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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 13/00 20060101AFI20220713BHJP
   E03D 5/10 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
E03D13/00
E03D5/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017190705
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019065531
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】荒木 祐介
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】永野 晃貴
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-248677(JP,A)
【文献】特開2006-299726(JP,A)
【文献】特開平06-049885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水された洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器であって、
排尿を受ける上記ボウル面を形成し、底部に排水口を形成するボウル部と、
上記ボウル部の上記排水口と連通する排水トラップと、を備えた小便器本体と、
上記ボウル面に洗浄水を吐水する吐水部と、
上記吐水部への給水路を開閉する弁装置と、
上記吐水部からの洗浄水の吐水を制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、使用者の排尿中に上記吐水部から吐水を行う尿希釈吐水モードを実行し、
上記制御部は、上記尿希釈吐水モードにおいて、上記吐水部から間欠吐水を行わせるように上記弁装置を制御し、上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、上記吐水部から吐水を行う吐水時間Tonと、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するように行わせ、さらに、上記小便器本体を使用する使用者の有無又は使用者が上記小便器本体へ排尿した尿流を検知する検知センサを備え、
上記制御部は、上記尿希釈吐水モードにおいて、上記検知センサが検知状態となったときから開始され、上記検知センサの検知状態の開始に基づいて想定される排尿開始時刻及び排尿開始からの尿流の流量の上昇過程の期間を含む第1期間と、上記第1期間に続く期間であり、上記検知センサの検知状態の開始に基づいて尿流の流量が最大水準となると想定される時刻を含むように設定される第2期間とを有し、
上記制御部は、上記 第1期間の最初に間欠吐水を開始させ、上記第1期間に続く上記第2期間において間欠吐水を継続させ、
上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記第2期間内の少なくとも一部の単位期間あたりの吐水量の合計は、上記第1期間内の単位期間あたりの吐水量の合計よりも大きく、上記第1期間は上記第2期間より長くなるように、上記間欠吐水を行わせることを特徴とする小便器。
【請求項2】
上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、上記第1期間において上記吐水部から吐水を行う吐水時間Tonと、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff<1となる間欠周期を有するように行い、
さらに、上記第2期間において上記吐水部から吐水を行う吐水時間Tonと、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するように行う、請求項1に記載の小便器。
【請求項3】
上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、上記第1期間において間欠周期におけるTon/Toffの値が増加するように行わせる、請求項2に記載の小便器。
【請求項4】
吐水された洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器であって、
排尿を受ける上記ボウル面を形成し、底部に排水口を形成するボウル部と、
上記ボウル部の上記排水口と連通する排水トラップと、を備えた小便器本体と、
上記ボウル面に洗浄水を吐水する吐水部と、
上記吐水部への給水路を開閉する弁装置と、
上記吐水部からの洗浄水の吐水を制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、使用者の排尿中に上記吐水部から吐水を行う尿希釈吐水モードを実行し、
上記制御部は、上記尿希釈吐水モードにおいて、上記吐水部から間欠吐水を行わせるように上記弁装置を制御し、
さらに、上記小便器本体を使用する使用者の有無又は使用者が上記小便器本体へ排尿した尿流を検知する検知センサを備え、
上記制御部は、上記尿希釈吐水モードにおいて、上記検知センサが検知状態となったときから開始され、上記検知センサの検知状態の開始に基づいて想定される排尿開始時刻及び排尿開始からの尿流の流量の上昇過程の期間を含む第1期間と、上記第1期間に続く期間であり、上記検知センサの検知状態の開始に基づいて尿流の流量が最大水準となると想定される時刻を含むように設定される第2期間とを有し、
上記制御部は、上記 第1期間の最初に吐水を開始させ、上記第1期間に続く上記第2期間において吐水を継続させ、上記第2期間に続く第3期間において上記検知センサが非検知状態となるまで吐水を継続させ、
上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、上記第3期間内の単位期間あたりの吐水量の合計は、上記第2期間内の少なくとも一部における単位期間あたりの吐水量の合計よりも小さくなるように行わせる、小便器。
【請求項5】
上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、上記第2期間において上記吐水部から吐水を行う吐水時間Tonと、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するように行い、
さらに、上記間欠吐水を、上記第3期間において上記吐水部から吐水を行う吐水時間Tonと、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff<1となる間欠周期を有するように行う、請求項4に記載の小便器。
【請求項6】
上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、上記第3期間において間欠周期のTon/Toffの値が減少するように行わせる、請求項5に記載の小便器。
【請求項7】
上記検知センサは、上記小便器本体への排尿を検知する尿検知センサであり、上記制御部は、この尿検知センサにより、上記尿希釈吐水モードにおいては、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toff中に尿流を検知させる、請求項1又は4に記載の小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器に係り、特に、吐水された洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されているように、小便器が、尿の流れによって小便動作を検知する尿検知センサと、ボウル部への給水を調整する調整手段とを備えている。この小便器において、尿検知センサが尿流を検知すると同時に調整手段が全開状態にされ、尿の濃度を下げるためにボウル部への給水を行うことが開示されている。この小便器においては、小便器の尿検知センサが尿流を検知すると同時に、調整手段が全開状態にされ、本洗浄吐水が開始される。この本洗浄吐水が、尿検知センサが非検知となった後も継続され、ボウル部を十分に洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-149415号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】藤岡 与周、苫米地 宣裕、八戸工業大学:尿流量曲線パターン分類用特徴量抽出システムの構成,計測自動制御学会東北支部第250回研究集会,資料番号250-5 (2009.6.19)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている小便器においては、ボウル部を十分に洗浄するための本洗浄吐水を、尿検知センサの検知開始から検知終了の間も行うため、このような吐水を行っていない小便器と比べて1回当たりの洗浄動作で吐水される洗浄水量が増加してしまうという問題がある。さらに、使用者の排尿が比較的長くなる場合に排尿中に本洗浄吐水を継続すれば、洗浄水量の増加がより問題となる。近年の洗浄水の節水化の要請に伴い、小便器において、尿希釈吐水の洗浄水量の節水化を達成することが課題とされている。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や課題を解決するためになされたものであり、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量を低減させ、節水化を達成することができる小便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、吐水された洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器であって、排尿を受ける上記ボウル面を形成し、底部に排水口を形成するボウル部と、上記ボウル部の上記排水口と連通する排水トラップと、を備えた小便器本体と、上記ボウル面に洗浄水を吐水する吐水部と、上記吐水部への給水路を開閉する弁装置と、上記吐水部からの洗浄水の吐水を制御する制御部と、を備え、上記制御部は、使用者の排尿中に上記吐水部から吐水を行う尿希釈吐水モードを実行し、上記制御部は、上記尿希釈吐水モードにおいて、上記吐水部から間欠吐水を行わせるように上記弁装置を制御し、上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、上記吐水部から吐水を行う吐水時間Tonと、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するように行わせ、さらに、上記小便器本体を使用する使用者の有無又は使用者が上記小便器本体へ排尿した尿流を検知する検知センサを備え、上記制御部は、上記尿希釈吐水モードにおいて、上記検知センサが検知状態となった後、第1期間の最初に間欠吐水を開始させ、上記第1期間に続く第2期間において間欠吐水を継続させ、上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記第2期間内の少なくとも一部の単位期間あたりの吐水量の合計は、上記第1期間内の単位期間あたりの吐水量の合計よりも大きく、上記第1期間は上記第2期間より長くなるように、上記間欠吐水を行わせる。
このように構成された本発明においては、制御部は、尿希釈吐水モードにおいて、吐水部から間欠吐水を行わせるので、吐水が行われない時間が生じ、吐水を継続して行う場合と比べて、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量を低減させ、節水化を達成することができる。さらに、仮に、尿希釈吐水モードにおける吐水時間及び総使用水量が同じであるとすれば、吐水部から間欠吐水を行わせる場合の吐水流量が、吐水を継続して行う場合の吐水流量と比べて、増加される。これにより、排水トラップへの洗浄水の流入速度がより速くなり、洗浄水が排水トラップ内をより攪拌し、排水トラップ内の尿が下流側に排出されやすくなる。よって、本発明によれば、排水トラップ内の尿濃度がより効率的に低下される。従って、本発明によれば、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
また、このように構成された本発明においては、制御部は、上記間欠吐水を、上記吐水部から吐水を行う吐水時間Tonと、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するように行わせる。これにより、吐水時間Tonが非吐水時間Toffより短くなることにより排水トラップ内の尿濃度が上昇して排水トラップ内に尿石が発生し安くなることを抑制する。よって、吐水時間Tonが非吐水時間Toffより長くなる間欠周期を有しているため、排水トラップ内の尿濃度が上昇することを抑制し、排水トラップ内に尿石が発生することを抑制することができる。
通常、使用者の排尿による尿流の流量は、排尿開始から徐々に増大すると想定される。そこで、また、このように構成された本発明によれば、制御部は、第2期間内の少なくとも一部の単位期間あたりの吐水量の合計は、第1期間内の単位期間あたりの吐水量の合計よりも大きくなるように、間欠吐水を行わせる。これにより、尿流の流量が比較的小さい第1期間よりも尿流の流量が比較的大きい第2期間において、間欠吐水における吐水量が大きくされる。よって、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、使用者の排尿の尿流の増大に応じて、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、上記第1期間において上記吐水部から吐水を行う吐水時間Tonと、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff<1となる間欠周期を有するように行い、さらに、上記第2期間において上記吐水部から吐水を行う吐水時間Tonと、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するように行う。
このように構成された本発明においては、排水トラップ内の尿濃度が比較的低い第1期間においては、Ton/Toff<1となる間欠周期を有するような間欠吐水を行い、排水トラップ管路内の尿濃度が上昇することを抑制し、排水トラップ管路内に尿石が発生することを抑制することができる。さらに、排水トラップ内の尿濃度が比較的高くなる第2期間においては、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するような間欠吐水を行い、排水トラップ管路内の尿濃度が上昇することを抑制し、排水トラップ管路内に尿石が発生することを抑制することができる。よって、排水トラップ内の尿濃度の変化に応じた間欠吐水を行うことができ、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、上記第1期間において間欠周期におけるTon/Toffの値が増加するように行わせる。
このように構成された本発明においては、制御部は、間欠吐水を、上記第1期間において間欠周期のTon/Toffの値が増加するように行わせる。これにより、排尿初期の第1期間における尿流の流量の増加に応じて、間欠吐水における非吐水時間の割合を小さくし、間欠吐水における吐水量を増加させることができる。よって、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、吐水された洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器であって、排尿を受ける上記ボウル面を形成し、底部に排水口を形成するボウル部と、上記ボウル部の上記排水口と連通する排水トラップと、を備えた小便器本体と、上記ボウル面に洗浄水を吐水する吐水部と、上記吐水部への給水路を開閉する弁装置と、上記吐水部からの洗浄水の吐水を制御する制御部と、を備え、上記制御部は、使用者の排尿中に上記吐水部から吐水を行う尿希釈吐水モードを実行し、上記制御部は、上記尿希釈吐水モードにおいて、上記吐水部から間欠吐水を行わせるように上記弁装置を制御し、さらに、上記小便器本体を使用する使用者の有無又は使用者が上記小便器本体へ排尿した尿流を検知する検知センサを備え、上記制御部は、上記尿希釈吐水モードにおいて、上記検知センサが検知状態となった後、第1期間の最初に吐水を開始させ、上記第1期間に続く第2期間において吐水を継続させ、上記第2期間に続く第3期間において上記検知センサが非検知状態となるまで吐水を継続させ、上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、第3期間内の単位期間あたりの吐水量の合計は、第2期間内の少なくとも一部における単位期間あたりの吐水量の合計よりも小さくなるように行わせる。
このように構成された本発明においては、制御部は、尿希釈吐水モードにおいて、吐水部から間欠吐水を行わせるので、吐水が行われない時間が生じ、吐水を継続して行う場合と比べて、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量を低減させ、節水化を達成することができる。さらに、仮に、尿希釈吐水モードにおける吐水時間及び総使用水量が同じであるとすれば、吐水部から間欠吐水を行わせる場合の吐水流量が、吐水を継続して行う場合の吐水流量と比べて、増加される。これにより、排水トラップへの洗浄水の流入速度がより速くなり、洗浄水が排水トラップ内をより攪拌し、排水トラップ内の尿が下流側に排出されやすくなる。よって、本発明によれば、排水トラップ内の尿濃度がより効率的に低下される。従って、本発明によれば、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
通常、使用者の排尿による尿流の流量は、排尿後半において徐々に減少すると想定される。そこで、また、このように構成された本発明によれば、制御部は、上記間欠吐水を、第3期間内の単位期間あたりの吐水量の合計は、第2期間内の少なくとも一部の単位期間あたりの吐水量の合計よりも小さくなるように行わせる。これにより、尿流の流量が比較的大きい第2期間よりも尿流の流量が比較的小さい第3期間において、間欠吐水における吐水時間の割合が小さくされている。よって、使用者の排尿の尿流の減少に応じて、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、上記第2期間において上記吐水部から吐水を行う吐水時間Tonと、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するように行い、さらに、上記間欠吐水を、上記第3期間において上記吐水部から吐水を行う吐水時間Tonと、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff<1となる間欠周期を有するように行う。
このように構成された本発明においては、排水トラップ内の尿濃度が比較的高くなる第2期間においては、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するような間欠吐水を行い、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。さらに、排尿の尿流が減少する第3期間においては、Ton/Toff≦1となる間欠周期を有するような間欠吐水を行い、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。よって、排水トラップ内の尿濃度の変化に応じた間欠吐水を行うことができ、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記弁装置を制御することにより、上記間欠吐水を、上記第3期間において間欠周期のTon/Toffの値が減少するように行わせる。
このように構成された本発明においては、制御部は、間欠吐水を、第3期間において間欠周期のTon/Toffの値が減少するように行わせる。これにより、排尿後半の第3期間における尿流の流量の減少に応じて、間欠吐水における非吐水時間の割合を大きくし、間欠吐水における吐水量を減少させることができる。よって、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、上記検知センサは、上記小便器本体への排尿を検知する尿検知センサであり、上記制御部は、この尿検知センサにより、上記尿希釈吐水モードにおいては、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toff中に尿流を検知させる。
このように構成された本発明においては、尿検知センサにより尿流を検知するため、使用者の排尿の開始と終了をより正確に測定できる。また、制御部は、この尿検知センサにより、上記尿希釈吐水モードにおいては、上記吐水部から吐水を行わない非吐水時間Toff中に尿流を検知させる。よって、尿希釈吐水モードにおいて、尿検知センサが、間欠吐水による吐水部からの吐水と、排尿の尿流とを誤検知する可能性を抑制することができ、尿希釈吐水モードをより正確に実現できる。従って、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化をより確実に達成するとともに、尿希釈をより効率的に実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の小便器によれば、尿希釈のために吐水される洗浄水の流量が低減される場合においても十分に尿を希釈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】使用者が排尿する前の状態の小便器の排水トラップ管路の一部を拡大して示し、バイオフィルムを含む有機物汚れが形成されている環境下において、非常に短時間でも尿石が発生する新たな知見を説明する図である。
図1B】使用者が排尿した後、小便器の洗浄動作が行われるまで排水トラップ管路内に尿が満たされている状態を示し、バイオフィルムを含む有機物汚れが形成されている環境下において、非常に短時間でも尿石が発生する新たな知見を説明する図である。
図1C】小便器の本洗浄動作が行われて排水トラップ管路内の尿が新たな洗浄水で置換された状態を示し、バイオフィルムを含む有機物汚れが形成されている環境下において、非常に短時間でも尿石が発生する新たな知見を説明する図である。
図2A】使用者の排尿後、図1Aに示す排水トラップ管路が比較的高い尿濃度の洗浄水でほぼ満たされている状態を示し、バイオフィルムを含む有機物汚れが形成されている環境下において、同程度の期間において、排水トラップ管路及び横引配管内の洗浄水の尿濃度の違いにより、尿石の発生量に差が生じるという新しい知見を説明する図である。
図2B図2Aに示す排水トラップ管路について本洗浄動作が行われた後の状態を示し、バイオフィルムを含む有機物汚れが形成されている環境下において、同程度の期間において、排水トラップ管路及び横引配管内の洗浄水の尿濃度の違いにより、尿石の発生量に差が生じるという新しい知見を説明する図である。
図2C】使用者の排尿後、図1Aに示す排水トラップ管路が比較的低い尿濃度の洗浄水でほぼ満たされている状態を示し、バイオフィルムを含む有機物汚れが形成されている環境下において、同程度の期間において、排水トラップ管路及び横引配管内の洗浄水の尿濃度の違いにより、尿石の発生量に差が生じるという新しい知見を説明する図である。
図2D図2Cに示す排水トラップ管路について本洗浄動作が行われた後の状態を示し、バイオフィルムを含む有機物汚れが形成されている環境下において、同程度の期間において、排水トラップ管路及び横引配管内の洗浄水の尿濃度の違いにより、尿石の発生量に差が生じるという新しい知見を説明する図である。
図3】使用回数に対する有機物汚れの厚みを使用者の排尿時における排水トラップ管路内の洗浄水の尿濃度ごとに示す図である。
図4A図1Aに示す排水トラップ管路14におけるバイオフィルムを含む有機物汚れの発生のメカニズムを示す図である。
図4B図4Aに示す排水トラップ管路が比較的高い尿濃度の洗浄水でほぼ満たされている状態を示し、排水トラップ管路及び横引配管内の洗浄水の尿濃度の違いにより、尿石の発生のメカニズムが異なり、有機物汚れの厚みの増加に差が生じるという新しい知見を説明する図である。
図4C図4Bに示すように排水トラップ管路内に高pH環境が生じる場合においては、リン酸マグネシウムアンモニウムを析出させる反応が支配的となることを説明する図である。
図4D図4Cに示すような反応によりリン酸マグネシウムアンモニウムが粒子径の比較的大きな結晶性の尿石を生じさせた状態を説明する図である。
図4E図4Aに示す排水トラップ管路が比較的低い尿濃度の洗浄水でほぼ満たされている状態を示し、排水トラップ管路及び横引配管内の洗浄水の尿濃度の違いにより、尿石の発生のメカニズムが異なり、有機物汚れの厚みの増加に差が生じるという新しい知見を説明する図である。
図4F図4Eに示すように排水トラップ管路内のpH上昇が比較的低く抑制されている環境においては、リン酸カルシウムを析出させる反応が支配的となることを説明する図である。
図4G図4Fに示すような反応によりリン酸カルシウムが粒子径の比較的小さな非結晶性の尿石を生じさせた状態を説明する図である。
図5】本発明の第1実施形態による小便器の斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態による小便器の正面図である。
図7図6のVII-VII線に沿って見た断面図である。
図8】本発明の第1実施形態による小便器の平面図である。
図9】本発明の第1実施形態による小便器の自動洗浄ユニットの構成を示す図である。
図10】本発明の第1実施形態による小便器のスプレッダの分解斜視図である。
図11】本発明の第1実施形態による小便器のスプレッダの側面断面図である。
図12】本発明の第1実施形態による小便器において、使用者がこの小便器を使用する使用回毎のコントローラの制御動作を示すフローチャートである。
図13】本発明の第1実施形態における小便器において、排水トラップ管路内の洗浄水の尿濃度の時間変化を、尿希釈吐水モードを実行する場合、尿希釈吐水モードが実行されない場合、比較例としての吐水流量が一定の尿希釈吐水モードを実行する場合とで比較して示す図である。
図14】本発明の第1実施形態における小便器において、標準的な尿流の流量の時間変化を、吐水流量の時間変化と比較して示す図である。
図15】本発明の第1実施形態における小便器において、1間欠周期における吐水時間Tonと、非吐水時間Toffとの比が時間変化する様子を、標準的な尿流の流量の時間変化のタイミングと比較して示す図である。
図16】本発明の第2実施形態による小便器の中央断面図である。
図17】本発明の第2実施形態における小便器において、排水トラップ管路内の洗浄水の尿濃度の時間変化を、尿希釈吐水モードを実行する場合、尿希釈吐水モードが実行されない場合、比較例としての吐水流量が一定の尿希釈吐水モードを実行する場合とで比較して示す図である。
図18】本発明の第2実施形態における小便器において、標準的な尿流の流量の時間変化を、吐水流量の時間変化と比較して示す図である。
図19】本発明の第2実施形態における小便器において、1間欠周期における吐水時間Tonと、非吐水時間Toffとの比が時間変化する様子を、標準的な尿流の流量の時間変化のタイミングと比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者等は、鋭意研究することにより、バイオフィルムを含む有機物汚れが形成されている環境下において、非常に短時間でも尿石が発生するという以下の新しい知見を見出した。
【0019】
従来から、以下のように尿石等の無機物汚れに着目した尿石の発生のメカニズムが知られている。このメカニズムにおいては、使用者の小便器の使用後に排尿が排水トラップ管路及び横引配管に滞留し、この滞留した尿に一般細菌が付着する。この一般細菌の代謝過程において、ウレアーゼと呼ばれる酵素が排出される。このウレアーゼ酵素によって尿中の尿素が分解され、アンモニアが発生する。アンモニアが水溶することで尿を含む液体中のpHが上昇し、アルカリ性となる。pHが8.0~8.5を超えるような比較的高い環境になると、尿中に含まれるCa及びMgの炭酸塩、リン酸塩などの溶解度が低下するため尿液中にこれらの塩が析出し、尿石として排水トラップ管路及び横引配管に付着する。このような無機物汚れの尿石の発生は、2時間以上の比較的長時間にわたって比較的緩やかに進行すると考えられてきた。
【0020】
これに対し、本発明者等は、排水トラップ管路及び横引配管内に発生する汚れのうち無機物汚れと異なる有機物汚れに新たに着目し、バイオフィルムを含む有機物汚れが形成されている環境下において、数秒程度の非常に短時間でも尿石が発生するという知見を得た。
【0021】
図1A乃至Cに示すように、短時間での尿石Uの発生のメカニズムは、バイオフィルムを含む有機物汚れVに着目したものであり、以下のように説明される。
有機物汚れVは、一般細菌等の細菌Xが増殖する過程で放出するEPS(細胞外多糖類:Extracellular Poly Succharide)を中心としたバイオフィルム、尿中に含まれるタンパク質などが複合して形成される。このような有機物汚れVは配管内のぬめりとして知られ、非常に粘性の高い粘液を形成する。このような有機物汚れVのバイオフィルムは、排水トラップ管路14及び横引配管3等に付着した細菌Xが細胞外に多糖類のポリマーを生成し、これに包まれることで細胞の脱離が抑えられるようになり、発達すると考えられている。
【0022】
図1Aにおいては、使用者が小便器に排尿する前の状態の小便器の排水トラップ管路14の一部を拡大して示している。図1Aに示す排水トラップ管路14は、使用者が小便器1を多数回にわたり使用し続けた後の状態となっている。排水トラップ管路14は、前回の本洗浄吐水モードにより吐水された洗浄水を貯留している。以下、図1A乃至図4Gにおいては排水トラップ管路14内の状態及び反応を説明しているが、横引配管3等の排水トラップ管路14の下流側の設備配管内の状態及び反応についてもほぼ同様であり、横引配管3等にも同様の知見が適用される。
【0023】
使用者が小便器1を使用した後、排水トラップ管路14に有機物汚れVのバイオフィルムが形成されている場合、細菌Xがこのバイオフィルムを発生且つ発達させている。バイオフィルムは、スポンジ状の内部構造体を形成しており、内部に細菌Xやアンモニア(又はアンモニウムイオンNH4 +)を保持しやすくなっている。細菌Xはウレアーゼ酵素を排出し、このウレアーゼ酵素が尿中の尿素を分解し、アンモニア(又はアンモニウムイオンNH4 +)が発生されている。よって、バイオフィルム近傍領域にはアンモニア(又はアンモニウムイオンNH4 +)が多量に存在している状態となっている。有機物汚れVの近傍の液中にアンモニアが水溶してアンモニウムイオンNH4 +を生じさせることで有機物汚れVの近傍の領域のpHが比較的高い値まで上昇する。バイオフィルムを含む有機物汚れVの近傍の高pH環境領域YのpHは、8以上、好ましくは9以上、好ましくは8~10の範囲の値となる。
【0024】
図1Bにおいては、図1Aに示すような状態の排水トラップ管路14を有する小便器において、使用者が排尿し、小便器の洗浄動作が行われるまでの比較的短時間の間において、排水トラップ管路14内が尿でほぼ満たされている状態を示している。この尿が、有機物汚れVの近傍の高pH環境領域Yに触れる又は接近することにより、尿中に含まれるCa及びMgの炭酸塩、リン酸塩などが析出し、数秒程度の非常に短時間で尿石Uが発生するというメカニズムが見いだされた。
【0025】
図1Cにおいては、図1Bに示すような排水トラップ管路14内が尿でほぼ満たされている状態から、小便器の洗浄動作が行われた後、排水トラップ管路14内の尿が新たな洗浄水で置換された状態を示している。排水トラップ管路14内の尿は新たな洗浄水で置換されるものの、析出した尿石Uは有機物汚れVに吸着された状態のままとなる。バイオフィルムは、スポンジ状の内部構造体を形成していることから、尿石Uも保持されやすい。このように尿石Uが付着していると、この尿石U自身にさらに細菌Xが付着しやすくなり、尿石Uの発生がより促進されることも見いだされた。このようにして、毎回の短時間の洗浄の積み重ねによって、有機物汚れV上に短時間で尿石が析出し、尿石Uが積層されることが見いだされた。
【0026】
本発明者等は、このような新たな知見に基づいて、尿を含む洗浄水がバイオフィルムと接することにより比較的短時間で尿石を発生させるメカニズムの作動を抑制し、排水トラップ管路14及び横引配管3における尿石の発生を抑制する技術を発明したものである。
【0027】
さらに、本発明者等は、鋭意研究することにより、バイオフィルムを含む有機物汚れが形成されている環境下において、同程度の期間において、排水トラップ管路14及び横引配管内の洗浄水の尿濃度の違いにより、尿石が発生する量に差がでるという以下の新しい知見を見出した。
【0028】
図2Aにおいては、図1Aに示すような排水トラップ管路14を有する小便器において、使用者が排尿し、小便器の洗浄動作が行われるまでの比較的短時間の間において、排水トラップ管路14内が比較的高い尿濃度の洗浄水でほぼ満たされている状態を示している。この比較的高い尿濃度の洗浄水が、有機物汚れVの近傍の高pH環境領域Yに触れる又は接近することにより、数秒程度の非常に短時間で尿石Uが比較的多く発生する。
【0029】
図2Bに示すように、比較的多く発生した尿石Uは、小便器の洗浄動作が行われて、排水トラップ管路14内の洗浄水が新しい洗浄水に置換された後も、有機物汚れVに吸着された状態のままとなる。
図3に示すように、使用者の排尿時に、比較的高い尿濃度の洗浄水が、排水トラップ管路14内に流入することが、小便器の使用の度に繰り返されることにより、このように発生した尿石Uが排水トラップ管路14上に多く蓄積し、有機物汚れVの厚みを比較的大きくさせる。
【0030】
一方、図2Cにおいては、図1Aに示すような排水トラップ管路14を有する小便器において、使用者が排尿し、小便器の洗浄動作が行われるまでの比較的短時間の間において、排水トラップ管路14内が比較的低い尿濃度の洗浄水でほぼ満たされている状態を示している。この比較的低い尿濃度の洗浄水が、有機物汚れVの近傍の高pH環境領域Yに触れる又は接近することにより、数秒程度の非常に短時間で尿石Uが比較的少なく発生する。このように、使用者が排尿した後、小便器の洗浄動作が行われるまでの毎回の同程度の時間において、尿石Uの発生量は排水トラップ管路14内の洗浄水の尿濃度に依存する知見が見出された。よって、排水トラップ管路14内の洗浄水の尿濃度を低減できれば尿石Uの析出量を抑制することができる知見も見出された。
【0031】
図2Dに示すように、比較的少なく発生した尿石Uも、小便器の洗浄動作が行われた後、有機物汚れVに吸着された状態のままとなる。
図3に示すように、使用者の排尿時に、比較的低い尿濃度の洗浄水が、排水トラップ管路14内に流入することが、小便器の使用の度に繰り返される場合には、比較的少ない尿石Uが排水トラップ管路14上に蓄積するので、有機物汚れVの厚みを抑制できる。毎回の使用者の排尿時における排水トラップ管路14内の洗浄水の尿濃度の差が、使用回数が多くなるごとに、より大きな有機物汚れVの厚みの差となる知見も見出された。
【0032】
さらに、本発明者等は、鋭意研究することにより、排水トラップ管路14及び横引配管内の洗浄水の尿濃度の違いにより、尿石の発生のメカニズムが異なり、有機物汚れVの厚みの増加に差がでるという以下の知見を見出した。
【0033】
図4Aにおいては、上述の図1Aに示すような、排水トラップ管路14及び横引配管3におけるバイオフィルムを含む有機物汚れVの発生のメカニズムを再び概略的に示している。図4Aにおける(a)工程に示すように、使用者の排尿が排水トラップ管路14に付着し、細菌Xが尿に付着して排水トラップ管路14上で増殖する。時間の経過及び/又は小便器1の使用回数の増加に伴い、図4Aにおける(a)工程から(b)工程に進む。
【0034】
図4Aにおける(b)工程に示すように、排水トラップ管路14には有機物汚れVのバイオフィルムが形成される。次に、(b)工程から(c)工程に進む。図4Aにおける(c)工程に示すように、バイオフィルムは、内部に細菌Xやアンモニア(又はアンモニウムイオンNH4 +)を保持しやすくなっている。バイオフィルム内部の細菌Xはウレアーゼ酵素Zを排出し、このウレアーゼ酵素Zが尿中の尿素を分解し、アンモニア(又はアンモニウムイオンNH4 +)が発生することとなる。このように、使用者が小便器に排尿する前の状態において、小便器の排水トラップ管路14の一部が、図4A(c)に示すような有機物汚れVが形成されている状態となっている。
【0035】
図4Bに示すように、図4A(c)に示すような有機物汚れVが形成された排水トラップ管路14に、比較的高い尿濃度の排尿及び/又は洗浄水が流入するとき、尿素が比較的多いため、ウレアーゼ酵素Zが分解する尿中の尿素が比較的多く、アンモニアが比較的多く発生する。これらのアンモニアが水溶することでアンモニウムイオンNH4 +を生じさせ、有機物汚れVの近傍の領域のpHが比較的高い値まで上昇する。
【0036】
図4Cに示すように、図4Bに示すような高pH環境下においては、尿を含む液体中の無機物、例えばCa2+、Mg2+、NH4 +、PO4 3-等がアンモニアと反応して、リン酸マグネシウムアンモニウムを析出させる反応が支配的となる。リン酸マグネシウムアンモニウムはアルカリ性環境下で尿液から生成されやすい尿石成分となる。
【0037】
図4Dに示すように、リン酸マグネシウムアンモニウムは粒子径の比較的大きな結晶性の尿石を生じさせる。図4Dは走査型電子顕微鏡(SEM)により得られた画像であり、表示倍率は2000倍である。この画像は、後述するように、本発明の一実施形態における小便器1の排水トラップ管路14及び横引配管3内の有機物汚れの発生を再現するような実験により得られた有機物汚れを撮影したものである。バイオフィルム中にこのような比較的粒子径の大きな尿石が混在することにより、尿石の厚み及び有機物汚れVの厚みが増大しやすくなる。このようなリン酸マグネシウムアンモニウムの尿石を主に含む有機物汚れVの厚みは、後述するリン酸カルシウムの尿石を含む有機物汚れVの厚みよりも増大されやすい。排水トラップ管路14内の洗浄水の尿濃度が高くなるほど、リン酸マグネシウムアンモニウムの析出割合が増大し、有機物汚れVの厚みが増大する。
【0038】
一方、図4Eに示すように、図4A(c)に示すような有機物汚れVが形成された排水トラップ管路14に、比較的低い尿濃度の排尿及び/又は洗浄水が流入するときを説明する。このとき、尿素が比較的少ないため、ウレアーゼ酵素Zが分解する尿中の尿素が比較的少なく、アンモニアの発生が比較的少ない。よって、アンモニアが水溶して生じるアンモニウムイオンNH4 +によるpHの上昇は比較的低く抑制される。
【0039】
図4Fに示すように、図4Eに示すようなpH上昇が比較的低く抑制されている環境下においては、尿を含む液体中の無機物、例えばCa2+、Mg2+、PO4 3-等が同士が反応して、リン酸カルシウムを析出させる反応が支配的となる。リン酸カルシウムは上述したリン酸マグネシウムアンモニウムが尿液から生成されやすい環境下よりも中性に近い環境下においても尿液から生成されやすい尿石成分となる。
【0040】
図4Gに示すように、リン酸カルシウムは粒子径の比較的小さな非結晶性の尿石を生じさせる。図4Gは走査型電子顕微鏡(SEM)により得られた画像であり、表示倍率は2003倍である。この画像は、後述するように、本発明の一実施形態における小便器1の排水トラップ管路14及び横引配管3内の有機物汚れの発生を再現するような実験により得られた有機物汚れを撮影したものである。リン酸カルシウムの尿石は、リン酸マグネシウムアンモニウムの尿石よりも小さい。バイオフィルム中にこのような比較的粒子径の小さな尿石が混在することにより、尿石の厚み及び有機物汚れVの厚みは少しずつ増加する。粒子径の小さな尿石が主成分となる場合には、厚みの増加ペースは比較的遅くなり、厚みが増大されにくくなる。排水トラップ管路14に流入する洗浄水中の尿濃度が低くなるほど、リン酸カルシウムの析出割合が増大し、有機物汚れVの厚みは増大されにくくなる。
【0041】
本発明者等は、このような新たな知見に基づいて、排水トラップ管路14に流入する洗浄水の尿濃度の増加を抑制し、排水トラップ管路14及び横引配管3に付着する尿石の厚みを抑制する技術を発明したものである。
【0042】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による小便器の構造について説明する。
図5図8に示すように、小便器1は、吐水された洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器である。小便器1は、陶器製の小便器本体である便器本体2と、この便器本体2を洗浄するための洗浄水を自動的に便器本体2に吐水する吐水装置である自動洗浄ユニット4を備えている。
なお、本実施形態の小便器1については、便器本体2の最下部が床面Kから所定距離上方に位置し且つ便器本体2の背面がその背後の壁面Wに沿って取付けられる壁掛け式の小便器について説明するが、便器本体2が床面K上に直接配置される床置き式の小便器であってもよい。
以下、本発明の実施形態において、床面K側を下側とし、小便器1を挟んで床面Kと逆側と上側とし、壁面Wの表側と小便器1を挟んで向かい合う側を前側とし、小便器1の壁面W側を奥側とし、手前側から見て、左側を左側、右側を右側とする。
【0043】
便器本体2の正面側には、排尿を受けるボウル部6が形成されており、このボウル部6よりも背面側の便器本体2の上方領域には、自動洗浄ユニット4の一部を収納するための収納室8が形成されている。また、便器本体2のボウル部6の底部には、排水口10が形成されている。排水口10には、目皿12が配置されている。便器本体2は、さらに、排水口10の下流側に、その内部に封水を形成する排水トラップである排水トラップ管路14を備えている。排水トラップ管路14は排水口10と連通している。この排水トラップ管路14の下流側には、壁面Wを貫通する流路を形成する排水ソケット15等を介して、横引配管3が接続されている。
【0044】
排水トラップ管路14は、排水トラップ管路14内に封水を形成するように貯留される洗浄水の容積が、200ml以下となるような節水型トラップとして形成されている。このような節水型トラップの排水トラップ管路14は、従来の700ml程度の容積の排水トラップ管路に比べて少ない洗浄水の水量により排水トラップ管路内の洗浄水を置換することができる。節水型の排水トラップ管路14の容積は、好ましくは、40ml~200mlの範囲内であり、より好ましくは、120ml~200mlの範囲内であり、より好ましくは120mlである。このような節水型の排水トラップ管路は、使用者の排尿の尿量よりも少ない容積を有していることから、排水トラップ管路14内の洗浄水の尿濃度が高くなりやすく、この尿を希釈することが排水トラップ管路14及び横引配管3内の尿石付着の抑制に効果的となる。
【0045】
なお、排水トラップ管路14は、貯留される洗浄水の容積が、200mlより大きくなるような排水トラップ、例えば従来の700ml程度の容積の排水トラップであってもよい。従来型の排水トラップ管路においても、尿を希釈して排水トラップ管路14内の洗浄水の尿濃度の増加を抑制することにより、排水トラップ管路14及び横引配管3内の尿石付着が抑制される。
【0046】
排水トラップ管路14は、下向きに延びる下降管路14aと、横に延びる折返し管路14bと、上向きに延びる上昇管路14cとを備えている。下降管路14aと上昇管路14cとが共通壁14dにより隔てられている。共通壁14dの前後で排水トラップ管路が折り返すため、排水トラップ管路14が小型化され、排水トラップ管路14の容積も低減される。図7に示す中央断面において、下降管路14aの下端部の前後方向の幅14eと、上昇管路14cの下端部の前後方向の幅14fとがほぼ同じ幅に形成され、排水トラップ管路14が前後方向に小型化されている。また、図7に示す中央断面において、上昇管路14cの下端部の幅14fから上端部の幅14gまでの前後方向の幅はほぼ一定に形成され、排水トラップ管路14が前後方向に小型化されている。
【0047】
図9に示すように、自動洗浄ユニット4は、水道等の給水源(図示せず)から洗浄水が供給される主給水路16aを形成する主給水管16と、この主給水管16を止水する止水栓18と、主給水管16の下流側端部に接続されて且つ主給水管16を第1の給水管20と第2の給水管22に分岐する分岐部である管継手24とを備えている。
また、管継手24によって主給水管16から分岐された一方の第1の給水管20には、その内部の給水路(第1の給水路20a)内を通過する洗浄水の流量(瞬間流量)について第1の所定の流量Q1[リットル/分]に調整する第1の定流量弁26が設けられている。
【0048】
さらに、この第1の定流量弁26の下流側には、第1の給水路20aを開閉する第1の開閉弁28が設けられている。この第1の開閉弁28の下流側の第1の給水路20aの下流側端部には、ボウル部6内のボウル面48に洗浄水を吐水する吐水装置の一部であるスプレッダ30(吐水部)が設けられており、このスプレッダ30の第1の吐水部32が第1の給水路20aの下流側端部と接続されている。なお、本実施形態では、第1の所定の流量Q1[リットル/分]は、好ましくは8[リットル/分]~17[リットル/分]の範囲、より好ましくは8[リットル/分]~12[リットル/分]の範囲、さらにより好ましくは9[リットル/分]に設定される。
【0049】
一方、管継手24によって主給水管16から分岐された他方の第2の給水管22には、その内部の給水路(第2の給水路22a)内を通過する洗浄水の流量(瞬間流量)について、第1の所定の流量Q1[リットル/分]よりも低い第2の所定の流量Q2[リットル/分]に調整する第2の定流量弁34が設けられている。
【0050】
この第2の定流量弁34の下流側には、第2の給水路22aを開閉する弁装置である第2の開閉弁36が設けられている。この第2の開閉弁36の下流側の第2の給水路22aの下流側端部には、スプレッダ30の第2の吐水部38が接続されている。なお、本実施形態では、第2の所定の流量Q2[リットル/分]は、好ましくは0.1[リットル/分]~8.0[リットル/分]の範囲に設定され、より好ましくは0.1[リットル/分]~0.6[リットル/分]の範囲に設定される。なお、第1の所定の流量Q1[リットル/分]と第2の所定の流量Q2[リットル/分]との流量差は、好ましくは1.0[リットル/分]~8.9[リットル/分]の範囲に設定される。
【0051】
つぎに、第2の開閉弁36の下流側には、逆止弁40を介して、電解除菌水ユニット43が設けられており、この電解除菌水ユニット43は、電解除菌水を生成する電解槽(図示せず)を備えており、第2の吐水部38に電解除菌水を供給する電解除菌水供給部として機能するようになっている。
【0052】
また、自動洗浄ユニット4は、スプレッダ30に設けられて便器本体2の正面側(手前側)に立って便器本体2を使用する使用者の有無を検知する人体検知センサとしての検知センサ44と、この検知センサ44から送信される検知信号を受信すると共に所定の制御プログラム等に基づいて第1の開閉弁28及び第2の開閉弁36のそれぞれの動作を制御する制御部であるコントローラ46を備えている。
【0053】
検知センサ44は、赤外線式の人体検知センサである。検知センサ44は、便器本体2の前に立って便器本体2を使用する使用者の有無を検知する。
【0054】
コントローラ46は、CPU及びメモリ等を内蔵し、所定の制御プログラム等に基づいて他の機器の制御を行うことができる。コントローラ46は、第1の開閉弁28の開閉動作を制御することにより、第1の吐水部32からの本洗浄吐水モードの吐水の開始及び終了を制御する。コントローラ46は、第2の開閉弁36の開閉動作を制御することにより、第2の吐水部38からの尿希釈吐水モード又は除菌水の吐水の開始及び終了を制御する。
【0055】
コントローラ46は、検知センサ44が使用者の便器本体2の使用を検知している間のうち所定の期間において第2の吐水部38から吐水を行う尿希釈吐水モードと、検知センサ44が使用者の使用を検知しなくなった後に、第1の吐水部32から吐水を行う本洗浄吐水モードと、検知センサ44が使用者の使用を検知して検知状態となった時刻t0から尿希釈吐水モードを実行する前に所定の待機時間にわたって待機する待機モードと、のそれぞれを実行させる制御プログラムを備えている。コントローラ46は、さらに、他の制御内容を実行する制御プログラムも備えている。また、コントローラ46は、制御プログラムにより、尿希釈吐水モードにおいて、第2の吐水部38から間欠吐水を行わせるように第2の開閉弁36を制御する。
【0056】
なお、本実施形態では、自動洗浄ユニット4の第1の給水路20a及び第2の給水路22aを別々に形成し、第1の吐水口60と第2の吐水口76とを別々に形成しているが、変形例として、1つの共通の給水路により給水し、1つの共通の吐水口により吐水するように形成してもよい。例えば、自動洗浄ユニット4は、主給水管16と、主給水管16の下流側端部に接続される第1の給水管20と、第1の給水管20内を通過する洗浄水の流量を変更できるように形成された第1の定流量弁26と、この第1の定流量弁26の下流側の第1の給水路20aを開閉する第1の開閉弁28とを備えている。第1の給水路20aの下流側端部に第1の吐水部32の第1の吐水口60が開口されている。自動洗浄ユニット4は、第2の給水路22aを省略しており、第1の給水路20aを介して尿希釈吐水モードの吐水を行う。さらに、第2の吐水口76は省略され、尿希釈吐水モードにおける流量Q2[リットル/分]の吐水を第1の吐水口60から吐水する。このように、第1の吐水口60から尿希釈吐水モードの吐水を行ってもよい。
【0057】
つぎに、図6図8を参照して、本実施形態の小便器の便器本体におけるボウル部6の詳細について説明する。
ボウル部6の表面には排尿を受けるボウル面48が形成され、ボウル面48は、側面視で概ねJ字形の形状を形成している。ボウル面48は、便器本体2の収納室8の前面7まで延びるように形成されている。
ボウル面48は、その上部から下部まで、前面が使用者に対向するように開いた円弧形状の正面部48aを有している。ボウル面48は、スプレッダ30が設けられている上方領域において、従来のようなボウル面から前方に壁状に突出する側面部が設けられておらず、正面部48aのみから形成されている。このような正面部48aは自身の曲面の接線の垂線が便器本体2の前方に立つ使用者の立ち位置に向かうような前向きの曲面を形成している。即ち、水平断面において、正面部48aはその全ての位置にて水平方向に延びる接線に対する水平方向に延びる垂線が、ボウル面48の左側端部48bと右側端部48cとを結び水平方向に延びる線分と交差する。
【0058】
ボウル面48の上部領域の正面部48aは、水平断面において、ボウル面48の左側端部48bから右側端部48cまでほぼ単一の曲率半径の円弧(曲率半径が途中で概ね変化しないような1つの円弧であり、シングルRと称される円弧)に沿って形成される。上部領域より下方の下部領域のボウル面48は、2種類の曲率半径を有する円弧の組み合わせ、又は円弧と直線との組み合わせによる複合的な曲面形状を形成している。ボウル面48の正面部48aは、ボウル面48の上端48dから下方に向けて後方に向かって傾斜して形成されている。
【0059】
ボウル部6のボウル面48は、その水平断面の曲率半径が下方ほど小さくなるように形成されている。ボウル面48の上端48dから下方に向かうにつれて、水平断面の円弧の曲率半径が徐々に減少するように形成され、下方に向かうにつれて徐々にボウル面48の左右方向の幅(ボウル面48の正面視で投影される幅)が小さくなるように形成されている。なお、曲率半径の上限はほぼ無限大でもよく、すなわちボウル面48の上端48dの水平断面が直線状に形成されていてもよい。ボウル面48は、ボウル面48の左右両側から前方側まで下降しながら延びる棚42を備えている。
【0060】
つぎに、図6図9図11を参照して、本実施形態の小便器の自動洗浄ユニットにおけるスプレッダの詳細について説明する。
まず、図6に示すように、スプレッダ30は、ボウル面48の上方領域における左右方向の中央部に設けられており、スプレッダ30及び検知センサ44の前方側には外装カバー50が取り付けられている。なお、図11に示すスプレッダ30においては、外装カバー50を取り外した状態を示すと共に、スプレッダ30に設けられている検知センサ44等の関連部品については省略して示している。
【0061】
図6及び図11に示すように、スプレッダ30は、ボウル面48に固定して取り付けられるスプレッダ本体部52と、このスプレッダ本体部52の取付穴52aに挿入して取り付けられるノズル部材54を備えている。
【0062】
図11に示すように、スプレッダ本体部52の内部には、第1の給水管20の第1の給水路20a及び第2の給水管22の第2の給水路22aのそれぞれと連通する第1の通水路56及び第2の通水路58がそれぞれ形成されている。
第1の通水路56の前方側の下流側端部には、第1の吐水部32の一部である第1の吐水口60が形成されている。スプレッダ本体部52の第1の通水路56は、前後方向に延びるように形成されている上流側通水路56aと、この上流側通水路56aの下流側の前端部から下方に向かって流路が拡大するように、正面視で概ね扇形形状に形成されている下流側通水路56bを備えている。これらにより、第1の給水路20aから上流側通水路56a内に供給された洗浄水は、下流側通水路56bを通過し、第1の吐水口60からボウル面48上で左右方向に広がるように第1の所定の流量Q1[リットル/分]の洗浄水W1として吐水されるようになっている。
【0063】
つぎに、図6及び図11に示すように、ノズル部材54は、スプレッダ本体部52の取付穴52aに取り付けられる取付部62を備えている。また、ノズル部材54は、取付部62の前端部に一体に設けられたノズル部64を第2の吐水部38の一部として備えている。ノズル部64は、スプレッダ本体部52の側方側から下方に向けて形成される。よって、ノズル部64は、ボウル面48の左右方向中心線Dに対して偏心した位置に配置される。よって、尿希釈吐水モードにより吐水される水流は、ボウル面48の左右方向中心線Dに対して偏心した位置から吐水される。
【0064】
ノズル部材54の取付部62の内部には、スプレッダ本体部52の第2の通水路58と連通する通水路68が形成されている。ノズル部材54のノズル部64には、通水路68から延びる通水路72が形成され、さらに、ノズル部64の先端部には、第2の吐水部38として単一の円形断面形状の第2の吐水口76が形成されている。第2の給水管22の第2の給水路22aからノズル部材54の通水路68に供給された洗浄水は、第2の吐水口76から第1の所定の流量Q1[リットル/分]よりも低い第2の所定の流量Q2[リットル/分]の洗浄水W2として吐水されるようになっている。また、本洗浄吐水モードにおける第1の吐水口60からの吐水の流量Q1[リットル/分]は、尿希釈吐水モードにおける第2の吐水口76からの吐水の流量Q2[リットル/分]より大きくされている。仮にスプレッダ30の第1の吐水口60から尿希釈吐水モードの吐水を行う場合には、第1の吐水口60を、第2の吐水口76に代えて使用することができる。
【0065】
つぎに、図12図14を参照して、本発明の第1実施形態による小便器の動作(作用)について説明する。
図12は、本発明の第1実施形態による小便器において、使用者がこの小便器を使用する使用回毎のコントローラの制御動作を示すフローチャートであり、図13は、本発明の第1実施形態における小便器において、排水トラップ管路内の洗浄水の尿濃度の時間変化を、尿希釈吐水モードを実行する場合、尿希釈吐水モードが実行されない場合、比較例としての吐水流量が一定の尿希釈吐水モードを実行する場合とで比較して示す図であり、図14は、本発明の第1実施形態における小便器において、標準的な尿流の流量の時間変化を、吐水流量の時間変化と比較して示す図であり、図15は、本発明の第1実施形態における小便器において、1間欠周期における吐水時間Tonと、非吐水時間Toffとの比が時間変化する様子を、標準的な尿流の流量の時間変化のタイミングと比較して示す図である。
【0066】
図12において、Sは各ステップを示している。図13における尿希釈吐水モードが実行されない場合は、尿希釈吐水モードが実行されずに使用者の排尿のみが行われる場合の排水トラップ管路内の洗浄水の尿濃度の時間変化を示している。さらに、図13においては、図14に示すような標準的な尿流の流量の時間変化を、排水トラップ管路内の洗浄水の尿濃度の時間変化のタイミングと対比できるように示している。図13においては、この標準的な尿流の流量の時間変化は、縦軸において流量の変化を示し、横軸において時間経過を示している。また、図14においては、縦軸において第2の吐水口76から吐水される吐水流量及び標準的な尿流の流量の変化を示し、横軸において時間経過を示している。図14に示す標準的な尿流の流量の時間変化は、標準的な大人の使用者が排尿した場合に、統計的に想定(仮定)される尿流の流量の時間変化を示しており、例えば、非特許文献1の図5(a)に示される健康な人の典型的な尿流曲線パターンを本実施形態の動作タイミングに当てはめる。また、図15においても、図14に示すような標準的な尿流の流量の時間変化を、1間欠周期における吐水時間(吐水期間)Tonと非吐水時間(非吐水期間)Toffとの比の時間変化のタイミングと対比できるように示している。図15においては、この標準的な尿流の流量の時間変化は、縦軸において流量の変化を示し、横軸において時間経過を示している。
【0067】
先ず、図12に示すように、S0において、使用者が小便器1の便器本体2のボウル部6の前側に立つと、検知センサ44が使用者の使用を検知している検知状態となり(時刻t0)、その検知信号がコントローラ46に送信され、コントローラ46が使用者の存在を認識する。この時点では第1の開閉弁28は閉弁された状態であり、第2の開閉弁36も閉弁された状態となっている。
【0068】
S1において、コントローラ46は、時刻t0から、尿希釈吐水モードの実行を開始し、S2に進む。図9及び図11に示すように、コントローラ46は、尿希釈吐水モードの開始により、第2の開閉弁36を開弁させ、主給水管16の主給水路16aの洗浄水を、第2の給水管22の第2の給水路22aに供給する。コントローラ46は、第1の開閉弁28を閉弁した状態のままとしている。第2の給水路22aに流れた洗浄水W2は、第2の定流量弁34を通過して、第2の通水路58に流入する。そして、洗浄水W2は、スプレッダ30のノズル部材54の内部の通水路68を通過した後、第2の吐水口76から吐水される(図6参照)。
【0069】
図14に示すように、コントローラ46は、尿希釈吐水モードにおいて、検知センサ44が検知状態となったとき、第1期間が開始すると判断し、第1期間の計測を開始する。よって、検知センサ44が検知状態となった後、第1期間の最初に第2の吐水口76から吐水を開始させる。第1期間は、時刻t0から後述する時刻t3までの期間である。
【0070】
排尿を開始する前の時刻t0から時刻t1までの間、使用者は、ボウル部6の前に立った状態で着衣を脱いで排尿する準備を整える。時刻t1は、時刻t0から平均的な大人の使用者が着衣を脱いで排尿する準備を整えると想定される平均的な服脱ぎ時間を経過した時刻として設定される。服脱ぎ時間は約8秒間と設定される。時刻t0から時刻t1までの服脱ぎ時間は第1期間に含まれている。図13に示すように、時刻t0から時刻t1までにおいては、使用者の排尿が開始されていないので排水トラップ管路14内の尿濃度はほぼ0となっている。時刻t1になると、使用者の排尿が開始される。
【0071】
図14に示すように、コントローラ46は、尿希釈吐水モードの第1期間において、第2の吐水口76から間欠吐水を行わせるように第2の開閉弁36を制御させる。コントローラ46は、第1期間の最初に間欠吐水を開始させる。コントローラ46は、第2の開閉弁36を開弁させ、開弁した状態で吐水時間Tonが経過した後、閉弁させ、閉弁した状態で非吐水時間Toffが経過した後、再び開弁させる。このように、コントローラ46は、第2の開閉弁36を間欠的に開弁させることにより間欠吐水を実現する。間欠吐水は、少なくとも開弁、閉弁及び開弁の一連の制御の組を1つ有し、好ましくは少なくとも開弁、閉弁、開弁、閉弁及び開弁の一連の制御の組を1つ有する。第2の開閉弁36の開弁時間が吐水時間Tonとなり、第2の開閉弁36の閉弁時間が非吐水時間Toffとなる。
【0072】
第2の開閉弁36が開弁した状態の吐水時間Tonと、この吐水時間Tonに続く第2の開閉弁36が閉弁した状態の非吐水時間Toffとにより1間欠周期を構成する。1間欠周期において、吐水時間Tonを非吐水時間Toffで除した値が大きくなるほど、吐水時間Tonが非吐水時間Toffよりも長くなり、1間欠周期における吐水量が増大する。1間欠周期において、吐水時間Tonを非吐水時間Toffで除した値が小さくなるほど、吐水時間Tonが非吐水時間Toffよりも短くなり、1間欠周期における吐水量が減少する。ここで、吐水時間Tonを非吐水時間Toffで除した値はTon/Toffの式により示され、吐水時間Tonと吐水時間Toffとの比を示している。間欠吐水時においては1間欠周期において非吐水時間Toffは0より大きい値である。
【0073】
図15に示すように、コントローラ46は、第1期間の時刻t0から時刻t1までの間、間欠周期におけるTon/Toffの値B1が増加するように第2の開閉弁36を制御する。すなわち、間欠周期における吐水時間Tonの割合が徐々に増加するように第2の開閉弁36を制御する。例えば吐水時間Tonが後続の各間欠周期において徐々に増加している。このときコントローラ46は、第2の定流量弁34の開弁時間を各間欠周期において徐々に増加させるように制御する。このとき、Ton/Toffの値B1は比較的低くされ、吐水時間Tonは比較的短くされ、単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]は比較的少なくされている。第2の開閉弁36の各開弁時における、第2の吐水口76からの吐水流量[リットル/分]は毎回一定である。単位期間は、複数の間欠周期の全部又は一部が含まれるような一定の期間である。
【0074】
図13に示すように、時刻t1から使用者の排尿が開始されるので排水トラップ管路14内の尿濃度が上昇する。時刻t1以後、尿希釈吐水モードの間欠吐水が行われているので、排水トラップ管路14内の尿濃度は、尿希釈吐水モードが行われない場合と比べて低く抑制される。
【0075】
図14及び図15に示すように、コントローラ46は、第1期間の時刻t1から時刻t2までの間、間欠周期におけるTon/Toffの値B1及びTon/Toffの値B2が増加するように第2の開閉弁36を制御する。すなわち、間欠周期における吐水時間Tonの割合が徐々に増加するように第2の開閉弁36を制御する。例えば吐水時間Tonが後続の各間欠周期において徐々に増加している。このとき、Ton/Toffの値B2は比較的大きくされ、吐水時間Tonは比較的長くされ、第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]は比較的多くされている。第2の開閉弁36の各開弁時における、第2の吐水口76からの吐水流量[リットル/分]は毎回一定である。
【0076】
排尿が開始される時刻t1よりも1間欠周期程度後の時刻t2から時刻t3までの間のTon/Toffの値B2は、第1期間の時刻t0から時刻t2までの間のTon/Toffの値B1よりも増加されている。また、第1期間の時刻t2から時刻t3までの間のTon/Toffの値B2の第2増加率B2aは、第1期間の時刻t0から時刻t2までの間のTon/Toffの値の第1増加率B1aよりも増加されている。さらに、第1期間の時刻t2から時刻t3までの間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計は、第1期間の時刻t0から時刻t2までの間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計よりも増加されている。このようにして、第1期間において、単位期間あたりにボウル面48を流れる吐水流量[リットル/分]が増加される。よって、第1期間において、尿流の流量の上昇過程X1中の増加に応じて、排水トラップ管路14内の尿濃度が増加することが抑制されている。第1期間においては、標準的な使用者の尿流の流量は、主に最大水準X2よりも低い上昇過程X1中にあると想定される。なお、第1増加率B1aから第2増加率B2aへの増加率の変更点は、後述する尿流の流量の上昇過程X1における非線形の増加曲線に対応するように、1つのみならず2つ以上設けられてもよい。時刻t2は、使用者の排尿開始後に、尿流の流量の上昇過程X1中の増加に応じて、排水トラップ管路14内の尿濃度が増加することが抑制できるような時刻に設定されている。
【0077】
コントローラ46は、間欠吐水を、使用者の排尿が開始される前及び初期の第1期間の前半において、吐水時間Tonと、非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff<1となる間欠周期を有するように行わせる。この間欠周期においてはTon/Toffの値B1<1となっている。排尿が開始される前及び排尿初期の第1期間の前半において、吐水時間Tonが非吐水時間Toffより短くなる間欠周期を有することにより、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、排水トラップ管路14内の尿濃度が上昇することを抑制し、排水トラップ管路14内に尿石が発生することを抑制することができる。
なお、コントローラ46は、使用者の尿流の流量が上昇する第1期間の後半において、第2の開閉弁36を制御することにより、間欠吐水を、吐水時間Tonと、非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するように行わせる。この間欠周期においてはTon/Toffの値B2≧1となっている。尿流の流量が上昇する第1期間の後半においても、吐水時間Tonが非吐水時間Toffより長くなる間欠周期を有することにより、排水トラップ管路14内の尿濃度が上昇することを抑制し、排水トラップ管路14内に尿石が発生することを抑制することができる。
【0078】
第1期間は、使用者の排尿開始から主に尿流の流量の上昇過程X1の期間を含むように設定される。第1期間内における第2の吐水口76からの吐水により、排水トラップ管路14及び横引配管3に流下する洗浄水の尿濃度を低減させる。第1期間は、7秒~15秒の範囲、好ましくは9秒~13秒の範囲、より好ましくは11秒に設定されている。コントローラ46は、所定時間が経過すると第1期間を終了させる。
【0079】
なお、間欠吐水のパターンに関し、第1期間の前半において、間欠吐水が、吐水時間Tonと非吐水時間Toffとの比が比較的小さい値となる間欠周期により実行され、第1期間の後半において、間欠吐水が、吐水時間Tonと非吐水時間Toffとの比が比較的大きい値となる間欠周期により実行されてもよい。第1期間において比の値が階段状、線形、非線形に変化してもよい。例えば、第1期間の前半に比べ、後半の非吐水時間Toffの時間を短く設定することにより間欠周期の変化を実現できる。別の例としては、第1期間の前半に比べ、後半の吐水時間Tonの時間を長く設定することにより間欠周期の変化を実現できる。
【0080】
図13及び図14に示すように、尿流の流量が最大水準X2まで増加し、排水トラップ管路14内の尿濃度が最大水準まで増加すると想定(仮定)される時刻を時刻t3とする。コントローラ46は、尿希釈吐水モードにおいて、第1期間が終了するとき、第1期間に続く第2期間が開始すると判断し、第2期間の計測を開始する。検知センサ44は検知状態を継続している。コントローラ46は、第2期間においても、第2の吐水口76から間欠吐水を継続させるように第2の開閉弁36を制御させる。第2期間は、時刻t3から尿流が最大水準X2から減少を開始すると想定(仮定)される時刻t4までの期間である。第2期間においては、標準的な使用者の尿流の流量は、主に最大水準X2に到達し且つ最大水準X2の状態が継続すると想定される。
【0081】
図13に示すように、第2期間においては、尿流の流量はほぼ最大水準X2で一定となる。このとき、尿希釈吐水モードの間欠吐水が行われているので、排水トラップ管路14内の尿濃度は、尿希釈吐水モードが行われない場合と比べて低く抑制される。
【0082】
図14及び図15に示すように、コントローラ46は、第2期間の時刻t3から時刻t4までの間、間欠周期におけるTon/Toffの値Cがほぼ一定となるように第2の開閉弁36を制御する。すなわち、各間欠周期における吐水時間Tonの割合がほぼ一定となるように第2の開閉弁36を制御する。このとき、Ton/Toffの値Cは比較的大きくされ、吐水時間Tonは比較的長くされ、単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]は比較的多くされている。第2の開閉弁36の各開弁時における、第2の吐水口76からの吐水流量[リットル/分]は毎回一定である。なお、第2期間において、Ton/Toffの値Cが一定でなくてもよい。
【0083】
第2期間の時刻t3から時刻t4までの間のTon/Toffの値Cは、第1期間のTon/Toffの値B1、B2よりも増加されている。さらに、第2期間における吐水時間Tonの割合は、第1期間における吐水時間Tonの割合よりも増加されている。さらに、第2期間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計は、第1期間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計よりも増加されている。さらに、第2期間の少なくとも一部の期間における単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]は、第1期間における単位期間あたりの吐水量の合計[リットル]よりも増加されている。この吐水量の合計は、単位期間あたりの吐水量の積分値でもある。このようにして、第2期間において、単位期間あたりにボウル面48を流れる吐水流量[リットル/分]が増加されている。よって、第2期間において、尿流の流量の最大水準X2までの増加に応じて、排水トラップ管路14内の尿濃度が増加することが抑制されている。第2期間においては、標準的な使用者の尿流の流量は、最大水準X2に到達していると想定される。よって、この想定に対応して、第2期間において単位期間あたりにボウル面48を流れる吐水流量を、第1期間及び第3期間における吐水流量よりも大きい最大水準とし、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0084】
コントローラ46は、尿流の流量が最大水準X2となる第2期間において、第2の開閉弁36を制御することにより、間欠吐水を、吐水時間Tonと、非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するように行わせる。この間欠周期においてはTon/Toffの値C≧1となっている。尿流の流量が最大水準X2となる第2期間においても、吐水時間Tonが非吐水時間Toffより長くなる間欠周期を有することにより、排水トラップ管路14内の尿濃度が上昇することを抑制し、排水トラップ管路14内に尿石が発生することを抑制することができる。なお、第2期間において、Ton/Toffの値C≧1に維持されているが、第2期間の少なくとも一部の期間においてTon/Toffの値C≧1となっていてもよい。
【0085】
第2期間は、主に尿流の流量の最大水準X2の期間を含むように設定される。第2期間の期間内における第2の吐水口76からの吐水により、排水トラップ管路14及び横引配管3に流下する洗浄水の尿濃度を低減させる。第2期間は、1秒~4秒の範囲、好ましくは2秒~3秒の範囲に設定されている。コントローラ46は、所定時間が経過すると第2期間を終了させる。
【0086】
第2期間において、コントローラ46は、単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]が尿希釈吐水モードの中で最大量となるような吐水を行わせる。第2期間において、吐水量の合計[リットル]が最大量で一定に維持されているが、第2期間の少なくとも一部の期間において吐水量の合計[リットル]が最大量に維持されていればよい。
【0087】
コントローラ46は、尿希釈吐水モードにおいて、第2期間が終了するとき、第2期間に続く第3期間が開始すると判断し、第3期間の計測を開始する。第3期間の開始時点において検知センサ44は検知状態を継続している。コントローラ46は、第2期間に続く第3期間において検知センサ44が非検知状態となる時刻t7まで間欠吐水を継続させる。第3期間は、時刻t4から時刻t7までの期間である。第3期間においては、標準的な使用者の尿流の流量は、最大水準X2から下降する下降過程X3中にあると想定される。
【0088】
使用者は、第3期間において、時刻t4から所定時間が経過した時刻t6において排尿を終了する。時刻t6から検知センサ44が非検知状態となる時刻t7までの間、使用者は、ボウル部6の前に立った状態で着衣を整えて、便器本体2の前から立ち去る準備をする。時刻t7は、時刻t6から平均的な大人の使用者が着衣を着用して立ち去る準備をすると想定される平均的な服着用時間を経過した時刻として設定される。このような服着用時間が第3期間に含まれる。
【0089】
図15に示すように、コントローラ46は、第2の開閉弁36を制御することにより、第3期間における時刻t4から時刻t5までの間、間欠周期におけるTon/Toffの値E1が減少するように第2の開閉弁36を制御する。時刻t5は時刻t6よりも1間欠周期程度前の時刻である。ここで、間欠周期における吐水時間Tonの割合が徐々に減少するように第2の開閉弁36を制御する。例えば吐水時間Tonが後続の各間欠周期において徐々に減少している。このときコントローラ46は、第2の定流量弁34の開弁時間を各間欠周期において徐々に減少させるように制御する。このとき、Ton/Toffの値E1は比較的高く、吐水時間Tonは比較的長く、単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]は比較的多くされている。第2の開閉弁36の各開弁時における、第2の吐水口76からの吐水流量[リットル/分]は毎回一定である。単位期間は、複数の間欠周期の全部又は一部が含まれるような一定の期間である。
【0090】
コントローラ46は、第2の開閉弁36を制御することにより、第3期間における時刻t5から時刻t7までの間、間欠周期におけるTon/Toffの値E2が減少するように第2の開閉弁36を制御する。時刻t5から時刻t7までの間においても、間欠周期における吐水時間Tonの割合が徐々に減少するように第2の開閉弁36を制御する。例えば吐水時間Tonが後続の各間欠周期において徐々に減少している。このときコントローラ46は、第2の定流量弁34の開弁時間を各間欠周期において徐々に減少させるように制御する。このとき、Ton/Toffの値E2は比較的低く、吐水時間Tonは比較的短く、単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]は比較的少なくされている。第2の開閉弁36の各開弁時における、第2の吐水口76からの吐水流量[リットル/分]は毎回一定である。
【0091】
第3期間の時刻t5から時刻t7までの間のTon/Toffの値E2は、第3期間の時刻t4から時刻t5までの間のTon/Toffの値E1よりも減少されている。また、第3期間の時刻t5から時刻t7までの間のTon/Toffの値E2の第2減少率E2aは、第3期間の時刻t4から時刻t5までの間のTon/Toffの値の第1減少率E1aよりも減少されている。さらに、第3期間の時刻t5から時刻t7までの間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計は、第3期間の時刻t4から時刻t5までの間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計よりも増加されている。このようにして、第3期間において、単位期間あたりにボウル面48を流れる吐水流量[リットル/分]が減少される。よって、第3期間において、尿流の流量の下降過程X3中の減少に応じて、間欠吐水の吐水時間が短縮され、第3期間内の単位期間あたりの吐水量の合計が少なくされる。なお、第1減少率E1aから第2減少率E2aへの減少率の変更点は、尿流の流量の下降過程X3における非線形の増加曲線の変化点に対応するように、1つのみならず2つ以上設けられてもよい。
【0092】
コントローラ46は、第2の開閉弁36を制御することにより、第3期間の間欠周期においてはTon/Toffの値E1<1となるように吐水を行わせる。尿流の流量が比較的多い第3期間の前半において、吐水時間Tonが比較的長い状態で吐水時間Tonが非吐水時間Toffより短くなる間欠周期を有することにより、排水トラップ管路14内の尿濃度が上昇することをより抑制するとともに、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成することができる。
コントローラ46は、第2の開閉弁36を制御することにより、第3期間の間欠周期においてはTon/Toffの値E2<1となるように吐水を行わせる。尿流の流量が比較的少ない第3期間の後半において、吐水時間Tonが比較的短い状態で吐水時間Tonが非吐水時間Toffより短くなる間欠周期を有することにより、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、少ない吐水量で尿希釈を効率的に実現することができる。
【0093】
第3期間のTon/Toffの値E1、E2は、第2期間のTon/Toffの値Cよりも減少されている。さらに、第3期間における吐水時間Tonの割合は、第2期間における吐水時間Tonの割合よりも減少されている。さらに、第3期間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計は、第2期間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計よりも減少されている。さらに、第3期間における単位期間あたりの吐水量の合計[リットル]は、第2期間の少なくとも一部の期間における単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]よりも小さくされている。このようにして、第3期間において、単位期間あたりにボウル面48を流れる吐水流量[リットル/分]が減少されている。
【0094】
第3期間は、主に尿流の流量の下降過程X3の期間を含むように設定される。第3期間内における第2の吐水口76からの吐水により、排水トラップ管路14及び横引配管3に流下する洗浄水の尿濃度を低減させる。第3期間は、検知センサ44が非検知状態となると終了するが、変形例として、第3期間は、20秒~40秒の範囲、好ましくは20秒~30秒の範囲、より好ましくは27秒の期間に設定され、この設定された期間が経過すると、コントローラ46が検知センサ44が非検知状態となったと判断して第2の吐水口76からの吐水を終了させるような制御を行ってもよい。
【0095】
時刻t4から時刻t7までの第3期間においては、標準的な使用者の尿流の流量は、最大水準X2よりも低く且つ排尿が終了するまでの下降過程X3中にあると想定される。よって、この想定に対応して、第3期間において、単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]が減少されても、排水トラップ管路14内の尿濃度が増加することが抑制される。このように、尿流の流量の減少に応じた間欠吐水により、排水トラップ管路14内の尿濃度が減少されている。よって、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。また、第3期間において尿希釈吐水が行われているので、排水トラップ管路14内の尿濃度は、尿希釈吐水モードが行われない場合と比べて低く抑制されている。
【0096】
なお、間欠吐水のパターンに関し、第3期間の前半において、間欠吐水が、吐水時間Tonと非吐水時間Toffとの比が比較的大きい値となる間欠周期により実行され、第3期間の後半において、間欠吐水が、吐水時間Tonと非吐水時間Toffとの比が比較的小さい値となる間欠周期により実行されてもよい。第3期間において比の値が階段状、線形、非線形に変化してもよい。例えば、第3期間の前半に比べ、後半の非吐水時間Toffの時間を長く設定することにより間欠周期の変化を実現できる。別の例としては、第3期間の前半に比べ、後半の吐水時間Tonの時間を短く設定することにより間欠周期の変化を実現できる。
【0097】
また、例えば、コントローラ46は、尿希釈吐水モードにおいて、第2の吐水口76から間欠吐水を行わせることにより、ボウル面を流れる流量を調整することができる。このような制御によっても、使用者の排尿の尿流の流量の増減に応じて、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0098】
なお、比較例として、図13においては、尿希釈吐水モードが実行されずに使用者の排尿のみが行われる場合の排水トラップ管路14内の洗浄水の尿濃度の時間変化が示されている。この場合、時刻t0以後、尿希釈吐水モードは実行されない。第1期間においては、洗浄水の尿濃度はほぼ100%に向けて上昇する。時刻t3以後、本洗浄吐水モードが実行されるまで、排水トラップ管路14内の洗浄水がほぼ使用者の尿で置換され、洗浄水の尿濃度は、ほぼ100%となっている。
【0099】
なお、比較例として、図13においては、間欠吐水が行われず一定の吐水流量が継続して吐水される尿希釈吐水モードを実行する場合の排水トラップ管路14内の洗浄水の尿濃度の時間変化が示されている。この比較例の尿希釈吐水モードにおいては、時刻t0から時刻t6までの間、一定の吐水流量の尿希釈吐水が第2の吐水口76から吐水される。これにより、排水トラップ管路14内の尿濃度の増加を抑制することができる。しかしながら、第1期間の前半及び第3期間の後半において、尿希釈に寄与しない、又は尿希釈に寄与しにくい無駄水を消費する。従って、比較例の尿希釈吐水モードによれば、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成することができず、さらに、尿希釈を効率的に実現することもできていない。
【0100】
図12に示すように、S2において、コントローラ46は、検知センサ44が検知状態を維持したままであるか否かを判定する。コントローラ46は、検知センサ44が検知状態を維持したままである場合には、S2に戻ってS2の判定を再び行う。コントローラ46は、検知センサ44が使用者の使用を検知しなくなった場合には、使用者が排尿を終え、便器本体2の前から立ち去ったと判断して、尿希釈吐水モードにおける無駄な洗浄水の消費を抑制し、排水トラップ管路14及び横引配管3を十分に洗浄して以降の尿石の発生を抑制させる本洗浄吐水モードを実行するため、S3に進む。
【0101】
S3において、コントローラ46は、尿希釈吐水モードを終了させ、S4に進む。図9及び図11に示すように、コントローラ46は、尿希釈吐水モードの終了により、第2の開閉弁36を閉弁させ、洗浄水の第2の給水路22aへの供給を停止する。よって、ノズル部64の第2の吐水口76からの吐水が停止される。
【0102】
S4において、コントローラ46は、本洗浄吐水モードを実行する。図9及び図11に示すように、コントローラ46は、本洗浄吐水モードの実行により、まず、第1の開閉弁28に制御信号を送信し、第1の開閉弁28を開弁させる。主給水管16の主給水路16aの洗浄水は、管継手24を経て第1の給水路20aのみに流れる。第1の給水路20aに流れた洗浄水W1は、第1の定流量弁26を通過し、比較的高い第1の所定の流量Q1[リットル/分]で第1の吐水口60から吐水される(図6参照)。コントローラ46は、本洗浄吐水モードにおいては、各使用回ごとに0.5[リットル]の吐水流量を吐水するように、第1の開閉弁28を一定時間開弁させる。
【0103】
図6に示すように、第1の吐水口60から吐水された洗浄水W1は、ボウル面48に沿って左右方向に広がるように吐水され、ボウル面48を広範囲に洗浄することができる。
【0104】
ボウル面48を流下した洗浄水W1は、排水口10から排水トラップ管路14内に流入する。洗浄水W1は、この排水トラップ管路14の下流側の横引配管3に向かって流れることにより、排水トラップ管路14や横引配管3内の尿を下流側に排出させる。洗浄水W1は、比較的高い流量Q1で流れるとともに、排水トラップ管路14内の希釈された尿を新しい洗浄水で置換して、排水トラップ管路14内の洗浄水の尿濃度を比較的大きく低減することができる。コントローラ46が、所定時間が経過した後、第1の開閉弁28を閉弁し、スプレッダ30による吐水動作を停止させて、本洗浄吐水モードの動作を終了させ、S5に進む。
【0105】
S5において、コントローラ46は、検知センサ44が使用者の使用を検知してから始まる各使用回ごとの制御動作を終了し、検知センサ44を待機状態とする。コントローラ46は、再び検知センサ44が使用者の使用を検知した場合にはS0から各使用回毎の制御動作を開始する。
【0106】
なお、変形例として、コントローラ46は、検知センサ44が検知状態となった時刻t0から所定の待機時間にわたって待機する待機モードを実行してもよい。コントローラ46は、時刻t0からすぐに尿希釈吐水モードを開始せず、先行する待機モードを実行する。これにより、使用者の排尿が始まる前における、尿の希釈に貢献しにくい洗浄水の間欠吐水を抑制し、尿を希釈する洗浄水を節約することができる。所定の待機時間は、コントローラ46に記録されたプログラム等により目的達成のため意図的に実現される待機時間であり、信号の伝送の遅れや弁体の動作等の遅れによりわずかに生じる吐水動作の遅れ時間とは区別される。コントローラ46は、検知センサ44が検知状態となった時刻t0から待機モードを開始させる。コントローラ46は、待機モードを実行して所定の待機時間が経過した後、尿希釈吐水モードの実行を開始させる。尿希釈吐水モードの実行の開始時刻が使用者の排尿が開始される時刻t1に近い時刻となる。時刻t1において使用者が排尿を開始するまでは、排水トラップ管路14内の洗浄水の尿濃度は上昇しない。よって、待機モードの実行により排尿開始まで待機させることにより、尿希釈吐水モードの開始を遅らせ、尿の希釈に貢献しにくい洗浄水の間欠吐水を抑制し、尿を希釈する洗浄水を節約することができる。待機モードの待機時間は、時刻t0から6秒間~11秒間、より好ましくは7秒間~10秒間の範囲内の時間に設定することが好ましい。なお、仮に待機モードの待機中に使用者の排尿が開始されたとしても、排尿初期は排水トラップ管路14内に前回の洗浄による洗浄水が存在し、尿が流入しても洗浄水の尿濃度が比較的低い状態で保たれる。従って、尿石の発生が抑制される。
【0107】
上述した本発明の第1実施形態による小便器1によれば、コントローラ46は、尿希釈吐水モードにおいて、第2の吐水口76から間欠吐水を行わせるので、吐水が行われない時間が生じ、吐水を継続して行う場合と比べて、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量を低減させ、節水化を達成することができる。さらに、仮に、尿希釈吐水モードにおける吐水時間及び総使用水量が同じであるとすれば、第2の吐水口76から間欠吐水を行わせる場合の吐水流量が、吐水を継続して行う場合の吐水流量と比べて、増加される。これにより、排水トラップ管路14への洗浄水の流入速度がより速くなり、洗浄水が排水トラップ管路14内をより攪拌し、排水トラップ管路14内の尿が下流側に排出されやすくなる。よって、本技術によれば、排水トラップ管路14内の尿濃度がより効率的に低下される。従って、本技術によれば、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0108】
さらに、第1実施形態による小便器1によれば、コントローラ46は、上記間欠吐水を、上記第2の吐水口76から吐水を行う吐水時間Tonと、上記第2の吐水口76から吐水を行わない非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するように行わせる。これにより、吐水時間Tonが非吐水時間Toffより短くなることにより排水トラップ管路14内の尿濃度が上昇して排水トラップ管路14内に尿石が発生し安くなることを抑制する。よって、本実施形態によれば、吐水時間Tonが非吐水時間Toffより長くなる間欠周期を有しているため、排水トラップ管路14内の尿濃度が上昇することを抑制し、排水トラップ管路14内に尿石が発生することを抑制することができる。
【0109】
さらに、通常、使用者の排尿による尿流の流量は、排尿開始から徐々に増大すると想定される。そこで、第1実施形態による小便器1によれば、コントローラ46は、第2期間内の少なくとも一部の単位期間あたりの吐水量の合計は、第1期間内の単位期間あたりの吐水量の合計よりも大きくなるように、間欠吐水を行わせる。これにより、尿流の流量が比較的小さい第1期間よりも尿流の流量が比較的大きい第2期間において、間欠吐水における吐水量が大きくされる。よって、本実施形態によれば、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、使用者の排尿の尿流の増大に応じて、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0110】
さらに、第1実施形態による小便器1によれば、排水トラップ管路14内の尿濃度が比較的低い第1期間においては、Ton/Toff<1となる間欠周期を有するような間欠吐水を行い、排水トラップ管路14内の尿濃度が上昇することを抑制し、排水トラップ管路14内に尿石が発生することを抑制することができる。さらに、排水トラップ管路14内の尿濃度が比較的高くなる第2期間においては、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するような間欠吐水を行い、排水トラップ管路14内の尿濃度が上昇することを抑制し、排水トラップ管路14内に尿石が発生することを抑制することができる。よって、本実施形態によれば、排水トラップ管路14内の尿濃度の変化に応じた間欠吐水を行うことができ、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0111】
さらに、第1実施形態による小便器1によれば、コントローラ46は、間欠吐水を、第1期間において間欠周期のTon/Toffの値が増加するように行わせる。これにより、排尿初期の第1期間における尿流の流量の増加に応じて、間欠吐水における非吐水時間の割合を小さくし、間欠吐水における吐水量を増加させることができる。よって、本実施形態によれば、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0112】
さらに、通常、使用者の排尿による尿流の流量は、排尿後半において徐々に減少すると想定される。そこで、第1実施形態による小便器1によれば、コントローラ46は、間欠吐水を、第3期間内の単位期間あたりの吐水量の合計は、第2期間内の少なくとも一部の単位期間あたりの吐水量の合計よりも小さくなるように行わせる。これにより、尿流の流量が比較的大きい第2期間よりも尿流の流量が比較的小さい第3期間において、間欠吐水における吐水時間の割合が小さくされている。よって、本実施形態によれば、使用者の排尿の尿流の減少に応じて、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0113】
さらに、第1実施形態による小便器1によれば、排水トラップ管路14内の尿濃度が比較的高くなる第2期間においては、Ton/Toff≧1となる間欠周期を有するような間欠吐水を行い、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。さらに、排尿の尿流が減少する第3期間においては、Ton/Toff≦1となる間欠周期を有するような間欠吐水を行い、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。よって、本実施形態によれば、排水トラップ管路14内の尿濃度の変化に応じた間欠吐水を行うことができ、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0114】
さらに、第1実施形態による小便器1によれば、コントローラ46は、間欠吐水を、第3期間において間欠周期のTon/Toffの値が減少するように行わせる。これにより、排尿後半の第3期間における尿流の流量の減少に応じて、間欠吐水における非吐水時間の割合を大きくし、間欠吐水における吐水量を減少させることができる。よって、本実施形態によれば、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0115】
次に、図16乃至図19により、本発明の第2実施形態による小便器を説明する。第2実施形態では、第1実施形態の検知センサ44に代えて、使用者の尿流を検知できる検知センサ144を設けたものである。第2実施形態による小便器は、上述した第1実施形態による小便器と構造がほぼ同じであるため、上述した第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
図16は本発明の第2実施形態による小便器の中央断面図であり、図17は、本発明の第2実施形態における小便器において、排水トラップ管路内の洗浄水の尿濃度の時間変化を、尿希釈吐水モードを実行する場合、尿希釈吐水モードが実行されない場合、比較例としての吐水流量が一定の尿希釈吐水モードを実行する場合とで比較して示す図であり、図18は、本発明の第2実施形態における小便器において、標準的な尿流の流量の時間変化を、吐水流量の時間変化と比較して示す図であり、図19は、本発明の第2実施形態における小便器において、1間欠周期における吐水時間Tonと、非吐水時間Toffとの比が時間変化する様子を、標準的な尿流の流量の時間変化のタイミングと比較して示す図である。
【0116】
図17における尿希釈吐水モードが実行されない場合は、尿希釈吐水モードが実行されずに使用者の排尿のみが行われる場合の排水トラップ管路内の洗浄水の尿濃度の時間変化を示している。さらに、図17においては、図18に示すような標準的な尿流の流量の時間変化を、排水トラップ管路内の洗浄水の尿濃度の時間変化のタイミングと対比できるように示している。図17において、この標準的な尿流の流量の時間変化は、縦軸において流量の変化を示し、横軸において時間経過を示している。また、図18においては、縦軸において第2の吐水口76から吐水される吐水流量及び標準的な尿流の流量の変化を示し、横軸において時間経過を示している。
【0117】
小便器101の自動洗浄ユニット4は、スプレッダ30に設けられて便器本体2に排尿された尿流を検知する検知センサ144と、この検知センサ144から送信される検知信号を受信すると共に所定の制御プログラム等に基づいて第1の開閉弁28及び第2の開閉弁36等のそれぞれの動作を制御する制御部であるコントローラ46を備えている。
【0118】
コントローラ46は、検知センサ144が使用者の便器本体2の使用を検知している間のうち所定の期間において第2の吐水部38から吐水を行う尿希釈吐水モードと、検知センサ144が使用者の使用を検知しなくなった後に、第1の吐水部32から吐水を行う本洗浄吐水モードとのそれぞれを実行させる制御プログラムを備えている。
【0119】
検知センサ144は、マイクロ波を使用したドップラー式のセンサである。検知センサ144は、使用者が便器本体2へ排尿した尿流を検知する。検知センサ144は、ボウル部6に設けられているが、排水トラップ管路14又は排水ソケット15等の尿流を検知可能な他の位置に設けられていてもよい。例えば、検知センサ144は、ボウル面48の背面側に設けられ、ボウル面48の裏側からボウル面48の表側を流れる尿流を検知するように設けられていてもよい。例えば、検知センサ144は、ボウル面48の左右中央且つボウル面48の高さ方向の中央よりやや下方の位置に配置される。なお、検知センサ144は、尿流の流れを検知する流量検知センサ等であってもよい。検知センサ144は、尿流を検知するセンサであるため、ボウル面48への排尿の有無、及び排尿の開始及び終了のタイミングを、人体検知よりも正確に特定することができる。検知センサ144は、小便器本体を使用する使用者の有無を検知することもできる。よって、変形例として、検知センサ144は、使用者のボウル面48への排尿の有無、及び排尿の開始及び終了のタイミングを、両方とも検知するように設けられていてもよい。
【0120】
次に、本発明の第2実施形態による小便器1における通常の便器洗浄の動作(作用)について説明する。第2実施形態の動作(作用)の説明に関し、上述した第1実施形態と異なる構造の検知センサ144に関する作用について主に説明し、他の同様な作用の説明は省略する。
先ず、図16に示すように、時刻t0において使用者が小便器1の便器本体2のボウル部6の前側に到着して立ったときには、検知センサ144は非検知状態である。コントローラ46は使用者の存在を認識していない状態である。この時点では第1の開閉弁28は閉弁された状態であり、第2の開閉弁36も閉弁された状態となっている。
【0121】
使用者は、排尿を開始する前の時刻t0から時刻t1までの間、使用者は、ボウル部6の前に立った状態で着衣を脱いで排尿する準備を整える。時刻t0から時刻t1までの服脱ぎ時間は後述する第1期間に含まれないこととなる。
【0122】
図17に示すように、時刻t1になると、使用者の排尿が開始される。使用者の排尿が開始されると、検知センサ144が使用者の尿流を検知している検知状態となり、その検知信号がコントローラ46に送信され、コントローラ46が使用者の存在を認識する。コントローラ46は、時刻t1から、尿希釈吐水モードの実行を開始する。コントローラ46は、尿希釈吐水モードの開始により、第2の開閉弁36を開弁させ、洗浄水を第2の吐水口76から吐水させる。
【0123】
コントローラ46は、尿希釈吐水モードにおいて、検知センサ144が検知状態となったとき、第1期間が開始すると判断し、第1期間の計測を開始する。よって、検知センサ144が検知状態となった後、第1期間の最初に第2の吐水口76から吐水を開始させる。第1期間は、時刻t1から後述する時刻t3までの期間である。検知センサ144が尿流を検知できるので、使用者の排尿の開始のタイミングと、尿希釈吐水モードの開始のタイミングとを同期でき、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、より効率的な尿希釈を実現することができる。
【0124】
図18に示すように、コントローラ46は、尿希釈吐水モードの第1期間において、第2の吐水口76から間欠吐水を行わせるように第2の開閉弁36を制御させる。コントローラ46は、第1期間の最初に間欠吐水を開始させる。
【0125】
検知センサ144は、尿流を検知するセンサであるため、ボウル面48に吐水が行われている間は、吐水された洗浄水流も検知する可能性がある。よって、コントローラ46は、この尿検知センサ144により、尿希釈吐水モードにおいては、第2の吐水口76から吐水を行わない非吐水時間Toff中に尿流を検知させる。尿検知センサ144が非吐水時間Toff中に尿流を検知するように制御されることにより、洗浄水流を尿流として誤検知することなく、尿検知センサ144により尿流を正確に検知することができる。コントローラ46は、非吐水時間Toff毎に、尿検知センサ144により尿流を検知させる。コントローラ46は、非吐水時間Toff毎に、検知センサ144が検知状態を継続していれば、検知状態が継続していると判断し、尿希釈吐水モードを継続する。
【0126】
図19に示すように、コントローラ46は、第1期間の時刻t1から時刻t3までの間、間欠周期におけるTon/Toffの値Fが増加するように第2の開閉弁36を制御する。このとき、Ton/Toffの値Fは比較的低くされ、吐水時間Tonは比較的短くされ、単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]は比較的少なくされている。
【0127】
図17に示すように、時刻t1以後、尿希釈吐水モードの間欠吐水が行われているので、排水トラップ管路14内の尿濃度は、尿希釈吐水モードが行われない場合と比べて低く抑制される。
【0128】
第1期間におけるTon/Toffの値Fの増加率Faは、ほぼ一定である。このようにして、第1期間において、単位期間あたりにボウル面48を流れる吐水流量[リットル/分]が次第に増加される。よって、第1期間において、尿流の流量の上昇過程X1中の増加に応じて、間欠吐水による吐水時間が増加され、排水トラップ管路14内の尿濃度が増加することが抑制されている。第1期間においては、標準的な使用者の尿流の流量は、主に、最大水準X2よりも低い上昇過程X1中にあると想定される。なお、増加率の変更点が、尿流の流量の上昇過程X1における非線形の増加曲線の変化点に対応するように、1つ以上設けられてもよい。
【0129】
コントローラ46は、間欠吐水を、第1期間において、吐水時間Tonと、非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toffの値F<1となる間欠周期を有するように行わせる。排尿初期の第1期間において、吐水時間Tonが非吐水時間Toffより短くなる間欠周期を有することにより、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、排水トラップ管路14内の尿濃度が上昇することを抑制することができる。
【0130】
第1期間は、2秒~7秒の範囲、好ましくは2秒~5秒の範囲、より好ましくは3秒に設定されている。コントローラ46は、所定時間が経過すると第1期間を終了させる。
【0131】
図17及び図18に示すように、尿流の流量が最大水準X2まで増加し、排水トラップ管路14内の尿濃度が最大水準まで増加すると想定(仮定)される時刻を時刻t3とする。第2期間においても、コントローラ46は、検知センサ144が検知状態を継続していると判断している。
【0132】
図19に示すように、コントローラ46は、第2期間の時刻t3から時刻t4までの間、間欠周期におけるTon/Toffの値Cがほぼ一定となるように第2の開閉弁36を制御する。コントローラ46は、尿流の流量が最大水準X2となる第2期間において、第2の開閉弁36を制御することにより、間欠吐水を、吐水時間Tonと、非吐水時間Toffとの比が、Ton/Toffの値C≧1となる間欠周期を有するように行わせる。
【0133】
第2期間の時刻t3から時刻t4までの間のTon/Toffの値Cは、第1期間のTon/Toffの値Fよりも増加されている。さらに、第2期間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計は、第1期間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計よりも増加されている。さらに、第2期間の少なくとも一部の期間における単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]は、第1期間における単位期間あたりの吐水量の合計[リットル]よりも増加されている。このようにして、第2期間において、単位期間あたりにボウル面48を流れる吐水流量[リットル/分]が増加されている。よって、第2期間において、尿流の流量の最大水準X2までの増加に応じて、排水トラップ管路14内の尿濃度が増加することが抑制されている。第2期間においては、標準的な使用者の尿流の流量は、最大水準X2に到達していると想定される。よって、この想定に対応して、第2期間において単位期間あたりにボウル面48を流れる吐水流量を、第1期間及び第3期間における吐水流量よりも大きい最大水準とし、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0134】
第2期間は、1秒~4秒の範囲、好ましくは2秒~3秒の範囲に設定されている。コントローラ46は、所定時間が経過すると第2期間を終了させる。
【0135】
第3期間の開始時点においてコントローラ46は、検知センサ144が検知状態を継続していると判断している。コントローラ46は、第2期間に続く第3期間において検知センサ144が非検知状態となる時刻t6まで間欠吐水を継続させる。第3期間は、時刻t4から時刻t6までの期間である。
【0136】
使用者は、第3期間において、時刻t4から所定時間が経過した時刻t6において排尿を終了する。時刻t7は、時刻t6から平均的な大人の使用者が着衣を着用して立ち去る準備をすると想定される平均的な服着用時間を経過した時刻として設定される。このような服着用時間は第3期間に含まれない。
【0137】
図19に示すように、コントローラ46は、第2の開閉弁36を制御することにより、第3期間における時刻t4から時刻t6までの間、間欠周期におけるTon/Toffの値Gが減少するように第2の開閉弁36を制御する。このとき、Ton/Toffの値Gは比較的低く、吐水時間Tonは比較的短く、単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]は比較的少なくされている。
【0138】
第3期間において、尿流の流量の下降過程X3中の減少に応じて、間欠吐水の吐水時間が短縮され、第3期間内の単位期間あたりの吐水量の合計が少なくされる。なお、減少率の変更点が、尿流の流量の下降過程X3における非線形の増加曲線の変化点に対応するように、1つ以上設けられてもよい。
【0139】
コントローラ46は、第2の開閉弁36を制御することにより、第3期間の間欠周期においてはTon/Toffの値G<1となるように吐水を行わせる。尿流の流量が比較的多い第3期間の前半において、吐水時間Tonが比較的長い状態で吐水時間Tonが非吐水時間Toffより短くなる間欠周期を有することにより、排水トラップ管路14内の尿濃度が上昇することをより抑制するとともに、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成することができる。さらに、尿流の流量が比較的少ない第3期間の後半において、吐水時間Tonが比較的短い状態で吐水時間Tonが非吐水時間Toffより短くなる間欠周期を有することにより、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、少ない吐水量で尿希釈を効率的に実現することができる。
【0140】
第3期間のTon/Toffの値Gは、第2期間のTon/Toffの値Cよりも減少されている。さらに、第3期間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計は、第2期間における単位期間あたりの吐水時間Tonの合計よりも減少されている。さらに、第3期間における単位期間あたりの吐水量の合計[リットル]は、第2期間の少なくとも一部の期間における単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]よりも小さくされている。このようにして、第3期間において、単位期間あたりにボウル面48を流れる吐水流量[リットル/分]が減少されている。
【0141】
第3期間は、検知センサ44が非検知状態となると終了するが、変形例として、第3期間は、10秒~30秒の範囲、好ましくは10秒~20秒の範囲、より好ましくは14秒の期間に設定され、この設定された期間が経過すると、コントローラ46が検知センサ144が非検知状態となったと判断して第2の吐水口76からの吐水を終了させるような制御を行ってもよい。
【0142】
時刻t4から時刻t6までの第3期間においては、標準的な使用者の尿流の流量は、最大水準X2よりも低く且つ排尿が終了するまでの下降過程X3中にあると想定される。よって、この想定に対応して、第3期間において、単位期間あたりの第2の吐水口76からの吐水量の合計[リットル]が減少されても、排水トラップ管路14内の尿濃度が増加することが抑制される。このように、尿流の流量の減少に応じた間欠吐水により、排水トラップ管路14内の尿濃度が減少されている。よって、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成するとともに、尿希釈を効率的に実現することができる。
【0143】
なお、比較例として、図17においては、間欠吐水が行われず一定の吐水流量が継続して吐水される尿希釈吐水モードを実行する場合の排水トラップ管路14内の洗浄水の尿濃度の時間変化が示されている。この比較例の尿希釈吐水モードにおいては、時刻t1から時刻t6までの間、一定の吐水流量の尿希釈吐水が第2の吐水口76から吐水される。これにより、排水トラップ管路14内の尿濃度の増加を抑制することができる。しかしながら、第1期間の前半及び第3期間の後半において、尿希釈に寄与しない、又は尿希釈に寄与しにくい無駄水を消費する。従って、比較例の尿希釈吐水モードによれば、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化を達成することができず、さらに、尿希釈を効率的に実現することもできていない。
【0144】
時刻t6から使用者がボウル部6の前から立ち去る時刻t7までの間、使用者は、ボウル部6の前に立った状態で着衣を整えて、便器本体2の前から立ち去る準備をする。時刻t7は、時刻t6から平均的な大人の使用者が着衣を着用して立ち去る準備を終えると想定される平均的な服着用時間を経過した時刻として設定される。このような服着用時間は第3期間に含まれないようになっている。
【0145】
なお、コントローラ46は、検知センサ144が非検知状態となったと判断する場合には、尿希釈吐水モードを終了させ、尿希釈吐水モードにおける無駄な洗浄水の消費を抑制し、排水トラップ管路14及び横引配管3を十分に洗浄して以降の尿石の発生を抑制させる本洗浄吐水モードを実行させる。コントローラ46が、本洗浄吐水モードの実行が終了すると、検知センサ144を待機状態とする。コントローラ46は、再び検知センサ144が使用者の尿流を検知した場合には各使用回毎の制御動作を開始する。
【0146】
上述した本発明の第2実施形態による小便器101によれば、尿検知センサ144により尿流を検知するため、使用者の排尿の開始と終了をより正確に測定できる。また、本実施形態によれば、コントローラ46は、この尿検知センサ144により、尿希釈吐水モードにおいては、第2の吐水口76から吐水を行わない非吐水時間Toff中に尿流を検知させる。よって、本実施形態によれば、尿希釈吐水モードにおいて、尿検知センサ144が、間欠吐水による第2の吐水口76からの吐水と、排尿の尿流とを誤検知する可能性を抑制することができ、尿希釈吐水モードをより正確に実現できる。従って、本実施形態によれば、尿希釈吐水モードで吐水される洗浄水量の節水化をより確実に達成するとともに、尿希釈をより効率的に実現することができる。
【符号の説明】
【0147】
1 小便器
2 便器本体
3 横引配管
4 自動洗浄ユニット
6 ボウル部
7 前面
8 収納室
10 排水口
12 目皿
14 排水トラップ管路
14a 下降管路
14b 管路
14c 上昇管路
14d 共通壁
14e 前後方向の幅
14f 下端部の幅
14g 上端部の幅
15 排水ソケット
16 主給水管
16a 主給水路
18 止水栓
20 第1の給水管
20a 第1の給水路
22 第2の給水管
22a 第2の給水路
24 管継手
26 第1の定流量弁
28 第1の開閉弁
30 スプレッダ
32 第1の吐水部
34 第2の定流量弁
36 第2の開閉弁
38 第2の吐水部
40 逆止弁
42 棚
43 電解除菌水ユニット
44 検知センサ
46 コントローラ
48 ボウル面
48a 正面部
48b 左側端部
48c 右側端部
48d 上端
50 外装カバー
52 スプレッダ本体部
52a 取付穴
54 ノズル部材
56 第1の通水路
56a 上流側通水路
56b 下流側通水路
58 第2の通水路
60 第1の吐水口
62 取付部
64 ノズル部
68 通水路
72 通水路
76 第2の吐水口
101 小便器
144 検知センサ
144 尿検知センサ
B1 値
B1a 増加率
B2 値
B2a 増加率
C 値
D 左右方向中心線
E1 値
E1a 減少率
E2 値
E2a 減少率
F 値
Fa 増加率
G 値
K 床面
Q1 流量
Q2 流量
t0 時刻
t1 時刻
t2 時刻
t3 時刻
t4 時刻
t5 時刻
t6 時刻
t7 時刻
Toff 吐水時間
Toff 非吐水時間
U 尿石
W 壁面
W1 洗浄水
W2 洗浄水
X 細菌
X1 上昇過程
X2 最大水準
X3 下降過程
Y 環境領域
Z ウレアーゼ酵素
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19