(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】スコアリングデバイスおよびスコアリングシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
A61B17/12
(21)【出願番号】P 2020567676
(86)(22)【出願日】2019-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2019001654
(87)【国際公開番号】W WO2020152743
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 靖洋
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0173487(US,A1)
【文献】特表2005-508709(JP,A)
【文献】米国特許第05211654(US,A)
【文献】特表2007-502694(JP,A)
【文献】特表2018-527146(JP,A)
【文献】特表2018-528055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B13/00-18/18
A61M25/00-25/18
A61M29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテルにおけるバルーンの膨張を利用して血管内の狭窄部を押し広げる治療の際に用いられるデバイスであって、
軸方向に沿って延在するシャフトと、
前記シャフトの先端側に設けられており、前記治療の際に前記バルーンが内部に挿入されるスコアリング部材と
を備え、
前記スコアリング部材は、
各々が前記軸方向に沿って延在しており、前記バルーンの膨張および収縮に応じた弾性変形が可能であると共に、前記治療の際に前記狭窄部の表面に亀裂を生じさせるための複数のエレメントと、
前記複数のエレメントのうちの少なくとも2つ以上のエレメント同士を、周回方向に沿って互いに連結する連結部と
を有しており、
前記連結部は、
前記複数のエレメントの各先端付近において、前記少なくとも2つ以上のエレメント同士を互いに連結する第1の連結部と、
前記複数のエレメントの各基端付近において、前記少なくとも2つ以上のエレメント同士を互いに連結する第2の連結部と、
前記複数のエレメントにおける前記先端付近と前記基端付近との間の中間領域内における1または複数の箇所において、前記少なくとも2つ以上のエレメント同士を互いに連結する第3の連結部と
を含
んでおり、
前記第1および第3の連結部がそれぞれ、前記軸方向に沿った螺旋状構造、または、C字状構造を有している
スコアリングデバイス。
【請求項2】
前記第1および第3の連結部がそれぞれ、前記螺旋状構造を有しており、
前記螺旋状構造を介して、前記複数のエレメントがそれぞれ、前記軸方向に沿って分断されている
請求項
1に記載のスコアリングデバイス。
【請求項3】
前記第1および第3の連結部がそれぞれ、
前記C字状構造としての第1のC字状構造を有しており、
前記第1のC字状構造では、
第1の角度方向に形成された第1の切り欠きを有する、第1のC字状リングと、
前記第1の角度方向とは異なる第2の角度方向に形成された第2の切り欠きを有する、第2のC字状リングとが、
前記軸方向に沿って互いに対向配置されている
請求項1に記載のスコアリングデバイス。
【請求項4】
前記第1および第3の連結部がそれぞれ、単一のC字状リングを含む
前記C字状構造としての、第2のC字状構造を有する
請求項1に記載のスコアリングデバイス。
【請求項5】
前記C字状構造を介して、前記複数のエレメントのうちの一部のエレメントが、前記軸方向に沿って分断されている
請求項
3または請求項
4に記載のスコアリングデバイス。
【請求項6】
前記第2の連結部が、リング状である
請求項
1ないし請求項
5のいずれか1項に記載のスコアリングデバイス。
【請求項7】
バルーンの膨張を利用して血管内の狭窄部を押し広げる治療の際に用いられるシステムであって、
前記バルーンを有するバルーンカテーテルと、
軸方向に沿って延在するシャフトと、前記シャフトの先端側に設けられていると共に前記治療の際に前記バルーンが内部に挿入されるスコアリング部材と、を有するスコアリングデバイスと
を備え、
前記スコアリング部材は、
各々が前記軸方向に沿って延在しており、前記バルーンの膨張および収縮に応じた弾性変形が可能であると共に、前記治療の際に前記狭窄部の表面に亀裂を生じさせるための複数のエレメントと、
前記複数のエレメントのうちの少なくとも2つ以上のエレメント同士を、周回方向に沿って互いに連結する連結部と
を有しており、
前記連結部は、
前記複数のエレメントの各先端付近において、前記少なくとも2つ以上のエレメント同士を互いに連結する第1の連結部と、
前記複数のエレメントの各基端付近において、前記少なくとも2つ以上のエレメント同士を互いに連結する第2の連結部と、
前記複数のエレメントにおける前記先端付近と前記基端付近との間の中間領域内における1または複数の箇所において、前記少なくとも2つ以上のエレメント同士を互いに連結する第3の連結部と
を含
んでおり、
前記第1および第3の連結部がそれぞれ、前記軸方向に沿った螺旋状構造、または、C字状構造を有している
スコアリングシステム。
【請求項8】
前記バルーンにおける膨張領域の前記軸方向に沿った長さが、前記スコアリング部材における前記軸方向に沿った長さよりも、短くなっている
請求項
7に記載のスコアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内の狭窄部を押し広げる治療の際に用いられるスコアリングデバイス、および、そのようなスコアリングデバイスとバルーンカテーテルとを備えたスコアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床医療の分野では、プラーク性病変や石灰化病変等による血管内の狭窄部の治療方法として、例えばPTCA(Percutaneous Transluminal Angioplasty;経皮的冠動脈形成術)のような、カテーテル治療方法が用いられている(例えば特許文献1参照)。このPTCAによる治療の際には一般に、バルーンカテーテルにおける先端側のバルーンを、経皮的(皮膚切開せず)に狭窄部付近に配置して膨張させることで、その狭窄部を押し広げて血管を再形成するようになっている。
【0003】
また、このような治療の際には一般に、バルーンカテーテルとともに、先端側に複数のエレメント(スコアリングエレメント)を有するスコアリングデバイスが使用される。このような複数のエレメントの内部にバルーンが配置(挿入配置)された状態において、バルーンが膨張したときに各エレメントが血管の内面に押し付けられることで、狭窄部の表面に亀裂を生じさせるようになっている。これにより、例えば、狭窄部を拡張し易くしたりすることが可能となる。また、病変に亀裂を入れて拡張させることができるため、通常のバルーンの場合と比べ、低圧で拡張することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
ところで、このようなスコアリングデバイス等では一般に、治療の際の利便性を向上させることが求められている。治療の際の利便性を向上させることが可能な、スコアリングデバイスおよびスコアリングシステムを提供することが望ましい。
【0006】
本発明の一実施の形態に係るスコアリングデバイスは、バルーンカテーテルにおけるバルーンの膨張を利用して血管内の狭窄部を押し広げる治療の際に用いられるデバイスであって、軸方向に沿って延在するシャフトと、このシャフトの先端側に設けられており、上記治療の際にバルーンが内部に挿入されるスコアリング部材とを備えたものである。このスコアリング部材は、各々が軸方向に沿って延在しており、バルーンの膨張および収縮に応じた弾性変形が可能であると共に、上記治療の際に狭窄部の表面に亀裂を生じさせるための複数のエレメントと、複数のエレメントのうちの少なくとも2つ以上のエレメント同士を、周回方向に沿って互いに連結する連結部とを有している。この連結部は、複数のエレメントの各先端付近において、少なくとも2つ以上のエレメント同士を互いに連結する第1の連結部と、複数のエレメントの各基端付近において、少なくとも2つ以上のエレメント同士を互いに連結する第2の連結部と、複数のエレメントにおける先端付近と基端付近との間の中間領域内における1または複数の箇所において、少なくとも2つ以上のエレメント同士を互いに連結する第3の連結部とを含んでいる。上記第1および第3の連結部はそれぞれ、上記軸方向に沿った螺旋状構造、または、C字状構造を有している。なお、上記した「連結部」は、「複数のエレメント」と一体的に形成されているか、あるいは、別体として設けられていてもよい。また、上記した「スコアリング部材」は、上記した「シャフト」と一体的に形成されているか、あるいは、別体として設けられていてもよい。
【0007】
本発明の一実施の形態に係るスコアリングシステムは、バルーンの膨張を利用して血管内の狭窄部を押し広げる治療の際に用いられるシステムであって、バルーンを有するバルーンカテーテルと、上記本発明の一実施の形態に係るスコアリングデバイスとを備えたものである。
【0008】
本発明の一実施の形態に係るスコアリングデバイスおよびスコアリングシステムでは、上記治療の際にバルーンが内部に挿入されるスコアリング部材における上記連結部に、先端付近および基端付近の第1および第2の連結部に加え、それらの中間領域内に第3の連結部が設けられている。これにより、例えば、各エレメントの軸方向長を長くする必要があるような場合であっても、そのような第3の連結部が設けられていない場合(第1および第2の連結部のみが設けられている場合)と比べ、以下のようになる。すなわち、複数のエレメント同士が撚れてしまい、スコアリング部材の内部にバルーンを配置できなくなってしまうおそれが回避され、上記治療の際の操作性が向上する。また、上記第1および第3の連結部がそれぞれ、上記軸方向に沿った螺旋状構造、または、C字状構造を有していることから、以下のようになる。すなわち、上記第1および第3の連結部(先端付近および中間領域)が多少膨張できるようになるため、スコアリング部材がその先端側からバルーンカテーテルの周囲に、デリバリされ易くなる。また、スコアリング部材の内側からバルーンが膨張する際に、上記第1および第3の連結部付近(先端付近および中間領域)においても、バルーンが多少膨張できるようになるため、これらの領域においても狭窄部を押し広げ易くなる。これらのことから、上記治療の際の治療効果が向上し、治療の際の利便性が更に向上することになる。
【0009】
ここで、本発明の一実施の形態に係るスコアリングデバイスでは、上記第1および第3の連結部がそれぞれ、上記軸方向に沿った螺旋状構造を有する場合において、上記螺旋状構造を介して複数のエレメントがそれぞれ、上記軸方向に沿って分断されているようにしてもよい。このようにした場合、上記第1および第3の連結部付近において、バルーンが更に膨張できるようになるため、上記治療の際の治療効果が更に向上し、治療の際の利便性がより一層向上することになる。
【0010】
また、本発明の一実施の形態に係るスコアリングデバイスでは、上記第1および第3の連結部がそれぞれ、上記C字状構造としての第1のC字状構造を有していると共に、この第1のC字状構造において、第1の角度方向に形成された第1の切り欠きを有する第1のC字状リングと、上記第1の角度方向とは異なる第2の角度方向に形成された第2の切り欠きを有する第2のC字状リングとが、上記軸方向に沿って互いに対向配置されているようにしてもよい。あるいは、上記第1および第3の連結部がそれぞれ、単一のC字状リングを含む上記C字状構造としての、第2のC字状構造を有するようにしてもよい。これらの場合においても、上記第1および第3の連結部が多少膨張できるようになるため、スコアリング部材がその先端側からバルーンカテーテルの周囲に、デリバリされ易くなる。また、上記第1および第3の連結部付近においてバルーンが多少膨張できるようになるため、これらの領域において狭窄部を押し広げ易くなる。これらのことから、上記治療の際の治療効果が向上し、治療の際の利便性が更に向上することになる。
【0011】
これらの場合において、上記C字状構造(上記第1または第2のC字状構造)を介して、上記複数のエレメントのうちの一部のエレメントが、上記軸方向に沿って分断されているようにしてもよい。このようにした場合、上記第1および第3の連結部付近において、バルーンが更に膨張できるようになるため、上記治療の際の治療効果が更に向上し、治療の際の利便性がより一層向上することになる。
【0012】
また、本発明の一実施の形態に係るスコアリングデバイスでは、上記第2の連結部をリング状としてもよい。この第2の連結部付近(基端付近)では、上記第1および第3の連結部付近(先端付近および中間領域)と比較して、バルーンが膨張する必要性が低いことから、上記第2の連結部をリング状として、スコアリング部材の内部からバルーンが外れてしまうおそれを回避することで、上記治療の際の利便性が更に向上することになる。
【0013】
更に、本発明の一実施の形態に係るスコアリングシステムでは、上記バルーンにおける膨張領域の上記軸方向に沿った長さ(軸方向長)を、上記スコアリング部材における上記軸方向に沿った長さ(軸方向長)よりも短くしてもよい。このようにした場合、バルーン全体をスコアリング部材の内部に配置させることができるため、上記治療の際の治療効果が向上し、治療の際の利便性が更に向上することになる。
【0014】
本発明の一実施の形態に係るスコアリングデバイスおよびスコアリングシステムによれば、スコアリング部材における上記連結部に、上記第1および第2の連結部に加えて上記第3の連結部を設けるようにしたので、上記治療の際の操作性を向上させることができる。よって、上記治療の際の利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るスコアリングシステムの概略構成例を表す模式斜視図である。
【
図2】
図1に示したスコアリングデバイスの概略構成を表す模式斜視図である。
【
図3】
図2に示した各連結部の詳細構成を表す模式斜視図である。
【
図4】
図1に示したスコアリングシステムを用いた治療方法の一例を表す模式図である。
【
図5】比較例に係るスコアリングデバイスの概略構成例を表す模式斜視図である。
【
図6】変形例1に係るスコアリングデバイスの概略構成例を表す模式側面図である。
【
図7】
図6に示した各連結部の詳細構成を表す模式斜視図である。
【
図8】変形例2に係るスコアリングデバイスの概略構成例を表す模式側面図である。
【
図9】
図8に示した各連結部の詳細構成を表す模式斜視図である。
【
図10】変形例3に係るスコアリングデバイスにおける各連結部の構成例を表す模式斜視図である。
【
図11】変形例4に係るスコアリングデバイスの概略構成例を表す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(第1~第3の連結部がリング状、第2の連結部が複数個の例)
2.変形例
変形例1(第1,第3の連結部が螺旋状構造、第2の連結部が複数個の例)
変形例2(第1,第3の連結部が第1のC字状構造、第2の連結部が複数個の例)
変形例3(第1,第3の連結部が第2のC字状構造、第2の連結部が複数個の例)
変形例4(第1~第3の連結部がリング状、第2の連結部が1個の例)
3.その他の変形例
【0017】
<1.実施の形態>
[概略構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るスコアリングシステム(スコアリングシステム1)の概略構成例を、模式的に斜視図で表したものである。このスコアリングシステム1は、プラーク性病変や石灰化病変等による血管内の狭窄部の治療(PTCAによる治療)の際に用いられるシステムであり、この例では
図1に示したように、バルーンカテーテル2およびスコアリングデバイス3を備えている。このような治療の際には、詳細は後述するが、バルーンカテーテル2におけるバルーン(後述するバルーン22)の膨張を利用することで、血管内の狭窄部を押し広げるようになっている。なお、治療対象の狭窄部としては、例えば、比較的サイズの大きい下肢部分の血管内の狭窄部などが挙げられる。
【0018】
(A.バルーンカテーテル2)
バルーンカテーテル2は、
図1に示したように、シャフト21およびバルーン22を備えている。
【0019】
(シャフト21)
シャフト21は、可撓性を有しており、自身の軸方向(長手方向)であるZ軸方向に沿って延在(延伸)している。このシャフト21の基端付近は、スコアリングシステム1の操作者が把持する部分(把持部)となっており、シャフト21の先端付近にバルーン22が取り付けられている(
図1参照)。
【0020】
シャフト21の軸方向(Z軸方向)に沿った長さ(全長)は、例えば600~1800mm程度であり、好ましくは1200~1600mm程度である。また、シャフト21の外径は、例えば0.6~1.5mm程度であり、好ましくは0.7~1.3mm程度である。
【0021】
なお、このようなシャフト21は、例えば、ナイロン,ポリエーテルブロックアミド(PEBAX),ポリウレタン等の合成樹脂により構成されている。
【0022】
(バルーン22)
バルーン22は、上記したようにシャフト21の先端付近に取り付けられており、例えば
図1中の破線の矢印で示したように、操作者による所定の操作に応じて、シャフト21の周囲に向けて膨張(拡張)したり、元の状態に収縮することが可能となっている。このようなバルーン22としては、例えば、十分な柔軟性を有してデリバリ性にも優れる、セミコンプライアントタイプのバルーンや、石灰化病変等の狭窄部等にも対応可能であると共に比較的硬くて膨張性に優れる、ローコンプライアントタイプのバルーン等を用いることが可能である。
【0023】
ここで、このようなバルーン22における膨張領域の軸方向(Z軸方向)に沿った長さ(軸方向長L22)は、
図1に示した例では、以下のようになっている。すなわち、この軸方向長L22は、スコアリングデバイス3における後述するスコアリング部材32の軸方向(Z軸方向)に沿った長さ(軸方向長L32)よりも、短くなっている(L22<L32:
図1参照)。
【0024】
なお、軸方向長L22は、例えば20~350mm程度であり、好ましくは80~200mm程度である。また、軸方向長L32は、例えば30~360mm程度であり、好ましくは90~210mm程度である。
【0025】
(B.スコアリングデバイス3)
スコアリングデバイス3は、
図1に示したように、シャフト31およびスコアリング部材32を備えている。
【0026】
(シャフト31)
シャフト31は、可撓性を有しており、自身の軸方向(長手方向)であるZ軸方向に沿って延在(延伸)している。このシャフト31の基端付近も、スコアリングシステム1の操作者が把持する部分(把持部)となっており、シャフト31の先端付近にスコアリング部材32が取り付けられている(
図1参照)。なお、後述するスコアリング部材32は、シャフト31と一体的に形成されているか、あるいは、別体として設けられていてもよい。
【0027】
シャフト31の軸方向(Z軸方向)に沿った長さ(全長)は、例えば700~1900mm程度であり、好ましくは1300~1700mm程度である。また、シャフト31の外径は、例えば0.4~1.0mm程度であり、好ましくは0.5~0.7mm程度である。
【0028】
このようなシャフト31の材質としては、例えば、Ni(ニッケル)-Ti(チタン)合金等の金属材料や、樹脂材料などが挙げられるが、所定の形状保持特性と弾性とを有する材質であれば、特に限定されない。具体的には、シャフト31の材質としては、例えば、ステンレス鋼(SUS),チタン合金,ポリアミド,ポリアミドエラストマー,ポリエステル,ポリエーテルブロックアミド共重合体,ポリエーテルエーテルケトン,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素系材質等が挙げられ、放射線不透過性の造影剤が配合されることが望ましい。なお、このような造影剤としては、例えば、硫酸バリウムや酸化ビスマス、次炭酸ビスマス等が挙げられる。
【0029】
(スコアリング部材32)
スコアリング部材32は、上記したようにシャフト31の先端付近に取り付けられており、前述した治療の際に、その内部にバルーン22が挿入されるようになっている(
図1参照)。
【0030】
図2は、
図1に示したスコアリングデバイス3(主にスコアリング部材32)の概略構成を、模式的に斜視図で表したものである。また、
図3(
図3(A)~
図3(C))は、
図2に示した各連結部(後述する連結部421,422,423)の詳細構成を、模式的に斜視図で表したものである。具体的には、
図3(A)は連結部421の詳細構成を、
図3(B)は連結部423の詳細構成を、
図3(C)は連結部422の詳細構成を、それぞれ示している。
【0031】
図2および
図3に示したように、スコアリング部材32は、複数(この例では2つ)のエレメント411,412(スコアリングエレメント)と、3種類の連結部421,422,423とを有している。また、
図2に示したように、連結部421,422は1つずつ設けられており、連結部422は複数(この例では2つ)設けられている。
【0032】
エレメント411,412はそれぞれ、
図2に示したように、軸方向(Z軸方向)に沿って互いに並行するように延在しており、前述したバルーン22の膨張および収縮に応じた弾性変形が可能となっている。つまり、エレメント411,412はそれぞれ、弾性(超弾性)を有する部材である。また、これらのエレメント411,412はそれぞれ、詳細は後述するが、前述した治療の際に、治療対象である狭窄部の表面に亀裂(割れ目)を生じさせるための部材となっている。なお、スコアリングデバイス3の初期状態においては、各エレメント411,412は、弛みや撓みがない状態となっているのが望ましい。
【0033】
このような各エレメント411,412では、
図2に示したように、断面(X-Y断面)が四角形状となっている。また、各エレメント411,412の軸方向(Z軸方向)に沿った長さは、例えば10~100mm程度であり、好ましくは20~50mm程度である。また、各エレメント411,412の外径は、例えば0.05~0.5mm程度であり、好ましくは0.1~0.3mm程度である。
【0034】
なお、各エレメント411,412は、例えば、Ni-Ti合金等の金属材料や、樹脂材料などにより構成されている。
【0035】
上記した連結部421,422,423はそれぞれ、複数のエレメント411,412のうちの少なくとも2つ以上のエレメント同士(
図2,
図3の例では、2つのエレメント411,412同士)を、X-Y平面内の周回方向に沿って、互いに連結する(束ねる)部分である。
【0036】
連結部421は、
図2,
図3(A)に示したように、エレメント411,412の各先端付近(
図2,
図3(A)の例では先端)において、これらのエレメント411,412同士を互いに連結している。
【0037】
連結部422は、
図2,
図3(C)に示したように、エレメント411,412の各基端付近(
図2,
図3(C)の例では基端)において、これらのエレメント411,412同士を互いに連結している。
【0038】
連結部423は、
図2,
図3(B)に示したように、各エレメント411,412の先端付近と基端付近との間の中間領域内(
図2,
図3(B)の例では、先端および基端を除いた中間領域内)において、これらのエレメント411,412同士を互いに連結している。また、前述したように、
図2,
図3(B)の例では連結部423は複数(2つ)設けられているため、そのような中間領域内における複数(2つ)の箇所において、エレメント411,412同士が互いに連結されるようになっている。また、これら2つの連結部423同士は、各エレメント411,412の軸方向(Z軸方向)に沿って、互いに離隔して配置されている。具体的には、
図2に示したように、連結部421,422および2つの連結部423がそれぞれ、Z軸方向に沿って互いに略等間隔となるように配置されている。
【0039】
このような連結部421,422,423はいずれも、
図2,
図3(A)~
図3(C)に示したように、リング状となっている。つまり、連結部421,422,423はそれぞれ、2つのエレメント411,412同士を、X-Y平面内で完全に周回するようにして(切り欠き部分等を含まずに)、互いに連結している。
【0040】
なお、このような連結部421,422,423における各リング形状の内径はそれぞれ、例えば0.7~2.0mm程度であり、好ましくは1.0~1.5mm程度である。また、各リング形状の外径はそれぞれ、例えば0.9~2.2mm程度であり、好ましくは1.2~2.7mm程度である。
【0041】
ここで、これらの連結部421,422,423はそれぞれ、本発明における「連結部」の一具体例に対応している。また、連結部421は本発明における「第1の連結部」の一具体例に対応し、連結部422は本発明における「第2の連結部」の一具体例に対応し、連結部423は本発明における「第3の連結部」の一具体例に対応している。
【0042】
なお、このような形状のスコアリング部材32は、例えば、例えばレーザ加工等を用いて形成されるようになっており、後述する変形例においても同様である。
【0043】
[作用・効果]
(A.基本動作)
このスコアリングシステム1(バルーンカテーテル2およびスコアリングデバイス3)は、前述した血管内の狭窄部の治療の際に用いられる。このような治療の際には、バルーンカテーテル2におけるバルーン22が、経皮的に狭窄部付近に配置された状態で膨張することで、その狭窄部が押し広げられ、血管が再形成される。
【0044】
また、この治療の際には、スコアリングデバイス3における複数のエレメント411,412の内部にバルーン22が配置された状態において、バルーン22が膨張したときに各エレメント411,412が血管の内面に押し付けられることで、狭窄部の表面に亀裂を生じさせる。これにより、例えば、狭窄部を拡張し易くしたりすることが可能となる。また、病変に亀裂を入れて拡張させることができるため、通常のバルーンの場合と比べ、低圧で拡張することが可能となる。
【0045】
ここで、
図4(
図4(A)~
図4(C))は、このようなスコアリングシステム1を用いた治療方法の一例を、模式図で表したものである。なお、この
図4においては、治療対象の血管9における狭窄部90も、併せて図示している。
【0046】
この治療の際には、まず、例えば
図4(A)に示したように、治療対象の血管9の狭窄部90まで、バルーンカテーテル2のバルーン22と、スコアリングデバイス3のスコアリング部材32とがそれぞれ、図示しないガイドワイヤ等を用いて、この順序にてデリバリされる。この際に、スコアリング部材32を狭窄部90にデリバリできない場合には、バルーン22を狭窄部90に配置して拡張した後、バルーン22を収縮させてから、スコアリング部材32を狭窄部90にデリバリするようにする。なお、この
図4(A)では、バルーン22が狭窄部90まで収縮状態にてデリバリされた後、スコアリング部材32がその先端側から狭窄部90までデリバリされている状況(
図4(A)中の破線の矢印参照)を示している。
【0047】
続いて、例えば
図4(B)に示したように、スコアリング部材32も狭窄部90までデリバリされることで(
図4(B)中の破線の矢印参照)、そのスコアリング部材32の内部に、バルーン22が挿入された状態となる。
【0048】
このような状態において、例えば
図4(C)に示したように、スコアリングシステム1の操作者による所定の操作に応じて、バルーンカテーテル2におけるバルーン22を膨張させる(
図4(C)中の破線の矢印参照)。具体的には、例えばバルーンカテーテル2に設けられた所定のルーメンを介して、バルーン22内に所定の流体が供給されることで、バルーン22が拡張変形して膨張する。すると、そのようなバルーン22の膨張に伴って、バルーン22の外周側に位置する、スコアリング部材32における各エレメント411,412が、その外周側に膨らむように弾性変形する。具体的には、各エレメント411,412は、膨張状態のバルーン22の形状に沿うようにして、弾性変形する(
図4(C)参照)。
【0049】
これにより、各エレメント411,412の外周面が血管9(狭窄部90)の内面に押し付けられて、狭窄部90の表面に亀裂(割れ目や切れ目)が形成されることで、狭窄部90が押し広げられる(
図4(C)中の破線の矢印参照)。このようにして、スコアリングシステム1(バルーンカテーテル2およびスコアリングデバイス3)を用いた治療により、治療対象の血管9が再形成される。
【0050】
特に、このスコアリングシステム1では、バルーンカテーテル2とスコアリングデバイス3とが別体となっているため、これらが一体的に形成されている場合(一体型の場合)と比べ、例えば以下のような利点がある。すなわち、まず、このスコアリングシステム1では一体型の場合と比べ、各エレメント411,412の固定部分における剛性を、小さくすることができる。また、このスコアリングシステム1では一体型の場合と比べ、各エレメント411,412の固定部分における外径寸法を小さくできるため、血管9内の狭い箇所を容易に挿通させることができ、優れたデリバリ性が実現される。
【0051】
(B.スコアリングデバイス3における作用・効果)
続いて、本実施の形態のスコアリングデバイス3における作用・効果について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
【0052】
(比較例)
図5は、比較例に係るスコアリングデバイス(スコアリングデバイス103)の概略構成を、模式的に斜視図で表したものである。この比較例のスコアリングデバイス103は、実施の形態のスコアリングデバイス3(
図2参照)において、スコアリング部材32の代わりにスコアリング部材102を設けたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0053】
このスコアリング部材102は、
図5に示したように、実施の形態のスコアリング部材32において、連結部423を設けないようにした(省いた)ものに対応しており、他の構成は同様となっている。つまり、スコアリング部材32では、前述した3種類の連結部421,422,423が設けられていたのに対し、スコアリング部材102では、先端付近の連結部421と基端付近の422とはそれぞれ設けられているものの、前述した中間領域内の連結部423は、設けられていない。
【0054】
このような構成のスコアリング部材102では、例えば以下のような問題が生じるおそれがある。
【0055】
すなわち、まず、上記した治療の際における治療対象の狭窄部としては、例えば、比較的サイズの大きい下肢部分の血管内の狭窄部などが、想定される。その場合、血管内における狭窄部のサイズも大きくなることが想定されるため、各エレメント411,412の軸方向長(Z軸方向の長さ)を、長くする必要がある。すると、そのような場合、この比較例のスコアリング部材102のように、連結部421,422のみが設けられている(先端付近と基端付近との中間領域内には連結部が設けられていない)と、以下のようになる。すなわち、複数のエレメント411,412同士が撚れてしまい、スコアリング部材102の内部に、バルーン22を配置できなくなってしまうおそれがある。その結果、この比較例のスコアリングデバイス103を用いると、上記した治療の際の操作性が低下し、治療の際の利便性が損なわれてしまうことになる。
【0056】
(本実施の形態)
これに対して、本実施の形態のスコアリングデバイス3では、
図2および
図3に示したように、スコアリング部材32における連結部として、先端付近の連結部421および基端付近の連結部422に加え、それらの中間領域内に連結部423が設けられている。
【0057】
これにより本実施の形態では、例えば上記したように、各エレメント411,412の軸方向長を長くする必要があるような場合であっても、連結部423が設けられていない(連結部421,422のみが設けられている)上記比較例と比べ、以下のようになる。すなわち、上記したように、複数のエレメント411,412同士が撚れてしまい、スコアリング部材32の内部にバルーン22を配置できなくなってしまうおそれが、回避される。その結果、本実施の形態では上記比較例と比べ、前述した血管9内の狭窄部90の治療の際の、操作性が向上することになる。よって、本実施の形態では上記比較例と比べ、そのような治療の際の利便性を向上させることが可能となるとともに、治療効果を向上させることも可能となる。
【0058】
また、本実施の形態では、基端付近の連結部422をリング状としたので、以下のようになる。すなわち、まず、この連結部422付近(基端付近)では、連結部421,423付近(先端付近および中間領域)と比較して、バルーン22が膨張する必要性が低い。したがって、連結部422をリング状として、スコアリング部材32の内部からバルーン22が外れてしまうおそれを回避することで、上記した治療の際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0059】
更に、本実施の形態では、上記した連結部422に加えて連結部421,423もリング状とした(連結部421,422,423をいずれもリング状とした)ので、以下のようになる。すなわち、後述する変形例1~3の場合等と比べ、スコアリング部材32を簡易な構造とすることができ、スコアリングデバイス3を容易に製造することが可能となる。
【0060】
加えて、本実施の形態では、バルーン22における膨張領域の軸方向長L22が、スコアリング部材32における軸方向長L32よりも短くなっているので(L22<L32)、以下のようになる。すなわち、例えば
図1に示したように、バルーン22全体をスコアリング部材32の内部に配置させることができるため、上記した治療の際の治療効果を向上させることができ、治療の際の利便性を更に向上させることが可能となる。
【0061】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~4)について説明する。
【0062】
これらの変形例1~4はいずれも、スコアリングデバイス3の形状を変更した変形例に対応している。このような変形例1~4に係るスコアリングデバイス(後述するスコアリングデバイス3A~3D)についても、実施の形態で説明したバルーンカテーテル2と組み合わせることで、変形例1~4に係るスコアリングシステムを構成することが可能となっている。なお、上記実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0063】
[変形例1]
(概略構成)
図6は、変形例1に係るスコアリングデバイス(スコアリングデバイス3A)の概略構成を、模式的に側面図で表したものである。また、
図7(A)~
図7(C)は、
図6に示した各連結部(後述する連結部421A,422A,423A)の詳細構成を、模式的に斜視図で表したものである。具体的には、
図7(A)は連結部421Aの詳細構成を、
図7(B)は連結部423Aの詳細構成を、
図7(C)は連結部422Aの詳細構成を、それぞれ示している。
【0064】
図6および
図7に示したように、変形例1のスコアリングデバイス3Aは、シャフト31およびスコアリング部材32Aを備えている。また、スコアリング部材32Aは、複数(この例では5つ)のエレメント411~415と、3種類の連結部421A,422A,423Aとを有している。また、
図6に示したように、連結部421A,422Aは1つずつ設けられており、連結部423Aは複数(この例では2つ)設けられている。
【0065】
つまり、変形例1のスコアリング部材32Aは、実施の形態のスコアリング部材32(
図2,
図3参照)において、エレメントの本数を変更すると共に、連結部421,422,423の代わりに連結部421A,422A,423Aを設けるようにしたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0066】
エレメント411~415はそれぞれ、基本的は、実施の形態で説明したエレメント411,412と同様の形状および材料により構成されており、バルーン22の膨張および収縮に応じた弾性変形が可能となっている。また、これらのエレメント411~415はそれぞれ、
図6に示したように、軸方向(Z軸方向)に沿って互いに並行するように延在しており、エレメント411~415全体では、X-Y平面内で円環状をなすように配置されている(
図6,
図7参照)。
【0067】
連結部421Aは、連結部421と同様に、
図6,
図7(A)に示したように、エレメント411~415の各先端付近(
図6,
図7(A)の例では先端)において、これらのエレメント411~415同士を互いに連結している。
【0068】
連結部422Aは、連結部422と同様に、
図6,
図7(C)に示したように、エレメント411~415の各基端付近(
図6,
図7(C)の例では基端)において、これらのエレメント411~415同士を互いに連結している。
【0069】
連結部423Aは、連結部423と同様に、
図6,
図7(B)に示したように、各エレメント411~415の先端付近と基端付近との間の中間領域内(
図6,
図7(B)の例では、先端および基端を除いた中間領域内)において、これらエレメント411~415同士を互いに連結している。また、前述したように、
図6,
図7(B)の例では連結部423Aは複数(2つ)設けられているため、そのような中間領域内における複数(2つ)の箇所において、エレメント411~415同士が互いに連結されるようになっている。また、これら2つの連結部423A同士は、各エレメント411~415の軸方向(Z軸方向)に沿って、互いに離隔して配置されている。具体的には、
図6に示したように、連結部421A,422Aおよび2つの連結部423Aがそれぞれ、Z軸方向に沿って互いに略等間隔となるように配置されている。
【0070】
ここで、連結部422Aは、連結部422と同様に、
図6,
図7(C)に示したように、リング状となっている。つまり、この連結部422Aは、5つのエレメント411~415同士を、X-Y平面内で完全に周回するようにして(切り欠き部分等を含まずに)、互いに連結している。
【0071】
一方、連結部421A,423Aはそれぞれ、連結部421,423とは異なり、
図6,
図7(A),
図7(B)に示したように、軸方向(Z軸方向)に沿った螺旋状構造を有している。また、これらの連結部421A,423Aのうち、この例では連結部423Aでは、このような螺旋状構造を介して、複数のエレメント411~415がそれぞれ、軸方向(Z軸方向)に沿って分断されている(
図7(B)参照)。
【0072】
ここで、これらの連結部421A,422A,423Aはそれぞれ、本発明における「連結部」の一具体例に対応している。また、連結部421Aは本発明における「第1の連結部」の一具体例に対応し、連結部422Aは本発明における「第2の連結部」の一具体例に対応し、連結部423Aは本発明における「第3の連結部」の一具体例に対応している。
【0073】
(作用・効果)
このような構成の変形例1のスコアリングデバイス3Aにおいても、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、本変形例のスコアリングデバイス3Aにおいても、スコアリング部材32Aにおける連結部として、先端付近の連結部421Aおよび基端付近の連結部422Aに加え、それらの中間領域内に連結部423Aを設けるようにしたので、以下のようになる。つまり、本変形例においても前述した比較例と比べ、前述した治療の際の操作性を向上させることができ、治療の際の利便性を向上させることが可能となるとともに、治療効果を向上させることも可能となる。
【0074】
また、この変形例1においても実施の形態と同様に、基端付近の連結部422Aをリング状としたので、以下のようになる。すなわち、前述したように、スコアリング部材32Aの内部からバルーン22が外れてしまうおそれを回避することができ、上記した治療の際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0075】
また、特にこのスコアリングデバイス3Aでは、連結部421A,423Aがそれぞれ、上記した螺旋状構造を有するようにしたので、以下のようになる。すなわち、まず、連結部421A,423A(先端付近および中間領域)が多少膨張できるようになるため、スコアリング部材32Aがその先端側からバルーンカテーテル2の周囲に、デリバリされ易くなる。また、スコアリング部材32Aの内側からバルーン22が膨張する際に、これらの連結部421A,423A付近(先端付近および中間領域)においても、バルーン22が多少膨張できるようになるため、これらの領域においても狭窄部90を押し広げ易くなる。これらのことから、上記した治療の際の治療効果を向上させて、治療の際の利便性を更に向上させることが可能となる。
【0076】
更に、このスコアリングデバイス3Aでは、上記した螺旋状構造を介して複数のエレメント411~415がそれぞれ、軸方向(Z軸方向)に沿って分断されているようにしたので、以下のようになる。すなわち、例えば連結部423A付近において、バルーン22が更に膨張できるようになるため、上記した治療の際の治療効果を更に向上させることができ、治療の際の利便性をより一層向上させることが可能となる。
【0077】
[変形例2]
(概略構成)
図8は、変形例2に係るスコアリングデバイス(スコアリングデバイス3B)の概略構成を、模式的に側面図で表したものである。また、
図9(A)~
図9(C)は、
図7に示した各連結部(後述する連結部421B,423B)の詳細構成を、模式的に斜視図で表したものである。具体的には、
図9(A)は連結部421Bの詳細構成を、
図9(B)は連結部423B(後述する連結部423B1)の詳細構成を、
図9(C)は連結部423B(後述する連結部423B2)の詳細構成を、それぞれ示している。
【0078】
図8および
図9に示したように、変形例2のスコアリングデバイス3Bは、シャフト31およびスコアリング部材32Bを備えている。また、スコアリング部材32Bは、複数(この例では5つ)のエレメント411~415と、3種類の連結部421B,422B,423Bとを有している。また、
図8に示したように、連結部421B,422Bは1つずつ設けられており、連結部423Bは複数(この例では、2つの連結部423B1,423B2)設けられている。なお、連結部423B1は、相対的に先端側に配置されており、連結部423B2は、相対的に基端側に配置されている。
【0079】
つまり、変形例2のスコアリング部材32Bは、変形例1のスコアリング部材32A(
図6,
図7参照)において、連結部421A,422A,423Aの代わりに連結部421B,422B,423Bを設けるようにしたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0080】
連結部421Bは、連結部421Aと同様に、
図8,
図9(A)に示したように、エレメント411~415の各先端付近(
図8,
図9(A)の例では先端)において、これらのエレメント411~415同士を互いに連結している。
【0081】
連結部422Bは、連結部422Bと同様に、
図8に示したように、エレメント411~415の各基端付近(
図8の例では基端)において、これらのエレメント411~415同士を互いに連結している。
【0082】
連結部423B(423B1,423B2)は、連結部423Aと同様に、
図8,
図9(B),
図9(C)に示したように、各エレメント411~415の先端付近と基端付近との間の中間領域内(この例では、先端および基端を除いた中間領域内)において、これらエレメント411~415同士を互いに連結している。また、この例では連結部423B1,423B2は、そのような中間領域内における複数(2つ)の箇所において、エレメント411~415同士を互いに連結している。そして、これら2つの連結部423B1,423B2同士は、各エレメント411~415の軸方向(Z軸方向)に沿って、互いに離隔して配置されている。具体的には、
図8に示したように、連結部421B,422Bおよび連結部423B1,423B2がそれぞれ、Z軸方向に沿って互いに略等間隔となるように配置されている。
【0083】
ここで、連結部422Bは、連結部422,422Aと同様に、
図8に示したように、リング状となっている。つまり、この連結部422Bは、5つのエレメント411~415同士を、X-Y平面内で完全に周回するようにして(切り欠き部分等を含まずに)、互いに連結している。
【0084】
一方、連結部421B,423B(423B1,423B2)はそれぞれ、連結部421A,423Aとは異なり、
図8,
図9(A)~
図9(B)に示したように、以下のようなC字状構造(第1のC字状構造)を有している。すなわち、本変形例のC字状構造では、C字状リング431a,433aとC字状リング431b,433bとが、Z軸方向に沿って互いに対向配置されている(
図9(A)~
図9(B)参照)。また、これらの連結部421B,423Bのうち、この例では連結部423B(423B1,423B2)では、このようなC字状構造を介して、複数のエレメント411~415のうちの一部のエレメント(この例では5つのうちの2つ)が、Z軸方向に沿って分断されている。
【0085】
具体的には、
図9(A)に示した連結部421Bでは、C字状リング431aとC字状リング431bとが、Z軸方向に沿って互いに対向配置されている。C字状リング431aは、所定の角度方向(第1の角度方向)に形成された、切り欠き441a(第1の切り欠き)を有している。一方、C字状リング431bは、所定の角度方向(上記第1の角度方向とは異なる第2の角度方向)に形成された、切り欠き441b(第2の切り欠き)を有している。
【0086】
また、
図9(B),
図9(C)に示した連結部423B1,423B2ではそれぞれ、C字状リング433aとC字状リング433bとが、Z軸方向に沿って互いに対向配置されている。C字状リング433aは、所定の角度方向(第1の角度方向)に形成された、切り欠き443a(第1の切り欠き)を有している。一方、C字状リング433bは、所定の角度方向(上記第1の角度方向とは異なる第2の角度方向)に形成された、切り欠き443b(第2の切り欠き)を有している。
【0087】
そして、連結部423B1では、上記したC字状構造を介して、5つのエレメント411~415のうちの2つのエレメント413,414がそれぞれ、Z軸方向に沿って分断されている(
図9(B)参照)。また、連結部423B2では、上記したC字状構造を介して、5つのエレメント411~415のうちの2つのエレメント412,413がそれぞれ、Z軸方向に沿って分断されている(
図9(C)参照)。
【0088】
ここで、これらの連結部421B,422B,423Bはそれぞれ、本発明における「連結部」の一具体例に対応している。また、連結部421Bは本発明における「第1の連結部」の一具体例に対応し、連結部422Bは本発明における「第2の連結部」の一具体例に対応し、連結部423Bは本発明における「第3の連結部」の一具体例に対応している。
【0089】
(作用・効果)
このような構成の変形例2のスコアリングデバイス3Bにおいても、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、本変形例のスコアリングデバイス3Bにおいても、スコアリング部材32Bにおける連結部として、先端付近の連結部421Bおよび基端付近の連結部422Bに加え、それらの中間領域内に連結部423Bを設けるようにしたので、以下のようになる。つまり、本変形例においても前述した比較例と比べ、前述した治療の際の操作性を向上させることができ、治療の際の利便性を向上させることが可能となるとともに、治療効果を向上させることも可能となる。
【0090】
また、この変形例2においても実施の形態と同様に、基端付近の連結部422Bをリング状としたので、以下のようになる。すなわち、前述したように、スコアリング部材32Bの内部からバルーン22が外れてしまうおそれを回避することができ、上記した治療の際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0091】
また、特にこのスコアリングデバイス3Bでは、連結部421B,423Bがそれぞれ、
図9に示したC字状構造を有している。そして、このC字状構造において、上記したC字状リング431a,433aと、上記したC字状リング431b,433bとが、Z軸方向に沿って互いに対向配置されているようにしたので、以下のようになる。すなわち、前述した変形例1の場合と同様に、まず、連結部421B,423B(先端付近および中間領域)が多少膨張できるようになるため、スコアリング部材32Bがその先端側からバルーンカテーテル2の周囲に、デリバリされ易くなる。また、スコアリング部材32Bの内側からバルーン22が膨張する際に、これらの連結部421B,423B付近(先端付近および中間領域)においても、バルーン22が多少膨張できるようになるため、これらの領域においても狭窄部90を押し広げ易くなる。これらのことから、上記した治療の際の治療効果を向上させて、治療の際の利便性を更に向上させることが可能となる。
【0092】
更に、このスコアリングデバイス3Bでは、
図9に示したC字状構造を介して、複数のエレメント411~415のうちの一部のエレメントが、軸方向(Z軸方向)に沿って分断されているようにしたので、以下のようになる。すなわち、例えば連結部423B付近において、バルーン22が更に膨張できるようになるため、上記した治療の際の治療効果を更に向上させることができ、治療の際の利便性をより一層向上させることが可能となる。
【0093】
[変形例3]
(概略構成)
図10(A)~
図10(D)は、変形例3に係るスコアリングデバイス(スコアリングデバイス3C)における各連結部(後述する連結部421C,422C,423C)の構成を、模式的に斜視図で表したものである。具体的には、
図10(A)は連結部421Cの詳細構成を、
図10(B),
図10(C)は連結部423Cの詳細構成を、
図10(D)は連結部422Cの詳細構成を、それぞれ示している。
【0094】
図10(A)~
図10(D)に示したように、変形例3のスコアリングデバイス3Cは、シャフト31およびスコアリング部材32Cを備えている。また、スコアリング部材32Cは、複数(この例では4つ)のエレメント411~414と、3種類の連結部421C,422C,423Cとを有している。また、連結部421C,422Cは1つずつ設けられており、連結部423Cは複数(この例では2つ)設けられている。
【0095】
つまり、変形例3のスコアリング部材32Cは、変形例1のスコアリング部材32A(
図6,
図7参照)において、エレメントの本数を変更すると共に、連結部421A,422A,423Aの代わりに連結部421C,422C,423Cを設けるようにしたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0096】
連結部421Cは、連結部421A,421Bと同様に、
図10(A)に示したように、エレメント411~414の各先端付近(
図10(A)の例では先端)において、これらのエレメント411~414同士を互いに連結している。
【0097】
連結部422Cは、連結部422A,422Bと同様に、
図10(D)に示したように、エレメント411~414の各基端付近(
図10(D)の例では基端)において、これらのエレメント411~414同士を互いに連結している。
【0098】
連結部423Cは、連結部423A,423Bと同様に、
図10(B),
図10(C)に示したように、各エレメント411~414の先端付近と基端付近との間の中間領域内(この例では、先端および基端を除いた中間領域内)において、これらエレメント411~414同士を互いに連結している。また、この例では連結部423Cは、そのような中間領域内における複数(2つ)の箇所において、エレメント411~414同士を互いに連結している。そして、これら2つの連結部423C同士は、各エレメント411~414の軸方向(Z軸方向)に沿って、互いに離隔して配置されている。具体的には、連結部421C,422Cおよび2つの連結部423Cがそれぞれ、Z軸方向に沿って互いに略等間隔となるように配置されている。
【0099】
ここで、連結部422Cは、連結部422,422A,422Bと同様に、
図10(C)に示したように、リング状となっている。つまり、この連結部422Cは、4つのエレメント411~414同士を、X-Y平面内で完全に周回するようにして(切り欠き部分等を含まずに)、互いに連結している。
【0100】
一方、連結部421C,423Cはそれぞれ、連結部421A,423A,421B,423Bとは異なり、
図10(A)~
図10(C)に示したように、以下のようなC字状構造(第2のC字状構造)を有している。すなわち、本変形例のC字状構造は、単一のC字状リング451,453(切り欠きを有するリング)を含んでいる。具体的には、
図10(A)に示した連結部421CにおけるC字状構造は、単一のC字状リング451を含んでおり、
図10(B),
図10(C)に示した連結部423CにおけるC字状構造ではそれぞれ、単一のC字状リング453を含んでいる。
【0101】
また、これらの連結部421C,423Cのうち、この例では連結部423Cでは、このようなC字状構造を介して、複数のエレメント411~414のうちの一部のエレメント(この例では4つのうちの1つ)が、Z軸方向に沿って分断されている。具体的には、
図10(B)に示した連結部423Cでは、上記したC字状構造を介して、4つのエレメント411~414のうちの1つのエレメント414が、Z軸方向に沿って分断されている。また、
図10(C)に示した連結部423Cでは、上記したC字状構造を介して、4つのエレメント411~414のうちの1つのエレメント412が、Z軸方向に沿って分断されている。
【0102】
ここで、これらの連結部421C,422C,423Cはそれぞれ、本発明における「連結部」の一具体例に対応している。また、連結部421Cは本発明における「第1の連結部」の一具体例に対応し、連結部422Cは本発明における「第2の連結部」の一具体例に対応し、連結部423Cは本発明における「第3の連結部」の一具体例に対応している。
【0103】
(作用・効果)
このような構成の変形例3のスコアリングデバイス3Cにおいても、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、本変形例のスコアリングデバイス3Cにおいても、スコアリング部材32Cにおける連結部として、先端付近の連結部421Cおよび基端付近の連結部422Cに加え、それらの中間領域内に連結部423Cを設けるようにしたので、以下のようになる。つまり、本変形例においても前述した比較例と比べ、前述した治療の際の操作性を向上させることができ、治療の際の利便性を向上させることが可能となるとともに、治療効果を向上させることも可能となる。
【0104】
また、この変形例3においても実施の形態と同様に、基端付近の連結部422Cをリング状としたので、以下のようになる。すなわち、前述したように、スコアリング部材32Cの内部からバルーン22が外れてしまうおそれを回避することができ、上記した治療の際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0105】
また、特にこのスコアリングデバイス3Bでは、連結部421C,423Cがそれぞれ、
図10に示したC字状構造(単一のC字状リング451,453を含む構造)を有するようにしたので、以下のようになる。すなわち、前述した変形例1,2の場合と同様に、まず、連結部421C,423C(先端付近および中間領域)が多少膨張できるようになるため、スコアリング部材32Cがその先端側からバルーンカテーテル2の周囲に、デリバリされ易くなる。また、スコアリング部材32Cの内側からバルーン22が膨張する際に、これらの連結部421C,423C付近(先端付近および中間領域)においても、バルーン22が多少膨張できるようになるため、これらの領域においても狭窄部90を押し広げ易くなる。これらのことから、上記した治療の際の治療効果を向上させて、治療の際の利便性を更に向上させることが可能となる。
【0106】
更に、このスコアリングデバイス3Bでは、
図10に示したC字状構造を介して、複数のエレメント411~415のうちの一部のエレメントが、軸方向(Z軸方向)に沿って分断されているようにしたので、以下のようになる。すなわち、例えば連結部423C付近において、バルーン22が更に膨張できるようになるため、上記した治療の際の治療効果を更に向上させることができ、治療の際の利便性をより一層向上させることが可能となる。
【0107】
[変形例4]
(概略構成)
図11は、変形例4に係るスコアリングデバイス(スコアリングデバイス3D)の概略構成を、模式的に斜視図で表したものである。
【0108】
図11に示したように、変形例4のスコアリングデバイス3Dは、シャフト31およびスコアリング部材32Dを備えている。また、スコアリング部材32Dは、複数(この例では2つ)のエレメント411,412と、3種類の連結部421,422,423とを有している。また、連結部421,422,423はそれぞれ、1つずつ設けられている。
【0109】
つまり、変形例4のスコアリング部材32Dは、実施の形態のスコアリング部材32(
図2,
図3参照)において、連結部423の個数を複数(2つ)から1つに変更したものに対応しており、他の構成は同様となっている。なお、このスコアリング部材32Dにおいてもスコアリング部材32と同様に、連結部421,422,423がいずれも、リング状となっている。
【0110】
(作用・効果)
このような構成の変形例4のスコアリングデバイス3Dにおいても、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、本変形例のスコアリングデバイス3Dにおいても、スコアリング部材32Dにおける連結部として、先端付近の連結部421および基端付近の連結部422に加え、それらの中間領域内に連結部423を設けるようにしたので、以下のようになる。つまり、本変形例においても前述した比較例と比べ、前述した治療の際の操作性を向上させることができ、治療の際の利便性を向上させることが可能となるとともに、治療効果を向上させることも可能となる。
【0111】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0112】
例えば、上記実施の形態等において説明した各部材の形状や配置位置、サイズ、個数、材料等は限定されるものではなく、他の形状や配置位置、サイズ、個数、材料等としてもよい。具体的には、例えば、スコアリングデバイスにおけるスコアリング部材や、バルーンカテーテル等の構成は、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の構成としてもよい。
【0113】
詳細には、例えば、スコアリング部材における複数のエレメントの個数は、上記実施の形態等で説明したものには限られず、また、スコアリング部材における連結部では、複数のエレメントのうちの全てではなく、一部のエレメントのみ同士を連結するようにしてもよい。更に、このような連結部は、複数のエレメントと一体的に形成されている場合には限られず、例えば、複数のエレメントとは別体として設けられているようにしてもよい。また、各エレメントの断面形状は、上記実施の形態等で説明した四角形状には限られず、例えば三角形状等の他の多角形状や、円形状など、任意の形状を適用することが可能である。
【0114】
加えて、上記実施の形態等では、比較的サイズの大きい下肢部分の血管内の狭窄部が治療対象である場合を、主に例示して説明したが、この場合には限られない。すなわち、本発明のスコアリングデバイスおよびスコアリングシステムは、このような下肢部分の血管以外の血管(例えば、臓,腹部など)における狭窄部や、シャントにおける狭窄部などについての治療にも、適用することが可能である。