IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ショウエイの特許一覧

特許7104381浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法
<>
  • 特許-浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法 図1
  • 特許-浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法 図2
  • 特許-浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法 図3
  • 特許-浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法 図4
  • 特許-浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法 図5
  • 特許-浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法 図6
  • 特許-浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法 図7
  • 特許-浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法 図8
  • 特許-浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法 図9
  • 特許-浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】浴槽定温排水器及び浴槽定温排水器を使用した浴槽排水方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20220713BHJP
   E03C 1/24 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
A47K3/00 Z
E03C1/24 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018153002
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020018814
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】593211382
【氏名又は名称】株式会社ショウエイ
(72)【発明者】
【氏名】辻 永
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-063334(JP,A)
【文献】特開昭55-020877(JP,A)
【文献】実開平05-042371(JP,U)
【文献】特開2003-278206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
E03C 1/20-1/298
A47K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項16】
前記流量調整弁を電動弁とし、人感センサにより入浴者があると感知したときに前記流量調整弁の開度を小さくして浴槽表面から溢れさせることを特徴とする、請求項15に記載の浴槽排水方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掛け流し浴槽の排水機器に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽の上部から湯口などを用いて温水を補給しろ過をせず排水する掛け流しの浴槽では、従来、図9のように浴槽上部からの溢水により排水を行っていた。この方法では、浴槽上部から供給された比較的高温の温水が浴槽水と十分に混じらず高温のまま排水されてしまい、浴槽水が充分に保温されないのと同時に、排水に含まれる熱エネルギーの浪費にもなっている。
【0003】
また、前記課題を解決するために浴槽底部から排水し、水位調節のため鳥居状に排水配管を立ち上げる方法もある。図10に示すもので、鳥居配管の横引配管部下面が浴槽の水位と同水位となっており、前記鳥居配管の横引配管部より浴槽側の配管内には浴槽と同水位の排水が流入している。このとき、浴槽の水位が上がると、排水が溢れ面である前記鳥居配管の横引配管部を越え排水される仕組みである。この方法では、比較的低温の浴槽下層部から排水することができ、水位調整もセンサ等を使用しない簡単な構造にできるが、浴槽から鳥居配管までの配管を長くすると滞留水が多くなり衛生上問題となることから、浴槽の近くに設置し、排水口から流出した水が前記鳥居配管の横引配管部を越え排水されるまでの時間を短くする必要があるため、むき出しの配管が浴槽付近に現れることになり浴場の景観を損ねる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、景観を損なうことなく掛け流し浴槽の湯温を均一にでき、水位を一定に保つことができる排水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明の排水器は、内部が空洞であり上底と下底が閉じた柱状部材の内部に、内部空間を軸方向に2室に区切る仕切板を、上底との間には空間を設け、下底に垂直に接着し、ある側面とその対面に対しては接着するように配し、前記仕切板によって区切られた一方の室の側面に、底面に接する高さに低温水流出口を配設し、他方の室の側面に、底面に接する高さから前記仕切板の上端の高さの間の高さに低温水流入口を配設したことを特徴とする。施工時は前記仕切板の上端を浴槽の予定水位に合わせ、浴槽底面に設けた排水口と、本発明の低温水流入口とを連通管で接続し、低温水流出口は排水配管へ接続する。本機能を果たすための柱体部材の横断面形状は、楕円を含む円形や多角形等、どのような形状でもよい。
【0006】
前記仕切板の上端は、鳥居配管を用いて排水するときの横引配管部下面と同じ役割を果たす。即ち、本発明の低温水流入口がある室の内部には浴槽と同水位の排水が流入しており、浴槽の水位が上がると、排水が溢れ面である前記仕切板の上端を越え、本発明の低温水流出口がある室へ流入し排水される。本発明の外観は柱体であるため、景観に合わせた塗装を施せば、浴室の景観を損なうことなく機能を果たすことができる。塗装は、単色以外にも、混色・グラデーション・メタリック・グリッター・パール・マーブル・擬木・擬石などが考えられ、本発明を実施する材質と塗料の特徴により自由に意匠を施すことができる。
【0007】
本発明の実施には、前記仕切板の上端の高さを浴槽の水位と合せて施工する必要がある。このため、本発明に高さ調節機構を設ければ、現地での施工が容易になる。前記高さ調節機構は、2つの横断面が相似形の筒を重ね、適した高さに調整したのち保持する手段を設けて実現する。前記高さ調節機構は、本発明の側面を延長した部分、即ち低温水流入口及び低温水流出口と本体底面より下方に設けると、機能を損ねることなく高さ調整できるようになる。
【0008】
浴槽の材質などの影響で取付穴が開けられない、意匠的に設けたくないなどで水位計などのセンサを浴槽に取付できない場合は、本発明に取付が可能である。この場合、本発明の低温水流入口がある室に取り付ける。水位計は、電極棒式でも圧力感知式でも良い。この他、温度計や水質監視センサの利用も考えられるが、流速が遅く浴槽から排出された直後でない水を測定することになるため、例えば比較的流速の速い循環水を機械室で測定する場合よりも、浴槽水の水質を測定するという点において正確性が低い。
【発明の効果】
【0009】
本発明を実施すると、景観を損なうことなく掛け流し浴槽の湯温を均一にでき、水位を一定に保つことができる排水器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の正面図である。
図2図2は、本発明の全断面図である。
図3図3は、本発明の使用状態図である。
図4図4は、水位が釣り合った状態を示すA部拡大図である。
図5図5は、溢れ状態を示すA部拡大図である。
図6図6は、高さ調節機構を持つ実施例を示す全断面図である。
図7図7は、湯張時に給湯弁を自動で制御可能な実施例の使用状態図である。
図8図8は、人感センサと組み合せた演出を行うことが可能な実施例の使用状態図である。
図9図9は、従来の掛け流し浴槽である。
図10図10は、配管を鳥居形状に組み浴槽底部から排水する従来技術である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面とともに説明する。図1乃至図5は本発明の基本的な構造と使用状態を示し、図6乃至図8は応用的な実施例を示す。
【実施例
【0012】
図1乃至図2は、本発明の代表的な実施形態を示す。図1は本発明の正面図、図2は全断面図である。符号112の低温水流入口の高さは、本体底部から符号116の垂直仕切板の上端までの範囲でも良いが、代表して最底部で記載した。前記垂直仕切板の上端が本発明における溢れ面、言い換えれば排水が始まる高さとなり、符号233の仕切板溢れ面で示すこととする。
【0013】
符号111の本発明本体部内には、符号113の低温水流出口の下端と高さを合わせた位置に符号115の水平仕切板を設けている。これは、本発明の核となる部分としては底部となり、段落0008までで述べた、内部が空洞の柱状部材の下底に当る。前記水平仕切板の下部は、本体側面を延長し突縁を設けた形状をしているが、これは基礎等に固定するための固定部である。本体内には、内部空間を区切る符号116の垂直仕切板がある。以降、区切られた内部空間のうち、符号112の低温水流入口のある側を、符号231の排水水位調整室、符号113の低温水流出口のある側を、符号232の排水流出室と呼称する。また、清掃や点検等のメンテナンスを行いやすくするため、本発明の上底に当る部分は開放とし、符号114の蓋部を水密に取り付ける。
【0014】
符号112の低温水流入口が取り付けられる最大高さは、段落番号0012で述べたように、本体底部から符号116の垂直仕切板の上端までの範囲である。これは、施工時に前記垂直仕切板の上端を浴槽の水位と合せるため、それ以上の高さは動力なしで排水が流入する高さの限界を超えているためである。
【0015】
図3乃至図5は、本発明の使用状態を示す図であり、図3は施工状態を、図4乃至図5はA部を拡大し、水位調整の仕組みを説明した図である。図3は説明のため、符号310の浴槽と本発明を断面図で記載している。浴槽と本発明の間の配管には、流量調整バルブが設けられる。図3では符号341の手動流量調整バルブで表している。前記流量調整バルブは、電動のものを使用しても良い。また、清掃等で配管内や本発明内も含めて完全に排水するための排水管を設け、符号331の排水バルブを設ける。前記排水バルブは、通常時は閉めておく。使用開始時は、図4のように、符号212の浴槽水面と符号213の本発明内の水面が同水位にあり、釣り合っている状態である。ここで、符号320の温水吐出口から温水を補給し始めると、連通管で接続される本発明内の排水の水位が、補給水の分だけ上昇し、符号233の仕切板溢れ面を越えて符号232の排水流出室へ流れ、排水される。
【0016】
本発明を実施すると、浴槽上部からの溢れの代わりに底部から排水することになるが、地域によっては条例などで、浴槽上部から溢れさせることが必要な場合がある。このような場合は、前記流量調整バルブを絞り、浴槽縁から溢れさせることができる。浴槽縁からの溢水量と本発明からの排水量との比を見て、開度調整する。これは、掛け流し浴槽の溢れを演出する場合にも使用できる。
【0017】
図6は、高さ調整機構付きの実施形態である。本図では符号128の高さ調整部の方が本体より大きく、本体を前記高さ調整部に挿入する形となっているが、逆に前記高さ調整部の方が小さく、本体を前記高さ調整部に被せるように製作することもできる。本実施例では、設置現場での施工時に、符号233の仕切板溢れ面と浴槽水位を合わせるように高さ調整して保持すれば、微妙な水位の調整が可能である。
【0018】
図7はセンサ付きの実施形態で、特に電極式の水位計を付けたものである。浴槽の材質が穴加工に耐えられず壊れやすいものであったり硬すぎて穴加工にコストがかかりすぎるなどで浴槽に水位計が付けられない場合や、意匠的に浴槽に付けることを避けたいときに取り付け、湯張時の湯張弁制御のために使用する。符号138で表す水位計は、符号231の排水水位調整室に取り付ける。2室の大きさ比は1対1でなくてよく、排水量にもよるが、機器を小型化するためには、前記水位計が取り付けられる側、即ち前記排水水位調整室側が比較して大きくなる。また、前記水位計に代えて他のセンサ、例えば温度計などを付けることも可能であるが、段落番号0008で述べたように正確性が低いため、好ましくない。
【0019】
図8は、掛け流し浴槽の溢れ演出を加えた施工例である。段落番号0016で述べた実施例に人感センサと制御盤を加え、流量調整バルブを電動としたものである。本実施例では、人感センサで入浴者感知したときは符号342の電動流量調整バルブを絞り浴槽縁から溢れさせ、入浴者がいなくなったときには前記電動流量調整バルブを開き本発明への流入量を増やして浴槽上部からの溢水を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の構造は簡単なもので、演出等の付加部分を除けば電源が不要なため、掛け流し浴槽だけでなく、人工池などの水景設備にも応用が可能である。
【符号の説明】
【0021】
110 本発明の実施形態1
111 本体部
112 低温水流入口
113 低温水流出口
114 蓋部
115 水平仕切板
116 垂直仕切板
117 基礎固定部
120 本発明の実施形態2
128 高さ調整部
130 本発明の実施形態3
138 水位計
211 補給温水
212 浴槽水面
213 本発明内の水面
214 本発明内の溢れ水
215 浴槽縁からの溢れ水
221 流入した温水の流れ
222 浴槽水位
231 排水水位調整室
232 排水流出室
233 仕切板溢れ面
310 浴槽
320 温水吐出口
331 排水バルブ
341 手動流量調整バルブ
342 電動流量調整バルブ
351 人感センサ
352 制御盤
421 鳥居配管部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10