために、単一のリード線6、及び、コンピュータ20への接続のみが、
図1において図示されている。
【0028】
少なくとも1つの電極17を有する典型的なカテーテル13も示されている。この典型的なカテーテル電極17は、本明細書全体にわたって「ロービング電極」、「移動電極」、又は、「測定電極」と呼ばれる。典型的には、カテーテル13上、又は、複数のカテーテル上の複数の電極17が使用される。一実施形態では、例えば、システム8は、患者の心臓、及び/又は、脈管構造内に配置される12個のカテーテル上の64個の電極を備えていてもよい。他の実施形態では、システム8は、複数の(例えば、8個の)スプラインを含む単一のカテーテルを利用してもよく、複数のスプラインの各々が複数の(例えば、8個の)電極を含んでもよい。
【0029】
しかしながら、前述の実施形態は、単なる例であり、任意の数の電極及び/又はカテーテルが使用されてもよい。例えば、本開示の目的のために、例示的な多電極カテーテル、特にHDグリッド・カテーテルのセグメントが
図2に示されている。HDグリッド・カテーテル13は、パドル202に結合されたカテーテル・ボディ200を含む。カテーテル・ボディ200は、それぞれ、第1及び第2のボディ電極204、206をさらに含むことができる。パドル202は、第1のスプライン208と、第2のスプライン210と、第3のスプライン212と、第4のスプライン214と、を含むことができ、これらのスプラインは、近位カプラ216によってカテーテル・ボディ200に結合され、遠位カプラ218によって互いに結合される。一実施形態では、第1のスプライン218及び第4のスプライン214は、1つの連続したセグメントであってもよく、第2のスプライン210及び第3のスプライン212は、別の連続したセグメントであってもよい。他の実施形態では、様々なスプライン208、210、212、214は、(例えば、それぞれ、近位及び遠位カプラ216、218によって)互いに結合された別個のセグメントであってもよい。HDカテーテル13は、任意の数のスプライン及び/又はスプライン上の電極の配置を含むことができ、
図2に示す4スプライン配置は、単なる例である。
【0030】
上記で説明したように、スプライン208、210、212、214は、任意の数の電極17を含むことができ、
図2において、16個の電極17が、4×4のアレイにおいて配置されて示されている。電極17は、スプライン208、210、212、214に沿って、及びこれらのスプライン間で測定されたとき、等間隔で及び/又は不均一な間隔で配置され得ることも理解されるべきである。
【0031】
カテーテル13(又は複数のカテーテル)は、典型的には、1つ又は複数の導入器を介して、よく知られた手順を使用して心臓、及び/又は、脈管構造内に導入される。実際、経中隔アプローチなどのカテーテル13を患者の心臓に導入するための様々なアプローチは、当業者によく知られており、したがって、本明細書でさらに説明する必要はない。
【0032】
各電極17は、患者内にあるので、位置データは、システム8によって各電極17について同時に収集されてもよい。同様に、各電極17は、心臓表面から電気生理学的データ(例えば、表面電位図)を収集するために使用することができる。当業者は、そのさらなる議論が本明細書で開示された技術を理解するために必要がないように、(例えば、接触電気生理学的マッピングと非接触電気生理学的マッピングとの両方を含む)電気生理学的データ点の獲得及び処理のための様々な様式に精通しているであろう。同様に、当該技術分野でよく知られている様々な技法を、複数の電気生理学的データ点から心臓の幾何学的形状及び/又は心臓の電気的活動のグラフ表示を生成するために使用することができる。さらに、当業者が電気生理学的データ点から電気生理学的マップを作成する方法を理解する限り、その態様は、本開示を理解するのに必要な程度にのみ本明細書で説明される。
【0033】
図1に戻ると、いくつかの実施形態では、(例えば、心臓10の壁に取り付けられる)任意の固定基準電極31が第2のカテーテル29上に示されている。この電極31は、較正の目的のため、(例えば、心臓の壁に取り付けられる、又は、近接して)静止していてもよく、又は、ロービング電極(例えば、電極17)と固定された空間関係に配置されてもよく、「ナビゲーション基準」又は「局所基準」と呼ばれることがある。固定基準電極31は、上記で説明した表面基準電極21に加えて、又は、その代替として使用されてもよい。多くの場合、心臓10においての冠状静脈洞電極又は他の固定電極が、電圧及び変位を測定するための基準として使用することができる。即ち、以下で説明するように、固定基準電極31は、座標系の原点を定義してもよい。
【0034】
各表面電極は、多重スイッチ24に接続されている。表面電極のペアは、表面電極を信号発生器25に接続するコンピュータ20で実行されるソフトウェアによって選択される。代替的には、スイッチ24は、省略されてもよく、信号発生器25の複数(例えば、3つ)のインスタンスが、測定軸毎に(即ち、表面電極ペア毎に)1つ設けられてもよい。
【0035】
コンピュータ20は、例えば、従来の汎用コンピュータ、専用コンピュータ、分散コンピュータ、又は、任意の他のタイプのコンピュータを備えていてもよい。コンピュータ20は、本明細書に記載された様々な態様を実施するための命令を実行することができる単一の中央処理装置(「CPU」)、又は、一般に並列処理環境と呼ばれる複数の処理装置などの1つ又は複数のプロセッサ28を備えていてもよい。
【0036】
一般に、生物学的導体におけるカテーテルのナビゲーションを実現するために、3つの名目上の直交電場が、一連の駆動及び感知電気双極子(例えば、表面電極ペア12/14、18/19、及び、16/22)によって生成される。代替的には、これらの直交電場は、分解することができ、表面電極の任意のペアは、有効な電極三角測量を提供するための双極子として駆動することができる。同様に、電極12、14、18、19、16、22(又は任意の数の電極)は、心臓内の電極に電流を駆動するため、又は、心臓内の電極からの電流を感知するための任意の他の有効な位置に配置することができる。例えば、複数の電極は、患者11の背部、側部、及び/又は、腹部に配置することができる。加えて、そのような非直交方法論は、システムの柔軟性を増す。任意の所望の軸について、駆動(ソースシンク)構成の所定のセットから結果として生じるロービング電極にわたって測定される電位は、直交軸に沿って均一な電流を単に駆動することによって得られるのと同じ有効電位を生じさせるために、代数的に組み合わせられてもよい。
【0037】
このため、表面電極12、14、16、18、19、22のうちの任意の2つは、腹部パッチ21のような接地基準に対する双極子ソース及びドレインとして選択されてもよく、非励起電極は、接地基準に対する電圧を測定する。心臓10内に配置されたロービング電極17は、電流パルスからの場にさらされ、腹部パッチ21などの接地に対して測定される。実際には、心臓10内のカテーテルは、図示の16個よりも多い又は少ない電極を含んでもよく、各電極電位が測定されてもよい。前述したように、少なくとも1個の電極が、固定基準電極31を形成するために心臓の内側表面に固定されてもよく、これも、腹部パッチ21のような接地に対して測定され、システム8が位置を測定する座標系の原点として定義されてもよい。表面電極、内部電極、及び、仮想電極の各々からのデータセットは、すべて、心臓10内のロービング電極17の位置を決定するために使用することができる。
【0038】
測定された電圧は、基準電極31などの基準位置に対して、ロービング電極17などの心臓内部の電極の3次元空間における位置を決定するために、システム8によって使用されてもよい。即ち、基準電極31において測定された電圧は、座標系の原点を定義するために使用されてもよいし、ロービング電極17において測定された電圧は、原点に対するロービング電極17の位置を表すために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、座標系は、3次元(x、y、z)デカルト座標系であるが、極座標系、球面座標系、及び、円筒座標系等の他の座標系も考えられる。
【0039】
前述の議論から明らかであるように、心臓内の電極の位置を決定するために使用されるデータは、表面電極ペアが心臓に電場を印加しながら測定される。電極データは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,263,397号に記載されているように、電極位置のための生の位置データを改善するために使用される呼吸補償値を作成するために使用されてもよい。電極データは、例えば、同じく参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,885,707号に記載されているように、患者の身体のインピーダンスにおける変化を補償するために使用されてもよい。
【0040】
したがって、1つの典型的な実施形態では、システム8は、最初に表面電極のセットを選択し、次いで、それらを電流パルスで駆動する。電流パルスが送達されている間、残りの表面電極及び生体内電極のうちの少なくとも1つを用いて測定される電圧などの電気的活動が測定され、記憶される。上記のように、呼吸、及び/又は、インピーダンスシフトなどのアーティファクトの補償が実行されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、システム8は、Abbott LaboratoriesのEnSite Velocity(商標)、又は、EnSite Precision(商標)心臓マッピング及び視覚化システムである。しかしながら、例えば、Boston Scientific CorporationのRHYTHMIA HDX(商標)マッピングシステム、Biosense Webster, Inc.のCARTOナビゲーション及び位置特定システム、Northern Digital Inc.のAURORA(登録商標)システム、SterotaxisのNIOBE(登録商標)磁気ナビゲーションシステム、並びに、Abbott LaboratoriesからのMediGuide(商標)Technologyを含む他の位置特定システムが、本教示に関連して使用されてもよい。
【0042】
(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)以下の特許、米国特許第6,990,370号、第6,978,168号、第6,947,785号、第6,939,309号、第6,728,562号、第6,640,119号、第5,983,126号、及び、第5,697,377号に記載の位置特定及びマッピングシステムも、本明細書と共に使用することができる。
【0043】
本開示の態様は、不整脈病巣をマッピングすることに関する。したがって、システム8は、病巣マッピング・モジュール58を含むこともできる。病巣マッピング・モジュール58は、とりわけ、以下で詳細に説明するように、病巣源である心臓表面上の可能性がある位置を識別するために使用することができる。
【0044】
本教示による、不整脈病巣をマッピングする1つの例示的な方法について、
図3として提示される典型的なステップのフローチャート300を参照して説明する。いくつかの実施形態では、例えば、フローチャート300は、
図1の電気解剖学的マッピングシステム8(例えば、プロセッサ28及び/又は病巣マッピング・モジュール58)によって実行することができるいくつかの例示的なステップを表すことができる。以下で説明される典型的なステップは、ハードウェア又はソフトウェアのいずれかによって実施することができることが理解されるべきである。説明のために、「信号プロセッサ」という用語は、本明細書の教示のハードウェアベースの実装形態とソフトウェアベースの実装形態の両方を説明するために本明細書で使用される。
【0045】
ブロック302において、システム8は、例えば、多次元カテーテル13によって収集されたような、電気生理学的データ点を受信する。当業者によく知られているように、ブロック302において受信される電気生理学的データ点は、位置データ(例えば、心臓10内の多次元カテーテル13の位置)と電気生理学的データ(例えば、電極17によって測定された一連の電位図)の両方を含む。
【0046】
ブロック304において、システム8は、多次元カテーテル13によって運ばれる3つ以上の電極17のクリークを識別する。例えば、
図2に示すように、4つの電極17a、17b、17c、17dのクリークを考える。このクリークは、スプラインに沿った17a-17b及び17c-17d、スプラインを横切る17a-17c及び17b-17d、並びに斜めの17a-17d及び17b-17cの合計6つの可能な双極子を含む。
【0047】
同様に、
図2に示すように、3つの電極17a、17b、及び17cのクリークを考える。このクリークは、スプライン208に沿った17a-17b、スプラインを横切る17a-17c、及び斜めの17b-17cの合計3つの可能な双極子を含む。
【0048】
ブロック306において、システム8は、電極17のクリークについて最大の双極性電圧を識別する。典型的には、最大双極性電圧は、クリークの双極子(例えば、4電極クリークの場合は6双極子、3電極クリークの場合は3双極子)間の最大ピーク・ツー・ピーク電圧である。
【0049】
ブロック308において、システム8は、電極17のクリークについて平均の単極性電圧を計算する。電極17の単極性電圧は、ピーク・ツー・ピーク電圧及び/又はピーク負電圧として計算することができる。
【0050】
不整脈病巣の近くでは、任意の方向の双極性電圧は、ゼロに近いが、単極性電圧は、比較的大きい。したがって、ブロック310において、システム8は、電極17のクリークの最大双極子電圧に対する電極17のクリークの平均単極性電圧の比を計算する。この比が大きいほど、その位置が不整脈病巣である可能性がより高くなる。
【0051】
最大双極子電圧に対する平均単極性電圧の比は、ブロック312において、その位置が不整脈病巣である可能性の数値表示を計算するために使用することもできる(その位置が不整脈病巣である可能性の数値表示は、本明細書では「病巣スコア」と呼ばれる)。いくつかの実施形態では、比自体を病巣スコアとして定義することができ、本開示の他の実施形態では、比は、(例えば、比の逆数及び/又は対数をとることによって)病巣スコアを計算するために使用することができる。
【0052】
より具体的には、病巣スコアが事前設定されたしきい値を超える場合、それは、その位置が不整脈病巣である可能性があることを示す。しきい値は、ユーザ定義とすることができる。しかしながら、本開示の実施形態では、しきい値は、約2と約4との間の最大双極性電圧に対する平均単極性電圧の比である。
【0053】
決定ブロック314は、任意の追加の電気生理学的データ点を処理するためのループを開始する。しかしながら、すべての電気生理学的データ点が処理されると、システム8は、ブロック316において、病巣スコア・マップを出力する。ブロック318において、システム8は、当業者によく知られている技法に従って、例えば、3次元心臓モデルに病巣スコア・マップのグラフ表示を出力することができる。
【0054】
図4は、典型的な病巣スコア・マップ400を示す。
図4に示すように、中央の暗い領域は、最大双極子電圧に対する平均単極性電圧の最も高い比を有し、したがって、不整脈病巣の最も可能性が高い位置である。
【0055】
本教示による不整脈病巣をマッピングするための別の例示的な方法は、
図5として提示される典型的なステップのフローチャート500において示されている。本開示のいくつかの実施形態では、フローチャート500は、
図1の電気生理学的マッピング・システム8(例えば、プロセッサ28及び/又は病巣マッピング・モジュール58)によって実行することができるいくつかの例示的なステップを表すことができる。
図5の典型的なステップは、ハードウェア又はソフトウェアのいずれかによって実施することができることが理解されるべきである。
【0056】
ブロック502において、システム8は、例えば、多次元カテーテル13によって収集されたような、電気生理学的データ点を受信する。当業者によく知られているように、ブロック502において受信される電気生理学的データ点は、位置データ(例えば、心臓10内の多次元カテーテル13の位置)と電気生理学的データ(例えば、電極17によって測定された一連の電位図)の両方を含む。
【0057】
ブロック504において、システム8は、ブロック502において受信された電気生理学的データ点の位置に関する評価領域を定義する。評価領域のサイズは、マップ点密度、所望の解像度、電極間の間隔、及び、不整脈病巣が半径方向の伝播を示すと予想される範囲を考慮に入れることができる。本開示の実施形態では、評価領域のサイズは、ブロック514からブロック504へのループによって示されるように、ブロック512において計算された病巣スコアも考慮に入れることができる。同様に、専門家は、ブロック516からブロック504へのループによって示されるように、ブロック514において計算された病巣スコア・マップの視覚的評価に基づいて評価領域のサイズを調整することを望む可能性があると考えられる。
【0058】
図6に示すように、本開示のいくつかの実施形態では、評価領域は、ブロック502において受信された電気生理学的データ点の位置を中心とする球600(例えば、約1cmの半径を有する球)として定義される。
図6は、隣接する球600が重なり合うことが望ましいことも示す。
【0059】
本開示の他の実施形態では、評価領域は、多次元カテーテル13によって運ばれる電極に関して定義される。例えば、
図7Aに示すように、評価領域700は、多次元カテーテル13上の16個の電極17のすべてを包含するように定義することができる。したがって、評価領域700は、36個の3電極クリークと、したがって、合計36個の双極子とを包含する。本明細書の教示による分析の目的のために、これらの双極子は、評価領域700の中心点702に割り当てることができる。
【0060】
図7Aは、多次元カテーテル13上の16個の電極17のうちの9個を包含する、中心点706を有する評価領域704も示す。
図7Bに示すように、各々が中心点706a~706dに対応する、多次元カテーテル13上に形成することができる4つのそのような領域704a~704dが存在する。9つの電極17の各セットは、16個の3電極クリークと、したがって、合計16個の双極子(本明細書に開示されるように分析の目的のためにそれぞれの中心点706a~706dに割り当てることができる)とを包含する。
【0061】
いずれにしても、ブロック504において定義される評価領域は、複数の「ロッド」602(
図6において二重矢印セグメントとして示す)を含む。本明細書で使用される場合、「ロッド」という用語は、多次元カテーテル13上の電極17のクリークのためのそれぞれの電界ループの最大振幅双極軸を指し、電界ループは、最小振幅双極軸も有する。電極のクリークのための電界ループを計算することについての詳細は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第15/953,155号に記載されている。
【0062】
不整脈病巣の近くで、ロッドは、互いに対して均一(例えば、平行)に向けられるのではなく、病巣の周りに放射状に配置される。したがって、ブロック506において、システム8は、評価領域(例えば、600、700)のロッド向き信頼スコアを計算することができる。ロッド向き信頼スコアは、所与の評価領域(例えば、600、700)が、評価領域が不整脈病巣であるかどうかについての有効な推論を引き出すことができる十分なロッドを含むかどうかの尺度である。
【0063】
本開示の態様では、ロッド向き信頼スコアは、事前設定されたしきい値量を超える対応する最大振幅双極軸によって定義された評価領域内のロッドのサブセットを識別することによって計算される。いくつかの実施形態では、この事前設定されたしきい値量は、電位図ノイズ・フロアの約2倍(例えば、約0.1mVのピーク・ツー・ピーク)などの、電位図ノイズ・フロア(例えば、約0.05mVのピーク・ツー・ピーク)に関して定義することができる。
【0064】
本開示の他の態様では、ロッド向き信頼スコアは、事前設定された偏心しきい値を超える対応する電界ループ偏心を有する評価領域内のロッドのサブセットを識別することによって計算される。電界ループの偏心は、最小振幅双極軸に対する最大振幅双極軸の比によって測定することができる。実施形態では、偏心しきい値は、約2である(例えば、最大振幅双極軸は、最小振幅双極軸の少なくとも2倍である)。
【0065】
決定ブロック508において、システム8は、ロッド向き信頼スコアが事前設定されたロッド向き信頼しきい値を超えるかどうかを決定する。そうでない場合、決定ブロック510は、任意の追加の電気生理学的データ点を処理するためのループを開始する。そうである場合、システム8は、評価領域内のロッドの向きの一貫性を使用して、ブロック512において病巣スコアを計算することができる。より具体的には、ロッドの向きは、不整脈病巣の近くでは一貫性が低く、不整脈病巣から離れると一貫性が高くなるので、システム8は、ロッドの向きの一貫性の程度が高いほど、その位置が不整脈病巣である可能性がより低いと解釈することができる。ロッドの向きの一貫性を決定するための様々な例示的手法について、以下で説明する。
【0066】
対蹠点の主成分分析。
図8Aは、本開示の態様による、評価領域800内のロッドの向きの一貫性を決定するための第1の手法を示す。
図8Aに示すように、向き領域内の各ロッド802について、2つの対蹠点804a、804bが、原点を中心とする単位円806(又は、3次元では、単位球)上に配置される。システム8は、次いで、対蹠点において主成分分析を実行し、最小(又は次の最小)特異値に対する最大特異値の比を計算する。より大きい比は、より一貫して向けられたロッド802に対応する。したがって、比が1よりも実質的に大きい(例えば、約4よりも大きい)場合、それは、ロッド802がほぼ平行であることを示し、それは、評価領域800が不整脈病巣ではないことを示唆する。一方、比が臨界値(例えば、約2)よりも小さい場合、それは、評価領域800が不整脈病巣を含む可能性が高いことを示唆する。
【0067】
ロッド間のペアワイズ・ドット積の平均。
図8Bは、本開示の態様による、評価領域800内のロッドの向きの一貫性を決定するための第2の手法を示す。システム8は、評価領域800内のロッド802の各対のドット積の絶対値を計算する。システム8は、これらの値の平均を計算する。より大きい平均は、より一貫して向けられたロッド802に対応する。したがって、平均が大きいほど、評価領域800が不整脈病巣を含む可能性が低くなり、平均が小さいほど、評価領域800が不整脈病巣を含む可能性が高くなる。
【0068】
ロッドと可能な角度単位ベクトルとの間の平均ドット積の可能な角度にわたる最大値。
図8Cは、本開示の態様による、評価領域800内のロッドの向きの一貫性を決定するための第3の手法を示す。システム8は、複数の方向の各々における単位ベクトル808を定義する。明確化のために、
図8Cは、単一の方向単位ベクトル808のみを示しており、この手法は、約1度の分解能で約180個の方向単位ベクトル808を使用することができることが理解されるべきである。各方向について、システム8は、最初に、各ロッド802と対応する方向単位ベクトル808との間のドット積の絶対値を計算し、次いで、これらの値の平均を計算する。システム8は、次いで、計算された最大の平均ドット積を有する方向を識別する。より大きい平均は、より一貫して向けられたロッド802に対応する。したがって、最大平均ドット積が大きいほど、評価領域800が不整脈病巣を含む可能性が低くなり、最大平均ドット積が小さいほど、評価領域800が不整脈病巣を含む可能性が高くなる。
【0069】
ロッドと半径方向に向けられた単位ベクトルとの間のドット積の平均。
図8Dは、本開示の態様による、評価領域800内のロッドの向きの一貫性を決定するための第4の手法を示す。各ロッド802について、システム8は、評価領域800の中心からロッド802の中点まで延びる単位ベクトル810を定義する。システム8は、単位ベクトル810とロッド802との間のドット積の絶対値を計算し、次いで、これらの値の平均を計算する。この手法では、より大きい平均は、より一貫性なく向けられたロッド802に対応する。したがって、最大平均ドット積が大きいほど、評価領域800が不整脈病巣を含む可能性が高くなり、最大平均ドット積が小さいほど、評価領域800が不整脈病巣を含む可能性が低くなる。
【0070】
決定ブロック510は、任意の追加の電気生理学的データ点を処理するためのループを開始する。しかしながら、すべての電気生理学的データ点が処理されると、システム8は、ブロック514において、病巣スコア・マップを出力する。ブロック516において、システム8は、当業者によく知られている技法に従って、例えば、3次元心臓モデルに病巣スコア・マップのグラフ表示を出力することができる。
【0071】
図9は、病巣スコア・マップの典型的なグラフ表示900である。グラフ表示900は、多次元カテーテル13の表示902と、上記で説明した複数のロッドのグラフ表示904と、を含む。
図9の中心近くでは、ロッド904は、一貫して向けられておらず、それらが不整脈病巣に近接していることを視覚的に示唆している。
図9の中心からさらに離れると、ロッド904は、より一貫して向けられており、それらが不整脈病巣に近接していない(又は、少なくともあまり近接していない)ことを視覚的に示唆している。
【0072】
本開示の態様では、システム8は、コヒーレンシ・マップを出力することもでき、
図10は、上記で説明したロッドが互いに平行である程度を示すそのようなマップのグラフ表示1000である。
図10に示すように、低コヒーレンシの領域は、白色又はライト・グレーで示されており、高コヒーレンシの領域は、ダーク・グレー又は黒色で示されている。視覚的には、低コヒーレンシの領域(例えば、白色又はライト・グレー)は、高コヒーレンシの領域(例えば、ダーク・グレー又は黒色)よりも不整脈病巣である可能性が高い。
【0073】
本開示の態様は、電気生理学的検査中に、ブレイク・アウト部位、ソース部位、衝突部位、及びシンク部位などの他の関心部位を区別することにも関係する。焦点源(focal source)又はブレイク・アウトの領域が発生する部位において、単極信号は、主に負方向になる(いわゆる「QS形態」)。逆に、衝突又はシンクが発生する部位において、単極信号は、ほとんど完全に正である(いわゆる「R形態」)。
【0074】
したがって、本明細書に開示される実施形態は、形態を識別し、領域を、とりわけ、ブレイク・アウトの領域又は衝突の領域として分類するために、単極偏りを評価することを含むことができる。例えば、初期の上向きの偏りが、総ピーク・ツー・ピーク電圧の約10%未満である場合、それは、QS形態として解釈することができ、ブレイク・アウトの領域を示唆する。代替的には、下向きの偏りが、総ピーク・ツー・ピーク電圧の約10%未満である場合、それは、R形態として解釈することができ、衝突又はシンクの領域を示唆する。
【0075】
いくつかの実施形態について、ある程度の詳細で上記に説明したが、当業者は、本発明の要旨又は範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多数の変更を加えることができる。
【0076】
例えば、本明細書の教示は、リアルタイムで(例えば、電気生理学的検査中に)、又は、後処理中に(例えば、以前に実行された電気生理学的検査中に収集された電気生理学的データ点に対して)適用することができる。
【0077】
別の例として、本開示の態様について、不整脈病巣を識別することに関連して説明してきたが、本明細書の教示は、他のドライバ(例えば、ロータ・ソース)を識別するために良好な利点に適用することができる。
【0078】
別の例として、ロッド(例えば、最大振幅双極軸)を利用するのではなく、本明細書の教示は、活性化方向矢印に適合させることができる。同様に、評価領域の病巣スコアを決定するために複数のロッドの対蹠点の主成分分析を実施するのではなく、本明細書で説明する電気解剖学的システムは、評価領域内の単位活性化方向ベクトル方向の平均を計算することによって、評価領域の病巣スコアを決定することができる。活性化方向矢印(ベクトル)の計算は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,136,829号に記載されている。本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,474,491号は、局所伝導速度の計算の態様を教示し、この教示は、活性化方向矢印(ベクトル)を計算するときにも適用することができる。
【0079】
すべての方向の参照(例えば、上部、下部、上向き、下向き、左、右、左側、右側、上部、下部、より上、より下、垂直、水平、時計回り、及び反時計回り)は、本発明の読者の理解を助ける識別目的のためにのみ使用され、特に発明の位置、向き、又は使用に関して制限をするものではない。接合の参照(例えば、取り付けられた、結合された、接続されたなど)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続と要素間の相対的な移動との間に中間部材を含む場合がある。そのように、接合の参照は、必ずしも、2つの要素が直接接続され、互いに固定された関係にあることを意味するものではない。
【0080】
上記の説明に含まれる、又は添付図面に示されるすべての事項は、単なる例示として解釈されるべきであり、限定として解釈されるべきではない。詳細又は構造の変化は、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の要旨から逸脱することなくなされ得る。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
多次元カテーテルによって行われた電気生理学的測定を使用して不整脈病巣をマッピングする方法であって、
前記多次元カテーテルを使用して電気生理学的データ点が収集された患者の心臓内の位置について、
前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークを識別する工程と、
前記3つ以上の電極のクリークの最大双極性電圧を識別する工程と、
前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算する工程と、
前記3つ以上の電極のクリークの前記識別された最大双極性電圧に対する前記3つ以上の電極のクリークの前記計算された平均単極性電圧の比を使用して病巣スコアを計算する工程と、を備える、方法。
(項目2)
前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算する工程は、前記3つ以上の電極のクリークの平均のピーク・ツー・ピーク電圧を計算する工程を備える、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算する工程は、前記3つ以上の電極のクリークの平均ピーク負電圧を計算する工程を備える、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記病巣スコアが事前設定されたしきい値を超えたときに、前記電気生理学的データ点が収集された前記患者の心臓内の前記位置を焦点源として識別する工程をさらに備える、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記患者の心臓内の複数の位置について、
前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークを識別する工程と、
前記3つ以上の電極のクリークの最大双極性電圧を識別する工程と、
前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算する工程と、
前記3つ以上の電極のクリークの前記識別された最大双極性電圧に対する前記3つ以上の電極のクリークの前記計算された平均単極性電圧の比を使用して病巣スコアを計算する工程と、
を繰り返し、それによって病巣スコア・マップを生成する工程をさらに備える、項目1に記載の方法。
(項目6)
3次元解剖学的モデルに前記病巣スコア・マップのグラフ表示を出力する工程をさらに備える、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークを識別する工程は、前記多次元カテーテルによって運ばれる4つの電極のクリークを識別する工程を備える、項目1に記載の方法。
(項目8)
多次元カテーテルによって行われた電気生理学的測定を使用して不整脈病巣をマッピングする方法であって、
前記多次元カテーテルを使用して電気生理学的データ点が収集された患者の心臓内の位置について、
前記患者の心臓内の前記位置に関する評価領域を定義する工程であって、前記評価領域が複数のロッドを包含し、前記複数のロッドの各ロッドは、それぞれの最大振幅双極軸とそれぞれの最小振幅双極軸とを有するそれぞれの電界ループに関連付けられ、前記ロッドは、前記電界ループの前記それぞれの最大振幅双極軸を使用して定義される、前記工程と、
前記評価領域のロッド向き信頼スコアを計算する工程と、
前記ロッド向き信頼スコアが事前設定されたロッド向き信頼しきい値を超えたときに、前記評価領域の病巣スコアを計算する工程であって、前記病巣スコアは、前記評価領域内のロッドの向きの一貫性を示す、前記工程と、を備える、方法。
(項目9)
前記患者の心臓内の前記位置に関する評価領域を定義する工程は、前記患者の心臓内の前記位置に関する球形領域を定義する工程を備える、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記患者の心臓内の前記位置に関する評価領域を定義する工程は、前記多次元カテーテルによって運ばれる複数の電極を包含するように前記評価領域を定義する工程を備える、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記評価領域のロッド向き信頼スコアを計算する工程は、事前設定されたしきい値の大きさを超えた関連するそれぞれの最大振幅双極軸を有する前記複数のロッドのサブセットを識別する工程を備える、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記事前設定されたしきい値の大きさは、電位図ノイズ・フロアに関して定義される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記事前設定されたしきい値の大きさは、前記電位図ノイズ・フロアの2倍の値を備える、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記評価領域のロッド向き信頼スコアを計算する工程は、事前設定された偏心しきい値を超えた関連するそれぞれの電界ループ偏心を有する前記複数のロッドのサブセットを識別する工程を備える、項目8に記載の方法。
(項目15)
前記評価領域の病巣スコアを計算する工程は、前記複数のロッドの対蹠点の主成分分析を実施する工程を備える、項目8に記載の方法。
(項目16)
前記評価領域の病巣スコアを計算する工程は、前記複数のロッドの平均ペアワイズ・ドット積を計算する工程を備える、項目8に記載の方法。
(項目17)
前記評価領域の病巣スコアを計算する工程は、
複数の方向を定義する工程と、
各方向について、(1)前記複数のロッドの各ロッドと、(2)前記それぞれの方向における単位ベクトルとの間で計算された複数のドット積の平均ドット積を計算する工程と、
最大の計算された平均ドット積を有する前記複数の方向のうちの方向を識別する工程と、を備える、項目8に記載の方法。
(項目18)
前記評価領域の病巣スコアを計算する工程は、
前記複数のロッドの各ロッドについて、
前記評価領域の中心から前記ロッドの中点まで延びる単位ベクトルを定義する工程と、
前記ロッドと前記単位ベクトルとの間のドット積を計算する工程と、
それによって、複数のドット積を計算する工程と、
前記複数のドット積の平均を計算する工程と、を備える、項目8に記載の方法。
(項目19)
前記患者の心臓内の複数の位置について、
前記患者の心臓内の前記位置に関する評価領域を定義する工程であって、前記評価領域は複数のロッドを包含し、前記複数のロッドの各ロッドは、それぞれの最大振幅双極軸とそれぞれの最小振幅双極軸とを有するそれぞれの電界ループに関連付けられ、前記ロッドは、前記電界ループの前記それぞれの最大振幅双極軸を使用して定義される、前記工程と、
前記評価領域のロッド向き信頼スコアを計算する工程と、
前記ロッド向き信頼スコアが事前設定されたロッド向き信頼しきい値を超えたときに、前記評価領域の病巣スコアを計算する工程であって、前記病巣スコアは、前記評価領域内のロッドの向きの一貫性を示す、前記工程と、
を繰り返し、それによって、病巣スコア・マップを生成する工程をさらに備える、項目8に記載の方法。
(項目20)
3次元解剖学的モデルに前記病巣スコア・マップのグラフ表示を出力する工程をさらに備える、項目19に記載の方法。
(項目21)
不整脈病巣をマッピングするための電気解剖学的マッピング・システムであって、
多次元カテーテルを介して収集された電気解剖学的データ点を入力として受信することと、
前記多次元カテーテルによって運ばれる3つ以上の電極のクリークを識別することと、
前記3つ以上の電極のクリークの最大双極性電圧を識別することと、
前記3つ以上の電極のクリークの平均単極性電圧を計算することと、
前記3つ以上の電極のクリークの前記識別された最大双極性電圧に対する前記3つの電極のクリークの前記計算された平均単極性電圧の比を使用して病巣スコアを計算することと、
を実行するように構成された病巣マッピング・モジュールを備える、電気解剖学的マッピング・システム。
(項目22)
不整脈病巣をマッピングするための電気解剖学的マッピング・システムであって、
患者の心臓内の位置において多次元カテーテルを介して収集された電気生理学的データ点を入力として受信することと、
前記患者の心臓内の前記位置に関する評価領域を定義することであって、前記評価領域は複数のロッドを包含し、前記複数のロッドの各ロッドは、それぞれの最大振幅双極軸とそれぞれの最小振幅双極軸とを有するそれぞれの電界ループに関連付けられ、前記ロッドは、前記電界ループの前記それぞれの最大振幅双極軸を使用して定義されることと、
前記評価領域のロッド向き信頼スコアを計算することと、
前記ロッド向き信頼スコアが事前設定されたロッド向き信頼しきい値を超えたときに、前記評価領域の病巣スコアを計算することであって、前記病巣スコアは、前記評価領域内のロッドの向きの一貫性を示すことと、
を実行するように構成された病巣マッピング・モジュールを備える、電気解剖学的マッピング・システム。