(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】地盤改良工法における改良対象土の流動状態検知装置及び検知方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2021188297
(22)【出願日】2021-11-19
【審査請求日】2022-01-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000185972
【氏名又は名称】小野田ケミコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】坂牧 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】山根 行弘
(72)【発明者】
【氏名】市川 公彦
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特許第3788721(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3024353(JP,U)
【文献】特開平11-209962(JP,A)
【文献】特開平08-109627(JP,A)
【文献】特開昭59-015118(JP,A)
【文献】特開2015-055048(JP,A)
【文献】米国特許第05411353(US,A)
【文献】特開2014-181526(JP,A)
【文献】特開2001-336142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中で回転軸部材を軸線まわりに回転させることにより、前記回転軸部材に対してその径方向に張り出すように固定された撹拌部材によって改良対象土および固化材を混合かつ撹拌する際に、当該改良対象土の流動状態を検知する装置であって、
前記撹拌部材と比較して小さい張出量で前記回転軸部材の径方向に張り出し、かつ、当該回転軸部材に対して前記軸線まわりに回転自在に設けられた流動検知部材と、
前記流動検知部材に取り付けられている状況監視モジュールを有する回転状態監視システムと、を備え
、
前記状況監視モジュールが、ハウジングと、前記ハウジングに収容された、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数を測定する回転数センサ、および、前記回転数センサにより測定された前記流動検知部材の回転状態としての、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数の時系列を記憶保持する記憶装置と、を備え、
前記回転状態監視システムが、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数の大小に応じて、前記撹拌部材と前記改良対象土とが一体的に回転している共回り現象の発生の有無または可能性の高低を判定するように構成されている
改良対象土の流動状態検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の改良対象土の流動状態検知装置において、
前記回転軸部材が、円筒状の内側回転軸部材と、前記内側回転軸部材を部分的に下方に突出させた状態で前記内側回転軸部材を全周にわたり囲繞する円筒状の外側回転軸部材と、により構成され、
前記内側回転軸部材および前記外側回転軸部材が、同一軸線まわりに相互に反対方向に回転駆動される、または、同一軸線まわりに同一方向に異なる回転速度で回転駆動され、
前記流動検知部材が、
前記内側回転軸部材のうち前記外側回転軸部材から突出している部分と、前記外側回転軸部材とのそれぞれに対して固定された一対の撹拌部材の間に介在するように、前記一対の
撹拌部材のうち少なくとも一方の撹拌部材と比較して小さい張出量で
前記回転軸部材の径方向に張り出し、かつ、当該回転軸部材に対して前記軸線まわりに回転自在に設けられている
改良対象土の流動状態検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の改良対象土の流動状態検知装置において、
前記一対の撹拌部材の間に介在する前記流動検知部材とは別個の前記流動検知部材としての補助的な流動検知部材が、
前記一対の撹拌部材のうち上側の撹拌部材よりも上方に離間した位置および前記一対の撹拌部材のうち下側の撹拌部材よりも下方に離間した位置の少なくとも一方において、前記一対の
撹拌部材のうち少なくとも一方の撹拌部材と比較して小さい張出量で
前記内側回転軸部材および前記外側回転軸部材のそれぞれの径方向に張り出し、かつ、
前記内側回転軸部材および前記外側回転軸部材のそれぞれに対して前記軸線まわりに回転自在に設けられている
改良対象土の流動状態検知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の改良対象土の流動状態検知装置において、
前記回転状態監視システムを構成する前記状況監視モジュールが、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数の大小に応じて、前記撹拌部材と前記改良対象土とが一体的に回転している共回り現象の発生の有無または可能性の高低を判定するように構成されている
改良対象土の流動状態検知装置。
【請求項5】
請求項1に記載の改良対象土の流動状態検知装置において、
前記回転状態監視システムが、地上に配置され、前記状況監視モジュールとしての第1状況監視モジュールとの相互通信機能を有する第2状況監視モジュールをさらに備え、
前記第2状況監視モジュールが、前記第1状況監視モジュールから受信した、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数の時系列に基づき、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数の大小に応じて、前記撹拌部材と前記改良対象土とが一体的に回転している共回り現象の発生の有無または可能性の高低を判定するように構成されている
改良対象土の流動状態検知装置。
【請求項6】
地盤中で回転軸部材を軸線まわりに回転させることにより、前記回転軸部材に対してその径方向に張り出すように固定された撹拌部材によって改良対象土および固化材を混合かつ撹拌する際に、当該改良対象土の流動状態を検知する方法であって、
前記撹拌部材と比較して小さい張出量で前記回転軸部材の径方向に張り出し、かつ、当該回転軸部材に対して前記軸線まわりに回転自在に設けられた流動検知部材の回転状態
として、前記流動検知部材に取り付けられている状況監視モジュールのハウジングに収容された回転数センサにより前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数を測定する工程と、
前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数の大小に応じて、前記撹拌部材と前記改良対象土とが一体的に回転している共回り現象の発生の有無または可能性の高低を判定する工程と、を含んでいる
改良対象土の流動状態検知方法。
【請求項7】
請求項6に記載の改良対象土の流動状態検知方法において、
前記回転軸部材が、円筒状の内側回転軸部材と、前記内側回転軸部材を部分的に下方に突出させた状態で前記内側回転軸部材を全周にわたり囲繞する円筒状の外側回転軸部材と、により構成され、
前記内側回転軸部材および前記外側回転軸部材が、同一軸線まわりに相互に反対方向に回転駆動される、または、同一軸線まわりに同一方向に異なる回転速度で回転駆動され、
前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数を測定する工程が、
前記内側回転軸部材のうち前記外側回転軸部材から突出している部分と、前記外側回転軸部材とのそれぞれに対して固定された一対の撹拌部材の間に介在するように、前記一対の
撹拌部材のうち少なくとも一方の撹拌部材と比較して小さい張出量で
前記回転軸部材の径方向に張り出し、かつ、当該回転軸部材に対して前記軸線まわりに回転自在に設けられている前記流動検知部材
と前記回転軸部材との相対的な回転数を測定する工程を含んでいる
改良対象土の流動状態検知方法。
【請求項8】
請求項7に記載の改良対象土の流動状態検知方法において、
前記一対の撹拌部材の間に介在する前記流動検知部材とは別個の前記流動検知部材としての補助的な流動検知部材が、
前記一対の撹拌部材のうち上側の撹拌部材よりも上方に離間した位置および前記一対の撹拌部材のうち下側の撹拌部材よりも下方に離間した位置の少なくとも一方において、前記一対の
撹拌部材のうち少なくとも一方の撹拌部材と比較して小さい張出量で
前記内側回転軸部材および前記外側回転軸部材のそれぞれの径方向に張り出し、かつ、
前記内側回転軸部材および前記外側回転軸部材のそれぞれに対して前記軸線まわりに回転自在に設けられ、
前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数を測定する工程が、
前記回転数センサにより前記補助的な流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数を測定する工程を含んでいる
改良対象土の流動状態検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固化材を用いた地盤改良工法施工における改良対象土の混合撹拌状況を施工中に確認するために、混合撹拌領域における改良対象土の流動状態を検知する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固化材を用いた地盤改良工法においては、改良対象土が粘性の大きい土である場合に、撹拌翼に改良対象土が付着し、撹拌翼と改良対象土が一体となり、固化材と改良対象土が混合できなくなる混合不良現象が起きる場合がある。
【0003】
混合不良現象を防止するために、回転ロッドとともに回転して掘削土と固化材を攪拌・混合する攪拌翼と、静止して掘削土の共回りを防止する共回り防止翼とを備えた攪拌・混合装置による深層混合処理工法において、前記のような混合不良現象をリアルタイムで検出する技術的手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記手法では、撹拌翼の回転に伴い共回り防止翼が回転しているか否かの状況は検知できるが、共回り防止翼が回転していないことと、改良対象土と固化材(セメント系固化材スラリー)が均一に混合されているかは、必ずしも同値ではない。すなわち共回り防止翼の回転は、混合撹拌領域全体の改良対象土の動きを忠実に反映しない場合がある。例えば、混合撹拌翼に対し共回り防止翼が存在する上下位置とは反対の位置の混合撹拌領域の改良対象土の動きは、共回り防止翼の回転の有無だけでは検知しえない、という問題があった。
【0006】
また、改良杭同士が接する配置で、施工杭隣接部分が改良等により泥土化し、共回り防止翼先端部に、回転に抵抗する土圧が期待できない場合や、非撹拌領域が軟弱土で共回り防止翼先端部に、回転に抵抗する土圧が期待できない場合等においては、共回り防止翼自体が土中で静止できずに撹拌翼と共に回転する場合があり、混合撹拌領域の改良対象土が撹拌翼と一緒に共回りしているか否かを検知できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、改良対象土の流動状態の検知精度の向上を図りうる装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の改良対象土の流動状態検知装置は、
地盤中で回転軸部材を軸線まわりに回転させることにより、前記回転軸部材に対してその径方向に張り出すように固定された撹拌部材によって改良対象土および固化材を混合かつ撹拌する際に、当該改良対象土の流動状態を検知する装置であって、
前記撹拌部材と比較して小さい張出量で前記回転軸部材の径方向に張り出し、かつ、当該回転軸部材に対して前記軸線まわりに回転自在に設けられた流動検知部材と、
前記流動検知部材に取り付けられている状況監視モジュールを有する回転状態監視システムと、を備え、
前記状況監視モジュールが、ハウジングと、前記ハウジングに収容された、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数を測定する回転数センサ、および、前記回転数センサにより測定された前記流動検知部材の回転状態としての、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数の時系列を記憶保持する記憶装置と、を備え、
前記回転状態監視システムが、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数の大小に応じて、前記撹拌部材と前記改良対象土とが一体的に回転している共回り現象の発生の有無または可能性の高低を判定するように構成されている。
【0009】
当該構成の改良対象土の流動状態検知装置によれば、地盤に挿入される回転軸部材が回転することにより、当該回転軸部材に対して径方向に張り出すように固定して設けられている撹拌部材によって改良対象土および固化材が混合かつ撹拌される。回転軸部材に対して回転自在に設けられた流動検知部材の径方向の張出量は、撹拌部材の径方向への張出量よりも小さい。これは、地盤において撹拌部材によって混合かつ撹拌される混合撹拌領域に流動検知部材が全体的に含まれることを意味する。
【0010】
このため、混合撹拌領域の外部の土壌から流動検知部材の先端部(または回転軸部材の軸線を基準とした遠位部)の周囲の混合土の影響が解消または軽減される。これにより、混合撹拌領域において撹拌部材により混合・撹拌されている改良対象土および固化材の流動状態を、流動検知部材の軸線まわりの回転状態にそのまままたはほぼそのまま反映させることができる。流動検知部材および撹拌部材は、ともに回転軸部材の軸線まわりに回転した場合、相互に干渉が回避されるように構成されている。よって、回転軸部材に対して回転自在に設けられている流動検知部材の回転状況に応じて、混合撹拌領域における改良対象土の流動状態を精度よく把握することができる。
【0011】
前記構成の改良対象土の流動状態検知装置において、
前記回転軸部材が、円筒状の内側回転軸部材と、前記内側回転軸部材を部分的に下方に突出させた状態で前記内側回転軸部材を全周にわたり囲繞する円筒状の外側回転軸部材と、により構成され、
前記内側回転軸部材および前記外側回転軸部材が、同一軸線まわりに相互に反対方向に回転駆動される、または、同一軸線まわりに同一方向に異なる回転速度で回転駆動され、
前記流動検知部材が、前記内側回転軸部材のうち前記外側回転軸部材から突出している部分と、前記外側回転軸部材とのそれぞれに対して固定された一対の撹拌部材の間に介在するように、前記一対の撹拌部材のうち少なくとも一方の撹拌部材と比較して小さい張出量で前記回転軸部材の径方向に張り出し、かつ、当該回転軸部材に対して前記軸線まわりに回転自在に設けられていることが好ましい。
【0012】
当該構成の改良対象土の流動状態検知装置によれば、地盤に挿入される一対の回転軸部材が異なる態様で回転することにより、当該一対の回転軸部材のそれぞれに対して径方向に張り出すように固定して設けられている一対の撹拌部材によって改良対象土および固化材が混合かつ撹拌される。一対の撹拌部材は、各回転軸部材の軸線まわりに回転した場合、相互に干渉が回避されるように構成されている。一対の回転軸部材のそれぞれに対して回転自在に設けられた流動検知部材の径方向の張出量は、一対の撹拌部材のうち少なくとも一方の撹拌部材の径方向への張出量よりも小さい。これは、地盤において一対の撹拌部材によって混合かつ撹拌されている混合撹拌領域のうち、特に当該一対の撹拌部材により挟まれている領域に流動検知部材が全体的に含まれることを意味する。
【0013】
このため、混合撹拌領域の外部の土壌から流動検知部材の先端部の周囲の混合土の影響が解消または軽減される。これにより、混合撹拌領域のうち一対の撹拌部材により挟まれている領域において撹拌部材により混合・撹拌されている改良対象土および固化材の流動状態を、流動検知部材の軸線まわりの回転状態にそのまままたはほぼそのまま反映させることができる。よって、回転軸部材に対して回転自在に設けられている流動検知部材の回転状況に応じて、混合撹拌領域における改良対象土の流動状態を精度よく把握することができる。
【0014】
前記構成の改良対象土の流動状態検知装置において、
前記一対の撹拌部材の間に介在する前記流動検知部材とは別個の前記流動検知部材としての補助的な流動検知部材が、前記一対の撹拌部材のうち上側の撹拌部材よりも上方に離間した位置および前記一対の撹拌部材のうち下側の撹拌部材よりも下方に離間した位置の少なくとも一方において、前記一対の撹拌部材のうち少なくとも一方の撹拌部材と比較して小さい張出量で前記内側回転軸部材および前記外側回転軸部材のそれぞれの径方向に張り出し、かつ、前記内側回転軸部材および前記外側回転軸部材のそれぞれに対して前記軸線まわりに回転自在に設けられていることが好ましい。
【0015】
当該構成の改良対象土の流動状態検知装置によれば、混合撹拌領域の外部の土壌から付加的な流動検知部材の先端部の周囲の混合土の影響が解消または軽減される。これにより、混合撹拌領域のうち一対の撹拌部材により挟まれている領域の軸線を基準とした外側の領域において撹拌部材により混合・撹拌されている改良対象土および固化材の流動状態を、流動検知部材の軸線まわりの回転状態にそのまままたはほぼそのまま反映させることができる。よって、回転軸部材に対して回転自在に設けられている流動検知部材の回転状況に応じて、混合撹拌領域における改良対象土の流動状態を精度よく把握することができる。
【0016】
前記構成の改良対象土の流動状態検知装置において、
前記回転状態監視システムを構成する前記状況監視モジュールが、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数の大小に応じて、前記撹拌部材と前記改良対象土とが一体的に回転している共回り現象の発生の有無または可能性の高低を判定するように構成されていることが好ましい。
【0018】
前記構成の改良対象土の流動状態検知装置において、
前記回転状態監視システムが、地上に配置され、前記状況監視モジュールとしての第1状況監視モジュールとの相互通信機能を有する第2状況監視モジュールをさらに備え、
前記第2状況監視モジュールが、前記第1状況監視モジュールから受信した、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数の時系列に基づき、前記流動検知部材と前記回転軸部材との相対的な回転数の大小に応じて、前記撹拌部材と前記改良対象土とが一体的に回転している共回り現象の発生の有無または可能性の高低を判定するように構成されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】改良体の各深度範囲における品質の高低を表わす画像の例示図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(地盤改良装置の構成)
本発明の一実施形態としての流動状態検知装置が適用される一例としての地盤改良装置は、
図1に示されているように、回転軸部材110と、相対撹拌機構120と、掘削部材140と、を備えている。
【0022】
回転軸部材110は、上下方向に延在している略円筒状の内側回転軸部材112と、内側回転軸部材112を全周にわたり囲繞するように上下方向に延在している略円筒状の外側回転軸部材111と、により構成されている二重軸構造を有している。外側回転軸部材111および内側回転軸部材112のそれぞれは、駆動用モータにより二重反転歯車機構(図示略)を介して同一軸線まわりに相互に反対方向に回転するように構成されている(特許第3739620号公報参照)。
【0023】
内側回転軸部材112の下端部には掘削部材140が固定されている。掘削部材140の中心部に第1固化材吐出部が設けられている。第1固化材吐出部は、第1固化材供給路に連通している。第1固化材供給路を通じて供給される固化材が下方に吐出されるように第1固化材吐出部が構成されている。
【0024】
相対撹拌機構120は、相互に反対方向に回転する第1撹拌部材121および第2撹拌部材122を備えている。第1撹拌部材121は、回転軸部材110を構成する外側回転軸部材111に対して固定され、第2撹拌部材122は、回転軸部材110を構成する内側回転軸部材112に対して固定されている。第1撹拌部材121および第2撹拌部材122のそれぞれは、回転軸部材110の軸線方向に離間している箇所のそれぞれから、複数の方位に略水平方向に張り出して延在している。第1撹拌部材121および/または第2撹拌部材122が、回転軸部材110から斜め上方または斜め下方に延在していてもよい。
【0025】
例えば、Ni個(i=1、2(Niは2以上の整数(例えばNi=2)))の第i撹拌部材12iが、回転軸部材110の中心軸線を基準としたNi回回転対称性を有するように、当該第i撹拌部材12iの配置態様、形状およびサイズが設計されている。Ni個未満(例えば単一)の第i撹拌部材12が、回転軸部材110の中心軸線を基準としたNi回回転対称性を有するように、当該第i撹拌部材12iの配置態様、形状およびサイズが設計されていてもよい。Ni個またはNi個未満の第i撹拌部材12iが、回転対称性を有していないように、当該第i撹拌部材12iの配置態様、形状および/またはサイズが設計されていてもよい。
【0026】
第1撹拌部材121および/または第2撹拌部材122には、第2固化材吐出部が設けられている。第2固化材吐出部は、第1撹拌部材121および/または第2撹拌部材122に形成された固化材導入路を通じて第2固化材供給路に連通している。第1固化材供給路および第2固化材供給路は別個独立の2つの固化材供給経路により構成されていてもよく、一部が共通の固化材供給経路により構成されていてもよい。第2固化材供給路および第2固化材吐出部は省略されていてもよい。
【0027】
(流動状態検知装置の構成)
本発明の一実施形態としての流動状態検知装置は、地盤中で回転軸部材110を軸線まわりに回転させることにより、回転軸部材110に対してその径方向に張り出すように固定された第1撹拌部材121および第2撹拌部材122のそれぞれによって、改良対象土と第1固化材吐出部および第2固化材吐出部のそれぞれから吐出される固化材とを混合かつ撹拌する際に、当該改良対象土の流動状態を検知する。
【0028】
流動状態検知装置は、
図1に示されているように、第1補助流動検知部材41と、第2補助流動検知部材42と、を備えている。流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のうち少なくとも1つの流動検知部材が省略されてもよい。
【0029】
流動検知部材40は、第1撹拌部材121および第2撹拌部材122の中間箇所、すなわち、第1撹拌部材121よりも下方かつ第2撹拌部材122の上方にある箇所で外側回転軸部材111または内側回転軸部材112の外周面に回転自在に遊嵌された略円環状の第2環状支持部材から複数の方位に略水平方向に張り出して延在している。第1補助流動検知部材41は、第1撹拌部材121よりも上方にある箇所で外側回転軸部材111の外周面に回転自在に遊嵌された略円環状の第1環状支持部材から複数の方位に略水平方向に張り出して延在している。第2補助流動検知部材42は、第2撹拌部材122よりも下方にある箇所で内側回転軸部材112の外周面に回転自在に遊嵌された略円環状の第3環状支持部材から複数の方位に略水平方向に張り出して延在している。
【0030】
例えば、Mj個(j=0、1、2(Mjは2以上の整数(例えばMj=3)))の流動検知部材4jが、回転軸部材110の中心軸線を基準としたMj回回転対称性を有するように、当該流動検知部材4jの配置態様、形状およびサイズが設計されている。Mj個未満(例えば単一)の流動検知部材4jが、回転軸部材110の中心軸線を基準としたMj回回転対称性を有するように、当該流動検知部材4jの配置態様、形状およびサイズが設計されていてもよい。Mj個の流動検知部材4jが、回転軸部材110の中心軸線を基準とした回転対称性を有しないように、当該流動検知部材4jの配置態様、形状およびサイズが設計されていてもよい。
【0031】
図1に示されているように、第1補助流動検知部材41の径方向の張出量r1(軸線まわりに回転駆動された際の当該軸線からの最遠位到達距離)は、第1撹拌部材121の径方向の張出量R1よりも小さい。これは、回転軸部材110の中心軸線まわりに回転された際に一または複数の第1補助流動検知部材41のそれぞれの遠位部が描く円軌道の径または最大径が、回転軸部材110の中心軸線まわりに回転された際に一または複数の第1撹拌部材121のそれぞれの遠位部が描く円軌道の径または最大径よりも小さいことを意味する。第1補助流動検知部材41の径方向の張出量r1は、第2撹拌部材122の径方向の張出量R2よりも小さくてもよく、大きくてもよい。
【0032】
図1に示されているように、流動検知部材40の径方向の張出量r0は、第1撹拌部材121および第2撹拌部材122のそれぞれの径方向の張出量R1、R2よりも小さい(
図1参照)。これは、回転軸部材110の中心軸線まわりに回転された際に一または複数の流動検知部材40の遠位部が描く円軌道の径または最大径が、回転軸部材110の中心軸線まわりに回転された際に一または複数の第1撹拌部材121のそれぞれの遠位部が描く円軌道の径または最大径よりも小さく、かつ、回転軸部材110の中心軸線まわりに回転された際に一または複数の第2撹拌部材122の遠位部が描く円軌道の径または最大径よりも小さいことを意味する。流動検知部材40の径方向の張出量r0は、第1撹拌部材121および第2撹拌部材122のうち一方の撹拌部材(例えば、より近くに配置されている一方の撹拌部材)の径方向の張出量よりも小さい一方、他方の撹拌部材(例えば、より遠くに配置されている他方の撹拌部材)の径方向の張出量よりも大きくてもよい。
【0033】
図1に示されているように、第2補助流動検知部材42の径方向の張出量r2は、第2撹拌部材122の径方向の張出量R2よりも小さい。これは、回転軸部材110の中心軸線まわりに回転された際に一または複数の第2補助流動検知部材42の遠位部が描く円軌道の径または最大径が、回転軸部材110の中心軸線まわりに回転された際に一または複数の第2撹拌部材122の遠位部が描く円軌道の径または最大径よりも小さいことを意味する。第2補助流動検知部材42の径方向の張出量r2は、第1撹拌部材121の径方向の張出量R1よりも小さくてもよく、大きくてもよい。
【0034】
回転軸部材110の軸線方向について、第1補助流動検知部材41と第1撹拌部材121との間隔、流動検知部材40と第1撹拌部材121および第2撹拌部材122のそれぞれとの間隔、ならびに、第2補助流動検知部材42と第2撹拌部材123との間隔が略等しくなるように流動検知部材40~42が配置されていてもよく、当該間隔のうち少なくとも2つの間隔が相違するように流動検知部材40~42が配置されていてもよい。例えば、流動検知部材40と第1撹拌部材121との間隔が、流動検知部材40と第2撹拌部材122との間隔より大きくてもよくまたは小さくてもよい。第1補助流動検知部材41と第1撹拌部材121との間隔が、第2補助流動検知部材42と第2撹拌部材123との間隔より大きくてもよくまたは小さくてもよい。第1補助流動検知部材41と第1撹拌部材121との間隔が、流動検知部材40と第1撹拌部材121との間隔より大きくてもよくまたは小さくてもよい。
【0035】
(回転状態監視システムの構成)
流動状態検知装置は、回転状態監視システム2をさらに備えている。
図2に示されているように、本発明の一実施形態としての回転状態監視システム2は、第1状況監視モジュール21と、第2状況監視モジュール22と、を備えている。第1状況監視モジュール21は、流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの基部(または第1環状支持部材、第2環状支持部材および第3環状支持部材のそれぞれ)に設けられているハウジングに収容されている。
【0036】
ハウジングは、第1状況監視モジュール21を保護する観点から、ステンレス等の堅牢な材料により構成されている。ハウジングは、容器部から蓋部が取り外されることによってその内部空間にアクセス可能に構成されている。容器部および蓋部の間には、ハウジングの内部空間への水および土の侵入を防止するためにシール部材が設けられている。電磁波透過性がある材料によってシール部材が構成されることにより、容器部および蓋部の間隙で変形している当該シール部材を通じて、ハウジングの内部空間と外部空間との間での無線通信が可能に構成されている。
【0037】
第1状況監視モジュール21は、その構成要素の小型化および/または近接配置、配線量の低減等により、ハウジングともども可能な範囲に小型化されたうえで、第1補助流動検知部材41および流動検知部材40の基部に形成された凹部に収容された形態で組み込まれてもよい。
図1に示されているように、第2状況監視モジュール22は、地上において地盤改良装置の周囲の適当な箇所に配置されている。
【0038】
図2に示されているように、第1状況監視モジュール21は、第1演算処理装置210、状況監視センサ211、第1記憶装置212および第1無線通信機器214を備えている。第1演算処理装置210は、コンピュータを構成する演算処理装置(CPU、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ)により構成されている。第1記憶装置212は、状況監視センサ211の出力信号または当該出力信号により表わされる流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42の回転数の時系列を記憶保持する。第1記憶装置212は、HDDもしくはSSDまたはメモリ(RAM、ROMなど)により構成されている。第1無線通信機器214は、例えば、近距離無線通信方式(例えば、Bluetooth(「Bluetooth」は登録商標))または遠距離無線通信方式(例えば、Wi-Fi(「Wi-Fi」は登録商標))の無線通信機器により構成されている。第1演算処理装置210、状況監視センサ211、第1記憶装置212および第1無線通信機器214のそれぞれに共通のまたは別個の電源としてのバッテリが第1状況監視モジュール21に含まれていてもよい。
【0039】
状況監視センサ211は、第1補助流動検知部材41および流動検知部材40の回転数を測定するためのセンサであり、例えば、世界座標系における第1補助流動検知部材41および流動検知部材40の回転数を測定するためのジャイロセンサ、磁気センサおよび/または地磁気センサにより構成されている。状況監視センサ211は、回転軸部材110において軸線方向について流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれに近接し、かつ、軸線から径方向に外れた位置で周方向に配置された一または複数のマグネットに対向して配置される磁気式近接スイッチにより構成されていてもよい。マグネットおよび磁気式近接スイッチが近接することにより、非接触方式で回転軸部材110に対する流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの相対的な回転数が測定される。
【0040】
図2に示されているように、第2状況監視モジュール22は、第2演算処理装置220、第2記憶装置222、第2無線通信機器224および出力インターフェース226を備えている。第2演算処理装置220は、コンピュータを構成する演算処理装置(CPU、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ)により構成されている。第2記憶装置222は、第2無線通信機器224を通じて受信されたデータを記憶保持する。第2記憶装置222は、HDDもしくはSSDまたはメモリ(RAM、ROMなど)により構成されている。第2無線通信機器224は、第1無線通信機器214と共通の無線通信方式の無線通信機器により構成されている。出力インターフェース226は、画像表示装置(モニタ)および必要に応じて音響出力機器(スピーカ)により構成されている。第2演算処理装置220、第2記憶装置222、第2無線通信機器224および出力インターフェース226のそれぞれの電源としてバッテリのほか商用電源が採用されてもよい。
【0041】
(土質改良状況監視システムの機能)
掘削部材140が内側回転軸部材112とともに一体的に回転することにより改良対象土が掘削される。また、第1固化材吐出部および第2固化材吐出部のそれぞれから固化材が改良対象土に対して吐出される。第1攪拌部材121および第2撹拌部材122のそれぞれが外側回転軸部材111および内側回転軸部材112のそれぞれとともに回転することにより、改良対象土と固化材とが攪拌かつ混合される。さらに、第1攪拌部材121および第2撹拌部材122のそれぞれが回転している間、流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれが周囲の混合土の影響を受けることにより、回転ロッド1に対し相対的に静止していることにより、共回りが抑えられ、改良対象土と固化材との攪拌・混合が促進される。
【0042】
この際、第1状況監視モジュール21において、第1演算処理装置210により、状況監視センサ211を通じて流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの回転数を表わすセンサデータが取得され、かつ、第1記憶装置212に時系列的に記憶保持させる(
図3/STEP211)。通常は、回転軸部材110に対して回動自在に取り付けられている流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの回転数は0またはほぼ0である。その一方、回転軸部材110および流動検知部材40、第1補助流動検知部材41または第2補助流動検知部材42に付着した塊状の改良対象土によって、第1補助流動検知部材41、流動検知部材40または第2補助流動検知部材42に回転軸部材110の回転力が伝達される場合、その回転数が外側回転軸部材111または内側回転軸部材112の回転数に近くなる傾向がある。
【0043】
第1演算処理装置210が、流動検知部材40、41、42と外側回転軸部材111、内側回転軸部材112との相対的な回転数の大小に応じて、撹拌部材121、122と改良対象土とが一体的に回転している共回り現象の発生の有無または可能性の高低を時系列的に(またはサンプリング周期または演算処理周期ごとに)判定するように構成されていてもよい。そして、当該判定結果の時系列がログデータとして第1記憶装置212に記憶保持されてもよい。
【0044】
第2状況監視モジュール22において、第2演算処理装置210により、第2無線通信機器224を通じて状況確認信号が第1状況監視モジュール21に宛てて送信される(
図3/STEP221)。
【0045】
第1状況監視モジュール21において、第1演算処理装置210により、状況確認信号が、第1無線通信機器214を通じて受信されたか否か(第1指定条件が満たされたか否か)が判定される(
図3/STEP212)。
【0046】
当該判定結果が否定的である場合(
図3/STEP212‥NO)、第1演算処理装置210により、センサデータの取得および第1記憶装置212への記憶保持処理(
図3/STEP211)以降の処理が繰り返される。
【0047】
その一方、当該判定結果が肯定的である(第1指定条件が満たされている)場合(
図3/STEP212‥YES)、第1演算処理装置210により、センサデータの時系列(センサデータログ)が第1記憶装置212から読み取られたうえで、第1無線通信機器214を通じて、第2状況監視モジュール22に宛てて送信される(
図3/STEP214)。
【0048】
第2状況監視モジュール22において、第2演算処理装置220により、状況確認信号が、第2無線通信機器224を通じて受信されたか否かが判定される(
図3/STEP222)。
【0049】
当該判定結果が否定的である場合(
図3/STEP222‥NO)、第2演算処理装置220により、状況確認信号の送信処理(
図3/STEP221)以降の処理が繰り返される。
【0050】
その一方、当該判定結果が肯定的である場合(
図3/STEP222‥YES)、第2演算処理装置220により、センサデータの時系列(センサデータログ)が第2記憶装置222に記憶保持される(
図3/STEP224)。
【0051】
そして、第2演算処理装置220により、センサデータの時系列が第2記憶装置222から読み取られ、当該センサデータの時系列に応じた対象土の改良状況を表わす情報または画像が出力インターフェースを通じて出力される(
図3/STEP226)。第2演算処理装置220が、流動検知部材40、41、42と外側回転軸部材111、内側回転軸部材112との相対的な回転数の大小に応じて、撹拌部材121、122と改良対象土とが一体的に回転している共回り現象の発生の有無または可能性の高低を時系列的に(またはサンプリング周期ごとに)判定するように構成されていてもよい。
【0052】
これにより、例えば、
図4に示されているように、1回の地盤改良工程ごとに地中に形成される各改良体Qi(i=1、2、‥)が矩形または円柱により表現され、各改良体Qiの深さ方向の各箇所における改良体の品質の高低が明度の高低により表現されているモデル画像が出力インターフェース226に出力される。流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの回転数が低いほど改良体の品質が高く評価され、流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの回転数が高いほど改良体の品質が低く評価される。各深度範囲は、施工時間帯または深度センサにより測定される流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの深度により定められてもよい。このモデル画像の生成のため、GPS等を用いて得られる、地盤改良装置および/または回転軸部材110の測位データが用いられてもよい。
【0053】
図4に示されている画像から、例えば、第1改良体Q1は、深度範囲Q11における品質が中程度であり、深度範囲Q11よりも上方にある深度範囲Q12における品質が低いことがわかる。また、第2改良体Q2は、深度範囲Q22における品質が著しく低いことがわかる。さらに、第3改良体Q2は、全体的に品質が高いことがわかる。明度の高低に代えてまたは加えて、矩形または円柱の太さの軸線方向についての変化態様により、各改良体Qiの深さ方向の各箇所における改良体の品質の高低が表現されていてもよい。
【0054】
図4に示されているような画像に加えてまたは代えて、状況監視センサ211により測定された流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの回転数(世界座標系における絶対回転数または回転軸部材110に対する相対回転数)の時系列を表わす、ダイアグラム(例えば、横軸が時刻を表わし、縦軸が回転数を表わすダイアグラム)が出力インターフェース226に出力されてもよい。
【0055】
(作用効果)
当該構成の流動状態検知装置によれば、地盤に挿入される回転軸部材110が回転することにより、当該回転軸部材110に対して径方向に張り出すように固定して設けられている撹拌部材121、122によって改良対象土および固化材が混合かつ撹拌される。
【0056】
回転軸部材110に対して回転自在に設けられた流動検知部材40、41、42の径方向の張出量は、第1撹拌部材121および第2撹拌部材122のそれぞれの径方向への張出量よりも小さい(
図1参照)。これは、地盤において第1撹拌部材121および第2撹拌部材122のそれぞれによって混合かつ撹拌される混合撹拌領域に流動検知部材40、41、42が全体的に含まれることを意味する。
【0057】
このため、混合撹拌領域の外部の土壌から流動検知部材40、41、42の先端部(または回転軸部材110の軸線を基準とした遠位部)の周囲の混合土の影響が解消または軽減される。これにより、混合撹拌領域(第1撹拌部材121の上方領域、第1撹拌部材121および第2撹拌部材122の中間領域および第2撹拌部材122の下方領域の3つの混合撹拌領域)において撹拌部材121、122により混合・撹拌されている改良対象土および固化材の流動状態を、流動検知部材40、41、42の軸線まわりの回転状態にそのまままたはほぼそのまま反映させることができる。よって、回転軸部材110に対して回転自在に設けられている流動検知部材40、41、42の回転状況に応じて、当該3つの混合撹拌領域のそれぞれにおける改良対象土の流動状態を精度よく把握することができる。
【0058】
第1指定条件が満たされた場合、流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの回転数の時系列(地盤改良施工中の流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの回転数の時系列データ)が第1状況監視モジュール21から無線方式で送信される(
図3/STEP212‥YES→STEP214参照)。第2状況監視モジュール22から送信された状況確認信号(
図3/STEP221参照)が第1状況監視モジュール21により受信されることが「第1指定条件」として定義されている。このため、両状況監視モジュール21、22の無線通信が確立される確度が高い状況で、剪断補助翼の回転数の時系列が第1状況監視モジュール21から第2状況監視モジュール22に対して無線方式で送信される。よって、剪断補助翼の回転数の時系列が第1状況監視モジュール21から第2状況監視モジュール22に対して無線方式で送信される確度の向上、ひいては無線通信効率の向上が図られる。
【0059】
第2状況監視モジュール22において、第2記憶装置224に記憶保持されている剪断補助翼の回転数の時系列に応じた、対象土の改良工程ごとに地中に形成される改良体Qiの各深度範囲Qijにおける局所的な品質の高低を表わす画像を出力インターフェース226に出力させる(
図3/STEP226および
図4参照)。当該画像を通じて地盤改良施工の品質をユーザ・施工者に確認させることができる。
【0060】
(本発明の他の実施形態)
本発明は、非混合撹拌領域の周囲の混合土の影響を必要としないため、固化材を用いる地盤改良工法の水平撹拌翼タイプ、多段水平相対撹拌翼タイプ、籠状相対撹拌翼タイプ等の多種の工法において使用が可能であり、さらに機械撹拌併用高圧噴射撹拌工法の中心部機械撹拌部分の混合状況を確認する場合にも応用できる。
【0061】
第1撹拌部材121および第2撹拌部材122のうち一方が省略され、撹拌機構120が単一の撹拌部材によって構成されていてもよい。この場合、当該単一の撹拌部材に近接する1つまたは2つの流動検知部材を除く他の流動検知部材が省略されてもよい。地盤改良装置において、干渉を回避しながら異なる態様で回転駆動される3つ以上の撹拌部材により撹拌機構120が構成されていてもよい。
【0062】
前記実施形態では、第1撹拌部材121および第2撹拌部材122が同一軸線まわりに相互に反対方向に回転駆動されるが、他の実施形態として、第1撹拌部材121および第2撹拌部材122が同一軸線まわりに同一方向に異なる回転速度で回転駆動されてもよい。相互に離間した回転軸部材のそれぞれの軸線まわりに回転駆動される2つ以上の撹拌部材により撹拌機構120が構成されていてもよい。
【0063】
前記実施形態では、第1状況監視モジュール21により状況確認信号が受信されたことが「第1指定条件」として定義されている。他の実施形態として、第1状況監視モジュール21または流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のうち少なくとも1つの高さが地表高さ以上になったこともしくは地中において地表から所定深さ(例えば、3m、5mなど)以下になったこと、および/または、回転軸部材110の引き上げが開始されたこともしくは地盤改良の施工中にタイマにより計時される回転軸部材110の引き上げ開始からの経過時間が指定時間以上になったことが「第1指定条件」として定義されていてもよい。当該他の実施形態においては、第2状況監視モジュール22による状況確認信号の送信処理(
図3/STEP221参照)が省略されてもよい。あるいは、第1指定条件および第2指定条件が併存する場合、重複を回避する観点から第2指定条件とは相違している条件が第1指定条件として定義されていてもよい。複数の第1指定条件が存在する場合、同一の演算処理周期において当該複数の第1指定条件の充足性が判定されてもよく、あるいは、前回の演算処理周期のそれぞれにおいて一の第1指定条件の充足性が判定された後、今回の演算処理周期のそれぞれにおいて当該一の第1指定条件とは異なる他の第1指定条件の充足性が判定されてもよい(
図3/STEP212参照)。
【0064】
また、第1指定条件が満たされていると判定された後、当該第1指定条件の充足性の判定が省略され、第1状況監視モジュール21によるセンサデータログ(流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの回転数の時系列データ)の送信処理が、第2状況監視モジュール22による当該センサデータログの受信が完了するまで周期的または断続的に繰り返されてもよい。深度センサにより測定される第1状況監視モジュール21または流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの地表からの深さが減少するほど、当該送信周期が断続的または連続的に短くなるように調節されてもよい。
【0065】
第2状況監視モジュール22を構成する第2演算処理装置220が、第2指定条件が満たされた場合、第2無線通信機器222を通じて状況確認信号を無線方式で送信してもよい(
図3/STEP221参照)。
【0066】
当該構成の流動状態検知装置によれば、第2指定条件が満たされた場合、状況確認信号が第2状況監視モジュール22から第1状況監視モジュール21に対して無線方式で送信される。この送信処理は、第2指定条件が満たされた後、第2指定条件の充足性とは無関係に、第1状況監視モジュール21による状況確認信号の受信が完了するまで周期的または断続的に繰り返されてもよい。
【0067】
流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のうち少なくとも1つまたは第1状況監視モジュール21の高さが地表高さ以上になったこともしくは地中において地表から所定深さ(例えば、3m、5mなど)以下になったこと、および/または第1補助流動検知部材41および流動検知部材40または第1状況監視モジュール21に付着した対象土または混合土が除去されたことが「第2指定条件」として定義されていてもよい。流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれまたは第1状況監視モジュール21に付着した対象土または混合土が除去されたことは、撮像装置を通じて取得された流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれまたは第1状況監視モジュール21の撮像画像の画像解析によって第2状況監視モジュール22により認識されてもよく、そのことを確認した者により操作される指定端末装置(例えば、スマートホン、パーソナルコンピュータなど)から第2状況監視モジュール22が指定信号を受信したことにより認識されてもよい。複数の第2指定条件が存在する場合、同一の演算処理周期において当該複数の第2指定条件の充足性が判定されてもよく、あるいは、前回の演算処理周期のそれぞれにおいて一の第2指定条件の充足性が判定された後、今回の演算処理周期のそれぞれにおいて当該一の第2指定条件とは異なる他の第2指定条件の充足性が判定されてもよい。
【0068】
無条件で当該無線送信処理が実行される場合と異なり、状況確認信号が第2状況監視モジュール22から第1状況監視モジュール21に対して無線方式で送信される確度の向上が図られる。さらに、前記のように第1指定条件が満たされた場合、剪断補助翼の回転数の時系列(地盤改良施工中の剪断補助翼の回転数の時系列データ)が第1状況監視モジュール21から第2状況監視モジュール22に対して無線方式で送信される。このため、剪断補助翼の回転数の時系列が第1状況監視モジュール21から第2状況監視モジュール22に対して無線方式で送信される確度の向上が図られる。そして、無線通信効率の向上を図りながらも、流動検知部材40、第1補助流動検知部材41および第2補助流動検知部材42のそれぞれの回転数の時系列に基づいて地盤改良施工の品質を確認させることができる。
【0069】
地盤改良の施工中に回転軸部材110の引き上げが開始されたことまたは地盤改良の施工中にタイマにより計時される回転軸部材110の引き上げ開始からの経過時間が指定時間以上になったこと、が「第2指定条件」として定義されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
2‥回転状態監視システム、22‥第2状況監視ユニット、41‥第1流動検知部材、42‥第2流動検知部材、43‥第3流動検知部材、110‥回転軸部材、111‥外側回転軸部材、112‥内側回転軸部材、121‥第1撹拌部材、122‥第2撹拌部材、140‥掘削部材、21‥第1状況監視モジュール、210‥第1演算処理装置、211‥状況監視センサ、212‥第1記憶装置、214‥第1無線通信機器、220‥第2演算処理装置、222‥第2記憶装置、224‥第2無線通信機器、226‥出力インターフェース。
【要約】
【課題】改良対象土の流動状態の検知精度の向上を図りうる装置および方法を提供する。
【解決手段】流動状態検知装置は、
図1に示されているように、第1撹拌部材121および第2撹拌部材122により挟まれた領域で、回転軸部材110の径方向に張り出している流動検知部材40を備えている。流動状態検知装置は、回転状態監視システム2をさらに備えている。回転状態監視システム2は、第1状況監視モジュール21を備え、第1状況監視モジュール21は、流動検知部材40の基部に設けられているハウジングに収容されている。第1状況監視モジュール21は、第1演算処理装置210、状況監視センサ211、第1記憶装置212および第1無線通信機器214を備えている。
【選択図】
図1