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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】多目的運搬トレー
(51)【国際特許分類】
   B62B 17/06 20060101AFI20220713BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
B62B17/06
A61G5/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022008372
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2022-01-24
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516160946
【氏名又は名称】山本 好三
(72)【発明者】
【氏名】山本 好三
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-162469(JP,A)
【文献】米国特許第5303438(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1653974(KR,B1)
【文献】特表2019-517310(JP,A)
【文献】特開2018-118726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 17/06
A61G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
円筒状補強部材(8)の強度をさらに増すために、金属製か合成樹脂製のパイプを円筒状補強部材の中に巻き込んで製作した請求項1に記載の多目的運搬トレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪上での荷物の運搬や車椅子の移動、簡易的な除雪、通常地面上での物資の運搬、災害および災害復旧時の人や物資、土砂、残骸の運搬、移動など多目的に使用することが出来る運搬トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、荷物の運搬には車輪付き手押し台車が広く一般的に使用されている。しかし、積雪上では車輪が回転しないばかりか、雪中に埋まって強く抵抗を受けるため走行が困難になるなど大きな支障を来す。また、建物の出入り口や運搬通路に降雪がある場合、スコップなどの除雪用具が必要になる。
積雪が浅い場合でも車輪や台車に雪が付着したまま屋内に入ると、床面に雪そのものが落ちたり、融けた水滴が落ちたりして床面を汚染し、清掃を必要としたり、滑って転倒する原因になるなど危険でもある。障害者の車椅子での移動においても同様である。
特開2018-118726、実登3193582は、台車の下部にソリを装着したもの、特開平08-011723は、車輪にソリを装着するもの、特開2003-252205は、障害者専用のソリである。また、構造が複雑で高価でもあり、装置の隙間に雪が付着したり入り込んだりする。さらに、いずれも台車と冬期間の積雪時にのみにしか使用できない。
本発明は、台車や車椅子の雪上や氷上の走行のみならず、一般的な荷物の雪上や通常地面上での運搬や携帯しての運搬、災害時、災害復旧時での老若男女や傷病者など速やかな移動の出来ない人の搬送や土嚢、土砂の運搬、がれきや残骸の撤去などにおいても地面や雪上を滑らしたり、一人から数人で持って運搬したりするときも通年を通して多目的に使用できるもので、従来の技術とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-118726
【文献】実登3193582
【文献】特開平08-011723
【文献】特開2003-252205
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、積雪上を車輪の付いた台車で荷物を運搬するときは、強引に台車を引きずるか台車の下部や台車の車輪にソリを装着する方法が取られていた。しかし、これらは装置も複雑で高価であり、また、積雪時期のみの使用であった。さらに、ソリ付き台車でもソリが装着されたまま室内に入るため、ソリやソリ装置の隙間に雪が付着するため、室内で落下したり室温により融けて水滴となって落ち、床面を濡らして清掃しなければならなかったり滑って転倒するなどの危険を免れることが出来なかった。
そこで、積雪上でも通常地面でも容易に装着することができ、台車および台車の車輪に着雪させることなく、また、単独でも荷物を積載して雪上や氷上、通常地面でも走行し、あるいは運搬用具として携帯して運搬することができ、さらに、冬期間の台車や車椅子の移動や運搬だけではなく、通年、各種の運搬に使用することが出来る多目的運搬トレーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成とした。
底板(1)の前方に湾曲して立ち上がった前壁板(2)と両側に緩やかな曲面で立ち上がり、前壁板(2)から両側の後端部に向かって徐々に幅狭くなった側壁板(3)を設け、後端を開口した略直方体で箕状の形状をし、前壁板(2)中央の上縁直下に把持部(4)と両側壁板(3)の中央の上縁直下に把持部(5)と後方上縁直下に把持部(6)がそれぞれ長円形に設けられている。底板(1)下面の後方から前壁板(2)外面の上方に向けて半円柱状補強部材(7)が装備され、補強部材のそれぞれの両端は扁平して底板(1)と前壁板(2)の厚さと一体化している。前壁板(2)から両側壁板(3)の上周縁は補強のために円筒状補強材(8)として外側に巻き込まれており、両端は扁平して両側壁板(3)の厚さと一体化している。底板(1)の後端は開口されていることから補強のために肉厚となっているが後縁は接地面に向かってテーパーが付いたクサビ状となっている。これらを金属製か合成樹脂製で一体成形してなることを特徴とする多目的運搬トレー(a)。
【発明の効果】
【0006】
例えば、台車で雪上や氷上を走行して荷物を運搬する際、当該多目的運搬トレーを使用すれば、当該多目的運搬トレー内に台車を車輪ごと載置して押すだけで、容易に滑走して移動することが出来るし、雪や氷の付着もなく、台車の車輪やソリ付き台車のソリよりも接地面積が広いので安定性があり、多少の段差や凸凹路面でも、安心安全に走行し運搬できる。
また、例えば、宅配者が高層ビルやマンションにおいて、台車に積載して運搬するまでもない、あるいは、荷崩れして積載出来ない変形物や小形軽量物を複数持ち、複数階の複数場所に配達する場合には当該多目的運搬トレーに積載し、多目的運搬トレーごと携帯して運搬することも可能である。また、災害時、災害復旧時などでの老若男女や傷病者など速やかな移動の出来ない人達を多目的運搬トレー上に座らせたり横臥させたりして搬送する緊急用簡易担架としての利用や土嚢、土砂の運搬、がれきや残骸の撤去などにおいても地面や雪上を滑らしたり、把持部に紐やロープを連結して引いたり、掬い集めたり、また、一人から数人で持って運搬したりすることもできる。さらに、当該多目的運搬トレーは、底板に半円柱状の補強部材が装備されているため直進性が良く、上端周縁には円筒状の補強部材と把持部が装備されていることから、雪上などでの遊具としても利用できるなど通年を通して多目的に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態を示す外観斜視図。
図2】同側面図。
図3】同平面図。
図4】同正面図。
図5】同台車用使用例図。
図6】同台車用収納使用例図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1から図6に基づいて本発明の実施の形態を、台車に使用することを例として 詳細に説明する。図1は、本発明の多目的トレーに係る実施形態を示す外観斜視図、図2は、側面図、図3は、平面図、図4は、正面図、図5は、台車用使用例図、図6は、台車用収納例図である。
【実施例
【0009】
図1は、本発明の多目的運搬トレーに係る実施形態を示す外観斜視図で、底板(1)の前方は、雪上や氷上、通常地面上でも容易に滑走可能とするために、滑らかに湾曲して立ち上がった前壁板(2)があり、該前壁板(2)に連続して両側に緩やかな曲面で立ち上がり、前壁板(1)から後端部に向かって徐々に幅狭くなった側壁板(3)が設けられている。前壁板と側壁板の立ち上がり高さは、台車の荷台高さと面一にすると、荷物が荷台よりはみ出して積載できる。少し高めにすると荷物が滑り落ちるのを防止するガードとすることもできる。
【0010】
両側壁板(3)が前壁板(2)から後端部に向けて幅狭くなっているのは、軽量化を図ること、深雪の場合でも、前壁板(2)とその近傍の側壁板(3)により滑走する通路は除雪されるため、当該多目的運搬トレー(a)内に雪が入り込むことはなく、したがって、台車にも付着することがないこと、簡易除雪用具として使用する際には雪や土砂、ゴミなどを掬いやすくすること、荷物の出し入れを容易にすることなどのためである。
【0011】
底板(1)の接地面の後方から前壁板(2)外面の上方に向けて半円柱状補強部材(7)が装備されているのは、壁面の補強とともに雪面や氷上面、通常地面を滑走する際、横滑りを防止して直進性を増すためである。また、底板(1)の接地面側に補強部材を半円柱状に凸出させたのは、特に通常地面上でも接地抵抗を少なくして円滑に走行できるようにしたためである。
さらに、半円柱状補強部材(7)のそれぞれの両端を扁平して底板(1)と前壁板(2)の厚さと一体化させたのも、補強部材端の角部による抵抗を無くし、滑らかに走行できるようにしたためである。
【0012】
底板(1)および両側壁板(3)の後端を開口とし、底板(1)後端を補強のために肉厚としながらも後縁の接地面に向けてテーパーを付けてクサビ状にしたのは、台車や車椅子が容易に搭乗し易くしたこと、また、簡易除雪具としての雪や運搬具としての土砂、瓦礫、残骸、ゴミなどを掬い取りやすくするためである。
【0013】
前壁板(2)中央の上縁直下に把持部(4)と両側壁板(3)の中央の上縁直下に把持部(5)と後方上縁直下に把持部(6)をそれぞれ長円形に設けたのは、前壁板(2)から両方の側壁板(3)の上周縁は補強のために円筒状補強材(8)として外側に巻き込まれていて強度があるため、把持するときは当該円筒状補強材(8)を把持させるためである。また、荷崩れ防止のために、紐やゴムバンド、網などで結束して固定するときにも使用出来る。
なお、前壁板(2)の把持部(4)は両方の側壁板の把持部(5)と(6)よりも幅広くなっている。これは、重量物を数人で持ち上げて運搬するときに複数の手を入れて把持できるようにするためである。
円筒状補強材(8)の強度をさらに増すためには、金属製か合成樹脂製のパイプを巻き込んで製作することもできる。
【0014】
把持部(4)は、台車や車椅子の下に多目的運搬トレー(a)を挿入したり抜去したり、携帯して人や物を搬送するためであり、把持部(5)、把持部(6)は一人あるいは数人で携帯して重量物を運搬するときのためである。また、把持部(6)は、例えば、図5のとおり台車(b)を載置して運搬する際は、多目的運搬トレー(a)の前壁板(2)方向に台車(b)を押すので多目的運搬トレー(a)が台車(b)から外れることはないが、台車(b)を後退するときには台車(b)だけが降車し、多目的運搬トレー(a)が取り残される。そこで、これを防止するために台車(b)のハンドルからフック付ゴムバンド(9)などで両側の把持部(6)に引っ掛けて連結する事により防止することが出来る。
【0015】
異なる大きさの台車(b)に対しては、多目的運搬トレー(a)も台車の大きさに合わせたものを用意することが相応しいが、多目的運搬トレー(a)よりも台車が小さい場合は問題なく使用することが出来るが、大きい場合は、両前輪が多目的運搬トレー(a)内に収まれば後輪が載置できなくても後輪を持ち上げるなどして使用することが出来る。この際、多目的運搬トレー(b)の後端が台車(b)の荷台下部に跳ね上がることが想定されるが、荷台下部でそれ以上跳ね上がるのを阻止されるため、多目的運搬トレー(a)が台車(b)より逸脱することはなく多目的運搬トレー(a)としての機能は果たせる。また、6輪のロング台車用には、底板(1)と側壁板(2)の長い多目的運搬トレー(a)を作ることもできる。
【0016】
多目的運搬トレー(a)を雪上で走行した後に通常地面に到達した場合や、雪のない屋内に入る場合は、多目的運搬トレー(a)の把持部(4)を持って台車(b)の前方に抜去するか台車(b)を後退させて多目的運搬トレー(a)から降りる。この時、多目的運搬トレー(a)に雪などが付着している場合は除去して、図6のように台車(b)のハンドルと積載した荷物との隙間に挿入して走行することが出来る。荷物がなくなっても多目的運搬トレー(a)は台車(b)のハンドルに掛かっているため落下する事はなく。また、押す手はハンドルと多目的運搬トレー(a)の間に隙間があるので把持することができ、走行に支障はない。
【0017】
次に実施例について、台車使用時を中心に説明する。
貨物車から運搬荷物を台車に積み替える段階から積雪面である場合は、当該多目的運搬トレー(a)の上に台車(b)を載置して、台車(b)の荷台上に荷物を積載する。その後、台車(b)のハンドル持って前方に押すと、台車(b)の荷台の前端が多目的運搬トレー(a)の前壁板を押すので、台車(b)も多目的運搬トレー(a)も一体となって雪上や氷上を滑走させて荷物を運搬することが出来る。
【0018】
積雪路面から通常地面に到達したとき、積雪面との境界部分か通常地面に押し上げて多目的運搬トレー(a)の前壁板把持部(4)を持って前方に引き抜くか、境界部分の雪上で多目的運搬トレー(a)に台車(b)を載置したまま方向転換をして、通常地面に向けて台車(b)を後退させれば、多目的運搬トレー(a)を雪上に残したまま台車(b)は通常地面に降車させることができ、台車(b)にも車輪にも雪を付着させることなく通常地面や室内を走行することができる。
【0019】
使用した多目的運搬トレー(a)は運搬先の適所に立て掛けておいてもよく、また、雪が付着している場合は除去して、図6のように、積載した荷物と台車(b)のハンドルとの隙間に挿入して室内に入り、走行してもよい。
【0020】
室内において荷物の分配のために多目的運搬トレー(a)上に荷物を載置して多目的運搬トレー(a)を携帯して運搬してもよい。さらに、多目的運搬トレー(a)を事前に台車(b)の荷台に載置しておき、その上に荷物を載せて運搬し、配達するとか、多目的運搬トレー(a)を持ち回り、荷物を回収して、そのまま台車(b)に載せて運搬してもよいなど多種多様な使い方ができる。
【符号の説明】
【0021】
a 多目的運搬トレー。
b 台車。
1 底板
2 前壁板
3 側壁板
4 前壁板把持部
5 側壁板中央把持部
6 側壁板後端把持部
7 半円柱状補強部材
8 円筒状補強部材
9 フック付きゴムバンド
【要約】
【課題】従来、積雪上を車輪の付いた台車で荷物を運搬するときは、車輪が雪中に埋まって回転しないため強引に台車を引きずるか台車の下部にソリを装着する方法が取られていたが、装置も複雑で高価であり、積雪時期のみの使用であった。また、ソリや台車に雪が付着して室内に持ち込むことも課題であった。
【解決手段】そこで、積雪上でも通常地面でも容易に着脱が出来、台車にも着雪させることなく、かつ、通年多目的に使用できるように、底板、前壁板、側壁板を設け、後端を開口した箕状の形状で、前壁板と両側壁板に把持部を長円形に向け、底板下面の後方から前壁板外面の上方に向けて半円柱状補強部材を装備し、前壁板から両側壁板の上周縁は補強のために円筒状補強材として外側に巻き込み、底板後端の開口部を肉厚で補強して、これらを金属製か合成樹脂で一体成形した多目的運搬トレーとした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6