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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】シリンダヘッド
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/36 20060101AFI20220713BHJP
   F02F 1/42 20060101ALI20220713BHJP
   F01N 13/10 20100101ALI20220713BHJP
【FI】
F02F1/36 C
F02F1/42 Z
F01N13/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018237728
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2020101089
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】吉原 昭
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝幸
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-137027(JP,A)
【文献】特開2017-066978(JP,A)
【文献】特開2014-070624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00- 1/42
F02F 7/00
F01N 1/00- 1/24
F01N 5/00- 5/04
F01N 13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの気筒に接続される排気ポートと、
前記排気ポートの周囲に設けられて冷却水が流通される冷却水通路と、を備えるシリンダヘッドであって、
前記排気ポート内を流れる排気ガスの流れ方向に対して交差する方向に沿って突出させた突条部が前記排気ポートの内壁に設けられ
前記突条部は、前記排気ポートの上流側の第1の側面及び下流側の第2の側面が前記排気ポートの壁面に対して傾斜して設けられており、
前記第2の側面の傾斜角度が、前記第1の側面の傾斜角度よりも大きい
ことを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項2】
請求項に記載のシリンダヘッドであって、
前記突条部は、前記排気ポートを構成する第1の壁面と該第1の壁面に対向する第2の
壁面とのそれぞれに複数設けられ、複数の前記突条部が、前記排気ポート内を流れる排気
ガスの流れ方向で、前記第1の壁面と前記第2の壁面とに交互に配置されている
ことを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項3】
請求項に記載のシリンダヘッドであって、
前記突条部は、前記第1の側面が前記排気ポートの壁面に対して傾斜して設けられてお
り、
各突条部は、前記排気ポート内を流れる排気ガスの流れ方向において隣接する前記突条
部の前記第1の側面の延長線上に配置されている
ことを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項4】
請求項に記載のシリンダヘッドであって、
前記突条部が、前記排気ポート内を流れる排気ガスの流れ方向に沿って螺旋状に連続し
て設けられている
ことを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のシリンダヘッドであって、
複数の前記排気ポートと、複数の前記排気ポートが集合する排気集合部と、を含む集合
排気ポートを備えており、
前記突条部が、前記排気ポート及び前記排気集合部に設けられている
ことを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項6】
請求項に記載のシリンダヘッドであって、
複数の前記排気ポートのうち圧損の小さいものほど、前記突条部が密に設けられている
ことを特徴とするシリンダヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの気筒に接続される排気ポートと、排気ポートの周囲に設けられて冷却水が流通される冷却水通路と、を備えるシリンダヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、多気筒エンジンにおいては、シリンダヘッドに各気筒に対応する複数の排気ポートが形成されていた。シリンダヘッドには、各排気ポートに接続される複数の排気通路を備えた排気マニホールドが接続され、排気マニホールド内で排気通路を合流させていた。
【0003】
また、シリンダヘッド内に、各気筒に対応する複数の排気ポートを集合させる排気集合部を形成し、シリンダヘッドには単一の排気管を接続するようにした多気筒エンジンが開発されている。
【0004】
このようなシリンダヘッドは、内部を通過する排気ガスの影響により高温となる。このため、シリンダヘッドには、冷却水を循環させる冷却水通路(ウォータジャケット)が形成されている。特に、上記のように内部に排気集合部が形成されたシリンダヘッドは、排気ガスが内部で集合することもあり高温になりやすい。このため、排気集合部を備えるシリンダヘッドでは、冷却水通路(ウォータジャケット)による冷却性能の向上が図られている。
【0005】
例えば、複数の排気導管を合流することによって形成される集合排気導管を一体的に設けたシリンダヘッドにおいて、排気導管の下方に配置される下側冷却ジャケットと、排気導管の上方に配置される上側冷却液ジャケットと、これら下側冷却ジャケットと上側ジャケットとを連通し冷却液の通路として機能する連通部とを備えるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このような特許文献1の構成によれば、従来のシリンダヘッドに比べると冷却性能を向上することはできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-309158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構造でもシリンダヘッドの冷却性能は必ずしも十分とは言えず、さらなる向上が望まれている。
【0009】
近年は、シリンダヘッドが、冷却水通路(冷却液通路)として、集合排気ポートの上方に設けられる上部通路と、この上部通路とは独立して集合排気ポートの下方に設けられる下部通路と、を備える構造も提案されている。このような構造のシリンダヘッドでは、上部通路と下部通路とに、別々に冷却水を供給することができるため、上部通路と下部通路とが一体的に形成された従来のシリンダヘッドに比べて冷却性能を高めることができる。
【0010】
また、このように上部通路と下部通路とを独立させた構造としても、シリンダヘッドの冷却性能はまだ十分とは言えず、さらなる向上が望まれている。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、排気ポートを通過する排気ガスの温度を効率的に低下させることで、冷却性能の向上を図ったシリンダヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、エンジンの気筒に接続される排気ポートと、前記排気ポートの周囲に設けられて冷却水が流通される冷却水通路と、を備えるシリンダヘッドであって、前記排気ポート内を流れる排気ガスの流れ方向に対して交差する方向に沿って突出させた突条部が前記排気ポートの内壁に設けられ、前記突条部は、前記排気ポートの上流側の第1の側面及び下流側の第2の側面が前記排気ポートの壁面に対して傾斜して設けられており、前記第2の側面の傾斜角度が、前記第1の側面の傾斜角度よりも大きいことを特徴とするシリンダヘッドにある。
【0014】
また前記突条部は、前記排気ポートを構成する第1の壁面と該第1の壁面に対向する第2の壁面とのそれぞれに複数設けられ、複数の前記突条部が、前記排気ポート内を流れる排気ガスの流れ方向で、前記第1の壁面と前記第2の壁面とに交互に配置されていることが好ましい。
【0015】
さらに前記突条部は、前記第1の側面が前記排気ポートの壁面に対して傾斜して設けられており、各突条部は、前記排気ポート内を流れる排気ガスの流れ方向において隣接する前記突条部の前記第1の側面の延長線上に配置されていることが好ましい。
【0016】
また前記突条部が、前記排気ポート内を流れる排気ガスの流れ方向に沿って螺旋状に連続して設けられていることが好ましい。
【0017】
また複数の前記排気ポートと、複数の前記排気ポートが集合する排気集合部と、を含む集合排気ポートを備えており、前記突条部が、前記排気ポート及び前記排気集合部に設けられていることが好ましい。
【0018】
さらに、複数の前記排気ポートのうち圧損の小さいものほど、前記突条部が密に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
かかる本発明のシリンダヘッドによれば、排気ポートを通過する排気ガスの温度を効率的に低下させ、冷却性能の向上を図ることができる。詳しくは、排気ポートの周囲に設けられた冷却水通路を流れる冷却水によって排気ポートが冷却される。更に、排気ポートに突条部が設けられていることで、排気ポート内で排気ガスが流れる経路が長くなるため排気ガスの冷却時間が長くなるとともに突条部の下流側に渦流が形成されるため、排気ポートと排気ガスとの接触率が高くなる。
【0020】
これにより、冷却水通路を流通する冷却水によって排気ガスの温度を効率的に低下させることができる。その結果、シリンダヘッドの温度上昇も抑制される。すなわち、冷却水通路内を流通する冷却水によって、各気筒(燃焼室)の周囲等を良好に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドの上面図及び側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドの断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る集合排気ポートを模式的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るウォータジャケットを模式的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るアッパジャケットを説明する図である。
図6】本発明の一実施形態に係るロアジャケットを説明する図である。
図7】本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドの断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る突条部の拡大断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る集合排気ポートの変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、シリンダヘッドの上面(シリンダブロックへの取付け面とは反対側の面)及びシリンダヘッドのフロント側の側面を示す図である。図2は、シリンダヘッドのA-A′線断面図である。また図3は、集合排気ポートの形状を、砂中子の形状として模式的に示す図である。図4は、ウォータジャケットの形状を、砂中子の形状として模式的に示す図である。図5は、ウォータジャケットの形状を示す上面図であり、図6は、ウォータジャケットの形状を示す底面図である。また図7及び図8は、突条部を説明する図であり、図7図3のB-B′線に相当するシリンダヘッドの断面図であり、図8は、突条部の拡大図である。また図9は、突条部の変形例を示す図であり、集合排気ポートの形状を模式的に示す図である。
【0023】
図1に示す本実施形態に係るシリンダヘッド10は、フロント側(車両前方側)から直列(一列)に配置された4つの気筒(シリンダ)を備える空冷式の直列4気筒エンジンを構成するものであり、シリンダヘッド10の下面10aには、第1~第4の気筒(シリンダ)11(11a~11d)が形成されたシリンダブロック(図示なし)が取付けられる。
【0024】
一方、シリンダヘッド10の上面10bには動弁室12が形成されている。図示は省略するが、この動弁室12内には吸気弁や排気弁を駆動する動弁機構が収容され、シリンダヘッド10の上面には、この動弁室12を覆うリンダカバーが取付けられる。
【0025】
本願発明は、このような水冷式の多気筒エンジンを構成するシリンダヘッド10の内部構造に特徴がある。以下では、シリンダヘッド10の内部構造について詳細に説明する。
【0026】
図1及び図2に示すように、シリンダヘッド10には、各気筒11に対応する2つの吸気バルブ孔13(13a,13b)と、2つの排気バルブ孔14(14a,14b)とが設けられている。つまりシリンダヘッド10には、8つの吸気バルブ孔13及び排気バルブ孔14が設けられている。
【0027】
またシリンダヘッド10には、各気筒11に対応する4つの吸気ポート15が設けられている。各吸気ポート15の一端側は、各気筒11に対応する2つの吸気バルブ孔13に接続されている。これらの吸気ポート15は、互い集合することなく独立して設けられ、シリンダヘッド10の一方の側面10cにそれぞれ開口している。つまりシリンダヘッド10の側面10cには、各気筒11にそれぞれに繋がる4つの吸気口16が形成されている(図1参照)。
【0028】
またシリンダヘッド10には、各気筒11のぞれぞれに接続される集合排気ポート17が設けられている。集合排気ポート17は、各気筒11に接続される4つの排気ポート18(18a~18d)と、これらの排気ポート18(18a~18d)が集合する排気集合部19と、を含んで構成されている。
【0029】
各排気ポート18の一端側は、各気筒11に対応する2つの排気バルブ孔14a,14bに接続され、各排気ポート18の他端側は、排気集合部19で集合している。
【0030】
より詳しくは、図3の模式図に示すように、各排気ポート18は、各排気バルブ孔14a,14bに接続される一対の枝通路部181,182と、これらの枝通路部181,182が合流する幹通路部183とで構成されている。そして第1~第4の排気ポート18(18a~18d)の幹通路部183が排気集合部19にて集合している。
【0031】
排気集合部19は、気筒11の列設方向(シリンダヘッド10の前後方向)の中央部に位置し、シリンダヘッド10の吸気口16が開口する側面10cとは反対側の側面10dに開口している。つまりシリンダヘッド10の側面10dには、排気集合部19にて集合された排気ガスが流出する1つの排気口20が、気筒11の列設方向(シリンダヘッド10の前後方向)の中央部に形成されている。
【0032】
各排気ポート18(幹通路部183)間は、第1の仕切壁21(21a~21c)によって仕切られている。すなわち、隣接する一対の排気ポート18は、第1の仕切壁21の先端部(排気集合部19側の端部)にて合流している。
【0033】
各排気ポート18を構成する枝通路部181,182間は、第2の仕切壁22(22a~22d)によって仕切られている。すなわち、各排気ポート18の枝通路部181,182は、この第2の仕切壁22の先端部にて合流している。
【0034】
また、このような構造のシリンダヘッド10には、気筒11の列設方向に冷却水を流通させるウォータジャケット(冷却水通路)30が一体的に形成されている。本実施形態では、ウォータジャケット30に、シリンダヘッド10のフロント側からリア側に向かって冷却水を流通させることで、排気熱による各気筒(燃焼室)11付近や集合排気ポート17付近の温度上昇を抑制している。
【0035】
本実施形態に係るウォータジャケット30は、図4に示すように、集合排気ポート17の上方に設けられるアッパジャケット(第1の通路)31と、集合排気ポート17の下方に設けられるロアジャケット(第2の通路)32と、を備えている。
【0036】
アッパジャケット(第1の通路)31は、図4及び図5に示すように、各気筒11の上方に設けられる気筒通路部33と、集合排気ポート17の上方に集合排気ポート17の上部を覆うように設けられるポート通路部34と、で構成されている。すなわちアッパジャケット31には、冷却水の主な流れとして、気筒通路部33及びポート通路部34を流れる2つ流れが形成される。
【0037】
なおこれら気筒通路部33とポート通路部34とは、第1の気筒11aに対応する排気バルブ孔14aの外側及び第4の気筒11dに対応する排気バルブ孔14bの外側と、隣接する排気バルブ孔14の間でそれぞれ連通している。
【0038】
一方、ロアジャケット(第2の通路)32は、図4及び図6に示すように、各気筒11に対応する部分には設けられておらず、集合排気ポート17の下方に、集合排気ポート17の下部を覆うように設けられるポート通路部35によって構成されている。
【0039】
ここで、アッパジャケット31とロアジャケット32とは独立して設けられている。すなわちアッパジャケット31及びロアジャケット32には、別々の経路から冷却水が供給されるように形成されている。
【0040】
アッパジャケット31は、シリンダヘッド10のフロント側に、冷却水が供給される1つのアッパ入口通路部36を有し、シリンダヘッド10のリア側にアッパ出口通路部37を有する。すなわちアッパジャケット31内には、アッパ入口通路部36から冷却水が供給され、供給された冷却水は、気筒通路部33及びポート通路部34を通過した後に、アッパ出口通路部37から外部に排出されるようになっている。なおアッパ出口通路部37は必ずしも一つでなくてもよく、複数設けられていてもよい。
【0041】
一方、ロアジャケット32は、シリンダヘッド10のフロント側に、アッパ入口通路部36とは独立するロア入口通路部38を有しており、ロアジャケット32内には、このロア入口通路部38から冷却水が供給されるようになっている。またロアジャケット32は、シリンダヘッド10のリア側(冷却水の流れ方向の下流側)で、アッパジャケット31に接続されている。すなわちロアジャケット32内に供給された冷却水は、ポート通路部35を通過した後に、アッパジャケット31のアッパ出口通路部37を介して外部に排出されるようになっている。
【0042】
具体的には、ロアジャケット32は、ポート通路部35の下流側の端部近傍から気筒11の列設方向に沿って延在するサブ通路部39を備えている。一方、アッパジャケット31は、アッパ出口通路部37から分岐してサブ通路部39に向かって延設される分岐通路部40を有している。そして、ロアジャケット32のサブ通路部39は、この分岐通路部40に接続されている。本実施形態では、サブ通路部39は、ポート通路部35との接続部分の直径よりも大径の大径部39aを有しており、この大径部39aにおいてアッパジャケット31の分岐通路部40に接続されている。
【0043】
つまり本実施形態に係るシリンダヘッド10においては、ロアジャケット32内に供給された冷却水は、ポート通路部35及びサブ通路部39を通過した後、アッパジャケット31の分岐通路部40を介してアッパ出口通路部37から外部に排出されるようになっている。
【0044】
なお、ロアジャケット32が備えるサブ通路部39は、シリンダヘッド10を鋳造する際に、ポート通路部35を形成するための中子を支持する幅木によって形成される空間である。このため、サブ通路部39の先端部(下流側端部)は開口しているが、このサブ通路部39の開口は、図示しない封止部材(エキスパンションプラグ)によって封止されている。
【0045】
このようにロアジャケット32を構成するポート通路部35が、ポート通路部35の下流側の端部近傍から延在するサブ通路部39を介してアッパジャケット31の分岐通路部40に連通されていることで、ロアジャケット32内のポート通路部35の冷却水の流れを阻害することなく、ロアジャケット32内に冷却水を良好に流通させることができる。
【0046】
またサブ通路部39が、アッパジャケット31の気筒通路部33及びポート通路部34よりも下流側の分岐通路部40に接続されているため、アッパジャケット31の気筒通路部33及びポート通路部34の流れが阻害されることもなく、アッパジャケット31内にも冷却水を良好に流通させることができる。
【0047】
つまり、アッパジャケット31とロアジャケット32のそれぞれに冷却水を良好に流通させることができるため、シリンダヘッド10の冷却性能を向上することができる。
【0048】
さらにアッパジャケット31とロアジャケット32とは独立して設けられているため、アッパジャケット31とロアジャケット32とを接続するには、シリンダヘッド10を鋳造後に加工する必要がある。すなわち鋳造時には、サブ通路部39と分岐通路部40とは分離されているため、その後にシリンダヘッド10を加工して、サブ通路部39と分岐通路部40とを連通させる必要がある。
【0049】
本実施形態では、ロアジャケット32のサブ通路部39が、中子を支持する幅木によって形成された空間であり、その先端部は開口した状態であるため、サブ通路部39と分岐通路部40とを連通させるための加工を比較的容易に行うことができる。
【0050】
ところで、集合排気ポート17を構成する少なくとも各排気ポート18には、図3図7及び図8に示すように、その内壁の一部を突出させた突条部50が設けられている。本実施形態では、各排気ポート18及び排気集合部19に複数の突条部50が設けられている。複数の突条部50は、それぞれ独立して設けられており、複数の各突条部50は、各排気ポート18を構成する枝通路部181,182及び幹通路部183と、排気集合部19とに、各排気ポート18の長さ方向(排気ガスの流れ方向)に沿って所定間隔で配置されている。
【0051】
具体的には、各突条部50は、集合排気ポート17を構成する第1の壁面である上壁面17aと、上壁面17aに対向する第2の壁面である下壁面17bと、のそれぞれに複数設けられている。これら複数の各突条部50は、排気ガスの流れ方向(各排気ポート18の長さ方向)で、上壁面17aと下壁面17bとに交互に配置されている(図7参照)。例えば、図7に示す例では、各突条部50は、集合排気ポート17の上流側(排気バルブ孔14側)から上壁面17a、下壁面17bの順で交互に配置されている。
【0052】
これらの各突条部50は、排気ガスの流れ方向(排気ポート18の長さ方向)に対して交差する方向に沿って延在しており、排気ガスの流れ方向に対して略直交する方向に延在していることが好ましい。
【0053】
このような突条部50が、集合排気ポート17の内壁に設けられていることで、シリンダヘッド10の冷却性能の向上を図ることができる。
【0054】
まずは、上述のように集合排気ポート17の周囲にはウォータジャケット30が設けられており、集合排気ポート17は、このウォータジャケット30を流れる冷却水によって冷却される。冷却水によって冷却された集合排気ポート17の壁面(内面)に排気ガスが接触することで、排気ガスの温度が効率的に低下する。
【0055】
さらに、集合排気ポート17を流れる排気ガスが各突条部50に衝突することで、排気ガスの流れの向きが変化するため、集合排気ポート17内で排気ガスが流れる経路が長くなる。これにより、冷却水により冷却された集合排気ポート17の排気ガスとの接触面が大きくなる。すなわち、冷却水により冷却された集合排気ポート17の壁面に対する排気ガスの接触時間が長くなる。また集合排気ポート17内を流れる排気ガスが複数の各突条部50に衝突した後(突条部の頂点を越えた後)に渦流が形成されることで、排気ガスの上壁面17a及び下壁面17bとの接触率が高まり排気ガスが冷却されやすくなる。
【0056】
これにより、集合排気ポート17の上方及び下方に設けられたウォータジャケット30を流通する冷却水によって、集合排気ポート17を流れる排気ガスの温度を効率的に低下させることができる。その結果、シリンダヘッド10の温度上昇も抑制される。すなわち、ウォータジャケット30内を流通する冷却水によって、各気筒(燃焼室)11の周囲や集合排気ポート17の周囲を良好に冷却することができる。
【0057】
ここで、各突条部50は、図8に示すように、突条部50の排気ポート18の上流側の第1の側面51及び下流側の第2の側面52が集合排気ポート17の上壁面17a又は下壁面17bの表面に対して傾斜して設けられており、第2の側面52の傾斜角度θ2(第2の側面52と排気ポート壁面とで形成される外角)は、第1の側面51の傾斜角度θ1(第1の側面51と排気ポートの壁面とで形成される外角)よりも大きくなっていることが好ましい。これにより、第1の側面51を越えた直後(突条部の頂点を越えた後)に渦流を更に形成しやすくなり、排気ガスが冷却されやすくなる。
【0058】
なお第1の側面51及び第2の側面52は、集合排気ポート17の外側を凸とする曲面で形成されていてもよい。この場合、第1の側面51となる曲面の半径は、第2の側面52となると曲面の半径よりも大きいことが好ましい。このような構成としても、各突条部50に衝突した排気ガス(上壁面17a又は下壁面17bに付着した排気ガス)の直後(突条部50の頂点を越えた後)に渦流形成し易くなる。
【0059】
また、突条部50の第1の側面51が傾斜して設けられている場合、複数の各突条部50は、排気ガスの流れ方向において隣接する突条部50の第1の側面51の延長線上に配置されていることが好ましい。これにより、排気ガスを各突条部50に向けることができるため排気ガスを各突条部に衝突させ易くなることで、また各突条部50に衝突した排気ガス(上壁面17a又は下壁面17bに付着した排気ガス)の直後(突条部50の頂点を越えた後)に渦流を形成しやすくなる。
【0060】
したがって、各突条部50をこのような形状、配置とすることで、集合排気ポート17内の排気ガスの流れをより適切に制御することができる。
【0061】
なお本実施形態では、上述のように集合排気ポート17の上壁面17a及び下壁面17bに突条部50が設けられているが、さらに、集合排気ポート17の上壁面17aと下壁面17bとを繋ぐ側壁面に突条部50を設けるようにしてもよい。本実施形態においても、第2の気筒11bに対応する第2の排気ポート18bと第3の気筒11cに対応する第3の排気ポート18cとの間を仕切る第1の仕切壁21bの表面(集合排気ポート17の側壁面)には、その一部を突出させた突条部50Aが設けられている(図2参照)。この突条部50Aは、第1の仕切壁21bの高さ方向に亘って連続的に設けられている。
【0062】
このように集合排気ポート17の側壁面に設けられた突条部50Aも、上壁面17a及び下壁面17bに設けられた突条部50と同様の機能を発揮する。したがって、シリンダヘッド10の冷却性能を向上することができる。
【0063】
また、このように第1の仕切壁21bの表面に突条部50Aを設けた場合、第1の仕切壁21bの各突条部50Aに対応する部分に、動弁室12とオイルパン(図示なし)とを繋ぐオイル孔60が設けられていることが好ましい。このオイル孔60を介して動弁室12からオイルパンに流れ落ちるオイルの温度は、排気ガスの温度よりも低い。したがって、第1の仕切壁21bにオイル孔60を設けておくことで、排気ガスの温度をさらに低下させ易くなる。
【0064】
また本実施形態では、シリンダヘッド10が備える各排気ポート18のそれぞれに突条部50を設けるようにしたが、各排気ポート18に設けられる突条部50の数は特に限定されるものではなく、各排気ポート18において、突条部50の数が一致している必要はない。また突条部50は、必ずしも全ての排気ポート18に設けられていなくてもよく、一部の排気ポート18のみに設けられていてもよい。
【0065】
このような場合、複数の排気ポート18のうち圧損(圧力損失)の小さいものほど、突条部50が密に設けられていることが好ましい。すなわち、複数の排気ポート18のうち圧損(圧力損失)の小さいものほど、突条部50の数が相対的に多く形成されていることが好ましい。
【0066】
例えば、本実施形態に係る集合排気ポート17の場合、第2の排気ポート18b及び第3の排気ポート18cの長さは、第1の排気ポート18a及び第4の排気ポート18dよりも短い。このため、第2の排気ポート18b及び第3の排気ポート18cの圧損は、第1の排気ポート18a及び第4の排気ポート18dよりも小さい。
【0067】
このため、第2の排気ポート18b及び第3の排気ポート18cには、第1の排気ポート18a及び第4の排気ポート18dよりも、突条部50が密に形成されていることが好ましい。あるいは、第2の排気ポート18b及び第3の排気ポート18cのみに突条部50が設けられていることが好ましい。
【0068】
これにより、シリンダヘッド10の冷却性能を高めると共に、各排気ポート18の圧損の均一化を図ることができる。
【0069】
また本実施形態では、各突条部50は、それぞれ独立して設けられているが、図9に示すように、各排気ポート18の内壁面に、その長さ方向(排気ガスの流れ方向)に沿って螺旋状に連続する突条部55(55a~55d)を設けるようにしてもよい。
【0070】
また螺旋状の突条部55を設ける場合、各排気ポート18に設けられる突条部55(55a~55d)はそれぞれ独立して設けられていてもよいが、隣接する排気ポート18に設けられる突条部55同士を連結するようにしてもよい。例えば、図9に示す例では、第1の排気ポート18aに設けられる突条部55aと、第2の排気ポート18bに設けられる突条部55bとが、排気集合部19にて連結されており、第3の排気ポート18cに設けられる突条部55cと第4の排気ポート18dに設けられる突条部55dとが排気集合部19にて連結されている。
【0071】
このような螺旋形状の突条部55を設けた場合でも、排気ガスが集合排気ポート17内を流れる経路は長くなるため、排気ガスの温度を効率的に低下させることができ、ひいてはシリンダヘッド10の冷却性能を向上することができる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【0073】
例えば、上述の実施形態では、集合排気ポートの上壁面及び下壁面に突条部を交互に配置した構成を例示したが、これらの突条部の配置は特に限定されるものではない。また上述の実施形態では、集合排気ポートを備えるシリンダヘッドを一例として本発明を説明したが、本発明は、各排気ポートを独立して備えるシリンダヘッドにも適用することができる。
【0074】
また上述の実施形態では、エンジンとして直列4気筒のエンジンを例示して本発明を説明したが、勿論、本発明に係るシリンダヘッドは、直列4気筒のエンジン以外のエンジンを構成するシリンダヘッドにも適用可能なものである。
【符号の説明】
【0075】
10 シリンダヘッド
11 気筒
12 動弁室
13 吸気バルブ孔
14 排気バルブ孔
15 吸気ポート
16 吸気口
17 集合排気ポート
18 排気ポート
19 排気集合部
20 排気口
21 第1の仕切壁
22 第2の仕切壁
30 ウォータジャケット
31 アッパジャケット
32 ロアジャケット
33 気筒通路部
34,35 ポート通路部
36 アッパ入口通路部
37 アッパ出口通路部
38 ロア入口通路部
39 サブ通路部
40 分岐通路部
50,55 突条部
51 第1の側面
52 第2の側面
60 オイル孔
181,182 枝通路部
183 幹通路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9